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闇の救済者戦争⑯〜人理を砥ぐ

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争

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#闇の救済者戦争


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 ダークセイヴァー第三層。
 この階層の地の中心部には天地を貫いてそびえ立つ、巨大な『絡み合う血管の樹』がある。ダークセイヴァーの大地で流れた血はすべて、この天蓋血脈樹を通って「始祖ヴァンパイア」に捧げられているのだという。
 壊滅した砦を守る者たちの血、襲撃に殺された集落の者、無垢な赤子も、育まれ学び立つ子も、口伝に知恵を授ける老人も。
 犯罪者、ヴァンパイアに使える者、利敵行為に暗躍する者も。
 善人の血も悪人の血も魔獣の血も。すべての血が捧げられる。

 この血脈樹から『鮮血の洪水』を溢れさせるわけにはいかない。敵の目論見叶えば訪れるのは第三層以下の絶滅。
 故に猟兵は血脈樹を上ってより上層を目指す。
 宙を翔け、樹上を駆け、天蓋血脈樹を行く猟兵たちに常闇が降りてくる。叩き落とされる重厚な天幕の如き暗黒の帳。
「そこまでだ」
「これ以上の侵略は許さぬ」
 常闇の女王『イザナミ』が――ライトブリンガー配下のオブリビオンたちが闇の帳に乗って次々と降りてくる。
 強い力を持つオブリビオンが多数。
 この女王は、倒すには一体につき複数の猟兵の力を必要とする相手。
 蒼月のような軌跡。奈落之矛は当たれば、猟兵に死を錯覚させる重い一撃だ。
 常闇のなか泳ぎ始めたたくさんの魂喰の死魚は生の気配に寄ってくる。無論、猟兵はいい餌となるだろう。

 紋章など必要としない強力な敵を殲滅するのは猟兵と言えども不可能だ。
 ここは敵陣営の薄い箇所を突き、一点突破するしかない。
 敵を誘い、隙を作るか。
 真っ向から撃ち合い、この虚空の戦場で活路を開くか。
 得意とする戦法、勝率の高い戦法、搦め手。一瞬にして猟兵たちの脳裏に過っていく作戦。

 強大な敵から見れば、猟兵の存在、猟兵の刃は蟷螂の斧かもしれない。
 だが猟兵は――この闇の世界に住まう者は、刃を砥いできた。
 生き抜くための刃。
 優しくあるための刃。
 生きるために、守るために。
 その刃は、時に同郷の者を傷つけてしまったこともあるだろう。
 苦しみ抜き絶望した者に向けたこともあるだろう。
 猟兵の側にある血脈樹が蠢く――今日こそ、振るうに相応しき日だと、伝えるように。


ねこあじ
 ねこあじです。よろしくおねがいしますー。
 闇の救済者戦争「⑯天蓋血脈樹・👿始祖親衛隊」

 多数の敵、常闇の女王イザナミが現れています。血脈樹を守り、猟兵の襲来を防ごうとしています。
 すべての殲滅は不可能なので、陣の薄い箇所を突き、一点突破で敵の守りを破りましょう。

 プレイングボーナスは、【敵の守備の最も薄い所だけを突く】です。

 採用はなるべく頑張るの方針ですが、無理だった時はすみません。
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第1章 ボス戦 『常闇の女王『イザナミ』』

POW   :    常闇の檻
【奈落之矛】より【迷宮化を齎す暗黒の帳】を降らせる事で、戦場全体が【一切の光が消え失せる常闇】と同じ環境に変化する。[一切の光が消え失せる常闇]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    黄泉送り
【強烈な死のイメージを与える力】を籠めた【奈落之矛】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【魂】のみを攻撃する。
WIZ   :    魂喰の死魚
召喚したレベル×1体の【黄泉魚】に【生者の魂を感知して、それを喰らう能力】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:某君

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ

「真っ暗闇か。だが、やりようはある!
仙衣起動!夜闇を導け『導蝙蝠』!」
[仙術]によって召喚した蝙蝠を無数に飛ばして迷宮を攻略していく
途中でイザナミの攻撃があれば[勇気]で避ける
或いは[オーラ防御]で防いで先へと進む

迷宮を抜けたら、UCを発動して焔を纏う
コレまでの蓄積ダメージも回復していく
その進撃を邪魔してくるイザナミの攻撃を受けても止まらない
痛みはあるし苦しいが、それらを[気合い]でねじ伏せる
「この程度でオレは止められない!」
逆にドンドン出力を上昇させていく

