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こんにゃくはもう嫌だ

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●ご乱心
 エンパイアの内陸地。
 周囲を山に囲まれた谷合の小藩を治める上和泉(かみいずみ)家は、最近、家督が譲られ世代交代があったばかりである。
 閑話休題。
「はぁ……飽きた」
 城の広間に、歳若い殿が盛大な溜息と共にそんな愚痴を零していた。
「斯様な食事には、もう飽きたのだ」
 殿は飽きたと言うが、現状、この城に於いては豪華な食事が出ている。
 何しろ殿だ。
 だが、お気に召さないらしい。
 それには一応、理由があった。
「昨日も一昨日も一昨昨日も! そして今日も! また『こんにゃく』ではないか!」
 そう、同じ食事が続いていたのだ。
「しかもだぞ?」
 やおら立ち上がった殿が、スラリと刀を抜き放ち――。
「ふっ!」
 呼気一閃。振り下ろした刃が、こんにゃくにぽよんと弾かれた。
「どゆこと? なあ、何でこれ包丁で切れるのに刀で斬れねえの? 何で俺、刀で斬れないもん食わされてんの?」
 殿、口調、口調。
「とにかくだ。こんにゃくはもう嫌だ。珍味を持て!」
 こんにゃくも珍味だよ!
 ――と言える家臣がいる筈もない。
 身分の違いと言うのもそうだが、この殿様、剣の腕が立つのだ。城内で彼に勝てる者と言えば、家督を譲って隠居した先代と指南役くらいだろう。
 かくして、城は一夜にして大騒ぎとなった。

●悪魔的な組み合わせ
「とまあ、そんな事になっている城が、サムライエンパイアにあるんだけどね?」
 グリモアベースに何故かコタツを広げてぬくぬくしながら、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は些か緩んだ声で猟兵達に事情を伝えていた。
「ま、上和泉の若殿様の我侭は一旦、置いておくとして。かの城で食事がこんにゃく続きになっているのには、実はオブリビオン絡みの理由があるんだ」
 物流、物資の運搬が、滞っているのだ。
 上和泉の殿様の治める小藩は、一切に海に面してない、内陸部にある。
 その立地ゆえ、物資は他藩からの陸路の運搬に頼っているモノも少なくない。故に、食材自体が減っている状況だ。
「何故か陸路を抑えて物流に影響を及ぼしているオブリビオンは2種類。
 まずは『蠱吸の怪』――人を魅了し抜け出せなくする、コタツの妖だよ」
 ああ、だからコタツに入っているのかコヤツ。
「その『蠱吸の怪』が率いていると言うか、なんか群れちゃってるのが『餓鬼』。飢えて死んだ人の成れの果てと言う事だけど――この組み合わせ、悪魔的だよ?」
 『蠱吸の怪』に魅了され、吸い寄せられて出られなくなったら最後だ。後は、餓鬼に積荷をムシャムシャされるのを見ているしかなくなる。

 ――やめろ、品を食うな、やめてくれ! あ、でもここ暖かいぃぃぃ――。

 と言う事態が頻繁に起きているのだ。
「まあ、そんな感じで、血生臭いとかそう言う事ではないけど、割と大惨事だから。先ずは物流を確保した上で、ついでに運び込まれた食材で、若殿様の我侭にも付き合ってきて上げて欲しい。手伝いなら、私もするから」
 そして、ルシルは話を続けた。
 予知で見た若殿様が珍味にご乱心した、本当の理由を――。

●理由
「随分と、無理難題をふっかけましたな?」
 自室で執務をしていた若殿は、足音もなく現れた老爺に驚きもせずに筆を走らせる。
「爺か……俺を叱りに来たか?」
「叱る? とんでもござらぬ。余命の少ない父上殿を案じたものと隠しきれておらぬ我侭なぞ、叱るものではござらぬ」
(「爺には敵わんな」)
 ずけずけと言ってくる老爺に、殿は胸中で苦笑し顔を上げる。
「何の事だ? 珍味を親父殿に食わせないわけじゃないが、俺がこんにゃくに飽きただけだぞ?」
 それでも嘯く若殿に、老爺は穏やかな視線を向けていた。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。
 今回は、サムライエンパイアのシナリオをお届けします。

 先ずは、食っても食っても飢えが止まぬ『餓鬼』の群れと、『蠱吸の怪』の悪魔的なタッグを撃破して、街道の安全を確保して下さい。
 若殿様の我侭に付き合うのは、3章になります。
 今回は3章のみ、ご要望あればルシルも顔を出します。(特になければ空気です)
 細かい補足は、章突入時に入れていきます。
 いつもの事ですが、皆様のプレイング次第で、ハートフル系にもカオスにもなるでしょう。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『餓鬼』

POW   :    共喰い
戦闘中に食べた【弱った仲間の身体の一部】の量と質に応じて【自身の傷が癒え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飢餓の極地
【究極の飢餓状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    満たされぬ満腹感
予め【腹を空かせておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●書き忘れてました(ごめん)
 エンパイアに転移した猟兵達。
「ちょいとお待ちを。この先には行かねえ方が良いですぜ!」
 化生に抑えられた街道へ進もうとすると、地元の商人らしき者が声をかけてきた。
「この先にゃ小鬼と炬燵の化け物が――え? それを何とかして下さるんですかい?
 そいつぁ助かります。この道の先にある小藩はこんにゃくが特産でしてねぇ。そこに行けないもんだから、最近こんにゃくの仕入れが出来なくて困ってたんでさぁ」
 成程。
 件の若殿様がこんにゃくに飽きた理由は、そんな所にもあるのかもしれない。
 思わぬ所で得た情報を頭の片隅に留めつつ、猟兵達は餓鬼が群がる地へ向かう――。
マルコ・ガブリエル
【心情】
食とは…皆が生きる上でのエネルギーを最大限に摂取できるもの…

こんにゃくも美味しいですわ!
とっても美味しい食材ですわ!!
ですが…この世界の方々にもっと多くの食材で食べることの感動を知っていただきたい…!!

初めての地ですが、皆様の食の為に尽力をつくしますわ〜!

【行動】
アイテム『わいわい焼肉セット』を蠱吸の怪のコタツ上に素早く設置
餓鬼達が焼肉セットに目を向けている隙に自らもさりげなく輪の中に入り肉を摂取
ユーベルコード『真の姿』を発動

周りに群がった餓鬼達を一掃していく

※アドリブ大歓迎です



●焼肉が始まった
「ここがサムライエンパイアですか……」
 マルコ・ガブリエル(オラトリオの聖者・f09505)が初めて見たその地の光景は、まだ春が遠く冬の寂しさが残るものだった。
 まだ緑の少ない周囲に視線を巡らせると、食べ物を求めて彷徨う餓鬼の群れがいる。
「蠱窋の怪は……あ、いましたわ!」
 マルコが餓鬼共に構わず向かって行ったのは、街道のど真ん中に鎮座しているコタツの化け物だった。
 近寄っても蠱窋の怪は動かない。寝てるのかな?
「では、上をお借りしますね?」
 動かないコタツに一言断りを入れると、マルコはこたつ板の上のみかんとみかん色のぴよズを脇に避け、スペースを確保した。
 何のって?
 わいわい焼肉セットを広げるスペースだよ。
「さぁ、パーティをはじめましょう! いただきます!」

 ――じゅぅ~。

 美味しいお肉が焼ける音が、エンパイアの冬空の下に響く。
『ウ……ウゥ……』
『ウマソウ……ニオイ……』
『コレ……ニク……!?』
 その音と、そしてお肉の焼ける香ばしい匂いは餓鬼達にも届いていた。
「美味しく焼けました」
 そしてマルコは、彼らの目の前で、程良く焼けたお肉にゴマ香る甘口の焼肉のタレをつけて、もぐもぐ。
 常に飢えを乾きに苦しむ餓鬼を相手に、焼肉。反応しない筈がない。
『ニク……ニクダ……』
『ニクゥゥゥゥゥ』
『クワセロォォォォ』
 ノロノロと、焼肉セットに吸い寄せられて行く餓鬼達。
「はい、どうぞ」
 そんな餓鬼達の先頭の1匹に、マルコは焼きたての肉の乗った皿を差し出した。
(「食とは……皆が生きる上でのエネルギーを、最大限に摂取できるものです。たとえオブリビオンと言えど、食べたいと言うのなら……せめて一食くらい」)
『ニ、ニクゥゥゥゥゥ!』
 箸も使わず手づかみで餓鬼は焼肉を貪る。
 餓鬼とは飢餓により死んで餓鬼道に堕ちた者が、オブリビオンとして復活した姿だと言われている。幾ら食べてもその飢えは満たされない――筈だった。
『ウ……ウマイ……』
 出来立ての湯気の立つ食事など、餓鬼にはいつ振りだったのだろう。
 ――この地に生きる皆の食の為に、力を尽くす。
 或いは、そんな決意を抱いていたマルコが『自ら作り差し出した食事』だったと言う事も、影響したのかもしれない。
 何にせよ、美味しい焼肉を食べた餓鬼は――そのまま消滅していった。
「少し予定と違いますが……これはこれで、きっと良い事です」
 それを見届けたマルコは、念のためにメイスを傍らに置いて、このまま餓鬼達の視線を浴びながら焼肉を続ける事にした。

 焼肉が続くのか。それともいつも通りの戦いも始まるのか。
 それは、後に続く猟兵達にかかっている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チトセ・シロガネ
こんにゃくはボクも斬れないからちょっと苦手ネ。
でも美味しい珍味を報酬に化け物退治はきっちり請け負うネ!

と、言いつつボクも焼肉パーティーに参加ネ。
満たされずに襲いかかるテーブルマナーがバッドなハングリーキッズを
【破邪光芒】【鎧無視攻撃】でバッサリして【恐怖を与える】ヨ。
ちゃんと座ってイートするヨ!
グッドテイストな食事で満たされないバッドボーイは地獄に送ってエンマ様に叱ってもらうネ。


柳生・友矩
こんにゃくだけの生活っていうのはかなり...辛い...?ですよね。でもこんにゃくにだっていっぱい魅力があるんです!
オブリビオンを倒して俺の家にあったこんにゃくレシピをお貸ししてさしあげましょうっ!!

【POW】ユーベルコードの「三学円之太刀」を使用。
敵に先を出させ、その動きに応じた型を打ち込みます。

こんにゃくは置いておいて...、人様の食べ物を勝手に食べるのは許せません!飢えが辛いのはあなた方が一番知っているでしょう?


