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闇の救済者戦争⑭〜Holly Slash

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #不死の紋章 #『欠落』 #マーダーミステリー #演劇 #宿縁邂逅 #宿敵撃破

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「お前は狂ってる!」
 この『舞台』に立った|演者《いけにえ》達は、口を揃えてそう私を糾弾する。

 ――何故だい? 私に埋め込まれた不死の紋章がそれほど恐ろしいというのかね。

 私がそう答えると彼らは口々に罵詈雑言を並べ立てる。
「こんな茶番を何度気が繰り返せば気が済むんだ!?」
「もう解放してくれ! 家に帰してくれ!」
「恐ろしい! 殺しても死なない上に自分のやった事の分別も付かないなんて!」
 ……ふむ? どうやら私は何か取り返しのつかない事をしてしまったようだ。
 もしそうだとしたら謝罪しなくては。
 しかし君たち、それは私の演技プランを否定することになる。
 せっかく私の脚本・演出・主演を務める演劇の端役を与えてあげているのだから、相応しい言動を心掛けたまえ。
 さもなくば……全員、|降板《死罪》だ。

「「ぎゃあああぁぁあぁぁぁっ!!!」」

 ――首吊り死体が3つ、ギロチン刃で首なし死体が5つ、更に私のサーベルで斬り捨てられて胴体真っ二つの死体が2つ、と。
 やれやれ、また演者集めから再始動か。
 この『欠落』目当てに人が集まるのはいい事だが、そろそろ骨のある演者達が欲しいものだね、まったく……。
 例えばそうだな……? 『白髪で眼鏡を描けた生ける屍の少年』がいると、私の舞台がより映えるのだが……。

 ――グリモアベース。
「遂に禁獣『デスギガス』の欠落の所在を突き止めたよっ!」
 グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)は、招集に応じてくれた猟兵達へ今回の任務内容を伝達してゆく。
「この戦場で『欠落』を守護するのは、デスギガスによって『不死の紋章』を埋め込まれて改造されたオブリビオンだよっ! 第五の貴族の中に稀に存在する『一度倒しても別の紋章・別の姿を持ってまた現れる者』は、実は禁獣『デスギガス』によって『魂人の如く死ねない存在』に改造されたオブリビオンだったんだよっ!」
 つまり、殺しても死なない存在が『欠落』の番人になっているということだ。
 それは勝ち目がないんじゃないか?
「ううん、勝ち筋はあるよっ! この不死の紋章を埋め込まれたオブリビオンは、絶えず凄まじい苦痛に苛まれてきたせいで完全に狂ってしまっていて、近付く者を自動的に攻撃するんだけど……何度も殺すと不死の紋章が浮かび上がるから、そこを破壊すればオブリビオンは一瞬で消滅するんだってっ!」
 それなら力押しでどうにかなるかも、と安堵する猟兵達。
 しかし、レモンの話はまだ終わっていない。
「でもね、今回の討伐対象はかなりの変わり者で……無差別に襲ってくることは襲ってくるんだけど、同時に相手へ『演技』を要求してくるんだよね……」
 ……どういう事だ?
 猟兵達の頭上に「?」が浮かぶ。
 レモンは予知で見たありのままを話し始めた。
「まともに戦うと、紋章の力で猟兵達はねじ伏せられちゃうんだけど、討伐対象の監修する演劇の『配役』に徹していれば互角に戦えるってわけ! 紋章オブリビオンも『配役』に縛られてるらしくって、それを逸脱する言動を発狂しても自らに課してるっぽいっ! ちなみに演目ジャンルは『マーダーミステリー』! 演者達が殺人現場に出くわしたっていう設定で、事件の謎を解決してゆく演劇だねっ! 当然オブリビオンは犯人役なんだけど……これがなかなか一筋縄ではいかない相手で、どんな尋問ものらりくりとかわして、参加者の推理や指摘が間違うと逆に処刑器具で殺しちゃうんだよっ!」
 なるほど、確かに狂ってやがる。
 そうならないためにも、オブリビオンを推理で追い詰める演技をしながら攻撃を仕掛けてゆくのか。
 色々と制約があるが、敢えてここは相手の舞台に上がって打ちのめしてやろう。
「それじゃみんな、名探偵になり切って、事件もオブリビオンもバッサリ斬り捨ててきてねっ!」
 レモンの頭上に浮かぶグリモアが輝く。

 ――果たして、一番強い名探偵猟兵は誰なのか?
 ユーベルコードの高まりを感じる……!


七転 十五起
 第二層への道が開いた中での、デスギガスの『欠落』捜索戦です。
 マーダーミステリーという形式ですが、割と普通に戦ってもオッケーです。
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス
 敵を何度も殺し続け、「不死の紋章」を破壊する。

 また、このシナリオに限り、以下の要素を追加プレイングボーナスとします。
『オブリビオンが仕掛けるマーダーミステリーに参加し、探偵になり切る』
 探偵になり切れていれば、推理や証拠の整合性は特にシナリオの成否に関わりません。
 自由な発想でオブリビオンに「お前が犯人だ!」と糾弾しましょう!

 一応、マーダーミステリーの設定を明記しておきます。
『被害者は30代半ばの女性、死因は背中から鋭利な得物で心臓を一突きされたことによるショック死』
『死亡推定時刻は深夜2時から明け方4時頃』
『女性は孤児院の主であり、吸血鬼の領主からの重税に悩まされていた』
『殺される数日前から、督促に来た領主の使いといさかいを起こしていた』
『その使いとは、討伐対象であるオブリビオン(という配役)である』

 ちなみに、英語の『Holly』って単語、調べてみると色々な意味があるんですよ?

●その他
 コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能ですが、その際は参加者全員のオーバーロード投稿を強く推奨します)
 なお、本シナリオは戦争の進行状況に応じて、全てのプレイングを採用できない可能性があります。
 予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様の創意工夫を凝らしたプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『処刑台の魔女』カレン』

POW   :    『咎人の糾縄に私を吊るそうというのかね』
【迫真の演技】を披露した指定の全対象に【カレンの劇に加わり指定された役を演じたい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    『いやはや救い難い糾弾だ。運命的な愚の選択だ』
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【凶器と、カレンを満足させるまで消えない炎】を与える。
WIZ   :    『ああそうさ、全く以てこの身は潔白だとも!』
【最高の残酷劇を演じたい】という願いを【自らの熱狂的なファンと化した奴隷達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。

イラスト:えんぷ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊・はとりです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 不死の紋章を埋め込まれたオブリビオンこと『処刑台の魔女』カレン。
 彼女は吸血鬼の姫であり、自らが手掛けた残忍な殺戮の悲劇を如何に『傑作』にまで心血を注ぐ。
 その衝動は紋章を埋め込まれて発狂しても、決して変わることはなかった。
 動くたびに全身が軋むように激痛が走ろうとも、演劇への情熱だけは消えなかったのだ。

