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grief-嘆きの声が増す前に-

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●ある貴婦人の嘆き
 ああ、ああ、なんてことなの!
 息子を苦しめる病を治すためなら、私は何をしても構わなかった。
 お医者様や魔法使いでは、痛みを一時的に取り除くことしかできない。
 病そのものを治せる薬はあるにはある。
 けれどその薬はとても希少で、材料がある場所に辿り着くのにも熟練の冒険者が命の危険をともなうほど。
 だからとんでもなく高価で取引されているのだと聞いた。
 だけど、お金なんて幾らかかってもいい。あの子が元気になるのなら、お金なんていらない。
 そうして八方手を尽くしてやっと、材料を売ってくれると言う「冒険者」が現れて。
 私はこの家の全ての財産と引き換えにそれを手に入れた。
 ……なのにそれが、偽物だったなんて。
 もう一度本物を手に入れることは、叶いそうにない。
 痛みを和らげる薬さえ買えるかどうかわからない。
 あの子は、このまま苦しんで死んでいくしかないというの――。

●古今東西よくある悲劇
「苦しむ人の心につけこむ悪事というのは、どこの世界でも昔からあるものなのですけれどね」
 そう語るグリモア猟兵のフェイト・ブラッドレイは、なぜかどこか愉しげな様子であった。

 難病の息子を抱えていた母親は、アックス&ウィザーズの富豪。
 かつては一つの町を治める領主の家系であったらしいが、何がしかの理由によってその地位は既にない。
 屋敷だけが町のはずれにあり、町の人々からは旧領主邸と呼ばれている。
 彼女を騙した者たちは冒険者と名乗ってはいたが、せいぜいが盗賊くずれの集まりである。
 それだけならば、いずれ本物の冒険者たちによって解決されるであろう事件なのだが。
「盗賊たちをまとめ上げている主犯はオブリビオン。となれば猟兵の出番でございましょう」

 盗賊たちは町に潜み、次はそこで開かれている裏のマーケットで偽物を売り捌こうとしているらしい。
 しかし、マーケットが町のどこで、いつ開催されているのかは簡単にはわからない。
「町の酒場に集まる冒険者の中には、場所についての情報を知っている者、利用したことのある者もいるようですね。
 ブラックマーケットそのものが目当てでその町に訪れた冒険者にも出会えるかもしれません」
 まずは酒場で彼らから話を聞くのが良いでしょう。そうフェイトは言う。

 マーケットの開催者は信用を第一としているようで、売りに出された品が偽物であることを明らかにすれば警備の為に雇った兵たちが配下の盗賊たちを捕らえ、然るべき処罰を下すだろう。
 異変が知れれば、奥に控えている首領――オブリビオンが出てくる筈だ。
「首領は女性のダークエルフ。配下たちにはネイアと名乗っているようです」
 マーケットに潜入してネイアを倒すことが猟兵の目的であり、そして回りまわって偽物による被害を食い止める事にも繋がる。

「彼らが売り捌こうとしている特効薬、本物は「アルコンの角」というそうですが……もしかすると、マーケットで本物が売られているかもしれません」
 本物が手に入ったならば、今度こそ旧領主邸で苦しむ少年の病は確実に癒えるでしょうね。
「それでは皆様、お気をつけて。検討をお祈りしておりますよ」
 フェイトはそう言うと、綺麗な笑みを浮かべて猟兵たちを送り出すのだった。


遊津
 皆様はじめまして、遊津と申します。

 第一章で酒場での情報収集、
 第二章でブラックマーケットに潜入して調査、
 第三章でボスと戦っていただく形となります。

 なお、猟兵が旧領主邸に行くことは出来ません。
 プレイングではその旨にお気をつけください。

 それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 冒険 『酒場の賑わいの中で』

POW   :    酒の飲み比べ、腕相撲、一騎打ちなどで冒険者に認められる

SPD   :    冒険者同士の情報を盗み聞き、地図をすり取る等でこっそりいただく

WIZ   :    色仕掛けや説得など、口先で騙して冒険者から情報を引き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

弦切・リョーコ
助けたいという祈りだけなら神様にでも任せるんだが…手を尽くし相応の対価を払った。なら助かるべきだね。
正しい手順に対して正しい結果が得られるべきってのが持論なんだが、科学と違って社会はこんな法則も成り立たないのが世知辛い話だよ。

SPD
騒々しさに辟易しながらも【目だたない】ように酒場の片隅で耳をそばだて、【学習力】で一言一句を漏らさず記憶し【世界知識】に照らしてマーケットについて有効な情報を取捨選択する。
ついでにアルコンの角やオブリビオンと思しき存在の情報も集めておく。
地図等を持っているやつにアタリが付いたら【迷彩】で接近して【物を隠す】ことでスリ取る。
似たような内容の仲間とは協力・連携する。



●プラス・マイナス・イコール
働く人々が仕事上がりの一杯を求めて訪れるよりも前から、酒場には冒険者たちの賑やかな声が満ちている。
その騒々しさに辟易としながらも、弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)は彼らの会話に耳をそばだてていた。
 近くのテーブルで交わされる様々な会話を一言一句漏らさずに記憶する。膨大な知識と照合する。
彼女の持つ情報処理能力をフルに稼動させてふるいにかけながら、リョーコは考える。
(助けたいという祈りだけなら、神様にでも任せるんだが……彼女は手を尽くした。息子を助けるに値するだけの、相応の対価を支払った。なら、息子は助かるべきだね)
正しい手順を踏んだなら、正しい結果が得られなければならない。
マイナス1に2をプラスしたのなら、答えは確実にプラス1。マイナス2になるようなことはありえない。
(なのに、社会はこんな法則も成り立たない。世知辛い話だよ)
ふ、と息を吐くリョーコの耳が、一つの会話を捉える。
「ああ、ようやく干してない肉にありつけた。これでベッドで眠れたならなぁ」
「贅沢言うなよ、今日のうちに町についただけでも良かったじゃないか」
「宿代を浮かせたと考えようじゃないか。お前だって狙ってるモノくらいあるんだろ?」
「勿論さ、ルベシベの祭典優勝者が作った品が流れてるってな」
 彼らはどうやら長い旅をしてきたようだ。今日中にこの町に来られたことが重要であるらしい。
そして、狙いのものがある。
(ルベシベ……武器職人のドワーフが集まる町だね。毎年職人の腕を競う大会が開かれていて、それが祭りになってるのか。……なるほど、その大会優勝者の作品なら、質も良いし高額なんだろう)
「なぁクリフ、そろそろ合言葉を教えてくれよ。聞き出せたのはお前だけなんだぜ?まさか忘れちまったとか言わねぇよな?」
「まぁまぁ。寝床に戻る前にはお前らにも教えてやるって」
 そのまま彼らの話題は変わりやがて食事を終えて席を立つ。リョーコもそれに合わせて立ち上がった。
「おーい、勘定頼む」
「……うん? おかしいな、確かここに」
「どうしたんだよ、財布でも落としたか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
 そうして彼らが酒場を出て行った後。
リョーコの手には四つに畳まれた紙片があった。クリフと呼ばれた男からスリ取ったものだ。
彼女は紙片を開き、内容を確認する。
それは手書きらしい大雑把な地図。地図というよりは道順のようで、幾度も曲がった尾を持つ矢印だけが書かれている。
この町の地図と重ね合わせれば矢印が何処を示しているのかはわかるだろう。
そしてそこに記されていたのは、彼らが口にしていた合言葉だ。
「『ツノアリツノナシセンボンツノガイ』……この合言葉がないと、会場には入れないってことか」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヌヴィエム・ローズ
【心情】困った人たちがいたものですね、偽物を高値で売りつけるなんて……。せめて偽物らしく破格のお値段にして差し上げればいいのに。……あれ? 違いますね、偽物を売っちゃだめです。

【行動】
 冒険者さんにお話を聞いてみます。その前にピールを一杯おごりましょう。私は未成年なのでミルクをいただきますね。
 ある事情があって「アルコンの角」をどうしても手に入れなくてはいけないんです。それもなるべく早く。今から取りに行ってくれる人を探しても、きっと間に合わないと思います。心優しいどなたかが、売ってくださるといいのですが。
 そういう、貴重な品を手に入れられる場所を知りませんか? と。正直に聞いてみます。



