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宇宙の子、命の風と踊る

#スペースシップワールド #スペースオペラワールド #宇宙怪獣

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 ミジンコ。

 ぱっと見そいつはそう見える。
 宇宙、星々の間を彷徨うミジンコだね。

 ぷるんとでっぱった腹はほんのりとライム・グリーンに輝く。
 頭は小さい。雪だるまだってもう少しマシなバランスだろうと思うくらいのちっちゃな頭には、くるっとまんまる大きなお目目がくっついている。
 本当のミジンコと違い目は側面にひとつずつの合計二つあり、よく見ると複眼だとわかるんじゃないかな?

 頭部は他にも特徴がある。
 キツツキの嘴めいた口部。
 胴体からは2本の腕!万歳、あるいは|歓迎のハグ《プリーズハグミー!》と言わんばかりに掲げてる。

 宇宙には様々なものがいるけれど――さすがにミジンコは珍しいんじゃない?
 きみはレンズを合わせ、あるいはカメラのピントを合わせ、ちょっと倍にして見ようとするかもしれない。記念に写真でも撮ろっか。そんな感じ。
 こんなにちっちゃいものをたまたま見つけるなんてそうそうないもんね。

 そしてびっくりする。絶対に。

 2倍にしたはずなのに――5000倍くらい大きく見えたって!

 安心して欲しい。
 きみの道具はなんにも壊れてない。
 それで正しい。

 そのミジンコは腹の直径だけで、おおよそ999万1千kmくらいあるからね。

 ……。
 え?
 数字のイメージがつかない?
 ……うーん。まあそれもそうか…そうだね…。
 ちょっと旧時代的表現になるけれど……。

 木製50個横に並べた直径!

 これでどう?イメージつくかな。
 なあに、驚くことでもないよね。
 太陽系よりはよ〜〜〜〜〜〜っぽど小さいさ!

「てなわけでね、デフィー」

 宇宙ミジンコのあたまの上で少女は長い髪を揺らす。

「エルがいっしょにいるから、もうやっちゃってもいいと思うんだよね!」

 気持ちの良い草原に子供がするのと同じように腹ばいになって足をぱたぱたと動かす。

『なるほどね!』
 デフィーは緑のお腹をゆらした。ぷるるん。
 |中の宇宙がたゆたう《・・・・・・・・・》 。

 目の前には宇宙の住民たちが行き来する宇宙港――その向こうにはさまざまな星。

『じゃあもーいいかなー』
 宇宙ミジンコのデフィーは首を傾げる。
「いんじゃないかな!」エルと名乗った少女型のオブリビオンは頷く。

『じゃあここでやっちゃおうか』
「やっちゃえやっちゃえー」

『|宇宙新生《ビッグバン》』

 こんなに呑気な世界の終わりもなかった。

●ちょっおまバッ……おま、バカ!!!ママちゃんと何処行くか教えたでしょ!!
「ヘルプ」
 イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)が君たちの服の端っこを掴んだ。

「宇宙ミジンコが爆発しそう」

 きみたちは事情が飲み込めず首を傾げるだろう。
「あ、宇宙ミジンコっていうのは宇宙の端っこで生まれて」
 彼は首を傾げたきみの腕をすかさず引っ掴み。

「またどっかの宇宙の端っこで|宇宙新生《ビッグバン》 を起こしては増えてひろがってく、
 宇宙の子なんだけど」

 !?

「ちなみに大きさは直径が木製50個分」

 !!!!!!!????

「お願い助けて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
 気付けば硝子剣士はきみの足に縋りついて涙目である。

「やばいんだよ宇宙ミジンコいいやつなんだけどさ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 ……きみがなんとかして(本当になんとかだ。手段は色々ある)彼を座らせ、事情を聞くとこんな感じである。

 舞台はスペース・オペラワールド。ある惑星都市そばの宇宙港のほぼ真ん前。
 宇宙ミジンコのデフィーは目的地の途中でオブリビオンの誘いにのり、すっかり友達気分で、本来ビッグバンを起こすべきところではないところで爆発させようとしているのだという。

「そうなりゃ当然滅びますわ」
 滅びますね。

 宇宙港はもちろん全滅、ヘタするとそこらへんの惑星諸々がそのままおじゃんである。
「もーほんと宇宙の端っこで爆発新生してふえんのよって言われてたはずなのにあいつさ〜〜〜〜〜〜!!!」
 両手で顔を覆っておいおい泣く硝子剣士。

「転送されたら、まずは宇宙港の開放をお願いします」素直に頭を下げるイージー。

「宇宙ミジンコね。知る人ぞ知る有名生物なの。特にこの宇宙港とその後の惑星都市じゃグッズも出るくらい」
 この星の近くは古くより何年かに一度宇宙ミジンコが通っていく光景が名物なのだという。
「性格も知れ渡ってるからこんなところで爆発しねーだろーとみんな思ってるわけ」
 それが今回、揺らぐというわけだ。

「方法はお任せするよ、みんなが避難したり移動できりゃいいよ」何度も頷くイージー。「ちょっと乱暴でもしゃーなし!」

「それが終わったら宇宙ミジンコ唆したオブリビオンをやっつけよう」
 そこで、七人兄妹の三番目は苦笑する。「まあやっつけてもおっかえしても、なんでも」
「宇宙ミジンコが…あ、デフィーってんだけど、デフィーも攻撃してくるから、注意してな。
 …半端な攻撃くらいじゃビビらないから、思いっきりやってもいいよ」
 なにせ木製50個直径の巨大生物である。

「それが終わった頃には――宇宙港の後の都市が、珍しい宇宙ミジンコの来訪を祝って送るお祭りをするよ」
 そこまで来たらもう安心、と彼は太鼓判を押す。「迷子を手伝ってあげたお礼、ってわけじゃないけど、幻想的ですごく綺麗だよ。楽しんでって」

 そこまで言うと、彼はグリモアを光らせる。

「初めてのおつかいはトラブルがつきものだよ、しゃーなし」

 まばゆい光は柔らかいようで――くっきりとあざやかだ。

「ちょっくら助けてあげようぜ、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 初夏に玄関を開けたのと同じような輝きだった。


いのと
 こんにちは、あるいははじめまして。いのと、と申します。
 初めての道はキョロキョロしまくります。

 今回はとってもライトで軽いほのぼのシナリオです。
 子供がおつかい途中にできた友達にそそのかされてお使い中断しそうです。
 そのせいでちょっと宇宙の端っこも滅びそうです。

 それはいけません!
 なんとか宇宙を救いましょう!
 ちょっとお使いを手伝ってあげるくらいの、気軽さで。

 今回(こそ)はサクサク書く予定です。
 受付はタグにてお伝えいたします。

 ご参加、お待ちしております。
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第1章 冒険 『占拠された宇宙港』

POW   :    正面突破でスペース・ポートを解放する。

SPD   :    強行突破で一直線に管制塔を押さえる。

WIZ   :    通信を乗っ取り攪乱にあたる。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ぅゎ、ミジンコぉっきぃ。

 どのくらい誰が言ったかどうかはさておき。
 ララ・デア惑星所属宇宙港フロントから宇宙を眺めていた人たちは徐々に近づいてきたミジンコに一人また一人と気づき、最終的に信じられないほどの大きさを持っていることがわかるとほとんどの人が見に集まった。

 ミジンコ、おっきい…!!

 宇宙ミジンコが内に宇宙を秘めたでっかいプルプルのお腹で小さな隕石や宇宙ごみなどをむにっと弾きながらゆっくり遊泳している姿は本当に見応えがあった。
 加えてライム・グリーンの輝きは宇宙でも豊かな星でしか見ない優しい緑である。命豊かな星やコロニーに起因するものたちは郷愁を、そうでないものには緑への強い憧れを覚えた。
 動くたびにでかいミジンコのお腹のなかで宇宙の神秘がまたたき見飽きることもない。
 ララ・デア惑星所属宇宙港のフロントには今宇宙港を訪れているほぼ全ての人が――もちろん四足やそれ以上であり人とカウントするのが失礼な方もいらっしゃるが描写まとめないとキリがないので今回は大変失礼と理解し申し訳なさに断腸の思いをしつつ人に約させていただく――集まっていた。
 ララ・デア惑星所属宇宙港の一角に転送された君たちは、ちょっと肩透かしを食らうかもしれない。

 この場に狂乱はない。
 迷走もなく、ただただ平和である。
 暇つぶしのドリンクや間食を片手にミジンコを眺めたり、ミジンコを見ながら作業をしたり、リアルタイム配信をしたり。

 そう。
 雰囲気が、すごく…ほのぼのです……!

「……であるからして、この宇宙の神秘の表れそのものであるこの生物は、年に一度、惑星ララ・デアの周囲を通過し、私たちに宇宙の無限の可能性を別名『宇宙ミジンコ』と呼ばれ愛されております……」

 ガイドのお姉さんが説明している。
 そう。
 ララ・デアでは宇宙ミジンコが通ることはそう珍しくないのである。通常は年一度だが、たとい何十匹も通っても「今年は何かいいことがあるかもしれない」程度。ミジンコの速度もさまざまで、何日か居座ることもあるらしく、この宇宙ミジンコの停滞も慣れっこである。
 とはいえ予測はできないので訪れた時にいればとっても幸運は間違いない。売店の一角には宇宙ミジンコグッズもあるし、ララ・デアで行われる宇宙ミジンコにまつわる祭りがあると電子広告も回っている。
 
――このまま宇宙ミジンコがビッグバンを起こすのを知っているのは君たちだけ、ということになる。

 つまり君たちは、この『ミジンコおっきいなー』という|平和そのもの《のほほん》 から宇宙港を開放せねばならないのだ。

 なにせきみたちはこの後、あの、ぉっきぃミジンコ…宇宙ミジンコのデフィー、そして彼を誑かしたというオブリビオンとやり合わなければならない。
 万が一のことを考えて人々にはせめて宇宙港からは退避してもらわねばならない!

 方法はいくつもあるだろう。

 とてもいいもので人々を釣る?従業員のふりをして管制制御室に潜り込んで放送でも流す?識者のふりをしてみようか?はたまた強行突破とばかり宇宙船を開放してみる?宇宙港を買い取る?テロリストの真似事でもしてみようか?
 無論、管制室に乗り込むこともテロリストの真似事も本来は人道に悖るが――背に腹は変えられまい!
 もちろんここは宇宙港。さまざまな人がおり、誰かの抵抗もあるだろう。
 だが、幸い平和な空気である。割となんとかなるのではなかろうか。

 ストレートにひとりひとりお願いはあんまりお勧めしない――人数は多いし、意思のわからない生き物がぼーっとしてるようにしか見えないからだ。
 
 それではきみに|ひらめき《トンチキ》 祝福あらんことを。

 ミジンコかわいいね。
■ぉっきぃミジンコちまヵゞ見〒/レ

『もういいかな〜〜??』

「エルもいんじゃないかなーって思う〜」
!」

『あっ』
「んっ?」

『あそこ、なんか始まってる〜〜』
「なになにデフィーどこどこエルも見る〜〜!」
百海・胡麦
アレンジ歓迎

ぷにぷにのミジンコ!…宇宙生んじゃうんだ。其奴は大ごと
愛い子に似てるし張りきるかあ
ふふ、透る大好きな子

旅人の交差点か
観光気分ならまんまノセてやろ

寄ってらっしゃい見てらっしゃい
姐様兄様御子様方
此処にございますはいとおかし
あら不思議――筍で御座います
ご存知あゝご存知? そ。食べ物です

朱傘や黒のモンスターバイク「虎尾」など取り回し
【パフォーマンス】

うん、妙ちくりん。目は引いたね

このタケノコ。伸びまする
UC『香久夜』で窓の外、宙域で成長させ
すうう…深呼吸
「息名」の焔で身を覆い【環境耐性】
華美な宇宙服が一丁あがり

行くよ? 伸び行く竹、竹竹!
虎尾に乗り【悪路走破】
先端の横腹を走り抜けます
掌には“焔”を灯し、巨大な魔法陣を描き

UC『夢努』発動

おいで愛い子らよ
飛び出す“ふりふりの花を飾り付けた生物たち”
これは焔が変じたもの
各々館内を駆けて
触れれば―― 花が、ぽわっと虹の粉を散らし“爆発”

おいでませ竹の里
彼方の舟が楽園への一歩
てな具合で
自覚させず無意識下に危機を【情報伝達】
御船に避難させますよ



◼️『知ってるよ!非公式アピールキャラってやつだよ!』「デフィーどこで知ったの???」

 まんまるでおっきな――ぷにぷにのミジンコ!
 ララ・デア惑星所属宇宙港は連日穏やかながらに盛況である。
 旅ゆく皆がふと足をとめ和む理由が自らと知ってか知らずか、今日ものんびりと宙を漂っている。
 もちろん、百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)も初めて見た。
「……宇宙産んじゃうんだ」
 話を聞いた分には何事?という印象ではあったが、「其奴はまったく一大事」こうしてみるとあり得ることだと改める。
 宇宙ミジンコと透き通るお腹の中には、透ける小宇宙が漂っている。
 ミジンコの頭部には、緑のひかりがちらりと瞬いている。
 よく目を凝らすと、きらり、人の形をしているのがわかるだろう。
「悪い友達に唆されちゃって、まあ」胡麦はちいさく文句を呟く。「仕方の無い子」
 胡麦の文句など当然ミジンコには届いていない。のんきに口を開き、あくびのような仕草をしてみせる。
 胡麦も無論返答など考えてもいないので、軽く息をついて
「愛い子に似てるし」
 するり襷を取り出して、長い袖をまとめて留める。
 包み布を三角巾に折り、するりと頭に被せて後ろできゅっと結んだ。「張り切るかあ」
「どんな子かって?」返事もないのについついミジンコから話しかけられたように胡麦は呟く。
「ふふ、透る大好きな子」

「おまえと会えたらきっとびっくりけれど、お友達になれそうな子だよ」
 さてや姐やの一大舞台。

 宇宙港フロント内にちょっとした歓声が響き渡る。

「寄ってらっしゃい見てらっしゃい」
 本日は宇宙ミジンコに加え、旅芸人が訪れていたからである。
「姐様兄様御子様方」
 突如現れたこのパフォーマーに、はて本日はそんな人などいたのかと確認にいく警備員が数名。
 宇宙船の便を待つのに数日かかることもある、宿のとれなかったものが居座って、慰めの芸でも始めたかと眺めるのが数名。
「此方にございますはいとおかし、あら不思議」
 普段と違い、彼らの誰もが女を止めなかったのは

「――筍で御座います」
 ララ・デアから西捻り青蛇座γ星方向に在る星――竹で有名な|那夜竹《なよたけ》 星の一員だと思ったからである!

「たけのこさん!」母親のスカートを掴んだ娘が胡麦が取り出した筍を指さして叫ぶ。
「そう、筍さんね」胡麦は穏やかな笑みで答える。

「あーナヨタケか」「あらご存知」感心したような声を出した男にこちらも朗らかな笑みをサービス。「ナヨタケさんこんなことするようになったんですねぇ」「あゝご存知?」こちらも朗らかな相槌を打って、和気藹々の空気を作り上げる。

 え?許可?
 大道芸とか那夜竹星の案内とか許可どうしたかって?

「そ、食べ物です」
 胡麦はにっこり笑って朱塗りの傘を取り出す。ぱっと広げて
「坊や、このボールをここにぽいと投げてくれる?」近くの子供に依頼する。「ん!!」
 坊やの投げたボールが、胡麦が回す傘の上をくるくると走り出す。

 もちろん取っていない。
 大道芸をする許可も取ってないし那夜竹星観光協会にも取ってない。
 取れるはずもない。
 なにせ宇宙港内にぽんと転送されたのである。
 惑星周囲の観光案内掲示板を確認したところ都合のいい惑星を見つけたので、那夜竹星から出張販売しているお土産店に駆け寄って、店員も那夜竹星と関係ないことを確認して、小さめの風呂敷を買い――こうして“とってもそれっぽい”雰囲気でとりかかっている。

「それじゃあ皆様の御声頂戴致しましていざや挑戦」
 するりと黒のモンスターバイク、虎尾を取り出せば、息まいたエンジン音。「あらあらやる気だ」
 前輪浮かせるフロントアップ・片手はバイクのハンドルを握ったまま――片手は傘を広げて傘回し!
 あれやこれやと繰り出せば、すっかり場は盛り上がってやいのやいのと人が観にくる。

(うん、妙ちくりん――これなら多少の無茶もできるね)
 表情は笑顔を忘れずに、視線をくるり場に走らせる。

 目的はあくまでもここからなるべくスムーズに、速やかに人々を移動させることだ。
 そのためにいかに注目をあび――止められないまま無茶をやり、人々の心に訴えねばならない。

 そう!本日百海胡麦は大道芸の鬼になる!

「さてこの筍――実は伸びまする」
 とぼけた一言に、場から笑いが起こる。「そりゃあ伸びるわな!」親しみのこもったやじである。
「ええ、この筍の親御、本日子供の活躍が心配で――どうにも|首を伸ばした《・・・・・・》ようで御座いまする」
 人々がきょとん、とする。「ほれ|彼方《あちら》」指示をしながら、気づかれぬよう素早くコードを放つ。
「|窓の外《・・・》 をご覧あれ」
 ユーベル・コード。|香久夜《ひめぎみ》。
 宇宙空間とて場所を選ばない竹が、青々隆々、生い昇る。
「うわっ」「竹!?!?」「ホロ!?!?」「いやいやいや…」
 驚く人々を横目にひとつ――静かな深呼吸。続き『息名』の炎で身を覆う。
 淡く輝く焔の宇宙服を纏い「ちょっと!?!?」くるりバイクで身を翻し、観客の前を通り過ぎてフロアを抜け、直近の緊急用ドアから宙域へと飛び出す!
「いくよ虎尾?」軽く笑い。

 伸びゆく竹にタイヤをかける!

 嗚呼、竹――竹、竹、竹!青々生き物の緑を駆け抜ける。伸びゆくのその横っ腹!
「なんの、悪路のうちにも入らないね」堂々呟きつ駆け抜ける。
 唖然とした人々ににっこりと笑みをなげつ、手のひらには輝ける焔!

 あらゆる生き物を拒む宙域で伸びゆく竹、合わせてそこを簡素な宇宙服には到底見えない衣を纏った女がバイクに乗って悠然と走りゆく。
 溢れる焔は尾を引いて魔法陣。
 
 完了の結びを持って、コードが発動される――|夢努《ユメユメ》 。
「おで、愛い子ら!」
 ふりふり花弁爛漫の花で着飾った、思い思いの生き物らが飛び出す。
 ――無論、本物の動物ではない。
 あくまでもコードだ。その正体は焔である。
 焔と言っても火力は微弱。熱の塊のようなものである。
 かわいい彼らは猟兵のコードによる特殊な焔によるガラスや防壁をするり滑りぬけ、各々館内を駆け抜ける。
 
 先程胡麦にボールを投げた男の子が、はっしと花飾りの輝くかささぎを両手で捕まえた、と思えば花がぼんと弾けて虹の光を散らしていく。

 どうぞいらっしゃいませ竹の里。
 あちらの御船が楽園への第一歩。
 |私《アタシ》ども皆、貴方様方のご来訪を心よりお待ちしております――……。

 そんなわけで。
 无夜竹星に本日お客が殺到し、嬉しい悲鳴と大混乱が発生した。
 顧客の多くが口を揃えてララ・デア惑星所属宇宙港で見た大道芸の案内人のことを話し、動画など見せたが――無論そんなものは登録には居らず。
 首を傾げつつ肖像権を軽々と侵害……するわけにはいかないのでデフォルメされたキャラクター「なよたけちゃん」なるものが爆誕し、ララ・デア宇宙港に展開される无夜竹星のお土産コーナーにもいくつかグッズが並ぶことになるのだが。

 当然ながら人々の見えないところでやり遂げたガッツポーズを小さくする胡麦はもちろん。
 今はまだ誰も知らない話である。

成功 🔵​🔵​🔴​

ダンド・スフィダンテ
木星50個分の大きさってなに????

????

ちょっと俺様には理解出来なかった。ごめん。

まぁ!まぁいいや!な!
直面しないとどうにもならない問題ってあるもんだしな!あ、俺様もそのストラップ欲しい。宇宙ミジンコ可愛い

で、えーっと、そうそう、空港の解放……解放ね……うーーーん……ちょっとトンチキ脳死んでるんだよな今……

とりあえず船1つ貸して貰おうか

この船の関係者にはサクッと話をして無理やり信じてもらって…あとは乗客を呼び込むだけ…え?拡声器使って良い?ありがとうミューズ!俺様イケメンで良かった〜!

んで、ほい、聖印
開け、開け、惑星にすら並ぶ程

『えーー、こちらの船で急遽ミジンコに近寄ろうぜ大作戦を開始します。ご興味ある方はこちらへお並びくださーい』

勿論嘘だけども……人は乗って来てくれるんじゃない、かな…?UCの効果もあるしさ。

…ん?これよく考えたら光に寄せられてミジンコも来ない?気のせい?



◼️『デフィ知ってるよ!あれ、“かどわかす”って言うんだ!』「デフィーは変なこといっぱい知ってるね〜」

「えっミジンコ大きい」
 筆者もそう思います。

 ミジンコと目があった気がして、ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は思わず半歩下がる。致し方ない。チキンだって細菌でお腹を壊すのだ。
「えっ何?木星50個分?あれが?」
 ララ・デア宇宙港、客船ブリッジ。
 宇宙ミジンコの巨体は、すぐそばのララ・デア惑星都市までの星間バスや星間タクシーがほのぼの集まるロータリー部でもよく見えた。大窓があるフロントまでまだ少しある。
 唖然とするダンドの肩でアンブロジウスが鳴く。あんぎゃっ!おっきいねえ、そんなかんじ。そうだねえ。「それにしたってデカすぎない?」そうだね。
「木星五十個分て??え???」
「999万1千kmっすね」
 隣で宇宙タバコをふかしながら星間バス、宇宙船の運転手をしているという|女性《ミューズ》が補足をいれてくれる。宇宙船ともども今日の仕事はアガリだという。
 ダンドは思わず手元のスマホで検索をかける。木星は地球の11倍だそうだ。
 つまりあのミジンコは地球の550倍の直径。
「????」
 ただでさえ大きいのにあれは少し離れているからこのサイズに見えているだけで実際はもっと大きいってこと?みたいな疑問が膨れてしまう。
「なんでそんな大きいの?」
 ごもっともである。
 ふざけた妄想だが神様なるものがいて宇宙ミジンコを作ろうと決めた時にうーんどっしよっか、おおきいのが良いからとりあえず太陽系で太陽の次に大きい星を雑に五十倍しとこ!宇宙広いからこれでもまだ物足りんやろ!といったサイズ感である。「えっあれと戦闘控えてるんだよな?」実際どうなんですかMS?ご名答、その通りです。猟兵のサイズを考えて欲しい。

「まいっか!!」
 ダンドは考えるのをやめた。ちょっと今の俺様には理解出来ない。いや未来の俺様が理解できるのかもちょっと危うい。理解しないでいい気もする。ごめん。せっかく聞いた話だが思考のダストボックスにそっと入れるので誰にともない謝罪を心に述べておく。
「まぁ!まぁいいや!!」
「宇宙ミジンコに対面したやつはみんなそんな顔するッスよ」運転手ミューズがフォローしてくれる。「そっかあ!」じゃあしょうがないやつだ。

「特に今回のは前例ねーぐらいすげーでかいので見応えがあるっスね」
「やっぱ異常なほど大きいんだな!?!?!?」

 思わずミューズの方を見た。人差し指に宇宙船のキーを引っ掛けてくるくる回している。きらりとひかるのは宇宙ミジンコのストラップだ。
「あ!俺様もそのストラップ欲しい」
 指摘すると運転手ミューズはニヤリとする。
「違いがわかる男っスね」「違いあんの??」びっくりである。
「5年前の超ベリーキュートなやつっス」
 自慢げに言いながら、ミューズは端末を取り出して検索をかける。「五年前ほどのじゃないけど、今年のミジンコもかわいっスよ。特に今年は宇宙ミジンコぬいぐるみが…」「グッズ展開幅広いな」「ア゛!?ン゛だコラ買い占めか!?」「ミューズ落ち着いて」眉間に怒りを刻み込んだまま「ヤんのかオラァこのアタシが黙っちゃいないぜ転売ヤー!!いー度胸じゃねえか畜生!」
 ……ミューズが何事か端末に向かって戦い始めてしまったので、ダンドはとりあえず宇宙ミジンコをもう一度見上げることにした。
「宇宙ミジンコ可愛いなー…」
 見つめていると目があった気がしてダンドは手を振ってしまう。振り返された。気がするだけだし、本当に振り返してくれたのかもしれない。小さな幸せがほわっと胸を満たす。
「宇宙港の開放かー…」思考も思わず口から出てしまう。「開放ね……」
 このほのぼのから開放。
「うーーん……ちょっとトンチキ脳死んでるんだよな……」
「宇宙ミジンコ可愛いっスからね……」
 何事かの戦いを終えたミューズが賛同する。
「そうだよな…」
「あいつ見てるとなんか心の嫌なこととかがふわっと溶けていきますからね……」

「それで行くか」
 ダンドは決断した。

「は?」今度は運転手ミューズがダンドを見る番だった。「何スか」どう見てもララ・デアが初めてのこのあんちゃんは先程からどうにも変な言動が多い、すわ不審者か、そろそろお客様センターにぶちのめして投げ込んでやろうか――などと、そんなことを考えていたのだが。

「ミューズ、お願いがあるんだ」
 憂いの光をたたえた俯きがちな表情でそっと見つめられてそんな思考は吹き飛んだ。
「お、おおおおおお、おね、おね、おね、おねが!?い!?」
 ダンドから視線をはずせぬままそっとタバコを口から離す。
「ああ」ダンドは頷く。「非常に心苦しいが……」傾けた顔にほつれた金髪が一筋垂れ、宇宙ミジンコの淡いライム・グリーンを浴びてあわやかな色気が漂う。半トーン落ちた声のしずけさは、どこか夜近ばの夕暮れになずむような切なさに満ちている。
「あ、ああああ」運転手ミューズの口から彼女自身意図しない声が漏れる。こんなの推しのライブでVRVで唇触りそうな距離に近づいた時にも出なかった。汗が噴き出る。
「無理に、とは言わない」
 ダンドが半歩近づく。
「な、ななななな……?」
 運転手ミューズ、下がりたいのに下がれない。申し訳なさと共にダンドが握った彼の拳にひかるそれを見つけてしまう。
  
「貴女の宇宙船を――貸して貰えないだろうか」
 ――結婚指輪!

「サイタイシャア゛ーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

「おわーーーーーーーっ!?」ダンドは思わず下がる。不審者はまだしも妻帯者なんて叫ばれることある?あったわ、今ここに。アンブロジウスがびっくりしてダンドの背中に張り付いている。
「アタシは、あたたたたたたアタシアタシアタシはッ、いくらアタシがかわ、かかかかわいいくてあんたが顔がいいか、らってそそそそそんなねえだいだだだだだいだだいだい」
 ダンドにはちょっと聞き取りづらい音と速さで何事かを喚く運転手ミューズ。「ミューズ落ち着いて、落ち着いて」両手を前にだしてしまう。どうどう。
「落ち着いてらあッ!!!――だから、いくら妻帯者だからって、宇宙船」
 運転手ミューズは洗い呼吸を切った。
「宇宙船?」混乱の涙目のまま、繰り返すミューズ。
「宇宙船」にっこり笑顔で頷くダンド。「この宇宙港はこれから危険になる。だからなるべく多くの人を、騒ぎにならないように連れ出したいんだ」「はァ」「ダメか?」「そんなこときゅーに言われましてもねえ…」赤面しながら今度こそ後退に成功する運転手ミューズ。「お願い!」両手を合わせて頭を下げるダンド。
 ごめんなさいのポーズから、ちらと視線を上げる。

「貴女も助けたいんだ」
「サ゛イ゛タ゛イ゛シ゛ャア゛ーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 イケメンの(無自覚な)必殺技がキマった瞬間だった。

「おわーーーーーーー!!!!?」
 一日に二度も妻帯者を叫ばれるなんてそんなことある?信じられないことにあったわここに。
「持ってけチクショーーーーーーーーー!!」顔面に向かって投げられたキーをダンドは受け取る。
「ありがとうミュー」「いやだめもってくなバカ」拳に飛びつかれた。「どっち!?」
「いやアンタ|宇宙船《フネ》 運転できねっしょ、免許も宇宙船ねーでしょ?」
 真っ赤な顔を顰め八重歯剥き出しで言われて気づく。「それもそうだ」「だしょ!?バーカバーカサイタイシャー」「そんな罵倒初めて聞いた」正しくは“妻”でなく|“配偶者”《パートナー》なのだが……ややこしくなりそうである。
「これで船は確保、と」
 ダンドは小さく頷く。「あとは宇宙港のお客を呼び込むだけ、と」喉に触れてみる。「あ、あ、あー」
「何してンすか?」「そりゃ乗客を呼ぶためにー…」「ホレ」小さな端末を渡される。
「アタシの|宇宙船《フネ》の|拡声器《スピーカー》」
 忌々しそうな顔をしつつ投げられる。 「喉壊しまスよ」
「ありがとうミューズ!」
 心から礼を述べる笑顔はそれはそれは輝きに満ちていて。
「ッッドーイタシマシテキコンシャッッッッッ!!!!」また運転手ミューズから奇声が出た。

「では、ここからは俺様の仕事だ」
 
 開け。開け。
 かがやける紋――運命を背負ったものの聖印が輝き、ひかりがあふれる。
 大きさは、惑星に並ぶほど。

「うわー……」心を落ち着かせるために新たな宇宙タバコに指をかけた運転手は、瞬きをして広がる光を見つめる。「何、スゴイ人ッスか?」声をかけられて「なんかのリーダーとか」ダンドは振り返る。
 淡い苦笑を返す。
「そんなものじゃないさ」
 そう成れたら、よかったのだが。

『えー、こちらの船、こちらの船で、急遽ミジンコに近寄ろうぜ大作戦を開始します』
 ただでさえ背のある美丈夫がやたらと良い声で宣伝するのである。
『ご興味ある方はこちらへお並びくださーい』
 宇宙船の前に行列ができるまで、そう時間はかからなかった。

 乗客の確認をしながら彼方を見やり、おや、とダンドは気づく。
 ミジンコ、近づいてない?
 これ、よく考えたら、ミジンコも光によって近づいて来ない?

 その通り。
 ミジンコは少しずつ。宇宙港に近づいていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワタツミ・ラジアータ
クロムキャバリアでは使用できない星間輸送兼露店船型外装を装備したキャバリアで宇宙港に接舷
輸送艦に置いてある折り畳み式露店を展開し宇宙用のジャンクに修理品、果ては横流しの正規品まで格安で販売する

開店記念の大安売りですわ。
ネジから宇宙船まで色々ありますわ。
出所は言えませんけれど。

ある程度宣伝効果を得た所で本命のキャバリア外装である本店へ客を誘導する

こちらは人が多いのでこの程度ですが、あちらで本店も開きますので買いそびれた方は歓迎いたしますよ。

すぐに商売できるように最近拾ったAIを乗せた小型クモ型ドローンに準備をさせている

こっそりUCにて数台のスピーカーを乗っ取り宣伝放送も流しておく



◼️『らっしゃいらっしゃい安いよやすいよ〜〜〜』「みじんこの宇宙が今ならタダだよ〜〜」『時速500kmで惑星射出しちゃうよ〜〜』「ワァオ、おっとく〜〜!」

「一兎を追うものは二兎をも、というのは、とある東洋の諺ですが」
 ワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)はララ・デア惑星宇宙港に降り立った。
 ワタツミの背後には、彼女が乗ってきた輸送艦の向こうに、たった今宇宙港に接舷したキャバリアがある。
 
「漁夫の利、という言葉もあるように――二兎では生ぬるい」
 さらりと髪をかきあげ天を仰ぐ。
 煌々と輝く――宇宙ミジンコ。
 ワタツミはさっと目を走らせ周囲の客の様子を伺う。
 宇宙ミジンコに手を振って喜んだり、望遠レンズをのぞいたり、写真をとったり、グッズを握ったり――どう考えても地元の(ところで野暮な疑問だが、この場合は地星なのだろうか?)人間ではない。
 皆どこからか来て、どこからへ行くのだろう。それは近郊であったり、あるいはもっと遠方なのかもしれない。
「たくさんの人が訪れ、また交差していく宇宙港から人を逃がして欲しい、という|依頼《一兎》 と同時に、私たちは三兎四兎を掻っ攫いに行きますわよ」
「つまり、どゆことです?」
 ききこ、と関節を鳴らしながら補佐AIの入ったクモ型ドローンがワタツミの隣に荷物をひっぱりながらやってくる。すっかり喋りも流暢になった彼女は、今日も健気に懸命だ。
「つまり、ですね」
 ワタツミはにっこり笑ってドローンが引っ張ってきてくれた荷物のコードを引っ張り。

「ジャンクショップ、出張大作戦ですわ」
 かるい紐のひとひきと共に――折りたたみ式露天が展開された。

「新しい顧客開拓そして獲得、さらには周囲の状況新たなパーツの入手先、そして未知技術の知見を得ます」
 ワタツミの瞳が商売意欲でエネルギッシュな輝きを讃えていた。「なんといってもスペース・オペラ・ワールド――進みすぎた文明が一巡した世界です」
 あるいはそこには、機神の糧たりえる惑星が存在する可能性だって、十分にあった。

「さあ、働きましょう。開店記念の大安売りですわ」

 ワタツミのジャンク・ショップはぱっとみると少し怪しげな古物商にも見えるかもしれない。
 宇宙用のジャンク、買い取った修理品――果ては横流しの正規品。

 ララ・デア惑星宇宙港は、宇宙港としてはまあ大きい方である。
 とはいえ大都市にはかなり劣る。
 少々極端な例えになるが、おそらく“田舎で栄えている大きな駅”、というのが大きなポイントだ。
 年に一度、あるいは数度しか現れない観光資源に頼りつつ存在する、さらに果てへのとまり木。
 こういったところに、例えば世界レベルで――この場合の世界、というのは業種などのことでなく、クロム・キャバリアやスペース・オペラ・ワールドという単位の話である――異なる商品が流れればどうなるか?

「ははー…こいつは面白いやり方するね」痩せほそったタンクトップの整備工が目を細める。ワタツミの知るクロム・キャバリアとしてはありふれて数も揃えられるなんてことのないパーツ。「結構古い技術だが、合理的だな」感心したようにのぞきこんで「5つ6つ欲しいんだがね」
 手を差し出す。
「どうもありがとうございます」
 ワタツミは涼やかに礼を述べる。

 ――片方ではありふれた技術が、驚くような金に変わり。

「こちら、よろしいんですか?」ワタツミが尋ねると刈り上げを入れた男がうるさそうに手を振った。「そんな驚くことかい?よくあるだろう、こんなもんは」
 
 ――片方では喉から手が出るような有用品が、ゴミのような値段で手に入る。
 ただでさえ未知のもの、目新しいものは目立ちやすい。

「うっわ、この値段でいいの?」宇宙タバコを咥えた宇宙船の運転手と思しき女性が驚愕すれば
「えっえっとちょっと見せてくれよ」出っ腹の男がその女の手元を横から覗く。

 ――加えて値段も安ければ、もしかしたらお宝が、と伸びる手もある。
 世界が変われど中身が変われど――物流の流転とは変わらないものだ。
 流れ、流れてこそ意味がある。
 水が巡って海となるのであれが、|鉄塊《スクラップ》も巡って |世界《ワタツミ》となるのは当然の理である。

「えっ!?」
 首の皮がだぶついた男がメガネを掛け直す。
「そんな値段で買い取ってくれんのかい」
「ええ」ワタツミはなんてことのないように算段した金を差し出す。「この金属が貴重な星もありますから」まるで当然のように答えると、男は安堵したように天を仰いだ。「うひゃー…ありがたいな、路銀がちと不安でさ」
 ……。
「まだお持ちですか?」ワタツミは少しだけ身を乗り出して尋ねてみる。
「あるよあるある!金属でいいんならそりゃいっぱい!」
「お持ちいただくことは?」
「買ってくれんなら運んじゃうよ!――もってきてもいいかい?」
 男の提案を聞きながら、ワタツミは視線を配る。ジャンク品の減りは?
 ひとの集まりは?
 買取と売却を繰り返したせいで、臨時店の商品は思った以上に回転している。

「であれば――、本店の方が助かりますわね」

 この辺りが潮時だろう。
 ワタツミは素早く見切りをつけた。

「本店?」呑気に男が繰り返す。「ええ、本店です。何しろこちらは、ほら、宇宙港内ですから」
 何しろフロントの方では何やら別の惑星のアピールが行われたらしい、ふわりと花をつけた火が舞ったりもした。他の猟兵も動いている証拠だ。
 おとなしい手段ならいいが、おそらく荒っぽい動きをするものも出てくることには間違いない。
「皆様!」
 ワタツミは|商売用の笑顔《サービス・スマイル》で臨時店を覗く人々に声をかける。
「臨時店はこれにて一度終了し」
 残念そうな人々の顔を内心は満足と共に見渡し。
「もしよろしければ、私の本店にご案内いたします」
 彼らが追随したくなる案を掲げる。

 かくして宇宙港から人々がワタツミのキャバリアめがけてゆっくりと移動を開始する。

「いやあ、姉さん、悪いやつだねえ」
 髭面の男が面白そうにワタツミについてきながら話しかけてくる。
「はい?」「さっき買わせてもらったやつだがね――エメロの直営店しかねえやつだよ」
「あら意外でした」
 わかりきったことにはすっとぼける。
「いったいこいつをどこで手にいれたんだ?」
「出所はお話できません」あえて人間味の一切を断ち切った表情で、ワタツミは男にそっと囁く。
「お知りになりたがるようでしたら――本店の商品はお売りできないのですが?」
 一拍の間を開けて「ふは、はははは!」男が笑い出す。
「いやあ、そうだな、そうだ」おかしそうに何度も膝を叩く男の前で、ワタツミはあくまでも店員然と居続ける。「ジャンク屋さんにそいつは失礼な話だ――いやあ、いただこう、良い買い物だ、いやあ楽しみだ!」

 ワタツミは男の回答に満足しつつ、ゆっくりと歩いてゆく。
 
 まあ、話してやっても良いのだ。出所くらい。
 たとえばキャバリアでまつあのAIは、いつか焔を担う、人の敵になるかもしれない、であるとか。
 この体はあくまでも外装…端末にすぎず。
 ワタツミが世界を喰らうことのできる機神であるとか。
 すぐそばで宇宙ミジンコの遊覧を案内している男も猟兵で、いずれはここも戦場になるとか。

 真実を知った男がどんな顔をするか、興味も湧かないわけではない。
 とはいえ。
 そんなちっぽけな興味のために話す意味がないこともワタツミは十分承知している。

 世界には知らなくて良いことがたくさんあるのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネフィ・ペルバベスタ
全面お任せ&色々ご自由に

うわああオマワリさんたすけてーー!!
……失礼しました、イージー様
ご用件をどうぞ。

広大な宇宙で? ミジンコを?
当AIは発見に至れる確率が非常に低いと提唱しま
あ、とってもおおきいんですね、それはよかっ
……どういうこと??


わぁぁぁぁぁおっきいいですねええええ???
バステトいくつ入っちゃうんでしょうか?!

――はっ。
ぽやっとしてる時間は無いですね、策を講じましょう
『せんそうを、しようよぉ』とか言いながら
バステトで突っ込めば皆さん逃げてくれるでしょうか?
うう、良心がいたむのでわたしに悪役はムリですうぅ……

売れ筋のミジンコグッズを|調査《スキャン》
人が殺到するような人気商品をネット予約で買い占めて
宇宙港から少し離れた場所で原価割れ転売
更に館内放送に▲ハッキングして宣伝します
これで皆さんを宇宙港から遠ざけましょう

グッズの支払いですか?
う。手持ちが。
『不正な電子決済は絶対しない』の約束を思い出して
教官の決済端末をそっとしまいます

――はい。
教官宛ての請求書を後日郵送でお願いします。



◼️『あっデフィーあれ知ってるよ!!許されざる大罪、TEN⭐️BAIだよね』「デフィーそれどこで知ったの?」

 ネフィ・ペルバベスタ(|Type-C:F-A・BSs《いつか焔を担う仔》 ・f37243)は悪くない。
 悪いとしたら

「ゴ゛ベ゛ェ゛ェエエエエエエエエエエエエン助けてェエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」

 あのイージー・ブロークンハートというグリモア猟兵が悪い。
 ネフィは外見こそ11歳ほどだがAI製造年月日だけのカウントでいけばその半分くらいである。5ちゃい。幼女の定義は諸説あるが凡そ満1歳〜満8、9歳ほどまで。幼女ストレートどまんなかなのだ。本人に指摘するとちょっとばかりむくれるが。だからキミはまだ幼女なんだけどな〜というのは彼女の養い親である『センセ』の秘めたるニヤニヤ笑いの語るところ。
 話を戻そう。
 そう。
 ネフィはょぅι゛ょである。
 故に。

「ウワァアアアアァアア!!!!!!!オ゛マ゛ワ゛リ゛さ゛ーーーーーーーーーん゛!タスケテェエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
 故に半角カタカナで叫んだってしょうがないのである。

 思わずセンセに無理やり持たされた防犯ベルの紐を引き抜いて鳴らしてしまった。ビーッビーッビーッ!しかし助けは来ない!虚無!
「フシンシャァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
 不審者に会った時におすすめのシャウトは火事だ、だそうですね。
 ……まあ185cmというやや長身の28歳成人男性に足にまとわりつかれて泣き叫ばれたらそりゃあネフィでなくてもちょっとビビる。どうしてこのグリモア猟兵涙目と縋り付くことにこんなにためらいがないのだろうか。プロ?プロなの?シナリオのためとはいえ恥ずかしくないんですか?

