愛憎相殺、その呪いに祝い在れ
ゴオウ、ゴオオ、と音が響く。それは風の燃える音、業火の荒ぶる音。
カツン、コツン、と音が響く。それは鎚を振るう音、赤鉄を打叩く音。
スパリ、ザパリ、と音が響く。それは頸が落ちる音、鮮血が零れる音。
そこは蹈鞴場、錬鉄の屋代。燃ゆる石炭、細かき玉鋼、数多のモノが腕を振るう。造られるのは、剣、刀、刃。槍でなく、斧でなく、盾でもなければ鎧でもない。ただひたすらに、切るモノ、断つモノ、裂くモノを製造し続けている。淡々と、粛々と。
またそれを創り上げるモノも、者ではなく物である。数多の年月を経て成る、器物の命。宿り神ーーその紛い物。せっせと、せっせと、彼らは砂鉄を銑鉄に、銑鉄を鋼鉄に、鋼鉄を刀剣へと鍛えてゆく。
願うことはただ一つ。求める事もただ一つ。
同胞を、我らと同じモノを、一振りでも多く作り上げよう。
愛憎を、我らと同じ後悔を、一首級でも多く断ち落とそう。
蹈鞴にくべられるは人の肉体。赤鉄を冷ますは人の血潮。奉納されるは人の首級。
怒るのではない、恨むのではない、愉しむのではない。
--ただ、愛するがゆえに。それを求むるがゆえに。
孤独な妖刀は、鉄の生まれるその奥で、静かに佇むのみである。
●
「ある妖刀……正確には、それに魅入られた人斬りが山奥の蹈鞴場を占拠したみたいだ。今回みんなには、占拠された蹈鞴場を奪還し、首魁である人斬りを討伐して欲しいんだ」
集まった猟兵たちに、ユエインはそう口火を切った。サムライエンパイアのさる鉄鉱山に併設された蹈鞴場を妖刀を手にした女が押し入り、職人や雑夫を悉く惨殺。人知れずそこを乗っ取ってしまったらしい。
「それだけなら、まだ話は簡単だったんだけどね……その人斬りは、どうやら自らと同じ存在を増やそうとしているらしい」
残された設備を利用しての妖刀量産。それらは殺害された人命と人斬りの妖気を糧に、同じ性質を持ったヤドリガミへと変じ、また自らと同じ存在を鍛え上げるという行為を繰り返しているという。このまま捨て置けば、彼らは夥しい数の軍勢となって、人里へとなだれ込むだろう。
「でも、今ならば彼らの数もそこまで多くは無い……みんなにはまず、蹈鞴場への潜入と、その破壊をお願いしたいね」
蹈鞴場が無事な限り、彼らは無尽蔵に増殖し続けるだろう。これを壊すことによって、まずは数の増加を止めるのだ。施設の再建には時間がかかるだろうが、後々の事を考えれば背に腹は代えられない。
その後におっとり刀で駆けつけてくる量産型ヤドリガミを蹴散らし、首魁である妖刀を討つのである。
「そうそう。彼らの……というより、元となった妖刀の人斬りの目的を伝えていなかったね。彼女はーー」
誰もが愛する者を自らの手に掛ける。その体験を身を以て感じさせること。
「正直、どういう意味かはよく分からないけど、それが剣呑であることは間違いではない。実際に現場に行けば見えてくるものがあるかもしれないけど……最優先は、彼らを打倒す事だってことは、忘れないでおくれよ?」
そう話を締めくくると、ユエインは猟兵たちを送りだすのであった。
月見月
どうも皆様、月見月でございます。
今回は妖刀使いの人斬りと、その量産型軍団から蹈鞴場を解放していただきます。
それでは以下補足です。
第一章の目的は【蹈鞴場の破壊】です。
その為、フラグメントの選択肢からある程度逸脱しても問題ございません。
蹈鞴場には燃料に使う石炭や薪の集積場、原料となる鉄鉱石の保管倉庫や併設した鉄鉱山の採掘施設、水を引く水路に作業に用いる道具の安置所、心臓部となる蹈鞴などが存在します。これらに対し破壊行為などを行い、刀の製造を停止させてください。
その後に、量産型妖刀、首魁の人斬りとの戦闘となります。
章変更の際には適宜説明シーンを挟みますので、プレイングのご参考にしてください。
それではどうぞよろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『タタラ場を手伝え』
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POW : 獣を追い払い、安全を確保する
SPD : タタラを踏んだり、タタラ場を手伝う
WIZ : 植樹や緑化を行い、自然を守る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鉱山の麓に築かれた蹈鞴場からは濛々と煙が立ち込め、内部より鉄を鍛える甲高い音が響き渡る。
傍には燃料となる木炭石炭に薪、掘り出された鉄鉱石の貯蔵庫や、錬鉄の為の道具の収められた倉庫が建てられていた。様々な用途の為にか細いながらも川や井戸が設えられ、山へ目を向ければ鉱脈へと続く坑道がぽっかりと口を開けている。
それらの場所には、ぽつぽつとではあるが量産された妖刀ヤドリガミと思しき人影が歩き回っているのが見えるだろう。どれもこれも、本来であれば人の為に役立てる道具を作る重要な施設。それが今では、ただ人を切る凶器の増殖場となっていた。
蹈鞴場を壊せば、再建に相応の時間がかかるだろう。
だが、そうしなければより取り返しのつかぬものを失うこととなる。
幸いにも、相手の警戒はいまだ薄い。まばらな視界を避け、悟られぬうちに必要な設備を破壊し、邪悪なる計略へと歯止めを掛けるのだーー。
政木・朱鞠
【WIZ】緑地化のお手伝い
武器に限らず農具やお鍋や包丁のような日用の道具を生み出す時にも自然に対してちょっと代償を払ってもらう事が増えるからね…。
少しでも自然と製鉄技術とのバランスが崩れたりして木々の衰退の進行を防ぐために植樹や花壇の整備とかをお手伝いしようかな…。
先読みによると実行犯のメンバーには我が家の家宝にまつわるオブリビオンが含まれているみたいだし…常に敵からの襲撃に備えて警戒は怠らないよ。
襲われた時に、一般の人を避難させる時の目くらましとして使う為に一応『フォックスファイア』を用意しておくよ。
太平の世を乱して罪なき人を泣かす悪者さんにはその身の咎をキッチリ償ってもらうんだからね!
●長き目線、されど今すべきこと
蹈鞴場を始めとする、金属精製の施設というものは、得てして周囲の環境を破壊するものである。燃料となる木炭を作るために大量の木々を伐採し、また蹈鞴場から立ち上がる煙に含まれる有毒成分が森を枯らし、漏れ出る鉱毒が土壌を汚染する。
「武器に限らず、農具やお鍋や包丁のような日用の道具を生み出す時にも、自然に対してちょっと代償を払ってもらう事が増えるからね……」
で、ある為、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)が行おうとしていることは、ある意味では決して間違ってはいない。彼女は蹈鞴場の周囲に広がる森の一角、ぽっかりと空いた空間に立っていた。周囲には伐採されたばかりと思しき切り株が無数に並べ立てられている。
「自然と製鉄技術とのバランスが崩れたりして、木々の衰退が進行してしまわぬよう、少しでも植樹や花壇の整備とかをお手伝いしようかな」
森の木々とは自然が生み出した自浄装置でもある。それの回復を手伝う、というのは長い目で見れば人々の益になる。確かにそれは正しいのではある……が。
「っ、殺気!?」
ぞわりと、うなじを刺す様な気配を感じ取った朱鞠は、園芸道具を手離し飛び退る。刹那、すぱんという音と共に切り株が縦一文字に断ち切られた。見るとそこには数名の刀を手にした人間、否、量産された妖刀ヤドリガミの姿があった。恐らく、薪を集めに来たのだろう。
「人、ひと……頸を、断て」
「肉を炉に、血を桶に……」
譫言の様な言葉をつぶやくものの、急造品の性か知性はあまり高くないようだ。しかし、全身からにじみ出る殺意と執念は、決して侮ってはいけない相手であると朱鞠は感じ取る。
「一応、警戒しておいて助かったかな……太平の世を乱して罪なき人を泣かす悪者さんには、その身の咎をキッチリ償ってもらうんだからね!」
彼女は幾つもの狐火を呼び出すとそれを相手へと投擲、目を眩ませながら森へと身を投じる。量産型妖刀たちもその気配を追うように、ぞろぞろと森へと入ってゆく。
当初の目的である『蹈鞴場の破壊』という点において、朱鞠の行為はそこまで関わりのある内容ではなかった。しかし、彼女につられて量産型妖刀が蹈鞴場を離れたことにより、後に続く仲間達へ対する監視の目が減ったことは、後々良い方向へと響くことだろう。
苦戦
🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
愛する者を自らの手に掛ける…?
現状よくわかりませんね。蹈鞴場に踏み込めばその答えが見えてくるのでしょうか?
まずはUCの妖精ロボを蹈鞴場上空に飛ばし、地理や妖刀ヤドリガミの配置を把握。「破壊工作」に効果的な箇所と潜入しやすいルートを割り出します
この情報は他の猟兵にも渡せればよいですね
防具改造で目立たない様、暗色の全身を覆うマントを羽織り、関節部の消音機能を向上させ潜入します
マルチセンサーから収集する情報を基に接近する見張りの位置を「見切り」石炭等の燃料貯蔵庫に爆弾を設置します
起爆は他の猟兵が重要施設に潜入する際の陽動となるタイミングで
……これでは騎士ではなく傭兵の所業ですね…猟兵としてこなします
●天の目、燃え上がる焔
「……愛する者を自らの手に掛ける? 現状の情報では、まだよくわかりませんね。蹈鞴場に踏み込めばその答えが見えてくるのでしょうか……?」
周囲に広がる藪の中へ鋼鉄の身を隠しながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は疑問を口にする。ともあれ、それについては内部へと踏み込み、敵と対峙すれば自ずと分かる事だろう。
「うん、これは……?」
と、その時。彼が上空へと飛ばして情報を収集させていた妖精型ドローンより、状況に変化があったとの報告が入る。量産型妖刀のうち何体かが森へと向かい始めたのだ。それが仲間の猟兵によるものだと分かると、彼は行動の開始を決断した。
「相手の位置情報と、最適な侵入経路を試算……他の方々にも共有して、と。では、行きましょうか」
情報を取り纏めて仲間達へと共有すると、トリテレイアは暗色の外套を頭からすっぽりとかぶり、身を隠しながら蹈鞴場へと接近する。各関節の消音機能を起動させ、音もなく滑らかに侵入経路を進んでゆく。
(始めから蹈鞴場を狙うのはリスクが高いでしょうからね……騎士を狙うのであれば、まずは馬を射よ。であれば、まずはここから手を付けましょうか)
幸いにも、相手はまだ猟兵たちが攻撃を仕掛けているとは認知していない。その為、相手の数が減ったのも相まって、彼は目的の施設である石炭や木炭の保管庫へと無事侵入に成功する。
「これだけ可燃物があれば、さぞよく燃えてくれるでしょうね。他の方々が行動しやすいよう、出来れば陽動にも利用したいですが……」
ふと、トリテレイアはうっすらと埃が舞っているのに気づく。機械の体ゆえ感じにくかったが、よくよく見ればそれが炭の粉末であると分かった。妖刀たちも本職の鍛冶師ではない、恐らく雑に扱った結果だろう。一方で、彼はこれを利用することを思いつく。
「となると、もう少し濃度が欲しいですね」
彼はガリゴリと炭を砕き粉末にして周囲へと振りまくと、侵入した時と同じように音もなく外へと脱出する。
「……これでは騎士ではなく傭兵の所業ですね。せめて、猟兵としてこなしますか」
苦笑するトリテレイアは十分に距離を取るや、信号を送り爆弾を起爆させた。
刹那、倉庫の屋根を吹き飛ばし轟音と共に巨大な火柱が吹き上がる。だが、手持ちの爆弾と炭だけではここまでの規模にはならない。炭塵爆発。炭鉱などで発生しやすい災害を、人為的に起こしたのである。
「陽動としては、十分な効果があったようですね」
妖精型ドローンからは、俄かにざわめき始める蹈鞴場内の様子が伝えられてくるのであった。
成功
🔵🔵🔴
加賀・琴
アドリブ歓迎です。
妖刀使いが蹈鞴場で妖刀を量産ですか。なんというか、その、よく一人でやれますね?
変な感心をしてしまいましたが、放置出来ないのは確かですし。なによりも、もう多くの血が流れた以上、これ以上の犠牲を出すわけにいきませんね。
まず、見つからないように隠れて動いて、蹈鞴場の浄化を試みてみますか。
この場の邪気を祓えば妖刀の量産に支障が出るかもしれませんし。
『破魔』の『祈り』を込めてお祓いの儀式をしてみます。
その後、効果があってもなくても血と妖気がこびり付いた場所に【破魔幻想の矢】を『2回攻撃』で放ちます。
合計38本の破魔の矢を射れば物理的にも呪術的にも大抵の施設は破壊できるはずですからね。
フィーナ・ステラガーデン
※フィーナと宿敵については初対面。何の関係もありません
アレンジ、アドリブ、連携大歓迎
(深淵のブラックオニキスを杖に取り付けつつ、開放はしない)
なんかよく分かんないけど、これ(蹈鞴場)を好きに壊していいのよね?
思い切り暴れれるのは良いわね!派手にいくわよ!
そうねえ。壊せるなら私はどこでもいいわ!
でも水があるところは苦手だし、やっぱり大事そうな所(蹈鞴)を狙いたいわね!
「範囲攻撃」をいれたUCでどかんどかんと壊してやるわ!
んふふーっ!これはゴキゲンだわ!!
一応援軍にも気を使っておこうかしら!
なんか敵っぽいのが一緒にきたら一緒に吹き飛ばせばいいわね!
下敷きにしても、そのままUC当ててもいいわ!
