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闇の救済者戦争⑤〜軋む病

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争

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 ぎし、ぎし、ぎし。
 鉄の枷が、内に無数の針を秘めた鉄の処女が、風に吹かれて耳障りな音を立てる。それらは森の中にあって、木々と同じく地から生えていた。
 その中を、真っ白な足が幾つも幾つも通り過ぎて行く。
 彼らは、魂人だった。元はオラトリオだったのだろう。背に負う翼は白く大きい。
 だが、翼のある場所は背ばかりではなかった。胸が、腕が、頭部が――否、もはやその全身が白い翼に覆われている。
「ア、アア……」
 魂人達の唇から零れるのは、苦痛の呻きだ。幾重にも重なる声はか細い呪詛じみて、森の拷問器具の表面を撫でて行く。
 瞬いた瞳は、現を映してはいない。けれど彼らは、確実に、一つの目的地に向かって歩を進めていた。

「鉄と病の森って、知ってるかしら」
 ロッタ・シエルト(夜明けの藍・f38960)は、グリモアベースに集った猟兵達にお辞儀をするとそう告げた。
 そこはダークセイヴァー第三層に広がる、無数の拷問器具が自生する常闇の森だという。
「どうしてかは分からないけど……今は、元オラトリオの魂人だけがここに集まってるみたいなの」
 集まった魂人達はみな、全身から無数の翼が生える奇病『翼圧症』に侵されている。翼圧症に罹患した者は、激痛と幻覚に苛まれ続ける事になるという。
「魂人達はケルベロス・フェノメノンの元を目指してるわ。この、ケルベロス・フェノメノンが禁獣領域から解き放たれた時に、翼圧症に汚染されてしまったみたい」
 彼らは本能的かつ無意識に、『神殺しの獣』を殺さなければならないと感じ取った。それをきっかけとして、翼圧症を発症したらしい。
「みんなが鉄と病の森に着くと、翼圧症に汚染された魂人達が襲いかかってくるわ」
 翼圧症のもたらす激痛と幻覚。それに苛まれるまま、彼らは猟兵達を攻撃して来る。
「残念だけど、説得は無意味だと思って。一度、戦闘不能にして、安全な場所に連れ帰るしかないの」
 オブリビオンでもない魂人達を殺す訳にも行かない。そもそも、永劫回帰でほぼ無限に復活を繰り返してしまうだろう。
「なるべく魂人に永劫回帰を使わせずに戦闘不能に追い込めたら……きっと、戦いが有利になると思うわ」
 気を付けて、行ってらっしゃい。
 ロッタはそう言って、掌にグリモアを浮かべた。


牧瀬花奈女
 こんにちは。牧瀬花奈女です。このシナリオは一章のみで完結する戦争シナリオになります。
 断章無し・オープニング公開時点から、物理的に送れなくなるまでプレイングを受け付けます。

●プレイングボーナス
 なるべく魂人に「永劫回帰」を使わせず、戦闘不能に追い込む。

●その他
 完結を優先して執筆を行います。そのため、プレイングが送れなくなった後は失効までに書けた分だけ採用という形式になります。タイミングによってはプレイングに問題が無くても不採用になってしまう場合がありますので、ご了承下さい。
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第1章 集団戦 『翼圧症患者』

POW   :    おぞましく伸びる翼
【全身から伸びる翼】が命中した敵を【さらに伸びる翼】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[さらに伸びる翼]で受け止め[全身から伸びる翼]で反撃する。
SPD   :    痛苦の叫び
【体内に生えた羽で塞がれた喉】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【肉体の羽毛化】の状態異常を与える【痛苦の叫び】を放つ。
WIZ   :    時空凍結翼
【全身に生える翼】から【オーロラのような光】を放ち、【時を凍らせる現象】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:ろきと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カイ・シュリック
同じオラトリオとして、この状況は見ていられない
彼らが目的地に辿り着いたとしても救われはしないだろう
一刻も早く止めなければ

まずは物影に隠れつつ『クロスボウ』で攻撃しよう
狙うのは腕や足といった致命傷にならない部位
無理に当てなくてもいい
気を引くついでに無力化を進められれば幸運、くらいだ