「――さあ、舞台に上がりたまえ、猟兵諸君? 既に|緞帳《どんちょう》は上がっているのだからね?」

 不敵に微笑むカレンは、一見したら発狂しているとは思えないほど冷静だ。
 しかし、それはむしろ演劇以外の事が頭にないという事実を示す。
 やはり彼女は狂っているのだ。他が眼中にないなんて異常すぎる言動だ。
『欠落』に誘われて舞台に上がった者は、カレンの意向にそぐわなければ……すかさず殺されるのだから。
四王天・燦
だくせば奉行所・与力の燦が探偵ぽく調査に来たぞ
十手を持って、てえへんだてえへんだー

|被害者《仏さん》を一度拝んでから見分する
うつ伏せで寝てる所を暗殺されたと分析
深夜なので子供の世話で疲れて寝てたに決まってる

動機は不自然な重税です
孤児院なら税制上優遇か還付があるのに重税とはこれ如何に
つまり権力者―領主が横領したのだ
訴訟でバレる前に自らの手で殺したのだ

真実は全て解けた
暗殺者ぽい黒装束なカレンちゃん、だうとー!
銭投げを食らえ

ギロチンとかは神鳴で切り払う
閃劇殺陣舞台の峰打ちで領主一味を戦闘不能にし、カレンちゃんは成敗ってことでバッサリだ

何度も殺すのは良心痛むぜ
せめて舞台を愉しんでくれると良いんだけどね



「てえへんだてえへんだー! 御用だ御用だー!」
 四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は十手を『処刑台の魔女』カレンへ突き立てながら騒ぎ立てる。
「おやおや、これは一体どういうつもりだい?」
 カレンも燦の導入部分に眉をひそめている。
 しかし燦はこの与力キャラを貫き通してゆく。
「てやんでい、べらぼうめ! だくせば奉行所・与力の燦が探偵っぽく調査に来たぞ! さあさあ|被害者《仏さん》の面を拝ませな!」
「ふむ、ステレオタイプの探偵のキャラクターでは展開も読めてしまうというもの。ならば多少は奇をてらってみるのもアリか。いいだろう、ついてきたまえ」
 カレンが案内すると、そこには確かに若い女性の遺体が転がっていた。
 燦は思わず顔をしかめた。
「おいおい、本物の遺体を用意してやがるとは聞いてねえぞ?」
「私の舞台には可能な限りリアリティーを求めるのさ。その女も近くの集落から私の舞台の演者としてやってきた者だ……先程まではね?」
 カレンの魔力か、それとも『欠落』が操作せるのか、カレンの元には誘蛾灯に吸い寄せられる蟲の群れの如く人が引き寄せられてゆくのだ。
 燦はある程度の情報がグリモアベースで聞いてはいたが、よもや此処までとは想定してはいなかった。
(あーなるほどね。こりゃ確かに狂ってるわ)
 内心で合点がいく燦は、うつ伏せで寝転がる女性の遺体の見分を始める。
 燦は両手を合わせて冥福を祈った後、致命傷となった背中の傷を念入りに調べた。
「うつ伏せで寝てる所を暗殺されたってとこかな。深夜なので子供の世話で疲れて寝てたに決まってる。で、そこを心臓目掛けて背中からブスリだ。ほぼ即死だろうな」
 燦の見立てをカレンは黙って聞き入っている。まるで品定めをするかのように。
「犯人の動機は不自然な重税です。孤児院なら税制上の優遇か還付があるのに、重税とはこれ如何に。つまり権力者……この地域の領主が徴収した税金を横領したのだ。そして訴訟でバレる前に自らの手で殺したのだ」
 燦は十手の先をカレンに突き立てて叫んだ。
「真実は全て解けた。犯人は暗殺者ぽい黒装束なカレンちゃん、だうとー! 銭投げを食らえ!」
 手元から投げ銭と言い張る四王稲荷符・桃華絢爛をカレンへ投げ放つ!
 それは桃色の浄化の炎の矢となってカレンの身体を射貫いてみせた。
「ぐッ! やるじゃないか、早速死んでしまったよ!」
 カレンは炎の矢を強引に引き抜くと、鞘から抜いたサーベルを華麗に操って燦へ襲い掛かってゆく。
「だがしかし、咎人の糾縄に私を吊るそうというのかね? 服装で犯人を決めつけるのはいささかナンセンスだよ、君?」
 カレンの言葉がユーベルコードとなり、演劇へ参加したいという欲求を燦に植え込む。
 ならばと燦はこれに乗っかってユーベルコードを繰り出してみせる。
「おっと斬りかかってくるなら斬り捨て御免だぜ? 悪行三昧は今日までだ、カレンちゃん。纏めて掛かってきな!」
 妖刀『神鳴』を鞘走り、敢えて峰打ちでカレンの頸椎を砕く燦。
 更に殺気による|精神攻撃《プレッシャー》で相手へ迫真の演技を披露すると、今度は妖刀の翻して刃を下にかえて袈裟切りにカレンを斬り伏せる。
「成敗っ!」
「ぐわあぁあっ! やられた……!」
 血飛沫を上げながらカレンが倒れる。
 一連の連続攻撃による派手な殺陣は、見るものを魅了すること請け合いだ!
「四王活人剣……|[閃劇殺陣舞台]《チャンバラ・ショータイム》……! 何度も殺すのは良心が痛むぜ。せめてカレンちゃんが舞台を愉しんでくれると良いんだけどね」
 その言葉に、カレンがすっくと立ちあがって拍手を送る。
「なかなか斬新な試みだったよ! 私の思い描いている舞台の脚色とは違っていたが……これはこれで心が躍ったよ。ありがとう! だが残念だが、私を完全に殺すまでには至らなかったけれどもね?」
 カレンはダークセイヴァーには存在しないチャンバラ時代劇の魅力を知ってご満悦の様子。
「君はもう舞台袖へはけてくれたまえ。次の演者が待っているのでね? 嗚呼、猟兵とのエチュードはこんなにも心が躍るのか! ふふ、ははは……!」
 笑い狂うカレンに、燦は安堵の溜息をひとつ。
「ちぇー、さすがに殺しきれなかったか。でも楽しんでくれたならアタシも本望だぜ」
 こうして燦は満足げに舞台袖へはけてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【オーラ防御】だけ纏いつつ本気でなりきる【演技】

死因が刃物の場合
傷の角度で犯人の身長や利き腕を判断しやすいですね
例えばこのように

【紅色鎌鼬】発動
傷を再現するように鎌の斬撃で攻撃

あぁ、少なくとも凶器は鎌ではないですよ
鎌は柄の長さで身長はごまかせますが
刃の形状により傷口にも特徴が出ます
今回の凶器はもっと均等で細身だ
例えばそう、刀やサーブルのような