●オネスト・リターン・カインド
「え? アルコンの角?」
「はい、ある事情があって……どうしても手に入れなくてはいけないんです」
 傍らに弓を置く女性のエルフに、ヌヴィエム・ローズ(九番目の薔薇・f13097)は神妙な顔で頷いた。
(困った人たちがいたものですね、偽者を高値で売りつけるなんて……。せめて偽物らしく破格のお値段にして差し上げればいいのに……あれ?)
ヌヴィエムはミルクの注がれたカップを手にして、ことりと首をかしげる。
(違いますね、偽者を売っちゃだめです)
 ヌヴィエムがおごりでと差し出したビールを呷る女エルフ。
「禁猟地の管理人にコネがあるから、ちょうどよく死んだアルコンがいれば相場より安く買えるかもしれないけど……」
「あの、なるべく早くしないといけないんです。今から取りに行くのでは、きっと間に合いません」
「そっか。じゃあ、運任せってのも駄目ね」
 性根が親切なのだろう、エルフはヌヴィエムを案じるような目をしながら、何とかしようとしてくれているようだった。
「心優しいどなたかが、売ってくださるといいのですが。そういう貴重な品を手に入れられる場所を知りませんか?」
「……うん。そうね。そういうことならまあ……知らないでもないわ」
 ヌヴィエムの装いを見て、危険なことには慣れていない上流階級の娘だと判断したのだろう。
危険だからよく考えて、と念押ししながら、エルフはヌヴィエムにこっそりと耳打ちをした。
「表には流さない商品を扱ってる裏のマーケットがあるの。開催場所はいつも変えてるみたいだけど、今回はこの町。そこでなら売ってるかもしれない」
「それはいつ、何処に行けば入れるのでしょう?」
「出入りや宿帳を見た感じ、明日か明後日でしょうね。場所は……詳しくはあたしも知らないんだけど」
 幾つも店が出せて、それが表に出ない場所だと……どこか広い屋敷みたいなところか地下かのどっちかだと思うの。
女エルフが知っているのはそこまでのようだ。
しかし、重要な情報を得られた事には間違いがない。ヌヴィエムは礼を言うと、彼女の為にビールをもう一杯注文した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
WIZ
酒場で冒険者に情報収集

使用技能
野性の勘、誘惑

勘を働かせ脈アリげな一人の女性に
ダンピールの顔の良さを活かし
私の口調から育ち良さそうに見えれば尚良し

始終遠慮がち・弱気・礼儀正しく、与しやすそうに
伏せた目に長い看病と奔走に疲れた様相を滲ませ

…もし。…突然、不躾で済まぬ。冒険者の方とお見受けして、お伺いしたい
薬を、探しておる。…妹が、病での
医者も、魔法も…(静かに首を振り)
病に効く薬があると噂を聞いて此処まで来た
が、それが売られるマーケットが一体いつ何処で開かれるのか…
御存知ならば教えてほしい
ただでとは言わない
もし薬を買えたら、……。

縋るような視線と共に、最後は決死の覚悟で囁くように

アドリブ歓迎



●ロマンス・ゲーム・タクティクス
「……もし。突然、不躾で済まぬ。冒険者の方とお見受けして、お伺いしたい」
 佐那・千之助(火輪・f00454)が声をかけたのは、テーブルにいくつも空のグラスを並べていたビキニアーマーの女戦士。
豪快そうに見えた彼女は不意にかけられた声に顔を上げ、たちまちのうちに頬を染めた。
「あ、アタシに……依頼したいの?」
平静を装おうとした女の声はけれど努力の甲斐なく上ずった。
「薬を、探しておる。……妹が、病での。医者も、魔法も……」
静かに首を振ると、陽光のような色の長い髪がさらりと揺れる。そんな些細な仕草ひとつひとつまで、すべてが女の心を惹きつけた。
「病に効く薬があると噂を聞いて、此処まで来たが……それが売られるマーケットが一体いつ何処で開かれるのか……」
翳りのある紫の瞳は憂いを帯び、長いまつげが伏せた目に影を落とす。
「マーケット。……マーケットの事を聞いてきたの?」
「御存知ならば教えてほしい」
 縋るような視線を送る千之助。
「そう、でもわかってる? アタシは冒険者。貴方は依頼人。そうよね?」
「無論、ただでとは言わない」
「もし薬を買えたら、……」
 耳元で囁かれた声は、まるで純潔の少女が一夜の身を委ねる覚悟を決めたような繊細で危うげな響きがあって。
女は知らず、自らのくちびるをぺろりと舌で湿らせた。

「安心しなさい、アタシが口を利いてあげるわ。マーケットが開かれるのは明日の晩。月が中天にかかった頃に鐘が鳴るから。
そうしたら、広場の女神像の隣にいる向こう傷の男に話しかけなさい。アンの紹介だといえば必ず通すように言い聞かせておくから」
 仲介料は後払いで構わないわ。
だから、ね。無事に買えたらまたここに来なさいな。
「その時は……ね?」
 慾に浮かされた目で女は千之助に、謡うように言うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

コエル・フーチ
マスター、ミードを頼む、フェアリーサイズでな、あと灰皿くれ。
さて……じゃあ【情報収集】といこうか(煙草に火をつけつつ)

店の片隅で【目立たない】ように飲みながら
柄が悪そうな冒険者の会話に【聞き耳】を立てる

ブラックマーケットを知っていそうな奴に当たりをつけたら接触してみよう
「アルコンの角が欲しいんだが、どこで手に入れたらいい?」と聞いてな
まあ、情報料に少しくらいなら奢ってやらない事もない
……あとで、必要経費として請求しよう



●スウィート・スマート・スパイシー
 日の落ちる勢いに合わせるかのように酒場の賑わいは増してゆく。
ひときわガラの悪そうな連中が陣取るテーブルを背にして、コエル・フーチ(指先の熱・f08889)はカウンターの端に座った。
「マスター、ミードを頼む。フェアリーサイズでな。あと灰皿くれ」
グラスを磨いていた初老のマスターはすぐに焼き物で作られた灰皿をコエルの前に差し出した。
コエルは愛飲の煙草「Jaeger」を咥えて火を点け、ゆっくりと吸い込む。
ふわりと紫煙が吐き出されれば、小さなフェアリーの体躯に見合ったサイズの蜜酒が彼女の前にことりと置かれた。

 新たに酒場の扉を潜ってきた男たちが一つのテーブルを埋めた。
一人の男が運ばれてきたジョッキを一息に呷って言う。
「ああ疲れた!依頼内容は掃除じゃなかったのかよ、設営までやらせやがって」
「ただの掃除であんなに依頼料が高いわけないだろ。俺は絶対裏があるって思ってたね」
「それにしてもこれだけやって俺たちは当日マーケットの中にも入れねえなんてなぁ」
「買う金があんのかよって話だけどな」
「けど、正規で買うよりずっと安いんだろ? それに真っ当な方法じゃあ到底手に入らないものも――」
わいわいと騒いでいたところに、コエルの涼やかな声が割って入る。
「アルコンの角が欲しいんだが、どこで手に入れたらいい?」
 姿は可憐なフェアリーといえど、突然の乱入者に顔を見合わせる男たち。
「ブラックマーケットのことを話してたんだろう? 話を聞かせて欲しくてね」
 少しくらいなら奢ると言ってみれば、男たちが露骨に浮かべていた警戒は途端にほぐれる。
「マジか!おいウェイトレスの姉ちゃん、香草焼き一皿!」
「俺にもだ、それからシチューも追加で頼む」
「こっちは蒸留酒をくれ」

 機嫌を良くした男たちの口は、酒も手伝ってよく回った。
「アルコンの角なぁ。粉薬なら魔法薬の店が扱ってたぞ?」
「一本まるまるは見ちゃいないが……いや、流石に俺たちみたいな雇われに軽々しく見せたりはしないだろうぜ。価値のあるもんなら隠しておくさ」
「そういや、やたらと警備が厳重なスペースがなかったか? 高級品はそこに並ぶと見たね」
「警備が厳重といえば、奥の方は掃除にも入らせちゃもらえなかったぜ。もしかすると搬入が始まってたのかもな」
「俺は控え室になると思ってたがなあ。今回はどこぞの国の豪商のご隠居が参加してるって噂だろ? ……ああ、スープをもう一杯」
「それは眉唾だって話だがなあ……蒸留酒追加だ」
 情報とともに追加されていく、もはや「少しくらい」ではなくなった注文に。
(……あとで、全部必要経費として請求しよう)
 コエルは頭の中で代金の総額を計上していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
大金を払って子供を助けたとしても、だ
その後の生活資金は残してあるのか?

