闇の救済者戦争⑬~傷だらけのオウサマ
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「お疲れさま。次に向かってもらう場所は、第五層にある『月光城砦群』と呼ばれる領域さ。まずは、これを見てくれ」
グリモア猟兵ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の持つキューブ状のグリモアが映し出したのは、ダークセイヴァー第五層の風景だ。青白い月の光に照らされた巨大な建造物が、闇の中にひっそりと佇んでいる。
「この古城は、大昔に『第五の貴族』が建てた月光城の一つだ。異端の神々と戦うために、吸血鬼が造った基地だと言われている……。今からここへ向かって、城に住み着いた主を倒してほしい。この城主が、『禁獣ケルベロス・フェノメノン』に纏わる重大な弱点を守っているかもしれないんだ」
ダークセイヴァーに突如現れた、謎の存在ケルベロス・フェノメノン。『|五卿六眼《ごきょうろくがん》』の元を目指す猟兵達の行く手を阻むこの魔物は、自らの弱点を体から抉り出し、『欠落』と呼ばれる謎のアイテムに換えて何処かに隠してしまった。
「調査の結果、その『欠落』が月光城砦群のどこかにあることが分かったんだ。ここを制圧すれば、『欠落』の正体を暴きだし、破壊することで、ケルベロス・フェノメノンの『無敵能力』を無効化できるだろう。奴を撃破するため、何としても『欠落』を見つけ出さないといけない。協力してくれるかい?」
ガーネットの説明によると、城を預かる守護者は、『月の如く煌々と輝く、異形の身体部位』を移植される改造を施されているという。これも、謎の『紋章』の力なのだろうか。
「おそらく、五卿六眼の誰かが、そいつに力を分け与えたんだろう……。その影響で、敵は通常のユーベルコードに加え、『およそ通常の生物では不可能な、生命体の構造を無視した奇怪な挙動』が可能となっている。トリッキーな戦法を得意とする敵だから、戦う時は常識に囚われず、あらゆる状況を想定して動かないといけないかもな」
ガーネットの情報によれば、敵は異端の神々の血肉を喰らい続けた、一本の黒剣の成れの果てだという。漆黒の外装から炎を放ち、手足を鋭い刃に換えて攻撃してくるだろう。
「……かつて、或るダンピールの騎士は呪われた魔剣を振るい、多くの吸血鬼を打ち倒していた。だが増大した力は暴走し、遂には持ち主をも取り込み支配してしまった。今となっては、強者の血肉を求める一介のオブリビオンさ。皮肉なものだね」
より強い半人半魔の存在となるため、本能的にダンピールを狙う傾向にあるという。この特徴は、作戦に活かすべきだろう。
「それと、城の中は外敵を迎え撃つために様々なトラップが仕掛けられているよ。ギロチンの刃が飛び交う通路や、奈落の落とし穴へ誘う鎖一本で支えられた床とかね。他にも何が仕込まれているか分からないから、細心の注意を払ってほしい」
強化改造を施された敵と、罠で満ちた戦場。どちらにもしっかり対処しなければ、勝利は叶わないだろう。
「それでは、準備が出来た人から現地へ向かってくれ。くれぐれも気を付けて」
弥句
こんにちは、弥句です。よろしくお願いします。
このシナリオは戦争シナリオで、「ボス戦」1章のみの構成となっております。このシナリオの結果が、「闇の救済者戦争」の情勢に影響を与えることになります。
また、以下の条件を満たすことで、判定に有利なプレイングボーナスを得ることができます。
プレイングボーナス……異形の身体部位から繰り出される攻撃に対処する/城内のトラップに対処する。
シナリオの難易度は「やや難」になります。強敵ですので、場合によっては苦戦を強いられる相手かもしれません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『彷徨える黒剣』
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POW : 黒剣覚醒・時間加速
自身の【外装】に覆われた【神器】が輝く間、【黒炎を纏う黒剣】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : 黒剣覚醒・時間遡行
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【宿主のダンピールの寿命】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 黒剣覚醒・時間転写
