●勿忘草を否定して
忘れよ。忘れよ。全てを忘れよ。
勿忘草のその花をひとつひとつ丁寧に手折って。
どうせその身は朽ちるのだから。
いずれは無に帰るのだから。
手折った勿忘草のその花を惨たらしくも、踏み荒らして。
最後にその香を嗅ぎましょう。誰も知らないその香を。
その幸せな思い出も。暖かな微笑みも。
どうせいつかは忘れ去られる虚無なのだから。
歴史に埋もれる塵でしかないのだから。
骸の海に流れ着くのだから。
いずれ忘れるのだから。
手放せ。手放せ。
心あるうちに。それが幸せな思い出と言えるうちに。
●その花園にまだらの薔薇を
「大切な記憶を失うという事は…酷く辛い事です。」
アンリ・ボードリエ(幸福な王子・f29255)は胸に手を当て、双眸を伏せる。
「壮麗な黄金造りの城塞の一角に、花園を模した回廊があるようです。」
勿忘草が満開に咲いていた花園が。
しかし勿忘草の花は全て手折られ、地面に花の亡骸が散らばっているらしい。
ここへ踏み入った者は皆、花園の回廊に満ちる魔力によって瞬きの間に「自身の大切な記憶」を次々と忘れていってしまう。
しかし、それを乗り越え「回廊に奪われた大切な記憶」を自ら思い出すことが出来れば、この回廊からデスギガスへと流れ込む「なんらかの魔力」を断つことができる。
「…そのような予知をされた方がいらっしゃるようです」
アンリは長く、細い息を吐いた。
「皆様をこのような場所に転送するのは、少し心苦しいのですが……皆様ならきっと自分の大切な記憶を思い出せると、そう信じています。」
彼の手の中のグリモアが輝く。
「どうかご無事で。貴方の大切な記憶を、必ず取り戻してください」
ミヒツ・ウランバナ
オープニングをご覧いただき有難うございます。
ダークセイヴァーの戦争なので湧いて出てきました。
ミヒツ・ウランバナと申します。
今回はシリアス心情多めなシナリオをお送りいたします。
プレイングボーナス:回廊に奪われた「大切な記憶」を思い出す。
それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『花咲く季節』
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POW : 花の側まで近づく、花を愛でる
SPD : 花の香りを楽しむ、花を愛でる
WIZ : 花の造形や生態を思う、花を愛でる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
※可能であればあらかじめ2021年の浴衣着用
綺麗な花園…だった筈なのに
きっと凄く痛かっただろうな
なんでだろう
なんか…凄く、寂しい気分だ
独りだからかな
ふと動きづらい事に気づいて
そういえば…なんで僕、こんな格好で来たんだっけ
お祭りでもないし
でも
なんでだろう
見覚えがある
金の龍
紫の…シャチ??
緑の豚
赤い狼
…頭には……ピン留め?
左手で髪に触れるうち
薬指の指輪にも気が付いて
指輪……そうだ、確か恋人がいて
赤い狼が、モチーフで…
モチーフ…?
そうだ、他の小物も全部、貰ったんだ
ずっと傍にいられるように
皆で考えてくれて
独りじゃない
今は大切な人達がいるんだ
もう、檻の中で震えてたあの頃の僕じゃない
ごめんね
思い出したよ
●それは勿忘草の咲かない季節のこと
「誰がこんなことを…」
その場にしゃがみ込み、手折られたワスレナグサを一輪、透き通るように色白の指でつまみ眼前に掲げる。
「綺麗な花園…だった筈なのに」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は手折られたワスレナグサの花畑の中にいた。
辺り一面見渡しても咲いているワスレナグサは一輪たりとも存在しない。
ある一輪は、茎を折られて打ち捨てられ。
ある一輪は、葉も、花びらも引き千切られ、バラバラになったその身をそっとその場に横たえている。
「きっと凄く痛かっただろうな」
撫でるように、手の中のワスレナグサの縁をなぞった。
澪が手に持つワスレナグサも手折られて時間が経ってしまっているせいか、その花びらがくしゃりと皺がれてしまっている。
それを見ていると急に凄く胸が締め付けられるような、そんな気持ちに心がざわめく。
「なんでだろう…なんか…凄く、寂しい気分だ」
独りだからかな。
独りじゃなかったら、こんな気持ちにならなかったのかな。
独りじゃなかったら。
じゃあ、誰と?
