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猟書家最終決戦~憑装せし冥府魔道を断つために

#サムライエンパイア #戦後 #クルセイダー #安倍晴明 #上杉謙信

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●サムライエンパイア上空――|魔空《まくう》|原城《はらじょう》
 ――城の最奥にある、美しき『ぱらいそ礼拝堂』にて。
「超・魔軍転生……陰陽師『安倍晴明』よ、選ばれし者である私、クルセイダーに宿れ」
「……これはこれは。何処の誰が貴方を『選んだ』というのでありましょうか……」
 猟書家『クルセイダー』の秘術により降臨したのは、かつて猟兵たちに撃破された魔軍将『安倍晴明』。
 その慇懃無礼な声が響き渡った直後、クルセイダーの身体がピクリとも動かなくなった。
「私の体が動かない! 馬鹿な、ぱらいそ預言書には、このような事一言も……!」
「意外な事などありましょうか。大した|業《カルマ》も無き貴方の躰を奪うなど、造作もありませぬ」
「何が目的なのです……私の乱を、防ごうとでも……?」
「少し、興が乗りましてね。私の生殖型ゾンビに憑装を施した『魔軍将ゾンビ』を拵えようと思いまして」
「な、その、ために……!!」
「これを速やかに量産化すれば、エンパイアにゾンビ日野富子や上杉謙信が跳梁跋扈するようになるでしょう。その滑稽にて無様な景色、見てみたくはありませんか?」
「………………」
 安倍晴明がからかうようにクルセイダーに問いかけるが、クルセイダーの反応はない。
 クルセイダーの精神は――既に彼岸を超えてしまっていた。
「もう死にましたか。誇り高きグレイズモンキーに連なる者と聞きましたが、取るに足らぬ最期でございましたな」
 つまらなそうに呟きながら、クルセイダーの身体を乗っ取った安倍晴明は、密かにほくそ笑む。
 ――この日ノ本に、新たな騒乱の種を蒔くために暗躍すべき時が来たとばかりに。

●憑装した猟書家『晴明クルセイダー』を撃破せよ!!
「あいつが、あいつが……復活したとでもいうのかっ!!」
 グリモアベースの片隅に、グリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の怒号が響き渡る。
 突然の怒号に驚いた猟兵たちが集まってきたのに気づいたか、敬輔は己の怒りを鎮めるために大きく深呼吸し、怒気をはらむ声で話し始めた。
「緊急事態だ。サムライエンパイアの猟書家『クルセイダー』が、自らに憑装した陰陽師『安倍晴明』に肉体を奪われた」
 その一言で事態の深刻さを察したか、猟兵たちの顔が一斉に引き攣った。
「肉体を奪った『安倍晴明』は、自ら『晴明クルセイダー』と名乗り、クルセイダーのユーベルコード『超・魔軍転生』を、よりによって自身の尖兵である『生殖型ゾンビ』に魔軍将を憑装させるために使用した」
 その結果、憑装した魔軍将は、自我無きゾンビの肉体を瞬く間に奪い『魔軍将ゾンビ』として復活。
 しかも『晴明クルセイダー』は、このゾンビを速やかに量産化しようとしている、という。
「クルセイダーは日ノ本上空を自在に移動できる『魔空原城』で姿をくらましていたため、今まで手が出せなかったんだが、緊急事態を察知した江戸幕府が、首塚の一族の頭領でもある将軍様御局『斎藤・福』様に命じ、呪詛の鎖の力を以て、天空に浮かぶ『魔空原城』を地上に引きずり降ろすことに成功した」
 だが、鎖が壊れ、逃げられれば――追跡不可能になるのは容易に予測できる。
 もしそうなれば、日ノ本は再び生殖者ゾンビ……否『魔軍将ゾンビ』に蹂躙され、魑魅魍魎が跋扈する地へと変貌してしまうだろう。
「そこで、鎖が壊され逃げられてしまう前に、地上に引きずり下ろした『魔空原城』に乗り込み、憑装猟書家と化した『晴明クルセイダー』を撃破してほしい。頼めるか?」
 頭を下げる敬輔に、猟兵たちは其々の複雑な想いを胸に頷いた。

 今回のグリモアでの転送先は、地上に引きずり降ろされた「魔空原城」の正面となる。
「僕たち猟兵が現れると、魔空原城の中から大量の『島原一揆軍』のオブリビオンが現れる」
 異常な信仰心を持つ彼らは、極めて高い士気を誇るが、安倍晴明によって密かにゾンビ化も施されているため、頭や脚を吹き飛ばした程度ではなかなか死なない状態になっている。
「無力化ではなく、無慈悲、かつ完膚なきまでの殲滅が必要だ……心を鬼にして頼む」
 島原一揆軍を殲滅し城内に突入すると、『晴明クルセイダー』を守護すべく配置された魔軍将ゾンビが待ち構えている。
「ここで現れるのは、魔軍将ゾンビ「軍神『上杉謙信』」。『軍神』と呼ばれた時と同等の力と理性を取り戻した強敵で、12本の毘沙門刀を巧みに操り攻撃を仕掛けてくる……油断はできないぞ」
 かつての軍神を排除し、魔空原城の最奥にある『ぱらいそ礼拝堂』に突入すれば、いよいよ『晴明クルセイダー』との対決だ。
「『晴明クルセイダー』の意識はほぼ安倍晴明が乗っ取っている。クルセイダーの肉体と霊体の晴明が同時に行動するため、【1度の行動で、2回ユーベルコードを使用してくる】難敵だ」
 強敵特有の絶対先制攻撃はしてこないとはいえ、2つのうち1つは何を使用するか予測不可能なため、ある意味対応が難しい。
 だが、この攻撃に対応できれば……勝機は見えるはずだ。
「あ、念のために付け加えておくが、『晴明クルセイダー』に質問しても恐らく意味はない。はぐらかされるのが目に見えている」
 質問で無為に時間を潰しても、猟兵側が得をすることが一切ないため、全力で相対すべきだ。

「ダークセイヴァーの戦争で忙しい中、このような形で討伐を頼むのは本当に申し訳なく思う」
 自身の故郷たるダークセイヴァーを救うため、猟兵たちが戦ってくれているのは敬輔も重々承知。
 だがそれでも、グリモアが予知した以上、この蛮行は見逃せない……見逃すわけにはいかない。
「今度こそ、2度と復活できないよう、完膚なきまでに撃破してくれ、頼んだぞ!!」
 再度頭を下げる敬輔に見送られながら、猟兵たちは丸盾のグリモアに導かれ、魔空原城の入口へと赴いた。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 猟書家『クルセイダー』が、自ら憑装した魔軍将「陰陽師『安倍晴明』」に乗っ取られ、憑装魔軍将『晴明クルセイダー』として降臨しました。
 猟兵の皆様、「闇の救世主戦争」の最中ではありますが、『魔軍将ゾンビ』の量産化に踏み切られる前に至急対応をお願い致します!

 猟書家最終決戦となりますので、判定はやや厳しめとなります。
 それ相応の準備をした上での挑戦をお待ちしております。

●本シナリオの構造
 集団戦→ボス戦→ボス戦です。

 第1章は集団戦『切支丹武者』。
 魔空原城からわらわらと出撃する『島原一揆軍』のオブリビオン勢です。
 ちなみに、拙著「禁軍猟書家〜雪深き蝦夷地にて」にも登場した集団敵ですが、関連は一切ございません。

 第2章はボス戦『上杉謙信』。
 魔軍将ゾンビとして復活した『上杉謙信』ですが、力はかつての軍神同等。油断は禁物です。
 ちなみに、12本の毘沙門刀とは、謙信が手にしている黒刀『アンヘルブラック』、白刀『ディアブロホワイト』と、周囲を浮く【水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇】の各属性が付与された10本の刀となります。

 第3章はボス戦『晴明クルセイダー』。クルセイダーに憑装した【憑装猟書家】です。
『晴明クルセイダー』は常に【2回攻撃】を行い、『猟兵の指定ユーベルコードの能力値に応じたユーベルコード』と『MS側で選んだユーベルコード』のふたつを同時に使用してきます!!(MS側はランダムで選択しますので、同じユーベルコード2回もあり得ます)
 猟書家の中でも極めて強い部類になりますが、この『2回攻撃』を打ち破る方法を見出し実行すれば、プレイングボーナスの対象となります。
 なお、全体で20回撃破すれば、『晴明クルセイダー』を完全に滅ぼせます。

●【重要】プレイングの受付・採用について
 第1章はオープニング公開直後からプレイング受付開始。
 第2章・第3章は、断章追加後からプレイング受付開始。
 いずれも受付締切は、MSページとTwitter、タグにて告知致します。

 なお、本シナリオはゆっくり運営となります。
 もし、プレイングが失効してお手元に戻った場合は、お手数ですが再送をお願いします。

 その他、シナリオ運営に関する諸連絡は、マスターページを参照いただけると幸いです。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『切支丹武者』

POW   :    騎馬突撃
自身の身長の2倍の【軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    後方支援
【切支丹女武者】の霊を召喚する。これは【鉄砲による援護射撃】や【一斉掃射】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    主の裁き
【ハルバード】を向けた対象に、【天からの雷】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御剣・刀也
軍神、上杉謙信とまたやれるとは。あれからどれほど近づけたか、確かめるのが楽しみだ
そのためにも、まずはこいつらをちゃっちゃとどかすか
悪いが今の俺はお前らなんざ眼中にないんでな
さっさといかせてもらうぜ

騎馬突撃で此方に突っ込んできても焦らず相手の速度と間合いを見切り、残像を残す速さで動きながら第六感で相手の攻撃を予測し、武器受けで攻撃を受け流し、カウンター、二回攻撃ですれ違いざまに斬り捨てる
「久しぶりだったが、腕は鈍ってないらしい。ありがたいことだ」



●無慈悲、かつ完膚なきにと告げられた意味
 ――風雲急を告げる、魔空原城にて。
「軍神、上杉謙信とまたやれるとは。あれからどれほど近づけたか、確かめるのが楽しみだ」
 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は、獅子吼・真打ちの銘が刻まれた一振りの刀を手に魔空原城を見上げ、不敵な笑みを浮かべる。
 かつて、軍神とはエンパイアウォーにて幾度となく刃を交えたことがあるが、その都度強さに驚かされ。
 あれから4年近く経ったが……果たしてどこまで軍神に近づけただろうか?
 そんな想いにかられる刀也の前には、猟兵の侵入を阻止せんとばかりに、多数の切支丹武者が壁を作っている。
 一見すると、勇敢で士気も高く、敵を恐れぬ猛者に見える武者の集団。
 しかし、その実態は――異常な信仰心に支えられ、さらに密かにゾンビ化されている死者の集団だ。
「そのためにも、まずはこいつらをちゃっちゃとどかすか」
 刀也は手にした刀を一振りし、切支丹武者に敵であると示す。
「悪いが今の俺はお前らなんざ眼中にないんでな、さっさといかせてもらうぜ」
 軍馬に騎乗する切支丹武者らを眺めながら、刀也は刀を水平に構え待ち受けた。

 ――ドドドドドド!!
 ――ドドドドドド!!

 騎乗した切支丹武者らは、城主を守らんと一斉に刀也に向かって突撃する。
 ひとりの人間に向かい、何体もの武者が騎馬突撃する様は、狂信的な所業のなせる業か。
 しかし刀也は、敵から先に突っ込まれても、焦らず速度と間合いを見切り、残像を引くほどの速さで動きながら、第六感も駆使して武者の攻撃を予測し、すれ違う一瞬を伺う。
 先頭の武者がハルバードを突き出し刀也を捕らえようとした、まさにその時、刀也は獅子吼・真打ちを、刀先が弧を描くように振り抜いた。
「朧宵月、受けてみやがれ!」

 ――斬ッ!!

