5
闘争は形振り構っていられない

#アリスラビリンス #クロムキャバリア #戦後 #鉤爪の男 #小さなダイヤと大きなクラブ #野薔薇は独り行く #異世界バニーの国

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#クロムキャバリア
🔒
#戦後
🔒
#鉤爪の男
#小さなダイヤと大きなクラブ
#野薔薇は独り行く
#異世界バニーの国


0




●闘争は世界を飲み込む
「三年の間に倒れた者8人、生き残った者5人……」
 指折り何かを数える男。死したる者の数を数えた時、その指の動きは止まる。
「なるほど、丁度私の手の指と同じ数だけ死んだか。ふふ、こじつけかもしれんが、奇遇とも言える」
 五本の指が折られ拳を握った男の右手。そして巨大な鉤爪を三本生やした、人ならざる機構の男の左手。
 否、左手だけではない。男の精悍な体、端正な顔、その全てが、破壊の為に造られた異形の機構。
 迷宮災厄戦を生き残った猟書家であり、アリスラビリンスのオウガ・フォーミュラ。クロムキャバリアの名を初めて口にした存在にして、「等身大型オブリビオンマシン」。その名は『鉤爪の男』。
「死した者どもよ、私はお前たちを笑わない。死は結果にすぎぬ、その瞬間までよくぞ闘争した。そして生きる者どもよ、祝福しよう。お前たちにはまだまだ闘争の時がある」
 ただ唯一価値を認める|闘争《もの》を基準に、男は|配下《猟書家》たちを褒め、焚きつけた。

 ただただ長い一本道を男は征く。その後ろには、まるで王に従う騎士を模したかの如き機械の兵の群れ。
 それらが通る度、道は姿を変える。花は燃え、空は焼け、空気は血と硝煙の匂いに染まる。それは男がこの三年の間待ち続けた闘争の世界。
「私は王座や覇権などに興味はない……が、あれを発射台にするのもいいだろう。今は主なき城のようだ。使っても文句は言われまい」
 道の先にある、枯れた茨の僅かに巻き付いた城へ入っていく男。入城の時、男はちらと後ろを振り向いて言った。
「どうやらこの世界にも抗う意思のある者はいるようだ。いいぞ。苦難の旅に磨かれた闘争を持って、私を阻め……!」
 既に通り過ぎた果て、塗り替えたはずの闘争の世界が少しずつ揺らがされていた。

●闘争に定まった形はない
「あなたのメルでございます。本日は己が等身大オブリビオンマシンとカミングアウトした、鉤爪の男との決戦となります」
 メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が集まった猟兵にリエーブル・ア・ラ・ロワイヤルを配る。
「「侵略蔵書」の「周囲の世界全てを、本の内容に取り込んでしまう」という力を使い、「不思議の国々をクロムキャバリアの戦場に書き換えること」でアリスラビリンス全てを闘争の世界へ変えようとしています。それは一度平和にした国や特殊性の高い国も例外ではありません。そう、それが時期外れも甚だしい、ハロウィンの国であっても」
 かつてオウガ・オリジンが作り出し、今は故郷を追われた愉快な仲間の安住の地となったハロウィンの国。その国もまた、鉤爪の男によって闘争の世界へ書き換えられたのだという。
「ですが、この世界に移住した愉快な仲間たちはもう逃げ惑うばかりではありません。ようやく見つけた安住の地を守るべく、鉤爪の男の配下であるオブリビオンマシンと『闘争』します」
 それもまた男の望んだことなのかもしれない。だが、このまま黙ってやられるわけにはいかないのも事実なのだ。

「まず最初に、鉤爪の男の配下であるオブリビオンマシン『ファング・オブ・ガルトゥーウ』と愉快な仲間との戦いに加勢していただきます。敵は騎士を模したかのような見た目で武器もチェーンソー剣のみ、近接戦しかできず特殊な機能もついていないと非常に限られた性能をしていますが、その分単純な実力は高いです。一方愉快な仲間たちは荒事は専門ではありませんが、様々な世界の知識を半端ながら持っているので多くの戦術に対応できます。色々指示出しなどして戦力にしてみてください」
 愉快な仲間の力だけでは最後はオブリビオンマシンには抗しきれない。だが、猟兵がそこを補えば彼らはこの国を守る力となるという。

「オブリビオンマシンを倒せば、一時的に世界の書き換えが止まり、鉤爪の男へ通じる道が開けます。彼はかつてこの世界がまだオウガのものであった時、その主が使っていた城に入っています。城の中には巨大チェス盤のようなものがあるのですが……」
 アリスラビリンスのチェス、それの駒に用いられるものなど決まっている。
「はい、まあ案の定というかアリス使用のリアルチェスです。敵方は鉤爪の男配下のアリス狩りオウガでフルセット揃っていますが、こちらの駒は何とキング、クイーン、ポーンしか揃っていません。ですので皆さんが残る駒となって、敵の盤面をひっくり返してあげてください」
 駒らしい動きは求められるが、それさえ守れば具体的に何をするかは自由だ。もちろんアリス達も指示次第では相応の『駒』となってもくれるし、取られない範囲で利用するのもいいだろう。

「で、これを突破すれば鉤爪の男との決戦です。彼の能力は迷宮災厄戦の時と同じですが、それに加えこの世界の上空400kmに『|九竜神火罩《きゅうりゅうしんかとう》』を打ち上げ、この国を焦土に変えようとしています。今の所発射はされていませんが……恐らく、鉤爪の男と戦っているうちに発射準備は整ってしまうでしょう。そうすれば、彼を倒してもこの世界が滅びるのは止められません」
 殲神封神大戦で哪吒が打ち上げんとした大量破壊兵器。彼がオブリビオンマシンであったことを考えれば、鉤爪の男がそれを用いるのも納得の話だ。
「ですので、九竜神火罩の破壊も同時に行ってください。こっちは抵抗自体はしません。もちろん壁殴りばっかりしていれば容赦なく後ろから鉤爪の男がどついてきますので、そちらもきっちり対処してください」
 仮に九竜神火罩を破壊しても、鉤爪の男が健在ならば何がしかの手段で修理、再生させてしまうだろう。どちらも完全に破壊しつくす必要があるということだ。
 だが、そもそも九竜神火罩は上空400kmにある。まずそこまでどう行けばいいのか。
「それにつきましては自分で飛んでいただいてもいいですが、チェスから生還したアリスにこの城を抑えておいて貰うことで、さらなる『増援』が駆けつけてくれます。そちらの力を借りて頂くことで何とか出来るかと」
 愉快な仲間、あるいは他のアリスか?
「まあ、この世界の原住民みたいなものです。敵意はないのでご安心を」
 猟兵の問いにメルは兎耳をぴこぴこ動かしながら笑って答えた。
「平和だったことなんてないアリスラビリンスですが、だからと言って焼き払わせるわけにもいきません。それでは皆様、どうかお気を付けて」
 そう言ってメルはグリモアを起動し、闘争に抗う者たちのいる地へと猟兵を送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。遅ればせながら鉤爪の男依頼です。

 第一章ではオブリビオンマシン『ファング・オブ・ガルトゥーウ』との集団戦。格闘攻撃やチェーンソー剣による攻撃の他、陣形を汲んでの集団戦術も使ってきます。ここではこの国に住む愉快な仲間たちが味方となって戦ってくれます。戦闘力は高いとは言えませんが、多くの異世界に対する知識があり、アリスラビリンスにないアイテムや戦術でも割とすぐに理解し使いこなしてくれます。

 第二章ではかつてはオウガの居城であった城に乗り込み、アリスを駒にしたリアルチェスに飛び入りして貰います。アリスはキング、クイーン、ポーンを担当する三人がいますので、それ以外の駒となって敵軍のオウガを戦ってください。厳密にチェスのルールに従う必要はなく、『自分が担当する駒らしい行動』をとればOKです。戦術、ルールの曲解や拡大解釈もOK。またアリスの三人もそれなりに戦えます。

 第三章では『鉤爪の男』との決戦。彼は上空400kmに浮かぶ『九竜神火罩』にいますので、城の屋上からそこへ向かってください。向かう手段は自分で行ってもいいですが、ここにも『増援』がありますのでその力を借りてもいいでしょう。自分で飛行できる方もその力を使ってもちろんOKです。

 舞台となるのはこちら(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=38571)の舞台になっているハロウィンの国です。該当シナリオを読む必要はありません……が、読んでおくと第三章についての予習と覚悟ができるかもしれません。

 共に戦う仲間についての情報追記の関係上、断章執筆後からのプレイング受付とさせていただきます。詳細はタグをご確認ください。

 この決戦シナリオを合計「20回」成功すれば、完全に鉤爪の男を滅ぼすことができます。今のところ制限時間などはありませんので、お気軽にご参加ください。

 それでは、闘争を終わらせるプレイングをお待ちしています。
138




第1章 集団戦 『ファング・オブ・ガルトゥーウ』

POW   :    ガルトゥーウ・スタイル
【荒々しい格闘攻撃で怯ませ放つ近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    キックアップADS
自身の装備武器に【長時間稼働で破損するおそれを代償にADS】を搭載し、破壊力を増加する。
WIZ   :    ガルトゥーウ・フォーメーション
【仲間と組んだ様々な隊列】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:黒メガネ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 戦火燃える国。そこを機械の兵が蹂躙する。戦乱の世界クロムキャバリアでは日常の光景。
 だが、ここはアリスラビリンス。巨大機械に抗うのは同じ機械ではなく、動物や無機物を戯画化したような愉快な仲間たち。
 それは一見すれば、幼児の人形を意地悪い小児がロボットをぶつけて壊すような、幼稚な弱い者いじめの絵。
 だが、やられて泣くだけの幼子などここにはいない。
「猟兵さんが乗ってた奴の同類か!」
 彼らは既にキャバリアの存在を知っている。
「機械だったらこっちも持ってるわ。行きましょう、配信ドローン!」
 少女人形の周りにカメラを携えたドローンが飛び回り、敵を観察している。
「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿、という言葉があるそうで……つまり桜を燃やす彼らはお馬鹿さんということですな」
 桜の花びらを加えた燕が空を舞い、その花びらが落ちた場所は焼け跡が少しずつ修復されていく。
「おいおい、何だあのどでかいエモノはよぉ?」
「決闘ごっこか? ご丁寧に真っ直ぐ向かってきやがるぜ!」
「おらが一人だと思ってやがるんだ……三人で囲んでボコボコにしてやるべ!」
 両手に剣型の仲間を携えた案山子が、正々堂々など糞喰らえとワル上等の袋叩きを画策する。
 他にも、アリスラビリンスらしからぬ武装や能力、発想を持って敵を迎え撃たんとする愉快な仲間たち。
 彼らはオウガによって生まれ故郷を追われた者たち。彼らはこの地にたどり着くまでの苦難の旅路で、自分の世界に帰れず彷徨うアリスたちの苦難を知った。同時にアリスラビリンスとまるで違う世界、それがいかなる場所かという知識も彼らは少しずつ学び、それはこの新たな安住の地においても少しずつ蓄えられて行った。
 そしてその知識は今、第二の故郷を守るための力として花開いた。
 翻って相手は、ただ一つだけの武器を構え、両の足で歩き、軍隊の様に整列し動く巨大な機械。大きさ以外は機械であることの利点をまるで捨てたような、どちらが物語の住人だか分からない正統で単純な動き。
 自らの国を守るため、愉快な仲間たちは知る力を全て用いようとしている。そしてその力の源、行けるすべての世界について正しい知識を持つ者なら、それを十全に引き出せよう。
 さあ、全ての世界を正しく知る者よ。己の国を守るため己の知る限りの手を尽くそうとする者たちに、より広く、深く学びしその力を添えてやれ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『第一章のプレイングボーナス……愉快な仲間たちと協力し、『アリスラビリンスらしくない』戦い方をする(愉快な仲間たちの外見、能力は設定自由)』
初志・貫鉄
即興共闘歓迎

「愉快な仲間達が手伝ってくれるなら、やりやすいかもな!」

頼む事は、相手のバランスを崩してもらうこと。
アリスラビリンスらしからぬ真っ向勝負だから、体が頑丈なタイプの仲間に手伝ってもらおう。

攻撃は常に一撃のみを目指し、覇気を練り上げ力を溜めておく。
敵の態勢が崩れた瞬間にダッシュで間合いを詰め、UCで致命的な一撃を捩じ込んでいく。
自分でも接近し、第六感や野生の勘を活かして敵の攻撃は見切り重視で避け、相手のバランスを崩して捩じ込んでいく。
オーラ防御と激痛耐性でかすり傷(本人主観)は耐えてやる。