相手が此方を探し始めたら気付かれないよう距離を詰めよう
そのまま詠唱を始められたらそれはそれ
相手が叫ぶより早く決めなければ

十分な距離まで近付けたらUCだ
最優先は猿轡
叫びを封じたいのもあるが……あの声があまりにも苦しそうで
うまく行けば残りの道具も放って無力化しよう

封じられた相手は気絶させて運ぶ
……この病も治せるといいんだが




 ア、アア、ア――
 全身を白い翼に覆われた魂人達の呻きが、カイ・シュリック(紫苑の殺戮代行者・f02556)の胸の内を引っ掻く。
 彼の翼は黒と見間違えそうな茶で、髪に咲く紫苑の花も数は多くない。しかしそれでも、同じオラトリオである事に変わりは無かった。翼圧症に苛まれる同胞の魂人の姿は、カイの心を重くする。
「……目的地に辿り着いたとしても、救われはしないだろうな」
 一刻も早く止めなければ。
 独り言つと、カイは森に自生する拷問器具の陰に身を隠した。先頭を歩む魂人の足を狙い、クロスボウの矢を放つ。黒い矢は、鳥めいた形状に変化した足を易々と貫いた。
 すかさず次の矢を番え、隣の魂人の腕を射抜く。カイが次々と放つ矢は、しかし急所を穿つ事は無い。
 勿論、百発百中とは行かなかった。何割かは外れ、魂人の真紅の瞳が周囲をさまよう。その人数が片手の指では足りなくなった時、カイは頃合いだと判断した。
 木々や拷問器具の合間に身を隠しつつ、魂人達との距離を詰めて行く。唇が緩やかに、ユーベルコードの詠唱を開始した。
 魂人達の視線がカイに突き刺さる。呻きが僅かな変化を見せた。喉を塞ぐ羽が、開いた口から零れ出る。
 だが、魂人の声が叫びに至るよりも、カイが猿轡を放つ方が早かった。痛苦の悲鳴を封じられた魂人は、声ならぬ声を漏らす。
 カイがユーベルコードで紡ぎ出したのは、猿轡と手枷。そして拘束ロープだ。カイはその中で、猿轡を優先して魂人達に向けて命中させて行った。
 肉体を羽毛化する叫びを封じたいという気持ちは、勿論ある。しかしそれよりも、激痛と幻覚の中で呻く声を塞ぎたい思いが強かった。あまりにも苦しげなその声を、ほんの一時でも早く止めたい。
 それから瞬きを数度するだけの時間が過ぎた後、カイは目に見える範囲にいる魂人達全てに猿轡を噛ませる事に成功した。そうなれば、次は手枷と拘束ロープだ。立て続けに放たれるその二つが、魂人達のユーベルコードを完全に封じる。
 戒められた魂人達を、カイは手早く気絶させて行く。ふわりと舞う羽根がまた、胸の奥を刺した。
「……この病も治せるといいんだが」
 溜め息と共に呟いて、カイは意識を刈り取った魂人達を運び始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
【花園】

その惨状を見て、迷わないで前に出る
救うためにも倒さないといけないのなら
それも全力で、でも護る為にも
「大丈夫だ。俺達に任せてくれ」

永劫回帰を使わせずになら俺はこれだ
戦闘開始と同時に【戦文字「重縛鎖」】を使用
縛り上げた魂人に近づいて
極力辛くないように意識を刈るよ
「ちゃんと痛みから、解放するからな」

攻撃は辛さからなのがわかるから、魂人の攻撃は怯まず耐える
この子達の痛みと辛さを少しでも俺が引き受けるようなつもりで
「辛いよな。大丈夫…俺達が来たから」

俺は只管文字で縛っては意識を刈取るのを繰り返すけど
少し心配な子は相棒に癒してもらってから回収も手伝うよ
「…本当に、可愛そうだ。ちゃんと助けないとな」


キアラ・ドルチェ
【花園】

こんなの…ってない
酷すぎる、魂人さん達が可哀想すぎる

でも、襲い掛かって来るなら、何とかしなきゃいけない…なら…

暗殺者姿で両手にスティレットを構え、皆と連携しながら相手の多い所へ飛び込み
ミセリコルデ…レクイエム!
感覚遮断と麻痺効果のあるこのUCなら、相手の動きを止め無力化しつつ翼圧症の痛みからも一時的に解放出来るかも?