織部・樒
少し前に知り合って意気投合したザフェルさん(f10233)と共に

焼肉に釣られているのですね…(長考)
食材も限られているでしょうし、焼肉にあぶれた餓鬼を
片付けた方がいいかもしれませんね

横笛(獣奏器)で召喚したライオンに騎乗、
焼肉につられてない餓鬼の前に出ます
ザフェルさんのユーベルコード(以後UC)に期待して
ライオンで威嚇し足止めします
可能であればライオンにお願いして餓鬼に組み付くことも考えつつ

もし彼のUCが当たらなかったら表情にはあまり出ませんが
かなりのがっかり感
上手く連携出来たらちょっと嬉しい感情が表情に出るかもしれません
では次、行きましょうか


※台詞・アドリブなど自由にお願いします


ザフェル・エジェデルハ
なんだか思ってた状況と違うみてぇだが…
ま、餓鬼供を一掃出来りゃいいんだから、やり方に拘る必要はねぇか。(無頓着)

樒(f10234)と連携して敵を倒す。
焼肉等の食事を食べても消滅しない、或いは食事に興味を示さない(いるのか?)、まっすぐこちらに向かってくる男気のある餓鬼に対してドラゴニック・エンドを放ち、仕留めていく。
初撃を外した場合は串刺し(技能)で対応。

もし餓鬼共が全部食事に満足して消えていくようなら…俺も食事に混ぜてもらうか。腹が減っては戦は出来ねぇってこの世界じゃ言うんだろ?今回は戦ってねぇが、次に備えてメシだ!!
(アドリブ、弄り、OKです)


大神・零児
あー、焼き肉パーティーはじまってらぁ

俺も混ざっていいか?
と食材持ち込み、焼き肉の輪に入る

みんなと焼き肉を楽しむが、ここから「だまし討ち」

自分は焼き肉楽しんでるだけと見せかけながら、餓鬼共が肉食らってる間にUCで狼型の炎(ゴーストウルフ)を見えない位置に召喚して、肉に夢中でまわりが見えなくなってる餓鬼に狙いを定めて、「第六感」「野生の勘」を使いながら隙を「見切り」1体ずつ「目立たない」よう死角に回り込ませ、気づかれないよう「祈り」ながら「早業」で肉に夢中な餓鬼1体につき炎を1つピタッとくっつけてそっと攻撃、これを「2回攻撃」でレベル分×2の数を召喚し同数の敵を減らす

(アドリブ&共闘歓迎)



●道を整える(焼肉準備お疲れ様です)
「こんにゃくだけの生活ですか。それはかなり……辛い……? ですよね?」
「んー、まあそうネ。こんにゃくはボクも斬れないから、ちょっと苦手ネ」
 後ろから聞こえてきた柳生・友矩(夢見る小さな剣豪・f09712)の言葉に、チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)が曖昧に頷く。
「ですから、俺の家にあったこんにゃくレシピをお貸ししようと思ったんですよ。オブリビオンを倒して」
「ボクも美味しい珍味を報酬に、化け物退治を請け負う……つもりだったけどネ」
 そう。2人とも、化け物退治だと聞いていたのだ。
「あー、焼肉パーティーはじまってらぁ」
 だが、戦場だと思っていた場所では、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)の上げた声のそのままの状況になっていた。
「なんだか思ってた状況と違うみてぇだが……」
 2人のすぐ近くでは、ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)も、少々困惑気味に焦茶の髪を掻く。各地で慣らした隊商の護衛と似た仕事かと思っていた。
「成程。焼肉に釣られているのですね……」
 そんなザフェルを誘った織部・樒(九鼎大呂・f10234)は、始まっている焼肉に1つ頷いて、腕を組んでなにやら考え込み始めた。
(「食材は……多分、追加が来ますよね、これ」)
 他の猟兵達の動きから、樒はそう推測する。それでも、餓鬼に行き渡るだろうか?
「焼肉にあぶれた餓鬼を、片付けた方がいいかもしれませんね」
「そうだな。匂いに釣られてる連中ばかりじゃなさそうだ」
 長考を終えた樒の言葉に頷いて、ザフェルが左手を上げる。指した方向には、焼肉に気づかず何かを奪い合う餓鬼達がいる。
「……では、そちらはお任せします」
 2人とは反対の方向、右手の先の別の餓鬼へ友矩が向かっていく。
「なら、ボクは焼肉パーティーに参加ネ。テーブルマナーを、仕込んでくるヨ」
「俺もそっち混ざるかぁ」
 そしてチトセと零児は、コタツの方へと向かって行った。

「さて、こんにゃくは一旦置いておくとしましょう」
 餓鬼の方へと進みながら、友矩は刀の柄に手をかける。
「彼らにこんにゃくにも魅力があると言っても、無駄でしょうからね」
 スラリと境鳥正家を抜く友矩の鼻には、食卓に相応しくない匂いが届いていた。
 ――血の匂い。
 その匂いの元がなんであるかは、餓鬼の足元に散らばっている別の餓鬼のものだったであろう骨が物語っていた。
 そう言う餓鬼もいる――ただそれだけの事だ。
「人様の食べ物を勝手に食べるのは、許せません。まして、それを奪い合い仲間で喰い合うなど……飢えが辛いのは、あなた方が一番知っているでしょう?」
『ウ……ウゥ……タリ、ナイ!』
 朱の滴る爪を振り上げ、餓鬼が地を蹴る。
「来ますか……」
 対する友矩の構えは、三学円之太刀。
 三学とは戒・定・慧。
 鍛錬と、惑わぬ心、そして敵を観照し応じる智慧。
 即ち敵に先を出させ、それに応じた方を打ち込み、攻め詰める後の先の剣。
『オマエヲクワセロ!』
 餓鬼が腕を振り下ろした直後。
「っ!」
 それを上回る速さで友矩の境鳥正家が翻り、斬り飛ばされた餓鬼の腕が宙を舞う。
 一刀両段。
 間髪入れずに放った突きが、餓鬼の眉間を貫いた。

 ~♪ ~♪
 笛の音が響く。
 樒が吹く、横笛の奏でる獣を呼ぶ音。
 応えて現れたのは、3mを超える黄金の獅子。
『ナンダ?』
『クマカ?』
「威嚇を!」
 ――ガァァァァァッッ!
 背中に跳び乗った樒の笛の指示で、獅子がこちらに気づいた餓鬼達へ向けて、威嚇の咆哮を放つ。
『ケモノナラ、クッテヤルァァァァァ!』
 だが――餓鬼は怯まなかった。
 むしろ、飢餓の極地になってこちらに向かってくるではないか。
「ほう。男気のある奴らもいるじゃねえか」
 それを見たザフェルが、背中の槍を構え直す。
「仕方ないですね。私が引きつけます。トドメは、期待して良いですね?」
「おおよ。こう言う場面は慣れてる。任せろ」
 頼もしい笑みを浮かべたザフェルに樒は僅かに微笑み返し、獅子を背を撫でた。
「しばらく走り回って、餓鬼の気を引いてください」
 樒の願いに応えて、獅子が駆け出す。
『マテェェェェッ』
 そのスピードに、餓鬼の目が釘付けになった。
 獅子を追って走る餓鬼の集団が、一塊になる。
「ザフェルさん!」
「わかっている! 一網打尽だ!」
 獅子を追って一塊となった餓鬼の集団。そこに飛び込んだザフェルが、集団のど真ん中を目掛けてドラゴンランスを放つ。
 次の瞬間、槍が竜の顎へと変じる様に放たれた召喚ドラゴンの大口が、餓鬼達を纏めて噛み砕いた。
 1匹の餓鬼が顎を逃れるも、続く竜の爪牙に切り裂かれていた。
「連携、上手く行きましたね」
「だな。もっと多くても大丈夫だったが……」
 心なしか少し嬉しそうな表情を見せながら獅子から飛び降りる樒に、元に戻った槍を背負い直しながらザフェルが頷く。
「次は……いなさそうですね」
 2人が辺りを見回しても、襲ってくる餓鬼はもういないようだ。
「ま、餓鬼供を一掃出来りゃいいんだから、やり方に拘る必要はねぇな。それより、俺達もあっちに混ぜて貰ってメシ食っとくか。腹が減っては戦は出来ねぇって、この世界じゃ言うんだろ?」
「案外、頓着しないんですね、その辺り」
 割とあっさりと状況を受け入れたザフェルに、樒が意外さ半分、感心半分と言った様子でぽそりと告げた。

 一方その頃。
「ヘイ、ハングリーキッズ! テーブルマナーが、バッドだヨ!」
『ニク、ニク……』
『クイタイ……』
『ハラ……ヘッタ……』
「駄目ネ……話聞いちゃいないのもいるネ」
 始まった焼肉に殺到した餓鬼の群れの整備に、チトセが苦心していた。
 餓鬼達の中に、焦れている者が出始めているのが感じられる。焼肉セット1つでは、餓鬼の数に対してペースが追いつかなくなって来ていた。
「そう焦るなって。今焼いてるからよ」
『ハヤクシロ!』
『ニクガナクナル!』
 零児の前にいる餓鬼の感じている、肉がなくなるのでは、と言う焦りもある。
 このままでは、焼肉が餓鬼に行き渡る前に秩序がなくなりかねない。
(「ちょっとお灸をすえる必要があるネ」)
「順番ヨ。並ぶネ。それが出来ないなら――」
『ウルサイ!』
『オレサマ、ニク、マルカジリ!』
 ついに食って掛かってきた一部の餓鬼達。
「己が魂に宿る星光よ、一筋の希望となりて、悪意を断ち切れ――破邪光芒!」
 次の瞬間、2本の光刃が閃いた。
 チトセが振るった両腕にいつの間にか現れた光の刃がバッサリと、餓鬼の中で高まっていた空腹感を切り裂く。
「じっと待てないバッドボーイは、地獄に送ってエンマ様に叱ってもらうネ」
 そのまま、チトセが腕を広げて光刃を餓鬼の群れの後方に向ける。
「魔狼、降臨」
 その時には、既に零児が小さな声で告げて狼の炎を放っていた。
 炎の色は目立たぬように土色。
(「アレは駄目だな――周りが見えてねぇ」)
 胸中で呟いて、零児は炎を操り、己の第六感と野生の勘が『待てない奴だ』と告げる餓鬼の死角に差し向ける。
 ――そして、数体の餓鬼が突如色を変えた炎に包まれた。
 炎に気づいていなかった餓鬼には、地獄からの炎に焼かれたように見えただろう。
「そうそう。ステイだヨ、ハングリーキッズ。追加の肉は、もうすぐ来るからネ」
 敵意を潜めた餓鬼の群れに、チトセが刃を降ろして告げる。
 その言葉通り、追加の食材を持った猟兵達の姿が見えていた。

 1人の猟兵が拓いた焼肉で餓鬼を満たす道。
 他の猟兵達がそれに備え、整え、道が続こうとしている。
 つまり焼肉パーティは、まだこれからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧城・ちさ
追加のお肉を持っていったほうがよさそうですわね。できればお野菜も摂ってほしいですの
お肉はいっぱいありますし順番に食べて戴きたいですわね
なかなか食べられない餓鬼さんには取ってあげますの
暴れることがなくおとなしく解決に向かうならこのままお料理しててもいいですわね

戦闘になるならユーベルコードで迎え撃ちますわっ


ニコ・ベルクシュタイン
焼肉で餓鬼の対処をすると聞いて。
荒事抜きで解決出来るならば其れに越した事は無い、
俺もロース肉持参でやって来たぞ。
何故カルビでは無くロースか?
食べ放題に於いてロースはカルビより単価が高いので
元を取るのには打って付けなのだという。
(なお、今回の請求書はグリモアベース宛に送る予定だ)

火加減は大丈夫か?
俺には【精霊狂想曲】という力強い味方が居る
いざとなれば炎の精霊を喚んで炭に再び火をつけよう
此れは自然現象だ、いいね?(精霊に言い聞かせる)

予め腹を空かせてきた?其れは良い事だ
此れから食べる焼肉も一層美味に感じられるだろう
そういう事じゃない?食事の時は黙って食べなさい
親御さんから教わらなかったのか?


御剣・誉
硯(f09734)と一緒に

ん?今、肉が焼ける音がしなかったか!?

肉の焼ける匂いに炊き立てご飯の香り
最高じゃないかっ!
まさかこんなところで出会えるとはなー
しかも炬燵ときたもんだ
いやぁ、日本人の心ってものをよくわかってるよなぁ
ま、とりあえず―ー食おうぜ!

硯が用意した炊き立てご飯を見て「早く、早く」と
ニコニコ笑顔でご飯と焼き肉待機
焼けたお肉にたれを絡め、貰った炊き立てご飯の上にのせて
「いただきます!」
くー……美味いっ!最高っ!
飯がすすむぜー、やっぱり肉には白米、炊き立て最高っ
いい仕事してるぜ、硯っ!
あれ?オマエ食べてる?硯も食おうぜ?
餓鬼が食べたそうにしてれば気前よく分けてやり
食って一番大事だよなぁ


萩乃谷・硯
誉(f11407)とご一緒します

食は大切です。腹を満たし、心を満たして人は立ち上がるのですから
ですがバランスも大切です
焼肉ですか、では一緒に炊きたてごはんもどうですか?