 すれ違いざまに振り抜かれた初撃は、軍馬の脚を薙ぎ、その動きを止める。
 軍馬が足の腱を斬られ急制動をかけるより早く、刀也は至近距離から斬り戻すように二撃目を叩き込んだ。
 高命中・高威力の必殺の二撃目は、確実に至近距離から武者の頭と片腕を捉え、一太刀で吹き飛ばした。
 だが、頭と片腕を吹き飛ばされた武者は、構わず片手でハルバードを構え、軍馬を降りて刀也に迫る。
「おいおい、まだ動くのかよ」
 呆れたように呟きながら、刀也はハルバードを受け流しつつ、カウンター気味に一閃。
 水平に弧を描くよう振るわれた刀は、ハルバードごと胴を両断し、返す刀で両脚を斬り刻んだ。
 だが、武者たちは己がまだ生きていると錯覚しているのか、まだ立ち上がろうとする。
 刀也の背中に、一筋の冷汗がつたい落ちた。
(「無慈悲、かつ完膚なきまでに叩き潰せ、と言われた理由がよく分かった。これではキリがない」)
 ――陰陽師「安倍晴明」の邪法でゾンビ化した武者たちは、頭や脚を吹き飛ばす程度では死なないのだから。
 だが、それでも、確実に一太刀で敵を捉え、斬り捨てられているのは確かで。
「久しぶりだったが、腕は鈍ってないらしい。ありがたいことだ」
 四肢を断たれてもなお、動く気概だけは失わぬゾンビ化した武者たちを見下ろしながら。
 刀也はさらに己が技量を試すべく、ひとりでも多く無力化するために刀を振るい続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

亞東・霧亥
落ち着け、舘野。
憤る気持ちは解らぬでもないが、俺達を送り出す奴は冷静でなければならない。
お前が揺るぎ無き自信で背中を押してくれるから、俺達は存分に戦働きが出来るのだ。

さて、ゾンビがうじゃうじゃと沸いてくるが死兵とは程遠い。
いや確かに死んでるんだが、本来の意味合いと違うって話だ。

【UC】
岩盤(鈍器)は開けた場所じゃないと使えないが、敵は掠っただけで弾けるし、すり潰すのも容易だ。

死兵はな1人でも多くの敵を道連れにするため、凡ゆる策を講じて自分を省みないから恐いんだ。
低脳ゾンビ軍団なんて何も恐くねーんだよ。
さっさと成仏して二度と戻ってくるな。



●過去に怒りを覚える意味
 ――『島原一揆軍』たる切支丹武者が入口を固めている、魔空原城にて。
 亞東・霧亥(峻刻・f05789)は、陰陽師『安倍晴明』の術で既にゾンビと化している切支丹武者を眺めながら、グリモア猟兵に転送される前のやり取りを思い出していた。
「落ち着け、館野。憤る気持ちは解らぬでもないが、俺たちを送り出す奴は冷静でなければならない」
 ――お前が揺るぎ無き自信で背中を押してくれるから、俺たちは存分に戦働きが出来るのだ。
 そう、怒りに駆られるグリモア猟兵に声をかけたところ「ごめん」と一言謝られたのだ。
 おそらく、猟書家『クルセイダー』を乗っ取った安倍晴明のかつての所業に、彼なりに思うところがあったのかもしれないが、それはまた、別の機会に聞くしかないだろう。
 今はやることをやるだけだ、と気持ちを切り替えながら、霧亥は改めて切支丹武者の挙動に視線を向けた。
(「さて、ゾンビがうじゃうじゃと沸いてくるが、死兵とは程遠い」)
 別の猟兵に四肢や頭を斬り飛ばされながらも、なお動こうとするその様は、霧亥にはゾンビそのものに見える。
(「いや確かに死んでるんだが、本来の意味合いと違うって話だ」)
 実際の所、死した後ゾンビとして蘇ったのではなく、生きたままゾンビ化された可能性が高い。
 もっとも、オブリビオンの場合、死してゾンビ化しようが生きたままゾンビ化しようが、大差はないのかもしれないが……。
 いずれにしても、霧亥がやることは変わりない。
「冥土の土産だ。遠慮するな」
 霧亥は片手で無造作に半径130メートル内の岩盤を掴み取り、軽々と持ち上げながら、切支丹武者らの出方を伺う。
(「開けた場所じゃないと使えないが、敵は掠っただけで弾けるし、すり潰すのも容易だ」)
 潰されれば即死確定の岩盤が片手で持ち上げられている光景を見ても、切支丹武者たちは躊躇なく騎馬を召喚し、霧亥目がけて突撃を敢行し始めた。
 ある意味で抉られた岩盤の上を、轟音を立てながら器用に突撃する武者たちを見て、霧亥は呆れのため息ひとつ。
「死兵はな、1人でも多くの敵を道連れにするため、凡ゆる策を講じて自分を省みないから怖いんだ」
 もともと、無慈悲かつ完膚なきまでに殲滅せよ、と言われている。
 ならば、遠慮は無用だろう。
「低脳ゾンビ軍団なんて何も恐くねーんだよ。さっさと成仏して二度と戻って来るな」
 そう、投げやり気味に呟きながら。
 霧亥は手にした130トンの岩盤を、豪快に地面に叩き付けた。

 ――ドゴオオオン!!
 ――グシャアアッ!!

 霧亥向かって突撃した切支丹武者は、ハルバードを届かせるより早く叩きつけられた岩盤の下敷きになり、すり潰される。
 突撃の最後尾にいた切支丹武者は、ギリギリ下敷きにならずにすんだが、それでも周辺の空を覆う程巨大な岩盤の端を掠められ、軍馬ごと半身が吹き飛んでいた。
 だが、半身を吹き飛ばされた武者は、それすら意に介さぬと軍馬に鞭を打ち、再度霧亥に突撃を敢行する。
 その狂信的とも言える姿を見て、霧亥も考えを改めざるを得なかった。
(「これは、死兵と化したから自分を省みなくなったのではなく、もともと自分を省みていなかったのか」)
 仮にゾンビ化していなかったとしても、おそらく武者たちは猟兵たちからクルセイダーを守るために、己が身を省みず突撃していただろう。
 もしかしたら、武者たちは信仰に熱狂するあまり、安倍晴明が己が身をゾンビ化したことすら、気づいていなかったのかもしれない。
 ――真に恐ろしいのは、死兵と化したことではなく、狂信の域に達した異常な信仰心。
 その恐ろしさを肌で感じながら、霧亥は後退しながら新たな岩盤を持ち上げ、投げつける機を伺い始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・コーエン
上杉謙信公とまた戦えるのなら行くしかあるまい。
それに晴明は早めに倒さねば。

武者のハルバードと女武者の鉄砲の組合わせ。
援護し合う形になるから厄介ではある。
素早く動いて幻惑しよう。

ダッシュで左右に動き、その勢いのまま空中浮遊・自身への念動力で空を飛ぶ。
多数の残像を作り出して幻惑しつつ、空中戦・見切りで敵攻撃を躱すか、灼星剣の武器受けで弾くなどして接近する。
オーラ防御も展開。

程良い間合いでUC:灼星乱舞を使用。
巨大化した灼星剣に炎の魔法と破魔を纏わせ、2回攻撃・鎧無視攻撃・斬撃波・なぎ払いで、武者達はまとめて焼いて斬り、女武者達は破魔で消去させる。

貴公らの本当の主は既に亡い。
後を追って骸の海に帰れ。



●再戦を所望する意味
 空から地に引きずり降ろされた魔空原城に、次々と猟兵たちが駆け付けている。
 その中のひとり、シン・コーエン(灼閃・f13886)は、かつて刃を交えた軍神『上杉謙信』との再戦を心待ちにしていたひとりだった。
(「上杉謙信公とまた戦えるのなら、行くしかあるまい」)
 ――それに、晴明は早めに倒さねば。
 謙信公との再戦に昂る気持ちを、晴明という存在が逆に鎮め、冷静さを取り戻させてくれる。
 猟書家すら乗っ取り、その精神を圧し潰し死に追いやった陰陽師『安倍晴明』の悪辣さは、シンもよく知るところなのだから。

 奇妙なかたちに地面が抉れている城前で、シンを目にした切支丹武者は既に女武者の霊を召喚し、遠距離戦の構えを見せている。
(「武者のハルバードと、女武者の鉄砲の組み合わせ。援護し合う形になるから厄介ではある」)
 ――だからこそ、一刻も早く接近し、斬る。
 シンはダッシュで左右ジグザグに動き、その勢いのまま自信を念動力で浮かせ、空中浮遊。
 抉れた地面を飛び越えるように空を飛びながら、シンは多数の残像を作り出して切支丹武者らの目を幻惑した。
「――――!!」
 待ち構えていた女武者の霊たちが、空中にいるシンに銃口を向け、一斉射撃。
 空中向けて打ち出された弾丸を、シンは銃口の向きから射線を予測し、自らを念動力で動かしながら自在に空中を飛びまわって射撃を回避してゆく。
 弾丸の多くは残像を貫き、何発かはシン自身の空中機動力で回避したが、それでも何発かは回避が間に合わず、シンの四肢を貫きそうになる。
 それを見て、シンは紅のオーラ防御を纏いながら目前に灼星剣を翳し、受ける……というより灼星剣の熱で弾丸を融かし、負傷を最小限に抑えた。

 ふと、シンが下を見ると、切支丹武者がハルバードを構えながら待ち構えている。
 おそらく、シンが下りて来たところをハルバードで一斉に攻撃するつもりなのだろう。
「我が剣よ、我が生命の力を得て更なる進化を遂げ、この地に集いし敵を一掃せよ!」
 シンの灼星剣が、炎と破魔の魔力を纏いながらぐん、と巨大化。
 135メートルはあるであろう紅の刀身を燦然と輝かせる巨大灼星剣を、シンは両手でぐっと握り締め、上段に振り上げた。
「貴公らの本当の主は既に亡い。後を追って骸の海に還れ!」

 ――斬ッ!!!

 地面を抉るように振り下ろされた巨大な灼星剣は、ちょうどその場所にいた切支丹武者と女武者の霊を斬り裂きながら焼く。
「――――!!!!!」
 切支丹武者は炎で焼かれながら真っ二つに斬り裂かれ消滅し、女武者は破魔の炎で魂ごと鎮められながら消滅した。
 十二分に振り切ったところで、シンはいったん巨大な灼星剣を持ち上げ、今度は薙ぎ払うように左右に振り抜きながら、二撃、三撃と炎の斬撃波を放つ。
 本来なら敵味方関係なく斬ってしまう諸刃の剣と化しているはずだが、今は周囲に味方の猟兵がいないため、味方を斬る心配は全くない。
 二度振り抜かれた巨大灼星剣は、シンの周囲にいた多くの切支丹武者と女武者はまとめて斬り裂かれ鎮められ、斬撃波で吹き飛ばしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
あの戦から3年以上か
散々他人を利用しまくって怨み買ったはずだが…あの外道…
奴が堪えるわけねーか

此度の敵は勇猛な死人
切支丹の神様って愛を説いてンだろ
その為に戦って死んだお武家方が
蘇って頭飛んでも終われねーってホント地獄

【視力/聞き耳/野生の勘】を頼りに敵に反応
速さと羅刹の膂力を活かし敵中へ

布の猫目雲霧で一体の首を括りハンマーのように振り回し周囲を殴打→槍化し範囲内の個体を纏めて薙ぎ払い首、腹等体を切断、弱体化や足止め狙う
…菜靡は一時オレも丸腰になるからな
UCで範囲距離の敵を巻き込み花弁で切り刻む

>敵UC
【念動力】でハルバードの向き逸らし
躱すか
掴んだ他敵を肉壁に使い【激痛耐性】併用し凌ぐ

アドリブ可



●過去の怨みに対峙する意味
(「あの戦から3年以上か」)
 かつて日ノ本全土を巻き込んだ大戦のことを振り返りながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は目前にそびえる『魔空原城』の最奥にいるであろう、憑装猟書家『晴明クルセイダー』に思いをはせる。
 3年以上前の大戦の際、罪なき人々を水晶屍人に変え、鳥取城でかつての惨劇を再現した魔軍将「陰陽師『安倍晴明』」が、猟書家『クルセイダー』の精神を圧し潰し乗っ取った存在――それが『晴明クルセイダー』。
 今、クルセイダーの肉体の主導権を握っている陰陽師は、彼の大戦の際もさんざん他人を利用しまくって、恨みを買ったはずだったが……。
(「あの外道……と怒ったところで、奴が堪えるわけねーか」)
 トーゴの口から思わず怒りが漏れるが、軽くかぶりを振って城前に目を向けた。
 ここでいくら怒ったところで、遊興に興じるがごとく他人を弄ぶ彼の者に通じるはずもないのだから。