それでも動く方には、スティレットの柄で峰打ち
戦闘不能になったら、【医術】と【薬品調合】で手当てして運びます
「ごめんなさい…私にはこんな事しかできない…」

ケルベロス・フェノメノン…奴を倒せば、彼らを病から解放できる?
ならば…必ずあの『現象』を止めてみせるっ、と心に強く誓います


葛城・時人
【花園】

惨い事を…
絶対に許せないと仲間たちと言葉を
全力で相対し、必ず平穏をと

「ククルカン」
頼もしい仲間はきっと他の方法で無力化するだろう
けど俺はやっぱりこいつ
「頼む。彼らを削って。でも殺しては駄目」
呼ぶと一声鳴いて出て来た俺の蟲に話しかける
「倒れたら癒しをきちんとだ…良い?」

彼らには言葉が通じる
もう十五年程一緒に居るしね

「よし任せた!往け!」
叫び白燐大拡散砲詠唱
今日消えて無くなるのは彼らの戦意と意識だけ!

突進で昏倒した惨い姿を抱え次々に救いだす
酷い傷は癒している…これならいける!

仲間達と呼応し救いながら必要なら幾度でも詠唱を
彼らと同じ白い翼が侵すのではなく和らげると
猟兵が救い手だと示す為にも!


エルフィア・エルシュタッド
【花園】

成程、永劫回帰を使わせずに、か。
斃せというよりは繊細さが必要だが、至極判りやすくて助かる。

しかし。(苦々しく周囲を見渡し)
誰の趣味かは知らんが、悪趣味極まりない森だ。

皆と連携を取り進む。
武器やUCからすれば前に立つか殿が無難か? どちらにしても異議はない。
此方には癒し手が居るのだから、ある程度の遠慮は不要だな。
UCを利用し、黑き劍に魂人達の生命力を喰らわせ無力化を図り、
無力化した魂人を避難させるのは遠隔攻撃が可能な者に託す。
攻撃は技能を用いて、なるべく余計な負傷は増やさぬよう対処。

黑き劍よ、喰らい過ぎるな。
魂人達の無力化が叶えばそれでいい。
一人でも多く、斯様に悪趣味な森から連れ出すぞ!