「アンタ達はそこまでだと言ったな?
いいや、此処からさ!オレ達猟兵の反撃は!」
イザナミ達をぶっ飛ばして通過する



「光無き常闇のなか、永遠に奈落を彷徨え! 猟兵!!」
 常闇の女王・イザナミ一体の声に、常闇の中の彼女たちから鯨波が起こる。
 目に映るものすべてを喰らうかのような闇が空桐・清導(ブレイザイン・f28542)たち猟兵へと襲い掛かり、光を未来をと物理的に遮断した。
「真っ暗闇か。だが、やりようはある! 仙衣起動! 夜闇を導け『導蝙蝠』!」
 清導の声を共に真紅のブレイザインに刹那の光が駆けた。仙衣『封神之焔』を纏った清導はすかさず仙術を繰り出す。
 仙術に顕現するは無数の蝙蝠だ。迷宮を齎す暗黒の帳の中を飛んでいく。
 蝙蝠たちは声帯を調整し、超音波を放つ――適宜周波数を変えていく超音波は闇の深度、奈落空間と血脈樹との距離、イザナミの位置取りなどの情報を反響によって得ていった。
 イザナミに気取られない周波数を放つ蝙蝠たちの働きは秀抜である。
 仲間の蝙蝠を伝い共有される音波を受け取る蝙蝠が清導の行くべき方向を先導した。
「こっちか!」
 空を切る音は敵が振るう奈落之矛のもの。
 清導の足元を翔け抜けていった新たな闇は重力の変化をもたらしたが、蝙蝠の道案内は変わらず。故に清導も蝙蝠を信頼して駆けていく。
 やがて常闇の覆いが薄くなり、清導の速度を追うことができなくなった敵のユーベルコードの果てが顕現した。ざあっと闇が払われていく光景――相変わらずダークセイヴァー世界は闇夜で、近くには天蓋血脈樹。
 光がないぶん、闇との差に目が眩むこともない。
 それはいいことだと思い笑む清導。彼の表情はおひさまのように晴れやかだ。
 だがイザナミも黙ってはいない。奈落の闇を纏い、真下に向く降下姿勢からさらに加速して落ちてくる。奈落之矛の穂先は真っ直ぐに清導へと向けられている。
「その程度でオレは止められない!」
 清導が発動するはフェニックス・メテオ。焔纏えば巨大な鳥のような炎となり、最初のイザナミの一刃が払われた。
 次手イザナミの、長柄を振るう動作を視認した清導は上昇飛翔を加速させる。
 一瞬にして目標を見失ったイザナミの「追え!!」と叫ぶ声。そして、
「止まれ!!」
 思わずといった叫びに応じる猟兵はいないだろう。
 清導とてそうだ。焔鳥の翼は希望の光の如く、血脈樹を、ダークセイヴァーの昏き空を照らしていく。
「アンタ達はそこまでだと言ったな? いいや、此処からさ! オレたち猟兵の反撃は!!」
 彼のスピードに追いつける敵はいない。
 輝赫の翼は常闇の女王の陣を突破し、昏き空のさらなる天を目指し翔けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリク・エネコ
WIZ対応
アドリブ・連携〇

●心情
立ちふさがる敵は全て蹴散らしてやる。僕はそう簡単には負けてあげないぞ……覚悟しろ!イザナミ!

●行動
集団の中に必ず脆いところがあるはずだ。ならば指定UCで「陽動」を使い僅かな時間を稼ぐぞ。
黄泉魚もイザナミも花火に目をとめてるうちに集団の足元を駆け走りイザナミに接近。
そして近距離から花火魔法の「属性攻撃」をお見舞いしてやる!
僕だってやる時はやるんだ!