苦しくても子供がいればと思っても
子供は苦しい生活に耐えられないかもしれない

「親心ってのは面倒だ。そしてそんな面倒事に首を突っ込む俺の心も」

……あぁ面倒臭い


【聞き耳】を駆使しマーケット情報の収集を基本

マーケットに来訪した事があるとの声がある際は
その者の話を重点的に聞く

【聞き耳】だけでは収集度合いが不足する様な際は
その情報を口にした者と飲食を共にするなりして
より詳細な事を聞き出す

聞き出す時は
【コミュ力】や【言いくるめ】等有用と思える技能を活用
加えて愛想は良く応じる

自身の持つ情報が溜まれば
それも活用し更に詳細な情報を取得していく



●ネゴシエイト・アゲインスト・オールドマン
 ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)は彼らの会話にじっと聞き耳を立てながら、被害者である母親に思いを巡らせていた。
(大金を払って子供が助かったとしても、だ。その後の生活資金は残してあるのか?)
 薬を買うために、母親は全ての財産を手放した。
息子が元気になることが一番の幸せだと考えたからこそ。
たとえそのあと貧困に苦しんだとしても、子供がいるのならば乗り越えていけると思ったのだろう。
けれど子供の方はどうか。病魔に蝕まれていても、満足な食事が用意され、暖かなベッドで休めていた。それは彼の環境が裕福であったからこそだ。
この先病が治って健康な体となっても、貧しさからくる苦しい生活には耐えられないかもしれない。
子がそう思うかもしれないということも、母親にはきっと想像できないのだろう、けれど。
(親心ってのは面倒だ。そして、そんな面倒ごとに首を突っ込む俺の心も)
 ……ああ、面倒臭い。

 思いを馳せながらも、その耳は近くの会話を聡く捉える。
「さて、明日はどんな店が並ぶんじゃろうなあ。楽しみじゃ」
「爺さん、羽目を外しすぎないどくれよ?」
「じゃがのう。これがわしの唯一の楽しみじゃからなぁ」
「ご隠居の旅の目的が裏マーケットの追っかけだなんて知れたら商会の看板に関わるんだからな?」
「硬いことをいうでない。とはいえ、婿殿に迷惑はかけられんの」
 どうやら彼らはブラックマーケットの客。それも幾度も足を運んでいるらしい。
ローはにこやかな顔を作って彼らのテーブルに近づいた。

「へえ、その年で冒険者デビューしたのか? すごいな」
「昔からの夢でのう。その頃は家業を継ぐしかなかったが、実はこっそりウィザードに弟子入りしておったんじゃよ」
「魔法の腕はともかく、案外年の功ってのが役立つ時もあるんだよ、これが」
 しばらくすると、彼らは打ち解けていた。
聞けば老爺は遠い都の大商人で、娘婿に跡を継がせてから一念発起して冒険者となったのだとか。連れの二人は護衛も兼ねているらしい。
湯気を立てる大皿料理を取り分けながら、ローはそれとなく問いかける。
「それで、爺さんはずっとブラックマーケットを追いかけてきてるのか」
「まあ、たまに開催に間に合わんこともあるが、ここ三回ほどはバッチリじゃよ」
「会場と開催時期がわかれば入れるのか? 誰でも?」
「そうはいかんわい。案内人を見つけて合言葉を言わねばならん」
「じゃあ、爺さんたちは誰が案内人かもうわかってるのか」
「その為に雇われた者はたくさんおるからの、全員の顔は知らんわい。じゃが見分け方があっての? ……うーん、喋りすぎて喉が渇いたのう」
 ここからは更に情報料をとるぞ、というわけらしい。
ローは苦笑いして店で一番高い果実酒を注文する。
「うむ、なんじゃったかの。そうそう、案内人は紋章入りの青い布を見えるところにつけとるんじゃよ。マーケットが開いておる間は広場にな、何人かおる。そやつらに入り口まで連れて行ってもらうのよ……」
 さて、お前さんに合言葉を調べられるかの。老爺は強かに笑うのだった。
「会場で会うのが楽しみじゃ」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『ブラックマーケット潜入』

POW   :    とにかく片っ端からあちこち当たってみる

SPD   :    自分の足で情報などを集め、探す範囲を特定する

WIZ   :    自ら客として交渉などを行い、目標物に近付けるよう試みる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 * * *
 そして、翌日の夜。月が中天にかかった頃、町に鐘の音が鳴り響く。
時を告げるものでも弔事や慶事に鳴らされるものでもなく、緊急告げる鐘でもないそれに首をひねる者もいたが、多くは気にせずに眠りについた。
 それが、この町で密やかに開かれるブラックマーケットの開場の合図だと知ることもなく。

 猟兵たちは手に入れた情報を元に、それぞれにマーケットの案内人に接触する。
彼らに案内されてたどり着いたのは、町の地下に広がる大きな空洞。
そこには、色とりどりの市が広がっていた。
 * * *
弦切・リョーコ
へぇ、これがブラックマーケット。いやぁ興奮するねぇ未知の薬品やら魔術的な道具。つい目的を忘れたくなるね。……ああ、もちろん忘れていないさアルコンの角。

交渉は苦手だが【世界知識】の量と【学習力】を活かし、事前にアルコンの角の特性や相場を調べて、真贋を鑑定する方法を習得しておく。
アルコンの角を売っているところに出くわしたら売り手にアルコンの角の性質についてマニアックに話を振って知識を確かめる。本物を知らなそうだと判断でき、価格が相場以下なら偽物とあたりをつけて購入し真贋を衆目の前で確かめる。

アドリブ歓迎で、角を売ってる所へたどり着くまでは誰かの協力があるとありがたいです


コエル・フーチ
さて、警備が厳重だったりするところに高級店があるかもって話だったな
高級店ならマーケットの開催者もよく知ってるだろう
開催者は信用を第一としているらしいからな
高級な店ほど偽物を売るような愚は犯さないだろうよ

偽物売ってる店探すにもまずは本物を見ておかないとな
高級店でアルコンの角を見せてもらおう
ついでに、本物の見分け方も聞いてみるか【情報収集】

そうしたら次は、他の店を回って
高級店で見せてもらったアルコンの角との違いを見極める【第六感】

偽物を売っている店の目星が付いたら
高級店の店員から主催者に知らせてもらおう
同じ品の偽物を売られたら、高級店としても面白くないし
客のあたしが主催者に言うより説得力があるだろ



●リサーチ・アンド・キュリオシティ
「へぇ、これがブラックマーケット。いやぁ、興奮するねぇ」
 ブラックマーケットに並ぶ店たちは、そのひとつひとつをとってもアックス&ウィザーズよりすぐりの珍品だ。
何に使うのか、どう使うのかもわからない薬品や、魔術的な何かに使われたのだろう道具。
それらはリョーコの知的好奇心をいやと言うほどに刺激する。偽物探しをうっかり忘れて学術知識を満たしたくなる誘惑に駆られるが。
(もちろん忘れていないさ、アルコンの角、アルコンの角)
 様々な店に立ち寄り、品物について尋ねてはその知識を溜め込んでいく。
それを繰り返しながらリョーコがある店に立ち寄った時だった。
「なあ、これはアルコンの角か?」
 そう言ったのはリョーコではない。ふと声がした方に目線をやれば、そこにはコエルの姿があった。

