●信濃国・とある洞窟内
人里離れた山中にある洞窟の奥深く。深い深い暗闇の中で、幾つもの人影が食料に群がり蠢いていた。手足は痩せ細り、頭髪は抜け落ち、腹部だけが膨れ上がった異形の姿。彼らはその細い腕をせわしなく動かして、口元に何かの肉を運んでいる。がつがつと肉を食み、骨を齧り、血を啜る咀嚼音が、暗闇の中に絶え間無く響き渡っていた。
『美味イ……』
『デモ足リナイ……』
『美味イ……』
『ヒモジイ……』
時折ぼそぼそと囁くような声が混じるものの、彼らは脇目も振らずに食事を続けている。それもそのはず。彼らは新鮮で柔らかい肉を沢山手に入れたばかりであり、これだけの食事は彼らにとっても久し振りだった。
『足リナイ……』
『ヒモジイ……』
『足リナイ……』
『マダ足リナイ……』
しかし、それを食べ尽したとしても彼らの飢えと渇きは治まらない。満たせぬ欲望を満たすため、彼らは更なる獲物を求めて暗闇を彷徨い続けるのだ。
●グリモアベース
「実は今、信濃国の山ん中にある洞窟で子供たちが迷子になってるんだ」
上崎・真鶴は深刻そうな顔で話し始めた。
「近くの村に住んでいる子たちなんだけどさ。地元じゃ絶対に入っちゃいけない洞窟って言われてるらしいから、逆にやる気出しちゃったのかもね」
探検ごっこの延長か、肝試しのつもりだったのかもしれない。このまま行けば神隠しだ何だと騒ぎになった挙句、村人総出の山狩りでも始まるのだろう。しかしそれだけは駄目だと真鶴が言った。
「実はその洞窟、人を食べるオブリビオンが居るんだよ。だから村の人たちには任せられない。そんなことしても十中八九子供たちは手遅れになるし、助けに入ったはずの大人たちまでお陀仏だ」
ただし実際にオブリビオンが居るのは洞窟の一番奥。子供たちもまだそんなところまでは進んでいないので、今から猟兵たちが向かえば予知を覆すことは十分可能なはずだ。
「というわけで今回皆にお願いしたいことは二つ」
真鶴は猟兵たちを見据えて声を張る。
「一つは洞窟の中で迷っている子供たちを全員見付けて保護すること。10人ちょい……かな、多分」
ただし必ずしも全員が一ヶ所にまとまっているとは限らない。散り散りになっていた場合は、洞窟内全てを歩き回ってでも探し出す必要がある。
「もう一つは洞窟の一番奥にいるオブリビオンを退治すること。似たようなことがまた起きても困るし、この機会に殲滅してほしい」
敵は数こそ多いが実力はそれほどでもなく、彼らの棲み処に踏み込みさえしなければ襲って来ることは無いらしい。よってこちらは後回しだ。
「で、一番の肝は洞窟の中が迷路になってるってところ。……ごめん、あたしの予知じゃ細かいところまでは把握できなかった。とにかく複雑だってことだけ」
真鶴はやや気まずそうに目を伏せた。
「はっきり視えたのは地底湖……かな。それとは別に天井の裂け目から日が差している場所もあったよ。それが具体的にどの辺りかって訊かれると分からないけど」
ただし、そこに子供たちが居るとは限らないと真鶴は付け加えた。
「それじゃ後はよろしく頼むね。あ、それと明かりになるもの持って行った方がいいよ。洞窟の中って本当に真っ暗だからさ」
若林貴生
こんにちは。若林貴生です。
第一章では迷路のような洞窟の中で、彷徨っている子供たちを見付け出して保護するのが目的です。
プレイングにはどうやって子供たちを探すのか、彼らを見付けた後はどうするのか、洞窟内の暗闇や足場の悪さ、そして複雑な内部構造への対応などを盛り込むといいでしょう。
オブリビオンが登場するのは第二章以降なので、第一章では戦闘について触れなくても平気です。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『洞窟の遭難者たち』
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POW : 洞窟内全てを踏破するつもりで、気力と体力を頼りに捜索する。
SPD : 五感を駆使して、音や匂いなどの情報と直感を頼りに捜索する。
WIZ : 目印を付けたり地図を描いたり、迷わないことを第一に捜索する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御剣・神夜
SPD行動
洞窟内の音や息遣いなどに注意し、それらを見逃さないように行動しましょう
「駄目って言われると冒険したくなるのは、やっぱり子供特有の衝動みたいなものなのでしょうねぇ」
子供たちを見つけたら優しく声をかけて敵じゃないと安心させます。他に子供が一緒にいた場合、その子も一緒に洞窟出口へ連れていきます
泣きそうだったりもっと探検したいと言ったら
「この暗い中良くここまで来ましたね。貴方はとても勇気があります。でも、お父さんとお母さんは心配で無事を祈ってますよ?お父さんとお母さんをこれ以上不安にさせたいですか?貴方はお父さんとお母さんがいきなりいなくなったら寂しくないですか?」
と諭して連れ帰ります
ツカサ・コトブキ
POWで挑戦。
子どもの体力は馬鹿にできぬ。動きも読めぬ。
となれば、拙者も体力勝負でござる。弁当のスシも用意した。
……いざ参る!
