闇の救済者戦争⑬〜ブラッディ・ローズケージ
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城の深部には別世界のような空間が広がっていた。
壁一面を埋めるのは、僅かな篝火を受け銀色に輝く無数の鳥籠。
その一つ一つに、幼い子供達が閉じ込められている。
『あらあら、こんなところまで攻め込まれたのね』
項垂れた彼等を品定めするように、つかつか、と豪奢なドレスを纏った女性が回廊を歩む。
『でも大丈夫。貴方達は私のお気に入り。だって、苦労して『人形』が減るのは勿体ないもの』
そう言って、鳥籠の一つに屈みこんだ女性は、巻き付いた茨で手が傷付くのも構わず、細い格子の奥を覗き込んだ。
ひ、と中の少女が後ずさりするのも構わず、女性は無邪気な笑顔を向ける。
『だから守ってあげる――お友達、増えると良いわね』
薄闇の中、女性のささやかな笑い声だけが反響するのだった。
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「――ダークセイヴァーでの戦い、お疲れ様です」
グリモアベースを訪れた猟兵達を、クララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)が出迎えた。
闇の救済者戦争も半ば。決して焦らずと言い足しつつも、クララは予知で見た場所を示す。
「行き先は『月光城』です」
第五層。おそらくは異端の神々と戦う為の城塞とされている、月の光を受けて輝く城、月光城。
今、このデスギガス災群に乗って現れたこの城塞群は、その中央に「ケルベロス・フェノメノンの欠落」を隠しているという。
「詳しい事はまだわかりませんが……謎の通路が月光城の深部に存在しているのは確かです。おそらくは『禁獣ケルベロス・フェノメノンの秘匿された『欠落』に繋がる』とされる」
その名も『魔空回廊』。ここを月光城の城主が守っている。
城主の一人が『アリシア・ローズ』。
容姿の優れた少年少女を捕らえては鳥籠に入れ、人形と呼び愛でる吸血鬼。
だが決して元の地へは返さず、飽きれば他へ譲るなどして、その命と心を無邪気に消費する存在だ。
「――彼女は『月の眼の紋章』と融合し、さらに紋章と魔空回廊の相乗効果を受けています」
回廊に居る限り『アリシア・ローズ』の戦闘力は跳ね上がる。その値、実に660倍。
ただし、この能力強化の源は、回廊にぐるりと取り巻かれる形で作られた鳥籠の|人間画廊《ギャラリア》に、「展示品」として囚われている少年少女達の命だ。
強烈な攻撃を何とかして掻い潜り、解放する度に敵の強化は失われていくだろうと。
「――予知によると『禁獣ケルベロス・フェノメノン』は無敵能力の持ち主。どのような勇者であっても、討つ事が出来ないとされています」
回廊を制圧出来れば、その不死性に罅が入る。
「どうかお気をつけて――子供達も、宜しくお願いします」
最後にそう言って、クララは頭を下げるのだった。
白妙
宜しくお願いします。
魔空回廊において、月光城の城主と戦います。
●戦争シナリオ
これは戦争シナリオです。一章で完結します。
●難易度
『やや難』となります。判定方法はマスタールールに準拠します。
●状況
幅の広い回廊の両脇に、大量の鳥籠が配置されています。
回廊内にいる限り、敵は戦闘能力が元の『660倍』になります。
全体の半分の人々(🔵の数で言えば6に相当します)を解放できれば、強化は完全に失われます。
●プレイングボーナス
『|人間画廊《ギャラリア》に捕らわれた人々を救出する』です。
第1章 ボス戦
『アリシア・ローズ』
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POW : 薔薇色のロンド
レベルm半径内に【血液から変じた薔薇の花弁】を放ち、命中した敵から【自身に向いた敵意・殺意と共に生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD : 硝子色のラメント/ベル・カント
戦場全体に【薔薇咲く硝子の庭園】を発生させる。レベル分後まで、敵は【悲哀や絶望の記憶を増幅する雨】の攻撃を、味方は【硝子の小鳥による囀り】の回復を受け続ける。
