8
闇の救済者戦争③~Whisper

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#ダークセイヴァー上層
🔒
#闇の救済者戦争


0





 墓地というのは、静かなものだ。

 安らかであれ、と願われるからだろうか。
 安寧を、と願われるからだろうか。
 騒がしい墓地などなく、いつだって、静かなものだ。

 だけれども。
 其処に葬られているのが死者であるなどと誰が決めたのだろう?
 “一度死んだから”墓地に|しまっておこう《・・・・・・・》。
 余りにも残酷で残忍。
 其れが罷り通るのが――ダークセイヴァー、第三層なのだ。

 墓を掘り返したいかい。
 なら君は、ちっぽけな代償を支払わなければならない。
 だけれど、君が強欲であればある程。
 其の代償は、君を苦しめる。

「つちとゆび、えらんで」



「墓地ってさ、死者を弔うところではあるんだけど」

 ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は呟く。
 既に彼女の後ろには扉が鎮座している。説明が終わり次第送り出す準備は万端だ。

「一度死んだけど生きてる者をしまっておくところでは、ないんだよね。……取り敢えずは状況を説明するよ」

 ヴィズは言う。
 これまで地表だと思っていた「ダークセイヴァー世界」は実は地底世界第四層であり、第五層にはヴァンパイア貴族たちが、そして第四層で死した魂が昇る第三層には強大な「闇の種族」がいる。これが大前提である。
 「闇の種族」はみな押し並べて強力であり、凄まじい強敵でもあった。しかし猟兵たちは彼らの弱点を見付けた。其れが、彼らが自身の身体を抉って作った“欠落”である。

「――で、此処から事態が動いた。ダークセイヴァーの支配者の顔が見えたんだ。標的名は“祈りの双子”。彼らは欠落の存在に気付かれたと察知して、第三層を支えるあの気持ち悪い紅い木――“天蓋血脈樹”から鮮血の洪水を起こして全部沈めてやろうと考えているのさ。そんなことはさせられない、そうだろ?」

 洪水は押し流すものを選ばない。
 闇の種族も、第四層で暮らす人々も、ヴァンパイア貴族でさえも全て沈めて流してしまうつもりなのだと。

「さあ、仕事の話に戻ろう。場所は第三層のとある墓地。だけど葬られているのは死者ではないし、正確に言えば|葬られているという言葉も適当ではない《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。重傷を負った魂人が、其の力……『永劫回帰』を目的として仕舞われているのさ。掘り返すには、墓標が用意した謎掛けに答える必要がある」

 つちとゆび、えらんで。
 そう、問いかけて来るのだという。

「まあ簡単な話だ。指を飛ばして掘り出すか、諦めるか、選べ。という事。お前達は20回助けるチャンスがあるって事だ。最初はスコップで掘り出すのも良いだろう。だけど、多くを助けようと思えば思う程、お前達は痛みと欠損と戦わなければならない。まあ幸い猟兵だからね、指が飛ぶくらいなんともない奴もいるかも知れないけど」

 全員を助ける事は出来ない。
 其れだけの数の魂人が葬られている。

 ――削り過ぎて、王子様にならないようにね。

 ヴィズがそういうと、扉がぎいと開いて墓地への道を開いた。
 其処は……死んだように、静かだった。


key
 こんにちは、keyです。
 ついに始まりました、ダークセイヴァー戦争。
 という訳で2本目です。

●目的
「魂人を救出せよ」

●概要
 能力値の選択肢はあまり関係ありません。好きなユーベルコードをご使用ください。
 墓場にはスコップが用意されています。恐らく埋めるために使われたのでしょう。
 魂人を「仕舞っている」墓標はとても簡単な謎掛けを猟兵に繰り出して来ます。

「つちとゆび、えらんで」

 即ち、貴方の指一本と引き換えに魂人を掘り出す権利を得られるのです。
 貴方は文字通り身を削りながら、どこまでなら耐えられるかを見極めながら、魂人を助けなければなりません。

