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悪辣なる招聘

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●武の誉れ
 強くなければ生き残れない。
 この世は過酷であり、誰もが生きるだけでも大変な労苦を強いられる。

 けれど苦しいことばかりではない。

 強さに磨きをかけ、腕をあげ、天が認めるほどのものになったなら。
 その時は天から使いがくる。
 死力を尽くし努力したものを背に乗せ、努力に見合う場所へと連れて行ってくれる。

 だから強くなるべきなのだ。
 己の全てをかけて研鑽し、より高みを目指せ。
 そうすることには意味があるのだから――。

●忌まわしき罠
 険しい表情で猟兵たちを待っていたテス・ヘンドリクス(人間のクレリック・f04950)は、ダークセイヴァー世界の一地域に伝わる言い伝えについてをざっくり説明した。
「まあ尚武といえば尚武なんだけど。簡単に言うなら『すごい努力してすごい強くなったら、天からお迎えがくるからもっと強くなれ』みたいな」
 強さを至上とする土地柄であれば、珍しいことではないかに思える。
 しかし問題なのは、この言い伝えの『天からのお迎え』が現実であるという点だった。テスは予知としてそれを見ている。
「確かに天馬だったよ。馬車を曳いて空から下りてくる。でもね、オブリビオンなんだ」
 つまり事実は、血の滲むような努力を重ねて強さを極めた戦士が、天馬のオブリビオンが曳く馬車によっていずこかへ連れ去られているということなのだ。
「天馬を従わせる力がある存在なんて、あの世界じゃだいたい察しがつくよね」
 あの世界はヴァンパイアに異端の神と、不穏な存在は枚挙に暇がない。とんでもない罠であり誘拐事案だと言える。
 背後に何者がいるのかまでは見られなかったテスだが、天馬がどこへ向かうのかは見届けていた。問題の言い伝えがある地域の中心、切り立った険しい山のある一帯だ。
「ただね、その山は辺りの忌地になっていて、誰かが踏み込むと土地に悪いことが起こるって皆が信じてるんだ」
 だから麓には人を近づけないように関所が設けられている。
 門の前には二人以上の門番が常駐。門以外に何か、例えば高い柵などがあるわけではないが、常に兵士たちが付近をうろついている。
 だから見つからないようにこの関所を越えて、中に入らなければならない。
「麓から山の中腹まで一本道だったよ。中腹にあるちょうど馬車が降りられそうな、開けたところへ向かうのまでは視えたんだけど……」
 黒幕までは突き止められなかった、と悔しそうに呟く。
「転送先は関所の近くの野営地にするよ、道なりに行ったら北に関所が見えるから。裏で糸を引いているのが何にせよ、くれぐれも油断しないで行ってね」
 真剣な顔で念を押すと、テスは取り掛かる猟兵たちを募り始めた。


六堂ぱるな
 はじめまして、もしくはこんにちは。
 六堂ぱるなと申します。
 拙文をご覧下さいましてありがとうございます。

●状況
 ダークセイヴァー世界の事件となります。
 山は非常に急峻で針葉樹が密集して生えています。テスが視た山中の開けた場所へ向かうには、麓からの一本道を行くしかありません。

 関所を守る兵士たちに気づかれないようにするとか、騒ぎを起こしてどさくさですり抜けるとか、何らかの方法を講じて下さい。兵士たちは基本、純朴な人たちです。

 猟兵の皆さまが向かう頃合いに、馬車で連れられて来る戦士はいません。
 転送先の時刻は午後3時、陰鬱な曇天です。

 シナリオのここだけ出たいな、といった部分のみの参戦も大歓迎でございます。
 皆さまのご参戦をお待ちしております。
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第1章 冒険 『門を突破せよ!』

POW   :    騒ぎを起こしてどさくさ紛れに通り抜ける。

SPD   :    門番に気付かれないように隠れて通り抜ける。

WIZ   :    関係者になりすまして通り抜ける。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォートナム・メイソン
※アドリブ、悪乗り大歓迎

レー君(f04534)と参加

ボクも空飛ぶお馬さん見てみたい!
楽しい所に連れてってくれるのならボクも行ってみたいなー

■行動
こっそり通るの?通してってお願いしたら通してくれないの?

事前に隠れつつ門番の行動を【追跡】し、
【野生の勘】【第六感】勘頼りに通り抜けられるルートを見つける
門近くの人目に付かない場所を探す
【メカニック】【戦闘知識】【武器改造】【早業】[ジャンクホース]でロボットを作る
ロボットを門前で暴れさせて、物を壊す等門番などの注意を引く【破壊工作】
注意を引いてる内に探しておいたルートからこっそり通り抜ける

※【野生の勘】【第六感】【見切り】が働いたら本能に従い行動する


レガルタ・シャトーモーグ
フォム(f06179)と同行

天上への招聘か…
胡散臭いにも程があるな

静かに潜入するとしよう
まずは周囲の探索
関所付近以外から登れる場所が無いか探す

ワイヤーで【ロープワーク】して木の上へ登り、枝から枝へジャンプを繰り返して登れそうなら登ってみるか
小動物がいれば、登りやすいルートを知らないか【動物と話す】を試してみる
上手く行かなきゃ【破壊工作】で少し離れた所を爆破して視線を反らしてる間に駆け抜けるか
いずれにせよ、面倒事は御免だからな
出来るだけ隠密に動いて中腹へ向かう

中腹に馬車留めがあるなら、近くに屋敷でもあるのか
余裕があれば付近の捜索もしておこう


仁科・恭介
【POW】
騒ぎを起こして共闘者を通り抜けられるようにサポートすることを試みます。
運が良ければ自分も通り抜けることを試みます。

試みる騒ぎの方法ですが、野営地または関所までの道中でに鹿くらいの大きさの野生動物を確保しておき、猟師の振りをして関所近くで解体するというものです。

「あ、いつもお世話になっております。今日はこんなに捕れちゃってね。一部は持って帰るつもりだけど、こんだけあるからさ。一緒に食べていかんね」
と訛りのある声で徐に採れたての肉を焼き始め、兵士達にも振舞います。
ある程度注意が引けたらトイレに行くふりをし、たらふく食べた【肉】の効果で一気に山の中へ駆け込みます

※共闘、アドリブは歓迎です。


ユーフィ・バウム
純朴な方のお仕事を邪魔するのは心苦しいですが、
これも巨悪を討つためです。通らせていただきますね

ここは騒ぎを起こし、その間に通りぬけましょうか
同じ作戦を採る仲間がいれば、示し合わせて動きます
張り切っていきましょうね

門から少し離れた場所にて【力溜め】。力をチャージした上で
《グラウンドクラッシャー》!
斧の一撃でずしぃん、っと豪快に地面を叩き、
周辺地形を破壊します。
その轟音で門番の兵士さん達が
近づいてくるところで、素早く【ダッシュ】で
門のほうに戻り、そのまま通りぬけましょう

やむなく応援しなければならない場合でも、
無力化に止めますね

さて、裏で糸を引く何者か……果たしてどんな相手か、
見えた時が楽しみです!