WIZ : 白金色のドルチェ
【過去・現在の自分=アリシアの行いに疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【人形楽士団の幽霊】から、高命中力の【甘く響き魂囚える旋律】を飛ばす。
イラスト:白
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リオネル・エコーズ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カタリナ・エスペランサ
開けた視界、強化も万全に陣取った敵の眼前での救出劇となると些か骨が折れるね
つまり魅せ甲斐があるって事だ。上等じゃないか
【災華殲尽】、朱色に染まった羽の示す属性は陽炎
敵UCの雨は炎宿す羽の無限弾幕で迎撃して悪影響を緩和、安全圏を構築
出力で押される分は制圧圏を絞り羽の物量で補うよ
雨と相殺した炎は陽炎を生み出し敵の狙いを狂わせ精度を落とす
UCの超加速、《戦闘知識+第六感》の《見切り》、《存在感》帯びた《陽動+残像》で攪乱し隙を作ろう
《早業+怪力+切断》で鳥籠を破壊し囚われている子たちは
《ものを隠す+運搬+救助活動》の要領で装備[一期一会]内の異空間に避難
置き土産に羽の包囲弾幕を敵に直接叩き込もうか
魔空回廊。
月光城の奥底に眠る空間は、変貌を遂げていた。
石畳は澄んだ硝子の輝きに満たされ、その上を真紅の薔薇が覆っていく。
その光景を鳥籠の奥で不安そうに眺める子供達の前で、カタリナ・エスペランサ(望暁のレコンキスタ・f21100)が月光城の主と対峙していた。
『御機嫌よう、可愛らしいお客さんね』
「――ご機嫌よう、アリシア・ローズ! 招かれざる訪問、失礼!」
一礼するや、とん、と地面を蹴るカタリナ。ぶわりと空中で双翼を広げた瞬間、昏い色の豪雨が降り注いだ。
悲哀と絶望に相手が叩き落とされたとオブリビオンが誤認したのも一瞬の事。カタリナの翼が太陽にも似た朱色を帯びる。
『!』
「“聖なるは誰が栄光を讃えるか、魔なるは誰が威光を畏れるか――その魂で思い知れ!”」
紡ぐ詠唱と共に燃え上がる翼から生成されていくのは、無限にも等しい羽の弾幕。
それらが雨粒と相殺され、束の間の安全圏を作り出した。
『ふふ、重たいでしょう。その雨。貴方も『お人形さん』になりたい?』
(「確かに」)
戦闘力660倍は伊達ではない。現に長くは飛行状態を維持出来ない程に、ユーベルコードの出力そのもので負けている。
普通ならばそのような状況下で救出劇など思いもよるまい。
(「つまり魅せ甲斐があるって事だ」)
上等じゃないか。口角を上げ密かに呟くと、カタリナは急降下。
掌を翳すアリシア。だがそこから放たれた鮮血色の魔法が捉えたカタリナの体は、ゆらりと揺らめき虚空へと消えた。
『陽炎……』
「その通り」
速度と熱を生かした撹乱。それによって生じたアリシアの一瞬の隙を付き、遥か後方へ駆け過ぎたカタリナは、速度に任せてダガーを一閃させる。
「――フルスロットルだ。覚悟はいいね?」
冴えた音と同時に分断される鳥籠の一群。そこから『一期一会』内部の異空間への転送。
目にも止まらぬ速さでの救出劇を決め、そのままカタリナはUターン。脱出を果たす。
同時にアリシアの頭上を、大量の羽が舞い落ちた。
『はっ!』
置き土産――包囲弾幕。
そうアリシアが気づいた時には咄嗟の防御魔術も間に合わず、数枚の羽が彼女の玉のような肌に火傷を負わせたのだった――。
成功
🔵🔵🔴
【敵の戦闘能力】660倍→440倍
箒星・仄々
子供達を救いましょう
竪琴を奏でて演奏対決です!
…本来は競争するものではありませんが
人形楽士団の旋律は
確かに正確無比の音色です
けれどそこに
演奏する者の心が込められていないのならば
或いは強制されて嫌々演奏しているのであれば
例え660倍でも
それが心を動かしたり
魂を震わせることはありません
楽士団の音色に
竪琴の音を加えることで
いつの間にか全く違う曲調へと
子供達を勇気づけるメロディへと
変えてしまいます
そして実はこの競争(協奏?
