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闇の救済者戦争⑧〜曙光が導く希望

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #人類砦 #曙光の凱歌

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「先の戦いに参加した者はご苦労だった」

 エルフィア・エルシュタッド(闇月の魔術剣士・f35658)は集まった猟兵達に頭を下げた。

「疲弊した砦へと、向かって欲しい」

 この砦は、先にエルフィアが猟兵達を導いた砦だ。猟兵達の救援が間に合った事もあり、彼等の被害も可能な限り最小限で納まっている。
 しかし、此れまで四層で戦ってきた「闇の救済者」達は、此れまで体験した事が殆ど無かったであろう状況――「戦争」という局面や、三層である事――に、戸惑い、疲弊している状態だ。

「所謂慰問活動のような物だな」

 この砦の中には、「闇の救済者」として戦ってきた者達以外にも、この三層で逃げ込んできた魂人達や救済者達同様に四層から迷い込んできた者達も居る。
 戦う者達を鼓舞するのも当然必要な事だが、彼等は先の勝利で一定の士気を取り戻している。故に、戦う力が無い、もしくは闇の種族達に弄ばれ続け傷ついた彼等にに寄り添う事で、救済者達の士気をさらに高く維持する事が出来る。そうすれば、彼等も多少なりとも猟兵達の後押しが出来るだろう。

「むしろ、この戦の結果こそが真に彼等の士気を定めるのかもしれん」

 とはいえ、未だ戦端は開かれたばかり。此処で敵に圧されている訳にもいかない。斃すべきオブリビオン・フォーミュラへの道は遠く厳しく、熾烈な戦いが続くだろう。そしてそれは、猟兵達だけの力のみで切り拓ける物では無いのだ。

「皆、宜しく頼む」

 エルフィアは短くそう言うと、魔導書のカタチをしたグリモアに力を込めた。


白神 みや
 お世話になっております、|白神《しらかみ》です。
 戦争シナリオ2本目になります。そこはかとなく1本目と地続きですが、そちらに不参加でも、関連シナリオ( #曙光の凱歌 タグをつけました)に不参加でも問題はございません。どうぞお気軽にご参加頂ければ幸いです。

 戦い疲弊した砦への慰問活動的なシナリオになります。

●プレイングボーナス
 戦う力を持たない人々に寄り添い、勇気付ける。

●お願い
 MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
 先行シナリオ完結後に断章を追加後、受付開始になります。詳細はタグを参照ください。
 期間中にいただいたプレイングで進行予定ですが、締切後🔵状況等によっては追加を受付る可能性があります。
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第1章 日常 『猟兵慰問団』

POW   :    料理を振る舞う

SPD   :    歌や踊りを披露する

WIZ   :    身体で慰める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●|夜明け《緞帳》前は仄かに暗く
 解放者も、魂人も、人間も。皆等しく傷を負っていた。その身にはなくとも、その心に。

 此処に来る迄に仲間が犠牲になった解放者が居る。
 迷い込んでしまったばかりに、家族を喪った人間が居る。
 逃げ延びる為に永劫回帰で更に傷を増やしてしまった魂人が居る。

 満身創痍の彼等に襲い来た異形の神は、世界と異なる力を振るう猟兵達が打ち払った。ひとまずの戦いが過ぎ去り、生き延びるという希望が僅かに芽吹いた今、互いに負った傷を癒し、過ぎ越す為に、身を心を寄せ合っていた。
 人の心は、揺らぎ揺れて、朧に弄ばれる。血の色の空が、不気味に揺れて、人々に一時忘れかけた不安を想起させた。

「……これから、どうなるんだろうか」

 誰かが、ぽつりとそう零した。

「どうにか、此処を護る事が出来たが――」

 その様子に、解放者の一人が、大剣を背に負いながら、つい先刻、この地に束の間希望の光をともした彼等を思いながら知らず、言葉を零していた。

「なれるだろうか」

 同じものではなくとも、比肩出来る何かに。
 |夜明けの道《銀橋》は細く遠く闇の中に浮かんでいた。 
栗花落・澪
少しでも元気をあげられるように
僕達が笑顔で頑張らないと

持ち込みオッケー?
じゃん、スープジャーで温かいコンソメスープ持ってきたよ!
1リットル分じゃ足りないかもと思って
清潔な食器と一緒にいくつか持ってきたから自由に飲んで

魔法の瓶に入った飴も配ってあげる
やっぱり疲れた時には温かいもの、甘いものだよね

それとこれは僕からのプレゼント
【心に灯す希望の輝き】発動し
希望を乗せた【歌唱】

屋内外問わず魔法で作り出す奇跡の空間で少しでも癒しを
お花見、みたいな?