 聳える山の目の前に厳めしく構えられた門。凶事を招くまいとする民たちで建てたものだというが、実際のところ彼らは、知らずに元凶の門前を守っていることになる。
 いずれにせよここを突破せねば実態はわからない。
「天上への招聘か……胡散臭いにも程があるな」
 唸るように呟くレガルタ・シャトーモーグ(屍魂の亡影・f04534)の傍らで、フォートナム・メイソン(ロケットわんこ・f06179)が目をきらきらさせて訴えた。
「ボクも空飛ぶお馬さん見てみたい! 楽しい所に連れてってくれるのならボクも行ってみたいなー」
 無邪気な彼女の反応は、恐らくこの世界で苦しみながら生きる人々の反応とそう変わりないだろう。かの天馬に連れ去られる人々は、世界の苦難から逃れんとして素直にも招きに応じたのだろうから。
「静かに潜入するとしよう」
 門が見える灌木の陰でそう結論づけたレガルタに、フォートナムが首を傾げる。
「こっそり通るの? 通してってお願いしたら通してくれないの?」
「通してくれないだろうな。彼らにとっては、良くないことが起きないと思える方が大事だろうからね」
 言い聞かせるように仁科・恭介(明日を届けるフードファイター・f14065)がフォートナムに説明し、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)も首肯した。
「私も同じように考えます。ここは騒ぎを起こし、その間に通りぬけましょうか」
「そうだな。まずは周辺を調べてくる」
 レガルタがフォートナムを伴い、灌木の陰を静かに移動していく。
 山は麓の際まで針葉樹で鬱蒼としているが、周辺は木立が切り拓かれていた。恐らく警備する上での見通しを優先したのだろう。
 小柄な二人組で物陰を縫うように近づくと、フォートナムは門番たちの動きを観察し追跡し始めた。事前の話どおりに山の上方へ向かう道は一つだけらしく、木立が込み入った足場の悪い急峻な山を、道以外のルートで登るには苦労するだろう。
 一方のレガルタも関所以外の登攀ルートを探してみたが、困難だという結論に至った。木立を見上げて探し回り、小さなイタチを見つけて話しかける。
「山の中腹へ向かう登りやすいルートを知らないか?」
『山の上はすごく怖いのがたくさんいるから、ボクら近づかないよ。猪たちが通る道なら教えてあげられるけど』
「それで構わん」
 イタチの案内で道を確認したレガルタは仲間の元へ戻った。獣道の説明をしているところへフォートナムも戻ってくる。
「ねえねえ、なんかすごく細いけど通れそうな道を見つけたよ! あと、門番の人たちがぐるっと回るルートも覚えた!」
「あとは彼らの注意を引くだけだな。それは私がやれそうだ」
 恭介の言葉にレガルタがなんとも難しい顔で頷いた。正直なところ自分とフォートナムだけなら、木の上を伝って行けなくもない。
「それは助かる。いずれにせよ、面倒事は御免だからな」
「張り切っていきましょうね」
 陽動を買って出るつもりのユーフィが笑顔で仲間を鼓舞した。


 門へ近づいていくと、門番たちの顔が素直にも険しくなるのが見て取れた。肩に担いだ鹿を関所の近くで下ろして、恭介はおもむろに解体を始める。すると彼らの顔つきが警戒から訝しげなものに変わった。
「なんだ、猟師か?」
「あ、いつもお世話になっております。今日はこんなに捕れちゃってね」
 訛りのある声をつくり朗らかに話しかける。突破の隙を作るためにあらかじめ鹿を確保しておいて正解だった。手を休めず捌きながら柔和な顔で言い募る。
「一部は持って帰るつもりだけど、こんだけあるからさ。一緒に食べていかんね」
「そうか? いや助かる、実は腹が減っていたんだ。皆も生活が楽でないんでな」
 一番偉いらしい中年男が嬉しそうに言った。誰もが持ってくる弁当もないのだろう。
 恭介が肉を火にかけると、すぐに辺りに食欲をそそる匂いが漂い始めた。手の空いている男たちがすぐに無骨な炙り肉の周りに集まる。ほどよく火の通ったものを見定めた恭介は、口いっぱいに肉を頬張って頷いた。
「ん、いい按配だあ」
「旨そうだな!」
「俺の分も残しておいてくれよ!」
 続いて肉を食べ始めた仲間へ当番中の門番が声をあげる。

「すまんけど、厠はどこかね?」
「おう、詰所の裏にあるから行ったらいい」
 肉を頬張りながら門番が門の裏側を示した。もはや恭介への警戒はないに等しい。開けて貰った門の中へ入りながら、ちらりと後ろを振り返る――それが合図だった。
「じゃあ始めるねー!」
 灌木の陰でフォートナムが【ガジェット:ジャンクホース369】を起動する。場所は関所の目の前。辺りの岩や捨てられていた棒なども取りこんだジャンクパーツが、2メートルものロボとなって動き始めた。
「うわっ、なんだ?!」
「こっちに来る! おいどうする、これ?!」
 のんびり肉を食べていた男たちが混乱した声をあげた。ロボットは門へ近づくと、大きな腕を振り上げて門扉をがつんと殴りつける。門が軋む音を立てて揺れて、門の内外の男たちが大慌てでロボットを取り囲んだ。
「い、生き物じゃねえだろ、壊せ! 止めないと門が壊れちまう!」
 中年男の指示で男たちがロボットに群がった。棍棒や槍でやたらめったら打つわ突くわと大騒ぎになる。その様子を見ると気の毒には思ったが、ユーフィも行動を開始した。
「純朴な方のお仕事を邪魔するのは心苦しいですが、これも巨悪を討つためです。通らせていただきますね」
 門から少し離れたぎりぎり見えない辺りで、力を溜めて愛用の斧を思い切り地面に叩きつける。【グラウンドクラッシャー】によってユーフィを中心に、硬い地面がすり鉢状にヒビが入り、砕け散った。
「うわわわ、またなんか揺れたぞ! あっちだ!」
「二人で様子を見に行け!」
 喚き声を聞いたユーフィとレガルタ、フォートナムは走って獣道へと駆けこんだ。門の前のロボットに陥没した地面、双方に人手を割いた男たちは気付かない。
 獣道はさすがに名の通りで通りやすいとは言えなかったが、中腹まで行けるなら贅沢は言っていられない。なにより、門番たちに手をあげずに済んだことのほうがユーフィにはありがたかった。多少枝葉が当たるのは気にせず、ダッシュで獣道を駆けあがりながら不敵な笑みを浮かべる。
「さて、裏で糸を引く何者か……果たしてどんな相手か、見えた時が楽しみです!」
「俺は付近の偵察をしてくる」
 山の中腹に馬車留めがあるなら、近くに屋敷でもあるのか、という疑念がある。仲間に言い置いてレガルタは樹上にあがった。
「いってらっしゃーい!」
 無邪気なフォートナムの声援を背に、木陰を伝ってロープを駆使して人目につかないよう山の中腹へ向かっていく。
 そしてもちろん、騒ぎに乗じて恭介も門を後にしていた。中腹へ向かう道なりに、たらふく食べた肉を力に変えて一気に駆けていく。誰に見咎められることもなく、あっという間に木立の向こうへ消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楠瀬・亜夜
凄惨な世界に希望の灯を……と
さて、今日も世界を巡らせて頂きましょう

(言い伝えだなんて好奇心を揺さぶってくれるけど
真相がオブリビオンと判明しているのは残念……)