 激痛と幻覚の中で、魂人達が呻いている。
「こんなの……ってない」
 その苦痛に満ちた声を聞き、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)はぎゅっと眉を寄せた。
 酷すぎる、魂人さん達が可哀想すぎる。
 慈しむ心がキアラの胸を苦しくした。
「こんな惨い事、絶対に許せない……認めない!」
 蹂躙された魂人達の姿が、葛城・時人(光望護花・f35294)の指先にちりと火を灯す。力無き者の盾となる事を誓った時人にとって、眼前の光景は決して容認する事は出来ない。
 戦わなければならないのなら、全力で相対し、必ず平穏を。それが、今の時人達に出来る精一杯の事だ。
 白い羽毛を散らしながら、魂人達がここに転送された四人の猟兵達を捉えた。全身を羽に覆われた痛々しい姿に、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)はしかし迷わず前へ出る。
「大丈夫だ。俺達に任せてくれ」
 落ち着いた声音は、魂人達に正しく認識されてはいないのだろう。それでも救うために倒さなければならないのであれば、全力で挑むという思いは相棒と同じだった。
 でも護る為にも。
 陸井の右手が矢立を取り出す。
「成程、永劫回帰を使わせずに、か」
 エルフィア・エルシュタッド(闇月の魔術剣士・f35658)はグリモア猟兵の言葉を思い出していた。今この場に何人の魂人がいるのか。正確な数を把握する事は難しいが、そう容易い事ではないのだろう。
 斃せというよりは繊細さが必要だが、至極判りやすくて助かる。エルフィアとしてはそう思う。
 しかし――切れ長の赤い瞳が苦々しく辺りを見回した。
「誰の趣味かは知らんが、悪趣味極まりない森だ」
 刀身に真紅をまとう黒剣を、エルフィアが軽く振るう。それが、戦闘の開始を告げた。
 陸井が記した『重鎖』と『縛鎖』の戦文字が、幾つにも分裂して戦場に広がって行く。それは魂人達へ、さながら鎖の如く絡み付いた。戦文字に戒められた魂人達が、ユーベルコードを封じられて羽根を暗がりの中へ散らす。
「ちゃんと痛みから、解放するからな」
 動きを止めた魂人へ近付き、陸井は短刀銃の銃床で後頭部を強打した。一撃で意識を刈り取られた魂人が、音も無く暗い森の地面へ倒れ伏す。
 叫び声を上げたのは、未だ陸井の戦文字が届いていない魂人だ。短刀銃を握る右腕に羽毛が生え、激痛が走る。だが陸井は、その痛みに怯まず耐えた。
 辛いよな。届かないと分かっていながら、陸井は魂人に呼び掛ける。
 この攻撃は、魂人の辛さから生まれたものだ。受け止める事で、その苦痛を少しでも引き受けられたら。優しい願いが活力を生む。
 今のキアラの装いは、普段の白魔女の姿ではなく、暗殺者を連想させるものだった。
「何とかしなきゃいけない……なら……」
 キアラの胸を刺す痛みは些かも減じていない。それでもスティレットを両手に構え、エルフィアの斬撃に合わせて魂人達の中心へと飛び込んだ。
 次の刹那、キアラを取り囲む魂人達にスティレットが舞う。鋭い一刺しは魂人達から感覚を奪った。翼に覆われた腕が引き攣るように動きを止める。
 キアラのユーベルコードは痛覚すら遮断するものだ。翼圧症の苦痛から、少しの間でも解放されれば良いと思う。
「ククルカン」
 仲間達の頼もしい姿を見ながら、時人は己が白燐蟲に呼び掛けた。信ずる仲間達は、それぞれの方法で魂人達を無力化している。
 けど俺はやっぱりこいつ。
「頼む。彼らを削って。でも殺しては駄目」
 きゅいと一声鳴いて現れたククルカンに、時人はしっかりとした声で話し掛けた。
「倒れたら癒しをきちんとだ……良い?」
 ククルカンが時人の意思を違える事は無い。もう十五年ほど一緒にいるのだ。思いは通じ合っている。
 時人がククルカンを宙に放つ。
「よし任せた! 往け!」
 瞬き一度の後、戦場全体に|白燐蟲《ククルカン》の大群が出現した。それはさながら、天の川が地上に現出したかのよう。白く輝く地上の川を形作るククルカンは、魂人達へと恐れる事無く突進した。裂帛が時人の口をついて出る。今日、消えてなくなるのは、彼らの戦意と意識だけだ。
 ククルカンの突撃を受けて、魂人達が地面に倒れる。エルフィアは勇ましい突進とタイミングを合わせ、闇をまとう黒剣を振るった。
「黑き劍よ、喰らい過ぎるな。魂人達の無力化が叶えばそれでいい」
 エルフィアは時人の癒しを信頼している。可能な限り余計な負傷はしないよう留意はしているが、必要以上に怪我を恐れる事は無い。
 倒れた魂人達と、力を封じては意識を刈り取る陸井をも含めて、紡ぎ出された白燐光が傷を癒して行く。
 戦闘不能へと陥った魂人達に、キアラが駆け寄った。傷の具合を確認し、手早く薬品を調合して手当てをする。
「ごめんなさい……私にはこんな事しかできない……」
 そう言ってキアラは、比較的小柄な魂人を担ぐようにして運び始めた。
 時人もまた、魂人達の様子を確かめる。酷い傷は白燐光が癒していた。
「これならいける! 助けよう!」
「ああ……本当に、可愛そうだ。ちゃんと助けないとな」
 陸井と共に、時人は魂人達を抱えて安全な場所へと運んで行く。
「一人でも多く、斯様に悪趣味な森から連れ出すぞ!」
 魂人達を運ぶ仲間達を背に庇い、エルフィアは黒剣を振るい続ける。再びの詠唱により紡ぎ出されたククルカンの大群が、白き翼から燐光を零した。
 魂人と同じ白い翼が、身を侵すのではなく苦痛を和らげるのだと、猟兵達が救い手なのだと、少しでも伝わったろうか。
 ケルベロス・フェノメノン。魂人達は、その解放をきっかけとして翼圧症に汚染されたという。
 奴を倒せば、魂人達を病から解放出来るのだろうか。懸命に足を動かしながらキアラは考える。
 ならば……必ずあの『現象』を止めてみせるっ。
 強く心に誓うキアラの後ろで、また一人、魂人が戦う力を失った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
「…むぅ…」
苦痛に苛まれているならば睡眠は困難でしたね…。
ならば彼らに私が行えることはただ一つです。
【香呪『白梅香】の香で寝かせることにします。
…痛みも緩和されるかもしれないと期待しますね。
「…ゆっ…り…休…で…ださい…」
念の為に周囲を警戒しつつ刀を構えつつ技を発動。
リミッター解除し限界突破で【香呪】の効果強化を。
彼らの攻撃は見切りと野生の勘に第六感で回避します。
どうしても一撃を加えなければいけない状況の場合は。
刀の峰を早業の重量攻撃で彼らの身体に打ち込みます。
…ごめんなさい…。

さて。寝た彼らをどうやって安全な地へ運びましょう?




