闇の救済者戦争⑤〜拷問の森
「……助け、なきゃ」
ぎゅっと小さく拳を握り、ロビン・バイゼ(芸術と鮮血・f35123)は息と呟きを吐き出した。いつもの無表情ながら、その言葉にはどこか悲壮な響きがある。言われなくとも、猟兵達には「助けなきゃ」の対象がおぼろげながら分かった。彼の背にある大きな天使の翼、三つ編みの先に咲くパンジーの花が物語る通り、彼はオラトリオ。ダークセイヴァーの出身。現在行われている、闇の救済者戦争に無関心でいられるはずもない。やはりというか、彼が次に口にしたのはそこに関連するものだった。
「……第三層、には……無数の拷問器具が自生する、常闇の森……が、あるんだけど」
拷問器具の自生する森。行きたい、という個人的な呟きが混ざったことも、その頬に赤みが差したことも、その瞳に煌めきが宿ったことも。たぶん気のせいじゃない。ないけれど、そこは本題じゃないだろう。実際、この話には続きがあった。
「……今は何故か、そこに……全身から無数の翼が生える奇病……『翼圧症』に冒された、元オラトリオの……魂人、達が……集まってる」
拷問器具、の響きに頬を紅潮させたのは一瞬。説明しながら、彼は僅かに顔を曇らせた。『翼圧症』とは、全身から無数の翼が生えるのみならず、大いなる激痛と幻覚をもたらす病。同じオラトリオとして、その苦しみと痛みを、まるで自分ごととしてとらえてしまうのも不思議ではない。しかし、翼圧症とはそれほどありふれた病気というわけではないだろう。なぜ今、このタイミングでそれに罹患した元オラトリオの魂人達が集まっているのか?
「分からない、けれど……どうやら……彼らは、ケルベロス・フェノメノンが禁獣領域から解き放たれると、同時に……本能的、無意識に、『神殺しの獣を殺さねばならない』って、感じとった、みたいで……」
それをきっかけに、翼圧症に汚染されてしまったらしい。それが何を意味するのかは分からない。何か分かることがあるとすれば、彼らを放置しておくわけにはいかないということだ。
「実際……彼ら、は……『翼圧症』のもたらす、『神殺しの獣』を殺せ、という妄執に、取り憑かれて……森に、踏み入って……自生する、凶悪な拷問器具や狩猟罠に、囚われちゃってる……」
しかも、翼圧症の症状自体に「激痛」と「幻覚」がある為、魂人達はそれを正しく認識することすらできず、罠の中で暴れ回り、傷をどんどん深くしてしまっている。まるで狩猟罠に掛かった野生動物のように。早く助けなきゃ、と祈るように呟き、ロビンは六角柱の青い水晶の形をしたグリモアを閃かせる。
「僕、は……みんなを、転送させる都合上、行けないから……代わりに、助けて、きて」
拷問器具の森、僕も行きたいけれど……と、そこに魂人達を助ける以外の含みを持たせながら、彼は猟兵達を送り出した。
ライ麦
ライ麦です。うちの子(ロビン)の出身世界なのに出遅れました。今からでも頑張りたい……!
というわけで『闇の救済者戦争』のシナリオです。「翼圧症」に冒され、森に自生する凶悪な拷問器具や狩猟罠に囚われてしまった元オラトリオの魂人達を救い出してください。
自生する拷問器具と狩猟罠を回避し、魂人を救出するとプレイングボーナスがつきます。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております!
第1章 冒険
『トラップ草原を攻略せよ!』
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POW : 罠の無力化を試みつつ進む
SPD : 罠が作動しきる前に移動する
WIZ : 罠の分布を推測して回避する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
堺・晃
【毒花】
魂人達を落ち着かせるのは澪君に任せ
僕は拷問器具の対処を最優先としましょう
【操り鏡の生き人形】を発動
【気配感知】 で周囲の【情報収集】を行いながら
自生する罠や拷問器具への盾になるように人形を動かし
僕自身でも龍狼剣やハンドガンを用いての斬り、撃ち落としで
破壊しながら澪君を【護衛】し進みます
まぁ、多少の罠なら澪君も避けれるでしょうし
そこまで過保護にすることも無いんでしょうけどね
魂人達を見つけたら澪君に被害が無いよう様子を見つつ
無事に寝かせる事に成功したら囚われている拷問器具、罠の種類や状態を確認
それに応じて的確に解除、もしくは破壊を行い
その過程でも魂人に傷を付けないように
では、運びましょうか
栗花落・澪
【毒花】
拷問器具とか、狩猟罠?