「ォアアアアアア゛ア゛ア゛待って違うんですこれには浅いように見えて深いようなあんまり深くない気もする訳がどうか職質だけは職質だけはごめんなさいおまわりさん!!!!!」
 助けは来なかったが不審者もといイージー・ブロークンハートには効果は的面だった。縋りついていた腕を離しごめんなさいのポーズまでが早すぎる。手慣れすぎている。猟兵は異世界で目立たないはずなのにここまで職質に対する機敏な反応は一体どうしたことだろうか。おそらく何度かお世話になったのだろう。消防法とか軽犯罪法とか。みんな許可のないところで野宿はだめだぞ。更地でも法律違反だよ。
「……っ失礼しました、イージー様」
 人が異常行動に走ると冷静になるものである。ネフィは正気に戻って呼吸を整えながら防犯ベルのスイッチを戻す。「ぶへ?」イージーが顔を上げるのでネフィはティッシュを差し出した。「ありがとぉ…」「いえ」深呼吸、深呼吸。そう、私は優秀なAIです。キャラの定義をとりもどさんと集中する。
「ご用件をどうぞ」
「え、手伝ってくれんの?」イージーの顔が輝く。|操縦者《ひと》を補佐するのがベースの条件であるネフィとしてはそう返されれば嬉しいものである。
「はい」
 頷いた。
 頷いてしまった。
 ネフィたんそれ|地獄《トンチキ》 の扉だよ?
「よかったぁ〜〜…」嬉しそうな顔でその場にあぐらで座り直しながら片手を差し出すイージー。「助かるよ、マジで」涙を腕の甲でぬぐう。
「当AIがお役に立てるのならば、これ以上のことはありません」
 ネフィは上級AIらしい仕草で丁寧に頷いた。
「スペースオペラワールドの依頼でね」「宇宙」ネフィの眼が輝く。まだ訪れたことはないが、キャバリアの活躍しやすい環境である。

「宇宙ミジンコが爆発しそうなの」
 |なんかおかしい解答《かぐわしきトンチキの香り》 が返ってきた。

「は?」ネフィは眼をしばたく。「うちゅう…みじんこ……?」宇宙とミジンコが結びつかない。えーとえーと。バステトのデータにアクセス。うちゅうみじんこ。引っかからない。ミジンコ。ヒット。鰓脚綱枝角亜目。オオミジンコ、カイミジンコ、ケンミジンコ。
「広大な宇宙で? ミジンコを?」
「おん!」元気のいいお返事が帰ってきた。聞き間違いではないらしい。
 体長、1.5〜3.5mm、大型でも5.0mm。
 広大な宇宙で?
 バステトのカメラはそれなりに高性能だがそれはあくまで遠距離の敵に対応するためである。どう考えても顕微鏡ではない。
「当AIは発見に至れる確率が非常に低いと提唱しま」
「大丈夫!」
 イージーはにっこり笑って後押しする。

「直径木星50個分だから!」

「あ、とってもおっきいんですね」ネフィは安堵した。「ならバステトの射程外は無論、当義体からの目視によっても確認可能です」あんまり小さいならバステトと顕微鏡を接続することも視野に入れなくてはならなかったところだ「木星50個分、それはよかっ――」
 
「……どういうこと?」

 そういうことだった。

「わぁああああああああああああああ!!!!」
 ララ・デア宇宙港中央部、客員待機フロント大宇宙窓。
 ネフィは窓に駆け寄って宇宙ミジンコを見上げる。
「ミジンコおっっっっっっっきいーーーーーー……!」
 宇宙港からまだまだ距離はあるはずだがそれでも見上げなければミジンコの頭頂は見えない。
 ネフィは思わずバステトにデータを転送。視覚リンクを共有し、射程用の距離計測システムで凡その直径を計算する。ついでに録画も始める。ネフィは人類すぐ録画する、と録画した割に再生数の少ないことでちょっと録画という文化に大して懐疑的だったが今日理解してしまった。これは録画する。
「おねえたん、みじんこおっきいねえ」
 同じように隣でガラスに張り付いていた男の子がにっこりネフィに話しかけてきた。
「おっきいですねええええええ?????」
 まったくもって同意なので何度も首を縦に振る。視線がミジンコから離れない。
「バステトいくつ入っちゃうんでしょうか!?」
 木星1個は地球の11倍。「ふわーー!」つい計算して数値が跳ね上がるのに歓声が出てしまう。
「おねえたんおねえたん」男の子がネフィのスカートの裾を引っ張る。「こうしてみてるとね」おなじようにばんざいのポーズをとり、腕を上下に降ってみせる。「ミジンコこっちを見るのー」「ほんとですか!?」言われてみれば試すしかあるまい。ネフィは万歳の姿勢で窓ガラスの前でぴょんぴょんと跳ねながら腕をばたばたさせる。「おーい!おーい!!」
 ミジンコのまるい目玉がくるんと動く。「あっ目が合ったかもしれま」その目元に、するりと緑色の影が見えた。

「――はっ!!!!!」
 ネフィはょぅι゛ょであってょぅι゛ょではなかった。
「ぽやっとしてる時間はないですね」
 任務を忘れぬ誇り高き戦闘補佐AIであった。
 オブリビオンの影を見て思い出したわけじゃないです。ほんとほんと!
「策を講じましょう」
 掲げた両手を下ろし、録画を切る。音声を切り忘れておりネフィのはしゃぎっぷりからここまで音声入りと知るのは事件解決後、報告時に再生したときの話である。アーメン。
「たしかに、これでは危険の説明がしづらい……」大窓に背を向けて歩きながら一度だけ振り返る。強化視覚で捉えた緑の影を拡大――髪の長い緑の少女。
 人工知能は幼き|顔《おもて》からは想像もつかない思考を展開する。
 ネフィは館内端末に触れて店舗を検索するふりをしてシステムに接続する。|宇宙船《ふね》は勿論、 キャバリアに類しそうな戦闘機もある。流れ弾など当たって爆発すればどうなるか。
「いちばんいいのは退避したくなる大きな脅威ですが……」
 脅威――と言われれば。
「『せんそうを、しようよぉ』とか言いながら、バステトで突っ込めば、みなさん逃げてくれるでしょうか……?」
 |思いつく限りの最大脅威《忘れ難きトラウマ》を思い浮かべてみる。
 格納庫のキャバリアを2、3体遠隔ハッキングして連れていけばテロリストっぽくもみえるだろう。
 が。
「うぅう」首を振って想像を振り払う「良心がいたむので、わたしには無理ですう……」
 いずれ焔を担うかもしれないが今じゃない。
 いぬせんしゃに魔法少女をキメた時とはワケが違うのだ。
 躊躇う思考。彷徨う足は空港内をふらつく。観光案内、荷物預かり、飲食店。
 ネフィの足がとまった。

 物産店。
 宇宙ミジンコグッズである。

 古来よりあるキーホルダー、電子筆記具、電子クリアフォルダ、立体映像展開メッセージカード、インテリア、視覚装飾データ、補佐立UI用デフォルメ装飾、Tシャツ、菓子類。
 そして。
 ぬいぐるみ。
 フワッフワの……ぉっきぃヌイグルミ……!
 ネフィの脇を、女の子がおおきなぬいぐるみを抱えて通り過ぎていく。
 今まさにあれほどのミジンコを見ているからだろう、グッズの売れ行きは好調のようである。
 もしや。
「すみません」ネフィは人がきれた販売店員に「はい」「ちょっとお聞きしたいのですが、お手洗いはどちらでしょうか?」わかりきったことを尋ねながら決算用端末に小指で触れる。
 二言三言、|スキャン《・・・・》には十分すぎる時間。
「ありがとうございます」礼を述べて踵を返す。
 今だって知っている顔の蒼いコートの男がキーホルダーを一点手にとったところだ。
 何気ない様子を装いながら、ネフィはフードコートそばのテーブル席に座る。
 手元には観光案内。この宇宙港の後ろにある惑星都市の電子パンフレットを展開し、熱心に読んでいるふうを装う。

 その裏でバステトに接続。さらにララ・デア宇宙港近辺あるいはララ・デアにアクセスが多い宇宙ネットワークに触れて情報を得る。
 まず、ひとつ。
 宇宙ミジンコの人気は確かだ。間違いない。識者の間では|今いる宇宙ミジンコ《デフィー》 はもう数日漂っていると見られた発表が出たらしく、わざわざ宇宙ミジンコのためにララ・デア惑星所属宇宙港に行こうとする|旅行者《アクセス》 も見受けられるくらいだ。
 並行して先ほど小指で触れた端末から得たデータを展開し分析する。サイキック・エネルギーでできたこの身は本気になれば|あの程度の殻《電子処理端末》 など簡単に通り抜け、情報にアクセスすることができる。

 ミジンコ人気に合わせ――グッズ、やはり売れている。

 ネフィは確信を持つ。特にこの巨大な宇宙ミジンコが現れたことにより売れ行きはさらに急激な上昇を見せている。宇宙港内はもちろん、ララ・デア惑星近辺外でもだ。ミジンコの登場に合わせて空港内での広告にグッズが溢れているのもおそらく要因の一つだろう。
 そのままでも、これからさらに上昇するだろう。
 なにせ先ほど売店ですれ違った蒼コートの猟兵もストラップを手に取っていた。だからミジンコにはしゃいだのは|わたし《ネフィ》 だけじゃないです。

 これを利用しない手はあるまい。

 少しだけ――ネフィの思考選択は戸惑う。
 邪悪な選択だ。
「ごめんなさい」
 ネフィは思わず声に出して呟く。
 これがどれほどの悪か、彼女は曲がりなりにも理解している。
 起こり得る悲劇を思えば胸も痛む。 
 だがしかし。
 緊急事態である。
 ネフィは確固たる意思でもってそれを遂行する。
 救うためと謳って働く横暴は、もしやあの赫々と輝く焔と変わりないのではないか。
 そんな後ろめたさを抱きながら。
 選択を、行う。

 宇宙ミジンコ、公式グッズ通販サイト。

 宇宙ミジンコふわふわビッグぬいぐるみを。

 在庫含めて全て買い占めッ!
 そしてこれをララ・デア某所に住居を抱くと思しき男性の名で通販サイトにて販売ッ!!!
 
 これだけではまだぬるい。
 続き、先ほど宇宙港内の地図を確認する際に触れた端末を遠隔操作で侵入ッ!!!
 宇宙ミジンコぬいぐるみの広告を――激安価格で売っている表示に塗り替えッ!!!
 合わせて合成音声で激安販売のアナウンスッッ!!!!

 そう。
 ネットが発達して以降の許されざる大罪の一つとして名高い。

 The scalping。
|転⭐️売《TEN BAI》 。

 しかも扇動までしているから余計に罪深い。

 購入意欲とは恐ろしいものである。
 強ければ強いほど精神に選択をもたらす。
 例えば――この場で手に入らないのなら別の場所に移動しようという選択も取らせる。

「あああああごめんなさいごめんなさい」
 苦悩。苦悩である。
 商品が届かない|使用者《ユーザー》の苦悩は想定だけでネフィの精神にヒリヒリする。
 商品だってきっと届きたいのだ本当にごめんなさい。ネフィだってもしもパッケージのまま誰かに買い取られてわあい出荷と思ったらもう一回買い手が着くまで倉庫で待ってろなんて辛すぎる。作者に正しい制作費が入らず次機が作られないなんてことになったら罪悪感で四散爆発しそうである。道具は悪くないのだ。

 ああほら――先ほどの男の子とその母親と思しき女性が広告を見てそろそろと移動を始める。
 買わせてあげられなくてごめんという気持ちと。
 そのままどうか安全なところに移動してほしいという安堵。
「うううう……っ…このおもいは……おぶりびおんに……ぶつけ、ます……ッ!」
 苦悩を絞り出しうめくネフィの手元で音がする。「はれ?」

 グッズ支払い、請求の電子書類である。
 買ったんならそりゃそうだである。

 明示された金額は「う」当然「手持ちが…」ネフィには到底出せない金額だ。
 |教官の電子決済端末《センセの魔法のチケット》を取り出し。
「うっ……!」
 電子決済端末に貼られたステッカーに『どぉして3分200円のパンダが3分2400円になるのかなあ?』彼女の教官の筆舌尽くしがたい素晴らしい笑顔を思い出す。『パンダの本気を出して…かしらもじNになるには…これしか……!』大きなため息。『不正アクセスのためにカード止められかけてたいっへんだったんだよ』びっしと突き出された指の腹。『いいかい?』

「“不正な電子決済は絶対しない”」

 蘇る誓いをなぞり、ネフィはそっと端末を戻す。
「――はい」
 支払い方法を選択。

「教官宛ての請求書を後日郵送でお願いします」

 教官が言ってたのは多分そういう意味じゃないよ、ネフィ。
 ツッコミは、いない。 

成功 🔵​🔵​🔴​

八坂・詩織
宇宙ミジンコですか、興味深いですね!
たしかに大きい…けど宇宙のスケールで考えればまあ大したものではないでしょうね。太陽は木星よりもさらに大きいですしその太陽の1000倍以上大きい恒星もあるわけですから。
それよりも中に小宇宙を内包しているというのが…ビッグバンの前には|急激な膨張《インフレーション》があったとされていますが宇宙ミジンコもさらに膨張するんでしょうか…

と、今は避難誘導が先決ですね。
指定UCで姿を隠し管制室へ潜り込みます。
『緊急速報、隕石の接近が確認されました。安全のため至急宇宙港から退避してください』

不法侵入のうえ嘘をつくのは心が痛みますが…仕方ないですね。これも人命救助です。



◼️『ぴんぽんぱんぽ〜〜〜ん!だね』「ニンゲンは上手におしゃべりするねえ」『そだねえ!すごいすごーい!』

 窓からは、無限の星空が見えた。
「うわあ……!」
 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は目を輝かせた。
 星々の並びはモーラットを追いかけて以降幾度か訪れたプラネタリウムで見た星とも、天文部の皆と確認しつつ見上げた星空とも全く異なっている。
「やっぱり壮観ですねえ」
 椅子を引いて腰掛ける。
 アックスアンドウィザーズやグリードオーシャンでもたびたび星を見上げてきたから国や世界で夜空、しいては宇宙の色もさまざまであることはもちろん知っていたし、スペースオペラワールドもこれで二度目ではあるが――それでも星々のうつくしさ、輝きの違いには毎度驚かされる。
 あの輝く星のどれもが、それぞれ異なった理由で輝いている。
 もちろん理屈としては温度だが、それぞれ可燃するガスが異なるだろう。核爆発によるものはいくつぐらいあるのだろうか。目を凝らしていれば彗星がいくつも流れていって、惑星系の描く螺旋(そう、太陽系もそうだが、惑星とは同じ位置を回るのでなく、一つの星を中心に回り続けて宇宙を進んでいくらせんの動きなのである)を見つけることができないか、見つめていたくなってしまう。

「宇宙ミジンコ」
 今回そうはならないのは、ひとえに窓から見える緑の球体のお陰である。
 詩織は名前をなぞってくすっと笑う。
「興味深いですね!」
 ここに来るまでにたびたび他の窓からも見えていた宇宙生物は、やはりこの窓からでも全体は伺えない。大きすぎてフロントのように壁一面が窓でない限り、緑の月が宙の一部を埋め尽くしているような様相である。
「後肢の爪がちょっと出っ張ってるから、女の子ですかね?」
 虫が苦手とはいえ中学理科教師である彼女は小4の理科の科目から頻出するこの小さな生命体はある程度見慣れていた。もう少しだけ窓に寄り、それを眺めてみる。「そもそもミジンコの目はひとつですから、形が類似しているというだけで違うのでしょうけれど」
 ――それがまた、顕微鏡で拡大しすぎたミジンコそのものに少しばかり似ている。
 部屋は、少しばかり冷たい。
 みちるしずけさがまた宇宙らしさを感じられるようで、詩織はにこにこしてしまう。
「直径は木星の五十個分でしたか」
 ポケットから小さなメジャーを出して軽く直径を測ってみる。「ならおおよそ999万1千km」測った大きさと想定される大きさから縮尺をざっと計算して――なかなか近くにいるなと結論づける。「確かに大きい」くすくす笑ってしまう。
「けど、宇宙のスケールで考えれば、まあ大したものではないでしょうね」
 周囲に浮かぶ惑星や宇宙ゴミの位置から、ミジンコがどこから漂ってきたのかを想定して、そミジンコ越しにそちらの方向をみやってみれば、恒星と思しきまばゆい星がいくつもある。「太陽は木星よりもさらに大きいですし」ひい、ふう、みい。「その太陽の千倍以上大きい恒星もあるわけですから」あれなんかそうかもしれません。窓ごしに人差し指で恒星をつついてみる。
 生徒もいないのに説明と考察を述べる声は詩織自身でもわかるほど弾んでいる。まあ仕方なかろう。――見上げた星の海を訪れるなどはしゃがずにはいられまい。

「きっと、長く過酷な旅だったんでしょうね」
 詩織はミジンコを眺めながら、ふ、と息を吐いて――それから、口を閉じる。
 がたん!
 |旧管制室《・・・・》 の扉が開かれた。

「どうですかァ!?」
 扉の向こう、廊下側に立っているであろう誰かの声が聞こえる。
「いやあ――こりゃ確かにダメだな!」
 男が二人か。制帽に防衛機能も備えられたジャケット。腰から下げられたのは不審者鎮圧のための警棒に銃だろう。「空調か!?どっかダクトかなんか穴が空いてんじゃねえだろうなあ、どこイカれたらこうなるんだ――ああっ、くそッ!」毒づきが聞こえる。

「|まるで吹雪だ《・・・・・・》 ッ」
 どうもご迷惑をおかけします、と詩織は心の底で謝っておく。
 まるでも何も、そのものですよ――とも言いもしない。

 ユーベル・コード、|吹雪の竜巻・改《スノウストーム・クローク》 。
 そうともこれは雪女の衣。
 ひとりのおんなが正体を隠して去る、あるいは現れるための絹衣。
 これくらいならば――髪を解き眸を青とならずとも、黒髪の雪女として起こすことができる。
 
 とはいえ雪とは儚いものだ。
 手のひらのうえで淡く水に溶けるように、詩織が声を出せばこの吹雪が仮のものだとバレてしまう。

 ゆえに詩織はそのまま、ただ口をつぐんで星を眺める。
 窓の外でどこかの星から噴き上がった水分が凍って舞っているかもしれない、星見の雪のように。
 それだけで十分だ。そうしていれば、雪女の静かな星見に邪魔は入ることはない。
 
「これはもうどうしようもねえよ、放送は諦めだ諦め――俺たちも誘導に回るぞ!」
 扉が閉まる音とともに「ふう」詩織は大きく息を吐いた。

「これで当分こちらの旧管制室を使おうという人はでなくなるでしょう」
 詩織は足音が遠かったのを確認して、吹雪を停めて改めて内鍵をかけておく。
 やれやれ。肩を回す。「人もいないのに喋って、わざと発見されないといけないなんて、全く骨が折れました」
 けれどそうして人の気配やおかしさに気づいてもらって、この部屋はダメだと判断して貰わねばならないのだからしょうがない。「……わたし、まだ喋ってますね」詩織は自らの唇に手を当てて気づく。「癖になったら困るのですが……」
 ちら、と視線をあげてみる。窓の外にはまだ悠々と宇宙ミジンコが浮いている。「どう思います?」聞いてみるが、当然ながら返事はない。
「さて――これでようやく目的が開始できます」
 詩織は椅子から立ち上がり、旧管制室の操作板を眺める。
「ビッグバンの前には急激な膨張インフレーションがあったとされています」
 朗らかな語調は生徒や友人たちと話していたあの頃と変わりない。
 銀誓館学園での学生生活――そして教師となって働く日々は詩織にしなやかな強さを育てていた。
「宇宙を内包しているというあなたも、さらに膨張するんでしょうか?」
  たとえ目の前の生き物がビッグバンを起こすかもしれない即死級のばけものであろうとも、少しもひるまず。
 答えがないと分かりながらも宇宙ミジンコという未知の宇宙生物にのんびりと語りかけながら、電源を探す。
 不法侵入も機材の勝手な操作も心が痛むが――ともかく、優先するはこれなのである。
 人命救助のための嘘。これから人々に混乱をもたらすこと。

「そも、小宇宙を内包できるほどの皮膜の構成物質やそしてビッグバンを起こして増える、という生態にも興味があります」
 
 電源の重たいボタンを押せば、電磁音が鳴り出したことに安心する。なんとかなりそうだ。
 音量スライダーのつまみを握って、上げる前にもう一度だけ宇宙ミジンコを見上げた。
 ぷかぷか浮かぶ、宇宙を透かすライム・グリーン。
 御伽話のようだと言われればまあその通りで、しかしこちらも|暖かい御伽話のような女《穏やかな家庭で育った雪女》 と言われればまあその通りで。
 つまり、だ。
「もしもあなたとお話しができたなら、いったい何をお話しするのでしょうか?」
 さまざまな星の話など、語らうこともできるだろうか?
 答えはないまま詩織は音量のつまみをあげる。

 しかしどうもそのためには、これが必要なのだった。
『緊急速報、緊急速報です』
 喋るときはゆっくりと、はっきりと。慌てずに。
『隕石の接近が確認されました』
 学園で聴くアナウンスを思い出して、丁寧に。
『安全のため、指示に従い、至急宇宙港から退避してください』
 息を区切り、吐いて、吸って。『繰り返します』
 何度か繰り返し、ゆっくりとつまみを下げて電源を落とす。
 あとはまずこの場を去って、逃げようとする客や従業員の指示をさも有識者の様に手伝えば良いだろう。
 詩織は電源を落とし、手早く去ろうとして――一度だけ振り返る。
 ミジンコの掲げた触腕が動いている。ばんざいの両手を揺らすような仕草。
 すごいすごいとはしゃぐ子供にちょっと似ていて。

「それほどでも」
 なんとなく褒められた気がしたので、それだけ返しておいたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
ホットドック片手に珈琲をテーブルに置いて昼食。傍ら、空をゆっくりと遊泳するミジンコを眺めながら、通りで説明をしているガイドの声。
宇宙ミジンコねぇ。左手で頬張り、右手に売店で買った宇宙ミジンコストラップを指先で吊り下げた。なるほど。愛嬌のある顔をしている気はする。
ストラップを胸元に押し込み、通りで説明してるガイドの元へと歩く。
『巨大ではあるが危険はない』と説明をするガイドの前で軽く右手を上げる。質問でもするかのような気軽さ。けど、内容はっつーと、少々重い。
生憎、今回のは爆発の危険を孕んでる。それも、この空の上で、だ。
指を空に向けて【悪目立ち】。目立つのは俺の恵まれた容姿か、それとも不穏な物言いか。
UCを交えて状況の説明。猟兵だと付け加えればスペースシップワールドの人間には納得して貰えるだろう。
ガイドの声は良く通る。俺の説明をよく聞いて、状況を理解して欲しい。
――けど混乱する必要はないぜ。寧ろ、アンタらは運が良い。
宇宙規模の巨大ミジンコのみならず、猟兵の戦いを拝める……かも、しれないからな?



◼️『わぁ〜〜あのストラップ五百億八千二十九年前にでてった二千五百京とんで七千八百番目のお兄ちゃんにそっくり!』「デフィーなにて???」

 手っ取り早くかつ味の想像がつきやすく腹に溜まる。
 そんな理由で昼食はホットドッグになった。コーヒーはブラックだ。
 無論、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)もその一人である。
 ぱりっ。
 カイムに歯を立てられて小気味良い音を立てて太いウィンナーが弾ける。腸の限界に挑戦するかのようたっぷり閉じ込めたられた肉は羊と豚(勿論類似品かもしれないが)で羊の割合ややが多い。
 クセの強いはずの脂がたっぷりと付けられたマスタードとケチャップに残さず絡んで作り上げた強い味をパンが全て吸って残さず平らげることができる。添え物のように挟まれたレタスが濃い味に清涼をもたらしてくれる。なかなかジャンクな旨さだ。
 これならハンバーガーなんかも期待しても良いのかもしれない。宇宙ミジンコハンバーガーとやらだけはのぞいて。
 そんなことを考えながらコーヒーを一口。強い苦味とローストナッツに似た香ばしさが鼻腔に広がって味ごとさっと引いていく。冬に濃いブラックで飲むとほどよく頬を叩き起こされそうな味だ。これも悪くない。
 宇宙港の窓際片隅のテーブル席で、宙をゆっくりと遊泳する|ミジンコ《小宇宙》 を眺める。奇妙さは際立つが流れる長閑さは放牧的ですらある。

『ララ・デア惑星宇宙域は他の惑星よりもスペースデブリや隕石、浮遊物が少ないのにはこうしてたびたび起こる宇宙ミジンコの通行により徐々に空間が空いてきたという節が有効であり…」

 大きな港のある片田舎の都市。ララ・デアの解釈としてはこんなところか。

「宇宙ミジンコねえ…」
 カイムはホット・ドッグ左手にもってかぶりつきつ、右手に売店で購入したばかりの宇宙ミジンコストラップを指につり下げて見比べてみる。シリコン系の柔らかい腹の中に揺蕩う宇宙まで上手く似せている。なるほど、愛嬌のある顔をしている。
 カイムはホットドッグの最後の一口を放り込んでから宇宙ミジンコのストラップを胸元に押し込みつつ、包装紙はくしゃりまるめコーヒーの紙カップそのままにゴミ箱に捨てる。
『というわけで、通称・宇宙ミジンコと呼ばれるあの生物はとても巨大ですが、危険はなく、古来より人々に親しまれているのです』
 足は止まることなく、そのまままっすぐに説明をしていたガイドへと近寄っていく。『でもあそこまでの大きさはここ最近訪れる宇宙ミジンコの中でも特に大きいですね』
「あー」片手を上げる。
「ちょっといいか?」
 ツアーを傍聴していた物好きな観光客。そんな調子で。
「はい」ガイドはにっこりと微笑んだ。
「あのミジンコについてだが、ちょっと質問がしたくてね」
 口調はあくまでも穏やかで軽い。かわいいマスコットにちょっと興味が湧いた様子そのままだ。
「呑気でゆったりとしてるんだったか」
「そうですね、過去様々な惑星都市が危険生物と思い攻撃を仕掛けたそうですが、一度も反撃はなかったと聞いています」ガイドの明るい笑みにも口調にも淀みはない。

「じゃあ、意思の疎通ができるってことは?」
「え?」ガイドの顔色が変わる。
「もっと言えば、|今《・》|オブリビオン《・・・・・・》に唆されてる、とか」
 カイムの笑みはどこまでも爽やかで、物腰は紳士的だ。
 滲む不穏さが――ひとびとの真ん中でじわりと異様な圧を持つ。
 思わず一歩引いたガイドの手からするりとマイクを抜き取る仕草には色気すらあった。
 

「|今回《・・》 ――あのミジンコは、爆発の可能性を孕んでる」
 ロビーに声が響き渡る。
 
 カイムはそのまま人差し指を立て、天を示す。

「それも、この空の上で、だ」

 途方もない話だという声は――上がらなかった。
 不吉だからやめてくれと言う声もまた。
 カイムの仕草、あるいは態度、声の調子、容姿。
 すべてがひとまとめになって場を圧倒する。
「俺は猟兵をやってるもんでね」
 手を下ろし、人々を見まわしながらカイムは丁寧に話しかける。
「今回はそういう依頼で来たのさ」
 
 なに、ちょっとした話術さ。
 
 何をしたかと尋ねるものがいたのなら、カイムはそう答えていただろう。
 |話術の心得《トーク・マスター》とて、極めれば場を一つ、このように征服できるのだ。
 言いようのない不安。
 先ほどまでやわらかく見えていたライム・グリーンが異様な輝きとして人々の目に映る。
 あの、微生物によく似た生き物は、やはり宇宙に数いる怪獣のひとつなのだと、密かな漣がひとびとにはしる。
 ならばどうしたらいいのか、いったいどうなるのか。
 人々の不安が高まったその時。

「――けど、混乱する必要はないぜ」
 カイムはにっこりと笑った。

 マイクを切る。「なぁに、ちょっと何かが起こったとき、さっさと逃げ出せるように居ればいいのさ」
 先ほどまで漂わせた異様な雰囲気を払拭するかのような明るい表情で。
「寧ろ、アンタらは運が良い」
 緊張感を漂わせるのは、これで十分だろう。
 
「宇宙規模の巨大ミジンコのみならず」右手の人差し指のみを立てて窓ガラスの外を指し。
「猟兵の戦いを拝める」続いて自分を指してみる。
「…かも、しれないからな?」
 すこしばかり皮肉の効いた悪戯めいたささやきをして。

「ま――少なくとも、猟兵によるビックリ危機ショーは見られるだろうな」

 あちこちから光線が走る。

 エネルギー系の兵器によるビームだ。少しばかり緊張していた人々は慌てて自分の身を守り、そんな彼らを掠めるように光線が交差する。
 照明や床に電子広告が破壊されて、焦げ臭い煙たさがあたりを満たし――ひたりと沈黙に沈む。
 ビームを噴き出して出し散らした兵器はどこにもいない。少なくとも、見えない。
 しかし逃げ遅れた人々は動くこともできない。
 あのドローンからビームを受けるかわからないと息を詰めている。
 一体何が起きているのか、きっと誰もわからないに違いない。
 カイムはというと、悠々その場に立っていた。
 宇宙港に入ってからこっち、見知った顔をあちこちに見かけたし、見知らぬ顔も見かけた。
 あのグリモア猟兵が『しゃーなし!』と押したのなら、まあこれくらいのことはあるだろう。

 ――例えば。

『緊急速報、緊急速報です』
 突如手動のアナウンスが入って。

『隕石の接近が確認されました』
 こんな慌ただしい情報の中、輪をかけてぞっとするような放送を告げて
 
『安全のため、指示に従い、至急宇宙港から退避してください』

 安全な逃走を促すなど、十分あり得ることだ。

 事件の明細とは、いつも犯人しか知らない。

「この場合は、猟兵か?」
 添えてみるが、当然に返事はない。
 響くバイクのエンジン音を聴き、カイムはホルスターから銃を抜く。
 なるほど。あちらさんはそういうやりかたで行くらしい。

 ならばこちらは――

 |良い警官《グッド・コップ》|悪い警官《バッド・コップ》って言うだろ?

「待ってたぜ“テロリスト”様!」

 ――このようにやらせてもらおう!
 猟兵同士でやり合う機会もそうそうないだろうし。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
宇宙ミジンコが爆発するとイージーに泣かれた時は何事かと思ったが…
確かに、これが爆発すれば大惨事だな

対人随伴型自編律ビーム兵器「ムーンフェイス」、フォルを同行させる
無邪気な子供の性格のAIそのまま、ミジンコを見てはしゃいでいる
…喜んでいるところ悪いがゆっくり見物している暇はないぞ
今回はお前が頼りだ

フォルに予め指示を出しておき、ミジンコに注目している者にも見えるように飛ばす
自分は少し離れた位置で様子を見る

フォルへの指示は二つ
1.素早く飛び回る、空中に向けてビームを放つ等、直接危害を加えない方法で観衆の注意を引いて驚かせる
2.その後は24枚のドローン全て港内に散開、物陰等に隠れて待機する

フォルが隠れるまで見届けて単身で管制制御室に潜り込み、「テロリストが潜んでいる」として避難を促す放送を流す
既に暴れている猟兵がいればより都合がいいが、いなくても先のフォルの行動がテロと結びついてくれれば信憑性が増すだろう

フォルにテロリストの真似事をさせるのは少々気が引けるが状況が状況だ
今回は共犯になってもらおう



◼️『テロリストだ〜〜〜〜!!!』「いけいけゴーゴーやっちゃえやっちゃえーーー!!」

 ミジンコと目が合った。

 そんなことを思うのはおそらく人の一生のうちにそう何度もない感触だ。というかこの場に居合わせる凡そ殆どの人間がミジンコと目が合うこと自体は初体験のはずである。
「なんというか……」
 当然、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)もミジンコと眼が合うのは初めてだった。
「大きいな……」それ以外の言葉が見つからない。

「……宇宙ミジンコが爆発するとイージーに泣きつかれた時は何事かと思ったが」
 ミジンコ大きい。「確かに、これは……」なんというか雑に大きい。ミジンコは何やらこちらに興味を持ったようで、じわじわこちらに近づきつつあるからか余計に大きさのインパクトが強い。「爆発すれば大惨事だな……」

「ウヒョーーーーおっきぃーーーーーー!!!!」
 当然、今回の作戦のためにシキが連れてきたフォルもそうだった。

「すごいねえすごいねえおっきいね〜〜〜〜〜!!!」
 宇宙ミジンコにはしゃぎ倒す声はこのフロントではそう珍しくはない。上がるフォルの声に誰も振り返りはしないが、それでもシキの背中にはすこしばかり冷たいものが走る。
 シキのそばに、声の主らしい子供の姿などないからだ。
 そばに子供の姿のない男が子供の声と共に喋っている図は――いざと言うときの誤魔化しに困る。腹話術の練習などという馬鹿げた説明が一瞬浮かびいや、カメラで離れたところの子供に見せていると説明すれば良いと思い直す。
 とはいえそんな説明の機会など、巡らないのが一番である。
「フォル」シキは声を抑えろという意味で声をかけるが「999万1千km!!!」聞いていない。
「うわー流石に護衛対象に設定しても当|兵《・》 ――」
「フォル」
 けし!シキは|靴の底側面《・・・・・》でフォルを軽く蹴る。
「あっ」指摘に気付いたらしく、沈黙。
「流石に迂闊がすぎるぞ」
 少しばかり強い口調で嗜める。
「ごべんなざぁい……」
 反省仕切った声が植木鉢の影から返る。
 声の主、フォルとは対人随伴型自編律ビーム兵器「ムーンフェイス」にダウンロードされたAIである。
「喜んでいるところ悪いが、ゆっく見物している暇はないぞ」

 ララ・デア宇宙港内に於いて武器の持ち込み?
 |無論禁止だ《・・・・・》 。

 ……ここではフォルの存在は発覚してはならないのである。よっぽどでもない限り。
 だが。
「今回はお前が頼りだ」
 その|よっぽど《・・・・》 をやる。

 シキは従業員用の入り口を確認する。カードキー、生体認証のものは除き、ナンバー式のものを確認。
「まっかせて!」
 それはそれは誇らしげな声でフォルが応えるので、シキは其方を見やってしまう。
 24枚の小型飛行型ビームユニットのうちの一つが周囲の物陰でくるくると回転している。
「作戦開始から20秒で初期陣形展開ね」
 先ほど組んだ作戦を繰り返す。
「展開陣形は?」「このフロアの形状だとA'cc!」
「封鎖通路」「右舷行き第三通路と左舷行き第四通路!」「第二は」「直行しても行き止まりだってすぐわかるからリソース割かない!」
「作戦行動第一終了後は?」「物陰に退避〜〜〜!」
「よろしい」
 シキは微笑ましさに唇を少しだけ緩める。
「それからね!」「それから?」
 事前に組んでいない文が追加さてたので片眉を上げる。

「シキが使えるのはここから10メートル右方にある|番号式鍵《ナンバー・タップ》 のドアだよ」
 続けて解錠コードまで告げる。
「驚いた」
「ふふふーん!ふふふーん!!」
 フォルは得意そうにシキに一番近い、先ほど蹴られた端末を回転させた。「でしょでしょ?」
「シキ、褒めて!」
 あんまりに誇らしげにねだるものだから。
「よくやった」
 どうしたってシキの唇はうっすらと笑ってしまう。
「えへへへへへ!!うふふふふふ!!ふふふーーーん!!」フォルは回転を加速させ
「まあ、調べたのはぼくじゃなくてお仲間なんだけどね!」口からちらっと舌を覗かせるように付け足した。
「同朋か」
 かつて同じ事件で携わったフォルの同シリーズのAIを示唆する。「うん!データ調べようとしたらアクセスしてきた」「猟兵か、その同伴か…いずれにしても助かるな」
 シキはフロアの人数と騒ぎを確認しながら相槌を打つ。先ほどシキとは異なる手段で人々を誘導していた猟兵の行動が終わったところだ。
 そろそろ動いてもいいだろうか。
「作戦を開始するが、あちらの邪魔にはならなさそうか?」念のため確認をする。
「うん」フォルは軽く肯定した。「あっちの作戦は転売だからね!」
 ――転売????
「了解した」
 シキは|ボケをスルーし《ツッコミせず》頷いた 。胡乱を避けるのが上手い男である。
 ツッコむ代わりに手袋を取り出して嵌める。
「カウントを開始しよう」転売はさておき互いに作戦の邪魔にならないならば何よりだ。「ヤー!」フォルはくるくると回転しながら隠れていた場所から浮かぶ始める。
「|3《スリー》!」フォルがスタートを切り
「|2《ツー》 」シキが追随する。
 浮き上がり現れる異常物体。兵器・ムーンフェイス。
「|1《ワーン》 」24枚のブロック兵器は弾んだ声を出す。

「|0《ゼロ》 」シキは目標の扉へ。「幸運を祈る」
 フォルは「ヤー!」フロントガラス方面へ陣形を展開するために散開。

「ゆーとぅ!」 
 作戦、開始である。

 ララ・デア惑星所属宇宙港客員フロントで本来してはならない音がし、光が瞬く。

 小型ビーム砲。
 フォルによって人命に被害を及ばさないよう調整された弾ではあるが、それでも照明や電子パネルを破壊するのには十分な威力である。
 人々は悲鳴をあげて身をかがめ何事かと周りを見回せば――小型ドローンに類するフォルを見つけるだろう。
 ぱっと見は少しばかり大きい銀のトランプだが、ビーム線を放つ姿はれっきとした兵器である。それも24枚。
 突如兵器の侵入に慄く人々の頭上、あるいは狼狽し慌てて進んだ道を遮るように熱線が走る。
 目まぐるしく飛び回りながらさも“ぼくは兵器ですよ!”と見せつけんばかりに縦横無尽に飛び回る。

 何名かが慌てて逃げるが、三番四番通路に行こうとした瞬間にビーム線が駆け抜けていく。
 二番線は大型定期便用でありすぐにゲートがある。今船は来ていないためにそちらへ走るものはいない。
 慌てて駆け寄る警備員が銃を構え発砲するが、フォルの本懐は護衛の兵器である。
単体で構成するビーム・シールドが弾く。

 さながらビーム踊るライブ・ホールだ。

 たちまち照明と床に破損が発生した焦げ臭い匂いと煙が発生し、あちこちで巻かれた消火剤の煙が晴れるころには、見かけたはずのビーム兵器はどこにも居ない。
 否。まだいるのだ。
 まだ居て、隠れて、どこかで様子を伺っている――…。

(と、思うだろうな)
 
 シキはフォルが無事滑り込んで隠れたのと場が静まり返ったのを見届けると同時にナンバー入力を完了して中へ滑り込む。
 廊下はホールの消火剤の煙がうっすら入り込み、やや煙たい。
 仕方なく防砂防塵用のスカーフで口を覆い……窓に映った自分に少しばかり辟易した。
 なんちゃってテロリスト作戦だね!
 などとフォルは楽しそうに宣ったが、なんちゃってどころか、どう見てもそのままだ。
(フォルはやはり子供だからか、犯罪行為に躊躇いがないな)
 思い返しつ、シキなるべく音を立てずに廊下を走り、角で一度止まって身を隠す。
(躊躇いがないことで仕事にブレがないのはいいことだが)
 靴音からして二名。向こうから慌てて走ってくる警備員が角を曲がろうとするのに合わせて飛び出し
(危うさでもある)
 柱がわりに飛びかかり一人目の首を素早く絞めて意識を音させながら、二人目の頭部を踵でノック・アウト。
「悪いな」聞こえないと思うが添えておき、カードキーを拝借。
 宇宙港で助かった、とシキは思う。
 空港であったなら管制塔まで走って駆け上がらねばならなかった。

「三番レーン封鎖して!」「ダメですッ、突破されましたッ」「緊急災害用防護壁、全部下ろす!」「第三、第四、通過されました!」
 管制制御室のひどい騒ぎは廊下まで聞こえた。

「畜生こんなお客様があってたまるかッ!!」
 シキは誰かの怒号を聞きながらドアに身を添えつつしゃがみ込む。すぐそこの台のひとつのより低く。入り口越しに中を伺う。放送室の扉は?左舷10時の方向だ。
 幸いにも管制制御室モニターは恐ろしい勢いで点滅を繰り返している。
 モニターの不調かと思ったらそうではないらしい。
 なにせとんでもない爆音が管制制御室中に響き渡っている。

 どうもテロリストを名乗る乱暴なお客様がバイクで乗り上げて来たらしい。

――なるほど。誰だか知らないが助かった。

 一際大きな爆音が響いたと同時に扉の中から管制制御室へ滑り込むように侵入する。
 モニターと睨めっこして騒ぐ従業員たちを横めに様々な操作盤の影を踏むようにして素早く移動。

「あの予定外の筍屋もグルなんじゃないかもう!?!?」
 混乱に沈む制御室に少々申し訳なさも覚えつつ――音を立てないように放送室の扉を閉めれば一安心だ。
 天井を確認。排気ダクト。廊下にあったものと通じているやつだろう。
 脱出路もこれでなんとかなりそうだ。
 普段は空港内の顧客向けのアナウンスに使用されているらしい放送室には、ひとしきりの機材と隣の管制制御室と同じ空港内を映すモニターがあり、同じように点灯したままだった。違うことといえばあちらの管制制御室よりも顧客向けの範囲内を映しているため画面が少ない分大きく映っていて――

 ――豪速で黒い物体が廊下を駆け抜けていった。
 
「なるほど」
 思わずなるほどが口から出てしまった。

「助けられたと言うべきか、意図せず共闘作戦になったと言うべきか……」
 らしいと呆れればいいのか、そこまでやるのかと呆れればいいのかわからない。
 複雑な顔のまま、シキはモニターの傍に冊子を発見する。マニュアル。「有難い」

「案内音声の真似事は流石にしたことがない」
 シキは目的のページを開き、スイッチを入れた。



 一方その頃。
 フォルは実に呑気なものだった。
 シキとテロリストごっこなんてそりゃあワクワクして楽しくないわけがない!
 指示があるまで出なくて良いと言うこの|かくれんぼ《隠密起動》 だって、面白くってしょうがない。
 そもムーンフェイスは防御志向品だがフォル自身含めて兵器なのだから荒事大歓迎だ。
 だのにシキはちょっと申し訳なさそうな様子で。気が咎めるような顔をして。
 ぼくに言わせれば危険度が高いのはシキの方だし、悪いことをするのはシキもおんなじなのに――むしろ決定を下した分シキのが負担はさらに重いと思うんだよね!――ぼくの方を優先している。
 まあそうやって気遣われるのは嫌どこれか、悪くないどころか、すっごく嬉しいことではあるんだけど。
 でもぼくだって相棒なんだしさ、共犯じゃない?
 云々。
 取り止めのない思考を展開しつつカウントは行なっている。
 まもなく五分が経過する。
 ビーム機からの攻撃がないことに人々が痺れを切らして動き出すことが懸念されたが、今回は問題などなかった。

『緊急速報、緊急速報です』
 
 予期せぬ緊急速報である。

『隕石の接近が確認されました。
 安全のため、指示に従い、至急宇宙港から退避してください』

 おかげで人々の動きは想像のつくもので、余計な緊張をせずに済んだ。
 とはいえ――シキとの作戦ではそろそろ動きがある頃だが。
 フォルはくるくると回る。

 そう。動きがあった。
 ガイドと話し、説いていた男が青いコートを翻して悠々と動いたのである。
 只者でないのは分かっていた。というか猟兵であるのも認識はしていた。
 そうして彼は銃を抜き、やたら通る声でこう宣言した。
 
「待ってたぜ、“テロリスト”様!」

(ほげえええええ!!!?!?!?)
 フォルはなんとか悲鳴を飲み込む。
 立ち上がった男は知っている。目的も一緒だろうと確信も検討もつく。

 だけれどそんなことを言われてもこちとら24枚のカードである!

(ううううどうしようどうしよう……そりゃーぼくだってかっこよく登場したいけどぉ!)
 流石にこれは作戦にない。邪魔が入ることの想定はあったがこんな相手だとは思いもしない!
 どうしようどうしよう、流石にちょっと飛び出してそれっぽく振る舞うか?