事前に食い溜めして継戦能力を十分に備えておくのも忘れないぜ。



 死と悪意に歪んだ不思議の国と、戦火と黒煙舞い上がる闘争の世界。二つの最悪がせめぎ合うアリスラビリンスの地に、一人の男が降り立った。
「愉快な仲間達が手伝ってくれるなら、やりやすいかもな!」
 初志・貫鉄(拳食合一の功徳奉士・f26667)は大地を踏みしめ、堂々と愉快な仲間たちに向き合った。
「奴らを正面から迎え撃つ。頑丈さに自信のあるやつはいないか」
 敵は機械の巨躯をもって、おとぎ話の騎士の如く剣を振り上げ戦いを挑んでくる。それを迎え撃つのは小さき者の賢しき知恵でも、誇り高き剣士の勇気でもない。相手を受け止めて揺るがない同等以上の力。
 汗と筋肉迸る漢の戦いを持って不思議の国を守る豪傑はいるかと問えば、一匹のパンダが前に出た。
「私が参りましょう。組み打ちには少々覚えがあります」
 思いの外太い声でそういうパンダを伴い、貫鉄は迫りくる敵の群れへと向かった。
 前から来るのは、闘争に変わる世界を背に行軍してくる鋼の騎士『ファング・オブ・ガルトゥーウ』の軍団。それらは二人を見つけると進軍を止め、チェーンソー剣を抜いて一斉に構えた。
「じゃあ、頼むぜ」
「承知!」
 礼や名乗りなどなく、戦闘は開始された。パンダは大きく踏み込むと、体を低くして肩の部分から敵の足元、膝のあたりへと大きくタックルをぶちかます。
「ふぅん!」
 さらに体をかがめ、足首を掴んでの足元狩り。スタイルとしてはレスリングに近いだろうか。パンダだからカンフーなどというお約束など知るものか。古代オリンピックからの超人級レスリングならばより己に合うと、自分の才を的確に生かす競技者的思考はおとぎの国には似つかわしくなく、しかしここでは確かな力となるもの。
 だがそれでも流石に5メートルの巨体を持つキャバリアを一撃で転倒させることは出来ず、そのバランスを崩させるにとどまった。組み付いた相手を剣を振り上げ串刺しにしようとするガルトゥーウ。
「倶利伽羅の剣撃、調伏の慈悲、我が身を通し、我と立ち塞がる者に教えを賜らん」
 そこに、地を揺るがすほどの振動と共に貫鉄の【不動明王尊火焔撃】が放たれた。パンダに前を任せはるか後方にいたはずの貫鉄は既に敵の間合いの内まで入り込んでおり、覇気を纏った拳撃が揺らいでがら空きになっていたガルトゥーウの胴に大穴を開けていた。
 即座に貫鉄とパンダがそこから離れると、まさに撃墜されたロボの如くそのガルトゥーウは爆散した。
 そのまま貫鉄は次の敵に向かい踏み込んでいき、インファイトでの格闘戦を挑む。
 そのガルトゥーウは剣を下げ、前蹴りを放って貫鉄を蹴り飛ばそうとする。
「なるほど、そっちも綺麗なスタイルばっかりじゃないってことか」
 その巨大な脚に揺らがされれば、構えた巨剣が即座に自分を両断するだろう。相手との体格差を考えれば受け止めるのは危険と、その動きを見切っては躱し敵の思う動きをさせないようにしていく。
 一撃を外し相手の足が突き出されたところで、その足を跳ね上げて崩れた体勢にもう一撃。相手が崩れる程に貫鉄の一撃は致命となり、その巨体を玩具のように撃ちぬいていった。
 しかし、敵は多勢。一人ずつで叶わぬならと一斉に剣を突き出し、貫鉄を刻みにかかる。刃が回転するチェーンソー剣は打ち払うのも難しいが、元より戦場、多少の傷は承知の上。避けきれなかったものが肩口を刻み血が噴き出すが、それに構わず取れる相手を取り次々粉砕していく貫鉄。
 一方で斬撃を入れられたものは剣を振り上げ、そのまま貫鉄を両断せんとする。その勢いは凄まじく、また鋼鉄の巨躯がしっかり大地を踏みしめ倒れてもいない。
 貫鉄はその刃を悼む体から湧き出るオーラで僅かにも鈍らせつつ、剣を持つ手を殴り強引に跳ね上げた。
「よし、いけ!」
 がら空きになった胴を突き飛ばし、その後方に声をかける。それに呼応し、後ろからパンダがガルトゥーウに組み付き、その体をバックブリーカーに極めた。
「力こそ、正義!」
 そのまま巨大な敵の体を真っ二つにへし折るパンダ。ついでに爆発前にその骸を別の敵に投げつけ目くらましすれば、そこに貫鉄が踏み込んでまた必殺の拳が放たれる。
「飯はたっぷり食ってきたからな。まだまだやれるぜ」
 無数の機兵を相手取るエネルギーは蓄えてきた。次にこの力の餌食になりたい奴はどいつだと、逞しき二つの肉体は不思議の国にその筋肉をうならせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
おや、此処ですかぁ。
お助け致しますねぇ。

【夐獮】を発動、多数の『大砲』を備えた『ブルーアルカディアの飛空艇型祭器』を召喚、騎乗しますねぇ。
そして、愉快な仲間の皆さんに同乗を要請、『大砲』の操作を任せましょう。
相手は近接型の機体、『飛空艇』で上空に配置し『FGS』で接近と『近接斬撃武器』を、『FLS』で遠距離通常攻撃を防げば殆どの攻め手を封じられますぅ。
後は『ギガエナジーゼリー』と『豊極の女神紋』でエネルギーを供給しつつ、『毎秒Lv|哥《グロス》発』という回数強化を施した『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]を降らせ、『大砲』と共に『空爆』を仕掛けますねぇ。



 ハロウィンの国。その発見は三年前に遡る。迷宮災厄戦の終結直後に発見された場所であり、長く続くことになる猟書家との戦いの前哨戦とも言える戦いの場所となった世界。そして歴の長い猟兵なら、その始まりの時からこの国に来たことがあっても不思議はない。
「おや、此処ですかぁ。お助け致しますねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はまさに、このハロウィンの国が発見された時を知り、そしてこの国に訪れそこで起きた『始まり』を知る猟兵の一人であった。
 そしてこの世界固有の特性の一つとして、異世界の力がある形で存在しているということも彼女は知っていた。それ故、この地の救援においてもアリスラビリンスらしからぬ力を持って当たる。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その征討の理をここに」
 【豊乳女神の加護・夐獮】にて召喚したのは超巨大飛行船……ブルーアルカディアの空を征く飛行艇ガレオンを模したものであった。その巨大な船で戦火燃えるハロウィンの国に乗り付け、愉快な仲間たちに協力を申し出た。
「おや、あなたは確か……」
 前に進み出てくるのは燕尾服を着て桜の枝を口に咥えた燕。彼とるこるが顔を合わせたのは一年半ほど前の事ではあるが、その時の印象が強かった故か彼はるこるの事をよく覚えていた。
「しかし何ともスケエルの大きい……あ、いえ、深い意味はございません」
 少しわざとらしく片言気味に言いながら、燕はるこるに一礼する。そんな彼に、るこるは他にも何人か仲間を誘って船に乗るよう促した。
 そうして幾人かの仲間を乗せ、ガレオンは空へと浮き上がる。
「これは凄い! 南瓜の馬車も形無しですな!」
 天使核という魔法的なものではあるが、これもまた確たる動力源を持ち技術の力を持って空を飛ぶもの。その船は不思議の国の空を抜け、機械の巨兵たちのはるか頭上へと乗り付けた。
 そのまま飛空艇から顔を出すことなく、るこるは二つの兵装を下方へと差し向ける。
 それが齎すのは超重力と空間障壁。それらは地を這う兵たちを抑えつけ、跳躍や剣の投擲などの乾坤一擲も封じ込めた。
「それでは皆さん、よろしくお願いしますねぇ」
 そこから乗組員となった愉快な仲間たちに指示を出せば、彼らは自分たちに課された役割を果たす。それはすなわち、備え付けられた大砲で下方を攻撃する砲撃手だ。
 数え切れないほどの砲撃が地表を焼き、機械の兵たちを滅する。
 それはまさに蹂躙。相手の一切を認めぬ一方的な攻撃。
 なぜ戦場から剣が廃れたか。なぜ兵士が鎧を脱ぎ槍を捨てたか。その答えはこれ。
 マントを翻し見得を切る剣士など戦争には必要ない。その時代に至ったはずの技術で過ぎ去りし虚構を再現した愚か者に、現実の暴力を叩き込んでくれよう。
 るこるは飛空艇の上で、超カロリーのゼリーを摂取しつつ、それを自身に宿した紋章で増幅させる。エネルギーをとるためだけの食事も、楽しく歪んだお茶会している時間などない文明が進み過ぎた世界の食事。
 そしてそのエネルギーが行く先は、さらなる兵装の操作だ。
 砲撃と爆撃の力を持つ兵装が上空からさらなる攻撃を地上の兵に加え、決して手は出せないように封じ込めていく。
 鉤爪の男よ満足か、これがお前の望んだ闘争だろう。その男の差し向けた機兵が無様に滅びゆく様はまるでそう告げているようですらある。あるいは彼の者なら、それに対してさえ是と答えるかもしれない。
 焼け野原になった不思議の国が眼下に広がり、そこに動く者はなくなる。
「ちょっとやりすぎましたかねぇ?」
「いえ大丈夫。死体が満ちたところには桜が咲くものでございます」
 飛空艇から燕が飛び出し、焦土と化した地の上を飛び回る。その咥えた枝から桜の花びらが無数に舞い散り地に落ちると、その触れた場所から地表は治り元の姿を取り戻していった。
「ところでこの枝、お返しした方が宜しいですかな?」
「いえ、そちらのお力として使っていただければぁ」
 その枝の『出所』を揺らしるこるが答える。あの時の気取ったダンスが、今闘争から再生するための力となっている。彼らが外の力を得たのはこの世界を壊すためではないのだと、この場所を知るるこるはその姿に見るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより



「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
 戦火燃える不思議の国に、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)がぼそぼそ呟きながら降り立った。
「って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。うう、これも番組の為なのね」
 自身の冠番組のため様々な世界でネガティブアイドルとして活躍する鬱詐偽。だが今回はガチ戦乱の地ということで、さすがに茶化せる世界ではないのではとプロデューサーがNGを出してくれるかと思いきや。
「まあ、ウサギさんね! この世界を元に戻してくれるのね!」
 後ろから声がかかってしまう。見ればそこにいるのはアリス服を着た少女。一見すれば人間風だが、球体関節やガラスの瞳から人形型の愉快な仲間だということが分かる。
 鬱詐偽は知らぬことだが、この世界の愉快な仲間たちは時計ウサギに対して強い敬意を持っている。それ故ウサギ姿の彼女は嫌でも目立ってしまったのだろう。
「しかもあなたもそういう力があるのね。コラボ配信といきましょう!」
「え、ここアリスラビリンスじゃなかったっけ……」
 さらに人形少女の周囲には大量の動画撮影ドローンが。まさにここどの世界だっけという感じだが、ここはこういう国なのである。もちろんその小声のツッコミも『ウサギマイク』がばっちり拾い配信されてしまっている。
 こうなれば最早仕方なしと、ネガティブアイドル鬱詐偽さんの本日のロケが始まった。
 迫りくるガルトゥーウの群れに、少女と共にいくつもの配信ドローンを従え向かっていく鬱詐偽。
「で、どうするつもりなの……?」
「先に観察はしてあるから、ウサギさんが上手く使って!」
「人任せじゃない……」
 人形のドローンから鬱詐偽のカメラにガルトゥーウの観察データが送られてくる。どうやら敵は正統派、いかにも物語の騎士。自分のキャラ的にはむしろあれに助けられて改心とかベタ惚れとかそっち系が合いそうな感じすらする。まあどう見ても助ける気はなさそうだが。
「いやいや、どう見てもあっちが主人公側……」
 ある意味相性が悪すぎる。だが、そんな気圧される鬱詐偽の様子もカメラとマイクは余さず広い生中継として放送されてしまっていた。
『負けるな鬱詐偽さん!』
『いやむしろ負けて鬱詐偽さん!』
『僕らの鬱詐偽さんはそんなお約束展開に負けたりしない!(フラグ)』
 明らかに良くない展開を期待するコメントが殺到する。もちろん見ている側はふざけてそう言うコメントをしているだけであり、本気でそうなることを望んでいるわけではない。だが、風評被害というのはいとも容易く起こってしまうもので。
「え、そういう目的なの……?」
 人形少女がちょっと引いてる。そしてその様子が配信されれば視聴者もさらに盛り上がって。
『こんな小さい子までぐへへ』
『さっすが~、鉤爪様は話が分かる!』
『誰それ』
『こいつらの親分らしいよ』
 鉤爪の男まで巻き込んでの風評被害。本人何もしてないのに、最早ガルトゥーウ達も整然と並んだ騎士ではなくただの暴漢の集団である。
 これこそネガティブアイドル鬱詐偽さん式【グッドナイス・ブレイヴァー】。その力が集中した杖を、鬱詐偽はガルトゥーウ立ちに向けた。
「残念だけど、こっちもアイドル……そういうのはNGよ……」
 向けた杖から巻き起こる泡がガルトゥーウを取り囲んで割れる。その瞬間にガルトゥーウの足並みは乱れ、前の相手にぶつかり纏めて倒れるなど突然無様な格好を曝し始めた。
 『バブル・ショック』の泡は様々なものを暴落させる。それによって彼らの威厳は地に落ち、こうなればただのコメディ要因。そしてそこに鬱詐偽の不幸が移れば最早彼らはただの道化。
「今ね、特攻、ドローン軍団!」
「じゃあ、そのまま、潰れてなさい……」
 人形少女がドローンたちに突撃を命じ、サウンドウェポンを通して放たれた鬱詐偽の声がそこから逃げることを許さない。
 持ち味を生かすこともさせず騎士たちを封殺する姿に、カメラの向こうからは今度こそ本当の応援が送られる。
『これでこそ鬱詐偽さんだ!』
『信じてたよ鬱詐偽さん!』
 それに対する二人の胡乱気な表情もばっちり撮って、本日の放送は終了。ネガティブアイドル鬱詐偽さんはこうして今日も正義を守ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧崎・紫苑
なんとも不可思議な世界もあったものだな
このような世界では、私もまた異物の一つなのだろう

ならば、異物は異物らしく戦わせてもらう
UCの対象に「ハロウィンの国の住民が持っている武器らしい何か」を指定
物質組成を改竄し、アポカリプスヘル由来の対装甲散弾砲へ改造する

UCの効果が発動するまでは、こちらで弾幕を張り時間を稼ごう
効果の発動後は、愉快な仲間には隊列を組んでもらうだけで構わない
散弾砲の発射タイミングは私が操作する
隊列を組んで密集している上に、巨体を誇るキャバリアでは、これは避けられまい

