闇の救済者戦争⑮〜大いなる力を誘う祭壇とは
●ダークセイヴァー第三層――紋章の祭壇
――無数の血と肉片に塗れた、壁も床も大理石造りの生体実験室群の一室で。
「ふふふ……ふふふ」
右手に『番犬の紋章』を宿したひとりのヴァンパイアが、徐々に形作られていく新たな紋章を前に微笑みながら、窓の外に目をやる。
「まさか、我々『第五の貴族』までここに呼ばれるとは思っていなかったわ」
はるか遠くに見える血管が凝縮したような木をうっとりと眺めた後、ヴァンパイアは再び製造途中の紋章に視線を移し、小さく呟く。
――この紋章があれば、『闇の種族』もきっと喜んで下さるわ?
無数のいのちを捧げられ、徐々に力が宿りつつある紋章を前に。
老獪で知られるヴァンパイアは、微かに歪んだ笑みを浮かべていた。
●『紋章の祭壇』を管理する『第五の貴族』を討伐せよ!!
「大分破壊したつもりだったけど、まだ残っていたか……」
グリモアベースの片隅で、顎に手を当て考え込んでいるグリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の姿を見て、集まってくる猟兵たち。
「ああ、皆。『紋章の祭壇』のことは覚えているだろうか?」
『第五の貴族』達が運用していた、ヴァンパイアに大いなる力と異形の攻撃手段を与える『紋章』の製造工場の名を聞き、猟兵たちは一も二もなく頷く。
「第四層の各地にあった『紋章の祭壇』は発見次第片っ端から破壊してもらっていたが、どうやら禁獣『歓喜のデスギガス』の力で、第五層の『紋章の祭壇』が集中している生体実験室群が丸ごと第三層に引っ張ってこられてしまったらしい」
夥しい犠牲を出し、いのちを弄びながら製造される『紋章』には、猟兵たちも何度も苦しめられてきている。
それの製造工場たる『紋章の祭壇』が第三層に転移したとなると……見過ごすわけにはいかないだろう。
「そこで、皆には第五層から転移した『紋章の祭壇』を運用している『第五の貴族』を討ってほしい。頼めるだろうか」
努めて冷静に伝えようとする敬輔の頼みに、猟兵たちは其々の想いを胸に頷いた。
「今回、皆に向かってもらう生体実験室群の一室で紋章を製造している『第五の貴族』は、これまで各地で目撃されていた深紅のイブニングドレスのヴァンパイア……『老獪なヴァンパイア』だ」
右手の甲に『番犬の紋章』を宿し、自身の攻撃能力を大幅に高めている強敵ではあるが、紋章を傷つけるたびに弱体化するため、紋章を狙い続ければ勝機は見えるだろう。
「これ以上、奴らのために無辜の人々のいのちを使わせてはならない……確実に討ち取ってくれ」
頼む、と改めて猟兵たちに頭を下げながら。
敬輔は丸盾のグリモアを展開し、猟兵たちを生体実験室群の一室へと送り込んだ。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
「第五の貴族」が運用している「紋章の祭壇」もまた、第三層に転移しているようです。
猟兵の皆様、「紋章」の製造を阻止すべく、祭壇を管理している「第五の貴族」の討伐をお願いします。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「闇の救済者戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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状況は全てオープニングの通り。
今回は冒頭の追記はありません。
補足として。
過去の「紋章の祭壇」シナリオでは祭壇の破壊もお願いしておりましたが、今回は第五の貴族の討伐に全力を費やしていただいて大丈夫です。
●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【紋章の「弱点」を突いて戦う】と、プレイングボーナスの対象となります。
紋章の位置は『(銀のナイフを持っている)右手の甲』です。
今回の紋章は「紋章そのものを傷つけられるたびに弱体化する」という弱点がありますので、積極的に狙ってみてくださいね。
●【重要】プレイングの受付・採用について
オープニング公開直後からプレイング受付開始。
受付締切はMSページとTwitter、タグにて告知致します。
なお、本シナリオは可能な限り早期完結を目指しますので、必要最小限の採用数で完結させます。
そのため、挑戦者多数の場合は、問題ないプレイングでも採用せずお返しすることがございます。予めご了承の上での参加をお願い致します。
その他、シナリオ運営に関する諸連絡は、マスターページを参照いただけると幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『老獪なヴァンパイア』
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POW : 変わりなさい、我が短剣よ
【自身の血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【真紅の長剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 護りなさい、我が命の源よ
全身を【自身の血液】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 立ち上がりなさい、我が僕よ
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【レッサーヴァンパイア】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:イツクシ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠館野・敬輔」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロビン・バイゼ
ダークセイヴァー戦争シナリオで、ボスがヴァンパイアであるシナリオであればどれでも。
普段は困っている人を助けたいと願う心優しい少年ですが、美少年好きのヴァンパイアに攫われ、城に幽閉された過去から、ヴァンパイアに対しては容赦しません。
持てる全ての技能、アイテム(主に拷問具)を駆使して敵を追い詰め、吸血乙女で止めを刺します。
「…」や「、」多めのぼそぼそした喋り方。無表情属性で、基本何があっても表情変わりませんが、ヴァンパイアに対しては一見変わらない表情の中にも怒りを滲ませます。声音も冷たくなったり。
一方で拷問具そのものに興奮する変態的な一面も?