 自らの魔力と魔法で血脈樹の近くを翔けあがっていくエリク・エネコ(夜空に咲く花・f36407)の行く手を数多の常闇の女王が阻もうとする。
「猟兵一人とて突破させるな!」
「それが小さなケットシーでも、例え蟻の者でもだ!!」
 闇の帳が広がる空に彼女たちの鯨波が巻き起こった。
 それがエリクのケットシーの耳をびりりと打つ。
 エリクの日入り日出る薄明を思わせる目が鋭くなった。立ち塞がる敵はすべて蹴散らしてやる――血脈樹の攻略開始前、エリクはそう誓った。
 ダークセイヴァーの人々を守るため。
 すっかり燻ってしまっている彼らの尊厳を熾すため。
 闇夜に閉ざされた世界で明けの薄明をもたらすために。
 民を救う。どの世界の王系も民のため決断している。異なる世界においても、民と王の関係は変わらない。
 ――瞬く間に魂喰の死魚『黄泉魚』の大群が血脈樹の周囲を覆った。空を海のように回遊する黄泉魚……否、喰らう獲物を見つけた彼らの動きはまさしく一斉。秩序すら感じる光景であった。
 向かってくる黄泉魚と彼我の距離はまだある。そう判断したエリクは魔法剣を手ににゃむにゃむと呪文を唱える。
 発動されるは花火魔術『夜癒華』。現れた線香花火は美しい焔の舞を魅せてくれた。
 大きな火の球ができてゆく牡丹、元気に弾ける焔の松葉は彩り豊か。
 闇夜のダークセイヴァーでも、常闇の奈落でも、見ることのない焔舞と色彩はイザナミたちと黄泉魚の注意を引いた。
 血脈樹に纏わりつく敵たちの気配が一斉に花火魔術へと向けられた隙に、離れた場所にいるイザナミ目指してエリクは翔けた。
 近付き、即座に施すは新たな花火魔法。
「覚悟しろイザナミ!」
「!?」
 浮遊する敵を花火玉に見立て、血脈樹から離すように飛ばすエリク。
 虚空に響き渡る爆音の波紋。闇夜を払うように音が抜けていくなか、拡がるは鮮やかな花火。
 光は気配を長く残し、昏き世界の空へ刹那にブルーアワーの色がしばらく顕現したのだった。
 これは常闇なき時間帯。
 ダークセイヴァーをゆく皆が願う、明けのひととき。

成功 🔵​🔵​🔴​

フロウヴェル・ゼフィツェン
あの敵、みんな強そうなの…。
でも、ここを突破しないと、きっとフォーミュラの処へは行けないと思うから。
頑張っていくの。

ヘレティック・ハーツの反応を元に、オブリビオンの数が一番少なそうな場所を【索敵】。
見出した場所を一気に駆け抜けて突破するの。

敵に見つかったなら、形態変異・闇夜種で変身して迎撃を躱しにかかるの。
人狼形態で身体能力を強化して加速したり、堕天使形態で飛行し敵を飛び越えたり、霧化形態の霧変化能力で攻撃をすり抜けたり。
勿論、敵も対応してくる可能性は常に考慮しておくの。
左右へのステップやフェイントも交えて【残像】を形成、敵の攻撃の狙いを逸らしながら走り抜けていくの。



 広がる常闇。
 そのなかで真っ直ぐに立つ血脈樹。
 純白の外套とドレスを纏い、駆け上っていくフロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)は、まだあるはずのない天の果てを見た。
 光さんざめく水面のような、揺らぐような果て。否、
「あれは……」
 鰯の大群のように泳ぐ黄泉魚たちだ。さらに血脈樹は闇に覆われて先は見えない。
 変化し続ける景色は先を行く猟兵たちが躱し、闇を払っているだろうことが分かった。
「……あの敵、みんな強そうなの……」
 フロウヴェルは猟兵たちを阻む常闇の女王たちを視認しそう呟いた。
 だがここを突破しないと五卿六眼の処へはたどり着けない。天蓋の先は……きっとダークセイヴァー第二層。
 第四層から常闇の燎原が踏破へと至り、入った第三層は魂人としての転生先。死から苦しみの生へ。
 きっと第二層はさらなる地獄が待っていることだろう。
 それでも行かねばならない。
(「頑張っていくの」)
 フロウヴェルはこくりと頷いた。