 魔空原城の手前には、島原一揆軍なる切支丹武者が次々と姿を見せている。
 一見すると全身を鎧に包んだ勇猛な戦士に見えるが、その実態は、既に安倍晴明の術でゾンビ化された、死人の軍。
 武者たちが一斉にハルバードを向けようとした瞬間、トーゴは一気に駆け出す。
 ――ハルバードを向けられた対象には、主とやらの裁きが下るらしい。
 ゆえにトーゴは、武者たちにハルバードの狙いを付けられる前に、速さと羅刹の膂力を生かして一気に敵中に駆け込んだ。
 切支丹武者がハルバードを持ち直し、トーゴに向け突き出し牽制しようとするが、トーゴは八本ひげが描かれた猫柄の六尺手拭い『猫目・雲霧』を両手に持ちながらハルバードの穂先を受け流した。
「甘いンだよ」
 受け流した勢いのまま、トーゴは猫目・雲霧をハルバードの柄から武者の腕を上るように滑らせ、一気に首を括り上げた。
「――――!!」
 首を括り上げられた武者がハルバードを捨て、猫目・雲霧に手をかけ外そうとするが、羅刹の膂力にはかなわない。
 トーゴはそのまま武者を持ち上げ、ハンマーのように振り回して投げ飛ばしながら、集まりつつある武者ごと纏めて吹き飛ばした。
「なあ、切支丹の神様って、愛を説いてンだろ」
 猫目・雲霧に念動力を注ぎ込み槍と化しながら、何気なくトーゴが武者たちに水を向けるも、武者達からの反応はない。
(「その為に戦って死んだお武家方が、蘇って頭飛んでも終われねーってホント地獄」)
 トーゴは大きく嘆息しながら、迫る武者たちに槍化した猫目・雲霧を振り回し、範囲内の個体を纏めて薙ぎ払いながら、首や腹、四肢や胸を次々切断していった。
 それでもまだ立ち上がろうとする武者たちに、トーゴも一瞬ぎょっとするが、武者たちの空が奇妙に帯電し始めたのを見て、躊躇なく術を発動した。
「燈の花は刀の禍に転じて靡け黄の菜花……、菜靡の術な!」

 ――さあっ……!!

 トーゴが持つ猫目・雲霧やクナイなど、普段愛用している武器が無数の菜の花の花びらに変じ、周囲を吹き荒れる。
 切られても潰されてもなお立ち上がり、トーゴを主の裁きにかけようとしていた武者たちは、徹底的に菜の花の花弁で切り刻まれ、地面に倒れた。
(「……菜靡は一時オレも丸腰になるからな」)
 だからこそ、徹底的にやらねばならぬ、と気を引き締めながら。
 トーゴは迫りくる武者たちを菜の花で刻み、二度と立てぬ存在へと変えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
今のアタシの剣なら謙信様を越えられるのか
符術は晴明様を超越できるのか
猟書家云々はどうでもいい、むしろ己の業の為に戦いに赴くぜ

先ずはこの一揆を平定すりゃあ良いんだな
よっしゃ戦じゃ戦じゃー!
ノリノリで御狐祭儀を行使し、だんじりと稲荷神の軍勢を呼ぶぜ
神輿のてっぺんに乗っていざ突撃!

ハルバード向けてる輩を射殺せと白狐戦士の霊に指示出すぜ
呪符部隊は神輿にオーラ防御を張って守りを固めろってね
雷落とされては適わんので神輿は走れ走れ
落雷来たらアタシが神鳴を避雷針のように構えて受け流す

敵は一揆を起こす賊軍!
白狐たちと共に敵軍に呪詛をばら撒いて動きを鈍らせ、そのまま神輿の突撃で蹂躙粉砕よ
ここが此度の関ケ原ってな



●お祭りで武者を蹂躙する意味
「島原一揆軍」なる不死の切支丹武者は、着実にその数を減らしつつある。
 そんな武者たちが守る魔空原城の前に、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)の姿があった。
 燦の脳裏に過るのは――エンパイア・ウォー時に剣を、符術を交えた記憶。
 ――軍神『上杉謙信』と術を交えながら真っ向から斬り合い。
 ――陰陽師『安倍晴明』と真っ向から符術勝負を挑み。
 ――さらに猟書家『ブックドミネーター』が召喚した安倍晴明とも一戦交え。
 そのいずれも、その時は満足いく結果ではあったのだけど。
(「今のアタシの剣なら、謙信様を越えられるのか。符術は晴明様を超越できるのか」)
 正直、燦にとって、猟書家云々はどうでもいい。
(「むしろ、己の業のために戦いに赴くぜ」)
 己が力を確かめるために、魔空原城へと足を踏み入れようとする燦を、晴明の手でゾンビと化した切支丹武者らが遮った。

「先ずはこの一揆を平定すりゃあ良いんだな」
 退こうとしない武者たちを見て、燦は楽し気に何かの呪を詠唱開始。
「御狐様よ、此処に降臨せよ。そして敵を一網打尽にしちまいな!」
 ――ずーん。
 燦の詠唱に合わせ、どこか厳かな振動とともに、巨大な神輿がその場に現れた。
 見た目は極めてだんじりに近い神輿には、破魔の弓矢と呪符で武装した、690体の白狐の戦士たちが乗っている。
 白狐戦士の一部がだんじりの前後につき、だんじりを引く準備をすれば、燦の表情が一瞬にしてお祭りモードに!
「よっしゃ戦じゃ戦じゃー!!」
『祭りのはじまりだ!』
 先ほどまでの真剣さはどこへやら、ノリノリの燦は神輿のてっぺんに乗り、いざ出発!!
 白狐戦士の一部にだんじりを引かせ、一気に城門向かって突撃を敢行すれば、武者たちも思わずハルバードを向けて雷を落としそうになるけれど。
「おっと、ハルバードを向けてる輩は射殺しちまいな!!」
 弓矢を構えている白狐戦士の霊に燦が指示を出せば、白狐戦士たちは躊躇なく一斉射撃し瞬殺して阻止して。
「呪符部隊、神輿にオーラ防御貼って守りを固めろってね!」
 その指示に呪符部隊が即応し、だんじりにぺたぺたと護符を貼って結界のようなオーラを張り、少しでも雷を散らせるよう仕込んで置いて。
 とにかく雷を落とされたら、てっぺんに乗っている燦が真っ先に振り落とされそうだから、雷だけは何としてでも阻止したい。
 だが、それでもこれだけの武者がいれば、どうしても1体2体の取りこぼしは出るもので。
 弓矢を逃れた武者がだんじりにハルバードを向けた瞬間、空が一気に曇り、太い雷が落ちて来て。
「おっと!!」
 咄嗟に燦は神鳴を抜いて避雷針のように構え、落雷を真っ二つに割かれて受け流し。
 その間にも、だんじりを引く白狐戦士たちに指示を出し、魔空原城の入口目がけて突撃するのは忘れない。
 もちろん、ハルバードを構えた武者たちが、白狐戦士に神罰を下し止めようとするが、すぐさま呪符部隊の白狐たちが呪詛を宿す符をばら撒き、その動きを鈍らせた。
 武者たちもまた、動きを鈍らされながらも、緩慢にハルバードを向けようとするが、そんな彼らに白狐戦士が引っ張るだんじりが迫った。

 ――ドドドドドドドド!!
 ――ガガガガガガガガ!!

 哀れ呪詛で動きを鈍らされた武者たちは、無情にもだんじりに蹂躙粉砕され、あっけなく消滅。
「敵は一揆を起こす賊軍! このまま蹂躙しちまいな!!」
 ――ここが此度の関ヶ原、ってな!
 そう呟きながら次々とだんじりで武者を蹂躙してゆく燦の表情は、明らかにお祭りを楽しんでいるそれだった。

 かくして、燦を乗せただんじりは、楽々と城門を突破し、城内へ突入した。
 ちなみに、他の猟兵たちもそれを見て慌てて後を追ったのは、また別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
対象の攻撃を軽減する【回転する12本の『毘沙門刀』】に変身しつつ、【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サムライエンパイア――魔空原城・城内
 城内に突入した猟兵たちを待ち構えていたのは、軍神「上杉謙信」……を憑装した、魔軍将ゾンビ。
「よくぞ参った、猟兵たち……かつて信玄を【Q】で阻んだ、グリモアの予知を得た者たちよ」
 佇まいも気配も、何より理性的な一面も、生前の上杉謙信と全く同一な魔軍将ゾンビに、一瞬猟兵たちも戸惑うが。
「なれば私も一切の油断はすまい。あなたたちは今の私が如何なる存在か、把握しているようだからな」
 ここは通さん、と口にしながら油断なく両手の刀を構える謙信を見て、猟兵たちに気を引き締め直しながら、それぞれの得物を手にした。

 さあ、猟兵たちよ。
 目の前にて油断なく刀を構えるは、魔軍将ゾンビと化した軍神「上杉謙信」。
 ゾンビでありながら、生前の技量と知識、そして理性を全て受け継ぎ、12本の毘沙門刀を巧みに操り攻め立てる強敵だ。
 かつての軍神と同等の力を誇る相手に、持てる力を尽くして挑むべし。

 ――健闘を、祈る。

※マスターより補足
 軍神「上杉謙信」が持つ12本の毘沙門刀の内訳は、以下の通りとなります。
 それぞれの刀の見た目は、イラストを参照して下さい。

 ・右手の黒刀『アンヘルブラック』
 ・左手の白刀『ディアブロホワイト』
 ・周囲を浮く【水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇】の各属性が付与された10本の刀

 ――それでは、良き闘いを。
シン・コーエン
謙信公とまた戦場にて見える事が出来るとは戦人の誉れ。
挑ませて頂く。
と敬意持ちて対峙。

まずは相手の手数を減らさねば、じり貧は必至。
故にUC:灼星炎渦で武装熔解を狙う。

謙信公が毘沙門刀車懸かりで攻撃してきたなら、
空中浮遊・自身への念動力・空中戦で自在に空を翔け、
ダッシュとジャンプで地を奔り、
残像を数多生み出して幻惑した上で、
第六感・心眼で攻撃を予測しての見切りで回避。
オーラ防御も展開する。

カウンターの2回攻撃で、灼星剣による衝撃波と村正による斬撃波で
更に刀を破壊。

最後は灼星剣・村正に陽光の魔法を纏い、限界突破した早業・2回攻撃に
よる鎧無視攻撃、即ちデイブレイクソードで謙信公を斬る!