●プレイングボーナス!
「墓標の謎掛けに正しく答える」

 謎掛け自体は2択なので、さして難しくはありません。
 ただ、指を失う痛み、そして不便さと戦う事になります。
 何処で引いてもきっと心が痛むでしょう。恐らくは其れが、本当に墓標の求めるものなのかもしれません。

●プレイング受付
 受付、〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
 また、アドリブが多くなる傾向になります。
 知らない人と共闘する事なども在り得ますので、ソロ希望の方はプレイング冒頭に「🌼」を添えて頂けると助かります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
131




第1章 冒険 『謎掛けの墓標』

POW   :    思いつく限りの答えを並べる

SPD   :    意地悪な謎掛けの引っ掛けを見抜く

WIZ   :    論理的に答えを導く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シキ・ジルモント
指が飛んでも命があれば治療の伝手はある
差し出すのは両手の親指、薬指、小指。足も片足分は全てを

スコップを握れなくなれば狼に姿を変え、前肢を使用し掘り進める
残した指の爪と、足全体を使って土を掻き出す
片足全ての指を飛ばしてしまった場合も狼の姿に変じ、前肢も歩行に使い後肢片方を庇う

指を飛ばす時点で当然痛みを伴い、そこから更に動けば傷口を広げるようなものだ
吐き気すら覚える程の痛みをどうにか堪えて
まだ動ける、痛みや失血に耐えられる内に出来る限り多く救出を

全てを助ける事は不可能
しかしだからと止めてしまえば完璧な仕事とは言えない
それに魂人達の状況と受ける苦痛を思えば止めるわけにはいかない
動ける限り救助を続ける



●痛んでも、悼まない

 指が飛んでも、命があれば治療のつてはある。

 だからシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、墓標の問いに応えるのだ。

「つちとゆび、えらんで」
「俺の指を差し出そう」

 もぎ取られるような激痛と共に、まるで最初からなかったかのようにもぎ取られる指。
 そうして失ったのは、両手の親指、薬指、小指。そして脚も片足分全て。
 込めた弾丸は11。不自由な手で掘り進めていくと、薄白い塊が顔を出す。……傷付いた魂人だった。シキはスコップで掘るのをやめ、手の指と脚の先で慎重に掘り出す。手足の先が透けている其の魂人は、死んだように目を閉じていた。

「……おい、大丈夫か……」
「……う」

 槌の重みが消えたからだろう。軽く呻くと、魂人はげほ、と数度咳をする。
 ――生きている。
 其の事にシキは酷く安堵して……無理せずに横になっているように言って次の墓標へと移動する。

「つちとゆび、えらんで」
「代償は既に払っている。見れば判るだろう?」
「ほんとうだ」

 目の前がぐらぐらする。出血は殆どないとはいえ、肉が露出している状況で土を掘ればどんな痛みが襲って来るかなんて判っていても吐き気がする。
 全てを助ける事は不可能だろう。其れは理性でも、本能でも判っている。
 だからといって、止めるのか? 己に負けて、痛みに負けて止めるのか?
 止めるものか。代償は既に支払ったんだ、せめて元くらいはとってやる。
 手で掘れなくなったら狼の姿になれば良い。獣の姿の方が、穴を掘るには向いているだろう。
 何より、苦しいのはきっと土の下にいる魂人たちだから。

 だから、シキはざくざくと掘っていく。
 動ける限り、動く。己の中の弱気になんて負けて堪るか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャオ・フィルナート
【毒氷】

指、ね…
俺は別に、構わないけど
呪いがあるから

うん……
晃さん、毒持ってるよね
頂戴
強いの

うん
即死さえしなければ、なんでも

受け取った猛毒は躊躇いなく飲み込み
同時に【悪魔に魅入られし者】を発動

超再生
それが俺にかけられた呪いのうちの一つだ
頭さえ残っていれば何度でも自然治癒される
痛みには慣れてるから…今更何も感じないよ

UCの反動で切断面からの流血は暫く止まらないけれど
なんの躊躇いも無く指を切り
魂人を救助していく
指が再生しきるまでは掘り起こすのも多少面倒だけど
あぁ…晃さんの分も助けとく?