炬燵(焼肉)に集まる皆さん(餓鬼含む)の元へ
美味しそうです、ですが――

取り出したるは【炊きたてごはん】
人の文明には驚かされるばかりですね
説明は要りません
炊飯器をパカッとしたら…ほかぁっ…
どうですか、立ち上る湯気が更に食欲をそそりませんか?
こちらをご覧ください、幸せそうな誉です

戦うのでしたら全力でお相手致しますが、
食の幸せはきっと万国共通
一緒に美味しくいただけたら嬉しいです(にこっ)

ありがとう誉
私も勿論、いただきます(手を合わせ)


榎・うさみっち
ニコ(f00324)に絡み倒すぜ!!!
ちっちゃくてコタツに良い感じに入れないからニコの膝に乗っかる!拒否権はない!
焼き肉はもちろん俺も食う!
フェアリーランドの壺の中に色んなもの入れておいたぜ!
焼肉のタレ!トング!おてふき!
さーて俺もロースを…あ、手が届かない
ニコ!それとって!!
うめぇうめぇ!おかわりー!
ニコの育てた肉も奪うぜ!
\ぴゃああああ/(ぶたれた時の鳴き声)
あらかた肉食ったらデザートにコタツの上のミカンも食うぜ!
え、お前も腹減った?よーし、うさみっち様がみかんを分けてやるぜ!
はいあーん…と言うと思ったかバカめ!
喰らえみかんの汁攻撃!

そして逃げ足をいかして逃げる
ニコの後ろあたりに



●猟兵達の宴
「成程、火力が欲しいところと。そう言うことならば任せてくれ」
 焼肉会場に合流したニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が、眼鏡をくいっと押し上げる。
「荒れ狂え精霊よ、汝らは今こそ解き放たれん」
 ニコの精霊狂想曲で喚ばれ、現れ出ずるは炎の精霊。
「炭火の炎を焼肉に適した感じで頼む。万遍なくよりも火力にムラが欲しい。早く焼ける場所と、焼けた肉を休ませる場所も作れるからな」
『……』
 物言いたげに沈黙する精霊の前に、ニコは腰を下ろし赤い瞳を向けて。
「焼肉は自然現象だ、いいね?」
『あ、はい』
 その眼力と有無を言わせぬ圧に、精霊は言いくるめ――言い聞かせられて、こくこくと頷き炎の力を解放した。
「お! 火が強くなった。これで焼肉出来るな!」
 赤々と燃え出した炎の焼肉を見ながら、ニコの背中に引っ付いていた榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)がもぞもぞと、ニコの膝の上移動した。
「うさみよ……そこだと少し動き難いのだが」
「コタツに良い感じに入れないからな! 拒否権はない!」
 少し困った風に見下ろすニコを、うさみっちがどやっと見上げる。
「……まあ、いい。焼肉を再開しよう。荒事抜きで解決出来るなら、其れに越した事は無いからな」
 色々諦めて、ニコが追加のロース肉を鉄板に置く。
「わたくしも追加のお肉を、いっぱい持ってきましたわ」
 霧城・ちさ(夢見るお嬢様・f05540)も、持参した様々な部位のお肉を所狭しと鉄板に広げていった。
 
 ――じゅぅ~。
 
 エンパイアの空の下、お肉の焼ける音が再び響く。
 さて。高貴な一族の末裔であるちさは、所謂、貴族のお嬢様である。用意してきたお肉は、特にそうと意識していなかったにせよ、お高い、いいお肉であった。
 そしてそのお財布の力たるや、お高いお肉に留まっていなかった。
「お肉だけではなくて、お野菜も摂って欲しいですの」
『ヤサイ……』
『クサ……イヤ……』
 ちさが鉄板の上に追加した野菜は、南瓜や茄子、キャベツ。いずれも、餓鬼達にとっては見覚えのないものばかりであった。
 さらにだ。
『キノコ……アキタ……』
『チガ……ナンダコレ』
 ちさが焼く野菜が立てる、甘く芳醇な香りが餓鬼達の興味と食欲をそそる。
「焼き上がりですわ。さあどうぞ」
『ウマイ……』
『アマイ……』
 ちさが差し出した野菜を、恐る恐ると言った様子で掴んで口に運んだ餓鬼達は、その食感と甘い味にやられて消えていった。

「お野菜もあるのですね。良い事です。バランスも大切ですから」
 そこに現れた萩乃谷・硯(心濯・f09734)は、微少を浮かべて抱えていた炊飯器を傍らに置いた。
「人の文明には驚かされるばかりですね」
 硯の指が、開閉ボタンをポチり。
「一緒に炊きたてごはんもどうですか?」
 パカッと開く炊飯器。
 湯気が――ほかぁっ……。
 電源どうなってるんだ――なんて、そんな事はどうでもいい。
 つやつやの、炊きたてごはんがそこにあった。
「早く、早く」
 隣に座った御剣・誉(異世界渡り・f11407)は、確保した焼肉片手に、ニコニコ笑顔でご飯を待っている。
「こちらをご覧ください、幸せそうな誉です」
「だって、肉の焼ける音と匂いに、炊き立てご飯の香り。最高じゃないかっ!
 緩んだ顔を硯に紹介された誉くんだが、緩みが戻らない。
「しかも炬燵ときたもんだ。いやぁ、日本人の心ってものをよくわかってるよなぁ」
 確かに、もう殆ど食卓である。
「ま、とりあえず――食おうぜ!」
 そして誉は、さっきからずっと視線を向けてくる餓鬼の1体に、ご飯に焼肉を添えて気前良く差し出した。
『イイ、ノカ』
「はい。一緒に美味しくいただけたら嬉しいです」
 差し出された皿を手に何故か戸惑う餓鬼に、硯も笑顔で勧める。
『コ、コレガ……コメ』
 繰り返しになるが、餓鬼とは飢餓により死んで餓鬼道に堕ちた者達の果てだと言う。もし生前の記憶があったとしても、その中に白いご飯はなかったかもしれない。
 餓鬼が震える手でご飯とお肉をかき込んで――誰も持つ者がいなくなった皿が、ポトリと落ちた。
「……やっぱ、食って一番大事だよなぁ」
「はい、大切です。腹を満たし、心を満たして人は立ち上がるのですから」
 しみじみと頷く硯と顔を見合わせ笑った誉の腹が、きゅるりと小さな音を鳴らす。
「じゃ、俺も。いただきます!」
 胃袋の欲求に従い、誉はお肉にタレをたっぷり絡めて、炊きたてごはんに乗せて――大きく口を開けて、ぱくん。もぐり、もぐもぐ。
「くー……美味いっ! 最高っ! 飯がすすむぜー!
 やっぱり肉には白米、炊き立て最高っ! いい仕事してるぜ、硯っ!」
 あっと言う間に、誉の茶碗が空になった。
「ありがとう誉。おかわりいります?」
「いるいる。でも、硯も食おうぜ? オマエまだ食べてないだろ?」
「私も勿論、いただきます」
 誉におかわりと、自分にもごはんをよそおうと、硯が再び炊飯器を開く。
 ほかぁっ。
 再び登った湯気に誘われて、皿を拾った別の餓鬼がふらふらと近寄ってきていた。

「さーて、俺も焼肉を……あ」
 一応ちょっと空気を読んで待ってたうさみっち。
 もういいだろうと、フェアリーランドの壺の中に入れておいた、タレやらトングやらを取り出し――悲しいかな、届かなかった。
 うさみっちの身長17cm。(飛べばいいんじゃないかな?)
「ニコ! 肉取って!」
 そんな事でめげるうさみっちではない。
「あ。その肉じゃない。あっちの肉がいい。ニコのより高級そうだしでかいぞ!」
「うさみよ。俺が何故、カルビでもなくロースしたと思う?」
 ぶーんと浮かび上がって、ああだこうだと注文をつけて絡むうさみっちを、ニコの手が膝の上に押し戻す。(飛べるじゃん)
「焼肉食べ放題に於いて、ロースはカルビより単価が高いのだ。元を取るには、ロースは打って付けなのだと言う事だ」
 決して、請求書を切るつもりだからではないのだ。
「成程。食べ放題か! つまり俺は自分で育てた肉も、ニコが育てた肉も全部食って良いって事だな! おかわり!」
 遠慮の欠片もないうさみっちを、ニコが容赦なくぺしんと叩き落とす。
 \ぴゃああああ/
 そんな鳴き声を上げるピンクの小さな生き物を、餓鬼達も不思議そうに眺めていた。

『ハラヘタ……ニク……ハヤク』
「腹を空かせてきた? 其れは良い事だ。此れから食べる焼肉も一層美味に感じられるだろう――何? そう言う事ではない? いいから、食事の時は黙って食べなさい」
 焼き上がりをそわそわ待つ餓鬼を、ニコが肉を焼きながら落ち着かせる。
「お肉もお野菜も、いっぱいありますから。前の方を齧らないの。焼けたら順番に持ってきますわね。ええ、そう。順番ですの。順番を守れた方からですわ」
 ちさは回転を早めるべく、焼き上がった肉と野菜を少し後ろまで配って回っていた。
 ついでに餓鬼の行列の再整理なんかもしている。さすが風紀委員さん。
『コメ……イイカ……』
「ん? 肉はまだ焼けてないぞ?」
『コメ……クレ』
「だってよ、硯」
 肉を返しながら、誉は硯の方を向く。
 硯も黙ってぱかっと炊飯器を開けて、ほかほかご飯を餓鬼に差し出した。
 猟兵達の働きで、餓鬼達が満たされていく。
 ん? うさみっち?
「え、お前も腹減った? よーし、うさみっち様がみかんを分けてやるぜ!」
 ちゃんとうさみっちも、分けようとして――。
(「あーん、と言うと思ったか! みかんの汁攻撃してニコの背中に隠れて、困らせてやるぜ!」)
 腹黒いなこのちっちゃいの。
「ん? こ、この!」
 だが、うさみっちが伸ばした短い手は何故か空を切り続けた。
 そうこうしている内に、餓鬼達の姿はなくなっていた。
「大きな戦闘にはならずに済みましたわね。全ての餓鬼さんを、とは行かなかったみたいですけれど」
 辺りを見回し、ちさがほっと息をつく。
「あいつら、満足してくれたんだよな?」
「ええ、きっと――」
 戦った後とは違う手応えを感じながら、誉と硯はごちそう様と手を合わせる。
「……中々忙しかったな。で、うさみよ。何をしているんだ?」
 後半は肉を育てる事に忙しかったニコは、ぶんぶん飛び回っているうさみっちに声をかける。
「みかんが逃げ回るんだよー!」
 そう。うさみっちが取ろうとしたコタツの上のみかんは、何故か勝手に動いていた。
 猟兵達よ。お忘れではないだろうか。
 君達が使っていたコタツは、ただのコタツではない。
 蠱窋の怪が、目覚めようとしていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『蠱窋の怪』

POW   :    北風とおふとん〜みかんをそえて〜
【寒波に乗せたおみかん 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【あったかお布団】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    100ぴき乗ってもだいじょーぶ!
戦闘力のない【みかん色のふわもこひよズ 】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【呼び出したひよの数】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    ともだちふえたよ
【なごみ 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【亜空間の穴】から、高命中力の【引きずり込む黒い腕】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フィン・クランケットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●目覚めた怪
 コタツ板の上のみかんが、キラリと輝く。
 みかん色のひよこ達が、ぴよぴよと騒ぎ出す。
 そして、ぬくぬくおふとんがはためいて。
 中から黒い何かがひょこりと顔――多分顔だろう――を出した。大きくつぶらな瞳が爛々と輝いている。
 あれぞ蠱窋の怪。
 人を魅了し抜け出せなくする妖である。
 極悪非道のモノではないが――覗けば最後との噂もある。
 餓鬼の様には行かない?
 そうかもしれない。だが、そうとも限らないかもしれない。
 いずれにせよ、猟兵達の役目は、この街道を蠱窋の怪から取り戻すことだ。
 猟兵達の次の戦いが始まろうとしている。
霧城・ちさ
ひよこさんも中身も気になってしまいますわね
でも敵の攻撃を受けるわけにはいきませんわっ
攻撃はやはり中身に当てないと意味がないかもしれませんわねっ
うまく当てれば中身がみれるかもしれませんわね。全力で攻撃したり二回攻撃で狙っていきますの
他の猟兵さん含めてダメージを受けて不利になりそうであれば回復しますわね


ニコ・ベルクシュタイン
【うさみっち(f01902)と共闘】
そういえば忘れていた、此のこたつもまた倒すべき敵であったな。
温まっている場合では無かった、危ない危ない。
行くぞうさみよ、彼奴を退治するぞ。

飛んでくるおみかんの対処は基本うさみに一任
…しくじるなよ(期待しているぞ)
万が一あったかお布団が飛んできたら
「スライディング」で下をくぐって回避を狙いつつ本体に近付き
天板目がけて【時計の針は無慈悲に穿つ】を叩き込みたい
瓦割りのようには流石に行かないだろうが
少なからずダメージを与えられることだろう

みかんやらお布団やらがそれでも飛んでくる時は
うさみの首根っこを引っ掴んで盾にする
何?お前も俺を盾にするつもりか?ふざけろ!