そんなことを考えていたら、しゃがんでいる体勢が少し窮屈に感じられた。
ただしゃがんでいるから窮屈なのではない。
浴衣を着ているから、しゃがむと帯が苦しいのだ。
「そういえば…なんで僕、こんな格好で来たんだっけ…お祭りでもないし」
祭りが開かれていたような形跡も、これから開かれる様子もない。
祭囃子が聞こえることもなければ、他に人ひとりいない。
周りは一面のワスレナグサの死体だらけ。
シンと静まり返る不思議で異様な空間は、澪の頭を曇らせる。
「でも、なんでだろう…見覚えがある」
澪は立ち上がって、しげしげと自らの装いを見つめた。
葡萄染の様な深みのある赤紫色の帯には金の龍。
巾着袋に描かれているこれは紫の…シャチだろうか?
その上の留め具は頬をピンクに染めた可愛らしい緑の豚。
羽織にしている黒橡色の着物の裏地には赤い狼が隠れて澪を見守っている。
「…頭には……ピン留め?」
色までは確認できないが、髪を触ると指にツヤリとした二本のピン留めの感触が伝わってくる。
左手でそれを確認する中、ふと視界に銀色が光る。
視線をそちらへ向けると…指輪だ。
「……そうだ、確か恋人がいて…赤い狼が、モチーフで…」
モチーフ?
金の龍。
紫のシャチ。
緑のぶた。
髪留め。
そして、赤い狼。
「そうだ、他の小物も全部、貰ったんだ」
誰に?
ワスレナグサの香りは澪に問う。
忘れよ。忘れよ。全てを忘れよ。
手放せ。手放せ。心あるうちに。
ワスレナグサの香りは澪に詰め寄る。
しかし、ワスレナグサの香りは澪へはもう届かなかった。
「ずっと傍にいられるように、皆で考えてくれて」
一つ一つの小物を慈しむ様にその手で触れて、見つめる。
大好きなみんなと、ずっと一緒にいられるように、大好きなみんなが考えてくれた小物やモチーフを身に纏った。
大切な願いを込めたあの秋のことを思い出す。
今でも思い出せる。二年前の秋祭り。
あの祭囃子。鈴虫の鳴く声。出店で買ったいちご味のかき氷。
そして、大好きなみんながそこにいた。
「独りじゃない。今は大切な人達がいるんだ…もう、檻の中で震えてたあの頃の僕じゃない」
奴隷でも、見せ物でもない。
彼が、あの日狭い檻の中から自由な空の元へ救い出してくれたから。
澪の手の中にあった皺がれたワスレナグサはいつの間にか消えて無くなっていた。
「ごめんね、思い出したよ」
どうして忘れてしまってたんだろう。
こんなに大切な、何よりも大事な人たちの事を。
薬指の指輪に頬を添える。
頬に一筋、暖かい水玉がつたう。
「…ありがとう」
誰にも聞こえないような小さな声でワスレナグサの花園の中、そう呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・奏
ダークセイヴァーでの戦争と言ったら黙っていられません。お父さんとお母さんが出会い、私が生まれ、今は婚約者となった瞬兄さんと出会った私たち家族の始まりの土地。少しでも、前に進めたら。
回廊に踏み込んだ途端、何かが抜けたような気がします。私は何故ここにいるのだろう?そもそもどうしてここにきたのだろう?
忘れたのは私が私たるルーツ。両親の駆け落ちの愛の結晶として生まれ、お父さんが命を落として私を守ってくれた後、兄さんと出会い、母さんと兄さんと3人で戦い続け、父さんと再会できた。
無意識に呼び出したもふもふなお友達の感触にハッとする。ああ、私にもいつもそばにいた大事な温もり・・家族がいた。思い出したよ。
●彼女の|家族《ルーツ》
ワスレナグサの散る回廊。
香ることのないワスレナグサの香を振り撒いて人を待つのは花の本質か。
それとも悪意ある常闇の世界の罠か。
「あれ、今何か……」
真宮・奏(絢爛の星・f03210)が回廊に足を踏み入れた瞬間、“何か”が、大切な何かが抜け落ちたような、そんな感覚に包まれる。
私は何故ここにいるのだろう?
気がつけばそこはワスレナグサが散る回廊であった。
どうやってここにきたのかも忘却の彼方だ。
そもそもどうしてここにきたのだろう?
