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闇の救済者戦争②〜狂気の影狼使い

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争

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#闇の救済者戦争


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●残滓は狂気に溺れ
 血と肉を喰らい蠢きながら巨大化を続ける『侵蝕迷宮城』の中で、最大の書庫城である『紋章の禁書庫』では、遥か遥か昔に悍ましい実験の数々が行われていた。
 『紋章つかい』により築かれ、数多の実験の舞台となったその広大な城内には研究に利用された果てに耐用期間切れで廃棄された成れの果てである狂気の異形が、植え付けられた強大な力を衝動のままに振るい続ける狂える異端の神として徘徊を続けている。
 その中に一体、影の狼を引き連れる美丈夫らしき異形の存在がいた。
 遥か昔、己の美を誇っていた狂える異端の神は獣のような唸り声を上げながら壁や柱に影狼を飛ばし、或いは殴打し砕いていく。
 成長を続ける城は受けた破壊をそう経たぬ内に修復される。それでも異端の神はぶつけずにはいられないかのように、狂い猛る。
 ――それでも、手にした月の輝きは変わらずに、彼をいつまでも照らし続けていた。

 グリモアベース。
 集まった猟兵たちを前に、老狼の猟師、ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)は語り始める。
「ダークセイヴァーで始まった闇の救済者戦争について、予知が見えたので力を貸してくれぬか」
 彼が語るに、遥か昔に『紋章つかい』という存在が築き上げたあらゆる危険で邪悪な魔術知識の書が眠っているといわれる邪悪な書庫城を徘徊する狂える異端の神の一体を撃破してほしいとのこと。
「大昔に数多の悍ましい実験に使われ『耐用期間切れ』で廃棄された実験体の成れの果ては狂気に侵され、異形と化し、その与えられた異常な力を場内で振るい続けている。まず間違いなく強敵じゃ」
 今回予知で見えたのは影狼使いの異端の神だとローは言う。
「主な攻撃手段は影狼の群れとなる。極めて見つけづらい個体を織り交ぜ奇襲を仕掛けたり月を模した……ランプか、これを掲げ月光を放ち視覚を奪いつつダメージを与えてくる。いずれも非常に強力で、狂気に堕ちてなお恐ろしい戦闘能力を有している。が、一つ弱点というにはか細いが、隙になり得る要素がある」
 人狼はそれが、異端の神の手にした月光を放つランプだと説明する。
「砂粒ばかりの良心か後悔が残っているのか、そのランプ……寧ろその輝きに執着しているようで、決して離すことはないようじゃ。ランプを狙えば自身へのダメージを顧みず庇おうとしてくる上に、もっと強烈な、美しい輝きを見せることで怯み、攻撃の威力が減じることじゃろう。どう攻めるかは皆に任せる」
 そう言ってローは説明を終えて、猟兵達を転移させる準備を始める。
「この戦争に敗北すれば第二層への道は絶たれ、第三層から五層までが血の洪水により水没してしまう。そんな結末を迎えさせぬために、どうか頑張って戦い抜いてほしい」
 それでは頼んだぞ、とローが話を締め括り左手の鈴を鳴らすと猟兵達の視界が歪む。
 そして数秒ののち、猟兵達の眼前には狂える異端の神の徘徊する陰鬱なる書庫城の光景が広がっていた。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 頑張って血の池地獄を防ぎましょう。

 このシナリオはダークセイヴァーの『紋章の禁書庫』を徘徊する『紋章つかい』の研究に利用された成れの果てである『影狼を束ねる丈夫』と戦うシナリオとなります。
 狂気のままに力を振るい続けていますが、過去の良心や後悔がほんの僅かに残っており、そこを突けば僅かに狂気が薄れるようです。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……敵の僅かな良心(または後悔)に働きかける。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『影狼を束ねる丈夫』

POW   :    盟約による血判
自身の【血液 】を代償に【影狼(シャドウ・ウルフ)群れ】を創造する。[影狼(シャドウ・ウルフ)群れ]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
SPD   :    手にするは光の名画
【掲げた月を模した物 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【月光】」を放ち、ダメージと【盲目】の状態異常を与える。
WIZ   :    影の追跡者の召喚
【影狼(シャドウ・ウルフ)群れ 】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は梁樹・叶です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴィヴ・クロックロック
丁度いい、忌々しい、反吐が出る。ここは見ているだけでイライラしてくる。
彼らに思うところはあるが八つ当たりのついでに眠らせてしまおう。