 拷問器具の軋む音に混じって、魂人達の呻く声が聞こえる。
「……むぅ……」
 浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、切り揃えた前髪の下で眉を下げた。
 墨を捉えた魂人達は、白い羽毛を散らしながら距離を詰めて来る。その姿はあまりにも痛々しい。
 この状態では、睡眠も困難だったろうと墨は思う。
 ならば彼らに私が行えることはただ一つです。
 墨は小さく息を吸い、鋭く吐いた。己を縛る枷が、ぱちんと弾ける。袴の裾を揺らし地を蹴った時、墨の力は限界を突破していた。
 魂人に接敵し、佩刀の鞘を払う。周囲を警戒しつつ、墨は愛刀を油断無く構えた。
「……ゆっ……り……休……で……ださい……」
 墨の声は、拷問器具の立てる音にかき消されそうなほどか細く弱々しい。だが、その声に反して、放たれた白梅の香りは強力だった。魂人達は匂い立つ香りが届いた者から眠りに落ち、緩やかな動きで地面に倒れて行く。
 香りが未だその鼻孔をくすぐらぬ魂人が、ユーベルコードに反応して全身の翼をばさりと広げる。墨は赤茶の瞳を見開いて、その翼にオーロラのような光の兆候を見て取った。素早く前方へと跳躍し、その放射から逃れる。
 香の影響は墨の動きに伴って、その範囲を広げて行った。香りに捕われた魂人達は、折り重なるようにして倒れ、眠りへと誘われる。
 耳障りな金属音に、魂人達の立てる寝息が混じり始めた。思いの外安らかな寝姿を見て、痛みも緩和されているかもしれないと淡い期待が胸の内に広がる。
 墨の視覚が及ぶ範囲にいた魂人達は、それから長い呼吸を二度するだけの間を置いた後、みな眠りの虜となった。刀を使わずに済んだ事に、墨は安堵にほっと小さく息を吐く。
 さて。
 静かになった場を見渡し、墨は刀を鞘に収める。
 寝た彼らをどうやって安全な地へ運びましょう?
 小柄な墨にとって、それはなかなかに骨が折れる仕事となりそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【POW】
…なるほど、病気か
なら、あれを使うか…

Tyrfingで【武器受け/受け流し】しつつ、呪いの棘で【武器を投げつける/範囲攻撃/集団戦術】で【指定UC】をばら撒くぞ
仮にも【呪詛/禁呪】だから見た目は…うん、素直に認める。危害加えてるように見えるよな!

ま、実際は病だけを攻撃してるから許してくれ
なんなら、彼らを蝕むものとして痛みや幻覚を呪いとして呪い返してもいいんだぜ?
…嫌だよな、ずっと痛いのは
大丈夫、半端者の異端の神、呪いの神様だけどだけど、そのくらいなら|呪って《祝福》してやるよ




「……なるほど、病気か」
 白い羽毛を散らしつつ迫り来る魂人達を見て、アトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)は銀の瞳を細める。
 なら、あれを使うか。
 自らの行動を決めると、アトシュは太刀を打ち直した魔剣を手に魂人達へ接近した。魂人の全身から伸びる翼を、その魔剣で受け流す。
 白い羽毛の散る敵陣の中へ入り込み、取り出したのは腐敗の呪詛が形となった呪いの棘だ。アトシュの銀の瞳が、右側だけ金に染まる。
 投げ付けた棘を受けて、魂人達が悲鳴を上げた。しかし、その体は羽毛一枚すら傷付いていない。アトシュのユーベルコードは、魂人達の病だけを攻撃するのだ。
 呪いの棘が手元に戻る度、ユーベルコードの力を乗せて魂人達の元へ送り出す。ばら撒かれた浄化術に、魂人達が惑うように動いた。
「まあ、見た目は……うん」
 いくら攻撃するのは病のみとはいえ、投げ付けているのは呪いの棘。そこに込められているのは腐敗の呪詛だ。
 危害加えてるように見えるよな!
 そこはアトシュも素直に認めるところではあった。
「ま、実際は病だけを攻撃してるから許してくれ」
 再び伸びて来た翼をまた魔剣でいなし、棘で病を殺す呪詛を撒き続ける。
 なんなら、彼らを蝕むものとして、痛みや幻覚を呪いとして呪い返しても良い。アトシュはそう思っていた。
「……嫌だよな、ずっと痛いのは」
 銀の瞳が仄かに陰る。
「大丈夫、半端者の異端の神、呪いの神様だけど、そのくらいなら……」
 |呪って《祝福》してやるよ。
 アトシュは手に戻った呪いの棘を、再び魂人達に向けて投げ付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アスカ・ユークレース
うわ、見てるだけでつらそう……彼らの身の為にもどうにかして止めなくては