…大丈夫なのに
過保護だね

まぁ、俺のためじゃなく
あの子(共通の知り合い)のためなのはわかってるけど

…頂戴、一応


堺・晃
【毒氷】
これはまた随分と悪趣味な戦場だ
嫌いではないけれど

それで?
僕は自分の指を捧げるつもりは無いんですけど、何故ここに?

……強いのね
それは、命に害があるレベルという認識でよろしいですか

承知しました
どうぞ

調合済みの猛毒を渡す
別に彼が何をしようが、最悪死のうが興味は無いが
共通の知り合いに非常に悲しむだろう少年がいるので
無茶をし過ぎないようストッパーとして
それと指が足りず切断し辛くなった際に指を飛ばしてあげる役として控えておきます

…体は再生されても
毒が効かないとしても
一度に多量の血を失えば疲労くらいはするでしょう
多くても我々二人分…足の指も入れて40人分ですか
それでやめておきなさい
解毒剤、要りますか



●毒を喰らわば土まで

「つちとゆび、えらんで」

 墓標は無情に問う。
 シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)と堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)は其の声を聴く。子どもの声か、と晃はさして興味もなさそうに分析する。

「俺は別に、構わない」

 言うとシャオは刃物を取り出して、躊躇いなく人差し指を飛ばした。血飛沫が舞い、ぼとりと落ちた指はずるりと墓標の傍の土に呑み込まれていく。

「晃さん」
「何です? 僕は差し出す気はありませんが」
「知ってる。毒、持ってるよね。頂戴。強いの」
「――強いの、ね」

 其れは、命に害があるレベルという認識で宜しいですか。
 晃が問うと、すんなりとシャオは頷いてみせるのだ。即死するものでなければ、何でも良いと。
 では、と晃は強毒を手渡す。常人ならば痛みに昏倒しかねないレベルの毒だ。

 蓋を開けて飲み干すシャオを見ながら、晃は冷めた眼差しをしていた。
 別に彼が何をしようが、人助けの為に死のうが興味はない。けれども――共通の知り合いに、非常に悲しむだろう少年がいるので。
 其の少年の為に晃は此処にいる、といっても良い。無茶をし過ぎないように、痛みで指を飛ばせなくなったら、代わりに飛ばしてやれるように。

「……う」

 言葉なくシャオはふらつき、其れでもユーベルコードを発動する。超再生と不死の呪詛。其れが、シャオに数々かけられた呪いの一つ。苦しかろうが痛かろうが、死に逃げる事が出来ない呪い。
 含んだ毒は攻撃力へと変わり、躊躇っても指を飛ばせるくらいにはなってくれるだろう。だが、副作用で流れる血は止まらない。ぽたぽたと指先から血を流しながら、シャオは其の墓標にスコップを突き立てる。


 ……。
 ……助けた魂人は、何人になっただろうか。
 朦朧とする頭でシャオは考える。シャベルを持つ手に力が入らない。そうだ、まだ薬指と小指が再生していないのだ。

「やめておきなさい」

 見守るだけだった晃が、初めてシャオを止めに入った。
 丁度魂人を掘り起こし、無事を確認して――次の墓標へとシャオが向かおうとしている所だった。

「身体は再生されても、毒が効かないとしても、一度に多量の血を失えば疲労くらいはするでしょう。それでやめておきなさい、解毒剤を飲みますか」
「……」

 多量の血。
 シャオが手元を見下ろすと、今までスコップを握れていたのが不思議な位持ち手も両手も真っ赤に汚れていた。固まりかけの血が、ぶらん、と傷口から垂れ下がってもいる。