小細工は使わん…限界を超えてリアクターを輝かせ敵の月光すら取り込み【夜を断つ流星】にてすべてを真正面から断ち切る!……一番叩き潰したい相手が居ないのは歯がゆい。

(アドリブ連携歓迎です)



●忌々しきは
 転移してきた猟兵を察し、狂える異端の神は驚くほど速やかにやってきた。
 本来あるべきでない形状になった丈夫は狼のよう。泡立つように肌が膨れ破れて血液が溢れ出し、床に落ちた血痕から湧き出した影狼の群れが一斉に散開する。
 その光景に冷めた目を向ける緑髪のダンピールはヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(自称)・f04080)。彼女にとって、この研究所めいた城内の風景は酷く不快なものだ。
 その上本当に叩き潰したい相手がここにいないのが歯がゆい。
「丁度いい、忌々しい、反吐が出る。ここは見ているだけでイライラしてくる」
 不快感を隠しもせず吐き捨てるようにヴィヴは呟く。実験のなれはてであるこの異端の神に思う事こそあるが、この行き場のない歯痒さをぶつける八つ当たりついでに滅ぼし眠らせてやらねばならないだろう。
 本来端整だったろう顔を歪め獣のように異端の神が吼える。悍ましき研究の成果により理性を亡くし、代わりに植え付けられた戦闘能力は圧倒的――そんな相手に、ヴィヴは小細工を使わぬことを選択した。
「これが今できる最大! 最高! 最強の私だ!!」
 彼女の心臓に埋め込まれた脅威の機関『光子リアクター』、ユーベルコードを起動すれば、そこからあふれる鬼火の如き輝きとともに出力が跳ね上がり、肉体の限界が軽く突破される感覚。
 更に周囲の物質を無機有機問わずに光の粒子に変換し操作しつつ、超熱量の光子の輝きと物質化したエーテルを纏ったヴィヴは異端の神を真っ向から迎え撃つ。
 変換された光の粒子を操作し光刃として放射、迎撃の刃に影狼達が飛びかかり数で抑え込む。僅かに刃は貫通するが男へのダメージは再生可能な程度。しかし直に飛び込んできたヴィヴ自身が異端の神を殴る、殴る、光子リアクターの加速で9倍に増した連撃は纏う粒子の熱で焼き切るかのように敵の肉体を削っていく。
 今のヴィヴにできる肉体の限界を超えた攻撃の勢いは苛烈で、されど荒れ狂う異端の神は血液を代償に次から次へと影狼を召喚し光の粒子と相殺していく。
 只管続くかと思われる削り合い――だが、その終焉は意外と早く訪れた。
 異端の神の手にした月光のランプの輝きすら飲み込む勢いで攻めていたヴィヴが異端の神を壁に殴り飛ばし、追撃を掛けようとした瞬間、彼女の動きが急に止まった。
 バカに限界はない――とはいうが、このユーベルコードの反動は凄まじくヴィヴでも無視しきれぬもの。
 その結果として、電池が切れたかのように気絶しぶっ倒れてしまうのは詮無きことだろう。
 しかしファーストアタックとしては十分にダメージを刻むことができた。異端の神と猟兵達が交戦を続ける中、ヴィヴの意識は暗闇へと落ちていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 綺麗な月っていうのも変かしら。無性にあの光に惹かれてしまうこの感じ、咎人さんが大切にするのも何だか分かるかもしれないわね。

 【UC:白魔顕現】(SPD)を発動よ。放たれる月光は、乱反射させて防げるように〈結界術〉で氷を展開するわ。もし視界が眩んでも〈気配探知〉で逃さないわ。わたしの言葉が彼に届いて攻撃の手が緩んだら、彼の狂乱を鎮める様に〈浄化〉の〈属性攻撃〉を放つわ。

 わたしの言葉が届いているなら、どうか止まって。これ以上、その大切なもので人を傷つけるのはやめて、咎人さん。あなたにとってその光は、きっと何よりも美しくて、代えがたいもののはず。だから止まって頂戴!