 アルコンの角のような高級品を扱う店ともなれば警備が厳重なところにあるのだろう、そう情報を得たコエルはマーケットに入ってから警備兵の動きをずっと観察していた。
雰囲気こそ怪しげだったが、店先にいると絶えず警備兵の視線を感じる。コエルの勘がこの店は『他とは違う』と告げていた。
店の奥にいた青年が店先にやってくる。
「わかりますか。ええ、アルコンの角に間違いありませんよ」
「アルコンの角はとんでもなく高いって聞いたんだが」
「まあ、一本丸ごと買うならとんでもなく高くなりますよ。でもこんな風にちびた、使いさしのものは値下げしなきゃあ売れませんから」
 どうせ使う時には粉々にするってのにおかしな話です。
くつくつと笑う青年。リョーコは彼の持つ乳鉢の中身に目を留めた。
「こっちと色が違うけど、もしかしてそれもアルコンの角かい?」
「おや、そちらもよくおわかりで」
 リョーコが目にした乳鉢の中で砕かれたものは乳白色だが、店先に並んだ先の欠けた角は青色だ。少し見ただけでは別の物に見える。
「生きてるアルコンは角も生きてる……というと妙な顔をされますがね、生きてた時に折れた角と死んだあとに採った角だと色が違いまして、生きたアルコンの角は青いんですよ。生きてる間に角が折れるアルコンっていうのもいるそうで、それはこの通り青い。相当珍しいものです。まあ、薬として使うなら効果は同じです」
「なんだかややこしいな、一本丸ごとってのは白いんだろう?」
「そりゃあ、病気や寿命で死んだやつから採っても、殺してから採ったやつも、どっちも死んでますからね」
「それじゃあ青い方が偽物みたいだ。他に本物と偽物の見分け方はないのか?」
「そうですね……」

 青年から聞いた情報を元に、コエルとリョーコは連れ立って店を覗いていく。
「大体見分ける方法がわかったね。これで話を振ってみて、価格が相場以下なら偽物ってところかい?」
 リョーコの提案に、コエルは少し考えて首を振った。
「……いや、価格は判断材料にするべきじゃない。例の母親は財産全て騙し取られてるんだ、そのくらいで売れると考えてるなら高値をつけるんじゃないか」
「ああ、それもそうだな……だとすると、もっと揺さぶりをかけてみる必要があるね」

 そして二人は一つの店に目をつけた。
何も知らなければ気づかないかもしれない。しかし確信を持って観察していれば、その店は異色だ。
何度も同じ客が出入りしては同じようなやり取りをして大仰に驚き、賞賛する。しかし周囲に人目がなければそれは起こらない。
しかも同じようなことを繰り返す客は一人ではない。そして、店員も気づけば何度も変わっている。
(サクラも店番も何人もいるってことか)
 そう思いながらも素知らぬふりでリョーコは男に話しかけた。
「アルコンの角を売ってるんだろ、見せてくれないか」
「おお!お目が高いねぇ!そら、こいつさ」
 男は店の奥に置かれた鍵のかかった箱から、乱雑にそれを取り出し、二人の目の前に置く。
「黒壁って断崖は知ってるか? アルコンの生息地を求めた冒険者の血が赤を通り越して崖を黒く染めたってな。俺たちはそこに挑戦した。そして踏破したのさ。何人も犠牲になったがな」
「じゃあ、このアルコンの角はアンタたちが倒して獲って来たのかい?」
「そうさ、アルコンはこの角が武器なんだ。物凄い勢いで突進して串刺しにしようとしてくるんだよ。それからな……」
 調子づいて武勇伝を語っていく男だったが、その話には矛盾点があった。それも本物のことを知らなければ騙されてしまうだろうが。
『生きたアルコンの角は青い』。男が本当にアルコンを倒したのなら、生きている青い角のアルコンを見ているのだから、それを語り草にしないはずがないだろう。
「なあ、ちょっと触ってもいいかい?」
「そうだなあ、まあ盗んだところで逃げられやしねえからな」
 男が手渡した『白いアルコンの角』に触れ、リョーコは確信する。

 ――本物を扱っていた店の青年が先ほど言っていた。
『アルコンの角はとても柔らかいんですよ。粉にするのに薬研や石臼を使わずとも、こうして鉢で簡単に砕けるんです。とくに白ければ白いほど。 
ですから、売る時もとても扱いに気を使うんですよ。こうして手袋をして、納める時も布に包まないと、すぐに欠けて価値が落ちてしまう。
気楽にお客様が触れるような場所におけるのはこういう風に元々傷があったりするやつくらいです』
「……こいつは偽物だね? 本物だったら、こんな気軽に客に触らせるわけがない」
「なっ……何だと!? 馬鹿言うな、これは本物の、」
「本物だって言うならはっきりさせようじゃないか。このマーケットには目の肥えた本物の商人がたくさんいるんだろう?」

 いつからその場を離れていたのか、コエルは先ほどの店に戻っていた。
「おや、どうしました?」
 首をかしげる青年を手招きし、そっと耳打ちをする。
「アルコンの角の偽物を売ってる店を見つけた。聞いたとおりに調べてみたが、あれは真っ赤な偽物だ。……客のあたしが言っても誰も信じてもらえないかもしれないが、同じように店を出してるあなたの言葉なら説得力があるんじゃないかと思ってな」
 コエルの言葉を聞き届け、青年は目を光らせた。
「ええ、そうですね……偽物で荒稼ぎされるのはこちらとしても許せません。何よりマーケットの信頼が落ちるのは出店者としても困る。主催に話をつけたいところです、が」

 ここは私一人でやっておりましてね。
このまま店を開けるわけにも行きませんし。さてどうしたものでしょうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヌヴィエム・ローズ
【行動】
 冒険者さんにもいい家のお嬢様だと思っていただけたようですし、ここは片っ端からアルコンの角のことを尋ねて回ってみましょう。特に目星もつけず、お店の人に手当たり次第ですね。その方が世間知らずらしく見えるでしょう?
 そうしていれば、切羽詰まったカモだと思って向こうから声をかけてくれるのではないでしょうか。
 ……ところで本物のアルコンの角がどんなものか、そういえば調べてきませんでしたね。声をかけてきた方に鎌をかけてみて、情報を聞き出しつつ判断します。



●リトル・レディ・ビヘイビア
 様々な職業、様々な服装の人々が客として訪れるマーケットの中、一人の娘が店主に問いかける。
「すみません、この中にアルコンの角はありますか?」
「星見占いの道具なら揃えてるんだけどねぇ。魔法薬なら、あっちの方に出してる店があったと思うよ」
 それを聞くと娘は一礼して店主が指差した方へ小走りで向かっていく。
「ここにはアルコンの角は置いていますか?」
 問われた老婆はややぶっきらぼうに言った。
「うちじゃあ手作りの品しか置いてないんだ。冒険者から買いつけてる店がどこかに出てたと思うんだが」

 次々と手当たり次第に「アルコンの角」がないか聞きまわっているのはヌヴィエムだった。
彼女の装いも手伝ってか、その振る舞いはまるでどこかの貴族の令嬢が伝手もなく一人で目的のものを探し回っているようにも見える。
もしかすると目的の連中が彼女に目を留めるかもしれない、そう思ってのことだ。

 そうして尋ね回っていた先についたのは一軒の店。
「ええ、でしたら少々お待ちいただけますか」
 妙齢の女店主は奥に向かって声をかける。しばらくすると、従者であるらしい男性が分厚い布の包みを持ってきた。
それを慎重に受け取った女店主は手袋をはめ、丁寧に布を開いていく。
中から出てきたのは、白く細い棒のようなもの。表面は滑らかで、真珠にも似た光沢がある。
「いかがです、古いものですが保存状態は良好です」
 ヌヴィエムは少しだけ困惑する。
(……そういえば、本物のアルコンの角がどんなものか、調べてきていませんでした)
「あの、……よければその、使い方や、注意とか。アルコンの角について、教えてくれませんか?」
 そう問えば、店主は上品に笑ってヌヴィエムを手招いた。