それでも動けるものは、装甲の裂け目を狙って榴弾やミサイルを放ち、私が直々に武器を用いて排除しよう



 ハロウィンの国、異世界の力、侵食する闘争。何もかもが通常のアリスラビリンスとは違うこの世界に、一人の男が降り立った。
「なんとも不可思議な世界もあったものだな。このような世界では、私もまた異物の一つなのだろう」
 霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は、自身もまたこの異質だらけの世界には似つかわしくない存在だとそう思った。
 確かに、失った命を偽神細胞と機械化というアポカリプスヘルの二大技術で繋ぎ留める彼は、まさにアリスラビリンスにとっては異物と言えるかもしれない。
 しかし彼は世界を蝕む病巣、猛毒ではない。彼はこの世界を侵す闘争を取り除かんがため自らここに降り立った。身の内にあるものだけでは対処できぬものを排し、正しき形に治す異物。それを人は『薬』と呼び、そしてそれを振るう彼はまさに『医師』なのだ。
「お医者さん……注射しない?」
「大丈夫だよ、この人が痛いことをするのは、あの悪い奴らにだけだ」
 小柄なキノコや花の仲間たちが言うと、大柄な猫が彼らの頭を撫でて答えた。
 彼らの手にあるのは素の身長さえも超える槍。自分たちが非力な存在だと自覚しているからか、とにかく前に出して突けばいいという槍衾で相手を突き返すつもりらしい。練度の低い雑兵が多くなりがちな、サムライエンパイアの戦国中期までの戦い方を参考にしたものだろうか。そして軍配代わりにギターを抱えその命を預かる猫は、大大名の侵攻に対し領地の全てを預かり共に死なんとする弱小領主といったところか。
 子供までが戦争に駆り出される、余りにも残酷すぎる現実。この世界、最早手を入れることに躊躇などない。
「神をも冒涜せし所業……使いたくはなかったが、致し方あるまい」
 紫苑は彼らの持つ武器に、【冒涜的な整形手術】を施した。浸食型ナノマシンが彼らの構える武器を覆い、物質組成を変えていく。それはこのアリスラビリンスには到底似つかわしくなく、そして命削る戦乱にはこれ以上なく相応しい、アポカリプスヘル由来の対装甲散弾砲だ。
「少し組み替えに時間がかかる。その間、お前たちは隊列を組んでいてくれ」
 この力の欠点は多数のものを変換しようとするとそれだけ時間がかかること。人数で抗しようとしていただけに、愉快な仲間たちの数はそれ相応だ。それに対し紫苑は散弾砲を用いるに適した陣形の形を指示し、その形を作りながら待つよう指示した。
「了解した。さあ皆、お医者さんの言うことはよく聞くものだ」
 猫が組み換え中の弦を小さく弾き、小さな仲間たちに整列を促す。そしてその前に紫苑は立ち、こちらも隊列を組んで迫ってくるガルトゥーウの群れに自らのカバンを向けた。
「悪いがお前らは治す対象ではない……駆除すべき『病巣』!」
 その鞄から機関砲が飛び出し、圧巻の弾幕をガルトゥーウへと放った。
 それを剣を正面に構えて受け止めようとするガルトゥーウ。5メートル級の巨体は確かに弾丸が少し当たった程度では倒れはしないが、しかしあくまで剣と体で受けるだけ。それらをはねかねす特異な機構も、やり返すための兵装も彼らは持っていない。
 彼らの陣形は近接戦での制圧力、攻撃力を重視したものだったのだろう、敵と撃ち合う構えは出来ていても一方的な攻撃から身を守るようにはできておらず、その足並みは鈍っていく。
 敵の陣形に守りを重視したものはなく、そして彼らは近接戦以外に戦う術を持たない。そして攻めるための陣形もまた崩れ、一か所に無為に固まった。
「よし、今だ!」
 紫苑の号令。それに従い、陣形を整えていた愉快な仲間たちの持つ散弾砲が一斉に発射された。
 既に完全に兵器へと組み上がったそれが、愉快な仲間たちの手元から散弾の雨を敵に降らせる。
 それに剣を掲げ抗しようとするガルトゥーウたちであったが、その圧巻の弾丸は剣やそれを持つ手、そしてその体にまで無差別にぶち当たり、強烈な衝撃と共にその装甲に無数の穴をあけていった。
「隊列を組んで密集している上に、巨体を誇るキャバリアでは、これは避けられまい」
 騎士の如く列を汲んで進み来る巨体。それは儀礼的な古の戦いと、SFじみた巨大ロボット兵器の悪い部分だけが見事に噛み合い、彼らの運命をそこに釘づけにしてしまっていた。
 翻って紫苑は持っていれば使える機械兵器の利点と、練度の低いものでも的確に指示すれば数の戦法には大いに力になるという、時代を問わぬ用兵術。
 あるものは全て、ないものでも無理矢理蘇らせて使わねばならない滅びの荒野アポカリプスヘル出身の男は、形振り構わぬこの戦場に置いて最も効果的な戦術を的確に用いていた。
 弾幕を放った子供たちが紫苑の後ろで無邪気に叫ぶ。
「すごいすごい! やっつけた!」
「お医者さんかっこいい!」
 破壊のための武器を持ち敵を殺しつくしたことを無邪気に喜ぶ子供たち。その横での猫の苦笑いからして、これを癖にしてはいけないということは彼が教えてくれるだろう。
 なれば最後まで責任を持って|戦い《手術》を終えることこそ医師の役目と、紫苑は倒れたガルトゥーウに近づく。
「前方の仲間が盾となったか。急所は外れているな。命に別状はない」
 隊列最後尾にいたガルトゥーウが動こうとしているのを『診察』する紫苑。だがその前で鞄から取り出すのは巨大な炸裂砲とミサイル。
「|手術《オペ》終了」
 榴弾と弾頭を装甲の中に直に叩き込み、最後の『病巣』を紫苑は刈り取った。
「……これはまだ対症療法にすぎん」
 医を持って世界を救うその男は、この病の湧き出る真なる病巣を戦火の向こうに既に見据えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
闘争の世界になんてされてたまるか
鉤爪の男を海へと還すぜ

愉快な仲間
トランペットくん
マーチングドラムくん
各々楽器に手足がついた姿
二人が協奏すると風を操ることが出来る
(黄龍の風相当

戦闘
よし最高のセッションにしようぜ
これは奴らとの闘争だけど俺たちの演奏でもある
俺たちの音を聴かせてやろう

🎸を奏でて🎺&🥁と協奏

元気のでるハロウィンっぽい曲で
皆を鼓舞しながら
二人の起こす風をワイルドウィンドが増幅

進軍を止めたり
隊列を乱したり
加速させて他の機械兵へぶつけたり
砂塵や木の葉を巻き上げて視界を塞いで
同士討ちをさせたりして倒ししていく

危ない場合は二人を庇う

敵の間合になったら
迦楼羅を炎翼として
🎺&🥁に掴まってもらって
飛行して距離をとる
まだまだセッションは続くぜ

こいつらも鉤爪の男の野心の犠牲者かもな
きっちりと海へ送ってやろうぜ
俺たちの音楽を葬送曲としてやろう
「死者の日」にもかけてピッタリかも

事後
演奏を続けて鎮魂曲とする
海で安らかに



 せめぎ合う不思議の国と闘争の世界。ここまでの戦いで拮抗は崩れ、闘争の侵略は押し返され始めていた。
 しかしファング・オブ・ガルトゥーウたちの軍団はまだ完全には駆逐されていない。一切の反撃を許さず彼ら全てを撃破してこそ、この世界の書き換えは止まるのだ。
「闘争の世界になんてされてたまるか。鉤爪の男を海へと還すぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)はその目的を必ず達するべく、不思議の国へ現れた。
 彼が供に選んだのは、トランペットくんとマーチングドラムくんのコンビ。楽器に手足のついたいかにも愉快な仲間といった感じのフォルムを持つ彼らを従え、ウタはファング・オブ・ガルトゥーウの軍団を迎え撃つべく闘争と不思議の狭間となった世界を征く。
 程なくして、前方から無数の重々しい足音が響いてきた。一糸乱れぬ統率された行進は、正に厳しく統率された軍隊の如し。それは銃で武装し軍服や迷彩を纏った現代の軍ではなく、肩にマントをかけ剣を佩いた騎士の一団。
 不思議の国を侵略する機械の騎士たちを出迎えるかのように、ウタは両者に演奏を指示した。
 トランペットが吹き鳴らされ、ドラムが自らの体を叩く。たった二音でありながら、それは力となって辺りに追い風を呼んだ。
 奏でるのはハロウィンをイメージした、低音主体ながらどこか弾むような曲。生と死の境がいい加減になり、怪物や幽霊が練り歩く、不気味だが楽しい祭りの世界こそがこの国の姿。生々しく痛々しい闘争などお呼びでないと、その曲は侵略者たちに対して伝えるかのごとく鳴り響いた。
「よし最高のセッションにしようぜ。これは奴らとの闘争だけど俺たちの演奏でもある。俺たちの音を聴かせてやろう」
 それに対しウタも自らのギターを奏で、三音目を添える。『ワイルドウィンド』の名を持つその音は、名前通り後ろからの風に乗って先まで届きその詩をガルトゥーウたちへと届けた。
 自ら敵がいることを知らせる如きその歌に、ガルトゥーウは冷徹に隊列を組み聞く耳持たぬかのごとく進み続ける。その進軍を迎え撃つかのように、音を乗せた風はただ強く噴き続けた。
 その様はまるで物語のよう。アリスラビリンスらしく、しかしてこの国には似つかわしくない。これでは機械の騎士たちを鼓舞こそすれ、進軍を止めることなど出来ないのではないか。
 風の中騎士たちは進む。しかし、その歩みは中々敵を踏みつけるには至らない。それどころか整っていたはずの足並みは乱れ、隊列の中でぶつかり合う者さえ出始めた。
 歌の乗った風が、ガルトゥーウの精密な足取りを確かに乱していた。この歌はただの歌である。しかしそれを乗せる風はただの風ではない。
 トランペットとマーチングドラム、二人が協力して放った【黄龍の風】相当の力だ。その源流となる世界では小児すらも一騎当千の強者たるが、本来それが属する立場は守られるべき未成年、半人前の証。その力を正しく継いでしまった二人は、しかし二人の力を合わせることで一人分の力を出すことができた。
 さらには過去の長き戦いの中、この力を得た者は彼の学園にすらいなかった。東西の力を得てそこから南北の存在を想像はすれど、中央に至るまでは彼の巨大組織すら想像も及ばなかったこと。故郷を戦乱から守るに際しその力に彼らが目覚めたは、つまりこの国にはまだ無限の先があるはずだという根拠にもなるはず。
 それをこじつけと言わば言え。本当の戦いは『常識』の外にあるのだと、ウタは二人の力に【サウンド・オブ・パワー】の歌を添えてその力を増していく。
 だがやがてそれさえも乗り越えて、ついにガルトゥーウは三人を間合いに捉えた。最早ここで物を言うのは歌にあらずと、剣を振り上げ両断しようとするガルトゥーウたち。
 それでも三人は歌をやめなかった。距離が近くなったことで逆風の影響は強くなり、5メートルの巨体さえ吹き倒すに至るほど。さらには敵の動きを捕らえるに至ったことで、その動きを見切って風向きを瞬時に変え切る勢いを過剰に加速させての空振りや、さらには同士討ちまで誘っての自滅を図ることで敵と戦っていった。
 ウタの歌声は共感する者を強化する。オーバーロードまで含めた全ての力をお前たちに託すと、ギターを鳴らしてウタは歌い続けた。その力を全て受けた半人前の二人は、ついに鋼の巨兵の軍団まで制すほどの|歌《風》さえもを呼ぶことができた。
 それでも、ガルトゥーウの方にも意地があるのか全てが倒れることはない。倒れた仲間の骸を越え、剣を構えて数機が突進した。
 剣の間合いまで納めてしまえば最早小細工無用。直接的な力だけがものを言うのだ。その軌道が三人のいた場所を薙いだ瞬間、ギターの音が止まった。
 あの耳障りな音をついに切り伏せたか。否。
「こいつらも鉤爪の男の野心の犠牲者かもな。きっちりと海へ送ってやろうぜ」
 二人を連れ、ウタは『迦楼羅』を炎翼として宙に待っていた。その背ではまだまだセッションは続くぜという意思を受け、二人がなおも風を呼ぶため曲を奏で続けている。
「俺たちの音楽を葬送曲としてやろう。「死者の日」にもかけてピッタリかも」
 その声に従い、二人はウタの背に突風を吹かせ加速させた。炎の翼がたっぷりと風を喰らい、大きく燃え上がる。その翼をはためかせ、ウタは地上のガルトゥーウの中心に飛び込んだ。
 地表が燃え上がり、その中に残ったガルトゥーウたちが飲み込まれる。そしてその炎が膨れ上がり、内部の機械兵たちが爆発を起こした。
 歌も聞こえぬ爆音が広がり、無軌道な爆風が辺りを薙ぐ。そしてそれが終わった時、それに吹き飛ばされたかのように戦火燃える空は消え元の不思議の空が広がっていた。
 その空の下、ウタは二人とともに演奏を続け鎮魂曲とする。しかしその目は姿を現した長い長い一本道の先、そこにある城にすでに向けられているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『囚われし盤上の遊戯』