の間に鳥籠を魔力へ変え
その魔力で茨を焼いたり切ったりして
解放しています
逃げる子供達を魔力攻撃やバリアで援護します
力をなくしたアリシアさんを海へと還します
終幕
そのまま演奏を続けて鎮魂に
アリシア・ローズが呼び出した人形楽士団の霊達が楽器を操れば、心を蕩かすような演奏が猟兵達の救出活動を妨害しようとする。
だがその調べは、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の竪琴一つに妨害された。
「勝負です……本来は競争するものではありませんが」
魂を迷わす旋律が、簡明で明るい音色へと塗り替えられれば、アリシアも首を捻る。
『あら……どうした事かしら、これは』
「確かに彼等の演奏は正確無比。譜面には忠実でしょう。しかし」
そこに心が無ければ聞く者の魂を震わせる事は無いと、そう仄々は断じる。
彼の演奏は音楽そのものに誠実だ。譜面に忠実なだけの強制された音色が敵う道理も無く。
『あらあら、私の負けね。『人形』達は分けてあげないけど』
「闊達な事ですね、城主……」
だがアリシアの視界から仄々の脇を抜け、たたた、と幾つもの人影が走り去っていく。
子供達。
す、と仄々が視線を送った先では、鳥籠の一部がごっそりと消え去り、焼け焦げた茨の残骸だけが残されていた。
トリニティ・シンフォニーによる炎の魔力への変換と、それによる脱出劇であった。
『――謀ったわね!』
「みなさん、急いで!」
最後の一人が脱出した直後――爆炎が爆ぜた。
強化を乗せた凄まじい破壊力が、咄嗟に展開された障壁を微塵に砕く。
だが発生した煙を仄々が風の魔力で吹き付ければ、アリシアが咳き込み追跡を妨害される。
その間に仄々は、子供達と共に回廊から脱出を果たしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
【敵の戦闘能力】440倍→220倍
冬原・イロハ
欠落を見つけるためでもありますが
子供たちを放っておけません。絶対に
最初は闇に紛れながら鳥籠にそっと近づきましょう
大丈夫ですか? と中の子に声を掛けます
切断属性を纏わせたルーンソードで鳥籠の扉を開いて
ここから逃げましょう
と落ち着きを纏わせながら促しますね
出来るだけ子供たちを救助したい気持ちです
他の子たちと一緒に逃げれば、きっと怖さも薄れてくれるはず
私のあやかしメダルを渡して幸運を祈ります
救出したり、逃走したりの行動は敵への疑問として当然
敵UCにはドンガッキを鳴らして&私のUCで
皆さんの行動に助力。安心できる場所にたどり着けるに、って!
ラクスくんに騎乗し、敵の注意を引きつけるよう飛び回ります
アマネセル・エルドラート
「とりあえず、見つからずに動ければ多くの人を救出できそうね。見つかる前に少しでも救出を進めて行こうかしら。」
UCドリームベールを使用して身を隠し、画廊を走りながら鳥籠を回っていく。
鳥籠がいくつも開いていれば流石に異変には気づかれるだろうが、見つかるまでならスムーズに開放を進めて行けるはず。
「今は姿は見えないけれど助けに来たわよ。気付かれる前に、この鳥籠から出た方が良いわ。」
見つかるまで、鳥籠を開けて回っていく。
見つかってしまった時には隠れ続ける意味も無いので夢を飛ばし遠距離攻撃、全力魔法でアリスランス、武器に魔法を纏い炎による熱で降り注ぐ雨を蒸発させる事を狙いながら引き続き鳥籠を回っていこう。
戦いの中で生じた空隙から魔空回廊にするりと入り込む、二人の猟兵の姿があった。
「とりあえず、見つからずに動ければ多くの人を救出できそうね。見つかる前に少しでも救出を進めて行こうかしら」
「ええ。欠落を見つけるためでもありますが、子供たちを放っておけません。絶対に」
アマネセル・エルドラート(時計ウサギのアリスナイト・f34731)と、冬原・イロハ(戦場のお掃除ねこ・f10327)。