「噂などでは「アルコンの角は硬い」と思われていますが、実物はとても脆いんです。アルコンが生きている時は硬いのですが、死ぬと時間が経つにつれどんどん脆くなって、こうして包んでいても崩れてしまいます。これは最低でも二十年は経っているので、もう粉にしてしまった方がいいくらいですが……元の形を保っていた方が信用がありますし」
「角のままでも間違いやすいものとかも、あるんですか?」
「いくつかありますよ。貝殻とか、鳥の嘴とか…ですが、一番紛らわしいのは白晶石ですね。何でも洞窟に生えているのだとか。アルコンの角に比べると硬くて粉にするにも苦労するそうですが、形は角のようで……そしてこれは実際に薬の原料でもあるのです」
「石が薬になるのですか?」
「ええ、薬を扱うものなら詳しいでしょうが、その石が生える洞窟の条件さえ知っていれば採取するのはとても簡単で、しかも一度に何本も取れるのだとか。服用すれば熱や痛みを和らげるということですが、病の元から治すことはできません。それに、町に売っている薬草の方が効果があるそうです」

 もう少し見て回りたいものがあるから、とその店から離れて少しばかり経った頃。
「お嬢ちゃん、『アルコンの角』を探し回ってたよな? あちこちの店先で聞きまわってたの、知ってるぜ」
 軽薄そうな男がヌヴィエムに話しかけてきた。
「売ってる店に連れて行ってやろうか?」
「本当ですか? こういうところに詳しくないので困っていたんです」
「着いて来いよ、仲間がやってる店なんだ、オレが口を利けば融通してもらえるかもしれないぜ」
 そう言って男は先ほどの女店主の店とは違う方向、マーケットの中でも奥の方へと歩き出していった。
「あなたはそのアルコンの角を見たことがあるんですか?」
「もちろん見たし触ったこともあるぜ。噂どおりに硬くて鋭い角だよ」
(硬い……ってことは、それは偽物だったということですね)
 この男は先ほどの店で聞いたような本物についての知識は何も知らないらしい。
ならば、案内された先にあるのは偽物、探している店である可能性が極めて高いということだ――。

成功 🔵​🔵​🔴​

コエル・フーチ
(前回の続きから)
なるほど、あたしが店番をと言いたいところだが
賞品知識もない上に、赤の他人には任せられないよな……

乗りかかった船だ、あたしが主催者に会って来よう
悪いが一筆書いてもらえないか?あなたなら主催者からの信頼も厚そうだ
ついでに主催者がいる場所も教えてくれ【情報収集】

一筆書いてもらい、主催者の場所を聞けたらその場所へ
店主から書いてもらった物を見せつつ
実は最近、知り合いが偽物のアルコンの角を買わされてな……
信用あるこのマーケットなら、本物が見つかると思ったんだが

また知り合いのように騙される人が出るのも
悪人が儲けるのも阻止したい、手間かけさせて申し訳ないが
確認に来てもらえないか?



●コンティニュー・ザ・ストラテジー
「偽物で荒稼ぎされるのはこちらとしても許せません。何より、マーケットの信頼が落ちるのは出品者としても困ります。主催に話をつけたいところです、が――ここは私一人でやっておりましてね。このまま店を開けるわけにも行きませんし……さて、どうしたものでしょうか」
 偽物のことを教えられ、本物を扱っていた店の青年はそう言った。
(あたしが店番をと言いたいところだが、商品知識もないし……赤の他人には任せられないよな)
 本物のアルコンの角、それを粉にしたものの他にもこの店に並ぶ商品は様々なもので、価値や用途、名前もわからないものだらけだ。
コエルに出来ることは本当に物盗りにあわないよう店の番をするくらいだろう。
ならば、とコエルは青年に持ちかける。
「乗りかかった船だ。あたしが主催者に会ってこよう」
「貴女が?」
「ああ、悪いが一筆書いてもらえないか? あなたなら主催者からの信頼も厚そうだ。ついでに、主催がいる場所も教えてくれ」
「そうですね……それでは、お願いしましょうか。少々お待ちを」
 青年は一枚布を取り出し、そこにペンで何事か書き付けると、くるくると筒状に丸めてリボンを複雑にかけた。
「西の壁の先にある通路が見えますか?」
 コエルが示された方向を見やれば、市の並ぶ広場の更に奥に繋がる通路が見えた。東側にも似たような通路があり、どちらも人間の大人が二人並んで通れるか通れないかといった広さだ。そのどちらにも、警備の兵士が二人ずつついて行く手を阻んでいる。
「そこの警備をしている、紋章のある鎧を着た男にこれをこのまま見せてください。ドリスの筋の者からの使いと言えば通じるでしょう」

 言われたとおりに通路の警備の男に伝え、渡された巻物を見せれば用件は何かと問われる。
主催に会いたいと答えれば、まっすぐに奥の扉へと案内された。
「失礼します、よろしいですかな?」
「構わない、入れ」
 中に入れば、彼がマーケットの主催者なのだろう、中央の磨き上げられたテーブルの向こうに威厳ある佇まいの男が座っている。
後ろには三人ほどの、商人らしき装いの男女がそれぞれ忙しそうに巻物やら書類の山に埋もれており、一際量の多い机がその半ばで空いていた。
「ドリスの筋の者からの使いだそうで、こちらを持ってまいりました」
「ほう、こんな可愛らしいお嬢さんがか。良いだろう、見せてくれ」
 主催の男は巻物を受け取るとリボンの結び目を確認し、それを解いて中を検めて頷いた。
「なるほど。この私が監督を務める市で偽物を売る不届きな輩がいる、しかもアルコンの角をときたか。君がその店を見つけたと?」
「ああ。実は最近、知り合いが偽物のアルコンの角を買わされてな……信用あるこのマーケットなら、本物が見つかると思ったんだが」
 わずかに落胆したような色を滲ませた言葉は、主催者の商人としてのプライドを煽ったようだった。
「勿論だ。このマーケットが公のものでないのは決して偽物や粗悪品を流通させる為ではない。設営の際に商品の検めも行われたはずだぞ……!」
「だがあれは偽物だった。それを書いた本人に見分け方を教えてもらったんだ、間違いない」
「……確かに、私が全ての品を直接検品したのでない以上はこれこそが最も信用に足る」
「手間をかけさせて申し訳ないが、確認に来てもらえないか? また知り合いのように騙される人が出るのも、悪人が儲けるのも阻止したいんだ」
「うむ……そうだな、リーゼリット! 君なら目は確かだろう」
 主催が呼ばわった名に、後ろで何か計算ごとをしていたらしい女が顔を上げる。
「あら、わたくしですの? 確かに薬の類は長く取り扱いましたけれども」
「話は聞いていたのだろう、君に検品を頼もう。偽物が見つかった場合、不届者の処遇も任せる」
「もう、人使いの荒いこと。わかりましたわ、では警備の者をお借りいたします」
 リーゼリットと呼ばれた女が青い腕章をつける。それは主催者と同等の権限を持つことの証であるのだと説明を受けた。
「彼女を私の代理人として同行させよう。それで構わないだろうか」

成功 🔵​🔵​🔴​


 猟兵たちの作戦は確実に成果を上げている。
彼らが偽物を売り捌こうとする盗賊たちの所業を明るみに出し、首領であるオブリビオンを引きずり出すまであともう少し。
あとほんのわずか、あと一歩だ。

 逆に言えば、そのあと一歩を踏み越えれば、オブリビオンとの戦いが始まる。
マーケットの中で、もしも他に何かやることがあるのなら、それができる猶予もまた、あとほんのわずかだ。
弦切・リョーコ
(前回行動の続きから)
さて真贋を見抜いてやったが騒ぎになりそうだね。間違ってるものを間違っていると言わなきゃ気が済まないたちだから仕方ないな。
騒いでいれば人も集まる。責任者も黙ってないだろうし、さっきまで同行してたあのフェアリーも当てにしておこうか。

【時間稼ぎ】しながら口論に周囲を巻き込んで、正しいことを言う良識ある人間と擁護する、敵の味方かもしれない奴らを切り分ける。ついでに周囲の目利き共の知識を後学のために【学習力】で蓄えつつ、主催者側の人間が現れたら偽物を抑えて渡す。【物を隠す】が役に立つなら使う。
偽物の角を本物と擁護した奴らの顔を覚えておき、オブリビオンらしき者がいないかをチェックする