如何でしょうか。



●義には敬意を持って対峙する
 魔空原城の入口にて、猟兵達の行く手を遮る軍神『上杉謙信』の姿を見て、シン・コーエン(灼閃・f13886)は妙な感慨を抱いていた。
「謙信公とまた戦場にて見えることが出来るとは、戦人の誉れ」
 シンは4年近く前のエンパイアウォーにて、謙信と1度剣を合わせたことがある。
 魔軍将ゾンビとはいえ、昔の記憶と寸分違わぬ謙信の姿に驚きはしたが、それ以上にまた戦えるとの感慨の方が強かった。
「ほう、あなたはかつての私と刃を交えたことがあったか」
「ああ、挑ませていただく」
 シンは軽く一礼しながら灼星剣と村正を手にし、謙信の出方を見極め始めた。

「受けてもらおう――毘沙門刀車懸かり」
 謙信の身体が12本の毘沙門刀に変じ、回転し始める。
 毘沙門刀が宿す属性のうち、どの属性が弱点と見なされているか、シンには皆目見当もつかない。
 そうでなくても、回転する12本の毘沙門刀、全ては到底相手にし切れない。
(「相手の手数を減らさねば、じり貧は必至か」)
 ゆえにシンの初手は――1本でも刀を減らすための、武装熔解。
「我が剣よ、フォースによりて生み出せし星炎(プロミネンス)の渦でこの地を満たし、我が敵を殲滅せよ」
 シンは灼星剣を掲げ、戦場全体を紅く煌く星炎(プロミネンス)の渦で満たす。
 その渦に樹属性と薬属性の刀が真っ先に巻き込まれ、消えぬ炎に抱かれて一瞬で熔解した。
 2本排除を確認したのもつかの間、火属性の刀が星炎の渦を切り裂きながら、シンに向かって突撃してくる。
(「炎を操る俺に火の刀を差し向けた?」)
 明らかに弱点でない属性の刀を向けられ、一瞬シンも戸惑うが、彼の第六感は迫る刀が1本だけではないと警鐘を鳴らしている。
 シンの脳裏に、ひとつの可能性が閃いた。
 ――もし、近しい属性の刀を利用し、他属性の刀を通すとしたら?
(「となると、本命の刀は?」)
 シンがよく目を凝らすと、火属性の刀の後を追うように、風属性と闇属性の刀が迫っている。
 もし、風属性の刀に斬られれば、刀が纏う風で大きく姿勢を崩し、闇属性の刀に触れれば、闇で視界が閉ざされてしまう。
 いずれも、高い機動力を持って敵を斬るシンには、致命的な一撃だ。
(「近しい属性の刀を利用し、弱点の刀を通したか……!」)
 謙信の戦術に感心しつつ、シンは灼星剣を一振りして衝撃波を生み出し、自身に迫る火・風・闇属性の刀を纏めて吹き飛ばした。
 武装熔解の炎に多少なりとも触れていた3本の刀は、吹き飛ばされた衝撃で破壊され、地面に落ちた。
「見破ったか!」
 星炎の渦の向こうで、謙信が称賛の声を上げながら、残る刀を一斉にシンに差し向ける。
 シンは武装熔解の炎に身を隠しながら、念動力も駆使して空中を自在に駆け、土属性と光属性の刀を回避。
 別方向から迫っていた毒属性の刀に対しては、残像を多数生み出して狙いを絞らせないよう幻惑している間に星炎の渦に巻き込み、熔解させた。
 残る水属性と氷属性の刀は、その属性の力で星炎に熔かされぬよう抗っていたが、シンがダッシュとジャンプで撹乱している間に力尽きたか、熔解する。
 黒白以外の全ての刀を星炎に巻く頃には、シンの目は星炎の渦の先にいる謙信の姿を捉えていた。
 その謙信は、残る黒刀と白刀を十字に交差させ、シンを待ち受けている。
「謙信公、覚悟!」
「来い!」
 謙信が黒刀と白刀を振り下ろすのと同時に、シンもまた灼星剣と村正に陽光の魔法を纏わせ、己が限度を超えた早さで十字に振り切った。

 ――斬ッ!!!

 デイブレイクソードと化した二刀の一撃は、黒刀と白刀を溶解させながら、謙信の胴を十字に斬り裂く。
「謙信公、如何でしょうか」
「成程、私が骸の海を彷徨っている間に、猟兵はこれほどにまで力をつけていたか」
 胴を十字に斬り裂かれ、膝をついた謙信の表情は、悔しさよりも驚きと称賛に満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
侍として死合を申し込むぜ
神鳴とアークウィンドの二刀流で四王天・燦、推して参る!

基礎とも言える見切り・武器受け・フェイントで切り結ぶぜ
仮初の肉体に謙信公が馴染んでくれていれば満足だ
謙信公は愉しんでいるかな

光や闇による目潰しは心眼で対応するぜ。殺気を視るのさ
毘沙門刀車懸かりの十二刀に包囲されないようダッシュと逃げ足で間合いを取り攪乱する
刀が突出してきたり分断されりゃあ怪力を乗せた殺戮剣舞で毘沙門刀を圧し折りに掛かるよ
念動力で抑え込んで狙った刀を逃がさない

黒刀・白刀は敢えて残す
生身の謙信公と殺り合いたいのだ
骨が悲鳴を上げるほどの殺戮剣舞Lv3で勝負を掛けるぜ

勝敗何れにせよ一礼
アタシは剣聖に至れるかな



●義には侍として対峙する
 魔空原城の入口にて待ち受ける軍神『上杉謙信』の姿を見て、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)もまた、高揚感を隠せずにいる。
「侍として死合を申し込むぜ。四王天・燦、推して参る!」
 右手に神鳴、左手にアークウィンドを構える燦を見て、謙信も黒刀と白刀を構え、頷いた。
「その心意気、しかと承った」
 決して油断せず隙なく二刀を構えるその姿は、かつてエンパイアウォーの時に剣を交えた時の姿、そのまま。
 今の謙信は『魔軍将ゾンビ』と呼ばれる存在だが、自我無きゾンビの身体を瞬く間に奪い、生前と同じ様に振る舞えるのは――やはり魔軍将だからだろうか。
 ひょっとしたら、ゾンビと化した己に後悔していたり、いまだ身体が馴染んでいないのでは、とも考えはしたが、謙信の表情からはそんな様子は一切伺えない。
(「仮初の肉体に馴染んでいくれていれば満足だ。謙信公は愉しんでいるかな」)
「お見せ致そう――毘沙門刀車懸かり」
 そんな燦の心配をよそに、黒刀と白刀を含む12本の毘沙門刀が宙を舞い、燦を包囲し始める。
 咄嗟にダッシュし包囲から逃れようとする燦を狙い、土属性と樹属性の刀が飛び出した。
(「土属性で地面を操作し、樹属性で絡め取るつもりだな!?」)
 弱点を突きにかかったのだろうが、毘沙門刀の一部が突出してきたならば、逆に圧し折りにかかるチャンス。
「うおおおお!!」
 燦は土属性と樹属性の刀を念動力で抑え込みながら殺戮剣舞で叩き落とし、一気に刀身を圧し折った。
 ふた振りの刀が刀身半ばから折られ、地面に落ちながら消滅する。
 だが、すぐさま光属性と闇属性の刀が燦の目を狙い、飛び出した。
 目潰しを狙う二刀を心眼で殺気を視つつ叩き落としながら、燦は背後から迫る薬属性と毒属性の刀からダッシュで距離を取り、方向転換と同時に怪力を乗せた殺戮剣舞で一気に折る。
 残った水属性と氷属性、風属性と火属性の4本は、燦を包囲するようにじわじわと迫るが、その全ての位置を把握して念動力で抑え込み、確実に1本ずつ折っていった。

 属性を帯びた10本の刀が全て折られ、謙信が黒刀と白刀を手に再び姿を現す。
「私が骸の海で揺蕩っている間に、随分と腕を上げたものだ」
 燦の猛攻で10本の刀を折られても、謙信は全く動じていない。
 しかも今、謙信が構える黒刀と白刀は、燦があえて折らずに残したものだ。
 謙信への慈悲ではない。
 技量の差で圧し折る余裕がなかったわけでもない。
 ――ただ、生身の謙信公と殺り合いたい。
 その想いだけで残した二刀を、謙信は解っているかのように手に取り、構えている。
「来い!」
 謙信の短き激が飛んだ直後、燦は殺戮剣舞の段階を第3段階まで引き上げ、弾かれるように一気に斬りかかる。
「速く・重く・鋭く。四王天・燦の荒ぶる剣戟が、肉体の限界を凌駕する!」
 肉体にかかる負荷を無視し、修羅の如く二刀を縦横無尽に振り回して謙信を滅多切りにするが、第三段階に至った殺戮剣舞の代償で、燦の全身の筋肉が千切れ、骨が砕けた。
「く……っ!!」
「まだまだ行ける……動けアタシの体ァ!」
 謙信もまた燦の四肢を断ち動きを止めようとするが、全身にかかる負荷を無視した燦の剣舞は、明らかに謙信の勢いを上回っている。
 それでも負けじと二刀で剣舞を受け止め、斬りつけようとする謙信の刀を全力で受け止めながら、燦は暴風の如く剣戟を振るい続けた。

 しばし全力の剣舞に興じた後、何方からともなく刀を引き、距離を取る。
 殺戮剣舞の代償で満身創痍になってはいたが、燦は痛みをこらえつつ姿勢を正し、謙信に一礼した。
 勝とうが負けようが、相手への敬意は忘れない。
 ――それが、侍として死合に臨んだ者としての礼儀だから。
(「アタシは剣聖に至れるかな」)
「良き剣筋だが、無理な動きはするでない――この期に戦を控えているのだからな」
 燦の脳裏をかすめたその疑問を読み取ったかのように、戦いぶりを評価する謙信の一言に、燦は思わず「はい」と頷いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

上杉謙信
何度も挑んだ、何度も斬られた
そんな相手とまた闘える
なんて幸福なことか。自分の全力、過去に未来、その全てを出して闘えることの充実感
二度と味わえないだろうと思っていた。あんたにどれだけ近づけたか、全身全霊の一太刀、受けてもらう

毘沙門刀連斬で攻撃されても第六感で反応し、本能で相手の攻撃を見切り、残像を残す速さで移動し、武器受けで毘沙門刀を弾きながら接近し、跳躍から雲を裂き、大地よ砕けよと言わんばかりの捨て身の一撃を見舞う
(ああ、なんて楽しいんだ。自分の全てをぶつけて受け止める相手がいる。なんと幸福で、楽しいことか。願わくば、この時が少しでも長く続きますように)



●義には高揚しながら対峙する
 魔空原城の入口に立ちふさがり、猟兵達を待ち受ける軍神『上杉謙信』の姿に、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)もある種の感慨を隠しきれない。
「……上杉謙信」
 目の前の軍神は、かつてエンパイアウォーにて刀也が何度も挑み、そして何度も斬られた相手。
 今の謙信は、憑装猟書家『晴明クルセイダー』が、猟書家『クルセイダー』の術『超・魔軍転生』を使用し、配下たる生殖型ゾンビに憑装させられた身ではあるが、纏う雰囲気と気迫はかつての謙信と全く相違ない。
 強者ならではの威圧感を真正面から受け、刀也も一瞬言葉を詰まらせはするが、それ以上に
「そんな相手とまた闘える。なんて幸福なことか」
 自分の全力、過去に未来、その全てを出して闘えることの充実感。
 ……謙信が討たれ二度と味わえないだろうと思っていたが、まさか、また味わえることになるとは。
「あんたにどれだけ近づけたか、全身全霊の一太刀、受けてもらう」
「成程。ならば、正々堂々受けて立とう」
 黒刀と白刀を構える謙信を見て、刀也は真の姿を解放。
 全身から蒼の闘気を放出し、構えた獅子吼・真打ちにも闘気を纏わせると、残像を残す勢いで走り始めた。

「参る――毘沙門刀連斬!」
 謙信の周囲に舞う10本の刀が、解き放たれたように刀也に迫る。
 宙を浮かぶ属性を秘めた刀は、一直線に飛ぶのではなく、複雑な軌道を描きながら四方八方から刀也を狙っていた。
(「攻撃力や攻撃回数ではなく、命中力を重視したか」)
 ――確実に刀也に傷を負わせて足を止め、手にする二刀でとどめの一撃を穿つ。
 そう察した刀也の背後から、水属性と氷属性の刀が迫った。
 いつの間にか回り込んでいた二刀を第六感で察し即座に避けつつ、真正面から迫る目潰しを狙う光属性と闇属性の刀の軌道を見切り、僅かに頭を傾けて避ける。
 あっという間に四刀を避けた刀也の死角から、ゆるゆると薬属性と毒属性の刀が迫るが、ダッシュしつつ振り向きざまの獅子吼・真打ちの一振りで叩き落とす。
 その間にも刀也を前後から挟むように火属性と風属性の刀が弾丸よろしく突っ込んで来るが、本能に近い見切りで避けながら、獅子吼・真打ちで受け流した。

 属性を帯びた10本の刀のうち、8本をいなしながら、刀也は謙信に迫る。
「判断が早い。なら……」
 謙信もまた、過去と未来を司るであろう黒刀と白刀を交差させ、防御の構えを取った。
 攻撃ではなく、防御体制を取ったということは、謙信は刀也の剣戟を真っ向から受け止めるつもりなのだろう。
(「ああ、なんて楽しいんだ。自分の全てをぶつけて受け止める相手がいる」)
 言い知れぬ高揚感に身を浸しながら、刀也は地面スレスレから足を狙う土属性と樹属性の刀を跳躍し避けつつ、獅子吼・真打ちを大上段に振り上げた。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」

 ――斬ッ……っ!!