道は一本道で周囲は急峻……となると他の道は「上」だけですかね
木々が密集しているならフック付きワイヤーで木々を伝って門を
超えられる筈、曇天であるならなお好都合、葉の影で姿は見えにくく
なります。
問題は音……ですが所要時間を短くできればある程度は誤魔化しが
効きます。どのみち要は門を突破できればいいんです、うむ。【SPD】

もし気が付かれたら得意の【逃げ足】を駆使してさっさと先に進みます。



 ちょうどこの頃、山の周辺を偵察して道以外をあがるのが困難だと確認した楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)も、門の近くまで来ていた。
「凄惨な世界に希望の灯を……と。さて、今日も世界を巡らせて頂きましょう」
 まさに世界に乏しいものこそ希望であり、希望をもって生きるものを釣りあげようというが如き事件に興味があってのことだ。
 真実を確かめるには、山を登って行くしかない。
「道は一本道で周囲は急峻……となると他の道は「上」だけですかね」
 実際、木には事欠かない。分け入るのが困難なほどに密生している針葉樹は、技術があれば伝っていくのは難しくないだろう。重く雲が垂れこめた曇天も好都合というものだ。
 あとの懸念は音、というところだったが。
 門前にはスクラップや岩、棒でできたロボットが大暴れしていて、門番の男たちも怒号を交わしている最中。多少の音などかき消えてしまうだろう。
 あの様子、他の猟兵が仕掛けた陽動に間違いない。
「要は門を突破できればいいんです、うむ。ありがたく乗りましょう」
 後は所要時間を短くすれば確実だ。
 門の向こうの木へロープの先につけたフックを引っ掛けて木へ登ると、騒ぎをよそに木を伝って突破する。なるべく葉の陰を伝って男たちの目につかぬよう移動すると、難なく道へと降りて駆けだした。
 さて、この先に何があるのか。しかし本音のところを言うと。
(「言い伝えだなんて好奇心を揺さぶってくれるけど、真相がオブリビオンと判明しているのは残念……」)
 いささか興醒めの心持ちであることも事実であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皐月・灯
ふうん……確かにな。この世界じゃ、強さは寄る辺にゃ違いねー。
……最後の最後に救ってもらうために、ってのが気に食わねーけど。

オレは……そうだな。
「山の齎す災いを鎮めに来た魔術師」ってことで通すぜ。
魔術師ってのは本当だしな。

……言い張るだけじゃ信じられねーってんなら、見せてやりゃあいい。
出力を絞って《焼尽ス炎舌》だ。
コイツで石を空中に打ち上げてやりゃ、
花火とまではいかねーが、門番を信じ込ませるにゃ十分な派手さだろ。
周りに余計な被害も出さずに済む。
……別に、事を荒立てるのは無駄ってだけだけどな。

ああ、ついでだ。
オレのほかに似たようなヤツが来るから通せ、とだけ言っとくぜ。
……頭数は多い方がいいだろ。



 件の言い伝えが、希望の少ない土地での最後の望みになっているのは事実だろう。だとしても、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)としてはいまいち納得がいかないところであった。
「ふうん……確かにな。この世界じゃ、強さは寄る辺にゃ違いねー。……最後の最後に救ってもらうために、ってのが気に食わねーけど」
 呟きながら、堂々と門へ向かって歩いていく。門の周りでは数人の男たちがあたふたと動き回っていて、灯に気付くと集まって取り囲んだ。
「この先は忌地だ! 誰も通さ……」
「オレは山の齎す災いを鎮めに来た魔術師だ。通して貰うぜ」
 門番を務める男たちが顔色を変える。困惑したように門の前に仁王立ちしている中年男へ男たちの視線が集まった。意見を代表するように中年男が唸り声をあげる。
「魔術師ったって子供じゃねえか。証拠はあんのか!」
 案の定の要求に灯は息を吐いた。事を荒立てるのは無駄だし、周りに余計な被害も出さずに済む。手近な石を拾うとよく聞こえるように詠唱した。
「アザレア・プロトコル2番――《焼尽ス炎舌》!」
 灯の拳が紅蓮の炎をまとう。途端に男たちが静まり返った。
 放った石を拳が打つと石も一瞬で業火に包まれて、炎の尾を引いて天高く打ちあがる。出力を絞った【焼尽ス炎舌】でも男たちの度肝を抜くには十二分であり。
「ほ、本当に……?」
「迷うことじゃねえよ、今までこんな騒ぎが起きたこたあないんだ。災いの前触れだったらどうすんだよ?!」
 灯が来るまでに立て続けに起きた騒動で不安にかられた男たちが言い合うと、とうとう責任者らしい中年男が灯に頼みこんだ。
「……じゃあ、その、よろしく頼む」
 軋む音をたてて門扉が開かれた。門をくぐった灯は、ふと振り返る。
「ああ、ついでだ。似たようなヤツが他にも来るだろうから、そいつも通せ」
「他にも魔術師がいるのか?」
「災いが怖いんだろ」
 頭数は多いほうがいいだろう。いちいち納得させるのに手間暇かけるのも難ありだ。
 かくて易々と門を突破し、灯も道を辿って中腹へと向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『首無しの天馬』

POW   :    突進
【高速移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突進】で攻撃する。
SPD   :    幽鬼の馬車
自身の身長の2倍の【馬車】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
WIZ   :    飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●天駆ける魔
 険しい山の中腹で木立がないその場所は、空からならよく見えることだろう。しかし崖の上にあって麓からは見えないようになっていた。唯一の山道を辿ってきた者はそうしないうちに、獣道から大回りしてきた者もほどなくそこへ到達する。

 ぽかりと開けた広場には、黒い天馬が群れをなしていた。
 立派な馬体を覆う毛皮も、尻尾の毛も、大きな翼までも艶やかな漆黒。ただ異様なのは、ついているべき首がないということだった。まるでもぎ取られたように頭は失われ、青白い炎のようなものを帯びている。
 ここに戦士を乗せてくると思われる黒塗りの馬車が数両、広場の端に置いてあり、そこから細い道が更に上へと続いていた。道の先には壮麗な造りの石階段。そして、山中には似つかわしくない荘厳な屋敷がある。
 だが屋敷へ行くまでに、首なしの天馬に気づかれずに行くことはできない。なにしろ数は十数頭、屋敷を守護するように数頭が時折飛んでもいる。
 ここで黒い天馬を駆逐しなくてはならない。
レガルタ・シャトーモーグ
成る程、頭がなくてもバカでは無いという事か
空中戦なら上等だ
飛べるのが貴様らだけだと思うなよ

一気に羽ばたいて空中へ
小柄な体格を利用して、馬達の周りを飛び回ったり、馬に直接飛び乗って、他の馬が突進してきたら、追突直前に【見切り】で回避して馬同士の自滅を狙ってみる
弱ってる馬にはすれ違いざまに【暗殺】
頸が無いなら、腹をかっ捌いてやればいいか
範囲内に馬があつまってきたら「鈴蘭の嵐」で攻撃

フォムが下からワイヤーを飛ばしたらキャッチして、そのまま遠心力で飛ばすか、落ちそうになってたら回収
あいつ身軽だし、なんとかなるだろ


フォートナム・メイソン
※アドリブ、悪乗り大歓迎

わーい!お馬さんいっぱい!
空も飛べるなんてすごいなー!ボクも欲しいなー!
よーし、ボクも飛んでみるね!