アリバイは工作できるので参考程度ですかね
ただ、いさかいを起こしていたのが事実なら
少なくとも動機はありますよね

【空中戦】を主体に口撃と斬撃
時折【破魔】を乗せた光魔法の【属性攻撃】で目晦まし兼【浄化】攻撃を織り交ぜつつ
地道でも確実に追い詰めていけるように



 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は今回の『闇の救済者戦争』の戦場の中でも、此処がかなり特異な状況な事を理解している。
「なんだかオーディションみたいだね……でも、僕は本気で演じ切ってみせる……」
 澪は目には見えないオーラ障壁だけ纏って『処刑台の魔女』カレンの前へ進み出る。
「おや、これは可愛らしい探偵さんだ。さあ、君の演技プランを私に魅せてくれないかね?」
 カレンはいつの間にか周囲で観覧しているカレンの奴隷たちへ拍手を強要。
 舞台は異様な熱気に包まれ、まるで本物の舞台の興行を彷彿させる。
 澪はすぅっと深呼吸後、意識を集中。
 彼は『女優モード』に頭を切り替えた(ただし澪の性別は男だ)。

「今回の死因は被害者の背中から心臓へかけての、鋭利な得物での刺突。その死因が刃物の場合、傷の角度で犯人の身長や利き腕を判断しやすいですね。例えば、このように」

 澪は虚空から花弁を舞い散らせて顕現させた清鎌曼珠沙華――透き通った美しい薄紅色の鎌の柄を握ると、不意討ち気味にカレンの背中へその切っ先を突き刺す。カレン自身へ遺体の傷の再現をすることで、まず1回殺した。
 ユーベルコード『紅色鎌鼬』……澪の怒りを向けた対象へ鋭く紅色に住んだ美しい大鎌の一撃を与えてみせた。
 澪は血を吐くカレンの手元のサーベルを間近で眺めながら更に言及する。

「あぁ、少なくとも凶器は鎌ではないですよ。鎌は柄の長さで身長はごまかせますが、刃の形状により傷口にも特徴が出ます。今回の凶器はもっと均等で細身だ。例えばそう、刀やサーベルのような」

 無刀取りの要領でカレンからサーベルを奪うと、再び澪は|犯人《カレン》の心臓をその切っ先で貫通してみせた。これで2回目の死を与える。

「アリバイは工作できるので参考程度ですかね。深夜帯というのも、周りが寝静まっているので立証できる人も少ないゆえにどうとでも言い張れます。ただ、被害者と犯人がいさかいを起こしていたのが事実なら。少なくとも動機はありますよね……カレンさん?」
「つまり私が犯人だとでも? 待ってくれ、私は彼女を憎んでなどなかったよ。ああそうさ、全く以てこの身は潔白だとも!」
 決め台詞がカレンの口から言い放たれると、奴隷達は必死に歓声と拍手で盛り上げてゆく。
 その熱気が最高潮に達すると、カレンの周囲から様々な処刑器具がユーベルコードとして具現化してゆく。
「君の演技力は素晴らしい! 素晴らしい女優になれると確信した! だから私が『指導』してあげようじゃないか! 少しばかり肉が裂けて骨が砕けるが、それくらいは我慢してくれたまえよ?」
「そんなの、お断りだよ! というか女優って……もう!」
 色々な怒りを覚えた澪は背中の大きなオラトリオの翼を広げて空へ急上昇すると、得物の大鎌をブーメランのようにカレンへ投げつける。
 すると、その大鎌はユーベルコードで分裂・増殖を繰り返し、あっという間に大鎌の刃の雨を降り注がせる。
「ぐふ……ッ! 嗚呼、いいじゃないか! その怒りに満ちた表情! 犯人へ向ける激情! 素晴らしい逸材だ! 是非とも私の舞台の演者として残ってほしい!」
「だから、僕は嫌だって言ってるんだって!」
 聖なる杖こと『Staff of Maria』から正常な輝きの光線をカレンへ発射し、また殺してみせる。
 それでもカレンは平然と澪を物欲しそうに見上げていた。
「酷いじゃないか、此処まで拒絶しなくとも。この数分間で何度死んだ事か。だが……そこまで言うなら私はあきらめようじゃないか」
「え、いいの?」
 意外な返答に澪が面食らう。
 カレンは上空の澪に一礼しながら答えた。
「ああ、勿論だとも。猟兵は私の演技にちゃんと付き合ってくれるようだし、君の熱演を見ていたら他の面々の演技も見たくなった。私は狂っているらしいが、演劇の役として没頭している間は紋章の苦痛も幾らか和らぐ……さあ、次の演者を此処へ早く連れてきてくれないかい?」
 澪はカレンが何故こんな荒唐無稽な事を行っているのか、その一端を察する。
 故に、澪は十分役割を果たせたと悟って鎌を周囲から消した。
「分かったよ。急いで連れてくるから、ちょっと待ってて」
 澪は翼を羽ばたかせて、待機している猟兵達の元へ急ぐ。
「もしかしてカレンさん……僕達に殺されたがってる? まさか、ね?」
 澪の胸中に膨れ上がるカレンへの疑念の真実は、まだ誰にも分からない……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
ふっふっふっ…
つまりこの演劇はこのインテリ系魔術盗賊のカシムさんの出番って奴ですね!
「叡智の神もいるぞ☆」

という訳で探偵と助手だ!

ふむふむ…成程な…これは…密室トリックだ!
二時から四時までの間…皆アリバイがある…だが僕らの知らないミッシングリンクがあるんだ!

そう…犯人はお前だー!お前の事はもうマルっとお見通しだー!

「ご主人サマー☆見つけたよ☆」
そう…お前はこの扉の鍵に氷を仕掛け…溶ければ自動的に閉まる仕掛けを作っていたのだ
だから濡れていたのだ

そして…氷室にもお前の足跡は見つかっている!

尚演劇中もUC発動
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣と短剣の超高速連携攻撃にての猛攻と武装強奪



