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闇の救済者戦争⑪〜誰が為に剣を振るおう?

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #グラディウス

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「もう生きていたくない」

 その魂人が不意に口にした言葉が合図だ。
 何処からともなく現れる優しい彼女は、かの魂人の願いに応え、速やかに『安らかな死』を与える。
 例え、その願いが一時の気の迷いだったとしても。

「安寧なるかな。剣の草原に君は堕ちて。さあ、お眠りなさい」

 ユーベルコード『永劫回帰』を封じられ、為す術なく闘技場から落下する魂人。
 その「僕を許して」と懇願する声は、彼女の耳には決して届かない。
 彼女の名は『気高きヨハンナ』――常闇の世界に住まう、世界一優しいケットシーの姿をした死神である。

 ――グリモアベース。
 ダークセイヴァーで勃発した『闇の救済者戦争』。
 猟兵達は新たな戦場への道程を切り拓いていた。
「この戦場はグラディウス・アリーナっていってねっ? 第三層の『自生する無数の剣の草原』の上に建造された闘技場なんだって!」
 グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)は、頭上のグリモアから投影した予知を猟兵達に見せながら語る。
「この闘技場は魂人の奴隷同士や奴隷と凶悪な魔獣を戦わせる興行は勿論、時には『何らかの罪を犯した闇の種族』を痛めつけ、発狂に追い込んで下層へ放逐する手段としても利用されてたんだって。とにかく悪趣味な場所なんだけど、そこにね、出るんだって……オバケがっ!」
 オバケというのが、今回の任務の討伐対象である『気高きヨハンナ』である。
「あたいの予知でも正体不明、かつ闘技場で心が折れた魂人達を容赦なく惨殺しては剣の草原へ投げ捨ててるケットシーの姿をしたオブリビオン……ってだけしか分かってないんだよね~。狙われたら最期、苦痛すら感じないまま標的に死をもたらすんだって……っ!」
 もはや怪談の類の存在である。
 だが、そんな奴を放置するわけにもいかない。
 今回の戦争で予知に掛ったのも必然なのだろう。
「でね、この闘技場のルールなのか、飛来してくる『一振りの|短剣《グラディウス》』を掴んで敵味方が真っ向勝負するよっ!」
 これはつまり、オブリビオンも短剣ひとつで猟兵達と相対することを意味する。
「正々堂々と、が売り文句のようだけど、ユーベルコードでいくらでもできる以上は疑わしいんだけどね……っ?」
 それでも実際、この闘技場では他の武器の使用が使用不可になってしまう。
 たとえ闘技場へ持ち込んでも、それらを使用することが何故かできない。
 故に、手元に飛来した『一振りの|短剣《グラディウス》』のみが頼りの綱なのだ。
「得体の知れないオブリビオン相手に、慣れない武器で戦うのは厳しいかもだけど……みんななら勝てるって信じてるからねっ! 負けないでっ!」
 レモンは猟兵達に激励の言葉を贈ると、グリモアを輝かせてダークセイヴァー第三層への転移を開始した。
 果たして、謎の死神ケットシーを猟兵達は|短剣《グラディウス》のみで打倒できるのだろうか?


七転 十五起
 誰もが正義を信じて、その手を汚した。
 さあ、決闘の始まりです。敵は未知の存在。見た目に騙されないよう、お気を付けください。
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス
 飛来した|短剣《グラディウス》を用いて戦う。

 厳密には、飛来した|短剣《グラディウス》『のみ』用いて戦うことが条件です。
 所持中の武器類はすべて使用禁止です。プレイングに明記しても採用されません。

●その他
 コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能ですが、その際は参加者全員のオーバーロード投稿を強く推奨します)
 なお、本シナリオは戦争の進行状況に応じて、全てのプレイングを採用できない可能性があります。
 予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様の創意工夫を凝らしたプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『気高きヨハンナ』』

POW   :    鳴かずのカウベル
【悲嘆や苦痛】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【音を聞いた者を永遠に眠らせる鈴】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    天使の猫
自身の身体部位ひとつを【翼】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    安寧なるかな
【空から降り注ぐ羽根】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:マノ居

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は荒・烏鵠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!

アリーナですから観客が居るんですよね!
ってことは私を見てもらえるってことですね!
ふぅぅー!テンションあがってきたー!

では正々堂々と勝負!っと空から羽根が…演出ですかね?
ありゃりゃ!?う、動けなくなりました!
しかもユーベルコードも封印されました!
謀りましたね!?何というワル!憧れます!
ですが私よりワルな連中滅ぶべし!
なぜなら私は魔王ダーティ!最悪は常に一人だからです!
({ゲイズ・パワー}で短剣を掴み持ち上げると弾丸のような速度で敵に突き刺す)