「……大丈夫なのに。過保護だね」

 まぁ、俺の為じゃなくて……あの子のためなのはわかってるけど。

「頂戴、一応」
「ええ、宜しい」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・イオナ
しょ、触手ならいくらでも生やせるんですけど、コレはダメですか?
……ダメか。
仕方ない。猫の手の指は各5本。足は人間だから、これももちろん各5本
たったの20回かぁ。本当はもっと助けたいけど、まずは自分のできる分を助けないと。

UC【幼童電脳遊戯】発動
二人の|禿《子供》が出てくる
『「ダメ」』
あぁ、うん。両腕は君達にあげたんだっけ。でも、ごめん使わせてくれないかな。後から義手とかでなんとか君達を握れるようにするからさ 。
……こんな冷たい土の中じゃ魂人たちが寒いと思うからさ、早く助けたいんだ。
(静かに頷いて貰う)

良いの?

君達の指は使わなくていいから、掘り起こすの手伝って欲しいかな。触手だけじゃきつい



●流石に触手はNGと墓標も供述しており

「しょ、触手ならいくらでも生やせるんですけど!」
「……だめ」
「ダメか」

 上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)は初っ端から無謀な交渉を試み、秒で断られた。いや、そもそも無限に生やせる触手ってなんだ。ちょっと気になるじゃないか。
 それは兎も角。
 イオナは己の手を見た。猫の手の指は5本ずつ。脚は人間だから、これも5本ずつ。

「……たったの20回かぁ」

 もっと助けたいのに。
 この広い広い墓地全部を掘り返してやりたいのに。
 ……でも、とイオナは手をぐっと握る。まずは自分の出来る分を助けないと。
 そう思っていると。

『『だめ』』

 子どもの声が、イオナの後ろで聴こえた。振り返れば其処には、二人の禿の姿。
 其の姿にああ、とイオナは苦笑する。両腕は「|号『二朝』《きみたち》」にあげたんだっけ。

「でも――ごめん! 使わせてくれないかな! 助けを待ってる人がいるんだ!」

 ぱん、と両手を叩き合わせ、お願いだとイオナはいう。
 禿二人は黙して、イオナを見ている。

「もし治療できなくてもさ、後から義手とかでなんとか、君たちを握れるようにするから! ――こんな冷たい土の中じゃ、魂人たちだって寒いだろ? 早く助けてあげたいんだ」
「……」
「……」

 禿二人は見つめ合う。互いの意思を確認し合っているかのように。
 そうして同じ結論だと頷くと、イオナに向かって頷いた。

「へ。……い、いいの?」
「……」

 こくり。
 もう一度禿は頷く。

「や、やった……! ありがとう! あ、君たちの指は使わなくていいから、掘り起こすの手伝ってほしいかな! 触手だけじゃちょっときついかも!」

 そうしてイオナは墓標に向き直ると、言った。

「僕の指を、差し出します!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
…酷い場所ね…
全て救えるとは思っていないけれど、出来る事はやっておくべきでしょう?
一つ、試してみたい事もあるし

掘り起こす選択肢は「つち」でいいのかしら?
・『我が工房に帳は落ちず』を発動、召喚した工兵のうち、まず一体に合成音声で答えさせて掘り起こす
・掘り起こした工兵の指が飛んだならば、残った全機で同上のように出来る限り掘り起こす
・召喚者の私の指が飛んだのならば、残りは19人分掘り起こさせる
…もし私の場合でも、実は義足義腕だから感覚を切っておけば問題ないのよね…
どちらの場合でも修理しながら行えばもっと行けるでしょうけど…ごめんなさい、時間もあまりないの

※アドリブ・絡み歓迎



●鐵の心

「……酷い場所」

 エメラ・アーヴェスピア(歩く|魔導蒸気兵器庫《ガジェットアーモリー》・f03904)は墓標が立ち並び、土が所々膨らんでいる粗雑な墓地を見て零した。
 全て救えるとは思っていない。けれど、出来る事はやっておくべきだ。