●蹈鞴、風巻き燃ゆる心臓部
「妖刀使いが蹈鞴場で妖刀を量産ですか。なんというか、その、よく一人でやれますね? 今でこそ、配下を増やしてはいるんでしょうけど……」
燃料保管庫の爆発を受け、ぞろぞろと量産型妖刀が対応の為にそちらへ駆け出してゆくのを眺めながら、加賀・琴(羅刹の戦巫女・f02819)はそう一人ごちる。その横ではフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が愛用の杖の先端へ、魔力の籠った黒瑪瑙をはめ込んでいた。
「なんかよく分かんないけど、蹈鞴場って、どこでも好きに壊していいのよね?」
「ええ……ですが、単純に壊すだけならいいのですけど」
「壊せるなら私はどこでもいいわ! 思い切り暴れれるのは良いわね! 派手にいくわよ!」
大きな騒ぎになってはいるものの、ここまでならばまだ事故の範囲内だ。狙い通り、相手の注意は保管庫に集中しており、蹈鞴場はがら空きとなっている。二人は言葉を交わしながら、警戒を緩めることなく心臓部である蹈鞴場へと足を踏み入れた。
「これは……」
琴がまず感じたのはむっとする熱気。製鉄方式の中では低温の部類とは言え、鉱石を溶かす熱量である。ある意味当然だ。だが目を引くのは、もっと別の物。
それは断ち落とされた首であった。恐らく鍛冶職人や雑夫のものだろう、苦悶の表情を浮かべてた頭部。無数のそれらが蹈鞴の周囲へ、まるで供え物のように並べ立てられていた。赤々とした炉の中へ視線を向ければ、灰になりかけの人骨が見えるだろう。
「うわぁ~、なんとも悪趣味ね。冬だからまだマシだけど、夏なら目も当てられないわよ……あら?」
フィーナがまじまじと首を観察していると、微かにではあるが口元が紅い事に気が付く。血痕ではない、化粧等に使う紅だ。それを使うのは当然女性で、首はどれも男。そして首魁が女となると、自ずと答えは見えてくる。
「……本当に悪趣味ね。生首相手に何をやっているんだか」
「残念ですが、これだけの首を持って行動するのは無理です。ならばせめて、その無念と邪気だけでも祓いましょう」
単純な熱気だけではない、精神的を逆撫でするような穢れが蹈鞴場には充満している。犠牲者たちの供養も兼ねて、どのみちこれを浄化しなくてはならない。犠牲者の無念と満ちる邪気こそが、妖刀量産の要因なのだから。
「……諸々の禍事、罪、穢有らむをば、祓へ給ひ清め給へと白すことを聞こし召せと、恐み恐みも白す」
御守りを手に紡がれるは、破魔の祈りを込めた琴の祝詞。朗々とした響きが蹈鞴場に木霊すると、粘つくような不快さがゆっくりと和らいでいった。
「これで、妖刀を生み出す源は祓えたはずです」
「よーし、そうと決まれば思いっきり壊してやろうじゃない。さあ、消し飛べえええええええええ!!」
最早憂いもないと、フィーナは手にした杖に魔力を収束させ、一気に開放する。凄まじい大火力が炸裂、蹈鞴の踏板、燃えたぎる炉、粘土製の基部などが纏めて吹き飛ばされ、鮮血の如く熔鉄が周囲へとまき散らされる。
「少し心苦しいですが、この建物ごと倒してしまいましょう。遠つ御祖の神、御照覧ましませ」
生み出されるは二対十九組三十八本の破魔矢。一斉発射されたそれらは、周囲の壁や柱を穿ち、蹈鞴場自体を崩壊させんと狙う……が。
「何を、しているのでしょうか?」
「っ、危ないっ!」
ひゅんと風切り音が耳朶を打つのと、フィーナが琴を押し倒すのがほぼ同時。地面に倒れ込み間一髪で攻撃を避けた二人は、紅の着物に身を包んだ女を視界に捉える。その威圧感と手にした妖刀から、それが今回の騒動を起こした人斬りだと一目でわかった。
「愛しているから、殺すのか。殺したから、愛せたのか。その検証に、付き合ってくれた方々でしたのに……もう、感じられませんね」
「悪いけど、アンタの相手はまた後で! 今は付き合っていられないわ!」
このまま女の相手をしたとしても、すぐに増援を呼ばれ敵中で孤立するだけ。フィーネはそう判断するや天井を破壊して相手の足止めをすると、琴と共に外へと駆け出す。崩れゆく蹈鞴場の中にいる相手が追って来ないことを確認しながら、外へと脱出し。
「これは、また……派手にやられましたね」
琴が感心と驚き交じりに目を開く。彼女たちの視線に映っていたのは、別行動をしていた猟兵たちによる行動の成果……一面水浸しとなった蹈鞴場周辺の地形であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
勘解由小路・津雲
【ヤド箱】で参加予定、他の猟兵とも共闘・アドリブ歓迎
蹈鞴場を破壊、か。やむを得ぬこととはいえ、胸が痛む。ヤドリガミの身であってみれば、なおさら。……だがためらっている場合ではない、か。
■行動 まず薪の集積場と水路の位置を確認。【エレメンタル・ファンタジア】で氷混じりの雨を降らせ、薪の集積場の屋根を破壊、薪を濡らす。「氷帝招来、急急如律令!」
濡らしただけでは本格的な破壊とはいえず、時間稼ぎくらいにしかならないだろうが……。さらに水路を「玄武の錫杖」の力も借りて徹底的に凍らせる。いずれも破壊とはいえなくても、しばらく機能不全に陥らせることはできるだろう。「とりあえずはこれで……」
當良邑・祈
山側から蹈鞴場を見渡し、地形を見定める。
高低差、建物の配置、
潜入し資材の位置を少しずつ動かしていく、ある物は巻き込まれやすいように、またある物は道を作るようにして。
そうして川の上流へと戻る、予めレプリカクラフトで作り出した堤防で流れをせき止めておいた。
すべて壊してしまっては奪還の意味もなくなる敵の作業を止める程度に、また破壊活動から延焼しすべてが燃え尽きつことがないように、頃合いを見計らって堰を切って濁流をなだれ込ませる。
敵そのものには大した被害もないだろうが、ソレくらいでないと施設もダメになってしまうだろう。
多くの人が苦心して作り上げたろうモノだ、可能な限り破壊は避けたい
(連携改変等々歓迎)
ペイン・フィン
【ヤド箱】で参加、他の猟兵とも共闘・アドリブ歓迎。
…………呪うためだけに生まれたものなんて、どうせ、うまくいかないのに……。
……ああ、いっそ、哀れだね。
コードを使用。
今回は、自分の装備している、全部の拷問具を複製。
潰して、斬って、砕いて、焼いて、
電撃で、鉤爪で、重石で、毒湯で、
蹈鞴場の中心に立って、周囲を破壊していこうか……。
もちろん、仲間に攻撃は行かないようにしつつ……ね。
……ごめん、ね。
雛菊・璃奈
妖刀と聞いてやってきたよ…。
相手が妖刀であれば、わたしの専門だしね…。
普通、妖刀がそこまで手の込んだ事するなんて珍しいんだけど…。
でも、見過ごすわけにはいかない…必ず止めてみせる…。
【狐九屠雛】を展開し、蹈鞴場の施設各所を凍らせて使えなくするよ…。
わたしの霊火は絶対零度の炎…炎さえも凍てつかせる…。
【視力、第六感、見切り】で働いている量産ヤドリガミ達の動きや周囲の様子を観察し、できる限り静かに忍び込む隙を伺って侵入…。
後は水路や各施設を【狐九屠雛】で凍らせて使えなくする…。
敵のヤドリガミも不意打ちで声を挙げられる前に凍らせてしまえば敵を集める心配もないしね…。
※アドリブ歓迎
ファン・ティンタン
【ヤド箱】で参加
他の猟兵との協力も含め、共闘は【コミュ力】を発揮して臨機応変に
妖刀のヤドリガミ、か……
思うところがないことも無いけれど
道を外れたら、誅されても仕方ないよ
仲間の踏鞴場破壊工作までは辺りを彷徨く妖刀のヤドリガミに警戒
余裕がある場面では【天華】や【無銘】への【力溜め】を怠らず、今後の戦闘に備える
予め、山林の【動物と話す】ことで妖刀達の気を逸らす助力を仰ぐ
後で美味しい物あげるから…ね?
あぁ、でも…命まで賭ける危ないことまでは、しないでね
敵にこちらの行動がバレれば、迎撃をさせぬ間に【早業】で斬り伏せる
敵まで距離があれば【白刃の矢】で無力化を狙う
急造のヤドリガミに、格の違いを見せてあげるよ
オブシダン・ソード
剣のヤドリガミとしてはお仲間が増えるのは歓迎…でもないな
あんまり仲良くなれなさそうな増やし方だし、ライバルが増えるのは阻止させてもらうね
動機はわかんないけど、増やすにしてもやり方が良くないよ、やり方が
施設としては、もう既に大分仲間が暴れた後みたいだし、僕は備蓄の方を狙おうかな
薪を取りに行った奴が居るなら、隠れて戻るのを追えば薪と石炭の備蓄場所が割れるでしょ
運び手が去るか、去らないなら最低人数を斬って通過し、
UCを打ち込んで着火
いやあ、さすがに良く燃えるね、勿体ないなぁ
でも、まぁ、望まれない仲間が生み出され続けるよりはいいよね
その他、協力できる猟兵が居れば手を貸すよ
●燃え盛り、流れだし、凍てつきゆく
さて、時間軸は少し巻き戻る。蹈鞴場が撃ち壊される前、燃料保管庫が爆破されたのとほぼ同じ時刻。響き渡る轟音を耳にしながら、當良邑・祈(サイボーグの化身忍者・f09602)は人目を忍びながら敷地内を動き回り、各所に保管された資材へと細工を施していた。
「余り派手に壊しては後々に響きますが、かといって一か所に留まってしまっては効果がなくなってしまう……さじ加減が難しいですね」
あるものは衝撃を受ければ、崩れやすいように。またあるものは通り道を作るかのように空白を生み出す。一見すれば雑に置かれているだけにも見えるが、分かるものが見ればある意図を持ってそうされているのが感じ取れるだろう。尤も、それに気づけるだけの能が量産型妖刀にあるかどうかは疑わしいが。
「さて、仕掛けはこの程度でよいでしょう……どうやら、他の方々も動き出したようですしね」
祈は目的を達すると悟られぬことなくその場を離脱し、川上の方角へと舞い戻ってゆくのだった。
●
「剣のヤドリガミとしてはお仲間が増えるのは歓迎……でもないな」
燃料保管庫とは別方向。木炭製造用の薪を保管している集積場の中で、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)はそう眉を潜める。
「あんまり仲良くなれなさそうな増やし方だし、ライバルが増えるのは阻止させてもらうね。動機もわかんないしさ」
増やすにしてもやり方が良くないよ、やり方が。そう呟きながら、彼は薪を燃えやすいように組み上げてゆく。切ったばかりの薪は水分を含み燃えにくい。ゆえに空気の通りを良くし、酸素が十分に行き渡る様にしなければ、炎が中々広がらないのである。
「ま、これだけ組んでおけば大丈夫かな。あとは火力で補おう」
ぽつぽつと生み出されるは魔力により編み上げられた炎の矢、その数都合百と十。それらは薪の山へと射出され無数の穴を穿つや、ぶすぶすと白い煙を挙げ始める。
「いやあ、これだけ撃てばさすがに良く燃えるね、でも少し勿体ないなぁ……まぁ、望まれない仲間が生み出され続けるよりはいいよね?」
この調子であれば、そう間も置かずに火の手が上がるだろう。濛々と煙が充満しつつある室内から、オブシダンは早々に離脱する……が。
「煙、薪に火か……お前がやった?」
「邪魔を、する? 憎い、憎い、憎い……殺せば、愛す?」
燃料庫の爆発により、量産型妖刀の大半が消火へと向かっている。その一方で、延焼を警戒した個体も居たようだ。目ざとく煙を見て駆けつけた量産型と、オブシダンは運悪く出くわしてしまう。
「おっと、これは不味いかな。話す内容も気になるけど、ここは」
彼を火付けの下手人と察知した妖刀たちが得物を構える。だが予期せぬ遭遇をした物と、初めから相手の存在を換算している者、咄嗟の対応には天と地ほどの差が生まれる。己が本体である黒曜石の剣を構えるや、相手の妖刀目掛けて素早く振りぬいた。鉱石と鋼鉄、強度の差など歴然ではあるが、それだけで勝敗を測れるほど戦いは単純ではない。
「重ねた年月が違うよ、お仲間さん?」
両者が交錯し、ぱさりとオブシダンの纏ったマントが翻る。フードをかぶり直しながらその場を離れる彼の背後には、中ほどから断ち切られた妖刀が地面へ転がるのであった。
「相手の動きも慌ただしくなってきたね……他の仲間も見つかっていなければ良いけれど」
●
「妖刀のヤドリガミ、か……思うところがないことも無いけれど。道を外れたら、誅されても仕方ないよ」
物陰に隠れながら、ファン・ティンタン(天津華・f07547)は量産型妖刀の拙い消火活動を、唯一開いた左目で見守っていた。
彼らは桶や柄杓を手に水を掛けていたが、燃え盛る炎とはまるで釣り合いが取れていない。まともな消火設備がないことに加えて、近くに引かれている水路の水量がなぜか極端に減っていた為、使えるのが井戸水しかないためである。
また、それに加えて突如として現れた鹿や猪、猿に鳥が敷地内を縦横無尽に走り回り、妖刀の作業を妨害していたことも大きな要因であった。
「こちらの頼みを聞いてくれて、助かったよ……食べ物の少ない冬だったのは、運が良かったというべきかな」
いま状況を生み出したのは他ならぬファン自身である。彼女は事前に山野の動物と交渉し、餌と引き換えに協力を取り付けていたのだ。尤も、単に利用しているだけでないのは、彼女の柔らかい表情を見れば一目瞭然であった。
「消火と動物の対処で手一杯、といった様子だね……いや、あれは」
大小二振りの太刀へ力を籠めつつ、ファンは刃を抜く必要はなさそうだと判断する。しかし一方で、彼女は視界の端に良く知る赤毛の少年と数体の量産型妖刀の姿を認めた。
「後で美味しい物あげるから……ね? あぁ、でも……命まで賭ける危ないことまでは、しないでね。気を引くだけで十分だよ?」
彼女は傍らに駆け寄ってきた山犬の背中をそっと一撫ですると、視線の先へと送り出すのであった。
●
ファンの視線の先に居たのは、同じ旅団に属するペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)であった。彼は燃料庫とは別方向から敷地内へと侵入、自らの持つ拷問器具を多数複製し、目につく物を片端から破壊して回っていた。
「……ごめん、ね」
巨大な石塊で押し潰し、焼き鏝の蒼炎で燃やし、手にしたナイフで切り刻み、目につく柱を、二枚板を螺子で締め上げる膝砕きで破砕する。壊れてゆく施設を前に、そっと口の中でそう呟き謝罪するペイン。
その手際は見事ではある。だが隠密性には乏しく、どうしても些か以上に目立ってしまっていた。結果として、彼は消火に駆け付けようとした量産型妖刀たちと鉢合わせしまう。
「人……ひと? 同じか、我らと同じ」
「傷つける物、殺す物……だが、似て非なる」
「…………呪うためだけに生まれたものなんて、どうせ、うまくいかないのに……」
首を傾げながら刀を抜く量産型に対し、侮蔑と悲哀の混じった視線を向けるペイン。このまま彼らを素通しにすれば、猟兵の存在が露見してしまうだろう。いつかばれてしまうのは必定だが、それは遅ければ遅いほど良い。
「……ああ、いっそ、哀れだね」
彼は微塵も迷うことなく、相手の排除を決断する。九条の軌跡を描く鉤爪鞭で相手を引っかけるや、スタンガンで動きを封じ、毒湯を浴びせて悶えさせる。しかし、偶発的遭遇だったオブシダンと違い、相手は組織立って消火活動を行おうとしていた為に数が多かった。
ペインも手数を増やすも、それを操るのは結局のところ一人。囲まれて刃を振るわれれば、対応しきれない箇所も出てくる。それでも最小の傷で彼は攻撃をいなしてゆくも。
「愛しきを殺せ、憎きを断て……」
「っ!」
死角より肉薄してきた量産型が、大上段より刃を振り下ろす。ペインは避けきれないと判断し、せめて傷を浅くしようと身構えた……瞬間。
――ヴォオオン!