 その猟兵は黄金に輝くビキニアーマーを着込み、周囲の視線を釘付けにしていた。
 立ち振る舞いや見た目は完全に勇者のような威風堂々さを醸し出している。
 だが彼女……ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は勇者にあらず。
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは、私のことです!」
 そう、魔王!
 勇者と真逆の立ち位置の存在である、恐怖の権化である!
 そんなダーティは観客席にいるギャラリーを確認するやいなや、テンションが爆上がりする。
「アリーナですから観客が居るんですよね! ってことは私を見てもらえるってことですね! ふぅぅー! テンションあがってきたー!」
 そのテンションの上がり具合に呼応するかの如く、闘技場の下に広がる剣の草原から飛来してくる一振りの|短剣《グラディウス》。ダーティの手元にすっぽり馴染むと、そのまま彼女は柄をしっかり握りしめた。
 そして目の前に出現した白猫の死神めいた謎のオブリビオンこと『気高きヨハンナ』へ剣先を突き付けながら叫んだ。
「では正々堂々と勝負! やあぁぁ!」
 牙突の構えでダーティはヨハンナへ飛び掛かる。
 それをヨハンナはよく見て半身ずらして回避すると、ワルツの如くステップを踏んでダーティの腹へ目掛けて手にした|短剣《グラディウス》の刃を這わすべく腕を振り抜く。
「……|疾《はや》い!」
 ダーティはすかさず真横へ転がるように飛び退いて難を逃れた。
 たった一合でお互い急所を狙い合うという電撃戦に、ギャラリーも自然に歓声が湧き立つ。
「いいですね、いいですね、これ! 接戦に持ち込めれば、私への注目が高まります! さあ、もっと打ち込んできてください!」
 今度はダーティが受ける番だとヨハンナに身構える。
 しかし、ヨハンナは顔色を変えずに剣先を天に掲げて祈りを捧げはじめた。
「安寧なるかな。今だ死を請わない魔王を自称するあなたへ。安らかな眠りの愉悦を教えて差し上げましょう」
 暗黒の天から白い羽がいくつも舞い落ちる。それは季節外れの粉雪のように幻想的な光景だ。
 ダーティもしばし見入ってしまうほど、それは美しかった。
「まぁキレイ! 空から羽根が……これは演出ですかね? って、ありゃりゃ!?」
 と、ここでダーティは自身の身体の異常に気が付いた。
「う、動けなくなりました! しかもユーベルコードも封印されました! この羽根、まさか予知であったユーベルコードですか!?」
 自分の失態に気付くも、ヨハンナはゆっくりと|短剣《グラディウス》を突き付けて歩み寄ってくる。
「ご安心を。急所を一突き。一瞬で|臨終《おわ》りますので」
「くぅ! 謀りましたね!? 何というワル! 憧れます! ですが…私よりワルな連中は滅ぶべし!」
 ダーティの啖呵にギャラリーが何事かと注目しだす。
 この絶対的危機から脱することが出来るわけがないと皆が思っているからこそ、ギャラリーの視線はダーティへ注がれる……!
「なぜなら私は魔王ダーティ! 視線誘導の悪魔にして絶賛配下募集中の魔王です! いいですか? ワルは星の数ほどいますが、最悪は常にこの魔王ダーティ・ゲイズコレクターただ一人だからです!」
 ダーティの手元の|短剣《グラディウス》が急に浮かび上がったかと思えば、周囲に赤紫色の矢印へと可視化したオーラが顕現する!
「これこそが魔王の権能です! ギャラリーの視線を力に変えて、剣技を繰り出します!」
 まるで矢印のオーラがダーティの手元の如く器用に動き回り、ヨハンナの周囲を旋回飛翔し始める。
 そしてヨハンナの死角へ短剣の切っ先が深々と突き刺さり、死神の白い毛並みが真っ赤な流血で染まっていった。
「うぐッ!? や、ってくれましたね……?」
 ヨハンナが反撃をダーティの首元へ振りかざそうとしたその時だった。

 リンゴーン♪ リンゴーン♪

 第一試合、終了の鐘の音が鳴り響く。
「……命拾いをしましたね。私もここではルールに縛られています。試合中以外での殺害は禁じられてます故、お引き取りを」
 身体の自由が戻ったダーティは、鐘の音に助けられた事への安堵感よりも、もっとヨハンナと戦いたかったという闘志の行き場のなさに溜息をもらす。
「いい試合でした! 最悪の私には及びませんでしたが、そのワル、嫌いじゃなかったですよ?」
 そうヨハンナの背に語り掛けたダーティは、観客席の大勢のギャラリーへ両手を振りながら退場してゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
ええ……武器は「短剣」なのですね?
私のサブウェポンにも短剣があり不慣れというわけでもありません
お相手しましょう

殺気を放ちフェイントを試みます
まあ引っかからないでしょう
ですが一瞬稼げれば十分
早業で我が身を牙で吸血
範囲攻撃として呪詛を込めた血霧として噴出させ周囲を覆い尽くします
別にルールに反してはいませんよね、ただの私の血なのですから、ふふ
そのままでは呪いに蝕まれますよ?