■行動
[スパイダーウェブ]【ロープワーク】で空飛ぶ馬にワイヤーを引っ掛けて空中への移動を行う
一箇所に留まらず馬に乗ったり・引っ張ったりして、敵同士の攻撃を誘発&自滅&撹乱を誘う
空中での細かい移動は【武器改造】【属性攻撃】でハンマーのブースターを使って調整していく

撹乱中に敵に隙が出来たら【怪力】【力溜め】【鎧砕き】武器でぶん殴っていく
空飛んでいる仲間が居たらワイヤー伸ばして掴んでもらい、ついでに敵陣に投げてもらう

※【野生の勘】【第六感】【見切り】が働いたら本能に従い行動する


仁科・恭介
「どうもあの天馬が気になるんだよね。今まで連れていかれた戦士達の成れの果てだったら…」
と、【目立たない】ように気を付けつつ、天馬の動きを観察します。
上からの偵察もありそうなのでいつも以上に。

近くに居る猟兵がいれば【携帯食料】を渡しながら話しかけます。
「あの数だから【罠】を仕掛けたら一匹くらいは引っかかるんじゃないかな」
とロープで足を引っかけるブービートラップを提案します。
「飛んじゃったらあれだけどね。じゃ、囮役はやるかな」

【残像】を使いつつ派手に馬を罠に誘導します。
上手く罠にかかり転んだら横から背中に飛び乗り攻撃します。
なお、絶対に馬の後ろには立ちません

※共闘、アドリブ歓迎です


ユーフィ・バウム
屋敷へ行くには、
この天馬を倒していかないといけませんね
空中戦はいずれ覚えるつもりですが、今はできることを

空は飛べないので、飛行出来る仲間と動きを合わせ攻撃
飛んでいる相手との戦いは今までとは勝手が違うと思うので、
けして突出せず連携を意識

また、【力溜め】攻撃の機会を窺う
敵が高速移動から突進してきた時は好機
【見切り】、よく引きつけすんでで回避しつつ
カウンターで《トランスバスター》!
全力の拳を叩き込む

避けきれなくても、【オーラ防御】で
鍛え上げたボディと、オーラで耐えてみせますよ!

全て片付けたなら、汗を拭い屋敷の中へ
ダメージもあるかもしれませんが
強敵との戦いの予感にどきどきしますね

【アドリブ・連携歓迎】


楠瀬・亜夜
なるほどなるほど、随分と禍々しいペガサスだこと……
――導きの天馬は降臨せず、強硬突破させて頂きましょう

ここは他の猟兵達と協力して事にあたった方が確実ですね
まずは援護させて頂きましょう
フック付きワイヤーで近くの木の上部へと上がり
見渡しのいい場所から【クイックドロウ】を駆使した銃撃により
他の猟兵達の援護を行っていきます。

木上での援護も敵の攻撃によりそう長くは行えないでしょうし
頃合いを見て【knife vision】により多数のナイフを展開
武器を銃からナイフへ切り替え敵へ上空からの急襲
一気に接近戦で攻め立てていきましょう



 それぞれの方法でやってきた猟兵たちは、首なしの天馬を前に集結することになった。
数もさることながら、広場を駆けるもの、屋敷への階段を助走に空を舞うもの、見事なまでにバラバラなのは図ってのことか。真っ直ぐ屋敷へ向かえないのは一目瞭然だ。
「わーい! お馬さんいっぱい! 空も飛べるなんてすごいなー! ボクも欲しいなー!」
 わくわくした顔で物陰から身を乗り出しそうなフォートナムの襟首を掴み、レガルタが唸るように首を振った。
「成る程、頭がなくてもバカでは無いという事か」
「なるほどなるほど、随分と禍々しいペガサスだこと……」
 並んで天を見上げているのは追いついてきた亜夜である。翼はないにせよ戦う術はある、が、数が多すぎる。
「屋敷へ行くには、この天馬を倒していかないといけませんね」
 亜夜の合流を喜んで迎え入れたユーフィも難しい顔だった。空中戦はいずれ覚えるつもりだが、今は敵に空を飛ばれるのが一番の難点。ゆえに仲間との連携は必須のところなのである。
「どうもあの天馬が気になるんだよね。今まで連れていかれた戦士達の成れの果てだったら……」
 草陰に隠れて慎重に近づく恭介が呟く。もちろん空を飛ぶ天馬の偵察に引っかからないよう、目立たないよう細心の注意を払っての観察だ。
 彼の配る携帯食料を受け取って口に運びながら、ユーフィが首を傾げた。
「そんな感じがありますか? 何か感じるところが……」
「……いや。幸いというか、人が成ったという感じはないかな。獣らしく見える」
 安堵したように呟いて、恭介は隣で目をきらきらさせるフォートナムにも携帯食料を手渡すと話を続けた。
「で、あの数だから罠を仕掛けたら一匹くらいは引っかかるんじゃないかな。ロープで足を引っ掛ける罠だから、飛んじゃったらあれだけどね」
「いいですね。飛行出来る方と合わせて奇襲しましょう」
「空中戦なら上等だ」
 首肯するユーフィに目だけで問われたレガルタが、不敵な笑みを浮かべてみせる。小回りのきく小柄な体格もあって撹乱出来る自信はあった。置いて行かれると思ったのか、フォートナムもぴょんぴょこ跳ねて主張する。
「よーし、ボクも飛んでみるね!」
 方針は決まったようだ。自分の分担が援護射撃から始めて接近戦、と踏んだ亜夜は、微笑んで頷いた。
「では、まずは援護させて頂きましょう」