がくんと相手の体勢が崩れ、攻撃が逸れた。見ると相手の足元へ、山犬が食らいついていた。獣が向けてくる視線からファンの遣わした援護だと理解すると、ペインは山犬と共に包囲を脱する。
「……ありがとう、助かったよ。さぁ、続きを……え?」
感謝を述べつつ戦闘に戻ろうとするが、山犬に袖を引かれて立ち止まる。彼の視線から言葉無き意思を読み取ったペインは、思わず山へと視線を向け――。
●
「さて、頃合いですね……」
引かれた水路の上流、水源近く。小高くなったそこから蹈鞴場を見下ろす祈は、今が好機と判断する。
「溺れ死ぬ程の量ではないですし、蹈鞴場を押し流す程でもありませんが……みなさん、お気を付けを」
警告を発しながら、彼女は得物を構え――水路の流れを留めていた堰を破壊した。
溢れ出る水流は坂を下り加速すると、事前に祈りによって整えられた進路を辿り、濁流となって蹈鞴場へと流れ込んでゆくのであった。
●
「蹈鞴場の破壊、か。やむを得ぬこととはいえ、胸が痛んだが……警告があったとはいえ、これはある意味壮観だな」
小高い場所に陣取っていた勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は目の前の光景に舌を巻く。眼前には踝が浸る程度の濁流に浸食されてゆく蹈鞴場の惨状が広がっていた。いち早く危険を察知した獣たちは既に退避し、足を取られるのは妖刀たちばかり。
祈の言う通り溺死する程ではないが、流水は機動力を奪い、ぬかるんだ地面へ足が沈み、運の悪い相手は細工の結果流されてきた資材で足を打ち、その場に転んで藻掻いている。
「ためらっている場合ではなかった……が、これ以上は過ぎるというものだろう」
この有様では妖刀量産を続行するなどもう不可能だ。であれば、これより先の破壊は無用。津雲は薪の集積場へと狙いを定めると、錫杖を頭上へと掲げる。
「氷帝招来、急急如律令!」
ぽつぽつと降り始めるは、氷交りの雨。それは瞬く間に豪雨と化して集積場へと降り注ぐ。凍てつき硬度を備えたそれらは銃弾の如く屋根を食い破るや、炎の中へと飛び込み濛々と蒸気を噴き上げさせる。それにより急速に火災は収まっていった。
「こうしてみると、随分と大がかりな計画だったね……。普通、妖刀がここまで手の込んだ事するなんて珍しいんだけど……見過ごすわけにはいかない……」
相手が妖刀であれば、わたしの専門だしね。その横では全体を見渡して相手の計画を分析しながら、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)がぴくぴくと耳を動かしていた。彼女は周囲が水に満たされながらも、いまなお大気を灼いて天高く火柱を上げる燃料保管庫へと意識を集中させる。
「わたしの霊火は絶対零度の炎……炎さえも凍てつかせる……。石炭の熱くらいじゃ、溶けはしないよ……?」
雨に掻き消えることなく、瑠奈の周囲に白炎が生じる。立ち昇る湯気は蒸気でなく絶対零度の凍気だ。都合二十六個の凍てつく白炎は保管庫で燃え上がる紅炎と溶け合い、焔の形のまま氷を形作ってゆく。数度瞬きし終える頃には、燃料庫には揺らめく氷柱がそびえたつのであった。
「さて、これで延焼の心配はなくなったが……このままではこちらの身動きもままならないな」
「水をそのまま、凍らしてしまえば良いんじゃないかな……滑るかもしれないけど、ぬかるんだままよりもマシだと思うよ……?」
「ふむ、そうだな。その方が施設をこれ以上傷つけないまま、相手の思惑も妨害できる、か。よし、その手でいこう」
瑠奈の提案に頷くと、津雲は共に高台から蹈鞴場へと降りてゆく。水流を凍らせ足場とするにしても、わざわざ優先して量産型妖刀の側に作る義理は無い。彼は同じ旅団の仲間であるペインやファンの元まで近づくと、玄武の霊力を籠めた錫杖を水面へと突き立てる。すると、そこを中心としてピキパキと水面が凍ってゆき、瞬く間に分厚い氷へと姿を変えた。
「……水浸しでどうしようかと思っていたところだった……ありがとう」
「事前に情報は入っていたけれど、聞くと見るとでは大違いだね。動物たちも直前に逃げてくれたし、みんな無事なようで何よりだよ」
足元を確かめながら、互いの無事を一先ず喜ぶ【ヤドリガミの箱庭】の面々。その一方で、周囲に充分な広さの足場を作り終えた瑠奈は、のろのろとした足取りでこちらへ近づいてくる量産型妖刀に視線を向けていた。
「穢れが消えた……愛を増やせ、贄を炉にくべろ……」
「これ……そのまま足元を凍らせてしまえば、身動きを封じられないかな……?」
失敗したところで損は無し。彼女は再び絶対零度の炎を放ち、量産型用妖刀の足元を凍らせてゆく。だが、それが妖刀たちの足元を完全に凍らせようという、寸前。
「赤鉄より生まれるも、我らが身は氷雨を纏う……」
妖刀たちは器用にも足元を丸く削り取るや、足を引き抜き氷の上へと仁王立つ。さっと周囲を見渡すと、眼前の相手だけではなく蹈鞴場周辺や森の方まで散っていた妖刀たちも騒動を受けて集まり始めているらしかった。
「流石に、そう甘くいかない無いようだね……」
「元々、半分妨害目的でしたからね……足場の作成、感謝します」
堰の後始末を終えて合流してきた祈が、感謝を述べつつ瑠奈の横へと降り立つ。他方ではオブシダンも氷の上を危なげなくかけて駆け付けていた。
「いやぁ、集積場がいきなり鎮火して驚いたよ。さて、ここからが本番かな?」
「ああ、そのようだ。杞憂だと思うが、足元には気を付けてくれ」
背中を預けながら得物を構えるオブシダンと津雲を始めとする猟兵たちを、ぞろぞろと量産型妖刀が四方より取り囲む。それに対し、ファンは臆することなく力を溜め続けてきた双刀を抜き放き、ペインも拷問具を展開する。
「良いだろう、ここからは小細工でなく、こちらで語り合おうか。急造のヤドリガミに、格の違いを見せてあげるよ?」
「一振り残らず、元の鉄片へと戻してあげようか……」
その言葉を皮切りに、両者は氷上で激突するのであった――。
成功
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第2章 集団戦
『模倣刀『偽村雨』』
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POW : 雹刃突
【呼び起こした寒気】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 怨呪流血斬
自身に【過去の被害者の怨念】をまとい、高速移動と【止血し難くなる呪い】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 氷輪布陣
【氷柱】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を凍らせて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ざりざりと、ざらつく氷の上を摺足で歩きながら、量産された妖刀たちが間合いを測って来る。急造品の為、彼らに複雑な思考や高度な連携を行うだけの知性は備わってはいない。
だが、人を斬ることへの執念という点においては、元となった妖刀使いの人斬りとなんら遜色はないだろう。ぶつぶつと譫言の様な言葉を漏らしながらも、その所作は熟達した剣士のそれである。
また足場が凍っていたとしても、元々の能力として寒波や凍気といった属性との相性は決して悪くは無いようでもある。それを使えば、火災もすぐさま鎮火できたのではないかとも思うのだが……。
「愛しき者こそを断て……故に憎きも切り捨てられる」
「……一人殺さば、一人を殺せ。愛も憎も相殺せよ」
一見不合理な行動も、彼らなりの妄執の結果か。元となった人斬りであれば、もう少し柔軟な対応も出来たのであろうが。
兎も角として、ここで時間を掛けてしまえば件の人斬りまで増援に現れかねない。両者が合流される前に、群がる量産型妖刀たちを討ち果たすのだ。
宴・段三郎
かわいそうに…むごい事をする
急造故か、妖刀としてはまずまずじゃが…
刀としては不出来な部分が多いの…
刀鍛冶としてやや子は救わねばの
さあやや子等よ、火炉に帰れ
この化生炉を見よ。
ここは暖かな場所じゃ
まずは囲まれないように動きながら攻撃を仕掛ける
【残像】を使い攻撃は避けよう。
できれば仲間との連携重視で動きたいのう…
頃合いを見て「無象鍛刀」と詠唱し、化生炉の焔を展開したユーベルコード『屍山血河』を発動し、鍛刀を開始する
やや子たちを救い、一振りの妖刀を鍛刀することが儂の今回の目的。
ヤドリガミを一人残らず集めて一振りの妖刀へ昇華させる
できたら号も付けたいの
そこはMSに任せるがの
愛故におんしらを鍛刀しよう
當良邑・祈
機械脚を展開し、斬りかかる。
四脚で多少マシとはとはいえ不安定なことに変わりない。
いっそ、ロープを利用し円運動やウインチの巻取りでスケート移動して敵の間を滑り抜けていくのもアリか。
愛憎相殺か…道具は、武器は、技術は、作り手の望む望まぬに関わらず、時に人を傷つけ大地を汚し世を乱す。それでも、模倣品のコイツラに、道具に使われているようなヤツラに説かれる理ではない。
それでもその道理には心のどこかに引っかかる、が単純な思想と妄執の化身、プロパガンダの貼り付けられたただの道具が相手だと割り切る。オリジナルと相まみえる前から恐れていたのでは話になるまい。
(改変連携苦戦等々歓迎)
雛菊・璃奈
愛を切り捨てた者に本当の強さは宿らない…。
あなた達の理屈は理解できないけど…あなた達をこのままにしておくわけにはいかない…。
わたしの魔剣、妖刀達…ここで止めるよ…。
自身の妖刀・魔剣達に【呪詛】を送り増幅…。
数多所有する呪いの武器を駆使して戦闘…。
黒桜の呪力解放で【呪詛、衝撃波】で【なぎ払い】。
バルムンクによる【衝撃波】を纏った【鎧無視】の一撃で敵の防御ごと断ち切る。
敵の攻撃は【見切り、第六感、オーラ防御、呪詛耐性】で回避または防御。
最後は凶太刀と神太刀の二刀による【呪詛、早業、2回攻撃】と【妖剣解放】の高速連撃で敵集団を全て斬り捨てる…。
呪いはわたしの力…さぁ、もう眠ると良い…。
※アドリブ歓迎
●刃の在り方――歪み、穢れ、捻じくれる。
「かわいそうに……むごい事をする。妖刀としてはまずまずじゃが……急造故か、刀としては不出来な部分が多いの」
自らを取り囲む量産型妖刀へ視線を向けた宴・段三郎(刀鍛冶・f02241)が胸中に抱くのは、敵意でも戦意でも無く憐れみ。一瞥しただけで、彼は造りの甘い個所や雑な仕上げを見つけている。刀匠として、そのような所業を許容することなど到底できなかった。
「愛憎相殺……道具は、武器は、技術は。作り手の望む望まぬに関わらず、時に人を傷つけ、大地を汚し、世を乱します。それでも模倣品のコイツラに、道具に使われているようなヤツラに説かれる理ではありません」
「ええ……愛を切り捨てた者に本当の強さは宿らない……。あなた達の理屈は理解できないけど、このままにしておくわけにはいかないよ……」
己が名と同じ構えを祈が取るや、脚部が変形し四脚を展開。内蔵された刃が二振り飛び出し、戦闘態勢を整える。また同様に、瑠奈も幾振りもの妖刀、魔剣をいつでも抜き放てるように、呪詛を籠めつつ鯉口を切った。
本来であれば、彼らは職人の手によって瑕疵なく鍛えられるはずだった。それが流血に穢され、呪いに捻じ狂い、在り方さえも穢された。妖刀らを元に戻すには、一度破壊してやるより他にない。
「足元は不安定ですが……こうした状況であるからこそ、出来る戦い方もあります」
まず最初に状況を動かしたのは祈。彼女はワイヤーフックを射出するや、それを手近な柱へと引っかけてウィンチで巻き上げる。滑らかにとはいかないが、引き寄せられる力を使い氷上を滑走し始めた。彼女は双刃ですれ違い様に量産型を切り裂き、相手の陣形をかき乱してゆく。
「刃の報いは己に返る……最後に殺すは己自身」
攻撃を受け止めた刀身が欠け、傷つくも妖刀たちが動じることは無い。あるいは保身という本能すらも備わっていないのか。量産型は己の本体で空を裂く。刃を当てるのが目的ではない、本命はそれにより呼び起こされる寒波だ。手数を重視したそれは祈の全身へ霜を張り付かせ、動きを鈍らせてゆく……が。
「……刀鍛冶として、やや子たちは救わねばの」
祈のかき乱した敵陣の間隙を、残像と共に段三郎が駆け抜ける。彼の手に握られしは身長に伍する、大鎚と見まごう大太刀。刀身より滲み出る炉の如き熱が、仲間を襲う冷気を相殺してゆく。
「さあやや子等よ、火炉に帰れ。この化生炉を見よ。ここは暖かな場所じゃ」
「おお、おお。愛されること、それを求め……故に頸を断つべし」
その暖かさへ惹かれる様に妖刀たちが段三郎の元へと引き寄せられてゆく。だが、彼らはそれを良きものだと認めながら、手にした刃を小柄な体へと振り下ろした。
「好ましいと思う相手ほど、切り捨てたくなるか……その歪な在り様を、ここで止めよう……黒桜、バルムンク」
しかして、凶刃が少年へと届くことは無かった。両者の間へ割って入った瑠奈の薙刀状の呪槍が、それを受け止めていたのだ。彼女は全身を使ってそれを押し返すと、妖刀たちを呪詛交じりの旋風で薙ぎ払う。手近な一体が蹈鞴を踏むのを見るや、大上段より魔剣を叩き込んで防御ごと相手を割断していった。
「すまぬ、助かった。彼らの有様をみるとどうしても、な」
「気持ちは分かるよ……だから、早く眠らせてあげようか……いこう。凶太刀、神太刀」
へし折れた刀身を寂しげに見つめる段三郎に声を掛けながら、瑠奈は次に凶と神、二振りの刃を鞘走らせる。彼女は得物の怨念を纏うと、目にも止まらぬ速さと共に斬撃を放ってゆく。
「愛しきを断った。ならば憎きを殺す強さを得るはず……そうでなくば、何のために」
「対価は支払った、代償は贖った。犠牲に見合う、強さを!」
「呪いは私の力……こちらも剣の腕に劣るつもりはないよ……」
それに対抗する為、妖刀たちも己の素材となった人々の怨嗟を燃料に、更なる流血を呼び込む呪いを解き放つ。目まぐるしく交わされる剣戟と呪詛の応酬、だが数で勝ろうと質に劣る妖刀側が、ジリジリと瑠奈に削り取られ、打ち砕かれてゆく。
(保身を考えていないというよりも、あれではまるで……自ら破滅へ向かっているかのようですね)
柱から動き回る妖刀へとワイヤーの狙いを変え、強引に距離を詰めて圧し折りながら、祈は彼らの言動にそんな感想を抱く。しきりに呟く愛憎相殺は、もはや強迫観念じみている。鍛造されてから間もないにも関わらず、それはまるで過去の出来事に対する後悔のようにも思えた。
(……思考はこのくらいにしておきましょう。彼らは大元の思想と妄執が張り付けられた模造品。オリジナルと相見える前に怖気づいていては、話にもなりません)
彼らの慟哭は、彼ら自身のものではない。模倣し、希釈された複製品。ただの道具と割り切らねば、次に待ち受ける人斬りと戦うことすらままならないだろう。祈は素早く氷面スレスレへ双刃を走らせると、相手の足首を裂いて機動力を奪ってゆく。
「速度は奪いました……せめて、道具は道具らしく」
「うむ、感謝する。さぁ、生まれ変わる刻限ぞ……無象鍛刀」
飛び退く祈と入れ違いに、段三郎が飛び出す。刀を鍛え上げる刀、炉と鎚を兼ねた大太刀が身動きの取れない量産型たちを間合いに捉える。相手も全力の氷風で対抗するも、鉄をも溶かす熱量の前では無意味。斬撃の軌跡に沿って、どろりと妖刀は溶け墜ち、集まり、鍛えられ……最後には一振りの刀となった。
「先ほどよりも、大分マシになったの。号はそうさな、歪に生まれし愛し子……仮に水蛭子とでも名付けておこうか。正式な号は事が終わった後でも遅くはなかろう」
とは言え、妖刀もまだまだ数を残している。すべて倒し切るまで、満足している暇は無い。
「この調子で、行ければいいね……」
「そうですね。ここはまだ前哨戦、時間を掛けてはいられません」
瑠奈と祈は改めて得物を構えなおすと、段三郎と共に再び敵陣へと斬り込んでゆくのであった。
成功
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政木・朱鞠
憎しみから何も生まないなんてキレイ事を言う気はないけど…過去に捕らわれて未来を喰い潰してまだ出会えていない人を甘やかすチャンスを逃しちゃうなんて勿体ないじゃん!