 ―― 一つ、試してみたい事もあるしね。

「つちとゆび、えらんで」

 まずは、と墓標の前に立ったエメラに、名すら刻まれていない墓標が問う。
 エメラは其処でユーベルコードを発動する。およそ3桁にのぼろうかという数の魔導蒸気工兵が現れて、エメラの傍に侍った。其の内の一人に指示を与える。

『合成音声で“指を差し出す”と応えなさい』、と。

 斯くして工兵は答える。

「指を、差し出す」

 すぱん。
 そんな音がして――飛んだのは、エメラの指だった。鋭利すぎる刃物で切ったかのように。

「……成る程。そうそう抜け道は作ってくれていないみたいね」

 じくじくと指が痛むのを押し堪えるように、エメラは落ち着いた調子で応える。
 でも、これで救う許可は得たわ。さあ、掘り起こしなさい工兵たち。なるべく優しくね。

「――まあ、私の場合でも」

 隠したカードはそのままに、エメラは呟く。己は義手義足であるから、感覚を切っておけば飛ばされても問題ないのだと。
 だが不便なのには変わりない。修理しながら助けるには、時間がない。土の圧迫というのは決して侮ってはならないものだ。彼らとて死なないという保証はないのだ。
 だからエメラは淡々と、工兵たちに魂人を掘り起こさせていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
どうしようとも、わたしだけで全員を助けるのは無理ですか……。
それでも、差し出せば1人でも多く救えるというのなら、指くらいどうということはありません。
引き換えた指がどうなるのかわかりませんけど、たとえ不可逆だとしても答えは同じです。

失った指は地獄の炎で補えば、スコップを握るのに不便はないでしょう。
【痛みに耐え】るのも得意ですから、何の支障もありません。
それよりも、重傷のまま生き埋めにされているのでしたら、魂人さんたちこそ苦しいはず。
少しでも早く出してあげたいですから、【念動力】で操るスコップを増やし作業を急ぎます。

これで20人……。
今は助けられなかった方々も、救出する機会が来ることを願います。



●地獄が君を助く
 何をどうしようとも、救える数には限界がある。
 レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)もまた、其の事実の前に立ち尽くしていた。だけれど、と目の前に聳える墓標を見詰める。
 差し出せば一人でも多く救えるというのなら。指くらいどうってことはありません。

「つちとゆび、えらんで」
「指を差し出します」

 すぱん。
 ぼとり。
 レナータがそう応えた瞬間、目がくらむような痛みと共に指が飛んだ。
 落ちた指は食われるように、土の中へと沈んでいく。
 ぷし、と血がしぶいて、震える手を持ち上げてみれば、確かに綺麗に指が飛んでいる。……感覚で判る。これは不可逆ではない。この戦場に決着がつけば、自然と指は戻って来る。
 其の指に、地獄の炎を宿して――かりそめの指へと変える。こうすればスコップを握る手にも支障はない。
 痛みだって平気だ。痛いものは痛いけれど、耐えるのは得意だから。

 そうして複数の墓標を回り、数本の指を捧げた後、スコップ数本を念動力で宙に浮かせる。
 これで平行作業が出来る。一刻も早く、出してあげなくちゃ。一刻も早く……!

 そうして――手の指がなくなったら、足の指を。
 20の指を全て捧げ、20人を救って、レナータは伝った汗を腕で拭った。其れはきっと痛みによる汗ではない。

「……あとは、他の猟兵さんに任せましょう」

 必ず助けは来ます。
 諦めないで。
 レナータはそう言った。土の下まで届いていると、信じている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ……この世界は、本当に意地悪ね。でも、わかってここに来たんだもの〈覚悟〉はできてるわ。わたしじゃない誰かなら、もっと別のやり方を見つけるのかもしれないけれど、わたしにはこれしか思いつかなかったから――ッ!