 広場をうろつく天馬たちの前に、迷い込んだように突然に恭介がぽんと姿を現した。
「じゃ、囮役はやるかな」
 首もないのに天馬の悉くが彼に反応している。そして見るまに、姿はかすんでブレた。申し合わせたように天馬が彼へ向かって殺到する。押し包むような包囲から逃れられない――かに見えたが、先頭の天馬に撥ねられそうになった彼の姿がかすんで消える。残像を利用して認識を巧みにずらし、恭介はトラップへ天馬たちを誘導していった。
 草陰に張り渡されたロープに足をとられて群れの前方にいた二頭がまろび、仲間に足をとられて更に二頭が地に転がる。
 機を逃さず転がった体に文字通り馬乗りで、恭介は刀を深く突き入れた。天馬といえど心臓か、それに類するものの致傷は生命を落とすものらしい。強烈な後ろ蹴りを食らわないよう天馬の後ろは避け、痙攣する馬体を蹴って別の一体へ上段から斬りつける。
 その恭介の背後から棹立ちの天馬が蹄を食らわせようとする瞬間、しっかり力を溜めたユーフィが胸板めがけて拳撃を叩きこんだ。骨の砕ける手応えと声なきいななき。横ざまにどうと倒れるのも待たず、青い瞳を煌めかせて迫りくる天馬へ向き直る。
 今回は突出は禁物だ。空を飛ぶ相手との戦いは今までとは勝手が違う。自身も恭介も孤立することがないよう、戦線維持が重要だ。バトルアックスを一閃して間合いには近すぎる天馬を退かせる。
 入り乱れて地を踏みならす天馬たちのさまは、蹂躙できない苛立ちを感じさせた。
 確かにあれは天からの遣いという風情ではない。
「――導きの天馬は降臨せず、強硬突破させて頂きましょう」
 フック付のワイヤーで針葉樹のてっぺんにあがった亜夜の手が、目にも止まらぬ速さで動いた。神速で抜いた愛用の拳銃の引鉄を、やはり神速でひく。重い手応えと共に送り出された弾丸は、二人を追う天馬たちへしたたか銃痕を穿った。
 声にならない苦悶の気配。大きく足並みを乱した天馬へ振り返りざま、ユーフィはカウンター気味に渾身の拳を捻じこむ。重い蹄の一撃は鍛え上げた身体とオーラで耐えきって、誰が見ても豊満な肉体から繰り出された【トランスバスター】がお返しに天馬を内側から破壊した。
 そして頭上から二人を襲わんと宙を駆けてきた天馬たちのただなかへ、不意に小柄な影が躍りこんだ。予期せぬ闖入に群れが大きく乱れる。
「飛べるのが貴様らだけだと思うなよ」
 面白くもなさそうな表情のレガルタは力強く羽ばたくと、最後尾にいた天馬の背に飛び乗った。他の天馬が体当たりを仕掛けてくるタイミングを見切って飛び立ち、もつれあって落ちていく三頭を尻目に別の天馬の腹をすれ違いざまにナイフで裂く。
 レガルタを追いこもうとする天馬めがけて、フォートナムが【スパイダーウェブ051】を放った。ワイヤーを操り跳ねるように宙を舞うとハンマーのブースターを点火する。
「びゅーん!」
 スピードに乗ったフォートナムは楽しげな声をあげ、赤熱するハンマーを天馬の胴へ叩きつけた。体を拉げさせた天馬が墜落して動かなくなる。
「レーくん、いくよー!」
「おう」
 可視ぎりぎりのワイヤーをキャッチしたレガルタは、天馬に劣らぬ漆黒の翼を力強くはばたかせた。数度天馬の突進を食らいながらも方向を維持し、勢いをつけてフォートナムを遠心力で空高く舞わせ、急制動で投擲。
 反動で弧を描いて天馬の更に頭上から落ちかかりながら、フォートナムは小柄な身体からは想像を絶する力をハンマーに乗せた。
「ドーンっ!」
 ブースターの加速も乗ったハンマーは飛行する天馬の背骨を折り、その下にいた天馬二頭も巻き込むと、三頭まとめて叩き落とし鮮やかに地面へめり込ませた。
 地へと落ちていくフォートナムとその上を舞うレガルタめがけ、天馬が殺到してくる。身軽なフォートナムに怪我の心配がないことも、天馬のことも彼は計算済みだった。纏う闇色のマントが翻ると袖口や裾から白銀の閃きがちらつく。
 曇天にきらめく白い花びらはよく映えた。刃が変じた花びらは渦をまく風にのり、天馬たちの体を切り裂いていく。
 地に墜落していった天馬たちを待ち受けていたのは、木の梢から予測のつかない軌跡で降り注ぐナイフの雨だった。
「夢か現か幻か、その身で味わって頂きましょう」
 25本ものナイフを操る亜夜の【knife vision】から逃れる術はない。避けられないと悟った天馬の召喚した巨大な馬車が疾走してきたが、彼我のの距離を保っていた亜夜は回避した。
 勢い余って木の上から落下こそしたが、彼女めがけて体当たりを仕掛けようとする天馬を恭介が逆袈裟気味の斬撃で斬り捨て、立ち上がろうともがく馬体にユーフィが拳を打ちこんでとどめとした。
「こちらは終わり、でしょうか」
「ほぼ片付いたようだね」
 無事着地した亜夜に、恭介が刀を鞘へと戻しながら辺りを見回し頷きを返す。
「なんだかどきどきしますね」
 頬を伝った汗を拭い、ユーフィは笑う。無傷とはいかなかったが、それよりも強敵が現れる予感に胸が躍っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

皐月・灯
首無し馬……コシュタ・バワーみてーなもんか。
……馬は大事な家畜だが、てめーらにゃ容赦はいらねーな。

オレに翼はねー。飛べる相手ってのは厄介だが……。
「突進」に「馬車」に「飛翔」……
コイツら、攻撃時には「接近する必要がある」んじゃねーか?
だとしたら、オレにも十分相手ができるぜ。

つっても、やることは単純だ。
オレを狙って近づいてきたヤツの攻撃を【見切り】、
【カウンター】で《猛ル一角》を叩き込むだけだからな。

単純だろ?
シンプルにブッ飛ばしてやるよ、オレのアザレア・プロトコルでな!

しかし、こいつらの多さ……。
これだけ数が居るってことは、そんだけ多くを攫ってきたってことか。
……ふん。胸糞悪い真似しやがるぜ。


美星・アイナ
見れば見るほど醜悪な姿ね(溜息)
こんな奴を従える黒幕の顔、拝んで見たいものだわ

ペンダントに触れてシフトする人格は
冷徹なるキリングドール
『さっさと道、開けなさいな』

レガリアスシューズ起動し加速スピードを乗せた飛び蹴りから【踏み付け】

歌うようにユーベルコード詠唱
召喚した赤水晶の欠片で【だまし討ち】し
その間に黒剣を大鎌形態に変化させて【2回攻撃】の【なぎ払い】を打ち込む
赤水晶の欠片を合体させて生み出すは
炎熱まとった斬馬刀、大鎌でつけた【傷口をえぐる】様に
天馬を袈裟斬りに

さて、屋敷の主さん
高みの見物は止めにして
そろそろ出てきなさいな

御用があるのはあんたの方よ(冷笑)