花には【破魔】を乗せてあるから
押し花にして持っておけば、ちょっとしたお守りにもなるかもね

お世話さえしなければ
養分の魔力が尽きたら勝手に消えるからそこは安心して




 先刻までの戦いを乗り切ったとはいえ、この闇深き世界の常として、それが未だ終わりでないと知っているからこそ刻まれている諦観に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の心が締め付けられる。

(僕達が笑顔で頑張らないと)

 彼等が少しでも前を見る事ができるようにと思う気持ちが。澪の背を押す。

「温かいコンソメスープ持ってきたよ!」

 澪に未だ絶望の沼に足を囚われているかのような砦の重い空気を払拭するような明るい声を出しさせた。
 その声に、幾人かがゆるゆると顔を上げたのを確認すると、そのままテキパキと大きめのスープジャーと共に食器を取り出すと、手際よく並べていく。
 柔らかな雰囲気の澪と漂うスープの香りに惹かれ近寄って来た人々に、スープを満たした食器を渡していく。

「ああ……温かい……」
「これもどうぞ。やっぱり疲れた時には温かいもの、甘いものだよね」

 スープを口にして安堵するように言葉や吐息を零す人々に澪はさらに飴を配っていく。すぐにそれを口にする者もいれば、大事そうにしまおうとする者。その反応は様々だったが、拒否する者は居なかった。

「それとこれは僕からのプレゼント。
 『貴方の闇に、希望の輝きを』」

 そう言うと、澪はユーベルコードを歌にのせて発動させる。歌声と共に周囲に穏やかな光と花が静かに降り、闇深い世界に光を喚ぶと、ささやかではあるが歓声があがった。

「これは……」
「少しでも癒しをってね。……お花見、みたいな?」

 人が殺到しきらないよう見守ってくれていたらしい救済者の一人の問いかけに、澪はそういって微笑む。

「花は押し花にしておけばお守りになるだろうし、魔力が尽きたら消えるからそこは安心して」

 少しでも穏やか時間を皆が過ごせるように。人々を見守る澪の想いを受けて穏やかに花は降り続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 みんな、本当にお疲れ様。これからの心配とかは後にして、今はとにかく食事にしましょう。温かいものを食べて身体を休めれば元気いっぱいね。ゾーヤさんにお任せあれ、とっておきを作っちゃうんだから!

 持ち込んだおっきなお鍋でゾーヤさんの得意料理、栄養たっぷりでボリューム満点のボルシチを作るわ。砦のみんなにもお手伝いをお願いして、来てくれたひとには野菜の皮むきや薪の調達をお願いしちゃおうかしら。じっと待っているより、みんなで作った方がきっと美味しいわ。〈気合い〉をいれて、丁寧にじっくりと煮込むわね。

 ――できたわ! さぁ、召し上がれ。温かいうちに、たくさん食べてね!

(POWで挑戦、アドリブ等々大歓迎)




 慰問であると告げ、砦の中に入ったゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)周囲を見回し人々の様子を見る。
 ゾーヤはこの|闇深き世界《ダークセイヴァー》を故郷とする者だ。故郷の希望とされながら、人々を救えなかった過去を、周囲の光景が想起させる。

(この人たちは、村の皆ではないけれど……)

 それでも、自分が動く事で誰かを癒せるなら。ゾーヤは郷愁を心の裡にそっとしまって動き出す。

「みんな、本当にお疲れ様。これからの心配とかは後にして、今はとにかく食事にしましょう! とっておきを作っちゃうんだから!」

 声音は明るく、朗らかに。手を打ちながら周囲の耳目を自分に集める。そうして、持ち込んだ鍋と食材を並べていく。

「皆も手伝ってくれる? じっと待っているより、みんなで作った方がきっと美味しいわ」
「おう、力仕事は俺達がやってやるよ」
「野菜の準備はこっちでやろうかね。お嬢さん一人じゃ大変だろう?」