 持てる力と想いをこの一振りに全て籠め、獅子吼・真打ちを上段から一気に振り下ろす。
 雲よ裂け、大地よ砕けよと言わんばかりの捨て身の一太刀は、空中に蒼い弧を描きながら交差した黒刀と白刀の防御を弾き飛ばし、謙信の左肩から右わき腹にかけて大きく斬り裂いた。
「見事……ッ!!」
 弾き飛ばされ刀身が泳ぐ刀を再度握り直し、揺らいだ姿勢を立て直しながら、謙信は刀也を褒め称える。
 今はただ、この時が少しでも長く続くよう願いながら、刀也は再度獅子吼・真打ちの柄を握り直し、どう猛な笑みを浮かべながら再び謙信と対峙した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
やば
圧される気を鎮めねーと

軍神と謳われた越後の大将どのか
オレでも名前存じてるよ
けど今の上杉殿は歪んだ過去
この時代生きてるオレが一撃も入れずに退くわけにはいかねーな

刀剣術には疎いからなオレ
速さと【野生の勘、視力】で敵の剣筋を躱し覚えて次は【武器受け】で弾き返し懐へ奔り【スライディング】で足を掬い叶わずとも相手の身を蹴り離脱と同時に足、腿、脇腹、肩、手首と正中線を外して手裏剣複数【投擲】
大技を仕掛けてきたら【念動力】で軌道を逸らしてみる
被弾しても【激痛耐性】で推して動き真下から斬り上げる様にクナイ振るう
けど本命はオレの背後から七葉隠に乗せたUC【追跡/暗殺】
やれ七葉
まやかしの将を撃ち抜け

アドリブ可



●義には己が技を尽くし対峙する
 魔空原城の入口にて猟兵達を通さぬと立ちはだかる軍神『上杉謙信』が発する気に、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は思わず一歩後ずさっていた。
(「やば。圧される気を鎮めねーと」)
 平静でいたつもりであったが、強者特有の威圧感に思わず圧されてしまっていたか、と己を省みながら、トーゴは大きく深呼吸し、いったん気を鎮める。
「軍神と謳われた越後の大将殿か。オレでも名前存じてるよ」
「忍びであれば、私のことを存じていてもおかしくないだろう」
「ハハッ、そう言われればそうかもしれねーな」
 ――けど。
「今の上杉殿は歪んだ過去。この時代生きてるオレが、一撃も入れずに退くわけにはいかねーな」
「歪んだ過去、か。確かにその通りかもしれないな」
「行くぜ」
 自身の歪を認識しているかのような謙信の言の葉に、思うところはあるけれど。
 今はそれどころではないと自身に言い聞かせながら、トーゴはクナイを構え、然りと謙信の出方を伺った。

 忍のトーゴは、刀剣術には疎いという自覚がある。
 ゆえに、トーゴが選んだ戦術は……太刀筋を捉え、躱し、覚えてからの反撃。
 謙信は属性を帯びた10本の刀を一斉に空中に舞わせながら、自身も黒刀と白刀の二刀を構え、トーゴを待ち受ける。
 宙を舞う10本の刀は、複雑な軌道は描かず、一直線にトーゴを狙って飛んだ。
 おそらく、命中率より攻撃力を重視した一撃でトーゴの足を止めている間に、二刀で斬り捨てるつもりなのだろう。
 そうはさせじと、トーゴも10本の刀の軌道を躱しながら覚えつつ、間に合わなければクナイで弾き軌道を少しでも逸らしながら懐へ奔り、身体を倒しながらスライディングしつつ足を掬おうと狙う。
 その挙動が見えていたのか、謙信もまた、脚を掬われぬよう小さくジャンプし、トーゴのスライディングを避けた。
(「最低限の動きだけで躱したのか」)
 すぐ反撃できるよう最小限の動作で回避しながら、謙信は足元のトーゴを狙い、黒刀と白刀の二刀を十字に振り下ろす。
 その判断力に敬意を表しながらも、トーゴはすぐさま地面を蹴って二刀を回避しつつ離脱し、足や腿、脇腹、肩、手首など、正中線を外して手裏剣を投擲。
 近距離から投擲された手裏剣は、確実に狙いの部位を捉え、謙信をたじろがせた。
「ぐっ……」
 だが謙信は、突き刺さった手裏剣を無理に抜こうとせず、改めて10本の刀の狙いをトーゴに定め、一斉に発射。
 トーゴも念動力で刀に干渉し軌道を逸らしたが、さすがに1度に10本全てには干渉し切れず、念動力をものともせず突っ込んできた氷属性と火属性の刀に掠められた。
 傷が瞬時に凍結し、あるいは燃え上がる痛みに思わず声を上げたくなるが、歯を食いしばりぐっと耐える。
(「何入れられるかわかんねー薬や毒の刀を外しただけも僥倖か」)
 傷口の痛みを無理やり押し殺しながら、トーゴはあえて1歩踏み出し、真下から真上に斬り上げるように苦無を振るった。
 その真っ直ぐな一振りは、上杉謙信が手にした黒白の二刀で確りと受け止められる。
 トーゴもまた、クナイを握る手にぐっと力を入れ二刀を押そうとするが、逆にじわじわと押されていく。
 だが、本命の一撃は、このクナイではない。
(「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” ……穿て大鉄嘴」)
 こそりと胸中で呪を唱えながら、二刀に押されつつぐっと身を沈めるトーゴ。
 その背から、念動力で浮かべた七葉隠が現れた。
 七振りがひとつになった巨大忍刀の切っ先は、既に真っ直ぐ謙信に向けられている。
 謙信が一瞬、目を大きく見開いた時を狙い、トーゴは七葉隠に念を送った。
(「やれ七葉、まやかしの将を撃ち抜け」)

 ――ドスッ!!

 超圧縮した空気に押し出された七葉隠が、弾丸並みの速さで謙信の腹を撃ち抜く。
「ぐ、はっ……!!」
 内心、見事と感服しながら、謙信は七葉隠に押されるよう後退し、膝をついていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
初めて対峙する、これが軍神。
対面しただけなのに、身が竦み、心が挫けそうになる圧倒的威圧感。
・・・呑まれるな。
浮遊する十刀と両手の二刀。
俺は全てを掻い潜り必殺の一撃を見舞わねばならない。
彼我の距離は5間ほど?と思われるが、やけに遠いとも感じる。

研ぎ澄ませ・・・極限まで集中力を高め、一対多の集団戦術に臨む。
全てが見切れるなどと思わぬ。
残像で的を絞らせず、野太刀と雷迅、見切りとカウンターで飛び交う十刀を逸らし弾きつつ、致命で無ければ傷も厭わず、只管前へ。

必殺を見舞うには懐深くに入らねばならぬ。
軍神の威容に膝が笑う・・・否、これは歓喜の武者震いだ!
死地に赴く自身を叱咤し軍神の懐に一足で飛び込む。

迎撃する二刀と飛来する十刀を捨て身で受け止める。
仮初の身体には致命など無く、さも心臓が致命であるかの様に振る舞っただけ。
奪命の瞳で軍神を睨み、二刀の鍔元まで力強く踏み出し、見舞うは必殺。

【UC】
野太刀?否。
雷迅?否。
捨て身の一撃は己の体躯から繰り出されるべきだ。
貫手を使い命を狩る。

然れば道は開かれん。

ア◎



●義には捨て身で対峙する
 魔空原城の入口にて、軍神『上杉謙信』は、全身に無数の傷痕を残しながらも、猟兵達を通すまいと立ちはだかっている。
 その姿を一目見て、亞東・霧亥(峻刻・f05789)は、言い知れぬ威圧感を覚えていた。
(「初めて対峙する、これが軍神」)
 ただ対面しただけなのに、身が竦み、心が挫けそうになる。
(「……呑まれるな」)
 明らかなる強者が持つ圧倒的な威圧感に呑まれぬように、霧亥は己が心を叱咤するが、強者の周辺にはその心ごと斬り裂かんとする刃がいくつも浮かんでいる。

 ――浮遊する属性を帯びた十刀。
 ――そして、両手に携える黒と白の二刀。

 彼の軍神に必殺の一撃を見舞うには……これら全てを搔い潜らねばならない。
 彼我の距離は約五間ほどのはずだが、その距離がやけに遠く感じてならない。
 それでも、この威圧感に打ち克ち、距離を詰めて懐に飛び込み、必殺の一撃を叩き込まねば……霧亥に勝機はないだろう。
(「神経を、精神を、視力を……全て研ぎ澄ませ」)
 一対多の集団戦術に臨むために、霧亥は極限まで集中力を高めてゆくが、それでも両手の二刀と宙に浮く十刀、全ての挙動を見切れるなどとは思っておらぬ。
 さらに必殺を見舞うには、軍神の懐深くに入らねばならないのだが、軍神の威容に圧され、膝が勝手に笑い出している今、懐に飛び込めるだろうか?
 ――否、これは歓喜の武者震いだ!!
 そう、死地に赴く自身を欺き、叱咤しながら。
 霧亥は野太刀と雷迅の二刀を構え、震える足を無理やり踏み出し、軍神の懐に飛び込むべく残像を引く勢いで走り出した。

「破れかぶれのつもりか、なら……」
 霧亥が走り出したのを見て、謙信は闇雲に進ませぬよう、命中力重視で十の刀を舞わせる。
 続けざまに残像を打ち消し、霧亥の心臓を狙い襲い来る刀を、霧亥は手にした二刀で片っ端から弾き、目を狙う刀の太刀筋を見切り受け止め続けた。
 時折、弾いた刀が四肢を掠めるが、致命的でなければ負傷は厭わない。
 ただ軍神を討ち取るためだけに、残像で的を絞らせぬよう撹乱しながら、霧亥は只管刀を弾いて道を切り開き、前へ進み続けた。
「片っ端ではだめか。ならば……」
 謙信は炎属性の刀で残像を斬り、焼き消しながら、土属性の刀を己が背後の地面に突き立たせる。
 刀から流し込まれた土の魔力が、謙信の周囲の地面を揺らし、次々と地面に穴を空けていった。
「――ッ!!」
 突然デコボコになった地面の凹凸に足を取られ、バランスを崩す霧亥。
 その僅かな間に、謙信は氷属性と毒属性の刀を操り、切っ先を霧亥の心臓に向けた。
 もちろん、霧亥の目にも己が心臓に向けられている二刀が映っているのだが、霧亥は即座に態勢を立て直し、再び足を踏み出した。
「……?」
 霧亥の挙動に、思わず首を捻る謙信。
 心の臓を狙われれば、如何なる人間とて一瞬身は竦み、本能的に庇うか避けるかするはず。
 だが、霧亥はそのいずれも選ばず、ただ闇雲に地面の凹凸を蹴って吶喊している。
「どういう、ことだ……?」
 霧亥の真意が理解できず、謙信も一瞬戸惑うが、すぐさま気を取り直し、氷と毒の刀で霧亥の心臓を貫いた。

 ――ズブッ!!