「ふっふっふっ……つまり、この演劇はこのインテリ系魔術盗賊のカシムさんの出番って奴ですね!」
「叡智の神もいるぞ☆」
 どこから用意したのか不明だが、BGMまで用意して名乗りを上げたのはカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と相棒のメルシーだ。
 カレンは最初の|猟兵《やくしゃ》コンビに目を細める。
「いいじゃないか。やはり探偵と言えば助手は欠かせない。では、君達からみて、この事件現場をどう見る?」
 カレンの挑発的な態度に、カシムは現場検証を行いながら告げた。
「ふむふむ……成程な……これは! 分かったぞ、密室トリックだ!」
「ほう? その心は?」
 カレンの問答にカシムは推理を披露し始める。
「まず、既にメルシーが関係者達からアリバイの有無を聴取済みだ。二時から四時までの間……確かに皆アリバイがある……だが僕らの知らないミッシングリンクがあるんだ!」
「ご主人サマー☆ 見つけたよ☆ ご主人サマの言った通り!」
 ここでメルシーが扉の前を凝視しながら手招きしている。
 カシムは確信を得た足取りで歩み寄ると、床にできた染みを指差した。
「この場所だけが僅かに湿っている……そしてやたら冷たいんですよ、ここだけ。水を零しただけなら、これほど冷気は感じないはずです」
 カシムはここで推理の全容を口にし始めた。
「そう……お前はこの扉の鍵に氷の塊を仕掛け……溶ければ自動的に閉まる仕掛けを作っていたのだ。だから解けた氷が床を濡していたのだ。そして……氷室にもお前の足跡は見つかっている!」
 カシムがユーベルコードを発動させてカレンへダガーで斬りかかる!
「そう……犯人はお前だー! お前の事はもうマルっとお見通しだー!」
 これにカレンもユーベルコードを発動して対抗!
「いやはや救い難い糾弾だ。運命的な愚の選択だ! そうだろう、諸君?」
 観客という奴隷達へ同意を求めれば、客席から拍手が沸き上がる。
 カレンは声援を受けて戦闘力を強化すると同時に、カシムとメルシー達を燃やす消えざる炎を解き放った。
「たとえ君の推理通りだとしても、私を犯人として名指しするのは少しばかり根拠が足りないね?」
「だったら分からせるまでだ! メルシー! 魔力と思考をリンクさせろ!」
「ラジャったよ!」
 カシムとメルシーは一気に加速し、マッハ40近い超音速機動でカレンを圧倒!
 カレンも増強した戦闘力で対応するも、縦横無尽の斬撃の前では自慢の処刑器具やサーベル捌きも通用しない!
「死なない身体っていうなら、その不死身加減を検証してやる!」
「斬りホーダイだぞ☆」
 ダガーと大鎌の超音速コンビネーション斬撃によって、カレンの身体は微塵切りに!
 しかし、不死の紋章が彼女の骨肉片を掻き集め、元の姿へ修復してみせたのだ。
「いいね! なかなか苛烈で素晴らしかった! 君達も荒削りだが、筋は良かった!」
「てめーの賞賛なんざ嬉しくねーよ」
「演劇、またやってみようねご主人サマ!」
 こうして、カシムとメルシーはカレンへダメージをかなり蓄積させて舞台袖へはけていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
絶えず苦痛に苛まれるとはお可哀想に
魔女さんも犠牲者です
探偵を演じ海へと導きましょう

私は孤児の一人
体は小さくとも頭脳は大人な名探偵です(眼鏡くいっ

誰も出入りした形跡がない
つまり犯人は院内にいた
そして今もいます

無防備に背中を向ける
即ち犯人は顔見知りです

逃げようとして背中を刺された?
もしそうなら
逃げ去ろうと動く相手を
心臓への一撃で殺せるのは
特殊な訓練を受けた者だけです
今この院内にいて
その経験がある人物は至極限られます

心臓をまっすぐに刺せるだけの上背が必要
つまり成人です

腰をかがめていたら子供でも可能?

血痕をよく見てください
立位と蹲踞の時では
流れ落ちる血が作る服の染みや
倒れた時の血の飛び散る範囲が異なります
院長先生は立っていた姿勢から倒れたのです

そして動機
院長先生の死去で
孤児院が立ち行かなくなることを望む者は?

孤児達には動機はない
一方ここがなくなれば
土地家屋を徴収し領主の財産とすることができる

以上から犯人はあなたです

魔力の矢を連射して何度も倒し
浮かび上がった紋章を破壊

終幕
鎮魂の調べ
安らぎを願います


テラ・ウィンディア
UC発動中

ミステリーと聞いたぞ!
って事は…このおれ!名探偵テラの出番だな!!(尚名探偵なおれの活躍は轟天MSのサクラミラージュの依頼を見ると分かりやすいぞ!(きり

「私は今回は助手ですね!任せてください!インテリ系女神の叡智…見せて差し上げます!」
この事件…おれが解決して見せる!
|ねっちゃん《シル・ウィンディア》の名に懸けて!

(ミカン箱(ヘカテさんが用意)の上に乗り)
この殺戮…いかに鋭利な刃とはいえ一突きで刺されたという事は…犯人は凄いパワーを持っているに違いない!
即ち…むきむきマッチョな奴だ!
そう…これは…怪人ファントムマッチョの仕業だ!
「…はひ?」

犯人は…怪人ファントムマッチョはこの中にいる!

犯人はお前だカレン!
そう…お前は持ち前のマッチョパワーでアリバイを作ったんだ!
「くっ…テラ…知ってしまったのですね…大いなる心理…「力は全てを解決する」という事を…!」(脳筋女神

そう!お前はその筋肉でこのトリックを完成させた!

否定に対し
着やせするんだろお前?(!?

尚演劇中も技能を駆使しての死闘中!



 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)とテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が揃って惨劇の舞台へ上がる。
 待ち受ける『処刑台の魔女』カレンが不敵な笑みを湛えていた。
「さあ、君達はどんな推理を披露してくれるのかね?」
 箒星はカレンの顔を見るなり、自慢の髭を下げて嘆く。
「不死の紋章のせいで絶えず苦痛に苛まれるとは、お可哀想に。魔女さんも犠牲者です。探偵を演じ、貴女を骸の海へと導きましょう。ええ、設定はこうです。私はこの施設の孤児の一人。ですが体は小さくとも、頭脳は大人な名探偵です!」
 いつの間にか用意していた丸眼鏡と紅い蝶ネクタイを身に付け、箒星は探偵になり切ってみせる。
 一方、テラは相棒の黒髪の女性ヘカテイア同伴でこの難事件に挑む。
「ミステリーと聞いたぞ! って事は……このおれ! 名探偵テラの出番だな!!」
 漆黒のドレス姿に身を包み、颯爽と登場してみせるテラ。
 その隣には質素な修道女姿のヘカテイア……テラの自称保護者がニコニコと笑顔を讃えている。
「今回の私はテラの助手ですね! 任せてください! インテリ系女神の叡智……見せて差し上げます!」
「この事件……おれが解決して見せる! 姉ちゃんの名に懸けて!」
 ――いや、それ誰だよ?
 箒星もカレンも口には出さないが首を傾げていた。