連携、アドリブ可。
宜しくお願い致します。
●怒りと共に造成を止めよ
壁や床に大理石が敷き詰められた生体実験室群の一室では、今日も紋章の製造がおこなわれている。
本来、純白であるはずの大理石の床は無数の血と肉片に塗れ、祭壇の周囲には成長途中の紋章がいくつも浮かんでいた。
「ふふふ、私達『第五の貴族』の研究の証、さぞかし気に入って下さるかしら?」
周囲に広がるいのちの欠片を凝縮したかのように禍々しい紋章を、この実験室の主たる「老獪なヴァンパイア」がうっとりと眺めていると、その背から突然冷たい声を浴びせかけられた。
「ヴァンパイアは……容赦しない」
それは、絵の具や返り血を防ぐための白のローブを纏い、茨の鞭を手にした、ロビン・バイゼ(芸術と鮮血・f35123)の声。
床に触れている裾や袖から少しずつ血が浸み込むが、ロビンは構わず拷問具の数々を取り出した。
「あら、それでわたくしを処刑するつもりかしら?」
「……そのつもり、だけど」
――目の前の淑女がヴァンパイアであるならば、容赦はしない。
表情ひとつ変えず、だが確かに瞳に怒りを滲ませながら、ロビンは拷問具のひとつ、茨の鞭を振るい始めた。
ロビンは手にした茨の鞭で空間を薙ぎ払いつつ、名も知らぬヴァンパイアの腕を少しずつ斬り裂いて行く。
時には拷問具の数々を駆使し、足元にトラップを仕掛けながら、少しずつ部屋の隅へ追いつめていった。
「あらあら、それでおしまいかしら?」
ヴァンパイアは泰然としながら、傷から滴り落ちる血液を己が身に纏い、ロビンの生命力を奪い取ろうとする。
だがロビンは、守りを固められたと見るや、表情を変えず、しかし声音に確かな怒りを籠めて言い放った。
「血を啜れ。……アイアン・メイデン」
――ガチャン!!
怒りに冷え込んだロビンの声音に呼応するように、ヴァンパイアの背後に鋼鉄製の処女が現れる。
鋼鉄の処女は、ヴァンパイアを迎え入れるために、己が身体を前面から開き始めた。
鋼鉄製の身体の内側には、びっしりと鋭い棘が生えている。
処女の身体の内側と無数の棘を見てしまったヴァンパイアは、思わず表情を凍り付かせていた。
「さすがにちょっと、これはご勘弁願いたいわ」
かろうじて優雅な声音を保ちながら、ヴァンパイアが慌てて鋼鉄の処女の前から退こうとしたその瞬間、ロビンが手にした巨大絵筆がヴァンパイアの身体を打ち据える。
「逃がさない、から」
表情ひとつ変えないロビンに、鞭ではなく絵筆で殴られ、よろよろと鋼鉄の処女に近づくヴァンパイア。
直後、ロビンは再度絵筆でヴァンパイアを鋼鉄の処女の中に押し込み、扉を閉めた。
「あら、あらら……?」
扉が閉められ、処女の内側が闇に閉ざされた直後、内側にびっしりと植え付けられている無数の棘が、ヴァンパイアの全身を次々と貫いてゆく。
「ぎゃああああああああ!!」
おおよそ淑女に似つかわしくない悲鳴を上げながら、ヴァンパイアは己が力を繋ぎ止めるように全身から流れ落ちる血を纏い、少しでも出血を食い止めようとする。
だが、1度血の味を覚えた鋼鉄の処女――アイアン・メイデンは、決して中にいる敵を逃がさず、血を搾り取るだけ。
そんなアイアン・メイデンの姿を見つめるロビンの瞳には、微かな喜びが宿っていた。
大成功
🔵🔵🔵
蛇塚・レモン
所持技能フル活用
これ以上、紋章は作らせないよっ!