 毒属性の刀が霧亥の心臓に直接毒を注ぎ、氷属性の刀が心の臓を瞬時に凍結させる。
「……ッ!!」
 二刀に貫かれた衝撃で、霧亥も一瞬身体を仰け反らせるが、すぐに態勢を立て直し、心臓を貫いた二刀はそのままに走り続けた。
 ――ヤドリカミたる霧亥の身体は、仮初の身体。
 仮初の身体に致命などないから、毒を注がれようが、心臓を凍らされようが、全く支障はない。
「心の臓を穿たれても、平気とは……!!」
「心臓が致命であるかの様に、振る舞っただけだ」
 威圧されぬよう淡々と受け答えしつつ、霧亥は奪命の瞳で軍神を睨む。
 歪められた生命とも言える軍神の全身には、『解体』できる道筋が無数に張り巡らされていた。
 ――これなら、何処を狙っても『解体』できる。
 そう、確信を持った霧亥は、二刀の鍔元まで力強く踏み出し、右手を振り抜かんと構えた。
 霧亥の手にあったはずの野太刀と雷迅は、いつの間にか姿を消している。
「!?」
 その意味を測りかねながらも、謙信は身ひとつのみで懐に飛び込んだ霧亥の背中に、黒刀と白刀を交差させながら振り下ろした。

 ――斬ッ!!
 ――ドスッ!!

 謙信の二刀が霧亥の背を大きく斬り裂くと同時に、霧亥の手刀の一撃が謙信の胴を両断する。
「なぜ、刀を――」
 手にしていないのか、と問いたげな謙信の言葉を遮るように、霧亥はただ、淡々と告げる。
「……捨て身の一撃は、己の体躯から繰り出される。然らば道は開かれん」
「見事、な、り……!!」
 無手で飛び込み引導を渡した霧亥の覚悟を称えながら、カウンター気味に繰り出された必殺の『貫手』で胴を両断された軍神はその場に頽れ、二度と立ち上がらなかった。

●軍神、散る
 霧亥の目の前で、軍神の姿が揺らぎ、跡形もなく消滅する。
 おそらく、肉体の憑代となっていた生殖者ゾンビが、憑装していた軍神ごと消滅したのだろう。

 ――残すは、ぱらいそ礼拝堂とやらにいる憑装猟書家『晴明クルセイダー』のみ。

 魔軍将ゾンビを日ノ本中に放たんとする憑装猟書家の野望を阻止すべく。
 霧亥たち猟兵は、魔空原城最奥の『ぱらいそ礼拝堂』へ赴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:kawa

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サムライエンパイア――魔空原城・ぱらいそ礼拝堂
 魔軍将ゾンビと化した軍神『上杉謙信』を撃破した猟兵達は、城の最奥部に位置する礼拝堂に突入する。
 内装に美しき装飾が施され、天井から陽光を取り込んでいる南蛮風来の礼拝堂の奥には、猟書家『クルセイダー』の姿があった。

 しかし、猟兵達は知っている。
 猟書家『クルセイダー』の精神は、既に彼岸を超えてしまっていることを。
 そして、その肉体を乗っ取り、我が物顔で振る舞う者の正体は……『陰陽師『安倍晴明』』だということを。

「ふふふ……私の憑装を試み、エンパイアを転覆に導かんとした蛮勇は見事でございましたよ、クルセイダー」
 慇懃無礼な口調とクルセイダーの声音で、目の前に現れた猟兵達に説明しつつ精神が彼岸を越えたクルセイダーを嘲りながら、晴明……否『晴明クルセイダー』は十字槍を握りしめる。
「さて、その肉体とユーベルコードにて、これより私がその望みを叶えてご覧に入れましょう」
 そう、晴明が口にした、その直後。

 ――ふわり。

 晴明クルセイダーの周囲に、突然半透明の細長い紙が舞い始めた。
「おやおや、これは……」
 晴明クルセイダーが半透明の紙を1枚手に取ると、真っ白な和紙として実体化する。
 実体化した紙には、|五芒符《セーマン印》」のみが描かれていた。
「なるほど、『クルセイダー』ではなく、『私』との対決を望む者がいる、ということでしょうか」
 理由は定かではないが、縁が呼び寄せたとしか思えぬ符を手に、晴明クルセイダーは微かに口元に笑みを浮かべた。
「よろしい。あなた方が望むのであれば、『クルセイダー』ではなく、『私』がお相手致しましょう」
 もちろん、望まぬのであれば使いませんから、とそっと添えながら。
 晴明クルセイダーは十字槍と『ぱらいそ預言書』を手に、猟兵達と対峙した。

※マスターより補足
『晴明クルセイダー』は常に【2回攻撃】を行い、1回の行動で『猟兵の指定ユーベルコードの能力値に応じたユーベルコード』と『MS側で選んだユーベルコード』のふたつを同時に使用してきます!!
 この【2回攻撃】を打ち破る方法を見出し実行することが、プレイングボーナスの対象となります。
 ただし、2回目の『MS側で選んだユーベルコード』はランダムで選択しますので、同じユーベルコードを2回連続で使用することもあり得ます。

 なお、『クルセイダー』の精神は完全に死んでおりますので、『クルセイダー』への呼びかけは無意味です。
 ――それでは、最善の戦を。

●特殊ルール:【符術勝負】
 本シナリオにおいては、陰陽師『安倍晴明』が使っていた『|五芒符《セーマン印》』が何らかの理由で呼び寄せられたため、晴明クルセイダーも限定的に符術が使用可能となっております。
 そのため、本シナリオ限定で、陰陽師『安倍晴明』に勝負を挑むのも可、とします。

 晴明との勝負を希望される場合は、プレイングの1行目に【符術勝負】と記載願います。
 明確な記載があった場合に限り、晴明クルセイダーの使用ユーベルコードに、陰陽師『安倍晴明』が使用していた以下のユーベルコードが加わります。(記載なき場合は使用しませんので、ご安心ください)

 五芒業蝕符(WIZ)
【|五芒符《セーマン印》】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き|業《カルマ》の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
 ※参考:https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=13414

 ちなみに、【符術勝負】を挑んだ場合、2回行動の1回目は、指定UCの能力値に関係なく必ず【五芒業蝕符】を使用します。
 2回目(MS側選択ランダム枠)は、五芒業蝕符を加えた4種の中からランダムで選択しますので、ご注意ください。
シン・コーエン
俺は戦人だからな。
お前に向けるのは両手に持つ刀剣だ。

やり合って楽しい相手(=尊敬に値する強敵)でも無いし、お前と決着をつけたい術者もいるだろうから露払いと行こう。

・十字槍には、第六感・心眼で攻撃を読んで見切りで躱す事で、その後の光線も回避。
 オーラ防御も展開。

・小型秀吉には灼星剣と村正の2回攻撃・衝撃波・範囲攻撃で纏めて撃破。

・預言書は厄介だが、要は予想しても躱せなければ良いという事だ。

まず灼星剣と村正による2回攻撃・斬撃波の連撃。
次に村正を手放し、早業でフォーマルハウトを抜き、炎の魔法を纏わせて連発(2回攻撃)。
更に念動力・捕縛で晴明の身体を拘束。
その上でUC:虚空断絶にて晴明を斬る!



●戦人は簒奪者を斬り捨てる
「俺は戦人だからな。お前に向けるのは両手に持つ刀剣だ」
 右手に灼星剣、左手に村正を握り込みながら、シン・コーエン(灼閃・f13886)はじっと晴明クルセイダーを睨みつける。
 どこか冷めた様相ながらも慇懃無礼な態度をとる晴明クルセイダーは、シンにとっては尊敬に値する強敵ではなく、やり合って楽しい相手ではなさそうだ。
(「なら、露払いと行こう」)
 撃破ではなく、先陣を切るために、シンは二刀を構え、晴明クルセイダーの動きを待つ。
 決着は、晴明クルセイダー……ではなく、陰陽師『安倍晴明』と決着をつけたい術者に譲るつもりだから。

「さて、クルセイダーが真にグレイズモンキーに連なる者であれば……」
 晴明クルセイダーが口元を僅かに歪めながら十字槍を一振りすると、小型の黒い毛玉のような生物――戦闘用秀吉が次々と現れる。
「フェンフェン」
「フェンフェン」
「フェンフェーン!!」
 召喚され独特の鳴き声を上げる戦闘用秀吉の数は、明らかに二千を超えている。
 あまりにも異常なその数に、シンの脳裏に一つの可能性が閃いた。
(「1度で召喚するには多すぎる……肉体も霊体も両方とも召喚したのか!!」)
 晴明クルセイダーは、肉体のクルセイダーと霊体の晴明が別々にユーベルコードを使用することで、1度の攻撃で2回、ユーベルコードを使用するが、今回は、たまたま肉体と霊体、双方が行使したユーベルコードが同じだったらしい。
 結果的に通常の2倍……三千近く召喚された戦闘用秀吉が、ぱらいそ礼拝堂の床一面を埋め尽くしながら次なる命令を待っていた。
「さ、行きなさい」
「「「フェンフェンフェーン!!」」」
 晴明クルセイダーの命に従い、三千もの戦闘用秀吉が一斉にシンに飛び掛かる。
 黒い毛玉の津波の如く、暴力的な勢いで飛び掛かる戦闘用秀吉の群れに対し、シンは右手の灼星剣から紅の衝撃波を放ちつつ、左手の村正で広範囲を薙ぎ払った。
 シンに飛び掛かった戦闘用秀吉は、紅の衝撃波でまとめて吹き飛ばされ、村正でまとめて斬られ、次々と消滅していくが、衝撃波と斬撃をかいくぐった一部の個体がシンに体当たり。
 思わぬ体当たりによろめきながらも、シンは連続で斬撃波を繰り出し、体当たりした個体を追い払いながら村正を手放した。
「何をお考えです?」
「こういうことさ」
 その意図を測り兼ね、晴明クルセイダーが訝しんでいる間に、シンは左手一本で素早く極炎銃フォーマルハウトを抜き、炎の魔弾を連射し始める。
「フェンフェーン……!!」
「フェーン!!」
 炎の魔弾が直撃した戦闘用秀吉は一気に燃え上がり、跡形もなく消え失せた。
 その炎に触れた他の戦闘用秀吉も次々と全身から炎を上げ、灰になる前に消滅してゆく。
 どうやら、戦闘用秀吉は攻撃を受ければ一撃で消滅するらしく、仮に燃え上がっても礼拝堂へ引火する前に鎮火するようだが、戦闘を長引かせれば、いずれ数で圧倒されるだろう。
 そうなる前に状況を打開せんとばかりに、シンは灼星剣とフォーマルハウトで戦闘用秀吉を薙ぎ払い、撃ち抜きつつ、一瞬の隙を突いて念動力で晴明を捕縛。
「む……?」
 肉体の自由が奪われ、訝しむ晴明クルセイダーに、シンはフォーマルハウトで戦闘用秀吉をけん制しつつ、灼星剣を一息に振り下ろした。
「この一閃にて虚空を断絶せん!」

 ――斬ッ!!