欲望を満たすために非道を行なう悪いおサムライさんに好き勝手にさせたりしないよ…その歪んだ刃と共に邪な心ごと砕き折ってあげるんだよ!
戦闘
【SPD】
冷気を受けたり止血し難くなるのはちょっとリスクが高いけど…特に警戒したいのは高速移動かな…行動を鈍らせる事に重きを置いてユーベルコード『咎力封じ』を使用してサムライさんの動きを封じた後に武器でアタックだよ。
武器は刑場槍をチョイスして【串刺し】→【鎧無視攻撃】→【傷口をえぐる】でダメージを狙うよ。
トリテレイア・ゼロナイン
まさか蹈鞴場で氷上戦闘するとは思いもしませんでした
ですが仕方ありません、環境に適応した戦術を取らなけらば
UCの薬剤を盾の表面に塗布、その盾の上にスノーボードよろしく「騎乗」し、脚部スラスターを点火。氷上を高速で「スライディング」しながら「スナイパー」技能で頭部格納銃を妖刀達に撃ち込んでいきます。
UCの薬剤は片腕の格納銃器で発射する弾頭にも充填、敵の足元に撃ち込み転倒させ、そこに追撃の銃撃を浴びせます。
接近され切りかかられたら太刀筋を「見切り」「武器受け」で防御、空いた片腕で「カウンター」気味に「怪力」で殴り飛ばし距離を取ってから仕留めます
自分が騎士だと主張するのが馬鹿らしくなる戦いかたです…
●滑走、拘束、動きを封ず
「……まさか、蹈鞴場で氷上戦闘するとは思いもしませんでした」
氷面を脚部でコツコツと叩きながら、トリテレイアはそう嘆息する。彼の言う通り、蹈鞴場で連想するのはどちらかと言えば火。氷とは正反対である。
「ともあれ、こうなっては仕方ありません、環境に適応した戦術を取らなければ。幸い、ヒントは仲間が示してくれましたしね」
御伽噺の魔法の薬ほどではありませんが、色々と応用が効くんですよ? そう言うや、トリテレイアは装備していた盾の氷面へ摩擦減退の薬剤を塗布すると、地面へ敷いて騎乗する。氷上の滑走、他の猟兵はワイヤーを使用していたが、彼はより直接的な方法を試すつもりだ。
「これを騎馬に見立てるのは……些か無理がありますかね?」
脚部のスラスターを点火した瞬間、摩擦の減退した盾が戦機を乗せて滑り始め、ぐんぐんと速度を上げてゆく。
「追って、追い縋り、切り捨てん。我らが愛より逃れられん」
対する妖刀たちも刃を手に追随するが、純粋な速度という点では彼が勝っていた。トリテレイアは両手で舵を取りながら頭部に内蔵した機銃を掃射、当たるを幸いと銃弾を浴びせていった。
「う~ん、冷気や呪いも厄介だけど、やっぱり警戒すべきは高速移動かな」
トリテレイアが機動戦を仕掛けている一方、やや離れたところでは森から駆けつけてきた朱鞠が敵の動きを分析していた。氷の技も厄介ではあるが、彼らの持つ執念と速度が合わさった場合、自滅と引き換えにでも一太刀浴びせんとする死兵となる。
「なら、まずは動きを封じるのが先決だね。憎しみから何も生まないなんて、キレイ事を言う気はないけど……」
幸いにも、相手は戦機の動きを正確に追従している。速度こそ早いが、動きの予測はそう難しくない。
「過去に捕らわれて、未来を喰い潰して。まだ出会えていない人を甘やかすチャンスを逃しちゃうなんて勿体ないじゃん!」
放たれるは枷に轡、拘束の縄。滑走するトリテレイアとすれ違うように飛翔したそれらのうち、先頭を駆けていた妖刀は轡を切り捨てる事に成功するも、枷と縄に全身を縛められもんどりうって倒れ込む。後続の妖刀もそれに巻き込まれ、将棋倒しの如く氷の上に転がっていった。
「助太刀、感謝します。こうすれば、立ち上がることもままならないでしょう……まぁ、自分が騎士だと主張するのが馬鹿らしくなる戦い方なのが、難点ですが」
そんな特大の隙を見逃す程甘くは無い。トリテレイアは腕部に内蔵された速射砲へ盾へ塗ったものと同じ薬剤を装填し、容赦なく撃ちこんでいった。全身の摩擦を奪われた妖刀たちは、立ち上がることもままならず無様に藻掻くしかない。
「欲望を満たすために非道を行なう悪いおサムライさんに好き勝手にさせたりしないよ……その歪んだ刃と共に邪な心ごと、砕き折ってあげるんだよ!」
処刑用の長槍を手にした朱鞠が、滑り止めの効いた靴をキュッと鳴らしながら妖刀たちへと歩み寄る。一方でがりがり、がりがりと妖刀たちも氷に爪を立て彼女へと這い寄ってゆく。
「欲? 我欲? 強さを求める事が……だが、それは愛の証明でもある」
敢えて体勢を崩しながら立ち上がり、転ぶ勢いを利用して刀を振るう。足元を狙う軌跡が朱鞠へと迫る、が。
「こちらは機械の体、流れ出す血も無し……少しは騎士らしいことをしておきませんとね」
すかさず、それをトリテレイアが防ぐ。剣閃は彼の装甲に僅かな傷を作るのみ。返す刀で、朱鞠は罪人を裁くかの如く長槍の穂先で刀身を貫いた。
「次生まれるときは、もっと違う楽しみを見つけられるといいね」
ぱきん、と刀身が割れ砕ける。それと同時に、妄執に縛られた妖刀はその短い生を終えるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オブシダン・ソード
しかし量産型妖刀ってのも妙な響きだね
そういうのは一品物の方が持ち主は喜ぶと思うな
…ああ、使い手の事なんか、考えちゃいないか
だから仲良くなれないって話
そのよくわかんない哲学?も、僕とは相容れないな
ごめんね
剣士として、魔術師として、ただの剣として、立ち向かわせてもらおう
錬成カミヤドリで黒剣の列を操作して集団戦
とはいえ打ち払うのと足止め程度に、本命としては自力で斬りかかっていこう
地面が凍ってるなら突き刺した複製品を足場に跳んであげる
僕は名刀とかには程遠いけどね
君達には負けないよ
後は左手からの炎の魔法で目くらましと、寒気の緩和を狙っていこう
辛気臭くない君達?
連携取れる仲間がいるなら積極的に協力を
加賀・琴
数打ちの妖刀ですか。
そういえば私の薙刀も元は妖刀なんですよね。祓い浄化しただけでなく大磨上で銘も削ってありますけど。
そも、穢れを利用して妖刀として鍛え上げるとは数打ちならばそうなるのでしょうが、普通妖刀は穢れや呪いを溜め込んで成るものでしょう。
おそらくは妖刀使いは本職の刀鍛冶ではないでしょうから所詮は素人の数打ち、ということですか。それでも脅威には違いありませんが。
【破魔幻想の矢】で『破魔』の『援護射撃』です。『早業』で次の矢を番えて『2回攻撃』ですね。
仮に近づかれたら和弓・蒼月を置いて、大磨上無銘薙刀と影打露峰を抜いて応戦です。
これでも羅刹です。弓使いだから接近戦が不利とは思わないでください
●粗製乱造、されど呪いに偽りなし
「数打ちの妖刀ですか……そも、穢れを利用して妖刀として鍛え上げるとは、数打ちならばそうなるのでしょうが、普通の妖刀は穢れや呪いを溜め込んで成るものでしょう?」
「確かに、量産型妖刀ってのも妙な響きだね。そういうのは一品物の方が持ち主は喜ぶと思うんだけど……ああ、使い手の事なんか、考えちゃいないか」
黒曜の剣が首筋を狙う刃を弾き、体勢を崩した相手へ藍色の弓より放たれた矢が突き刺さる。オブシダンが前衛で切り結び、後方より琴が狙い撃つ。綺麗な役割分担で危なげなく妖刀たちと渡り合いながら、二人は同時に言葉も重ねてゆく。
「あのよく分かんない哲学? それも含めて、僕とは相容れないな。仲良くなれそうにないね。気質も、剣としても」
「恐らく妖刀使いは本職の刀鍛冶ではないでしょうから、所詮は素人の数打ち、ということですね。それでも脅威なのは、彼らを妖刀足らしめている執念……先ほどの様子から察するに、強さを得る為に親しい人でも斬ったのしょうか?」
恐らく、問うたところで真っ当な答えなど返ってきはしないだろう。所詮は怨念のみを練り込まれた摸造品、数打ちだ。
「兎にも角にも、まずは数を減らすのが先決でしょうね」
遠つ御祖の神、御照覧ましませ。祝詞と共に弓より矢が放たれると、それは空中で分裂し妖刀へと降り注ぐ。一の矢が尽きぬうちに二の矢を番え、更に攻撃の密度を上げていった。
妖刀側も巧みな太刀裁きでそれを切り落とすも、如何せん数が多い。防ぎきれず穿たれた矢からは浄化の呪力が注ぎ込まれ、ぼろぼろと人型が崩れてゆく。
「我らが願い、未だ半ば……折れる時では無し」
返礼に投擲されるは、矢よりも太き氷の柱。数は矢よりも多くは無いが、一本当たりの質量は優に超えるそれらが、頭上より襲い掛かってくる。琴は咄嗟に薙刀に持ち替え迎撃するが、落下速度も相まって逸らすのが精々。砕け散った氷が肌を切り裂いていった。
「剣士として、魔術師として、ただの剣として、立ち向かわせてもらおう」
対して、オブシダンは自らと同じ黒曜剣を複製。二十余りの刃で氷柱を切り飛ばし、唐竹に断ってゆく。しかし、外れたとしてもそれは地面へと突き立ち、妖刀を強化する障害物と化す。
「……ただ斬るだけが能じゃない。こういう使い方だってあるんだよ」
だがオブシダンが動じる様子はない。彼は氷柱の側面へ複製した剣を突き立てるや、それを足場に駆け上がり、跳躍して頭上より斬りかかる。
「刃の意味はただ斬る事、愛も憎も」
「そればっかで辛気臭くない、君達? 僕は名刀とかには程遠いけどね、そんな君達には負けないよ」
下方より巻き上がる寒波を、左手に生み出した炎で相殺する。軌道をずらされる事無く振り下ろされた鉱石の刃は、相手の頭長から股下までを縦一文字に切断していた。
しかし彼が前へ出るということは、必然的に琴との距離が離れる事を意味する。これ幸いにと、妖刀たちが高速機動でオブシダンの脇をすり抜け少女へと肉薄してゆく。
「手弱女が……頸が堕つるに相応しい」
彼らは琴が遠距離戦を専門とすると断じ、今が好機と見たのである。にも関わらず、オブシダンが慌てることは無い……何故ならば。
「弓使いだから接近戦が不利などと……」
役割分担というだけで、彼女が近接戦もこなせることを知っていたからだ。まず逆袈裟に刃を振るった妖刀の胴体が、薙刀の一閃で斬り捨てられる。その陰に隠れて踏み込んだ二人目の首が、神刀の抜き打ちによって撥ね飛ぶ。続く三人目は薙刀の石突で頭蓋を砕かれる。瞬く間に、琴の周囲に居た妖刀は一掃されていた。
「……これでも羅刹です。甘く見ないでください」
琴はそれらを収め弓を構えなおすと再び妖刀たちを射抜き始め、オブシダンも次なる相手へと剣を振るうのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イデアール・モラクス
【PPP開発室にて参加】
愛しき者こそを断て…か、非常に面白い思考だ。
そう、私は人が愛しい、世界が愛しい、ゆえに壊し!犯し!奪いたくなる!
お前達の狂気、愛しき邪悪…私に見せてくれ、たっぷり味わってやろう!
・行動
「さぁ、宴を愉しもう…我が愛しき友よ」
魔女友フィーナと連携して妖刀どもを蹂躙する。
フィーナが奴らに負の感情を植え付けた所で『高速詠唱』で【負を穿つ魔槍】を唱え、『全力魔法』で鋭さを増し『範囲攻撃』で無数に召喚した魔槍を『一斉射撃』し敵勢を『串刺し』にする。
「その妄執、私が喰ってやる」
串刺しにした敵からは魔槍を通して『吸血』し『生命力を奪い』妖気と執念を吸い尽くして鏖殺だ。
※アドリブ大歓迎
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
うまくまけたかしら?
それにしてもトチ狂ったことしてるけど
何の為の検証なのかしらね
何か気になるけど、ま、私には難しいことわかんないわ!
ってあら?イデアールじゃない!あんた来るの遅いわよ!
とりあえずこいつら掃除するわよ!
・戦闘行動
【先制攻撃】【範囲攻撃】UCで眼前の敵全て魂を縛りつけて負の感情をまとめて植えつけていくわ!