飛ぶでしょうね
そう追い込んだのです
その瞬間UCで時を止めスナイパーで短剣を投擲し敵を貫きます

正々堂々? 何を烏滸がましい
自分の弱点をこそこそ隠しそれが露呈すると世界ごと沈めようとする
下衆な主に仕えているくせに気取るのではありません



 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は闘技場に姿を現すと、その手元目掛けて勢いよく|短剣《グラディウス》が飛来していた。
「ええ……武器は『短剣』なのですね?」
 空中でそれを掴んだ黒城は、目の前に佇む死神めいた白猫こと『気高きヨハンナ』を見定める。
「私のサブウェポンにも短剣があり不慣れというわけでもありません。あなたもそうなのでしょう? 柄を握る姿が素人ではありませんから」
「成程。私の所作で戦力を図れるほどには手練れの方のようですね」
 ヨハンナは短剣を持って身構える。一部の隙もない臨戦態勢に、黒城は思わず笑みが零れてしまう。
「そちらこそ、さすがですね? 頼まれもしないのに一時の戯れで口にしたことを目の当たりにして。あまつさえ亡き者にしてしまう粗忽者にしては、本当に短剣の扱いがお上手なこと。ふふふっ」
 黒城の挑発にヨハンナの瞼がピクリと動く。
 飛び掛かってはこなかったものの、かなり相手へ苛立ちを覚えさせたらしい。
 頃合いだと判断すると、黒城は手繰り寄せるように短剣を持った手の指をクイクイと動かした。
「さあ、お相手しましょう。どこからでもどうぞ?」
「あまり私を侮らないでくださいまし……?」
 ヨハンナは声に憤りを乗せながら、闘技場の床を音もなく蹴った。
 途端、その白い身体が弾け飛ぶように一瞬で黒城の眼前に迫り来て刃を突き立ててくる。
 その軌道は黒城の喉元へ一直線に飛んでくる。
 しかし、黒城は上体を反らしながら翻るようにサイドステップを踏んでこれを回避。
 その瞬間、凄まじい殺気をヨハンナに放った。
「な――!?」
 ヨハンナはすぐに半身だけ一歩後ろに下がった。
 咄嗟の事で身体が自然と反応してしまったのだ。それがフェイントだと頭では理解できていても。
 万が一を警戒してしまったヨハンナが防御姿勢を取った事に、黒城は値踏みするように相手を見詰めた。
「……あら? 案外、用心深いのですね?」
 だが黒城のやる事は変わらない。
 短剣を己の片腕で斬り付けてみせれば、傷口から強力な呪詛化した彼女の血液が闘技場全域へ拡散してゆく。
 それを吸い込んだヨハンナが体内から呪力に蝕まれてしまう。
「ゲホッ! ゲホゲホッ! 短剣以外の武器使用は、不可能なはず、ですが……!」
「別にルールに反してはいませんよね、漂ってるのは、私の傷口から吹き出た『ただの血』なのですから、ふふ。そのままでは呪いに蝕まれますよ?」
 あたりに漂う血霞を嫌い、ヨハンナはやむなくユーベルコードで背中に翼を生やして飛翔する。
 これに黒城は、してやったりと口元を愉悦で歪ませた。
「飛びましたね? ええ、そう追い込んだのです。まんまと思惑に乗ってくださって感謝します」
 次の瞬間、黒城は驚異のユーベルコードを発現させる……!
「時よ脈打つ血を流せ、汝は無敵無傷にあらぬもの。――|我が白き牙に喘ぎ悶えよ時の花嫁《ザイン・ウント・ツアイト》」
 刹那、周囲の光景がたちまち静止してしまう。
 ユーベルコードで時の流れを操り、血霞が漂う範囲内に限定して時間を停止させてしまったのだ。
「正々堂々? 何を烏滸がましい」
 短剣を空中のヨハンナへ目掛けて投擲した瞬間に時間停止を解除。
 ヨハンナにとっては不意の出来事であった。
 いつの間にか自分の鳩尾に短剣の刃が深々と突き刺さっていることに、混乱して墜落してしまった。
「い、つの、間に……」
「自分の弱点をこそこそ隠し、それが露呈すると世界ごと沈めようとする下衆な主に仕えているくせに気取るのではありません。あなたはここで死ぬのです」
 黒城の勝利宣言にヨハンナは首を横に振った。
「何か思い違いをしてるよう、ですが……私の行動は誰の御指図も受けて、おりません。仕えても、おりません」
 その言葉は欺瞞を感じさせない。
 ならば、本当にヨハンナ自身の判断で『安楽死』を遂行していたことになる。
 黒城は途端に目の前のオブリビオンの行動原理が分からなくなった。
 鐘の音が鳴り響く。
「はぁ……もういいです。あなたを理解するのはやめました。試合終了の鐘も鳴りましたので。では」
 結局、ヨハンナの正体は謎に包まれたまま、第二回戦も猟兵側の圧倒的強さを見せつけたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

五百崎・零
※戦闘中はハイテンション

(一応所持している銃の引き金を引いてみる)
なんだよ、銃使えないのかよ
|短剣《グラディウス》なんて使ったことないんだけど、これ敵に近づかないと攻撃できないじゃん
それってすごく……く、クヒ…ヒャハハハ!!
すげぇ愉しめそうじゃん!!

