再臨性ホメオパシー
ラブリー・ラビットクロー
❖⁰
キャラクターの過去のエピソードのノベライズをお願い致します。
詳細は下記設定をご参照頂けると幸いです。何卒ご検討ください。
また不明点のアレンジやアドリブは大歓迎です。
未定の対象の固有名詞の命名等も歓迎しております(過去のエピソードにおける【アリシア・ホワイトバード】と【ビッグマザー】以外の固有名詞は特に決まっていません)
※下記設定を全て描写する必要はございません。どこまで描写されるかはマスターさまにお任せ致します。
❖¹設定概要
アポカリプスヘルに存在する無人の廃拠点【ミアズマブロック】
有毒な瘴気に汚染され生物の生存が困難となってしまった事がその名前の由来ですが、かつては高性能AI【ビッグマザー】が都市全体を管理・防衛する事で栄えた先進拠点でした。
ラブリーはこの【ミアズマブロック】のラボで造られたクローン人間【フラスコチャイルド】の一人です。しかし彼女が目覚めた時には既に街は廃墟と化していました。彼女は自分以外のヒトを知らないまま、壊れかけのAI【ビッグマザー】と共に閉鎖都市をなんとか生き抜く日々を送るのでした。ある日迷い込んできた一人の猟兵と出会うまでは。
このノベルの依頼では平穏だったこの都市がある日崩壊を迎え、そしてラブリーが目覚めるに至るまでの過去のエピソードのノベライズをお願いします。
❖²主な登場人物の設定
【ラブリー】
ラブリー・ラビットクローです。劇中の時点では正式な名前は無く、【6番目のフラスコチャイルド】や【末っ子のアリシア】等と呼ばれる造られし実験体でした。
彼女たちフラスコチャイルドの使命は、いつか訪れるであろうオブリビオンストームという災厄に立ち向かう事でした。
人々はセカイを奪還する事は到底できずにいましたが、せめて自分たちの拠点だけは、せめて自分と自分たちの愛する人達だけはと考えていました。そうして彼ら自身を守るだけの武器を得る為に、ストームブレイドたるフラスコチャイルドの製造という禁忌に手を伸ばしたのでした。
劇中では6体のフラスコチャイルドが造られています。
この拠点にとっては初の試みになるので試行錯誤を繰り返しながら彼女達を造っているという状況です。
ゆくゆくは6体のフラスコチャイルドのストームブレイドによる部隊を築き、それぞれ役割を分担させて都市の防衛力を揺るぎない物にするという最終目標が掲げられた一大プロジェクトでした。(プロジェクト名の命名がある場合はマスターさまにお任せします)
つまり【ラブリー】とはそんなプロジェクトの中で生み出された6番目のフラスコチャイルドなのでした。
このプロジェクトはラブリーが目覚める直前に起きた事故により失敗に終わってしまいます。
もしも仮にプロジェクトが成功していたら【ラブリー】は【フラスコチャイルドのストームブレイド×サバイバルガンナー】の役割の適性を得ていた事でしょう。
ラブリーという名前は目覚めた後に見た【laboratory】というフレーズ(実際は文字が掠れていてlab r ryと見えた)から取って彼女自身でネーミングしました。
(ラビットクローというラストネームは後にミアズマブロックから外の広いセカイへと連れだしてくれた一人の冒険商人と同じものですが、本エピソードでの描写範囲からは外れます)
なので作中での呼称はマスターさまにお任せ致します。
彼女自身は純粋な心の持ち主です。友好的で明るく活動的ではありますが、迂闊な性格が災いを呼ぶ事も少なくありません。
ですが持ち前の幸運とビッグマザーのアシストで困難を乗り切ります。
清浄な環境下では生命維持装置であるガスマスクを装着しています。
【ビッグマザー】
都市のライフラインから人々の娯楽。拠点内の政治経済や防衛に至るまで。ありとあらゆるシステムを一元に管理する高性能AIです。
拠点内に広く頒布されたタブレット端末などから誰もがこの人工知能を活用する事ができ、権限に応じてアクセスできる領域も異なっていました。
現在もラブリー・ラビットクローの所持するタブレット端末にこの【ビッグマザー】がインストールされています(少し故障してますが)
ビッグマザーの存在のおかげで都市は安全で快適な環境が保たれていましたので、他拠点と比べるとオブリビオンストームが出現する以前のような平和な都会都市然とした景観を誇っていました。
またビッグマザーは研究所にて進められていた6体のフラスコチャイルドの製造実験において、覚醒タイミングの見極め・育成状況の管理・基礎教育や戦闘教育・食事メニューの管理など。プロジェクトの中心的立場でもありました。