幸い選択UCならば眠らせて余計な傷をつけずに無力化できます

地形を利用し迷彩をかけた状態で隠れ進路に先回り

スナイパー技術を活かし確実に当て眠らせましょう
撃ったら移動し射撃場所を変えるのも忘れずに、警戒され場所を特定され避けられては意味がありませんから

相手の攻撃はクイックドロウにて軌道を反らして受け流し回避


少々不意打ちの騙し討ちみたいな形になりますが……悪く思わないで下さいね?

アドリブ絡み歓迎




 魂人達の軋んだ呻きが、アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の鼓膜を揺する。
「うわ、見てるだけでつらそう……」
 思わず零した言葉が、誰の耳にも届く事無く常闇の森の中へ溶けて行く。彼らの身の為にも、どうにかして止めなくてはならない。
 アスカは周囲の木々の陰に身を隠すと、迷彩を身にまとった。ピストル式の機械弩を握り、まとめた髪をふわとなびかせて魂人達の進行方向へと先回りする。
 一人の魂人に狙いを定め、機械弩の引き金を引く。ユーベルコードを乗せた弾丸は翼に覆われた肢体を通過し、ただ起きていたいという気持ちのみを打ち砕いた。真紅の瞳が霞がかったようになり、真っ白な細い体が地面に倒れる。
 もうあと数人、魂人を撃ち抜いた後で、アスカは素早く場所を移動した。魂人達の警戒心を呼び起こし、場所を特定されては意味が無い。
「確実に当てて眠らせないといけませんからね……」
 ふう、と吐息が零れる。
 しかし、迷彩にいつまでも頼る事は出来ないだろうとアスカは考えていた。気付かれる前にと、早撃ちで魂人達を眠りに落とす。一人、また一人と魂人が眠りによって無力化され、地に伏した。
 一人の魂人がアスカに気付き、口を開いて喉から羽根を零す。そこから痛苦の叫びが放たれるより、アスカが引き金を絞る方が早かった。拷問器具が奏でる金属音の中に、また一つ、魂人の倒れる音が混じる。
 アスカはそれを聞き届けて、また場所を移動した。
「少々、不意打ちの騙し討ちみたいな形になりますが……悪く思わないで下さいね?」
 おやすみなさい、よい夢を。
 微かな声で呟き、アスカはまた一撃を放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バレーナ・クレールドリュンヌ
【WIZ】

世界が赤く染まろうとしているわ。
それでも……白の私は染まらない、今目の前にいる全ての魂を救う歌を紡ぎましょう。

UC、瑠璃と淡桜の夢幻泡影。
瑠璃の舞と淡桜の歌で、狂える魂に安らぎを……衝動も何もかもをここに置いて……今はお眠りなさい。
魂人を苛む苦しみを癒しに変えて、ホワイトメロウは優しく傷ついたもの達に触れていくわ。
……もう休んでいいわ、何も心配しないで、羽根をたたんでとまり木に微睡む小鳥のように……穏やかな夢の中で……。