なんか元々負の感情まみれな気がするけど
動き止めちゃえばいいわね!
もし先制できなかった場合は
【氷結耐性】をつけた状態で氷柱に対して【属性攻撃】の火球をぶつけて
一気に蒸発させてやるわ!その後UCね!
あとはイデアールの仕事よ!
(アドリブ、アレンジ引き続き大歓迎)
●紅黒は氷上にて謳い喰らう
「う~む、愛しき者こそを断て……か、非常に面白い思考だ」
氷上にて独り、ふんふんと鼻を鳴らしているのはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)。彼女は殺気だった敵集団に囲まれているにも関わらず、口元を嗜虐的に歪めている。
「そう、私は人が愛しい、世界が愛しい、ゆえに壊し! 犯し! 奪いたくなる! お前達の狂気、愛しき邪悪……私に見せてくれ、たっぷり味わってやろう!」
「うまくまけたかしら? それにしてもトチ狂ったことしてるけど、何の為の検証なのかしらね……ってあら? イデアールじゃない!」
愉快気にそう宣告していたイデアールの横で、甲高い声が上がる。彼女がそちらへと視線を向けると、崩壊した蹈鞴場から飛び出してきたフィーナの姿があった。相手もイデアールを認めるやツカツカと歩み寄っていき、その背中をバシバシと叩きながら文句をつける。
「もう、あんた来るの遅いわよ! お蔭で妙なのに絡まれたんだから!」
「はっはっは、それは済まなかった。その埋め合わせは戦働きで贖おうか」
そんなやり取りもいつもの事なのだろう。魔女友の元気な姿に笑みを浮かべながら、彼女は妖刀たちへと向き直る。
「さぁ、宴を愉しもう……我が愛しき友よ」
「ええ、そうね。あの女の前に、とりあえずこいつらを掃除するわよ!」
元々面識のある二人、戦闘の機微や呼吸など今更打ち合わせる必要もない。刃を抜き放ち突撃してくる妖刀たちを前に、まず立ちはだかるはフィーナ。
「友情、繋がり、親愛……その様な者こそ、我らを握るに相応しい」
「なんだか元々負の感情まみれな気がするけど……兎も角、動き止めちゃえばいいわね! 愛だの憎しみだの陰気くさいのよ、アンタたち!」
畏怖の呪力を籠めた罵声と共に、真紅の瞳が妖しく輝いた。視線と言葉に練り込まれた魔力が負の感情を抱いた妖刀たちへと絡みつき、彼らの魂を蝕み動きを封じてゆく。元より自我らしい個性など持ち合わせていないのだ、それに抗する気力もまた乏しい。
「が、ああ……我らが意思は、止まらぬ」
だが体の自由を奪われても、攻撃する手段など幾らでもある。ぼこぼこと氷面が蠢くや、下から突き上げるように無数の氷柱が飛び出して来る。冷気に対してはある程度は耐性があるものの、攻撃そのものの衝撃までは如何ともしがたい。
「ああもう、鬱陶しいわね! こんなの、一気に蒸発させてやるわよ!」
足元より競り上がる氷柱の勢いを逆に利用して上空へ飛び上がるや、燃え盛る火球を叩きつけて無力化してゆく。もうもうと立ち昇る蒸気に巻き上げられながら、彼女は悪友へとバトンを渡す。
「足は止めたからね、あとはイデアールの仕事よ!」
「……ああ。任されたとも、我が友よ」
負の感情を攻撃の起点とするのは、何もフィーナだけではない。ゆらりと、白霧の向こう側で紅の双眸が揺らめく。
「その陰鬱で、濁りきった目。実にイイぞ! つくづく私好みだ!」
蒸気を吹き散らすは、魔法陣より射出されし魔力の槍。イデアールの哄笑と共に放たれたそれらを避けようと、妖刀たちは再び氷柱を呼び出し抵抗する。だがそれは相手の悪感情に反応し、追尾してゆく。黒き槍と白き氷柱、それらが乱立し、互いに潰しあう攻防。それが収まった時に残されていたのは、無傷のイデアールと、串刺しにされた妖刀たちの姿。
「まだ、何も……」
「無念かね? 安心したまえよ……その妄執、私が余さず喰ってやる」
槍は相手の執念を、妄執を、妖刀足らしめている全てを吸い上げてゆく。程なくしてカラン、カランという金属音が響いた。戦場に散らばる刀、それは既に単なる鉄塊でしかなかった。
「ふむ、堪能させてもらった……さて、量産品でこれならば、本体はいかばかりか」
「それを確かめたいなら、次も頼むわよ?」
危なげなく敵を屠ったイデアールとフィーナ。二人は笑みを交わしながら、互いの掌を打ち鳴らすのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
勘解由小路・津雲
【ヤド箱】三人で参加、他の猟兵とも共闘・アドリブ歓迎
こいつらも氷の術を得意とするか。ならばこちらは、炎の術、か……。
■戦闘 UC【歳殺神招来】を使用。歳殺神の加護を受けた古代の戦士の霊を召喚。相手にめがけて炎の燃え盛る槍を投げつける。ただし足元あたり。そこにファンの支援を受け、「範囲攻撃」「属性攻撃」「全力魔法」「破魔」を組み合わせて爆発を起こす。「炎の術を使うのは得意ではないが、このファンの祝詞での強化があれば、これぐらいは!」「よし、今だ、ペイン」
■心情等 しかしそれにしても、先ほどからの「愛しき者こそを断て」とかは何なのだろうか? 背後にいる人切りは、何かの業を背負っている様だな。
ペイン・フィン
【ヤド箱】のファンと津雲と参加。
他の猟兵とも共闘・アドリブ歓迎。
……さっき、戦ってみた感じだけど、
本当に空っぽってわけじゃ、無いかもね……。
コードを使用。
妖刀が纏う【過去の被害者の怨念】……それすら奪い、そして憤怒と悲哀と供に、身体に宿すよ。
後は、タイミングを合わせて待機。
辛い、けど……。ファンの支援があれば、耐えられる、はず。
津雲の攻撃の後、肉薄し、攻撃するよ。
扱う拷問具は、焼き鏝“ジョン・フット”。
妖刀を、冷気や氷柱ごと、焼き融かし、折っていくよ。
(以下、問題なければ追加希望)
……悲しい、ね。
知ってる?
今、自分が宿した憤怒と悲哀、ね。
ほんのちょっぴりだけど、
君たちのも、あったんだよ……。
ファン・ティンタン
【ヤド箱】で参加
他の猟兵との協力も含め、共闘は【コミュ力】を発揮して臨機応変に
冷気を操る妖刀達…ちょっと、数が多いね
対多人数戦は出来なくはないけれど…
少し、趣向を変えてみようか
【天華】及び【無銘】に蓄えていた魔力を一旦自身へと戻す
その上で【スピリット・オブ・サウンド】、味方を【鼓舞】する
火の神『火之迦具土神』を讃える祝詞を歌声に乗せて戦闘力強化、特に火【属性攻撃】を強める
これは、遥か太古の火の神へ捧げる詩
その加護に、有象無象の模倣刀の冷気が適うなんて思わないことだよ
私が、模倣刀に直接手を出すことを止めたのは、同族に手を上げることに無意識な抵抗を感じたからなのかな
自分でも、よく分からないや―――
●絆が紡ぎし焔の終焉
「冷気を操る妖刀達……他の猟兵が減らしたとはいえ、まだちょっと数が多いね」
他の猟兵たちの活躍によって量産型妖刀は順調に数を減らしつつあるが、未だ気を抜けない程度には残っている。気心の知れた仲間達と陣形を固めながら、ファンは相手の位置や数を見定めていた。
「こいつらも氷の術を得意とするか。ならばこちらは炎の術で対抗すべき、か……?」
「そうだね。であれば、こちらも少し、趣向を変えてみようか」
己が得手とする氷では属性が重なり、効果が薄い。炎で攻めるべきかと提案する津雲にファンは頷くと、得物へと籠め続けていた魔力を己の体へと戻し始める。
彼女は自らの役割が刃を振るうことでないと、素早く判断を下していた。全身に満ち満ちる魔力を体内で練り上げると、言の葉へ乗せ朗々と歌い上げる。
「清らかなる音よ、想いをのせて、届け……これは、遥か太古の火の神へ捧げる詩。その加護に、有象無象の模倣刀の冷気が敵うなんて思わないことだよ」
火、錬鉄、熱を司る神へと捧げられた祝詞が仲間達を鼓舞し、寒気を圧する熱量を与えてゆく。一方で、妖刀たちはそれに惹かれながらも拒むかのような仕草を見せた。
「温もり、我らが欲した……」
「否、否だ。あの炉の焔に我らが求る呪いは無い」
暖かな熱を蹂躙せんと、妖刀たちは源であるファン目掛けて氷柱を繰り出してゆく。歌を紡ぎ続ける彼女にそれを避ける事は難しい、が。
「……さっき、戦ってみた時も感じたけど……本当に空っぽってわけじゃ、無いかもね……」
攻撃が命中する寸前、氷柱の軌道が逸れた。ペインの振るった九条猫鞭がそれらを引っかけ、強引に狙いを外させたのである。代わりにごりごりと周囲に氷柱が突き立ち、途端に冷気が満ちてゆく。だが彼は決して慌てる様子はない。
「……辛い、けど、そうも言ってられない、ね」
仲間を信じるが故に、その次を見据えるが故に。彼は死したる者の怨念を、虐げられし者の憤怒を、抗う術を持たぬ者の悲哀をその身へと宿してゆく。蹈鞴場はおろか、敵対する妖刀からも吸い上げたそれらに、ペインの肉体が悲鳴を上げ、血を滴らせる。
更には、自らの力が吸い上げられたと察知した妖刀たちが瞬時に反応、高速機動と共に斬撃を浴びせかけ、更なる流血を誘ってきた。
「っ! ペイン、大丈夫か?」
「辛い、けど……。ファンの支援があれば、耐えられる、はず」
己を庇うペインをファンが気遣うも、赤毛の少年はじっとそれを耐え凌ぐ。そんな友の軽減を減らすべく、津雲は素早く呪言を口ずさんだ。
「準備は既に整った、すぐに終わらせる! 八将神が一柱、歳殺神の名において、式神、来たれ!」
命令に応じ呼び出されるは古代の戦士、手にせしは一振りの槍と……炎。ファンの魔力と混ざり合ったそれは煌々と燃え上がり、槍身全体を包み込んでゆく。津雲単身であれば、これほどの火力は出せなかっただろう。これも仲間の助力があってこその結果である。
「炎の術を使うのは得意ではないが、このファンの祝詞での強化があれば、これぐらいは! ゆけいっ!」
投擲されし炎槍は敵集団の中央へと落着する。外れたのではない、敢えて外したのだ。炎は液体を経ることなく氷を昇華させ、凄まじい水蒸気爆発を起こす。衝撃と立ち込める水蒸気に戦場が包まれるも、津雲は視線を向ける事すらせず叫ぶ。それは友を信頼するが為。
「よし! 今だ、ペイン!」
「……うん、任せて」
合図と共に、赤髪の青年が白霧の中へと飛び込んでゆく。視界は不明瞭なれど、慌てふためく相手の気配は一目瞭然。手にした焼き鏝から蒼炎を噴き上がらせ、次々と相手を焼き、折り、融かしてゆく。
「盲目であろうとも、ただ斬り続けるのみ……」
「道半ばにて倒れよ。頭を垂れ、刃を受け入れるべし」
足止めを狙い新たな氷柱を生み出す妖刀たちだが、逆に焼き鏝を当てられ、更なる爆発を誘発してしまう。闇雲に得物を振るう者も居るが盲太刀など当たるはずもなく、返す刀で火柱と化していった。
「……悲しい、ね。知ってる? 今、自分が宿した憤怒と悲哀、ね」
ほんのちょっぴりだけど、君たちのも、あったんだよ。小さく漏れ出る呟きは、霧の中へと掻き消えてゆく。剣戟の音、燃ゆる音、砕ける音が響き、その後には静寂が訪れ……水蒸気が風に吹き散らされる頃には、立っている者はペイン只一人であった。妖刀の姿は周囲どころか、蹈鞴場全体を見渡してももうどこにもない。
「これにて全滅、か。一先ず、お疲れ様。怪我は無いかい?」
「うん……大丈夫」
佇むペインへ労いの言葉を掛けるファン。ふと、彼女の胸中に一抹の疑問が去来する。
(私が、模倣刀に直接手を出すことを止めたのは……同族へ手を上げることに、無意識な抵抗を感じたからなのかな)
自分でも、よく分からないや。考えたところで、答えは出ない。思索をしたいのならば、後で幾らでもできるだろう。今はまだ、本命が残っている。
「しかしそれにしても、先ほどからの『愛しき者こそを断て』とかは何なのだろうか? 背後にいる人切りは、余程性質の悪い業を背負っている様だが……」
戦った妖刀たちは、しきりに愛や憎しみについて言葉を発していた。それは即ち、元となった妖刀使いの人斬りそのものの思想であり、執着だ。一体それは如何なるものなのか、考えを巡らせる津雲であったが……。
「どうやら、尋ねに行く手間は省けたようだよ?」
その答えは、相手側よりやって来た。ファンの言葉に一瞬緩みかけていた猟兵たちの緊張感が再び張り詰める。
見ると、崩壊した蹈鞴場の方向より、紅紫色の着物に身を包んだ女がゆったりと歩み寄ってきていた。その手には、先ほどの量産型とは比にならぬ妖気を湛えた刀が一振り。
「……私はあの子たちも愛していた。私の分身で、子供みたいなもの。だから……最後は私の手で切り捨てるのも、良いかと思っていたのだけれど」
そう淡々と呟く女こそ、此度の元凶である妖刀使いの人斬りその人に他ならなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『妖刀に魅入られた孤独な人斬り』
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POW : その斬撃嵐の如く
【身体が揺らぐと同時に吹く暖かい風】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鈴の音と共に刻まれる無数の斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水の如き立ち振る舞い
【カウンターの斬撃を加えた後、】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 解放叶わぬ呪い
自身に【妖刀の呪い】をまとい、高速移動と【姿を知覚しにくくなる呪い】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィーナ・ステラガーデン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●かつて居た、ある女剣士の話
かつて、ある時代、ある場所に女が居たそうだ。技量の良い、一角の剣士でもあった女は、ある時一振りの刀を手に入れた。その刀は良く斬れ、正しく手足の延長、一心同体とも呼べるほど彼女の手に馴染んだ。
それだけなら良かった。だが、それだけではなかった。使い手の斬るべき物のみ断つのが名刀であれば、切るべきでない者を裂くのが妖刀。女の手にした刀は、紛うことなき後者であった。
実力の伯仲する相手との死合いに勝利した際、呪いは対価として父母の首を刎ねた。
親殺しの咎により差し向けられた兵士を切り捨てた時、同じ数だけの友が骸となった。
女の実力では到底敵わぬはずの剣士を貫いた後、刀は女の愛した男を同じように貫いた。
力を与えて憎き者を殺さば、代償に愛する者の命も奪う。刀は妖刀、愛憎相殺の呪いによって女を縛った。もう女が刀を振るうのではない、刀が女を支配していた。
そうして、斬り捨て、首を刎ね、殺して、殺して、殺して。憎い者も、愛する者も、誰一人居なくなると、最後に女は自刎したという。何よりも憎み、最も愛すべき己を殺したのだ。
かくして、女は骸の海へと投棄され――今ここに舞い戻った。
「この手で殺したということは、私の愛は真実本物だったのでしょうか。それとも、命を奪ってしまったから、愛していたはずだと信じざるを得なかったのか……もう、私には分かりません」
真紅に染まる刀身は、斬った者らの血の赤か。女の紡ぐ言の葉は、果たして彼女の意思か、呪詛による譫言か。恐らく、本人にすらもう区別はついていないだろう。
「ならば、この呪いを広めましょう。この祝福を分け与えましょう。多くの人々が私と同じように愛の証明と強さを手にすれば……きっと答えが分かるはずだから」
ただ明確なことは、このまま女を野放しにしてしまえば、かつてあった地獄が繰り返されるという事実。
呪われた祝福を終わらせる刻は、今この瞬間を置いて他にはない――さぁ、得物を構え、孤独な人斬りへ終わりを与えるのだ。
政木・朱鞠
悲しいね…妖刀は心の弱い部分を利用して人を斬る快楽を味あわせ、心酔状態にさせて力を御する為の反抗心を失わさせる…。
そう考えると同情する所はあるけど…抗う術のない人達を手にかけ不安と厄災を撒き散らした咎はキッチリ償ってから骸の海に帰ってもらうよ。
戦闘
【SPD】
肉を切らせて骨を断つ…カウンターの斬撃を受け止めるため『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で人斬りさんを迎え撃つよ。
武器は拷問具をチョイスして、技能をいかして【鎧砕き】で防御を緩めて【傷口をえぐる】でダメージを狙うよ。
ユーベルコード使った後の代償が怖いけど…ここを逃がせば妖刀にさらに血を吸わせて人斬りさんを迷わせてしまうよね…。
當良邑・祈
力は、愛するものも、憎きものも等しく傷つける。武を極める修羅の道では敵こそが愛する対象で、平穏とは憎むべきものなのかも知れない。
であれば戦いの中では愛も憎も紙一重、今、目の前の敵を、武の顕現として愛し、同時に世を乱す亡者と憎もう。
-ワレイノリヲササゲル-
降魔化身法で全身を甲殻で覆う。
足を展開し切り合いに挑む、熟練の人斬りなればこそ人の形から離れたこの身とは戦いづらいことだろう。
それを差し引いてもこちらが劣ることは明らか、包囲と攻撃の準備が整うまで打ち合うだけ、自分はソレだけで良い。
それでも、この達人との、仕合が、死合が、至愛が、一閃でも多く食らいつけないかと刃を振るう。
(連携改変苦戦歓迎)
雛菊・璃奈
そんなのは祝福じゃない…そして、その呪いを広げさせるわけにはいかない…。わたしは魔剣の巫女…妖刀を奉り、鎮めるのが使命…。わたし達の手で、その呪い、断ち切らせて貰う…。
【unlimited】を周囲に展開…。
相手の呪いを破魔の鈴で弱体化させ、こちらは逆に妖刀・魔剣達に【呪詛】を送り極限まで増幅…。
凶太刀、神太刀による【呪詛、早業、2回攻撃】の剣戟を繰り出しつつ、敵の攻撃を見切り、敵の嵐の如くをアンサラーで【見切り、第六感、武器受け、オーラ防御、カウンター】。攻撃を反射し、体勢を崩したところに【unlimited】による一斉斉射で仕留めるよ…。
貴女とその刀はわたしが鎮める…だから、もうお休み…。
オブシダン・ソード
そう、やっぱり性質が悪いね妖刀さんは
その在り方も一つの道なんだろうけど
…どっちが強いか比べてみることはできるかな
あの呪いが間違っていると言うのなら、真っ向から否定してあげないと
そう思うんだけど、皆はどう?
