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闇の救済者戦争⑬〜拷問芸術|人間画廊《ギャラリア》

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #月光城

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●美少年は短し保存せよ
『はぁ……馬鹿な狼どもめ。折角僕のお眼鏡に叶った美少年を、邪魔な妹のみならず一緒に崖下に追い落とすとは』
 月光城の最上階にポツンと置かれた玉座に持たれながら、この城の城主である『拷問伯爵』の異名を持つフォルター・フェッセルンが使い魔であるコウモリからの報告に呆れた様子で溜息を吐く。
 彼と同じく拷問伯爵の目に止まって、今まで攫った美少年の中でもお気に入りであったオラトリオの少年が忽然と姿を消してどれだけの歳月が流れただろうか。ぽっかりと胸に開いた空虚な寂しさと喪失感を埋めるように、手当たり次第に美少年を攫ってきたがお気入りの代わりにならないと苛立ち、ついつい拷問をやりすぎて殺してしまうことが多々とあったことか。猟犬としてきた狼も美少年を攫う頻度が増してきたのもあってか、獲物を追い立てる加減を誤ったのだろう。このやり場の無い怒りをどう晴らしてくれようかと苛立ちを覚えたフォルター・フェッセルンだったが、ここは『彼ら』を鑑賞して心を平穏にしようとおもむろに玉座から立ち上がる。
 目指す場所はこの城の最下層。魔空回廊と呼ばれる回廊で、そこを取り囲むように彼の『コレクション』はそこに佇んでいるのだ。

『やぁ、みんな久しぶりだね。元気にしてたかい?』
 魔術による松明代わりの蒼い炎に照らされて彼らは照らし出される。そこには拷問器具で拷問された一場面を再現した『|人間画廊《ギャラリア》』が展示されていた。一見すると極めて精巧な蝋人形が惨たらしい拷問を掛けられているという悪趣味極まりない凄惨な拷問を掛けられていると言った、フォルター・フェッセルンの感性がそのまま現れた拷問芸術というべき人間画廊である。
 しかし、拷問伯爵の悪辣さはこれに留まらない。何故ならば、蝋人形と見間違える彼らは『生きて』いるのだから。

『おはよう、ミゲル。何時見ても良い苦悶に満ちた表情だね。10年前に何度もしていた拷問で聴いた叫び声が蘇ってくるよ』
 そう、彼らの身体は拷問伯爵の手により、特別な拷問器具で時を止められているのだ。|花《美少年》の命は短く儚い。ヴァンパイアであれば永遠の美として自分の姿形を固定化出来るが、人間やオラトリオに人狼などはそうは行かない。だからこそ、ヴァンパイアの中でも誰よりも賢いと自負する拷問伯爵は閃いたのだ。美少年を永久に愛でれる人間画廊とすることを……。

『本当であれば、君も血を啜った後でここに展示しておきたかったのに……。嗚呼、君は今、何処に居るのだい……』
 如何にも変態以外の何者でもない拷問伯爵は、先程までに覚えていた怒りを自らの拷問芸術で恍惚な笑みを浮かべて自分の世界に入り込む。そして、今まで攫ってきた美少年の中でもお気入りだった彼の名をポツリ呟くのであった。


●グリモアベースにて
「ってゆー気味が悪ぃし胸糞な|夢《予知》を、何の因果かしらねーけど視ちまったんだよなぁ……」
 運悪くそんな予知を視てしまったグリモア猟兵、ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)の目は死んでいた。それはそうだろう、彼の語った内容通りの美少年専門な変態吸血鬼であれば心中察するばかりだ。

「そんな訳でまた視ちまうとヤダだし、皆にはアイツをぶっ飛ばして来れたくて集まって貰ったわけなんだ」
 明らかな私怨であるが、ウィルが視た予知とはデスギガス災群に乗って現れた城塞群の中核を担う月光城である。そこには「ケルベロス・フェノメノンの欠落」が隠されていることは既に予知で判明しており、ついでにその一部を回収することが叶えば禁獣ケルベロス・フェノメノンとの決戦に大いに役立とう。まさにウィルの願いと戦況を左右する禁獣の欠落回収はWin-Win。彼の願いを聞き届けて|拷問伯爵《ヘンタイ》に天誅を下すに問題は一切ない。

「けど、気をつけろよ。あのヘンタイ野郎はお気に入りの美少年を人間画廊にしちまっている上に、一日の殆どを拷問芸術が展示されている魔空回廊で入り浸っている筋金入りだぜ。それに『月の眼の紋章』の持ち主で展示品がある限り|戦闘能力が強化《ハッスル》しちまうんだ。その数値はざっと見積もって660倍」
 何とも業の深い|吸血鬼《オブリビオン》も居たものだ。それにウィルが言うには、以前に今までで一番のお気に入りであったオラトリオの美少年を幽閉していたものの脱走されてしまったのがトラウマとなっているらしい。彼の|力の源《生き甲斐》となっている悪趣味な人間画廊に文字通り時間ごと囚われた美少年を解放しようとすれば、あの時と同じ苦痛を味わいたくないとばかりに死物狂いとなって阻止しようとするのは明らかだ。