「死にたくない」と言いつつも短剣を手に笑いながら敵に向かって直進
致命傷にならないかぎり攻撃は受けて【激痛耐性】で耐える
それよりも攻撃を重視

距離を詰めたら、短剣を深く突き刺して敵の動きを止める

「あは!つかまえたァ~!」
UC使えるなら、敵との距離が零距離のこのタイミングで発動



 五百崎・零(死にたくない死人・f28909)は観客席からのブーイングに困惑しながら闘技場のステージに登場する。
「猟兵側が優勢だからって。自分に野次をぶつけないでほしいんだけどな」
 少し気弱そうに周囲を警戒しつつ、オブリビオンの『気高きヨハンナ』と相対する。
「よ、よろしくね。自分はまだ死にたくないんで、お手柔らかに」
「不思議な方です。生きているのに、死んでいるみたいです」
 ヨハンナの観察眼に、零は内心驚いた。
(自分がデッドマンってことがバレた? このネコさん、やばいな?)
 だが零の行動は大胆不敵だった。
 早業で拳銃型の悪魔召喚式『アイン』をコッキング、その銃口をヨハンナへ突き付け、引き金を引き絞る。
 この一連の動作に1秒も掛からない、熟練の|銃遣い《ガンナー》の所作だ。
 だが籠めた実弾は発射されず、引き金も途中から固まってびくともしない。
「なんだよ、銃使えないのかよ。|短剣《グラディウス》なんて使ったことないんだけど、これ敵に近づかないと攻撃できないじゃん」
「そういうルールですので。ほら、貴方の得物が飛んできましたよ?」
 ヨハンナの言葉通り、零の手元へすっぽりと短剣の柄が収まる。
 それを掴んだ零の表情が、ぞくりと凄みを帯びた。
「つまり、それってすごく……く、クヒ……ヒャハハハ!! すげぇ愉しめそうじゃん!! ああ、死にたくない! 死にたくない!! 死んだら戦えないだろ!?」
 瞳孔が見開き、血走らせ、歓喜でぎょろぎょろとしせんが宙に踊る。
 そのまま飢えた獣めいた猛進のまま零はヨハンナへ斬りかかった。
「ヒャハハハハ! オレ、お前の真っ白な毛皮を赤く染めたい! 絶対キレイじゃん!! 血に濡れたいお前を見てみたい!」
「な、なんなのですか、貴方は……?」
 猟奇殺人鬼が如き殺気とハイテンションを撒き散らす零の豹変ぶりに、死神めいたヨハンナも気圧されている。
 ヨハンナも短剣で当然応戦するが、零は痛覚が鈍いのか、身体に切っ先を差し込まれても平然とヨハンナを斬り付けてきた。
「もっと、もっとだ! 半分真っ赤で半分真っ白とか、そういう色のコントラストとかも最高だ! クヒャハハ!!」
 デッドマンだからこそ可能な無軌道な捨て身戦法!
 ヨハンナは急所を刺しても平然とする零に当惑してしまう。
「ええい、ならばお眠りなさいな!」
 ヨハンナの手にした短剣がユーベルコードでカウベルに変化してゆくと、その鐘の音が零の永眠を誘う。
 零は頭の中に響くその音を聞いて悶えだす。
 彼の両耳と両目からドバドバと血が流れ、常人ならば即死レベルのダメージが発生している!
「うわあぁぁぁー! 死ぬ! 死んじまう! 脳味噌がばーんってなっちまう! って、オレ、デッドマンだから脳味噌ばーんってなっても再生するんだった! じゃあいいかァ! まだ戦えるなァ、ヒャハハ!」
「なんですって……?」
 ヨハンナは肩口に突き立てられた零の短剣の切っ先を信じられない様子で見詰める。
 今までなら、たとえ魂人でも脳味噌が音波でシェイクされて死に至るというのに!
 だが零はデッドマンだ。死んだまま、生きているのだ。
 だから脳味噌がぐちゃぐちゃになろうが構わずに、敵をズタズタにするまで戦いたいという衝動に従うのだ。
「あは! つかまえたァ~!」
 ヨハンナの肩口にぐりぐりと短剣を押し込んでゆく零。
 そして必殺のユーベルコードを解き放つ!
「腕ならくれてやる。くらえ、いかづち!」
 短剣を持った零の腕が、雷光の迸りと共に爆散!
 対してヨハンナは短剣から膨大な電流を送り込まれ、全身を痙攣させながら感電して床に倒れ込んでしまう。
 と、ここで試合終了の鐘の音が鳴った。
「あ、危なかった、ですね……鐘の音に救われまし、た……」
「え? オレまだ戦い足りねぇんだけど!? あ、でも腕がねぇや! 再生したらまた戦っていい? 駄目? そっかー。ちぇー!」
 零は口惜しそうに自分の腕の骨肉片を拾い上げて、そそくさと場外へ退場していった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
兵士たるもの、短剣の心得は【戦闘知識】の基礎中の基礎。
逆に下手に人を選ぶ武器でなくて助かりますね。
それにあくまで使えないのは「武器」ですし、異能や魔術に制限があるワケでもなさそうな上ユーベルコードが使えるならどうとでもできましょう。

敵の動きを観察(【情報収集】【索敵】)、【見切り】からの【カウンター】を主体とした防戦を意識。
普段使いしない以上は相手の出方を伺い、それに切り込むのが最善でしょうから。

相手が大きく動こうとしたら好機。
短剣を【投擲】して【串刺し】、それを機転として雷の【属性攻撃】で攻撃し怯ませ、直後に【指定UC】で一気に踏み込み決着をつける!