ユーベルコード使用。真の姿へ
仲間の中に協力できそうな人が居るなら、僕がその人の剣になろう
手を取ってくれた者を、持ち手を、鼓舞して願いを叶えるのが僕の在り方だ
さあ行こうか、相棒
なんだって良い、一発当ててくれれば僕が両断するからね
上手く決めて欲しい
相手の動きが早いにしても、僕も『見て』いるなら使い手と合わせて死角を埋められるかな?
別に対価は要らないよ。使ってもらえるだけで僕は幸せだからね
加賀・琴
愛憎相殺の呪いですか。
確かに質の悪い呪いですね、同情しないと言えば嘘になります。
ですが、呪いに負けた貴女が、今を生きる人達を害することは許容できませんし、この場所で犯した貴女の罪は消えません。
確かにかつての貴女はその呪いの被害者でしょう。ですが、オブリビオンとなった貴女は、愛したから殺してしまったのではなく、ただ殺す理由が欲しいだけです。ただの惰性で殺したから愛するなどと言っているだけですし、より多くの死を見たいから呪いを広げようとしているだけです。
故に、貴女という呪いを今此処で祓います。
既に呪いそのものとなった貴女を祓い、自刎した彼女の最後の名誉を守りましょう。
凶祓いの矢で祓い、援護します。
トリテレイア・ゼロナイン
愛していたから殺した、殺したから愛した、愛の形の一つかもしれません。ですがその答えの是非を己の中ではなく、呪いを広めるという形で外に求めた時点で、永遠に答えが分からないと自ら告白したようなものです
世界知識で知りましたが、「武」という字は分解すると「矛に止(とど)まる」、「矛で止める」の二つの解釈があります。己という意思を手放した時点で貴女は只の矛、止めるという意思を持ち矛をとった私が負けるわけにはいきません
騎士として、貴女をお止めしましょう
UCを使用し近接戦、鈴の音から攻撃を見切り、盾受け、武器受けで重要部位をかばいダメージを抑え機を伺い、怪力で振るう剣のカウンターで刀を砕き、返す刃で決着を
●愛憎相殺、かつての在り方
「……悲しいね。妖刀は心の弱い部分を利用して人を斬る快楽を味あわせ、心酔状態にさせて力を御する為の反抗心を失わさせる……そう考えると同情する所はあるけど」
「ですが、呪いに負けた貴女が今を生きる人達を害することは許容できませんし、この場所で犯した貴女の罪は消えません。いまの貴女は、より多くの死を見たいから呪いを広げようとしているだけです」
儚げな雰囲気とじっとりと絡みつくような妖気、それらを両立させながら佇む人斬り。
朱鞠の言うように、彼女は確かに被害者であり同情の余地がある。だが、それは全て過去の出来事、もう既に終わった話なのだ。琴が切り捨てた通り、彼女は葛藤する者でなく、単なる死を振りまく加害者へと成り果てていた。
「オブリビオンとなった貴女は、愛したから殺してしまったのではなく、ただ殺す理由が欲しいだけです。ただの惰性で殺したから、愛するなどと言っている……故に、貴女という呪いを今此処で祓います」
彼女を解放するには、最早死より他になし。琴が矢を番え、弦を引き絞る。それに対し、人斬りは特に感慨も無さ気にそれを見つめ。
「……貴女の言う通りかもしれませんし、違うのかもしれません。何が正しいか、私にはもう分からない。だから」
矢が放たれると同時に、その姿が掻き消えた。身をギリギリまで低くし、地を這うように駆けているのだと気づいた次の瞬間には、既に人斬りは彼女の眼前まで迫っていた。
「……斬れば、自ずと分かるのでしょうか」
「っ、先の量産型よりも遥かに早いっ!」
振るわれる妖刀を弓では防げない。さりとて近接武器に持ち替える余裕も無し。為す術もなく切っ先が喉元へと迫り。
「肉を切らせて骨を断つ……一筋縄でいかないことは知っていたからね、予想はしていたよ?」
間一髪、朱鞠によって投擲された手裏剣が刀身を弾き軌道を逸らす。はらりと濡れ羽色の髪が数本舞い散る中、彼女は妖刀を抑えつつ両者の間へ割って入ると、手枷や鉤縄と言った拷問具で相手の動きを封じにかかった。魍魎悪鬼を宿して強化された肉体なれど、人斬りも見た目にそぐわぬ膂力でそれに対抗する。
「抗う術のない人達を手にかけ不安と厄災を撒き散らした咎を、キッチリ償ってから骸の海に帰ってもらうよ」
「いえ、いいえ。まだ、私は何も出来ていない。何も分かっていない……まだここでは、止まれません」
代償の毒による激痛に耐えながら相手を封じ込んでいた朱鞠だが、相手の妖刀より強烈な妖気が吹き荒れ、彼女を無理やり引き剥がした。拷問具を切り捨てると、人斬りはそのまま呪いを纏い自らの姿を知覚させぬまま高速で機動し始める。
「憎きを殺して、愛しきを手に掛け……それは愛の証明に他なりませんか」
「そんなのは絶対に祝福じゃない……その呪いを広げさせるわけにはいかない……。わたしは魔剣の巫女……妖刀を奉り、鎮めるのが使命」
速度が尋常でない上、姿とて見えない。だが、この世から消えたわけではないのだ。璃奈は破魔の鈴の音を鳴らし、相手の呪いを弱めながら音の反響を元に位置を探りだす。高速機動に追従こそ難しいものの、太刀捌きであれば話は別。相手が死角より斬りかかってくるのに合わせ、璃奈も双刃を鞘より抜き放ち迎撃する。相手は一振り、此方は二振り。初撃で相手の得物をかち上げ、続く二の太刀で胴を横一文字に切り裂いた。
「っ、浅い……攻撃の瞬間、身を退いた……!」
「私が斬った方々の中に、二刀流使いも居たのですよ……ええ、忘れてなどいません」
が、切っ先は着物と薄皮一枚を裂いたのみ。妖刀をかち上げられたことを利用し、一歩後ろへ体をずらしてダメージを最小限に留めていたのだ。返す刀で斬撃を叩き込みながら、再び女は地を駆け、猟兵たちを翻弄し始める。それはまるで、先ほど彼らが量産型へとしていた戦術への意趣返しの様でもあった。
「かつての敵、ですか。力は、愛するものも、憎きものも等しく傷つける。武を極める修羅の道では敵こそが愛する対象で、平穏とは憎むべきものなのかも知れません」
ワレ、イノリヲササゲル。すっと、祈は胸の前で両掌を合わせる。全身を強固な甲殻が覆うと同時に、その隙間よりぼたりぼたりと血が滴り落ちてゆく。脚部は四脚となり、両腕とは別個に二振りの内臓刃が展開されたその姿は、血の紅も相まって異形じみていた。
「であれば戦いの中では愛も憎も紙一重。今、目の前の貴女を、武の顕現として愛し、同時に世を乱す亡者と憎みましょう」
相手はあくまでも人斬り。人の形よりかけ離れたこの姿であれば、僅かなりとも対応が遅れると狙ってのことである。対する人斬りは緩やかに速度を落としながら、彼我の距離を測っていた。流石に相手も折の姿には見に徹さざるを得ないか……それとも、後の先でもなお競り勝てるという自負か。
「それでも、後ずさるつもりはありません。お相手願いましょう」
こうしている今も全身より血が流れ出している。時間を掛けている余裕などない。祈は怯むことなく人斬りへと斬りかかるや、強化された身体機能を全力で稼働させ食らいつく。
「貴女も私を愛してくださいますか? 私を憎み、挑んでくれますか?」
「ええ。この仕合が、死合が、至愛が……一閃でも長く続く様に」
振るわれる刀の速さは電光、舞い散るは石火。だが、純粋な剣の技量ではやはり人斬りに軍配が上がっている。一合撃ち合うたびに祈の甲殻に傷が刻まれ、砕かれ、斬り飛ばされてゆく。
(単身ではこちらが劣る事は明らかです。仲間が有効打を与えられるよう、時間を稼ぐ……それさえできれば、充分)
じりじりと、戦況の天秤が人斬り側に傾いてゆく。祈はその均衡が完全に傾いてしまう瞬間を、一瞬でも先へ伸ばすべく双刃を打ちあわせる。関節部が悲鳴を上げるのも無視し十合、二十合と切り結び……。
「貴女の腕前、お見事です。しっかりと見させていただきました」
ふっと、刃が空を切った。斬撃の軌道を読み切った人斬りが半身を逸らして避けたのだ、そう理解した祈の前で細長いモノが宙を舞う。内臓刃の一本がアームごと斬り飛ばされたと悟った時にはもう、人斬りは彼女の胸元目掛け突きを繰り出していた。手数が半減した今、それを防ぐ手立てはない。
「やっぱり性質が悪いね、妖刀さんは。その在り方も一つの道なんだろうけど……どっちが強いか比べてみることはできるかな」
得物一つ、彼女一人だけであれば、であるが。横合いより飛来した一振りの剣が折の手に収まると、必殺必中の刺突を叩き落した。それは青みがかった黒曜石の両刃剣。先ほどまで戦場にいたはずの黒マントの青年は消え、彼の声は手元の剣より聞こえてきていた。
「あの呪いを止めたいと言うのなら、真っ向から否定してあげないと。そう思うんだけど、君はどう? 得物が必要だというなら、協力するよ」
「ええ、助かりました。文字通りの助太刀、有難くお受けしましょう」
「そうこなくっちゃ。さあ行こうか、相棒」
単身では劣れども、二人で当たればその差は大きく縮められる。何しろ、振るう剣自体が猟兵なのだ。相手を観察する目も、戦術を思考する主体も単純に二倍。それらが合わさる戦闘力は、倍どころでは収まらないだろう。鈴の音と共に叩き込まれる多重斬撃にも、二人は対応しきっていた。
「手を取ってくれた者を、持ち手を、鼓舞して願いを叶えるのが僕の在り方だ……どうやら、そちらは違うようだね。うん、同じ剣として非常に気に食わない」
祈とオブシダンの姿は、人斬りと妖刀の正対比と言っても良い。片や使い手に助力し勝利へ導き、片や使い手を支配し絶望へと叩き落す。そもそもの話として、人斬りと成り果てた彼女とて妖刀を手にさえしなければ真っ当な人生を歩んでいたはずなのだ。
「強くなりたい、より高みへ上りたい。それは武を志す者であれば当然の欲求です。それを成したうえで、愛を証明できる。そこまで、否定される事でしょうか?」
「僕は別に対価は要らないよ。使ってもらえるだけで幸せだからね……そういう貴女は、思うところがないのかい?」
「っ……それ、は」
そもそもの元凶はその刀だろう? オブシダンとしては何気ない、単純に思い浮かんだ疑問。だが、それを受けた女の動きが一瞬だけ硬直した。それは人斬りに生まれた初めての隙らしい隙。祈はすかさずオブシダンを妖刀目掛けて打ち込むと、ビキリと不快な異音が響いた。流石に一刀両断とまではいかないが、ほんの僅かに刀身の根元付近へ刃毀れを起こさせる。
「っ、いけません……っ!?」
彼らの関係において歪なのは、使い手よりも妖刀の方が上位であるという点だ。本来であれば刃毀れの一つ程度したところで戦闘続行に支障は無い。にも拘らず、人斬りはどうしても攻撃の手を一瞬止めてしまう。尋常の仕合であれば問題なかったであろうが、超常の力を扱う猟兵相手には無防備同然と言わざるを得ない。信頼し合えぬ共闘なぞ、崩れた時には単独で戦うよりもなお脆いのだ。
咄嗟に飛び退く人斬りへ、今度は鋼鉄の戦機が迫る。
「世界知識で知りましたが、『武』という字は分解すると『矛に止(とど)まる』、『矛で止める』の二つの解釈があります。己という意思を手放した時点で貴女は使い手ですらない只の矛、止めるという意思を持ち矛をとった私たちが負けるわけにはいきません」
トリテレイアの全身で、火薬の小規模な炸裂が連続する。それは各部に格納されていた銃器を強制的に切り離した際の音だ。これにより全体の重量を軽減しながら、近接戦形態への移行が完了する。
「格納銃器強制排除、リミット解除、超過駆動開始……これが私の騎士道です!」
その手に握られるは、儀式用の騎士長剣。鋭さこそ妖刀には劣るが、警護用とあって頑丈さは折り紙つきだ。トリテレイアは各所に接続されたバーニアを最大出力へと引き上げると、人斬り目掛けて吶喊する。人斬りとていつまでも慌てふためくわけにもいかず、ゆらりと体を揺らめかせるや、生暖かい血臭交じりの風と共に戦機へ応じ、鈴の音と共に斬撃を放つ。
「……愛していたから殺した、殺したから愛した。それも愛の形の一つかもしれません。ですがその答えの是非を己の中ではなく、呪いを広めるという形で外に求めた時点で、永遠に答えが分からないと自ら告白したようなものです」
「分からないからこそ、外に求めた。それは誰しも行うことでしょう? 同じ立場、同じ思いを味わえば……きっと、私とは違う答えを見せてくれるだろうから」
「それでどのような答えが出ようとも、貴女が救われるとは思えません。更なる疑念を招き、より苦しむだけです」
トリテレイアの近接戦闘形態は、攻撃力という点では爆発力に欠ける。だが一方で、回避や防御を軸とした戦闘においては覿面に効果を発揮していた。それに加えて全身を覆う装甲、手にした大型重盾、そしてそれらを扱う為の膂力は如何な人斬りであろうとも速やかな突破は難しい。装甲に数多の傷はつくけれども、見た目に反してダメージはそこまで大きくは無い。
「ですから、もう……ここで終わるべきです」
じりじりと攻撃を耐え忍び、攻撃と攻撃の合間を見定めるや手にした剣を思い切り妖刀へと叩きつける。ミシリという手応えと共に、人斬りは体勢を崩して後ろへと仰け反った。