「けどなー。予知で視た感じ、アイツって自分はこの世で一番賢いって威張りくさってた感じだったんだよな。もしかしたら『あ! あんなところに天使のようなオラトリオの美少年が!!』とか、明後日の方向に指さして叫んでやれば引っかかったりしてな、ニャハハハ!」
 いや、それは流石にない……いや、あるのか?
 だが、ただ単に引っ掛けるだけではすぐに阻止されてしまうだろう。あまり賢くないのであれば、何らかの方法で本物と間違える人形や美少年の幻を見せたりすれば、思いの外引っかかってくれるのかもしれない。問題はヘンタイ吸血鬼の好みは一体どんなものなのかではあるが、ダークセイヴァーでは中々お目にかかれない他世界の美少年概念で釣ってやるのも一興でもあろう。

「ま、そんな感じにヘンタイに捕まっている連中を助けてやれば、精神的にもヤラれちまって弱っていくって作戦だな。でも100年に渡ってオブリビオンに支配されてただけあって人間画廊から助けたとしても、まるでタイムスリップかコールドスリープしちまった感じなんだよな……。その辺の説明とフォローは似た境遇のオレ様が安全な場所でしてやってっから、皆はヘンタイ吸血鬼をぶっ飛ばすだけに集中してくれていいぜ!」
 思えば、拷問伯爵に囚われた美少年も不憫なものだ。例え無事に帰れたとしても、親兄弟はともかく帰るべき故郷も時間の流れてあるのかさえも疑わしい。だが、そこは時間の流れが解決してくれるのかもしれない。全ての元凶である『拷問伯爵』フォルター・フェッセルンを討つべく、そしてケルベロス・フェノメノンの欠落すべく猟兵たちはウィルが展開した|電脳空間《グリモア》を介して月光城へと降り立つのである。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 実は最初のシナリオを出す際に引き当てていまして、面白そうだけどダクセでギャグ系のシナリオは如何なものかと言うことで保留としていました。
 ですが、一晩二晩時間を置いたら「悲劇と喜劇は紙一重」ということで出すに至ったという次第です。因みに冒頭の兄妹については察しの良い方だとお分かり頂けるでしょうが、あくまでもお話の繋がり程度にですのであしからず。

●戦場解説
 既に一本目の月光城砦群〜魔空回廊を出しているので省略しますが、目的は『ケルベロス・フェノメノンの欠落』以上に|人間画廊《ギャラリア》として囚えている美少年を奪われまいと襲いかかる『拷問伯爵』フォルター・フェッセルンの撃破となります。
 囚われの美少年は魔法の拷問器具にって時間が固定化されることにより拷問芸術とも言うべき美術品となっていますが、魔法の拷問器具から外してやれば元の時間が流れるようになります。
 それによりプレイングボーナスである『|人間画廊《ギャラリア》に捕らわれた人々を救出する』が達成されて、心身ともにフォルター・フェッセルンは弱体化していくので有効的にご活用くださればとです。またフォルター・フェッセルンは美少年に目がないので、その性癖を上手く突いてやれば人間画廊からの救出も思いの外ラクになるかと思われます。
 そんな感じに何時もの悲壮感あるダクセとは一風異なったギャグ寄りの内容となると思われますので、その点をご了承くださいますようお願い申し上げます。

 それでは、|拷問伯爵《愛すべき変態》の美少年好きにも負けない熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 ボス戦 『『拷問伯爵』フォルター・フェッセルン』

POW   :    私の命令は絶対なのだ!
【拷問具】を見せた対象全員に「【動くな!】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【フォルターに抵抗する気力】が半減する。
SPD   :    さあ、私に跪くがいい!
【手枷】【足枷】【猿轡】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    やはり美少年の血液は美と健康に良い……!
全身を【美少年の血液】で覆い、自身が敵から受けた【屈辱】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:沖田龍

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ロビン・バイゼです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メフィス・フェイスレス
うわ。きっも
出来れば即駆除したいとこだけど……
あの頭のおかしい強化倍率じゃ分が悪いわね

はぁ、すっごい気乗りしないけどしょうがないか
せいぜい良い夢みてれば?

【プレイング】
躰に開いた「顎門」からUCの「血潮」が吹き出し揮発、紅霧となって戦場を覆い、敵を【酩酊】【幻覚】【催眠】でその美少年と再会し“戯れる”夢をみせる
ついでにありったけ「毒攻撃」「マヒ攻撃」を「血潮」にのせて中毒状態を悪化させて最大限に弱体化を狙う
・トリップ状態の敵は放置……する訳にもいかないし周囲に「飢渇」を展開して注視して警戒せざるをえない(ゴミを見る目だ!)
・そんな絵面を余所に他の「飢渇」が囚われの人々を戦域外に運び出していく



『嗚呼、この眼の見開き具合と今にも甘美な悲鳴を啼かせてくれそうな口の開き方……。フヒ、フヒヒヒ……美少年の血を啜るも良いが、やはり|人間画廊《ギャラリア》は美と精神衛生に良い……!』
(うわ。きっも)
 乱雑に置かれた拷問具の影から人間画廊とされた犠牲者たちを巣食うべく様子を伺っていたメフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)が、心の内で率直な感想を述べる。裸も同然の姿で生きたまま時間を止められていることにより、一見すると蝋人形のようになっている悲痛な表情を浮かべている少年に頬ずりしているのが、件の拷問伯爵と見て間違いなおだろう。とは言え、流石に話で聞いたのと実際に見るとは印象が大きく違う。まさかここまでの度し難いヘンタイっぷりとはと、数々の吸血鬼を狩ってきたメフィスでさえ嫌悪感を示さずにはいられなかったのだ。
 だが、あんなヘンタイだろうが腐っても月の眼の紋章の持ち主であって、その実力は計り知れないものでもある。幸いなことに頭がよろしくないのは本当のようで、普通の吸血鬼であれば気配を察知してもおかしくない距離であるにも関わらず、鼻の下を伸ばして美少年コレクションに夢中となっているのがその証左であろう。