●パブリッシュ・ザ・トゥルース
 マーケットの一角はやにわに湧き立っていた。
店と客の間で商品の真贋に対して口論が起きるのは、表の市場であればそれほど珍しいわけではないだろう。
しかし、主催者が信用を第一とするこのマーケットにおいてはそうではなかった。
 リョーコたちの周りにはやがて人垣が出来ていく。
「いい加減なこと言うんじゃねぇ、こいつは確かに本物だ!いい加減なこと言いやがって、どう責任とってくれるんだ?」
 唾を飛ばしてまくしたて、凄んでくる男だが、それでリョーコが臆するはずがない。
間違っているものは間違っている。1+1は2だ。それが違うというのなら、正さなければ気がすまない。
「本物にしちゃあんまりに雑な扱いじゃないか、アルコンの角をそんな風に扱っていいのかい?」
「え、お、俺に聞いてるのか」
 なあどうなんだ、とリョーコに話を振られた野次馬の一人は、まさか自分にお鉢が回ってくるとは思わなかったのだろう困惑する。
「俺は専門じゃないから詳しくは知らんが、まあ……アルコンの角って形を留めてるほど高いって聞くしなぁ」
「確かに、あれほどしっかり形が残ってるならもっと丁寧に扱うべきだな」
「うちも使いさしや粉薬くらいしか実物を見たことはないが、しかし使いさしだってもっと大事にされてたが」
「ああ、せめて手袋くらいはつけるべきだろうに」
 いかにも商人らしい者たちはそう言って首をひねる。それに客であるのだろう冒険者然とした者が口を挟んだ。
「そんな繊細なものなのか? アルコンは角を武器にするくらいなんだから角は硬いもんだと思ってたが」
「あれって本当にアルコンの角? 禁猟地で見たアルコンの角と色が全然違うわよ?」
「それはアンタ、生きたアルコンだったからじゃないのかい……」
「儂の知っとる話だと……」
 気づけば人だかりの中で見知らぬ者同士が話し合い、識らぬ者に識る者の知識が授けられていく。
中にはまだリョーコの識らなかった知識もあり、彼女はそれを貪欲に吸収していった。
そうしていればちらほらと目立ってくる者たちの声がある。
彼らはどんな意見を聞いても「あの品は本物だ」と言う主張を揺らがせない。
時に他者の言葉を遮り、話題をすり替えようと試み、そして集まる人をこの場から遠ざけようとするものの、彼らの言葉には「本物であるという意見の根拠」が無い。
彼らにとって重要なのが「真贋の見分け方」でも「本物なのか偽物なのか」でもなく、「偽物だと疑う者を減らす」ことであるのがわかる。
顔を見ればその中には先ほどこの店の店番やサクラをしていた者が混じっている。
つまりは盗賊たちの仲間なのだろう。リョーコは彼らを具に観察するものの、先にグリモア猟兵から聞いていたオブリビオンの特徴、女のダークエルフらしき者の姿はその中には無い。

 ――やがて、リョーコが期待していた人物がそこに現れる。
「偽物売買の疑いのある店舗というのはこちらで間違いございませんこと?」
 青い腕章をつけた女は丁寧な、しかし有無を言わせぬ圧を持つ良く通る声でその場のざわめきを静めた。
「失礼いたしますわね」
「あ、おい、何をして……!ぎ、痛ででででぇ!!」
 彼女は手袋を嵌めるとアルコンの角として売られていた商品に近づいていく。それを制しようとした店番の男は、彼女に触れる前に警備の兵士に肩を捻りあげられて悲鳴を上げた。
「お静かに。私、ただいま当マーケットの主催権限を借り受けておりますの」
 集う人々を囲うように並ぶ兵士の近くに先ほど行動をともにしていたフェアリー……コエルの姿を認め、どうやら当ては外れなかったらしいと唇を吊り上げる。

『本物のアルコンの角』だと言われていたそれを検め、主催代行の女はほどなく溜息をつく。
そして周囲に知らしめるように宣言した。
「これは白晶石ですわ。高く見積もったとしても一本で銅貨三枚がいいところですわね。これがアルコンの角だと仰るのでしたら真っ赤な偽物です。他に値打ちのある品物も見当たりませんし、どのように出店の権利を得て検品を潜り抜けたのかゆっくりお話を聞かなければならないご様子」
「ぐ……畜生、放せ、放しやがれ、おいテメエら、なに逃げてんだ…!」
 警備兵に拘束されたままの男は身を翻していく仲間の姿に狼狽えながら叫ぶ。
足早に散っていく彼らを追って行く兵士に、リョーコは先ほど自身が記憶した彼らの仲間を伝え、摘発に助力するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ダークエルフの女首領』

POW   :    「ちょろちょろと煩いハエだねぇ!」
対象のユーベルコードに対し【絡め取るムチでの一撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD   :    「お前たち、やっておしまい!」
戦闘用の、自身と同じ強さの【暗殺者】と【ダークエルフ弓兵】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    「下僕になるなら命だけは助けてやるよ?」
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【一時的な手下】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアズサ・グリフォリシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ゲットダウン・トゥ・ビジネス
 偽物を売りつけていた盗賊たちが警備の兵士たちに次々と捕らえられていく。
最後の足掻きとばかりに兵士の手をすり抜けたひとりが絶叫した。
「ああ畜生!姐さん!ネイアの姐御、聞こえてんでしょう助けてくださいよ!どこに隠れてんだか知らねぇが、俺たちの次はアンタが――」
 その続きを言う前に、男の口は塞がれる。永久に。
血飛沫を撒き散らして派手に倒れこんだ姿に、周囲の荒事に慣れない者たちの間から悲鳴が上がり、それは波のようにマーケットの会場全体に広がっていく――。

「……誰が隠れてるって? アタシにアンタ達を助けろってのかい、は、おめでたい話だねぇ。まともに働くことも出来ない下僕にくれてやる情けなんかないんだよ」

 長い銀の髪、肉感的な肢体を惜しげもなく晒すビキニアーマー。
「ダークエルフの女首領」……仮の名を、ネイア。

 捕らえようとした重厚な鎧の兵士が、彼女の振るった鞭の一撃で壁際まで吹き飛ばされた。
腕に覚えのある者たちはそれでも武器を構えようとする。
ネイアはその様を見て嗜虐的に唇を舐め上げた。

 さあ、戦いをはじめよう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ☆第三章、ボス戦を開始いたします。
おめでとうございます。オブリビオンと戦闘に持ち込むことに成功いたしました。
敵は「ダークエルフの女首領」ネイア。
戦場となるマーケットには戦えない商人、客、冒険者の客が存在します。
戦闘力の無いただの客は逃げますが、商人はこの状況でも店を守ろうとする者もおります。
また、冒険者は避難誘導をする者とネイアを倒そうとする者に二分されます。

勿論、ボス戦の成功条件は「ネイアの撃破」それのみです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コエル・フーチ
【SPD】
親分さんの登場か、また派手な登場だ
腕に覚えのあるやつは、客たちの避難誘導を頼む
他の店の商品も運んでやってくれ、全部は無理かもしれないがな

このダークエルフはあたし達が引き受ける
「まっとうに働くことも出来ない外道にくれてやる情けなんかないんだよ」
なあ、おばさん【挑発】

【空中戦】ホウセンカの射撃で攻撃しつつ
火【属性攻撃】の魔力を籠めた「オナモミ」を「くっつき虫の大群」で25個複製し
【目立たない】ようにあちこちに落としていく
24個落としたら、残りの1個は正面から【投擲】し爆発
その1個の爆発に紛れさせて【念動力】で他24個をネイアの髪や服にくっつけて
一気に爆発させる【フェイント】【だまし討ち】


弦切・リョーコ
やっぱりいたのかい…油断ならない相手だねぇ。
だが、あんな口の軽い下っ端に雑な商売をさせてるようじゃたかが知れてるな。
三白眼で睨めつけながら周囲を確認し、周囲の様子を確認。冒険者は相手のUCで籠絡されることを危惧し遠ざけかるよう呼べかける。
商品に難癖つけたのはこの私だよ、だからこれは私の厄介事だ。冒険者が味方してくれるのは有り難いんだが、加勢はいらない。手が空いてるなら他の店の避難を手伝ってやってくれ。

戦闘は『状況最適化』で相手の行動に適応しつつ【学習力】で使うUCの特徴を見定め次行動に繋げる。
間合いは極力離しながら、味方の加勢があるなら【援護射撃】で行動の選択肢を潰して動きを制限する