自身の【宿主のダンピールの寿命】を代償に、【複数の過去】から召喚した【自分自身】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【自身のユーベルコード】で戦う。
イラスト:猫背
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「リーヴァルディ・カーライル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サク・ベルンカステル
「呪われた魔剣で吸血鬼を倒し続けたダンピールの成れの果て、か」
まるで自身のことだと感慨にふけりそうになるも
「より強い半人半魔となる為に新な宿主のダンピールを狙うとは干渉に浸る間もないな」
事前情報と目の前の存在から察するに鞭のようにしなる黒剣も、そして纏った黒炎の鎧も人体の関節という構造を無視して動くはず。
ならば受ける手を増やす。
背の4本の随行大剣を前方から側面に展開し死角をなくし技能武器受けで想定外からの攻撃を防ぐ。
UC黒剣解放(POW)を使用し正面から斬り会う
戦う場所が変わりギロチンの飛ぶ通路は黒剣や随行大剣で武器受けし、落とし穴のある床はUCの効果で飛翔したり随行大剣を足場とし蹴り上がる
夜刀神・鏡介
異形の肉体となって尚、力を求める……微妙に通じるところはあるが、それでも。俺と奴は違う。と神器化した左腕を見ながら
神刀の封印を解除。神気によって身体能力を強化しつつ、澪式・捌の型【炎舞】の構えを取る
下手に動き回って罠を起動させるのも面白くないので、一旦安全を確認できた地点で敵と相対
通常の生物では不可能とは言っても、生物……肉体である以上は動く時に予備動作が発生する筈
まずは防御に専念する事でそれらを見極めて、確実に攻撃を捌いていく
きちんと攻撃を見極めたところで反撃に入る。最初に狙うのは異形の身体部位……後から与えられた分、元々の肉体より脆い可能性があるし、上手く潰せればその分有利になるだろう
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ歓迎
異形の神に触れた物は、こうして悍ましい物に変化していっちゃうんだね…
それに、こんな形で利用されてるなんて
静かに眠らせてあげたいの
結界を張って距離を取って、牽制の攻撃魔術を撃ちながら観察するの
電脳空間アクセス、魔力ソナーで周辺の罠を観測、位置とタイプを把握なの
飛び道具は結界表面からの接触データで解析、近接攻撃は狼の脚力でなんとか距離を保つの
う、追い詰められていくの…
あ、しまった…っ!
その時に鎖突きの銛が大量に撃ち込まれるトラップが発動
生後10ヶ月程度の子狼に変身して狙いを反らしながらさっとその場から離脱
上手くいったの!
この機は逃さないの
人間に戻ってUC発動
全力でいくよ!
瀬河・辰巳
魔を利用して魔に喰われた同胞、か。己に流れる吸血鬼の血で狂う奴だけで十分なのにな。
トリッキーな戦闘ならトリッキーに対応するまで。UCで影化し、オトモダチ(影)を先に行かせたり、野生の勘等を頼りにしたりして暗闇や影を渡り歩いてトラップや攻撃を回避。
戦闘は敵との距離が少しある場合はトラップの近くに移動し、突っ込んで来る時に別の影に逃げて敵をトラップにかける等、逆にトラップも利用する。
トラップがなくて足場が安定した場所があれば自分を囮にし、来たら敵の足元の影へ移動して攻撃してやろう。
メフィス・フェイスレス
こういうのは数がいるわね
UCで体から湧き出す「飢渇」の群れを飛翔させ、城内に散らばらせて罠らしきものを手当たり次第に「捕食」し破壊していくわ
「飢渇」を包囲させるように嗾けながら自身も「骨身」の刃を振り上げ躍りかかる
敵の刃に腹を胸を首を頭を、本来急所とされるような箇所を貫かれても
焔を浴びて肌が焼け爛れても意に介さない
逆に刃を自身に押し込むように間合いを詰めて「骨身」を突き刺し返して羽交い締めにし、至近に迫り囁く
――別に、バケモノみたいな動きはアンタ達の専売特許じゃないって事よ
今よ、やりなさい
動きを止めた敵に、ソレを拘束する自身諸共「飢渇」の群れが喰らい付くと共に「微塵」と化して爆散する
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石造りの古城は至る所から隙間風が吹き込み、体の芯まで冷やす空気で満たされている。闇が支配する広大な城内に、金属を強く打ち鳴らす音がこだまする。