「はぁ、すっごい気乗りしないけどしょうがないか。……せいぜい良い夢みてれば?」
 死肉を繋ぎ合わせ造られた|屍の人型《デッドマン》であるメフィスの身体の至るところを縫い合わせた痕が裂け始める。一見する縫合糸に見えていたものは牙であり、自らの血を滴らせる舌端が伸びて開いた『顎門』から飛び散った血潮がユーベルコードとなって蒸発する。程なくすると、脳髄の奥にまで染み込むかのような甘ったるい匂いが地下故に密室となっている魔空回廊内に充満して紅霧となっていく。

『フヘヘヘヘヘ……おや?』
 流石にこの異変には自分の世界に意識が逝っていたフォルター・フェッセルンも気づいたらしく、怪訝な顔持ちで紅に染まる周囲を見渡す。すると、ぼうっと何者の影が松明の炎に照らされながら浮かび上がり、聞き覚えのある声が頭の中に響く。

『まさか……君は……ッ!』
 見間違えることはない、聞き違えることはない。この血煙も同然の紅霧ではっきりと見えないが、憂いを秘めた眼差しである白鳥のような純白の翼を背中に生やした紅顔の美少年を片時も忘れたことはないのだ。逸る気持ちを抑えながら拷問伯爵が手を伸ばしながらおぼつかない足取りで歩み寄ろうとすると、幻影のように現れた何者にも代えがたいお気に入りだった美少年は背中を向けて走り去ろうとする。

『は、はははは! この私から二度も逃げようだなんて、なんて悪い子なんだ! じっくり、じっくりと……君はとってもイケナイ子だと身体に教えてあげるよ!!』
 あまりの興奮に眼を血走らせ、はたまた鼻筋の通った鼻も膨らめながらその場に合った拷問具を無造作に手に取りながらフォルター・フェッセルンは走り出す。そんな嬉々とした拷問伯爵の顔を、メフィスが絶えず湧き上がる飢餓衝動により躰から滲み出された無数の目玉を浮かべる肉団子状の眷属を密かに展開させつつ、ゴミを視るような目で紅霧に紛れながらつぶさに監視していた。

「……気持ちは分からなくもないけど、あまり見たくもない情景だわ。兎角も紋章と人間画廊の相乗で絶大な力を有しているらしいけど……度し難い間抜けなのが何ともというところよね」
 何はともあれ、自らのユーベルコードでフォルター・フェッセルンがそこには居ない残影を追いかけながらトリップしている間に、この哀れな被害者である少年らを人間画廊から解き放たなければならない。だが、拷問具に掛けられた状態で悲痛な叫び声を上げている状態で時間が静止されているのであれば、その叫び声でいくらアホだからと言っても拷問伯爵が気づく問題がある。

「仕方ないわね。確実な方法で拷問具ごと運び出しましょうか」
 ふよふよと空中を浮遊する『飢渇』らが拷問具に噛みつき、ゆっくりと浮かびあがらせるとフォルター・フェッセルンの|拷問芸術《お気に入り》のひとつが音もなく魔空回廊外へと運び出される。程なくすると、フォルター・フェッセルンの何とも言えない奇声めいた叫び声が回廊内に響き渡ったのは言うまでも無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
僕自身美かはわかんないけど、オラトリオですし
オラトリオの美少年に当てはまりそうな人は沢山知ってるよ
貴方がお探しの方も僕友達かもしれなくない?
大事な参考人だぞ、丁重にしてね【誘惑】

【オーラ防御】で身を守り
適度な【空中戦】で回避重視
危険な時は鎌を盾兼牽制用に使用

更に【紅色鎌鼬】発動
【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃】を量産した鎌に上乗せ
進行ルートを塞ぐように浮遊させつつ【なぎ払い】攻撃で
強化用の血液ごと凍結、足止め

更に【催眠術】を乗せた【歌唱】で一時的にでも催眠
オラトリオ美少年の幻覚でも見せておきます

その隙に一部の鎌で拷問器具を安全に破壊
囚われの人々を助けたい

攻撃が通りそうなら鎌の一斉攻撃で追撃



『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!? なんてこった! 運命の再開をしたはずの小鳥が霧が晴れた途端に見失ったばかりか、拷問芸術の|人間画廊《ギャラリア》がひとつ消えているなんてぇえええッ!!』
 フォルター・フェッセルンが両手で頭を抱え込みながら悶絶しているが、それもこれも猟兵の手によってお気入りの人間画廊が持ち去られていたからだ。そしてなおかつ、ユーベルコードが見せた幻だったとはいえ、拷問伯爵は一番だったお気入りのオラトリオの美少年と再開していたのが、彼の喪失感へ更に拍車をかけさせる。二度とあんな思いをしたくないという思いが強ければ強いほどフラッシュバックさせ、彼の冷静さをよけいに崩していったのだ。

『誰が、誰がこんな非道な真似を……誰だッ!?』
「……ちぇ。上手く行くかなって思ったのに」
 哀しみが怒りへと代わり、わなわなと拳を震えさせながら鞭を握り締めていた彼の背後から何かが飛来する。腐っても吸血鬼であるフォルター・フェッセルンが鞭を撓らせながら振り向き、上空から栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が投げ放った鎌を叩き落とす。