二人の方針は同じ。敵の戦闘能力を警戒しつつも、見つかるまでは救出に専念するというものだ。
『ふふ、次の相手はどなたかしら?』
中央では吸血鬼『アリシア・ローズ』が他の猟兵を相手に立ち回っている。
彼女の視界から外れるようにして、イロハとアマネセルは、柱の物陰へと移動した。
「いずれ気付かれるだろうけど、それまでならスムーズに解放できるはずよ」
そう言い残し、ドリームベールを発動したアマネセルは回廊へと走っていく。
深い夢を纏った彼女の姿は誰にも感知出来ない。アリシアの脇を抜け、そのまま奥へと消えて行った。
(「私も行きましょう」)
イロハはきょろきょろと左右を窺うと、闇に紛れて鳥籠の裏に回り込んだ。壁との間には子供が通れる隙間がある。
(「ここを通って貰えば、入口まで護衛できそうですね」)
壁伝いに歩いて行けば、やがて人の入った檻が目の前に現れる。
「大丈夫ですか?」
そ、と近付き、声を掛けたイロハの方へ、中の少女が振り返った。
少し吃驚した様子を見せつつも、イロハの落ち着いた雰囲気に、すぐさまほっとしたような表情を見せる。
「下がっていてくださいね……」
構えたルーンソードに切断属性が付与されたのを確かめ、イロハは一閃。音も無く銀の格子が上下に断たれる。
「ここから逃げましょう。と、その前に」
同じように手近な数人を解放したイロハは、少女の手に一枚のメダルを握らせた。
あやかしメダル。そこに描かれた霊鳥の刻印は、この場では子供達の幸運を祈るに等しい。
(「他の子たちと一緒に逃げれば、きっと怖さも薄れてくれるはず」)
そんな思惑通り、子供達は小声で礼を言いつつ、イロハの先導に従うのだった。
危険な画廊にも安全な場所はある。アリシアの目が届かない最深部がそうだ。
未だ沢山の少年少女が閉じ込められているその場所で一人、アマネセルは忙しく走り回っていた。
「わ」
きぃ、と急に開いた扉に、鳥籠の中の少年が軽く声を上げる。
アリシアの目すら騙したアマネセルのドリームベールである。その姿は誰にも見えない。
少年から見れば、まるで透明人間の仕業にも見えただろう。
だが安心させるようにアマネセルは、子供達の一人一人に声を掛けていく。
「……今は姿は見えないけれど助けに来たわよ。気付かれる前に、この鳥籠から出た方が良いわ」
明るく明瞭な声に促され鳥籠の外に出た子供達を、アマネセルはたんたん、と肩を叩いて鳥籠の裏の空間へと導く。
「ここからみんなを見てるから、気を付けて入口まで移動して頂戴」
ゆっくりと歩みを進める彼等を横目に、アマネセルは中央を窺う。
アリシアの加護は着実に弱まっているようだ。
「さ、もうひと頑張りよ」
そう残し、アマネセルはさらに解放を続ける。
『いつの間に』
既に子供達の大半が回廊を脱出したタイミングで、ようやくアリシアが呟く。
「気付かれたわ!」
「みなさん!」
たちまち姿を現した学士団の演奏は、イロハが掻き鳴らしたドンガッキの演奏に相殺される。
(「安心できる場所にたどり着けるに、って!」)
引き続き行動を促すような明るい調べに、子供達が駆け足で回廊を後にする。
白い幻獣「ラクスくん」に飛び乗ったイロハが注意を惹けば、アリシアも応戦。足下から紅の薔薇が繁茂を始めた。
『ならばせめて、貴方達だけでも』
「させないわ!」
しゅん、と目前を駆け過ぎたイロハと入れ替わりに、死角からアマネセルが纏っていた夢を飛ばす。
『!』
直撃を受けよろめくアリシア。既に彼女を守る加護は完全に失われていた。
アマネセルが白銀の槍に全力で魔力を収束させれば、それは炎となり周囲を降り注ぐ霧雨を蒸発させる。
「チャンスを窺いつつ、救助を続けるわよ!」
「はい!」
子供達の背中を守るように、アマネセルとイロハは迎撃を続けるのだった。
成功
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【敵の戦闘能力】220倍→0倍
レナータ・バルダーヌ
人間画廊……まだ残っていましたか。