 互いの口上も済んだとこで、2人は現場を再度検分する。
 箒星は入口付近の床を虫眼鏡で覗きながら呟く。
「誰も出入りした形跡がない。外へ出ていった|ゲソ痕《足あと》がありませんので。つまり犯人は院内にいた。そして今もいます」
「ああ! おれもそう思うぞ!」
 テラも箒星の推理に頷く。
「ちなみにカレン? この事件現場は殺害時の状況からずっと現場は保持されてるんだよな?」
「ああ、勿論だとも。私も外には出ていないし、孤児院の関係者も事件発覚時から立ち入りを控えるようにと暗黙の了解があったからね?」
 テラの質問にすらすらと答えるカレン。
 彼女は舞台女優であると同時に、このマーダーミステリーのゲームマスターでもあるのだ。こういう役割も想定していただろう。事実、彼女が役割に徹している間は理性も働いており、不死の紋章に苛まれ続けている吸血鬼オブリビオンという事を忘れそうになってしまう。
 しかし、少しでもこの『舞台』の趣旨から外れた者は、予知で見た映像通りに容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
 箒星とテラが迂闊にカレンへ攻撃を仕掛けてしまえば最後、紋章で強化されたカレンが悪鬼の如く暴虐に襲い掛かってくるだろう。
(……おれの推理、大丈夫か? かなりトンチキな推理が思い浮かんでしまったんだけどな……?)
 テラは魔力回路で意識が繋がっているヘカテイアへ助けを求めた。
 彼女の頭の中の思考を読み取ったヘカテイアは、一瞬だけ感嘆の声すら上げそうになるほど驚愕していた。
(テラ……! これです! これしかありません! 遂にこの境地に到達したのですね!)
 何故か興奮気味なヘカテイアの思考が流れてくる。
 むしろこの状況のヘカテイアが下した判断は大抵ポンコツムーブなのだが、テラはそれでも強く賛同されたことで上機嫌になった。
(ヘカテに褒められたぞ! よし! おれはこの線でカレンを追い詰めてやる!)
(私も証拠を偽造……げふん、探してみますね! 叡智らしく!)
 なんかやべー言葉が飛び出た気がするが、気のせいだと願いたい。
 そんなテレパスわちゃわちゃが繰り広げられてる中、箒星は真面目に事件当時の状況を推察していた。
「何故、被害者さんは無防備に犯人へ背中を向けたのでしょうか? 即ち、犯人は顔見知りです。被害者さんとある程度の面識があった犯人が来訪。その人物を奥の応接間へ案内するべく、被害者さんは踵を返して屋内へ歩き出す。すると必然的に犯人へ背中を見せます。そこを一思いにブスリと突き刺したのです」
「待ちたまえ。顔見知りだから背中を見せたというのは安直ではないかね? 例えば、ドアを開けた途端に犯人に襲われ、咄嗟に逃げるべく背中を見せたとも考えられるだろう?」
 カレンの反証に箒星は首を横に振る。
「もしそうなら、逃げ去ろうと動く相手を心臓への一撃で殺せるのは特殊な訓練を受けた者だけです。今この院内にいて、その経験がある人物は至極限られます。そして……被害者さんのような成人女性の心臓をまっすぐに刺せるだけの上背が必要な人物、つまり犯人は成人です。しかも被害者さんと同じぐらいの背丈の人物……」
 箒星はカレンをじっと見つめる。
 確かに、殺された被害者女性とカレンは背丈が同じくらいだ。
 しかし、これにカレンは嘲笑を浴びせる。
「はははは……! 背丈が一緒なら孤児院の子供達にもいるのではないかね? それに背が高い人物が身を屈めれば犯行は可能だが? さらに言えば! 殺害された被害者女性が『立ったまま』殺されたとは限らない……! 被害者女性が身を屈めていたかもしれないじゃないか、あるいは犯人が殺害相手を転ばせ、うつ伏せになったところを背中から心臓目掛けて凶器を突き立てる! どうだい? これでは背丈の話はまるで無意味になるじゃないか! その推理はさすがに穴だらけだ、とてもじゃないが許容できない……!」
 畳みかけるカレン。
 しかし箒星は折れるどころか反論を仕掛けた。
 一気に推理をまくし立ててカレンを追い込んでゆく。
「いいえ、血痕をよく見てください。立位と|蹲踞《そんきょ》、そしてうつ伏せの時では、流れ落ちる血が作る服の染みや倒れた時の血の飛び散る範囲が異なります。まず蹲踞……つまり身を屈めた状態で殺された場合、床と刺し傷の距離が近いため、衣服や床の血痕は上半身に多く付着します。ですが、立位だと刺されてから床に倒れるまで床との距離が離れています。倒れ込む際の衝撃で血痕は思いのほか広範囲に飛び散ってしまいます。ほら、ドアの真下に僅かな血痕が。身を屈んだ状態では、ここまで離れた場所に血は飛び散りません。これはうつ伏せで殺された場合でも同じことが言えます。さらに言えば、うつ伏せで殺された場合、胸を貫通していた凶器は床を傷付けているはずです。ですが、事件現場にはそのような痕跡はありません」
 箒星はカレンを指差し、断言した。
「院長先生は立っていた姿勢から倒れたのです。それが可能なのは、カレンさん……あなたです」
 カレンの顔付きが、一瞬ニタリと笑みを浮かべた。
「素晴らしい。なかなかの着眼点だ。しかし、動機は何だね? 何故、私が彼女を殺さねばならない?」
 その言葉に待ってましたと箒星が答えた。
「院長先生の死去で孤児院が立ち行かなくなることを望む者は? 果たして誰でしょうか? 孤児達には動機はありません。当然です。衣食住を失うリスクを背負ってまで、育ての親同然の院長先生を殺害するメリットがありません。一方、ここがなくなれば土地と家屋を徴収し、領主の財産とすることができる側の人物ならば殺害に手を染めてもおかしくありません。そういえばカレンさんは領主様の使いとして、此処へ訪問したそうじゃないですか。重税を渋っていた院長先生を亡き者にしてしまえば、そちら側としては万事うまく収まりますからね」
 箒星がカレンを指差して断言した。
「以上から、犯人はあなたです。観念してください、カレンさん?」
「これは参ったね? しかしながら、ああそうさ、全く以てこの身は潔白だとも!」
 カレンはユーベルコードのトリガーとなる台詞を言い放ち、このマーダーミステリーを観覧する奴隷達に拍手を強要する。
 奴隷達の拍手で『猟兵達を最高の惨殺劇の中で殺害したい』という願いを叶えるパワーを獲得してゆくカレン。
 手にしていたサーベルや、空中から出現した絞首台や断頭台を操って箒星へ攻撃を仕掛ける。
 ――と、まさにそんな時だった。
「ちょっとまったー! その推理に物言いだぞ!」
 ここでテラが遅れて登場!
 すかさず自前の推理を語り始めた!
「ヘカテ! ミカン箱をここに! 背が高いとみんなが注目するからな!」
「はい、テラ!」
 用意周到なヘカテイアがミカンの木箱をテラの前に設置すると、その上に乗っかってエッヘンと胸を張るテラ。
「はい、ちゅーもくだぞ! この事件のカギは……パワー! つまり筋肉だったんだ!」
「「んんッ?」」
 この場にいた全員が一斉に目を細めてしまう。
 ヘカテイアもさっきテラが話していた推理内容と異なる論旨故に耳を疑ってしまった。
「テ、テラ? なんかさっきと話が違う気が……!」
「大丈夫だ、ヘカテ! 落ち着いて聞いてくれ!」
 こほん、と咳ばらいをひとつすると、テラは先程の言葉の意味を答え始めた。
「この殺戮……いかに鋭利な刃とはいえ、一突きで刺されたという事は……犯人は凄いパワーを持って凶器を突き立てたに違いない! 即ち……そんなことが出来る奴はむきむきマッチョな奴だ! そう……これは! 怪人ファントムマッチョの仕業だ!」
「何を言ってるんだね、君は?」
 カレンは素っ頓狂なテラの推理に目をぱちくりしている。
 箒星に至ってはまるでフレーメン現象中が如く、口を開けて呆然としている始末だ。
「犯人はお前だカレン! そう……お前は持ち前のマッチョパワーに紋章で強化された筋肉で、院内を高速で移動してアリバイを作ったんだ! 鍛え上げた筋肉は魔法と謙遜がないって漫画で読んだことあるぞ! きっとお前もそうやって足跡を付けずに空中をバタ足で移動したり、天井を指先だけでぶら下がって事件現場から何食わぬ顔で離脱したに決まってる!」
 テラのトンチキ推理に拍車をかけるように、ヘカテイアが天井を指差した。
「見てください! あそこだけ床に穴が開いてます! アレは犯人が指を突き刺して天上を移動した確固たる証拠です! 私が実践したので間違いありません!」
 それってヘカテイア自身の指の穴では……と箒星はツッコミを入れたくなったが、無粋なので敢えて黙る事にした。
「なるほど? 君はひょっとしなくても阿呆だったか」
 頭を抱えるカレンに、ヘカテイアが怒り心頭で反論する。
「何を言うのですか、テラは賢い子ですよ! テラは世界の真理に気付いたのですから! くっ……とうとう知ってしまったのですね、テラ! ……大いなる世界の真理……『筋肉は全てを解決する』という事を……! 先程聞いていた推理の導入部分こそ違えど、最終的には私に教えてくれた通りの推理内容で安心しました! 叡智ィ!!」
「いやはや、保護者も脳筋だったとはね? これは傑作だ! だが馬鹿には私の舞台を怪我してほしくないのでね、君達2人は『|降板《死罪》』だ!」
 テラとヘカテイアへ処刑器具の数々とカレンのサーベルが迫る!
「おれは馬鹿じゃないぞ! お前、絶対脱いだらムキムキなんだろ!? バーベル、何キロ持ち上げられるんだ!?」
「知るか。君は本当に馬鹿だな……?」
 思わず鼻で笑ってしまうカレン。
「また馬鹿って言ったな、お前! もう怒ったぞ! ヘカテ! ひとつ連携と往こうか!」
「ええ、いきましょうテラ! 筋力こそ叡智だと思い知らせてやりましょう!」
 テラとヘカテイアのトンチキコンビが互いに超重力フィールドを纏うと、死霊魔術と呪術を駆使しつつ舞台上を時速670kmで飛翔してみせた。
「お前に殺された人達の怨念……その身に受けろ……!」
 カレンの周囲にどす黒いヘドロ状の巨大な手がいくつも床から這い出てくると、処刑器具もろとも彼女をぶん殴った!
「ぐはっ! なんて腕力だ……!」
 床を転げるカレンの口から大量の血を吐き出す。
 その量は明らかに致死量だと見て取れる。
「やはり腕力は何でも解決します! 叡智ィ!」
「そうだな! 筋肉イズ叡智ィ!」
 ヒャッハーッなノリでテラとヘカテイアがカレンを交互に拳のラッシュを浴びせれば、カレンを何度も殴殺してミンチにしてゆく。
「拳に炎の精霊の加護を宿して、炎のパンチだ!」
「叡智パンチ! これこそが叡智パンチです!」
 燃え盛る拳の連続パンチに前後を挟まれたカレンは、骨肉に伝わる熱を怒り変え、それを糧に何度も蘇って叫んだ。
「こんなもの、私の求める演技ではない! なぁ、そうだろう? |観客《オーディエンス》諸君!?」
 戦闘の一部始終を見守っていた奴隷達がテラとヘカテイアへブーイングを飛ばす。
 すると、カレンの力が更に増してゆくではないか。
「君達には早々に舞台から退場してもらおうか!」
「なに……? おれとヘカテの攻撃を避けただと……!?」
「先程よりも素早くなってます! ハムストリングスの叡智が増してます!」
 テラとヘカテイアの攻撃を難なく回避し始めたカレン。
 これはまずいと、様子を伺っていた箒星が此処で動いた。
「さあ、ちょっと派手にいきますよ~?」
 カレンへの葬送曲を竪琴で奏で始める箒星。
 その音色が魔力を帯び、火・水・風の魔法の矢へと変化して一斉にカレンへ放たれた。
「しま……っ!」
 全方位から迫りくる激しい矢雨に包囲されたカレンは、三属性それぞれ695本もの魔法の矢の的となって何度も絶命してしまった。
「どうか安らかにお眠りください……と言いたいところですが。まだそれは時期尚早のようですね?」
 あれだけの矢を身に浴びて、まだ復活するカレンが立ち上がる。
「はははは! こっちの2人組と違って黒猫の君は中々見どころがあるようだ! その君の顔に免じて、そこのトンチキ2人組を見逃そう。さあ、黒猫の君も出番はここまでだ」
 カレンが舞台袖へ猟兵達を促す。
 このまま戦っても勝ち目はない……そう判断した彼らは、やむなく戦場から離脱してゆく。