 ヘレティック・ハーツの脈動を掌に感じ取りながら、フロウヴェルは脈動が弱くなる方向を定める。そこがイザナミの少ない場所、すなわち一気に突破できる見込みある部分となるのだ。
「……ここなの」
 宝珠の反応の一番弱い部分、その経路を見出したフロウヴェルは駆けていく。
 赤と闇の世界の、穢れなき曇りなき純白。
 染められぬ白は奈落になき色。
「それ以上の立ち入りは許さぬ!」
 一体の女王の言葉とともに奈落之矛が翻るのが見えた。空を叩く長柄の重い音――降下する敵との彼我の距離を見据え、フロウヴェルは形態変異を自らに施す。
「吸血鬼の姿は自由自在、見て驚くがいいの」
 黒翼を得たフロウヴェルは一気に距離を詰めるように飛翔し、敵の目測を見失わせた。
「!」
 翻弄するように大きく横へと飛び立てばイザナミは遠心に身体を持っていかれ、立て直しに三拍ほどかかるだろう。そう読んだフロウヴェルはそのまま天を目指して飛翔する。
 常闇の女王の陣が薄い部分とはいえ対応してくる女王も当然いる。
 横合いから飛び込んできたイザナミが奈落之矛を振るったその瞬間、フロウヴェルは斬線上の胴を飛散させての霧化。そのまま全身を魔霧形態となり刹那の戦場を抜けていく。
 魔霧が残していくのは自身の気配だ。霧粒に映したフロウヴェルが無であることを敵が気付くのは攻撃したあと。矛の返しは速いが、猟兵たちの狙いはこの場を駆け抜けていくこと。
 一拍、二拍が時間稼ぎとしては十分ともいえる。
 瞬く間を見事猟兵の手に収め。女王の群れを背後に、フロウヴェルは再び天上を目指していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
ここを突破して血の洪水を絶対に阻止しましょう

猫耳やお髭がぴくり
音を頼りに回避しながら
生命賛歌の曲を奏で死のイメージに対抗

炎の魔力で五線譜を具現化
当初は炎の輝きが消えているかも知れませんが
それで構いません

ツクヨミさん達へ、と見せかけて
暗黒の帷そのものへ放ち
魔力で消去したり
帷という力を遠方まで吹き飛ばします

帷がなくなれば
迷宮化や常闇は解除されます

更に演奏を続ければ
輝きを取り戻した五線譜が
太陽の如き朱の輝きでツクヨミさんを圧しながら
ツクヨミさん自身やその手の矛を吹き飛ばします

そこをランさんに騎乗して一点突破

終幕
演奏を続けて鎮魂とします

全員お還し出来ないのは少々心苦しいですが
今は先を急ぎましょう!



 猟兵たちを妨害するイザナミの鯨波とともに降りて来たのは一切の光が消え失せる常闇。
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の艶やかな黒い毛並みよりも昏く、たった今しがたまで感じていた血脈樹の脈動の音も吸い込まれ消えてしまうほどの奈落の闇。
「いいえ。確かにここにあるはずです」
 耳を澄ませて音を、猫のヒゲで微弱な空気の振動を感じ取ろうと、仄々は目を閉じ周囲の様子に集中した。
 奈落之矛が空を切る音、塗り込めるように新たな常闇が駆けていく音は深淵そのもので。
 奈落に呑み込まれた者は今のところはそのまま放置されるらしい。女王から発される音は近づいてこない。
 くるうり。と自身を回しながら確かめていた仄々は、ふと、とくりとくりと血脈樹の動く音を捉えた。音、というか『震動』。
 それはダークセイヴァーを奏でる音のひとつ。
 ダークセイヴァーで流された血は誰かの命、誰かの時間。
「……ええ、そうですね」
 にこりと仄々は微笑んだ。常闇のなか、独りではないと思えたのだ。そうだ。仲間の猟兵たちが皆、上を目指している。ダークセイヴァーで流された血が側にある。
 皆、昏き世界の明けを得ようとして様々な死線を繰り広げている。
 第三層に転移された第四層の者たちの戦い、猟兵の戦い、皆にとって負けられない戦いが今はたくさん。
「ここを突破して血の洪水を絶対に阻止しましょう――さあ、行きますよ!」
 常闇の中でも時間は進む。長針ひとつ進んだ懐中時計形状のカッツェンリートを竪琴に変えた仄々が奏でるは生命賛歌。
 自らの魔力を炎のものへと変化させる、力強い旋律が奈落に響き渡っていく。
 音が闇に吸い込まれようとも音色の届く範囲は仄々を中心に徐々に広くなっていき、一切の光を通さぬ奈落に焔がちらちらと浮遊する。それは蛍火のようにも見えた。
 小さな焔が少しずつ伸びて、隣の焔と繋がって、そうして線を描いていく。誰かと繋ぐ縁のように。
 炎の魔力で具現化された五線譜はぐんぐんと伸びていく――常闇を押し出すように。
 ユーベルコード『喝采のファンファーレ』の譜が闇の帳を切り裂き払っていく。
 元の場所へと戻った仄々が奏で上げる音楽と五線譜は力を増して光り輝き、周囲の常闇の女王たちを遠ざけていった。
 敵は昏き世界にない輝きに一瞬怯んだのだ。
 闇に描かれる五線譜たちのたなびきは、不死鳥の翼の如くそして太陽の如き朱の輝き。
「ランさん!」
 仄々が告げれば顕現された目旗魚は、主を乗せてすいっと泳ぎだす。遠ざけたイザナミが我に返った時にはすでに一点突破済みだ。
 血脈樹を目に上昇するランさんと仄々。
「今は先を急ぎましょう、ランさん」
 強大な敵との戦いが天上ではあるだろう。
 そこはきっとダークセイヴァーの第二層。まだ誰も見ぬ世界。
 どんな景色があるのか。緊張と警戒を胸に、仄々は血脈樹を攻略していく。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス
ったく、作り物の月といい、大所帯でご苦労な事