剣戟だ。既に、この月光城を守護するオブリビオンと猟兵は戦闘に突入していた。刃を閃かせ、激しく斬り結ぶ彼らを、青ざめた月だけが見ている。
随行大剣を従えた、銀髪の美影身が空中を翔ける。処刑具の刃が絶え間なく飛び交う、広い部屋の中。足場は不安定で、太い鎖一本で吊られた床の下には、底知れぬ奈落が口を開けていた。
魔剣の操り手サク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)は黒剣『漆黒ノ魂滅』から噴き出したオーラを帯び、空中を疾走する。四本の随行大剣を操りながら、振りかぶった黒剣を目の前の敵へと叩きつけた。
「呪われた魔剣で吸血鬼を倒し続けたダンピールの成れの果て、か」
サクが相対するオブリビオンは、黒い甲冑を纏った騎士のような人型をしている。ただし、体の至る所から棘のような器官が生え出していた。特に目を引くのは、腰から伸びた蜥蜴の尾のような鞭状の触手と、背中から生えた蝗の翅。それらは空に浮かぶ満月の如く、煌々と輝きを放っていた。
騎士の姿形を取りながらも、籠手や具足は鉤爪へと形を変えて。時に床に這いつくばり、獣じみた動きで飛び跳ねて猟兵を襲う。
「俺の体にも、忌まわしい吸血鬼の血が流れている。ダンピールのよしみだ、他人事とは思えんが……」
己自身が新たな宿主にされるわけにもいかない。感傷に浸る間もなく、サクは剣を振るい続ける。
「魔を利用して魔に喰われた同胞、か。己に流れる吸血鬼の血で狂う奴だけで十分なのにな」
「異形の神に触れた物は、こうして悍ましい物に変化していっちゃうんだね……」
とぷり、と動物の影の中に下半身を潜らせ、魔獣の姿へと変じていくのは瀬河・辰巳(宵闇に還る者・f05619)。そして人狼の術師ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、対峙する漆黒のオブリビオンに憐れみを向けつつも、彼の者を討つべく術式を編んでいく。
「あれが、化け物を斬り続けた剣士の末路ってワケ?」
黒いマントの人影が、ぱさりとフードを取る。すると、金眼の女の精悍な素顔が露わになった。濃密な死の気配を放つ彼女の名は、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)。骸を繋ぎ合わせる狂気の実験によって生み出された、デッドマンの猟兵である。
メフィスは飢餓の衝動を具現化させた自身の眷属『飢渇に喘ぐ』を、マントの中から次々と放っていく。
「まあ、誰が相手だろうが関係ないけどね。アンタは、私の飢えを満たしてくれる?」
暴食のユーベルコード【腥風に集る】が発現し、『貌無し』の異名を持つ吸血鬼狩りが獰猛な牙を剥いた。
優に1300を越える「飢渇」は、変幻自在に形を変えることができる。蝙蝠、梟、吸血蟲……鋭利な爪牙もつ無数の眷属が、月光城に解き放たれた。
「できるなら、彼を静かに眠らせてあげたいの」
ロランは後衛に控え、電脳空間にアクセスして、魔術陣『岩穿つ水滴の連なり』を起動させた。前情報で得ていた、城内に仕掛けられているトラップの種類や配置を魔術ソナーによる音の反響で特定していくのだ。うまく味方に伝えられたら、戦闘を優位に運べるだろう。
「こいつらは悪食でね、罠だろうと何だろうと餌になるのよ」
飛び立ったメフィスの『飢渇』がロランの術に導かれ、文字通り罠を貪り、破壊していく。トラップは大量に仕掛けられているとはいえ、無限ではないのだ。少しずつ数を減らしていけば、やがて勝機に繋がることになる。
「異形の肉体となって尚、力を求める……か」
揺れ動き、時に傾く床の上でバランスを保つ夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の肉体は、今も緩やかに『神器』と一体化しつつある。刃を持って相対する目の前の敵に、幾ばくかのシンパシーを覚えたのは事実だ。
「それでも、俺と奴は違う」
目に映るモノ全てを敵と見なし、血を啜り続け、かの騎士は冥府魔道へと堕ちた。『真に斬ると決めたもの』のみを斬る。それこそが、鏡介が振るう神刀【無仭】と神腕【無涯】に込めた誓いだ。
「ギャウウウッ!」
獣じみた唸り声。空中を疾走するサクの魔剣に追い立てられ、黒騎士が鏡介の目の前に落下してきた。着地の瞬間、鏡介と黒騎士が顔を見合わせる。間髪入れず、黒騎士は異常発達した刃状の腕を鞭のように振り回し、鏡介に躍りかかった。