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と共闘】
こ、こいつオブリビオンだったのかー!!←人の話を聞いてない
人の金で焼肉食って帰れると思ったのにぃ!

みかんは食べたいけどぶつけられるのはゴメンだぜ!
いでよ【こんとんのやきゅみっちファイターズ】!
野球チームをイメージした俺の分身なのだ、可愛いだろ~
今日がデビュー戦だー!飛んできたみかんをバットで打つべし打つべし!
俺自身もちっちゃい身体と逃げ足をいかして
みかんを避けまくってやるぜ!
いざとなったらニコを盾にしてでも俺は助かる!!
ぴゃああああ いたいけなフェアリーを盾にするなんて
この鬼!キチクシュタイン!!

当てられたら安らかに布団でスヤァする

※アドリブ・やられ役など大歓迎


織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と共に
可能なら他の方とも出来る限り連携取ります

相変わらず悩ましい形状ですね…(特にひよこを見つつ)

下手に行動を起こされる前に七星七縛符にて動きを封じます
どれか一つだけなら「ともだちふえたよ」に狙いを定めて
可能なら技能:楽器演奏で和む曲を吹いて隙を作るなど試みます

ザフェルさんが炬燵に引き込まれそうなら慌てて身体を掴み
引っ張り出すよう努めます
炬燵なら私の家にもありますから! などと説得しつつ

また彼がユーベルコード名を叫びつつ攻撃した場合は
何だかよく叫んでますね、五月蠅…いえ、きっと出身地の風習とか
そういうものなのでしょう、程度に考えて空気を読んで言葉を慎みます


ザフェル・エジェデルハ
「…この前、初めてコタツを知ったが、アレは人を堕落させる本当に恐ろしい魔物だぜ…」

樒(f10234)と連携して敵を攻撃する(他参加者との共闘も可)
串刺しで敵の動きを封じ、グラウンドクラッシャーでダメージを与える。樒が敵ユーベルコードを封じるのに成功した場合、その隙は逃さずに畳み掛けて攻撃する。木っ端微塵にしてやるぜ!!

敵の攻撃を受けた場合、あったかお布団等から抵抗するのはとても難しいと思われるので、樒に引きずり出してもらいたい。「くそっ…魔力がハンパねぇ…抗えねぇ!!」(ぬくぬく)

(アドリブ、弄り等OKです)


大神・零児
蠱窋の怪が動きだす前に「早業」で焼肉に使った道具をかたつけに

片付けながら「だまし討ち」でUC発動

「早業」による「先制攻撃」で狼型の炎(ゴーストウルフ)を召喚し、「目立たない」よう死角にバラバラに移動させ、「第六感」「野生の勘」を使いながら隙を「見切り」、死角から「力溜め」からの「残像」を伴った「ダッシュ」による「フェイント」と最速接近により敵の炬燵の中に突撃させる

最初の1体目は「殺気」で「恐怖を与える」事により敵の動きを鈍らせそのすきに突撃して「マヒ攻撃」

敵がマヒしてる間に次々に突撃させて、炬燵の中で全部合体させ巨大化強化し赤と青の炎の体の巨大狼(フェンリル)にして内側から「2回攻撃」


萩乃谷・硯
誉(f11407)と共に

ご満足いただけて良かった
蠱窋の怪にも感謝を
美味しい楽しい食事の時間、ありがとうございました
でも誉、終わりではないですよ。デザートがまだです

持参した生クリームやチョコソース、フルーツなどで
即席デザートを作ろうかと
え、誉もアイスを? それはいいですね、炬燵にアイスは鉄板です!
少し深めの大皿に積み上げる即席パフェ
今アイスを溶かすわけにはいきませんので、
蠱窋の怪は、作る間少しだけ離れていてくださいね
大丈夫、直ぐ準備できますから(にこっ)

蠱窋の怪、お待たせしました
いつも温かく見守っていただいてありがとうございます
今日は一緒にどうですか?
炬燵とアイスの相性は抜群ですよ(にこっ)


御剣・誉
硯(f09734)と

食った食った
はぁー満足
肉と米はやっぱり最高だな、硯!
腹いっぱいで動きたくないぜー

もそもそとコタツに入ってアイスでも食うかと
こっそり持ってたアイスを出す

こたつといえばアイスだろ!(じゃーん!
え?硯もデザート持ってる?他にもある?
そういうのは早く言えよ!
何持ってきた?焦らさないで見せろって!
おー、いいな!オレのアイスも分けてやるよ、皆で食おうぜ!
ほら、好きなのとれよ!

デザートを器に盛りつけ即席パフェを作って食べる
はー、なんでコタツで食うアイスって美味いんだろうな…不思議だぜ
ん?コタツも食いたい?
ほら、食えよ…(アイス絡めたみかんをコタツに食べさせ
…どうだ?美味いだろ?(※イケボ



●動き出す状況
 動き出した『蠱窋の怪』から、一斉に距離を取る大半の猟兵達。
「そう言えば忘れていた、此のこたつもまた倒すべき敵であったな」
「こ、こいつオブリビオンだったのかー!!」
 落ち着いて払った様子で退がるニコ・ベルクシュタインの背中に、めっちゃ驚いて目を丸くした榎・うさみっちがぶーんと飛んで回り込む。
「他人の、ニコの金で焼肉食って帰れると思ったのにぃ!」
「うむ。焼肉して温まっている場合では無かった、危ない危ない。しかしうさみよ。人の話はちゃんと聞くものだぞ? あと俺にたかるな」
 漫才みたいなやり取りをしながらも、ニコとうさみっちの目線は油断なく『蠱窋の怪』に向けられていた。
「ザフェルさん。もうアレに取り込まれないで下さいよ?」
 織部・樒は、以前、別の『蠱窋の怪』と対峙した事があった。
 あの時は、大変だった。色々と。
「……善処はする。だが、アレは人を堕落させる本当に恐ろしい魔物だぜ……」
 ザフェル・エジェデルハの脳裏に蘇る、先日のコタツ初体験。
 抵抗が難しいと知っているからこそ、ザフェルは迂闊に動けない。
「確かに。相変わらず悩ましい形状ですね……」
 隣で頷く樒も、すぐに動けずにいた。
 視線が天板の上でぴよぴよ言ってるひよこに釘付けだったからである。
「気になりますわよね、ひよこさん」
 なお、霧城・ちさも、もふいぴよぴよ、気になっていた。
「コタツの中身も気になってしまいますわ……あ、あの。足に当たらないんですの?」
 中身も気になるちさが、『蠱窋の怪』の方に声をかける。
 何故なら、そこにはまだ猟兵がいるからである。

●君ら自由だね
「食った食った。はぁー満足。肉と米はやっぱり最高だな、硯!」
「ふふ。ご満足いただけて良かった」
 御剣・誉と萩乃谷・硯はずっとコタツに足突っ込んだまま、食後の余韻にどっぷり浸っていたのだった。動けないって言うか、動く気ある?
『……?』
「腹いっぱいで動きたくないんだよー」
 え、何でまだいるの?
 みたいに、コタツの中から黒い頭をにゅっと伸ばして乗り出して来た『蠱窋の怪』の視線に、誉は笑って返す。
「美味しい楽しい食事の時間、ありがとうございました」
 硯が頭を下げると、『蠱窋の怪』もふにゃりと頭を動かす。
「でも誉、終わりではないですよ。デザートがまだです」
「え? 硯もデザート持ってる? 実はオレもあるんだ」
 何をするのか気になるのか、『蠱窋の怪』は視線を2人に向け続けている。
(「隙がある……のか? 或いはそう見せて、油断を誘っているのか……?」)
 魔炎幽狼の狼の炎をバラバラに展開しながら、大神・零児は攻めあぐねていた。
 隙を伺う零児の目には、今の『蠱窋の怪』の怪は隙だらけ――の様に見える。
 だが、あまりにも隙があり過ぎる。殺気にも動じない。
(「仕掛けてみるか」)
 狼の魔炎をけしかけようとした瞬間、『蠱窋の怪』がぐりんっと首だか身体だかを180度捩じって、零児に視線を向けた。
 零児の頭の中で、野生の勘が告げて来る。今は狩り時ではないと。
「オレのデザートは、これ。こたつといえばアイスだろ!」
「アイスですか。それはいいですね」
 そんな周りの空気を知ってか知らずか、まだコタツに入ったままデザートの見せ合いをはじめている誉と硯は、とても『なごんで』いた。
「だろ? 硯は何持ってきた?」
「私は、生クリームやチョコソースとフルーツを……」
 2人分のデザートを眺めていた硯が、閃いて少し深めの大皿を取り出した。
「全部合わせて即席パフェに致しましょう!」
「おー、いいな! オレのアイスもどんどん使ってくれ。皆で食おうぜ!」
「完成までアイスを溶かすわけにはいきませんので、作る間、少しだけ離れていてくださいね?」
 誉の言葉に頷きながら、硯が蠱窋の怪にそう呼びかけた次の瞬間。
「お?」
「あら?」
 コタツの中からにゅっと伸びた黒い腕が、2人をデザートごといつの間にか開いていた亜空間の穴の中に引きずり込んだ。

 く、食われたー!?

●お布団
「くっ……さっさと動きを封じておくべきでした」
 悔やむ樒だが、誰も樒を責められない。そもそも、コタツから出ない者がいるなんて、誰が予想できると言うのだ。
「樒、封じられるか?」
「やりますよ」
 ザフェルの問いに頷いて、樒は橙金の双眸でコタツから伸びる黒い腕を見据える。
(「先ずはあの腕を引っ込ませない事ですね」)
 そう考えた樒は笛を構え、そっと息を吹く。奏でられたなごみの音色に、コタツから伸びる黒い腕がゆらゆら揺れる。
(「そこです」)
 片手だけ笛から離して、樒が護符を揃えから纏めて引き抜き、放つ。
 七星の描かれた符が黒い腕に纏わりついて、亜空間の中へと封じ込めていった。
「良くやってくれた、樒。ここは任せろ!」
 敵のユーベルコードのひとつが封じられた。この隙を逃す手はない。
「グラウンド――」
 気勢を上げて斧を振りかぶったザフェルの顔に、冷たい北風が吹きつける。間髪いれずに、その額にぽこんとおみかんが当たった。
「あ」
 ザフェルの目の前で、しゅばっと素早く放たれるあったかお布団。
「ザフェルさんっ!?」
「くそっ……魔力がハンパねぇ……抗えねぇ!!」
 お布団に優しく包み込まれ、ザフェルがぬくぬくと倒れこむ。この攻撃の前には、大の大人だとかも関係ない。
「またですか! 耐えてください! 炬燵なら私の家にもありますから!」
 樒が引っ張り出そうとするが、ザフェルはぬくぬくしている。