POW   :    ルーク(要塞)の駒となり、アリスを守護する盾になる

SPD   :    ナイト(騎士)の駒となり、敵陣を縦横無尽に疾駆する

WIZ   :    ビショップ(司祭)の駒となり、タイミングを見定め敵陣を強襲する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ファング・オブ・ガルトゥーウの軍団が壊滅し、闘争の世界の浸食が抑えられ不思議の国は元の形を取り戻し始める。
 そうして出てくるのは、ただただひたすらに続く長い一本道。これこそがハロウィンの国の姿であり、仮装行列をするためだけに作られた無意味に長いだけの道だ。
 その道の果てには一つの城があった。かつて、この国がまだオウガのものであった時、この国の主だったものが居城としていた場所。
 移住してきた不思議な仲間たちもここに住もうとは思わなかったらしく、ただ枯れた薔薇園に往時の名残を見せつつ無人のまま聳えていたと思しきその城の中。
 白黒チェックの床の広大な部屋に、ずらりと並んだオウガの軍団。簡素な鎧に槍を持った歩兵が一列に並び、その後ろには馬に乗った機兵や城塞の如き重い鎧を纏った戦士、そしてそれらに守られるように煌びやかな王と女王が。
 彼らは鉤爪の男配下のアリス狩りオウガたち。主たる男の命により、この地でアリスと盤の上で『闘争』すべく、軍を成して待ち構えていた者たち。
 しかしこれは『ゲーム』というには余りに不公平が過ぎた。まるで何かに呼び寄せられるかのようにここに集ったアリスは、たった三人。
「トランプに、マインスイーパーに、今度はチェス……どんどん嫌いなゲームが増えてくよ、ったく……」
 白と黒のチェックの床の上、小柄な少年が悪態をつく。
「大丈夫だよ、ダイヤは頭がいいの。私も、あれがこっちに来ないようにするから……」
 大柄な少女が太い腕を見せ、少年の一つ前の列に立つ。
「…………」
 そして二人の顔を交互に見て、赤毛の少女が少年の隣、少女の後ろで身を縮ませていた。
 三人はいずれも、猟書家やその後継と関わったことのあるアリスたち。
 そして彼らはこの遊戯場に捕らわれた時、それぞれに役割を振られていた。少年は|王《キング》、大きな少女は|兵士《ポーン》、そして赤毛の少女は|女王《クイーン》と。
「順番に動かなきゃいけないわけじゃないみたいだけど、下手に兵士をやっつけちまうと後ろがすっ飛んできそうだな……」
「投げてぶつけちゃう、っていうのはありかな……お城以外は多分、持ち上げられそう……」
 開始の合図が始まる前、可能な限り作戦を練る王と兵士。
「あの、わ、私……」
「気にするなよ、多分持ってる力で役が振られてるだけだ」
「あなたが何ができるか、もしよかったらダイヤに教えてあげて」
 たかがゲームに押し付けられた役柄で人としての関係が揺らぐことなどない。二人の言葉に女王も前を向く。
「わ、私……空が、飛べる……他にも……何かできるか……考えるから……」
 高速で盤面を飛び回れれば、何かできることもあるだろう。女王がその決意を固めた瞬間、足元からバラの花びらが舞い上がり彼女の擦り切れた服を赤い豪華なドレスに変えた。
 だがそれらがどれほど賢く、強く、気高くとも、たった三つの駒で勝てる棋譜などありはしない。
 騎士よ、長い長い道を一跳ねせよ。
 僧正よ、絶対優位に奢るオウガに手を食らわせよ。
 城塞よ、アリスを守る盤石の壁となれ。
 さあ乱れ入れ。この盤面を覆す駒、その名は猟兵なり。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『第二章のプレイングボーナス……能力値行動に応じた駒らしく戦う。その際キング、クイーン、ポーン担当のアリスたちと協力する』

 以下アリス達データ。

 キング:赤石・大弥(14歳、男) アリス適合者の王子様×探索者 頭脳派だが小柄で体力はない。
 クイーン:ラモーナ・ロス(13歳、女) 種族不明(元は人間)のプリンセス×国民的スタア 戦闘能力は低いが精神力が強く自立心も強い。
 ポーン:クララ・ブラックウッド(15歳、女) アリス適合者の力持ち×スーパーヒーロー 大柄で力が強いが自分で考えて動くのは苦手。

 より詳細を知りたい場合大弥とクララは『#小さなダイヤと大きなクラブ』、ラモーナは『#野薔薇は独り行く』タグで登場しています。
初志・貫鉄
即興共闘歓迎

「嫌いになるのは勿体ねぇな。此処は知恵が活かされる場だろう?」

小柄な少年の肩にぽんっと手を置き、声をかける。

「ここに頑丈そうな【要塞】があるだろ?巧く使って、自分の身を守り勝利への路を開いてみな。」

覇気を練り上げて力を溜め、限界突破のリミッター解除。
UCを使い、不可視の手は赤石の側に待機。攻撃は通常の覇気を纏った拳と蹴りだ。
オーラ防御と激痛耐性で敵の攻撃に耐え、第六感と野生の勘で見切りダメージは減らす。

赤石が狙われそうな時は、ニヤリと笑い言ってやろう。
「残念、キャスリングだ。」

赤石を不可視の手で掴み自分の方に引き寄せ、入れ替わり自分が立ち塞がろう。


死絡・送
アドリブ絡み歓迎
POW :ルーク
「ノーブルバット、参上! 仁により加勢する!」
と言ってスーパーロボット、ジガンソーレに乗って参戦。
仲間達と話をして協力しアリスを守るべく
戦う。
ロボの装甲を利用したジャストガードや、念動力によるバリヤーで
敵の攻撃からアリスや味方を守る。
ルーチェ・デル・ソーレで、範囲攻撃。
ラッゾ・プーニョで貫通攻撃と機を見て攻撃も行う。
タイミングを計り、味方を巻き込まぬように
プロミネンスバスターを使う。



 アリスラビリンスはアリスにデスゲームを強いる世界。そしてそのゲームは、現実に存在するものをより残酷に改変したようなものも多い。
 自分がその登場人物として盤上に放り込まれれば、たとえ関係ないと分かっていても元のゲームまでトラウマになり、嫌になってもそれは仕様がないといえるだろう。
 既に二年以上アリスラビリンスを彷徨い、不本意ながら複数のデスゲームに参加させられ生き延びたアリスの少年、赤石・大弥はことさらそういった経験が多いのかもしれない。
 そんな足元の白黒の床を睨む小さな少年の肩に、厚く大きな手が置かれた。
「嫌いになるのは勿体ねぇな。此処は知恵が活かされる場だろう?」
 その男の名は初志・貫鉄(拳食合一の功徳奉士・f26667)。初対面であるこの少年が知恵者だと知っている男の登場に彼はあっけにとられるが、まさにその回る知恵と経験故に少年は彼の正体をすぐに察することができた。
「どうやって知ったかなんてもう聞く気はないよ。ありがとう、また、助けに来てくれて……」
 英雄はいつも突然やってくる。それに対して何かを言うのは無意味と、その助けを借りて長く生き延びてきた彼はもう分かっていた。
「ここに頑丈そうな【要塞】があるだろ? 巧く使って、自分の身を守り勝利への路を開いてみな」
 その肉体はまさに要塞。身一つにして盤石の守りと圧巻の責めを成す肉の城壁。貫鉄はその聡い|少年《キング》に、自らをそれとして使うよう指示した。
 そして盤上に、もう一つ鉄の城塞が降り立つ。
「ノーブルバット、参上! 仁により加勢する!」
 そこに現れたのは死絡・送(ノーブルバット・f00528)の乗るスーパーロボット『ジガンソーレ』。その空に聳える鉄の城には、まず赤毛の少女が反応した。
「あ……前に、見たこと、ある……」
 |女王《クイーン》の役を振られた少女ラモーナ・ロス。彼女が今以上に何も知らず死の迷宮を彷徨っていた時、ジガンソーレはその眼前で迷宮を破壊し力尽くで道を開いて見せた。その時言葉を交わすことはなかったが、その見た目の印象は強く流石に見忘れることなどはなかった。
 そしてまた、大弥やそのパートナー、クララ・ブラックウッドとも彼は面識があった。とりわけクララとは一度リングパートナーとして共に猟書家と戦った中でもある。その時はロボットには乗っていなかったが、声と名を出すことで自分であることを知らせると、二人もロボの巨体を見上げ頷いた。
「クララ嬢、相変わらず壮健そうでなにより。皆もよろしく頼む」
 セクハラにならないよう言葉を選びつつ、ジガンソーレは貫鉄と逆側、クイーンサイドのルークの位置につく。
 そしてそれを対局開始の合図としたのか、対岸に並ぶ敵兵士たちが一斉に進軍を始めた。
「来た……それじゃ、行ってくるね……!」
 敵兵の進軍を受け、アリスの|兵士《ポーン》、クララも前に進む。そのボリューム感溢れる巨体は一騎打ちでなら敵の兵にも劣らぬ力が見て取れる。実際に接敵すれば、彼女は敵兵を構える武器ごと掴み上げ、床に叩きつけて一撃で粉砕して見せた。
 だが兵の駒の本来の持ち味はその数。一人粉砕したところでその両脇から、彼女の両胸を貫くかの如く槍が突き出された。
「お触りは厳禁だ」
 それに対して、巨大な手がその直前に割り込みその槍を弾き返す。後ろからついてきたジガンソーレが、クララの前にその手を出し盾としたのだ。五メートル級のロボット、いかにクララの体……とりわけ胸が大きいとは言えど、その胸部を片手で守り包むくらいは容易い。念のためバリアも足せば、その全身まで覆うことも可能だ。
 そのまま胸部からビームを放ち、兵士たちをなぎ払う。さらに兵がいなくなった後ろから騎士が一体跳ねてきたが、もう片方の手をロケットパンチで放つことによってそれを空中で撃墜した。
 横の群れを薙ぎ、縦に迫る敵を貫く。それはまさに縦横に無限に突き進むルークの動きの如し。
 しかしいかにルークといえど隣に味方がいればそれを越えて突き進むことは出来ない。王側の兵士たちは進軍し、既に自陣へと入ろうとしていた。
 だが、その一歩を踏み出そうとした瞬間兵は砕け散る。
「我が意、我が覇気、未熟なれど遠方へ差し出す掌と成らん」
 こちらは覇気を練り上げ待ち構えていた貫鉄。ルークの役目は攻めだけではない。王を守る守りの要もまたルークの重要な役割となるのだ。
 これがチェスだというなら、自陣最奥に到達した兵士は|昇格《プロモーション》することになるのは想像に難くない。女王の砦が攻めに出たのを見て、王は自らの砦に動かず守れるか問い、そして砦はその命に従ったのだ。
 そして万一女王側の兵が『成った』ところで、それはクイーンが飛んで手ずから仕留めることだろう。ラモーナの足元から湧き出る赤い花は、彼女がその意思を明確にしていることを表していた。
 ならばあとは小さき王を全力で守るのみ。貫鉄は迫る兵たちの槍を研ぎ澄まされた感と鍛え抜かれた肉体で避け、あるいは受け、その覇気纏う拳と蹴りで次々粉砕して見せた。
 最早雑兵は当てにならず。兵が消え開いた盤上を、高速で屈折しながら移動する鋭き影。一体の僧正が、前に出た兵と砦の間を抜け王へと迫った。
 瞬時に王の眼前まで迫り、その心臓を抉らんと手に持った杖を一突きにする。狙いすまして突き出されたその先端は。
「残念、キャスリングだ」
 分厚く力強い要塞の手に掴み取られていた。ニヤリと笑う会心の笑顔の貫鉄と、ほんの一瞬前まで彼がいたはずの場所に移動している大弥。
 貫鉄は【金剛夜叉明王尊掌】の手を常に大弥の傍らに置き、いつでも彼を動かせるよう備えていた。物体操作のユーベルコードの、これ以上ルークらしい扱い方もないだろう。
 チェックが入ってからのキャスリングは反則だが、僧正は律儀に一直線には王に突っ込んでこなかった。切り返しの瞬間を察し貫鉄が自らの手を動かせば、反則の誹りを受けることもなく王を守りに入ることができる。
「まあ、そうなっても関係ないけどな」
「ルールなんていちいち守ってられるかよ」
 目的はチェスに勝つことではない。アリスたちは生き延びること。そして猟兵たちはその先にいる大敵に追いつくことだ。この局を乗り越えるのは、ただその為のみ。
「よし、いくぞ!」
「太陽の紅炎が一切の邪悪を焼き尽くす、プロミネンスバスター!」
 ルークは進むだけでなく戻ることもどこまでもできる。即座に後ろを向いて放たれた送の【プロミネンスバスター】と挟み込むかのように、貫鉄は練り上げた覇気を全て乗せた拳を僧正に叩き込んだ。
 二つの大力に挟みこまれた僧正は跡形もなく粉砕され、盤から取り除かれる。
 まず一局を制した肉と鉄の巨大な要塞は、前後左右にある者全てを守らんと雄々しくそびえるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
世界を書き換えるって割には
アリスを使ったチェスって
いかにもこの世界らしいけど