●アサルト・アフター・アトラクト
(油断ならない相手だねぇ。だが、あんな口の軽い下っ端に雑な商売させてるようじゃたかが知れてるな)
 三白眼でネイアを睨めつけつつ、リョーコは周囲の確認を怠らない。
一つしかない出口へと我先に群がる人々。その波に巻き込まれて怪我を負った老人や女。
警備の兵たちも混乱を収めようとしているものの難航している。
いざとなれば敵は彼らを盾としても武器としても使うことが出来る。それはこの場において避けたい事態だった。
(味方してくれるのは有り難いんだが、加勢はいらない) 
 リョーコは一歩を踏み出した。冒険者たちの視線が彼女に向けられる。
「商品に難癖つけたのは私だよ。だからこれは私の厄介事だ」
 手が空いてるなら他の店の避難を手伝ってやってくれ。コエルがその言葉の後を継ぐ。
「全部は無理かもしれないが、他の店の商品も運んでやってくれ!」
 二人の声に、クレリックやウィザードらしき者たちを中心とした数人が怪我人や老人の元へ駆け寄る。
それをきっかけにして、警備兵を手伝う為にその場を離れる者たちも多く現れた。

 人々の慌てふためく様をにやにやと笑っていた女首領ネイアが面白くなさそうに眉を顰めたのを見て、コエルは嘲笑うような調子で彼女に言い放つ。
「まっとうに働くことも出来ない外道にくれてやる情けなんかないんだよ。なぁ、おばさん?」
 それは先ほどネイア自身によって命を奪われた盗賊へと彼女が言い放った言葉の揶揄に他ならない。ネイアの唇が引きつった。
「はッ、小バエの分際で舐めた口をきくじゃあないか……!」
 叩き落そうとするかのように鞭が幾度も幾度も振るわれる。
それらを紙一重で避けてネイアの周囲を飛び回りながらも、コエルが精霊銃『ホウセンカ』から魔力を銃弾として次々に撃ち出していく。
「この羽虫がッ、ちょろちょろ目障りなんだよ!出て来なお前たち、やっちまいなァ!!」
 その声が響いた途端、コエルの首筋にぞわりと悪寒が走る。直感に従って大きく旋回すると、銀色の軌道を描いて彼女のいた場所を両断するようにナイフが薙いでいった。
顔を隠した暗殺者は素早く姿を消し、視覚から再びその刃を振るう。
「そら、こいつはどうだい!」
 更に何処からかコエルへ向かって矢が放たれる。それら全てを複雑な軌道で飛び回って躱しきると、コエルは再びネイアに向かってホウセンカを構えた。
撃ちだされた魔力の弾丸は、しかし暗殺者のナイフによって弾かれる。暗殺者はそのままコエルへと再び兇刃を翻し……切っ先が届く直前、その姿は塵の様に崩れて消えた。
「っ……ぐ……しまった……!」
「私を忘れてもらっちゃ困るな」
 ネイアの腕に焼けたような傷口が走っている。それはリョーコによるものだった。
コエルの挑発に完全に乗せられてしまっていたネイアは、一時リョーコの存在を忘れていた――その一瞬、一瞬で十分だった。
「ルーティン03、プログラム解析続行」
【現象演算『状況最適化』――コードコンダクター・オプティマイゼーション】。力場解放のプログラムは既にリョーコによって召喚され、展開されていた。
 コエルとネイアとの戦いを分析し続けていたプログラムは、リョーコにその結果をフィードバックし、ネイアの隙を突く最大の機会を彼女に指し示したのだ。

「舐めた事してくれたねェェっ……!!」
 怒りに顔を歪ませ、ネイアは鞭を床へと叩きつける。
ヒステリックなそれは、しかし決して癇癪によるだけのものではない。
自らが生み出した血の海に沈んでいた盗賊――ネイアによって、つい先ほど物言わぬ屍へと変えられたそれが、ずるりと血塗れの床から立ち上がる。
その両目はばらばらな方向を向き、鞭が直撃した下顎は粉砕されて血溜りへと置き去りにしたまま。
誰が見ても一目で死んでいるとわかる顔面を晒しながら、しかしその動きは鈍ることなく、崩れた店の荷の中から拾ったのか儀式めいた短刀を握り締めてコエルとリョーコの元へと突進してくる。
「あっはっは!ほぉら、まだまだキリキリ働くんだよ!」
 死を弄ぶ事が愉しくてたまらないという笑い声を上げるネイアを余所に、コエルとリョーコの視線が束の間交差した。
骸となってもなお下僕である事から逃れられぬ盗賊だった屍は、短刀を構えて彼女たちに襲い掛かってくる
その体をリョーコがサイキックの光線を、コエルが魔力弾で撃ち抜いていくが、生きていれば痛みに悶えるような傷も屍には束の間勢いを殺す程度にしかならない。
「なんだなんだ、さっきの見得は一体どこに行ったのさ!」
 嗤う女首領の声に、しかし、二人は不敵な笑みでもって応えた。
「何も問題ないね、全て計算どおりだ」
「ああ、計算どおりだ。爆ぜろ、【くっつき虫の大群(クリングボムズ)】」
 コエルがオナモミ――魔力式手榴弾をネイアに向かって投げつけると同時にそれを爆破させる。
「なッ……ぐぅッ、があぁぁぁぁ!!」
 爆発したのはその一つだけではなかった。ネイア、そして屍へと大量のオナモミが引き寄せられ、それらが全て一気に大爆発を起こした。

 ――コエルが宙を飛び回っていたのは全てこの瞬間の為の布石。
生み出された25個の「オナモミ」はネイアに投げつけた一つを除き、全て暗殺者や屍相手に飛び回る中でネイアの気づかぬ場所へとばらまかれていたのだ。
リョーコの解析プログラムがそれを探知しない筈もなく、故にリョーコはコエルの作戦を見抜いていた。
たった一度だけ交された視線は屍を最大限のダメージを与えられる範囲に追い込む為のもの。
それ以外には一言の会話もなく、彼女たちは見事にその作戦を成功させたのだ。

 煙が晴れた中から、瓦礫を崩しながらネイアが立ち上がる。
血を流し全身に火傷を負い、憤怒の形相となったオブリビオンへと、二人は改めて向き直った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ケイトリン
フェイトさんからお話聞いて、おてつだいにきました。

「念動力」をつかった「刹那の想い」でまわりにころがってる死体や死体のかけらや敵の手下をどんどん「吹き飛ばし」して敵にぶつけるよ。

「念動力」は目に見えないから、敵は「事前に見ておけない」んだよね。
とんでくる死体とかは目に見えるから鞭の一撃をはなつことはできるだろうけど。

それで死体をどんどんこわすなら、自分で自分の手駒をへらせさせることができる。

敵からの攻撃もおなじようにふっとばしてふせぐよ。

敵がなにを言おうが気にしない。
詐欺師たちの最後の生き残りの言葉なんてどうでもいいもの。


死体のかけらも手下もなくなったら、力で敵を直接ふっとばすよ。


弦切・リョーコ
しぶといな。だが底は見えた、あとは詰めるだけさ。
隙は一回で十分だろう。
この私に強力なUCはないが、まぁ今までで十分観察ができた。
引き続き【援護射撃】で相手の動きを制しながら。散開して十字砲火で、【スナイパー】で精密に相手の損傷部位などダメージが蓄積しそうな箇所を狙う。
窮すればいずれ相手はUCを使うはずなのでそれに集中した瞬間を見定め、『結合分解』で打ち消して決定的な隙を作る。
「これも計算通りだ。ま、雑なペテン師ができる計算じゃないがね。」

無事終わったらアルコンの角をマーケットで買うかよしんば貰い、旧領主亭に匿名で届ける。
感謝されるのは筋が違うからな、快方に喜ぶ声が聞こえそうな所で一服するかね。


アレクシア・アークライト
・あんな身なりだが、あの鞭は重戦士を一撃で吹き飛ばす威力がある。油断せずに力場を防御に回し、敵の攻撃は力場で弾きながら、一足飛びに接近する。[念動力、空中戦]
・鞭の使用が難しい間合いにまで踏み込み、武術と念動力による超近接戦を仕掛ける。[グラップル、2回攻撃]
・最後は、拳に力場を収束して一気に叩きつける――という【幻覚】を作り、防御させたところを透明化した状態で攻撃する。

 人を騙して金を巻き上げていたんだから、最後は騙されて死ぬのがお似合いじゃない?