●初陣
「行くぞうさみよ、彼奴を退治する。……しくじるなよ」
「仕方ねーな! いでよ、こんとんのやきゅみっちファイターズ!」
 言葉の間に込められたニコの期待を感じ取り、うさみっちはニヤリと笑みを浮かべて両手を広げる。
 そして次の瞬間、うさみっちが増えた。
「野球チームをイメージした俺の分身なのだ、可愛いだろ~」
 何故か野球のユニフォームの様なものを着ているのかはこの一言で解決したが、可愛いかと言われると、釘バットとか鉄球が人を選ぶ気がしないでもない。
『?』
 『蠱窋の怪』も首を傾げている。
「いくぜ、やきゅみっち! 今日がデビュー戦だー!」
 そんな『蠱窋の怪』に、やきゅみっちが容赦なく群がり、あらゆる方向から釘バットやら鉄球を叩き込んでいく。スポーツマンシップなんか知ったこっちゃない戦法。
 なんせ今日がデビュー戦。やきゅみっちは初勝利に飢えている!
「びくともしていませんわね。わたくしも手を貸しますわ!」
 ある意味袋叩きにも動かない『蠱窋の怪』に、ちさが魔法のピコピコハンマーをピコンッと天板の上に叩き降ろした。
 それでも『蠱窋の怪』は動かない。
「……あまり効いてない様ですね……と言うか、嫌な予感がしますの」
 ちさが一旦離れながら告げた一言は、うさみっち監督とまだぬくぬくしているザフェル以外は誰もが感じていた。
 そして。
『!』
 ついに我慢の限界が来たか、『蠱窋の怪』が突如、北風を巻き起こした。
 ――ぴゃああああ!
 その寒さと勢いに、吹き散らされるやきゅみっち。
「あ、おい! みかんが飛んで来てるぞ! バットで打つべし打つべしだ!」
 うさみっち監督の号令に、やきゅみっち達がバットを構え直す。
 カーン! カーンッ!
「ふはははっ! 1人や2人空振りしても、これだけいれば誰かが打てる!」
 スカカカカカッッ!
「全員空振ってんじゃねぇぇぇぇぇ!」
 なんとも惜しいミスで打ち返し逃したおみかんは、北風に乗ってうさみっち監督の下へ真っ直ぐ向かっていった。
「くそぅ。みかんは食べたいけどぶつけられるのはゴメンだぜ!」
 ぶーんっと飛び出すうさみっち。
 ちっちゃい身体と逃げ足を活かして、いざとなったらニコを盾にしてでも――。
 がしっ。
 回り込む前に、ニコに掴まれました。
「へ? あ……さてはいたいけなフェアリーを盾にする気だな!」
「お前も俺を盾にするつもりだろう? ふざけろ!」
 言い合う2人に迫るおみかん。
 だからニコは、うさみっちを振りかぶって――ぶん投げた。
「この鬼! キチクシュタイィィィィン!! ――あ」
 おみかんとぶつかったうさみっちが、やきゅみっちの群れの中にぽてりと落ちる。そこにしゅばっ飛んでくる、あったかお布団。
 ――スヤァ。
 うさみっち監督率いるやきゅみっちファイターズの初戦は、寝落ちに終わった。

●奮戦
 だが、その戦いは無駄ではなかった。
「攻撃はやはり中身に当てないと意味がないかもしれませんわね」
「そうだな。うさみよ――お前の犠牲は無駄にはしない」
 ちさの一言に頷きながら、ニコが黒手袋をぐっと嵌め直す。
『!』
 みっち達の眠る布団を乗り越え迫るニコに、『蠱窋の怪』が北風を放――放たれようとした北風が、ピタリと止んだ。
「ちっ。やっとマヒが効いたか」
 零児がマヒを乗せて放っていた魔炎幽狼の炎。
 うさみっちがわちゃわちゃやっている間に、零児はバラバラに操った炎の何体かを目立たない様にコタツの中に突撃させていたのだ。
「……余り長くは持ちそうにないぞ」
 とは言え、今の零児の技量では、マヒを与えるのに時間がかかったし、それを維持できる時間も限られそうだ。
 だが、時間を稼ぐには充分だった。
 仲間を目覚めさせる時間を。
「お2人とも、起きて下さいませ!」
 温かな光が溢れ出し、ちさの声が響く。
 疲労覚悟でちさが生まれながらの光を広げて向けるのは、仲間が眠るお布団だ。

 おわかりいただけるだろうか。
 冬の日、早朝。まだ早朝だと思っている朝。
 お布団の中でぬくぬくしていると、しゃーっとカーテンを全開にさられて、差し込んでくる眩しい朝日を浴びる、あの感覚。
 ちさが放った聖なる光は、それに似た目覚めの感覚を対象に与えていた。
「よう……いい朝の気分だぜ」
 樒に引っ張られながら、ザフェルがお布団の中からズルズルと這い出てきた。
 うさみっち?
 やきゅみっち共々、頭まで布団にすっぽりだからだろう。ちさの光も完全には届いていないようで、まだこたみっちと化してるよ。

「っ……動くぞ!」
 狼の魔炎のマヒが解ける寸前、零児が声を上げる。
 自由を取り戻した『蠱窋の怪』が、冷たい北風を放つ。
 ズザァァァァッ!
 体をぐんっと沈めたニコが、土埃を上げるスライディングで風の下を潜り抜けた。
「歯を食い縛り覚悟せよ」
 ルースレス・クロックブレイク。
「此の一撃はかなり痛いぞ」
 時計の針の様に研ぎ澄まされた超高速の拳の一撃を、ニコは沈めた体勢からコタツの中に腕を突っ込む形で放った。
『!!!』
 背にした大地を軸として突き上げた一撃が、天板を歪ませるほどの衝撃を与えて『蠱窋の怪』をエンパイアの空へと打ち上げる。
「魔狼、降臨――喰らい燃やせ、巨大狼(フェンリル)」
 零児が溜めた力を解き放つ。『蠱窋の怪』の内側から食い破るように姿を現した、赤と青の狼炎がひとつになる。
 赤と青の巨大な狼の炎が『蠱窋の怪』を、赤青双色の炎に包み込んだ。
 ブスブスと煙を上げながら落ちてくる『蠱窋の怪』。
「このままじゃ終われねえからな」
 それを迎え撃つは、完全に目を覚ましたザフェル。緑瞳を細め、斧を構える。
「木っ端微塵にしてやるぜ!! ――グラウンドクラッシャー!」
 豪斧一閃。
 地面に当たれば地形を破壊する程の重たい一撃が、落ちてきた『蠱窋の怪』を再び打ち上げ、お空の彼方まで吹っ飛ばす。
(「ザフェルさん、何だかよく叫んでますね。……。まあ、きっと出身地の風習とか、そういうものなのでしょう」)
 なんて思いながらも樒はそれを口には出さず、無言で『蠱窋の怪』が見えなくなった空を見上げていた。

●こんな空間があってもいいじゃないか
「ここは……?」
「蠱窋の怪の中……でしょうか?」
 さて。黒い腕に引きずり込まれた誉と硯は、真っ暗な中にコタツだけがぽつんとある謎の空間にいた。
 暑くも寒くもなく、不愉快な感じも、危険な感じもしない。
 そして大事な事は――。
「誉、見てください。アイスが溶けません!」
「おお! ホントだ。ここ、もしかしてパフェ作りに最適なんじゃないか?」
 もしかして、少し離れていて、と言う言葉を

 そう言うことならば、やることは1つ。
 2人は顔を見合わせると、パフェ作りに取り掛かった。
 アイスとフルーツを交互に並べて三段重ね。
 アイスはバニラとチョコとストロベリーの3色。
 その上に生クリームとチョコソースでトッピング。
「完成です。お待たせしました」
 コタツの上に鎮座した、即席巨大パフェ。
 誉と硯はさっそくコタツに入ると、パフェを食べ始めた。
「はー、なんでコタツで食うアイスって美味いんだろうな……不思議だぜ」
「何故でしょう……でも、炬燵にアイスは鉄板です!」
 そこに、どこからともなく現れる黒い何か。
 この目の光は――蠱窋の怪?
「いつも温かく見守っていただいてありがとうございます」
 その出現に驚くでもなく、硯は声をかける。
「今日は一緒にどうですか? 炬燵とアイスの相性は抜群ですよ」
 にこりと微笑みかける硯に、『蠱窋の怪?』はじっと視線を向けるばかり。
「ほら、食えよ……」
 そんな『蠱窋の怪?』に、誉がアイスを絡めたみかんをスプーンに載せて差し出す。
 吸い込まれるように黒い体の中にスプーンの先端が消えた。
「……どうだ? 美味いだろ?」
 呼びかける誉のイケボを、亜空間の外にお届けできないのが残念である。
 その直後だった。
 硯と誉は、再び体を何かに引っ張られるような強力な感覚を覚える。
「あら? これは――」
「またか。って、パフェがまだ残って――」
 2人の視界が真っ黒に染まったかと思うと、真っ白に変わって――。

 空間の穴から放り出されるように出てきた2人の前には、『蠱窋の怪』との戦いを終えたばかりの猟兵達がいた。

 硯と誉が亜空間で出会った『蠱窋の怪?』が、外で他の猟兵達が戦ってお空の彼方に吹っ飛ばした『蠱窋の怪』と同じものであったかどうかは、判らない。
 だが、念のためにとしばらくその場で待ってみても、『蠱窋の怪』が戻ってくる事はなかった。
 猟兵達は手分けして、街道が使えるようになったと近隣の町や村に伝えて回った。
 そして――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『殿、珍味にご乱心』

POW   :    やはり肉だ!パワーイズ肉!これで殿もムキムキだ!

SPD   :    魚に決まっている。和洋中様々な料理で殿もにっこりだ!

WIZ   :    野菜を食べなさい野菜。珍しい野菜を食べさせて殿も健康間違いなし!

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●上和泉の城にて
 猟兵達が餓鬼と蠱窋の怪を排した、その翌日には物資も運ばれるようになった。
 それらの護衛も兼ねて小藩を訪れた猟兵達は、そのまま『こんにゃくに飽きた』と我侭を口にしたと言う上和泉(かみいずみ)の若殿のいる城へと向かう。
「皆様方。ようこそお越しくださいました」
 城門の前に立っていたのは、1人の老爺だった。
「事の次第は聞き及んでおります。街道に居座っていた化生を退治して頂いたと。
 若殿もいたく感謝しておりましてな。何もない小藩ではありますが、せめて宴の一席にて持て成したいと――は? 料理ですか?」
 自分達も料理をして良いか――猟兵達の中からあがった申し出に、老爺は少し驚いた顔を見せる。
「ははあ。流石は天下自在符をお持ちの方々だ。お耳が早い。若殿の我侭に付き合って頂ける――と。では、炊事場の者達には伝えておきましょう」
 驚きはしたものの、すぐにその意図を察して老爺は頷いた。
「あとは何かありましたら、儂に声をおかけくだされ。こんな小藩でも殿は政がありますが、儂はその様な身分ではござらぬ故。
 先代? ……本当に、お耳が早いですな。なに、うつるような病ではござらぬ。遠からず寿命が尽きる、と医者が匙を投げただけの事。宴には顔を出しましょう」
 と、そこまで言った所で、老爺はポンと手を打つ。
「儂とした事が。お名前を伝えておりませんでしたな。若殿は長秀(ながひで)様。先代の大殿は義綱(よしつな)様となります。
 儂は忠次(ただつぐ)と申します。若殿の剣の指南役を仰せつかっておりましたが、若殿も達者となった今では、こうしてたまに案内役を買って出ている、若い頃に少々隠密を齧っただけの家名の無い老爺でござるよ」

 さて。話は大体聞けただろう。
 宴の時間には、まだかなりの間がある。
 炊事場を使わせて貰えると、言質は取れた。食材も充分に揃っている。何なら別の世界の食材を使っても、誤魔化せるだろう。
 猟兵達の腕を振るうのは、何も戦場だけではない。
 1つ若殿の我侭をかなえる料理を見せ付けてやるとしようか。
 先代の状態は、料理一つでどうにか出来るとも思えないが――猟兵は埒外の存在。或いは何か可能性が見つかるかもしれない。

 ===================MSより===================
 3章は上和泉の城での一幕となります。
 前半が調理シーン。後半が、若殿と一緒の宴の予定です。
 予定は未定なのは、1,2章で大体おわかりでしょう。つまり自由だ。
 料理に使う食材は、世界関わらず使用可能とします。危険物はやめよね?
 成功度に影響するのは『若殿の満足度』です。
 それ以外の要素は、成功度の外の事になります。
 ============================================
●閑話休題~若殿の現在
 猟兵達を老爺――忠次が出迎えている頃、若殿は一心不乱に筆を走らせていた。
 流通が戻ったと言う事は、政も増えると言う事。
 小藩とて、否、人の少ない小藩だからこそ、若殿は今とっても忙しい。

