闇の救済者戦争⑮〜禁断の龍姫
●雷龍の人狼姫
「こんにちは」
セシリー・アリッサム(焼き焦がすもの・f19071)はぺこりとお辞儀をして、グリモアベースに集った猟兵達を恐る恐る見渡した。既に作戦要綱は配ってあるが、肝心な説明は自分でしなければならない。
「あの、戦場は『第五の貴族』の中でも限られた者だけが運用を許されていた、第五層の生体実験室群なの」
勇気を出して言葉を続ける。まず、夥しい犠牲を経て作り出される『紋章』は、ヴァンパイア達に大いなる力と異形の攻撃手段を与えていた。この度の戦は祭壇を管理し紋章を作り出していた『第五の貴族』との戦いである。
「敵はいずれかの種類の『紋章』を一つ装備していて、それに応じた強力な戦闘能力を獲得しているわ」
慣れぬ説明に戸惑いながらも、セシリーは声を張り上げて要旨を伝える。
「でも、紋章には必ず何らかの「弱点」が存在するの。その弱点を突ければ勝機が見える――」
つまり、強化されたオブリビオンの弱点を突き、速やかに退治する事が目的。内容は至ってシンプルだ。
「相手は『異端の聖龍姫』――雷と龍を操る超常の戦士にして異端の人狼のお姫様。その子が『雷龍の紋章』でとても強くなっている――だから、その紋章の弱点を狙えばいいと思う」
合わせて敵の情報を開示――龍に跨った古き人狼の戦士。雷を操る恐ろしい相手だ。紋章で増幅された雷属性の攻撃を、龍や精霊、雷神と共に繰り出してくる。その力を増幅している紋章の弱点は雷属性故の避けられぬ特性だ。
「雷を溜め込んで増幅してくるから、溜めている間がチャンスになる、かな?」
攻撃が発動する際は紋章が力強く輝くらしい。だからそうなる前にやっつける――無論、通常のユーベルコード対策は必要だが、溜め切る前に押し切れば大きな問題は無い、だろう。
「わたし達が猟兵になって遂にこの時が来ました――ダークセイヴァーを解放する為、どうかお願いします」
みんなの力を貸して下さい、と再びお辞儀をして、星が舞うオーブから蒼炎のグリモアがゲートを開く――。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「闇の救済者戦争」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオは第五層の生体実験室群に座するオブリビオンの殲滅が目的です。
戦場は古城めいた天井の高い広大な実験室での地上戦となります。
以下の点に注意する事で、非常に有利な状況になります。
●プレイングボーナス:紋章の「弱点」を突いて戦う。
弱点や状況はオープニングをご参照ください。
●今回の注意事項
戦争シナリオにつき先着順で概ね四~六名様のプレイングからの採用となります。
内容如何や人数的に止むを得ず流してしまう場合もありますので、
予めその点をご了承頂ければ幸いです。
募集はシナリオ承認後即時受付いたします。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『異端の聖龍姫』
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POW : サクリファイステイルズ
自身の【霊力が宿った己の尻尾】を代償に、【召喚した巨大な雷神】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを貫き破壊する雷】で戦う。
SPD : トリニティライド
自身の身長の2倍の【凄まじき雷を纏った精霊と大地を揺らす龍神】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : ブレイドダンサー
自身の装備武器を無数の【雷を纏った鋭い刃】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:綾智
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠セシリー・アリッサム」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
佐藤・和鏡子
敵ににフック付き牽引ロープを引っかけて救急車で引きずり回します。
雷が溜まる前に削り殺します。
雷神の攻撃は運転技術を駆使して躱したり、引きずり回してる本体を振りまして盾として活用します。
世界最速のジェットコースターはアブダビのフォーミュラ・ロッサというジェットコースターで最高速度は時速150マイル(時速240km)だそうですが、わざわざアブダビまで行かなくてもここで体験させてあげますね。
●怒りのデス・ナース
『ごきげんよう猟兵。そして、さようなら』
凛とした声音と共に戦場が震える。だだっ広い研究実験室を埋める様に、全身に紫電を纏った|超常《ユーベルコード》の巨大な雷神が現れたのだ。
「中々にご立派ですけど、ええ……」
年代物の|救急車《キャディー》の中で佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)が溜息を漏らす。勇ましい|V8《エンジン》の咆哮と共に無数の|物騒な印《キルマーク》を引っさげたマシンは石畳を疾駆して、轟く稲妻を避けながら龍姫の元へと距離を詰める。如何に強力と言えど、この程度ならヴォーテックスのデカブツの方が余程恐ろしかった。
「流石に|のろま過ぎますわね《・・・・・・・・・》、お姫様」
『不敬者め、その口ごと雷で焼き尽してくれようか』
途端、放たれる雷がより勢いを増していく。砕かれた石畳が地形を崩し、救急仕様の足回りでも続々と凸凹になる路面の衝撃を吸収しきれない。それでも、さながら石の津波に乗る様な強引なライドで、和鏡子は揺さぶられながらも着実に龍姫を追い詰めていた。
「迂闊に雷を起こしたら、チャージも出来ないでしょうね」
『だとしてもその前に焼き焦がしてくれる!』
瞬間、一際大きな衝撃と共に和鏡子の視界を閃光が遮った。雷神が稲妻と共に正面へ飛び込んできたのだ。すわ直撃か――ならば!