躰から湧き出す「飢渇」を霧状にし戦場全体に「範囲攻撃」で散布し、「微塵」化させて敵の攻撃と陣形を攪乱する

で、布陣の弱いところを突く、ね
何処が脆いかを手っ取り早く確かめるならやっぱ面制圧ね

更に躰から「宵闇」を生やし飛行する「飢渇」を大量召喚、「集団戦術」で敵を包囲するように展開
「飢渇」と自らの両腕がUCでミサイルランチャーに変容し、降り注ぐ【鐵】の嵐
手当たり次第に無数の生体ミサイルを撒き散らして敵の陣営を「爆撃」していく

抵抗の弱い箇所を見極めるわ、即座にその部分を喰い破るようにして、一気に駆け抜けるわよ



「ったく、作り物の月といい、大所帯でご苦労な事」
 常闇の女王イザナミの放った一切の光が消え失せる暗黒の帳が猟兵たち、そしてメフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)の周囲を覆っていく。
 常に捕食衝動を持つメフィスは飢渇に喘ぐ眷属たちの形態を霧状へと変化させた。
 飢餓衝動故に眷属たちが捕食していくのはイザナミの放った奈落の世界。
 常闇の味は無いに等しく味気はないだろう。だが敵のユーベルコードの力はたっぷりで喰らいがいがあるだろう。
 霧状の彼らはメフィスの周囲から闇を喰らっていき、微塵に砕く眷属となり破裂した。骨身や血潮を撒きながら彼らの爆風が常闇を晴らしていく。
 喰い散らかしたような残骸が落ちていく最中、再び霧状へと変化した。
「まだまだ食べ足りないわよね」
 飢渇に喘ぐ眷属たちに告げたメフィスの舌がちろりと動いた。霧状だった眷属を再び目に見える大きさに顕現させれば彼らには骨身の翼が付属していた。新たに生み出した眷属とともに翼から暴風を放ち、イザナミたちを潜り抜け、血脈樹をぐるり囲うように展開された。
 血脈樹、常闇の女王、黄泉魚、飢渇に喘ぐ眷属と描かれた層――そこへ一斉攻撃を仕掛けるのはメフィス陣営だ。
「呑み込まれたあとに喰い破るのは好きなの」
 外周へと至った眷属たちが方向転換し翼を広げれば、一斉に放たれるミサイル。
 ユーベルコード『鐵』はメフィスの腕もミサイルランチャーに変容させ、捕捉したイザナミたちに向かって鐵の嵐を注いでいく。
 イザナミにしてみれば前後、上下から放たれる攻撃だ。闇に乗り回避するもあまり大きな動きはできない。数瞬に行われた面制圧への弾数は虚空ですら隙間なくなるほど。
 包囲していた敵陣の乱れ――大きな隙だ。
 彼女たちの様子を注視していたメフィスが行くべき筋を見出す。飢渇に喘ぐ眷属を刹那の踏み台に飛んだ。反旗を纏う生きた外套が空気を喰らい風を内包させ、メフィスを翔けさせる。
「食べ残してしまうことは残念だけど、今は一気に突破させてもらうわよ」
 常闇の女王たちにそう告げ置いて、メフィスは天を目指し血脈樹を踏破していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ連携歓迎

強力な闇の眷属の守りを突破、かぁ…
戦い方はともかく、ルートとターゲットの選定が大事だよね
とにかく、抜けること優先なの

生後10ヶ月程度の子狼に変身して伏せの体勢で高い所から見渡すの
地形的には、あの棘や岩で他所と分断されてる所が良さそうだね
あとは、目的のルートから外れた位置に、仕掛けをできそうな場所があるね
そこで時限式の轟音魔術を仕掛けて、発動と同時にルートへ走ろうかな