すべて消し炭にしちゃうんだからっ!
あたいの怒りを思い知れーっ!
白い勾玉の中から妹ライムの魂魄を炎蛇神として顕現させて
あたい達が神楽を舞ってユーベルコードを発動させるよっ!
祭壇周囲の無機物や吸血鬼の持つ短剣を裁きの神火に変換っ!
浄化の炎でレッサーヴァンパイアごと敵の全身を焼却して神罰を下す!
燃える炎に焼かれたら、手の甲を庇うどころじゃないからねっ!
そのまま祭壇も蛇腹剣で破壊して、その破片を神火へまた変換して操作
徹底的に女吸血鬼を紋章もろとも焼き尽くすよっ!
トドメは敵の骨と歯も神火に変換!
敵体内炎上!
その魂すら灰に帰す!
この戦争、必ず勝つよっ!
●神火とともに裁きを下せ
――紋章製造がおこなわれている、生体実験室群の一室にて。
「まったく、拷問具の山にしてやられたわ」
白い肌や深紅のイブニングドレスには、無数の穴が空いている。
少しでも傷を癒すべく、床一面に広がる血や肉片、そして部屋の片隅に積み上げてある紋章製造のための「素体」から生命力を吸収していた、その時。
「これ以上、紋章は作らせないよっ!」
その光景を目にした蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)の怒りの声が、室内に木霊した。
「全て消し炭にしちゃうんだからっ!! あたいの怒りを思い知れーっ!!」
「あら、怒りだけでこのわたしを倒せるとでも?」
「倒せるよっ! この戦争、必ず勝つっ!」
全身穴だらけなのになお泰然と構えるヴァンパイアを前に、レモンはそっと白い勾玉を握りしめた。
「立ち上がりなさい、我が僕よ」
ヴァンパイアが素体の山に手をかざすと、素体がレッサーヴァンパイアとして蘇る。
「さあ、あの元気なお嬢ちゃんと遊んでさしあげなさい?」
「ウウゥ……」
「ア、ガ、ァ……」
仮初の命を与えられたレッサーヴァンパイアは、ヴァンパイアの命に従い、レモンに迫る。
いのちを弄びつくすその所業に怒りを覚えながら、レモンは白い勾玉を掲げ、妹の魂魄を呼んだ。
「ライム、あたいに力を貸してっ!」
『仕方ないなぁ、姉さん……』
炎蛇神として顕現した妹とレモンは、ふたりで並ぶと、その場で神楽を舞い始める。
『『憑装(ソウルユニゾン)! 蛇塚ホムラオロチ神楽!』』
レモンたちが神楽を舞い始めると、祭壇周辺に転がっている鎖や手枷、そして小さなナイフなどが一斉に燃え上がり始めた。
素体として運び込まれた人々を拘束し、苦しめ、ヴァンパイアに愉悦と力を与えるものを、レモンと妹が舞う神楽は悉く裁きの神火に変換し、ヴァンパイアに神罰を下す存在に変えてゆく。
あっという間に広がった裁きの神火は、床に広がる血や肉片ごとレッサーヴァンパイアを焼き尽くした。
「ア、ガアアアア!!」
「くっ、この程度の炎など……っ」
ヴァンパイアも手にしている銀のナイフで神火を振り払うが、その銀のナイフも突然燃え上がり始める。
「あっ!!」
急ぎナイフを手放すが、裁きの神火に変換された銀のナイフは、紋章ごと持ち主の手を包み込み、激しく燃やし続けるのみ。
「燃える炎に焼かれたら、手の甲を庇うどころじゃないからねっ!」
ヴァンパイアが神火に気を取られているうちに、レモンは蛇腹剣の刀身を伸ばし、祭壇の一部を破壊。
――この女吸血鬼は、徹底的に紋章もろとも焼き尽くす。