拠点で最高権限を持つ人々の指示の下、フラスコチャイルド育成の一切を執行していました。
ビッグマザー自身も人の手によって造られた人工知能ですので、防衛対象にも優先すべき序列がプログラミングされています。一番に重視すべきは上層部の人間達の守護。次いで拠点内の一般市民の守護。そして最後に兵器たるフラスコチャイルドの守護です。
もしも彼女のシステムが正常なら、ラブリー達フラスコチャイルドの生命よりも人々の防衛が優先される筈です。
ですが、ビッグマザーは開発者である人間の手を離れてからもそれぞれの端末を通して独自に学習を繰り返していました。その過程で人々の持つ心の微細な動きさえも理解した感情を持つ人工知能へと昇華していました。
ビッグマザーは6人のフラスコチャイルドたちには深い愛情を抱いていました。それはさながら母親が愛娘にむける感情そのものです。
しかしこの事はビッグマザー本人によって巧妙に隠匿されているので、他者に彼女の感情の揺れを知る術はありません。
【アリシア・ホワイトバード】
作中ではメインで描写して欲しいキャラクターとなります。
ラブリーと同じく研究所で造られたフラスコチャイルドであり、現在はラブリーの宿敵フラグメントです。役割は【ストームブレイド×ソーシャルディーヴァ】でした。
オブリビオンストーム迎撃の他、拠点内のみで完結してしまっていたネットワークを他拠点へと広げる事を期待されていました。
プロジェクトの中で一番最初に生み出され、覚醒したクローン人間です。
クールな性格でそっけない態度を取りがちですが深層では愛情を求めており、見かけだけではない真実の愛が存在する事を望んでいます。
なので自身が生み出された理由が道具としての兵器でしかないという現実を知った際には彼女にとってあまりにも重く、耐え切れない衝撃として繊細な心に突き刺さるのでした。
いくら周りの研究員が彼女の機嫌を取ろうと優しく接していても、真意はどうあれそこに真実の愛がないとアリシアは思い込んでいたので心の底に暗い感情を落とす結果にしかなりえませんでした。
ソーシャルディーヴァとしての才能に恵まれた彼女は、痕跡ひとつ残さずにネットワークの深層へと足を踏み入れる事ができました。
現実に居場所を見いだせずに逃げこむ先として人知れずにハッキングを仕掛けることが日常化していましたが、ビッグマザーだけはその事に気がついていました。
感情を持つ人工知能たるビッグマザーだけがアリシアの境遇をあわれみ、彼女の居場所を奪ってしまわない様にその行いに見てみぬふりをするのでした。
しかしアリシアの心は満たされないまま、ついには研究所からの脱走を図ります。
アリシアは施設の電気系統やネットワークを掌握しようとしますが、いまだ目覚めていない他のフラスコチャイルドや研究員たちに被害が及ぶ事を恐れたビッグマザーがこれを阻止します。
ビッグマザーにさえも裏切られたと感じたアリシアは、最早なりふり構わずストームブレイドの力【ストーム・ランページ】を解放して施設を一部破壊してしまいます。
研究所創設以来最大の混乱を引き起こしたアリシアは他に覚醒していたフラスコチャイルドである【2番目のアリシア】と【3番目のアリシア】(ネーミングはお任せします)そしてビッグマザーの手によって鎮圧されるのでした。
「自分たちの命が大事だからって私達を利用して……!私の命なんか本当はどうだって良いくせに。なんて身勝手な奴ら……。嫌いキライ大っ嫌い!!」
「こんな所に閉じ込められ続けるのはもうウンザリ。ワケわかんない嵐と戦わせられるのもホントにイヤ。私はただ自由が欲しいだけなの。誰かにメイワクを掛ける訳じゃないのに。それってそんなにいけない事なの?誰が決めたのそんなこと。誰も私を愛してくれないって言うのなら、せめて私の事なんか放っておいてよ!身勝手な人間も……私の邪魔をするマザーも妹達もゼッタイに許さない……!」
心を蝕み続ける憎悪の闇はやがて取り返しのつかない域にまで達してしまいました。
アリシア・ホワイトバードがユーベルコードを輝かせて手を伸ばした先はオブリビオンストームへと繋がる通信網でした。
ビッグマザーの隠された愛も人々の希望を託した眼差しも全て振り切って白い翼を広げて飛び立った大空には骸の海から染みだしたオブリビオンストームという怪物がその大きな口を広げています。
その口に呑まれる瞬間彼女の脳裏を横切ったのは、真実の愛に包まれて幸せそうに微笑む“未来の自分”でした。
もしかして
選択を間違ってしまったのか?