「まあ、馬車なら横転してたでしょうが」
ガツン、と飛び出た石畳の衝撃を全身で感じた和鏡子。直後、自らの全体重を右側に寄せて、救急車は|片輪走行で雷神の足元を抜ける《・・・・・・・・・・・・・・》――その先にいる者は龍姫。
『この、雷神を抜けて来ただと!?』
後は|超常《ユーベルコード》の出番だ。雷が溜まる前に削り殺してみせましょう。
「お姫様、カウボーイはご存じで?」
『何をッ』
バクンッ、と大音を立てて水平に戻る救急車――正面に目標を見据え、コラムに備えた射出装置でルーフ上からフック付き牽引ロープを発射する。衝撃と共に発射されたフックが龍姫の乗る地竜の首に絡みつけば、和鏡子はステアリングを大きく切って急制動。鮮やかなテールスライドで今来た道へと向き直る。
「ではジェットコースターも……ご存じ無いでしょうね」
世界最速のジェットコースターはアブダビのフォーミュラ・ロッサというジェットコースター。最高速度は時速150マイル(時速240km)もあるらしい。それはこの救急車の|V8《エンジン》をもってすれば容易い事。灯された赤色灯と唸るサイレンは反撃の合図――準備は整った。
「時速150マイルの世界、ここで体験させてあげます」
『!?!?!?』
完全停止の前に急加速と共に滑らかな手付きでシフトを捌き、アクセルを踏み抜いた和鏡子。獣じみた内燃機関の咆哮は更に大きな声を上げて、さしもの雷神もたじろいだ。何故ならばフックで絡め捕られた龍姫が地竜ごと引き摺られ、火花と悲鳴を上げながら石畳で擦り下ろされているのだ。これでは雷を浴びせられない。
「手当は、不用ですね」
それではごきげんよう。これでキルマークがまた増える。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
敵が力を溜める前に、速攻で決めろか……
小難しい事を要求されるよりマシとみるか、強敵に対して速攻する難しさを悩むべきかね
神刀の封印を解除して、神気によって身体能力を強化
まずは敵の攻撃……刃の花びらを躱し、斬撃波で撃ち落とし、もしくは神刀で弾きつつUCの仕込み
移動しながら、さり気なく床に神刀の斬撃痕を残しておく
戦場はある程度広いとはいえ、過剰に広範囲を囲う必要はない。用意を手早く済ませて、廻・肆の秘剣【黒衝閃】を発動
聖龍姫と残っている刃の花びらを纏めて黒い神気で攻撃
これだけで倒せるとは思えないので、発動と同時に自分は同時に斬り込んでいく
相手が状況を確認して相手が反撃をしてくる前に、斬撃を叩き込もう
●士道一閃
(敵が力を溜める前に、速攻で決めろか……)
静かに龍姫へ歩を進める夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)――抜いた神刀を平正眼の様に構え、咲き乱れる雷の刃に切先を向ける。煌めく白刃が顔を照らして、一歩、一歩と間合いを詰めれば、徐々に雷がその威を増していく。厄介だがこれ以上面倒な事になる前に仕留めねば……頬を伝う冷や汗が嫌が応にも鏡介の緊張を高める。
(小難しい事を要求されるよりマシとみるか、強敵に対して速攻する難しさを悩むべきかね)
対処は単純。故に相応の地力が求められる……が、後れを取るつもりは毛頭無い。すう、と息を吸って駆けだす鏡介。ここまで近づけば一気呵成に勝負を仕掛けるのみ!