その決意のもと、レモンは祭壇の欠片をも神火に変換しながら、ついでにヴァンパイアの骨と歯も神火に変換し一気に燃やそうとするが、ヴァンパイアが体内から炎を上げる様子はない。
「あ、あれ? 変換、されない……?」
思わず手を止めるレモンに、妹が指摘した。
『姉さん、骨や歯は有機物だから、変換はできないよ?』
「あ……そっか」
レモンはしまった、と若干顔を顰めながら、蛇腹剣でヴァンパイアを牽制し続ける。
もし、体内の骨や歯を神火に変換できれば、ヴァンパイアの体内から神火で焼き尽くし、その魂すら灰に帰すこともできただろう。
しかし、ヴァンパイアの体内にある骨や歯は有機物だから、ユーベルコードでは変換できない。
「あら、これでおしまいかしら?」
ヴァンパイアが手の止まったレモンを挑発するが、レモンは己に気合を入れ直しながら受け流し。
「あたしの怒りは、これくらいで消えないよっ!!」
レモンは再度蛇腹剣で祭壇を破壊し、破片を神火に変換しながら、再びヴァンパイアの紋章を狙い始めた。
成功
🔵🔵🔴
フロッシュ・フェローチェス
頭を使うのは、正直得手じゃないから、シンプルにいこう。アタシのスピードで、斬り焦がして……潰す。
本格開戦前に、先制攻撃代わりのUC発動……いくよアル、【モード刃雷】!
速さを引き上げて、その1点だけでも、アンタを超える!
永続ダッシュ戦法だ!
紅雷ブレードによる、直接の斬撃と追撃の雷刃を使った、2回攻撃。残像を用いたフェイントと、蒼雷レーザーのクイックドロウ。それらを組み合わせ、ひたすら右手の甲を狙う!
反撃を受けても、好機と捉えろ。激痛耐性で耐え、カウンターを撃ち込め。
大きな隙は罠か?なら逆に体へ早業の連続コンボだ……刹那乱撃!
内側を裂く電撃、マヒ攻撃の味はどう?デザートとして、もひとつ手の甲だっ!
●刃雷と共に淑女を凌駕せよ
生体実験室群の一室にて紋章を製造していた「老獪なヴァンパイア」は、着実に弱体化している。
鋼鉄の処女に紋章ごと全身を貫かれ、さらにナイフを炎に変換され直接紋章を焼かれたからか、紋章そのものの輝きはかなり弱まりつつあった。
「おの、れ……!」
当初は優雅な淑女を装っていたヴァンパイアも、猟兵たちに傷を重ねられれば、徐々に余裕が失われていく。
そんな怒り散らすヴァンパイアを、フロッシュ・フェローチェス(疾咬スピードホリック・f04767)は実験室の入口からそっと見つめてた、
――頭を使うのは、正直得手じゃない。
――だから、シンプルに行こう。
(「アタシのスピードで、斬り焦がして……潰す」)
それを成すためには、今、ヴァンパイアに姿を見られるわけには……いかないのだから。
ヴァンパイアが冷静さを失い、索敵を怠っている間に、フロッシュは体内の加速式を起動する。
「いくよアル、【モード刃雷】!」
内に刻んだかつての宿敵『克銘ノ三・刃雷』アルマ・ニッテカンの加速式を全力で隆起させ、雷と刃を扱う『刃雷』モードに変身。
もし、誰かが変身シーンを見ていたら、纏う衣服が変化し、両手両足から蒼の刃が生えるその姿を見て驚愕したかもしれないが、今は見られていない方が都合が良い。
(「早さを引き上げて、その1点だけでもアンタを超える!!」)
フロッシュは紅雷ブレードを手に床を蹴り、一気にヴァンパイアに接敵する。
怒りに駆られ、淑女の皮がはがされつつある淑女の耳元を、高速でフロッシュが通り過ぎた。
――斬ッ!!