 帳簿くらいは付けているんでしょ?
 貴方が今までに騙し取ったお金は、きちんとみんなに返してあげるから、安心して死になさい。



●クー・デ・グラ
「虚仮にしやがって……楽に死ねると思うんじゃないよ、お前らぁぁぁッッ!!」
 怒り狂う女首領ネイアは咆哮を上げた。
その怒りの声に応えるように召喚された弓兵がリョーコへと矢を放つ。だが、その矢は彼女を射抜くことはなくその場で静止し、くるりと向きを変え、ネイアへと向かった。
彼女を守るように暗殺者がその矢をナイフで弾くが、次の瞬間暗殺者はネイア諸共吹き飛ばされていた。
「大丈夫?」
「おてつだいにきました」
 レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)、そしてアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)、ともに強力な念動力を武器とする彼女たちによるものだった。
「大丈夫だ。それにしてもしぶといな……だが、底は見えた。あとは詰めるだけさ」
 そう言うリョーコに頷き返すとアレクシアは移動用の力場を発生させてネイアへと向かっていく。
(あんな身なりだけど、あいつの鞭はあの重い鎧の戦士を一撃で吹き飛ばした……油断はできないわね)
 再び召喚された暗殺者のナイフと弓兵の矢を力場で弾きながら、アレクシアはネイアの懐まで踏み込む。
格闘戦用の力場を纏い、重い蹴りの一撃を叩き込む。
「ぐぅッッ!!」
 ネイアは瓦礫の中へと弾き飛ばされる。そこへ、レイチェルが自らのユーベルコード、【刹那の想い】を発動させた。
「心の中で時間よ、とまれ」
 ネイアの周囲に転がっていた瓦礫、そして先ほど爆発によって飛び散っていた盗賊の骸の破片すらもぼたぼたと血を滴らせながら浮き上がり、ネイアへと降り注ぐ。
「くそっ、くそっ……やめろ、来るんじゃないよ……!」
 それらを鞭で弾き飛ばし、叩き落して防ぐネイアだったが、断続して傷を負い続けるが故に弓兵と暗殺者を召喚しようとしても端から消滅してしまう。
「畜生、だったらこれならどうだい!!」
 ガタンと鈍い音がする。それは重金属の鎧が動くそれで、彼女に吹き飛ばされていた警備兵が不自然に立ち上がった音でもあった。
「こっちへおいで!アタシの盾になるんだよ!!」
 白目を剥いて泡を吹きながら兵士はネイアの元へと駆け寄り、彼女へと降り注ぐ瓦礫を受け止める。しかしその体もまたレイチェルの念動力によって浮き上がる――。
「ははは、そいつまで武器にするのかい!? いいのかい、そいつはまだ生きてるんだよ!」
 確かにその体は先ほどの盗賊とは違い、生命活動を停止してはいなかった。
ネイアの一撃を受けて吹き飛ばされたものの、重装備のおかげで気を失うのみで済まされていたのだ。

(敵に何を言われたって気にしない……でも)
 ネイアの手下であった盗賊であったなら。
詐欺師たちの最後の生き残りの言った言葉なんてどうでもいいと切り捨てられただろう。
今操られているのは警備の兵士だ。このマーケットは公のものではないし、この兵士だって何らかの罪を犯しているのかもしれない。
それでも、この兵士はマーケットの秩序を守る側にあった。
ユーベルコードによって操られた「一時的な手下」であって、オブリビオンの悪行に加担していたわけでもない。
このまま念動力で操ってネイアにぶつければ、兵士は死んでしまうかもしれない。
それを、このマーケットで、冒険者や人々の目の前で行ってよいのか……

「心配するな、アンタはそいつを死なせない。その必要も必然性もたった今、無くなった」
 レイチェルを迷いから救ったのはリョーコの声だった。
「解析、観測、ともに完了済みだ。この私に強力なユーベルコードはないが、今までで十分観察が出来たからね」
【世界演算『結合分解』-コードルーラー・ディスインテグレーション-】。ネイアのユーベルコードは打ち消され、兵士が糸が切れたように崩れ落ちる。しかし彼が死んでいないことは誰の目にも明らかだった。
「これもあなたの計算どおり?」
「計算どおりだ。ま、雑なペテン師ができる計算じゃないがね」
 ネイアの顔が驚愕と屈辱に歪む――そこに生まれた決定的な隙。
そこへアレクシアが突っ込んでいく。
「これで、終わり……!!」
 アレクシアの拳に力場が収束されていく。オーラを纏った超重、必殺の一撃がネイアへと叩きつけられる――
「く……まだだよッ!!」
 その一撃を受け止めたのは、アレクシアの眼前に召喚された暗殺者だった。ネイアの唇が歪む。
次の瞬間――ネイアは、背中に衝撃を受けた。
「まさか卑怯とは言わないわよね?」
 アレクシアの拳が、背中から女首領の心臓を貫いていた。
暗殺者を肩代わりにした防御そのものが、アレクシアによって作り出された【幻覚(ハルシネーション)】だった。
「人を騙して金を巻き上げていたんだから、最後は騙されて死ぬのがお似合いじゃない?」

 その、アレクシアの拳がとどめの一撃となった。
「あ……ああ……あああああああ………ッッ!!」
 ネイアの肉体がボロボロと崩れていく。
見事な銀髪も美貌も豊満な肉体も既に猟兵の攻撃によって見る影もなかったが、皮膚が無数に罅割れ、文字通りに崩壊していった。
「嫌だ……アタシは……まだ……!!」
 それでも生にしがみつこうと無様に足掻く彼女を、レイチェルの念動力が叩き潰す。
「貴方が今までに騙し取ったお金は、きちんとみんなに返してあげるから、安心して死になさい」
 帳簿ぐらいは付けているんでしょ?
そう言うアレクシアに返事を返せる言葉も、意思も肉体ももはやなく。

 ネイアと名乗っていたダークエルフの女首領は、倒されたのだった。


●バック・オン・トピック
 騒動の後。主催者の尽力によりマーケットは迅速に立て直される。
一部爆発などで使用不能になった区画はあったものの、補填も十分に行われた。
贋作販売で捕らえられた盗賊たちは、マーケットを公にしない為という理由から商人たちのルールに基づいて裁かれることとなった。

 そして、その日のマーケットの閉会時刻が迫った頃――。
「おや、あなたは先ほどの」
「ああ、騒ぎも終わったんで買い物に来たのさ」
「見ていましたよ、騒ぎをおさめたのはあなた方でしょう? それほどに歴戦の冒険者だったとは」
「まぁね。……ところで買いたいモノはこいつなんだが、持ち帰るんじゃなくて届けてもらいたくってね……」

●グラブド・マーシフル・エンド
「それは本当なの、フレッド!?」
 旧領主邸に住まう夫人はあまりの驚きに大きな声を上げて老境の執事に問うた。
病の息子を治す出立てが失われたどころか、財産さえ騙し取られた彼女が受け取った報せは、冒険者を偽って彼女に偽の「アルコンの角」を売りつけた盗賊が捕まり、その被害にあった者たちへ騙し取った金額が返されたということ。
そして実際に、大陸でも有名な商会の名義で騙し取られた分に相応しい金貨が送られてきたということ。
「それだけではありません、今朝方の差出人不明の包み……医師に確認させました!使いさしではありますが、あれは間違いなく『本物のアルコンの角』だと!」
「本当に? 本当なの、じゃああの子の病気は治るのね!? 今度こそ本当に……あの子は元気になるのね!?」
「ええ、ええ、本当です、奥様。あなたの努力は報われたのです……!」
 喜びに泣き崩れる夫人を支える老執事。
旧領主邸を支配していた悲しみと嘆きの声は、喜びに塗り替えられていった。

「……無事に届いたようで何よりだ」
 屋敷の裏手でその声を聞き届け、リョーコは煙草に火を点ける。
紫煙が細く、青く澄み渡ったアックス&ウィザーズの空に立ち上っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月29日


挿絵イラスト