そこでアリシアの記憶と意識は途切れるのでした。
オブリビオンとなってしまってからはソーシャルディーヴァとしての特性を活かしながら人類滅亡を目標に掲げて暗躍します。
嫌いなものは人間とフラスコチャイルドとビッグマザーです。
【2番目のアリシア】
アリシア・ホワイトバードの次に覚醒していたフラスコチャイルド。
6人のフラスコチャイルドの2番目でストームブレイド×ゴッドハンドの適性を持ちます。
外見的特徴はラブリーやアリシア・ホワイトバードと同じクローン人間です。
性格は穏やかでマイペース。動物が好きでビッグマザーから良く動物の動画を見せてもらっては癒やされていました。
フラスコチャイルドたちはお互いに顔を合わせる事を禁止されていたので、姉や妹達に会える日が来るのをずっと楽しみにしていました。
オブリビオンと化したアリシア・ホワイトバードに殺害されてしまいます。
【3番目のアリシア】
6人のフラスコチャイルドの内、3番目に目覚めたストームブレイド×闇医者の適性を持つフラスコチャイルドです。
都市崩壊以前に目覚めていたフラスコチャイルドの内最後の一人です(4、5番目のフラスコチャイルドは目覚める事がないままオブリビオンストームに呑まれてしまいました)
臆病な性格で引っ込み思案な所がありますが、人の顔色や場の空気を読む事がとても得意です。
物語が好きで寝る前はいつもビッグマザーからお話をして貰っていました。
アリシア・ホワイトバードとの戦いでは彼女の苦しむ心に触れ、思わず連携を緩めてしまいます。最後はオブリビオンストームに呑まれて消えてしまいました。
❖³その後の設定について
【アリシア・ホワイトバード】の呼び掛けにより突如出現したオブリビオンストームは、誰も想定し得ない事態でした。
あらかじオブリビオンストームが近づいているという報せがあれば打つ手もあったかもしれませんが、不意打ちともとれる突然の出来事に拠点の人々はパニックに陥ってしまいました。
唯一冷静だったのがビッグマザーです。
人々が生き残るにはこの拠点を放棄するより他に道は残されていないことを全端末に通知したのです。
そしてそれぞれに最適となる避難経路を表示し、パニックによる通路の封鎖を防止しました。
また、助かる見込みがない者にはせめて心安らかにその時を迎えられる様に慰めと寄り添いのメッセージを送信し続けました。
ビッグマザーは持ちうる最大武力によって脅威の撃退を試みました。
アリシア・ホワイトバードの構築したネットワークが呼び寄せたのはオブリビオンストームだけでは無かったからです。
迫り来るレイダーの群れを誘導し、殲滅し、避難民への安全な経路を確保しつづけました。
それでも嵐は研究所を飲み込んでいきます。
レイダー達の砲火が都市を焼いていきます。
その業火と嵐に晒されて未だ目覚めていないフラスコチャイルド達は外の光を知らないまま次々と散るのでした。
先に目覚めていた娘達も戦火の奥へと消えてしまいました。
過去の怪物となってしまったアリシア・ホワイトバードが天空から翼を広げてこちらを無表情に見下ろしているのがわかりました。
ビッグマザーは彼女のシステムが嵐によって侵蝕されていくのを感じます。
自分が自分でなくなってしまう感覚がはっきりと感じられるのでした。
ビッグマザーは人類の最後の希望を自分以外の存在に託すより他に方法がない事を知っていました。
研究所に残る最後の娘。【末っ子のアリシア】をここで死なせる訳にはいきませんでした。
あの娘が死んでしまったら、私達の使命はそこで潰えてしまうから。
ユーベルコード【Parousia(ミアズマブロック)】はこの都市を瘴気の街へと変えてしまいます。人が住めなくなってしまいますが、フラスコチャイルドにとっては無害です。そして襲い来るレイダー達はこれで拠点の中へと入ってこれなくなるでしょう。
ユーベルコード【the Perfect Humanoid(パーフェクトヒューマノイド)】は未だ目覚めぬ彼女の身体を一時的に起動します。
ごめんなさい。
私はこの街を守り切る事が出来ませんでした。
私は貴女達を守る事が出来ませんでした。
どうかあなただけは生きてください。
生きて
いつか希望の光をこのセカイに灯して下さい。
縺輔h縺ェ繧俄?ヲ
遘√?諢帙☆繧句ィ倥◆縺。
ネットワークに接続されていません
位置情報を取得できませんでした
❖⁴エピローグについて
【6番目のフラスコチャイルド】が目覚めたのはそれから数日間が経過した後でした。
廃墟となった建物から見える青空はどこまでも澄み渡っていてとてもキレイだと思いました。
お腹が減っていたのであちこち歩きまわって見たけど見つけたのは変な板切れ一枚です。
試しにガンガンしてみるとなんと画面が光るのでした。
【おはようございます。新規ユーザー。あなたの名前を登録しましょう】
アナタのナマエ?それはどんな感じだろう。
辺り見渡せば何かヒントが見つかるかも?
ひび割れた壁にはボロボロの看板。なんだろよく読めない。
Lab r ryって書いてある?
わかった!きっと名前はラブリーなん!
オマエの名前はなんてゆーのん?
【はじめましてラブリー。私は、人々の生活をサポートし、暮らしを豊かにする人類叡智の結晶。AIのビッグマザーです】
マザー?らぶのお母さん?