 【UC:裁きの冬、来たれり】(WIZ)を発動よ。〈激痛耐性〉の軟膏と細雪の継続治癒で、わたしの身体が持つ限り、指と引き換えに一人でも多く掘り出すわ。どうか一人でも多く助けられるよう〈祈り〉を込めて、スコップを握るわ。

 泣いちゃダメ、泣いちゃダメ……! わたしはみんなを助けるために来たんだもの、泣いちゃったらせっかく出られたみんなも悲しませちゃうから。

(アドリブ等々大歓迎です)



●寒さでは癒えぬ
 ――この世界は、本当に意地悪。

 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は再三判っていた事を、再び心中で呟く。
 でも、判って此処に来た。だから、覚悟は出来ているのだ。

「わたしじゃない誰かなら、もっと別の冴えたやり方を見付けるのかもしれないけれど……わたしには、これしか思い付かなかったから」

 さあ、つちとゆび、えらんで。
 墓標が問う。
 ゾーヤはユーベルコードを発動する。周囲にはらはらと雪が降り始め、寂しい墓地に風が冷たさを運んでくる。

「私の指を、差し出すわ!」

 ばつん!
 まるで鋏で両断したかのような音を立てて、ぼとりとゾーヤの左手人差し指が大地へと落ちる。ずるり、と食われるかのように大地は指を呑み込み、ゾーヤは寒さではなく痛みに震える手をスコップへ伸ばした。
 万物を凍てつかせる細氷が、少しずつゾーヤの指を癒していく。けれど、指を両断された痛みというのは思いの他引き摺るものだ。
 ゾーヤは祈る。祈りで痛覚を誤魔化しながら、スコップで優しく土を掘り返していく。
 そうしてやっと一人。助け出した魂人の無事を確認すると、次の墓標へ。

「つちとゆび、えらんで」

 墓標は無情だ。
 ゾーヤが再び「指を差し出す」と答えても、其の声色が優しくなることは決してない。
 今度は右手中指が飛ぶ。痛い。其れ以上に、心が痛い。こんな、こんな冷たい土の中に埋められて。利用されるばかりなんて、そんな――

「泣いちゃ駄目……泣いちゃ駄目!」

 ゾーヤは己に言い聞かせる。痛いから涙が出るんじゃない。この意地悪な世界がどうしようもなくて、涙が出そうになる。
 でも、駄目。
 わたしは皆を助けるために来たんだもん。泣いちゃったら、せっかく出られた皆を悲しませちゃうから……!

 細氷は、降り続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロリータ・コンプレックス
はっきり言って。こういう単純なのは好きよ。ただ痛いだけでしょ。そんなの苦痛のうちに入らないわ。(冷や汗拭いながら)

大丈夫。【生まれながらの光】が私を守ってくれる。
ひたすら【つち】を選んで掘れば良いのよ。
保身に走ることはイコール闇の眷属への敗北宣言。
両腕が無ければ足で掘る。
足が無ければかじってでも掘るわ。
大丈夫。時間制限は無いのだもの。
時間をかけても出来るところまで救い出す!
大丈夫。ロリータちゃんの他にも猟兵はいる。
中には常識外れな回復手段で助けてくれる人もいるかもしれない。
そこまでの奇跡は無くてもグリモアベースまで運んでくれる人くらいはいるでしょ。
大丈夫よ。ロリータちゃんひとりじゃないもの。



●ひとりじゃないもの

 こういう単純なのは好きよ。

 ロリータ・コンプレックス(死天使は冥府で詠う・f03383)は墓標の前に立つ。流れているのは冷や汗じゃない。拭って、墓標の問いかけを聴く。

「つちとゆび、えらんで」
「【つち】よ」

 大丈夫。あらかじめ発動しておいたユーベルコードが、切断された指を治療してくれる。だからこうやって指が飛んでも痛くなんてない。
 保身になんて走らない。其れはイコール、闇の眷属への敗北宣言となるのだから。
 最初はスコップで掘る。そうして6人を掘り出した頃にはスコップは握ってもぐらぐらと揺れるばかりで掘れなくなったので、脚で――少し乱暴になってしまうけれど――スコップを巧く土に突き刺して、掘り出す。
 10と4を数える頃には立っている事も難しくなった。なのでロリータは、口で土を口に含み、吐き捨てる事で掘り出す。