明かりになるもの、灯篭のようなものをかざし、奥へ奥へと進んで行く。
む?向こうにも行けそうか?
いや、難しいか?
という微妙な地形の先にも、狭く崩れそうな穴の中にも、【勇気】をもって進もうとする。
先に進んだ子供らとの度胸比べでござるな。
落ちたら、そこまでよ。
落ちた先に子どもでも居るかもしれぬ。
居なければ、それでよい。はっは。
自分だけでは、危険に陥っても助けを呼ばないが、子どもが一緒にいるなら、他参加者にも助けを求めるでござる。
見つけてやった、それだけでも十分ではないか。
●禁忌の洞窟
黒ずんだ岩肌にぽっかりと口を開けた洞窟の出入り口。それを囲んで塞ぐかのように数本の杭が打たれ、古びた細い注連縄が杭同士を結び繫いでいた。だが一ヶ所だけ注連縄が解かれて囲いが外されている。
「つい先程外されたばかりのようでござるな」
ツカサ・コトブキが確認すると、結び目を解いた部分だけが風雨に晒された様子も無く変色を免れていた。子供たちにとっては潜り難く跨ぎ難いという絶妙な位置にあったのだろう。地面には沢山の小さな足跡が付いていた。
「駄目って言われると冒険したくなるのは、やっぱり子供特有の衝動みたいなものなのでしょうねぇ」
御剣・神夜は子供たちの足跡を見下ろして苦笑すると、彼らの足跡を追って洞窟に足を踏み入れる。ツカサも後に続いた。分厚い土の壁が冷気を遮るためか、洞窟の中は外に比べて随分と暖かい。その代わりに空気は湿り気を帯び、土の匂いが一段と強くなる。
「早速分かれ道でござるか」
まだ幾らも進まない内に、道は二つに分かれていた。右か左か、ツカサは二つの闇を見比べて思案する。
「……拙者は右にするでござる」
「では私は左に行きますね」
二手に分かれた神夜とツカサは、それぞれ先へと進んで行った。
●寿司
ツカサは用意していた手持ち灯篭に灯を入れる。それをかざすと柔らかな光が辺りを照らし、暗闇の中に幾つもの分かれ道が浮かび上がった。
「……またでござるか」
ひとまず一番右端の道を進んでみたが、すぐに何も無い行き止まりに突き当たる。仕方なく引き返したツカサは隣の道へと踏み込んだ。足元に注意しながら、細くうねる道を歩いて行く。するとこちらも行き止まりだった。だがよく見回してみれば岩壁に小さな横穴が開いている。ツカサから見れば自分の目線よりやや高い程度だが、子供にしてみればそれなりに高い位置だ。
「子供なら入れるかもしれぬが……」
念のために調べてみると、岩肌に何かが擦れたような跡と泥の汚れが付着していた。
「ほう」
ツカサは感心した様子で横穴を覗き込む。こちらにも真新しい泥汚れが、まだ乾き切らないまま残っていた。
「しかし、これは……」
子供であれば多少の余裕はあるだろうが、ツカサの体格では這って進む必要があるだろう。だが子供の通った痕跡が残っている以上、進まないわけにもいかない。ツカサは手持ち灯篭を横穴に押し込むと、自身の身体を捻じ込むようにしながら横穴に入り込んだ。閉所恐怖症であれば叫び出したくなるような通路を這いずりながら進んで行く。そうやって20分ほど前進を続けると、ようやく狭い横穴が終わりを告げた。
「子供を追うというのも、なかなか疲れるものでござるなぁ」
穴から抜け出たツカサは、ゆっくりと手足を伸ばして開放感を味わう。
「……さて、と」
広い場所に出て気が緩んだせいだろうか。空腹を感じたツカサは、ひとまず食事を取ることにした。乾いている岩を探して腰掛け、持参していた弁当のスシを広げる。だがそれを半分ほど平らげたところで、暗闇の奥から物音がした。
「誰か、そこに居るのか?」
ツカサが声を掛けると子供が二人、おずおずとこちらにやって来る。彼らも手製の松明を持っていたが、そちらの火は既に消えていた。
「ふむ……」
明かりを無くしてしまった彼らは、ツカサの灯篭に惹かれてやって来たのだろう。だがそれだけではない。二人の子供は物欲しそうな目でツカサのスシを見詰めている。
「食べたいか?」