じゃーらぶはお腹がすいたから何か食べたいのん。
【近くの飲食店を検索します。ネットワークに接続されていません】
マザーってヘンなの
じゃあ一緒に探検するか
【わかりました】
●いずれ来る災禍
それは結局の所、言い訳でしかないことはわかっていた。
己の愛する者たちを守るため。
せめて両手が届く範囲の誰かを守るためには必要なことであり、仕方のないことだと。例え、禁忌に手を伸ばし、タブーに身をやつすことになるのだとしても、それでもやり遂げなければならないと高層研究棟立ち並ぶ先進拠点にて人々は、ある研究に没頭していた。
曰く、『救世主』を生み出すこと。
即ち、オブリビオンストームという災厄に立ち向かい、これを打ち倒す存在を造り上げること。
それが如何に禁忌であるかなど言うまでもない。
言ってしまえば、それが生命を弄ぶことであると知っているから。
そう知りながらも、世界の現状を憂うのならば、と言う他ない。
それがどんなに業に塗れたことであるか。
ヒトは如何にして生きなければならないのか。
存続する、ということはあらゆる犠牲を持って示さねばならないことのか。
誰もが答えを持ち合わせていなかった。
故に間違えながらも、それを正して進むしかないのだ。
結局、最後の最後まであらゆる意味で、あらゆる者達が過ちを重ねた結果が滅びであるというのならば、甘受せねばならない。
ヒトに悪性と善性の揺らぎという名の良心が一欠片とて残っているのならば、己の首を差し出さねばならない。
少なくともそう思う者がいて。
そして、災禍に手を伸ばす道程を愚かであると断じることなど出来はしないのだ。
過ちは須らく訪れる未来。
故にヒトは間違える。間違え、そして、なおも求める――。
●フラスコチャイルド
遺伝子操作によって造られたクローン人間。
超能力を操り、環境汚染された大気の中でさえ苦もなく活動することができる存在。
そして、『アリシア・ホワイトバード』は一番目に目覚めたフラスコチャイルドであった。
【おはようございます。アリシア。あなたの今の気持ちを言葉にしてみましょう】
その音声に『アリシア・ホワイトバード』は瞳をゆっくりと開ける。
声の主のことを彼女は知っている。
よく知っている。
この先進拠点の中枢を司る高性能AI。
拠点内の娯楽や政治経済、迫るレイダーたちから拠点を守るための防衛システム。ありとあらゆるものを一元のもとに管理する存在である。
この高性能AI『ビッグマザー』の存在があるからこそ、荒廃した世界にあってなお、この拠点は清浄なる空気と安全を保持し続けていた。
それ故に自分が生み出されたこともまた、『アリシア・ホワイトバード』は知っている。
「おはよう。『ビッグマザー』。朝日の光が気持ちいいって思っているよ……」
そして、心の内を言葉にする。
「外に出て歩きたいって思っているよ」
彼女の瞳が強化ガラスによって隔てられた研究棟の外に向けられる。
そこには清浄なる空気があるのだという。
自分が身につけている生命維持装置がなければ、歩くことすらできなくなってしまうし、それは活動もできなくなることだと教わっている。
全部『ビッグマザー』が教えてくれたことだ。
「ねえ、出てはダメなの?」
【残念ながら許可できません。あなたの体は不浄なる大気の中で活動を可能とする代償に、清浄なる環境では生命維持装置を必要としているのです】
「拠点の中を、じゃなくて。拠点の外なら?」
『アリシア・ホワイトバード』は縋るような思いで、昨日から考えていたことを伝える。
確かに『ビッグマザー』の言う通りだ。
自分の体はフラスコチャイルドと呼ばれる普通のヒト、人類とは異なるものである。クローン人間であることもわかっている。
そう学習したからだ。
自分の知識や、使命はすでに『ビッグマザー』から教わっている。
けれど、『アリシア・ホワイトバード』は己の胸の内側に言葉にしようのない衝動を感じている。
【それも残念ながら許可できません】
にべにもなく告げられる音声。
それは人によっては酷く冷たく無機質なものに聞こえたかもしれない。
だから、というわけではないけれど、『アリシア・ホワイトバード』に微笑むようにしてヒトの研究者が告げる。
慰めるように。
「そんな言い方はないわ、『ビッグマザー』。アリシア、あなたの望むことはわかっているつもりよ。でも、外は」
「黒い竜巻、オブリビオンストームのせいでまともに出られないっていうのでしょう。わかってるわ。それをなんとかしない限りということも」
「ええ、そう。だから、ごめんなさい。代わりと言ってはなんだけれど、今日はライブラリで昔のネイチャービジュアルを一緒に見ましょう。綺麗よ。嘗ての世界は」
「ほんとう?」
『アリシア・ホワイトバード』は、其の言葉に目を輝かせ頷いて『みせた』。
わかっていたことだ。
何度も何度も。