(アドリブ負傷等々大歓迎です)



●誘蛾灯のような輝きは
 立ち上がった丈夫は未だ勢いが衰える気配はない。
 削り取られた身体は破れた肌から溢れ出る血液に覆われ塞がれ、流れ去った後には殆ど元の形に修復されてしまっている。
 血を流し続ける異端の神が手に持ち続ける古ぼけたランプは血にも汚れず変わらぬ月のような光を放っていて、その輝きにゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)の目はつい惹かれてしまう。
(「綺麗な月っていうのも変かしら」)
 何故そう思ってしまうのかは分からない。が、あの光に惹かれてしまう感覚と似たようなものを、狂える異端の神も感じているのかもしれない。そんなゾーヤの思考を中断させるかのように、異端の神はランプを持った手を掲げ周囲の戦場一帯を月光で照らしてきた。咄嗟に片手使いにはやや大型の守護の盾を翳し、視力を奪う月の輝きへの対処を行う。
「何に代えても、必ず――!」
 ユーベルコード【白魔顕現】を発動させれば、全身の雪の結晶にも似た氷華の聖痕から莫大な魔力が溢れ出す。その魔力により自身のあらゆる能力が倍増する感覚を認識し、同時に氷の魔法を展開する。
 光を乱反射させるための反射率の高い氷壁、それを結界のように展開して月光の直撃を防ぎつつ、人狼の生者は異端の神へ呼びかける。
「これ以上、その大切なもので人を傷つけるのはやめて、咎人さん。あなたにとってその光は、きっと何よりも美しくて、代えがたいもののはず」
 実験に供されたこの狂える異端の神の来歴は不明だ。それでも、砂粒ほどに残っている彼の良心を信じて、心を込めて人を癒やし守りたい聖者としてゾーヤは呼びかける。
「わたしの言葉が届いているなら、どうか止まって」
 その呼びかけに返ってきたのは従える影狼の氷壁を砕かんとする突進、ゾーヤの優れた感覚は氷壁で月光を防ぎながらも影狼や異端の神の気配を捉え続けているが、攻撃が弱まる気配はない。
 狂気にほぼ侵されきった異端の神に言葉では届かないのだろうか――それでも、ゾーヤは諦めたくなかった。
 影狼を操るためにランプを下ろし月光が弱まった瞬間を見極め、一気にダッシュで距離を詰める。
「だから、止まって頂戴!」
 異端の神の狂乱を鎮めるように、浄化の力を帯びたゾーヤの一撃が異端の神の胴を打ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘルフトリス・メーベルナッハ
好き放題弄って壊れたらポイ捨てとかひでー話じゃね?
尻拭いみたいでナルいけど、ま、ばっちりやっつけよー。

眩く美しい光の輝きに惹かれるってんなら、輝纏いの舞群で輝くエネルギー体を召喚。
その半分くらいをアタシの立体映像に変えた上で【ダンス】させる。
キラピカのアタシらのダンスとかド派手でエモいっしょ?