 終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は少年兵だ。短剣の扱いは戦場で慣れている。
「兵士たるもの、短剣の心得は戦闘知識の基礎中の基礎。逆に下手に人を選ぶ武器でなくて助かりますね」
 日明は傷の応急処置を終えた『気高きヨハンナ』を見遣る。
「それにあくまで使えないのは『武器』ですし、異能や魔術に制限があるワケでもなさそうな上、ユーベルコードが使えるならどうとでもできましょう」
「ええ、同感です。ですが、今度こそ猟兵を安らかに死へ誘いましょう」
 ヨハンナの宣言に日明も戦闘スタイルに映る。
(戦闘の基本は洞察力……敵のユーベルコードは恐らく翼を生やしての飛翔行動。普段使いしない以上は相手の出方を伺い、それに切り込むのが最善でしょうから)
 その読み通り、ヨハンナは低姿勢から弾丸の如く日明の懐へ潜り込むフェイントを織り交ぜ、背後に回ってその延髄を一突きせんと仕掛けてきた。
 だが日明はローリング動作でこれを潰すと、すぐに立ち上がって刃を向けて牽制。
「その手には乗らない。見え透いたフェイントは無駄だ」
「成程。かなり戦い慣れていますね。では、これはどうでしょう?」
 ヨハンナは読み通り、背中に翼を生やして天へ駆け昇る。
「上空からの急降下攻撃、果たしていつまで避けきれるでしょうか?」
 そこからはヨハンナは猛禽類が如く日明の急所を的確に狙い続けてくる。
 素早い動きと届かないリーチに日明は苦しみ続けるが、ふと日明がある気付きを得た。
 それを確証するには時間が足りない。
 しかし……。
(思い付きを行動に移さねば、いつまでたっても机上の空論のままだ!)
 チャンスは一度きり。
 ヨハンナは急降下後、日明を通過した、その後ろ姿!
「今だ!」
 日明がヨハンナの翼の付け根へナイフを投擲して突き刺す!
「下手に数撃つ必要はない。貴様には4発あれば充分だ!」
 刹那、彼のユーベルコードの『《蠱毒》活性・四の殺人鬼は空に嗤う(フォリアズール・フィーアテーター)』が発動!
 短剣を避雷針代わりに電流を敵の肉体へ流し、生体電流を加速させた高速イオンクラフトで間合いに踏み込んだ日明が、全生命特攻の猛毒を4連射する!
 1発、2発とヨハンナの身体に直撃し、飛翔する身体が痺れて墜落。そのせいで3発目が空振りしてしまったが、4発目は地べたを這いずるヨハンナへ駄目押しの一撃を与えることが出来た。
「仕留め損ねたか。だがかなりの手負いだ。僕の出番はここまでだな」
 試合終了の鐘が鳴った。
 日明が闘技場のステージから降りても、ヨハンナは大ダメージによってその場でしばし動けずにいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レティシア・スヴァン
「ふむ、ステゴロも禁止でございますか」

ルールは把握しました。
死神如きが、破壊神を…こほん、元破壊神を
相手にしたことを後悔させてあげましょう。

「天は言っております。短剣を使ってさえいればOKと」

短剣への電光エンチャントはアリでございます?
とりあえず、更に強化したわたくしの力で握り込んでも
ギリ壊れないようで安心しました。

【天の雷】を発動。

頭上から強襲し、力任せに短剣を叩きつけます。
相手の防御などそのまま叩き壊せばよろしい。
とにかく当たればどうとでもなります。

そして妙な音を出しているようですが、こちらが
超音速で動いていれば怪音波ごときノイズにもなりませんね。

これぞ神的近接戦理論!!



 レティシア・スヴァン(天に剛腕・f30842)は肉体言語で語るパワー系猟兵である。
 だが、短剣のみが赦されるこの闘技場では不慣れでしかなかった。
「ふむ、ステゴロも禁止でございますか」
 しかしルールは把握した。
「死神如きが、破壊神を……こほん、元破壊神を相手にしたことを後悔させてあげましょう。それに、天は言っております。短剣を使ってさえいればOKと」
 その言葉の意味を、ヨハンナは身をもって体験することになる。

「覚悟せよ、汝が許されることはもうない。これぞ|絶技『天の雷』《ヘブンリィライトニングストーム》!」
 全身を青白い雷光で纏ったレティシアは、溢れるパワーで空をマッハ10で跳び回り、短剣に電撃を宿して力赤瀬にヨハンナを『殴って』みせた!
「とりあえず、更に強化したわたくしの力で握り込んでもギリ壊れないようで安心しました」
「待ってください! 色々と理屈がおかしいですが、がはっ!?」
 レティシアはヨハンナへ短剣から変化させた永眠を誘うカウベルを鳴らす暇を与えさせない。
 それはもうボッコボコだ。
 短剣の刃ではなく、柄や峰で思いっきりヨハンナの脳天へ打撃を与えるという発想の転換!
 これには脳震盪でまともに立ってられないヨハンナが一方的に追い詰められてゆく!
「超音速で動いていれば怪音波ごときノイズにもなりませんね。これぞ神的近接戦理論!! そしてフィニッシュホールドです!」
 短剣を持ったまま、相手を掴んで投げ飛ばし、その柄でぶん殴って床へ敵を突き刺すレティシア!
 当然、ヨハンナがしばらく立ち上がることはなかったのだった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
…そうか
我が魔剣を使えずとも
我が叛逆を止めるつもりはない

何より…之もまた剣闘士…奴隷達の叛逆の刃よ(短剣を手に

…ヨハンナ…我が世界でもその名は存在した
架空の教皇として…「居ない事」を証明された教皇として

貴様もまた慈悲を以て殺すのであればその想いがあるのだろう
痛みなき死もまた…魂人にとっての慈悲でもあるのだろうから

…だが我は|悪《ヴィラン》である
故に…貴様の慈悲に叛逆せん

【戦闘知識】
翼を用いたヨハンナの戦い方を分析
【オーラ防御】展開
【属性攻撃・武器受け】
彼女の猛攻を短剣で捌き

これもまた「剣」
ならば銀静よ…貴様の力を借りるぞ
【カウンター・二回攻撃・怪力】
UC発動
巨大なる刃で蹂躙する!!