 彼らと入れ違いに舞台へ向かう……『白髪で眼鏡を描けた生ける屍の少年』とすれ違いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
ほら
望み通り舞台に立ってやったぞ
俺の演技力は控えめに言ってクソだが
演じるまでもなく俺は探偵だ
残念な事にな…!

UCを発動
わざわざ不死化とかどんな嫌がらせだよ
確かに最高の残酷劇
最低の演出だ
俺はあんたを殺したくないから
その分俺の命も削ってやる

深夜2時から4時まで何をしていた
深夜帯のアリバイはなくて当然
ある奴が怪しいと疑うべきだ
身内の証言もアリバイに入らねぇぞ

アリバイありなら共犯
ないなら単独犯の線を疑う
背中から一突きって事は
正面に立つと警戒される相手かつ
顔を見られるとまずい可能性が高い

諍いを起こしてたそうだが
理由としては十分じゃないか
刺傷が一つなら怨恨はないし
殺戮行為に相当手慣れた輩の仕業
そんな奴他にいるか
あんただろ
動機は大方領主の命令で…って所か

ところで検死もしたんだが
サーベルが被害者の傷口と完全に一致したぜ
これはブラフだ
犯人ならそんなもん処分してる
動揺を招ければ王手

もう降板しろよヒロイン
あんたの輝く場所は此処じゃない
俺が昔罪を暴いたあんたのそっくりさんは
舞台の中央で光を浴びたがってたよ
閉幕だ



 ここまで様々な猟兵達の推理劇を文字通り命懸けて見届けてきた『処刑台の魔女』カレン。
 彼女はグリモア猟兵の予知の中で、自分の舞台に必要な演者は『白髪で眼鏡を描けた生ける屍の少年』だと言葉を漏らしていた。
「――ほら」
 直前まで殺し合っていた猟兵とは入れ替わりに舞台へ上がった少年が声を掛けてきた。
 透き通った白髪。眼鏡の奥から差す凍てつくような視線。血の気のない屍蝋めいた乳白色の肌。そして、首元に目立つ大きな縫合痕。
「望み通り舞台に立ってやったぞ」
「……はは」
 カレンは目を輝かせた。
 まるでクリスマス当日の朝、待ち望んだプレゼントが枕元に発見した子供の用に純粋無垢な笑顔で歯を覗かせて。
「白髪で眼鏡を描けた生ける屍の少年じゃないか! 実在した! そうだ、私を追い詰める『探偵役』には君が相応しい! 遂に……この最高の残酷劇を完結させる時が来たんだ!」
 歓びで飛び跳ねるほどはしゃぐカレンへ、はとりはつっけんどんな口調で言い放つ。
「言っておくけどな、俺の演技力は控えめに言ってクソだ。だが演じるまでもなく俺は探偵だ。残念な事にな……!」
 舌打ちひとつし、はとりは最初からユーベルコードである“第三の殺人『十三階段峠』”を発動させる。
「クソッ、わざわざ不死化とかどんな嫌がらせだよ」
 はとりの放つ殺気がこの舞台に充満する。同時に彼の身体は凍えるような冷気を放つ蒼炎で身を苛まれ始めた。
「確かにあんたの舞台は最高の残酷劇で、最低の演出だ。俺はあんたを殺したくないから、その分、俺の命も削ってやる」
「私を殺したくない? どういう意図かね、それは?」
 これまでの猟兵達とは趣の違うアプローチに、カレンは俄然興味が湧く。
 はとりはその問いに目線を逸らしながら答えた。
「……あんたが誰かさんの顔に似てるんでな、少しばかりやりづらいって話なだけだ。関係ねぇよ」
 はとりは背負っていた青白い大剣型偽神兵器こと『コキュートスの水槽』の切っ先を雑に床へ突き刺した。
『事件ですね 『ホームズ』 柊はとり 討伐対象を 確認しました 私を 早く抜いて ください』
 コキュートスは目の前のカレンを斬り伏せさせろとはとりに請うのだが、彼は手に取るどころか放置して現場検分を開始した。
『聞いているのですか 柊はとり? 討伐対象の 迅速な撃滅を 開始してください』
「うるせぇ、クソ剣。今日はそこで大人しく見学しておけ。演劇には観客が必要だからな」
 つまり、はとりはコキュートスを戦闘に用いることなく、この任務を|終演《お》わらせるつもりなのだ。
「ったく、よく言ったものだな……名探偵、皆を集めてさてと言い、だったか?」
「おお! ミステリーの謎解き編の常とう句じゃないか! そういうのを私は求めていたんだ!」
 はとりが機嫌悪く溜息まじりに独り言ちれば、それを聞いたカレンがますます嬉々と笑顔を咲かす。
「さあさあ! 君の推理劇を私に披露してくれたまえ!」
「ちっ、マジでやりずれぇ……あの時と一緒かよ……」
 はとりの脳裏に、故郷アポカリプスヘルがまだ比較的平和だったころに遭遇した『第三の殺人事件』が過る。
 あの時の“犯人”も芝居がかった言動で何度もはとりを翻弄してくれたおかげで、色んな意味で忘れがたい内容であった。
 はとりは早速、カレンへの聴取を始めた。
「あんた、深夜2時から4時まで何をしていた?」
「この孤児院に一泊していた。交渉が長引いていたら雷雨で帰れなくなってしまってね? 無理を言って空き部屋に寝泊まりさせてもらったのさ」
 此処で新たな新証言だ。
 他の猟兵は引き出せていない証言に、はとりが眉をひそめる。
「意外だな、対立関係の両者が馴れ合うとか。いや、実際はあんたが脅したのかもしれないがな?」
「フフッ、私はそこまで悪辣ではないんだね?」
「よく言うぜ、この舞台で散々大勢をぶっ殺してきたくせに。んで、その証言が真実だとしてもだ、深夜帯のアリバイはなくて当然。誰も証明できないからな。むしろ、ある奴が怪しいと疑うべきだ。身内の証言もアリバイに入らねぇぞ」
「これは手厳しいね」
 肩を竦めるカレンへ、はとりの追及はまだまだ続く。
「アリバイありなら共犯、ないなら単独犯の線を疑う。この場合は後者か。院内の子供たちは当然犯行は不能だし動機もメリットもねぇから除外だ。そうなると、唯一の部外者であるあんたに疑いが向くのは必然だな。んで、背中から一突きって事は、正面に立つと警戒される相手かつ顔を見られるとまずい可能性が高い」
 舞台を歩き回りながら、はとりは腕を組んで仁王立ちするカレンを横目で見遣った。
「お前と院長先生は諍いを起こしてたそうだが、殺害理由としては十分じゃないか。刺傷が一つなら怨恨はないし、一撃で仕留める技量の持ち主なんて相手は、殺戮行為に相当手慣れた輩の仕業だ。そんな奴、この院内で他にいるか? 言っておくが、この孤児院が実は暗殺者の養成所だったとかいうトンチキは今更通じないぜ?」
 はとりがカレンに歩み寄り、すれ違いざまに肩に手を置いてその耳元で囁く。
「……あんただろ、カレン。動機は大方領主の命令で……って所か。それでも、あんたは身の潔白を主張するんだろうけどな?」
