プリクエル・メサイア
メサイア・エルネイジェ
幼い頃のメサイアが修道女だった頃のノベルをお願いします!
今回は前編と後編に分けてリクエストさせて頂きたいと思います。
アドリブ・改変歓迎です。
困難・不明な点の解釈はお任せします。
●つまりどういう事だってばよ?
魔術学園で傷害事件を起こしたメサイアは、機械神にお使えして罪を償う為にド田舎の教会で修道女になるよう命じられました。
王権も停止させられたので事実上の追放です。
皆大好き追放令嬢です。
しかし残念ながらイケメンの騎士は付いて来ませんし追放先で王子様と結婚もしません。
メサイアが送られたのはヴリトラを祀る黒竜教会です。
ヴリトラはエルネイジェの王家に代々受け継がれているキャバリアで、暴力を司る機械神とされています。
こうしてド田舎の教会でメサイアの贖罪は始まりました。
修道女達は日の出と共に目を覚まします。
そして薩摩剣士のような叫び声を上げながら教会を飛び出します。
向かう先は中庭です。
皆それぞれの得物で中庭に立つ棒杭を何度もチェストします。
勿論修道女の中にはメサイアの姿もありました。
「王笏ハンマー!王笏ハンマー!」
暴力への感謝を籠めてチェストします。
それが終わると大聖堂で礼拝します。
「わたくしお祈りの言葉なんて覚えられませんわ〜!なのでお口をぱくぱくしてるだけですわ〜!わたくし酸欠中のお金魚ちゃんみたいですわ〜!」
礼拝が終わると皆で教会の敷地内にある神殿へと移動します。
神殿にはヴリトラが祀られています。
祀られているとは言ってもヴリトラはただ寝ているだけです。
修道院長のシスター・ベアトリクスは皆の前で言いました。
「それでは本日もヴリトラ様の御清めを始めましょう」
修道女達はいつものようにヴリトラの掃除に取り掛かります。
「お台所に出現するお虫のようにヌルヌルテカテカに磨き上げるのですわ〜!」
力の入れ方がゼロとマックスの二つしかないメサイアは今日も気合いが入っています。
掃除の最中にメサイアはふと思いました。
「ヴリちゃんはいつも寝てばかりですわねぇ……お退屈ではございませんの?」
するとベアトリクスがこう答えました。
「ヴリトラ様はお眠りになられているのではなく、継承者をお待ちになられているのです」
「お継承者!ソフィアお姉様のようなですの?」
当時メサイアの姉であるソフィアは幼いながらもインドラの搭乗者を継承していました。
専用のキャバリアを持っているソフィアはメサイアの憧れでした。
「この教会に姫が訪れたのは単なる偶然とは思えません。ひょっとしたらヴリトラ様が姫をお選びになる為に、お呼びになったのかも知れませんね」
「そうなんですの!?ヴリちゃん!わたくしをお選びになって〜!わたくしもおキャバリアに乗りたいのですわ〜!お姉様ばっかりおズルいのですのよ〜!」
メサイアはヴリトラをぺちぺち叩きます。
しかしヴリトラはなんの返事もしません。
「姫!ヴリトラ様を叩いてはいけません!神罰が下りますよ!」
ベアトリクスに怒られてしまいました。
こうして今日も平穏な修道女生活は過ぎていきました。
そして後編に続きます。
大体こんなイメージでお願いします。
細かい設定等は気にせず筆の向くままに書いて頂ければ幸いです。
●その他
以下は参考としてください。
全部反映しなきゃダメとかそんな事はありません。
●この頃のメサイアは?
まだ小学生低学年程度のお年頃でした。
魔術学園でやらかした薩摩式武装解除魔法事件の件は無罪だと思っています。
「わたくし何にも悪い事しておりませんわ〜!無実の罪でド田舎に追放されるわたくしかわいそうですわ〜!」
悪い事をした令嬢なので正真正銘の悪役令嬢です。
●シスター・ベアトリクスとは?