アリス達と協力して
ここを突破するぜ

行動
チェスのことはよくわからないんで
大弥に適宜声をかけてもらう
チェスならではの有利な動きってのが
あるもんな

さあ行くぜ!
ゴング代わりに
大剣の切っ先をガツンと床に突き立てたら
ゲーム開始だ

大弥の助言を活かしながら
クララやラモーナと協力

クララの正面の敵を
或いは飛行するラモーナに気を取られた相手を
俺が突撃してぶっ壊すぜ

こんな感じで戦いながら
ある時俺はこう言う
そろそろ頃合いだな、と

で、あちこちから焔が噴き出したり
床が溶解し始める

そう最初に剣を突き立てた時に
地獄の炎を放ち
床中へ延焼させていた

いつまでも
こんなゲームに大人しく付き合ってると思ったら
大間違いだ

炎の動きは当然チェスのルールには縛られない
盤面中を紅蓮が翔ける

駒らを燃やし溶かしたり
溶けた床をはんだがわりにして動きを封じたところを
俺たちが壊す

終幕
駒たちへ鎮魂曲
ひょっとしたら
あんたらも強制されていたのかもな
海で安らかに

お疲れさん>アリスズ


夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】
・アド/絡◎

■行動
皆さんお久しぶりですねぇ。
援護致しますぅ。

【炳輦】を発動、味方全員を覆う『防護結界』を形成しますねぇ。
更に『FMS』のバリア、『FAS』『FLS』の各障壁、『FXS』『FES』の結界を重ねて防御陣を形成、此方からの攻撃は『FIS』の転移で外に送れば良いですぅ。
『FPS』は敵配置と能力を探査、赤石さんに伝え作戦指揮に。
『FFS』は鉄球を取出し、クララさんに『投擲攻撃』を願いますねぇ。
ラモーナさんには『FTS』から取出した手榴弾を渡し、『FDS』と共に結界内上方から[爆撃]を。
後は保護を優先しつつ『FRS』『FSS』の[砲撃]と『時空切断の嵐』で薙払いましょう。



 アリスラビリンスを彷徨うアリスはか弱き存在である。何もわからぬままデスゲームに巻き込まれ、そのままオウガの餌となってしまうことがほとんどだ。
 今ここにいるアリス達はその運命を覆し、幾度となく死の遊戯から逃れた幸運な例外である。しかし、それも自らの力だけで成し遂げたわけではない。そこにはアリスを死の運命から救った、救世主とも言える存在がいたのだ。
「皆さんお久しぶりですねぇ。援護致しますぅ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、まさにこの場にいるアリスの命を幾度となく繋ぎ、先に進む力の目覚めまで見届けたある種始まりさえ知る存在であった。
「あぁ、ありがとう……もう驚きもしないよ」
「あ、また……ごめんなさい、いつも……」
 大弥とラモーナが同時に彼女に挨拶すると、クララが驚いたように彼女を見る。
「あ、あなたも、あの人のこと、知ってるの?」
「うん……やっぱり、覚えてないんだ……分かってるし別にいいけど……」
 実はこの三人が一堂に会するのはこれが初めてではない。だが、その時の状況からしてクララと大弥がラモーナを覚えていないのは仕方のないことだし、その場にもまたいたことのあるるこるもそれは分かっている故に何かを言ったりはしない。
 それに、三人ともがそう言った些末な事情で今すべきことを忘れるような者でないことも、またるこるには分かっていた。
 今すべきことはこのデスゲームを乗り越えること。それはこのアリスラビリンスで真っ先に理解せねばならない、いわばアリスとしての『常識』。
「世界を書き換えるって割にはアリスを使ったチェスって、いかにもこの世界らしいけど」
 そのいかにもこの世界らしい考え方と状況に、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)はそう感想を述べた。
 アリスラビリンスを闘争の世界に書き換えんとする鉤爪の男が、その兵を突破された時の備えとして用意していたのはアリスを巻き込む死の遊戯。それは可能な限り闘争を模したゲームを用意しておくという彼なりの妥協案なのか、あるいはまさに闘争の世界が書き直されていることの証か。
「チェスのことはよくわからないんで、色々声をかけてくれ。チェスならではの有利な動きってのがあるもんな」
 ウタはまず大弥に後ろから指示役となるよう依頼した。ウタ自身はアリス達とは初対面だが、事前の情報でそれぞれの特徴や特技は分かっている。アリスたちがそう言ったことを初対面の相手に知られていても驚くこともないのは、やはり彼らが猟兵の助けを得て生き延びてきた故のある種の慣れだろう。
「ああ、とりあえず……そろそろ来そうだな」
 敵陣が動きだそうとしてるのを察した大弥の声に、二人の猟兵は盤最後列の両脇、ルークの位置につく。
「さあ行くぜ!」
 ウタがゴング代わりと言わんばかりに大剣の切っ先をガツンと床に突き立てると、まさにそれを合図にしたかのようにオウガの陣が動き出した。
 幾人かは粉砕されているものの、生き残った兵たちは恐れる様子もなく前進してくる。
「気を付けてくれ、チェスは駒が少なくなると自由度が増して一気に展開が読みづらくなる!」
 敵の奇襲に気を付けるように大弥が指示を出す。それと同時に、兵が消えて開いた道からもう一人の僧正も早くに動きだしていた。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
 それに対しるこるは【豊乳女神の加護・炳輦】を発動、防護結界を張る。更に『FMS』のバリア、『FAS』『FLS』の各障壁、『FXS』『FES』の結界と、防御能力を持つ兵装をありったけアリス達の前に固め、とにかく敵の攻撃を届かないように守勢を固めた。
 いかに経験豊富とはいえ本来戦うための存在ではないはずのアリスを守るということに加え、この盤上では自手で踏めば一方的に敵の駒をとれるわけではない。例え敵の手で|駒《アリス》の下にたどり着かれても、そこで倒されなければ取られることはないし、さらに一戦し勝ってしまえば踏まれた側が逆に取ることさえできるのだ。
「このっ!」
 前進したクララが敵兵の一体を捕まえ、力づくで投げ飛ばす。それは後方の城塞にぶち当たり、相手を巻き込み倒れ込むことで邪魔になる状態に逆戻りさせた。
 だが、その瞬間に逆側から僧正が奇襲をかけ、クララの命を狙う。
「おっと、させないぜ!」
 そこにはウタが一機に滑り込み、僧正の杖を受け止めていた。
 クララが|兵《ポーン》の役を振られたのは単純な力強さと、その裏返しである搦手や特殊能力の少なさ。自身のパートナーが奇襲や多方面攻撃には弱いことを知る|王《大弥》の依頼により、その隙のカバーにウタは入ったのだ。
 奇襲に失敗したと悟った僧正は即座に引き、自陣へ戻っていく。しかしそれを追うように、ラモーナが宙を舞い前へ出ていた。
 クイーンの突出に、引いた僧正が再び前に出る。高速での助走からの跳ね上がりでその細い体を捕らえようとするが、その瞬間にラモーナは一直線に自陣へ戻っていた。
「坊さんの癖に欲が深すぎじゃないか?」
 跳ねた僧正の足元、そこには入れ替わるように滑り込んだウタが剣を下段に構えていた。
 クイーンはキングを除けば最も価値の高い駒でありそれ故囮としての効果も高い。その餌に釣られた生臭坊主は、逃れることできず燃える剣に断罪された。
「お見事な指示ですねぇ」
「あれだけ教えて貰えたからだよ」
 大弥の指揮をるこるが褒めるが、それの下になっているのは他ならぬるこるが『FPS』によって集めた敵配置と能力の情報。彼の本当の『力』を良く知るるこるは、|王《キング》を最も効率よく動かすにはどうすればいいかを知る|指し手《グランドマスター》とも言えた。
 敵の駒も残りは少ない。だが、そうなればいよいよ敵女王も動き出すし、王は逃げる構えを露にしだすだろう。
「お二人とも、これをぉ」
 それに備えるこるはクララに鉄球を、ラモーナに爆弾を渡した。一方的側も邪魔になっていた兵士が退き、城塞が突進する道が開く。
「そろそろ頃合いだな」
 その様子にウタが呟く。それは総力戦の始まりか。否。
 盤の全体から炎が吹きあがり床を溶かし始めた。
「いつまでもこんなゲームに大人しく付き合ってると思ったら大間違いだ」
 ウタは最初に剣を突き立てた時に【ブレイズフレイム】の地獄の炎を放ち、床下に延焼させておいたのだ。それが行き渡ったのを見計らい、一気に盤の上まで吹きあがらせる。
 熱で歪んだ床は駒の足元を乱し、それらしい進軍を困難にさせた。
 盤をひっくり返す、チェスとしての最大のマナー違反であり、そしてこのデスゲームにウタが出した答え。
「今ですよぉ」
「はい!」
 るこるの声に従い、クララが渡された鉄球を思い切り投げる。相当な重量があるはずのそれは、打ち出された砲弾の如き剛速球となり前方にいた兵を粉々に砕き、さらに今動かんとしていた城塞にさえ突き刺さった。
「今度は、本当に行くから……!」
 そしてその頭上を越えラモーナが飛ぶ。その手に持った爆弾を落とし、同時にるこるの操作する爆弾『FDS』も同時に大爆発を起こした。
 さらにその後ろでは射撃能力を持つ兵装たちが射撃を繰り返しそれに追従していく。さながらその進軍は、女王に従い進軍する兵たちの如し。元より8体いるべき|兵《ポーン》を一人しか用意させずに始めたゲームなのだ。こちらで数を足して何が悪い。
 それに異を唱えるように崩れた体を強引に起こし城塞が突撃する。しかしその突進にカウンターするように、空間が断裂しその城塞を切り裂いた。
 それはるこるの放った時空切断。彼女は陰に王を支える参謀ではない。その命を守るため世界を回り、埒外の力を持ってオウガを薙ぐ猟兵なのだ。
 炎と切断の嵐。それに蹂躙された盤上で、ウタは歌声を上げる。
「ひょっとしたらあんたらも強制されていたのかもな、海で安らかに」
 鉤爪の男が力を持って従えた存在であるアリス狩りオウガたち。果たしてその真意は如何な者だったか。
「皆さんお疲れ様でしたぁ」
 いつもと変わらぬ笑顔で言うるこるに、アリス達はまた彼女、そして猟兵のお陰で生き延びたと同じように胸をなでおろすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧崎・紫苑
チェスにおいては最弱の駒こそが最強であると教えてやろう

こちらの役回りは僧正
既に敵の僧正が粉砕されている以上、注意すべき相手は騎士と女王くらいだろう
それ以外の駒は基本的に直進しかせず、王は自ら動くことも少ない
斜めのラインから切り込んで敵の騎士を排除しつつ、城塞などの射線に入らないよう注意して動くが……本当の目的は、自身が王手をかけることではない

クララとか言ったな
露払いはこちらで済ませた
お前はただ、ひたすら直進して昇格を目指せ
最奥まで到達すれば、お前はもはや兵卒ではなく女王にもなれる

足りない分はUCで補強してやり、最後はクララ自身に無双させてやろう
縦横無尽に、好き放題暴れるがいい



 チェスの駒には価値が定められている。キングを別格とすれば最も高いのがクイーンで、それに次ぐのがルーク。ナイトとビショップはその下で同格であり、そしてある種当然ながら最も価値が低いとされているのがポーンだ。
 しかし、それはあくまで一般論でしかない。局面が進めば必要な駒は変わってくるし、高価な駒を捨て駒にし安価な駒で王を詰める手になることも往々にしてある。
「チェスにおいては最弱の駒こそが最強であると教えてやろう」
 霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は今この局面において、真に価値ある駒は最も無価値とされるそれであると確信していた。
 その駒を活かすため、己は何となりどう動くべきか。それを確かめるべく、紫苑は空白の増えた盤上をしかと見る。
「既に敵の僧正が粉砕されている以上、注意すべき相手は騎士と女王くらいだろう。それ以外の駒は基本的に直進しかせず、王は自ら動くことも少ない」
 二度の局面で、敵の多くの駒は破壊されている。生き残っているのは騎士と城塞が一つずつに、女王と王、そして二体の兵士のみ。
「こちらの役回りは僧正」
 既に敵のその駒は潰えている。奇襲をかけるかの如く紫苑は瞬時に敵陣に切り込むが、それを捕らえんと騎士と城塞が動き出した。
 跳ねた騎士の蹄鉄が紫苑を踏み潰さんと上空から強襲するが、紫苑はそれに怯むことなく突き進む。そしてその身が馬の脚の下を瞬時にすり抜けると、勢いよく叩きつけられた馬の足が盤を踏み抜きそこに埋まった。
 自慢の足を取られた騎士がそれを抜こうとしたその瞬間、紫苑は切り返し『万能医療義手』からチェーンソーを突き出し騎手を一撃のもとに切り払う。
 そしてそのまま再度の方向転換でそこを離れた瞬間、城塞が騎士の残骸を踏み潰しその場を驀進していった。
 城塞の直線状を避け迫る紫苑。それを迎え撃つべく、唯一同じ動きができる女王がついに動きだした。その動きは城塞の如く力強く、僧正の如く早い。
 紫苑は素早く方向を変えその突進を避けるが、女王は外れた場所から最短距離を直進し紫苑に追いすがる。そして手にした扇を振るえば、それは閉じれば短棍、開けば円刃となって紫苑を打ち、刻まんとした。
 何度も場所を移動しつつ女王を迎え撃つ紫苑。その位置は少しずつ後方へ動いていき、女王を自陣奥へ招く形になっている。
 そしてついに兵の初期位置まで下がり、自軍の|兵士《ポーン》と隣り合う場所まで来てしまう。そしてその時、僧正は告げた。
「クララとか言ったな。露払いはこちらで済ませた。お前はただ、ひたすら直進して昇格を目指せ」
 その言葉に、大柄な少女が深く頷き盤上を猛進しはじめた。その力強い歩みは一歩一歩確実に、敵陣奥へと踏み込んでいく。
 それを追おうと女王が踵を返した。その瞬間、その背で大きな爆発が起きる。
「お前の相手は私だ」
 義手から放たれた破壊弾が、女王の背中を大きく穿っていた。仕方なしに女王は再度向き直り、紫苑との戦いを再開する。
 ならばと戻って王の護衛についていた城塞が動く素振りを見せるが、その瞬間紫苑はこれ見よがしに自陣の女王、ラモーナの方に首を巡らせた。
 お前が外れればこちらの女王が王の所まで飛ぶぞ。そう言わんばかりの態度に、城塞は動きを止めその場に留まることしかできなかった。
 結局動けるのはこれだけと、残った兵が揃ってクララへ迫った。
「ナノマシン解放……限界を越えさせてやる」
 その背に、【限界突破服薬術】が飛んだ。特殊な医療用ナノマシンがクララの体に入り、ここまでの負傷や疲れを全て癒してその体を強化改造する。太さを増した両腕が今まさに飛び掛からんとする兵士二体を捕らえ、そのまま力任せに握り潰した。
 残る女王と城塞は最早|動けない《ピン》。事実上無人の野となった盤上をクララは突き進み、ついにその最奥までたどり着いた。
「最奥まで到達すれば、お前はもはや兵卒ではなく女王にもなれる」
 紫苑のその言葉を受けたように、クララの体が黄金の光に包まれた。それは【スーパー・ジャスティス】に似ているが、溢れる力は一介の能力持ちの一般人の域ではない。
 それを見て、まるで役目は終わったとばかりに紫苑は武器を下げ女王から離れようとする。それを女王が負おうとした瞬間、貴婦人の如きその身が粉々に砕け散った。
「あ……ありがとうございます……!」
「縦横無尽に、好き放題暴れるがいい」
 一瞬で戻って来て女王を粉砕したクララに、紫苑は告げる。その言葉を受け、クララは光の帯を残して再び敵陣へ飛んでいった。
 理不尽で非道なゲームだが、条件さえ満たせばそのルールはアリスにも適応される。|昇格《プロモーション》し女王となった|兵士《クララ》は、巨大な城塞を両手で掴み上げ紙屑の如く丸めていた。
 その姿を、|王《大弥》が頼もし気に、そして誇らしげに見つめる。大切の人の栄光は、自身のそれより何倍も嬉しく誇らしいと。
「やっぱり、あなたの方が女王に似合うよ……」
 ラモーナが小さく呟く。その視線の先で、よろけるように一歩だけ逃げだした王の駒を力強き女王が断罪していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『猟書家『鉤爪の男』』