「終わるなど、認める訳が……っ!?」
「いえ、貴女とその刀はわたしが鎮める……」
祈やオブシダン、トリテレイアは相手の足を止め、終始注意を自分へと惹き続けていた。そのお蔭で他の猟兵が攻撃の準備を整える為の時間を稼ぎきる事に成功する。
人斬りの視界には、璃奈の周囲に浮遊する百を優に超える魔剣、妖刀の群れが映っていた。どれもが自壊寸前まで呪力を注ぎ込まれ、威力を最大まで高められていることは一目瞭然。
「数は確かに脅威です……ですが、当たらなければ意味はありません」
妖刀が再び想起し、人斬りの輪郭を背景と同化させてゆく。確かにそれであれば全てとは言わずとも、攻撃の大部分を凌ぎ切ることは可能だろう。視線を刀剣群に向けながら、最初の一歩を踏み出し。
「貴女は最早、かつての貴女自身ではありません。既に呪いそのものとなった貴女を祓い、自刎した彼女の最後の名誉を守りましょう――祓え給い、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え!」
足の甲を、一本の弓矢が貫いた。単に射っただけでは当たらぬと判断した琴は、この瞬間まで狙撃の機会を伺っていたのである。破魔の祈りを込めし一射は人斬りの纏う呪いを強引に浄化してゆき、相手の出掛かりを制することに成功する。
「弓矢の一本程度がどうしたと。強引に抜いてしまえば」
「残念だけど、それは駄目だよ。ここで逃してしまえば、後々貴女がもっと迷ってしまうだろうから」
朱鞠は矢傷をより広げる様に、鉄杭や枷を人斬りの脚部へと絡みつかせ、容易く矢が抜けない様に拘束する。無論この程度、人斬りであれば数秒で脱することは可能だ。だが、いま必要なのはその数秒。
「拘束を解除、いや、迎撃を……!?」
「いいえ……もう、お休み……」
答えが出るには猶予は短く、決めるには決断が遅すぎた。人斬りという一点目掛けて、数多の魔剣、妖刀が降り注ぐ。人斬り側も数本は斬り飛ばすも物量に飲み込まれ、覆い尽くすように刃が突きたてられていった。
ほんの一瞬、戦場に静寂が降りる。常人であれば即死、いかなオブリビオンであっても無事では済まない。攻撃の結果を猟兵たちが固唾を飲んで見守る中。
――キンッ!
竹林の如く乱立していた剣群が、横薙ぎに纏めて断ち切られた。
「誰かを殺したことも、自らの首を刎ねたこともありました……でも、誰かに殺されかけたのは、初めてかもしれませんね」
現れる姿は凄惨の一言。紅紫の着物はより赤く、白き肌も朱に染めながらも、人斬りはいまだ妖刀を手に戦場へ立つのであった。
大成功
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ペイン・フィン
【ヤド箱】で参加
あなたも、大切な人を、殺してしまったんだね
そうか。……そう、か
……ん。任せてね。ファン
真の姿を解放
数歳程度幼い姿になり、血霧のようなモノを纏う
そして、コードを再使用
呪いに苦しみ、自死を選んだ彼女の怨念を、それを砕く力を、膝砕き”クランツ”に
蘇らせられ、今なお、苦しみ虐げられている彼女の憤怒を、それを焼く力を、焼き鏝”ジョン・フット”に
呪いに、そして、オブリビオンとなった悲劇に対し、無力な彼女の悲哀を、それを潰せるだけの力を、自分の本体、指潰しに
吸い取り、宿し、血霧は黒に、仮面は赤く染まる
狙いは妖刀。呪いの元凶を、砕き、焼き、潰しに行くよ
呪いは終わり。もう、苦しまなくて良いよ……
勘解由小路・津雲
【ヤド箱】三人で参加、メンバー全員とも他の猟兵とも共闘・アドリブ歓迎
妖刀に愛の真贋を見極めることなど出来ただろうか? そうは思えぬ。妖刀にできたのは、あんたの心をさぐって大切な人の存在を知ることぐらいではないか。……してみれば、あんたは確かに愛していたのさ。切る切らない、憎しむ憎しまない、の以前からな。……おれは、そう思うぜ。
■戦闘 UC【七星七縛符】を使用。「破魔」で強化し相手の動きを封じ、ペインの攻撃の隙を作る。「(ファンに)やりたいこと? ふむ」「刀の妖力は押さえよう。しかしその女、剣士としてもひとかどのものだ。ペイン気をつけろ」「(ファンに向け)さて、お膳立ては整ったぞ、気をつけろよ」
ファン・ティンタン
【ヤド箱】で参加
ペイン、津雲
私、やりたいことが出来た
妖刀は、任せてもいいかな?
戦闘は二人に任せ、自身は【天華】に魔【力溜め】を行なう
真の姿になるペインに言葉をかけ、彼の自我を引き留めるべく【鼓舞】
ペイン、負けたら殴るからね
津雲、ペインのフォローをお願い!
人斬り撃破後、【転生尽期】を使用
本来あるべき“剣士としての彼女”を蘇らせる
私は命じる、潰える前に、為すべきを成せ
……どうか今一度、その哀れな生の幕引きの為に―――
【天華】の複製を渡し、本当の彼女に決闘を申し込む
剣士の最期が自害じゃカッコつかないでしょ……引導を渡してあげるから、おいで
(複雑な蘇生術でファンの魔力は枯渇中、決闘の結果はMSに一任)
宴・段三郎
やはり『混ざって』おったか…
だが助ける術はたった一つだけある。
ただし、おんしには新たな妖刀となってもらうがのぅ…
それにこの子も、おんしを救いたいと言うておる
のう?『水蛭子』改め、妖刀『戎』。
先ずは戎で刃を何度か重ねるとしよう。
妖刀同士が闘いあう場合、怨嗟と呪い、そして使い手のを技量がものを言う。先ずは残像を使って素早く攻撃を行い刃を何度も交えよう
次に戎の刀身の釣針返しを相手の妖刀に引っ掛けて絡めて【生命力吸収】をおなごにではなく妖刀自体に行う
そして頃合いを見て化生炉に持ち替え、ユーベルコード『地国炉開闢』を発動する。
儂の大火力の焔をもっておなごと妖刀を鍛刀する
鍛刀したら号はマスターに任せるかの
イデアール・モラクス
【PPP開発室にて参加】
愛した者を殺してしまう、それは人の性だよ。
命を奪った瞬間に思ったろ?
これでこの者は、私の手で永遠になった…と。
アーハッハッハ!
・行動
フィーナを支援し、トドメを刺させるのを最優先とする。
「ほう、知覚しにくくなる結界を纏うか…ならば広範囲を面で制圧するまで」
【広範囲に風の刃を無数に放つ超高威力の攻撃魔法】の術式を『範囲攻撃・全力魔法・属性攻撃・高速詠唱』により構築して放ち女を切り刻んで弱らせ、すかさずUC【色欲の触手】を『全力魔法』で数を無数に増やした上で『高速詠唱』を用いて素早く召喚し拘束。
「こんなだがフィーナは信用に値する女だ、一緒にいて退屈しないぞ?」
※アドリブ歓迎
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
・戦闘
「属性攻撃」にて火球を飛ばすと同時に杖の宝石を開放
カウンターにあわせる形で盾を出し
UCにて手首を切り落とし無力化を狙い、杖を突きつける
・その後会話
難しいことはよく分かんないけど
あんたようするに1人じゃ寂しかっただけじゃないの?
あんた自身辛い思いしてきたんでしょ?目を見ればわかるわよ!
なら話は簡単よ!あんた私と一緒に来ればいいわ!
何も問題無いわ!それで困ったことがあったら私が何とかしてやるわよ!
これであんたにとっての地獄も終わりにしてやるわ!
(拒否しようがしまいが「吸血」にて魂ごと吸い取り
フィーナに乗り移らせる)
所であんた名前は?(ご自由に)
(アレンジアドリブ歓迎)
響・夜姫
PPP開発室にて参加】
フィーナお姉ちゃんに、呼ばれたので。
ん……。救いようの無い話は。あんまり好きじゃないな……。
引金を引くには重すぎる。
「とりあえず。お姉ちゃんたちの、援護」
【クイックドロウ/誘導弾/2回攻撃/範囲攻撃】で【援護射撃】
【学習力/第六感】で相手の動きを覚えて【先制攻撃/スナイパー】で攻撃の出だしを潰しに行く感じ。
性格がマイペースな上に戦い方が脳筋系トリガーハッピーなので、
今回は口数少な目に、地味に行動。
脇役に徹する。
●愛憎相殺、これからの在り方
「殺すことは多々あれど、殺されることは何分初めてなもので。それもそれで興味深いですが……ええ、それでは私の求める答えを得られなくなってしまいますね」
太刀を振り、こびりついた血飛沫を払いながら、女はゆっくりと臨戦態勢を整え直す。相応の手傷は負っている。だが、その意思は些かも揺らいでいなかった。
「あなたも、大切な人を、殺してしまったんだね。そうか……そう、か」
「愛した者を殺してしまう、それは人の性だよ。命を奪った瞬間に思ったろ? これでこの者は、私の手で永遠になった……とな!」
その言動に威圧感ではなく同情と寂寥を感じてしまうペインの横では、イデアールが呵呵と笑い声をあげていた。彼女の何気ない物言いに一瞬だけ、津雲がピクリと眉根を上げて反応するも、すぐに首を振って湧きあがった感傷を鎮める。
「妖刀に愛の真贋を見極めることなど出来ただろうか? そうは思えぬ。妖刀にできたのは、あんたの心をさぐって大切な人の存在を知ることぐらいではないか。してみれば、あんたは確かに愛していたのさ。斬る斬らず、憎む憎まず、の以前からな」
おれは、そう思うぜ。そう告げる津雲の想いがどこまで伝わるかは分からない。あるいは事ここに至りては、単なる言葉だけでは及ばないのかもしれない。であれば。
「……ペイン、津雲。私、やりたいことが出来た。妖刀は、任せてもいいかな?」
「やりたいこと? ふむ……」
ファンはそっと、仲間達へ耳打ちを行う。その内容と意図を聞き終えると、彼らはこくりと頷き同意を示す。
「……ん。任せてね。ファン」
「ふぅむ。であれば儂も一枚噛ませてもらおうのう。ま、『混ざる』よりか、その方が刀としては純粋やもしれぬしな」
声を掛けた者以外に、段三郎も協力を買って出た。先ほどの量産型妖刀を鍛造し直した、釣針返しのついた刀。号を改め『戎』としたそれを手に妖刀と対峙する。彼と肩を並べる様に、フィーナも杖の先についた宝石を妖刀使いへと突きつけた。
「難しいことはよく分かんないけど、私がしたいこととも矛盾しないし……まずはこれまでどおりぶっ飛ばしちゃえば良いのよね? 夜姫、援護射撃頼りにしてるわよ!」
「ん……。引金を引くには重すぎるから、救いようの無い話は、あんまり好きじゃないけど……がんばる」
フィーナの要請に応え、響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)も聖女の名を冠する二挺拳銃を握り直す。支援に徹すると言えども、決してその役目は軽く無い。手負いの獣は何とやら、全員で掛からねば覆される可能性とて十分にあるのだ。
「刀の妖力は押さえよう。しかしその女、剣士としてもひとかどのものだ。警戒してし過ぎることは無い……急ぎて律令の如く為せ!」
「とりあえず。お姉ちゃんたちの、援護」
素早く呪印を刻むや、津雲は渾身の呪力を籠めた符を投擲する。当たれば一部とはいえ超常の力を封ずる強力なモノ。当然、人斬りも姿を消して回避を図るも、夜姫の手元で立て続けに発砲音が響くや機先を制した。姿が視認できずとも、範囲纏めて薙いでしまえば同じこと。足の止まった相手に札が張り付くと、纏った呪いを強引に抑え込んでゆく。
「っ、これは中々……長くは持たん。ペイン、気をつけろ!」
「ペイン、負けたら殴るからね」
友の声援と発破を背に、ペインは動きの止まった相手へと一直線に肉薄する。その最中、彼自身の姿も変化を始める。青年と呼べる姿から十に満たぬ少年の体へと若返り、血の如き紅の霧を周囲に漂わせ始めた。
それに伴い、手にした拷問具の数々も周囲へ展開されてゆく。呪いに苦しみ、自死を選んだ女の怨念は膝砕き”クランツ”へ。今なお、苦しみ虐げられている人斬りの憤怒は焼き鏝”ジョン・フット”へ。呪いと悲劇に対し、無力な人間の悲哀は己が本体である指潰しへ。更なる力の解放に、霧はどす黒く変化し、顔の仮面は紅へと染め上げられてゆく。
「狙うは妖刀。呪いの元凶を、砕き、焼き、潰しに行く……」
身を蝕む呪縛を完全開放した地力で押し込みながら、それら愛憎哀怒を打ち消すために。彼は拷問具を使い、膝頭を押し砕き、皮膚を焼き焦がし、妖刀を握る指を擦り潰してゆく。
「これは、手放せない……手放したら、斬った全てが無意味になってしまう。それだけは」
これまで人斬りは強化状態の猟兵とも真っ向から渡り合えていた。しかし、それに加えて真の姿という切り札まで切ったペインに、徐々に圧され始める。
「……呪いは終わり。もう、苦しまなくて良いよ……」
「誰が、そんなことを……望んでなど!」
真正面から相手には出来ぬと、人斬りは紙一重でカウンターの斬撃を浴びせかけて距離を取った。言葉とは裏腹に、その表情からは徐々に余裕が失われてきている。
「そう言うてくれるな。恩着せがましいかもしれぬが、まずはそれを手放すことがおんしを救う第一歩よ……それにこの子も、ははごを救いたいと言うておる」