「見た目以上に、間合いが長いな」
咄嗟に神刀を横薙ぎに振るい、斬撃を弾き返す。奇襲に失敗した黒騎士は蝗の翅を羽ばたかせ、再び猟兵の頭上へ。背中から黒炎を噴出させて推進力に変えると、飛翔しているサクへと飛び蹴りを放った。
「来い、魔剣共!」
随行大剣をクロスさせ、重い蹴撃を空中でガードする。だが、勢いが止まらない。獣の咆哮と共に、黒騎士は蹴り足でサクを壁へと押しつけていく。
「――グオオオオオッ!!」
「……馬鹿力が!」
サクの皮膚の上に、冷たい汗が滲む。蹴り足を覆うように、輝く棘が急発達していく。このままでは、サクの躰は貫かれ、壁に縫い付けられてしまうだろう。
「おい……俺もいるんだぞ」
「!」
無防備な背中に向けて、背後から何かが突き刺さる。影の中から半身を乗り出した辰巳が、『樹海の祈り』で矢を射掛けたのだ。
「こっちも狙えよ」
影から影へ。水中へ潜るように移動を繰り返しては弓を絞り、呪いの矢を放つ。辰巳もまた、森で育ったヴァンパイアの混血児である。
「殺ス……!」
機械で加工されたような、奇怪な声が兜の奥から洩れた。辰巳を標的に定めた黒騎士は、弾かれたように体を反転させて宙を翔けた。
「よし……掛かったな」
この敵が、ダンピールの猟兵を優先的に狙う傾向にあることは事前に知っていた。攻撃すれば、高確率で反撃してくるだろうと辰巳は踏んでいた。
「ガァッ!!」
だからこうして、ロランが導き出した『鎖付き銛』の発射地点を情報共有することで、相手を罠に嵌める。撃ち込まれた銛は、致命打を与えるには至らないだろう。だが、猟兵が攻勢に出る隙を作るには十分だ。
「この機は逃さないの!」
大気が震える感覚。ロランの魔術回路が急速に活性化し、魔道具を媒介とした強力な結界魔術が発動する。超常の存在に対抗するヒュッテンブレナー一族の切り札、消散結界【mondo vuoto】が、戦場となった部屋全体に展開されていった。
敵対する者の超常の力を拡散・吸収することで弱体化を図る術式。発動までに時間はかかるが、強力な攻撃手段だ。
「先程の攻防で、お前の動きを見させてもらった」
神刀を構え、鏡介が一気に踏み込んだ。鏡介は、敵が行動に移る前の予備動作に着目していた。異形の身体部位を与えられたとはいえ、生物的特徴を持つのならばその部位がどう動くか、予測はつく。
「シャアアッ!」
「焔の如く――澪式・捌の型【炎舞】」
黒騎士が振るった異形の尾を一度受け、返す刀で斬り飛ばす。神氣を纏った刃が無駄のない動きで一閃されると、切断された尾の一部がゴトリと地に落ちた。
「じゃあ、そろそろ私も本気でいくわよ」
マントの下のメフィスの褐色の肢体が軋み、捩れていく。痛々しい音と共に肉体が変形し――骨が突き出た。
「アンタも、どうせ簡単には死なないんでしょう」
鮮血の滴る骨の剣を構え、黒騎士へと斬りかかるメフィス。自らを縛り上げるロランの結界術に抗いながら、黒騎士は鎧の隙間から黒炎を噴出させた。
「オマエノ命ヲ……食ラッテクレル!」
肉体に干渉する時間を急速に遡行させ、奪われた力を取り戻す。依り代としたダンピールの寿命を燃料として、黒炎は激しく燃え盛る。斬撃を打ち込んだメフィスの肌が焼かれ、彼女の血肉の焦げる悪臭が辺りに漂った。
「――別に、バケモノみたいな動きはアンタ達の専売特許じゃないって事よ」
刃渡りを伸ばした黒剣に腹を貫かれながらも、メフィスは攻撃の手を止めなかった。血の泡を吐きながらも黒騎士に組み付き、骨の刃を脇腹に突き立て、叫ぶ。
「今よ、やりなさい」
主の呼び声に応じて、『飢渇』の群れが殺到する。鎧の炎に焦がされながらも塊となって纏わり付き、その身に帯びたエネルギーを解放し爆裂、『微塵』となって四散した。
「グ……アァ……!」
爆発の衝撃を受け、授けられた輝く異形の部位がぼろぼろと剥がれ落ちていく。翅を失い、床から足を踏み外した黒騎士が、地下へと堕ちていく。
「――お前も騎士なら、騎士だったのなら」
剣を振りかざし、サクが闇へと身を躍らせた。目の前のオブリビオンにではない。今や微かに意識の残滓を残すのみとなった、ダンピールの男へと言葉をかける。
「せめて華々しく散れ」
黒い片刃の大剣『黒刃紫輝』に力を込め、渾身の斬撃を振り下ろす。甲冑を潰すように叩き斬ると、騎士の躰は血の代わりに噴き出した炎に焼かれ、奈落の底へと消えていった。
大成功
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