相手をしている暇はないから…UC発動
狼型の月光オーラを纏って狼の脚力で加速なの
槍を避けて駆け抜ける
ここ!(狼変身して目測を狂わせる)
通り抜けざまに音撃で吹き飛ばして追撃を防いで、そのまま走り去るの



 常闇の女王イザナミに気付かれないように気配を消して。そろり。そろり。
 血脈樹が複雑に絡まった部分に上ったロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は樹上の周囲に展開されている敵陣の観察をする。
 ロランの姿は今、生後10ヶ月ほどと思われる子狼のもの。
 小さな狼耳を立てて周囲の音に警戒し、樹を形成する血脈を辿っていく。この中には誰かが流した血、消費された誰かの時間が流れている。いのちなき脈動だ。
 救いたいな、と思う。
 ダークセイヴァーの解放と復興はロランの願いだ。
 闇の救済者戦争において、ダークセイヴァーに住まう者は今、皆が死線を経験している。第四層から第三層へと転移した者、闇の種族のもとにいる魂人、猟兵。
 この血脈樹のように――自分たちには未来が繋がっている。
 まずはここを抜けていかねば。
 そう思いロランが周囲を探索していると、この血脈樹には脈動と共に地上から上がってきた石や岩があることに気付いた。
 闇世界の種も来ていたのだろう。血脈樹を栄養に育った蔓もある。
(「あっ。あそこ、分断されている……?」)
 岩場を覆うように血脈樹が盛り上がっている。
 そこに向かっていこうとロランはルート選定を終えた。

「猟兵の姿は」
「こちらにはいないようだ」
 大きな樹の周囲を闇に乗り飛び回っているイザナミたち。
 その時――ドオォォォッ!! と、彼女たちより斜め下方向で轟音が轟いた。
「なんだ!? 血脈樹が決壊したか!?」
「様子を見にいこう。猟兵のしわざかもしれぬ」
 瀑布の如き轟音にイザナミたちが場を離れていく。
 そこへひょこりと現れる子狼は、敵たちを見送るように一瞬見遣ったあとまた駆けていく。
(「ぼくの轟音魔術、成功だね!」)
 盛り上がった血脈樹のところにたどり着けば、そこはトンネルのようになっている。ふんふんと頭を突っ込むと鼻先に風を感じたので、先は出口があるだろうことが分かった。
 闇夜の空と血管の絡み合う天上の不思議な光景。
 血管のトンネルを抜けて、再び樹上へと出たロランは遥か下に位置するイザナミたちを眼下におさめた。
 そうして上げるは月下の音狼の咆哮。
 満月の魔力でできた狼のオーラを纏い、一気に駆け上がっていく。
「いた! 上だ!!」
「待て、狼!」
 イザナミの奈落乃矛が投擲されるも既に高度はロランのものだ。
「待てと言われて待つ狼はいないよー!」
 音撃を撒けば途端に失速する奈落乃矛。
 上へ上へと蠢く血の脈動はロランを導くように――共に戦うよ、と言っているかのように。
 天上目指して、新たな死線へと彼は向かっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
狼獣人の姿に変じてユーべルコードを発動
…あまり好まない姿だ。人とかけ離れたこの姿が畏怖嫌厭の対象となった事もある
だが今は鮮血の洪水の阻止の為と、意識を切り替え戦闘に集中する

暗所での行動には慣れている、闇に包まれても慌てず周囲を確認
人狼の体質で夜目は利く。それでも視認が難しければ音も頼りに敵の位置を確認する
息遣いや衣擦れ、矛を振るう風切り音等、闇の中でも拾える音はある筈

ギリギリまで回避に専念し敵の攻撃を誘う
敵が攻撃の為に行動する事で生じる陣形の乱れを突く為だ
敵の薄い箇所が発生したら、獣人の姿である事で鋭さを増す爪を振るい反撃
攻撃は最低限で構わない、道が開けたら強化した行動速度で一気に突破を試みる