 ゾーヤは、準備していく様子に興味をひかれた人々や救済者達へ、下拵えや薪の調達を頼んでいく。手を動かしていれば、その時は気を紛らす事もできるだろう。
 下拵えをした肉やビーツ、炒めた野菜を丁寧に煮込んでいけば、周囲を温かい香りが満たしていく。

「――できたわ! さぁ、召し上がれ。温かいうちに、たくさん食べてね!」

 ゾーヤが得意料理に込めた優しさは、確かに人々の心を満たしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウールリカ・メリノス
みんなおつかれ様〜
さっきの戦闘には間に合わなかったけれど、
衛生兵としてはむしろここからが本当の戦場だ〜

救急カバンに薬や衛生用品を詰め込めるだけ詰めて、砦の中の病人や怪我人を看て回ろう
流石に高度な設備や珍しい薬が必要な治療は難しいけれど、
医術と薬品調合の知識を活用して出来る限りの処置をするよ

中にはもう手の施しようがない人だっているかもしれない
そういう人には|モルフェ《鎮痛》剤を投与して、せめて苦痛を和らげてあげよう




「さっきの戦闘には間に合わなかったけれど、衛生兵としてはむしろここからが本当の戦場だ〜」

 砦に辿り着いたウールリカ・メリノス(ヒツジの衛生兵・f39990)は、救済者達と労いの挨拶を交わすと、そのヒツジの姿そのままのゆったりとした雰囲気から、己を切り替える。

「怪我された人はいますか~?」

 薬や衛生用品を詰め込んではち切れそうな程に膨れた救急カバンを背負って、ウールリカは速足で砦を巡る。
 何人か先行した猟兵らしき者たちが、食事等で|精神的な癒し《メンタルケア》を進めている様子が視界に入る。それならば、猶の事、身体のケアは自分の――衛生兵の仕事だ。
 幸い、ウールリカの故郷の世界は、この世界より医療技術は進んでいる。恐らく、より多くの人を助ける事ができる。

「こっちに負傷者を集めている、頼む……!」

 救済者の案内で通された砦の一角に、傷病者が集められていた。

「『大丈夫、すぐ手当てするからね〜』」

 ウールリカは、持ち込んだ衛生用品の使い方を動ける人々に教えながら、同時にユーベルコードを展開して応急治療を施していく。引き換えに己に疲労が蓄積していくが、衛生兵であるウールリカにとっては、傷付いた人々を救う事が最優先だ。それで疲労をする事を厭う衛生兵など、居る筈がない。
 時にウールリカの|ユーベルコード《ちから》を以てしても限界がある者もいた。

(せめて苦痛は和らげられたらいいのだけどね~……)

 |モルフェ《鎮痛》剤を投与した事で眠る患者の手を痛まぬ程度に握って、ウールリカはそう願うと、次の患者の元へと向かう。衛生兵の仕事は、まだこれからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
…此処でも傷つき、喪ってしまったものがあった
拠点の人々の元へ向かう前に弔いの花を
…墓も亡骸もないのかもしれない
何処かで魂人になっているのかもしれないが
今だけは…どうか彼らを闇から護ってくれるようにと祈りを

拠点に入ったら炊き出しをしよう
心と体をあたためる料理を作って
ひとりひとりに配ろう
不安気な人にはそっと両手で手を包む
─大きな闇の前に
明日が見えなくなってしまいそうな怖さは、私も…僕も知っています
…少しでも頑張ってきた貴方方の心が押し潰されてしまわないように
どうか寄り添わせて欲しい
心から皆に─曙光を
【例え夜が明けずとも】
その心の怖さや哀しみを癒し
灯り始めた希望が明日を迎える力となるような
光を拠点に




 アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は、砦へ向かう前に再度戦場だった場所へと転送する事を願った。

(何処かで魂人になっているのかもしれないが、今だけは…どうか彼らを)

 ――深き闇から護り給えかし。

 暁の騎士は戦いの爪痕が深く残る戦場に弔いの花をと祈りを捧げ、砦へと足を向けた。

 砦は既に先行した猟兵達により幾らか人に活気が戻ってきているようだった。この|闇深き世界《ダークセイヴァー》が故郷であるアレクシスも、明けぬ夜に人々が負うものをよく知っている。だからこそ、人々に活気が戻っている事に安堵した。
 |猟兵達《彼等》に触発されて炊き出しに動き出した一団の手伝いをアレクシスは買って出る。