『|猟兵《イェーガー》……? そうか、わかったぞ! これは貴様の仕業なのだな!』
「う~ん、半分正解で半分ハズレかな。僕、まだ趣味の悪い人間画廊から解放していないし?」
『黙れ黙れ! この穴埋めは麗しい美少年の君で支払って貰うぞ!! 拷問伯爵の名は伊達ではないことを、その華奢な身体にじっくりと教えて……』
「ふ~ん、いいの? お探しのオラトリオの美少年に当てはまりそうな人は沢山知ってるし、貴方がお探しの方も僕友達かもしれなくない? 大事な参考人だぞ、丁重にしてね」
『う゛っ……!』
 どうやら口舌では澪の方が上であったようだ。誘惑じみた脅しに、自らのユーベルコードで拷問芸術で血を流しながら時間停止している美少年たちから集めた血で自らの身体を覆おうとした矢先、澪から投げられた言葉に固まってしまう。
 眼の前に居る薔薇のような美少年は、確かに行方をくらました一番のお気に入りと同じオラトリオである。是非とも情報を引き出したいが、自らの人間画廊コレクションに入れてしまえば時間停止してしまう。二者一択の選択にどうするフォルターと言わんばかりの迷いが生じたことを、数々の死線を潜り抜けた澪が見逃すはずもなかった。

「君が探しているお気入りの子って……こんな感じの子?」
 一の矢で放った鎌は迎撃されたが、二の矢は少々訳が違う。氷魔法を刃と化した大量の紅色に澄んだ氷の鎌が、フォルターめがけてではなく彼の周りに渦巻いていた美少年の血霧を凍りつかせてドーム状に閉じ込めてしまう。このままであればこれでも強大過ぎる力を持ったフォルターに破壊されてしまうのは目に見えているが、ここで澪は催眠術の魔力を乗せた歌を奏でた。
 澪自身は、拷問伯爵のお気入りであるオラトリオの美少年はどんな顔であるかは知っていない。だが、その答えはフォルター・フェッセルン自身が持っている。ならば、その詳細な記憶を元に幻を魅せてやれば良いだけの話だ。

『~~~~~ッ!?』
 すると、フォルターを取り囲む氷に彼の記憶から呼び起こされたオラトリオの美少年の姿が再び浮かび上がり、合わせ鏡となっている氷鏡がその姿を幾多にも映し出す。そんなものを見せられてしまえば、マジシンドイと言わんばかりな奇声がただただ叫ばれるだけであった。

「この隙に……っと」
 虚空から舞い吹雪く赤い花弁が透き通った美しい薄紅色の鎌となり、人間画廊として囚われの美少年を繋ぐ魔法の拷問器具が破壊される。時を止めるという魔法が掛けられた人間画廊が破壊されれば、再び時間が戻ったことで美少年の囚人は耐えかねる痛みに叫んでしまう。だが、その叫び声は一番のお気に入りであるオラトリオの幻影に取り憑かれて自分の世界に入ってしまったフォルターの耳に届くことはない。いや、届いても気にする様子もなかった。

「大丈夫。落ち着いて、深く深呼吸して……そうそう。僕がここから逃してあげるね」
 出来れば何も罪もない彼らにこのような仕打ちをしたフォルター・フェッセルンをズバッとさせたいところだが、美少年の血で自らを強化するユーベルコードを使うと知った以上は彼らの避難が最優先だ。

「じゃあ、こうしようかな? えい!」
 紅色鎌鼬が奇声が盛れる氷のドームを容赦なく斬り裂けば、氷の塊が崩れて拷問伯爵を押しつぶそうと伸し掛かってくる。おまけとなるが、彼が視ていた一番のお気入りが消えてしまった悲痛な叫びが再び魔空回廊に響き渡ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ絡み歓迎

拷問伯?
え、その目、こ、こわいっ!
(ぼくも人間画廊に入れるつもり?でも、それは使わせてもらうの)
わ、わわっ、こないで!
狼の脚力と瞬発力で走って引き付けながら、様子を見るの
(やっぱり、ぼくを痛い目に遭わせるのが目的みたいだね…)

必死に逃げながら必死に避けて、嗜虐心をくすぐるね
(え、演技じゃなくてほんとにこわいっ!)
とにかく、時間稼ぎして相手の力や人間画廊に施された魔術的拘束の解析を進めるの

く、まずいの…っ!
猿轡を嵌められそうになったら、月光城に満ちる月の魔力を吸収、狼のオーラを纏って、咆吼を上げるの
音撃で拷問器具を破壊
逃げてばかりじゃ、ないよ?
何度も咆えて反撃なの


メディア・フィール
SPD選択
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK

異性に間違われる見た目のために、フォルターは美少年だと誤解して捕獲目的で戦い、勝手に苦戦します。そのうえで、捕獲してみて実は少女だとわかって愕然とするでしょう。そこに大きな隙が生まれるかもしれません。そのあと、メディアは怒り狂った伯爵に酷い目に遭わされるかもしれませんが、それはまた別の話で。また、自分の失敗を認められず怒り狂った状態の伯爵は、以降は隙だらけになってしまうかもしれません。

「お前がフォルター伯爵か! こんな…こんな酷いことをするなんて!」
「く、体の動きがっ!」
「へ? うん、ボクは女だけど……?」
「うわわっ! 何をするんだっ!」