 人狼のシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は自身の狼獣人形態をあまり好まない。
 満月の夜は狂暴化するという理由に加え、過去、人狼だと知った人々に虐げられた経験がある。
 ……もちろん友人、師と人狼のシキを理解し寄り添ってくれた存在もある。だがシキのために施された善が圧倒的悪意に囲われ続けていたことは、シキは幼心ながら理解していた。この銀の毛並みを厭う。
 人狼を恵体だと重労働を課す組織もあるが、その根底には嫌悪や虐遇が当然に在る。
 狼獣人の姿は畏怖嫌厭の対象だ。
(「……だが今は鮮血の洪水の阻止の為に――」)
 天蓋血脈樹の上に座する五卿六眼『祈りの双子』を仕損じればダークセイヴァーの第三層から第五層は鮮血に満たされてしまう。
 魂人も、生者も息絶えていく血の海。
 今やダークセイヴァーに生きる者すべてが死線を目前にしている。善人も悪人も、子供も大人、動植物のすべて。
「光無き常闇のなか、永遠に奈落を彷徨え! 猟兵!!」
 常闇の女王・イザナミのユーベルコードが放たれ、一切の光を通さぬ常闇の帳がダークセイヴァーの景色を覆っていく。
 遠方の音すら吸収してしまうような奈落の闇だった。足元もまた見えない――だが、シキの獣人の足は血脈樹の脈動を伝えてくる。
 どくん、どくんと。鮮血が昇っていく震動。
 ダークセイヴァーで流された血が集まる血脈樹。これは誰かの血で、誰かの命で、誰かの生の時間だ。脈動はシキに行くべき方向を教えてくれた。
 その先へと一層に耳を済ませれば細やかな音が落ちてくる。
 闇に乗り虚空を回るイザナミの衣擦れの音。空を重く切るのは奈落之矛だろうか。塗り重ねるように新たな常闇が放たれた際に発生する僅かな風。
 凝縮した闇の中はとても冷たい。血の通う血脈樹を温かく感じるほどだ。
 その時、ひゅ、と何かの風切りが長く聞こえた。
 降下の音――狭まる彼我のそれに、こちらへ向かっていることに気付いたシキが構える。
 闇に溶けた奈落之矛にのせられた殺意が眼前になって表れた瞬間、シキは身を捻り矛先を躱した。捻りと共に駆使した膂力はそのまま遠心にのせた方向転換へと流す。
「避けられた!?」
 イザナミの声が渡ると同時、ざわりと天上に広がる常闇が蠢いた。
(「今だな」)
 回避から二拍、シキは駆ける。
 イザナミの声を起点とするなら他の女王たちの注意もそちらに集中する。
 血脈樹の脈動の気配に、自身のそれを紛れさせ絡み合った血管の悪路を駆けていくシキ。
 奈落に果てはないかもしれない。けれども虚空に展開された偽の奈落は果てがある。
 常闇から抜ければ当然視認されるだろう――が、多くのイザナミは既に彼の背後に位置していた。
「叩き落とす……!」
 一体のイザナミが肉薄せんと迫り奈落之矛を振るってくるが、高度の差異を利用した反撃をシキは繰り出した。
 身を低くしての加速。矛の長柄を膂力任せに獣人の腕で一瞬絡め、軌道逸らしに振り放った。姿勢を崩したイザナミへ、すれ違いざまに見舞うのは鋭さを増した爪撃だ。
 裂かれたイザナミからは濁り冷え切った闇の匂い。

 展開された自らの奈落へと落ちていくイザナミに見遣ったのは一瞬。
 追撃を逃れるため、シキは直ぐに天蓋血脈樹を駆け上っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

烏護・ハル
幾つもの命を踏み躙るだけじゃない。
無差別に、同類さえ殺し尽くそうだなんて。

命を何とも思わない。
奪って打ち棄てるだけ。
『あの』お師さんでも真顔で断じるわよ。狂ってる、って。

死のイメージに侵されないよう、常に落ち着きを意識して。
……兄ちゃんたち、弟たち。勇気を頂戴ね。

UCで片脚を狐火に変え、翔び回る。
式神さんたちには念動力と催眠で敵の精度を崩させる。
ほんの一瞬でいい。隙を作って。

フェイントも織り交ぜて受け流し、その間に詠唱を高速、多重に重ね、魔力と呪詛を練る。
敵の態勢が崩れる瞬間を逃さず、全力の呪殺弾を見舞う。
喰らい足りなそうなら二発目の呪殺弾で追撃する。

何が何でも押し通るわ。
邪魔はさせない……!