 カレンははとりの手を肩から払い除けると、彼と距離を取ってくっくと嗤い始めた。
「はははは! ああそうさ、全く以てこの身は潔白だとも! 残念だよ探偵少年、なかなか良い線まで行ったんだがね? 此処で手詰まりかい?」
 観衆という名のカレンの奴隷達がブーイングを飛ばすたびに、カレンの戦闘力が上昇してゆく。
 このまま放置すれば、デッドマンと言えどもはとりもジリ貧に追い込まれかねない。
 しかし、ここで観客から異を唱える声が発せられた。
『いいえ 柊はとりは 『ホームズ』は まだ話の途中です』
 声の主は床に突き刺さったままのコキュートスであった。
 途端、カレンの戦闘力がガクンと削がれたのが直感的にはとりも理解できた。
「……そうか、あんたのユーベルコードは賛同者の数の割合で強化度合いが決まるんだったか。いつもなら奴隷達全員が賛同するから強化成功率は100%だ。なら、あのクソ剣の野次ひとつでも混じれば、強化成功率はあっさり100%を切っちまうってわけだな。それなら俺にも勝ち目は出てくるよな?」
 グリモアベースで事前にカレンのユーベルコードの内容を把握していた『名探偵』はとりが、なにも対策を立てていないわけがなかったわけで。だとしても、ここで相手の強化を失敗させる豪運がはとりになければ、そもそも作戦は成立しなかった。
 名探偵は時に運をも武器にするのだ。
「よくやった、コキュートス。大手柄だ」
「まさか、君は最初からそれを見越して、あの剣を刺したのいうのかね……!? 下手したら1割にも満たない可能性に賭けたのかい?」
「ああ。あんたに似た奴も、そうやって無茶な“蓋然性”で俺を弄んでくれたからな……相手が違えど、意趣返しをしたくなるってもんだ、クソが……」
「それじゃただの八つ当たりじゃないかね……!? 理不尽だ!」
 驚愕するカレンに、はとりが横たわっている死体を指差しながら尚も言い放つ。
「ところで検死もしたんだが。サーベルが被害者の傷口と完全に一致したぜ」
「……なんだって?」
 カレンの顔色が一変した。
 急に険しい表情になり、はとりへ詰問してみせる。
「いつの間に? それに私のサーベルと被害者の傷口、どうやって照合したというのかね? 第一、君は私のサーベルには指一本触れてないだろう?」
 カレンの質問に、はとりがいよいよ眼差しが刃物めいて鋭くなる。
「ああ、確かにあんたのサーベルには指一本触れちゃいねぇよ。でも、だったらなんであんたは『私のサーベル』と断定したうえで話したんだ? 俺はただ……サーベルとしか言ってなかっただろ。所有者はぼかしていたんだぜ? どうして、そう言い切れたんだろうな?」
「うぐ……っ!」
 カレン、ここにきて、あからさまな動揺の色を見せる。
 はとりが一気に王手を彼女に掛ける。
「傷口の照合の話はブラフだ。犯人ならそんなもん処分してる。でも、あんたは自白しちまったんだ。自分のサーベルと被害者の傷口が一致しちまうってことを、今、この場で、俺に自白したんだ……!」
「う、うるさい……! うぎ、ぎ、あ、ああぁぁ!」
 カレンが頭を抱えて絶叫!
 遂に不死の紋章の苦痛がカレンの自我を崩壊寸前まで追い込んだのだ!
「わ、私は! やっていない! 殺して、いない! 殺すつもりは、なかったんだああぁ!」
 断頭台や絞首台、そして血濡れたサーベルがはとりへ一斉に襲い掛かる。
 だが、はとりは身を屈めると、飛んできた処刑器具を青く燃え盛る拳ひとつで粉砕してみせたではないか。
 その破片は瞬間冷凍され、ダイヤモンドダストが空中に舞い上がる。
「ああ、俺もこの事件の真相に気付いた。ったく、あの事件とトリックが瓜二つとか……気に食わねぇ!」
 拳に灯る蒼い炎がより一層の冷気を発散すると、突き出されたサーベルを掻い潜ったはとりは、カレンの鳩尾に渾身のボディーブローを叩き込んだ!
「ご、がぁッ!」
 衝撃波が貫通し、くの字に身体を屈めてその場に崩れ落ちるカレン。
 次の瞬間、その全身が徐々に白く凍結してゆく。
「……あるはずだった十三段目は消えていた。つまりこれは事故死だったんだよ」
「なにを、いって、るの、かね……?」
 悶えるカレンがはとりを見上げる。
 その額には、アゲハチョウ型の不死の紋章が浮かび上がっていた。
 屈んだはとりは凍り付いてゆくカレンへ目線を合わせ、昔話を語り始めた。
「俺の故郷がまだ比較的平和だった頃、俺の『ワトソン』の女に誘われて観劇に行ったんだ。何かと“いわくつき”の舞台でさ、数年ぶりに上演されるってことで当時は話題だったんだよな」
 はとりはカレンの顔を見て思い出す。
 あの事件の“犯人”――『プロパビリティの魔女』こと|観音寺院《かんのじいん》・|歌恋《かれん》を。
「端的に言えば、上演中に助演女優ひとりが生きたまま焼け死んだ。大勢の観客の目の前でだ。それは様々な偶然が折り重なって発生した、最悪の奇跡というべき事故だった。だが、真相は犯人が殺意をもって『あるはずだった十三階段目』を外したから起きた、れっきとした殺人事件だったんだ。しかも、その犯人は以前から『これをやれば、もしかしたら運がよければ相手が死ぬかも』程度の軽い気持ちで罠を仕掛けて、実際に運悪く多くの人達を死傷させてた『魔女』でな、俺が経験した探偵事件の中でも最悪の犯人だったぜ。俺もまんまとあいつに誘導されちまった……。もっとも、プロパビリティの犯罪は俺の世界では法の範疇外だ。奴は舞台から永久追放されども、結局は不起訴になって放免になっちまったぜ」
 カレンははとりの話をぽかんとした顔で聞き入っていた。
「それが、どういう意味だか理解、しかねるが……?」
「まだシラを切るのかよ。あんたも、最初は殺意はなかった。ただサーベルを突き付けて脅すだけだった。しかし、被害者は気が動転したんだろうな、逃げようとして足がもつれたかどうかは知らねぇけど、運悪くあんたの方へ倒れて、サーベルが刺さっちまったんだ。どおりでゲソ痕が滑ったような感じだと思ったぜ」
 カレンはここで、今までで一番の笑顔を見せた。
「正解、だ。つまり、これは、過失致死……殺人、では、ない……!」
 そう言い張ったカレンを、はとりは一蹴する。
「だが、あんたはこれ幸いと被害者へトドメを刺した。それは駄目だ。完全な殺人だ。俺は、それを許さない」
 はとりの怒りと共に、蒼い炎がカレンの身体を包み込んで凍結を早めてゆく。
「もう降板しろよヒロイン。あんたの輝く場所は此処じゃない。俺が昔、罪を暴いたあんたのそっくりさんは舞台の中央で光を浴びたがってたよ」
 憐憫の眼差しを向けるはとり。
 そんなカレンが、ひとことだけ、彼に言い放った。