『……ハァーッハッハッハ! この私というものが、またしてやられたかッ!!』
 血色の氷のブロックが弾け跳ぶとともに、魔空回廊内に高らかな拷問伯爵の|笑い声《馬鹿笑い》が響き渡る。二度も同じ今も未練たらしく一番のお気に入りであり続けているオラトリオの美少年の幻影に魅せられていたが、もう二度と引っかからないぞと言わんばかりに目を見開き氷塊の山から抜け出す。

『盗人猛々しい|猟兵《イェーガー》が私のお気に入りを盗み出しているせいか、この身体に流れる美少年力が減りつつある。だが! まだ私のコレクションは多く健在である以上、盗み出そうとする猟兵など八つ裂きに……』
「「あ……!」」
 わざとらしいまでに大げさな身振り手振りでフォルター・フェッセルンが、自らの拷問具と美少年コレクションで作り出した拷問芸術と自画自賛する|人間画廊《ギャラリア》に振り向くと時間が止まった。そこにはふたりがかりで拷問具に繋がれている美少年の拘束具を取り外そうとしているロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)とメディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)の姿があったからだ。 ふたりはフォルター・フェッセルンが氷の塊に押しつぶされている隙に人間画廊から囚われの美少年を救い出そうとしていたのだが、思いの外に金具がしっかりと止められている上にどのような構造なのかと、知恵の輪を外すかのように苦戦していたという訳であったのだ。

(こ、これは……!!)
 フォルター・フェッセルンがわなわなと震えているが、これは眼の前で不遜にもコレクションの美少年を奪われようとしている怒りからではない……衝撃が走ったのだ。なにせ目の前に、くりっと円な丸い目にモフり甲斐ある狼耳を生やした美少年と快活そうで泣かせ甲斐あるショートヘアーの美少年が並んでいたのだ。

「え、その目、こ、こわいっ!」
「お前がフォルター伯爵か! こんな……こんな酷いことをするなんて!」
 そして反応もロランは怯えた様子で身構える一方、メディアは彼を守るように前へ出ているのもポイントが高い。確かに美少年の人間画廊はいくつか奪われたが、今ここに一目惚れした美少年を蒐集すればプラマイはゼロとなる。僅か数秒であったが、フォルター・フェッセルンの脳内ではどんな拷問を与えて愉しもうかというシュミレートが光の速さで駆け回っている。そうなれば……。

『決めたぞ! 君たちを私の新たな美少年コレクションとし、拷問芸術の粋を凝らした人間画廊とすることを!!』
「へ? うん、ボクは女だけど……?」
『いいや、けしからん可愛さをしている君は美少年に決まっている。私が美少年と決めた以上、確認するまでは男の子なのだよ!』

 ・・・・・・・ジ

 気のせいだろうか。あまりにもアホすぎてしらけた空気の中で、トンボのような昆虫がロランとメディアの眼の前を横切った気がする。
 ここは地下深くでアリ一匹すら入る隙間もない密室だ。きっと幻か何かに違いない。

「わ、わわっ、こないで!」
 そんな微妙な空気をロランの叫び声が打ち破り、彼は狼さながらの脚力と瞬発力で逃れようとする。

『何処へ行こうとするのだね? ここは私が絶対的支配者となる魔空回廊というのを忘れては困る……さあ、私に跪くがいい!』
 フォルター・フェッセルンが距離を取ろうとするロランへ仰々しく腕を向けると、壁際に掛けられていた様々な拘束具が動き出して捕らえようと飛んでくる。それはロランのみにならずメディアにも襲いかかろうとし、美少年と見間違えるボーイッシュな|姫《おうじ》武闘勇者を捕らえんとする。

(やっぱり、ぼくたちを痛い目に遭わせるのが目的みたいだね……え、演技じゃなくてほんとにこわいっ!)
 手枷、足枷、猿轡のみが縦横無尽に宙を行き交う中でロランはフォルター意図を読み取るが、絶大な魔力をまだ残る人間画廊から得ている拷問伯爵の追撃から逃れるだけでも精一杯である。出来れば一呼吸付けるだけでの隙さえできればと思うが、それすらも許さない所か必死に躱そうとするふたりの姿はフェルターの|嗜虐心《サディズム》を余計に唆らせるだけだ。

『ハァーッハッハッハ! お遊びはここまでだ!!』
「く、体の動きがっ!」
「メ、メディアさーん!!」
 多勢に無勢とはこのことか。暗黒の炎を滾らせながら雲霞の如く迫り来る拷問具を叩き落としていたメディアの腕に手枷が絡み、死角から分銅状に鎖を撓らせる足枷が脚に絡みつく。すると彼女が発現していたユーベルコードの黒炎が勢いを急激に落としてしまう姿にご満悦となったフォルターが、高笑いを上げながらゆっくりと動きを封じられたメディアへと向かってくる。

『最後の仕上げは私自身の手で行ってあげよう。この猿轡を掛ければ、君は私の美少年コレクションの一員になるだよ!』
「だーかーらー! ボクは美少年なんかじゃない!」
『こら、暴れるな! 手元が狂う……ん? 何だ、この胸の僅かな膨らみは……ハッ!? き、貴様……女だったのか!?』
「そうだって言ってるでしょ! このバカ、ヘンタイ!!」
 暴れるメディアを取り押さえようとしたフォルターがメディアの胸を抑えると、僅かにだがふくよかな感触が彼の手に伝わる。
 ナムアミダブツ、なんたることか!
 美少年だと信じて違わなかったメディアが女である事実を前に拷問伯爵は愕然とした!