 ――バイク音が響いてきた。

 続きフォルは馴染みのあるアクセスコードに気づいた。
 新たな乱入者と共に、良く知ったコードが接近している。
「うわぁ」誰が何をしているのかが分かってフォルはうっかり声を出した。
 しかし声に突っ込んでくれる|相棒《シキ》 はいない。
「うーん、過激だなあ」なのでフォルはいつも通り呑気な感想を呟いて。
 ピッ。
 接近コール音に返答し、そうだね!のスタンプを送ってあげることにした。
「がんばれー」ひとまず、フォルはあの青い人の前に出ていかなくて済みそうだ。

 宇宙港内を赤い|緊急照明《エマージェンシー・ランプ》 が染め、|緊急警報《エマージェンシー・アラート》が鳴ったのと。
 モンスターバイクがフロントへ突っ込んできたのは――ほぼ、同時であった。

『緊急警報、緊急警報』

 うわっ。続いて響いた声にフォルはひっくり返りそうになった。
 ――やっぱぼくシキにつれてってってねだればよかった!
 フォルはせめてもの抵抗で音声録音スイッチを入れた。ピッ。

「繰り返す。当ララ・デア惑星所属宇宙港フロント部にテロリストが侵入」

 どうしてテロリスト襲来時の合成音声を用意していないのかララ・デア宇宙港。
 シキは文句を言いたい気持ちいっぱいになりつつマニュアルを読み進める。
「第二、第三、第四通路は脱出不可能」
 まさかこんな音声案内の真似事を本当にさせられるとは思っても見なかった。
「従業員は客員を第一通路に誘導し、速やかに客員と共に避難せよ」
 このような緊急時の連絡をしたことがないわけではないが――宇宙港のアナウンスと傭兵の無線は、それこそ宇宙ミジンコとミジンコくらいの差がある!
 隣室が放送室の異常に気付いたのだろう、外から誰かが扉を叩き始めた。
 シキはギリギリまで引っ張り――なにせこうして扇動しなければ意味がない。
 二度繰り返し。
「以上」
 読み上げ終了!
 シキは急いで緊急放送に切り替えダクトのふたを外す。
 ダクトの両脇を掴んで体を引き上げようと手を伸ばしかけて、フロントがシキの目に入った。
 デモンストレーションではあるのだろうが、とんでもない派手を極める大一番を。
「やれやれ」こぼす。

「では、同じ“テロリスト”の応援に向かうか」 

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴァシリッサ・フロレスク
プレイングはフレーバー程度にでも
なんでもおまかせ致します

A-HA♪ご覧よヴィッキー?
|F✗✗kin' Crazy《ゴキゲン》なジェリー・ビーンズじゃないか?|Gipper《ロナルド・レーガン》が泣いて喜びそうだ
ヴィッキー『大喰らいのあんたにもピッタシじゃない』

で。
何ナニ?好きにしてイイって?
Gotcha♪じゃ!
アタシは"|テロリスト屋サン《派手に暴れるよ》"♪
…"人"道?
|コレ《・・》こそ人間サマのお家芸だろ?

AIヴィッキーとの戯れと屁理屈もそこそこに、|ソフト(※当社比)に《人死にと他の猟兵にあんまり迷惑にならない範囲でなんでもやり放題で》宇宙港開放を支援します

まずはTALBOS Ⅱで群衆の上を――衝撃波で被害が出ない程度に――かッ飛ばし、大量のフレアを曲芸飛行よろしく盛大にばら撒いて悪目立ち
勿論フレアは空中で上手く燃え尽きる様、計算尽くさ?
…ヴィッキーがね♪

"Easy",
This is "|Victory《アタシだ》",Break.
|Ready to Roll《離陸許可を》
Over♪



◼️『やっぱりテロリストは一人なわけがないよね〜〜〜〜〜!!』「ひゅーーー!!いっけー!!はかいだ破壊だー!」

 宇宙港の室内を引き裂くようなエンジン音が鳴っていた。
「AーーーーHA♪」
 というか平時の都市でも絶対鳴ってはいけないエンジン音だった。
 駆け抜ける機体は、速度と攻撃力に特化した空陸両用局地制圧高速重攻撃機――|TALBOSⅡ 《タルボシュ Ⅱ》
「ご覧よヴィッキー?」
 車体を傾け第四隔壁をほぼ水平になりながら、運転手ヴァシリッサ・フロレスク(|浄火の血胤(自称)《エンプレス・オブ・エンバー》・f09894)は窓外に見える宇宙ミジンコを顎で指す。
「|F✗✗kin' Crazy《ゴキゲン》なジェリー・ビーンズじゃないか?|Gipper《ロナルド・レーガン》が泣いて喜びそうだ」
 |緊急警報《エマージェンシー・コール》と|緊急通知照明《レッド・ランプ》で真っ赤に染まったやかましい中を駆け抜けていく。
『ワガママで身勝手で大喰らいのあんたにもピッタシじゃない』
 タルボシュⅡから隠しもしない不機嫌さでトゲのある発言を堂々と抜かすのは、タルボシュの補佐を行うAI、ヴィクトリアである。
「スキなモノは食べて、楽し〜イ祭りにゃ参加する!人生の基本だよォ?」ヴァシリッサは唇をとんがらせながら上半身を捻り立った今潜り抜けた防壁の側のパネルを銃で打ち抜き、シャッターを追加しておく。なに、人用の入口ならそばにあるから問題ない。「楽しんでナニが悪イッてんだい?」
『わ・る・い・に・決・ま・っ・て・る・でしょ……!』
 ヴィクトリアことヴィッキーの声にはたちまち怒りが満ち――

『なァッんなのよさっきの戦闘は!?どーーーーーして猟兵同士でドンパチ殴り合ったわけ!?』
 緊急通知にも負けず劣らずの大音量が廊下をぶちぬいていく。

「だって“テロリスト様”なァんて呼ばれちゃうンだモン♡」
 ヴァシリッサはハンドルから片手を離して拳を作り、自分の頭にこつんと当てる。テヘペロ♡
『モンじゃないモンじゃ!』ヴィッキーの叫びはスピーカーも割れんばかりの大声である。
『ナニあんた実はあんたもオブリビオンに唆されてんのそうねえそうよねきっとそうあたしは今すぐ自爆していいわね?』
「シ・ラ・フ♡」『ッ゛ア゛ーーーーーーー!!』「……キレすぎじゃない?」『フォルのヤツも身勝手なんだから〜〜〜〜!!んなにが“そうだね”よ覚えてなさいよ…!!』どうもヴァシリッサ以外にも原因はありそうである。
 タイヤが廊下の塗料を焦がす異様な匂いを放ちながら二人は全速力で前進する。

「マ、事後のことを考えればサ」
 一人と一機にしか聞こえない声でヴァシリッサは説く。
 顔を隠すために鼻から下半分を覆っていたスカーフを一度おろし、微笑みが見えるようにする。
「わかりやすゥい強大な悪役が来てました…ッてのが処理として順当かつ納得だロ?」
 「悪いヤツが来て、イイヤツが戦ってました」穏やかな声で呟き「わかりやすい絵面サ」タルボシュの計器を撫でる。

「そういう役割で言えば、今日のアタシは"|テロリスト屋サン《派手に暴れるよ》"ってワケ♪」 

 ――……。
 すこしだけ、静かな間があった。「ネ?」

『本音は?』
「好きにしてイイんだヤッホー♪」

『こおおおおおおおおんんんんのバッッッッッッッッッッッッカマスタァアアアアアアアアアアアア!!』
「AーHAーHAーHA!」ヴァシリッサは元通りスカーフで口元を覆いゲラゲラと笑う。「ヴィッキー喉イカレちまうよ?」『ねえわよ喉!あーもーそおおおおおおんなこッッッッッッッッたろーと思ったわよ!!』「アーさっきのあと3分時間があったら結果ついたかな〜」
『ほざいてろ』舌打ち。
『ほらバカマスター前方、飛び出すわよ』それでも補佐は怠らないところがヴィッキーのかわいいところである。
『人命に一切の被害なし――理解してるわよね?』
 それからこういうところ。ヴァシリッサは一人ニヤニヤする。
 兵器でありAIであると宣い譲らないくせに(あるいはだからこそ)刺々しい態度をとりながら、優しいところ。作戦開始前に形成した|作戦《約束》 を、守らせようと気遣うところ。『何笑ってんの』「|別《ベッツ》にィ?」
『“人”道』ぴり、と圧をかけるようなヒリついた口調でヴィッキーはたしなめる。
「|コレ《・・》人間サマのお家芸だろ?」
『そーよ』のらりと敢えて悪ぶるヴァシリッサに、ヴィッキーは静かで強い口調で強いる。『あたしの|燃料《ガソリン》がキレない限りは、緊急停止してでも停めるからね』

 |だからこそ《・・・・・》 無茶ができるのだと、ヴァシリッサはちょっとばかりくすぐったい気持ちでいる。
 ――第八障壁を通過!

『返事は!?』
 苛立ちの際立つヴィッキーの声!
  
「モッチロンさ♪」
 ――願わくば、もうしばらく気づかないでいてもらいたいものだ・

 合成水晶アクリルのドアをタルボシュで悠々と通りぬけ、たどり着くのはセカンド・フロント。
 地上でいえばロータリーに近い。
 宇宙港から脱出しようと、近郊惑星との星間|宇宙船《バス》などに乗ろうと詰めかけていたところだった。
 この大混乱の場に――タルボシュⅡ、本人たちの名乗るところではテロリストは降臨するわけである。
 しん、と。
 空気が固まったかのような沈黙が満たす。
 ヴァシリッサは何度もハンドルを捻りエンジンを蒸す。
 ぐぉん、ぐぉん、ぐぉん――けだもののような唸り声。
 
 ばぅん!
 
 否上がった咆哮はまさにけだもののそれだろう!
 後部マフラーから大量のフレアを放ちながら猛加速、あわや人々に当ると思しき直前にフロント・アップでジャンプ台も無しに飛び上がり、フレアの火の粉をぶちまけながら――ホンットもう好き勝手して!というヴィッキーの怒りを握りつぶしつつ――急いで逃げてでも無駄だと言うように踊ってみせる。
 今まさに離陸し|ぶつかりそう《・・・・・・》だった宇宙船に向かって突っ込んで足止めをし、あるいはアクセル・ターン、先客を|引きずり出して《・・・・・・・》でも宇宙船に乗ろうとした男の上を通りすぎる。
 母親の言うことを聞かず|飛び出そうとした《・・・・・・・・》 男の子の数歩前をタルボシュⅡの座席の上に立ちぶち抜いて腰を抜かさせて足止めし、ぐちゃぐちゃになって揉み合いそうだった人の塊の間をバウンドアンド・ウィリーでかっぴろげる。
 あらゆる危険行動に、ヴィッキーからの数値補正による若干の調整が加わる。 
 きっとこの中の猟兵でない誰もが、ヴァシリッサたちの意図に気づいていないことだろう。

『フリースタイル・モトクロスにでも出たら?』
「銃が撃てないからヤーダ❤️」『トリガーハッピー』
――振り返り。
 再び宇宙港の方を見れば再びぷるんと丸い宇宙ミジンコが見える。
 遠かったはずの巨体は徐々に近づき、今や宇宙港に頭部と一部の腹部がくっつきそうである。
 そしてその上には緑の風。
 否、緑を靡かせた少女型のオブリビオンがいる。
 宇宙服もなく、大した装備もない彼女は着の身着の儘、堂々としたものだ。
 堂々と空気を身に纏ってじっとこちらを睨んでいる。

「hey――too “Easy”」
 コックピットの中、ヴァシリッサは問うてみる。
 
「This is "|Victory《アタシだ》",Break.」

 確か、宇宙港を開放し、人々を逃したその次は。

「|Ready to Roll《離陸許可を》」

 戦闘だったか。

「Over♪」

成功 🔵​🔵​🔴​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

わぉ!おーーっきい!
これは遊びがいがありそうだね!

●南海宙域の怪獣大決戦!
声も高らかに
わははーーっ!ボクは悪のオブリビオン!オブリビオン・ゴッド!
今日は暇潰しにキミたちを大怪球くんの餌にしちゃうぞー!
とUC『神罰』で100万倍した星間帝王、暴食神、更にはカオスブリンガー(混沌を齎す者)とも呼ばれる[餓鬼球]くんにもガオーーッ!と叫んでもらう!
『―――――――――!!!』
これだけ脅せばみんないい感じに逃げるだろうってボクの【第六感】が言ってる!
あ、演技だからね演技!ほんとに星とか齧っちゃダメだよ~

宇宙で声が聞こえるのかって?
スペースオペラワールドでは聞こえるんだよーっ!



●『うわーーーーーーーー!!なにあれなにあれなにあれーーーーーーーーーー!!!エルエルエル!おねがーい!』「えぇー…あれイェーガーだよ?」『お願いおねがーーい!』「デフィーが言うならやったげるけどさあ」

 おおきかった。
 ミジンコは、とても大きかった――…!
「わぉ!」
 ロニは目を見開いてほぼ視界いっぱいのようなそれを見つめる。「おーーーーーーーっきい!!」しかもぷりんぷりんのぷにっぷにである。たぶん。隕石がぶつかっても電磁で粉々にならないから何かしらのゼリー的な触覚イメージで良いのだろう。「これは遊びがいがありそうだね!」

「そのためにもだよ」
 きらっと目を輝かせ、ロニは宇宙ミジンコから目を離す。
 見やるのは宇宙ミジンコのその向かい。ララ・デア惑星所属宇宙港。 
「そのためにも」靴の踵。小さな彼の影に触れて、ぐるりそいつを引っ張り出す。
「下準備は入念にってね!」
 文字通りの“宙”返りをしながら纏うのは一枚布のマント。
 寄ってきた惑星をちょいと蹴って降るロニに、一陣の風が訪れる。
 そう、風。
 |空気《エア》だ。
 元々神の領域で宇宙に体が潰されぬよう諸々身を守ってはいたが、それは流石に想定外である。

「――ははーん」ロニは肩ごしに宇宙ミジンコのほうを見やる。
 とても見えづらいが、ミジンコの頭のあたりに緑がきらめいている。
 それだけで、宇宙に広がるにはあまりにもつよすぎる劇薬が誰のものか、すっかり理解して。

「じゃあ期待に応えてすんごい騒ぎにしちゃうんだから!」
 それはそれは|破壊神《・・・》的な笑みを浮かべたのだった。

「“わーーーーっはっはっはっはっは!!!!”」

 ララ・デア宇宙港の皆は唖然としたことだろう。
 客員も従業員も、誰もかれもただでさえやれ隕石だテロリストだとかき混ぜられたのだ。
 その上彼らは聞いていた。
 宇宙ミジンコをたぶらかすというオブリビオンの話を。

 そんなところに――待機フロント大ガラス前。
 相応の装置がなければ筆舌つくしがたい死の国、宇宙空間に生身の人、それもただの子供と思しきものが窓の向こうに現れば。

「“聴けーーいっ!!いとけなきものども、命ある仔らよ!!!”」
 
 こちらにも響く声で、何事か話かけ始めれば、もうどうしようもない!
 それが今までぬいぐるみの広告を映していた電子モニタいっぱいに映り多くのスピーカーから声が響くのも訳がわからない。
 まるで|事情を知る誰か《・・・・・・・》が干渉したかのようではないか!

 ひらりゆらめくマントに片目は眼帯で隠した華奢な子供は。
 その可愛らしい顔に似合わぬ悪辣な笑みでにぃ、と笑ってみせた。

「“ボクのは悪のオブリビオン”」
 
 ゆらり、気合いに気合いとノリがノリにのっているロニの手つきあらわれる。
 顔より少し高い位置で掲げる右手は手の甲を人々に向け、力を示すかのように握られる。

「――“オブリビオン・ゴッド!”」

 ――…。

 …――ロニさま。

 それ、もうちょっとなんとかならんかったのですか――……!

 ロニは一瞬だけ頬を膨らませ「うるさいなあ、ここからがいいとこなんだよ」――あっすみません――異次元に意義を申し立てて黙らせて、素早く表情をもとに戻す。

 とはいえ人々はそもオブリビオンの話を聞かされていたのである。
 こんな程度でも効果は的面である。
 しかしロニはこんなところで妥協しない。

「“ふっふっふ…イイ顔だね…”」
 拳にしていた右手を開いて人差し指第二関節あたりを口に当て、左手は右腕の肘に触れて組むように。
 そのままにたりと笑い背を逸らせ若干煽り気味になるよう、足元の小さな宇宙ゴミを蹴ってすこしばかりの高みへ浮く。こういうのはそういうのが大事なのだ。
 どういうのかといえば日曜朝なんだけれど。ここまでの語彙含めて。

「“そう!テロリストも隕石もみぃ〜〜〜んなボクのせい!”」
 マントを翻すように両腕を横へ広げる。
 そうッ!ここが見せ場ッッッッッ!!!

「“今日は暇潰しに――”」

 ああ、宇宙のさまざまな光をあびてきらきらと輝いたそれが、小さな鉄球だったと認められたのはガラスの向こうに何人いただろうか。

 それは或る宙域では星間帝王と呼ばれる。
 それは或る大陸では暴食神と崇められる。
 それは或る世界では|カオスブリンガー《混沌を齎す者》とも――語られる。

 そも大きさの大小は様々ではあるが、どれもこれも鋭い顎を持っている。
 盲目的に。暴虐的に。嗜虐被虐の隔てなく。
 無尽蔵に、ただ喰らうために喰らい喰らうために咀嚼する。
 顎のうちに顎、さらに顎。
 牙と顎だけを備えた他を一切廃した無機質なけだもの。
 餓鬼球くん、とロニが便宜上でよぶものたち。
 
「“キミたちを大怪球の餌にしちゃうために来たんだよ”」

 ユーベル・コード『|神罰《ゴッドパニッシュメント》 』
 百をゆうに超える餓鬼球を――そのまま全て、なんの捻りもなく、百万倍する!

 そう。
 木星五十個とは……即ち、木星五十倍と言うこと。

 だったらこっちは――百万倍をぶつけんだよッ!!!!!!

 ということである。ほんまか?
 余談ではあるが1cmだって百万倍なら百万センチメートル。
 百万センチメートルとは十キロメートル。徒歩なら二時間。株式会社トミーウォーカー本社なら直線距離で大麻までくらい。たぶん。

 つまりまあ一番小さい球でも、宇宙船などペロリと一口に平らげることのできるまでに膨れ上がり、流れてきた廃船を粉々に砕く様を見せつけることができる。
 もちろん演技、演技である。
 ロニ様、たべていんですか?ごちそうですか?とばかり近寄ってきた一体が歯を慣らすので観客の方を見たまま撫でてやる。だめだよ。星とか食べちゃだめ。はーい。
 無数の餓鬼球はロニの周囲のみならず窓ガラスに触れるほどに現れる。
 これだけの数で現れれば、窓ガラスに近いという性質上、当然ながら宇宙ミジンコの姿など半分くらい隠れてしまう。

 可愛がられたいのがロニだけれど、うーんこれはこれで楽しくてウキウキしてしまう。
 なんなら今すぐ回転したい。アイコンのように。アニメーションアイコン素敵ですね、おめでとうございます。 

 ガラス向こう。ひえ、と息を呑む人々の恐怖がありありと聞こえてきそうだ。
 ロニは誇らしい指揮者がフィナーレに向けて盛り立てる時のように両手を掲げる。
 |素直な餓鬼球《しもべ》たち が一斉に口をひらく。
 ――さん、はいっ!

『―――――――――!!!』

 絶叫、咆々
 声の届かないはずの宇宙空間からの叫びは|空気《・・》により窓ガラスをびりびりと揺らす。

「そ〜〜〜らそらそら、最初に食べられちゃいたい子はだれかな〜〜〜〜〜っ?」
 あとは好きに飛びかからせれば、人々はたまらず逃げ出すわけである。
 加減した餓鬼級が窓ガラスをかじろうと――これももちろん演技である――歯をガラスに当ててがりがり鳴らせばもう十分だ。
 どうも予定にない遊覧船もあったらしく、宇宙港の向こうのどたばたとした騒ぎがこちらまで届いてきそうだ。
 
 かくてからっぽ、もぬけの殻。

「ま、観客がいないのは寂しいけど」
 ロニは宇宙港にくるりと背を向ける。
「巻き込んじゃダメって言われてるわけだしね」
 まだ、距離があったはずの宇宙ミジンコが――もう、すぐそこに頭部をもってきていた。
 窓ガラスから覗き込もうとするような、身近な接近だ。
 
「空気はキミのおかげだよね!」
 にっこり笑ってロニは指摘する。
 ミジンコの肩のあたりに立つ、|緑の少女《オブリビオン》 に。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『テラフォーミング・エレメンツ『エル』』

POW   :    テラフォーミング・エール
【星を創造する意思】を共有する対象にレベルmの【生命を運ぶ風の翼】を生やし、大きさに応じて対象を加速する。複数人で重ね掛け可能。
SPD   :    デスティネーション・アリア
自身の【吹かせる風に乗って運ぶもの】を、最も近接する対象と同値にする。対象が変わらない限り、自身の[吹かせる風に乗って運ぶもの]のみ徐々に上昇する。
WIZ   :    ベルベット・エア
【周囲を渦巻く風】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【安眠】の状態異常を与える【ふわふわとした乗れる雲】を放つ。

イラスト:望月らいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマシュマローネ・アラモードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●命の風は宇宙の子と踊ることにした。

「どぉ〜〜〜してっ、邪魔するのかなあ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 隕石とともに|声が飛んできた《・・・・・・・》。
 宇宙空間でそれはありえない――声とは震えである。力が齎す振動が空気を媒体に起こす圧力変動により発生する振動である。
 だから、宇宙で音が聞こえるなどとはあり得ない。
 逆にいえば、音が聞こえるということは|空気がある《・・・・・》ということ。
 飛んできた隕石に、きらきらと緑のかがやきが絡まっている。

 隕石を追うようにして、きみたちの目の前にそいつが現れた。

「さすがにふわふわエルだって、おこだよ!」
 少女だ。
 長い髪を揺らした少女が――宇宙空間で宇宙服も傷に妖精のような薄衣で憤っている。
 否、それは“妖精”だ。

――|惑星生存可能域化計画《テラ・フォーミング》 ・|人工妖精《エレメンツ》、|型式・エメラルド《タイプ・エル》 。

 宇宙に浮かぶ惑星を生存可能域にするために、空気や風を付与する能力を持って形成された、人工妖精。

「デフィーは宇宙のはしっこまでいくんだよ!ひとりだよ!」
 ぷんすこ怒りな手をぐるぐるに振り回して、宇宙みじんこに近寄ってその体をたぷたぷ叩く。「おこ!」ぷるん。みじんこの腹「おこ!」ぷるるん、みじんこの腹「おっこおこ!」
「エル、くすぐったいよ」
 デフィーがのんびりと発言すると、エルはいましがたデフィーを叩いていた位置を撫でながら、
「デフィーはひとりで行って、ひとりで宇宙をつくる――すっごいことするのに!デフィーはずうっとひとりなんだよ!」それでも頬を膨らませてきみたちを睨む。

「うちゅうのうまれるところ、みんなに褒められていいはずなのに!」

「えへへへ」「みんなだってデフィーの宇宙から生まれたかもしれないのに!」「この宇宙はデフィじゃないよぉ〜」「余計なこと言わないでよお!」掴まれたみじんこの腹が伸びている。当然だが伸縮性があるらしい。「みんなあたらしい世界を意気揚々と楽しく味わうくせに!」エメラルドの輝きを纏った妖精は宇宙みじんこの頭に仁王立ちする。「みんな新世界を寿ぐくせに!」

「|ちょっとぐらい《・・・・・・・》の|巻き添え《見届け人》がいたって、いいじゃない!」
 
 ……つまりは、子供の癇癪である。
 ちょっとしたお使いを一緒にこなそうと――エルは空気をもたらす妖精である。その息吹は生まれる宇宙に必要なものだろう――軽い気持ちで手を繋いだら、それがとんでもなく果てだったので、駄々をこねている。
 そんなことがあっていいのかとエルは憤って、
 こんなことを言われていいのかとデフィーは嬉しかった。

 命の風は宇宙の子と踊ることにして。
 宇宙の子は命の風と踊ることにしたのだ。

「エル、エル」デフィーの手が(これも宇宙コロニーを束ねたような太さがあるわけだが)揺れる。「エルが一方的にしゃべってるよ、きいてあげなきゃだめだよ」「ぷぅーーーーー!!!」エルは膨らませた頬をさらに膨らませる。

「デフィーがいうからしてあげるんだからね、|猟兵《イェーガー》 」
 かくて宇宙ミジンコのデフィーを中心に、酸素のある空気空間が形成される。
 宇宙域に活動手段がないきみたちでも――これならば一時的に活動することが可能だろう。

「エル、エル、説明」デフィーが再び手を揺らす。
「ぷぅう゛う゛ーーーー!!!」エルは膨らませた頬で浮き上がりそうだ。

「当|妖精《エレメンツ》の発生させた空気は宇宙空間に於いては時間計算にして144時間は継続されあらゆる生命活動に危害を及ぼさずまた当|妖精《エレメンツ》の目的である|惑星生存可能域化計画《テラ・フォーミング》の理念から当|妖精《エレメンツ》の選択により解除できないことを|擬似妖精核《エレメンツ・コア》に誓いここにゆらがぬ事実としてしょーめーせんげんします!!」

 ……。
 すげえ早口である。
 すげえ早口だったので要約すると、
 この一時的な呼吸可能な宇宙空間で戦闘を行うことはなんら問題はなく。
 エル自身がこの空気を攻撃のために解除することはできず、
 戦闘終了後も空気の安全が約束されているということである。

「エルは散々喋ったから、こんどはあなたたちのおしゃべり、聞いてあげる」
 むすくれながらエルはそれでも
「ただし、戦いながらね」
 …うーん、やっぱりオブリビオンである。
「デフィーはエルの味方してね!」「うん、い〜よ〜〜」デフィーが腕を振るえば指先から放たれるさまざまな小隕石、小さい口からあくびのように出されるミジンコビーム。
 ……。
 ミジンコビーム!?
 
 エルはない袖をめくるジェスチャーで憤る。
「エル、めずらしくがんばって、ぶっとばしちゃうんだから!」

 まったく、規模がとんでもなく大きいだけの――なんて子供の癇癪だろう。
 これは少しばかり激しいお灸を据えてやらなければならないようだ!

●状況●
 宇宙空間。
(無重力、呼吸可能、ただし宇宙ミジンコ周囲200km)

●敵対生物●

・テラフォーミング・エレメンツ “エル” x1体

●マスターより●

 タグ通りの日付で受付が開始されます。
 宇宙空間ではありますが、例外的に呼吸が可能です。手段に困っている方はご安心ください。
 また、宇宙港に停めてあった船などはご自由に(!?)お使いください。
 宇宙ミジンコの体の上を走るなども可能です。プヨプヨのオナカ!

 ただし――宇宙ミジンコ(すごくおっきい)の妨害が入ることを、お忘れなく!
 腕部から噴き出してくる隕石やなんかもうよくわかんねえミジンコビームやらも出ます。
 宇宙ミジンコを攻撃しても問題ありません。
 エルは核のある精霊ですので、体を傷つけても大丈夫です。
 基本的にはほのぼのドタバタ…のはずです!
 
 それでは宇宙空間のホール。
 宇宙ミジンコと命の風とかわすちょっとばかり乱暴なダンスをお楽しみください。
 ご参加、お待ちしております。
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

おこなの~?おこなの~?
ボクは楽しいよ~!

●おっきいことはたのしいこと
今日はミジンコくんと遊んで思い切りみんなを愉しませちゃおう
なにせこの子たちを思い切り遊ばせてあげるなんてことはめったにできないんだもの
――球体くんを100万倍するUC『神罰』
――実際はこれは強化というより限定的な“封印解除”という側面が大きい云々
ってわけで引き続き100万倍の[球体]くんたちで遊ぼうよ!
【第六感】で避けたりしながら球体くんたちをボール球よろしく投げ付けてこう!宇宙キャッチボールだ~!

いいじゃない~|長い旅<ザ・グレートジャーニー>も楽しいものだよ
1人もいいし、お友達がいればもっとさ!



●|素晴らしき長い旅《グレート・ジャーニー》

 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はご機嫌だった。


「ね、ね、ね、おこなの〜〜〜〜??」
 宇宙・無重力――無限の空間!

 無論ロニは空中浮遊などは慣れ親しんだものだけれど、あれはあくまでも好き勝手な“移動”である。なにもかもがロニの指揮下にして感覚下で、言うなれば“常に引っ張ってくる|地面《あっち》を振り払って”遊んでいるだけだ。
 だが無重力は全く違う。
 |それぞれの細かな星や力軸 《あちこちが遊んでと引く》のは、あっちこっち構われるみたいでちょっと面白い。一歩は常にロニが行きたい方向にゆける一歩であり、同時にどこに飛ぶのかわからない一歩でもあった。透明な無限トランポリンで遊んでいるような気分だ。

「おこだよ!!!」
 そして人工妖精・エル。
 強くしなやかな風でもって、小隕石どもをロニめがけてきてくれるのだからたまらない。
 ただの空中遊泳ならとっくに飽きていたが――こんな|妨害《アトラクション》つきなら悪くないし。
 そして何より
「まてまて〜〜〜〜〜〜」
 のんびりした声でエルとはまた別に隕石を射出してくるあの規格外サイズの宇宙ミジンコである。

「おこなの」一歩、ちいさな隕石を踏み台に浮き上がって
「おこなの」一歩、豪速で飛んできた廃材と一回転して
「おこなの〜〜〜〜???」
 ――それはそれは、楽しんでいた。

 なに、避け損なっても問題ない。
 たった今宇宙光パネルがロニの背後に迫っているが、見なくても問題すらない。
 
 がちん!
 餓鬼球が大きな顎でかぶりつき、このままがりがりと咀嚼してしまう。

「ふふ〜〜〜ん、もっともっと本気出してよ〜〜」
 ロニはエルに対し天地逆さまで目元にダブルピースを決める。
「ぷぅうううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 エルが地団駄を踏む。「おこ!おこ!おこ!!!」「わぁい、おこおこだ〜〜〜」煽った本人であるロニはけらけら笑うばかりだ。

「ま、捧げ物がほし〜〜〜〜〜〜って気持ちはわかんなくもないよ」
 ロニかしげた首の動きに合わせて前髪が大きく広がって「おっと」ついでに眼帯も浮かびそうだったので紐をいつもよりキツめに調整する。「ボクは神様だからね!」
「わかるならちょうだい」
「や〜〜〜だよっ」
 両手を顔の脇に広げて、べろべろばー。

「そーゆーときって、本当に欲しい時もあるけど――割と、そうじゃない時もあるんだよね」
 ロニは両手をポケットに突っ込んでがさごそとやりながら言ってやる。
「?」エルが唇をとんがらせる。「どゆこと?」

 訝しげなエルへ、ロニはそれはそれは無邪気に笑いかける。

「――ボクたちとあそぼ、ってこと!」
  
 そうして、ロニは

「おいで、餓鬼球くんたち」

 ポケットから両手を魔王様ごっこの時から浮かんでいた球体達も含めて――手持ちの餓鬼球を全て、放出してやる。

「おもい〜〜〜〜〜〜〜〜っきり遊んだこと、あんまりないでしょ」
 ロニはエルとデフィーのどちらにともなく指摘しながら、ユーベル・コードを放つ。
 
“|神罰《ゴットパニッシュメント》 ”
『餓鬼球を百万倍の大きさにする”もの』
 ……ロニはいつもそう説明する。
 ただ、これはあくまでも現象をなぞった説明であり――真実は、説明とは少々異なっている。

 飛び出す餓鬼球は宇宙の色を映してさまざまな色にきらめいて、ロニがしていたように無邪気な回転を見せながら、ゆっくりとその大きさを桁外れのそれに変質させていく。
 変質?
 否。

「この子たちもそうなんだ」
 本来の、ありうべき姿に。
 そうとも。
 このコードは“倍化”ではなく――“限定解除”なのだ。 
 餓鬼球らにとって、人の世界は狭すぎる。

 だが、今限りなく広がり続ける宙ならば?

「この子たちを思いっきり遊ばせてあげるなんてこと、めったにできないんだよね」
 ロニはぼやきながら、彼の脇腹に擦り寄ってきた個体を撫でてやる。
「やっぱり、思いっきり遊べないのはつまんないよね〜〜〜〜」
 ねー、と餓鬼級に向かって言って、それから、
 
「隙ありっ!!」
 たった今すり寄って顔を見合わせた個体の餓鬼球を――思いっきりぶん投げる!

「っわ、わあああああああ!?!?」「うわわわわ」
 面白いことに、エルとデフィーは全く油断していたらしい。
 投げつけられた餓鬼球に悲鳴を上げる。
「そらそらそらそら〜〜〜〜どんどんいくよ〜〜〜〜!!」 
 こうなればもうロニのペースだ。
 先ほどエルが飛ばしてきた廃材を一つ掴んで、適当にぶん回して次の餓鬼球を打ち込む。
「〜〜〜〜〜〜こっ、このお〜〜〜〜〜っっ!!!」
 エルは二球目が近づいてきたことで我に返り、適当な隕石を引き寄せる。
「なんかよくわかんないけどふいうちっ、卑怯だーーーーーっ!!」
 一球目の餓鬼球のどてっぱらに隕石が当たって、哀れ…割と哀れでもないのびやかさで一球目の餓鬼球が明後日の方向にとぶ。
「ノーコン!」ロニは軽くからかって「先に隕石飛ばしてきたキミが言う?」至極真っ当に言い返した。
「そうだよエル」デフィーはというと目からカッと光線を放ったところだ。
 二球目の餓鬼球の進行方向をずらし、ついでに餓鬼球の体に跳ね返ってロニの方に飛んできた光線を
 「そうだそうだ〜〜〜〜!!!」ロニは笑って体を捻って其れを避け――「シュートッ!!」別の餓鬼球を蹴り飛ばす。

「んんんもおおーーーーー!!デフィー、どっちの味方!?っていうかこれなあに!?」
 混乱するエルに、ロニはにっこり宣言する。

「宇宙キャッチボール!!」

「キャッチボールは足使わない〜〜〜〜〜〜っ!!!」エルの悲鳴と「エル、そこかなあ」のんびりとしたデフィーの相槌。
「ボクの宇宙では使うの〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 ロニのはしゃいだ声。

 ……もしも。
 もしも宇宙港に誰かが残っていてこの光景を見たのなら――きっと、その奇妙さに首を傾げただろう。
 どんな星よりも大きいミジンコに、幾つもの、鉄球のような顎の開いた球体が時にあれこれを齧りながら、時にはミジンコの腹にぶつかって出鱈目に飛んでいく。その最中をよくわからんビームは走り回るし朽ちた宇宙船が豪速で横切っている。
 しかも、宇宙のなかで。
 死地そのものでありながら、でたらめに飛び回るロニもエルも、ぱっと見は子供だ。
 眺める誰もが、いったい何をしているのか理解できず、しばらく見つめたあとに見るのも考えるのもやめてしまうに違いなかった。

「ふふーん」跳ね返された餓鬼球をぴょんと飛び越えながらロニは笑う。
「なが〜〜く旅をしてるって割に、宇宙キャッチボールも知らないとはね!」胸を逸らして軽く背をしならせて、適当な隕石を掴んで投げつける。
「これはぜったい、ずえええええええったい、キャッチボールじゃない!!!!」
 エルの非難の脇を隕石が通り過ぎていく。
「でも、たのしいねえ〜〜〜」宇宙ミジンコの驚異的な大きさの手が、一際おおきな餓鬼球の噛みつきを交わして、ついでに打ち返す。「提案したボクを崇めてもいいよ!」「かみさま〜〜〜」「コラッ、デフィー!!」「だってぇ」

 けれども見る人は宇宙港にはとうになく。

「まだまだもっと先、遠くにいくんでしょう?」
「そだよ」「ちょっと、デフィー!!」
 ゆえに広大な宇宙の狭い狭いはしっこは、ちいさな公園のような無邪気な歓声で満たされて。

「いいじゃない~|長い旅<ザ・グレートジャーニー>も楽しいものだよ」
 ロニは二つの目では見切れぬ星のまたたきを眺める。

「1人もいいし、お友達がいればもっとさ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
『初めてのおつかいはトラブルがつきものだよ』
――なんて|ガラス剣士《ダチ》が言う。そりゃ、経験談かい?そんな返答を返した。
テロリスト御一行様や無制限かの如く這える竹、偉大なるゴッドサマのしもべを経ての大舞台――広い宇宙は|鬼ごっこ《ダンス》には最適だ。

トラブル、ね。
苦笑一つで癇癪を起こした子供に向き直る。
大事な巻き添え人を逃がした猟兵をぶっとばすんだったか?
――良いぜ、やってみな。

大宇宙を舞台に魔剣も銃も振るわず、回避に徹する。
この海の中では魔剣も銃も無作法だ。彼女達が疲れるまで遊んでやるだけ、話したいだけ。
星の海を眺めて思う。きっと幾つもの宇宙をあのデフィーの兄弟達が生み出したんだろう。
俺は夜の星を眺めるのが好きだ。
様々な世界で眺めた空に輝く、無数の星が彼女の兄弟の命で生み出されている。猟兵にすら安易にはできない創造の具現。
――大したモンだ。
この賞賛は珍しく本心からのもので。
デフィーに運が良かったな、と語ってやりたい。
そしてエルに笑ってやる。
一人じゃないぜ。|お前《友達》が居るんだろ?



●まばゆい星を手に入れる方法

「そりゃ、経験談かい?」
「ぐあッ」
 効果は抜群だった。
  カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の茶目っ気に富んだ揶揄は|ガラス剣士《ダチ》に思った以上に刺さったようだった。「ハハ!」朗々と笑いとばしてやる。
「おいおい、そんなにか」
 なにせ|今膝から崩れ落ちた男《グリモア猟兵》 は少々説明不足のケがある。
 カイムは度々依頼に応えてやっているが、いつもどこかしらが想定外だ。
 そんな奴が『初めてのおつかいにはトラブルがつきもの』などと添えるのだ。予知のどこぞで心あたりがあるに違いない――面白半分のさぐりのようなものだった。

「気づいたら隣町」
 カイムが見下ろすつむじの下から絞りだすようなうめきが聞こえた。
「定番だな」転送の光に銀髪をきらめかせつ肩をすくめ「を過ぎ」「過ぎたのか」風向きが変わってきた。
「どんぐりころころ…」「お池にはまってさあ大変?」

「ドラゴン出てきてコンニチワ……」
「ん?」

 ……転送がそこで完了してしまったために、顛末は聞けずじまいだ。

「やれやれ」
 ひとりごちるカイムの唇は笑っている。
 軽く靴底で隕石を叩いて自らの体に起こる浮遊を確かめる――宇宙空間独特の無重力。
「確かに|“隣町”《ステーション》は|過ぎ《出》たな 」
 満天と語れどまだ足りぬ星々が視界いっぱいに煌めいている。
 それから漂ってくるちょっとした宇宙ゴミや小隕石も。
「ついでに」
 肩ごしに軽く振り返れば、見えるのは宇宙港から急いで離れんとする|宇宙船たち《船々》と片田舎だという宇宙港。

 無限のごとく生える竹の行商人に、隕石の警報が響くなかテロリスト御一行さまと対決。
 そして偉大なるゴッドサマのしもべの登場。
 盛りだくさんにも程がありはしないだろうか。

「ドラゴンと並べたってお釣りがくるんじゃないか、これは?」
 視線を前に戻せば、下手な星より大きいあざやかなライム・グリーン。
 そして一条の、風。

 極め付けには癇癪を起こしたこどもとその友人――オブリビオンの人工妖精に宇宙をゆく巨大ミジンコ――を相手どって宇宙で一悶着をおさめろ、ときた!

「絵本が一冊書けるな」
 苦笑をひとつ。「……盛りすぎて逆にナシか?」首をこてんと横倒して一考。
「絵本かくの〜〜?」
 宇宙ミジンコがのほほんと問うてくる。「残念ながら俺は書けないな」カイムはすっとぼけた返事をして首をすくめる。
「ま、出したいヤツにネタを提供はしてやるさ」
 ゆるく両手を頭の後ろで組み、リクライニング・シートにかけているかのように足を組んだ姿勢で満天の宇宙を眺める。「出せるかどうかはそいつの腕次第、ってな」「ほわ〜〜〜」「どの間違いなくデフィーは採用だな」頭を動かしてライム・グリーンの子供と目を合わす。頭を動かした時の反動で、カイムの体はデフィーの方にゆらり向き合う形に漂う。
「見開きまるまる使ってもこのインパクトが出せるかどうか」
「ほわわ〜〜〜〜〜…!」
「ま、その絵本も、ここでビッグバンなんぞ起こされちゃ出せもしないがな」

「い〜〜〜〜〜〜〜〜〜んだもん!!!」
 激しい風圧と共に隕石が飛んできた。「おっと」カイムはくるりと身を捻ってそれを交わす。

「ど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜せ書かれたところでっ!読むのなんかっ!デフィーが寂しいことわかってくれない人類だもーーーーーーーん!!!」
 激昂した人工妖精――エルである。
「エルはっ、ちゃんとっ、わかってほしーーーーーーーんだもん!!」
 続いて、2、3、4、連続で投擲される。
 ホップ、ステップ、ちょっと緩めのジャンプ、最後は検討違いの方向。
「おやおや」カイムは嘆息を込めて笑う。「こいつは確かに“どんぐりころころ”だ」傾げた首に結んで垂らした長い銀髪が揺れる。「確かに予知通りっちゃ予知通りだが」瞬く星に一瞬だけ視線をやって、グリモア猟兵を思い浮かべておく。
「やっぱり解りにくすぎるぜ?おたく」
 それから、とカイムは口の中である言葉を転がす。
 ――……

――どんぐりころころ、どんぐりこ。
  お池にはまってさあ大変。

「なかなかの威勢だ、チビとまんまる」
 カイムはエルが投げたうち、ぶつかり合って失速した一つの上に着地して声を掛けてやる。

「大事な巻き添え人を逃がした猟兵をぶっとばすんだったか?」
 
 ――どじょうが出てきてこんにちは。

「良いぜ、やってみな」
 カイムは洒落っ気たっぷりに腕を広げる。
 |ハンズ・アップ《無抵抗》というには遊びが入りすぎた仕草で手をそのままゆらゆらとしてみせる。

「ハンデだ、どういう形でもいい。一発当たるまで手出ししないでいてやるよ」

――坊ちゃん一緒に遊びましょう。 

 もうちょっと格好のつく喩えを出してほしいもんだな、全く!

「なんんんにおおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」激昂するエルと
「うわ〜〜〜〜〜お〜〜〜〜〜」はしゃぐデフィー。

 無垢で素直な喜びようは――すこしばかり、懐かしい感触がする。
「……|あのダチ野郎《グリモア猟兵》」苦笑して呟く。「俺をシッターに転職させる気か?」
 便利屋の便利ってのはそういう意味じゃないんだが、などと虚空に冗談で愚痴っておく。
 たまにはいいだろう、なんて思ってしまっている自分のためにも。

 幸い広大な宇宙である。|鬼ごっこ《ダンス》には最適この上ない。
 隕石が流れ飛んでいく。合間を正体不明のビームが駆け抜けていく。
 有様としては戦場だが、生憎本気でそう思っている奴は只今この場にいなさそうだった。

「こんの、ちょろちょろちょろちょろ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「風の力に頼りすぎちゃいないか?」
 カイムは人差し指を立てて舌を鳴らしながらゆらす。ちっちっち。「狙いがブレブレだ、まれたての|ハニカム・ボール《AI》だってもうちょっと良い腕してたぜ?」
「エルは蜂の巣以下ってかぁんのおおおおおおお〜〜〜〜!?!?」エルが地団駄踏みかねない勢いで吠えている。「ミラーボール以下かもな」「そこぉ動くな〜〜〜〜〜〜〜!」「動かなくても当たらなかった隕石のが多かったと思うね」なんなら踏み台にしたり体を泳がすのに手をかけたりしたのもあるくらいだ。「星を見る余裕だってある」添えておく。「ふぐぁああ〜〜〜〜〜!?」

「マイクのおにいさんがすごいんだよ〜〜」
 のほほん、とデフィーが呟く。怒りなどはなく、単純な賞賛だった。マイク、と一瞬思ったが、なるほどすぐに合点がいく。「そいつはどうも」パフォーマンスをしたあの場所からは、このミジンコがよく見えた。

「そろそろ剣とか銃とか出すかなあ〜〜って思っても出さないんだもん」
「ここでそんなもん出すのは無粋だろ?」

 こんな無邪気な星々のきらめきに。
 怒る友達を諌め、話をきいてあげほうが良いと無垢に広げられた席に。
 そのような物騒なものは必要ないだろう。
「んへへ」ミジンコが腹を揺らして笑う。

「ありがと〜〜〜〜」

 ――彼らはただ、孤独に鬱憤を溜めてしまっただけなのだろう。
 ならばまずはそれを晴らしてやらねばなるまい。
 彼女たちが疲れるまで遊んでやるだけ。話したいのなら、話してやるだけ。

「どういたしまして」
 純真無垢な賛辞をカイムは穏やかに受け取る。
 星の海は、広く、かぎりなく、手で掻けば掃けそうな光に溢れている。

「――大したもんだ、あんたらも」
 珍しい素直な賞賛だった。
 この星々の向こういくばくかはデフィーの兄弟たちの仕事だろう。
 無数の星がデフィーの兄弟の命で生み出されている。想像もつかぬ長い旅の果てに。
 猟兵にすら安易にはできない創造の具現。
 
 カイムのこぼしたちいさな言葉をエルは聞いていないようだった。数うちゃ当たる作戦から必殺一撃作戦にようやく切り替えたらしい。片目をつぶってじいっと照準を合わせようとしている。
「ン?」デフィーはカイムがつぶやいたのを聞き取ったようで、瞬きをする。「なぁに〜〜〜?」

 ――。

 
「運が良かったな、って言ったのさ」
 カイムはあえて教えてやらず、別の言葉で応える。

 宇宙ミジンコの旅を思ってやる。
 オブリビオンすら同情を抱いた長い旅を。ばらばらに生まれてばらばらに散っていった彼らのいったいいくつが、ともがらを得られただろう。
 カイムの静かな感傷よりも――そのことにわいた静かな思いよりも。
 たぶんそれがお互いに本当に嬉しいことで、大事なことだろうから。

「ふふぅん」デフィーが素直に笑う。
「そう、すっごい、すっごいうれしい、ラッキーなんだあ」
 カイムは微笑む。
 珍しくなんの皮肉もなしに茶目っけも気取りもなく、穏やかに。
「だとよ、エル」
「ほふぅん!?」エルが顔を上げる。「なぁにーーーー!?」デフィーとはカイムより近いはずなのに、全く聞こえていなかったらしい。「お前な…」「なにおう、集中してたんだもーーん!」
「お友達だとよ」
 カイムの言葉に、エルは嬉しそうに笑う。「そだよ、エルはデフィーのお友達なんだよ」
「問題解決」ニヤリと便利屋は笑って報告する。
「ん?」わかっていないエルが首を傾げる。

「デフィーは1人じゃない。|お前《友達》がいるんだろ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
|起動《イグニッション》!
髪を解き瞳は青く変わり白い着物姿に

人工妖精さん、私の世界にもいたら火星のテラフォーミングも実現できるんですが…

宇宙船で近くまで行き、お腹の上で戦ってみたいです。
隕石やビームは【武器から光線】、光の子安貝から放つ月光で破壊、相殺。
壊せなければ【早業】で【結界術】、氷の壁を展開し防御。
タイミングを見て指定UC発動、私の月光の刃とも踊っていただけますか?

たしかにビッグバンを見た人はいません。でも多くの人が宇宙の始まりに思いを馳せ、研究を続けてるんです。
私も宇宙誕生の瞬間は見てみたいですが、それを他の人に伝えられないのは困ります。
だから遠くから宇宙の誕生を感じさせてください。



●緑の星は目に見えない。

「――|起動《イグニッション》!」
 詩織はいまだにこの詞を呟く時に、少しだけ背をただすような心地がする。

 探り探りのあの頃を思い出すような。あれから日々を重ねた故に胸を張るような。
 そして何より。
 あの頃に背を押されているような、そんな。
 そんな幾重もの思いで、詩織は背を少しだけ正し――あの頃よりも、おそらくは、大きな一歩で戦場へと出で征ける。

  黒い髪はひろがり、穏やかに星を映していた黒い眼は澄んで優しさを湛えた冬空を映した雪色。
 満ちる星を真似るように詩織の周囲へ浮かぶ輝きは粉雪。
 それから、少しばかりはしゃいでる詩織につられて|相棒《ファンガス》のかすかこぼす|吐息《胞子》もちょっぴり。
 詩織の纏う衣はどこにでもある教師としての佇まいから移ろってゆく。
 現れるのは白の色留袖。
 正絹のようにあわい輝きをゆらめきながら|風花《雪》とともにわずかに袖をゆらして蝶の模様は星あかりに飛び立ちそうに羽ばたく様子は雪月風花。これほどふさわしい名もないだろう。
 
 たとえその前線が、真ならひと呼吸とて生存かなわぬ宇宙の只中であろうとも。
 
 そうして|宇宙《そら》にひらいたひとひらの雪花は、宇宙を包むライム・グリーンの表皮にゆるやかな曲線を結ぶ。

「実はデフィーさんのような綺麗な緑色って、私たちの宇宙ではめずらしい色なんです」
 一歩。
 詩織が身をかがめ足に重心をかけるだけで、足元にたゆんと広がる波紋。

「てことはエルのみどりも〜〜〜??」
 たった今砲門を風で押しやってきたエルの代わりとばかり、デフィーがのんびりと質問をしてくる。「ええ、同じく珍しい色です」
「宇宙みじんこ、はっ、そっち、にいない、んだね」
 肩で息をしながらエルもまた会話に加わる。「そいやっ!!」ついでに今度はビルほどもある隕石を浮かべ――押しやってくる!
「それも」
 だが詩織の顔色はひとつとして変わらず、右手に子安貝を構えたまま、左手にて防壁――結界を結ぶ。
 ごごん、と壁にぶつかってきたそれを受け止め、氷の壁にて固定する。
「――あります、が」
 半歩、前へ。
 「っと」少し押しやるだけで、巨大な塊は最も容易く異なる(もちろん詩織が目をつけた無難な)方向へ、飛んでいく。
「私たちの目には、光に含まれる他の色が優先されてそも“見えない”場合が多いんです」
 詩織の一言でエルは首を傾げてデフィーの頭部を振り返り
「デフィーの右手のいちばん長いゆびのさきっちょあたりの向こうに見える星!」
「はい」
「何色に見える!?」
「私たちの肉眼で緑の星が見える場合は白を錯視で緑に見ているとか」
 詩織にはどの星かわからなかったので、おそらくエルが気になることを説明しておく。「あとは、衛生写真に撮るぐらいですかね」
「ほえ〜〜」デフィーの納得しているような不思議そうな相槌に、詩織の口元がほころんでしまう。
「それで?」
 対するエルは、詩織の話題がつまらないのか読めないのを理解しようとしているのか、額に皺を寄せて攻撃の手を止めた。
 ……あるいはそれは、詩織の隙を伺うためかもしれない。
 戦闘が始まってしばらく経つが、息の上がり出したエルに比べ、詩織は汗ひとつない。
 かけがえのないあの日々に、死線をいくつも潜り抜けた身ならば、当然といえた。

 いずれにせよ、詩織にとっては好奇である。
 これくらいならば――まだ、ひとりで冷静に立てる。
 ……いや。

「宇宙のすごい神秘に触れているなあと、私、今とても感動しています」
 詩織はぐっと拳を握って力説した。

「私たちの宇宙ではビッグバンはいまだはっきりとは確認されておらず、そもそも有力と言われたのもここ100年内のことなんです」
 冷静かどうかというと、ちょっと自信がない。

「ほあ」デフィーが目をぱちくりとしばたく。

「|人工妖精《エル》さんが私の世界にもいたら、火星のテラフォーミングも実現できるんですが……来れませんかね…?」心底を呟いてしまう。「オブリビオンだよ」エルの至極真っ当な相槌。「そう、そうなんですよね……!」歯がゆい。とても歯がゆい。惜しむらくは立場の違いである。
「デフィーさんの素材も非常に気になりますね…」
 少しだけ身を屈めてたった今詩織が足をつけているデフィーの腹をつついてみる。ぷにぷにである。「感触的には求肥…ほどは柔らかくありませんかね…弾力が…柔らかめのゴム……トランポリン的な?……発光もしてて……」無理であるし無意味でもあるがせめてなにかしらのサンプリングができないかななどと考えてしまう。
「ぴんぽんぱんのおねえさん、うちゅう、好きなんだねえ」
 デフィーがほのぼのとそんなことを言うので、詩織は静かに、だが力強く首を縦に振る。「天体観測も、とても好きです」

「じゃあ、見ていったら?」
 刹那である。
 間近。
 エルが隕石や宇宙ゴミを旋風のように連れて、詩織の眼前まで飛んできている。
「ビッグバン、ここ百年で有力…ってことは、まだ見たことないんでしょ?」

「デフィーのお腹にものったんだし」右から細かい岩石が叩きつけるように
「触ったんだし」左から巨石が押し潰さんと
「エルが空気だしてあげて宇宙のど真ん中にも出れたわけだし」正面、鉄骨や何かのパネル、鈍色に光る破片が貫かんと

「見ててほしい、見ててあげたいって、もうそれならおっけーじゃない?」
 ――強い意識でもって、突きつけられる。

「そうですねえ」右の隕石。氷の障壁で一纏めにして叩き落とす。
「確かに、ビッグバンをみた人はいません」左の巨石、これは体を捻り隕石を巻き込んだことで巨大化した氷壁と相殺。「多くの人が焦がれ、思いを馳せ、研究しているのも間違いありません」

「ですが」
 正面。

 ――ユーベル・コード。
“ルナティック・マグネタイト”。
 宇宙に焦がれるひとひらは――その身より月の輝きで持ってして、自らの力を解き放つ。
 
「それではダメなんです」

 瞬き。
 突き出された廃材を並べて、叩き切り。
「先ほどから、あなたがリードばかりですね」
 ばらばらに散りゆく断片の向こうから、雪女は風の精に微笑みかける。
 
「私の月の刃とも、踊っていただけませんか?」
 月のあるかぎり失われない輝きは、宇宙ならば十全。
 なにも恐れずに振るうことができる。
 
 かくて幾多、幾重の刃がいっときガラ空きになったエルに向かって差し込まれ――妖精は、宇宙の子の頭のかたわらに吹き飛ぶ。
「私も、宇宙誕生の瞬間は見てみたいです」
 進めば追える距離を――しかし、詩織は立ち止まって進まない。
 彼女はこうしてエルが詰めてくるまでは、一定の距離を保ち続けていた。

「ですが、それを他の人に伝えられないのは困ります」

 ね、と静かに促す。
 ……こうして宙のさなかに飛び出した時に、ああ、と詩織は思ったのだ。
 宇宙ミジンコと、人工妖精。
 このおおきくてちいさな一匹とちいさくていとけないひとりのさみしい。
 誰かにきちんと知っていてほしい、というそれは。

「だから、ここではない遠くから――いつか、あなたの仕事がどれだけすごいものだったのか、
 追いかけてわかるように。宇宙の誕生を感じさせてください」 

 まるで、星のかがやきのようで。

「ほとんど見えない緑の星ではなく――きちんと見て、記録して、残せるように」

大成功 🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
見る者がいないと?愛い宙の迷い仔さん
呼吸…命の妖精。喪失後も恵む…とは
デフィーは、嬉しそうね

独りはヤよ
アタシも

おいで。『富久』発動
撫でたげる――“お喋り”しよ、命の子
門灯たちが無重力に戸惑い輪を描き可愛らしい
【大声】で
舞わせて!と乞う

雲っ!
柔い腹を目指し墜ち
自ら脚でスライディング…はは、綺麗な宙
並走する巨大魚「静墨」に移り
此の位が見えやすかろ、デフィー

攻撃は「息名」の焔で跳ね避け【大食い/肉体改造】
力…戴くよ
🔴半獣に。己の2本も狗の脚…疾く舞える

衛星ほどありそな瞳に【ダンスのお誘い】
ね? 貴方も
身動ぎ一つ
揺り起こす風は如何程?
エル。
雲と踊るこの風は命育む為だろ
睡魔にゃ手を咬む

名を呼ぶ。なぜか

覚えていたいから
刻むの
誰かが想い込めた特別な貴女たちの名で呼ぶ


跳んで門灯より受け取るは
大砲みたいな巨大映写機
夢の彩は届く?
【情報伝達強化/楽器演奏】命の記録を巨眼とドレスに焔ごと灼き映してやる
皆が誕生を知るは

誰か観ているからよ


港の面々が浮かぶ

本当に、いいの?
遠くがヤ…“もっと”舞を見せ合おっか エル



●ダンスは一人じゃ踊れない

 きらきらと輝く宇宙は思った以上に静寂に満ちている。
 空気がないが故の“無音”。
 それがどういうことかを――百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)はまざまざと思い知る。
 
「呼吸……命の妖精。ははあ、すごいねえ」
 胡麦は慣れない無重力の感触と、ややも冷える程度の冷気に息を吐く。
 絶対零度・致死であるはずの宇宙空間にコードもないまま飛び出す一瞬は流石に少々肝が冷えたが、出てしまえばどうと言うことはなし。
「でしょでしょ、エルはすごいでしょ〜〜〜」
 のほほん、と宇宙ミジンコが胡麦の独り言に答える。
 視線をやれば大きな体にちいさな頭。まんまるの瞳と目が合う。
「喪失後も恵む、と」「そだよお〜〜」驚異的な大きさに比べ威圧感のほとんどないのんびりした抑揚は、この宇宙ではとても大きく聞こえた。
「デフィーは、嬉しそうね」
「ともだちのすごいところ、自慢したいもん〜〜」
 デフィーのやわい幼子の口調に胡麦の頬はやんわりと緩む。「そう」
 まったくこれがビッグバンを起こそうとしているとは、なかなか信じ難い純真さだ。

「すとーーーーーーーーーっぷ!!」
 緑髪の妖精が胡麦とデフィーの間に割り込んだ。
「そーやってデフィーをかいじゅーしようなんて筍屋さんが卸してもエルはおろさないよ!」
 腰に手を当てた仁王立ちで鼻息も荒くエルが胡麦を睨みつける。
「おやま」胡麦は笑って肩をすくめる。「本当に仲良しさんだね」

「――独りは、ヤ?」
 そのまま、武器に手をかけずに問うてみる。

「やだねえ〜」デフィーがのほほんと、しかし確かに答えて。
「エルもデフィーが独りなのはいや!」エルは大きく首を縦に振る。

「そ」
 胡麦は微笑んで、指に息名を纏わせる。
「独りはヤよ――アタシも」
 だから。と唇の動きだけで囁いて。
 ユーべル・コードにて喚び上げる。

『富久』
 風があらば空気もある、故にして炎は息でもって|生気《いき》と溢るる。
 この冷たく静かな確かにそれは“福”だろう。

「おいで」
 胡麦の声に応えるように――ぽこん、ぽこんと炎が膨らみ、明かりを宿した門灯たちが飛び出す。
「うわっお友達召喚っ!?」エルが声を張り上げる。
「まさか“ずる”とは言うまいね?」初めての無重力に門灯のひとつが回転してとまらなくなってしまったのを「アタシが独りで其方がふたりなんだもの」止めてやりながら、胡麦はさらりと発言を先回りしておく。
「これで良し」くるり、くるり周りに踊る門灯たちを九つ従え胡麦は笑う。 

「さあ、撫でたげる」
 くっと唇弓形は鮮やか。
「“お喋り”しよ――命の子」
 炎のきらめき。

「おっけー」
 対するエルは緑の髪をうねらせる。「|猟兵とオブリビオン《わたしたち》式で伝え合いってやつだね」
 巻き起こる風はうずまき、たちのぼり――びゅうびゅう、ごうごうと音を立てる。
 
「そーんなちっぽけな炎なんて、あーっと言うまに」
 重力は無論遮るもののない風圧である。空気が展開されている宙域全体が、ゆっくりと動き、周り、ほったらかしの気ままに漂っていた小隕石や宇宙ごみらを巻きあげた、渦となり
「かき消しちゃうんだか、らっ!」
 竜巻となって、胡麦を飲み込もうと押し寄せてくる。
「おやまあ」胡麦は咄嗟に息名の炎で壁を生み出し、暴風のように叩きつけてくる岩石どもからなんとか踏みとどまる。
 此処は宙である。
 地面はなく、正面も容易に揺らぐ。
 胡麦とて、暴風を受け止めながらじりじりと体が押されている。
「ずいぶんなお天気だこと。――ねえ、おまえたち」
 吹き飛ばずに済むのは、ひとえに、呼び出された門灯たちのおかげだ。
 胡麦が咄嗟にはった防壁と、胡麦自身に縋るようにはっしと身を寄せ合っている。「まさかおまえたちの重さに感謝する日が来るとはね」ちいさく笑う。

「じーーーーーーっとしてて、いいのかな〜〜〜〜〜!?」
 風の向こうから、明るい声が響き渡る。
 段々と収まりつつある雨の向こうに見えるエルは、手のひらを天に向けるようにしつつ、口元に運んでいる。
「そのままぐーっすり、みんななかよく眠っちゃえっ」
 ふう、っと吐き出される息が、ふくらみ、広がり、雲になる。
 ――まずい。胡麦の心に直感が奔る。
 雷を溜めているようには見えない。見た目で驚異がわからない。
 ならばそれは、厄介以外の何者でもないのだ。
「舞って!」
 胡麦は大声で門灯たちへ乞う。
 胡麦にひっつきあるいは隠れていた門灯たちはここぞとばかり飛び出して、先ほどのエルがぶつけてきた嵐…のまねにしてはずいぶんと可愛らしいが、それでも回転し、旋回し――風を起こす。「それでまねっこのつーーーもーーーり〜〜〜〜〜〜っ!?」エルのささやかなブーイング。
「それっぽっちのちーーーちゃな風で、エルのクラウドは吹き飛びませーーーん!!」
「そうだね」誇らしげな挑発に、しかし胡麦の唇も笑っている。
 
「アタシには、そのちっちゃな風で丁度いいのさ」
 付近に浮かぶすこしばかり大きい隕石を、ひとつ。
 手を引っ掛け、隕石の下をくぐるように、足先を前に突き出して、前進。
 そうともここは宙域、無重力。
 上は下に右は左に天は地に……なにもかもが容易にひっくり返る。
 今の跳躍は胡麦にとっての|前《デフィー》を|下《着地地点》に、切り替えるための一歩。

「――はは、綺麗な宙」
 遮るものも、みたこともない満天の空に胡麦は目を細め。
 門灯たちが風を起こし、雲に開けたちいさな穴を、くぐり抜ける!

「うわ〜〜〜お〜〜〜」
 すっとぼけたデフィーの感性。「さすがきょくげーのおねーさ〜〜ん〜」
「どうも」柔い腹に、足をつける。「お代は|着地《こいつ》 で負けといてね」
 ぷよん、と一瞬沈んだ感触を少しだけ楽しんで。
「静墨!」
 ゆるり炎のうちから巨大な鮫を呼びかけて、飛び乗り「此の位が見やすかろ、デフィー」笑って。
 一直線――デフィーの頭まで、駆け抜けんとする。

「デフィー!」雲を潜り抜けられたことで、胡麦にみすみす脇をすり抜けられたエルが叫ぶ。
「そっち行ったよ!びーむびーむ!!」
「あーい」
 あらら。胡麦は緩めた唇から笑いをこぼす。「そう簡単に行かせちゃくれないか」
 目標地点であるデフィーの頭。その嘴がぱかっと開き。
 冗談めいた光の球――光線!
 
 ――避けようとは、した。
 少なくとも静墨に流れ弾の一つでも当たってはいけないと身を離した。
 けれどそれは、逆に“停止”でもあるのだ。
「ッ」
 息一つ飲んで再び息名にて結界を結ぶ。
 だがうすら汗こそ浮かべど、表情は先刻の嵐より余裕がある。
 光線とは熱である。
 熱とは即ち炎である。
「ちょいと力、いただくよ」
 受けた光線の一部をそのまま己の力へと、流し変える!
 かくて、変身。
 己が身を造り変える。
 あるいは、紐解いてかたちづくる。
 より速く、より前へ往ける脚を。より鋭く、よりしなやかに舞える体を。
 
 そうして、半獣。
 おとぎばなしに描かれるようなけものの姿に、至る。
 
 そうしてまた一歩、大きく跳んで。
 ようやく――衛星ほどもありそうな瞳の前に躍り出る。
「ご機嫌よう」
「ごきげんよ〜〜〜〜〜」
 挨拶のつもりなのだろうか、遠く、デフィーの右手(であるはずの巨大な突起)がぐらりと揺れる。「おにごっこ〜〜?もうタッチでおしまい」とぼけたデフィーの質問に、胡麦は微笑んでかぶりを振る。「いいえ」
「ダンスのお誘い」
 片手を差し伸べて、いざなう。
「ね?エルをすごいと言うたけれど、デフィー」「うん、エルはすごいんだよ〜〜」
「貴方も」「デフィーも?」
「――みじろぎ一つで揺り起こす風は如何程?」
 胡麦のこの誘いに、デフィーは少しばかり好奇心をゆさぶられたようだった。
「ううん…」そういえば空気のなかでおどったことはなかったかもなあ、なんてことをもにゃもにゃとつぶやいたところで
 ――ぶるり、と。
 デフィーにとっては“踊った”つもりだったらしい。
 巻き起こる風はいかほどだったか?

 それはもう――とっても!

「は、ははは!」
 デフィーの動きによって起こされた風圧で一気に吹き飛ばされた胡麦の口から思わず笑いがころがり溢れる。下手をすると飛ばされ続けてしまうので、古い宇宙船の扉とおぼしき板に足掛け飛び上がってなんとか停まる。「こいつはすごいや!」息名を一振り、錐揉みで吹き飛ばされている門灯たちを一纏めに集める。
「でふぃーーーーー!!」エルもまた不意打ちだったらしく、胡麦の隣まで吹き飛ばされている。
「そーーーゆーーーときは言ってよう!!!」「ごめぇん」緩やかなデフィーの謝罪。
「エル」
「んなに」
 デフィーへの文句が先立っていたせいか、エルがすっかり落ち着いた調子で胡麦に顔を向ける。
「雲と踊らせたあの風は命育む為だろ」
 う。と露骨にエルの額に皺が寄って、口がへの字に結ばれる。

 そうとも、デフィーも、エルも。命に至る担い手なのだ。
「ね」胡麦は呼び寄せた門灯二個にお願いを託してするり手元から自由にさせてから、ふたりを見る。「エル、デフィー」
「名を呼ぶのは、なぜか」
 問いかけを投げる。
「そのひとに振り向いてほしいから〜〜〜?」デフィーの回答。
「合ってるけれど、ちょいと違うね」
 その間に門灯がえっちらおっちらと戻ってきて――エルの顔がぎょっと歪む。
「デフィー!」胡麦の隣を慌てて離れ、デフィーと胡麦の間に再び割り込む。「あぶない、あぶないよ!」
「危なくなんかないよ、|慌てん坊さん《エル》」珍しい外見相応の反応を揶揄ってやる。

「覚えていたいからだよ」
 宙を満たすこの光は――すべて星々だ。
 あの全てが光を放てる恒星で、そのそばにはきっとまた無数の星があって。
 であいと別れを繰り返している。
「刻むの」
そうして胡麦は門灯から受け取ったそれ――大砲ほどもある映写機を手に取る。
 システムよし。港が近いおかげで電波もよく届く。
 これなら、なんとかなりそうだ。

「エル、デフィー」
 名を呼ぶ。
 誰かが想い込めた特別な彼女と彼の名で呼ぶ。
「見るものが居ないと?愛い宇宙の迷い仔さん」
 なづけもとを離れて、宇宙をただよって出会った、ひとりぼっちたち。
 映写機のスイッチを入れる。
「さぁて、夢の彩は届くかね」
 星ほどもある瞳に。かがやける風のドレスに。
 命の映像を――かがやく炎の膜にて、映しあげる。

「皆が誕生を知るのは、ね」
 胡麦の“商い”を見てはしゃいでいた人々の映像を。

「誰かが見ているからよ」
 
 宇宙は、静かだ。
 こうして見ている誰かが、言葉をかける誰かがいなければ。

「見るだれかまで消えちゃっちゃ、それこそ居ないと同じになっちまうのさ」

 放たれたすべては――かげろうのように、移り消えてしまうのだろう。

「ほんとうに、いいの?」
 それでも。
 本当に宇宙のかすかな瞬きとしていっとき現れて、消えるとしても。

 ほんとうは。
 ほんとうは、もう少し言葉を重ねようかと――返事のないふたりに、胡麦は思った。

 だがしかし。
 本当に、迷い仔のようなエルの顔を見たら
 きっとわかっているのに言葉にしたくないあの眉間と口元の皺を見たら。
「仕方のない子」愛おしさを込めて、囁く。

「遠くがヤ」

 彼女たちが飽きて疲れるまで、もう少しだけ。

「なら――ひとまずは、“もっと”舞を見せ合おっか エル」
 
 まずはともに、舞ってあげようと思ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネフィ・ペルバベスタ
全面お任せ&色々ご自由に

――当AIには、判断が付きません。
エル様の言うように、見届ける人が皆無なのは寂しいでしょう。
しかしその為に、巻き込まれる犠牲者が出るのは認められません。
……わたしには、わかりません
どちらもたっとばれるべきいのちでしょう

「BASTET」に帰還、コアコンピュータから直接機体を操縦
「詠唱加速推進機構」を吹かしつつ
隕石を撃墜したりビームを回避しながら目標:デフィーに接近

――|妨害者《エル》、薄着を確認。
余談ですが、冬場なら風邪をひきそうな装いですね。
状況に最適なUCを選出。装填。――発射。
センセならきっと、笑いながら「選ぶのが嫌なら両方取っちゃえ」と言うはずです。

エルが寒さで動けない内に、デフィーの顔面に肉薄
手の内にあるものを突き付けます

これ!
デフィさんの、おーーっきいぬいぐるみです!
(大赤字な転売で)たくさん売れたので、
同じの持ってる人、いーっぱいいます!
だから、これをもっていってくれれば、きっとひとりじゃないです。
……とうAIが出せるこたえは、これがげんかい、です。



●軌道をはずれたわたしとあなた

「センセ」
 ネフィ・ペルバベスタ(|Type-C:F-A・BSs《いつか焔を担う仔》・f37243)は小さくその呼称を口にしていた。
 ネフィの教官にしてネフィがインストールされた機体・BASTETの主であり……ネフィの“保護者”でもある彼女の呼称を。
 その呼称を口にするといつも返事が返ってきた。文章形式はいつも異なるけれど。
 彼女はそうやってネフィに応えてくれた。
 疑問を投げ掛ければ時に素早く回答を、時に敢えて答えを伏せて。
 時には、ともに悩んで。

「――当AIには判断がつきません」
 苦悩がバステトのデータベース内でちいさな泡のように浮かび上がる。
 彼女がこの場にいたらどんな答えを出すだろうか。
 どんな風に思考を紡いで、どんな言葉を。
 いや――彼女に聴くまでもなく、正しい答えは出ている。
 ネフィはAIだ。
 データベースに浮かび上がった苦悩など、ラベリング・フィルタリングして排除または思考視野から伏せることもできる。

 だのにネフィはその苦悩を除くどころか

「……わたしには、わかりません」
 経験に蓄積されたさまざまな思考リソースを得て雪だるま式に多くなってゆくのをぼんやりと見つめることしかできない。

「むずかしいのぉ〜〜〜?」
 のんびりとした声はネフィに問うてくる。
 問いながらひらかれた嘴から、眩い光線が放たれてくる 
「いえ」ネフィはかぶりを振る。
 BASTETは優雅とも言える旋回でもってその光線を回避する。
 宇宙域は飛行時の加速エネルギーの量が大幅に少なくて済むが、その分些細な変動で目標位置よりも方向がずれたり、想定以上の速度が出やすく、繊細な技量が求められる。背面より展開されているブースターの光はいつもと違い翼というよりは妖精の羽根のように淡い。 
「むずかしい、むずかしいことでは、ありません……」
 ネフィは応答する。
 難しいことではない。
 だのに声は、どうしても困惑と動揺の色音でもって揺れてしまう。
 理論的に考えれば、どう考えても明らかなのだ。
「じゃあ、いけないこと〜〜〜〜〜〜っ!?」
 溌剌とした声はエルのものだ――前方、デフィーの方角から叫んでいる。
 両手を掲げて右手と左手で大きなロープを絡めてひっぱるような、仕草。
 外部計測、異常な気流を感知。方向、前方ではなく 

「そうですっ!」
 ――後方から!
 BASTET、再び錐揉み状にその場で半回転、正面ではなく後方を振り返り――眼前に迫っていた、巨石!
「とう、A I、はっ」フォトン・ブレード展開。間に合わない。エルの操る特殊な風がイン先をBASTETと同速度に引き上げている。ならば問われるのは距離であり、当然、回転して背後を振り向いたBASTETが半歩遅れているのは自明の理であり――……。

「わたしは、|わかる《・・・》んですッ!」
 どっ、と。
 腕―― |内装型硬質弾速射銃《ソリッド・ガンショット》を展開した武器で強化した腕部で、隕石を叩き払う。
 めぎ、という少なくない損傷による振動が腕部からネフィの元まで負傷に似た感触で伝わる。
「う、ああ」
 腕部の出力展開――風により後押しされる隕石を振り払い、逸らす!
「ああああああッ!!」

 ――……。
 AIらしからぬ対応だ。ネフィはわかっている。
 やり方はもっとあったはずたった。緊急回避で上部に移動して移動に必要ない脚部を使用することから始まり、10近い対処法は展開されていた。どれも、この手より良い手だった。
 だが、選びたくはなかった。 
 かれらの正面から離れることを――逃げることを、とりたくなかったのだ。

「わたしには、わかるんですッ」

 ……正しいこたえは知っている。
 直撃よりも回避をとるべきだったことも。
 宇宙をいくたったひとりのちいさな孤独よりも、宇宙港を含めた周囲の生命たちを優先するべきだということも。

 だけれども。

「エル様の言うように――見届けるひとが皆無なのは、寂しいでしょう」

 たったひとつの孤独。ひとりぽっちの孤独な死。
 それで助かるはずのいのち。
 それでも、差し伸べられた手のことを。
 掬い取る指の勝手さと、自由を。
 ネフィはもう、知ってしまっていた。

「じゃーなんで邪魔するの?」
 無垢な問いが背後――デフィーの上から囁いてくる。
 じゃあなんで。何故。どうして。

 |あのころのわたしたち《・・・・・・・・・・》 と、おなじような調子で。

「わかるんなら、ここでばーん、ってやってもよくない?」
「良くは、ありませんっ!」
 BASTETは再び回転し、向き合う。
 ライム・グリーン。みどりの輝き。センセとおんなじ名前の樹木ですねと言ったら、珍しく「花は白いんだよ」と妙に優しげな顔で噛み合わない返事が返ってきた。
 
「その為に、巻き込まれる犠牲者が出るのは認められません」

 わかるのだ。
 ネフィにはわかる。わかるからこそ。

「わたしには……わかりません……」
 ネフィは戦場補佐AIだ。
 わかっている。わかっている。下すべき判断も、行うべき行動も。
 答えは出ている。とっくに。
 だのに。
「どちらも、たっとぶべきいのちでしょう……」
 どうしても、その答えを選ぶことを躊躇してしまう。
 膨らんだ苦悩が、選択を取らせない。
「AI失格かもしれません…」ちいさくうめく。「せんせえ…」

「ど〜〜〜っちつかずだな〜〜〜〜〜も〜〜〜〜」
 呆れ返ったエルのため息が聞こえる。熱反応はどうもデフィーの上でちょこんと座っているようだった。どうも悩むネフィを少しばかり待ってくれていたらしい。「そんならエル、スーパーウルトラハイマックスエル本気スペシャル気流で吹き飛ばしてあげるよ」
 そのエルが、立ち上がるのをBASTETのセンサーが認識する。
「んも〜〜かしこそうなのに乗ってきたのにうじうじううじうじ〜〜」
 ちいさな両手を再び掲げて頭の上で交差しては広げるような動作を始める。

「|こっち《・・・》か|そっち《・・・》
 ――それしかないんだから」
 
 焔のにおいを、ネフィは錯覚する。
 大量の燃料をかけて、自らも焔となって燃やしながら燃え尽きようとするような、紅蓮の臭い。
 
 こっちか、そっち。

 忘れえぬ声。
 本質的には|Type-C:F-A・BSs《自身と同じ声》が、かすかに耳奥に響く。

 息もつけぬような熱風に――視覚のライム・グリーン。
 ふと
「――いいえ」
 ネフィは、爽やかで胸を明るくするような柑橘の香りを嗅いだ気がした。
「いいえっ!」
 詠唱加速推進機構、フルバースト。
 飛行推移エンジン、最大主力。

「そっちと、こっちなんて――ありませんッ!!」

 宇宙をかける白い機体は、遠くから見るとちっぽけな白い花弁のようだ。

「センセならきっと、笑いながら“選ぶのが嫌なら両方取っちゃえ”と、言うはずですッ!」

 ライム。爽やかな香りと酸味が好まれる柑橘系の果実。
 花言葉は『あなたを見守る』。

「ハァ〜〜〜〜〜〜!?」接近する。バステトの|認識カメラ《目》から見えたエルの顔は「どっちもぉ〜〜〜〜〜!?」それはそれは怒りに満ちていた。「そんなことそんなこと」集めていた気流を切り替えて「どーーーーーやってするつもりなのさ!」隕石や宇宙ゴミを片っ端から射出し始める。


「――|妨害者《エル》、確認っ」
 怒る気持ちは、ちょっとだけわかる。
 でもその怒りが――ほんとは殆んどが驚きであることも、ネフィは知っている。
 冷静に、冷静に。
 時に展開した銃で撃ち落とし、回転し、避けて、進む。
「また転売でもするんですか〜〜〜〜!?そんなの身勝手な論理じゃないんですかぁ〜〜〜〜!?」|幼年兵士《チャイルド・フット》みたいな煽りもついでに飛んでくる。「ちがいますっ!あれは必要な行為ですっ!」「そーゆーの、身勝手な理論って言うんですぅ〜〜〜〜!』

「そうですっ!!」
 ネフィは叫びながら弾丸を装填。

「身勝手です!わがままです!」
「いつだってそうです」脳裏に浮かぶ鮮やかな笑顔を思い浮かべながら怒鳴るように術式をこめる。「パンダは必要な経費だったのに!」ついでに余計な一言も出た。「ぱんだぁ?」「デフィー!誤魔化されちゃダメ!」

「でも、そうするしかなくて――動けないより、ずっといいんです!」
 
 照準、完了。
「ッ!」エルが咄嗟に付近の隕石を引き寄せて壁を作る。
「余談ですけど、エル様」ネフィは静かに突きつける。「その格好、|冬場《・・》 なら風邪をひきそうな装いですね」――それは、無駄であると暗示して。

 |CODE:0-KELVIN《氷結地獄の一撃》(バレット・コキュートス)、発射。

 隕石ごと、そしてデフィーに乗っかっている足元ごと、固定する。
「〜〜〜〜〜ッ!!」エルが何ごとかを叫ぼうとしている。
 その隙に、コクピットから義体を召喚し、宇宙空間へと飛び出す。
 
「これっ!!」
 おおきなまんまるの瞳の前に、飛び出す。

「デフィーさんの、おっき〜〜〜〜〜いぬいぐるみです」
 ネフィはデフィーのぬいぐるみを掲げる。
 …ちなみに作戦には自分の購入は別に必要ない。ちゃっかり自分のぶんとして買っていた。いいのである。センセだってちゃっかり買っているのをネフィは良く見ている。この生徒は変なところまで教師から学んでいた。
「わぁ〜〜〜〜〜」
 デフィーののんびりとした返事が返ってくる。
「今回っすっごい人気で、たくさん、たくさん、売れましたっ!」
 うふふ、とデフィーが笑う。
「しってるよお、たくさん、たくさん、売ってくれたんだよね」
「見てたんですか!?」あの罪深き転売を!?「うれたのお?」「売れました」売りました。必要経費による避けられぬ真っ赤な価格で。

「だから、同じの持ってるひと、たくさんたくさんいます」
 
 ネフィにはわからない。
 どうしていいかはわからない。
 だけれども、こっちとそっちのどっちは――嫌だと、思う。
 たくさんの命はもちろんだけれど、たった一つの孤独を放置してはいけないと思う。
 ゆえに。

「だから、これをもっていってくれれば、きっとひとりじゃないです…!」
 
 そうして、ささやかなつながりをもってゆくのは、だめだろうか。
「ほわぁ〜〜〜〜」デフィーのぼんやりした相槌。
「えっと今…」ネフィは渡そうとして、気づく「あっ」多分デフィーの手には少し小さい「えっと」慌ててポケットを探る。「えっと紐、紐、ない、えっとキャバリアのコード、コードでストラップみたいにするので、それで、それで!」

「ぼくのためえ?」
 ――……。
「そう、です」
 ネフィは少しだけ俯いて、ふわふわのぬいぐるみを見つめる。
「……とうAIが出せるこたえは、これが、限界、です」
 そうして、ちらと大きな瞳を覗き込む。
 目のもう少し上。
 氷結を振り払ったエルが、文句がありそうな顔で――それでも、おとなしく座って、じっとネフィを見つめていて。
 そして、こう言った。

「ちゃんと正規価格で買ってなきゃ受けとんないから」
「ちゃんとかいました!」
 師匠名義で。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワタツミ・ラジアータ
私ではありませんけれど、この宇宙の私《同型機》はお世話になっていたかもしれませんわね。
なにせ屑星《素材》を惑星化《調理》してくださるようですし。
新しい宇宙《食事処》ができるのは歓迎いたしますけれど、巻き込まれるのはご遠慮致しますわ。
折角、小銭とご飯が稼げましたのに。

真の姿
金魚型端末を浮遊させた赤いドレスを纏い鉤爪の手足を持つ機械の女神

お互い真逆な仕様でしょうけれど、折角ですし遊びましょうか。
星創りの妖精様?

隕石など物理的攻撃はUCにて資源化して捕食
ビームや風など非物理攻撃は対象外のためダメージを受けるが核《我思う、ゆえに我あり》さえ無事なら回収した素材から体を再生させる
再生する度、貯蓄した素材は減ってゆく
ミジンコから支援攻撃はUCの粒子にて防ぐため、妖精には正面から接近戦をする
金魚型端末を自身の補佐として妖精に対して《遊撃》、《空中機動》等で妨害する

アドリブアレンジ歓迎



●引力を共に

 あのぷよよんとした丸みのうちに、宇宙の素があるのだという。

 ワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)がまず抱いたのは――食欲だった。

「あれをぴっとやってぱかっとやったらもまだ味わったこともない隕鉄たちがどばっと……」

 そんなことはおそらくないとは思われるが無いとは言い切れないわけで開ける前のパンドラボックスシュレティンガーキャットピクチャーに撮られたライスケーキ。
 ……つまり妄想は自由だったのでうっかり|思考リソースを割いて計算《妄想》して うっかり|口頭展開す《口から出》る 程度には、魅惑的だった。

「ワタツミ……」呼ばれたワタツミは思わず隣を見る。クモ型ドローンが荷物にかけたロープをきつく締めるのを一旦中止してまでワタツミを見つめていた。見つめ合う。呼吸を止めて一秒、真剣なまなざしで。星屑は満ちていてこの瞬間ばかりはワタツミはロンリネスかもしれなかった。嗜好的な意味で。

「もちろん、冗談ですわ」
 そういうことにした。
「ソッカァ…」そういうことにされた。ドローンを動かすこのAIはジャンクで拾ったこともあってか時折こういうカタカナ音声が混じる。何か言いたげに。とはいえ本当になにか意見があるときはきちんと言うのでワタツミも特に突っ込まない。
「裂いた際に発生するエネルギーを考えれば食べる前に御破産です」
 一応きちんとした理由も添えておく。一応。
「てったいする?」「そちらもナシですわね」
 ワタツミは応えつつ宇宙船のハッチを開く。「今からでは巻き込まれてしまいかねません」
 あるのは宇宙船から真空域に酸素が出ていく暴風ではなく、吹き込んでくる風爽やかなだ。
「新しい|宇宙《食事処》ができるのは歓迎ですが――巻き込まれるのはご遠慮したいところですわ」
 ワタツミは唇を小さくとんがらせる「折角、小銭とご飯が稼げましたのに」
「あい、あい」ぱちん、と響くのは固定し終わる音。ただ荷物を固定するにしては厳重であるが、ここからはそれで良い。
「――では、ご帰還、おまちしております」
「ええ、ええ、それでは行ってまいりますわ」
 ポニーテールをまとめる金属紐をほどき、預ける。
「ご飯のご用意は?」「帰ってから指示を出します」
 瞳を|金《かな》色に輝かせて、ワタツミは珍しく対外交渉用でない、本心で唇の端っこを釣り上げて笑う。

「もしかしたらディナー・ショウかもしれませんもの」

 赤い尾鰭が星に瞬く。
 宙域へと飛び出したワタツミの姿は――普段の彼女ではない。
 なにせ巨星とも言える大きさであり小宇宙そのものを抱くものと対峙するのである。
 普段のレプリカント“らしい”姿では物足りない。
 何より礼儀に欠けるだろう。

「私ではありませんけれど、この宇宙の|私《同型機》はお世話になっていたかもしれませんわね」

 有機物をなぞるようでありながら全く異なる流線型の体躯は甘やかな光沢のパール・ホワイト。
 手足の先を飾るのは、どんな指輪や爪飾りもたどり着けない暴力と優美を兼ね備えた鉤爪だ。
 そいつでいたずらに小隕石を弾けば、揺れるのは体を覆うドレスの裾。赤は水銀のみでしか得られない辰砂とも呼ばれる本朱が、ゆらり、ゆらり、雅に揺れる。

「なにせ|屑星《素材》を|惑星化《調理》してくださるようですし」
 
 同じ辰砂の金魚型端末どもを引き連れ――機なる女神はそうして一瞥する。

 鮮やかなライム・グリーン。
 宇宙を内包し、生み出すというもの。
 赤の対極…ほどではないけれど、それなりに逆の色相に座する色を。
 巨大な瞳と、神なる座の視が交わる。
「ご機嫌よう」
「ごき、げん、よーーーーーーーっ!!」
 しかし返事は件のライム・グリーンからではなく――もっと華奢な少女の声音と、巨大な隕石の形をしていた。

「ええ、そちらのお嬢さんもご機嫌よう」
 しかし、その程度で神なるものは動じたりはしない。
 彼女のわずか手前で隕石は赤く細かい粒子と散って、ワタツミに収まる。
「ずいぶん可愛い前菜ですのね」
 |デウス・エクス・マキナ《プラネット・イーター》にとって、この程度の石は砂糖菓子の端っこにもならない。
「うわぉ」エルが若干引き気味の声を上げる。
「もっと大きいのが良いってことぉ〜〜」のほほんとデフィーが答える。「ええ、できればもう少し貴重ですと嬉しいですわ」
 ワタツミは片手を上げる。可愛いしもべどもの待機を解除する。
「お互い真逆な存在でしょうけれど、折角の機会です」

「ビッグバンを起こすというなら、どんな妨害があるか“軽く”教えて差し上げます。
 ――遊びましょうか、星創りの妖精様」

 星喰らいは、優雅に侵攻を開始した。

「ぼーーーがいなんてっ!覚悟の、うえっだもん!!」

 子供ではあるが、決して愚かではないらしい、というのが、数撃やりあっての感想だった。

「それは何よりですわ」
 ワタツミはドレスの裾を優雅に翻し流れるように直下へ降る。
 頭上を突き抜けたのは、理屈不明でデフィーの口から放たれる光線である。
 緑の光はいのちの祝福のような色に反して廃棄されたまま損傷したらしい宇宙船を安々と蒸発させる。
 当初の予想通りとんでもないエネルギー体であるが故に光線の威力もすさまじい。光線を中心に何もないはずの約1m幅でもかするととんでもない熱量で溶解させてくるのを、ワタツミは左脚部の向こう脛で知った。
 とはいえ大したダメージではない。機動に問題は発生していないし、この傷はこの傷で|利用価値がある《・・・・・・・・》。
 ビームが途中で曲がり、ワタツミをめがけて追ってくるので、金魚型の支援機一斉拡散砲にてなんとかビームをブレさせて振り切り、

「では私があのミジンコを縦に割いて横に割って中身を頂いてしまう、というのも覚悟しているのですわよね?」
 落下の推力殺さず流用して、直線、エルの側へと詰め寄る。
「うっ」
 エルが言葉に詰まった。その一瞬の隙にエルを中心に張られた竜巻に無理矢理突っ込んで突破する。 
 頭部、腕部、右脚部、胴部、翼衣、それぞれ損傷。損傷しているという認識だけおいておく。それでいい。

 ……そして
「そんな。こと――さっせない、もん!」
 もちろんワタツミだってそんなことをするつもりはないが、威圧という意味ではおおいに成功していた。この文句は先のうっかりがなければ閃かなかったろう。たまには思考がうっかり出るのもいいものである。
 つん、とワタツミは爪先でエルの喉元をかるく突く。
「ええ、ええ。多くの者はここまで距離を詰められてもそのように去勢をはりますわ」
「虚勢じゃないもん!」
 
 彼女らは直情的ではあるが、決して衝動のままの決断ではなかったのだ、ということもワタツミは知った。
 最初差し向けられた隕石群を次々と資源化し喰らったら即座に攻撃を物理から否物理へと切り替えてきた。

「だいたいっt」
 エルの瞳がより強く輝く。エメラルドの輝きはデフィーのそれよりも人工的だ。
「そーんなぼろぼろで何ができるのさ」
 加熱とチャンバを繰り返されて生成される|人工宝石《エメラルド》。
 ……。
 ワタツミの核には及ばねど、熱を抱いて生まれるもの独特の衝動は、理解できなくもない。
「ぼろぼろ?」
 ワタツミは穏やかに応える。
「みすぼらしいかしら?であるなら失礼致しました」

 |核よ、核よ、我が心臓よ《我思う、故に我あり》。

「んなァ〜〜〜〜!?」
 エルが目を向く。
「これで、よろしいかしら」

 損傷部――全修復、完了。

「な、なん、どしてえ!?」エルが非難を大きく上げる。「だって」ワタツミは小首を傾げる。「まだ汚れそうだったんですもの」
 エルの背後、デフィーのエメラルド・グリーンを得て無垢に輝く真珠の肌。
「ドレスに泥がたくさんつくとわかっているなら、まとめて払ったほうが楽でしょう?」

 言外に――お前たちの攻撃なぞ、みじんも意味がない、という圧力をかける。

 ……これは、ハッタリである。
 ワタツミは核さえ無事であるならば再生は幾らでも効く……これは嘘ではない。
 再生にもコストはいる。これが、伏せている情報。
 宇宙船に残したドローンが少し慌てている頃だろう。資材のいくばくかが資源化されワタツミに転送されたのである。資材が消えることの意味をあの仔は知っている。無謀な行動を取らせるほどの権言は与えていないのでそこは安心だが、帰った時の反応が気がかりだ。しばらくうるさそうである。ワタツミとてやや遺憾なのに。

 しかし、もう少し味わうくらいの余裕を持って使いたかった資材を切った甲斐はあった。
「うんぬ〜〜〜っ」
 そのままそこで風の障壁でも張ればいいものを、動揺したエルは後退に出たのである。
「いけませんわ」
 ワタツミはわざとらしく指を外して頭の傍で掲げる。
「ここまで来ましたのに、敵前逃亡だなんて」
 金魚型端末からの銃口でエルの背後を確保する。
「エル〜〜〜〜!」
 デフィーの緩やかな声が、それでも必死にエルを呼ぶ。

「さあ、妖精様」
 朗らかな声でワタツミはデフィーに声をかける。
「どういたしましょう?」
 掛けながら――これはなんだか、御伽噺に出てくる悪い怪物のようだな、などとワタツミは我が身をちょっとだけ省みる。
「どう、どう……どう…?」
「ここからエルと一緒に立ち去るか、エルが死んでしまうのを見るか」
 良い気分はしない。悪い気分もしないが。「私としては前者がお勧めですわ」

 ……どうも。
 どうもヒトが崇めようと思う神とは、往々にしてそのようなものらしい。
 たまにはそんな真似も面白いだろう。

「それで大切なお友達は、守れるんですもの」
  
 大事なことを直接伝えず、気づくように差し向けるようなことをしても。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダンド・スフィダンテ
でっっか(でっかい)

えっ、でっか(大きい)

????