「……そうか」
 バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は慣れ親しんだ魔剣がこの場にない事に諸事情を悟った。
 この闘技場では、飛来してくる|短剣《グラディウス》しか使用できないルールだと。
「我が魔剣を使えずとも、我が叛逆を止めるつもりはない。何より……之もまた剣闘士の……戦う奴隷達の叛逆の刃よ」
 飛来してきた短剣の柄を掴んだバーンが『気高きヨハンナ』の前で身構える。
「……ヨハンナ……我が世界でもその名は存在した。架空の教皇として……『居ない事』を証明された教皇として」
「架空の教皇ですか。面白いですね、今の私も居るか居ないか分からないとよく言われますから」
 傷を負ったヨハンナは気丈に振舞う。事実、その目から殺意がギラギラを煌めきを放っていた。
 そんな相手へバーンは間合いを見計らいながら尚も語り掛ける。
「貴様もまた慈悲を以て殺すのであれば……その想いがあるのだろう。痛みなき死もまた……魂人にとっての慈悲でもあるのだろうから」
 ヨハンナの『慈悲』にある程度の理解を寄せるバーン。
 だが、すぐさま彼は首を横に振った。
「我は悪ヴィランである。故に……貴様の慈悲に叛逆せん」
「苦しんで死ぬのがお好みですか? 被虐趣味も大概になさってくださいまし」
 ヨハンナの背中に純白の翼が出現すると、大きく羽ばたいて天空へ舞い上がる。
 そして素早くバーンの頭上を旋回し始めると、得物を狙うフクロウが如く無音で急降下してきた。
 すれ違いざまにバーンを斬り付けるつもりだ。
「来るか。だが甘い!」
 バーンは全身から闘気を放って上昇気流を発生させると、突っ込んできたヨハンナの剣を弾き返した。
「なんですって……?」
 人間離れの技にヨハンナは目を疑う。
「闘気だけで空気の対流をはっせいさせるのですか、貴方は……!?」
「ふん……我が叛逆の闘志は炎よりも熱し!」
 燃え盛る火炎めいて立ち昇る闘気からは、ヨハンナの体毛を焦がしそうなほどの熱気が伝わってくる。
「それで終わりか、ヨハンナよ……ならばこちらも飛翔せん!」
 なんと、バーンも闘気をロケット噴射させながら空中をマッハ13で跳び回り出したではないか!
「この|短剣《グラディウス》もまた『剣』なり……銀静よ、貴様の技を借りるぞ……」
 バーンが短剣の柄を握りこみ、そこから大量の闘気を流し込む。
 すると、手にしている短剣がみるみるうちに膨張・巨大化してゆき、天を覆う程の質量になって振り上げられた。
「な……なんですか、それは!?」
 ユーベルコードの物質変化だとは理解できるが、まさかこの場で拾った短剣を巨大化するなどヨハンナとて想像していなかった。
 バーンは確固たる強い意志を言葉に籠めて叫んだ。
「無論……叛逆の剣だ! 戦艦斬り!」
 振り下ろされた巨大な刃が闘技場のステージを真っ二つに叩き割る!
 爆散する石造りステージの破片と粉塵があちこちに飛び散れば、巻き込まれたヨハンナが危うく剣の草原へ落下しかけて踏み止まっていた。
「め、滅茶苦茶です……! あと一歩で落下するところでした……」
 翼を羽ばたいてどうにか闘技場へ帰還したヨハンナは、見事にに分割されたステージの変わり果てた姿に背筋を凍えさせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
…メルシー
おめーは観客席で大人しくしてろ
「えー!?」
恐らくおめーもこの場では戦えねーよ
「…判ったよ」(でも技能は託す

何…僕は一人でも天才魔術盗賊って事を見せてやる

【情報収集・視力・戦闘知識】
ヨハンなの戦い方やUCの効果
翼に変異させた後の戦い方も冷徹に分析

残念だ…存分に猫吸いしてみたかったがな?

【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己に付与

グラディウスだったか?こういうのも使い慣れてますよ昔からな?

【弾幕・念動力・空中戦】
高速で飛び回りながら超高熱熱線と念動光弾を乱射して本体諸共スペアも蹂躙

【二回攻撃・切断・早業・串刺し】
…おめーは教皇だったか?存在を否定された物語の教皇だったか
…ちと苦しくなるのはなんでだろうな?

だが容赦は死ねー

UC発動
連続攻撃の時点でグラディウスも利用

架空の女教皇!お前は唯表面の言葉面しかとらえてねぇ!大半の奴はそうだがそいつは本当に救いを求めてる声さえ踏みにじるぞ!