白き人魚は、安らぎの歌を紡ぐ、狂気から守る揺籠のように。




 ――世界が赤く染まろうとしているわ。
 バレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)は鉄臭い森のにおいを嗅いで、ほんの僅かに目を伏せた。
 この世界は今、鮮血の洪水によって全てを赤に染め上げられようとしている。
「それでも……白の私は染まらない」
 真紅の瞳を爛と光らせて迫り来る魂人を、バレーナはまっすぐに見返した。今目の前にいる、全ての魂を救う歌を紡ぐ。そう決意して、唇を開く。
 可憐な歌声が、常闇の森に響いた。それと共に、藍と紫の紫陽花をまとった舞台衣装がバレーナの舞に伴って夢のように揺れ動く。暗い森の中において、その姿は白く輝くように見えた。
 魂人達が、優しい歌声によって夢の世界へと誘われる。ぱたりと倒れた一人の上に、また一人と白い肢体が重なって行った。
 狂える魂に安らぎを。バレーナが願うのはただそれだけだ。衝動も何もかもをここに置いて、今は眠ってくれれば良いと思う。
 魂人を苛む苦しみも、少なくとも眠りに落ちている間は感じずに済むだろう。歌声が、傷付いたものに優しく触れた。赤子のような安らかな寝息が、幾重にも重なって行く。
 バレーナに近付こうとした魂人も、その翼から極光を放つ前に柔らかな眠りへ誘われた。まるで、自ら白き人魚の歌声に抱かれに来たかのように。
「……もう休んでいいわ、何も心配しないで」
 目に留まった魂人達のうち、最後の一人が眠りに落ちると、バレーナは穏やかに語りかけた。
「羽根をたたんでとまり木に微睡む小鳥のように……穏やかな夢の中で……」
 常闇の森の中で、バレーナは歌を続ける。
 狂気から幼子を守る、揺籠のような暖かい歌を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
傷は、つけたくない
それでも言葉は届かない
それなら…僕に出来る事は、これしかない

念のため自身に【オーラ防御】を纏い
基本的には自身の翼による【空中戦】も駆使して回避に努めつつ
【高速詠唱】で紡いだ氷魔法の【属性攻撃、範囲攻撃】
翼や身体部位を凍結させることで動きを鈍らせ
或いは完全に足止めし時間稼ぎ

その隙に【Berceau de fleurs】を発動
声は届かなくても、理性すら失っていても
甘い甘い花の香りで強制的に眠らせます

この技は回復も与えてしまうけど
倒す事が目的じゃないなら問題無い
あわよくばその癒しで
少しでも正気を取り戻してくれないかなー、なんて
淡い期待かもしれないけど
これ以上苦しまなくて済むように




「ア、アア、ア――」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の姿を認めた魂人達が、喉から羽根を散らしながら呻きを漏らす。
 傷は、つけたくない。
 彼らの様子を目にして、澪が思う事はそれだった。それでも、言葉が届かないという事もまた、澪は理解している。
「それなら……僕に出来る事は、これしかない」
 澪は手にした清浄な輝きを放つ杖に、魔力を込めた。髪に咲く金蓮花と同じ色をしたオーラが現れ、細い体を包む。
 防御を張り終えた後、杖の先が向くのは魂人達の足だ。高速詠唱により紡ぎ出された氷魔法が、鳥めいた足を立て続けに凍て付かせる。攻撃範囲を広げれば、複数の魂人達が一度に動きを鈍らせた。
 澪は自らの翼を羽ばたかせ、空中から魂人の翼を狙って氷を放つ。開きかけた不格好な形のまま、彼らの翼が凍て付いて行く。
 足も翼も、凍り付かせたところで致命傷には至らない。ただ動きが鈍り、氷が厚くなれば完全に足を止める者も現れる。澪の狙いはそれだった。
 前方を歩いていた魂人達が足止めされ、集団の動きが大きく力を失う。羽根を飛ばし澪を攻撃しようとする者もいたが、それは翼を一度羽ばたかせるだけで回避が成った。
 もう十分に時間は稼いだ。そう判断した澪は、杖を改めて持ち直す。
 瞬き一度の後、澪を中心として花吹雪が発生した。優しく甘い香りが常闇の中に広がる。
 声は届かなくても、理性すら失っていても。
 甘い甘い花の香は、魂人達を強制的に眠りへと落としてしまう。真っ白な体が次々と倒れ、澪のいる空中にまで寝息が聞こえて来た。
 この技は眠らせるだけではなく、治癒も与えてしまう。だが、倒す事が目的でないのであれば、何の問題も無い。
「……この癒しで、少しでも正気を取り戻してくれないかなー、なんて」
 淡い期待が澪の口をついて出る。
 かぶりを一つ振って、澪は地上へと降り立った。まだ漂う甘い香りの中、魂人達は静かに眠っている。
 彼らがこれ以上、苦しまなくて済むように。
 澪は杖を握り締め、一時だけ魂人達のために願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月03日


挿絵イラスト