えっ、ちょっと話し合いも大事だと思うんだけど、やってみたい事あるからやっていい???

いやデフィーの事を傷付けてしまうし、それでどうなるか分かんないし、ミューズ・エルには身を守って欲しいんだけども……え?良い?

うん、じゃあやるね?

いくぞデフィー!穿ち、貫く!!

……えっ!?デフィー無事!?これ無事!?
ごめん好奇心に勝てなくて!!今回シリアスじゃないから大丈夫かと思って!!
ほんとごめんな!?!?宇宙無事!?ごめんね!?

友達がずっと一人で、誰にも褒められずに何かをし続けなきゃいけないって、辛いよな

でも、だからこそ
デフィーがやらなきゃいけない事を、ミューズ・エルが中途半端にしちゃダメだ

一緒に、泣いて、悔しがって、笑って
折角手を取って踊る事にしたのに、
曲の途中で手を離して、はい終わり、なんて酷いだろ?

それにほら(ストラップててーん!)
少なくともここで新たな宇宙を生み出したら、こんなに愛されているデフィーが、悪になってしまうしな

うん、ほんとごめん。



●誓いは星のように

「でっっかい」
 でっかい。
 筆者も本当にそう思います。

「え」ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は目をこする。割と強めに。
「えっ?」二度見。確認。

 生命の保証があるとはいえそも保証しているのはオブリビオン、故にミューズが運転する|宇宙船《船》から 宇宙に飛び出すまで、ふざけてんのか既婚者待ってる人がいるならあんな安っすい挑発に乗らずに家に帰れいやそれは俺様にはできないの会話から始まるうんかんぬんそれはそれはもう大変大変大変にドラマチックなやりとりがあったはずだしなんなら彼ら彼女らの眼前に飛び出しながらかっこいいセリフも言おうとしていたのだが、全部吹っ飛んだ。

「えっ、でっか」
 それほどまでに、大きかった。
 ぷるん、揺れるライムグリーン。その向こうの銀河。

 大きいことはいいことだという派閥も世の中にあるくらいだし自身も体格や身長その他諸々の大きいことは困ることこそあれど悪いことだとは一切思わないダンドであるがそれにしたって脅威の大きさだった。どんな絵師だってここまで盛りはしないだろう。無論体格の話である。

「でしょーーーーーー!?」
 エルが薄い胸を張る姿は微笑ましい。|女性《ミューズ》の尊さは大きさ程度では揺らがないのだ。

「デフィーはね、きょうだいたちのなかでもいっちばんでっかいんだよ!」我がことのようにエルが片手を振り振り自慢する。
「いっぱい泳いでたから〜〜」その手に腹をぺちぺち叩かれるデフィーがのんびりと添える様子は、おさない姉と弟のようで微笑ましい。まあその頭すげえでかいんだけど。

「ふふーん!」胸を逸らしてエルが鼻息を思いっきり吹き出す。「そうでしょうそうでしょう、デフィーはスーパーでミラクルでハイパーな宇宙ミジンコなんだから」大変にご満悦の様子である。
 
「デフィー褒めてくれたから、最初の一言はまずちゃんと聞いてあげる!」「エル、きいてあげないつもりだったの?」
「ンンッ」わざとらしいせきばらいののち、はいっ!とエアマイクを握っているだろうエルの手が差し伸べられる。
「どぞっ!」

「…――」
 あったのだ。
 エルの主張を聞いたダンドの胸には確かに駆け抜けたものがあった。
 いとけないながらに真摯な主張には応えてやらねばと思ったことがあった。
 ダンドはそう器用な男ではないが、それでもそれなりに、伝えねばと思ったことがあり、それを抱えて己も顧みず宇宙に飛び出した。
「えんりょせず、どぞどぞ〜〜」
 少しだけ唇を開いたまま沈黙するダンドを、デフィーが優しく促す。
 ダンドは少しだけ目を伏せ、デフィーの腹から先までを探し、また彼らに視線を戻す。

「ミューズ・エル。デフィー…」
 決意があった。
 伝えねばならないことが。
「なになに!」「な〜〜に〜〜〜?」
 彼らの耳は傾けられていた。今なら、届く。

 ――……。

「すまない」
 決意が、あったのだ。
 伝えねばならないことが。


「言おうとした事、ど忘れした」

 なんだっけ????

「ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!?!?!?!?」
 エルがぶち切れた。
「そんなに!!そんっっっっっなに貯めてッ!!!こんなに待ったのに!!!でてくるのがそれえーーーーーー!!!?」
 エアマイクを握りつぶした拳ともう一方の拳がダンドの頭を叩く。「おわっ!!」ダンドは腕をあげてなんとか頭部を守ろうとする。「バカ!」てち!軽い音が立つだけだ。エルはどうもやけくそらしくダンドを殴る力は強いようで弱い。「違うの待って!」「バカバカ!!」「待ってくれ!ミューズ・エル、待って!違う!ちがうんだって!あるんだ!想いはあるんだ!言葉もあったの!待って!お願い!!!」「バカバカバカバカバカ!!!」「デフィーがあんまりにもおっきくて!!」「バカバカバカバカ!!」「言葉がとんでっちゃったんだって!!」「バーーーーーーーーカキコンシャサイタイシャーーーーーーー!!!!」ついでに罵倒の言葉も弱い。「既婚者と妻帯者は罵倒じゃないよ!?!?」

「ッ待って!」
 ダンドは頭の上で降参していた腕をエルに突き出す。「なんじゃい!!」これは口調崩壊の兆しすらあるエル。「ちょっと、話し合いも大事だと思うんだけど」「もう決裂じゃい!」エルの素足キックが胴に入る。てし!やはり痛くない。「ほんとにごめんって」

「俺様、やってみたい事あるからやっていい?」

「ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???????」エルがあからさまに眉を顰める。「やりたいことぉ〜〜〜〜〜〜????」少女とそう変わらない人工妖精は宙を自由に舞えるが故になんの警戒もなくダンドの目の前に皺をくちゃくちゃに寄せた顔を近づける。

「デフィー、すごく強い?」ダンドはそっと尋ねてみる。「すごく強いよ!」エルの顔が輝く。
「お腹とかも、すごく硬い?」「宇宙漏れしたことないよ〜〜」今度はデフィーが答える。

「ちょ〜〜〜〜っと。その」
 ダンドはちらりとデフィーに目をやる。確実に視線が合った。
「俺様、デフィーがすご〜〜〜〜〜くすごいって聞いて来てて」
 エルの顔が露骨に明るくなる。「試してみたいっていうか」
「デフィーのことを傷つけてしまうかもしれないし、それでどうなるか分かんないし、ミューズ・エルには身を守ってほしいことなんだけども……」
 少しばかり後ろめたさがダンドにはあり、口調がもそもそしてしまう。
「い〜〜〜よ〜〜〜〜〜」
 めちゃめちゃノリよくOKが出た。「え?良い?」何をするかも伝えきっていないうちの許可にダンドは目を瞬く。
「エルは傷つけないんでしょ〜〜?」
 ……真っ先に友達を思う言葉に、ダンドはまなじりを下げる。「勿論、誓って」
「ミューズ・エルは?」「デフィーがいいっていうんなら、いーよ」
 まだ言葉尻につんけんした様子があるが、こちらもさっくりと頷く。「デフィーがすごくすごいって、体験したらいいんだから!」

「うん、じゃあやるね?」
 気が変わらぬうちに、とダンドはいそいそ槍を手に取る。「あーい」ゆるい返事に手を振るデフィー。
 深呼吸。それから後ろめたさに比例する、少しの高揚。「方向、ヨシ」デフィーを指差し確認することで何かのフラグを立っていることには気づかず、ダンドの唇からはへへ、とか小さく少年じみた笑いが漏れてしまう。

 多少なりとも武を身につけるものならば――己の力量の限界を測ってみたくなるというのは道理である。

 構えるは必殺の一槍。
 其は巨大なる脅威を穿つための|閃光《ひかり》。
 故に。
 
「穿ち」

 天杭。
 |相手の大きさ《・・・・・・》に|比例する《・・・・》一撃となる。
 
「貫くッ!!!」

 極光――それは確かに、星一つを消しとばすことのできる一撃だった。

「んのわッ!!!!!」
 あまりの反動にダンドの体が後方へ軽く吹き飛び「げっ」浮遊していた岩にぶち当たり「んぼぎゃ!!!」余波で吹き飛んだエルが思いっきりダンドの腹部にクリーンヒット。「ぼぶへ!?」腹から肺まで全ての空気が搾り出されたが、それでもちいさな人工妖精の身体をしっかり抱えて余波に耐える。体に当たったからそこに彼女がいるとわかるのに、彼女の姿すらみえない。

 眩いどころか火球の中に顔を突っ込まれたような光と熱、轟音と爆風。

「ッデフィーーーーーーーーーッッッ!!!!」
 エルの大絶叫。
「えっデフィー無事!?これ無事!?」
 ダンドも思わず目をこらす「こっちのセリフだバカバカバカバカーーーーー!!デフィーがひとりでしんじゃったらどうするのばかばかばかーーーーー!!!!!」ちいさな身体がダンドの腕の中で暴れだす「ごめん!ごめんって!!!だって今回シリアスじゃないからこんなシリアス描写されると思ってなくて!!」「攻撃は雑にカッコよく山盛りしたいMSなめんなーーーーー!!」

 やがて光が消えて晴れ。
 耳の中にはまだ爆音が焼けつくような余韻で響き渡っているなかで

「びっくりしたぁ〜〜〜……」
 たゆん、と揺れる、ライム・グリーン。

「エル、ぶじ〜〜〜??」「ッでふぃーーーーーーー!!!!」
 エルががらがら喉でダンドの腕から抜けてデフィーの頭傍へ戻る。
「でふぃーーーーー!!でふぃーごめんね!!!キコンシャサイタイシャがごめんね!キコンシャサイタイシャがごめんね!!」
「すまん!ほんとうにごめんな!?」
 ダンドもまた慌ててその後を追う。「宇宙無事!?」エルのトンチンカンな罵倒にツッコむ余裕は流石にない。
「ぶじ〜〜〜〜」
 デフィーがかわりなくゆるい返事で答える。「ほんとごめんな!?」「い〜〜〜よ〜〜〜〜」 

「デフィー、このサイコンシャゆるさないほうがいいよ!!!」
 エルがデフィーの頭に頭を埋めながら噛みつきかねない勢いで吠える。「初婚です」ダンドはとりあえず絶対に間違えてはいけないところだけ訂正を入れた。キコンシャサイコンシャが混ざったのだろうがこれだけは訂正しておかないとまずい。相手はおさない子供にして宇宙を旅ゆくものである。ユニバース濡れ衣は流石に困る。「このショコンシャ許さないほうがいいよ!!!」よかった、訂正された。
「あー…」
 ダンドは頬をかく。
「ミューズ・エル」「やるかココンシャ!」「しない、しない」両手をあげて無抵抗を示す。

「友達が、さ――ずっと独りで、誰にも褒められずに何かをしなきゃいけないって、辛いよな」
 大きさばかりに囚われて、一時見えなくなった言葉が安心したことできちんと戻ってきた。

「辛いよ!」エルが顔をあげてダンドを睨む。「破星砲もすごくつらい!!」こぼれていないだけのたっぷりとした潤みの涙目がダンドの胸に刺さる。「ほんとにごめんな」
「でも、だからこそ、さ」
 ちいさな石がダンドの傍らをゆったりと通り過ぎていく。
 あれもまた、どこからかきて、どこからかへゆくひとかけら。

「デフィーがやらなきゃいけない事を、ミューズ・エルが、ここでいいよって
 ――中途半端にしちゃダメだ」

 ダンドが両手をあげたまま手を軽く揺らすと、左手の指輪は星々のかがやきを受けて信号みたいに細かくまたたく。

「そうやって一緒に、泣いて、悔しがって、笑って」

 無限をゆくひとりぽっちが、歩くともがらに出会えたなんて。
 それがどれほどの喜びか、ダンドだって知っている。
 ……ダンドのそれはともがらと呼ぶには深すぎる相手だけれど。

「折角手を取って踊る事にしたのに
 ――曲の途中で手を離して“はい終わり”なんて、酷いだろ?」
 
 俺様だったら足先踏まれてビンタされちゃうかもしれない、なんて添えておく。
 いや足りないな、鳩尾に蹴りかもしれない。そんなことを思い浮かべる。そもそも踊ってくれるのかどうかは傍に置いておくとして。

 エルは返事をせず、唇を絡まった糸屑のように結んだまま、デフィーに視線をやる。
 デフィーは宇宙ミジンコ独特の大きな瞳で、くるんとエルと視線を重ねて、やっぱり、何も言わない。
 ……もしかしたら。
 離れたくないからいうことを聞いてしまったのかもしれない、なんていうのは、邪推か。

「それに――ほら!」
 ダンドはポケットから一つの袋を出す。
「今季の宇宙ミジンコストラップでーーす!」
 あのどたばた騒ぎの中なんとか間に合って購入できた一品である。
「わぉ」デフィーが少しだけ弾んだ声をだす。
「今季ってことは、これはデフィー?」
「そう」指に引っ掛けるようにして掲げてやる。「今年は大人気でいっぱい売れたんだって」「テンバイヤーが出たんだよね」「デフィーそんなこと知ってんの!?」「見えたよぉ」
「エルもみる…」ダンドとデフィーが喋る間に、一陣の風がさらってく。「どうぞ」
 無重力で気ままに揺れるちいさなおもちゃ。
 宇宙のもう少し彼方からみたら、デフィーだってこれくらいなのかもしれない。

「少なくともここで新たな宇宙を生み出したら――こんなに愛されているデフィーが、悪になってしまう」

 な、とダンドは首を傾げる。
「だから、ココンシャさんはデフィーたちに最後までたびを続けてほしいんだね」
 唇をとんがらせてまだ何か言いたそうなエルをよそに、デフィーがそう尋ねる。
「ああ、頼む」
 それから、少しだけ首を傾げて、俯いたエルに少しでも視線を合わせようと試みてみる。
「ほんとに、ごめんな」
 
 わずかに、間があって。

「じゃあ――あれもデフィーのせいだけど、だいじょうぶかなあ」
 デフィーがなにやら、ぽそりとこぼした。

「あれ?」「うえの、あれ」
 ダンドは言われて、彼らでいうところの上を仰ぐ。

「ん????????」
 ごりっと。
 巨大な空間が結構良い感じに突き抜けて広がっていた。
 ダンドの周りを横切ったような隕石たちの一切ない、空間が。
「でっっか」
「うん、でっかいねえ」
 うすーく汗がダンドの背を伝う。
「デフィー……ええと、あれは…」
「ココンシャさんのビームをね、あっちに弾いたの」
「わあ……」「いちお、たぶん、ひともふねも星もないほうだったよ〜〜」「…あの、その…」ダンドはおそるおそる訊く。知らないほうがいいことは世の中たくさんあるが聞いてしまう。怖いから。「こまかくは?」「したよぉ〜〜〜」

「ココンシャさんッ!」
 エルが赤い目元のまま腰に手を当てて叫んだ。
 
 ――……。

 深呼吸。

「うん、ほんとごめん」
 
 きちんと頭を下げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
あー…|頑張ってるんだからもっと近くで見て褒めて《周りの迷惑なんて知らないもん》、ってことねぇ。確かにこれは子供の癇癪だわぁ。
…数値は文字通り天文学的だけど。

とりあえず、オハナシできるだけの体制整えないとねぇ。
|エオロー《結界》と風天印で雲を弾く風の結界を展開、さらに●轢殺・揺走を起動してテイクオフ。マルガリータ、デフィー君…ちゃん?のほうはよろしくねぇ?

…実のとこ、エルちゃんの言うこともわからないではないのよねぇ。
ただ…多分宇宙ミジンコが「ちょっと珍しい名物」で済んでるのは独りだから――もっと言えば「他人事だから」なのよねぇ。
けれどもしも何らかの被害が出る、なんて|事件が起き《前例ができ》てしまったら。宇宙ミジンコは寿がれるものではなく「どうか近くに来てくれるな」と敬遠されるものに成り下がってしまうわぁ。誰だって爆弾を近くに置きたくはないもの。それはあなたも本意ではないでしょぉ?

…あなたがよければ。一緒に果てまでついて行って、あたしたちの分までおもいっきり褒めてあげてくれないかしらぁ?



●星は囁く
 
「さって、と」
 柔らかいライム・グリーンの輝きに、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は目を細めた。
「――間に合ったみたいねぇ」
「ほわぁ」
 彼女が騎乗するバイク――ミッドナイトレースに備え付けられた通信機からふわふわとした声がでる。「宇宙空間、はじめてですぅ〜〜」ミッドナイトレースに備え付けられた様々なデータ計機の中にインストールされた補助AI、マルガリータの声である。「あっ、みんなぁ、ひさしぶり〜〜〜〜」どうやら参加している猟兵の中に|同型AI《親類》がいるらしくほのぼの声をあげるのを「はぁい、おしゃべりは後でにしてちょうだいねぇ」ティオレンシアは軽く諌める「はぁ〜〜い〜〜」伸びやかな返事。
 
 ともすると、なにやら目的のあるパーティにでも訪れた姉妹の会話のようであるが。
 広がるのは果ても見えない星空の中――宇宙空間。
 ライム・グリーンのかがやきは宇宙ミジンコ。
 そして
「あらてさんっ、み〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜つけたっ!!」
 飛んでくる小隕石――風を起こす、オブリビオン!
 
「あらぁ」ティオレンシアはバイクのハンドルを捻りエンジンを噴かす。マフラーから噴き上がる熱。「みつかっちゃった」伸びやかな返事で持ってウィリー。
 けしかけられた岩をタイヤで蹴り付けるようにして前進、跳躍。
 デフィーの元に直行とはいかず、間にエルを挟むことになる。

「わぁ、曲芸おねえさんだ〜〜〜」
 のんびりと宇宙ミジンコ、デフィーが楽しそうに言う。今にも拍手しそうだ。「すごぉ〜〜〜い」ティオレンシアは「ありがとぉ〜〜」一時的に飛び上がったために彼らを眼下に捉え片手をハンドルから離して軽く振る。

「そ〜〜〜〜〜んな甘いことそーゆー顔で近づいて!デフィーのひとりぼっち解消作戦を台無しにしようなんてそーーは行かないよ!」
 エルが鼻息荒く片手を振り、周囲にあった隕石たちをうずまく風で自らの前に寄せる。
「顔も声も生まれつきよぉ」デフィーに向かって振った手を頬に当ててティオレンシアは言っておく。「ますたぁの素敵なにこにこおめめは糸目なんですよお〜〜」フォローなのかなんだかわからない一言をマルガリータが添える。
「あー…」
 頬に手をあてたまま、ティオレンシアは体重をバイクの前半に掛ける。――バイクの前輪部が彼らに向く、前傾姿勢。
 そうすると緑の宇宙ミジンコの前に漂う緑の妖精がよく見えた。
「あの子が件のエルちゃんねぇ」
 ティオレンシアは小さい声でぼやく。「そですね、一致しますぅ〜」マルガリータが補足する。「あっちが宇宙ミジンコのデフィー」

 なるほどねえ。
 納得を呟く頃にはエルは丁度隕石たちを球状にまとめ終わっていて、鋭い目線でティオレンシアを睨みつけ、浮かびあげる。

「|頑張ってるんだからもっと近くで見て褒めて《周りの迷惑なんて知らないもん》……ってことねぇ」
 ティオレンシアが現状を彼女なりにしっかりと把握するのと。
 
「いっくよぉーーーーーー!!」
 エルが隕石ボールシュートを放つのは同時だった。

「確かにこれは子供の癇癪だわぁ」
 |開けていた《・・・・・》 片手にて印を結ぶ。
 アルジスなり正位置にて大いなるヘラジカの角。|守護なるエオロー《EOLO》 。
 瞬時に結界を張り、素早くハンドルを捻る。
「…数値は文字通り天文学的だけど」
 ユーベルコード。
「よろしく、マルガリータ」「はぁい、ますたぁ」
 計器に細かく表示が浮かび上がり、モードが切り替わる。探索・操作性特化モード。

 |轢殺・揺走《ガンパレード・フリッカー》 。

「とりあえず、オハナシできるだけの体制を整えるわよぉ」
「いぇす、ますたぁ」
 ――加速!
  
 眼前に迫った隕石の塊にそのままタイヤをかけて疾走する。風によって寄せ集められただけの塊は、タイヤを掛けられるだけで弾けるように四方へ飛び散る。目くらましにして散弾。
「それじゃあ、ご要望にお応えしてサービスよぉ」
 弾き出されたルートを繋ぐ。
 前輪と後輪を異なる隕石に掛けウィップ。身を捻り素早くバイクを横倒しにするように前輪を違う隕石に引っ掛けて弾く。上下から廃材による挟み撃にはバイクのステップから片足を離し、バイクの二輪を上に、自身ハンドルバイクそのものと自身の足による蹴りで引き離す――アップ・ナック――

「わぁ〜〜お〜〜〜」デフィーがのんびりした歓声を上げる。

 ――からの、ナイン・オ・クロック。
 両足を離しティオレンシアからすればデフィーのいる九時の方向へ、ミッドナイトレースを向かわせる!
 本来ならバイクに戻るまでがナインオクロックであるが、今回は特別。

 |戻らない《・・・・》。

「じゃあマルガリータ、デフィー君…ちゃん?の方はよろしくねぇ?」
「おまかせくださぁい」
 エルの顔色が変わる。
 ティオレンシアの目的にようやく気づいた、といったところのようだった。
「デフィー!」
 エルがデフィーへ身を翻す――その間にティオレンシアは降り立つ。
「はぁい、ちょっと待ってね」
 ミッドナイトレースはデフィーに。
 ティオレンシアはエルに。
 それぞれ分断をかける!

 “お応えしてサービス”という発言が――|これ《・・》が目的のハッタリである。
「こんの――」エルが素早く自身の周りに風を巻き起こそうとして
「はぁい、ストップ、ストップ」
 ティオレンシアは両手を挙げる。「あなたをグーで叩こうってきた訳じゃないの」

「……実のとこ、エルちゃんの言うこともわからないではないのよぉ」
 きゅっとエルの眉間に皺がよる。
「……ほんとにぃ?」疑い深そうなくせに素直な問いかえしに、ティオレンシアの口元は自然と緩んでしまう。「ほんと、ほんとよぉ」
 それから少しだけ肩ごしに振り返り、デフィーの目もとに無事着地しているミッドナイトレースを、その内側のちいさなマルガリータを見やる。
「頑張ったら褒めてあげてほしい、って言う気持ちは、すごぉく良くわかるものぉ」
「でしょ!?」エルが振りあげかけた手を下ろす。表情があからさまに明るくなった。

「そうなの、デフィーはすごくてでっかくて、偉くて、やさしくて、すご〜〜〜く、すご〜〜〜〜〜く良い子なんだよ!」

「そぉよねえ、わかるわぁ」
 そこからつらつらとあふれるデフィー自慢を聞き、頷きながらティオレンシアは切り出す。
「ただねぇ、宇宙ミジンコがこうしてコロニーの近くに普通に寄っても『ちょっと珍しい生き物』で住んでるのはねぇ」
 たぶんだけど、と前置きをする。
 
  ……撃とうと思えば撃てるし、必殺の一撃を叩き込もうと思えば叩き込めた。
 この場をただ収めるなら――この時点でティオレンシアには様々なことができた。

「“独りだから”」
 きゅっ、とエルの眉間に皺が寄った。

 ――だが、ティオレンシアはそうしない。
 
「もっと言えば『他人事だから』なのよねぇ」
 エルの怒りが爆発する前に、ティオレンシアは素早く怒りが固まらないように逸らす。
 バーのマスターとして培った技術でもあり、怒りに鋭い彼女だからこそのさりげない技である。
「ひとごとじゃないのに、みんなのデフィーなのに…」
 それでも散り切らない怒りを、ぼそぼそと呟きながらエルは膝を抱える。
 エルがやさしい子供であることも――彼女の静かだけれども激しい怒りも、ティオレンシアはよく理解していた。
「そうよねぇ」
 彼女は頷いて「けれどねぇ」エルとおなじように近くの隕石に腰掛けてみる。
 相手と同じような姿勢をとるのは、微かだが心理的な親みを抱かせるのだ。
 そうして少しずつ、少しずつ寄り添うようにして。

「もしも何らかの被害が出る、なんて|事件が起き《前例ができ》てしまったら」

 派手な一手ではなく、地道な言葉をつむぐ。

「宇宙ミジンコは寿がれるものではなく『どうか近くに来てくれるな』
 ――と、敬遠されるものに成り下がってしまうわぁ」

 デフィーとマルガリータは結構な盛り上がりを見せているようだった。
 インカムで伝わる会話の断片は、どうもお互いお互いの友人、保護者自慢をしているらしく、無邪気な明るさがそこにある。
「誰だって爆弾を近くに置きたくはないもの」
 エルは、確かにオブリビオンかもしれない。
 しかし、それ以前に。
 
「でも――それはあなたも本意ではないでしょぉ?」

 友達想いのこどもであるようにしか、ティオレンシアには思えなかった。
 
 無言のまま、こくり、と首が縦に振られる。

「よかったわぁ」
 これは間違いのない本心だ。
 無邪気で愛おしい友情からなるものを――どうしても災害させたくはなかった。

「ね、エル」
 ティオレンシアは近寄って、エルの顔を覗き込む。

「…あなたが良ければ」エルの視線がしぶしぶ上り、ティオレンシアと目が合う。「あなたが良ければ、よぉ?」

「…あなたがよければ、一緒に果てまでついて行って、
 ――あたしたちの分までおもいっきり褒めてあげてくれないかしらぁ?」

 ちいさなこえだけれど。
 たしかにその妖精は、もちろん、と答えた。

「エルは、デフィーのともだちだから、ちゃんと、ちゃんと褒めてあげるもん」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)と合流

宇宙ミジンコ、デフィーからの攻撃はフォルのビームシールドで逸し防御
ヴィッキーと協力して防護を頼む、周囲への被害も極力抑えてくれ
難しいのは分かっているが彼らなら出来ると信頼して

攻撃は一切しない
エルを目の前で倒せばデフィーが動揺するかもしれない
この巨体が平常心を失えばどんな影響が起こるか分からないからな
だからこれは同情では…まぁ、良い
オブリビオンと宇宙ミジンコを相手に不利ではあるが、代わりにユーベルコードの効果で身体能力を強化

同意した上に翼を得たヴァシリッサに驚きつつ、助けを借りて空へ
身体能力が向上している今なら飛行時の負担も軽減できるだろう

エルの元へ着いたら視線を合わせて対話を試みる
…我儘を言う少女の姿に、少しだけ死別した妹を重ねて

今爆発すればデフィーは褒められるどころか大悪党だ
本当に友人を想うなら彼を悪者にしてはいけない
彼が去っても、その使命と素晴らしさは俺達が覚えていると約束する

悪さをしないならとヴァシリッサに同調
ああ、祭りもまだ始まったばかりだからな


ヴァシリッサ・フロレスク
シキ(f09107)とrendez-vous♪

ま?
“|創造するにゃ先ずはブッ壊す《Scrap&Build》”ッてのは割と同意だけどサ?

『何言っちゃってんの?さっきのでネジ全部ブッ飛んだワケ?』

と軽率に同調し、相手のUCに乗っかり翼を得る

Shall We Dance♪
シキの手を取りエルの元へ

|Jelly Beans《でふぃ》は任せたヨ
Sweetie♪
フォルちゃんとも仲良くネ♪

低重力適応能力を改修したTALBOSⅡをヴィッキーに預ければリミッター解除
ビームも見切り華麗に回避
隕石も弾幕で迎撃

|Tally-Ho《捕まえた》♪

エルへ辿り着ければ
風に乗った儘UC発動
火勢を増し
宛ら|浄火の旋風《Fire Storm》
只その焔が灼くのは敵意のみ

なァ
ド派手なのはアタシも嫌いじゃ無いケド
オトモダチと
もうアソべなくなッちまうだろ?
あ、増えるンだッけ?
ま、良いサ♪

だッて
アタシ|たち《・・》は
貴女達ともッとアソビたいし♪
な?シキ♪

叶うならば
|後夜祭《Welcome Party》も一緒に

まだ空気も残ッてンだろーし♪



●シャル・ウィ・ダンスの片手

「マ」
 ヴァシリッサ・フロレスク(|浄火の血胤(自称)《エンプレス・オブ・エンバー》・f09894)とっても素敵な爆弾でもあり卵でもあるゼリー・ビーンズ。

「“|創造するにゃ先ずはブッ壊す《Scrap&Build》”ッてのは割と同意だけどサ?」
 子供の夢でも溜め込んだような形。

『何言っちゃってんの?』
 苛立った声がヴァシリッサの駆る|TALBOSⅡ《ヴィッキー》から上がる。
『さっきのでネジ全部ブッ飛んだワケ?』「あんなの準備運動ダ・ロ?」『言っとくけどあたしテロリスト騒ぎほんとに許してないから』「oh…」ヴァシリッサはわざとらしく哀切たっぷりに眉尻を下げる。「My Sweet……」『哀れっぽく声出してもダメ』

「今回はヴィッキーに賛同する」
 隣をレラで並走しながらシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は静かにタルボシュの中からのAIの意見を肯定する。
「ンなッ!」ヴァシリッサは思わず隣を見やる。「シ」
「すっごくかっこ良かったとおもうよ!ぼくは!」
 ヴァシリッサが口に出しかけたシキの名を遮ってはしゃぎ声を上げたのはシキたちの周りを浮遊するは対人随伴型自編律ビーム兵器、フォルモンドである。「ばしー!どしゅー!がりがりがりぎゃりぎゃりぎゃりどるーーーんってさ!!もうサイッコーーーーー!!」星々を反射する銀色はいいつもより激しく回転していた。「サイリウム振りたい気持ちってきっとああ言う感じだね!」「フォル〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」ヴァシリッサが感極まった声を上げる。
『……あんたは若干外野だからそう言えんのよ』引くヴィッキーの呟きとさてこれは後でどうフォローを入れて何を教えるべきかの思案に沈黙するシキ。

「そンなに言うんだッたら、アンタはちゃァンと魅せてくれるんだロ?」
 ヴァシリッサがニタリとした笑みを浮かべながらハンドルから片手を離してシキに向かって突きつけ
「Shall We Dance♪Darling♡」
 そのまま手を開く。
「――」
 シキはすこしばかり躊躇ったあと、ハンドルから片手を離す。
「善処しよう」
 ヴァシリッサの手を下から取るように受けて、自らのバイクの後ろへと招く。
「ンッフフ」
 ヴァシリッサの浮かべた少女のような笑顔を、シキは見れていたかどうか。

「ヒューーーーーーーーー!!!」隕石が飛んできた。こっちはエル。
「カップルだカップルだ〜〜〜〜〜〜」ビームも飛んできた。こっちはデフィーである。

「カップルテロリストだーーーーー!!!!」

「ぶ゛ッ」シキがむせた。ちがうと反射的に出かけたが飲み込む。違うか違わないかで言えばちがわない。わりと何も。シキもヴァシリッサもそういう仲ではある。テロリストかテロリストでないかも、理由があるとはいえどそうである。今囃し立てられることじゃないという主張は胸に燻っているが返す言葉が出てこない。真面目な男である。ハンドルをすばやくひねって車体を傾げ「ッと」ヴァシリッサが飛び乗るようにシキのバイクへうつる。

「そうだそうだーーー!!!」
 フォルモンドが答えながらビームシールドを張りなんとかビームの一端を弾く。「見て驚け聞いて驚けカップルテロリストだぞーーーーー!!!」「フォル」「どうだどうだ初めてみるかーーぼくは初めて見るよ!!!」「フォル!」普段ならチョップを入れているシキであるが、慣れない無重力域の走行で同乗者のいる今だけは絶対にハンドルから手を離せない。どこまでも真面目な男である。

「そっちがペアなのにコッチがペアじゃ不平等ッてモンだろ?」
 対するヴァシリッサは慣れたもので、飄々と笑って後部座席、シキの肩に片手を置いて立ったまま、ほんのひとかかとでハンドルを蹴ってタルボシュの操縦形態を変更する。
「|Jelly Beans《でふぃ》は任せたヨ、Sweetie♪」
 ――全権限、AIへ移行。
「フォルちゃんとも仲良くネ♪」
 ここからは、並行作戦だ。
『任せなさい』「まっかせてーー!」
 可愛らしい強気にヴァシリッサの唇からちいさな笑いが溢れる。こういうところが彼女たちは本当にきょうだいらしいと思う。
「フォル」シキはヴァシリッサの体重が完全にこちらへ移行したのを確認しすると、相棒に声をかける。
「ヴィッキーと協力して防護を頼む」「あいあい!」「周囲の被害も極力抑えてくれ」「宇宙港だもんね、オッケーー!」フォルの気軽な調子はいつも通りなので
「難しいだろうが、お前ならできると信じている」そっと、添えておく。「うひょーーーーーー!!」…効果はご覧の通りである。段々とフォルの扱いに閃きが湧きつつあった。『じゃ』「ああ」

『フォルは預かったから、マスターはよろしく、シキ』
 ヴィッキーの付け足した一言に今度はヴァシリッサが咽せた。
「任された」シキが短く頷く。「ッ、ッ、ッ〜〜〜〜〜!!」ヴァシリッサが声にならない声をあげ、言葉にならない言葉に口をぱくぱくさせながら、加速するタルボシュと銀のカードを見送る。
 星を纏った鳥のようでもあるし、小さなふたごの流れ星が流れていくようでもある。
「してやられたな」
 シキは珍しく、冗談混じりに付け足して――彼らを追いかける。

「カップルにはカップルをっていうかカップルとカップルでダブルじゃん!4人がかりじゃ〜〜〜〜ん!!!」
 エルが叫びながら強風を押しやってくる。

「……そのいじりはいい加減なんとかならないか」
 シキが思わず唸りながらハンドルを思い切り捻りエンジンの出力を上げる。
「ほほーー?嫌なの〜〜〜〜〜〜〜!?」
「い〜〜や〜〜な〜〜の〜〜〜??」のんびりとデフィーが相槌を
 エルがシキの声に反応して素早く振り返り、腕の一振り――隕石と廃材群を差し向けてくる。
「イ〜〜〜ヤ〜〜〜な〜〜の?」ヴァシリッサがエルの口調をなぞって笑う。
「……嫌ではない、が」
 前輪を持ち上げるように捻りあげ、眼前に迫っていた廃材を後輪で蹴るように乗り上げてかわす。「あまりネタにされ続けるのも良い気分ではない」
「か」っぷる、とシキは言いかけたが――なんというか、ヴィッキーやフォルたちくらいしか聞いていないとしても言いづらく「恋人」……なんとか妥協点を絞り出し「である、としてもだ」なんとか乗り越えて

「|それだけ《・・・・》では無いだろう」
 1番大切な、言うべきことを、しずかに添える。

『ちなこっちはカップルじゃないわよ』ヴィッキーの冷めた答え。「カップルなの?」フォルのすっとぼけた問い。「カップルなのぉ?」デフィーの問い。
「ちがいますぅ〜〜〜!!」これはエルの叫びだ。「カップルっていうのは恋人だけじゃなく二人組って意味もあるんですぅ〜〜〜〜〜!エルとデフィーはフレンズです〜〜〜〜〜!!!」
『へー』どうでもよさそうなヴィッキーの返答に「へえ!!」フォルの興味を抱くような明るい回答「ちなみにぼくとヴィッキーは同期同型同時派生AIだからどっちかってときょうだいだけどぶっちゃけ本気で判定すると派生違いなのでほぼ同人だからシキとヴァシリッサと合わせたらほぼ三人かも!AIジョーーーク!!」当事者にはあまり笑えないブラックジョークまでぶち込んでいる。『あんたと同人でたまるか。4人か2人と2機よ』

 ヴァシリッサの許可によりタルボシュのリミッターは外れている。
 元々爆速で進む型式の小型戦闘機が、無人飛行を許されたことで更なる自由を得ていた。
 エルの放った隕石群を機関銃で粉々に打ち砕き、放たれるビームは車体角度とフォルのシールドにより、直撃はたえられないので方向をそらすよう受け流して他の空域に投げゆく。

「それは、あの子に対しても、そうじゃ無いンじゃない?」
 ヴァシリッサは、そっと微笑んで聴きたかったことを聞いてみる。
「ん?」シキの小さな相槌。「エル・チャン」くっくと細やかに笑う。
「撃つのを避けよう、ッて打ち合わせ」
 そうとも、ここまで2人とも銃は抜いていない。
 シキにはレラに備え付けの装備を仕様するつもりもなかった。
 万が一、エルにあたればデフィーが動揺しかねない。
 あれほどのエネルギーを抱く巨体が平常心を失えばどんな影響が起こるか分からない。
 ……というのがシキの主張であるが、ヴァシリッサには少しだけ感じるものがあった。
 ともだちが目の前で傷ついたなら。
 ――……。
 もしも、もしも。
「…、違う」静かにシキは静かに答え再び遅いくる突風を下域に突っ込むことで交わす。
「フフ」頭上を暴風が駆け抜けているというのにヴァシリッサの笑い声はシキの耳によく聞こえた。「違う、同情などでは…」言い募ろうとして「ハイハイ」宥められてしまう
「…まぁ、良い」こう言う時のヴァシリッサは意味深に微笑み楽しそうにするばかりで、暖簾に腕押し――それこそ、柳に“風”といった調子なので、シキは素直に諦める。

「ふたりだけど同じひとってどうゆこと〜〜〜??」
 デフィーがのんびりとした声を上げている。「知りたい知りたい!?知りたいしりたい!?」フォルの極限まで上がったテンション。「じつはぼくとヴィッキーどころかあとふたりくらいおんなじ子が今日来てるんだよぉ!!」『えっ待ってフォルあんたもしかしてあの話しようとしてる?』
「4人なのにひとりってこと〜〜〜?」「大元を辿ればね」
「聞いてくれる!!あのねあのね、ぼくらをめぐるすご〜〜〜〜〜〜い話!!」

 得て、交わって。
 たくさんのことが変わった。
 あのオブリビオンも、そうなのだ。

「んもぉ!デフィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 エルのがらあきの背中。
 ちかちかっ、とシキとヴァシリッサの視覚で2回瞬タルボシュ2のライト。