残り半分はナイフに変形させて、ランタン狙いで投げつけてく。
ランタンを庇うような動きで隙が見えたら急所っぽい部位狙いで撃ち込んでやろー。

敵のUCはダンケル・グランツの光操作能力で受け流してみるよー(オーラ防御)
光でアタシは傷つけられねーよっ。



●月の輝きは舞い踊る
 胴を撃ち抜かれよろめく狂える異端の神の前に、次に現れたのは銀髪の褐色肌の若い女。
「好き放題弄って壊れたらポイ捨てとかひでー話じゃね?」
 ストレートに感じたように、ヘルフトリス・メーベルナッハ(夜に舞う華・f39501)は軽い口調で言う。
 少々軽薄そうな雰囲気の彼女だが、ルナエンプレスとして重ねた年月もあってかこの異様な雰囲気の書庫城や異端の神の様子にもペースを崩さない。
「尻拭いみたいでナルいけど、ま、ばっちりやっつけよー」
 やや緩く、けれど責任感を内に宿した声色でヘルフトリスが言うと、異端の神は再びランプを掲げ、強烈な月光を周囲に放つ。
 が、
「光でアタシは傷つけられねーよっ」
 ヘルフトリスが扇を広げ一振りすると、月光は彼女とその周囲を避けるようにねじ曲がり彼女に傷ひとつ与えない。
 光と闇を操る扇形のメガリスでエネルギーの流れに干渉、異端の神の月光を受け流した彼女は反撃のユーベルコード【|輝纏いの舞群《グランツ・タンツェリン》】を起動、
「アタシらのダンスから、目ぇ逸らすなよ?」
 召喚されるのは95の光り輝くエネルギー球、その内50近くが変形し、光り輝くヘルフトリスの立体映像に変わり異端の神の眼前に立つ。
 丈夫は影狼をけしかける事も忘れ、立体映像――月のように輝くヘルフトリスへと突っ込んでくるが、立体映像は一斉に踊りステップを踏むようにして異端の神を誘き寄せるように躱していく。
 そもそも立体映像なので捕えられる事もない、その目はキラピカでない本体のヘルフトリスには向かず、ここで残り半数のエネルギー球を投げナイフに変形させる。
 異端の神の手で未だ輝き続ける月光のランプ、それを正確に狙い投擲する。
 しかしその気配に気づいたのか、異端の神は恐ろしい程の反応速度でランプを抱きかかえるように庇った。
 その動きで生じるのは致命的な隙であり、それを見逃さぬヘルフトリスは残りのナイフをありったけがら空きになった異端の神の首に投擲した。
 まるで剣山のようになった異端の神の首筋――内側から溢れ出す血液に押し出され投げナイフがからんと床に落ちていく。
 ダメージは確かに刻み込めたが、この恐ろしい生命力の実験体の命を刈り取るには少々届かなかったようだ。
 異端の神の号令で襲い掛かってきた影狼の群れを踊る立体映像で攪乱しつつ、ヘルフトリスは次の攻撃の為に一旦距離を取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス
打ち捨てられた“玩具”の成れの果てね…胸糞が悪いわ

美しいモノを見たいわけ。そんなに見たいなら見せてあげる
こんなサービス、滅多にしないんだからね?
精々その目と体に焼き付けていくといいわ

ランプに狙いをつけて数多の『微塵』を投げつけて爆撃し、動きを止める
UC発動、自身の躰が迸る焔に包まれ、真紅の髪と修道服に身を付けた生前の姿…真の姿をさらす
同時に白く輝く美しい木春菊の花吹雪が戦場に吹き荒れ始める

吹き荒れる花びらに触れた影狼と丈夫を炎上させ灰燼に帰していく
在りし日の輝きはほんの一瞬、すぐにその身は元の異形の屍人の姿に戻ってしまう

綺麗な景色は見えたかしら
塵は塵に、灰は灰に――燃やし尽くしなさい、何もかも



●かつての輝きは一瞬で
「打ち捨てられた“玩具”の成れの果てね……胸糞が悪いわ」
 デッドマンであるメフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は心底不快げな様子。
 彼女の生まれからしてこの狂気の実験の成れの果てには少々思う所があるのだろうが、なればこそ引導を渡してやるのが人情というものなのかもしれない。
「美しいモノを見たいわけ。そんなに見たいなら見せてあげる」
 滅多にしないというサービス、精々目と体に焼き付けていくといい。そう告げたメフィスが飢餓衝動により躰から滲み出した眷属を変じた爆弾を異端の神に投擲する。
 骨の武具や血液を撒き散らし敵の身を削り取るそれの狙いは月光のランプ。ランプを守らんと異端の神は大きく横に飛んで回避するが、メフィスは次々に爆弾を投げつけ前に出てくる事を阻む。
 その間に闇に紛れ影狼が襲い掛かってくるが、咄嗟に爆弾を投擲して爆破、距離を取った。流れるように異端の神の周辺にばら撒くように大量に爆弾を投擲――流石に躱せぬと踏んだか、防御態勢を取る。
 その足が止まった瞬間こそをメフィスは待っていた。
「塵は塵に、灰は灰に――燃やし尽くしなさい、何もかも」
 ユーベルコード起動の詠唱と共に白き焔が迸り、包まれたメフィスの姿が変わっていく。
 髪と巻いたマフラーは真紅へ、纏う衣は修道服――生前の姿。真の姿に変じると同時、白い木春菊の花弁が吹雪のように周囲を舞う。
 彼女を中心とした花吹雪は触れた影狼と丈夫を容赦なく目を焼くような輝きと共に炎上させ、灰燼に帰していく。発見し辛くとも触れれば炎上するのであれば探す必要もない。
「綺麗な景色は見えたかしら」
 吹き荒れる花吹雪が弱まり、収まって元の異形の屍人の姿となったメフィスが尋ねるように呟いた。在りし日の輝きはほんの一瞬で、この姿が今の彼女なのだ。
 焼かれた全身から血を溢れさせながら、理性を無くしたかのような丈夫は怒り吼えて、勢いも衰える事もなく猟兵達へと再び襲い掛かるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
光は破壊にも、希望にもなり得る…
出来れば、ほんの少しでも…心を動かす事が出来たら