「……ああ、これが夢だとしても、また君に逢えて心から愉しめたよ。……はとり君」

 目を見開くはとり。
 カレンは最期の力を振り絞り、彼に想いを届ける。
「知らない記憶が、流れ込んでくる……これは、別世界の、私の記憶、なのか? 歌恋……私に、瓜、二つではないか……これが、どういう意味なのかは、分からない……だが、この世界の外には……これほどまで演技に、没頭できる……世界があったのか……羨ましいな……! 私も、死ねば……そこへ生まれ変われる、だろうか? はとり、く、ん……、こたえて、くれたま、え……めい、たんてい、なんだ、ろう……?」
 全身が氷に覆われ、眠るように息絶えるカレン。
 不死の紋章にダメージが入ったことで、氷像と成り果てたカレンの身体が一瞬にして粉々に砕け散って風に乗っていく。

「――閉幕だ。じゃあな……歌恋」

 赤黒い空へ消えてゆくダイアモンドダストを、はとりはいつまでも眺めている。
 暫くして、彼は床に突き刺さったコキュートスを引き抜くと、最奥で発見した『欠落』――巨大な黄金の鎧をを一思いに断ち切ったのであった。

<了>

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月25日
宿敵 『『処刑台の魔女』カレン』 を撃破!


挿絵イラスト