「――It's SHOWTIME」
 ヴァシリッサが小さく口笛を吹く。
「ああ」シキは頷き、ギアを入れる。「加速するぞ」「yeah」

「|加速しよ《・・・・》 ッか」
「――ん?」

 ヴァシリッサの答えがあまりにも妙なので、シキはつい肩越しに後方を振り返った。

 ヴァシリッサの背面側に――炎による翼が吹きあがろうとしていた。

「Fly you to the MOON♪」
「――どれが月だ?」
「多分、ココだね」

 デフィーがカップル(だかなんだかよくわからないけれど仲良しのバイク)と盛りあがろうとするので――そいつは敵だ、と吠えて駆け寄ろうとしたエルは、突如炎に吹き上げられた。
「うわっぷ!」
 口から悲鳴が迸り、思わず手で口を抑える。風にとって炎とは天敵だ。何もかもを吸い上げて、炎に挙げて、焼きはらって灰にしてしまう。永遠に。

 だというのにその炎はエルを焼かず――大きく取り囲んで一度燃え盛る。
 すわもうひと組のほうか、と彼女は振り返れば、予想通りである。
 挟み撃ち、ないしは分断。胸によぎった言葉のまま攻撃するタイミングを図ろうとしたのだが

「|Tally-Ho《捕まえた》♪」

 そいつらはあろうことか、有利であるはずのバイクから降りて、エルの元に直に現れた。
 それも、丸腰で。
 2人がエルの少し前に着く頃には、炎は、嘘のように消えてしまった。

「ハイ、エル」
 ヴァシリッサは片手を上げる。「なに…?」ぐっと唇を結んだエルが警戒しながら答える。「お喋りだヨ♡」軽いウィンク。警戒は解かれないのが少々寂しくて唇をとんがらせる「ガールが集まればトークだ・ロ?」「男もいるが」シキが添えるのでヴァシリッサはからから笑っておく。
「なァ、エル?」
 警戒は解かれないけれど、エルは離れようとはしない。
「ド派手なのはアタシも嫌いじゃ無いケド、サ」武器がないのは見えているはずなので武器の警戒でもないだろう。炎は、少しはうまく焼いてくれたようだった。

「オトモダチと、もうアソべなくなッちまうだろ?」
 ぎゅう、とエルの唇がとんがる。ちいさい二つの手は指がうねったあと、ワンピースの裾を掴んで止まってしまう。「あー、増えるンだッけ?」返事は、まだ、ない。「ま、良いサ♪」
「予定より早イこと爆発しちまうのは、もったい無くナイ?」
 緑のひとみが、少しだけ揺れる。
「それに、だ」
 半歩、シキが前に出て――身を屈める。
 胸の奥が疼く。
 シキの胸のおく、死別した妹が鈍く重なる。
 スカートの端を握りしめて引っ張る癖が、彼女にもあった。

「今爆発すればデフィーは褒められるどころか大悪党だ」

 はっとエルが顔を挙げてシキを見る。目が合う。
 不満と、不服と、動揺と――それこそほしのような、情が揺れている。

「本当に友人を想うなら彼を悪者にしてはいけない」

 妹とエルは別だ。
 背も、年恰好も、顔も異なる。
 ……いや、そもそも顔は、思い浮かべようとすれば時おりおぼろに揺れる。
 だからかもしれない。
 銃をなるべく使わない理由を、それだけか、と言われれば、即答できない理由。
「――……」
 シキは少しだけ躊躇う。その先を言葉にすることを。
 これから口にすることは、避けてきたことのひとつだ。
「彼が、去っても」
 けれども紡ぐ。
「その使命と素晴らしさは俺達が覚えていると約束する」
 覚えてしまっていたことは多くあった。けれど、覚えるべきではないと思っていることもあった。
 覚えていておこうと自ら|約束するの《むすびにゆくこと》 は、避けていた。
 それを半歩、進む。
 進める。
「そのためにも、サ」
 ヴァシリッサも半歩、前にでる。
 進んだ彼の背をそっと支えるために。

 翼の代理も果たしたのは、風を吸い上げた|浄火の旋風《Fire Storm》。
 其が焼き払うのは悪意のみなれば。
 先んじて誰かさんが少しずつ晴らしていた鬱憤を、大きく取り払う。
 風は炎を嫌う。空気を奪い、灰と化すから。
 そうとも、火によって澱んだ空気が焼かれれば、そこにあった空気は無くなって。

「アタシ|たち《・・》は、貴女達ともッとアソビたいンだよね♪」
 にやりと笑い、首を傾げる。

「叶うならば――後夜祭《Welcome Party》も一緒に」

 半歩と、半歩。
 進みあっていく。
 
「な?シキ♪」
 あからさまな言い方に、シキは破顔する。
「ああ」
 
 そして背後を振り返る。
 宇宙港のその向こう。

「祭りも始まったばかりだしな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『惑星都市の夜の祭』

POW   :    賑やかな屋台で異星の食を楽しむ

SPD   :    街灯に照らされた夜市の街を行く

WIZ   :    ライトアップされた宮殿を歩く

イラスト:ももんにょ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


◯星の瞬き、いのりの光。

さてはて。
つまりはどう言うことでまとまったというかというと。

宇宙港ララ・デアは次年度より全施設の超強化がするべきだ、という意見で全てがひとまとまりになった。

……なにせ此度はララ・デアでも前例のなかったことである。

ビーム銃をはじめとした兵器の持ち込み設備の強化。
テロリストは猟兵が「たまたま」居合わせてなんとかったからよかったものの、ということで警備の強化。
テロリストと同時に隕石の警報が放たれたので設備は総点検。ついでに空調も一部凍りついているだの蓋が取れているだのでおかしな点があったためこれも点検。

……え?それだけじゃないだろうって?
……うーん……。

その他といえば。

近くの星に観光客が集中したり今回の巨大な宇宙ミジンコ観察ツアーがララ・デアの名物に増えたり今年のミジンコグッズが大人気すぎて工場が悲鳴をあげてたり出店式で異常なほどに稼ぐジャンクショップがあったことを受けて流動店舗コーナーが増えたり。

その程度である。

全ては、ララ・デア周辺域のニュースの一角をほんの数日間埋める程度の騒ぎで済んだ。
多少設備の破損はあったが、貴重な資源はもちろん、人の死の一切もなかった。
あとは宇宙港お勤めの皆さんの胃袋がちょっと痛むのと雇用が膨大に増えたことか。

つまり――この事件前と同じく、平和ということ。
数年後は話題にのぼるけれど、あったね、で済むだろう。

誰もきみたちの顔を……きみたちが何を成したのかを覚えているものは、おそらく、いない。
ララ・デア宇宙港の少し後ろ。
つまりはララ・デア惑星都市の街も、宇宙ミジンコのお祭りも、つつがなく進行している。

きみもよければ、どうだろうか?

ララ・デア惑星都市のお祭りは派手さはない。
宇宙の片田舎だもの。

ちょっと変わった宇宙ミジンコのお菓子やら、ドリンクやら、おもちゃやら。
あっちのほうではステージ。立ち並ぶのはちょっとした出店。

他の都市のお祭りと異なる、変わったことといえば、明るさくらいだろうか。
街の明かりは一切落とされている。
明かりが必要なところはカーテンがしっかりと惹かれ外には漏れないよう細工がされている。

代わりに、のほほんと光る宇宙ミジンコと、宇宙ミジンコを真似て作られたちいさな可愛らしいあかりで祭りは照らされているのだ。

淡いライム・グリーンは、水中のような、森の中のような、不思議な気持ちを味わえるだろう。


今年の宇宙ミジンコが大きいのは前々から騒がれて人気だったが、
どうもそれだけではないと言われだした。
陽気な性格らしく、目が合うと手を振ってくる。

なぜか、時折声が聞こえる。
――宇宙を渡る風でもあるかのように、さわやかに。

◯MSからのお知らせ

断章公開後、受付中です。かけるものからさくさくまいります。
2章に比べ、さくっと軽めです。どうぞお気軽にどうぞ。
◯ちいさな補足

宇宙ミジンコ、デフィーはこのままきちんとお使いを、この旅を最後まで続けることにしたそうです。
もちろん、小さなみどりの友達、エルと一緒に。
旅立ちはもう少し先です。
宇宙港のそばは呼吸可能な宙域が少しの間そのまま残っているそうです。

あなた方が訪れるなら、それぞれ、それなりに歓迎をしてくれるでしょう。

また、お祭りに参加しつつ話しかけることも可能です。ミジンコデッカイ!!
カイム・クローバー
――で?ドラゴンがどうしたって?
一章で昼食を取ったオープンテラス。|ガラス剣士《ダチ》を誘って、珈琲を片手に他愛ない談笑。
ぼっちゃん、一緒に遊びましょう?ってか?それとも家が恋しいと泣いてドラゴンを困らせたか?
にやにや笑いながら。

仕事は…ああ、“恙無く”終わった。
トラブルだらけの珍道中。オマケに癇癪起こしたチビっ子とのんきな|お姫様《宇宙ミジンコ》の|子守り《ベビーシッター》まで兼ねてる。
初めてだぜ。一回もマトモに得物を振るわない、なんてのはよ。
皮肉たっぷりに。ま、偶にはこういうのも悪く――。
言いかけたその時、風に混じって声が聞こえた。きゃっきゃとはしゃぐ声。
テンションが異様に高い。耳元で騒がれているかのような声に、思わず顰め面を晒してしまう。
どうやら、片端から猟兵に挨拶代わり風を飛ばしているとのこと。
何かを言い返す隙も与えず、一方的に話し掛けて別れの挨拶だけかまして行った二人に軽く嘆息して。

――前言撤回だ。やっぱ俺は|コッチ《銃と剣》を使う方が楽でいい。
なんて。笑いながら肩を竦めて。



⬜︎新しい色の星

「――で?ドラゴンがどうしたって?」
「ンブボバブーーーッッッッッ」
 口と鼻から吹き出すライム・グリーンは滝の如し。

 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は素早く体を敷いて飛沫を躱わす。もちろんコーヒーの入ったカップと一緒に。「おっと」
「エッ、エッブオェッ、ゲッボ、ブッ」「大丈夫か?」噴火が収まった頃にカップを置き、そっと紙ナプキンを差し出してやる。なんか向かいから人間の出す音にしてはかなり大変な音が出ている。「ッエ…ッェエ…」「涙拭けよ」

「ェッ、ェォ…ッ、いまその話題出すゥ……!?」
 そのまま仮装にお出ししても恥ずかしくないハロウィンカラーの泣き顔をさらしながらカイムの向かいで返事をするのはイージー・ブロークンハート。この事件を予知した猟兵である。
「出すね」
 |ガラス剣士《ダチ》 が泣き顔の酷さの割には元気そうなのでカイムはにたりと笑いながら足を組む。「肝心の部分を聞きそびれた」「エェ……」お向かいからの視線はコーヒーを飲むことで無視。

 ララ・デア宇宙港、オープンテラス。
 掲示板には『本日の便、全て欠航』。あれだけの騒ぎがあったものの、テラスは処理と呼び出しを待つ人で数時間前よりも混雑していた。

「それで続きは?」「チュジュキィ……?」半角カタカナみたいなカタコトで激しく目を逸らすガラス剣士。カイムのコーヒーに対しこの男、期間限定宇宙ミジンコセットでテーブルの半分以上を占領している。ちな先ほど吹き出したのは宇宙ミジンコドリンク。ライムグリーンの中に宇宙をイメージしたという食用ラメがたっぷりと入っている。そんなわけで顔下半分を偏光ラメでものすごいきらきらしていた。拭いただけではなかなか取れないものらしい。

「カイムノ話ナンダカラオレノ話ハ必要ナクナイ…?ヨクナイ…?」
「俺の話もするんだからあんたの話もするのは当然だろ?」そら、と組んだ方のつま先を軽く揺らして硝子剣士の足をつつく。
「ぼっちゃん一緒に遊びましょう、ってか?」
 テーブルに頬杖をつく。
「それともお家が恋しいと泣いてドラゴンを困らせたか?」
 にやにや笑いながら促す。ううう、と唸るイージー。
 ……カイムは別にイージーのお使い話を必死に聞きたいわけでもなければ本当に必要な話でもない。こうして遊ぶのがちょっと面白いだけである。

「ドラゴン出てきてコンニチハ」観念したのか話しだすイージー。「そこまでは聞いた」
「それが子ドラゴンで」「……ああ」雲行きが怪しい。予想と違う方向に逸れてきた。いや、まだそうでもないだろうか?

「その後ろから盗賊団が、|子ドラゴンだ《ぼっちゃん》|なんとしてでも売っぱらうぞ《一緒に遊びましょう》」
「いやそれどうオチをつけるんだ」

 カイムは思わず頬杖を解く。流れが変わってきたどころではない。
 てっきりお使いとドラゴンで二章立てかと盗賊団も加わった三章立てのシナリオだった。
「大変…でしたね…」遠い目のイージー。「ほら盗賊団さんから見たら、逃げるドラゴンの先にオレがいるじゃん…?」ほぼ空になったジュースのストローを咥えてすすり、行儀の悪い音を立てる。ズズコッ。「まあ、そうなるな」

「盗賊団の皆さんからしたら、どうもオレに向かってドラゴンが逃げたと思ったらしいんだよね…?」
 そっ…と宇宙ミジンコバーガーを手に取るイージー。
「泣きわめくオレを餌にドラゴン捕まえらんないかってしたわけ」ライムグリーンの鮮やかなパンズに宇宙を模したハンバーグが挟まっているのへ噛みつく。「ひどくない…?子ドラゴンと子供が友達って、すごいファンタジーじゃない…?」「アックスアンドウィザードの格好で言われてもな」

「もーオレ泣きっぱ。帰してーって」
「あんたがお家が恋しいって泣くのかよ」
 そんなところで童謡全文をコンプしないでほしい。

「結局ドラゴンは逃げたし、オレ隣町の近くで餌にされてがあがあ泣いてたから、
 街の人が気づいて助けにきてくれて」
 打って変わって明るい表情でハンバーガーの二口目にかぶりつくイージー。
「お前はしばらく街跨ぐお使いすんな、ってオレはお使いを頼まれなくなって、
 バチボコ怒られてめっちゃ尻叩かれたけど、プラマイでプラス!ラッキー、って感じ!」
「曲芸師みたいなぼた餅の拾い方だな」
 カイムは苦笑とともにコーヒーを啜る。
 子供の頃の穏やかなお使いなど、カイムにはあまり経験のない分野の話だ。
 のどかな風景が少々微笑ましくもあり――いやイージーのはあまり羨ましくないかもしれない。
「まーまーまー!オレの話は置いといて!」
 カイムの心中を知ってか知らずか、イージーは朗らかにデザートを片手に取る。
 宇宙みじんこパイである。中はベリージャムだそうである。

「そちらさんは|仕事《おつかい》、無事完了でしょ?」
 イージーがおつかれさまでーす!とカイムへ宇宙ミジンコパイを差し出してくる。
 ――……。
「あー…」
 カイムはなんとなし、パイを見つめる。
 任務完了。それはそうである。宇宙ミジンコの暴発を防ぐ。
 その通り。
 しかしなんとはなし即答できず――とりあえず片手を立ててパイを辞退。

 なんとはなしにイージーから視線を外し、窓の向こうを見やる。
 ぷよよんと浮いている宇宙ミジンコ。
 時折見える緑のきらめき。人工妖精・エル。

 ………。
 言ってしまえば。
 カイム・クローバーはオブリビオンを“見逃した”、ことになる。

 迷いが、あるわけではない。
 自分の選択に思うところがあるわけではない。
 宇宙ミジンコと戯れる緑の輝きは、流れ星によく似ている。

 ただ、ちょっとばかり奇妙な――ああ、そうだ、と彼は思い至る。

 この感触は

「そうだな」

 自分のうちに星空があるとして。
 いままでの仕事や業が、そこで星として輝いているとして――……

「仕事は“恙なく”終わった」
 カイム・クローバーはいつもの笑みを浮かべる。

「トラブルだらけの珍道中」
 足を組み替え、軽く、肩ほどまで手を挙げる。
「オマケに癇癪起こしたチビッコとのんきなお姫様宇宙ミジンコのベビー・シッターまで兼ねてる」

 いつだって余裕たっぷりでお喋り。態度はどこか尊大なようでいて気さく。
 取る仕事は選ぶが、金額ではなくいつだって自分の誇りと価値観にかけて。

「初めてだぜ。一回もマトモに得物を振るわない、なんてのはよ」
 それから言葉には皮肉をスパイス程度に。
 
「あれえ?そだっけえ?」
 こてんと首をかしげるイージー。
「そうさ」「しんが〜〜〜い」カイムが断った宇宙ミジンコパイをもっしもっしと食べながらそんなことをのたまうので「あんた、俺がどう見えてるんだ?」
「割とガキの面倒見るのが上手そう」「なんだって?」「それから」

「割と人情家で誰かをほっとけないおせっかい焼きの便利屋」
「――言うねえ」

 カイム・クローバーはいつもの“便利屋”らしく、ニヒルに笑って肩をすくめる。

……――見たこともない色の星を見つけたような心地がしている。
 爽やかな、ライム・グリーン。

「ま、偶にはこういうのも悪く――」
『や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』『やっほーーーーー、かっこ〜〜〜〜〜〜!』『こけこっこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!』「――ン゛ッ」

 耳元で響いた異様にテンションが高い大音量の声に、カイムは思わず顰め面を晒す。
「わははは!すげえ顔〜〜〜!!」けらけらと笑うイージーを軽く睨んでおく「口周りをラメとベリージャムで汚した男が良く言うぜ」「マジで???」

「……なんだ、何の用だ?」
 カイムは思わずしかめ面のまま、宇宙ミジンコの方を見やる。
 デフィーはゆるゆると手を振る仕草をしている。エルもだ。
 テラスにいる他の客が手を振っている――声はどうやら、カイムたちだけに送っているらしい。
『おまつり、たのしい〜〜〜〜??』『へいよー、楽しんでるぅ〜〜〜〜??」
 のほほんとした声と、伸びやか声。エルの方は激昂した印象ばかりが強かったので、のびやかな調子は新鮮である。本来はのんびり屋なのかもしれない。
「向かいの男は少なくとも満喫してるな」
 カイムが顎で示すとデフィーに向かってダブルピースするラメとジャム男。

『おまつり、おまつりようく見えるよお〜〜〜すごいね〜〜〜〜』『デフィーがいっぱいいっぱいだよ〜〜〜〜!!デフィーのためのお祭りっては知ってたけど、だからここを爆散地にしよーとしたんだけど』「爆散地」『でもこれ、デフィーようこそ、行ってらっしゃいのおまつりだったんだね〜〜〜エル、初めて知った〜〜〜!』『ようこそ、いってらっしゃい、うれしいねえ』『うれし〜〜〜ね〜〜〜〜!』
『猟兵さんたちも行っちゃうだろーから、今のうち挨拶しとこーと思って』
『あいさつだいじからね〜〜〜』『だいじだいじ』
『というわけで、まったね〜〜〜〜〜!』
『またねえ〜〜〜〜〜〜〜〜』『気をつけてね〜〜〜〜〜〜宇宙ミカヅキモとか』「宇宙ミカヅキモて何!?」

 ――用件だけ告げて風は絶え、宇宙からの音は消える。
「一方的にかますじゃん…」絶句するイージー「宇宙ミカヅキモて何…?」
「さあな」カイムは軽く嘆息する。

「――前言撤回だ」
 笑って、肩をすくめる。「やっぱ俺は|銃と剣を使う方《コッチ》が楽でいい」

『あ、そだ』「おい」カイムは再び窓の方に目をやる。

『ありがとね〜〜〜〜』
『ありがとね〜〜〜〜〜〜!!』

 ――……。
 それでほんとうに、おしまいだった。

「……前言撤回、撤回する?」
 やたら楽しそうなイージーの笑み。

 カイムは銃の形につくった指をそのまま口元に当てる。
「企業秘密だ」
 見知らぬ色の星に、ま、そういう色もあるか、と言うような。
 鮮やかな口元の笑みはそのままに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワタツミ・ラジアータ
普段の姿に戻る
相手の気持ちを逆撫でしない前提で
助手と一緒に
宇宙ミジンコのお菓子を買って妖精とミジンコに会いに行く

怖がらせてしまいましたし、何より、大事なお仕事の前ですからね。
気持ちよく旅立っていただきたいというのは本音ですよ。

買ってきたお菓子※無かったら知り合ったお菓子職人に頼んで作ってもらう
ミジンコの形をしたゼリーケーキ
切って割ると中から果物やチョコ、ゼリーなど様々でカラフルな小菓子が溢れ出る
誰も見たことが無い想像だけで作られた宇宙ミジンコの旅路の果ての光景
妖精に見えない事もないクッキーの欠片などもあるかもしれない

彼等の旅立ちに対してUCにて砲塔を増やしたキャバリアから祝砲を放つ
宇宙の旅ができなくなった機神から旅を続ける妖精と卵へのエール

色々あって儲けは一応黒字
でも想像以上に軽くなったコンテナはちょっと残念だったり、実は食欲優先の主に小言が言いたい助手だったりする

やはり宇宙は良いですね。暗くて明るくて孤独で賑やかで
もう私には遠い世界で御座いますけれど。

アドリブアレンジあれやこれや歓迎



◯祭文条文は時に依り

「ちょっとやりすぎたかな、という気持ち本当ですわ」

 対世界適応用の女性型レプリカント形態に戻ったワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)は胸の前で両手の指先を合わせて彼方を見つつ、そう述べた。

「ホントォ……?」
 |クモ型のドローン《パドル・ラジアータ》は思わず尋ねる。
「ほんとう。本当です」
 ワタツミは言い含めるように繰り返すが、ドローンからのカメラがワタツミの表情から離れない。「荷物、軽ゥイ…」ワタツミの背後、ぎゅうぎゅう詰めだったコンテナの幾つかがやや軽減された重力負荷に揺れて、かろん、と鳴った。

「ほんとにぃ〜〜?」
 ワタツミの宇宙船、開かれたブリッジにあぐらで座ったエルもワタツミを半眼で眺める。宇宙ミジンコわたあめの袋開きながら。バリッ。

「本当。ほんとうですとも」
 ワタツミは再度繰り返す。
「少々可哀想な言い方をしてしまいました、と言う気持ちもあります」
 繰り返し主張する。
 が、エルの半眼は治らない。
「……そちらの疑いの気持ちも、理解できなくはありませんわ」
 なにせワタツミはそう表情が変わる方ではない。そういった表現を得意とする方でもない。情の薄い冷静さとは商売上有利なことも多くあるし役にたつことも多いが―こう言う時はいかんせん不利な性分である。
 まあ美点は欠点の裏返し。欠点は補えばいいだけのこと。
 そう悩んだり改善しようとするべきことでもない。

「ですので、謝罪と和解の意向も兼ね、お菓子もご用意してご挨拶に伺った、というわけです」
 ワタツミはにっこりと微笑む。商売用しかなくても笑顔を表現するとはコミュニケーション上とても大切なことである。ついでに指先だけでなく手のひらも合わせる。ぱん。
「お口に合いましたかしら?」

 ララ・デア宇宙港とその向こう、ララ・デア惑星都市のよく見える宙域。
 人工妖精エルが空気を展開し、少し前まで戦地だった場所。
 ワタツミはララ・デア惑星都市の宇宙ミジンコに関わる祭で入手したお菓子を持って、宇宙ミジンコ・デフィーと人工妖精・エルを訪れていた。

「それは、うん、まあ……最初来た時ちょっとびっくりしたけど」
 わたあめを若干口の周りにくっつけつつ、エルは複雑そうな表情で頷く。
「おいしくいただいておりまぁす…」
「おいしくいただいておりまぁ〜〜〜す」
 エルよりもデフィーの方が声は明るかった。開かれた船橋の向こうに嘴と目玉がある。すっかり元の穏やかな調子を取り戻しているようだった。のほほん。

「すごいねえ、これも全部お菓子なんだねぇ〜〜」
 宇宙船の開かれた船橋の一部は、ワタツミと助手が仕入れた宇宙ミジンコのお菓子が気軽な宇宙遊泳を楽しんでいる。宇宙ミジンコを模した形が多いものだから、親宇宙ミジンコと子宇宙ミジンコのようだ。
「うれしいな、うれしいなあ〜〜」
 宇宙ミジンコの目、瞳孔と思しき部分が細かく動いてブリッジから宇宙へ広がるお菓子を追っている。

「んも〜〜〜デフィーー…」
 べたべたに汚れた指先を舐めながら、エルは宇宙ミジンコを模したボトルに入ったお茶にも手を出す。もちろんこちらもワタツミが買ってきたものである。エルもなかなかどうして、である。割合にどっちもどっちかもしれない。

「それにね」デフィーがぽろっとこぼす。
「――かんがえなしだったのかなあ、って、思ったんだよ」


『やめて、やめて』
 ワタツミの問いに、デフィーの答えは早かった。

『エルが傷ついて困るのはいやだよ。
 ――エルは、ともだちなんだ。だいじなんだ』
 
 幼いながらに賢しいのか、攻撃手段も取らず真っ直ぐに応えたのだ。

『そんなら、ちゃんと遠くまでゆくよ、ここじゃなくても、だいじょうぶ』
 ……そして。
『でしたら』
 ワタツミが爪を引くのも速かった。

『もう少し考えて決めませんと――なんでもオッケーなんて、してはいけませんわ』

 
「ね。エルが心配してうれしくて、一緒にいれて嬉しくて、考えてなかったの」
 ぷよよん、と宇宙を果てまで旅するミジンコは身をふるわす。ライム・グリーンの向こうで宇宙の雛が揺れている。「こういうの、あさはかって言うんだよね」

「すごくちゃんと叱られたなあ、って思ったの」
 ――。

「それは、それは」
 ワタツミは肩をすくめる。
 ワタツミにそこまでの意図があったかと言われれば……さて、答えに窮するところでもあるような気がする。損得計算の上での行為だったことは否めないのだが、それだけかと言われれば、それだけでもなくて。
 つまり、言語化が難しい。
 ――好意的に捉えられているのなら、まあ、いいか。
 そうワタツミは切り替えておく。
「ワタツミは、やさしいよぉ」ドローンが珍しく、のほほん、と不思議な相槌を打った。
「それはどうも」
 
「ね、ね、お菓子ね、特にこのでっかいゼリーケーキがうれしいよお〜〜〜」
「あら、お気に召して何よりです」
 普段は足の悪い客のために提供している椅子に腰掛けたワタツミは目を細める。

 ぷよよん、とエルの空気操作で一定の位置に居座る宇宙ミジンコゼリーケーキ。
 もちろんララ・デア惑星都市にも売ってはいた、のだが。

「現地のお菓子職人に頼んだ甲斐がありましたわ」

 少々というか、なんというか。
 ワタツミにとってあまり納得のいかない出来だったのである。

 絶妙な似ていなさを見つけてしまうと、どうしても脳裏で『試作品』だとか『試作機』だとかいうワードがチラついて購入する気が削がれてしまうのである。別に試作が悪いことだとは思わないし優れた試作が多いことも知っているワタツミであるが、絶妙に似てない、とか異なる、が重なると気に掛かってしまうらしい。

 これが所謂『地雷』というやつであろうか。などという思考がちょっぴりワタツミの脳裏によぎった。ちょっぴりである。ほんとにちょっぴり。もしかしたら商人の営みごとのせいでこだわり性がついただけなのかもしれないし。

「やはりある程度再現するなら、これくらいはしませんと」
 そんなわけで。
 ワタツミが急遽作成させた宇宙ミジンコゼリーケーキは、ワタツミ個人としては非常に納得のゆくものだった。
 特大のゼリーケーキは無重力でこそ解き放たれていた。
 膨らんだお腹の中、食用ラメのふんだんなソースが宇宙のきらめきの真似事のように踊っている。

「よかったのぉ?」
 エルが船橋の端っこに座り直し、うれしそうなデフィーを眺めながらワタツミに問うてくる。「せーっかく大儲けしてたのに」「あら、見てらいらしたのですか?」「うん」ぷらぷら足を揺らしながら色砂糖の振り掛けられたポップコーンを指先で弾いたりなどして。
 ……どうも、エルもデフィーをけしかけた上で、少し後ろめたい部分があるようだ。
「言いましたでしょう」
 ワタツミは席を立ってエルの隣まで近寄り
「怖がらせてしまいましたし――何より、大事なお仕事の前ですから」
 そうして、エルへ薄く微笑みかける。「しっかり美味しいものを食べて力に変えて、素敵な創造を果たしてほしい、という、こちらからの気持ちの現れです」そして、ちょっと悪戯げに小首を傾げる。

「ね、気持ちの表し方って、いろんな方法がありますでしょう?」
 
「――、…」
 まだ何か言いたげに唇を窄めるエルに「それより!」とワタツミは片手を胸の前で拳に握る。
「お気に召したのなら、ぜひお早めに召し上がってください。
 中身も凝らせていただきました」
 つづけ、拳から、ぴんと人差し指を立てる。「保存に関して宇宙はこれ以上ないかもしれませんが、宇宙ごみやつまらない屑などで汚れたら悲しくはありません?」

 エルが破顔する。
「そだね」
 そうして人工妖精は、あかるく立ち上がって手を掲げる。「デフィー、ケーキ、切るよぉ〜〜」「おっけ〜〜〜!」

 指の一振り。
 かまいたちでぱっくりと、宇宙ミジンコのゼリーケーキが割れる。
 溢れる中身を周囲に渦巻く風が広げて、きらきらと渦を巻く。

「うわあ〜〜〜〜〜〜〜〜!」「すごい、すごい、すごぉ〜〜〜〜い!!」

 食用ラメがきらめくソースに、星型のチョコレート。
 大小もいろもさまざまなゼリーやら、可愛らしくカットされた瑞々しい果物。
 チョコレートでコーティングされたラムネなど。
 おおよそ子供が夢に見るような小菓子があふれ、星々の輝きに負けまいと、あいらしく踊る。

 そして、何より。

「あっ!エル」デフィーが声を上げる。
「ん、エル?」エルが自分の巻き上げたお菓子に目を細める。
 
 妖精にみえないこともない。
 宇宙ミジンコと人工妖精の一匹と一人がワタツミを振り返る。
「そこまで喜んでいただけたのなら、大成功ですわね」
 
 ちいさな妖精は、宇宙の中をふよふよと泳いでいる。

「こんな綺麗に宇宙が作れるかなあ〜〜〜」
 ぽややん、とデフィーは呟く。エルの操る風にお菓子の宇宙が等分されていく光景を眺めながら。
「もっと綺麗かもしれませんわよ」ワタツミはとぼけた調子で呟く。
「これはあくまでも私の想像する旅路の果てですもの」
「そっかぁ〜〜」「そうですとも」
「楽しみだなあ〜〜〜」
 ワタツミは宇宙ミジンコの巨大な瞳を見上げる。
 宇宙を映して、きらきらと輝いていた。

「ええ、私も」


 ぱん、ぱぁん――と。
 宇宙の中で、花火がきらめく。
 ライムグリーンから始まる様々な色が宇宙の中で弾けては消えていく。
 宇宙ミジンコから離れるワタツミ一向が、そのキャバリアを起動させて放つ鉄骨ならではの唄。
 
「“外道祭文”とは言いますけれど」
 遠ざかる宇宙ミジンコや宇宙港を眺めながら、ワタツミは心から呟く。
「たまにはこんな使い方も良いものですわね」
「ワタツミ、大判振る舞い」
 作業を終えたドローンがワタツミの傍に来て、同じように窓の外を眺める。
 打ち上げる花火は、当然タダではない。仕入れた資材をやはり変換して使用している。
「ええ、そりゃあもう、文字通り」
 ワタツミは機嫌良く答えた。
「これしきのことで揺らぐ黒字ではありませんし、旅立ちの祝いは盛大でありませんと」
 ちら、と目を動かしてワタツミに向けられたままのカメラと視線だけで見つめ合う。
「……確かに、これを機に座標を教えてくれて新宇宙を教えてくれないかなあ、とは思っておりますけれど」
 素直な打算を報告。「ヤッパリ」素直に納得された。

「でも、それだけではありませんよ。――本当に」
 今日は何度“本当に”と口にしただろうか。
 そんな自分がちょっとおかしくて、ワタツミは珍しく、誰かに対してではなく、自分のために口元を緩める。

「やはり宇宙は良いですね」

 窓に手を伸ばして、触れる。どこかひんやりと冷たい窓。

「暗くて、明るくて」

 やわらかく星々を撫でる。
 “この”ワタツミがそうしても――どの星も、どの闇も、もう、その程度で濁りもしない。
 拭うようになぞっても、晴れもしない。

「孤独で――…賑やかで」
 もうエルたちの声は聞こえない。賑やかな風の音もない。
 輝ける星々が、ただ、きらめいているだけだ。
 すべてはもう、硝子窓の向こう側。

「もう私には遠い世界で御座いますけれど」

 宇宙の旅を喪った機神は、そうして緩んだ唇を、どこか郷愁のように笑いに結ぶ。
 ――…。

「かえりたい?」
 今度は、ワタツミがカメラを振り返る番だった。

「どうでしょう」けれどすぐに外す。なつかしいきらめきを眺める。「けれど、そうですわね」
「かえりたい、というよりは」

 花火を打ち上げたのは、ちょっとした打算だけではなかったのだ、本当に。
 宇宙をゆくことを失った機神としてのエールであり。 

「これからが、楽しみですわ」

 これからどこかへ行く者としての、エールでもあった。

 人が星に願いをかける気持ちがわかるような気がした。
 すこしだけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
デフィーさんのあの巨体なら照明いらずというわけですか…なるほど。

お土産に宇宙ミジンコのお菓子やおもちゃを買い求め。デフィーさんのお腹の感触に近いものはあるかな…

一通り買い物を終えたら宇宙港の傍まで行ってお見送りを。
もうお別れかと思うと淋しいですね…ビッグバンを見られないのは残念ですが、お二人の旅路が良いものであることを祈ります。
…ところで宇宙の端までどれくらいかかるんですか?私達の宇宙では観測可能な宇宙はおよそ138億光年、現在も膨張を続けており果てがあるのかないのかもよく分かっていませんが…

デフィーさんがビッグバンを起こす時私はもう生きてないかもしれませんが、お二人のことは忘れませんよ。



◯ライム・グリーンのしるべ

 頼りはこの指先の感触一つだった。
 眼は閉じ、触れる力は最低限。指の腹で摩ってから――そっと、押す。

「……うん、これかもしれない――…」

 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)、人生で5本指に入りそうなほどの全力による集中を解き――|眼《まなこ》を開く。

 宇宙ミジンコジェルーキーホルダー(日本円換算750円)
 ――何度見ても顔が微妙。

 深呼吸、スー――…ッ。
 それから逡巡。思考を回す。
「いえ、駄目です」かぶりを振って「この際ちょっと顔が微妙でも、なんて」自分を鼓舞。
 ストラップから指を離し目を閉じてこめかみを揉む。「集中しすぎて麻痺してるかもしれない…」口に出して自らの現状把握に努め、開けた視界、ゆるやかなみどりのあかり。

「――……」
 詩織は一番大きな光源を――すなわち宇宙ミジンコのデフィーを見上げる。
「信じがたいですけれど、デフィーさんのこの巨体なら照明入らず、という……」
 都市の明かりを宇宙ミジンコで担う、とは?と若干の疑問を抱いたのだが、月が何百倍という大きさのようなもの、と思えば確かに納得も行く。「うん、なるほど」たぶん。
 デフィーがこっちを見て手を振ったので、詩織も振り返しておく。
 
「よし」
 再び前を向く。
 さきほどの隣。
 わりとこっちのが似てると感じた同じ商品の別個体にもう一度指をやる。

「……反発力はこっちの個体のがいいかな……?」
 再度、集中。

 ……。
 かれこれ十五分。
 詩織は理想個体の探求を尽くしていた。
 時間がかかることはわかっていた。故に最後に回していたお土産だった。
 せっかく宇宙ミジンコのお腹触ったのだから感触も見た目も似てるのが欲しかった。
 いちばん欲しいものは最後に他の買い物を満たしてから――買い物の鉄則である。

 よって。
 よって、詩織の肩から下げたバッグには、すでに購入済みのさまざまなお土産が詰まっている。

 やれ色が異なれば味の違う宇宙ミジンコグミであるとか宇宙ミジンコマシュマロであるとかご自宅ですきなドリンクに注ぐだけでたっぷりとした食用ラメの楽しめる宇宙ミジンコジュースの素であるとか中が空洞でちいさなグミやゼリーやアラザンがたっぷり入っているというチョコレートのボールなど……お菓子のお土産が5割。

 3割は宇宙ミジンコのクッションやらぬいぐるみやら光って浮く宇宙ミジンコ風船やら使い捨て型ララ・デア周辺宇宙空間ホログラム展開機やら、宇宙船なんとか年モデルのプラ(らしき)キット、宇宙ミジンコ観察用のオペラグラス……といった玩具。

 あとの2割。
 本である。|宇宙歌劇世紀《スペースオペラ・ワールド》万歳。

 文明が進化しすぎて一巡したおかげで一巡しすぎて進化しすぎた印刷技術(に限りなく近いが全てにおいて限りなく異なる他の何か)が栄えておりおかげで物理媒体の記録資料が手に入る。しかも写真集だけでなく、文明が進化しすぎているおかげで翻訳切り替え機能がついているものが。古本屋も本屋も宝箱のようだった。他の星系の話やら新たな星の開拓状況などが乗っているのも素晴らしい。勿論シルバーレインでは役に立たないものが殆んどであろうが、応用が利くのもあるかもしれないというワクワクしてしまうというか、もう読んでいるだけで楽しい!

 ………。
 わかってる――わかってます。
 冷静でないことは、わかっているんです……ッ!

 だって。
 だって繰り返すが、ここはスペース・オペラ・ワールド。
 文明が進化しすぎて一巡しているからやたらと技術が高いのに理解が及びやすい身近な仕上がりなのである。スペースシップ・ワールドだったらこうはいかなかった。
 宇宙ミジンコ観察用の双眼鏡だって拡大可能範囲と倍率を二度見して首を傾げてしまった。もうそれは天体望遠鏡を双眼にしただけでは?みたいな出来がお安い値段で売られていた。おかしい。当然購入した。流れるように。

 だからある程度の高揚はほんとのほんとにしょうがないのである。
 えっ、ほんとにぃ?

 詩織はとうとう見つけた運命の宇宙ミジンコストラップ(ということにする。おそらくこれがベストである。悩ましいものもいっぱいある。中にゼリーだけじゃなくゼリーボールも入ってるまんまるタイプとかもかなりかわいい)を握りしめ会計に並びつつ反省する。生徒がスマホで眺めていた爆買い配信を横目に見た時に、そんな方もいらっしゃるんだなあなどと呑気な感想を抱いたものだが詩織はもうその人たちのことは言えないかもしれない。いやでもお菓子はきっと天文部の皆や補習で頑張った生徒などにあげてしまえばきっとすぐなくなるしおもちゃだって資料だっておそらく大方天文部に置いちゃうしだからきっと大丈夫いやでもあの宇宙探索に冠する雑誌は自分の教員机に置こうかなあ。

 財布に覗く大人のカードがこれほど魅力的に輝き使えたらなあなどと思ったこともない。
 逆にいうと使えなくてよかったなと激しく思った。
 あと、働いててよかったなあと心底思った。給料の本当の意味を知った気分である。

 いやまだ大丈夫だと思いたい。詩織は口内で唱える。
 冷静です、冷静。常識の範囲内です。たくさんの誘惑を振り切りました特に望遠鏡。天体望遠鏡はあきらめました。この惑星域で星を確認するためなので異常に性能がいいようです。でもだからこそ縮尺諸々異なりすぎてうまく使えないだろう。そんなの悲しすぎる。じゃあ使えたら買っていたかもしれないのかという疑念には目を瞑っておく。お会計に並んでいる今みたいに。
 
 冷静ではない者ほど自身の冷静さを語るものである。

 お会計完了。他の買い物を済ませていたので他のものは買わなかった。
 深呼吸――…!
 
「わあ〜〜〜〜〜い〜〜〜〜〜〜っぱい買ったねえ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ッ――…!」

 デフィーの何気ない一言が詩織の胸にクリティカルヒット――…!

「そうなんです……」
 詩織は静かに吐露する。もはや聖職者に行う懺悔のそれだった。「いっぱい、いっぱい購入してしまいました……」ここが|ララ・デア宇宙港《公衆の面前》でなければ崩れ落ちていたかもしれない。
 ララ・デア宇宙港、ブリッジの端っこ。
 本日便は全て欠便。
 エルの展開した呼吸可能域が残っているので、詩織は一番近いここまでやってきた。
「デフィーはかわいいもんね!」
 自慢げな声とともに、エルが目の前にやってくる。

「ぴんぽんぱんのおねーさんの購入費はすべて都市の特別収入としてデフィーが人々の記憶に刻まれる足がかりとなります」エルは腰に両手を当てて胸を逸らす。
「ごこーにゅー、ありがとうございま〜〜〜す」
「ありがとうございま〜〜〜す」エルの言葉にデフィーも続く。
「あらら」
 詩織はその微笑ましい言い分に吹き出してしまう。「いつの間にそんなことを」
「他の猟兵さんに教わったんだ〜〜」ダブルピースを浮かべるエル。

「おねえさん、あいさつにきてくれたのお〜〜〜??」
 のほほん、とデフィーが揺れ、ぷよん。あの大きなお腹となかの宇宙が揺れる。

「いまね、ちゃんと猟兵さんたちに挨拶しよ〜〜〜〜ってしてたとこなの」
「エルは声くらいなら風で飛ばせるからね!」ふふん、とエルが腰に手を当てる。

「お気持ち、ありがとうございます」
 詩織は微笑んで「でも」かぶりを振る。
「最後にもう一度、お会いしてお別れしたかったんです。ちょっと、淋しいですけれど」
 体の前で軽く指を組んで揺らす。
「んも〜〜〜、デフィーからちゃんと見えてるのに〜〜」
 ね!と振り返るエルに、うん、とデフィーは肯定する。
 そのやりとりも――やっぱり、微笑ましい。
「会う、というのは、おたがいが見つめ合えて、声が届けられる距離で成立するものですよ」
 詩織は自然とそんなことを言ってしまう。
 我ながらなんだかずいぶん教師然としているように思われて、少し恥ずかしいやら、誇らしいやら。

「ビッグバンを見られないのは残念ですが――お二人の旅路が良いものであることを祈っています」
 静かに微笑んで、詩織はふたりを見つめる。

「ありがと〜〜〜〜〜」「ありがとぉ〜〜〜〜〜」
 素直な返事に笑みを深めて、はた、と思考がよぎる。
「……ちなみになんですけれど」そそ。上半身を寄せる。「なになに」エルも寄ってくる。「な〜〜に〜〜〜?」

「宇宙の果てまでどのくらい掛かるんでしょう」
 純粋な興味と――ちょっとした期待であった。

「私達の宇宙では観測可能な宇宙はおよそ138億光年」組んだ手を離して指を立てる。「現在も膨張を続けており果てがあるのかないのかもよく分かっていない状況ではあるのですが…」

 たとえば。たとえば、の話である。
 思ったよりも遠くで、思った以上の光なら。
 思ったよりの近くで、思うのと異なる光なら。
 
 ビッグバンを観測することも――叶うのではないか?