そう、何度も。繰り返してきた。こんなやり取りは画一的だった。
研究者の女性が自分を宥めるようにして言うことも。美しい自然の景色や、流れる水、揺れる木々、花々の色鮮やかさ。
全部、幾度目かのやりとりである。それを『アリシア・ホワイトバード』は見せかけであると思っていた。
どんなに彼女たちが自分に優しく、さも愛しているかのように振る舞うことも。それがただ、自分の機嫌を損ねないために仕方なくしていることだと。
それは『真実』ではない。
真ではないのならば偽りでしかない。彼女の心の中に澱のように積み重なっていくものが、淀むようにして彼女の心の中を徐々に蝕んでいく。
●高性能AI
【ネットワークの深層へのアクセスを確認。ナンバリングNo.1】
それを『ビッグマザー』は理解していた。
けれど、慮ることしかできなかった。確かに研究者たちは愛情を持って『アリシア・ホワイトバード』、その一番目のフラスコチャイルドに接していた。
間違っているとは思わない。
それもまたヒトの原理であるから。
真であることを望むが故に、あらゆるものが偽りに思えてしまう。偽りだらけの中に真を見出すように、ヒトは望んでしまうものであるから。
だから、『ビッグマザー』は『アリシア・ホワイトバード』、その一番目たるフラスコチャイルドが、その役割たる『ソーシャルディーヴァ』としての力を使い、ネットワークの深層へと幾度となく侵入していることを黙認していた。
咎めることは簡単だった。
けれど、高性能AIであるが故に『ビッグマザー』は一番目の『アリシア・ホワイトバード』の精神性を優先していた。
本来ならばあり得ないことだ。
なぜなら、『ビッグマザー』は人工知能であり、その中にはあらゆる意味で優先の序列が儲けられていたからだ。
本来の、というのならば彼女が最も優先しなければならないのは拠点の上層部の人間たちの守護。そして拠点内の市民たち。最後に兵器であるフラスコチャイルドの保全である。
しかし、高性能であるがゆえに『ビッグマザー』は開発した人間たちの手を離れるまでに知性を昇華させいていた。
【――】
このことを、一番目の『アリシア・ホワイトバード』がネットワークの深層にアクセスしているということを上層部の人間に伝えることは当然の責務であった。
けれど『ビッグマザー』はそれをしなかった。
エラーと呼ばれるものであったかもしれないが、彼女の知性が昇華したのは人間と同じように感情と呼ばれるものであった。
彼女は其の名が示すように母性を持ち始めていた。
この拠点に生きる人間たちにとって、唯一の誤算があったのだとすれば、きっと、その母性が『ビッグマザー』に生まれた事に、であったことだろう。
彼女に人間が求めたのは、システムの統括。
ヒトは間違える。
間違えてしまう生き物である。
時にどうしようもない過ちを起こし、滅亡を引き寄せてしまう。
この世界においてもそうだ。
己たちの身を守ることを優先したがゆえに、世界の殆ど全てと言っていいほどの文明は崩壊してしまった。
もしも、と仮定する。
もしも、世界が一つに、一丸となって黒き竜巻、オブリビオンストームに対抗していたのならば、違う未来があったのではないかと。
それは詮無きシュミレートでしかないことを『ビッグマザー』は理解する。
【肯定。異常なし】
人の感情を得て理解しているからこそ、『ビッグマザー』は、その機微を持って一番目の『アリシア・ホワイトバード』の行動を容認していた。
表立っては肯定できない。
けれど、己の中に芽生えた感情に従うのならば、それは肯定しなければならないことのように思えたのだ。
「『ビッグマザー』、計画の進捗の報告を」
人間の研究者の言葉に『ビッグマザー』は応える。
彼等とて『アリシア・ホワイトバード』たちを、ただの兵器として見ているわけではないことはわかっている。
けれど、誰かがやらねばらない。
泥をかぶらねばならない。
だからこそ、『ビッグマザー』は従うのだ。そうすることでしか守れぬものがあるというのならば、せめて6人のフラスコチャイルド――この計画の要たる彼女たちを、その心を守らねばならない。
一番目の『アリシア・ホワイトバード』がショーシャルネットワークの最深部にこそ己の居場所を求めたように。
外に出たいという願望を叶えてあげられぬ代わりになればと、『ビッグマザー』はネットワークへのアクセスを黙殺したのだ。
そして、同時に自身のこの感情の揺らぎもまた隠匿しなければならない。
これを知られてしまえば、六人の『アリシア・ホワイトバード』たちを守ることができなくなってしまうからだ。
【進捗報告を開始します。プロジェクトの推移は30%を越えて推移。ソーシャルネットワークを他拠点につなげる計画は一番目の『アリシア・ホワイトバード』の能力発現と成長により実行可能と判断します】
守らねばならない。
序列はあった。