ヴァンパイアが気づくより早く、手始めに紅雷ブレードによる、紋章への斬撃。
不意討ちで揺らいだところで、追撃の雷刃でもう一撃。
「くっ……!!」
瞬く間に紋章に二撃を入れられたヴァンパイアは、だが紋章から滴り落ちる血を全身に纏い、攻撃力を高めながら怒りに満ちた目でフロッシュを探すために周囲に視線を巡らす。
しかし、高速で動くフロッシュを、怒りに駆られ冷静さを失った目では見つけられない。
どこにいるのか、とヴァンパイアが声をあげようとした、まさにその時。
――――ッ!!
フロッシュが撃ちだした蒼雷レーザーが、音もなく虚空を、そして紋章を貫いた。
「そこかしら!!」
レーザーの射出方向から何か気づいたか、ヴァンパイアは激痛をこらえながら、わざと銀のナイフを大きく振り切る。
予想だにしない大雑把な一撃は、接敵していたフロッシュの頬に浅く傷をつけ、髪の一部を切り飛ばした。
切り飛ばされた髪が宙に舞い、頬の傷がじくじくと痛むが、フロッシュは歯を食いしばりぐっと耐える。
(「反撃を受けても好機と捉えろ。激痛耐性で耐え、カウンターを撃ち込め!」)
フロッシュもまた、即座に両腕の雷刃を交差するように斬り上げるが、鋭い二撃はナイフすら包み込んでいる全身の血液の防御に柔らかく受け止められ、阻まれた。
この間、ヴァンパイアは怒りに軽く表情を歪めながらも、目を細めながらフロッシュの行動を伺うのみ。
(「大きな隙は罠か?」)
――あるいは、血液の防御に頼り切っているか?
フロッシュが出した結論は……後者。
(「なら逆に体へ早業の連続コンボだ」)
「……刹那乱撃!」
至近距離から纏う血液ごと体内を裂くような電撃を浴びせ、感電させると同時に麻痺させる。
「くっ……!」
「マヒ攻撃はどう? デザートとして、もひとつ手の甲だ!!」
ヴァンパイアが麻痺している間に、フロッシュは再度雷刃を振り切り、紋章に傷をつける。
「ぐ、ぐ……っ!!」
すっかり血液の防御に頼り切っていたヴァンパイアは、立て続けのフロッシュの斬撃になす術なく、紋章の力を奪われていくだけだった。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「そんな物の為に一体どれだけの命を犠牲にしてきたんだ。
その紋章の力等、何の意味もない事を教えてやる。」
冥雷顕迅唱を発動して周囲に落雷と雷弾をばら撒き
その電気で敵と周囲を巻き込んで【範囲攻撃】。
攻撃範囲を広くとる事で僅かずつでも紋章にダメージを与える。
敵が紋章を庇おうとするなら動きを【見切り】
その隙に他の部分を攻撃、
感電による【マヒ攻撃】を行い更にその隙を突いて雷を操り紋章を狙う。
敵を攻撃しながら操られたレッサーヴァンパイアの攻撃を
受けない様に注意。
落雷、雷弾の範囲攻撃で敵本体と共に攻撃して行く。
紋章を攻撃出来て弱体化を確認出来たら
【全力魔法】で冥雷顕迅唱を放って大ダメージを狙う。
●無数の雷撃で吸血鬼を撃て
「よくもここまでコケにしてくれるわね……!」
精神的な余裕がなくなってきたのか、銀の髪を振り乱す『老獪なヴァンパイア』を前に、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は固いながらも怒りを含ませて言い放つ。
「そんな物の為に一体どれだけの命を犠牲にしてきたんだ」
「あら、取るに足らない人間たちをいくら使い潰したところで、我々の心が痛むとでも思って?」
――何より、人間たちは我々の僕であり、餌でしょう?