アドリブ、他の猟兵との連携可能



 囮を追って雪崩をうつように動き始めた天馬たちを、広場の反対側にいた灯は底冷えのする瞳で見つめていた。
「首無し馬……コシュタ・バワーみてーなもんか。……馬は大事な家畜だが、てめーらにゃ容赦はいらねーな」
 首無し騎士の馬車を曳く馬の伝説が脳裏をよぎる。この世界では天に召される戦士を乗せるとでも言うのか。否、恐らくは。
 見るからにまっとうな生命でないことは、美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)にも見てとれた。
「見れば見るほど醜悪な姿ね」
 黒と赤の鮮やかなゴスパン衣装をまとう若さに似合わぬ、深いため息をつく。
「こんな奴を従える黒幕の顔、拝んで見たいものだわ」
 どうやらそれは間近にいるようだ。後方で囮へ殺到していく群れとは別に、屋敷と二人の間に七頭もの天馬が控えていた。翼のない二人にとって楽ではないのは確かだ。
 とはいえ灯は既に天馬の攻撃を見定めていた。完全な遠距離攻撃はない。近づいてくるなら充分に相手どる自信はある。
「正解かもよ。――『さっさと道、開けなさいな』」
 胸元のペンダントに触れたアイナの人格が切り替わる。星型のスタッズを輝かせるインラインスケートでスピードに乗って、疾走してくる天馬の鼻先で踏み切ると宙で一転、天馬の背骨を軋ませ降り立った。
「アザレア・プロトコル1番――《猛ル一角》!」
 宙からの天馬の体当たりを見切り、皮一枚で躱した灯の拳が傲然と唸りをあげた。術式をまとった拳打は天馬の体をいびつに歪め、骨の折れる音を響かせて地面に捩じ伏せる。
「シンプルにブッ飛ばしてやるよ、オレのアザレア・プロトコルでな!」
 痙攣した天馬が動きを止め、地を駆ける天馬が二頭、灯へと向かう。
 アイナは狂ったように暴れ回る天馬の背を軽々と蹴り、歌うように詠唱を紡いだ。
「地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え……行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん!」
 彼女の周りで炎が赤水晶のように次々と凝っていく間に、携えるDeathBladeを大鎌へ変えて突進してくる天馬を二頭まとめて薙ぎ払った。
「さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!」
 傷から青白い炎を噴きだしもがく馬体へ、赤水晶の欠片と化した炎が突き刺さる。
 巨大な馬車を曳く天馬をいなして跳ねた灯は、次々と屍を晒していく辺りの天馬へ視線を走らせた。
(「しかし、こいつらの多さ……。これだけ数が居るってことは、そんだけ多くを攫ってきたってことか」)
 天からの招きと信じ、或いは救いと信じて、何も知らず連れ去られてきた者たち。
 橙と薄青の瞳に苛烈な光が宿る。
「……ふん。胸糞悪い真似しやがるぜ」
 吐き捨てるように呟いた拳に圧倒的な無形の術式がこもった。既に術式はこの地の魔力を賦活し、天馬と馬車に真正面から拳を叩きつけた。完全なカウンターで吹っ飛んだ天馬がもう一頭を巻き込み、地響きをたてて転がっていく。
 赤水晶で斬馬刀を生み出したアイナが残る一頭を袈裟斬りに斬って捨てるのと、灯の拳撃がまだ息のあった天馬にトドメをさしたのは同時だった。
「さて、屋敷の主さん。高みの見物は止めにして、そろそろ出てきなさいな」
 斬馬刀の刃にまといつく青白い炎を振り飛ばし、アイナは屋敷へ向き直った。
「御用があるのはあんたの方よ」
 冷笑を浮かべた彼女の眼前で、軋む音をたててゆっくりと屋敷の扉が開きつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『残影卿・アシェリーラ』

POW   :    我が終生の敵手の力を見よ
【刀身に封じられた『太陽の炎』を纏った剣 】が命中した対象を燃やす。放たれた【吸血鬼を浄化する太陽の力を秘めた】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    我は既に死者である故に
【オブリビオンとして復活させた自分の分身 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    我が闘争の果に
【オブリビオンとなる前からの戦闘経験により】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はランゼ・アルヴィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●力を収奪する魔
 漂う不吉な気配が肌をかすかに粟立たせる。
 厳めしく壮麗に造られた屋敷の主は、悠然とした足取りで階段を下りてきた。己を高めるためなら他者など生贄のごとく扱う、強者ゆえの傲慢は全身に顕れる。
 現にこの場に集った猟兵たちを前にして、その男――残影卿・アシェリーラはかすかに眉を寄せて不快の意を漂わせていた。
『騒々しい。瑣末な力に溺れ、我が遣いを害して満足か』
 広場へ降り立つ彼の見た目だけを言うならば、戦士としては華奢な方だ。だがその四肢が有する異様な力を、気配をもって猟兵たちは推し量ることができた。
「……だが、ふむ。地を這いずる脆弱な下郎共とは違うようだ。己を鍛えあげた強者の血こそ、我が血肉となるに相応しい」

 欲するものは力あるものの血。
 だからこそ招き寄せ、だからこそ倒して血を奪う。
 強者を尊んでいるが故に、この死の招きはやってくる。

「来るがよい。其方らの血をもって我は更なる力を得よう!」
 背に負っているのは皮肉にも吸血鬼殺しの大剣。時が止まった麗貌で猟兵たちを一瞥、血の気の薄い唇の端を吊り上げた。
美星・アイナ
何が粗末だ
他人から簒奪した力
それは己の真なる力に非ず!

ペンダントに触れ破邪顕正の刃持つ天の御使いに人格シフト
同時に真の姿を解放
『貴様の糧にされ朽ちた者達の魂、返して貰おうか!』

羽ばたいて【地形の利用】を駆使し鋼糸を放つ
【ロープワーク】の要領で脚、腕、首に巻き付け
同時にユーベルコードを詠唱
残影卿の糧にされた強者達に呼びかけるように歌う

でもそれは【だまし討ち】
コード発動に合わせ大鎌形態の黒剣を構え
【2回攻撃】で【なぎ払い】【傷口をえぐる】

残影卿の攻撃は【見切り】【激痛耐性】で耐える

全て終わった後歌うのは鎮魂歌
残影卿の犠牲となった者達が
皆安らかに眠れる様に

真の姿:三対の翼に純白の甲冑を纏った戦乙女


ユーフィ・バウム
あなたがこの屋敷の主ですね?
この力、気配……!
これは、闘うのが楽しくなりそうです!

《真の姿:蒼き鷹》を解放!
お嬢様口調に青い髪と白い肌。レスラーとして相手をしましょう
豪快なフィニッシュを見せてあげますわ

敵の剣と炎の一撃を、致命となりそうな一撃は
【見切り】つつも、基本は【オーラ防御】での受けで耐える
耐えつつ仲間の攻撃にあわせ、【力溜め】からの攻撃を
重ねますわ
やはり強敵と闘うのは、楽しい時間!存分に味わいましょう

攻防の中、相手の隙を見ては【ダッシュ】で懐に飛び込み、
【捨て身の一撃】での《トランスバスター》!
放たれる拳技は、豪快な投げとして
「ブルーバード・ドライバーッ!」

※アドリブ・連携・苦戦等歓迎


レガルタ・シャトーモーグ
やっと黒幕のお出ましか…
御託はいい、さっさとやるぞ

背中は任せる、と伝え
「リザレクト・オブリビオン」で召喚した傀儡をフォムのタイミングに合わせて攻撃させる
どんな達人も数の暴力の前には無力だろう
どうせ替えの効く傀儡だ
仲間への被弾を傀儡に肩代わりさせ、擦り切れるまで使い潰せばいい

被弾して解除したら【カウンター】で【鎧無視攻撃】
ついでに【毒】と【呪詛】のオマケも付けてやる
そのまま追い込んで【暗殺】してやる

強者を望むって事は、心底では貴様は己自身を強者とは認めてないんじゃないか?
まったく、笑わせるな…


フォートナム・メイソン
あ、あしぇ…あしぇりらー?さん?
ボクはフォムだよ!よろしくね!

■行動
レー君を守ればいいんだね!
[スパイダーウェブ]をレー君に取り付けて【ロープワーク】と【戦闘知識】で、
攻撃に巻きこまれないよう遠距離から操作して動かしていくよ

ボクは傀儡ちゃん?と一緒に前線に出るね
連携しながら【怪力】【鎧砕き】ハンマーで殴っていくよ
[スパイダーウェブ]【ロープワーク】【早業】【怪力】で傀儡の武器を操作して敵に飛ばしたり、
逆に敵の腕に引っ掛けて動きも制限したりするね……1本じゃ足りないなら何百本も束ねればいいね!