POW   :    プラズマ・クロウ
命中した【左腕】の【鉤爪】が【超電撃放出モード】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    インサニティ・ブレイド
自身に【体を失っても極限の闘争を求める狂気】をまとい、高速移動と【鉤爪からの真空波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    量産型侵略蔵書
【侵略蔵書で書き換えた『不思議の国』の太陽】から、【奴隷を捕縛する鎖】の術を操る悪魔「【アリス狩りオウガ】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全ての駒が破壊され、チェスボードは完全に制圧された。それはそのまま城の陥落を意味し、これで闘争の世界はこの国の地表からは一掃された。
 しかし、まだ書き換えられた世界が完全に消えたわけではない。ハロウィンの国のはるか400km上空、そこに巨大な機械兵器が浮かんでいた。
 |九竜神火罩《きゅうりゅうしんかとう》。かつて封神武侠界にてオブリビオンマシン哪吒が打ち上げんとした大量破壊兵器。例えいかに地上を制圧しようとも、手の届かない高高度からそれを撃たれては不思議の国は焦土と化し、闘争の果ての滅びの世界へと変じてしまう。
 それを止めるためには、こちらもまた高度400kmまで彼を追わねばならない。しかしその高度は飛行能力のない者はもちろん、あったとしてもそう易々とたどり着ける高さではない。
 鉤爪の男はこの城自体を発射台として用い、九竜神火罩を空へと打ち上げたという。何かそこに手がかりはないかと、猟兵たちは城の抑えをアリス達に任せて屋上へと上った。

 城の屋上、そこは長い道を一望できる高さとスペースが設けられた、この国の頂点に相応しい場所であった。
 だが、そこにはそれ以上のものは何もなかった。
 鉤爪の男がオウガに解体、撤去を命じていたのか、あるいは世界の押し返しに巻き込まれ消滅してしまったのか。高空まで何かを打ち上げられそうな設備や道具は、何一つ残されてはいなかった。
 仕方なし、飛べる者だけが無理をしてでも追うしかない。そう思った猟兵たちの前に、ふわりと何かが舞い降りてきた。
 それは衣服。だが普通の衣服ではない。それらは腕や足、さらには胸元までが多く露出するようなデザインのものがほとんど。そして何より、それら全て長い耳がついた被り物とセットになっていた。
 デザイン自体は千差万別であるが、これらの服は全てこの名で括ることができるだろう。それ即ち、『バニー服』。
 それらは自身が如何な形かを見せるように、皺ひとつない形で広がって次々屋上に並んでいった。
 あまりの光景にあっけにとられながらも、それを見ていた猟兵は気づく。これらの衣装は、全てどこかの世界を想起させるような形をしていると。
 そして知る者は思い出し、知らぬ者は伝えられる。ハロウィンの国においては、舞い込んできた衣装を着ることが何よりの力になると。
 タンクトップとショートパンツのセットを纏えば、400kmまで棒高跳びだってできるだろう。外宇宙まで散歩に出られる超技術素材でできた服なら400kmなど低空と言っていいだろう。ニンジャやヤクザにバニーのデザインを落としこめばまさにアブハチトラズではないか。
 他にもアリスラビリンス以外のあらゆる力とデザインを秘めたバニー服が猟兵の前に並んでいる。これだけあれば望む力を持つ望むデザインのバニー服を見つけることもできるだろう。

 そして400km上空。どれほどの視力をもってしても見えるはずもないほどの下方を、機械仕掛けの隻眼が見下ろしている。
「下らぬ見栄で止まるならそこまでだ。あるいはそれさえ知恵と技で乗り越えるか? さあ、来るがいい。血も、涙も、情けも容赦も、恥も外聞もない。ここにあるのは闘争! ただそれだけよ!」
 全てに期待すると言わんばかりのこの男を。あらゆる世界からかき集めた力を纏い、取れる手段を全て取って。猟兵よ。形振り構わず撃滅せよ!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『第三章のプレイングボーナス……アリスラビリンス以外の世界の力とデザインを持ったバニー服を着て400kmの高度まで上がり、鉤爪の男と戦いつつ九竜神火罩を破壊する』
死絡・送
POW
アドリブ絡み共闘OK
引き続きジガンソーレ参加、仲間達と力を合わせて立ち向かう。
相手のユベコは敢えて受けて、電撃耐性とジャストガードで耐えつつ敵と自分を繋げて相手の動きに制限を駆けに行って見る。
「逃がさん、チェーンデスマッチって知ってるか?」
と相手と繋がり逃さないよう仲間を狙うなら邪魔をしてといやらしい
戦いをしながらこちらのユーベルコードを叩き込む。


ティエン・ファン(サポート)
シルバーレイン出身の除霊建築士です。
明るく善良な性格で、できることがあるならば、できる限りを全うしようとします。
除霊建築士というジョブに拘りがあるため、その知識や技術が活かせそうな場面では、積極的にそれらを使って問題解決に取り組みます。
戦闘時は主武器のT定規と副武器の浄銭貫を用いて、近距離戦も遠距離戦も行います。
キャバリアが有効な場面では、『蚩尤』を使用します。
『蚩尤』は普段イグニッションカードに収納しています。
ユーベルコードは『蚩尤』搭乗時は”蚩尤”とついたものを、そうでないときはその他のものを状況に応じて使用します。

以上を基本として、シナリオに合わせて思うままに動かして頂ければと思います。



 高空に浮かぶ九竜神火罩。それは不思議の国を一瞬にして焦土に変える大量破壊兵器であると同時に、ここにたどり着けぬ者とは闘争する価値もないと鉤爪の男が設定した最後の試練とも言えた。
 その試練の道を、一機のロボットが駆け上がる。
 死絡・送(ノーブルバット・f00528)の乗るロボットジガンソーレは、突破した城の屋上から誰よりも早く飛び立ち一直線に高度400km目指して上昇していた。
 既に機械仕掛けであることを隠さなくなったその目で下を見下ろし、鉤爪の男が呟く。
「ほう、力を纏わずに来たか」
 自らが課した高き試練に対する攻略法、その存在を知りながら男はそれを特別に封じることはしなかった。当然全員がそれを纏ってくると彼は思っていたが、そうではない存在に男は目を細める。
「おめでとう。お前が一番乗りだ。だが着替えも済ませぬうちに跳んでくるとは、そんなにも早く私と闘争したかったか?」
 鉤爪の男の言葉に、送は言葉は返さない。ただ機体を前進させ、組み合うことでそれに答えた。
「なるほど、雄弁な答えよ! ではこちらからも返礼を送ろう!」
 その機体に、男は自らの巨大な鉤爪を突き刺す。そしてそこが別の機構が現れる形に代わり、そこから強烈な電流がジガンソーレに流された。
「ぐおぉぉぉぉぉ!」
 圧倒的な電流が機体を駆け巡り、その各所を爆発させていく。そしてそれはもちろん操縦席の送にも伝わり、甚大なダメージをその身に与えた。
「私に会えただけで満足してしまったか? 残念だがここはゴールではない。闘争の始まる場なのだ」
 他愛ない、と言いたげに男が鉤爪を抜こうとする。だが、その手は巨大な鋼鉄の手に捕まれ引き戻された。
「逃がさん、チェーンデスマッチって知ってるか?」
 その巨大な手を鎖として、自分と鉤爪の男を繋ぎ続けるジガンソーレ。
「知っているとも。あるはずの帰路を断ち大抵は誇りだの男気だの価値のないもので彩られる、無意味で、愚かで、そして美しき闘争よ!」
 その馬鹿馬鹿しさこそ素晴らしいと、鉤爪の男はその戦いを受けて立った。自ら体を寄せ、今度はより深く鉤爪を挿しこみ電流を流す。
「うぐおぉぉぉぉぉ!!」
 さらに大きな絶叫。機体のあちこちから爆発が起こり、送自身にも今度は命が危ういほどの電流が幾度となく流される。
 最早まともに機体を操作することさえ難しい。だがそれでも、相手を掴む腕の操作だけは決して緩めなかった。
 なぜここまで、相手に縋りつくことだけに腐心するのか。
 その答えは、九竜神火罩の最下部にあった。
「ここはこう、で、これがこうなって……」
 巨大な兵器の下部で、牛にも似たロボットが動いていた。それはティエン・ファン(除霊建築学フィールドワーカー・f36098)の操るサイキックキャバリア『蚩尤』。
 それが行っているのは、巨大な手を九竜神火罩の外壁にはわせ、何かを測ること。直接的な破壊行為ではないそれは音も立てず激しい動きもないが、それは機体を通してティエンに九竜神火罩の構造を伝えていた。
 シルバーレインのジョブが一つ、除霊建築士。風水を始めとする不可思議な力も含めた建築で構造物を操るジョブだ。
 それに対し深い拘りを持つティエンは、その知識と力をもってこの巨大な『構造物』を解体してくれんと愛機を駆ってこの高度400kmまで飛んできたのだ。
 そして解体とは乱暴に発破するだけではない。その物体の構造を見極め、無駄なく、安全にばらしていくのも解体なのだ。
 だがそれには確かな技術と知識、そしてそれを活かす情報を得る事前調査が必須。鉤爪の男という超弩級の番人がいるこの場でそれを隠れてやるのは、不可能に近いだろう。
 だから、送はそのための時間を稼いだ。この世界の根源になる力も借りず、誰よりも早く鉤爪の男の前に立ち、その視線を己一人に釘付けにする。
 もちろんそれはオウガ・フォーミュラの攻撃が全て自分に向くということ。オブリビオンの中でも最上級にあるものの攻撃を受け続ければ、命の危機とてあり得る。
「……なるほど、そういうことか」
 鉤爪の男が、ついに気づいた。命を捨ててまで囮となった相手を手放し、そちらへ向かおうとする。だが、埃や男気で繋がれた手は決して離されることはない。
「全てを光に変えて消す!!光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
 離れる前にくれてやる。【光子魚雷一万発発射!!】が密着距離から全て男に叩き込まれ、その上でつながれた手が吹き飛んで衝撃を消すことすら許さない。
「よし……ここだ! インパクトパイル、セット! ぶち抜くよ!」
 そして同時に、ついに見つけた破壊すべき点にティエンが【蚩尤衝撃杭】を叩き込んだ。構造的な急所に差し込まれた杭から衝撃波が駆け巡り、巨大な兵器を内部から揺さぶり破壊していく。
 その衝撃で九竜神火罩が大きく揺れ、ジガンソーレと鉤爪の男がついに離れる。
 鉤爪の男はその場に膝をつき踏みとどまるが、送が意識を失ったのだろう、ジガンソーレはついにその手を離し、ゆっくりと倒れ落ちていく。
「おっと、危ない!」
 その機体を蚩尤が受け止め、400kmからの墜落を防いだ。
 そのままジガンソーレを抱えた状態で、蚩尤は地上へと飛んで戻っていく。
「兵は拙速を貴ぶ……というやつか、くく……面白い……!」
 有利を捨ててでも喰らわせに来た最初の一手。それがこの闘争を壊す楔になってくれるかと、鉤爪の男は傷の入った九竜神火罩の上で下を見下ろし笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧崎・紫苑
このような服で空が飛べるとは、最後まで不可思議な世界だな
それ以前に、これは本当にバニーガールの服なのか?
既存の装備にウサギの耳をつけただけのものも散見されるが……

自分の戦闘スタイルに合わせ、機械鎧のような服を選択
殆どパワードスーツと大差ない無骨なものだが、むしろ好都合

ブースターで超高空まで一気に飛翔し距離を詰める
敵の攻撃は敢えて受け、その瞬間にUC発動
指定する属性は電気
鉤爪からの電撃を全て吸収し、重粒子を電荷するのに利用する
「鉤爪が抜けないことが仇となったな。この距離では避けられんぞ

触れた物体を原子崩壊させる荷電粒子砲を零距離で放たれれば防ぎようがあるまい
文字通り、塵も残さず消滅しろ


初志・貫鉄
即興共闘歓迎

選ぶ衣装は、ウサギの神の衣装(着ぐるみ)。
「どっ根っ性っ!」
そんな掛け声と共に、うさぎ三段跳びでぴょーんと飛んでいってやろう。なに、神の力だ、月より低い高さなんて軽いだろ?