人を家畜、もしくは玩具としか思っていないその言動に、フォルクは腸が煮えくりかえりそうな怒りを覚えるが、努めて表情に出さず、冷淡に言い放つ。
「その紋章の力等、何の意味もない事を教えてやる」
「上天に在りし幽世の門。秘めたる力を雷と成し。その荒ぶる閃光、我が意のままに獣の如く牙を剥け」
フォルクがデモニックロッドを一振りすると、血しぶきが付着している純白の大理石の天井から雷が降り注ぎ始める。
感電効果を持つ落雷と全方位に拡散する雷弾とを併せ、フォルクはヴァンパイアの周囲もまとめて範囲攻撃し、僅かずつでも紋章にダメージを与えようとする。
落雷により激しく移動が制約され、時々紋章に細い雷が落ちるが、ヴァンパイアは意に介さない。
「ふふふ……まだ素体は残っておりますわ。――立ち上がりなさい、我が僕たち」
ヴァンパイアの呼び声に応えるように、所々血と肉片が残る床から、レッサーヴァンパイアがのそりと立ち上がった。
おそらくそれは、素体として血を絞り尽くされた、犠牲者の成れの果てだろう。
フォルクはフードの下で思わず顔を顰めながらも、雷弾をばら撒き続けレッサーヴァンパイアを近づけさせないように、攻撃を受けないように注意しながら、慎重にヴァンパイア本体の動きを見極める。
既に他の猟兵たちの手でかなりダメージを与えているのか、動きは思ったより俊敏ではない。
紋章自体も、他の猟兵たちに焼かれたり斬られたり貫かれたりしているからか、力は半分ほど失われているようだが、そこにフォルクは雷で追い撃ちをかけ、さらにごっそりと力を削り取った。
「くっ……なぜこの紋章が力の源だとわかるのかしら?」
もちろん、フォルクたち猟兵は、紋章自体が弱点だとわかっているからこそ攻撃しているのだが、どうやらこのヴァンパイアは、猟兵が紋章の意味を見破っている理由を知らないらしい。
猟兵たちが第四層で何度も紋章製造の現場を叩き潰し、紋章の正体をも把握している事実は、第四層のヴァンパイア達には既に知られている可能性が高いのだが……。
(「そういえば、このヴァンパイアは第五層から転移して来たらしいな」)
おそらく、このヴァンパイアは、猟兵たちが第四層で幾度となく紋章持ちのオブリビオンと対峙し、紋章破壊の実績を重ねてきていることを知らないのだろう。
そして、紋章ごとに弱点があることと、その弱点がグリモアの予知で暴かれ、既に知られていることも。
かといって、それをわざわざ第五の貴族に教えてやる必要は、フォルクにはない。
「教えてやる義理はないな」
外れた落雷と雷弾が室内や床を十二分に操作可能な雷で満たしたところで、フォルクは全力魔法で再度落雷と雷弾をヴァンパイアに集中させる。
それは、雷竜の如く荒れ狂いながら、元素体のレッサーヴァンパイアを悉く撃ち抜き、ヴァンパイアをも無限に打ち据えた。
「ぎゃあああああ!!」
凡そ淑女に似つかわしくない悲鳴を上げながら、ヴァンパイアは雷に撃たれ、悶える。
その右の甲に宿る紋章からは、輝きも力もほぼ失われつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
霧崎・紫苑
外道が生き残っていたか
ならば、欠片も残さず処理するのみだ
貴様の弱点は、その紋章か
ならば話は早い
UCを使用して紋章だけをピンポイントで攻撃する
一撃で摘出できずとも、俺は貴様を雑に攻撃するだけで、的確に紋章だけに損傷を与えられるからな
近い間合いでは万能医療義手による打撃、離れた間合いでは飛斬帽をフェイントに利用した武装医療鞄からの銃撃で応戦
どれも、一発でも当たる度に、貴様の紋章を傷つけるぞ
短剣を血液で長剣に変えるようだが、そちらには薬品ケース内の血液凝固阻止剤を液状にして噴射
完全に溶かせずとも、結合力を弱めることはできる
溶けかけの剣諸共に、最後は全力を込めた拳で顔面を粉砕してやろう
●医療を持って外道を制圧せよ
「お、おのれおのれ……!!」