「今がチャンスなの! うぉぉおおん!」
 メディアが美少年でなく女性であることに狼狽してか、飛び交う拘束具の動きが急激に鈍り始める。ようやく訪れた起死回生のチャンスを見逃さず、相手の追撃を避けながら月光城に満ちる月の魔力を吸収していたロランがユーベルコードの煌めきとともに狼のオーラを纏うと、胸いっぱいに空気を吸って咆吼を上げる。

『のぉわぁあああっ!?』
 咆哮による音撃は容赦なく拘束具を拷問伯爵へと押し返し、それらがフォルター・フェッセルンの身体にぶつかりながら遅れて襲いかかった音の波に吹き飛ばされてしまう。

「メディアさん、大丈夫なの!?」
「う、うん……大丈夫。ちょっと耳がキンキンして、頭もクラクラするけど……アイツが起き上がる前に人間画廊に囚われている人たちを助けなきゃ!」
『そ、そうはさせないぞ……。美少年のふりをして私を騙そうとした報いを……』
「うぉぉおおん!」
『みぃぎゃあああああっ!?』
 よろよろと耳を押さえながら立ち上がるフォルター・フェッセルンに、再びロランの遠吠えによる音撃が容赦なく襲いかかる。足枷が外されたことでメディアの拳に黒炎の勢いが戻ると手枷を熱で破壊すれば、後は人間画廊に囚われていた美少年を救出するだけだ。二度もまともに食らったロランの遠吠えで平衡感覚がまだ戻らずに立ち上がることもままならない拷問伯爵は、ひとりふたりとお気に入りの美少年たちが奪われて行く様をただ悔しさに耐えながら唇を噛むしか出来なかったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリルティリア・アリルアノン
【アリエル】
うわー…うわー
拷問ってだけでもアレだけど、それをこれ見よがしに飾っちゃうとか…
世界が世界なら、ドン引きどころか炎上待ったなしですよ!

ともかく囚われの美少年達を解放する為に、まずエルナちゃんに囮として敵の関心を引きつけててもらいます
かわいい妹(♂)にこんな危険な事をさせるのは気が引けるけど、
今はこれしかない!
エルナちゃんが囮役をしてくれている間に、
アリルは迷彩などを駆使して極力目立たないようにしながら人間絵画を解除して回ります

さあ…強化さえなくなれば、敵はもはやただの変態!
光の属性を帯びたタキオンシュートで一掃してやりますよ!


エルナリア・アリルゼノン
【アリエル】
うわぁ…他人の趣味を否定するのは良くないと言いたい所ですが、
流石にこれは常軌を逸していますね…

…で、あの、アリル?
色々な意味で危機を感じるので、くれぐれも作戦は迅速に頼みますよ?

本当に不本意ですが、アリルが美少年達を解放する間、囮として伯爵の気を引き続けます
「こ、こないで…」と涙目で訴える等、
被虐心を煽るような言動をすれば喰い付いてくれるでしょうか
残念ながらお眼鏡に適わなかった場合、プログラミングで生成した色々な属性の美少年の映像を投影します
どうにか敵が釣れたら、戦術予測や迷彩駆使して逃げ回って時間稼ぎ
美少年の解放が済んだ所で、
後は持てる火力を叩き込んで地獄に送ってやりましょう



「うわー……うわー。拷問ってだけでもアレだけど、それをこれ見よがしに飾っちゃうとか……世界が世界なら、ドン引きどころか炎上待ったなしですよ!」
「うわぁ……他人の趣味を否定するのは良くないと言いたい所ですが、流石にこれは常軌を逸していますね……」
 『拷問伯爵』フォルター・フェッセルンが手掛けた|人間画廊《ギャラリア》を目の当たりとしたアリルティリア・アリルアノン(バーチャル|魔法少女《ウィッチ》アリルちゃん・f00639)とエルナリア・アリルゼノン(リンクル・エール・f25355)の第一声が「うわぁ」であって、ドン引きするのも無理はない。彼女らと同じ背丈であろう少年たちが、あるものだと申し訳程度な腰布しか履かされていない半裸状態で、またあるものは仕立ての良い服を着せられていたりと多種多様な充実っぷりだ。
 この場に美少年愛好家かつ拷問される美少年の姿に陶酔するといった趣味の猟兵が居れば絶賛する拷問芸術であろうが、生憎のところふたりの感想は言うまでもなく『ヘンタイの所業』に他ならない。これが精巧な蝋人形であれば幼児が泣き出すこと間違いなしの古今東西の拷問内容を取り扱ったホラー系蝋人形館なのだろうが、時間が止められた生きた人間であるのが余計に始末が悪い。それでも、悲痛な叫びを生々しく訴えかける彼らを解放しない限りは拷問伯爵の力を削ぐことは叶わないのでやるしかない。

「……で、あの、アリル? 色々な意味で危機を感じるので、くれぐれも作戦は迅速に頼みますよ?」
「うん! かわいい妹(♂)にこんな危険な事をさせるのは気が引けるけど、今はこれしかないから最効率で行くね!」
 どこか不安の色が隠せないエルナリアを鼓舞する形で、任せてと胸を叩いて見せるアリルティリア。程なくすれば服の至る所がボロボロとなっているフォルター・フェッセルンが人間画廊として拷問芸術に仕立て上げた美少年コレクションに癒して貰おうと来たのを察知すれば、バーチャルキャラクターシスターズ(?)による救出作戦が開始された。