「こんな立派な騎士様が手伝ってくれるなんてねぇ」

 そんな言葉をかけられて、どこか面映ゆくなる。自分も、もしかすると彼等のようになっていた可能性だって、在り得た筈だ。

「明日が見えなくなってしまいそうな怖さは、私も……僕も知っています」

 だからこそ、今は騎士ではなく。料理を待っていた人の手へ食事の乗った器を渡しながら、アレクシスは言う。

「――だから。少しでも頑張ってきた貴方方の心が押し潰されてしまわないように、どうか寄り添わせて欲しい」

 そう穏やかに語るアレクシスへ、人々が眩しげに目を細めた。弱き人々の為に、何よりも、友の為に、友の護り星として。彼が抱く信念は、人々に前を向く力を与える。

「『光はここにある、』例え夜が明けずとも」

 その言葉と共に空に浮かぶ赤星。アレクシスのユーベルコードが生み出したそれは、人々に与える勇気の後押しとなっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
【月灯】

少しでも皆さんの気分が明るくなるように
白漢服で行きます

確かに空気が重いです…
この砦の皆さんが希望を持てるよう
力を尽くしましょう

天城さんのお言葉には
気恥ずかしさを感じますが
謹んでお受けします
私で力になれるのでしたら…

白燐蟲を呼び出して周囲に漂わせつつ
ゆったりと舞います
漢服を着て来て正解でしたね
光と衣装の美しさで
気分が晴れてくれたら…

もし砦の人々と目が合ったら
にっこりと笑顔を
桜の精ですから
時には妖精っぽく振る舞っても
きっと許されますよね

美味しいものを用意する事も考えましたが
天城さんが仰る通り
心の糧も同じくらい大切です
皆さんがこの世界で
自分自身の力で
それを勝ち取れるよう
祈りながら舞いましょう


天城・潤
【月灯】

来ましたが空気が重いですね

これで良くなるという希望が断たれた時
心は蝕まれます
この人達をそこへ行かせてはならない
まだ間に合います

「神臣さん、どうか癒しの花を…」
この世界に生きていた僕が
目の当たりにした初めての『美』を
振舞って頂けないかと願い出ます

形あるもので鼓舞する方もいるでしょう
でも美々しい花の精の幻花宴を
淡く光る美しい蟲の乱舞を
よすがに戦う人も居ると思います

僕がそうであるように

僕は出せる美は持ち合わせませんので
笑顔で僕が体験した美や食や楽しさを語ります
そしてそれを「この世界で得る」事に意味があるのだと

今こそ心の糧を希望を
猟兵の力だけでは成し得ません
「永遠の黄昏の軛を打ち壊しましょう」




「神臣さん、どうか彼等に癒しの花を……」

 天城・潤(未だ御しきれぬ力持て征く・f08073)は神臣・薙人(落花幻夢・f35429)へと、他者に聞こえぬ声音で言った。
 転送された砦の周囲を見渡して想定より明るい空気に少し安堵したものの、この点在する明るさは自分達より先に転送され動いている猟兵達が齎したものだというのは容易に推測出来た。
 彼等が展開したユーベルコードの権能は今はこの砦を覆うように包んでいるが、その権能が切れた時。そして、自分達も含めた働きかけが終わった後の事を潤は思う。だからこそ、潤自身が、猟兵となり、銀の雨降る世界と縁が繋がれたあの時に目の当たりにした、初めての『美』を彼等にもと、そう願ったのだ。彼等が彼等自身の力で希望を持てるように、と。
 そう訴える言葉に、薙人は擽ったいような気恥しさを覚える。しかし、自分が、この砦の人々に希望を、活力を与える事が出来るのであれば。

「私で力になれるのでしたら……謹んでお受けします」

 その言葉に潤は何時もより少しだけ嬉しそうな彩を帯びた笑みを浮かべる。

「ええ、皆さんの心が蝕まれる前に、行きましょう」

 頷きあうと、二人は未だ空気が重く見える方へと足を向けた。此処にも、救済者達による炊き出しは回っては来ているものの、未だ人々に刻まれた傷は深い。恐らく永劫回帰をしてしまった魂人達も多いのだろう。
 そんな重く仄暗い闇に沈む場に、薙人の纏う漢服に白と、その髪を飾る櫻が揺れて、目を惹く。