 灼星剣が何もない空間に紅の軌道を刻み込むのと同時に、晴明クルセイダーの胴に斬り捨てられたような傷が穿たれる。
「む……空間を渡る斬撃、でしたか」
「俺は露払いに徹しただけだ」
 淡々と言い放つシンの目の前で、晴明クルセイダーは灼星剣で穿たれた次元の断裂に巻き込まれるように斬られた胴の傷を押さえつつ、端麗な顔を痛みで歪めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
ふん
欠片も心に無い事を饒舌にぺらぺらと
外道め…
クルセイダーもこの世界もテメーにとっちゃ暇潰し程度のモノらしいが
テメーのお遊びで屍人まみれは御免だぜ
…依り代もテメーも殺す

常時【激痛耐性/追跡/野生の勘】で敵の行動に敏感に反応し戦闘続行と致命傷回避の為の負傷も耐える
UCで広範囲攻撃を敷きミニ秀吉は【念動力で投擲】した手裏剣を多数撒き撃破、又は手持ちのクナイで切り開く

預言書には攻撃を読まれるんだっけな
秀吉以外は攻めより反撃主体【カウンター】で【武器受け】応用し
十字槍の切っ先を念動の手裏剣で逸らし初擊躱してクナイ投擲、即接近し投げたクナイを捉え→手に持ち替え至近距離より首や胸【串刺し、暗殺】

アドリブ可



●忍は簒奪者の暗殺を狙う
「ふん、欠片も心に無い事を饒舌にぺらぺらと」
 憑装猟書家『晴明クルセイダー』流暢に紡ぐ言の葉を耳にしながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は外道め……と吐き捨てるように呟く。
「クルセイダーもこの世界もテメーにとっちゃ暇潰し程度のモノらしいが、テメーのお遊びで屍人まみれは御免だぜ」
「おやおや、随分な言いぐさですね」
 相も変わらず慇懃無礼な口調を崩さぬ晴明クルセイダーに、トーゴは低い声で宣告した。
「……依り代もテメーも殺す」

「やれやれ、私も随分嫌われたものですね……さて、お越しいただきましょうか」
 トーゴの宣告を軽く受け流しながら、晴明クルセイダーは十字槍を一振りし、黒い毛玉のような生物を次々と召喚。
「フェンフェン」
「フェンフェン?」
「フェンフェンフェーン!!」
 異常な程の速さで次々と召喚され、ぱらいそ礼拝堂の床を埋め尽くそうとしている生物――戦闘用秀吉を見て、トーゴの脳裏にある可能性が閃いた。
(「まさか、依り代も外道も両方召喚術を使ったのかよ!?」)
 どうやら霊体の晴明と肉体のクルセイダー、双方が全く同じユーベルコードを行使したらしく、トーゴの目の前で戦闘用秀吉が物凄い勢いで増殖し、瞬く間にぱらいそ礼拝堂の床を埋め尽くしながらトーゴを取り囲んだ。
 召喚された数は、ざっと三千程度だろうか。
(「この数に一気に飛び掛かられたら、さすがにオレも圧し潰されそーだな」)
 逃げ場と晴明クルセイダーへの道、両方を塞がれたトーゴは、常に野生の勘を働かせて晴明クルセイダーと大量の戦闘用秀吉の行動を警戒しながら、ゆっくりと禍言を紡ぎ始めた。

 ――荒野の朽ち身の落ち梯子。
 ――楽土へ至る鳥路の逸れ路。
 ――彷徨う死魂の成れの果て。

「その詠唱は見過ごせませんね――グレイズモンキー」
「フェーン……!?」
 一字一句間違えないよう慎重に詠唱するトーゴに、晴明クルセイダーの意を受けた戦闘用秀吉の一部が飛び掛かり、詠唱を阻止しようとするが、トーゴは慌てずクナイで切り払いながら詠唱を続け、禍言を完成させた。

 ――其は其は 不浄の迷い魂。
 ――聞けや 此の血此の魔の言寄せの。

 虚空に紡がれた禍言が完成するや否や、浄土へ至る鳥路から零れた魂が半透明の虚ろな鳥の形に変化し、現世へ喚び戻される。
 顕現した半透明な140の不浄魂は、ふわりふわりとトーゴの周辺を揺蕩いながら戦闘用秀吉に近づき、そっと触れた。

 ――ボーン!!

 半透明の不浄魂が戦闘用秀吉に触れた瞬間、一斉に爆発する。
「フェ!? フェ、フェン……」
「フェーン……」
 トーゴに迫っていた戦闘用秀吉の一群が、虚ろな鳥の不浄魂の爆発に驚き立ち止まり――その場にへなへなと頽れる。
「おや、どうしたのですか? もう疲れたのですか?」
 晴明クルセイダーがからかう様に戦闘用秀吉に呼びかけるが、心身ともに虚脱し蹲るしかできなくなった戦闘用秀吉は、晴明クルセイダーの意に従わない。
「フェンフェン!!」
「フェーン!!」
 爆発を逃れた他の個体が、爆発音に驚き一斉にトーゴに押し寄せようとするが、心身虚脱した個体が防波堤の如く他の個体を食い止めてしまい、トーゴに近づくことすら叶わない。
 中にはジャンプし防波堤を飛び越えようとする個体もいるが、ここまで密集してしまうとジャンプはおろか、身動きすら自由に取れなくなっているようで、その場でただ蠢くだけ。
 そうして戦闘用秀吉の群れの接近を止めたトーゴは、念動力を併用して一気に大量の手裏剣を投擲し、蠢くだけの存在となった戦闘用秀吉を次々と撃破し、晴明クルセイダーへの道を開く。
「これはこれは、やってくれますね」
「外道め、覚悟ッ!!」
 晴明クルセイダーの迷い言を一喝し封じながら、トーゴはクナイを手に開かれた道を一気に駆け抜ける。
 迫るトーゴを見た晴明クルセイダーもまた、十字槍を両手で構え防御しようとするが、トーゴは素早く懐に飛び込み、クナイを閃かせた。

 ――斬ッ!!

 トーゴのクナイが十字槍の防御を易々とかいくぐり、胸に深く突き立つ。
「くっ……!」
 晴明クルセイダーは思わずトーゴを蹴り飛ばしながら、片手で胸を押さえ、端麗な顔を歪めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓮条・凪紗
稀代の陰陽師相手に符術勝負挑めるなんて機会、もう二度とあらへんやろし?
京の陰陽師が一、蓮条凪紗――遅れ馳せ参じながらもお相手願いたい
アンタが手負いなんはハンデって事で堪忍してくれん?

手の指に挟むは梵字記した輝石
石に巫術籠めたコイツがオレの用いる符
向こうの術発動に応じる様にオレも霊力と共に放る
符石より迸る電撃で五芒符を宙で灼き地に着く前に留める
流石に全部ってのは欲張りやろな…うん、解っとる

防御に徹するのはあくまで振り
入り乱れる符の中で光の楔を奴自身に撃ち込む事が真の狙い
アンタの本当の肉体やなく憑依した躰ならUC封じくらい効くんとちゃう?

二回目は無しや
伸ばした爪で接近、斬り裂き
はよ逝きぃ…骸の海へ



●陰陽師は簒奪者に勝負を挑む
 ぱらいそ礼拝堂に佇む憑装猟書家『晴明クルセイダー』の姿を見て、陰陽師たる蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)は、襟を正し一礼する。
「京の陰陽師が一、蓮条凪紗――遅れ馳せ参じながらもお相手願いたい」
(「稀代の陰陽師相手に符術勝負挑めるなんて機会、もう二度とあらへんやろし?」)
 本心を隠し接する凪紗に、晴明クルセイダーはおや、と意外そうな表情を浮かべながらも、どこか慇懃無礼な口調で凪紗に話しかけた。
「成程、クルセイダーではなく、この私『安倍晴明』と手合わせ願いたい……と」
「いかにも」
「……良いでしょう。受けて立ちます」
 胴に穿たれた傷は浅くないのか、微かに顔を顰める晴明クルセイダーに、凪紗はさらに申し入れひとつ。
「アンタが手負いなんはハンデって事で堪忍してくれん?」
「いいでしょう」
 どのみち治せはしませんから、と微かに笑みを浮かべながら、晴明クルセイダーは左手に|五芒符《セーマン印》を実体化させた。

 晴明クルセイダー……否、晴明が実体化した|五芒符《セーマン印》を手にするのを見て、凪紗も両手の指に梵字を記した輝石を挟む。
「成程、それが貴方にとっての符ですか」
「ああ、コイツがオレの用いる符や」
「興味深い所ですが――では」
 晴明が左手から次々と五芒符を放つのに合わせ、凪紗もまた霊力と共に両手の輝石を放つ。
 宙を飛ぶ符石から次々と電撃が迸り、凪紗に貼りつこうとする|五芒符《セーマン印》を空中で灼き、灰に変えるが、それでも全ては灼き切れず、|五芒符《セーマン印》の一部が床に落ちた。
(「流石に全部ってのは欲張りやろなと思うてたが……うん、解っとる」)
 空中で五芒符が弾け、輝石が砕けるのを目にしながら、凪紗はいつ、どこから次の攻撃が来ても良いように、防御に徹する構えを見せる。
 双方の術が入り乱れる中で、攻撃ではなく防御に徹する凪紗を見ても、晴明は|五芒符《セーマン印》が舞うままに任せ、それ以上の動きを見せない。
 光と符が激しく舞う空間の中で、何気なく凪紗が晴明……否、クルセイダーの右手を見ると、その右人差し指と中指の間に小さな紙片が挟まれているのが目に入った。
(「もう一回|五芒符《セーマン印》、やと!?」)
 肉体のクルセイダーも精神の晴明と同じ術を行使するつもりだ、と凪紗が察したその瞬間、輝石から迸る雷撃に紛れるように小さな光の楔が空を奔り、紙片を持つクルセイダーの右手首を穿つ。
 晴明も微かに走った右手首の痛みに気づきつつ、構わず右手の|五芒符《セーマン印》を放とうとしたが、|五芒符《セーマン印》は晴明の意に反して二本の指にピタリと貼りついたまま、離れなかった。
「おや……読まれてしまいましたか」 
 右手首に穿たれた楔が術を封じたと感づき、感嘆混じりの声を上げる晴明を見て、凪紗は内心胸をなで下ろす。
(「意識して躰を狙っていたけど、かろうじて術封じが間に合ったなあ」)
 ――実は凪紗は、晴明が憑依した躰なら術封じが効くと踏み、光の楔を撃ち込む隙をずっと狙っていた。
 術封じの目標を「肉体」と明確にしたおかげで、肉体のクルセイダーが放とうとした|五芒符《セーマン印》に気づき、ギリギリ封じられたが、もし狙いを明確にしていなければ、凪紗の身体は右手から放たれ乱舞する五芒符に蝕まれ、地を切り裂き現れた|業《カルマ》の怨霊に蹂躙されていたかもしれない。
 心の裡だけでほっと胸をなで下ろしながら、凪紗は得られた好機は逃さぬと、翡翠の刻爪を伸ばしながら接近する。
「二回目は無しや。はよ逝きぃ」
 そう、晴明クルセイダーに宣告しながら、凪紗は一気に間を詰め、十の翡翠の爪を一気に振り下ろした。

 ――ザクッ!

 十の指から伸ばした鋭い翡翠の爪は、晴明クルセイダーの両腕をズタズタに斬り裂き、その血を啜る。
「この躰の動きを先読みし封じるとは、一本取られてしまいましたか」
「オレの勝ち、という事でええな?」
 自信に溢れた口調で問いかける凪紗に、晴明もまた、両腕の痛みをこらえながら「ええ」と頷いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
【符術勝負】

巫女の羽織を正し一礼する
研鑽を積んだ今こそ純たる術比べで倒したい
五芒業蝕符+αなどケチは言わず全盛上等の精神で臨むぜ

業蝕符を結界術とオーラ防御の符術で弾こう
反れて怨霊が沸くのは想定内
浄化や破魔の符術で怨霊を抑え込むぜ
防御に使った符は鏡華散月に備えて早業で袖に隠すよ

秀吉には火炎属性攻撃×範囲攻撃の爆裂火球で応戦。自爆になろうと気合で体が動くなら問題ない
予言書は稲荷符からの火球乱れ撃ちで攻めるぜ
火災で読書の邪魔ができりゃ充分だ

集中すべきは十字槍
神鳴で武器受けてを抑え込むぜ
光線出る前に蹴り入れて間合いの取り直しだ
|チェン剣《本来の愛用武器》使われていたらやばかったかもね

命懸けなのに愉しくて笑ってしまうや
晴明様は楽しいかな

真の姿で持ち直し、予言書対策が効いている内に鏡華散月で序盤防御を試みた業蝕符を発露させてくれる
|怨霊パワー《陰の術》で迫って晴明様のおでこに|除霊の符《陽の術》を叩き込むぜ
依代に興味はねえが陰陽合わせて勝ちたいのさ