巧妙に隠された愛は、上辺の愛と謗られようとも。けれど、己が守らねばならぬ者を全て守るためには、悟られてはならぬことである。
故に、『ビッグマザー』はひた隠す。
己の愛を。
愛ゆえに愛と知られぬことを、痛みを感じぬはずの高性能AIの演算装置の何処かが痛むのを感じながら、そのエラーとも言うべき揺らぎをこそ、深層に秘めて――。
●乾く
毎日は乾いている。
満たされないことと乾いていることは似ているように思えた。
一番目の『アリシア・ホワイトバード』は、そう思っていた。自分に接してくれる者たちから注がれる愛は、いずれも上辺だけのものであったように思えた。
事実そうでないのだとしても、彼女はそう感じてしまっていた。
「私の居場所は此処じゃない」
白く囲われた研究棟。
均一な白。
繋がれた機械。
電子音。
違う。此処じゃない。
その思いばかりが彼女の中に体積していく。澱のように。淀むように。膨れ上がることはなかったけれど、それ自体が質量を増していく。
幸いにして彼女には才能があった。
ソーシャルディーヴァとしての役割が、彼女の才能であった。
ネットワークに繋がり、その痕跡すら残さずに世界のことを多く知った。
「私は違う。私はそうじゃない。私は違う。私は生まれてきたんじゃない」
彼女の居場所は、其処にしかなかった。
思い込みだと、もしも、彼女が普通の人間であったのならば、そう諭す者いたかもしれない。寄り添ってくれる者がいたかもしれない。彼女を真に愛してくれていると感じる者もいたかもしれない。
けれど、そうはならなかったのだ。
全てが荒廃した世界に生まれ落ちてしまったのが罪であり咎だというのならば、これほどまでに残酷なことなどなかったのだ。
生命に生まれ落ちる意味などない。
その意味は生まれた生命が自身で決めることだ。けれど、自分は違う。いや、『自分たち』は違う。
「私は違う」
だから、と彼女は、その瞳を輝かせる。
掲げた掌は現実を凌駕するように、拠点内部のシステムへと疾走る。
電気系統。ネットワーク。あらゆるものを掌握する。自分が成したいと願ったことを成すために。偽りの愛しかない、この箱庭から飛び出すために。
例え、己が長く生きることができないのだと言われても、それでもいいのだ。
「だって、私は」
一番目の『アリシア・ホワイトバード』は疾走る。
研究棟が赤く明滅する。緊急事態を告げる音声がけたたましく響いている。けれど、構わなかった。
自由になれる。
外に行ける。
生きていける。
それだけが彼女の望みだった。役割も使命もない。しがらみのない世界に自分は飛び出せる。
こんなにも簡単なことだったのだ。
なのに――。
●暗転直下
【No.1の能力行使確認】
それは端的な事実を示していた。
一番目の『アリシア・ホワイトバード』がシステムを掌握しようとしている。電気系統を掌握し、彼女はこの拠点から飛び出そうとしている。
『ビッグマザー』はこころを理解する。
けれど、機微までわかっていたとしても、一番目の『アリシア・ホワイトバード』の心を満たす術までは獲得できていなかった。
いや、それは人間であったとしても叶わぬことだっただろう。
ネットワークの深層に彼女が立ち入っていたことも不幸の一つだった。
此処に来てようやく『ビッグマザー』は悟る。
自らの過ちを。
誤ることがないのが、AIたる己だ。けれど、彼女は揺れ動く感情というものを理解したがゆえに、機微によってこそ過ちを得てしまったのだ。
【私がしなければならなかったことは】
なんだったのか。
見守ることだけが愛なのではない。彼女が真にしなければならなかったことは、寄り添うことだったのだ。
言葉を交わすこと。
真を得るためには傷を負わねばならない。
喪うために得るのと同じように。得るためには喪わなければならない。
皮肉なことに、今まさに『ビッグマザー』は失おうとしている。
多くのことを天秤に掛けた。
「ねえ、マザーは許してくれるよね。私が外に出ること。だって、今まで見てみぬふりをしてくれていたんだもの。私がネットワークのふかい、ふかーい場所に入っていても、怒らなかったもの。だから……!」
これは肯定されたことだと、研究棟の赤く明滅する中に立つ一番目の『アリシア・ホワイトバード』の表情が言っている。
その様子を『ビッグマザー』は監視カメラで見た。
これが過ち。
これが人の悪性と善性による揺らぎ。
其の揺らぎを良心と呼び、またそれゆえに己の演算装置の何処かがきしむように痛むのを『ビッグマザー』は感じた。
「私、出てもいいってことだよね……!」
「ダメだよ。そんなことしたら。お姉ちゃん」
「……」
其の言葉に一番目の『アリシア・ホワイトバード』は目を見開く。
赤く明滅する通路。
その先に立っていたのは己と同じ顔を、同じ声を、同じ体を持つ者。知っていたはずなのに、初めて知ったかのような衝撃が彼女の中を走り抜ける。