『思った以上に心身のダメージが激しい……もうダメ、マジシンドイ。一刻も早く、美少年で癒やして貰わねば……!』
 身体の痛みには耐えれるが、お気に入りが持ち去られた心の傷みはすぐに治るものでもない。何せ一番のお気に入りに逃げられた|傷《トラウマ》が今でも癒やされていないのだ。しかし、裏を返せばここに付け入る隙があるというものでもある。

「ひッ……!? こ、こないで……!!」
 フォルター・フェッセルンが魔空回廊の角を曲がると、そこには恐怖に慄きながら瞳に涙を浮かべさせながら後ずさりするエルナリアの姿があった。

 おや? おやおやおやおや?
 疲れ切ったフォルターの目がみるみると生気に満ち溢れ、黙っていればイケメンの整った顔がニチャァと薄気味悪い笑みが自然と浮かび上がる。一見すると声や容姿、仕草に至るまで物静かな少女であるが、その骨格は間違いなく男の子そのもの。そう判断を下すに掛かった時間は僅かコンマ数秒、これも美少年の審美眼を長きに渡り培っている賜物と言えよう。
 先程はつい判断を見誤って間違えてしまったが、今回は紛うごとなき美少年であることに加えて天使ような泣き顔に嗜虐心を刺激されたフォルターが思わずフヒっと気味悪い笑い声を漏らしてしまう。

『これはこれは……そう怯えることはないのだよ。初めはちょっと、ちょっと痛いだけだけど……身を委ねて私に跪くがいい!!』
 などと申しており、拷問伯爵の気を惹かせるための演技をワザとしているだけのエルナリアは心の中でゴミを視るような目となった。早くもこのヘンタイをどうにかしたい気持ちが湧き上がってくるが、まだアリルティリアはこの先にある人間画廊に囚われた美少年を救出しきれていない。
 ならばと、既に壁際まで追い詰められたエルナリアは駆け出して、鼻息を荒らげながら両手をわきわきと動かすフォルターの横からすり抜ける。これもフェルターが見せていた様子からすぐに捕らえたりはせず、この魔空回廊内においては人間画廊がある限り絶対的な強者であることからの傲慢によってネズミを逃してはすぐに捕らえての繰り返すネコのように弄ぶ。そのようにユーベルコードの域にまで高められた戦術予測を打ち立てたが、面白いまでに的中して難なくすり抜けたというわけだ。

「痛いのやだ! こないで!」
『ハァーッハッハ! 何処へ行こうとするのだね? ここは逃げ場なんて何処にもない魔空回廊、ただぐるぐると廻るだけさ!!』
 既にポリスメン案件となっているが、ここは仮に警察力があったとしても助けを呼ぶ声など地上には届かない月光城の地下深くだ。だが、拷問伯爵の嗤い声のみが魔空回廊に反響すればするほど、拷問具による拘束を外されて再び時が流れた美少年の悲鳴もかき消されていることに拷問伯爵は気づいていない。それほど魅力的な獲物であったエルナリアに首ったけとなった証であったのだ。

「おおっと、そうは問屋が卸しませんよ!」
『!? 誰だ!!』
 そんな茶番劇が永遠に続こうとする中、快活な少女の声が魔空回廊に響く。思わぬ来訪者の声に、フェルターは手にしていた鞭を構えて振り向くと……曲がり角の手前に小さなシルエットが浮かび上がる。

「ネガティブハートにスマイル配信♪ バーチャル|魔法少女《ウィッチ》、アリルの参上でーす♪」
『ば、バーチャル魔法少女だと……? 私の崇高な美少年ハンティングを邪魔立てする者は何人であろうとも……』
「待ってたよ、アリル。ありったけの火力を叩き込んで、この|オブリビオン《ヘンタイ》を地獄に送ってやりましょう」
 どこか機械的で冷ややかな声とともに、フェルターの背後で爆発が起こる。何が起きたのかと拷問伯爵が振り向けば、そこには魔空回廊内でも運用が可能な|戦闘用二足歩行型戦車《マシンウォーカー》に搭乗したエルナリアの姿があった。先程起きた爆発は小型の連装ミサイルランチャーから放たれたもので、未発射の発射管はまだまだ搭載されている。

「私のかわいい妹(♂)に手を出そうとしたヘンタイさんは……こうだぞ♪」
 翠に輝くステッキを振りかざしたアリルの周囲に電子的な発光を浮かべる魔法陣が形成され、溢れ出た光の奔流が容赦なく矢継ぎ早に撃ち出される『タキオンシュート』として放たれる。それらは小型ミサイルの爆圧から逃れようとするフェルターの行く手を遮り、科学と魔法の挟み撃ちが容赦なく襲いかかるのだ!

『おのれ、図ったなぁああああッ!!』
 またしても目先の美少年に騙されたフェルター・フェッセルンの悲痛な叫び声が魔空回廊に響こうとしたが、それらは|汚物《ゴミ》を滅却せんとばかりに放たれる砲火の轟音によってかき消されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カーバンクル・スカルン
はぁー……。とりあえず、車輪に繋げた荷台の上にどんどん蝋人形を乗っけて、片っ端から城外に搬送しましょう。鎖で繋がれてるようなら鋸で切り落とし、障壁が張られてるようなら金槌で叩き壊し。

胸小さいから「宝石のような肌を持つ美少年」とワンチャン間違えてくれんかなと思いつつ、好き勝手やった私に伯爵の注目が釘付けになったところを後ろから別のカタリナの車輪が強襲・捕縛。