自力で動くのは心臓への負担の関係で難しいから(心臓病持ち)
翼の【空中戦】で動ける範囲内で機敏に移動

自身に【オーラ防御】を纏う事で身を守りつつ回避重視
【歌唱】に【催眠術】を乗せ鼓膜に直接催眠魔力を叩き込み
少しでも動きを鈍らせたい
通常攻撃で光を使われた場合も考慮して
目を閉じても位置を把握できるよう【気配感知】

光なら、僕も持ってるよ
【高速詠唱、多重詠唱】で光と氷魔法の【属性攻撃】
鏡のような氷に光を反射させ目晦まし
更に【指定UC】発動
戦場を【破魔】で満たし
破魔を乗せた光の【全力魔法】による【浄化】攻撃で影狼もろとも追撃


箒星・仄々
お可哀想に
実験で身も心もボロボロになっておられるようで
お労しいです
海へとお還しすることで
安らぎを贈りましょう

輝きへの固執…
それはかつて外界で見た太陽や月でしょうか
誰かと過ごした思い出の蝋燭の炎でしょうか
大切な方の装飾の煌めきでしょうか

知る由はありませんが
この隙を突かせていただきましょう
それはきっと手向けになるのかもしれません

竪琴を奏でて
旋律から魔力を生み出し矢と生します
今回は炎の魔力のみとして
更にはその矢を数本毎に束ねて放つことで
輝きを増します

その輝きで影狼を撃ち払い
丈夫さんの目を釘付けにしながらランプへ

庇う丈夫さんを矢襖にして火葬にします

終幕
演奏を続けて鎮魂の調べに
海で安らぎを



●炎と天上の輝きと
 全身に火傷を負いながらも、狂える異端の神は影狼達を操り続け、植え付けられた蛮力を振るい破壊を振りまき続ける。
 苦痛からか憎みからか、歪み切ったその端正だったのであろう顔からは感情を正確には読み取る事は出来ない。
「お可哀想に」
 その有様を憐れみの感情を宿した緑の瞳で見つめる黒のケットシーは箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)。
 明らかに尋常のものではない生命力は施された悍ましき実験によるものであり、破壊されたりせいもその実験の結果によるものであろう。
 何故輝きに執着しているのか、かつて外で見た月や、ダークセイヴァーから奪われた太陽なのだろうか。それとも誰かと過ごした思い出の蝋燭や、大切な者の装飾の煌めきなのだろうか。
 全ては遥か昔の話、知る由はないけれども、
(「ただお労しいです」)
 今の彼からはそれも読み取れない。研究の成果などではなくただ捨て置かれた残滓、残骸。果てなく苦しみ続ける彼に安らぎを――骸の海に返すべく、仄々は愛用の竪琴を手にし、旋律を奏で始める。
 そしてもう一人、オラトリオの翼を羽ばたかせ天井近くを飛翔する栗花落・澪(泡沫の花・f03165)も狂気に身を任せる丈夫を見下ろしていた。
 戦闘には支障はないがどうにもこの周囲は暗く、あまり離れると敵味方の顔さえ分かり辛くなってしまう。
 けれども接近する選択は取りたくない。あの実験で植え付けられた力は恐ろしく、仮に見切ることができたとしてもそれに体を追いつかせるには少々心臓に不安のあるが故に負担が大きすぎる。
 そう冷静に算段しながら澪は異端の神のランプの輝きを見る。暴虐の中で輝く月光の灯火は酷く目立つけれども、あれは一際輝けば視力を奪う魔性の輝き、それを警戒すして澪は視覚のみに頼らず異端の神の気配を頼りに正確にその位置を感知できるようにしている。
(「光は破壊にも、希望にもなり得る……」)
 澪にとって光はそのようなものであり、であるならばこの狂える異端の神の心をほんの少しでも動かしたいと、そう思うのだ。