修道院長です。
黒竜教会で一番偉い人です。
筋肉モリモリのマッチョウーマンです。
元はエルネイジェ王国軍のコマンダー部隊と呼ばれる特殊部隊に所属していましたが、退役して修道女になりました。
秘密裏に王室からメサイアの護衛を仰せつかっています。
幼い頃のメサイアは敵国に誘拐された事があります。
その際にベアトリクスは単身で敵拠点に乗り込み救出してきました。
これはメサイアが誘拐された事自体が重要国家機密に指定されているので誰も知りません。
メサイアも殆ど覚えていません。
●黒竜教会とは?
機械神ヴリトラを祀る教会です。
エルネイジェ王国領の東の端にあります。
教会の周りは広大な農地しかないド田舎です。
一番近いコンビニまで車で10分位かかります。
外観が魔王城っぽいので周辺農家からは嫌がられています。
毎朝薩摩剣士のような奇声が上がるので周辺農家からは恐れられています。
●ヴリトラ教とは?
暴力を是とする宗教です。
力こそ全て。力による支配。筋力を上げて暴力で殴る。
アーレス大陸の多くの地域では邪教扱いされており信者は少ないです。
●ヴリトラとは?
エルネイジェ王国に代々受け継がれている国宝のキャバリアです。
分類はサイキックキャバリアで自我があります。
性格は傲岸不遜。我は暴虐の竜帝なり。
継承者とは意思疎通が可能です。
先代の継承者はかなり昔に逝去しています。
アーレス大陸に伝わるお伽噺ではよく悪役にされています。
●後編?
この後の展開で教会を敵国に襲撃させようと考えています。
●黒竜教会の朝は早い
クロムキャバリア、『エルネイジェ王国』の東の端。
朝日が登るより早く響き渡る叫び声。否、猿叫の如き奇声。
裂帛の気合と言えば、言葉の字面はよろしかろう。されど、それは裂帛というにはあまりにも獣じみたものであり、また奇妙な掛け声でもあった。
己を鼓舞するためではなく、ただ相手を威圧するためだけに上げる叫び声。
それが何故、『エルネイジェ王国』の東の端にて響き渡っているのか。
答えは簡単である。
――ここが黒竜教会であるからだ。
そう答えれば『エルネイジェ王国』の人々は、ああ、とか、ええ、とか応えるであろうし、敵対する小国家のものは顔をひきつらせることだろう。
「ちぇすとー!!!!!」
凄まじい声量。
声色は可愛らしいものであったが、どう考えても教会に住まう修道女が上げるものではない声を上げ、桜色の髪が揺れる。
「ちぇすとでございますわ! 王笏ハンマー! 王笏ハンマー!」
手にしているのは、ただの棒きれである。
それを果敢に中庭に撃ち込まれた棒杭へと右、左と打ち付けているのは、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)であった。
今の彼女は第三皇女ではない。
どうして修道女として教会に在籍しているというのかというと、彼女が魔術学園において傷害事件を起こしてしまったからである。
不幸な事件であった。
初恋が見る前に粉砕されたアレな感じのアレである。
その事件についてメサイアは語る。
「わたくし何にも悪いことはしておりませんわ~! これってばえんざいって言うのですよね? むじつのつみでド田舎に追放されるとか、わたくしかわいそうですわ~!!」
すでに彼女の王権は停止し、事実上の追放処分となっている。
所謂、追放令嬢である。
これがもしも、追放系異世界転生だとか、悪女に転生してしまったが逆転しちゃう系だったりだとかだったのならば、始まるロマンスもあったことだろう。
イケメン皇子にイケメン騎士。イケメン従者にイケメン義理の兄妹。
そんなのはいないのである。ないったらない。むしろ、そんなものが必要であるとは思えない。
当人のメサイアに罪の意識はなく。