 常闇を含んだ風が天蓋血脈樹の周囲に起こっている。
 びゅう、と冷たく、血生臭さを感じるような風は烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)の髪をなびかせた。
 ダークセイヴァーに流れた血が集まる血脈樹から上っていく脈動を感じ取ることができる。足元をどくんどくんとゆく誰かの血、誰かの命、誰かの時間。
(「狂ってるわ」)
 常闇の女王たちの巡回を視認したハルはそう思う。見つからないようにと隠れて。
(「幾つもの命を踏み躙るだけじゃない」)
 天蓋血脈樹の上に座する五卿六眼『祈りの双子』を仕損じれば、現眼下にあるダークセイヴァーの第三層から第五層が鮮血に満たされてしまう。
 魂人も、生者も息絶えていく血の海。それはオブリビオンも例外ではないのだ。
「……無差別に、同類さえ殺し尽くそうだなんて……」
 この天蓋血脈樹の上、第二層に座する五卿六眼の何と傲慢なことか。
 命を何とも思わない者たち。
「奪って打ち棄てるだけ」
 ハルの呟きは静かな激情が含まれていた。
 どくんどくんと蠢く血脈樹の鼓動の如き震動に、自身の鼓動が、血潮が同調していくようにも感じる。
「『あの』お師さんでも真顔で断じるわよ。狂ってる、って」
 眉を寄せ、目を眇め――きっと今浮かべたハルの表情と同じ反応をする。
 気まぐれで、何故か悪戯や嫌がらせ用の陰陽術も多彩な『あの』師がそういう反応をするのは、余程のことだ。
(「……まあ、余程のことだよね。この世界は今、皆が死線を前にしている」)
 それも眼前に突き付けられている。
 第三層へと転移された力なき者、人類砦、ダークセイヴァーに生きるものたちすべて。そして猟兵。
 血脈樹のある地点を満たしていた黄泉魚が少しずつ減っていく。先行する猟兵たちが突破したのだろう。
 黄泉の水面が晴れていく。かわりにイザナミたちの姿が次々と露わになっていく。
 常闇を放つ奈落之矛の殺意はイザナミたちに乗じて一番に強い。
(「……兄ちゃんたち、弟たち。勇気を頂戴ね」)
 片脚を狐火へと変えたハルが風を切り飛翔した。

「奈落に沈むがいい! 猟兵!」
 ハルへと向かってくるイザナミが奈落之矛を繰り出した。矛先は真っ直ぐに下方。つまりは降下の勢いと重力にも乗じた一撃だ。硬き軌道がハルへと迫る。
 肉薄を許せば強烈な死のイメージを与える力が襲いくるだろうことが分かった。
「……っ」
 狐火を加速させ、掛かる負荷を変化してない片脚へと流し上昇のバランスをとるハル。
「ここ!!」
 敵が即反応できない射線域へと至れば急速方向転換。迫っていた彼我の距離を離し、作り上げるように翔び回る。
 膂力を働かせ遠心に放った数多の霊符から式神が召喚された。
「式神さんたち、お願い!」
 ほんの一瞬でいい。隙を作ってと願いこめて告げれば、追ってくる奈落之矛は念動力による阻害を受け明後日の方向へと向けられた。
「邪魔をするな!」
 ハルを守るように念動力による刹那的な繭が形成され、イザナミ数体が弾かれる。
(「今だ」)
 翔け上がるように狐火ストームを噴出させ、ダークセイヴァーの空に長き輝赫が描かれた。
 黄泉の水面を抜ける時、黄泉魚を繰るイザナミが横合いから襲撃してくる。
「黄泉路では大勢の者が待っているぞ!!」
 霊符の護りを突き破ってくる矛先――思えば、ハルの身近は数多の死があった。
 決して。決して『イメージ』などではない。実際にあったこと。
 兄弟弟子の冷たくなった身体を知っている。
 じわりと血に染まっていく地面の生あたたかさを知っている。
 外出先から帰れば弔いの句が並んでいたこともある。帰ってこられなかった兄弟弟子は、師事を受け始めた頃からいた。
 だからこそ、ハルは自身の死のイメージに引きずられることはなかった。
 とうに覚悟はしている。
 霊符を捌き放つ全力の呪殺弾が矛先を覆い、イザナミを撃ち弾いた。
「何が何でも押し通るわ。邪魔はさせない……!!」
 戦う者よ、刃となれ鏃となれ。
 イザナミの布陣を突破し血脈樹の天上の目指すハル。
 次なる一戦へ向けて彼女の呼気は少しずつ自身を研ぎ澄ませてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月12日


挿絵イラスト