そう訊ねると子供たちは大きく頷いた。
「ではこれを食べた後、お主らはすぐにここを出て家に帰る。それでよいな?」
ツカサがそう念を押すと、彼らは満面の笑顔で再び頷いた。
●姉弟
洞窟内に群生しているヒカリゴケが、緑色に淡く光を放っている。その僅かな明かりを辿るようにして神夜は先に進んでいた。
「ん?」
人の声を聞きつけた神夜は、足を止めて耳を澄ませる。目を閉じて意識を集中させると、再び子供特有の高い声が小さく聞こえてきた。大体の方向を推し量ると、神夜は壁に手を当てながらそろそろと近付いて行く。すると角を曲がったところに、男の子と女の子が一人ずつしゃがみ込んでいた。二人とも驚きと怯えが入り混じった顔でこちらを見上げている。
「こんにちは」
警戒心を解き解そうと、神夜は優しく声を掛ける。
「私は神夜といいます。貴方たちのお名前は?」
「……みよ」
みよと名乗った少女は、もう一人の男の子を庇うように立ち上がった。
「こっちは平太。あたしの弟」
「……そっか。お姉ちゃんなんですねぇ」
神夜は微笑みながらみよを見詰め、そして平太に視線を移す。座ったままの平太だったが、その膝には血が滲んでいた。
「ちょっと見せてくれますか?」
平太の前にしゃがみ込んだ神夜は目を凝らして傷を診る。どうやら軽い擦り傷のようだ。
「……今頃、お父さんとお母さんは心配してますよ」
そう言いながら神夜は持っていた塗り薬を取り出した。それを患部に塗って丁寧に包帯を巻いていく。
「貴方はお父さんとお母さんがいきなりいなくなったら寂しいでしょう?」
神夜は手当てをしながら平太の顔を覗き込む。平太が小さく頷いた。
「お父さんとお母さんも同じですよ。貴方たちがいなくなって、心配して、きっと寂しがってます……はい、これで大丈夫」
「あの、ありがとう……ございます」
てきぱきと処置を済ませた神夜を見て、警戒を解いたみよが頭を下げる。
「ほら、平太も」
「……ありがと」
みよに促されて平太もぺこりと頭を下げた。それを見て神夜は再び二人に微笑み掛ける。
「では二人とも、そろそろお父さんとお母さんのところに帰りましょうねぇ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
古上・薺
洞穴での童探しか…まったく、隠れ鬼をするには規模も場所も悪すぎるのじゃ… まぁ後先考えず好奇心の赴くままに動くのが童じゃからな、妖物の腹に収まる前に早々に見つけてやるとするかのぅ
まずは手持ちの符を憑代に狐火(フォックスファイア)で灯火代わりに道を照らすのじゃ 通った道には一定間隔で符を張り付け、帰りの案内灯篭の準備もしておかんとな
あとは失せ物探しの技能を用いて童を探してみるかの、まぁヒトではあるが迷子と無くしものは似たようなもんじゃろ…
見つけた後は途中まで送り、灯りの通りに進めば出口と教えればよいじゃろう。もし途中に脇道があるならばその辺りまでは送ってやれば妖物に鉢合わせることもあるまいて
●狐火
「さて、どれにすべきかのぅ……」
四叉路に辿り着いた古上・薺は、どちらに進むべきか思案しながら視線を巡らせた。何気なく元来た道を振り返ると、暗闇の奥で炎が小さく輝いている。それはつい先程、薺自身が付けた炎の目印だった。
「ひとまずここにも付けておくかの」
薺は燃え盛る呪符をかざして辺りを照らし、手近な石筍にその呪符を張り付ける。そうやって炎の目印を付けると、薺は懐から新たな呪符を取り出し、それに火を灯した。
「これでちょうど三十枚じゃな」
呪符を憑代とした灯火の目印。薺はここに来るまで一定の間隔でこの目印を灯し続けてきた。それなりに手間は掛かるが、こうしておけば帰り道はかなり楽になるはずだ。
「うん?」
改めて三つの分かれ道を見据えた薺は、その中の一つがほんのりと明るいことに気付いた。子供たちか、あるいは他の猟兵だろうか。微かな光に向かって進んで行くと、その答えはすぐに出た。
「確かに……日が差しておるのぅ」