この手の嗜好をもつ吸血鬼さんが多いことには、もはや疑問を感じませんけど、それの何がいいのかはやっぱり疑問ですね。
まともに攻撃を受けるわけにはいきませんけど、音響系の対策はイヤーマフくらいです。
倒れれば救出もできませんから、自衛を第一に考え【Ψ:K.エイマー】で召喚された幽霊を優先して攻撃します。
念のためいつでも【空中機動】による回避行動に移れるよう、今回はサイバーウイング「カノン」は変形させず飛行したまま、スラスター噴射口の一部を銃口に切り替えて放ちましょう。
余力があれば熱線の軌道をさらに曲げ、子どもたちが捕らわれている鳥籠に命中させて焼き切り救出します。
「人間画廊……まだ残っていましたか」
ダークセイヴァーでの戦いは半ばを過ぎ攻略も進んでいる。その一方で進捗に差が出ている事も事実だ。
加護を失ったとはいえ、月光城の城主は未だ健在。子供達も半分近くが取り残されている。
そんな危険な魔空回廊に、レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)もまた足を踏み入れた。
(「もっとも、この手の嗜好をもつ吸血鬼さんが多いことには、もはや疑問を感じませんけど」)
ふるふる、とレナータは首を振る。種族性の違いと言ってしまえばそれまでだが、何が魅力なのかはやはり疑問だ。
一角を見遣る。そこではアリシアの召喚した人形楽士団の幽霊が布陣していた。
彼等の紡ぐ音色は甘やかで、それでいて心を閉じ込めてしまうような響きがある。
(「救出に支障を来たすかも知れませんし、彼等から倒しましょう」)
被弾して倒れてしまっては救助もままなるまい。大事なのは自衛だ。
レナータは改めて音響対策のイヤーマフを直すと、機械翼「カノン」の形状を保ったまま、天井近くへとその身を浮き上がらせた。
副腕形態のスラスタの一部を銃口に変え――放つ。
『――』
連続で放たれた念動熱線が幽霊達を貫き、ぶわりと形を乱して虚空へと掻き消していく。
アリシアを一瞥。他の猟兵と交戦しているのを確かめると、さらに発砲。ぐんと曲がる軌道が焼き切ったのは鳥籠の格子。
そこから脱出した子供達が見上げる中、レナータは彼等に軽く手を振りつつ、優しい微笑みを送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
【敵の戦闘能力】0倍
ルパート・ブラックスミス
愛機こと専用トライクに【騎乗】【ダッシュ】
捕らわれた子供の【救助活動】優先
鳥籠を【怪力】で破壊、助けた子供は愛機の後部座席に乗せつつ次へ。
敵UCに対してはUC【黒騎士が宣告する火刑】
薔薇の花弁を燃える鉛に変換(【武器落とし】)することで迎撃。
燃える鉛が周囲を照らせば敵UCの威力上昇を妨害できる(【地形の利用】)
相殺といかずとも救助の【時間稼ぎ】にはなる筈だ
敵の強化が目に見えて減衰したならば黄金魔剣を【投擲】
敵を【串刺し】にし【生命力吸収】、その生命力を魔剣が青炎に変換し【焼却】にかかる
貴様には月光より我が青炎が似合いだな。
血の一滴残らず呑み込んでくれよう。
魔空回廊に、重低音が響く。
吸血鬼アリシアが振り向けば、此方目指して一台の大型トライクが突き進んで来る。
『くっ!』
掌を向け血の弾丸を放つアリシア。だがそれを乗り手のルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は車体を倒して回避する。
そのまま疾風の如くアリシアの横を抜けると、スピードを緩めると同時に、手近な鳥籠をその黒鎧の腕で握り締めた。
「下がっていろ」
「わ、わ」
ルパートの怪力を前に、鉄格子が飴のように曲がっていく。
そして囚われていた少年少女数人を救助すると、たちまち愛機の広大快適な収納スペースへと格納してしまった。
『させないわ!』
「来い」
子供達を逃がしたルパートに追い付いたアリシアが、薔薇の花弁を放つ。触れた者の生命力と殺意を奪う、容赦の無い真紅の嵐だ。