 ぐるきゅー。

 若殿の腹の虫が盛大に鳴って、筆が止まる。
「誰か――」
「……今日は茶菓子は無しですぞ」
 若殿が言いかけたそこに、ふらりと現れた忠次が先手を打った。
「届いた荷の中に茶菓子もありましょうが、宴の準備で、皆、忙しくしてますからのう。我慢なされ」
「くっ……う、宴はこんにゃく以外がちゃんと出るんだろうな!?」
「さて。儂が作るわけではないのでのう?」
「あああああ、ちくしょう! 肉でも魚でも野菜でもいい! 噛んで味がするもん食わせろー! 濃い味が食いてー! こんにゃくはもう嫌だー!」
 空腹は、時に人を狂わせる。
霧城・ちさ
お肉やお魚は持ってくる方がいそうですし焼肉とかに合いそうなお野菜を用意しますわね
お肉もお魚も美味しいですわっ。でもお野菜も食べてバランスよくお食事をして健康でいればこれからも美味しいお食事ができますわっ
食後に食べる甘いものも用意しておきますわね。こちらの世界でも作れそうなものは作り方を教えますわっ
私も教えてもらったばかりのものもありますががんばりますの



●調理~ちさの場合
「こちらを自由にお使い下さい。水は、出てすぐに井戸がございます」
「まあ。かなり広いお台所ですわね。さすがお城ですわ」
 案内された炊事場に立って、霧城・ちさはその広さに軽い驚きを感じていた。
 料理をしようと言う猟兵全員が入っても、作業の順番をある程度やりくりすれば、一人一人が充分なスペースを確保できる。
 小藩とは言え、城は城。
 その炊事場となれば、ご家庭の台所とは訳が違うというものだ。
(「焼肉……は、今のところなさそうでしょうか?」)
 その一角に立って、ちさは周囲に視線を向ける。
 他の猟兵達の食材を見てみると、やはりと言うか、野菜メインは多くなさそうだ。
(「ここは、サラダですわね」)
 1つ頷くと、ちさは調理を開始した。

 ちさはまず、井戸と炊事場を何回か往復した。
 汲んできた桶の1つに、ワカメや杉のり、ツノマタと言った海藻類を乾燥させたものを浸して戻しておく。
 その間に、別の桶でレタスとカイワレを洗い、レタスの葉の部分を中心に食べ易い大きさに千切って、カイワレの根元を落とす。
 レタス、カイワレの順に器に盛り付けたら、その上にしっかり戻った海藻を順に盛り付けて、アクセントにクルトンを散らす。
 最後にオイルベースのドレッシングをかけて、完成だ。

●宴~ちさの場合
 そして、日が暮れて。
「やっっっと、飯だー! 宴だー!」
 諸手を挙げて喜ぶ若殿に、隣に座った壮年の男性が、ゴホンと咳払いで座れと促す。
 位置と仕草からして、あれが先代の義綱だろう。
 そこは城の大広間。

「さて、今日は天下自在符をお持ちのお客人の方々を招いての宴だ。
 街道の平和を取り戻してくれた上に、異国の料理を作ってくれたとか。
 こんな場を設けるくらいしか出来ぬ身ではあるが、この宴席、楽しんで頂きたい」
 そそくさと座った若殿――長秀の一言で、宴が始まった。
「これは……野菜か?」
「はい、お野菜です。海藻――海に生える草を主に使った、サラダという料理ですわ」
 まず出てきたのは、ちさが作ったサラダだが、それに誰もが目を丸くした。
 生野菜を食べる習慣は、まだないのかもしれない。
 海藻も珍しかっただろう。なにせ、海に面していない内陸地だ。
「お肉もお魚も美味しいですわっ。でもお野菜も食べて、バランスの良いお食事をしていれば、これからも健康で美味しいお食事ができる筈ですわ」
 若殿と、その隣の先代に交互に視線を送りながら、ちさが告げる。
「おお? おおお? なんだ、この歯応え。コリコリして……美味えなこれ!」
「ふむ。この数字のない賽子みたいなものも、サクサクと美味いのう」
 ちさの説明を聞いているのかいないのか。城主父子は、顔を見合わせ海藻サラダをあっさりと平らげていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
今までこんにゃくしか食べられなかったとは…ある種の食事制限であるな…。
ある意味健康的だったやも知れないが、やはり普通の状態であるならば
制限無く色々なものを召し上がりたいだろう。

しかし一国の主に料理をお作りするというのもまこと緊張する
粗相のないように、普段作り慣れているもので行こう
肉を野菜と一緒に美味しく食べられる「春菊とえのきの肉巻き」
というものがあってな。文字通り春菊とえのきを良い感じに切り
それを塩コショウをした豚バラ肉で巻き、フライパンで焼くのだ
味付けは酒・みりん・醤油・砂糖と甘辛でな、
白米が進むこと間違い無しと思う次第

風の噂で若殿は濃い味の料理がご所望と伺ったが
ご満足頂ける事を祈って。



●竈に火を入れて
(「一国の主に料理をお作りする……か」)
 お城の炊事場に立って、ニコ・ベルクシュタインはいつになく緊張していた。料理を作る相手が相手である。
 何か粗相がないようにしなければならない。
 そう思うと、身が引き締まると言うもの。
(「やはり、ここは作り慣れているもので――ん?」)
 ふと、他の猟兵達から視線を感じて、ニコは首を傾げる。
「俺に何か……?」
「おう。火出せ」
「ああ――そう言う事か」
 ピンク頭のちっちゃいライバルの一言で得心が行って、ニコは頷いた。
 ここはサムライエンパイアだ。
 当然と言えば当然だが、炊事場と言っても竈だ。
 薪はたくさんある。火打石も置かれている。けれども――ガスはない。
「荒れ狂え精霊よ」
 ニコは精霊狂想曲で喚び出される、炎の精霊。
 焼肉で召喚した以上、今更躊躇う理由がどこにある?
「強火、中火、弱火で頼む」
 竈を3つ順に指差して、ニコは精霊に告げる。
「焼肉と同じ。此れも自然現象だ、いいね?
『……』
 精霊使いが荒いなぁ、とか何とか言いたそうではあったが、精霊は何も言わずに竈に火を入れた。

「しばらく火を入れたままにしておくから、皆も好きに使ってくれ」
 そう告げて、ニコは自分の調理に入る。
 まず広げたのは、薄切りにした豚バラ肉。
 塩コショウを振って、しばらくそのまま馴染ませる。
 その間に春菊とえのきを軽く水で洗って、それぞれ切り分ける。
 春菊は葉と茎に。えのきは根元を落として、それぞれの長さを等しく合わせる。
 後はその3つを、豚バラ肉でくるっと巻けば準備良し。
 ニコは軽く油を引いたフライパンを手に、竈へと向かった。

●宴~ニコの場合
 次に出てきた料理は、醤油ベースのタレで焼かれた料理だった。
 ニコの作った『春菊とえのきの肉巻き』である。
「これは……? えのきと葉物を肉で巻いてあるのか」
 甘辛いタレで茶色に焼かれた肉巻きは見た事ない調理方法だったようで、長秀はしげしげとをそれを見下ろしてから、箸をつける。
 もぐりと、一口。長秀の目が見開かれた。
「これだ……こう言う味を待っていた!」
 殿、箸が折れる折れる。
「この甘辛い味が染みた肉……米が進む! 食ってるか、親父殿?」
「食っとるわい。中の春菊の仄かな苦味も、良いのう」
 ゆっくり食べ勧める父を気にかけつつも、長秀の箸が止まらない。
(「ご満足頂けたようで、何よりだ」)
 そんな様子を宴の席から眺めて、ニコは無言で満足そうに頷いていた。
(「ここしばらく、こんにゃくしか食べられなかったとの事だからな。健康的な食事と言えたかもしれないが、色々な物を召し上がりたかっただろう」)
 やっと緊張が解けた気がして、ニコは自分で作った肉巻きを頬張った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大神・零児
若殿は濃い味をご所望のようで

ならば、八丁味噌を使った味噌煮込みうどんと味噌カツでもてなそう

味噌煮込みうどんには具材として、長ネギ、油揚げ、鶏肉、シイタケ、生卵も入れてじっくり煮込み、味噌と出汁の味がしみてきたらできあがりだ

サムライエンパイアに豚肉はあるだろうか?
なければ珍味として最適も知れない
豚肉の肩ロース、ヒレ、モモ等、トンカツにむいている各部位を材料にして、八丁味噌をタレとした味噌カツも用意

更に、カツの衣の繋ぎに使っていた溶き卵の残りと、味噌煮込みに使った鶏肉の残りでから揚げも作ろう

「世界知識」によりレシピと手順を効率化し「早業」で下準備
「世界知識」と「第六感」によりベストタイミングで提供



●肉の珍味
 どんっ、どんっ。
 大きな音を立てて、大神・零児は鶏肉を豪快に一口大にぶつ切りにしていた。
「こんなもんでいいか。野菜は……ネギと椎茸だな」
 運ばれてきた物資から、零児は野菜を2つ選び取る。
 長ネギは、白い部分を斜め切り。
 椎茸は柄を落として、十字に切り込みを入れておく。
「で、濃い味をご所望って事なら――これだな」
 最後に零児が取り出したのは、壺。
 中身は味噌だ。
 大豆と水と食塩で仕込み、天然醸造させたもの。現代では、八丁味噌と呼ばれるものと同じ味噌である。それを使って作るのは、味噌ダレだ。
 零児は大きめの茶碗の中でみりんと砂糖で味噌を溶いて伸ばしていく。
 そこまで終えたところで、竈に鍋を2つ載せた。
 片方は湯を沸かし、乾麺のうどんを茹でておく。
 もう片方には出汁を入れて、まず柄を落とした椎茸、少ししてから斜め切りにした長ネギの順に入れて、ぶつ切りにした鶏肉と刻んだ油揚げを入れる。
 再度沸騰したところで味噌ダレを木ヘラで取って少しずつ鍋に溶かしていく。
(「うどんは、直前に入れりゃいいから、こっちは一先ず置いとくか」)
 胸中で呟いて、零児は2品目に取り掛かった。
 豚のヒレ肉を一口大よりやや大きく切り分け、溶き卵に潜らせる。
「パン粉は、流石にねぇか」
 だが、他の猟兵がパンを持ってきていた。それを少し貰って、軽く炙ってから卸金を使ってゴリゴリと、細かく砕いて粉にする。
 それを、卵に潜らせた肉に塗して――熱した油に投入。
(「天ぷらはあっても、カツは珍味になるだろ」)
 揚げ過ぎないように鍋を注視しながら、零児は胸中で呟いていた。

●宴~零児の場合
「これは……?」
 味噌ダレがかかった味噌カツを前に、やはり城の誰もが目を丸くした。
「豚肉を油で揚げた料理だ。天ぷらとは、衣が違う。ガブっと言ってくれ」
 零児の説明に、長秀はカツを一切れ取って、ガブリ。
 サクッと衣が弾けて、味噌ダレの後に肉の旨味が長秀の口に広がる。
「なんだこの歯応え! それに味噌と肉って、合うんだなぁ! これも米が進む!」
 長秀の反応は上々だ。
「ふむ。この味噌、おでんにも良さそうだ」
 先代もゆっくりとだが、肉と味噌の味を噛み締めていた。
「流石、長く生きてると舌もいいな。この味噌は煮込み料理にもぴったりだ」
 そんな義綱の反応を見て、零児が出したもう一品。
 鍋の蓋を開くと、ふわりと昇る湯気に載って味噌の香りが広がる。
 味噌煮込みうどん。
 宴の中で茹で上がりを出せるよう、直前に煮込んだものだ。
「うむ……うどんに味噌と出汁が良く染みておる。儂はこちらの方が好みだな」
 直前に入れて、半熟になった卵を割れば又味が変わる。
 先代の義綱には、こちらの方が口に合ったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

織部・樒
※アドリブ歓迎です

ゼフェルさん(f10233)の料理のお手伝いをメインに

とは言え他国の料理は初めてなので
野菜を切ることくらいしか出来ないかも知れません
変わった食材に触るのを躊躇ったり

お手伝いだけでは何なので、私も手軽な料理を
味のあるものをご所望との事
春らしく苦味のある山菜を採ってきましょう(我儘な舌に制裁とか他意はないです)
ふきのとう、たらの芽、ゼンマイ、コゴミ辺りでしょうか
苦味を和らげる為に天麩羅にしましょうか
塩で食べるのがお勧めですが一応天つゆも用意

春は芽のもの、夏は葉のもの、秋は実のもの、
冬は根のものが滋養に良いと何かの書物に
書いてありました
大殿のお加減が少しでも良くなると良いですね


ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と協力して料理

サムライエンパイアに無い食材は自分で持ち込むが、
俺の国で食べてるのと同じような魚があるみてぇだな。
これ使うぜ。

バリクエクメックって言う…こう、鯖を焼いて、
野菜(レタス・玉ねぎ)と一緒にパンに挟んでだな、
塩とレモンをかけたら完成!鯖サンドだ!!
あ、なんだよその胡散臭そうな顔は!?
マジで美味いから食ってみろって!!食わず嫌いはいけねぇぜ?