そこは他よりもかなり広い空間だった。高い天井の裂け目からは細い日の光が差し込み、地面を優しく照らしている。その下に三人の子供が寄り添って座り込んでいた。
「どうやら間に合ったようじゃな」
薺の存在に気付いた彼らは、途端に立ち上がってこちらに駆け寄って来る。余程心細かったのだろう。子供たちは泣きじゃくりながら薺に縋り付いてきた。
「これ、よさんか」
子供に羽織の裾を引っ張られた薺は、その手をそっと外して窘める。
「もう泣くでない。このままでは話も出来んじゃろ?」
しかし泣き止めと言われて泣き止むはずもなく、薺は子供たちが落ち着くまでしばし待つこととなった。
「……で、此処に居るのはおぬしらだけかの?」
「うん」
草吉と名乗った男の子が頷いた。
「他の者たちはどうしたんじゃ?」
「あっちに行った」
そう言って草吉は洞窟の奥を指し示した。薺が来た方向とは別の道だ。
「俺たちは『ここで待ってろ』って元太が言ったから……」
「ふむ……」
元太というのは恐らく子供たちのリーダー格なのだろう。この期に及んでまだ探検を続けるつもりらしい。
「なるほどのぅ。だが……そうじゃな、とりあえずおぬしらだけ先に帰るがよい」
「え? でも……」
子供たちは不安そうに薺を見上げる。
「心配はいらぬ、準備は万端じゃ。それに途中までは、わし様が送ってやるからの」
そう言うと薺は狐火を幾つも生み出して、子供たちの頭上にかざしてみせた。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
照明にLEDランタン使用…余所の世界は良いものあるよなー
あとは照明を吊れる鉤の付いた丈夫で長い棒
壁伝いに50歩進む毎地図を書き込む
分かれ道があればまず狭い方から
…子供って狭い方好きだろ?
棒の先に灯りを下げて先を確認しながら進む
あと地面つつきもね
空気の流れのない場所…行き止まりも多いだろうし窪みや穴もあるだろ
子供の泣き声、喋りが聞こえないか50歩の度にチェック
無人の行き止まり、子供が避けそうな穴は地図に×して別ルートを探索
天井の裂け目があるって話なので帰りに近道できるかもしれねーし場所は覚えとこう
子供を見つけたら名前と誰と来たかを確認
一旦外へ返すかはまァ…状況次第かね?
他者と連携アドリブ可です
キララ・キララ
※アドリブ/細部変更歓迎です
▼意気込み
追跡とか人探しとか、役に立てる気がする! 子どもたちみんなの冒険心はよくわかるのよね。あんまり叱るのはやめてあげてほしいのね……でも叱ったほうがいいのよね……
▼行動
SPD:五感を駆使して、音や匂いなどの情報と直感を頼りに捜索する
【野生の勘】で情報を掴んで、【追跡】で子供たちを追いかけるね。
【ブルーバード】で夜目の利く動物を描いて、見落としがないかも確認したい。
▼光源
指輪がフラッシュライトなんだけど、どうかしら。使えるといいんだけど……
●地図
「んじゃ早速だが二人とも名前を教えてくれるか?」
「……源助」
「清八だ」
「ここには何人で来たか、覚えてるか?」
鹿村・トーゴが訊ねると、二人の子供は指折り数え始める。
「11人……だよな?」
清八が確認するように源助の顔を見た。源助が頷く。
「となると、あと二人か」
これまでに助けた子供の人数は七人。目の前の彼らを入れて九人だ。他の猟兵や子供たちからも幾つか情報を得ていたが、それらに照らし合わせると見付かっていないのはあと二人。元太と三郎がまだ見当たらない。
「さーて、何処にいるのやら……」
そう呟きながらトーゴは描きかけの地図に新たな情報を加えていく。現在地は全体的に緩く傾斜している広間のような空間だ。ここに居た二人は大声で助けを求めていたのであっさり見付けられたが、ここから先は道が細かく枝分かれしている。トーゴが何気なくそちらに目をやると、その内の一本から色鮮やかな猫が姿を現した。
「おかえり!」