 エルがデフィーを振り返り。
 デフィーは体をすこし左に傾げる。

「こうねん、ってな〜〜〜〜〜に〜〜〜〜〜??」
 詩織は思わず破顔する。「そこからでしたか」

 いや、考えてみればそのはずである。
 宇宙のあっちからこっち、というのなら――確かに光年なんて単位は、ちっぽけかもしれない。「もしかしたら、デフィーは私よりずうっとお兄さんなのかもしれませんね」

 この邂逅はもしかすると、もしかしたら。
 過去から未来へ光る星の――輝きに触れたようなものだったのかもしれない。

「デフィーさんがビッグバンを起こす時私はもう生きてないかもしれませんが
 ――私、お二人のことは忘れませんよ」
 
 詩織はくすくすと溢れる笑いは止められなくても――確かにそれだけは、伝える。

「??」詩織の笑っている理由にエルは不思議そうな瞬きをしたあと「そだ」気づいたように身を震わせた。「そだそだ、ビッグバン!」「ここではダメですよ」「わかってるよぉ」「デフィー」

「もしよかったらね〜〜できるかわかんないけど、ビッグバンする前におっきく光ろっか」
 詩織は目をしばたく。
「……はあ」詩織が飲み込めない顔をする番だった。

「ほんとは、ぴんぽんぱんのおねーさんがわかるように、って言おうと思ったんだけど」
 デフィーは片手をぷらぷらさせる。「生きてるかわかんないんだよね〜〜?」
「でもおねえさんが『記録』してたら、おねーさんの先のだれかが『あれか〜〜〜?』って言ったりして、追いつけるかもしれないよね!」
 エルが息巻いていう。「おねーさんがいきててもいきてなくても、そしたらハッピーだよ」
「ははあ」
 詩織はようやくそこで得心が入って、おもわず口元を悪戯に歪める。
「ビッグバンの位置がわかるように光ってくれる?ということですか?」
「そゆことぉ〜〜〜」

 それは。

「素敵ですね」

 それはまるで――夜空に星を刻むような約束ではないか。

「もしかして、色も密かに決めてませんか?」
 とても愉快な気持ちになって詩織がついそう尋ねると、二人はニヤリと――ああ、なんてことだろう。こんな短い期間なのに、宇宙ミジンコの表情がなんとなし理解できるくらい、素敵な時間を過ごせたわけだ!――笑った。
「そだよ」「これがいちばんいいよね〜〜〜って」
「何色か、せーので答え合わせしましょうか」
 半歩、詩織は前に進む。
 あと半歩進めば無重力に落下する、その瀬戸際。
 ゆめのみぎわ。

「もっちろん!」「記録してもらわないとぉ〜〜〜」

「はい。ではいきますよ――いっせーの、でっ」


――みどり!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
全面お任せ&色々ご自由に

オブリビオン、か
見敵必殺
後悔したくないなら塵も遺さず滅すべし
それが私のポリシーだ

…………が
今日は非番なんだ
生憎優等生じゃないものでね
休日労働はしないタチなの

Salut、|お嬢《エル》ちゃん。
|その子《デフィー》のお使い、宜しくね。

軽く手を振ってお見送りさ

私の真の目的は――
屋台で美味しいモン食べ歩き♪
出身世界での戦争の報酬は殆ど復興に寄付しちゃったし
漸くマトモな額が入ったのは|月墜とし《ザンギャバス戦》の報酬だ

おじさーん、宇宙ミジンコのお菓子二つ☆
ん、私かい?
レモン・セノサキ――猟兵さ。
おっと急にざわついたな?
私そんな有名人だっけ
いやいやそんな、握手を求められるような事してないぞ?
慈悲深いお方? ふふそれほどでも……(照れる)
ララ・デア某所在住のナントカさんのパトロン? ナンジャソリャ
宇宙ミジンコぬいぐるみの上得意様? 記憶にございません(困惑)
……ンンンンン、何だか嫌な予感がしてきたぞー?


ネフィ・ペルバベスタ
全面お任せ&色々ご自由に

センセ。これで合ってたのでしょうか。
――いえ、きっと
悩んで納得して出した結論なら、胸を張れと
正解も間違いも無いと、そう言ってくれるでしょう。

(ぶんぶん手を振る)
(振り返されれば今度は両手で)
(負傷に似た感触は残ってるけど、いっぱいの笑顔で)
(ぴょんぴょん飛んで別れを惜しみます)
(……)
(らちが明かない!!)

三ツ首の彼とも、こうやって分かりあえた世界線が
もしかしたら有ったのかもしれませんね
(パンダに|乗って《入って》はしゃぐ彼を想像する)
(『きょうそうを、しようよお』)
(……ちょっとコワイです)

報酬も入る事ですし
お祭りで少し道草してもいいですよね

宇宙ミジンコのお菓子……は、何故か人が多いので後回し
ライム・グリーンのミジンコソーダ?
……ソーダの中でミジンコらしきものが漂ってますね……?
うわわ、シュワシュワです!
ミジンコはゼリーで作ってあるのですか
美味しいです、とっても!!

あ、センセ!
何だかお目目が死んでますね?
これ美味しいですよ、分けてあげますから元気出してくださいっ



⬜︎かけていた色眼鏡を外して見ると大体のものは白く見える

「お〜〜〜〜〜い!!」

 ネフィ・ペルバベスタ(|Type-C:F-A・BSs《いつか焔を担う仔》・f37243)は、手を振る。
 お祭りのララ・デア惑星都市を照らす宇宙ミジンコ、デフィーがエルを見た。
 あの超性能の眼球はやっぱりネフィにを見つけてくれ、手を振ってくれる。
 誰に倣ったのだろう、ウィンクまでしてくれる。

 そうしてくれるとやっぱりとても嬉しくて、ネフィはこんど両手を掲げてぶんぶんと振る。
「おお~~~~~~い!!」

 さきほどエルの風を通じて教えてくれたのだ。
 デフィとエルはひとびとに覚えてもらうために、もっとたくさん手を振ったりしてみることにしたのだそうだ。
 それは名案だとネフィも思う。未知のおっきいものがこっちを好意的に見てくれて表現してくれれたときの嬉しい気持ちは、非常に良く理解できる。
 今だってデフィーがこんどは両手を振り返してくれたのが嬉しくて、エルはその場でぴょんぴょんジャンプを繰り返してしまう。

 「デフィー、エル、お二人に会えて本当によかったです~~~~~~!!」
 大声まで出してして呼びかければ
「ありがとぉ~~~~」「ありがと~~~~~~~~」
 風に乗って声が帰ってくるのも、胸がじんわり締め付けられるほどに嬉しい。

 これでよかった。
 これでよかったのだ。
 ネフィはそう思いたかった。

 |エメラルドの都市《エメラルド・シティ》 。

 ライム・グリーンに照らされている惑星都市の眺めに最初に浮かんだのがそれだった。
 童話の中に登場する理想都市。
 何もかもがエメラルドで出来ていて、なんでもうつくしい緑の国で、会うたびごとに異なる姿の偉大な魔法使いが住んでいる。
 しかし実のところはそうではない。
 エメラルドもうつくしい緑もすべては住民に緑の色眼鏡をかけさせているためにそう見えているだけであるし、偉大な魔法使いは異国のペテン師のペテンでできている。

 欺瞞だ。

「センセ」
 そっと師であり保護者である彼女の呼称を口にする。だが応えはない。
「これで、合ってたのでしょうか」
 ネフィはひとり、問うてみる。

 ララ・デア惑星都市の皆はのんきにお祭りを楽しんでいる。
 誰もあの宇宙ミジンコがビッグバンを起こそうとしていたなんて知らない。
 デフィーはそんなことはもうしないと誓ってくれたし、ネフィもそれを信じているけれど、AIとしての計算結果はそんなものは確証ではなく70%以上の確率で再度ビッグバンを起こしてもおかしくないと未だ警告を鳴らしている。
 加えてエル。
 彼女はただの人工妖精ではない。
 オブリビオンーー元来見逃してはならない現実世界へ侵攻する過去からのしずくであり、ネフィのセンセからすれば見的必殺は必須の、世界のがんである。
 
 欺瞞。
 そうとも、欺瞞なのだ。
 本来ならエルは排除すべきだし、デフィーもいずれかの方法でなるべく迅速にこの宇宙から移動させるのが、惑星都市を守護するという意味ではほんとうの最適解である。
 ネフィたち猟兵は、彼女たちを信じてこの惑星都市の安全を裏切っている。

「これで、ほんとうによかったのでしょうか」
 そんな自分が非常に後ろめたくは、あって。

「いえ」ネフィはかぶりを振る。振り払う。「センセなら、きっと」

「きっとーー悩んで納得して出した結論なら、胸を張れと」

 エメラルド・シティ。
 緑色は全部ウソ。すばらしい魔法使いさまも全部ペテン。
 けれど、けれどです。
 色眼鏡を外しても都市はすばらしく(そしてこれからはみんなが好きな色を経てさらに素敵な都市になるでしょう!)
 魔法使いさんはちいさなおじさんですけれど、みんなに慕われる王様であることに変わりはないのでした。
 少女は靴を鳴らして仲間たちと共に都市を後にします。

「正解も間違いも無いと、そう言ってくれるでしょう」

 早く、聞いてほしい気もする。

『あんた、いつまでそうしてるわけ?』
 不意に極秘回線で通信が入る。
「わあ!」ネフィは思わず声を上げた。
 ネフィと同シリーズのAIからである。彼女たちも自分の持ち主と一緒に今回の騒動に参加し、このお祭りのなかにいることは知っていたが、そう頻繁に通信をかけてくるタイプではないので非常に驚きが大きい。

「おひさしぶりです。お元気ですか」『AIに変わりあったらビビるわ』
 素気ない返事は相変わらずだ。
「どうかしましたか?」『どーかしましたかじゃないわよ、どーかしましたじゃ』
 近場にいないと使用できないアナロクな回線のおしゃべりは、公共バスの隣り合った席でこそこそ話をするような楽しさがある。
 あんたねえ。向こうの彼女はあきれ果てたような嘆息をする。

『あんた、さっきからそこで一時間半近くず~~~~~~~っと手ェ振ってんのおかしいわよ!?異常よ異常。叫んでんのも回線に響いてうるさいのよ』

「わわ」ネフィは自身の設定発音通信量を調整する。「失礼しました」
『いいじゃん、大好きってことだもんね!』割り込んで来たのは同じく同型AIである。『ネフィは今人型の義体だから関節系金属疲労の心配もないわけだし』「お久しぶりです」『ひさしぶり~~~~~~!!』
 AIの元性別は未確定から派生した彼らは、個体同士でこんなにも違う。
『時間の使い方はひとそれぞれだよ。誰かと一緒ってわけじゃないでしょ?』
「一応センセと合流する予定ではあります」ネフィは素早く通信履歴を確認する。「が」
 宇宙のお祭りとやらに興味深々なセンセによる着・弾♪の報告は一時間も前だ。
「私のいる集合場所に……とうちゃくはしている、と想定されますが、合流はまだで」
『ははあ。まだ会えてないってこと?一時間半そこにいて?迷子かな??』『迷子センターでも行って呼べば?』
「とっ当AIは幼児ではありませんから!」一章で防犯ブザー鳴らした奴がなんか言ってる。

『じゃンなとこでラジオ体操してないで、近くの店で甘いもんでも買って待ちなさいよ』
 ずらっ、と一気にリストが送られてくるリストに、ネフィは目をぱちくりする。「えっ」
『そこ付近のお菓子の店で評価いい店』そっけない案内。『あんたの口に合うかは知らないけど』
「えっえっ」
 お値段もお手頃である。報酬も入るわけだし、少しぐらい寄り道も……と自然に心が揺れてしまう。
『ジメジメプカプカ浮いたり沈んだりされてるとイライラすんのよ』だんだんと声に増えるトゲ。
『ネフィがずっと悩んだりしてばっかりで心配なんだよ!』すかさず入るフォロー。
『あとお祭りも楽しんでほしいって!素直に言えばいいのにね!!ぶきっちょだなあ』『ッうっさい!』
 ゴン!物理的な音、数秒の沈黙。
 ……。
 ネフィは思わずくすくす笑って、懐かしさに目を細める。
 共に出荷を待ったあのドッグの中のようだった。
 勿論、あのころの自分達は今の自分達と同じようで違う。彼はもう少し必死だったし、彼女はもっとピリピリしていた。ネフィは縮こまっているばかりでなかなか自分から話しかけには行けなかった。
 でも、不思議と懐かしい。
 変わってないけれど、変わっていて。
「もしかしたら」
 ネフィはちょっと勇気を出して口にしてみる。

「もしかしたら、デフィーとエルみたいに、今の私たちみたいに――あの三首さんたちとも、分かり合える世界線があったのかもしれませんね」
 仰ぐ宇宙ミジンコはまんまるで、時折緑のリボンを引くように光が踊る。

『さーね』ツンとした態度の彼女。
『どうだろね!そういう想定、ぼくは嫌いじゃないよ』ノリの良い彼。
『そしたらどんな機体がいいかなあ、首全員分ン千本生やしたらいいかな!』
「それはちょっと……」ネフィは思わず少しだけ身を引く。『じゃあじゃあ、ネフィの意見を聞かせてよ!腕増やす?足増やす?ガチタン組む?』
「兵器は無しの方向で……」
 なんてったってそれだと戦争に走られてしまう。
「もっとかわいい……ふわふわの…」
 ネフィは土瓶をこねる手つきでイメージを膨らます。
『|猫《キティ》 かな!|犬《ドッグ》 かな!』『猫はあたしと被るけど』『いいじゃん?それもオツだよね!』
 ネフィはかぶりをふる。「猫さんや犬さんはやめておきましょう」『なに?猫の何が悪いのよ』

「戦車になったり戦車を造られちゃう可能性があるので……」
 ネフィはかぶりをふる。
『マ???』『……』
 彼は絶句しているが彼女は同意らしく黙っている。ひでー事件でしたね。

「やはりパンダ、パンダです……!」
 グッ、と拳を握りしめて力説するネフィ。

「パンダのふかふかならきっとあの人数入るかもしれません……!」『毛の本数と収容力は比例しないと思うなあ』
『そんで爆速ではしゃぐわけ?アンタみたいに?』
「きっとはしゃいでくれます」
 ネフィは自分のアイデアの素晴らしさに腕を組んで胸を逸らす。「パンダさんはすごく速いんです」『ついでに戦争衝動も競争衝動に変わるって?』「そうです」彼女の揶揄にネフィは鼻息をふんすと噴いて主張。

「きっと」
 ネフィは回線でイメージを共有する。

 メロディライン鳴らすパンダ(三つ首六本足)が時速350kgで爆走してくる図を。

 ――きょうそうを、しよおよお……!!

「コワイ!!!!」
 素直な感想が口から出てしまった。「三つ首コワイ!六本足コワイ!!ドウシテッッッッ!!!」ネフィはあの荒野で乗ったパンダを浮かべたはずである。
『あっははは!!』彼が爆笑している。
「何するんですかぁ!!」データを改竄した彼に文句を主張。『すごいね!!出来心だけどすごっっっくやばいね!!!』回線の向こうで彼がゲラゲラ笑っている。『ハイハイ』呆れたような彼女の声。
『あんたの主張はわかったから――さっさと行ってらっしゃい』
 むう。
 ネフィはベンチから腰を上げて天を仰ぐ。
 星を背負って、デフィが手を振ってくれたので――もう一度だけ振り返す。
 胸の痛みは、まだ少し苦く燻るけれど。

「行ってきます」
 それでも、微笑んで。

 ……さてはて。
 ではその肝心のセンセはどちらにいらっしゃるのかといえば。
 非常に近くに居るのだが、まあ事情があった。
 てなわけで。
 時をさかのぼらせ、一時間前。

「着・弾♪っと」
 レモン・セノサキ(|Gun's Magus《魔砲使い》・f29870)はその時、間違いなく現地に到着していた。
 ちなみにちょうどネフィが手を振り始めてから30分経過したところで、周囲を歩いていた観光客の皆さんが「あっれ?もしかしてあのミジンコ手を振り返してくれるのでは?」みたいな心地で多くの人たちが突っ立って天を仰ぎ手を振っていたのである。はしゃいでるネフィとはいえ容易に埋もれ、ついでにレモンはちょっと引いていたので彼らから3歩ぐらい距離をとっていたために――すっかりすれ違っていた。

「うーん、やっぱすごいなあ」
 ちょっと首を動かして天を見ようものならばレモンの真っ先に視界に入る宇宙ミジンコ。
「これとうちの子がねえ……」
 ちょっと信じがたいような。なんでまたこんな事件に、という頭痛とか。もしかしてトンチキシナリオがやっぱりクセになっちゃったのかな、なんて心配とか。
 それはそれとして、ネフィからお祭りに行きませんかと誘われたのは、あの子からすれば珍しくって、なんかちょっと我が子の成長が感じ取れて嬉しいな、なんて。

 思い浮かぶことはいろいろあるが――きらりとひらめいた緑に、得心行く。

「こーれが見せたかったわけか」
 レモンは口角を皮肉っぽく歪める。
 一眼でわかる。

 アレは――オブリビオンだ。

「宇宙を内包する無邪気な宇宙ミジンコくんに、真空域に限定的でも空気を展開できるオブリビオン、ねえ」

 事情は転送にとっ捕まえたイージーから聴いている。まあもう大丈夫だろうけどな!なんて太鼓判を叩いていたけれど。

「甘いなあ」
 レモンは頭の後ろで手を組んで、どこにでも居そうなちょっとスレた女子高生そのまんまみたいな態度で――しかし、眼光だけは鋭く。
「かるーくいう割にかなり劇ヤバな組み合わせじゃん?」
 推し測る。

「見敵必殺」
 レモンは片手で銃を作って宇宙ミジンコを狙ってみる。

 あのオブリビオンが裏切らないという保証がどこにあるだろう。
 あのふたりがやっぱり途中で諦めて、別の星を巻き込んで滅ぼす可能性が“無い”などと――如何して言い切れるだろう?

「後悔したく無いなら灰も残らず滅すべし」

 レモン・セノサキは割合に――そういう点はシビアである。

「それが私のポリシーだ」

 宇宙ミジンコがこちらを見ている。
 その頭の上で、緑の妖精もこちらを見ていると――なんとなく、理解できる。

 術式を組み引き金を引くのはカンマもいらない。むしろノータイムでぶちまけた方がいい。遠距離かつ鋭い一撃を。

 あの妖精だけを、撃ち抜く。
 
 ――……。

「ふう」
 レモンは小さく息を吐く。
「うん、まあ、そう。それが私のポリシーなんだ。
 ――…が」
 そして、銃の形に結んだ手を、開く。
 レモンは手のひらを上に向けて、ここからだと彼らを手のひらに載せているように見えている位置に動かして、ぷよぽよん、などと触る仕草をしてみせる。

「今日は非番なんだ」
 肩をすくめる。「生憎優等生でも無いし」両手の親指をそれぞれコートのポケットに引っ掛けるように入れて、残りの指でぽんぽんとコートを叩きながらのたまってみる。「休日労働はしないタチなの」それっぽい、まあ一番では無い、理由の一つも添えて。

「Salut、|お嬢《エル》ちゃん」
 レモンは明るく彼らに背を向ける。
「|その子《デフィー》のお使い――宜しくね」
 いい加減に片手を振って、レモンはクールに去ることにする。

「ヘイそこの奥様ァ♡そこの宇宙ミジンコお菓子見せておーーーくれっ⭐︎」
 そしてレモン・セノサキは直角に2歩曲がった。
「あら、いらっしゃい」「いやーー、美味しそうなの並べてるねえ〜〜!」
 それはもう綺麗に直角に曲がった。

「さっきから素敵なお菓子がいっぱい見えてさ〜〜〜、入りたくてしょうがなかったんだよね〜〜♪」
 シリアス台無しだがレモンの知ったことではない。だってレモンは花の女子高生。
 でっかいミジンコより可愛くて映える美味しそうなお菓子である。
「嬉しいこと言ってくれるねえ」恰幅の良いおばさんがふくふくと笑う。
「気になるのがあったら言っておくれね、試食やるよ」「わぁい、さっすが商売上手ゥ」

 しかも今のレモンは先のグリード・オーシャンにおける収入のおかげで懐が大変に温かい。
 なにしろシルバーレインにおける戦争での収入はほぼ全てあの世界の復興にぶち込んでしまったていた。もちろんそれを後悔などはしていないし、ケジメ、ないしははどこかあやふやだった自らの魂や後悔にケリをつけて昇華するために必要なことだったと思っている。

 だが――しかし。
 レモンがジリもジリのジリジリ貧を味わったのもまた事実である。

 食パンの耳ってあんなにおいしかったんだと思ったしもやしのコスパはありがたかったし、豆苗が育つのは楽しみでしかなかった。
 ……ちょっと……失ったものがある気がするというか……女子高生にあるまじき主婦くささが身についてしまった気が、しないでもないけれど……。
 ともかく!

 故にこの収入がレモンにもたらした開放感は非常に大きかった。
 切り札をひっくり返してぶちのめしてやったレディ・オーシャンの表情と|骸の月を食らう月《ザンギャバス大帝》 にぶちこんでやった一撃の重さすら昨日のように思い出せる。
 そういえば出身世界の戦争を乗り越えたお祝いも、あんな大物をノしてやったのに打ち上げもしてない!

 レモンの中に確信が生まれる。

 今日ばかりは遠慮の一つも要らないだろう。

 もちろん一緒にネフィの分も買ってやる。ネフィが参加するのはトンチキばかりで楽しい打ち上げパーティーであるとか財布にものを言わせた菓子の山などは未知のはずである。
 フフ、このレモンセンセが人類が抱く蜜の味がする罪ってやつを教えてやろう――…!
 香りを広げながらぱちぱちと弾ける炭酸キャンディのかけらを潜めたかわいい宇宙模様のコットン・キャンディ。かじりつくと中からグミや小粒のチョコレート、ラムネをひそめた宇宙ミジンコフォーチュンクッキ、ベーシックなのは宇宙ミジンコゼリーだ。お腹の中の宇宙の色で味も異なっている。パイ生地とクリームを幾層にも重ねてチョコレートでコーティングされ、さまざまな色模様と食用ラメでおめかしした宇宙ミジンコパイ。

 自分の中で天使の羽をつけたエンジェルレモンが「ちょっと、ちょっと、流石にネフィと合流してからにしない?」「カロリーヤバくない?」って言ってる気がするが悪魔のツノに翼と尻尾を生やしたデビルレモンが「今買うかあとで買うかじゃない?そんなこと言ってると冷めちゃうよ、チュロス」とチュロスを口にぶっ込んで黙らせた。さっくさくのチュロスおいしいね!

「おじさ〜〜〜んっ!その、宇宙ミジンコ饅頭?ミジまん?二つッ☆」
 散々っぱら買い込んだお菓子を腕に抱えつつ、食用ラメできらきらかがやくフレーバーシュガーをまぶした揚げたて宇宙チュロスの最後の一口をぱくんと口に放り込んだレモンは次なる獲物を購入すべく声をかける。
「あいようっ、どの味にするか教えてくんな!」
 昔からあるらしいのが一目でわかるデザインの店舗の店頭には『できたて!』という文句のかわいい宇宙ミジンコ饅頭の他に、可愛らしい宇宙ミジンコグッズ、宇宙ミジンコ雑貨が並んでいる。「そうだなあ……」レモンは並んだ宇宙ミジンコ饅頭くんたちを眺める。レモンにもわかる味が半分。ちょっと知らない名前の味が半分。にんき!のタグは知らない名前の書かれた緑色の饅頭に揺れているがこれがいったいどういう味なのか――……。

「お客さん、もしかして猟兵さん?」
「うん?」思わずレモンは顔を上げる。「そうだよ、猟兵」

 レモンが肯定すると店主らしいヒゲの男は露骨に顔を輝かせる。
「なんてこった!そりゃあ俺たちにとっては恩人じゃないか!オマケするよ、オマケする。
 ――タダで好きなの貰ってきな!」
「ええ〜〜〜〜〜〜〜」
 おもわずレモンの顔が綻んでしまう。
「そんな、悪いよぉ〜〜〜〜!!」
 ……勿論悪いとは思っていないしもらう気満々だが往々にしてこう言う時は引くものである。「ちょっと待ってて」レモンはわざとらしく財布を探してみせる。「とーんでもない!」ほら来た!!
「ララ・デア宇宙港がテロリストにやられてたら、祭りは中止だったかもしれないんだ。これぐらいお礼にゃ安いさ」ふかぶかとうなずく店主。「さっき来たピンクの子が仲間もいるよとは言ってたから気にかけてよかったなあ〜〜〜〜」
「いやあ、悪いね〜〜〜〜〜御店主」
 レモンはニッコニコで饅頭を指差す。とんだおこぼれ、なんというぼた餅だろうか。
「じゃあこのおすすめと、こっちのりんご味を二つずつお願い」「おう!他の仲間さんにもくれてやってくれ!」快く包んでくれる。
「ちなみに猟兵さんのお名前は?」
「私の名前?」レモンは饅頭を受け取りながら首を傾げる。「さっきの子は俺聞きそびれちゃったからさあ、頼むよ、サインくれとは言わないから!」
 ……そんなことを言われると悪い気はしない。
 レモンはこの祭りに参加しているだけなのだが、あやかって饅頭まで貰っている以上引けない。

「レモンだよ――レモン・セノサキ」
 
 からん――……。
「え?」レモンは目をしばたく。店主が饅頭を掴むトングを落とした。
「れもん・せのさきだって……!」ぶるぶる、と震えたあと。

「お嬢ちゃんが!!!!あの!!!!!レモン・セノサキなのかい!!!!?」
 がっと肩を掴まれる。「おっおっお、おおおおお!?」とりあえず敵意と悪意はなく、深い感激があるのでレモンは反撃はしないでおく。買い込んだお菓子が落ちる方がショックだ。
「まあ確かに、確かにレモン・セノサキは私、だけれど――」
 レモンは必死に肯定して頷きながら頭を回す。何かしたっけ?いやまだなにもしてない。この程度の買い物は何かに入らないはずだ。
 旦那さんの只事ではない様子にギャラリーまで集まってしまう。

「ッちょっとあんた!」
 とうとう奥さんというかおかみさんが奥から出てきてしまった。

「何女の子の肩掴んでるの!」良心のある真っ当な女将さんらしくきちんと旦那さんを見咎めてくれる。一目で旦那さんとの力関係が見抜けてしまう見事な女将さんである。
「かあちゃん!!!」
 あっスペースオペラワールドでもカカア天下のおうちのかあちゃんはかあちゃんなんだ。レモンはとお〜〜〜い思考で思う。「問答無用ッ歯ァ食いしばんなァ――!」かあちゃんことおばさんは外したバンダナを握り込み今まさに旦那さんに「必★殺」宇宙曲線のボディーブローが――…!

「かあちゃん、このこレモンさんなんだよ!!セノサキさん!!」

 ぱさっ……。

 おばちゃんの手からバンダナが落ちた。
「レモンさん――…!?」今のいままで拳だった手を開いて口元をおおって感動の表情。

 いや、まってくれ。
 私、ほんとに何したんだ。
 もしかして他の偽身符が来てたとかかなあ!なんてことを疑ってしまう。いたとしてもそいつがレモンを名乗る可能性は果てしなく低いのでもちろんただの逃避である。

「握手してもらっても、いいでしょうか……?」
 すごい丁寧な態度で奥さんから頼まれてしまう。
「いやいや…」
 いつの間にか旦那さんから手を離されていたレモンはとりあえず頭を振る。「そんな……」
「私は握手求められることなんてしてないよ」
 レモンとしては真実を言ったのだが、奥さんはそれだけでもひどく感動して「ウッ」とか言って口元を覆ったまま目を伏せてしまう。 
「あなたのご慈悲には本当に救われました……」
 感動している奥さんの隣にもどってふかぶかと礼を述べてくださる旦那さん。
「えっ……慈悲深いなんて、そんな」
 あんまり熱心に言われると理屈はわからないけどなんだかとっても悪くない気がしてしまう。
「それほどでも」レモンはフフ、照れ笑いをごまかしながら、ほかほかの饅頭の入った袋を持ちつつそっと耳元の髪を直す。うーん、チョロいのは師弟の共通事項なのかもしれない。

「レモンさんがパトロンになってくれたおかげで、うちの宇宙ミジンコぬいぐるみ工業はなんとかやってけそうなんですよ……」

「ん???????」
 これはなんかよくわかんねーけどとりあえずスゴイウレシイから一気に現実に引き戻されたレモン・セノサキさん!!!!!!「ナンジャソリャ」
 ああ、と顔を綻ばせる旦那さん。「そうか、回線越しでしたもんね」
 あちらです、と指された先にある、でかでか宇宙ミジンコぬいぐるみ。

「レモンさんがお得意様になってくれたおかげで、本当に助かったんですよ」

 ウチはこの家業長いんですが年々材料費の高騰なんかで値上げするしかなくてねえ、クオリティを落とすか値段を落とすかでいえばきまってるでしょう、でももうたたむしかないかなあっていうところに――…。
「……ンンンン」レモンは一人笑みを引き攣らせる。
 あれ!と奥さんがその様子に先に気づいてくれ、たたたっと店内に引っ込んだかと思うと「もしかして同名同姓で間違えちゃったかしら」ちいさなデバイスであるサインを見せてくれる。「ご確認いただけますか、サインをね、いただいてるんですよ」
 ――…ある。
 たしかに、ある。
 レモン・セノサキ。レモンの筆跡まんま同じである。
 問題は。
 
「なーんか…いや〜〜〜な予感がしてきたぞ〜〜〜〜??」
 問題は、レモンにこういうことができる|生徒《ヤツ》 に心あたりがあるということである――…!
 
「で、これはなんのサインなんですかねえ……?」

 ⬜︎


「ふんふふんふふーーーーん、ふっふーーーん♪」
 ボトルの形が宇宙ミジンコなら、色もライム・グリーンの宇宙ミジンコ・ソーダを両手で大事に抱えて、ネフィはいまだかつてないHappyなステップおどるように歩く。
 口ずさむ鼻歌は今先ほどジュースを購入した店舗でかかっていた音楽である。
 あんまり美味しかったので歌も一緒におぼえてしまった。
 ついでに嬉しいときはなんか歌を適当に歌うと一緒にとってもたのしいということもネフィは知った。
「こんどお礼をいいましょう、そうしましょう」
 ネフィは自分のお小遣いで購入したこの宇宙ミジンコ・ソーダがいたく気に入ってしまった。
 ライム・グリーンの中で泡と偏光の食用ラメがきらきら踊ってただでさえわくわくするのに、口に含むとシュワシュワするのである。
「しゅわしゅわ♩しゅわしゅわ♩」
 歩きながらはお行儀が悪いので一時停止。一口含んでにこにこする。
 ボトルには太めのリボンが付いており首から下げられるのも非常に良い。もし飲み終わったら水筒にもなるんだよとのことである。
 うれしい!折角なので防犯ブザーもフックでくっつけて下げておいた。

「世界にはすてきなものがいっぱいあるんですね、ミジンコさん」
 ネフィは瓶の中、刺さったストローでまんまるのそれをつつく。返事はない。ないことはわかっているが、気持ちがうきうきしていてカワイイので話しかけたくなってしまう。ゼリーで作られたミジンコだそうだ。まだ勿体無くて飲んでいないが、試食でゼリーだけもらったそれは大層美味しかった。ジュースといただくとどうなるのか、非常に楽しみである。

「ふんふーん、ふふんっ♩」
 首からかわいいボトルにかわいいジュースを入れて半スキップ。
 今のネフィはどこからどう見ても幼女だった。

 ――そろそろ頃合いだろうか。
 喜びと嬉しさでそれこそ宇宙でもやどったかのようなきらきらの瞳でネフィは最初混雑で諦めたお店の前に戻る。
 ここの宇宙ミジンコまんじゅう、略してミジまんくんは地味だけれどとっても美味しいらしいとリストにあったのである。
 せっかく貰ったのだから一店舗では義理に欠ける。二店舗くらいは訪れなければ。
 ネフィはそんな友達思いなハートであった。
 一店舗目がすごい大当たりだったので二店舗目も、という下心もまあ、大きい。
 宇宙ミジンコぐらい。

 ……だいぶでけえな……。

「――あっ!!」ネフィは喜びで駆け出す。
「センセ!」
 ネフィの待ち人――レモン・セノサキはミジまんの隣のベンチに腰掛けていた。
「よかった、ようやくお会いできました」
 見ればレモンの腕にもたくさんの荷物が抱えられている。「センセもお菓子を買われていたのですね!」お菓子のラベルはリストにあった店舗といくつも合致する。
「素敵なおみせをたくさんご存じなんて、さすがです」
 ネフィはにこにこしながら頷いて――はて。首を傾げる。

「センセ?」
 ぎごごごご、という音の立つようだった。
 50年くらいほっとかれてたキャラクター人形のように首を持ち上げる。
 目が合う。
「……」
「……」
 はてて?ネフィは首だけではなく上半身ごとちょっと身を傾げる。

「センセ、お目目が死んでますよ?」

 へんじがない。
 
「あっ!」ネフィはいいことを思いつく。センセはお疲れなのかもしれない。
 お疲れな時はどうするか、ネフィはレモンの優しさから、よーく学んでいる。
「これ、宇宙ミジンコ・ソーダです!――とっても美味しいんですよ!」
 無垢そのものの星のような笑顔で自分の首から下げていたボトルを差し出す。「どうぞ、分けてあげます」きっとそこにあるのは世界にありふれてかけがえのない純朴な親愛である。

「だから元気出してください――ねっ!」

 レモン・セノサキ。
 我が子のまぶしい笑顔の前に、選択の時であった――……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
“寒さのせいか”鼻が赤かった
様々。刻む事が己に出来る僅かと感じて

陽気なミジンコ…?
エル、デフィー!!
灯りが淡緑
ふふ、港が皆あの子らの友だちみたい
よおし手を振ろう

宇宙ミジンコと女の子の人形を買い求め
チューブドリンクや温かいお菓子を少々
柔い宇宙仕様の大布を幾つか
探し購入

ひとつエルの服をイメージして【裁縫】
着せ替えて
灯りの下から
デフィーを想い描き「息名」の焔へ【魔力供給し化術】
淡緑の焔を膨らまして大声

エル
デフィーたちを見て作られた品物よ
あとねこんな美味しいものがあんの!
もし冷えたら息名の焔で温めてあげる

食べれるかな?好い香りでしょ
あ、香り…此処は空気があんのね

花も見る?
癒やしの華を
淡緑の光はこれに負けない程綺麗なのよ

これね。あげる
人形と防寒布を渡す
華色が布に灼きつく
おっきい布でしょ
色々書く事もできるよ

デフィー形の焔を筆の形に其々分けて武器改造し
渡して
二人の好きにして
飾るんなら手伝う

デフィーは眠りながら何か言うたりする?
エルはお洒落さんよね
すぐ浮かぶ好きなとこは?

ね。ふたりのこと
いっぱい聞かせて



◯いとおしい星

 あのとき、軽く鼻をすすったのも鼻の頭が少し熱かったのも、きっと寒さのせいだ。
 百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)はそういうことにして、宇宙仕様の大布をいくつか購入した。
 ライムグリーン地にとぼけた宇宙ミジンコが白抜きされて散っている柄がちょうどよかったので、それを何枚か。

 それから宇宙ミジンコのぬいぐるみ。
 チューブドリンク、温かいお菓子。

 こうして様々購入する胡麦は、きっと誰からみても観光客の1人にしか見えないに違いなかった。
 たくさんお土産を買って帰るひとのひとり。
 まあ、間違いではない。半分だけ合っている。

「――おまえのあかりはよく届くねえ、デフィー」
 薄緑に照らされる都市を眺めて胡麦はひとりごち「こっちはおまえのきょうだいみたい」ぼんぼり状のあかりをつついて笑っておく。
 そうして見あげると――デフィーが手を振っている。
 周りの数名が宇宙ミジンコと目があった、とはしゃいでいる。
 あの中のいったい何人が本当にそうだとわかっているだろう?
 宇宙ミジンコと目が合うことを、胡麦はもう、ようく知っている。
「…よおし、アタシも手を振ってやろう」
 1人つぶやいて、少し高く上げた手を振れば――やっぱり手を振り返してくる。
「そりゃあ陽気なミジンコって言われるね」胡麦はくすくすと笑った。「すっごいのんびりやさんなのにね」

 少し大きいかと思った毛布は他に買ったものをちょいちょいと載せて包めば丁度良かった。
 包んではいけない物は手に。
 そうしてお土産を両手いっぱいに持って――胡麦は宇宙ミジンコと妖精の元に戻ることにした。
 
「エル、デフィー、ただいまね」
 胡麦が戻った時の2人の様子ったら!

「おかえりい〜〜〜〜」のほほんとデフィーが答えて。
「おかえりー…おかえり??」エルはちょっと疑問そうだった。「おかえりで合ってるのかなあ?」首を傾げて考え込んで「まいっか!」そういうことにしたらしい。

「2人に都市のお祭りで売ってるものを見せてやろうと思ってね、帰ってきたよ」
 胡麦はくすくすと笑いながら風呂敷がわりに使った毛布を取り出して、ひらく。
「デフィー、おまえ“陽気なミジンコさん”って言われてたよ?」
 胡麦の指摘に、一人と一匹が悪戯っぽく笑う。
「いっぱい手を振ることにしたんだ」
 エルが秘密を開けてくる。「そのようね」胡麦はかるく頷く。「そしたら勘違いされちゃったみたいね」「ふふふ、デフィーが陽気だって」心底おかしそうなエルの笑い。
「たけのこ屋さんも振ってくれたの、ちゃんと見えたよぉ」
 デフィーがのほほんと打ち明ける。「デフィーが振り返してくれたのも見えたよ」胡麦も笑って応え――「あー」ひとつのことに気づく。

「デフィー、エル。大事なことを言わなきゃなんないんだけど」
「ん?」エルがぬいぐるみを抱きしめながら顔を上げる。「なあに?」一匹は不思議そうに嘴を揺らす。

「アタシ、筍屋さんじゃないの」
 ちなみに彼女自身が別の星で話題になってるのはまだ本人も知らないので、割愛。

「たけのこやさんじゃないの!?」エルがびっくりしたように瞬く。
「じゃあ、なに屋さん?」デフィーのごもっともな疑問。「うーん…何屋さん、ゆうかね…」

「アタシは胡麦。百海・胡麦――ね。たけのこ屋さんじゃなくて、其方で呼んでくれる?」
 胸に手を当て、名乗る。
 名乗りとは、いつ何度やってもくすぐったいような、嬉しいような不思議な心地がする。
「は〜〜い」「はぁ〜〜い」伸びやかなお返事。「お願いね」頷きをひとつ。「それで」荷解きの再開。


「さって――いっぱいあんのよ、デフィたちを見て作られたもの」
 胡麦はまず紙袋に手を入れる。「それぜんぶ〜〜?」デフィーが手を揺らす。「これ全部」頷き返してやり「これなんて一部よ」添えておく。「ほわあ〜〜〜〜」

「まずは冷めちゃわないうちに…こんな美味しいもんがあんのよ。デフィーのおまんじゅう!」
 種類としては、肉まんのそれに似ている。「わっわっ」エルがそれを受け取って。
「デフィー、あったかいよ」
 ぺち、とデフィーにくっつける。
「んんと……」流石に規格が違いすぎるのだろう。デフィーは少し目をごろごろと動かす。

「あつい?」「あったかいよ、ぽかぽかする〜〜!」
「恒星ちかく通った時くらい?」「でっかい宇宙船通った後撫でたくらい」
 一緒に旅をしてきたふたりにしかわからないやりとりにまなじりをゆるめつつ
「エル、食べれるやつだった?」確認だけしておく。
「だいじょぶ!」エルはデフィーから饅頭を離し、ぱっくりと開いたところだった。「良い匂い」胡麦が言えば「ね!」エルも頷く。
「…そうか、ここは空気があるから匂いが届くね」
「こういう匂いはエル初めて〜〜〜」そう言いながら、鼻なのだろう、エルはデフィーの嘴の横に近づける。「はじめて〜〜」デフィーの復唱。
 なかよしきょうだいのようなやりとりである。
 きっと彼女たちはこうして近づき合って、仲良くなったのだろう」
「あったかいうちにね」注意だけしておく。「冷めたらお言い、あっためたげる」「は〜〜〜い!」

 そうして饅頭をぱくつくエルの目の前で、胡麦は荷解きをする。

「長旅だろうから、途中飲めるようにチューブのドリンクでしょ」「まんまる!」「デフィー真似っこしたかわいいまんまるの飴」「あ、緑だけど味がちがうんだ」「飴だけじゃ飽きるだろうから、かわいいチョコレートとクッキー」「すごい、割ったら中からなんか出てくるの?」「で、この毛布もちゃんと持っておくこと、外はつるつるだけど、中はふわふわであったかいから、寒いところにも良いよ。……おっきい布でしょ、色々書けもするから」「はあい…風で結構なんとかなるんだけどな」「防げるに越したことはないよ」「はぁ〜〜〜い」「あ、癒しの花を見せてやろうか――淡緑の炎の花」「たけのこやさんしてるときのアレだ!」「ふふふ、ご名答」

 など、など、など。

 それで、と手をかける。
「こっちはデフィーのぬいぐるみ」
「デフィー!」
 風でいくらでも取り寄せられるはずのエルがわざわざ近寄ってぬいぐるみを受け止め、真っ先にデフィーの目元に運んでいこうとして「まった、エル」引き止める。「ん?」「最後のこいつを忘れちゃ嫌よ」そういって胡麦はそれを見せてやる。

「最後は、エルのお人形」
 
 エルが、それはそれは目をまんまるに見開いた。

「エルのも、あるの?」
「あるよ」

 胡麦の顔がほころぶ。

「デフィーにはエルがいないとね」
 ……。 
 ――正確には、実際にエルの人形が売っていたわけではない。
 通常商品として売られていた長い髪の女の子の人形を、胡麦がそっと改変したものである。
 近くの店で端切れを買ってさっと白いワンピースを仕立てかわいらしい緑のスパンコールをいくつか縫い付けて風のきらめきを添えて着せ替えたのである。

「ほら、お受け取り」
 ひらり握った手からエルの方へ浮かせて泳がせる姿は――我ながらなかなかに、それらしい。

「わっ、わっわっわっ、わっわっわっわっわ〜〜〜〜〜〜!!」
 エルがデフィーのぬいぐるみを抱えたまま、女の子の人形を受け取る。
「デフィー!!」受け取った瞬間デフィーに向かって掲げる。「ちゃんと一緒だよ!エルも一緒!エルも一緒〜〜〜〜〜〜〜!!」
 自らの起こす風に乗って、ぐるぐるとデフィーの頭の周囲を飛び回る。
「うん、うん」デフィーもまた嬉しそうに相槌を打つ。
「うれしいな、うれしいな、ちゃんとみててくれてるんだねえ〜〜〜〜〜」
 
 本当に嬉しそうなふたりに、胡麦はもう、それだけで胸がいっぱいになる。
「コムギっ!」キキッ!音でも立ちそうな勢いでエルが胡麦のそばで急停止する。「はいはい、どうしたの」
 差し出されるふたりのぬいぐるみ。

「これ、これ、これ!これ、エルとデフィーくっつけておける!?」
 ――……。
 もしかすると、と胡麦はすこし思う。
 先ほどからのやりといい。今のやりとりといい。
 エルとデフィーがここまでくるのにも様々な障害があったのではないか。
 否、ないわけがないだろう。宇宙のあっちからこっち、長旅である。

「――もちろん」
 胡麦はさしだされたぬいぐるみをきちんと受け取る。

「ちゃあんと離れないように、おまじないも込めたげる」
 きちんと、旅の果たせるように。

「で、最後の仕上げ」
 細かいお菓子は途中でいくつか開けられ、コムギも!と渡された飴を口の中で転がしながら、胡麦はもうひとつの仕掛けにかかる。
「コムギは最後がおおいねえ〜〜〜」のほほん、とデフィーがつつく。「数が多いに越したこたないだろ?」笑ってとぼけておく。
 ちょいと炎を淡緑。――まんまる。デフィーのようなかたち。
「はい、さっきのお人形さんと布にこれで飾り付けをおし」
 エルに二つ分差し出す。「エルと、デフィーとで」
「かざりつけ」エルが首を傾げる「かざりつけ……」
「あっちの石とこっちの石をぴーん、とか?」デフィーの素っ頓狂な言葉。
 胡麦はその様子に破顔する。
「一緒にかんがえようか」
 そうして胡麦の分も、ひとつ。

「ね、一緒に考えながら、おしゃべりしようか」
 誘ってみる。「おしゃべり、するする〜〜〜」意外にもデフィーの方が声を上げた。「そんならこっちがいいよ」エルが笑って胡麦の手をとり、デフィーの頭てっぺんに移る。
「ここだと聞き漏らしがないの」エルはそこに腹ばいになりデフィーの頭部に胡麦の火で、防寒布のベースを描きだした(時間経過でたぶんちゃんと消えるよ、とのことである)ので、胡麦はその背に防寒布をかけてやり、自分も隣にかけて布を纏う。

 そうして口数がへると――宇宙は、おそろしいほど静かだった。
 しんしんと染み入るような寒さがじんわりと耳を刺すようだ。
「ね」
 胡麦が呼びかけてみれば「んー?」気さくな返事がある。
 そりゃあエルはデフィーが大事だし、エルはデフィーが大事だろう。
 そんな確信を、深くする。
「エル、デフィーは眠りながら何か言う?」
 ああでもない、こうでもない、とメモするエルの手元を覗きこみながら尋ねてみる。
「デフィーは寝たりしないんだよ〜〜〜!」「えっ」胡麦は目をぱちくりする。
「寝ないの?」「眠らないよぉ〜〜〜」「はあ、エルは?」「エルはどっちもできるよ。寝ても寝なくてもだいじょーぶ。デフィーと一緒になってからはずっと起きてるよ」
「エルはおしゃれさんよね」「ね〜〜〜」「んん?えへへ、そう?ありがと〜〜」「エルの、すぐ浮かぶ好きなとこ、ある?」「いっぱいあるよぉ〜〜〜」「エルもデフィーの好きなとこいっぱいあるよ〜〜」

 見果てぬ星の中――他愛のない会話ばかりが重ねられて。
 やがて、くくく、とエルがおかしそうに笑う。
「コムギ、質問ば〜〜〜っかり」
 胡麦は唇をとんがらせる。「そりゃあ、そうよ」
「知りたいんだもの――あなたたちのこと」
 
 星があかるくまたたいている。
 彼女たちは、あの星のむこうよりもっと向こうへこれからゆく。
 ふたりぼっち、ふたりきり。

「だから、――ね?」
 胡麦はエルに倣って、普段はしない腹ばいになってみる。
 ぷよん、とした柔らかさは、なかなかに心地がいい。

「ふたりのこと、もっと、聞かせて?」

 彼女たちのことを、ずっと覚えていたいと思った。
 見上げればわかる――いとおしい、星のように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァシリッサ・フロレスク
シキ(f09107)と、フォルと

ヴィッキーは猫型ロボに納めダブルデート

フフッ♪アタシ達はモチロンだケド、ホントお似合いカップルだねェ♪
『あ゛?
フォルとヴィッキーを|労う《からかう》

いや、”トリプル“か?