レー君が危なくなったら全力で阻止するよ

※【野生の勘】【戦闘知識】【第六感】が働いたら本能に従い行動する


仁科・恭介
【POW】で攻撃。

天馬の死体位置を把握し、【目立たない】を使用して相手の出方を観察します。
天馬の死体を確認したのは攻撃時に発生する不慮の事故と死角からの奇襲に使うためです。
あと、目つぶしため天馬の血を集めておきます。(【罠使い】)

「なるほど。あの大剣は厄介そうだね」と認識した上で
「どうも。アシェリーラさんでよろしかったですか。仁科です。」と【礼儀作法】で丁寧に挨拶します。

その上で「相手が強いのなら使えるものを全て使って戦うのが礼儀」と、
相手の攻撃は【残像】でよけつつ天馬の死体へ誘導、天馬の死体と【見つからない】を使用した奇襲攻撃、天馬の血を使用した目つぶしを試みます。

※アドリブ、共闘は歓迎です


楠瀬・亜夜
数多の吸血鬼伝承の鏡のような相手ですね
まぁ非力な者相手に暴虐の限りを尽くすよりかは
多少はマシなのかもしれませんが。
他者を道具としか見ないその傲慢――さぁ、裁きの時間です


強者を求めるその姿勢、相当な手練れであるのは間違いないでしょう
まずは【クイックドロウ】による銃撃で牽制

一旦距離を取り【shadow hearts】で影蝙蝠を召喚し
ナイフを片手に共に【ダッシュ】で一気に敵まで駆け抜けます
敵の分身が出現したら影蝙蝠と二手に分かれて
私が本体の方へ向かいましょう。

単調な攻撃では恐らく攻撃は届かない
なら壁蹴りから跳躍し予想しずらい軌道から攻撃したり
他猟兵の攻撃を支援の為、気を逸らす等の行動を狙いましょう


皐月・灯
なるほどな。
強者の血がお好みだから、つまんねー言い伝えを利用してたってか。

……どうせ吸うなら強えーヤツからってのはいい。
だが、やり口は気に食わねーな。

「救われる為」ってのは頷けねーけどよ。
攫われたってことは、連中の努力は本物だったってことだろ。
……てめーをブチ砕くにゃ、十分な理由だな!

《猛ル一角》を使うぞ。
……ヤツの経験は侮れねーが、それは織り込み済みだ。
《猛ル一角》なら、かわされても大地の魔力を吸い上げて次に繋げられる。
そう、「次の一撃」こそ本命だ。
回避直後のオレへの反撃、その始点を【見切り】、
【カウンター】を合わせて仕留める!

……今を生きるヤツらの命を、てめー如きが弄んでんじゃねーよ!