『今日は忙しないわね、本当に!』
途端、咲き乱れた雷の花弁が渦を巻いて鏡介へ襲い掛かる。流れが変わった――同時に神刀の封印を解除。森羅万象の悉くを斬る刃は行く手を遮る雷ごと空を断ち、その衝撃が視界を白く染め上げた。
「おっと! 」
たたらを踏んで神刀を杖代わりに自らを支える鏡介。成程、強化されただけの事はある――返す刃の地擦り一閃、縦一文字に裂かれた進路を再び駆ける。
『フフ、斯様にふらついては私に一太刀浴びせる事も叶わないでしょう!』
鏡介の立ち回りを嗤う様に、龍姫は花弁の洗礼を解き放つ。自身の周囲を護る様に渦を巻いて広がった雷は、鏡介に真っすぐ進ませる事を良しとしない。近寄る事もままならず、鏡介は龍姫の周りで円を描く様にじわりと距離を取らざるを得ない。
「だろうね。流石は雷を司る姫君だ」
『お褒めに預かり光栄だわ。でも――ここまでよ!』
ガン! と轟音が研究実験室に鳴り響く。凄まじき召雷が石畳を穿ったのだ。卓越した足捌きはされど速度を緩める事は無い……が、これでは離される一方。うかうかしては紋章に力を溜められてしまう。
(まあ――こんな所か)
衝撃から己が身を支えんと切先を石畳に突き立てる鏡介。これまでのやり取りで見つからぬ様撒いた布石は十分。切欠の一撃はここに成る――刹那、|超常《ユーベルコード》の黒い衝撃が白雷を闇色に染めて、咲き乱れた雷の花弁を地へ叩き落した。
「砕き散らせ、黒の剛撃――」
『何と、我が雷を制したとでも!?』
大地に刻まれた傷跡は全て超常の布石。神刀の刀傷に囲まれた龍姫に逃げ場は無い――傷より噴き出た黒の神気はそのまま雷を飲み込んで、思いがけぬ逆襲に龍姫は僅かにたじろいだ。
「廻・肆の秘剣【黒衝閃】!!」
そのまま跳躍、雷の代わりに降り注ぐは鏡介の類稀なる大上段の一撃。その一刀は龍姫が座する地竜の鎧を見事に砕いて、衝撃が鮮やかな赤い血を吹き散らす。
「反撃などさせない――!」
『こ、の……!』
膝を曲げて着地/その反動で大きく踏み込み、鏡介は逆袈裟に地竜の首を斬り上げる。紋章に力を蓄える暇などありはしない――自らの命脈を保つべく、龍姫は自らの身を潜める他無かった。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・シュテル
目標周囲の電圧の異常増大を確認。凄まじい雷電の力ですね。
ですが、此処は確と仕留めさせて頂きます。
召喚される竜の起こす震動で姿勢を崩されぬよう、Polarisにて【空中機動】を行いつつ交戦致します。
警戒すべきは精霊。BloodyTearsを介し敵周囲の電圧変化等を【情報収集】して挙動や攻撃軌道を予測し、回避へ繋げていきます。
聖龍姫が充電状態に入り次第、紅蓮の蠍火を起動。強化したAnti-Aresからの【レーザー射撃】にて紋章を撃ち抜きましょう。
紋章の存在位置は、発光及び目標周辺の電圧等の変化や電流の流入経路等から特定を。
ロー・シルバーマン
雷を蓄え増幅する紋章のう。
ならば速攻で畳み掛けるか、或いは…頼りたくはないが最悪も考えておくべきか。
可能なら他の猟兵と連携。
オーラ防御と結界術を組み合わせ体表を覆うように結界構築、雷を地面に受け流してダメージを抑制。
龍神に騎乗し襲いかかってきたなら野生の勘を活かし比較的安全と直感した位置に飛び込みつつアサルトライフルで銃弾をばらまき寵姫を狙う。
もし敵が儂を見失ったなら即座にUC起動、頭部や紋章、心臓といった急所を狙撃してくれよう。
紋章が強く輝き阻止できなさそうなら破魔の力籠めた弾丸で紋章を狙撃、暴発を狙う。