超絶連続攻撃を叩き込む

本当に残念だおめーは!存分に猫吸いしたかった!
僕はおっぱいが大好きだがもふもふは嫌いじゃない



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は相棒のメルシーを観客席へ残して立ち去ってゆく。
「……メルシー、おめーは観客席で大人しくしてろ」
「えー!? メルシーもご主人サマと一緒に戦うよ!」
「馬鹿か? 神機は兵器だろーが。だから恐らくおめーもこの場では戦えねーよ」
 銀髪少女姿で行動するメルシーは、忘れそうになるが正体は神機と呼ばれるキャバリアだ。
 闘技場のステージに降り立てば、ルールに縛られて行動不能に陥ってしまうだろう。
 メルシーもそれを理解したのか、肩を落として落胆した。
「……判ったよ。でもメルシーの|技能《スキル》は魔力回路経由で仕えるようにしておくからね!」
「ああ、さんきゅな」
 カシムが通路を歩いて闘技場のステージへ向かう。
 その最中、小さく独り言ちた。
「なに、問題ない……僕は一人でも天才魔術盗賊って事を証明してみせる。メルシーばかりに頼ってられないからな……」
 決意に満ちた足取りのカシムは修復された闘技場のステージへ昇り、死神めいた『気高きヨハンナ』と対峙する。
 これまでのヨハンナの戦い方やユーベルコードの効果を観客席からカシムは見ていた。特に翼に変異させた後の戦い方を冷徹に分析し、何度もシミュレーションを重ねた。
 だからこそ、この決闘にカシムは絶対の自信を持っている。
「この試合、僕が勝つ。だから残念だ……存分に猫吸いしてみたかったがな?」
「お黙りなさいクソ変態が」
「開始3秒で変態呼ばわりされた!?」
「猫吸いなんてセクハラをキメてくる輩は問答無用で殺すと決めてますので。お覚悟を」
「やべぇ、僕ってばでっかい地雷を踏んじまったのか……!?」
 目が座ってるヨハンナが短剣を握ったまま天へ羽ばたいてゆく。
 背中の翼を羽ばたかせ、力強くカシムの周囲を旋回し続けて斬り付けてて来た。
「猫吸いされる側の気持ちも考えないで、毛皮で深呼吸する相手に慈愛をかけろということがそもそも無理ですから!」
「おいおい持ち前の慈愛とか何やらをかなぐり捨ててんじゃねーよ!」
 カシムは手元に飛んでいた短剣を巧みに扱い、刃から念動魔法光線を乱射してヨハンナの動きを牽制してゆく。
 更に斬りかかられても上手く鍔迫り合いに持ち込み、防御も完璧だ。
「ふざけた魔法と剣術の融合ですか。貴方、戦い慣れていますね?」
「当たり前だ……ええと、グラディウスだったか、これ? 僕はですね、こういうのも使い慣れてますよ。昔からな?」
 そう告げた次の瞬間、光学迷彩魔術を纏って姿を消すカシム。
 ヨハンナは何処から撃ち込まれるか分からない念動熱線魔法からひたすら逃げ回る他ない。
「……おめーは教皇だったか? 存在を否定された物語の教皇だったか……ちと苦しくなるのはなんでだろうな?」
 不意に、空を飛ぶヨハンナの真後ろからカシムの声が聞こえてきた。
「だが容赦はしねー。ぶっ殺す……!」
 光学迷彩魔術を解除し、ヨハンナの背後から奇襲をかけるカシム。
 ヨハンナはヒトが翼もなしに飛翔している事実に驚愕してしまう。
「何で貴方が空を飛んでいるのですか!?」
「念動力での空中戦は相棒譲りなんでな!?」
 すかさずカシムはユーベルコードを発動!
「万物の根源よ……帝竜眼よ……そしてヴァルギリオスよ……! その力……我が術技として顕現せよ……! これが……|帝竜大乱舞《ヴァルギリオス・アーツ》だ!」
 グラディウスを利用した連続斬撃でヨハンナへ毒を付与し、凍結波動弾で翼を凍てつかせて墜落させる。
 蹴り技は使用禁止ゆえに繰り出すことが出来なかったが、一撃命中するごとにユーベルコードのコンボが続いてゆく。
「架空の女教皇! お前は唯表面の言葉面しかとらえてねぇ! 大半の奴はそうだが、そいつは本当に救いを求めてる声さえ踏みにじるぞ!」
 カシムの斬撃と波動弾のコンボはさらに熾烈を極めてゆく。
「本当に残念だおめーは! 存分に猫吸いしたかった! 僕はおっぱいが大好きだが、もふもふは嫌いじゃないからな! でもここで仕留める!」
 短剣の刃をヨハンナの腹に突き刺すと、切っ先から凍結波動弾を発射!
「……っ!?」
 内臓と血液が凍結する感覚に苛まれながら、ヨハンナはステージの上を二度三度と転げて吹っ飛んだ。
 そこで鳴らされる試合終了の鐘。
 カシムは惜しくも仕留め損ねたが、致命傷を存分に与えることに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
ケットシーの姿を模しているだけなのか
それともケットシーが死神さんへと変じたのか

知る由はありませんが
どちらにせよオブリビオンさんです
生前のヨハンナさんなら望まぬことを
行っているのかもしれません
海へと誘いましょう

飛来した短剣をパシっと掴みましょう
これならナーゲルの要領で使いこなせそうです

ヨハンナさんが翼を生やすのと同時に
キャンディをパクリ
人間並の大きさの八頭身の姿に

下肢の弾力でびよーんと一気に距離を詰めて
短剣一閃!