 その時、背後からの殺気を感知する。オラトリオの翼を羽ばたかせた澪が移動すれば、直後その空間を酷く視認し辛い影の狼が通過した気配を感じ取る。
 異端の神々が暴れ成長/拡大を続ける書庫城であっても天井のない空のように自在には飛び回れない。だが、その範囲でも澪は上手く翼で空気を叩き、纏うオーラで身を守りつつ寸での所で攻撃を回避している。
 竪琴の演奏に合わせるようにして、天使翼のマイクを通し、催眠効果を乗せた澪の魔力の歌声が城内の壁に反響し、異端の神の鼓膜に音を響かせる。
「さあ、ちょっと派手にいきますよ〜」
 竪琴を奏でる仄々がユーベルコードを起動すれば、旋律から生じた魔力が685本もの炎の矢の形となって黒猫の周囲に現れた。
 果てなき苦しみを終わらせる事をこの狂気の異端の神への手向けと、魔力矢を数本ずつ束ね、丈夫に向けて連続で放つ。数を重ねた炎矢は威力だけではなく輝きも増している――闇を切り裂く矢が闇の如き影に飛び込めば、光に姿を暴かれ貫かれた影狼がその形を崩していく。
 一瞬仄々の目と異端の神の目が合う。彼の視線は炎の輝きへ――向いていない。
 距離か、光量か。ならば、そのランプをと、束ねられた炎の矢は異端の手のランプへ集中的に向けられる。
 澪の催眠の歌声に揺らぎ異端の神の回避は遅れていた。
 その状態で圧倒的な逃れられぬ程の数で放たれた炎矢の嵐に、異端の神は全身でランプを庇い背で矢を受け止めるが、矢衾にされた背の矢は再び炎へ還り異端を焼く。
「光なら、僕も持ってるよ」
 重ねて空中から響く涼やかな声。空中を舞う澪の周囲に鏡のような氷が複数展開し、それに光の魔法を放ち異端の神の顔面目掛け反射させる。
 更に澪がユーベルコード【|心に灯す希望の輝き《シエル・ド・レスポワール》】を起動し、一帯に美しき花や光を降らせ淀みきった悪しき城の環境を天上世界さながらに変えてしまう。
「貴方の闇に、希望の輝きを」
 その光は破魔の光、悪を浄化するこの環境は狂える異端の神には適応し難い――適応する、という理性さえも失っているのかもしれないけれども、破魔の光は闇に紛れた影狼の群れの姿さえ曝け出させて、消し去るように浄化する。
 が、異端の神自身は踏み止まった。
 矢衾にされた背の火傷から再び血液が溢れ、影狼の群れを溢れ出させた丈夫は怒りのような咆哮と共に周囲に影狼の群れをけしかける。
 光を塗りつぶさんばかりに荒れ狂う異端の神――しかし、相当消耗している事は仄々と澪にも見て取れる。
 あと一押し、この異端の神を安らぎに終わらせんと、二人の竪琴と歌声はより一層強く響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紫・藍
あやー、この方はー。
今でこそ手入れもできておらず、ひどいお顔をなさってまっすが。
分かるのでっす。
その顔、その服、その髪、かつては美を磨き、美を誇っていた方なのだと!
月の輝きに執着するのも自身に遺された唯一の美しいものだからかも知れないでっすねー。
そのような方が自らの輝きを忘れたまま死にゆくのは悲しいことなのでっす!
というわけでファンの皆様!
月光から藍ちゃんくんをお守りくださいなのでっす!
藍ちゃんくんはあの方が安らかに眠れるよう、メイクを施させていただきますのでー!
髪も綺麗にし、お洋服も早着替えでぴしっとしたものへと!
そして鏡!
どうでっすかー?
お兄さんの美は月に負けず、美しいでっすよー!