ペインと入れ替わる様に二の太刀を務めるは段三郎。手にせしは望まれぬ子から幸いの神へと名を変えし刀。彼の狙いも人斬りそのモノでなく、妖刀である。釣り針の如き返しのついた刃は純粋に斬る事には向かずとも、相手の刃を絡め取り、刀身へと傷を刻み込んでゆく。ガチガチと鎬を削り合いながらも、人斬りの動きが若干及び腰になっていた。
段三郎の戦闘力は強化に強化を重ねたペインには一歩譲る。だが妖刀に支配された彼女にとって、それを傷つけられることを何よりも厭うのだ……それが強さを求めた己の意思なのか、妖刀にそう誘導されているのかも分からぬままに。
「ふ、ふふっ……ある意味、私の願い通りとも言えますね。私が作り上げた妖刀を他者に握らせ、同じ体験をさせる。ですが、その刃では意味がないっ!」
「っぅ、踏んだ場数ばかりは小手先で埋められはせなんだか!」
ぐるり、と体をひねり返しより妖刀を解放するや、回転の勢いを利用して段三郎の体を袈裟に斬る。滴る鮮血が血霧となって舞い散り、真白い装束を穢す。痛手は痛手だが、剣戟の最中でも妖刀を通して生命力を奪い取っていた。傷の程度であればそれでトントンと言ったところか。
「ふはははははっ! 重ねた経験、切った人数。成程まったく、恐らくこの中ではそちらが断トツであろうよ。で、あるならば……広範囲を面で制圧するまでのこと」
身を切るような風、否、文字通り全身を切り裂く鎌鼬が発生し戦場を包み込んでゆく。その放ち手であるイデアールは嗜虐的な笑みを浮かべながら、風に翻弄される相手を泰然と眺める。
「如何な使い手とて、空を斬れる者など極々一握り……さて、その妖刀はそこまでの代物かな?」
「この程度、本来であれば……」
「本来? それは貴女の実力か、それとも妖刀の力か? 借り物で胸を張るなど、今日日幼子とて恥と知るよ」
妖刀の呪いを十全に発揮できさえすれば、この突風を突破することも可能ではあっただろう。しかし、体に張り付いた呪符が一瞬たりとも弱まる事無くそれを封じ続けている。
「……実際のところ、あとどれほど持ちそうだ?」
「まだまだ、と言いたいところだが……正直、そこまで余裕はないな。あの妖刀、刀としてはともかく、呪物としては相当業が深い」
相手に聞こえぬよう、そっとイデアールが津雲に問う。呪符を維持し続けている彼の気力体力はいまもじりじりと削られ続けている。玉のように流れ落ちる汗が、その厳しさを物語っていた。
「そうか。ならば……」
彼女は二言三言、津雲に耳打ちするや己が愛すべき友へと向き直る。
「仕掛け時だ。行こうか、フィーナ、夜姫」
「うん……分かった」
イデアールが風を維持する横で、夜姫がゆっくりと相手を照星に捉えるや引き金を引く。焔の花弁を曳きながら暴風の中を疾駆する銃弾を、人斬りもまた視界に捉えた。
「短筒の鉛玉、先ほどは後れを取りましたが……たかが二つ程度、私にとって児戯にも等しい」
生温かな風が銃弾を絡め取るや、妖刀の刃先が寸分違わずそれへと吸い込まれてゆく。一太刀で二発同時に断ち切る軌道。だがその向こう、射撃し終わった夜姫の口元が微かに動くのを視認する。
「うん、それでいい……だって、敢えてそうしたのだからね。ばーにんぐ、ちゃーじ。ふぁいやー」
刃が銃弾を両断した瞬間、内部に収められていた業炎の華が咲き誇る。至近距離でそれを斬ったため、人斬りの全身を炎が覆い視界を一瞬封じた。
「この、程度の炎……蹈鞴炉の熱量に比べれば」
「本命はこちらだよ。ヤれ! 色欲の触手!」
炎を突き破り現れるは、粘液に塗れた無数の触手。それらは風の勢いに乗って人斬りの全身へ絡みつくや、不快な感触と共に締め上げてゆく。無論、強度に乏しい為妖刀であれば容易く断ち切れる、が。
「そんなのはこっちも想定済みだ。だが、これならどうかな」
次いで現れたのは津雲。彼はイデアールからこの流れを聞かされるや、呪符の維持を中断し人斬りへと接近していた。拘束状態であれば、自慢の剣術も十全には振るえない。津雲は錫杖を人斬りではなく触手へと触れさせると、瞬時に凍結、相手の下半身を氷塊へと瞬く間に変えていった。
「これで最後! スパーンといっちゃいなさいよ!」
そして、それだけでは終わらない。相手が体勢を立て直したり、対策を考えつく時間を与えはすまいと、フィーナが一気呵成に畳み掛けた。人斬りの上半身に絡みついていた炎が収束するや、それは高熱の刃へと変貌する。狙うのは、当然。
「ま、まって……駄目、それだけは、ぁぁああああああああっ!」
人斬りの右手、詰まるは妖刀を握る利き手である。
――ザンッ!
人斬りの懇願も虚しく、炎刃は相手の右手首から先を妖刀ごと焼き切った。高々と斬り飛ばされる右手と妖刀、それは己の呪力を総動員し人斬りの元へと舞い戻ろうとするが、段三郎がそれを許さない。
「いまじゃっ! 儂の大火力の焔をもって、貴様を新たに鍛刀してくれようぞ!」
手にせし大太刀『化生炉』より、凄まじい熱量の焔を噴き上がらせる。妖刀もそれから逃れようと蠢くが、使い手より離れた刀剣などたかが知れている。使い手と共に在るがゆえに刃は刃足り得るのだから。
「その宿業、呪いの連鎖も今日ここまでと知れ!」
もし万全な状態であればこの熱量とて耐えきったことだろう。だが、戦闘開始直後より徐々に蓄積され続けたダメージがここで響いた。刀身の根元よりビキリとヒビが入ったと思うや、瞬く間にそれは砕け、溶けた鉄へと戻ってゆき……『化生炉』の一撃によって、新たな刃へと新生した。
「……これは戎の親の様なもの。人斬りがおなごだからの、さしずめ号は『伊弉諾』といったところか」
妖刀はこれにて無力化した。であれば残るは人斬りのみ。段三郎がそちらへ視線を向けると、ゆっくりと拘束された相手へ歩み寄るフィーナの姿があった。
「そんな……あれが無いと、意味が無くなっちゃう……強くなるために、斬ったのに。殺して、愛した相手だったから……」
段三郎の手に握られた元妖刀を見つめ、譫言のように言葉をこぼし続ける人斬り。フィーナはそんな彼女の頬を両手でがっちりと掴むや、自分の方へと向けさせる。そうして相手の両目をしっかりと見据えながら、言葉を紡ぐ。
「斬ったの殺したの、愛憎だの相殺だの。ごちゃごちゃと建前を並べているけど、あんたようするに1人じゃ寂しかっただけじゃないの?」
「さび、しい……」
「あんた自身、辛い思いしてきたんでしょ? 目を見ればわかるわよ!」
フィーナの言葉に、人斬りの瞳が焦点を合わせ始める。
強くなりたい、それは武人として当然の欲求だろう。だが、その為に愛する者を差し出すことを強いられ、己が手で殺すなど、初めから覚悟していたはずもない。愛の証明と信じたのは、そうしなければ心が壊れてしまうから。
もし、始めからそれを是としていたならば……そも、自刎などしていなかっただろう。
剣の強さを高めたとしても、心までは強くなれなかった。屍山血河を築き上げ、果ての孤独など彼女はきっと望んでなどいなかった。呪いに屈したと謗られればその通り。だが、心の強さを、人と人との愛を育む時間を与えなかったはそもそも妖刀なのだ。
「……例え、そう、だとしても。私には、もう……誰も」
「なら話は簡単よ! あんた私と一緒に来ればいいわ!」
フィーナの問いかけに、女は目を見開く。その瞳はこれまでの濁ったものではない。既に、彼女は妖刀の呪縛より脱している。故に人としての感情が戻ってきているのかもしれない。震える声で、女は問い返す。
「そんな、ことが……それに、私は、また人を……」
「何も問題無いわよ! それで困ったことがあったら私が何とかしてやるわよ!」
文句を言うやつが居たら私がぶっ飛ばしてあげるわ! そう胸を張る友人の姿に苦笑しながらイデアールも言葉を加える。
「犯した罪も妖刀と折半。ここで一度倒されたのであれば、まぁ清算は済んだと言えるだろう……こんなだがフィーナは信用に値する女だ、一緒にいて退屈しないぞ?」
少なくとも、孤独を感じることなどあるまい。そう悪戯っぽく笑う彼女を呆然に見つめ、人斬りはフィーナへ視線を戻す。
「本当にもう、私は、一人きりじゃ……」
「ええ、そう。今日ここで、あんたにとっての地獄も終わりにしてやるわ!」
そう断言し、フィーナは答えを聞く前に人斬りの首筋へと牙を突き立てた。返答など、もう決まっているという確信と共に。彼女は血液という命の証明を、相手の存在ごと魂へ取り込んでゆく。人斬りもそれを抵抗することなく、受け入れ。
「――あり、がとう」
彼女の姿はゆっくりと透明になり、フィーナへと吸い込まれてゆくのであった。それは骸の海へと消えてゆく無謬なものではない。未来へと歩み出す始まりであった。
―――さて。
人斬りだった女は消滅し、妖刀も鋳潰され新たな刀へと生まれ変わった。事件解決としての条件は満たしており、本来でならばこれで終わりである……が。
最後に、まだやるべきことがあった。
「ここからは蛇足と言ってしまえば、それまでなんだけどね……すまないけど、協力をお願いできる?」
「その為に今までずっと待ったんでしょ? ここで断ったら無粋に過ぎるわよ」
頭を下げるファンに肩を竦めるフィーナ。人斬りとして、罪を清算した。一人の人間として、先へと歩き出すことができた。ならば、一角の剣士としても区切りつけてやらねばなるまい。それがこうして戦った者への敬意であり、祝福であると信じるがゆえに。
「どうか、今一度の新たな生を歩むために……」
転生尽期。戦場に斃れた者を『本来の姿』で蘇らせる奇跡。戦闘中、絶えることなく練り上げ続けた術式はフィーナの中に留まる女の魂と結びつき、彼女本来の……妖刀に魅入られる前の肉体を再現することに成功した。
「っ……!」
持ちうる魔力をほぼすべて使い切り、急激な虚脱感に襲われた彼女は思わず体勢を崩しかける。
「大丈夫? もうちょっと、だから……頑張れ」
「さて、お膳立ては整ったぞ……行って来い」
「……ああ、ありがとう」
その両脇をペインと津雲が抱き留め、支えた。それに笑みと共に礼を述べながら、ファンは両足に力を籠め、女へと歩み寄る。
「あの、これはいったい……?」
「なに、貴女との戦闘はほぼ妖刀交じりだったでしょ。それに、二度も勝負以外の終わり方では、剣士として不完全燃焼かとも思ってね……余計なお節介だったかな?」
戸惑う女へ、己が原点とも呼べる白刀を複製し差し出す。
それに対し、女は瞠目し、目を閉じ、そして開き。
「ええ……一手、お願いします」
穏やかな笑顔でそれを手に取った。とそこに来て、突然思い出したかのようにあっとフィーナは声を上げる。
「そうそう、所であんた名前は? 立ち会おうってのに、名前も知らないんじゃ寂しいでしょ!」
「すみません、失念してました。そんな機会、中々なかったので。うん、そうですよね……人斬りでない私の名前は、涼音。帯刀涼音です」
「良い名前だね……さて」
女の名乗りを聞き届けると、両者は距離を取りつつ正対する。ファンは既に魔力が枯渇し限界寸前、女剣士もまた妖刀の底上げがなくなり、肉体は仮初。両者ともに疲弊した上、実力としてもほぼ五分と言ってよい。故に、勝負は一太刀、一合にて決するだろう。
「それじゃあ、いざ尋常に……」
「……勝負!」
猟兵としての任務ではない、純粋な仕合。仲間達が見守る中、両者は距離を詰め、得物を振るい、刃が触れ……そして。
「ふっ……なんだ。妖刀などに頼らずとも、充分に強いじゃないか」
「いえ、万全であれば負けていました。でも、ええ。勝ちは勝ち、ですね」
ファンの手から刃は落ち、涼音の刀はしっかと握られていた。勝敗は誰が見ても明らかだ。最早体力の限界と、体勢を崩しその場へ崩れ落ちた好敵手へ、女剣士は手を差し伸べる。その手を握り返すファンを立ち上がらせながら、彼女はまじまじと自らの掌を見つめた。
「……こうならなければ、またこうして誰かの手を握ることもなかったんですね」
それはかつての彼女が最後まで求め、骸の海へ落ちてもなお這い上がった理由。女剣士は自らと刃を交わした猟兵たちを、瞳へ焼き付けるようしっかりと見つめると、深々と頭を下げる。
「改めてお礼を言わせてください。本当に……ありがとうございました」
顔を上げた彼女の表情は文字通り憑き物が落ちたような、それはそれは晴れ晴れとした笑顔であった。
斯くして、過去より現在へと続きし悲劇と惨劇はこれにて終わりを告げた。もう二度と、妖刀に魅入られし孤独な人斬りがこの世に這い上がってくることはないだろう。
サムライエンパイアが妖刀『愛憎相殺』蹈鞴場占拠の段――大団円と相成りまして、これにて閉幕。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年03月04日
宿敵
『妖刀に魅入られた孤独な人斬り』
を撃破!
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