溜め込んだものを放出する時こそ一番危険な筈、博打は避けたいがさて。
※アドリブ絡み等お任せ
●禍中の残月
傷を負った龍姫は自らの身を守るべく雷の精霊と巨大な龍神を呼び起こす。全身を黄金の稲妻で覆った鬼神の如き精霊は目を見開いて周囲を飛行し、まるで蛇の様な濃緑色の鱗を纏う龍神はとぐろを巻いて、龍姫と地竜をその内に隠した。絶対の防御陣形――今はただ耐える他無いのだと言わんばかりに、龍神の頭上で周囲を見渡す。
「目標周囲の電圧の異常増大を確認。凄まじい雷電の力ですね」
「雷を蓄え増幅する紋章のう。ならば速攻で畳み掛けるか、或いは……」
その様を見やり、ルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)とロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)が顔を見合わせる。紋章の弱点――エネルギーが溜まりきる前に叩く事を考えれば状況は芳しくない。
「頼りたくはないが最悪も考えておくべきか」
「此処は確と仕留めさせて頂きます」
それでも討たねばならぬ。この世界は|始まりから既に最悪だったのだ《・・・・・・・・・・・・・・》……だからこそ、これは必ず勝たねばならぬ戦争なのだ。
「儂が先に行かせてもらうぞ。その間に頼む」
「承知しました。では紋章位置の特定を優先します」
ローは短く呪文を唱えると共に駆けだす。体表に張り巡らせた二重の|障壁《バリア》が淡く輝き、吹き荒れる雷をバチリと弾いた。合わせてルナは|Polaris《プラズマブーツ》で静かに浮かび上がり、龍神の内にて隠れる龍姫の姿を走査する。
「警告……やはり、一筋縄ではいきませんね」
瞬間、落雷がルナの頭上に襲い掛かる。急激なイオン濃度の変化に気付いて間一髪躱せたが、注意すべきは龍神では無い――攻撃の要たる雷の精霊は怒気を露わに、ルナの方へ続々と雷の飛礫を放つ。
「湿度、気圧、電圧変化――攻撃予測計算完了」
これが只人相手ならば消し炭にされていてもおかしくは無い。だがルナはこことは違う過酷な場所、環境の先読みが出来なければ即死に至る真空の地獄に生まれた高機能型バイオロイドだ。条件さえ分かればそれを回避する事は造作も無い。
「迎撃アルゴリズム構築完了――実行」
そうなれば、今度はこちらの番だ/|Anti-Ares《内蔵赤色光線銃》正面戦闘モードへ切替、出力上昇/Polarisマニューバ、|ワルツ《巡航》から|タンゴ《戦闘》へ――攻撃開始。轟く稲妻を潜り抜け、赤色の破壊の嵐が荒ぶる精霊を頭上から取り押さえる。
「助かる。こちらもどうやら佳境らしい……!」
ルナの援護で精霊の迎撃を切り抜けたローは瓦礫に身を隠しながら龍神の元へ――その奥には力を蓄える龍姫が怪しげな光を放ち佇んでいた。
「お嬢さん、紋章の位置は分かるかな?」
「確認済みです。情報を共有します――」
|手持ちの絡繰り《ハッキングツール》に表示された情報を見やりローは駆けだした。矢張り寝た子を起こさねば撃てぬ……ならば、我が身を賭して成し遂げよう! 即座に|突撃銃《アサルトライフル》の弾幕を張って、龍神の巨大な尻尾に山刀を突き立てるロー。傍から見れば破れかぶれの突撃だ――鬱陶しい人狼を追い払わんと、龍神は首をもたげて尻尾をブンと振り回した。
(位置を特定するにはそうするしかないだろうよ。それに――)
すかさず跳んで再び瓦礫に隠れるロー。視線の先、龍神の頭上には龍姫の姿が。その首筋には雷の紋章らしき白い輝き――情報と完全に一致、これで手札は全て揃った!