「……残花」

 舞扇を拡げた薙人の周囲に光が舞う。名を呼ばれた|白珠の白燐蟲《残花》が、主の周りを飛び交い光を放ったのだ。そのまま、ゆったりと舞い始める。漢服の袖や裾の軌跡に沿うように、|白珠の白燐蟲《残花》が連れ舞って、軌跡を描く。

(漢服を着て来て正解でしたね……)

 楽の音もなく、ただ、静かに舞う姿に、一人、また一人と顔を上げて己に視線を向ける人々へ笑みを返しながら、薙人は思う。光と衣装の美しさで気分が晴れてくれたらと、そう思って選んだ漢服と、その意図を汲んで舞う|白珠の白燐蟲《残花》が生み出す美しさは例え暗鬱に沈んでいたとしても、確かに人々の心に強く働きかける。

「形あるもので鼓舞する方もいるでしょう。でも――」

 美しい櫻花の精による宴。
 淡く光る美しい蟲の乱舞。
 それらを心の支えに|戦う《生きる》人々だって、居るのだ。そう、|潤自身が《此処に》。
 潤は共に舞いを見つめていた、此処まで二人を案内した解放者や、周りで共に舞いに見惚れる人々に向けて、そう語っていた。

「そうだな……どうしても、俺達は娯楽ってものを忘れてしまう」
「だからこそ、「この世界で得る」事に意味があるんですよ」

 薙人の祈りの舞を見守る人々の瞳の奥には、確かに希望が灯り、輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
預かり子のキアラ(f11090)と

まだ大丈夫
それは見て解るけど長く続くと危いね

蹲るしかない哀しみ
傷が一つ増える度に絶望が増える
その先はどうなるか明らかだ

「俺のできる事を」
呟きお菓子をどうぞ詠唱

何時も種類絞るけど今回は特別
再詠唱で幾らでも
材料も沢山持ってきた

左党には酒精大入ケーキ
子供達にはメープルホットケーキ
甘くない雑穀クッキーも
ミルクや珈琲も淹れて
超沢山

「ゴメンキアラ!手伝ってー!」
ってキアラも凄いお菓子!?
あの魔女帽昔から大活躍だよね
お母さんのシーナとも今も繋がってる
なんだかそこも嬉しいな

「さ、疲れ取ってもう少し頑張ろ!」
笑顔で皆に振舞うね
「また作りに来るよ」
その時はもっと豪華にするからね!


キアラ・ドルチェ
師父たる時人さん(f35294)と

母が言ってました
「私や時人さんたちはね、戦争の時に甘いものを食べて元気出してたんですよ?」
どんな苦境の時でも、どんな強敵が相手でも、甘いものを食べて元気を出して挑んでいったと
うん…きっとそれは世界が違っても変わらない、って信じる

という訳で! 
プリン! あんみつ! チョコにマカロンに葛切り!
たっぷり笑顔で配り歩き♪ おひとつどぞどぞっ♪
足りなくなったら、白魔女帽から追加でごそごそ取り出し
…どこにこんな量入ってるかは…白魔女さんの秘密、ですっ♪
酷い怪我の方には、ヤドリギの織姫から産まれた生命の実も添えて…
「時人さん、了解ですっ!」(出来たお菓子を片っ端から配り歩き




 葛城・時人(光望護花・f35294)は、先の戦闘の折に姿を見かけた預かり子――キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)と共に砦を再訪した。
 救済者の一人が時人の顔を覚えており、案内を買って出てくれたので、彼の案内で砦を巡る。

「今は大丈夫そうだね」
「……やっぱり、「今は」だよな」
「うん、長く続くと危いだろうね……」

 時人の言葉に、救済者の顔が暗くなる。蹲るしかない哀しみに沈んでいる時に負う傷は、実際に負うそれよりも深く心を抉るという事を知っているからこそ、そうならないようにと願わずにはいられない。

「母が言ってました。
 戦争の時に甘いものを食べて元気出してたって」

 そんな二人の傍らで、キアラが言う。キアラの両親は嘗て|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の戦いを駆け抜けた能力者だった。その二人から聞かされてきた話は、今もキアラの中で憧れと尊敬に彩られて胸の中にある。

