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#アリスラビリンス #ノベル

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アーミア・ジーン
言葉は欲望、欲望は魔法。
欲望の魔法使い、アーミア・ジーンというのはオレのこと。
先日は素敵なノベルをどうもありがとう。

さて、今回はアリスラビリンスと銘打っているが……
グリモアベースでの描写をお願いしたい。オレがグリモア猟兵の導きに従う時はいつもどんな感じなのか、それを書いてみてもらいたかった。

基本的にアリスラビリンスからグリモアベースに出向いて、どんな頼みを引き受けようか考えながら歩くことが多い。偶に片隅で座って、どんな道具を準備していこうかも考えたりする。その時その時で行先を考えるタイプ故だ。
数々の猟兵たちも依頼を吟味する為にベースに屯していたりするかも知れない。
そちら方のグリモア猟兵に声をかけるか、或いは声をかけてもらう形になり、少し話をして、それから頼みの内容を聞く、という流れを想定している。

基本的に他人との交流においては、可能な限り低い声で話す。
極端に低い声じゃない、囁くような、聡明で透き通る声。男装をしていることもあって、青年らしさを含ませることで、弱い本当の自分を隠し、一人の猟兵として在る、というような感じ。
依頼の内容によっては、楽しそうなものであれば声のトーンが弾むのを隠せなかったり、悲しかったり残酷なものであればその悲劇の重さを汲み取って氷のようなトーンの響きを纏ったり、と言う風に声に調子が表れる。
声は顔程に物を言う、魔法使いの言葉には最も|欲望《こころ》が載りやすい。

最終的にはテレポートを受け、世界に飛び出す。
どんな世界でどんな事件が起こっているか、どのグリモア猟兵との交流となるかはお任せしよう。

ただ、今回も仮面は取らないでくれ。それだけがこのノベルのNG要素で、他は自由にしてもらって大丈夫。

こんな感じでお願いしたい。
さて、次はどうなるだろうか。



 グリモアベースの日常と聞いて、どのような光景を思い浮かべるだろうか。
 まるで『何もない』かのような空っぽの場所かもしれないし、あるいは組織みたいなのがあって会議してたり書類運んでたりと意外と現代的な場所なのかもしれない。だがそれが猟兵達の合流に使われる場所であり、グリモア猟兵から色々なことを聞けたりする場所なのは確かだ。
 事実、アーミア・ジーン(欲望の魔法使い・f38428)も今日ここに来るまでに色々なことを通りすがりに聞いている。あの事件を早めに解決する方がいい、度重なるオウガ・フォーミュラとの決戦が待ってそうだ、猟書家との戦闘状況は今こんな感じ、など――それら聞こえてくるものを耳には入れつつも、どうでもいいかのように流していた。いや、事実|素敵な結末《ハッピーエンド》のためには必要なのだが、どうにも食指が伸びない。いまひとつ、『欲』が出ない。頼みを引き受けようかと思ってやって来たが今日は外れか、そんなことを思いながら近場に座り劣化したアイテムとかなかったかどこで買えたかななど思考を走らせていると、仮面と顔の隙間あたりに冷たい物が押し付けられた。
「うわっ……」
 驚いて素の声色が出つつも振り向けば、そこにはUDCアース産のだろうキンキンに冷えた缶ジュースを持ったグリモア猟兵の1人、水島・可奈(少女自由に夢幻を掴め・f01117)がいた。
「おどろいちゃった? そんなつまんなそうな顔してるからさー」
「顔って、仮面だから見えるわけがないだろう、というか隙間から顔に当てようとするんじゃない!」
「そりゃそうだけど、なんか退屈でつまらなさそうな感じしてたからさ」
 事実だ。今日は外れだ。帰ってアリスラビリンスの適当な場所でお茶会でもしてる方がマシだろう。
 だが、ここでわざわざ驚かせてまで話しかけてきたという事は。
「緊急のものか、あるいはオレが興味示せそうなものか」
「もち! 鉤爪の男案件なんだけど――」
 ああ、またその話か、と仮面の中でため息をつく。かの男の案件で見るのは次々と戦乱の地――クロムキャバリアに塗り替えられていくアリスラビリンスだ。彼を倒したところで『アリスラビリンスでの』ハッピーエンドになるかというと、微妙な所。倒したところで愉快な仲間もお茶会をするのどかな雰囲気もテーブルも、ないかもしれない。それどころかそれどころじゃない状況になる事もあるのだ。
 故に――食指が伸びない。長期的に見ればハッピーエンドには必要だろう、が。今日この日の短期的な欲望を満たすには足りない可能性の方が大きいんだ。
「……他はないのか? 最近どこもかしこもオウガ・フォーミュラ、オウガ・フォーミュラばかりで――」
 いつしか声は氷のようなトーンを纏っていた。元から目の前のグリモア猟兵のと対極に囁くような低い声だったが、自分でも感じられるほどそれは冷たかった。