「待たせたな、準備は整った」
「了解です。仕上げに入りましょう」
空中で赤い光を乱舞するルナに呼びかけ、その光は龍神の元へ――瞬間で攻撃対象を切り替えて、不意を打たれた龍神は天高くに咢を開き大声で威嚇した。
(溜め込んだものを放出する時こそ一番危険な筈、博打は避けたいがさて)
龍神の背中には力を溜める龍姫の姿が。ルナが|BloodyTears《眼球同軸観測機》で把握した紋章は煌々と輝いている――瓦礫に隠れたローを見失い怒りのままに首を振る龍神は、二人がこの時を――必殺の機会を伺っていたとは知る由も無い。
「――目標視認、撃ち抜きます」
「狩人は待つのも仕事でな……捉えたぞ」
腕部展開、最大出力――放たれたルナの『|紅蓮の蠍火《イグナイテッド・レイ》』が、ローの巧みな|狩人の業《ヘッドショット》が交差する様に紋章を穿って、破裂しそうな雷のエネルギーが一斉に溢れ出た。
溢れたエネルギーが龍神を、精霊を、そして雷神をも焼き尽し、辺りに花弁の様な雷が咲き乱れる。龍姫に残された力はあと一つ。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
身に纏うは白き中華服
身に漲るは【電撃】と化した【覇気】
稲妻には稲妻を以って対抗しよう
雷鳴が如き疾走で間合いを詰め(ダッシュ)、勢いそのまま跳び蹴りをぶちかます
チャージからの一撃必殺……私自身もよく使う手、故に対処も心得ている
とにかく速攻!
舞い散る花びらを、極限の【集中力】と【心眼】によって【見切り】、【天霆雷砕蹴】で【吹き飛ばす】!
数え切れぬ無数の花びらは脅威
しかしこちらは「事前にそれを見ていれば成功率が上がる」性質を有するユーベルコード
花びら一枚一枚が事前のそれに該当し、成功率は上がり続ける
次弾を撃つためにチャージをすれば、その隙に【天霆雷砕蹴】にて増幅させた力を霧散させる
シプラ・ムトナント
わたしも、この世界の為にできることを。
雷の力を溜め切る前に押し切れば良いのですが……無数の刃の花びらがそれを阻む訳ですね。
ならば『催眠の羊眼』を使います……わたしの眼は、視たものを友好的にする。
生物相手には抵抗されますので、聖龍姫を抑え込むことは出来ないでしょうが……ほんの少しでも雷を溜め込む邪魔になれば良い。
催眠の本命は、無数の花びら達。
無機物ならば抵抗は出来ません……仲良くして頂けるなら、わたしに飛んで来て切り裂く、なんてことは出来ないでしょう?
この瞬間に、全力で接近を。
吸着手榴弾の【投擲】で隙を広げ、そのまま|散弾銃《レミー》を押し付けます。
【零距離射撃】の二連射、お受け取り下さい……!
●|魔龍狩り《ワイルドハント》
龍姫を守護する三つの僕はその力を失った。残された地竜に跨り雷の花を咲かせる龍姫――光が漏れる首筋の紋章からは止めどなく血が流れ、煤けた白いドレスを赤黒く染めていく。整然と並んでいた実験室の石畳はその大半が砕かれて、足元は大きな地震に見舞われた後の様に荒れ果てていた。
『しかしこんな所で、終わる訳には……!!』
爆ぜた雷光が頬を白く染めて、龍姫は歯を食いしばる。この世界を混沌のままに――今更平穏など許されるものか。胸に秘めた怒りに呼応して雷はより威力を増す。その光が二つの黒い影を浮かび上がらせた。
「わたしも、この世界の為にできることを――」
迸る雷光をその身に受けて、シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)が静かに進む。傍らには闘志を燃やす猟兵がもう一人――身に纏うは白き中華服。
「雷の力を溜め切る前に押し切れば良いのですが……無数の刃の花びらがそれを阻む訳ですね」
「では稲妻には稲妻を以って対抗しよう。今の私ならばそれが、出来る」
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の身に漲るは電撃と化した埒外の覇気。畳みかけるは今がその時――雷と雷がバチリと重なり、爆ぜた空気が戦場を震わせる。問答無用、力には力をもって制してみせよう。
「数え切れぬ無数の花びらは脅威――だとしても」