また、この程度のことで彼女の骨子は些かも揺らぐことはないのだ。
「ちぇすと! ちぇすと! ちぇすとったらちぇすとですわ~!!」
故にメサイアは懸命に棒切をチェストする。
ただ棒切でガンガン棒杭を打ち付けているだけであるのだが、見る見る間に木の表面が削れてきているところからして恐ろしいほどの膂力である。
これならば彼女を支えなければ! とか守ってやらねば! と思う男性もおろうはずもない。この程度のことで守られる謂れなどないとメサイアは語るだろう。
そうこうしている内に朝の鍛錬が終わりを告げる。
暴力への感謝を込めたチェスト。
これがなくては黒竜教会の朝は始まらない。なんて教会だろうか。
この後は大聖堂においての礼拝。
だが、正直これは割愛してもいいだろう。
何せ、この物語の主人公であるメサイアは脳が筋肉になっている脳筋である。祈りの言葉なんて覚えられるわけもない。
なんとなーく口をパクパクして祈っている体でやり過ごすばかりなのだから。いや、これも彼女のトレーニングの一環である。
空気を吐き出すだけ吐き出して、息を吸う。腹式呼吸による腹筋への負荷を掛ける。真の筋力至上主義者のやることであった。
●黒竜は眠る。
それが終わると神殿へと入っていく。
「それでは本日も『ヴリトラ』様のお清めを始めましょう」
「はぁい! お台所に出現するお虫のようにヌルヌルテカテカに磨き上げるのですわ~!」
「それを目指してはダメです!!」
「えぇ~瞬発力にかけてはアレ以上のお虫さんも見かけたことないのですわ~なんで怒られているんですの、わたくし~!?」
修道女たちはいつものように神殿に眠るように鎮座する鋼鉄の機竜を磨きにかかる。
事実、その鋼鉄の機竜『ヴリトラ』は眠っているのだろう。
少しも動くことがない。
機械、キャバリアであるからジェネレーターやエネルギーインゴットの蠢動を感じることもあるかもしれないと思うが、それすらないのだ。
「ヴリちゃんはいつも寝てばかりですわねぇ……お退屈ではごいませんの?」
黒い装甲を磨きながらメサイアは思う。
アイセンサーがると思しき頭部を見つめても、何も反応がない。
そんなメサイアに筋骨隆々たる修道女『シスター・ベアトリクス』が言葉をかける。
「『ヴリトラ』様はお眠りになられているのではなく、継承者をお待ちになられているのです」
「お継承者! ソフィアお姉様のようなですの?」
「そのとおりです。継承者なくして機械神『ヴリトラ』様の復活はありえません。ソフィア様がそうであったように……」
『シスター・ベアトリクス』の言葉にメサイアは瞳を輝かせる。
専用のキャバリア。
己だけのキャバリア。
己だけの力。
己だけの暴力。
それはメサイアにとっては羨望の的であった。
あの圧倒的な力さえあるのならば、あらゆるものをねじ伏せることができる。現実も、不条理も等しく暴力で解決できると信じるからこそ、メサイアは圧倒的な力に憧れを覚えるのだ。
そんなメサイアの様子に『シスター・ベアトリクス』は息を吐き出す。
彼女は修道院長であるが、それは表向きの事情である。
元は『エルネイジェ王国』軍のコマンダー部隊と呼ばれる特殊部隊に所属していたれっきとした軍人である。しかし、軍属を退けてからは、こうして修道女として、また秘密裏に追放されたメサイアを護衛しているのだ。
「(あれから数年……メサイア姫はあの時のことをおぼえておいでではない。だが、それでいい。おぼえていなくて良いのだ。だが……彼女の暴力への探究は……)」
メサイアは敵国に融解されたことがある。
彼女自身はおぼえていないだろう。だが、確実に、彼女は王族であった頃に誘拐されているのである。
その事実事態はひた隠しにされている。