あと、これはあんま見ないんじゃねぇか?
アーティチョークって野菜だ。これも美味いぜ。
樒、揚げ物作るんならこれも揚げてくれ。素揚げでいい。
味付けは塩だけだ。シンプルだからこそ美味いってもんだ!
(下ごしらえしたアーティチョークを樒に渡す)



●そろそろお魚も欲しくなる
「これって……鯖、ですよね、ザフェルさん」
「こっちじゃそう言うのか。俺の国で食べてる魚なんだが」
 向かいあった織部・樒とザフェル・エジェデルハの間にあるまな板の上で、鯖――のような魚がびちびちびちと跳ねていた。
 ザフェルはサムライエンパイアの鯖を使うつもりでいたが、本来の鯖は、鮮度維持が難しく、内陸の藩には問題がなくても滅多に入ってこないものだったのだ。
「さて。俺はコイツを3枚に卸して焼いとくから……どっちか頼めるか」
 ザフェルが並べたたまねぎとレタスをみて、樒は迷わずレタスを取った。
 ぷちぷちと、レタスを千切る樒の隣で、ザフェルがたまねぎを切る。スライスにするだけでも多少のアレは発生し、少しだけ目に染みた。

 閑話休題。
 ザフェルは適度な大きさにした鯖の切り身をオリーブオイルでさっと焼いていく。焼けた鯖をレタスとたまねぎを置いたパンの上に重ねて、軽く塩を振る。
 後はパンで挟んで、レモンを添えれば――。
「完成! 鯖サンドだ!」
「え? これで完成ですか……?」
 樒が怪訝な顔になったのは、簡素といえば簡素だからか。見慣れぬレモンにか。
「あ、なんだよその胡散臭そうな顔は!?」
「え、いや。私も作るものが――」
「マジで美味いから食ってみろって!! ほれ、一口」
 きゅっとレモンを絞った鯖サンドを、ザフェルは有無を言わさず樒の口へ突っ込む。仄かな酸味の後に、鯖の旨味と野菜の甘さが広がる。
「……結構、いけますね」
「だろ?」
 素直に頷いた

 とは言え、このままだと樒は少し手伝って味見をしただけになる。
「お手伝いだけでは、なんですからね」
 そう言いながら卵と水と小麦粉を混ぜる樒の前には、ふきのとうに、たらの芽、ゼンマイ、コゴミと言った山菜が並んでいた。
 薄く衣を着けて、強火の竈の上に置いた鍋の中の油に投入していく。
 気泡が大きくなりパチパチと音がし出したら、揚がった合図。
 山菜の天麩羅の完成だ。
「樒、揚げ物作ってるんだろ。これも揚げてくれ。素揚げでいいが、長めに」
 用意した山菜の大半を揚げ終わったところに、ザフェルが差し出してきたものは、これまた樒が見覚えのない食材だった。
「なんですか? これ?」
「ああ、やっぱこっちじゃあんま見ないか? アーティチョークって野菜だ。これも美味いぜ? 下拵えはしといたから、後は揚げるだけでいい」
 ガクをひたすら剥いて、中の芯をくり抜いてと、結構手間のかかる野菜だ。
(「まあ、ザフェルさんがああ言うなら美味しいんでしょう」)
 余り深く考えず、樒はそれもそのまま油の中に落としていった。

●宴~樒とザフェル
「魚料理? これがか?」
 パンで鯖を挟んだ鯖サンド――またの名をバリクエクメック。
 異国の魚料理に、長秀は本日何度目かになる目を丸くした顔を見せていた。
「この辺りじゃ、川魚焼いたのくらいしか見ないが……」
「あ、ちょいとお待ちを」
 長秀が手を伸ばしかけたところで、ザフェルが声をかけて制する。
「横の黄色い果物を――こうして、と」
「「!?!?」」
 レモンを絞ってかけると、ついには先代の義綱も目を丸くした。
「ああ、ほら……だから言ったんですよ。いきなりやると驚かれるって」
「だけどな。これが一番美味い食べ方だし」
 横から樒に小声で突っ込まれ、ザフェルも小声で返す。
「ふむ。これが一番美味いというなら、食べよう。こんにゃくに比べればマシだろう」
 見慣れぬ料理続きで色々マヒしたのか、長秀は驚きはしたものの、あまり躊躇を見せずに鯖サンドを掴んで、ぱくり。
 もっぎゅもっぎゅと噛み締める。
「美味いな……魚の臭味が全然ないぞ。親父殿も食ってみろ」
 そう促され先代もぱくり。
「成程……魚を挟んでいるこの白いのも、見た目よりも柔らかくて食い易いの」
 長秀も義綱も、もっぎゅもっぎゅ。
「よろしければ、こちらもどうぞ」
 そこに樒が差し出したのは、塩をした山菜の天麩羅とアーティチョークの素揚げ。
「う。ふきか」
「おお。ふきではないか!」
 これには、長秀と義綱の反応が別れた。
「苦味も味ですよね?」
「うむ。これは酒が進むのう」
 にこりと笑う樒に、義綱の方がお猪口片手に頷く。
「この見慣れぬ素揚げも、百合根みたいな甘味もあって良いのう。酒が進む」
「だろ? シンプルだからこそ美味いってもんだ!」
 ザフェルと義綱が、頷きあう。
「長秀よ。この味が判らんのでは、まだまだだな」
 山菜の天麩羅とアーティチョークの素揚げは義綱がいたく気にいった様子だったが、長秀は少しだけ『うぐぐ』となっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

チトセ・シロガネ
【WIZ】
こんにゃく続きの殿様がいると聞いたネ。
ボクも毎日こんにゃくだと気が狂うかもしれないネ……。
歯ごたえのある食べ物が食べたくなるよネ。

というわけでボクが出すのはあえてこれ、
燻製にしたたくわん、通称「いぶりがっこ」ネ。
細かい詳細は省くとして北の方で作っている変わり種の漬物ヨ。
香ばしい香りとタクワンの塩っ気がお酒に合うネ。
酒の肴に良し、他の料理の箸休めにも良しヨ。

護衛のお礼にもらったジャパニーズ酒もあるから、殿様、一杯どうカナ?



●宴~チトセの場合
 これまでの珍味は、殿様達には異国情緒のあるものであり、猟兵達が手ずから作った料理だった。
 猟兵達による料理に、長秀はご満悦である。
「護衛のお礼で貰ったセイシュがあるネ。殿様、一杯どうカナ?」
 そこに、チトセ・シロガネが両手に大きな徳利を持って寄って行く。
 長秀も義綱もイケるクチだろうと、これまでの様子でチトセは判断していた。
「おお、いいな!」
「セイシュ――清酒か。儂も一献貰おう」
 予想通り、2人とも表情を緩ませる。
「もう、今日は飲むぞ。こんにゃく解放の記念だ!」
「毎日こんにゃくは、ボクも気が狂うかもしれないネ……」
「おお、判ってくれるか!」
 既にほろ酔いな長秀は、チトセの言葉に頷いてぐいっと枡を傾ける。
「うんうん。歯ごたえのある食べ物が食べたくなるよネ。と言うわけで、これ」
 これ――とチトセが差し出したのは、白い漬物。
「いぶりがっこ、と言うネ。変り種の沢庵ヨ」
「ああ。確か――囲炉裏の煙で燻るから、いぶりがっこ、だったか?」
 いぶりがっこと聞いて長秀は首を傾げていたが、義綱は聞いた事があったらしい。

 珍味の全てが、手のかかるものと言うわけではない。
 勿論、チトセが用意したいぶりがっこが、手を抜いたもの、と言うわけでもない。むしろ行程やかかった時間を考えれば、手のかかっている品だ。
 だが、その場でさっと出せるという意味で、手のかからない珍味もあるのだ。

「流石、先代様ネ。香ばしい香りとタクワンの塩っ気が、お酒に合うネ。酒の肴に良し、他の料理の箸休めにも良しヨ」
 義綱に枡を掲げ賞賛を示し、チトセはカリッといぶりがっこを齧る。
 カシポシと、しばし宴の広間には沢庵を齧る音が響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久篠・リジェリ
食事で満足するなら……これはもう肉しか、ないわ!

そう、若殿に満足してもらえそうな……高級な、ステーキ。
食べたい。

自分も食べるように多めに持っていくわ。
大丈夫、肉だもの、失敗もしにくいわ。焼ける!
任せて、私ならできる、これが女子力。

いろんなステーキソースも用意していくわね。
王道や和風、わさび風味やにんにく醤油。

いいわね、宴。
自分で用意したステーキは食べて味をかみしめつつ、いろんな料理をいただいていくわね。
宴、いいわね(噛みしめてる


萩乃谷・硯
誉(f11407)と共に

ふふ、デザートは誉にお任せしますね
切るくらいはお安い御用です

でも本当に、蒟蒻は駄目なのでしょうか…
特産品、絶対に美味しい
あまり蒟蒻を主張させない品書きは無いものか…

悩みながら作ったのは

丼の蓋を開けると、…ほかぁっ…
ほかほかごはんに、よく煮込んだ牛肉、玉葱、そして糸蒟蒻
牛丼です。お好みで生卵や一味を掛けて召し上がっ……あっすみません蒟蒻は駄目でした!(わざと)
ご無礼を! 蒟蒻は誉が食べますので!
大丈夫です誉、他の具材もちゃんと…ほら、玉葱
美味しく食べる誉に背を押され

義綱様と共に歩んだ小藩の民が作った蒟蒻です
美味しく出来ました。…どうか、召し上がってはいただけませんか?


御剣・誉
硯(f09734)と

あーあ、せっかくパフェつくったのに、全部食えなかった…
すげー悔しい
え?なんか料理作るの?珍しいものがいい?
じゃぁ、オレがパフェ作ってやるよ!
器にコーンフレークとアイスと生クリームと果物をのせてっと
あ、果物切るのは面倒だなぁ
硯、これも切ってー
チョコソースかけたらチョコパフェ完成っと

硯、何作った?
おーいいな、牛丼!オレも欲しい!!くれ!!!
(丼にご飯をよそって、肉を待つ)
糸こん?いいぜ、食うよー
のせちゃってくれよ
え?糸こん…だけ?
玉ねぎ…?肉は?主役は牛肉!オレにも牛肉くれよー!

硯、料理美味いなー
お礼にオレが作ったパフェやるよ!
硯の分もちゃんと作ったからさ
あ、若殿もパフェ食う?