 悠然と立つ残影卿・アシェリーラへユーフィが確認のために問いかけた。
「あなたがこの屋敷の主ですね?」
『いかにも』
 無造作に応えを返されたユーフィの青い目が輝いた。明らかに格上、全力でぶつかって尚勝てるかわからないという強敵を前に闘志が漲る。
「この力、気配……! これは、闘うのが楽しくなりそうです!」
 途端にバーバリアンとしてのユーフィの姿が揺らぎ、銀の髪は見るまに青く染まった。瞳はそのまま、白い肌へと変じた身体をリングコスチュームが包む。
「レスラーとして相手をしましょう。豪快なフィニッシュを見せてあげますわ」
『ほう。其方らの中には変生するものがおるのか』
 残影卿がわずかに目を瞠った。組み付こうとするユーフィから身を躱し、地を蹴って鋭いエルボーから距離をとる。それを横目に、まともに会話をするつもりのないレガルタは早々に僕の召喚を始めていた。
「やっと黒幕のお出ましか……御託はいい、さっさとやるぞ。背中は任せる、フォム」
「うん、レー君を守ればいいんだね!」
 素直にこっくりとフォートナムが頷く。そして恭介はというと、斃れた天馬の死体の位置を覚えながら残影卿の出方を確認していた。天馬の血でも目潰しに使えないかと思ったが、どうも掻き消えたように見つからない。作戦を立て直しつつ首を捻る。
「しかし、なるほど。あの大剣は厄介そうだね」
 その剣を未だ抜かない残影卿に、灯は面白くもなさそうな表情で問い質した。
「なるほどな。強者の血がお好みだから、つまんねー言い伝えを利用してたってか」
『過去の我の下知が、下郎共の間で言い伝えと化しただけのことであるがな』
 アシェリーラが当然のような顔で訂正する。
 始めから仕組まれた狡猾な罠。人々はこの支配者の意のままに救いを求めて腕を磨き、果てにこの屋敷へ導かれて血を絞り尽くされ死んでいった。
 わずかに眉を寄せた亜夜が呆れたように呟きをこぼす。
「数多の吸血鬼伝承の鏡のような相手ですね――まぁ非力な者相手に暴虐の限りを尽くすよりかは多少はマシなのかもしれませんが」
 標的となるのが一定水準に達した強者という点では、被害が限定的と言えなくはない。けれどそんなことは、アイナにとって少しの慰めにもならなかった。
「何が粗末だ! 他人から簒奪した力、それは己の真なる力に非ず!」
 ペンダントに触れたアイナの人格がシフトする。同時に解放された真の姿は今の姿から一転、背に三対の翼をもち純白の甲冑をまとう戦乙女だった。
 羽ばたいて一気に距離を詰めると、高みから煌めく鋼糸を放つ。
『其方もか。これは面白い趣向だ』
「貴様の糧にされ朽ちた者達の魂、返して貰おうか!」
 薄笑いを浮かべたままの吸血鬼を戦乙女が追って白い羽根を散らしていく。
「……どうせ吸うなら強えーヤツからってのはいい。だが、やり口は気に食わねーな」
 最小限の動きで糸を躱した彼を追うアイナの向こうで、灯は吐き捨てた。励起した術式が拳をめぐり、《猛ル一角》が起動する。
「他者を道具としか見ないその傲慢――さぁ、裁きの時間です」
 冷静さを失わないとはいえ、亜夜とて許容できる敵ではない。目にも止まらぬ速さで抜かれた拳銃が火を噴いた。強者を求め血を奪い続けてきたこの吸血鬼が、相当な手練れであることは想像がつくが故の牽制の銃撃。
「『救われる為』ってのは頷けねーけどよ。攫われたってことは、連中の努力は本物だったってことだろ」
 弾をかいくぐる一瞬で、アシェリーラの前には灯が駆けこんできている。
「……てめーをブチ砕くにゃ、十分な理由だな!」
 拳を廻る術式は申し分なく、鳩尾めがけ体重を乗せた拳打はしかし、吸血鬼の体を紙一重で捉えることができない。それでもそのまま、天馬の死体が転がる地面に叩きつけた。
 長年人の血をすすり続けた吸血鬼の戦闘経験は織り込み済みだ。この地の魔力を賦活し吸い上げ、次に仕掛ける攻撃こそが本命。
「あ、あしぇ……あしぇりらー? さん? ボクはフォムだよ! よろしくね!」
 背の剣を抜いて弾丸を弾き飛ばしたアシェリーラへ、死霊騎士と死霊蛇竜を伴ったフォートナムがブースターを噴かしたハンマーを振りかぶって肉薄する。
 彼女一人であればあしらえないことはなかったが、彼女と補いあいながら迫る騎士と蛇竜を目にしたアシェリーラの表情が変わった。
 満足に口も回らないフォートナムだが、見た目にそぐわぬ怪力を乗せたハンマーはしたたかにアシェリーラの左肩を打ち据えた。勢いで広場の中央までふっ飛ばされた吸血鬼が、あからさまに不快そうに問う。
『……童、その忌まわしき傀儡は其方の仕業か?』
 否。フォートナムの【スパイダーウェブ051】で危険のない位置へ遠ざけられたレガルタが操る死霊、死せるオブリビオンだ。突きつけられて平静ではいられなかったらしいアシェリーラはそれを避け、回り込んできていたユーフィを前に大剣を抜いた。
 途端に肌がひりつくほどの熱が放たれる。『太陽の炎』をまとった刀身がレスラーへと変じたユーフィめがけ閃いた。攻撃を食らうのは覚悟のうえ、ユーフィが受け止める態勢をとる、が。
 鈍い音をたてて斬撃を食らったのは、レガルタの指示のもとカウンターで身を捻じ込んだ死霊騎士だった。真っ二つにされなかっただけマシという有り様、動きはかなり鈍っているが、レガルタはなお剣を構えさせる。
「どうせ替えの効く傀儡だ、擦り切れるまで遣い潰すか」
『――其方か、小僧』
 厭わしげに唸るアシェリーラの視界の死角、死霊騎士の陰からユーフィが身を擲った。
「やはり強敵と闘うのは、楽しい時間! 存分に味わいましょうか!」
彼女の技に詳しい者がいたなら、高さのある鮮やかなドロップキックに目を剥いたことだろう。まともに食らって地面に叩きつけられたアシェリーラが称賛できるはずもない。
 一転して跳ね起きた吸血鬼の横に、唐突にひょっこりと長身の男が姿を現した。
「どうも。アシェリーラさんでよろしかったですか。仁科です」
 恭介の挨拶が普通に丁寧だった――些か謙りが足りないにしても、深く頭を垂れる姿が礼儀として叶っていたために、アシェリーラは反射的な攻撃を躊躇った。誰かれ構わぬ手当たり次第の攻撃など、力あるものの所業ではない。
『其方も猟兵であろう』
 詰問じみるのは致し方なしとして、恭介はあくまで丁寧に言い募る。
「相手が強いのなら使えるものを全て使って戦うのが礼儀、としてよろしいですか」
『……よいだろう』
 宣告と同時、アシェリーラの剣が唸る。食らえば深手は避けられない斬撃を、残像をもって回避した恭介の姿がかき消えた。あちこちに詰み上がった天馬の死体が視界を遮り、気配を辿ることもままならない。
『あの図体で埋伏だと?!』
 苛立った表情で駆けるアシェリーラに、追ってきたアイナの放つ鋼糸が意志あるように絡みつく。鈍く輝く糸は四肢と首を縛めて、アイナの詠唱が高らかに響いた。
「悲しみの雫達よ、蒼穹に集え! 汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!」
 それは残影卿の糧にされた強者たちへの呼びかけ。大鎌形態の黒剣が指し示すまま、青玉の矢が雨のように降りそそぐ。
 少なからず浴びたアシェリーラが煩わしそうに身を捻っただけで鋼糸は弾け飛んだが、それはアイナの騙し討ちの一環だった。
「来たれ我が眷属、具現せよ我が心」
 距離を詰めながら囁くような亜夜の声を鍵として、影でできた蝙蝠が顕れる。亜夜と蝙蝠の挟撃を悟ったアシェリーラが笑みを浮かべて何事か唱えた。途端、全く瓜二つの姿形をしたもう一人のアシェリーラが背後から現れる。
 蝙蝠は新たな吸血鬼を、亜夜は元からいた方を。転がる天馬の死体を足場に跳躍した彼女の動きに、わずかに遅れてアシェリーラは剣を合わせた。刃が彼の頬を抉って血が飛び、整った貌が怒りに歪む。
『おのれ、女……!』
 だがその言葉が終わるより早く、全く気配を悟らせなかった恭介が傍らに迫っていた。目を剥くアシェリーラを間合いに捉え、恭介の刀が一閃。ざっくりと逆袈裟の一刀を浴びせて跳び退る。
 蝙蝠の体当たりで転がされていたもう一人のアシェリーラと斬撃を浴びたアシェリーラ、どちらも動きを封じるべくフォートナムがレガルタの傀儡と共に飛びかかった。
 入り乱れて距離を取ろうとする二人の吸血鬼を追い、彼女は傷のあるアシェリーラを叩き潰すべく赤熱するハンマーを揮った、が。無傷のアシェリーラがレガルタに刃を向けるのを見たフォートナムは顔色を変えた。
「それはだめー!」
 飛び出した小柄な少女がむりやり攻撃に割り込み、ついてきた死霊蛇竜ともつれあうように身代わりで斬撃を受けて吹き飛んだ。
『気配が乱れたぞ、小僧』
 フォートナムの打撃を紙一重で避けた、刀傷のあるアシェリーラが薄く笑って身を捻る。
 暗殺ならお手のもののレガルタだが、一瞬早く標的が動いたことでナイフは敵の心臓を逸れた。籠めた毒と呪詛は効いてくるだろうが、正面から切り結ぶのは暗殺者の仕事ではない。
 距離を取ろうとするレガルタを追い、疾走するアシェリーラの前へダッシュでユーフィが飛び出した。これ以上ない捨て身の行動で目を瞠る敵の鎧を掴み、一気に組みついて投げの態勢へ。
「ブルーバード・ドライバーッ!」
 文字通り頭から叩き落とされたアシェリーラを待っていたのは、中空からのアイナの黒剣だった。薙ぎ払いに次いでの刺突が深々と体を抉る。
『ぐおっ……!』
 そして身動きならない吸血鬼に、灯が告げる。
「……今を生きるヤツらの命を、てめー如きが弄んでんじゃねーよ!」
 術式をこめた拳撃は、胴を抜いて地面にまで達した。衝撃で地面までも割り、すり鉢状の穴を穿った拳撃が今度こそ、アシェリーラの動きを止める。
 ふっつりと、二人目のアシェリーラが消えたのはこの時だった。
「強者を望むって事は、心底では貴様は己自身を強者とは認めてないんじゃないか? まったく、笑わせるな……」
 冷笑まじりのレガルタの言葉に反駁する力すら、もう残っていない。
『お、おお……我が、強さの真髄が……』
 戸惑いとも嘆きともつかない声はそれきり途絶え、アシェリーラの体は流れた時を突然思い出したように灰の塊と化していった。四肢の先から脆く崩れ、瞬く間に砕けていく。あまりにもあっけなく、吸血鬼はその最期を迎えて消え去った。
 安堵の空気が流れる中、はっと我に返ったユーフィが駆けだし、彼方で転がるフォートナムに飛びついた。
「フォムさん、お怪我はありませんか?」
「平気だよ! ありがとーレー君!」
 ひょこっと起きあがったフォートナムが笑う。咄嗟にレガルタが死霊蛇竜を割り込ませたことで、彼女は無傷で済んでいた。おかげでわずかにタイミングがずれ、襲撃を悟られたレガルタはそっぽを向いている。
 傷を負った仲間の治療が始まる中、突然に美しい歌声が響き始める。
 アイナの歌う鎮魂歌だった。言い伝えに謀られ、残影卿の犠牲となった者達がせめて安らかに眠れるように。
 かくて、忌まわしい天からの招きは断たれることとなったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月06日


挿絵イラスト