話終わりました? じゃあ黙ってくださーい。

極寒の水風呂の中に伯爵を沈没させて、時々呼吸のために顔を上げさせたかと思いきやまた沈める、を伯爵が力尽きるまで繰り返す。

少年の時は止めても周りの時間を無駄に消費させたんだ、心底苦しめ変態野郎が。



「はぁー……。とりあえず、車輪に繋げた荷台の上に片っ端から拷問具ごと乗せてるッけど! どんだけ集めていたのよアイツ!」
 ゴロゴロと自分の得物である一対の車輪と既に破壊されていた拷問具の部品を繋ぎ合わせた即席の|荷車《リヤカー》を、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)がぶつくさと愚痴をこぼしながら牽く。ダークセイヴァーがオブリビオンの支配下に置かれてから百年の歳月が経っていたのは伊達ではなく、気に入った美少年を攫ってきては飽きてまた新しく気に入った美少年を攫ってきての繰り返しとなればこうなるのだろう。
 とは言え、ここまで集めたのだからきっと今は力がなくなってゴミクズ同然となっているに違いない。それならば一発ぐらい『拷問伯爵』フォルター・フェッセルンの端正な顔をぶん殴っておかねば、と魔空回廊内を怒り心頭のカーバンクルが征くが彼の姿は見当たらなかった。

「|人間画廊《ギャラリア》を回収するのに専念しちゃってたから、もしかして先を越されちゃったかなぁ?」
 だが、微かにだがオブリビオンの気配が魔空回廊内に感じられる。何処かに隠れて秘蔵していた美少年の血を啜っているとすれば、厄介極まりないユーベルコードを使ってくるかもしれないので何とか早く見つけたいところである。見落としている箇所がないか確かめようと力を込めて荷車を反転しようとしたその時、何か柔らかいモノに車輪を乗り上げた感覚がカーバンクルの身体に伝わるとカエルのような鳴き声が聞こえた。

『グエっ』
「ヒキガエルでも轢いたのかしら……?」
 だが、ここは地下の人工物に囲まれた魔空回廊だ。近くには水責めの拷問にでも使われたのであろう水槽があるが、覗いてみるとカエルが住んでいる様子などない。カエルを使った拷問と言えば、アース系世界のコメディ番組でやっていた電話ボックスみたいな箱に入れられた出演者の頭上からたくさんのカエルが落ちてくる罰ゲームじみたものを思い浮かぶが……。いや、流石にそんな低俗な所業は拷問伯爵の美意識に反するものだろう。

『び、びしょ……うね、ん……』
 今度は何やらうわ言のような低い声が聞こえてきて、もしやとカーバンクルが荷車に積んでいる拷問具に繋がれた状態で時が止まっているままの少年たちを落とさないように傾ける。乗り上げた車輪の下を確認すれば……そこには焼け焦げたボロボロの服と煤塗れで真っ黒となった肌に成り果てたフォルター・フェッセルンの姿があった。

『赤髪の……びしょう、ねん……フヒ、フヒヒヒヒ……』
「うわ、きもっ! それに失礼ね、私はこうみえてもれっきとした女よ!」
 度し難い美少年愛の妄執が骸の海に往かせず、まだこの世にでも留めていたのだろう。しかし、いくら死に掛けていて元からよろしくない頭の判断能力が落ちているとしても、どこか少年的な容姿のカーバンクルであれば間違えるのも無理のかもしれない。ガーネットのクリスタリアンである彼女であれば、仮に吸血されようとも硬質な|赤褐色《ヘソナイト》の身体に牙が通るかは甚だ疑問であるのだが。

「まぁ、いいわ。やけに長い魔空回廊で探す手間が省けたしね……話終わりました? じゃあ黙ってくださーい」
『もごがが!?』
 彼のすぐ近くに転がっていた『苦痛の梨』とも呼ばれる洋ナシ型の猿轡を鋭い犬歯を覗かせる口に捻り込み、ネジを巻けば本体が縦に分割と展開をして花弁のように開いていく。当然、喋ることはおろか呼吸もままならない状態だが、クリスタリアンの懲罰騎士である彼女の懲罰はこれで済まされるはずがない。

「……少年の時は止めても周りの時間を無駄に消費させたんだ、心底苦しめ変態野郎が」
 拷問伯爵の身体を今も押しつぶしている時を止められていた少年たちの重さは犯した罪以上だと吐き捨て、カーバンクルはスクラップビルダーの性分を発揮させて彼の身体を手枷と足枷を利用して車輪に固定させる。そしてそれを近くの水槽へと転がして落とせば、カーバンクルのユーベルコード『水責め』によって極寒となった水槽内での懲罰が敢行される。
 罪状は身勝手極まりない理由により少年たちの未来を奪い、嘆き悲しみながらも一握りの希望をすがりながら彼らの帰りを待ち詫びてこの世から去っていった縁者たちの哀しみだ。その無念を少しでも晴らそうと、フォルター・フェッセルンが少年たちに行ってきたであろう拷問による処刑を今、カーバンクルが執り行っているのだ。様子を見計らって呼吸のために顔を上げさせるが、当然ながら口膣そのものを塞いでいる機械仕掛けの猿轡によって呼吸もままならず、唯一開かれた鼻孔から肺に入りかけた水を力なく吹き出すだけだ。
 それを三度、四度と繰り返していけば五度目にはフェルターの頭は力なく垂れ下がっており、水に沈めた中で彼の身体は塵と化して意識とともに深き水底へと沈んでいく。攫ってきた美少年を糧に長き時を生きた拷問伯爵フェルター・フォルゼンが、遂に骸の海へと還って行ったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月18日


挿絵イラスト