あの日、あの時『シスター・ベアトリクス』が単身で救出しなければ、彼女は存在ごと闇に葬られていたことだろう。
例え、こうして修道女として追放されたのだとしても、それでも生きてさえいるのならば、此れに勝る幸いもない。
少なくとも『シスター・ベアトリクス』はそう思っていた。
だからこそ、叶うことのない望みであったとしても。
それでも心に希望があるのならば、きっと人は生きていける。この時『シスター・ベアトリクス』は思いつきのように言ったのだ。
「この教会に姫が訪れたのは単なる偶然ではないのかもしれませんね。ひょっとしたら『ヴリトラ』様が姫様をお選びになるために、お呼び担ったのかも知れませんね」
それは子供を宥める程度の言葉でしかなかったかもしれない。
この境遇にふてくされないで欲しいと思う『シスター・ベアトリクス』の心遣いであり、慰めであり、励ましであったのかもしれない。
けれど、メサイアにとって、それはただの事実にしか受け取られることはなかったのだ。
「そうなんですの!? ヴリちゃん! わたくしをお選びになって~! わたくしもおキャバリアにノリたいのですわ~!」
ぺちぺちと黒い装甲を叩くメサイア。
それに『シスター・ベアトリクス』は目を丸くしてしまう。
『ヴリトラ』はいわば御神体。
聖遺物。
至宝。
あらゆる言葉では筆舌に尽くしがたい存在である。それをメサイアはこともなげに。恐れることなどなく叩いて見せたのだ。
「お姉様ばっかりおズルいのですのよ~!」
「ひ、姫!『ヴリトラ』様を叩いてはいけません! 神罰が下りますよ!」
「え~ヴリちゃん、そんなことでは怒ったりいたしませんことよ~! 器がでっけぇのですわ! お体もでっけぇので、全然平気ですことよ~!!」
ほら、というようにメサイアはぺちぺちと『ヴリトラ』の装甲を叩く。
怖いもの知らずとはよく言ったものである。
今もなお『エルネイジェ王国』の昔話では悪役として存在が確認され、夜子供を寝かしつけるために、またしつけをするためにダシにされることの多い存在。
それが『ヴリトラ』である。
先代継承者ははるか昔……それこそ百年前に逝去している。それ以来『ヴリトラ』を動かす継承者は現れていない。
アーレス大陸の境界にある地方にさえ、その『ヴリトラ』の名は伝わっているのだ。それほどまでに『ヴリトラ』とは傲岸不遜にして暴虐の化身そのものなのだ。
だからこそ、そんな恐怖を一身に受け止める『ヴリトラ』を叩くなど普通の神経ではできよはずもないのだ。
「ほら、ぺちぺち、起きてくださいましよ~! わたくしもおキャバリアでお姉様みたいに悪者をどったんばったんのギッタンバッタンにしてやりたいのですわ~!」
なんたることだろう、と『シスター・ベアトリクス』は頭を抱える。
どれだけ諭してもメサイアはまるで態度を改めない。
己に何ら恥じる所もなければ、引け目を感じる所もないと言わんばかりの態度である。
「姫! 本当に神罰が下ります! 良い加減にしないと……!」
「きゃ~! まだ『ベアトリクス』には力では叶いませんわ~!」
くるっと抱えられ、メサイアは可愛いお尻を、まったく可愛くない剛腕たる『シスター・ベアトリクス』の張り手でもってべちんべちんと叩かれる。
これが暴力。
力こそが全て。
筋力をあげて暴力で殴れば如何なる敵も粉砕できる。
その教義をメサイアは肌で実感しながら、今日も怒られっぱなしなのである。
「あ~ん! わたくしかわいそうですわ~! こんなど田舎に! 追放だなんて~!!」
「自業自得です!」
そんなけたたましくも穏やかな日々は、されど近づく争いの火によって終わりを告げることを今はまだメサイアも、他の誰も知る由もないのだった――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