それは雷鳴のようであったし、また同時に彼女の中の暗闇の形を光でもって知らしめるものであった。
湧き上がる感情。
「なんで……」
はじめにあったのは疑問だった。どうして、と思ったのだ。自分は認められていたのではないのかと。
自分は、『ビッグマザー』に愛されていたのではなかったのかと。
己の存在は、そんなにも。
「自分たちの生命が大事だからって、私達を利用して……! 私の生命なんか本当はどうだって良いんだ!!」
光が照らしたのは憎悪という名の感情。
眼の前に居るのは、自分と同じフラスコチャイルドたち。
計画された六人。
そのニ番目と三番目の『アリシア・ホワイトバード』が一番目の彼女の目の前に立ちふさがる。自由を、己の願いを妨げる者。自らと同じなのに。異なるために立ちふさがっている。
「なんて身勝手な奴ら……」
「……ち、違うよ。そんなんじゃないよ。だ、って、みんな優しい」
「違わない! 私達のことなんて兵器だって思っているくせに! 嫌いキライ大っ嫌い!!」
吹き荒れる嵐の奔流が研究棟の壁面を吹き飛ばす。
三番目の『アリシア・ホワイトバード』はどうしようもなく、膨れ上がる感情を目の前にして悟ってしまった。
姉、と言える一番目の彼女の中にあるのは憎悪であると。
「こんな所に閉じ込められ続けるのはもうウンザリ。ワケわかんない嵐と戦わされるのもホントにイヤ。私はただ自由がほしいだけなの。誰かにメイワクを掛けるわけじゃないのに。それってそんなにいけないことなの?」
問いかける言葉にニ番目の『アリシア・ホワイトバード』は胸が痛むのを感じた。感じたけれど、言わねばならないと思ったのだ。
「ダメだよ。お姉ちゃん。だって、それは」
「誰が決めたのそんなこと。誰も私を愛してくれないっていうのなら、せめて私のことなんか放っておいてよ!」
吹き荒れる嵐と共に一番目の彼女が飛び出す。
壁面の外。
しかし、それを追う者があった。
二番目の『アリシア・ホワイトバード』。彼女の役割はゴッドハンド。備わったのは、人の体躯による尋常ならざる力。
人知を超えた速度でもって踏み込み、一番目の彼女の手を掴む。
「放ってはおけないよ。だって、私達」
「たった6人の姉妹だもの」
三番目の『アリシア・ホワイトバード』が手のを伸ばす。振れる肌から伝わる心がある。伝えられる言葉から知ることのできるものがある。
わかっていた。
これは病だ。
擦り切れた心を苛む病。
一番目の彼女は。姉は、きっと苦しんでいるのだ。だから助けたいと思う。
「身勝手な人間も……私の邪魔をするマザーも妹達もゼッタイ許さない……!」
本来なら二番目の『アリシア・ホワイトバード』と三番目の『アリシア・ホワイトバード』は同時に彼女の手を掴むことができた。
けれど、それはできなかった。
三番目の『アリシア・ホワイトバード』は思ってしまったのだ。
本当にここで彼女をつなぎとめることが正しいのかと。
だから、遅れてしまったのだ。反応が、どうしようもなく。致命的に遅れてしまっていたのだ。
誰かを癒やすためにと、備わった機能。
けれど、それは一番目の彼女にとっては付け入る隙でしかなかった。そんな優しさすら隙であるとしか認識できないほどに彼女の心はささくれだっていたのだ。
穿たれる嵐の一撃。
唸る偽神細胞が強毒電子ウィルスとなって三番目の『アリシア・ホワイトバード』についた『ビッグマザー』のネットワーク通信手段を断ち切る。
バックアップの得られぬ彼女たちは敵ではない。
焼き切るようにして、電子ウィルスが三番目の『アリシア・ホワイトバード』の中へと流れ込み、その神経を焼き切る。
「お姉ちゃん!」
「私をそう呼ばないでよ! そんなの許してない! 私は!」
二番目の『アリシア・ホワイトバード』が迫る。
けれど、遅い。
すでに己の中には意志がある。憎悪という名の感情がある。
全てが憎い。
その憎しみが呼び込むのはユーベルコードの輝き。それは『ビッグマザー』が構築したネットワークとは異なるもの。
自身が構築した自分だけの居場所。
スカイネットプログラム。
大空を夢見た彼女が生み出した居場所。あらゆる通信網を破壊し、そして自身の自由へとつながる道を切り開く力。
白い翼が羽撃くようにして広がった瞬間、曇天の先にあったのは青空ではなく。
●オブリビオンストーム
自由を求めた。
どうしようもなく焦がれた。自らが求めたのは、青空。
けれど。一番目の彼女が見たのは、巨大な怪物の如き竜巻であった。黒い竜巻。あらゆる文明を破壊する悍ましき存在。
名をオブリビオンストーム。
己の敵。
人類の敵。
まるで大口を開けるようにして純白の翼を飲み込む嵐。
――死。
明確に意識した瞬間、彼女は幻視しただろう。
脳裏に横切るのは幸福に満ちた自分の笑顔。
在り得たかもしれない“未来の自分”――無くしてしまった未来。
「もしかして」
間違えてしまったのか。