 ――声は顔程に物を言う。魔法使いの言葉には最も|欲望《こころ》が載りやすい。

 その|欲望《こころ》に気づいたように、グリモア猟兵は説明を中断すると慌てて出してる資料を引っ込め、真剣な顔で別の資料を探し始めた。ああ、そんなに一生懸命にならなくてもいいのに。これはただ波長が合わない、オレの|勝手な欲望《エゴ》なんだから、わざわざオレのためにオーダーメイドのように必死に探さなくても、別の方にそれを勧めればいいだけじゃ――
「ん、乗り気じゃないならこれはどう? UDCアースのある舞踏会に参加する案件なんだけど――」
 UDCアースか、アリスラビリンスとはまた違う雰囲気があって些か慣れも経験もないが――
「いわゆる仮面舞踏会って奴でさ、みーんな仮面をつけて参加するんだ。そこのみんなと交流しながらUDCぶっ倒す依頼!」
「――何?」
 思わずトーンが弾んだ。
「それってみんな仮面をつけているのか?」
「そうみたいだよ? みんな仮面をつけていてそれでいて外そうとしない。すっごく不思議でしょ、でもその不思議も楽しめるようなものとして広まったらしく」
「ちょっとそれ興味があるな」
 思わず話を遮って詰め寄ってしまう。
「どうしたどうした、さっきと違って随分乗り気だね? 転送してあげようか?」
「あ……いや……」
 ついガチ恋距離まで迫ってしまってたようだ。いけないな、冷静さを失ってしまっていたようだ、ここはひとつリセットを……
「ん? どしたのしゅーんってなっちゃって」
「何でもない。さっきのは忘れてくれ。あと別の案件はないのか?」
「んー? そう言っててもここは正直だよ?」
「やめろ仮面に手をかけるんじゃない外そうとするんじゃない!」
 慌てて仮面に手をかけるグリモア猟兵の手を払ってしまう。よし大丈夫全く外れてない。冷や汗が垂れ、息が荒れてしまう。この仮面があるから『オレ』は『オレ』でいられるのであり、迂闊に仮面の下の■■・■■を見せたくない。ま、そういう意味では仮面舞踏会の奴らとオレは恐らく同じなのだろうが――
 冷静に普段の『オレ』を取り戻し――このグリモア猟兵、オレが息整えるまで何もしないで待っててくれた――改めて尋ねる。
「その仮面舞踏会の案件、オレも今から参加できるか?」
「言ってくれると思ってたよ」
 彼女はにこやかに微笑めばエネルギーを放つものが取り出される。グリモアというものだ。これが各案件への扉を開いてくれる。
 それが取り出されたという事はつまり準備はいいか、ということであり――
「詳しい話をするからちょっと向こうで話そうか」
「ああ」
 ――オレが今日の『行き先』を決めたということでもあった。

 詳細を聞き、オレは送り出される。
 さぁ、かの仮面舞踏会ではいったいどのようなことが起きているのか。どのような事件が起きているのか。
 予知自体は彼女から聴けど、現地でないと分からないこともある。それは何を隠そう普段からその時その時で行先を考えるオレが一番わかっている。
 だが、オレと同じような仮面で素顔を隠したものが多いという話に――ついほくそ笑んでしまっている自分がいた。
「|素敵な結末《ハッピーエンド》を目指すついでに、一緒になって楽しむか」
 舞踏会だったら普段のお茶会とも、もちろん世界や文化が違う以上相違点はあるだろうが、雰囲気は似てるだろう。違う世界でも『お茶会』なら、楽しんだもの勝ちだ。

 しかし、まぁ――
「あのグリモア猟兵、オレと似たような感じがしたな」
 それはその時その時を楽しむ旅人的なのもあるが、何よりも。
「何か、『仮面』してそうだったな彼女――ふっ」
 再開が楽しみだ、いや今から後ろに戻ればまた会えるか? とふと呟いたのだった。
 ――直後、グリモアベースで可奈がくしゃみをしたのは言うまでもない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年04月29日


挿絵イラスト