飛行するヨハンナさんへ
更に両腕をびよーんと伸ばして追いすがります

小柄な身体を活かしての高速機動ですから
中々当たられないかも知れませんが
短剣が武器ならば
ヨハンナさんは
接近戦か投擲が可能な距離にまで
近付く必要があります
ならばそれはのびーる結界の内側です

間合に入ったヨハンナさんの攻撃を
びよーんと跳ね返しながら
両腕でヨハンナさんを固結びにして動きを封じ
そのまま腕を下方へ伸ばして
剣の草原の無数の剣で串刺に

手にした短剣でとどめ

終幕
これまでの犠牲者
そしてヨハンナさんへ鎮魂の調べ
海で静かな眠りを



 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は飛来してきた|短剣《グラディウス》を空中でパシッと掴んだ。
 もはや満身創痍の『気高きヨハンナ』と対峙し、同じケットシー種族として逡巡する。
(ケットシーの姿を模しているだけなのか、それともケットシーが死神さんへと変じたのか。それらを知る由はありませんが、どちらにせよオブリビオンさんです。生前のヨハンナさんなら望まぬことを行っているのかもしれません。私が骸の海へと誘いましょう)
 箒星は短剣の扱い具合を確認する。一振り、一突き、しゅしゅっと繰り出す。そして満足そうに頷いた。
「これならナーゲルの要領で使いこなせそうです」
「そろそろ始めましょうか。貴方はさすがに空を飛べなさそうですので、遠慮なくこちらは飛翔させていただきます」
 ヨハンナの背から広がった純白の翼が羽ばたく。
 一気に暗黒の空へ飛び立ったヨハンナを見上げた箒星は、懐に隠し持っていたユーベルコード製のミラクルキャンディをパクリと口の中へ放り込んだ。
 すると、ケットシーから人間並みの体格へ伸長してみせる。そしてまるでゴムのように弾力性ある身体へ変化した。
 ちなみに今の箒星はめちゃくちゃイケメンだ。
「猫はのびーる! さあ、行きますよ~!」
 えいやっと箒星が屈む。
 その反動で全身が空へ跳び上がり、ヨハンナに追いついたではないか!
「そんな、ジャンプだけでこの高度まで!?」
「捕まえましたよ~!」
 今度は両腕を伸ばしてヨハンナの両肩をがっちり掴む。
「こら、離しなさい!」
 ヨハンナは箒星を振り切ろうと高速飛行で振り回すが、びよよ~んと腕が伸びる箒星をなかなか振り解けない。
 ならばとヨハンナは、箒星の伸びた腕を短剣で切断してしまおうと切っ先を突き立てた。
 しかし、その刃はボヨヨ~ンと跳ね返されてしまった。
「無駄ですよ。私の身体は今、弾力性と耐刃性に優れています。短剣を押し込んだところで、切っ先は私に刺さるどころか押し返しますよ」
「なんて厄介なユーベルコードなのでしょう! でもそれだけですね。私へ攻撃するためのユーベルコードではないじゃないですか」
 ヨハンナは箒星のユーベルコードが防御特化だと安堵する。
 しかしそれは、大きな思い違いであった。
「ヨハンナさん、ゴムは伸びたら反動で縮むのです。今こうして伸びきった私の腕ですが、攻撃にも応用できますよ?」
 箒星はパチンコのゴムの原理で、自分の身体をヨハンナへ惹きつけて体当たり!
「きゃあっ!」
 虚を突かれたヨハンナは衝撃で仰け反ってしまう。
 その瞬間、箒星は短剣を伸びる腕で鞭のようにしならせながら斬り付けてゆく!
「ヨハンナさんは接近戦か投擲が可能な距離にまで近付く必要があります。ならばそれはのびーる結界の内側です。今、封じ込めてみせましょう!」
 箒星はなんと自分の腕を伸ばしたまま、ヨハンナの身体へぐるぐる巻きにして捕縛する!
 そして手元で短剣を握り替えて、ヨハンナの背中の翼を削ぎ落した。
「痛っ! って貴方! このままでは貴方も墜落しますよ!?」
 翼を失ったヨハンナは闘技場の場外、つまり剣の草原へ真っ逆さま!
 腕で拘束する箒星もろとも串刺しになる運命が待っている!
 だが箒星は胴体をびよーんっと伸ばすと、自分だけは下半身を闘技場のステージへ残し、上半身だけの倍s手剣の草原へ届かせる。
「ご安心を。私、今とても伸びますので。それに串刺しになっても平気なくらいの弾力があるので痛くないです」
「それじゃ、まさか。嗚呼、私の、負けですか……!」
 死を悟ったヨハンナが胸元で十字を切った。
 そして彼女は全身を剣の草原へ突き立て、白い毛皮を真っ赤に染め上げて絶命していった。
「短剣を使って戦え、つまり剣の草原に自生する短剣を使うこともまたルールに則しているわけですね」
 箒星の見事な機転の利かせ方は、他の猟兵達には全くない斬新かつ効果的な発想であった。
 こうして、見事に『気高きヨハンナ』を撃破した猟兵達は、更なる戦場を求めて転戦していくのであった。

<了>

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月12日


挿絵イラスト