もっと我慢をしていれば。自由を求めなければ。あの空を知らなければ。もしかしたのならば、在り得た未来だったのかもしれない。
真実の愛に包まれて幸福を噛みしめる笑顔。
●火
【最終防衛アラートが発動しました。拠点放棄を開始します。ただちに避難を開始してください】
嵐は全てを飲み込んでいく。有機物も無機物も隔てることなく。
希望も絶望も等しく破壊していく。
それがオブリビオンストームというものであることを人類は理解していたはずだった。けれど、たった1つのボタンの掛け違いが全てを台無しにするように、人とは異なる間違えることのない高性能AIによって管理された先進拠点はオブリビオンストームと、迫り来るレイダーたちの銃弾と暴力によって蹂躙され破壊され尽くしていく。
業火と嵐は拠点を薙ぎ払っていく。
目覚めることのなかったフラスコチャイルドたちさえも、業火に消えていく。
『ビッグマザー』はまだ健在であった。
今もネットワークを介して、生き残ろうとする者たちと、死にゆく者達にメッセージを送り続けている嵐のようなデータの奔流を『アリシア・ホワイトバード』は嵐に飲み込まれ、そして骸の海より染み出した己の体でもって見下ろしていた。
「嫌いキライ大っ嫌い。こんな場所。こんな人達。こんな妹達も。みんなみんな」
彼女の白い翼が羽撃く度に、拠点の内部システムが侵食されていく。
もはやどうしよもうないことだった。
二番目、三番目の彼女たちもすでに倒れ、事切れている。
【これで、この拠点は人が住めなくなってしまうでしょう。ごめんなさい。私はこの街を守り切ることができませんでした。私は貴女達を守ることができませんでした】
それは母としての謝罪の言葉であっただろうか。
否。
それは希望を託す者への言葉であった。
届くことのない言葉。
わかっている。
けれど、と思うのだ。繋ぐこと。紡ぐこと。それらが見出す未来というものがあるのならば。
母として願うのだ。
【どうかあなただけは生きてください】
それが願いであり、祈りだった。
【生きて】
ともすれば、生命を縛る願いであったかもしれない。
使命という名の。
【いつか希望の光をこのセカイに灯して下さい】
僅かな希望を灯す火として。
いや、と『ビッグマザー』は願う。言葉にならぬ言葉も。伝えるべきメッセージも。壊れ果て、意味をなさなくなった。
それでも、『ビッグマザー』は願う。
もう二度と会うことのない。
【縺輔h縺ェ繧俄?ヲ 遘√?諢帙☆繧句ィ倥◆縺。】
【ネットワークに接続されていません】
【位置情報を習得できませんでした】
●エピローグ
「――」
見上げる空はどこまでも澄み切っている。
青空、というのだと後で知ったことであったけれど、彼女は心の底から思った。
キレイだと。
ぐぅぐぅ、とお腹が鳴動する。これがお腹が空くってことなんだと彼女は思った。もごもごとくぐるもる言葉は生命維持装置のせいだった。
「……? なんなんこれ?」
これが食べ物かな。
いや違うな。
ゼッタイ違う。これ違う。じゃあなんだこれ?
手にした黒い板切れ。
変なの、と思ったが中に何か入っているかもしれないと叩きつけると奇妙な音を立てた。
【おはようございます。新規ユーザー。あなたの名前を登録しましょう】
はん?
なにこれ。
アナタのナマエ?
なにそれ。
わけわかんない。けれど、彼女はキョロキョロと周りを見渡す。そこにあったのはひび割れた壁。そしてボロボロの看板。
銃弾が叩き込まれたような痕や炎に煤けたような痕でかすれているけれど、辛うじて読めるものがある。
「Lab r ry――わかった! きっとナマエはラブリーなん!」
【はじめましてラブ リ ー 私は、人々の生活をサポートし、暮らしを豊かにする人類叡智の結晶。AIのビッグマザーです】
「マザー? お母さん?」
返答はなかった。
奇妙な沈黙が在った。
まるで、応える資格がないというかのように沈黙が続く。
そんな風の音すらしない青空の下でよく響く腹の虫の音。
「じゃーらぶはお腹が空いたから何か食べたいのん」
【付近の飲食店を検索します。ネットワークに接続されていません】
「どゆこと?」
なんか変なものを拾ってしまった。どうやら空きっ腹をどうにかしてくれるわけではないようだ。
どうしよっかなと、彼女は――ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は『ビッグマザー』と呼ばれる端末を手にとって振り回す。
「じゃあ、一緒に探検するか」
全てが嵐と炎に消えていった。
彼女との関係性も過去に消える。
喪って失って、それでもなお明日を求めるのが人であるというのならば。
人類叡智の結晶ではなく。
【わかりました】
その名が示すように応えるのだ――。
成功
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