●藍は月に負けぬ輝きを
(「あやー、この方はー」)
 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)が狂える異端の神を見て抱いた最初の感想はそれであった。
 炎や光に焼かれ、それ以前に恐ろしい年月を実験と苦痛に晒され続けたその顔は手入れも何もあったものではなく、ひどいものであった。
「でも、分かるのでっす」
 そんな状態になっている今でもこの丈夫の顔、服、髪――それらから僅かに見てとれる片鱗が、かつて自身の美を磨き誇っていた存在であることを。
(「月の輝きに執着するのも自身に遺された唯一の美しいものだからかも知れないでっすねー」)
 この暗く気が滅入るような書庫城で行われた悍ましき実験の数々を耐える為に縋れるもの――それをランプだけが照らし輝かせていたとすれば、執着するのも理解はできる。
 そんな人物であった彼は今や狂気に堕ちきって見る影もない様子であり、自身の輝きを忘れ見失ったまま死にゆくことを藍は哀しいことだと想うのだ。
 だが、そんな思いを抱く藍にも異端の神は狂気のままに再びランプを掲げ月光で害そうとする。
『うおーっ! 藍ちゃん頑張れー!』
 しかしどこからともなく現れた人たち――藍のファンが応援すれば、藍の身体が激しく発光し魔性の月光を遮断した。
「あやー! 皆々様、いつも応援ありがとなのでっす!」
 ファンの方を向いてギザ歯スマイル、より一層盛り上がる彼らの応援があれば、月光など恐れる必要はない。
 その応援は戦う藍には向くものではないけれども、今回の藍の狙いは――、
「藍ちゃんくんはあの方が安らかに眠れるよう、メイクを施させていただきますのでー!」
 彼に尊厳のある終焉を、再び美しさを取り戻させようと藍はしているのだ。
「というわけでファンの皆様! 月光から藍ちゃんくんをお守りくださいなのでっす!」
 応援してくれるファンに手を振って藍はキラキラ激しく輝く藍に目を奪われた異端の神へと可愛らしく近づくと、愛用の化粧道具を取り出して異端の神の身だしなみを整え始めた。
 血と油に固まった髪を整え直し、再生してはいるけれども跡になっている――実験の痕跡と思われるものを隠すように色あいを調整してメイクを施していく。
 異端の神は当然暴れ攻撃しようとするけれども、ユーベルコードにより今の藍は外部からの攻撃は通らない。
 強引に可憐に、あっという間に服さえも綺麗に着替えさせて。
 仕上がった装いはかつての美丈夫だった彼そのもののすがた。
「そして鏡! どうでっすかー?」
 月光のランプを持ち上げさせて、全身見えるように鏡を見せて、異端の神はどうすればよいのかわからないよう。
「お兄さんの美は月に負けず、美しいでっすよー!」
 裏表ない藍の言葉に異端の神は驚き、そして言葉も発さずゆっくりと鏡に近づいていく。
 ランプで照らしながら鏡面を覗き込み涙が一筋、端正に整えられた頬を伝い――次の瞬間、まるで糸が切れたかのように異端の神は地に崩れ落ち、灰になって消滅していった。
 既に限界は超えていた。その上で凶悪な実験の数々に耐え抜く為に縋っていた、最後の妄執を断ち切られたからなのだろうか。
 いずれにせよその最期は安らかであったのだろうと、風化していく丈夫と月光のランプを見ながら藍は思う。

●狂気去って
 書庫城に鎮魂の調べが響き渡る。
 実験に使われた狂える異端の神に安らぎを――願い、奏でられたメロディはやがて終わり、猟兵達は次なる戦いへと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月16日


挿絵イラスト