勝敗関わらず術比べの礼を述べて
更なる研鑽を約束するよ



●巫女は簒奪者に術比べを挑む
「符術勝負を申し入れるぜ」
 巫女姿の四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)の口から飛び出した一言に、憑装猟書家『晴明クルセイダー』の口から笑みが零れる。
 それを了承の意と取ったか、燦は羽織を正し、一礼した。
 ――陰陽師『安倍晴明』に符術勝負を挑むのは、これで3回目。
 燦はこれまで、エンパイア・ウォーで陰陽師『安倍晴明』に、迷宮災厄戦で書架の王『ブックドミネーター』が召喚した晴明に、それぞれ術比べを挑んできた。
(「研鑽を積んだ今こそ、晴明様を純たる術比べで倒したい!」)
 今回も五芒業蝕符+αなどケチは言わず、全盛上等の精神で臨むつもりで、燦は袖から符を取り出し、その時を待った。

「それでは、こちらから参りましょうか」
 晴明クルセイダーは指に挟んだ|五芒符《セーマン印》を立て続けに燦に投げつける。
「はっ!!」
 燦もまた、|五芒符《セーマン印》が己が身に貼りつく前に弾くべく、眼前に符を翳しながら周囲に魔除けの結界とオーラを展開した。
 投擲された|五芒符《セーマン印》の殆どは結界とオーラに遮られ、ただの白い和紙と化して地に落ちるが、運よく結界にもオーラにも触れなかった数枚はそのまま床に落下し、ズタズタに切り裂く。
 切り裂かれた床から次々と|業《カルマ》怨霊が湧き出し、あっという間に燦を取り囲んだ。
「オオオオオ……」
「ウオオ……ヨコセ……」
 燦の新鮮な生命力を渇望するかのように、湧き出した|業《カルマ》の怨霊たちは燦の足に次々と手を伸ばす。
 だが、この事態を想定していた燦は、魔除けの結界にさらに浄化と破魔の符術を重ねて怨霊を抑え込みつつ、先ほど翳した符をそっと袖にしまい込んだ。

「なかなかやりますね」
 |五芒符《セーマン印》を弾き、怨霊を抑え込んだ燦を見て、晴明が感心しつつひらりと手を一振りすると、床を埋め尽くすほどの戦闘用秀吉が召喚される。
「フェンフェン!」
「フェンフェン!!」
「フェンフェンフェーン!!」
 召喚された戦闘用秀吉が怨霊を圧し潰しつつ燦に突進し、次々と魔除けの結界に体当たりし始めた。
 体当たりした戦闘用秀吉はすぐに消滅するが、消滅した側から黒い波が押し寄せるかの如く、別の個体が次から次へと結界に体当たりし続ける。
(「数で押されると、正直面倒だな……」)
 このままでは、いつか結界自体が破られ、燦自身が直接体当たりを喰らってしまう。
 自爆になろうと気合で身体が動くなら問題はないのだが、軍神『上杉謙信』相手に無茶を敢行した際のダメージが残っている今、体当たりで地面に倒された時点で燦が戦闘不能になる可能性は極めて高い。
 ――ならば、戦闘不能になる前に少しでも数を減らす!
「はっ!!」
 燦は別の符を翳しながら眼前に爆裂火球を生み出し、戦闘用秀吉の群れに投げ込んだ。
「フェーン!!」
「フェンフェーン!!」
 乱れ撃つように放たれた爆裂火球に巻き込まれた戦闘用秀吉は、悲し気に鳴きながら次々と燃やされ、消滅した。
 追撃とばかりに晴明が十字槍を振るう気配は、ない。
 そして……不意討ちのように別の武器を持ち出す気配も。
(「|チェン剣《本来の愛用武器》使われていたらやばかったかもね」)
「アハハハハ……」
 晴明と鳥取城で対峙した時の記憶を思い起こし、燦の口から思わず笑みが零れる。
「おや、何が可笑しいのです?」
「いや、命懸けなのに愉しくて」
(「晴明様も楽しんでいるようだね」)
 釣られて笑う晴明を前に、燦は真の姿を解放しつつ、そっと袖に手を入れる。
 命懸けの戦いが、楽しくて楽しくて仕方がない。
 ――なんせ、晴明様との再戦は、ずっと待ちわびていた機会なのだから!
 燦は先程しまい込んだ符を引き出し翳しながら、符に吸収した術――五芒業蝕符を解放する。
「御狐・燦が命ず。符よ、宿りし力を此処に解き放て!」
 解放された無数の|五芒符《セーマン印》は、あっという間に晴明を取り囲み、呪力を解放した。

 ――バリバリバリッ!!

「何と!?」
(「いつの間に術が複製されていたのですか!?」)
 驚愕のあまり術の防御を忘れた晴明に、|五芒符《セーマン印》が次々と貼りつき、ダメージを与えてゆく。
 |五芒符《セーマン印》に打たれ動けぬ晴明に、燦は|怨霊パワー《陰の術》で一気に迫り、晴明のおでこに|除霊の符《陽の術》を叩き込んだ。
 ――バチッ!! 
「ぐ、がっ……!!」
 おでこから目が眩むほどの電撃を叩き込まれたか、思わずよろめく晴明。
「依代に興味はねえが、陰陽合わせて勝ちたいのさ」
「いえ、この勝負……どうやらあなたに軍配が上がったようで」
「ああ……術比べ、有難うございました」
 ――この勝負、術返しに対応できなかった時点で勝敗は決している。
 |除霊の符《陽の術》をはがしながらそれを認めた晴明を前に、燦もまた痛みと疲労を押し隠しながら再度居住まいを正し、一礼した。
「今度見える時に備えて、更なる研鑽を積んでおくよ」
「もう、見える機会はないと思われますが……その言葉、しかと聞き遂げましたよ」
 晴明の表情と声音は、燦を労いながらも、己の運命を悟っているかのような寂しさを含んでいる。
 燦もまた、その声音の意味を悟ると、何も語ることなく再度一礼した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
詰めなければ詰められる。
最高難度の詰将棋、腕が鳴る。

ヴァルギリオスの毒血を使った罠:白煙の毒霧(遅効性の麻痺毒)を発生させ、白煙で姿を隠しつつ攻撃を仕掛ける。

常に預言書が使われていると仮定し、攻撃は読まれても呼吸で毒霧が体内に蓄積すれば、徐々に手足は痺れ何れは麻痺に至る。
毒霧内に身を置かせるために、毒霧範囲からの逃亡阻止を図る。

小型の秀吉装は麻痺させたまま床に転がし、消滅による再出現を阻害出来るか試みる。
足場を理解していれば激戦中でも踏み潰す事はない。
まあ、阻害出来ないとなればさっさと踏み潰す。

【UC】(使用直前に真の姿に覚醒)
耳を塞いでも無駄だ。
覚醒した竜の咆哮で鼓膜を破壊し、三半規管と脳を揺さぶる。
三半規管をやれば視界は歪み眩暈を起こし、更に脳震盪で動くのも困難だ。

預言書は読む物。
書かれている内容を読めなければ意味は無い。
御自慢の槍は身体が満足に動いてこその脅威。
そして、秀吉装は出オチ。

雷迅と解体迅書の組み合わせは一味違うぞ。
二度と蘇れない様に1μ単位で刻んでやる。

共闘・アドリブ◎



●ヤドリカミは簒奪者に引導を渡す
 憑装猟書家『晴明クルセイダー』は、猟兵達の攻撃で存在そのものをかなり削られながらも、いまだ悠然と佇んでいる。
 その姿を見た亞東・霧亥(峻刻・f05789)は、怖れと期待が綯い交ぜになった妙な感情を抱いていた。
 ――詰めなければ、詰められる。
 精神と肉体がそれぞれ別々に行動する相手との戦いは、最高難度の詰将棋のようだが、だからこそ腕が鳴るというもので。
「そろそろ、決着をつける時と思われますが……いかがですかね?」
 どこか試すかのような言の葉にはあえて応えず、霧亥はこそりとヴァルギリオスの毒血を床に落とす。
 床に落ちた毒血は、白煙の毒霧となり、たちまちふたりを覆い尽くした。
「む……これは、毒でしょうか」
 白煙の正体に気がついたのか、黙り込む晴明クルセイダー。
 白煙を軽く吸い込み毒と気づいたのか、ぱらいそ預言書を紐解き気づいたのか。
 何れかは白煙に遮られているため分からないが、霧亥も常に預言書を使われている可能性は仮定し、戦略を立ててきている。
(「ぱらいそ預言書を紐解き続けられれば、この後の攻撃は全て予測され、回避されてしまう」)
 それを確かめるかのように、霧亥も白煙の中で散発的に素手で攻撃を仕掛けるが、白煙が双方の視界を曇らせているからか、その手は常に空を切り続ける。
「おやおや、あなたも私の姿が見えていないではないですか」
「……」
「何ならこの白煙を吹き飛ばして、仕切り直しても良いのですよ?」
 挑発めいた晴明からの言の葉を、しかし霧亥はあえて無言で受け流しながら、ただ黙って無手で攻撃し続けた。
 ――白煙で視界を遮られれば、晴明の言う通り有効な一撃すら至難。
 だが、霧亥の真の狙いは、大味な攻撃を続けることで晴明クルセイダーの身を常に毒霧内に置かせ、毒を体内に取り込み続けさせることだ。
 ――故に、白煙の毒霧範囲から逃げられなければそれでよい。
 霧亥はそう割り切り、晴明クルセイダーに対し散発的な攻撃を続け、白煙の中に留め続けた。

 数分程攻撃を続けていると、少しずつ白煙が薄れると共に、晴明クルセイダーの挙動が鈍くなり始めているのが見えるようになる。
「なるほど……毒は毒でも、遅効性の麻痺毒でしたか」
 微かに呂律が回らぬ声音と共に響くのは、ぱらぱらと何かをめくる音。
 おそらく、ぱらいそ預言書が毒の正体を伝えたと思われるが、手足の自由が少しずつ鈍り始めているにもかかわらず、晴明クルセイダーが慌てる様子はない。
 ……否、慌てても意味がないと悟っているのだろう。
 たとえ毒の正体に気づいたとしても、晴明もクルセイダーも解毒手段は持ち合わせていない。
 故に、1度麻痺したら……打つ手はないのだから。
(「預言書は読むもの。書かれている内容を読めなければ意味はない」)
 ご自慢の槍は四肢が満足に動いてこその脅威だし、戦闘用秀吉も毒霧の中では出オチと化すのが関の山。
 ――ならば、もう一押し。
 そう判断した霧亥は大きく息を吸い込むと、唐突に竜の如き咆哮を放った。

 ――!!!!

 言語化しづらい竜の咆哮が、クルセイダーの耳を、そして全身を揺さぶる。
 咆哮が耳に入った瞬間、クルセイダーも咄嗟に両手で耳を塞いだが、覚醒した竜の咆哮に対しては全く意味を成さず、一気に鼓膜を破壊された。
「く……っ!」
 竜のひと咆えで三半規管と脳をも揺さぶられたか、クルセイダーは平衡感覚を大きく狂わされ、ふらつきながら膝をつく。
「これで、は……ですが……!」
 吐き気や眩暈に襲われ、視界が酷く歪むが、それでもクルセイダーは十字槍の柄で地面を叩き、無理やり立ち上がろうともがいていた。
 ――まだ、戦意は折れていない。
 そう判断した霧亥は、決着をつけるべく、雷迅と解体迅書を手に白煙を吹き飛ばしながら一気に斬り込む。
「この組み合わせは一味違うぞ。二度と蘇れない様に1μ単位で刻んでやる」
「く、ここま、で……!!」
 ですか、と最後まで晴明クルセイダーが口にするより早く、霧亥は雷迅を大きく振りかぶり、一息に振り下ろした。

 ――斬ッッッ!!

 解体迅書が伝える智識をもとに、霧亥は目にも止まらぬ速さで雷迅を縦横無尽に振り回し、煙ごとクルセイダーの肉体を斬り刻んでゆく。
 無数に見える雷の斬撃は、晴明クルセイダーが続けて何か口にする前に、手にした十字槍ごとその全身を細かく切り刻み、無数の肉片へと変えていた。

 かくして、魔空原城にて我欲を満たそうとした陰陽師は、断末魔すら許されずに依代ごと切り刻まれ、ぱらいそ礼拝堂の床にぱらぱらと落下し消滅した。
 ――憑装猟書家『晴明クルセイダー』撃破。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月02日


挿絵イラスト