紋章を悉く傷つけられて力を奪われ、さらに満身創痍になるまで追い込まれ、『老獪なヴァンパイア』はすっかり余裕を失っている。
まさか、取るに足らないと思っていた猟兵たちに、ここまでコケされるとは思っていなかったのだろう。
「外道が生き残っていたか。ならば、欠片も残さず処理するのみだ」
大理石造りの実験室に足を踏み入れた霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は、そんなヴァンパイアの醜態振りを冷徹な瞳で見つめていた。
床に広がる鮮血や肉片は、先の猟兵たちが神火や雷で室内全体を攻撃し続けたこともあり、だいぶ消し飛んではいたが、それでも僅かに残っている。
「貴様の弱点は、その紋章か。……ならば話は早い」
紫苑は万能医療義手に特殊な医療用ナノマシンを籠めながら、ヴァンパイアに接近し、殴りつける。
「患部のみ摘出してやろう……傷一つ残さずにな」
近い間合いでは、万能医療義手による打撃を叩き込み、間合いを離されたら、飛斬帽を投げつけ気を逸らしながら、武装医療鞄から機関砲と炸裂弾を撃ち出し。
遠近双方から一見苛烈に見える攻撃を、ヴァンパイアは左手で紋章を庇いながら懸命に避けつつ、血液の防護を纏い軽減する。
だが、一見すると派手な攻撃は、思ったよりヴァンパイアに傷を与えていない。
「その程度かしら……?」
ヴァンパイアが銀のナイフを真紅の長剣に変えながら、紫苑を嘲笑った、その時。
――ポロリ。
ヴァンパイアの右手の甲から、前触れなく紋章が剥がれ落ちた。
「ああ、あああああああああああああ!!!」
紋章による強化が完全に剥ぎ取られ、一気に力を失いその場に頽れそうになるヴァンパイア。
真紅の長剣を杖代わりに必死に堪えるも、紋章を失ったショックで狂乱していた。
「なぜ、なぜ紋章が、紋章が勝手に……!!」
紋章を失い狂乱するヴァンパイアに、紫苑は無言で冷徹な視線を向けるだけ。
紫苑が万能医療義手で殴りつける度に流し込まれた医療用ナノマシンが、少しずつ紋章のみを摘出し続けていたのだが、万能医療義手で散々殴られても全く負傷しなかったためか、ヴァンパイアはすっかり油断していたのだ。
「いいえ、まだ、まだ終わらない……!」
それでも、第五の貴族たる矜持はまだ失われていないと言わんばかりに、ヴァンパイアは足を震わせながらも立ち上がり、真紅の長剣を一振りする。
(「生体実験室群は、ここひとつだけではない。どれかひとつが残れば、また紋章は生産できるようになるはず!」)
だが、目の前の闇医者は、最初からそれを許す気はない。
「俺は医者だ。それくらい対策はできる」
紫苑は万能医療義手で殴りつける代わりに薬品ケースから血液凝固阻止剤を取り出し、真紅の長剣に向けて噴射する。
完全に溶かせずとも、結合力を弱めることは出来るだろう、と思っていたが……。
「ああああああ!!」
血液凝固阻止剤を浴びた真紅の長剣は完全に溶け落ち、もとの銀のナイフに戻った。
再度長剣を生成しようとするも、血液凝固阻止剤を混ぜられた血液は、完全に凝固することはない。
「さて、最後はこれで、綺麗に粉砕してやろう――終わりだ!!」
真紅の長剣を失い、狼狽するヴァンパイアに対し、紫苑は万能医療義手をぐっと握り込み、顔面に向けて真っ直ぐ突き出した。
――ガコッ!!
鈍い音とともに、ヴァンパイアは顔面を完全に粉砕され、仰向けに倒れる。
紫苑を罵る口ごと叩き潰されたヴァンパイアは、断末魔すら残さず大理石の床に倒れ、そのまま消滅した。
かくして、猟兵たちは生体実験室群の一室にて紋章を製造していた「第五の貴族」を討ち取ることに成功する。
主を失い、床を埋め尽くしていた血と肉片が炎と雷で綺麗に掃除された実験室では、その権能を失った祭壇のみがひっそりと佇んでいた。
大成功
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