「……きっとそれは世界が違っても変わらない、って信じてます」

 そう、祈るように語るキアラに、当時その甘い物を一番楽しみにしていた一人であった時人が懐かしいような気恥しいような笑みを浮かべる。

「という訳で!」

 重い空気に引きずられてはいけない。そう本能の部分で察したキアラが明るく続ける。

「プリン! あんみつ! チョコにマカロンに葛切り!」
「ってキアラも凄いお菓子!?」
「……どっから出てきたんだ、この菓子」

 ユーベルコードを駆使して、癒やしの力も併せ持たせたお菓子を取り揃えようと思っていた時人が、キアラが取り出したラインナップに思わず驚きの声を上げた。その横で、二人がどんどん出していくお菓子に、救済者もやや呆然と声を零す。

「……これ、もらっていいの?」

 キアラに続けとばかりに、時人もホットケーキなどを用意し始め、周囲に仄かに甘い香りが満ちてくれば、それに惹かれた子供たちが、恐る恐るといった様子で近寄って来る。

「もちろん! おひとつどぞどぞっ♪」
「皆の為に用意してるお菓子だからね。遠慮しなくていいよ」

 二人の言葉と笑みに、子供達が歓声を上げて駆け寄って来た。

「甘くないクッキーや酒精入りのケーキもあるから、大人も歓迎だよ!」

 時人は、駆け寄って来た子供達にお菓子を配ると、遠巻きに見ていた大人たちにも声を掛ける。
 その間にキアラも魔女帽にお菓子を山盛りにして人々へと配って回る。そうして人々の間を縫うように配り歩きながらも、怪我を負った人へユーベルコードで生み出した生命の実を添える事も忘れない。
 そんな預かり子の姿に、時人は彼女の母である友を思い出し、あの頃が今にこうして繋がっている事が嬉しくなる。出会いこそ戦いの最中であったが、この砦で知り合った人達ともそんな縁が紡げたら。そう願いながら、笑みと共にお菓子を振舞っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と参加

俺自身、背負う文字は自身を鼓舞する意味もある
傷ついて疲れて立ち止まっても
自身が何のために戦うのかを背負って、折れない為に
「だからこそ、今俺達にできる事と、すべきことをしようか」

まずはシリルと一緒に作った食事をふるまうよ
ちょっとした軽食や、疲れた身に沁み込む暖かなスープ
無理して食べなくても、暖かな器を手に持つだけでも変わると思う
「今は何も考えないでいいんだ。この瞬間でも、安心できたら嬉しい」

一通り配って落ち着けたら、戦士や大人達に声をかける
多分、以前の戦いや今までに猟兵を見たことがある人も多いだろう
きっと、俺達の戦いと自分たちの戦いを比べた人もいると思う

「でも、皆が思っているよりも、猟兵は無力なんだ」
解決できなくて、それが歯がゆい事もある
「だけど、たどり着くべき場所も、光も見えている」
どんな戦いでも、俺も同じだ。仲間達が居てくれるから
「それには皆の力が必要なんだ。俺達じゃない。皆の力だ」

激励ではなく、折れかけた心を支えるように
何を目指せばいいか、見つめる為に


シリルーン・アーンスランド
夫の陸井(f35296)さまと

陸井さまの『護』は
まさにこのような方々をお助けする為にあるのです

怯えるお子たちに笑顔を
絶望の世界に希望の種を
大人の皆様にも戦意と元気を
躊躇いと懐疑を退け意思持つ勇気を!


我が子を育てました時の素朴な玩具の数々
ビー玉けん玉竹とんぼに折り紙…おはじき紙風船
幸い陸井さまが張り切って大人買いされましたゆえ
まだたんとございます
携えて参りましょう

参りましたらお子達へ
ご興味持って頂けますよう紙風船を膨らまし
「このようにして遊びますの」
そして次々遊び道具をお見せして

竹とんぼは人に当たらぬよう注意が必要ですけれど
どの遊び道具も手元で色々工夫が出来ますわ
夢中になられたらきっとお子達に笑顔が自然と戻られましょう

夫婦二人でお作りした精のつく召し上がり物でも
元気を出して頂けたら嬉しゅうございます

陸井さまの力強いお言葉にも呼応致します
「皆様が笑顔でいられる世界になるまであと少しの
御辛抱でございます」
「救済者さま方と猟兵で明日を拓く為に参るのです」
断言致します
「必ず夜明けの光が届きますわ」