Yay♪エル・チャン!見てるゥ〜?
Yahoo♪でふぃもネー!

宙を埋めるライムグリーンへ手を振り

でふぃはちとムリだろうケド
今くらいエル・チャンはコッチ来りゃイイのに?まァ、フレンズで一緒が一番!ッてワケか

出店を物色しては嬉々として

HAHA♪見てくれよシキ?ナカナカどーして出来がイイもンだねェ?シキのコレクションにも好いンじゃない?
と、みぢんこクッションふにふに

Boo!
Hey!エル・チャン!どー思う!?

飲食物は余すこと無く堪能して
手土産選ぶのに試食はマストだろ?等と嘯き

エルとデフィの元に着けばどさくさに紛れて忍ばせていた
人数分の|ペアの《・・・》キーホルダー(デザインお任せ)を

ハイ!全員拒否権ナーシ♪
シキの反応に内心ホッとして

…Hm?フォルはドコに付けようか?

Von Voyage!
また、ネ♪


シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)、ヴィッキーと
フォルとヴィッキーには良くやってくれたと褒める

手を振るデフィーへ手を上げて応えて
エルとデフィーへ声を掛けながら祭りを見物
食べ歩きになりそうだ、エル達が気にする物があれば購入
一緒に遊びたいと言うヴァシリッサの希望も叶ったな

『お似合い?シキとヴァシリッサのカップルみたいに!?』
…フォル、|“カップル”《それ》はやめろと(チョップ
そのクッションを俺の部屋に?…派手過ぎる。却下だ、ヴァシリッサ
そんな事を聞かれてもエル達が困るだろう
ヴィッキー、お前の主を止めてくれ

苦笑しながら…だが、この賑やかさは嫌いではない

最後にエルとデフィーに会いに行く
キーホルダー?そうだな、これなら
ヴァシリッサとペアになる物を自然に受け取る
喜ぶフォルの分も受け取り、これを身に付けられるペットロボのボディも検討

少し話をして、先に買った品をエル達に土産として渡す
エルとデフィーは“お使い”を続ける事に決めた
もう敵ではないのだから、このくらいは良いだろう
二人の旅が良いものである事を祈っている



⬜︎ともだちは|宇宙《そら》 の匂い

 ララ・デア惑星都市。
 宇宙ミジンコにまつわる祭りの、メインストリートのある一角。
 とある、二人組がいる。

 狼の耳を備えた銀髪の男の人と赤い髪の女の人。どっちも若い。それから首輪をした猫が一匹。
 買い物袋にはここまでめいめいが購入したらしい商品が入ってる。袋は大小にちょっとした差はあるけど三つ。買ってる量としては中の上くらいかな。
 ここまではフツー。ペットを連れたカップル、そんな感じ。
 
「いやあ食べた、食べた――スペース・オペラ・ワールド、良くできてンね!」
『そのほとんどが試食でしょうがよ』「そりゃ購入には決め手が必要だモン♡」『ちょっとそっちのバカ2号、なんか言……だめだこいつも結構食べてたんだった』「…そんな、ことは」『さりげないけど結構つまんでたよね!流されちゃったの?場の空気ってすご――あてっ!』

 お祭り、すっごく楽しんでるみたいだね。
 女の人はにっこにこ!男の人は、ううんと、ちょっと表情が固いけど、でも、楽しそう。
 試食もいっぱいもらって、いろんなおしゃべりしたり笑ったりしながら食べたり悩んだり買ったり。
 
 ふふふ。
 そだね、嬉しいね!

 で。
 周りの人と比べて、ちょ〜〜〜っと奇妙なのは――そのふたりからは声が四つ聞こえるってこと。
 通話や動画のようには見えない。遠方とやり取りしているにしてはちょーっと距離が近いっていうか、おとなりにいるみたい。

「次は、確か――」
 あ、男の人が携帯端末をあけたよ!
『リスト更新入れるわ』ちょっとドライな少女の声がして
『だね!お腹いっぱいなら別のが良いよね!――ちょっと待ってね』元気のいい男の子の声。

 女の人の声も含めて、どれもみ〜〜んな全然違う声だから、腹話術じゃないね!

 いったいどこから、どうして、どうやって。
 二人から四人分の声がするんでしょ〜〜〜うかっ!

 ……
 ふふふ、な〜〜〜〜んちゃって!
 理由なんてもうわかってるよね。

 こやってお話しみたいにすると、ほんと変な人だけど、いいひとたちだね。

 あ。
 もうそろそろこっち見るかも!
 待機っ、た〜〜〜〜いきっ!

⬜︎

「フフッ♪」
 ヴァシリッサ・フロレスク(|浄火の血胤(自称)《エンプレス・オブ・エンバー》・f09894)覗き込んだ端末のリストを見て笑った。
 三つ目が消えたのにまだこんなにある上に――現在進行形で更新し、優先順位を変更してくれる心使い。
 
「アタシ達はモチロンだケド」
 半ばヴァシリッサが強制的に組んだ片腕を引っ張って笑い。

「――アンタたちもホントお似合いカップルだねェ♪」

 ちょっとした悪戯心で|けしかける《・・・・・》 。

『あ゛?』
 ヴァシリッサの足元から低くドスの効いた声が上がる。
 面白いくらい狙いに命中した音だった。  
「ン〜〜〜照れちゃうのもカワイイよ、 Sweet♡」
 ヴァシリッサは器用にも携帯端末を持ったまま足元からたった今ドス声をあげた猫を――猫型機体に|義体《からだ》を変更したヴィッキーを抱き上げて
「フォルと二人になりタイ気持ちも、分かる、分かるよォ〜〜〜♡」
ふわふわの毛におもいっきり頬擦りをする。『もしかして必要だったリストは店舗じゃなくて医者だった?』毛の柔らかさに比例するような声音と皮肉の鋭さ。

「分かる、ダーリンのそばにいたい気持ちも分かる、
 ……ケド、デモッ、まだもう少しアタシたちと居てェ〜〜〜♡」
「バカ」
 耐えかねたヴィッキーの鋭い猫パンチがヴァシリッサの頬にクリーンヒットした。「あン♡」

『なになに!』
 ヴァシリッサの肩ほどの高さに、対人随伴型自編律ビーム兵器――つまりはフォルの一枚が、くるくる回転して浮かびあがる。『ぼくとヴィッキーが?』楽しんでいるのか興味深々なのか、その場で回転するだけでなくヴァシリッサの周りまでくるくる巻い始める。『お似合い?』

『それって、ふたりみたいに!?シキとヴァシリッサのカップルみたいに!?』
「フォル」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)のチョップが浮遊していたフォルの個体を捉えた。

「|“カップル”《それ》はやめろと俺は言ったはずだが」
 割と本気で釘を刺しに行った。

 ……。
 ……シキとて。
 シキとて、自分とヴァシリッサがカップルではないと――恋人ではないと否定したいわけではない。
 フォルとヴィッキーが良いコンビであると否定するつもりもない。
 ふたりが結託して(ちなみにフォルはデータのほとんどヴィッキーだと言ったが、優先度などを並び替えたり、追加しているのはフォルのようである)作成しシキの端末へ転送してくれたおすすめ店舗とやらのリストは優秀で、このデー…、……買い物道中に置いて、非常に役に立っている。

 ただ、その。
 その、なんというか、その。

『はいはい、はぁ〜〜〜〜い!』
 シキが次をどう言ったものかと悩む間に、チョップの手に抑えられたフォルが本当にわかっているのかわからないような返事をして
『軽率でした!シキもヴィッキーもごめんね』
 本当にわかっているフォローを添えてくる。
「……そうだ」
 シキはなんとなく得心いかないまま、しかしフォルの言い分は正しいので手を引いて――

『――じゃあぼくとヴィッキーは“あっち”くらいのカップルってことで!』
 とりあえずもう一度チョップを入れた。『あてっ』

『“あっち”って“こっち”〜〜〜?』
 風に乗っていたずらっぽい少女の声がふたりと二機の間に響く。
「Yay♪エル・チャン」
 ヴァシリッサは笑って天を――宙を仰ぐ。
『はろー、ヴァシー、シキとそれからヴィッキーと、フォル』柔らかな声の返事。
『あっちって、そっちだよ!』フォルが明るく答える。『そっちの二人のこと!』 
『それはすっごいなかよしだね〜〜』
 のほほんとした声が増える。
「Yahoo♪でふぃー!」
 ヴァシリッサは一行のなか、先んじて片手を掲げる。気さくに。挨拶のように。
 宙空に向かって。
 正しくは――そこに浮かんでのほほんと輝く宇宙ミジンコに向かって。
『やっほ〜〜〜〜〜』

 新しく増えた、友人に向かって。

「でふぃはちとムリだろうケド」
 嬉しそうに手を振り返してくれるデフィーにまなじりを緩めつつ、ヴァシリッサたちは再び次の店舗に歩き出す。
 |お菓子の類《消えもの》は大抵購入できたので、そろそろ雑貨に目を向けたい。
「今くらいエル・チャンはコッチ来りゃイイのに」
『デフィーが行けないからやだ〜〜〜』
 エルのストレートな返事にヴァシリッサは喉の奥で笑い、肩をすくめる。「ナルホド♩フレンズで一緒が一番!ッてワケだ」

「ソリャ納得行くよねェ、共・犯・者・ド〜〜〜ノ?」
 そして、このデートが始まって以来組んでいるシキの腕の肘あたりを、ちょんちょん、と指の先でつついてやる。
「……ヴァシリッサ」シキはヴァシリッサに物言いたい気持ちでいっぱいの視線を向ける。
「だァッて〜〜〜」ヴァシリッサはもう、これだけで気分がご機嫌になってしまう。

「“それだけじゃ無い”ンだろ?」
 冷静さと自制心で固結びを重ねたようなところがある彼の、こういう苦悩は楽しいものだ。

「――…」
 シキは、それは、と言いかけた言葉を少しだけ考えて引っ込め
「公衆の場で。物騒な言葉は控えるべきだろう」とりあえず無難な言葉で応急処置にかかる。
 “それは”の先が――何が出てくるかのか、果たして自分でも理解できないところだ。
 まだ。
「アーイ♪」
 あんまり追及してしまうのも可哀想なのでヴァシリッサもそこでこの話は区切りにする。
 むくれられてしまうのも(かわいところだと思うとはいえ)求めるところではなかったし、シキの言い分にも一理あった。

 その意味が聞けるなら、ふたりだけの時が良い。

『つか』
 ――薄く漂った色めいた空気をヴィッキーの呆れ声がぶちぬく。
『エルとデフィーのそれを言うなら、むしろあたしが戦線離脱して帰還したいんだけど?』
 |車輌侵入禁止の看板《歩行者天国の証》の上に座ったヴィッキーが尻尾を揺らす。
『この場にあたし、要る?』
 ヴィッキーとしてはマスターたちを二人きりにしてやりたい気もあった。
 やっかみ半分、思いやり半分、どうぞご自由に、というやつである。
『あたし今、猫よ?』
 それに――自身の有用性からも鑑みての発言でもあった。
『何言ってんのさ!要るよ要る要る!』
 すかさずフォルからフォローが入って、ヴァシリッサは小さく笑う。
 こういうところが|同型AI《きょうだい》の噛み合わせの良さなのか、上手いと感じるところである。
「|フォル《あんた》はね」ヴィッキーは嫌味でもなんでもなく応える。

「むしろあんたはそのまま仕事してなさいよ、随伴型護衛系なんだから」
 元々随伴の護衛兵器であるフォルはヴァシリッサたちを中心とした周囲散開している。もちろん他の観光客や警備員には迷惑をかけないように。
 何かが起これば警告を、あるいは最悪威嚇射撃も可能な展開を維持。

『そんなこと無いってぇ〜〜!』
 ちなみにフォルの他の機体の位置はこれまたシキの携帯端末に共有されており、いつでも周囲の情報や分析結果を確認することも可能である。

『ヴィッキーだってその|猫義体《からだ》 からでもちょっとしたハックとかはできるでしょ?』
 分かなり重要かつ繊細な動きであるのだが、当人はさして負担にしている様子もない。お気楽なものである。

 そういう様子も含めて、フォルは優秀な護衛であった。

『そんなにふたりのお邪魔虫になるのが心配なの?
 ――それこそ“公衆の面前”なんだから、そんなおじゃまになるようなことあるわけないのに』
「フォル!」「うっさい」シキとヴィッキーのツッコミが同時に飛び『あてっ!』フォルの悲鳴とヴァシリッサの笑い声が雑踏に混ざった。

「……お前たちに」
 シキは咳払いをして切り出す。

「フォルとヴィッキーに自分が守った光景を見て欲しかった、というこちらの意向があった」
 ヴィッキーの気掛かりを払うべくシキが説明しだせば、ヴァシリッサは笑い声引っ込めて、彼が自由にできるよう組んでいた腕をそっと離し、ちょっと横に離れてそれを眺めることにする。
「メインの説得をしたのはあんたたちでしょ?」
 もっともらしいヴィッキーの言い分にシキは頷く。
「かもしれないな」そして――横に軽く振る「だが」

「だが、俺たちだけではデフィーの足止めは行えなかった」

『ヴィッキーとフォルのおはなし、おもしろかったよ〜〜〜』
 デフィーがのほほんと肯定のような一言を発して、ぷるるん、と揺れる。『ミジンコジョーク、考えなくっちゃ〜〜』『あんたはそのままでいて』

 だから、とシキは改めてフォルの一番近い端末とヴィッキーを穏やかに眺める。
 
「これはおまえたちが敵を不用意に撃墜せず、施設に大きな被害を出さなかった結果の光景だ
 ――できれば、たっぷりと見て欲しい」

 雑踏。ざわめき。祭りの高揚。笑い声。
 さんざめく、都市のいきづかい。

「二人とも、本当によくやった」

 ――……。
 やや、間があって。

『えへへ』
 嬉しそうなフォルの笑い。『嬉しいな、嬉しいな嬉しいな、今日イチうれしいよ〜〜〜〜』
 一時目立つのも躊躇わない縦回転。
『次回もぜひぜひ、いっぱい頼ってよね!』
 素直な感想とませた返事にシキは少しだけまなじりを下げる。「ああ、そうしよう」

「――Sir,thx,sir」
 簡潔だが最低限に上官に対しての返礼を述べるヴィッキー。「でも次回からこいつのお喋り|四分の一《ハーフ・アンド・ハーフ》 とかにできない?」「努力したい」シキは真面目に肯定する。「方法があれば教えてくれ、俺も時折手を焼いている」『ちょっとぉ!』

「ン、マ!」
 ヴァシリッサはシキに体当たりするかのように近寄って、彼の肩に顎を載せる。「そゆこッた」

「頑張った子はご褒美貰い放題ッて・ネ♩」
 でもって素早く彼から離れ、付近のカートから目星をつけたソレを取り
「HAHA♪見てくれよシキ?」シキの背に向かって声をかける。

「ナカナカどーして出来がイイもンだねェ?シキのコレクションにも好いンじゃない?」
「どれだ?」当然、シキからは良く見えなかったので、彼は一度身を離して

「……そのクッションを俺の部屋に?」
 ――盛大に顔を顰める。

 ヴァシリッサが掲げたのは、子供向けにかわいくデフォルメされた宇宙みぢんこクッションである。
「イーイ顔ダネ!」ピュウ!とヴァシリッサは口笛を吹く。そのままクッションをふにふに。「触感もナカナカのモンだよ?」
「派手過ぎる」
 シキは目元を抑えてかぶりを振る。「却下だ、ヴァシリッサ」
「BOO!」露骨に唇をとんがらせ、ヴァシリッサは茶目っ気たっぷりの文句を表明。
「却下」
「エ〜〜〜〜〜ル・チャン!」ヴァシリッサは宇宙ミジンコの方を眺める。
「どー思う!?却下、だァって〜〜〜」「そんな事を聞かれてもエル達が困るだろう」眉間に薄く皺を寄せてシキは嘆息する。

『きゃっかっ!』
 ほがらかなエルのおもわぬ返事があって、ヴァシリッサとシキは、思わず目をしばたく。
 二人揃ったその様子がおかしいのか、エルが吹き出す声が響いてくる。

『だぁって、デフィーはも〜〜〜〜〜〜〜〜〜っとおっきいもん!
 シキのおうちは知らないけど――おうちに置くならお家いっぱいになっちゃう位じゃないとね!』

「――プ、ハ!」ヴァシリッサが吹き出して人の目が集まるのも構わず大きく笑い出す。
「ソリャ確かにコレじゃダメだ!――ふ、ククク、ヒヒ、破れたら部屋がバクハツしそうなヤツじゃないとね!」笑い転げるヴァシリッサに、エルも笑いながら言う。
『爆発だけじゃダメだよ、壁が吹き飛んでお家が広くなるくらいじゃないと!』
「それは困る」
 シキは声音こそ冷静だが、無垢な微笑ましさに口角は柔らかい。「それでは住めない」『ツッコミがそれでいいわけ、あんた』ツッコミにツッコミが入る始末である。「何より家主が頭を抱えそうだ」『つかこのシナリオで爆弾ネタはAIジョークよりひどいジョークじゃない?』

「じゃ、シキのために、かわいいかわいいミジンコ爆弾チャンの家具を探さないとネ♩」
 だが微笑ましさに油断しているうちに面白いことを面白いなりに盛り上げるのがヴァシリッサのやりかたである。
 らんらんと目を輝かせて、彼女なりの“爆弾”探しに入る。
 そうすると
『せっかくだからぼくこの世界での作り方情報検索しとこっか!ここ、文明が一巡してるから爆弾もヤバそうだよね!』
 そうすると――それに乗るやつが、ここにはいるわけで。
「フォル」「OKフォル、任せたヨ☆」『アイアイ・マム!』「ヒューッ!」「待て」『ウヒョーすごいスペースオペラワールドの文化すごいよくわかんないこれ火薬でいいのかなあ物量のベースわかんない変換どうすんのかな!』「フォル待てどこの何にアクセスしてる」「アン?あとで考えればいいからとりあえずデータ控えときナ」『はーーーーい!!』 
「ヴィッキー、お前の主を止めてくれ」
 シキはいつのまにか足元に寄ってきていたヴィッキーへ助けを求める。
 だが、むべなるかな。
『止まる女だったら今頃あたしのマスターしてないわ、御愁傷様』
 そういうことのようだった。



「お買い物ってスリリングだね!!!」
「すごいんだねえ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 ララ・デア宇宙港ブリッジの一角。
 本日の便は全て欠航し、ほとんど人の寄りつかないそこは、無重力ではあるものの、いまだにエルの空域が残っている。
 ゆえに、デフィーやエルと最後に会うのに本当に良い場所だった。

『いや、それはこいつらがキレッキレなだけよ』
 ヴィッキーがエルとデフィーの反応に冷静なツッコミをいれ、シキは静かに頷く。

「お祭りはエンジョイしてナンボ!だロォ〜〜〜?」ヴィッキーの言い方にぶーぶー!と再び唇をとんがらせるヴァシリッサ。
『そうだそうだーーー!楽しかったぞーーー!!』隠れる必要がなくなったので、棒人間を形成して拳を突き出すポーズで主張するフォル。

「楽しかったのはわかるよぉ〜〜〜」エルがくすくす笑う。
「ちゃーんとずっと見てたもん、ねー?」「ね〜〜〜〜〜」デフィーが嘴をゆらゆらして、
「たのしかったよぉ〜〜〜〜〜〜」
 ポヨヨン、と腹を揺らす。

「ソリャ何より」
 ヴァシリッサは破顔して
「てナワケで――コレがエル・チャンとでふぃの分」
 一際大きな袋を、お菓子やら雑貨やら……ヴァシリッサたちと一緒に行く彼女たちがやんやと注文をつけたので購入してやった分を掲げる。
「宇宙だと散っちゃうから、取りオイデ」
「ありがと〜〜〜〜!」
 デフィーの頭の上からエルは一度浮き上がり、ブリッジに足をつけて、ヴァシリッサたちに駆け寄ったところでで

「でも、よかったの?」
 首を傾げる。

「エルたちのぶん、これ、奢りってやつでしょ?」
 ヴァシリッサはくしゃっと微笑む。
「なが〜〜〜〜い旅にでるトモダチには、コレくらいすんのサ」
 それから隣に目をやる。「ねェ?シキ」
「ああ」
 シキは穏やかに頷く。見上げるエルには、まだ妹のすがたがうっすらと重なる。
 
「受け取って欲しい」
 宇宙の果ては、どんなかたちをしているのだろう。
 それがどんな広さで、どれほどの時間がかかるのか、予想もつかないはるかに行くこどもたち。

 ――……。

「ア」
 と。
 ヴァシリッサはなるべく自然な感じに
「忘レる――トコ、だッた」
 そう、なるべく、なるべくである。あんまり意識すると声が裏返りそうなのだ。

「ジャーン!」
 ポケットから密かに購入していたそれを取り出す。
 キーホルダー、正しくはキーリング、と呼ばれる代物である。
 手のひらにおさまるほどの大きさの金属製。
 スナップフックから下がる金属の輪は宇宙ミジンコの形をしており、このミジンコに鍵を通しててぶら下げても良いし、普段の鍵につけてどこかに引っ掛けて収納するのに使う――という、そういうものである。

「ゴ縁?繋がりには――繋げて結ブ道具、ッてね」
 ヴァシリッサは開いて立てた手、三と三、人差し指、中指、薬指に通してちゃらちゃらと揺らしてみせる。

「なんか、ティーンエイジャーのお土産みたいね」
 サラッとヴィッキーが言うのを「問答無用、拒否権ナーシ♩」いつも通り強引にスルーしながら配る「エル・チャンにデフィー」「ほわーー」「ほわあ〜〜〜〜」ふたつ「ヴィッキー」『アイ、首輪にでも下げりゃいいかしら』ひとつ。

「これがアタシで」
 ばち、っと。
 ヴァシリッサとシキの目が合う。
 
 さて。
 ヴァシリッサが密かに緊張していたのには理由がある。
 彼らには教えていない秘密があるのである。
 この商品。
 ぱっと見でははっきりとわからないが。
 宇宙ミジンコの向きやら表情が、ふたつひと組み――|ペアの《・・・》商品なのである。
 
 ヴァシリッサ・フロレスクには――こわいこと、臆病なところがある。
 い大事なものがあって。結び続けようとしたとして。
 結ばれた繋がりは容易に切れることだってあること。
 大丈夫だと座っていたとして。
 その椅子がひっくり返される可能性があることも――ひっくり返した側だから、知っている。

 だから、たいせつなものには――ひとつだって多く、つながりが欲しい。
 言葉はときに簡単に違えてしまうから、たまには、モノを。

 ティーンエイジャーのお土産?
 笑わば笑え。
 
 それだって、大事なつながりの、よすがの一つになりうるのだ。

「ハイ、シキ」
 ヴァシリッサはシキに向かって差し出す。「アンタの分」
「――…」
 シキは差し出されたキーホルダーを、少しだけ眺める。
「キーホルダー?」「ソ」
 ヴァシリッサが自らのぶんだと言ったのを揺らしたのでそれを見て。
 それから――今、差し出されているのを見る。
 なんとなく、似ているというか。
 揃いのようだな、と思考によぎる。 

「ヤ?」
 ヴァシリッサが笑う。
 すこしだけ、少女みたいに。

 ――…。
「いや」
 シキは指を伸ばして、きちんと受け取る。

「そうだな、これなら」
 多分、彼女と対になっている――鍵を、むすぶものを。

「ンで」
 ヴァシリッサは内心ほっとする。
 シキがまじまじと眺めた時には、すこし心臓がはねるようだった。ヴァシリッサにはうまい言いくるめなんて浮かばないのだから。
「こっちがフォルの分――あ」
『ん!?なあに!?不良品!?』ヴァシリッサが一時停止したのでフォルはクエスチョンマークで疑問を提示。『不良品でもいいよ、むしろそういう傷がある方が可愛いかも!』
「Hm」ヴァシリッサは首をかしげる。

「フォルはドコに付けようか?」
 なんてったって群体のカードである。

『あ』
「フォルにもそろそろヴィッキーのような義体があってもいいのかもしれないな」
 シキは笑ってヴァシリッサからフォルのぶんも受け取る。

『ネズミはどう?』ヴィッキーが言い出して『やだよ!ヴィッキーに捕まっちゃうじゃん!』フォルが言い返す。『捕まえてパンチ喰らわせたいから言ってんの』「意外と狭いところも入れて便利カモよ?」ヴァシリッサが茶化して『シキ、ネズミだけはやめてね、ぼく鳥でも犬でも猫でも魚でも文句言わないから!!』泣きつくフォルを「検討しよう」シキが軽く流す。『検討しないで!確定して!』「冗談だ。良いのを探そう」『ひゅーーーーーー!!!』『チッ』「アッハ」

「なかよしだねえ〜〜〜」
 のほほん、とデフィーが腹を揺らす。

「マ、ご覧の通りサ」
 ヴァシリッサは笑って、顎で示す。

「エルとデフィーも負けないくらい仲良しで行ってくるよ!」
 エルはお菓子とキーリングをしっかり握り込んでデフィーの傍に飛んでいく。
「ja!――気をつけて・ネ!」
 ヴァシリッサは大きな声を出して彼女たちに呼びかける。

「Von Voyage!」
 ヴァシリッサは景気よく押し出すように呼びかけて――彼女たちのむこう、暗闇に広がる星に目を細める。

 ヴァシリッサの後ろで、シキは静かに彼らに手を振って――そうして、おろしたその先で。
 たった今受け取ったばかりのキーホルダーのささやかなきらめきが目に入る。
 少々特殊な表面加工をしているのだろう。
 あちこち星のひかりを受けて瞬くその光。
 どこかチープで。さわがしくて。やかましい。
 にぎやかな――今こうして、ヴァシリッサたちと過ごす日のようなかがやき。

 全く大変だけれど、嫌いではない。
 
 シキはキーホルダーを落とさないようしまい、あふれる星に目を細める。
 ヴァシリッサに倣い、唇だけで唱える。
 ボンボヤージュ。
 どうか、良い旅を――願わくば、キーリングのきらめきのような、ささやかでいて騒がしい旅を。


 ヴァシリッサもまた、唇だけで唱える。
 
「また、ネ♪」
 
 これだけ星があるのだ。
 きっとどれか一つくらい、願いを叶えてくれるに違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

●いとしきじょうみょうのものどもよ
うむうむ
くるしゅうないくるしゅうない
と奉納されたミジンコ饅頭、略してミジまんをミジンコくんの上でお腹いっぱい食べてボクは大満足!
そんな感じでお祭りを見て回ったあとミジンコくんを訪問しよう

●そういえば
この宇宙ってどう終わるんだっけ?
ビッグクランチ?ビッグリップ?
ハッ!?まさかここって準定常宇宙論な世界なのーっ!?
わーぉ!アッナログぅ~
それなら宇宙でも音くらい聞こえるようにしとけばいいに~

いやいやでもやっぱり先には何があるか分からない方が楽しいかな?
うんうんその方がいいよね!
宇宙の端に行ったらそこに何があったか教えてね~
愉しみにしてるよ!



◯いとしきじょうみょうのものどもよ

「うむうむっ!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はデフィーのお腹の上で腕を組んでふんぞり帰った。

「くるしゅうない、くるしゅうないであるぞ〜〜〜〜〜〜〜〜」
 ばっと広げて上半身をおお〜〜〜〜きく逸らす。

「ボクのおかげなのだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
 さっきまであったマントもバッサー!と開く。

「ってしたらあとはオールオッケー、って感じ!」
 そしてポーズダブルピースにウィンクで、キメっ!!「さっすがボク!」

「わ〜〜〜〜〜お〜〜〜〜」ロニの前、目をぱちくりさせるエル。
「わ〜〜〜〜〜〜〜お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……!!」感嘆で両手をぶるぶるさせるデフィー。

「かみさま、すっごい、すっごいすご〜〜〜〜〜〜〜〜い!!」
 そして感嘆だけではこらえられなくなったらしく、拍手するエル!
「すごいすご〜〜〜〜〜〜〜〜い!!」
 ぶるぶるした両手をぶんぶんし始めたおかげで体全体が揺れるデフィー!

「そうでしょそうでしょそ〜〜〜〜〜〜でしょ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
 ロニは思い切り鼻息を吹き出す。むふーーー!!「もっと拍手して!ぱちぱちして!崇めて!!」おねだりもしちゃう。

「「すごーーーーーーーーい!!!!!」」
「ふふーんだ!どーーーんなもんだーーーいっ!!」
 ロニは誇り高く薄い体を再び大〜〜〜〜〜きく、逸らす。
 イイ。とてもいい。心が大変満たされる音がする。

 さっきだってまったくとっても大変満たされる心地がしたけれど、その後にこうして人類以外から褒め称えられるとさらに心が満たされる。ベリーハッピー。幸福なことこの上ない。

「人心掌握、人心把握ってそうするんだねえ〜〜〜〜」
 エルが心底関心したようにふかぶか頷きながら宇宙ミジンコ飴を一個取って口に放る。
「あ、キミにはダメだよ」
 ロニは素早く釘を刺しておく。「ボクだからできるんだから」
「わかってるよぉ」エルが膨らませたほっぺの中で飴玉を転がしながら反論する。
「わかってるならよろしいっ」
 ロニは鷹揚に頷いて宇宙ミジンコ饅頭。略してミジまんにかぶりつく。
「んん〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡」
 ロニはとろんとした顔で甘さとおいしさを堪能する。勿論饅頭がこれで何個目かなど数えていない。カワイイの維持には果てないカロリーがかかるのである。ほんとほんと。

「貢がれるお菓子ほど美味しいものはないよね〜〜〜〜〜〜っ」
 ロニの前にはいま、このミジまんを初めとする様々なお菓子が輝いている。
 宇宙ミジンコ型チョコレートに口の中でふわふわ膨らむラムネ、食用ラメの綿菓子、ビスケット、クッキー、ドライフルーツにチョコレートをまぶしたもの。

 全てタダである。貰い物である。なんならどうぞ差し上げますとまで言われた。
 見ているだけでほしいと思われ貢がれた。 
 ……あんまり多くあるから、普段はお菓子を取られるとちょっと気になってしまうしなんなら文句も言っちゃうけれど、今日ばかりは見逃してあげている。

 神とは分け与える心もひろ〜〜〜いのである。ピースピース。

「なんかちょ〜〜〜っとアヤシイ気もするなぁ」
 エルがミジまんを手に取り、包装紙を剥きながらつぶやく。
「ふふ〜〜〜ん」
 ロニは最後の一口を勢いよく自分の口の中に放り込んだ。
「キミは分かってないなぁ〜〜〜〜〜〜」
 ニヤニヤ笑いでもっちもっちと咀嚼。「んん〜〜〜?」「ふふーん。迷える子羊よ、人の心とはけっこー容易いものなのです…」それっぽい口調でそれっぽく切り出してやる。とはいえ表情はニヤニヤいたずらっ子のままなので、可愛らしいが先に立つ。

「安心の依りどころっていうのは、人にいっちばん必要なことなのさ」

 ロニ・グィーが何をしたのか?
 なんのことはない。

 ロニはララ・デア宇宙港の騒ぎの功績のだいたいを『自らが猟兵である』として主張して掻っ攫ったのである。

「人はみんな、もう大丈夫だよ〜〜〜って誰かに言われて、安心したいのさ」

 悪役っぽい眼帯をいつものに変えて。
 マントはちょっと端っこをぼろぼろにして内側と外側を逆にして。
 ついでにちょっと乱闘したっぽい汚れをかる〜〜くつけて。

 大混乱の職員が悩んでいるところに訪れて、問題は全て解決したと説いて一緒に中まで確認してあげたのである。

「いつまでも不安要素が残ってると、人は慎重になっちゃうんだよね」
 饅頭で口の中が甘くなってきたロニはストローで暖かいお茶をのむ。
「あのままだったら空港はしばら〜〜〜〜く封鎖だったよ」ちゅるる。
「これでキミたちは落ち着いて旅ができて、空港のみんなは対策だけ打てばよくてにゅうボクって優しい!」
 ミジンコゼリーを咥えたままのエルが無言で拍手する。
「む」ロニは唇を窄める。「信仰が足りないぞ〜〜〜!もっと拍手して〜〜〜〜〜崇めて〜〜〜〜〜〜!」手のひらを上に向けて仰ぐようにして更なる拍手を催促。
「すごいすご〜〜〜〜〜〜い!」デフィーの感想も加わったのでそこで満足してきりあげておく。「よろしいっ」

「……」ちゅるるん。エルがゼリーを吸い込み終わる。
「お祭りスーパー無料タイムが欲しかったんだよね?」

 エルの静かな問いに、ロニは小悪魔的に微笑んで舌を出す。

「もらって一番嬉しい人がもらったほうがハッピーでしょ?」 

 出した舌にラムネを乗せて、ペロリ。

 そんなわけで、ロニはララ・デア惑星都市であっという間に話題になり、あっという間に英雄扱いを受け――お菓子どころかお祭りの品物貰い放題の権利をを得たわけである。

 幼い、カワイイ……というのはこういう時本当に良いことである。
 誰からもかわいい、すごい、だとか賞賛と愛玩を受けまくった。程度としては軽いのかもしれないが、それが惑星都市のお祭りの中でともなると別格だ。
 祭りの中心になるなど全くもって久しぶりであった。

「下手すればお祭り中止だったかも、な〜〜んていうことも聞いたぐらい混乱してた現場を大人しくさせたから、これは当然の権利なのだ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 高らかに宣言してロニは後ろにころんと身を転がす。「も・う・た・べ・ら・れ・な〜〜〜〜〜いっ!」

 しかもめんどくさそうな取材をお祭りに紛れて全ブッチして逃げてきた。急に行方不明になってあのひとたちはびっくりしているかもしれない。
 ともするとロニは当分『謎のすごい猟兵』として讃えられる可能性だってある……なんてことまで想像すると笑いだって湧いてくる。

「う〜〜〜ん、いいね。貢ぎ物でお腹いっぱいだけどまだある。サイコーーーー!」
 ロニは両手でお腹を撫でさする。
「じゃ持って帰るの?」ご丁寧にもエルが訊いてくるので
「いらなーい」ロニは素直に答える。「しってる?貢物が余ったら神官たちが食べるものだったんだよーーーーん」

「じゃあ、残りエルとデフィーがもらっちゃうよ〜〜〜??」
 たっぷりと遊んだからなのか、ロニに対するエルの態度はすっかり軟化している。
「いいとも〜〜〜〜!神様のごじひをうけとりたまえ〜〜〜〜〜!」
 ロニも適当に手をあげ、ぷらぷら振って返事をする。
「そのままいきてゆくエネルギーにするがいい〜〜〜〜〜〜っ!!」 
「はは〜〜〜〜〜〜っ」「ありがたきしあわせ〜〜〜〜〜〜」
 かわいらしい命が冗談をたっぷり込めてかわいらしい返事をするので、ロニはご機嫌でくすくす笑い。

「そいえばさ」
 ばっと身を起こした。
「この宇宙ってどう終わるんだっけ?」
 仔らが行く先のことをちょっと思うと気になるところである。主に興味的な意味で。
「どう?」エルが首を傾げる。

「|過密度状態気化《ビッグクランチ》 ?|解散無化《ビッグリップ》 ?」
 いや|完全冷化《ビッグフリーズ》もあるな 、などとロニは呟くが、エルは本当に心あたりがないようで、エルはまばたきを繰り返す。

「ハッ」
 ロニは口をまんまるに開ける。美少年にあるまじき喉彦まで丸見えの大口だが、あいにくこの場には叱るものも引くものもいない。
「まって端っこってことは」
 本人だけが気づいて自らの両手で自らの口元を覆う。
「……もしかして……まさかまさかの……|宇宙は永遠に広がらない《準定常宇宙論》!? 」
 え〜〜〜〜っ!!ロニは一人叫んで再び横になる。「え〜〜〜〜〜アッナログすぎな〜〜〜〜〜〜い!?」ついでに足をバタバタとしてデフィーのお腹をぽいんぽいん鳴らす。
「そんならせめて宇宙でも音くらい聞こえるようにしとけばいいのに〜〜〜〜〜〜〜!!」
 ぽいんぽいんぽいん。「お喋りできた方がと〜〜〜〜〜〜〜ぜんたのしいんだからさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「終わりってそんな大事なの〜〜〜??」エルは顔を思いっきり顰めっつらに歪めてロニの側に寄り「そっちはおわりがわかってるんですかあ〜〜〜〜〜〜!!」ロニのお腹をぽんぽこ叩いてから
「デフィ〜〜〜〜〜」ぽいんぽいんとミジンコのお腹を叩く。「終わり、知ってるう〜〜〜〜?」

「おわりってなあに〜〜〜〜?」
 ………。

「いや確かに神様のおわりってな〜に〜っていわれるとそれは結構結構哲学的っていうかぁ、むずかしいところだけどお、ボクだって一度終わってるのかもしれないしぃ」仰向けでぶうぶう入っていたロニはそのデフィーの返事に「ん?」ころんと転がりうつ伏せに体勢を変える。「待って」

「もしかしてわかんない系?」
 ロニは手をついて上半身を起こし――宇宙ミジンコを見下ろす。
「終わりがわかんないのに、キミたちの旅はどこで終わるの?」
 ロニの質問に、エルは答えない。
 彼女はもうデフィーとゆくところまで行くと決めているだけなのだ。
「ん〜〜〜…」
 デフィーには珍しく、少しばかり思案するように溜めて。

「いけばわかる、っていってた」
「いけば?」
 ロニは思わず復唱する。「わかんないけど、いけばわかる?」「うん〜〜〜」

「きみ〜〜〜〜〜んな“それぞれ”だから――ひとくちにはならなくて、
 ――でも、だからこそ、いけばわかるんだよぉ〜〜〜〜」

「ほほ〜〜〜う…?」ロニは上半身を崩して再びうつ伏せになる。
「い・け・ば・わ・か・る」言葉に合わせてミジンコの腹を叩く。
「うん」デフィーは穏やかに肯定する。

「行けばわかるよ、行けば分かるって――どうしてか、知ってる」
 
 それからデフィーは、ちょっとだけ手を揺らした。「へん〜〜〜〜?」
「いやいや」ロニは
「いやいやいや!」
 ロニは――笑っている。

「いいね!」
 両手でぽいん、と宇宙ミジンコの腹を叩いて大肯定。
「やっぱり先に何があるかわかんない方が楽しいよ」
 もう一回両手で叩いて下半身、しゃがみに姿勢を直して。
 
「うんうん――その方がいい!」
 さいごのぽいん、は両の足。
「その方がいいよ、サイコー!」
 膜の上に立った神は、まだ未知の宇宙を眺め遣る。

「そうと決まればボクが引き留めてるわけにはいかないよね!」
 ぐっと体重をかけて、宙に飛び上がる。
「急いでもいいよ!ゆっくりでもいい――キミたちの好きに行くといいよ!」
 星々のような祝福を叫びながら、ロニはそこから去ることにする。

「でも、宇宙の端に行ったらそこに何があったか教えてね〜〜〜〜〜」
 
 とびっきりの笑顔で見送る。

「――愉しみにしてるよ!」

 デフィーが宇宙をひろげるとき、今を生きるもののどれほどがそれに立ちあえるだろうか。
 未来はわからない。
 けれどこの神は望めばそこに会うことができるわけで。

 つまり――それはちょっとばかりわかりづらいけれど。
 全く素敵な“また会いましょう”だった。



 宇宙は今日も星を歌う。
 孤独も生も死も願いも――那由多でたりぬすべてが歌っている。
 『そこ』に届くのは、きょうかもしれない。あしたかもしれない。
 ふたりかもしれない。

 ……もしかしたら、ひとりになってしまうかもしれない。

 故に宇宙は無重力に満ち溢れ、すべては軌道のままに交わり、入れ替わり、周り。
 
 踊り続ける。
 見知らぬ最後までの道中を、少しでも楽しむように。
 
 星のようにさまざまなことが輝いたのなら。
 見知らぬ最後も、きっと怖くなかった。

 (“because child's crying at Night”――Fin)

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月27日


挿絵イラスト