だがそれは刹那空中で停止し、仄かな蒼い輝きを帯びた。
『青薔薇……!?』
否、最早それは薔薇ではなかった。青く燃える鉛に変換する呪詛を受け、ゴトゴトと石畳の内に落下したのだ。
生じた花嵐の隙間を抜くようにして、ルパートは黄金の魔剣をオブリビオンに向けて投擲する。
肩を貫通。苦悶の声を上げるアリシアの生命力を灯に、傷口から蒼炎が勢い良く燃え上がった。
「貴様には月光より我が青炎が似合いだな。血の一滴残らず呑み込んでくれよう」
紋章と魔空回廊の加護が失われた今、最早対等。
ルパートは改めて、深手を負ったアリシアと対峙するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
【敵の戦闘能力】0倍
栗花落・澪
こんなに幼い子達まで…
なんとしても助けてあげないとだね…
元鳥籠で飼われてた奴隷として思うところはあって
ちょっと全力で救助頑張りたいなと
疑問は別に無い
そういうものなんだろうと思ってるし
…諦めとも言うけど
念のため自身に【オーラ防御】を纏っておき
【紅色鎌鼬】発動、量産
更に【高速詠唱、多重詠唱】で【破魔】を伴う光魔法の【浄化】と凍結魔法の【属性攻撃】を上乗せ
極力行先妨害や凍結によるアリシアさんの行動阻害と
破魔を用いて楽師団の霊達への【なぎ払い】対処優先
マイクで拡声した【歌唱】に【催眠術】を乗せて
旋律のかき消し及び催眠による動きの鈍化にも使えないかな
その隙に一部の鎌を使って鳥籠の破壊、救出をしたい
魔空回廊での戦闘は佳境を迎えていた。
月の紋章の加護は失せたが、それでも吸血鬼アリシアは猟兵達と交戦を続けている。
回廊にずらりと並ぶのは、大きな鳥籠。その中には子供達が囚われている。
「こんなに幼い子達まで……」
思う所があるどころの話ではない。かつて栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は彼らとかなり近しい境遇にいたのだ。
姿を現した楽団の亡霊を前に怯える気力も無いのか、彼らは銀の檻に寄り掛かり、その秀麗な容貌を虚空へと向けていた。
痛ましい光景ではあるが……さりとて澪の胸中に疑問を引き起こすものでもない。悔恨すらのい。
鳥籠の鳥とはそういうものなのだ――ただそうした心模様だけが去来するのみだ。
それほどに澪にとって、余りに日常的な仕打ちであったから。
(「諦めとも言うけど」)
それが諦観と言って正しいものならば、猟兵数万といえど、澪以外に彼らの感情を理解できる者は稀だろう。
「……なんとしても助けてあげないとだね」
ちょっと全力で頑張りたい。そんな思いを胸に眦を決し、澪は詠唱を紡ぎ始める。
びゅう、と一陣の風。
辺りを舞い散る血薔薇が渦巻けば、それはいつしか吹雪く赤い花弁の嵐と化し、たちまちにして大量の鎌と化していく。
澪はその透き通った刃に、氷と光の力を宿していく。
『! 楽隊、あちらのお客様に披露してあげて』
アリシアの言葉と共に向けられた甘やかな旋律はしかし、事前に澪の張っていた防御オーラと、拡声マイクを通した優しい歌声に掻き消された。
途端に鈍る動き。催眠術、とアリシアが気付いた時には、澪は楽士団の中央へと踏み込んでいた。
「これでも鎌使いなんだよ、ねっ」
小さな体を中心にぐるり一閃。破魔の力を宿した円弧が周囲の霊を纏めて消し飛ばせば、冷気が余波となりアリシアの動きを封じ込める。
そして澪を追って飛翔する他の鎌が、辺りの鳥籠を次々切り裂き始めた。
『貴方達、待ちなさい……』
脱出する子供達を追おうとしたアリシア。
彼女が背中から刺すような敵意を感じたのは一瞬の事。
「安らかに」
澄んだ紅色の斬撃が吸血鬼の首元に吸い込まれ――切断。
降り注ぐ赤い雨を茫洋と眺めながら、澪は静かに祈りを捧げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
【敵の戦闘能力】0倍