僕はあんまり詳しくないから
完全に晃君頼りなのがちょっと申し訳ない…
出来ることは頑張らないと
自分でも罠が飛んでくる気配を感じたら
【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃】
凍結させて対処
魂人達を見つけたら
ま、待って待って!動いちゃダメだよ…!
えっと…ちょっとだけごめんね!
一時的に氷魔法で動きを止めさせ
即座に【指定UC】を発動
花の甘い香りで強制的に眠らせる
魔力による昏倒みたいなものだからちょっと手荒で申し訳ないけど
癒しの力が少しでも救いになる事を願って
運ぶのくらいは手伝わせて
氷から風に魔力属性を切り替え
魂人達の体を浮遊させて運びます
僕にも抱えられるくらいの力があればよかったのに
音を立てて、トラバサミの鎖が砕け散った。
「罠を張るならより綿密に……ですよ」
ハンドガンで鎖を撃ち抜いた堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)が口元に指を立てる。本物の人間と見まごうほどに精巧な人形が、無表情にトラバサミだったものの残骸を見下ろしていた。罠の破壊を確認するように、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が晃の後ろからひょこっと顔を出す。
「拷問器具とか、狩猟罠? 僕はあんまり詳しくないから、完全に晃君頼りなのがちょっと申し訳ない……」
そう、微かに肩を落とす澪。晃の気配感知による情報収集、さらに彼の操るMirror Dollが盾となり、晃が剣となって待ち受ける拷問器具や狩猟罠を破壊することで、罠だらけの森でも二人は傷を負うことなく進めていた。いえいえ、と目を細め、晃は言う。
「代わりに、魂人達を落ち着かせるのは澪君にお願いしますね」
言いつつ、晃はチラリと目だけ動かして森の中に光るものを一瞥する。刹那、暗闇の中から一筋の矢が澪に向かって飛んできた。危ない、の一言をかける間もなく、気配を感知した澪が高速詠唱で発した氷魔法が瞬く間に矢を凍結させる。凍り付いた矢が力なく地面に落下するのを眺めながら、晃は思った。
(「まぁ、多少の罠なら澪君も避けれるでしょうし、そこまで過保護にすることも無いんでしょうけどね」)
そこまで考えた時。不意に晃の耳に、獣のような唸り声が聞こえてきた。獣のような、とはいっても、本物の獣とは明らかに違う。こんな拷問器具と狩猟罠だらけの危険極まりない森に、生きている獣がいるはずもない。二人は同時に声の方を見た。生い茂る木々の隙間、鬱蒼とした闇の中に、一際白く輝くものがもがいていた。オラトリオの魂人だ。その両腕は後ろ手に拘束され、高い樹の枝に生えた滑車から伸びる縄に吊るされていた。いわゆる吊るし責めの拷問器具だ。もがき体を捻る度に、魂人は苦痛に満ちた叫び声を上げる。この手の拷問器具は、自らの重みで体が引き伸ばされ、肩関節に多大な負荷がかかる。見た目以上に苦痛の大きい拷問だ。この状態で無理に動けば、拘束された両腕は不自然に捻じれてより痛みは増し、脱臼の恐れもある。拷問器具に詳しくない澪が、そのような原理を知る由もない。それでも本能的に危険を察知した彼は思わず声を上げた。
「ま、待って待って! 動いちゃダメだよ……!」
澪の言葉とは裏腹に、魂人はよりいっそう激しく暴れた。翼圧症のもたらす激痛と幻覚は、かの者に声を届けることを阻む。おそらく呼びかけは通じないだろう。澪は覚悟を決め、指先を魂人に向けた。
「えっと……ちょっとだけごめんね!」
放たれた氷魔法は魂人の動きを止め、間を置かずに放たれた優しく甘い香りを放つ花吹雪は、かの者を眠りに誘う。魂人がガクリと首を垂れた瞬間、晃は素早く吊るし縄を龍狼剣で切った。この拷問器具の性質上、眠った状態で吊るしておくのは危険だ。ドサリと音を立てて落ちてきた魂人を抱きとめ、晃は澪に声をかけた。
「では、運びましょうか」
「待って、運ぶのくらいは手伝わせて」
澪は氷から風に魔力属性を切り替え、魂人の体を浮かせる。僕にも抱えられるくらいの力があればよかったのに、と自らの華奢な体に目をやって呟きながら。それでも、できることを頑張るだけだ。現に、澪のユーベルコードによって、先ほどまで暴れていたのが噓のように、魂人は安らかな寝息を立てている。その癒しの力が、少しでも拷問器具と翼圧症に苦しんだ魂人の救いになることを祈って。二人は危険な罠に満ちた森を離れた。
大成功
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レナータ・バルダーヌ
わたしも同じオラトリオですし、それに森に自生しているのは拷問器具……。
たとえ独善的な感傷といわれても、否定はしません。
苦しんでいる彼らを放っておくことはできないです。
多少乱暴ですけど、【B.H.エアライド】で両翼の痕からロケットのように炎を噴射し、高速で飛行して魂人さんのもとへ急ぎます。
前方はサイキック【オーラで防御】、側方は衝撃波で吹き飛ばし、襲い来る拷問器具や罠を払いながら進みましょう。
魂人さんを救出できたら、予め持ち込んだ包帯のストックで止血だけでも行います。
帰りは来た道を辿ればいくらかは安全だと思いますけど、魂人さんの負担を考えるなら行きほどのスピードは出せません。
負傷は覚悟の上で、魂人さんを【かばう】ように抱きかかえて飛行します。
他人の苦痛を本当の意味で理解することなんてできません。
それでも、彼(彼女)の苦しみに比べたら、この程度の【痛みに耐える】くらい……!