 掘る。
 掘る。
 身体のあらゆるところを使って掘る。

 大丈夫。
 ロリータちゃんの他にも猟兵はいる。中には常識外れな回復手段で助けてくれる人もいるかもしれないし、其処までの奇跡がなくてもグリモアベースまで運んでくれる人くらいはいるはず。

 大丈夫。
 大丈夫よ。たとえ文字通り、土を食んでも。
 ロリータちゃんは、一人じゃないもの。

 腕を、脚を、口を。
 身体全てを使ってロリータは只管に土を掘り続ける。只管に。只管に。だって子の下には、助けを待っている人がいるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…何から何まで悪趣味な場所ね。これを造った輩の性格がうかがえる

…だけど、他に妨害が無いならば、幾らでも準備ができるということ

…誰一人見捨てたりはしない。必ず、助け出してみせるわ

事前に肉体改造術式により体内の血流を操作して出血を最小限に留めUCを発動
|「痛覚遮断の呪詛」《●激痛耐性》により感覚を制御し指を失う痛みを感じる事なく受け流し、
「代行者の羈束・時間王の印」により数秒前に巻き戻して●切断された|部位《指》を接続、
「土竜の呪詛」の魔力を溜めた掌で触れて|地面に穴を開け《●トンネル掘り》魂人を怪力任せに救出する

…大丈夫?貴方を助けに来た者よ
…今、そこから救出するから動かないで、じっとしていて



●例え何度痛みを背負おうとも
 何から何まで悪趣味な場所ね。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は心中で吐き捨てる。これを作った輩の性格が窺い知れるわ。
 だけど、他に妨害がないならば、幾らでも準備が出来るというもの。誰一人見捨てたりなんかしない。必ず助け出してみせる。

「つちとゆび、えらんで」
「指を差し出すわ」

 そう応えるリーヴァルディの顔に恐怖はない。
 ばづん、と音がして指がぼとりと落ちる。|痛覚を遮断《・・・・・》しているがゆえに何とも言えない感覚が奔り、リーヴァルディの花のかんばせが歪んだ。出血は――大丈夫、少ない。体内の血流操作も巧く行っている。
 リーヴァルディの左目がきらり、と輝く。其処に記されたのは“時間王の印”。時間逆行術式により数秒前に己の身体を巻き戻し、切断された指を素早く拾い上げると接続する。
 ――デメリットを上げるとすれば、其れはリーヴァルディの指は何度でも飛び続けるという事だ。疲弊してユーベルコードが解除されてしまえば、呪詛が切れてしまえば、何が巻き戻って来るか判らない。
 其れでも、とリーヴァルディは盛られた土の前に立つ。
 魔力を溜めた掌で土に触れると、土がひとりでに動いていく。そうして腕を突っ込むと、まるで引き抜くかのように、意識を失った魂人を救出するのだった。

「……起きなさい。大丈夫よ、猟兵が助けに来たわ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

箱庭・山岳
「『ゆびとつち、えらんで』との事だが、ではこうすればどうする?」

UC【バウンドボディ】を使い手指・足指を消失させた後に、手の甲に「人間の指」に見える突起を一本生やしてみる。
「『ゆび』を持って行け」

これで突起の方が削られるのならしめたもの。シャベルの持ち手を包み込む形で持って使い、墓を掘り返す。

問題は20本を超えてからだろうか?一人が20以上の「ゆび」を捧げても墓標は反応するだろうか。するのなら調子に乗って指型突起を作り、捧げ、掘り続ける

失える体積の限度としては両の腕と足が失われる程度だろう。
これ以上を失った場合にUCを解除するとどうなってしまうのか不安がある。

「さて何人掘り出せたのやら」



●ぶつん。バウンド。ばつん。

「では、こうすればどうなるだろうな?」

 箱庭・山岳(ブラックタールの電脳魔術士・f02412)は身体をバウンドモード――球体のような形へと変えると、手の甲辺りに指のような突起を一つ生やした。

「つちとゆび、えらんで」
「ゆびを持って行け」

 ――ばつん!