移動中にきっちり練り上げた覇気を纏い、力を溜めリミッター解除からの限界突破!
第六感と野生の勘を研ぎ澄まし敵攻撃の見切りを重視しつつ、オーラ防御と激痛耐性で直撃は耐える。

今回の個人的目的は、戦場の足場になる九竜神火罩の破壊を優先。
通常攻撃と混ぜ、わざと少し大振りのモーションでUC発動。鉤爪の男に回避させ、無駄うちに見せかけて、足場という地形を破壊方便で特効を乗せて九竜神火罩を攻撃だ。



 ハロウィンの国に聳える城の屋上。頭上400kmに九竜神火罩を戴くその場所に、いくつもの衣服が並んでいた。
 無節操なまでに様々な世界のデザインが取り揃えられ、しかし兎耳だけは律儀に全てについている。
「このような服で空が飛べるとは、最後まで不可思議な世界だな」
 その奇妙極まる光景には、霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)も思わずそう唸らざるを得なかった。
 アリスラビリンスは何でもありの不思議な世界。だけれどそれ以外の世界の力を呼び込んで、そして何でもありの不思議を成す。
 そう、この服はこの世界の力の根源であり、纏った者に空をもかける力を与える不思議のバニー服。これを身に着け、九竜神火罩まで飛ぶ力を得る。それが猟兵たちに残された鉤爪の男を追う方法であった。
「それ以前に、これは本当にバニーガールの服なのか? 既存の装備にウサギの耳をつけただけのものも散見されるが……」
 中には一般のバニーガールの印象とは程遠い、全身鎧や宇宙服のようなものまである。紫苑の疑問も至って最もではあるのだが、この世界においてその疑問は最早言い尽くされ、そして無視しつくされてきたものであるし紫苑もそこに過剰にこだわるつもりはない。
 そしてその中で、紫苑は一つの衣装に目を留める。
「ふむ……これは良さそうだ」
 それは全身を覆う武骨な機械鎧。殆どパワードスーツと大差ない無骨なものだが、元より機械化された体を持つ彼にとってはむしろ好都合。
 実際それを纏ってみれば、まるで自身の機械装備が拡張されたかの如くその身に馴染み、見た目の違和感も町長部の一点、可愛らしく突き出た兎耳を除けばまるでなかった。
 まるですべてが分かっているかの如く紫苑は脚についたブースターを開き、そこから噴き出すジェットで軽々と空へと舞う。それはこの先に待ち受ける男と同じ人型サイズまで縮小されたキャバリアか、あるいは全身をパワードスーツに包んだヒーローか。
 一息に400kmを飛び越える紫苑。その隣を、『跳び越えて』いく男がいた。
「どっ根っ性っ!」
 それは真っ白な全身もこもこの大変可愛らしい着ぐるみ。しかしてその顔の部分からは、初志・貫鉄(拳食合一の功徳奉士・f26667)の実に男らしい顔がのぞいていた。
 彼が選んだのはウサギの神。三段跳びで駆け上がるその姿は、正に一っ跳びと言わんばかり。
「なに、神の力だ、月より低い高さなんて軽いだろ?」
 神というからにはヒーローズアースか、あるいは月の兎は日本固有の伝説故にサムライエンパイアか。ともあれ兎は満月になる度月に餅をつきにいかねばならないのだ。それに比べれば400kmなんてまだまだ大気圏内。
 そんな馬鹿ななどと言う方がナンセンス。何しろここは不思議の国。難解な理屈より圧倒的な屁理屈の方が何万倍もの力を持つ世界なのだ。
 そんな力で跳躍し、男たちは九竜神火罩へとたどり着いた。
「歓迎しよう、力纏いし者たちよ。ゆくゆくはお前たちの力となる世界も闘争に……」
 待ちかねた、と言わんばかりに言う鉤爪の男に対し、紫苑はブーストを緩めることなく挨拶無用とばかりに一気に肉薄した。
「これはこれは、猟兵とは私以上に闘争に貪欲なようだ!」
 その突進を、男は自身の鉤爪を突き出して受け止めた。電流ユニットが剥き出しになった爪が紫苑を捕らえ、そこから超高圧の電流が一気に流される。
 紫苑の纏うバニーは金属製。電流に対する防御力など無いに等しく、それはそのまま中の紫苑へと直撃する。
 そしてそれは、紫苑も分かり切っていたことであった。
「最先端の癌治療器具の応用だ。……排除される癌細胞は、貴様自身だがな」
 紫苑は【超荷電重粒子砲】を発動、自身の装備武器を荷電重粒子砲モードに変えた。指定した属性を喰らうその砲が餌としたのは、当然今流され続けている電気属性。こうなれば、防御の薄さはそのまま吸収力の強さに丸ごと変換される。
「ほう……喰らうか、この私を!」
 自身の力が吸収されるのを見て、鉤爪の男はなお笑んだ。だが電撃を止めることはなく、それどころかさらに力を籠め、鉤爪を紫苑に食い込ませる。
「だが、電流を喰らうとて鋼はどうか? その体、槌として使わせてもらおう!」
 電流は防げても鉤爪が突き刺さる物理ダメージまではそうはいかない。男は爪の抜けぬほどに食い込んだ紫苑の体を振り回し、電流を喰らうその身諸共貫鉄の方へ叩き付けんとした。
「なんの!」
 直撃の瞬間、貫鉄は覇気とオーラを全開にして攻撃を受け止めた。400kmの跳躍の間、練りに練った気を全て前方へ張り出し、振り回された紫苑を包み込んで彼へのダメージを全て打ち消さんとする。
 さらには直撃の瞬間力の方向を感覚的に見切り、全て自分の方へ流させることでも仲間へのダメージを抑える。だがもちろんその分衝撃は自分が受けることになるのが、そのダメージも鍛え上げた体と強靭な精神で抑え込み、貫鉄は耐えた。
 だがそれでもオウガ・フォーミュラの一撃は重い。大きく吹き飛ばされ後方の壁をめり込ませながら激突する貫鉄。
 その身を強引に起こし、さらに大きな拳を振りかざして貫鉄は鉤爪の男に襲い掛かる。だが、負傷が重いのかその動きは大ぶりかつ緩慢で、鉤爪の男は紫苑を片手に持ったままひらりとその一撃を躱した。
「旅路往く我らに、厳しき眼の明王尊が庇護と路切り開く力を此処に」
 それでも、貫鉄は諦めない。【馬頭明王尊旅路開拓】の拳を幾度となく繰り出すが、それは全て鉤爪の男を捕らえることはなく、ただ一瞬前に彼がいた場所を抉るのみとなっていた。
 片や強靭な爪に囚われ、片や一撃も有効打を当てられない。両者ともに万事休すか。
 否。
「全く、大した動きだぜ。おかげで誤爆の心配もない」
 何度かの空振りの後で、貫鉄がにやりと笑う。その拳は今度も鉤爪の男を捕らえられず足元を抉るばかりであった。そう、足元にある、九竜神火罩の装甲を。
 貫鉄は元より鉤爪の男に攻撃を当てるつもりはなかった。九竜神火罩を破壊することもまた、彼を倒すことと同じくらいに大事なことだったからだ。当然あからさまにそちらを狙えばすぐにそれを看破されようが、空振りの体を取っておけばある程度時間を稼ぐこともできる。さらに放つ技は地形破壊を効果とするもの。例え僅かな時間でも、それで壊せる範囲は狭くない。
 そして、囚われ続けた紫苑もまた。
「この電流……実に効いたぞ。おかげで過充電もいい所だ」
 オウガ・フォーミュラを消滅させられるほどの荷電重粒子砲の起動にはどれほどの力が必要だろうか。鉤爪の男から直打ちされる電流は、命を削らんばかりのその威力さえ動かすほどのエネルギーを食わせてくれた。それは突き刺さった爪の痛みに耐える価値のあるほどの力。
 あるいは吸収を始めた時点で紫苑を手放すという選択もあったかもしれない。だが、もう一人の敵である貫鉄の存在と、何より鉤爪の男の技の特性がそれを選ぶことをさせなかった。
「鉤爪が抜けないことが仇となったな。この距離では避けられんぞ」
 彼が突き刺している紫苑の体は、武器であり今は荷電重粒子砲となった機械装甲と一体化している。ユーベルコードを解除し、紫苑を手放そうとする鉤爪の男。だが、既にすべての準備は整った。これ以上待つ必要など紫苑にはない。
「触れた物体を原子崩壊させる荷電粒子砲を零距離で放たれれば防ぎようがあるまい……文字通り、塵も残さず消滅しろ」
 密着距離から、全てを消す一撃が放たれた。それは鉤爪の男を飲み込み、崩壊させていく。
「全ては……この時のためと……!」
 体の大部分を消し飛ばされながら鉤爪の男が呻く。男たちにとって闘争とは手段でしかない。ただ勝利、世界の根治という目的があってこそ。
 アリスラビリンスの高度400kmで、無意味な闘争を意味持つ破壊が喰らっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「どちらかと言えば、着慣れた服装の方が動きやすくていいですね。」「そろそろ、あなたも躯の海へ帰る時期です。」「(槍を持った白ウサギ達を召喚しつつ)本来なら杵を持ったウサギさんを呼び出すべきなんでしょうが、詠唱の都合上仕方がありません。」
魔法の箒に跨って【空中戦】と【空中機動】の技能を使用します。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【白色槍兎騎兵団突撃】を【範囲攻撃】にして、『猟書家『鉤爪の男』』と戦場全体を纏めて巻き込めるようにして【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【第六感】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の猟兵の方との絡み等は、お任せします。



 このハロウィンの国の力の源であり、原住民とも言える異世界バニー服。それを纏うのは空を飛ぶためのみならず、その他の力を得るためにも、これを積極的に着る必要があった。
「どちらかと言えば、着慣れた服装の方が動きやすくていいですね」
 だが、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)はあまり着替えること自体には乗り気ではない。幸い飛行能力はあるため、とりあえず兎耳がついた軍用ヘルメットだけ被りあとは自前の箒で九竜神火罩へと飛び立った。
 そのまま高度400kmまで達し、鉤爪の男がまつ九竜神火罩へとたどり着く。
「よく来た。それがお前の妥協案か。ならばいいだろう。どれほど通じるか試してみろ!」
 おざなりな明の仮装を見て、鉤爪の男はそう笑う。だがそれは嘲りではなく、これからの闘争に期待する狂気の笑み。
「そろそろ、あなたも骸の海へ帰る時期です」
 その男に、明は静かにそう帰した。それと同時に箒を動かすと、そのすぐ下を真空の刃が切り裂いていく。
 不思議の国の空へ消えていくその刃、まともに当たれば人の体など軽く両断されるだろう。そしてそれほどの一撃を、鉤爪の男は軽くその左手を振るうだけで放って見せていた。
 正面切っての戦いは不利。そう考え、明はさらに空中を飛び回って相手を攪乱、常に情報に位置取ることで狙いを反らす。
「生憎だが、私はまだ満足していない。帰るには早すぎる!」
 超速機動でそれを追い、幾度となく明を追う鉤爪の男。空中という有利をもってそれを何とか明は躱し続けるが、相手は飛行しないにもかかわらず平然とこちらに追いついてくる。
 しばしの追いかけっこ。だがしかし、ついに鉤爪の男の左手が明を捕らえた。
 凄まじい力で振り抜かれた鉤爪から放たれた真空波が、明の体を真ん中から切り裂いた。
「……ようやく、追いついたぞ」
「残念、それは残像です」
 確かな手ごたえ。よくやった、と言いたげな鉤爪の男の言葉に、帰ってくるは明の変わらぬ口調。そしてその次には、まるで違う調子の歌声がその口から紡がれた。
「ソソラ ソラソラ ウサギのランス~♪」
 切り裂かれた明の残像、その横から、【白色槍兎騎兵団突撃】部隊が槍を構え突撃してきた。
 明の空中での回避、それは決して手を抜いてはいないが、最速ではなかった。何度となく回避を繰り返し、相手が自分に追いついたその瞬間。そこにオーバーロードを注いだ最速を合わせることで、相手を完全に振り切ったのだ。さらにオーラの守りも切らせることで、相手に切った手ごたえも与え勝利を確信させ僅かにでも隙を作ろうとも。
 そしてそここそが勝負の決め所。
「本来なら杵を持ったウサギさんを呼び出すべきなんでしょうが、詠唱の都合上仕方がありません」
 自分が仮装したくはないが、元からウサギな配下たちなら変わりなし。突撃陣形を組んだ白ウサギたちは、がら空きとなった鉤爪の男の体に断続的にぶつかりダメージを与えていく。
 さらには数の都合そこからあぶれた者は、勢い衰えることなくステージである九竜神火罩にそのままぶつかっていく。どちらにかかるか分からぬ輪郭ぎりぎりを攻める者もいて、その波状攻撃は鉤爪の男に対処の判断を付けさせない。
 鉤爪の男の正体は等身大オブリビオンマシン。その驚くべき事実は、そのまま守るべきを守れぬ不利として今は彼の欠点となっていた。
「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です」
 これはオブリビオンと戦うとき必ず言う、明の常套句。
「己が勝利も栄光も求めぬか? つまらぬ無欲……いや闘争の過程そのものを望み、結果はどうでもいいと……もしそうならば、私はお前を讃えようぞ!」
 ウサギに槍衾にされながら言う鉤爪の男。それにも変わらぬ明の表情は、彼に何の答えも返すことはないのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
さて、大詰めですねぇ。

相変わらず育ち過ぎておりますので、前回と同じ服は難しそうですぅ。
『今の私+αのサイズで着用可能』&『飛行能力の増幅効果有』の『バニー服(デザインお任せ)』を求め着用、『FAS』の飛行で向かい、お相手しましょう。

『FLS』の空間歪曲障壁と『FMS』のバリア、『FES』の対電結界を展開しますねぇ。
鉤爪の男の動きを『FPS』で探知、『左腕』の動きに合わせて先程の『三重の防壁』で抑えると共に『FIS』で『範囲外の上方』に転移、退避すれば回避は可能ですぅ。
そして【朙噐】を発動、全『祭器』を『元数×Lvの二乗個』の複製を形成しますねぇ。
『制御力強化』も有る以上、この数でも問題無く扱いきれますので、『FBS』は鉤爪の男を包囲し回避を阻害、『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FGS』の重力弾で狙いましょう。
『FPS』複製は神火罩の情報を探知、『構造物破壊』に向いた『FDS』を神火罩の破壊に用いますねぇ。

終了後の膨大な『反動』は覚悟の上、一気に叩いて参りますぅ。


木霊・ウタ
心情
望み通り闘争してやるってのも癪だけど
海へと還してやるぜ

バニー服
…なぜバニー…って
まあアリスラビリンスならそうか
有り難く力を貸してもらうぜ

この長袍っぽい服で

封神武侠界由来のパワーを感じる
内功ってやつ?