(「わたしも同じオラトリオですし、それに森に自生しているのは拷問器具……」)
自身と自身の過去に、拷問器具に囚われた魂人達を重ねて。レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)はそっと胸を押さえた。この痛む心が、たとえ独善的な感傷といわれても、否定はしない。それでも、苦しんでいる彼らを放っておくことはできない。レナータは面を上げて、鬱蒼と茂る樹々と、そこに生える凶々しい凶器の数々を見据えた。鋭い棘に閃く刃、この中を突っ切れば負傷は免れまい。しかし、一刻も早く激痛と幻覚に苦しむ魂人を助けることを考えるなら、森を一直線に突っ切った方が早い。逡巡は一瞬。レナータは対象の攻撃を軽減するオーラを纏い、両翼の痕からロケットのように炎を噴射しながら、森の中を飛翔した。ユーベルコード、B.H.エアライド(ブレイズハイパーソニック・エアライド)。彼女が銀河帝国戦での負傷中に戦闘機を眺めていて閃いたというかの技は、超音速での飛行を可能とする。その飛行速度は、自生する拷問器具や罠をものともしない。尤も、樹や罠といった障害物がある分、回避する際にどうしたってスピードは落ちる。その隙を狙ったかのように。樹々から伸びるトラバサミが恐ろしい口を開け、どこからか毒矢が放たれ、手錠と足枷、猿轡等が彼女を狙って飛んでくる。それらをレナータはサイキックオーラで防ぎ、衝撃波で弾き飛ばしながら、樹々の隙間を縫って飛んだ。早く、もっと早く。はやる心を押さえながら。
やがて、突如として彼女の目の前に、巨大な鳥籠が出現した。中にいるのはもちろん鳥ではない。全身のあらゆる部位から翼を生やし、苦痛にのたうち回るオラトリオの魂人だ。しかも、この鳥籠はただ大きいだけではない。その床面にはびっしりと鋭い棘が生えている。この中で暴れれば、どうなるかは想像に難くない。現実に、目の前の魂人はあちこちを棘に貫かれ、血を流している。しかし、肉体を突き破って翼が生えてくる激痛と、幻覚に襲われた魂人はその現実を正しく理解することさえできない。ただわけの分からぬことを喚きながら、激しく鳥籠の檻に頭をぶつけているだけだ。その姿に哀れみと痛みを覚えながら、レナータはそっと手を差し伸べた。
「今、助けます」
その言葉が届くはずもない。それでも、彼女は衝撃波で鳥籠の鍵を破壊し、暴れまわる魂人をなんとかなだめながら、せめてもと予め持ち込んだ包帯のストックで止血を行う。これだけでも少しはマシになるはずだ。止血を終えたレナータはさて、と今まで来た道を振り返った。いくつかの罠は破壊してきたから、来た道を辿ればいくらかは安全なはずだ。ただ、魂人の負担を考えるなら行きほどのスピードは出せまい。レナータは意を決し、救出した魂人をかばうように抱きかかえて飛翔した。飛んでくる石つぶてが、樹々から伸びる鋭い棘が、不意に横切る刃が。彼女の肌を傷つけ、斬り裂く。血を流しながら、レナータはいっそう強く腕の中の魂人を抱きしめた。他人の苦痛を、本当の意味で理解することなどできない。それでも、彼の苦しみに比べたら、この程度の痛みに耐えることぐらい、なんでもなかった。
大成功
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