 鋏を勢いよく閉じるような音とともに飛ばされたのは、先程生み出した指のような突起。
 指一本分の体積を山岳は失い、けれど代わりに魂人を救う権利を得る。

 成る程、抜け道はない訳ではないか。

 山岳はバウンドモードのまま、シャベルの持ち手を包み込むような形で持って、魂人を掘り出す。

 ――つちとゆび。
 ――指を持って行け。

 ――つちとゆび。
 ――指を持って行け。

 そう応える度に、山岳の身体からは確実に体積がなくなっていく。落ちた指を拾えれば良かったのだが、落ちた指は大地が呑み込んでなくなってしまう。

 丁度20本を差し出した辺りだろう。山岳は此れ以上体積を減らすのは危険だと感じた。
 だが、収穫はあった。20本分、つまり20人の魂人を救い出す事は出来たのだ。

「そうそう幾つも抜け道を作ってはくれないか……まあ良いだろう」

 其れでも、命を助けられたのならば。
 体積が減るくらい、どうという事はない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サク・ベルンカステル
助けられるのは指の数か、、、
ならば腕の数を増やすとするか、、、
UC剣鬼顕現を使用する
肩より自身の血液で出来た1対の腕が生み出される

全身を覆わなければ狂戦士化せず意識を保てそうだな

体内の魔の力が活性化し何も考えずに周囲に暴力を振るいたい衝動を抑えつつ、剣鬼の指を手に持つ黒剣で落とす

すまぬ、、、私には果たすべき誓いがある。誓いを、、、復讐の刃を届かせる為に今助けられるのは10人だけだ、、、

どうしようもない惨劇を生き抜いた身として、異端の神や闇の種族の不条理を断つ者として全てを助ける事が出来ぬのは痛恨の極み
だが、どれ程心が痛もうと誓いを果たすまで剣を握れぬようになる訳にだけはなれない、、、



●贖うように剣鬼は掘り続けた
 助けられるのは指の数分だけ。
 なら、|腕の数を増やせば《・・・・・・・・》良い。
 サク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし者・f40103)は躊躇いなくユーベルコードを発動し、自身の血液で一対の腕を顕現させる。

「――全身を覆わなければ」

 暴走して意識を保てなくなる事はなさそうだ。
 そう呟く彼の頬に、汗が一筋伝う。

 ――何も考えずに剣を振るいたい。
 ――暴れ回って、全てを切り刻みたい。

 そんな衝動と戦いながら、墓標の前に立つ。

「つちとゆび、えらんで」
「【つち】だ」

 サクは迷いなく言うと、血液で出来た手の指を黒剣で斬り落とす。
 ぽとり、と落ちた指は血になってじわりと広がった。

 そうして墓標が何も反応しないのを確認すると、サクはスコップを取る。
 此れにも墓標は何も反応しない。ならば、とサクは土を掘り返していく。

 すまない。
 すまない。

 何度も心中で謝りながら。

「私には、果たすべき誓いがある。誓いを……復讐の刃を届かせる為に、今助けられるのは10人だけだ」

 どうしようもない惨劇の中を生き抜いた身として、異端の神や闇の種族の不条理を断つ者として、全てを助ける事が出来ないのは痛恨の極みだった。
 じくじくと痛むのは手ではない。サク自身の心が、苦しい、悔しいと痛んでいる。
 だけれども。どれ程痛みを背負おうとも、誓いを果たすまでサクは剣を握らねばならないのだ。剣を握れぬようになるわけには、いかないのだ。

 すまない。
 すまない。

 其の声はいつしか、肉声になっていた。
 只管に謝りながら、剣士は土を掘り進めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月05日


挿絵イラスト