彼女はダークセイヴァーでの戦争の事、そもそも猟兵であったことさえも回廊の持つ魔力に奪われてしまった。
思わず、しかしゆっくりと彼女は膝を折ってその場に座り込む。
ワスレナグサがその手に触れる。
「これは…ワスレナグサね。こんなに沢山…」
ぼんやりとした思考の中で、彼女はワスレナグサをじっと見つめる。
明らかに人の手で散らされたものだ。
刃物で切り裂かれたもの、何度も茎を折り曲げられたもの、花びらだけ散らされたもの、様々な方法で手折られている。
そんなワスレナグサが床を覆いつくさんばかりに散らされている。
それにしても静かなものだ。
回廊であるが故に誰が通りがかってもおかしくはないというのに。
そんな静寂を切り裂いたのは柔らかな鳴き声だった。
「にゃ〜ん」
いつの間にか、奏の周りをふわふわでモフモフな猫たちが取り囲んでいた。
「あら、もふもふさん達…」
もふもふには目がない奏。周りに沢山のもふもふ猫ちゃんが現れ、ワスレナグサから意識が逸れる。
一匹の猫は彼女に擦り寄るとその膝にのせろと言わんばかりに前足でちょんちょんと彼女の膝をつついた。
「膝に乗りたいのね?」
彼女はその猫を抱き上げるとゆっくりと膝の上に下ろした。
暖かい。生き物の暖かさだ。
その暖かさに、彼女はハッとする。
「ああ、私にもいつもそばにいた大事な温もり…家族がいた」
彼女が忘れてしまった、彼女たるルーツ。
奏は父親と母親の駆け落ちの愛の結晶。
母親譲りの豪快さと父親譲りの好奇心を持って彼女は生まれた。
五歳の時に父がヴァンパイアの操る魔獣から命を賭して彼女と母を守り亡くなった。
その後、|兄さん《瞬》と出会い、母さんと兄さんと3人で戦い続けた。
その結果、十三年という長い道のりを経て魂人となった父と再会できた。
ダークセイヴァーは彼女の故郷だ。
全ての始まりの場所。
奏の父と母が出会った場所。
奏が生まれた場所。
婚約者となるほど大切な瞬兄さんと出会った場所。
父親と再会した場所。
彼女の家族の、“真宮家”の始まりの場所。
だから、戦争といったら黙っていられなかった。
少しでも、前に進めたら。
その思いでここへ来たのだった。
「そう、私には家族がいたのよ…!」
この回廊に踏み入れた瞬間、彼女が失った最も大切なものは彼女のルーツでもある“家族の記憶”だった。
自分が猟兵であること、このダークセイヴァーでの戦争で戦うためにここへ来た事。
全て、全て思い出した。
「もふもふさん達は、記憶を取り戻すのを手伝ってくれたのですね」
そう言って彼女は、膝に乗る猫の頭を優しく撫でる。
猫は首を傾げ、しかし彼女の元気が戻った様子に、にゃあと嬉しそうな鳴き声を上げた。
もう忘れない。
お父さん、お母さん…そして愛しい瞬の事を。
彼女は一度だけ猫に顔をうずめもふもふを堪能したあと、膝から抱き下ろし立ち上がった。
戦争はまだ始まったばかりだ。
だからこそ、奏は行かなくてはならない。
全ての始まりの場所を守るために彼女は立ち上がり、ワスレナグサの回廊を後にした。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
「えっと、私は……」
大切な記憶を奪われたせいで猟兵であることも|アリス・セカンドカラーである《大切な『あの子』をエミュっている》ことも忘れる。
「ここは?」
周囲を見回せば散らばる勿忘草の残骸。
「気味が悪いわね……」
その場を離れようと早足であるき出す。
『“ ”』
「え?」
|自分の《セカンドカラーになる前の本来の》名を呼ぶ誰かの声。足は止めずにキョロキョロと周囲を見渡す。
『“ ”』
「また聞こえた」
だが、その誰かは見当たらない。
『“ ”』
「私を呼ぶあなたはだぁれ?」
姿の見えない誰かに問いかける。
『私はアリス、アリス・ロックハーツ』
「アリスちゃん?アリス、アリス、ああアリス!」
大切な大切な|『あの子』《アリス・ロックハーツ》(装備アイテム参照)を思い出す。猟兵に目覚めた日、この手で討った|吸収姫《オブリビオン》。異母姉にして|親友《恋人》だった、今は『ふたりでひとり』の『あの子』のことを、セカンドカラーになった『あの日』のことを思い出した。
●『ふたりでひとり』
勿忘草のその香は、存在しないその香は、あらゆる記憶を奪ってゆく。
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)は気がついたら“そこ”に立っていた。勿忘草の散るその回廊に。
「えっと、私は……」
何か大事なことを忘れている気がする。
頭の中がぼんやりと濁っているような気分だ。
「私は…誰、だっけ」