爆炎で加速し軽功で空を駆け上がる
服の力を借りた今なら400キロもすぐだ

戦闘
炎翼で飛行

気を込めた獄炎纏う大剣で
男と神火罩を纏めて薙ぎ払う
剣風は焔を孕んで
ちょいと離れていても届くぜ

男が庇えばダメージを与えられる(かも知れない)し
でなければ神火罩にダメージを喰らわせられる

まあ簡単にはいかないだろうけど
傷を炎で補いながら
電撃を内功たる気の力で押し返しながら
しつっこく食い下がるぜ

で熾だ

神火罩を操作して自爆スイッチを入れたり
打ち上げに必要な機能を爆破

鉤爪を操作して
自身や神火罩へ爪と電撃を喰らわせたり
爪を爆破する

勿論抵抗はするだろうけど
その分攻撃が鈍るだろう
一瞬でもその機を逃しゃしない
火勢強めて一刀両断

そのまま更に火力を高めて
紅蓮の光刃の大焔摩天の一閃で
神火罩を滅す

事後
鎮魂曲を奏でる
海で安らかにな



 幾人もの猟兵が高空へ飛び立ち、そして自身も傷つきつつ確かな手応えと共に戻ってきていた。
「さて、大詰めですねぇ」
 まずは夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。その姿は、上は合わせの襦袢、下はプリーツ付きハイレグにパレオのようにマントを付けたという一風変わった形状。肩には天女の羽衣を想起させる形で帯がたなびいている。
 全体的に和装だが、少しちぐはぐさもあるその格好。それもそのはず、彼女がかつてここに来た時に着用したこのあるバニー服二種が、上下にそれぞれに纏われているのだ。
 当時とは比べ物にならないほど成長した体を覆うことはできずとも、自由度の高い襦袢が本来下半身用の布まで使って目いっぱい広がれば半分はぎりぎり何とかなる。下半身のハイレグの方はほとんど埋もれてしまうが、マントや学生服で後部の丸出し部分を守れば体裁は保てる。
 そして余った帯を肩にかけ装飾を付ければ、それはまるで豪華な和装天女の如し。かつて二度この国を救った彼女への、この国からの精一杯の返礼がこの姿であった。
 るこるはそれを纏い、正に天へ昇るが如く高き空へ舞い上がっていく。
「……なぜバニー……ってまあアリスラビリンスならそうか。有り難く力を貸してもらうぜ」
 一方でこの世界に訪れるのは今回の戦いが初めてな木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)。移住してきた愉快な仲間たちやここに呼び寄せられたアリスたちとは違う、本当のこの世界の原住民とも言える存在を見るのはこれが初であった。
 そんな彼が選んだのは、長袍のような長袖の服。本来ボタン止めにするはずの側面が開かれ、足が露出するようになっているあたりがバニーアレンジと言ったところだろうか。
 そして当然ながら、頭の上には中華感全くなしの兎耳がついている。
「封神武侠界由来のパワーを感じる。内功ってやつ?」
 とはいえその服から来る力は本物。気功のうち、自らに宿る力を強化、発露する内気功が強化され、普段の自分の力が何倍にも増したように感じられてきた。
「よし、いくぜ!」
 体から爆炎を放ち、まさにジェットの如く空に飛び立つウタ。これ自体は彼自身が普段の戦いでも行うことだが、それは主に短距離の急加速のため。だが、今はそうではない。気脈の本場封神武侠界の力を得たそれは、体の中を最高の効率で巡り軽功となってその体を宙に舞わせ、400㎞の高ささえ一飛びとした。
 そしてその到達点。度重なる戦いで、鉤爪の男は深く傷つき、そして九竜神火罩も歪み、壊れかけている。そこにまたも空をかけて猟兵が現れた。これは彼にとっては死刑宣告ともなりうる状況。しかし男は、凄絶な笑みを浮かべたままその刑吏を出迎えた。
「どうやら外だけではないな。内にもまた何かの力を滾らせているようだ。その力、まさに超弩級と言うに相応しい」
 オーバーロード。かつての迷宮災厄戦の時には無かった、猟兵を埒外の外へ押し出す超克。己が前にいる猟兵がそれを持って己に向かってきたことを、彼は純粋に喜んでいた。
「素晴らしい。今ここに私が求める超弩級の闘争は結実した。さあ、いざ戦おう! お前たちの全てを持って、私の全てを破壊しつくせ! 私はそれを喰らい尽くしてくれよう!」
 左手の鉤爪を振り上げ、男が最後の戦いの開始を宣言した。
 男がまず狙うはるこる。迫る鉤爪の前に、るこるは防御用の兵装を並べそれを受けんとした。
 事前に収集できる情報を可能な限り集め、その軌道上で空間を曲げ、バリアを張り、電気属性に対しての結界を張る。全てが精密に動く兵装は的確に三重の防御を張り、男の恐るべき鉤爪を受け止めた。
 曲がった空間が文字通り機械の精密さを誇る男の狙いを乱し、バリアが固き鉤爪を、結界が流れる電流を防ぐ。命中、物理、属性と敵の攻撃を構成するすべての要素に対応した兵装を差し向け、相手の攻めを止める。
「分解し、理解する……そうだ。闘争は決して野蛮な衝動ではない。あらゆる英知は闘争より生まれるのだ」
 自身の攻撃を理解され防がれたこと、それさえも男は喜ぶ。
「だが、全ての知と策を踏みにじるもまた闘争!」
 そしてそれさえ握り潰さんばかりに、バリアを押しのけ強引に空間を突っ切り、電流を直打ちせんと鉤爪が突き出された。
 男の三つの機械指が閉じる。だがそれは己の固い装甲と打ち合うばかり。中に柔らかき肉の感触を捕らえることはなかった。
「さすがに、お強いですねぇ」
 守りを十全にしたとてそれを貫く力があることは予想できた。るこるは防御が成ったとしても気を緩めず、相手の手が動く前に上空へと避難していた。
 そしてそれと入れ替わりに振るのは熱き剣戟。
 空中に舞ったウタが、自らの装備である炎翼も合わせて滞空しそこから炎を乗せた剣の一撃を放ったのだ。それはまるで物語に出てくる武芸の達人の遠当ての如し。
 優れた使い手は武器が己の体と同じとなり、そして体は気を纏い何倍もの大きさとなる。武芸を題材にしたフィクションでしばしばある表現であるが、それを現実として極めんとする世界の力纏えば最早空言では済まされない。
 刀身がはるかに巨大化したかの如くなぎ払う一撃は、鉤爪の男と彼の立つ九竜神火罩を纏めて叩き切らんとする。
「剣風は焔を孕んでちょいと離れていても届くぜ」
 男自身に逃げ場はないし、よしんば避けても九竜神火罩が破壊される。それを守ろうと踏みとどまれば、男の身にいくダメージはさらに大きくなろう。
 どうするにも不都合は避けられぬ選択を迫るウタに、男が出した答えは。
「これほどの闘争、離れるなど勿体ない!」
 自ら斬撃に飛び込み、鉤爪を突き出した。男の体が刻まれ、その体が焼き切られていくが、それに構わず突き出された爪が確かにウタを捕らえた。
 守りを捨て、反撃する。食い込んだ鉤爪から電撃が流し込まれ、ウタの体から自らのものとは違う爆発が起こった。
「まあ簡単にはいかないだろうけど」
 相手もオウガ・フォーミュラ。そう易々とこちらの術中に嵌ってくれるはずもない。それは覚悟の上と、ウタは中華バニーの力を借りて内功を用い流される電流を押し返し、体内での鍔迫り合いを行った。
 剣と爪が、気と電撃がせめぎ合うその場。しかし、一対一の膠着はいつまでも続かない。
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の隠されし姿を此処に」
 るこるが、その背に向けて【豊乳女神の加護・朙噐】で大量複製した兵装を一気に差し向けた。戦輪を体すれすれに配置し動きを封じ、そこに大量の砲撃を重ねていく。もちろんこの男なら体を切り飛ばしてでも脱出を試みるだろう。だから、重力操作も咥えて動くこと自体をさせない。
 そして破壊せねばならないのは鉤爪の男だけではない。九竜神火罩の情報を可能な限り吸い上げ、その構造的な弱点に建造物破壊に有効な爆破をかけていく。
 持ち込んだ兵装を増やし、その全てを意のままに精密に動かす。それはオーバーロードのなせる業でもあるが、それ以上に技本来の効果に対する覚悟。
 るこるの体が、急速に膨らみ始める。二着がかりで抑え込んでいた体がこぼれ出て、布が紐の様に引き伸ばされ悲鳴を上げる。
 るこるはユーベルコードの反動を基本的に豊満、肥満化に変えている。だがそれは決して楽な形で踏み倒しているのではない。肉が溢れれば内臓や骨が圧迫され、自重で押し潰される。それは単純に体力や寿命を削るより下手をすればより直接命の危険があるもの。
 しかしるこるはそれを躊躇わない。相手はオウガ・フォーミュラの中でも最も戦いを望み、それに特化した危険な存在である。世界を焦土に変える大量破壊兵器諸共それを破壊するのだ。命をチップに張ってようやく勝負が成り立つというもの。
 その|溢れんばかりの攻撃《マックスベット》を鉤爪の男は圧倒的な力で潰そうと試みるが、爪を自らに食い込ませた男がそれをさせようとはしなかった。
「エンマヤ・ソワカ!」
 つながった鉤爪の男に、ウタは【熾】の炎を流す。目標は自らに食い込む鉤爪、そして足元の九竜神火罩。
 流し込まれた炎が九竜神火罩を駆け巡り、その内部を操作、爆破していく。発射に必要な機構は破壊し、自壊や停止のためのスイッチがあるならそれを操作する。
 既にここまでの戦い、そしてるこるの爆撃により外部を破壊しつくされていた九竜神火罩は、内部破壊によりその機能に致命的な損傷をついに受けた。
 そして男の鉤爪も操作しようとするが、意思なき兵器とちがいこちらは自ら考え、動く存在。その身は等身大オブリビオンマシンであっても、彼には確かに意思と心があるのだ。
「闘争をやめろと……? 生憎だ、他の何を受け入れようとそれだけは受諾できん!」
 鉤爪の男は最後まで闘争をやめようとはしない。だが、抵抗に力を割く分攻撃の力は弱る。その瞬間に、ウタは一歩分だけ爪を自らの体から引きずり出して下がり、繋がったままで間合いをとった。
「いくぜ!」
 ウタが愛剣を振り下ろし、鉤爪の男を肩口から両断した。その身から血と見紛う潤滑油が溢れ出し、その合間には機械構造が見える。
「たまらない……これこそが闘争……! だが、私はまだ死んでいないぞ……!」
「はい、ですのでぇ」
 機械の男を完全に滅するには、これではまだたりない。骨も、肉も、臓腑もないなら、体そのものが意味のない鉄屑になるまで粉砕するのみ。るこるの兵装全てが、鉤爪の男の体を穿ち、刻み、砕き割った。
 鉤爪の男の体がなくなったことで、ウタの紅蓮の光刃の大焔摩天が下まで一閃される。それはすでに飽和攻撃で砕けていた九竜神火罩への楔となり、それを足元から真っ二つに叩き割った。
「そうだ、殺すか殺されない限り終わらん、これこそが闘争だ……」
 首と体の欠片だけで言う鉤爪の男。オブリビオンの常として覚えてなどいるまいが、これはかつて迷宮災厄戦で、るこるとウタの前で男が言ったのと全く同じ言葉であった。
 しかし、高揚と狂気の中で言ったその時と違い、今男の表情は満ち足りている。彼はこの闘争に、間違いなく満足していた。
「帰り道は気を付けるがいい。400㎞から落ちて死ぬなど馬鹿らしかろう。その先には……お前たちの新たな闘争があるのだから」
 九竜神火罩は崩壊し、墜落を始めている。戦いの疲労が残った体でそれと共に落ち行けば、オーバーロードした猟兵とて命はないだろう。
 しかし心配はない。服は破れてもまだ力は残っている。愉快な仲間たちやアリスたちも、万一に備えずっと空を見ているだろう。だからるこるは反動の苦痛を和らげることに集中できるし、ウタは鉤爪の男に鎮魂歌を歌う。
 その姿に鉤爪の男は隻眼をそっと閉じ、そしてその頭部が小さく爆発し黒焦げの屑となって飛散した。
 三年の間続いた長き|闘争《猟書家の侵攻》。不思議の国の空に、それはもう残っていないのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年06月14日


挿絵イラスト