雷鳴が如き疾走――百雷を纏って駆けた苛烈なる聖女は佇む龍姫へ飛び込んで、その威を遮らんと龍姫の稲妻の花が咲き誇る。激突した互いの閃光が視界を白く塗り潰し、裂帛の気勢のみが空間に轟いた。
「仕掛けが分かれば恐るるに足らず!」
『ならば……手数を増やすまでよ!』
飛び蹴りからの乱打/万華鏡の様に咲き乱れる雷/散華した衝撃はされど、時間と共にその威を失い、オリヴィアの『|天霆雷砕蹴《ヴァジュラ・カウンター》』は技を繰り出す程にその切れ味を増していく。一つは二つ、二つは四つ、増えた手数の分だけ反撃が冴える達人の|超常《ユーベルコード》――ならば、と龍姫は己が装備を、自らに仕えし地竜すらも手に掛けて万雷の花弁を嵐の様に解き放った。
『さあ、どちらが先に根負けするか――!』
四方に咲き乱れた雷は龍姫の執念。その一つ一つを軽やかに躱す度オリヴィアの鋼の具足がキラリと光る。神に奉じる舞の様に、咲き乱れる雷の洗礼を捌きながら間合いを詰める度、龍姫の洗礼も凄烈さを増していく。だが――。
「いえ、根負けも何も」
最早退路は無い。全てを懸けて放たれた雷の花弁を幾ら見切られようと、龍姫自身に致命の一打を当てられなければ勝機はある。ではその花弁が、全て己が意を外れればどうなるか。赤眼を見開いたシプラの無慈悲な宣告が響いて――。
「あなたの味方はもう何処にも、おりませんよ」
瞬間、雷の花弁がゆらりと地に落ちる。驚愕の表情を浮かべ後ずさる龍姫――その様を見やりシプラは言葉を続けた。
『!? なんで……』
その埒外の現象こそシプラの|超常《ユーベルコード》――『|催眠の羊眼《ヒュプノスシープス・アイ》』――その視線が見染めたモノは、何であろうとシプラに敵対する事は出来ない。
「仲良くして頂けるなら、わたしに飛んで来て切り裂く、なんてことは出来ないでしょう?」
地に落ちた花弁を睨み歯噛みする龍姫。攻防一体の|超常《ユーベルコード》は物言わぬ飾りとなり果てた。じろり、と見上げた視線を一瞥し、シプラはベルトから反撃の得物を龍姫へ投げつける。
「少々可哀想ですが、己を鍛えなかったあなたが敗因です」
雷光で白く染まった石畳にカラン、と響く音――シプラが投げた吸着手榴弾が破裂と共に視界を灰色に覆い尽くす。龍も精霊も無く、我が身を護るは血に染まったドレスだけ。飛び散った破片が龍姫の肌を裂き、辛うじて致命を避けた両腕は最早使い物にならない。
「|散弾銃《レミー》の二連射、お受け取り下さい……!」
僅かな暇、間合いを詰めたシプラが愛銃を龍姫の腹に押し付ける。零距離射撃――その衝撃は異端の姫を彼方へと吹き飛ばして――それでも尚、龍姫の瞳は戦いを諦めてはいなかった。
『せめて、貴様らだけでも……!』
輝きが、首筋の紋章が極彩色の奔流を解き放つ。従えていた全てを失ったというならば、この身を賭して最後の役目を全うしよう――己の意地を懸けた最後の一手、紋章に蓄えた力を解放する!
「させるものか、如何に貴様が全てを失おうと――」
刹那、戦場に稲妻が奔る。白きドレスを纏いし戦鬼が――オリヴィアが全霊を込めた一撃を解き放つ。
「これまで弄んだ生命への贖罪には、程遠い!」
|この世界《ダークセイヴァー》という地獄を今まで駆け抜けて来たオリヴィアの瞳に迷いは無い。石畳が爆ぜ舞い散った埃が龍姫の視界を遮る。僅かな隙――討滅には十分!
「雄々しき天の雷霆よ!」
裂帛の気勢と共に降り注ぐ雷。ぶつかり合った白と白が火花を散らして、オリヴィアを遮る全てを切り開く。
『私の雷が……!?』
その雷はオリヴィアの蹴撃。極限まで高まった闘気が紋章の光を貫いて、雷に包まれた龍姫の影を真っ二つに引き裂けば、龍姫のか弱き声が虚空に呑まれて消えていく。
「――その威光で我を阻む敵手を粉砕せよ!」
蓄えられた膨大なエネルギーの奔流が天を貫き、遂に龍姫は実験室もろとも消滅した。悪しき『第五の貴族』がまた一つ、猟兵の力で滅ぼされたのだ。
一つの戦いが終わりを迎えると共に、新たな戦いが幕を上げる。戦争も佳境に迫り、根源へ至るまであと僅か――猟兵は次の戦場へ歩を進める。この世界を鮮血に沈めぬ為に、身命を賭して。
大成功
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