 鮮やかな青が翻る。其処に記されたのは「護」の一文字。その意思を体現するような羽織を纏うのは、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)。
 その傍らには、シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)が寄り添う。彼女もまた、猟兵として戦う者であるのだが、戦場に立つ事を余り好まない夫の意向を汲み、先の砦の防衛線には参戦しなかった。それでも、戦いに疲弊した人々を見捨ててはおけないと、夫に共にこの砦に向かう事を決めたのだった。

 足を踏み入れた砦は、先行していた猟兵の心尽くしもあってか、大分と活気を取り戻している。人々が思っていたよりも明るい事に二人はそっと笑みを交わし安堵する。

「よろしゅうございました……」
「ああ、そうだな」

 人々が立ち止まって折れる事無く|未来《前》を向こうとしている。それは、この闇深き世界に希望という光が差しているいるということだ。ならば、自分達はこのか細い光が、折れ消える事が無いように。

「今俺達にできる事と、すべきことをしようか」
「はい、陸井さま」

 やる事を定めた二人は、救済者達の炊き出しの手伝いを始める。救済者達が準備をしていたものだけでなく、ちょっとした軽食を二人で作り、振舞っていく。

「無理して食べなくてもいい。暖かい物を手にするだけでも変わると思うから」

 穏やかにそう言い添える陸井の雰囲気に後押しされるように器を受け取る人々は、安心したような吐息を零した。

「今は何も考えないでいいんだ。この瞬間でも、安心できたら嬉しい」

 希望を灯すのは、敵に勝利を収める事だけでは無い。人々の心に余裕が生まれた今だからこそ、出来る事がある。
 シリルーンは陸井と共に人々に回りながら、子供達へと、嵩張らない、素朴な玩具を配っていく。それらは二人の居る|銀の雨降る世界《世界》の物である為、この世界には馴染の無い物も幾つかあった。

「このようにして遊びますの」

 それらの扱い方を、シリルーンは丁寧に、時には自分で扱いながら、子供達に教えていく。

(そういえば、あの子はどうしておりますでしょうね)

 目を輝かせながら玩具で遊ぶ子供達の様子を見守りながらシリルーンが思い出すのは、自分達の子供の事。
 猟兵となり、自分達の世界の更に外側の事を識った今なら、あの子もまた、世界を越えたのかもしれないと、そう思う。三十六あるといわれている世界は未だ全てが詳らかになってはいない。であれば、その詳らかになっていない世界の何れかで、|陸井《父》のように無二の相棒と出会ったのかもしれない。
 再会出来た時、あの子はどんな姿をしているだろう。自分達のように運命の糸の悪戯で姿が変わっているのかもしれない。例えそれでも、繋がる絆は違わないだろう。
 子供達が楽し気に遊ぶ様子を見守りながらシリルーンも知らず笑みが零れていた。

 シリルーンが子供達と触れ合ってるのと同じ頃、陸井は救済者達に声を掛けられていた。先の戦いや、過去の戦いを見ていた者達から戦いについての意見を求められたのだ。猟兵達のように戦うには如何したら良いのかと。

「皆が思っているよりも、|猟兵《俺達》は無力なんだ」

 確かに猟兵は生命の埒外ではあるが故に、強大な力を振るう事が出来る。しかし、悲劇に先んじてその力を振るえるのは、グリモアの導きがあればこそ。|その中継点となる拠点《グリモアベース》にしても、小さく弱いものだ。それを補い、増幅するのは、背を預けあう仲間が居てこそ。
 それは此処にいる救済者達とて同じなのだ。

「たどり着くべき場所へ向かう為に必要なのは、|俺達《猟兵》の力だけじゃない。皆の力だ」

 陸井はそう言うと、シリルーンと子供達のを見やり、淡く笑む。

「我々の……」
「皆の、力」

 救済者達もそう呟きながら、同じように子供達の方を見やる。そういえば、子供達があれほどに屈託無く笑っているのを見るのは酷く懐かしい気がした。

「支えあえば、必ず」

 夜明けは、この闇深き地へも必ず訪れるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月21日


挿絵イラスト