アリスは自信が猟兵であることも、|アリス・セカンドカラーである《大切な『あの子』をエミュっている》事も──自身の根幹が回廊の持つ魔力によって奪われてしまった。
「ここは?」
混乱と忘却でうまく回らない頭であたりを見渡せば、そこには地面を覆い隠すように勿忘草の亡骸が散乱している。
明らかに人の手で手折られた勿忘草。明らかに人の手で切り裂かれた花びらや茎。
悪意をもって、何度も、何度も、入念に殺されている。
「気味が悪いわね……」
その光景から目を逸らし、アリスは呟く。
こんな不気味な勿忘草の墓場なんて一刻も早く立ち去りたい。
自分は何者か、なんて今はどうでもいい。ここから去った後に考えればいいことだ。
その場を立ち去ろうと、足元の勿忘草を踏みしめ早足でこの死んだ花園を抜けようとした──その時だった。
『“ ”』
「え?」
思わずその声がした方向を振り返る。
しかし、そこには誰もいない。
だが、確かに“自分の名前”を呼ぶ声がした。
回廊を抜けようとほとんど駆けるように歩き続ける。
声の主を探そうとキョロキョロとあたりを見回すが、そこにあるのは勿忘草の死骸ばかり。
『“ ”』
「また聞こえた」
声のした方を再び振り返るもやはりそこには誰もいない。
姿の見えない誰かが自分の名前を呼ぶ。
もしかしたら回廊の奥に、この先にいるのだろうか。
なぜ、自分の名前を呼んでいるのだろうか。
“セカンドカラー”になる前の、本来の自分の名前を。
「…セカンドカラー?」
妙に口馴染みのいい言葉だ。
勿忘草の香りで濁った脳の中で“セカンドカラー”という言葉をきっかけに何かを思い出そうとしている。
『“ ”』
「私を呼ぶあなたはだぁれ?」
アリスはついに足を止め、声の響く方へと呼びかけた。
“あなたはだぁれ?”
その声が回廊の中でこだまする。
こだまする声は徐々に小さくなり、しんとした空気が回廊の中を包んだ。
すぅ、と誰かが息を吸う音が聞こえたような気がした。
『私はアリス、アリス・ロックハーツ』
彼女はこだまに返答するように、凛とした声でそう名乗った。
「アリスちゃん?アリス、アリス、ああアリス!」
ぼんやりとしていた脳が次第に覚めていく。
忘れてしまっていた大切な大切な『あの子』──自らの魂を侵蝕する精神寄生体であり、ふたりでひとりの存在だったアリス・ロックハーツを思い出す。
彼女の中で一気に記憶がフラッシュバックする。
それは彼女が猟兵に目覚めた日の記憶。
あの日、この手で討った|吸収姫《オブリビオン》“アリス・ロックハーツ”。
異母姉にして|親友《恋人》だった“アリス・ロックハーツ”。
何よりも、今は『ふたりでひとり』の『|あの子《アリス・ロックハーツ》』のことを、アリス・“セカンドカラー”になった『あの日』のことを思い出した。
「ずっと私の|裡《うち》で呼びかけてくれていたのね」
|裡《ロックハーツ》と|肉体《セカンドカラー》で繋がる固い絆の赤い糸。
それこそが、きっと勿忘草のその香に、花園の死骸の回廊の魔力に奪われた記憶とアリスを繋ぎ止めてくれたのだろう。
胸の中が熱くなる。その|感情《熱さ》は|彼女《ロックハーツ》への愛だった。
「もうこんな気味の悪い回廊に奪わせたりなんてしないわ。」
結界術を幾重にも重ねて多重詠唱を行う。
手折られ、切られ、千切られて、とっくに生命の無かったはずの勿忘草がざわめきだす。
回廊内の領域を、魔力を、全て我がものとして吸収していく。
勿忘草はみるみるうちにしわがれ、色褪せ、そしてカラカラになってもなお吸い尽くされてその存在が消滅していく。
時間として、数秒も立たないうちに勿忘草の回廊から勿忘草は一本たりとも無くなり、がらんとした回廊だけが残った。
「ふう、気味が悪かったけど魔力は美味しかったわよ」
そうよね?
そう『|あの子《アリス・ロックハーツ》』に問いかける。
返事は返ってこないが、きっと満足しているに違いない。
そうして彼女は勿忘草の回廊だったそこから悠々と歩き去った。
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忘れない。忘れない。あなたを忘れない。
まだらの薔薇にリボンをかけて。
いずれこの身が朽ちたとて。
いずれは無に帰るとしても。
リボンで飾った一本の薔薇を貴方に捧げましょう。
最後にその香を嗅ぎましょう。誰も知らないその香を。
その幸せな思い出も。暖かな微笑みも。
どうせいつかは忘れ去られる虚無なのだとしても。
歴史に埋もれる塵でしかないとしても。
骸の海に流れ着くとしても。
決して貴方を忘れない。
手放さない。手放さない。
心があるのだから。それが大切な思い出なのだから。
大成功
🔵🔵🔵