●悔しさと悩み
「え? 何か料理作るの?」
 御剣・誉は、着いてきた炊事場での流れに少し驚いていた。
「ええ。珍しいものが良いそうですよ?」
 萩乃谷・硯に笑顔で告げられ、そんな事を言われても――そう喉元まで出かかったところで、誉はふと閃いた。
 作ったのに、食べきれずに悔しい思いをしたものがあったではないか。
「よし、オレがパフェ作ってやるよ!」
「ふふ。ではデザートは誉にお任せしますね」
 ぐっと拳を握る誉に、硯が残りのフルーツを差し出し微笑みかける。
 深めの器はある。
 コーンフレークもあるし、アイスもまだある。チョコソースもある。
 あとは生クリームを作って、果物を切れば、パフェに必要なものは――。
「果物切るのは面倒だなぁ。硯、切ってー」
「切るくらいはお安い御用です」
 殿様に出す料理を作るのに殿様みたいな事を言い出す誉から果物を受け取ると、硯は笑顔でスルスルと皮を剥いて、適度な大きさに切り分けていく。
 見事な手際だが、硯は内心で悩んでいた。
(「本当に、こんにゃくは駄目なのでしょうか……」)
 特産の品だと聞いた。絶対に美味しい筈。若殿も、今は食べ飽きただけかも。
(「何か、あまりこんにゃくを主張しない品書きは、ないものでしょうか……」)
 思い悩む硯が巡らせた視線の先に、あるものが目に入る。
(「食事で満足させるなら……これはもう、肉しかないわ!」)
 久篠・リジェリ(終わりの始まり・f03984)が、選んだ食材――牛肉である。
 それも、かなり高級なお肉だ。
「あ、あの。それは……?」
「……高級な、肉。サーロイン。ステーキ。食べたい。……じゃなくて、これなら若殿にに満足して貰えると思って」
 若干、本音を零しつつ、リジェリは返す。
 高級な牛肉。
 それを見た硯の頭の中に、ある料理が閃く。
「少し分けて頂くことは――」
「ん。いいわよ。多めに持ってきたから」
「ありがとうございます」
 2つ返事で頷いたリジェリから分けて貰った牛肉を、硯は薄くスライスしていく。
「んー? 硯、何作るんだ?」
「そうですね……きっと誉にも気に入って貰えるものですよ」
 何々と手元を覗き込んでくる誉に微笑んで、硯は糸こんにゃくを手に取った。

●更なる肉
「さて、と」
 一人になったリジェリは、まな板に向き直る。
 その前にあるのは、大きく切り分けたステーキ肉。
 自分でも食べる分を確保する為、リジェリは牛肉をたっぷり用意していた。
「下準備、しないとね。肉だもの」
 リジェリは包丁を深めに入れて、ブチッと音がするまで肉の筋に切り込みを入れる。
 筋切りの次は、塩コショウ。満遍なくかけて十数分、肉を寝かせておく。
 その間に、フライパンに油を引いて温めておけば、後は焼くだけ。
 ――とは言え、ここからが大事だ。
 焼き過ぎれば、肉は固くなる。
(「私なら出来る。焼ける」)
 自分に言い聞かせるように胸中で呟いて、リジェリは肉を切り込みを入れていない面からフライパンにそっと載せた。
 失敗はしにくい――筈である。
 強火の上で両面をそれぞれ1分少々。しっかりと焼き目を付けたらアルミホイルに包んで肉を休ませる。
 後は宴に出す直前、弱火で少しだけ温めれば良い。
「出来た……これが女子力」
 リジェリの口元に僅かに浮かんだ笑みは、上手く作れた事への満足からか、早くステーキを食べたいからか。
 だけど、お高いお肉はまだ残っている。
「……もう少し、火を入れたのも作っておこうかしら」
 今の焼き方は、レアだ。
 聞けば年配の人もいると言う。
「あと、ステーキソース。この世界なら、和風かしら?」
 ソースの味も色々あると良いだろうと、リジェリはニンニクとワサビを手に取った。

●宴~リジェリの場合
「はふっ……こ、これが肉か!? 口の中で溶けたぞ」
「何と柔らかな歯触り……この老骨にも食えるわい」
 箸で食べ易いようにと、一口大のサイコロステーキとして出てきた高級な牛肉に、色々な肉を食べてきた殿達の箸が再び動き出す。
「このタレなんだ? さっきの味噌のも良かったが、これもいいな!」
「ワサビ醤油が肉に合うとはのう」
 色々なソースを用意したのも、気にいって貰えたようだ。
(「いいわね、宴」)
 そんな殿達の反応を離れて見守りながら、リジェリは自分でもステーキを頬張り、肉の味を噛みしめていた。
 リジェリのステーキも、他の猟兵達が作った料理も好評だった。
 リジェリ自身も、いろんな料理が食べられた。
(「宴、いいわね」)
 宴の良さを、リジェリは噛みしめていた。

●宴~誉と硯の場合
 ……ほかぁっ……。
 宴会場に丼から湯気が立ち昇り、食欲をそそる甘辛い香りも広がる。
 ほかほかごはんの上には、よく煮込まれた牛肉と玉葱、糸こんにゃくが載っていた。
「牛丼です。お好みで、生卵や一味を掛けて頂ければと――」
「おーいいな、牛丼! オレも欲しい!! くれ!!!」
 長秀達に硯が差し出した丼を後ろから覗きこんで、誉が催促する。
「この細いの……。こんにゃく、だな?」
 だが――表情を堅くした長秀が、そこにぽそっと呟いた。
「あっすみません。こんにゃくは駄目でしたか! ご無礼を!」
 わざとなのは億尾にも出さず、硯が頭を下げる。
「残りのこんにゃくは誉が食べますので!」
「糸こん? いいぜ、食うよー」
 取り繕う硯に誉が深く考えずに頷く。
 ――牛肉が抜けた牛丼が出てくるとは思わずに。
「え? 糸こん……だけ?」
「大丈夫です誉。ほら、玉葱も」
 絶望的な顔になった誉に、笑顔で硯が煮込まれた玉葱を指差す。
「糸こんと玉葱だけじゃなくて、肉! 主役は牛肉! オレにも牛肉くれよー!」
 一応殿の御前と言う事をまるで気にしてなさそうな誉に、周りが肝を冷やす。
「くっ……くっくっくっ! 面白いな、若い客人達よ!」
 だが、そんな空気を一笑に臥したのは、長秀の隣で目していた義綱だった。
「このこんにゃくもどき、わざとであろう?」
「もどき? いえ、こちらは義綱様と共に歩んだ民が作るこんにゃくと同じものです。
 ……美味しく出来ました。どうか、召し上がってはいただけないかと」
「そうそう。肉がないと物足りないけど、糸こんは糸こんで美味いぜ?」
 長秀に訴える硯に、誉も肉抜き牛丼を頬張り助け舟を出す。
 長秀は表情を強張らせたまま――タレの色に染まった糸こんにゃくを、ぱくんっ。
「……これが。こんなに味が染みたものが、糸こんにゃく? どう言う事だ?」
「どういうことでしょう?」
「さあ? 硯の料理が美味いからじゃないかー?」
 その口から飛び出した疑問に、硯と誉も首を傾げる。
 違いはこんにゃくの製法。そこに行き着くのは、宴の後のことである。

「よし、オレの番だな!」
 牛丼にステーキを載せて満足した誉が、広間を出てすぐに戻ってくる。
 両手に、細長い器を持って。
 中身はコーンフレークの上にアイスを重ねて、生クリームと果物でトッピング。生クリームの上からチョコソースをかけた、チョコパフェだ。
「これは硯の分な。で、若殿も食う?」
「……これは……なんなのだ?」
 当然と言えば当然だが、はじめて見るパフェに長秀が目を丸くする。
「南蛮の氷の菓子だよ。コタツの妖怪も欲しがったくらい、美味いんだぜ?」
 誉のその声(勿論イケボ)に押されたか、追加で運ばれてきたパフェを他の猟兵達がパクパク食べ進めているのも見えたからか。
 長秀はそっと一口梳くって――食べ慣れていなかったんだろう。
 キーンッと来た様子で、眉間を押さえて天を仰いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
むぅ、俺は難しいことはよく分かんないけど
とにかく若殿にうまいもん食わせて
元気づけてやればいいわけだな!

うさみっちクッキング~♪
(うさぎのアップリケ付きエプロン装着)
俺の大好きな抹茶のロールケーキを作るぜ!
サムライエンパイアでもきっと馴染みのある抹茶を
UDCアース辺りのナウなヤングに人気なスイーツに!
ちゃんと人間サイズに作るからご安心!

材料や器具はゆめのくにうさみっちランドに収納し適宜取り出す
卵黄メレンゲ牛乳薄力粉抹茶などの材料をいい感じに混ぜ(雑説明)
フライパンで生地を薄く大きく焼く
クリームを敷いてくるくるっと巻いて切って完成!

そろそろ甘い物も食いたくなるだろ!と
宴ではデザートとして差し出す



●フェアリーだって料理できるんだぜ
「うさみっちクッキング~♪」
 うさぎのアップリケがついたエプロンを装着した榎・うさみっちは、壺を抱えてぶーんと飛び上がると、炊事場の台の上にそれをどんっと置いた。
(「難しい事は良くわかんないけど、とにかくうまいもん食わせて元気付けてやればいいわけだな!」)
 そう言う事なら、何を作るか決めるのは早かった。
 作るのは、うさみっち自身が好きな抹茶スイーツだ。
「材料は全部持ってきてるぜ! まずは卵」
 壺の中のうさみっちランドから、卵を持ったうさみっちがにゅっと顔を出す。
「おりゃっ!」
 その卵を抱えて、うさみっちはゴンゴンと割ると卵黄と卵白を分けて、卵白は泡立ててメレンゲにした。
 続けて壺から取り出した薄力粉と砂糖。さらに抹茶の粉末も入れて、混ぜる。
 卵黄を入れて、さらに混ぜる。牛乳を入れて、混ぜる。
 最後にメレンゲを入れて、混ぜる!
「いい感じに混ざったぜ!」
 後は焼くだけ――なのだが、火がない。ここはサムライエンパイア。
 ボタン1つで火が出るものはない。
「おう。火出せ」
 だからうさみっちは、子分に向けてそう言った。
 程なく、ボッと竈に火が点る。
「おし。後は焼くだけ――よっと」
 うさみっちランドから出てきたのは、うさみっちも焼けそうな大きなフライパン。
 そこにうさみっち生地を薄く流し入れ、火にかけて両面を焼いていく。
 程なくして、仄かな緑の薄めの大きな生地が焼き上がった。
「さて、後はクリームだ」
 最後の仕上げの材料も、壺の中のうさみっちランドからにゅっと出てきた。

●宴~うさみっちの場合
「ここで、うさみっち様参上!」
 パフェのアイスに長秀がキーンッとなったそこに、うさみっちがやってきた。
「思った通り、そろそろ甘いものも食いたくなってるな」
 何かの皿を持ったうさみっちが、ぶーんと、長秀の前に飛んで行く。
「これは?」
 皿の上にあるのは、抹茶のロールケーキだ。
 緑色の抹茶生地の上に薄く漉し餡を塗って、甘さ控えめのクリームをたっぷり載せてくるくるっと巻いてある。
「抹茶の菓子だ。UDCアース……まあ、異国のナウなヤングに人気のスイーツだぜ!」
「ナウ? ヤング?」
 うさみっちの言葉に首を傾げつつ、長秀は指で冷たくない事を確かめると、豪快に手づかみで、ぱくりと行った。
「むぉっ」
 ふわふわのクリームが盛り上がり、鼻につく。
「なんだこの白いの。周りの抹茶味のも、さっきのパン? とも違うし……親父殿も食ってみろ」
 だが、それにも構わず、長秀はケーキをばくばく食べ続けている。
 何かもう城主の威厳もないその様子に先代の義綱が額を押さえるが、そんな表情も抹茶ロールを一口食べると、苦味と甘味のバランスに緩んでいた。

●そして――宴の終わり
「ふぅ……食った食った。こんなに食ったのは、いつ以来だったか。なぁ、親父殿」
「そうだな。長生きはするもんだのう」
 だらしなく足を崩して座る長秀を咎めるでもなく、義綱が猟兵達に向き直る。
「改めて、前城主として、礼を言わせて頂く。この若造の我侭に、ここまで付き合ってくれた事――そして、餓鬼達のこともな」
 今更出てきた餓鬼の名に、猟兵達が首を傾げる。
 その疑問には、長秀が答えた。
「アレが飢えて死んだ者の末路だと言う噂は、俺達も知っている。我が藩の近くに出たのならば、それは我らが祖先かも知れないだろう?」
 それは、あくまで可能性の話だ。そんな証拠はどこにもない。
 だが。
「一部でも彼らの飢えを満たしてくれたと聞いたぞ。戦わずに道を拓く――その姿勢は考えさせられたし、感謝もしている。良く、彼らを救ってくれた」
 猟兵達に向けられた長秀の言葉は、現在のこの地を治める者としての言葉。
「天下自在符の客人達よ。此度は、真に世話になった。
 この若造、未だ至らぬ城主故、また何かをしでかすやも知れぬ。その時は、見捨てぬで置いてくれるとありがたい」
 その隣で告げる義綱の瞳には、宴の前よりも生気が満ちているようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月09日


挿絵イラスト