一直線にやって来た猫をキララ・キララが迎える。それは普通の猫ではなく『探索に役立つよう夜目が利く動物を』と、キララがユーベルコードで具現化したものだった。
「そっか、行き止まりだったのね」
猫の報告を聞いたキララはトーゴの地図を覗き込む。
「ここと……あとここは行き止まりだって!」
「分かった」
トーゴは地図上の枝分かれした通路部分に×印を描き込んだ。トーゴ自身は地図作製に加えて、足場対策など色々と手間を掛けて探索していたが、キララのおかげでその手間はかなり短縮されていた。
「残ってるのはこっちだな」
トーゴはペン先で地図上の未探索部分をつつく。
「すぐに行くの?」
「いや、先にこっちの二人を帰した方がいーかな」
幸い洞窟内には他の猟兵が付けた炎の目印が点々と灯してあった。当然トーゴの地図には、それらの位置も描き込まれている。その目印がある位置まで連れて行けば、あとは子供たちだけでもそのまま出口まで帰れるはずだった。
●地底湖
「あれは……水の音かしら?」
そう言ってキララは不意に足を止めた。トーゴも耳を澄ましてみたが、彼にはよく分からない。
「どっちだ?」
「あっち!」
キララが指し示した方向に猫が駆けていく。それを追って曲がりくねった通路を進んで行くと、トーゴの耳にも水の流れる音が聞こえ始めた。その水音を目指すように歩いて行くと、やがて二人の前に地底湖が姿を現した。
「これか……」
岩肌の裂け目から染み出した水が流れ込み、湖面に波紋を広げている。そして何故か辺り一面が海辺のような砂浜になっていた。先行していた猫は、その砂浜にちょこんと座り込んで待っている。
「あ! これ見て! こっち!」
キララに呼ばれたトーゴがそちらに行くと、砂浜に子供のものと思しき小さな足跡が沢山残っていた。その中には湖の中へと向かっているものもある。
「まさか、ここを泳いでいったのか?」
トーゴは棒の先に吊るしたLEDランタンを湖面に突き出してみたが、流石にそれだけでは分からない。
「じゃあ調べてみるね! 任せて!」
キララは数本のスプレーを取り出すと、傍らにやって来た猫にフラッシュライトの指輪を咥えさせた。猫がライトで岩壁を照らし、キララがそこに絵を描き始める。
「はい! 出来上がり!」
ややあって完成したのは、ちょっぴり前衛的なデザインの梟だった。その梟は羽ばたきながら壁を抜け出して飛び立ち、そのまま音も無く湖面の上を飛んで奥に向かう。
「さて、と」
飛び去る梟を見送ったトーゴは、その間に此処までの道程を書き加えようと地図を広げる。しかし梟はすぐに帰ってきた。広いのは砂浜だけで、地底湖自体はそんなに大きくないのかもしれない。
「……何にも無かったみたい」
「うーん……」
万が一の可能性もあるが、子供が湖に入ったかもしれないと考えられる根拠は砂の上の足跡だけだ。それも子供たちのものではないかもしれないし、一旦湖に足を浸けただけで引き返したものかもしれない。
「先に他を調べた方がいーかもな。まだ行ってないところ残ってるし」
「そうね、そのほうがいいかも!」
そう結論を下した二人は元来た道を引き返していった。
●最後の二人
「いた!」
子供たちを見付けてキララが声を上げる。同時にトーゴは安堵の息を漏らした。視線の先ではキララの描いた猫と梟が、二人の子供にまとわりついている。
「なんだ、こいつ!」
「あっち行け! こら!」
子供たちは動物を払い除けようと手足をばたつかせていたが、ランタンをかざしたトーゴが近付いていくと、その明かりに気付いてこちらを向いた。
「誰だ?」
子供の一人が警戒した様子でこちらを睨む。
「お前らが元太と三郎か?」
トーゴが名前を呼ぶと、二人は困惑した様子で顔を見合わせた。
「何で俺たちの名前を知ってるんだ?」
「気持ちはわかるのよ? でもね、そろそろあなたたちもおうちに帰ったほうがいいと思うのよね」
キララがそう言うと、元太は納得したように頷いた。
「そうか、あいつらに聞いたんだな。でも俺たちはまだ帰らねぇよ。な?」
「ああ」
二人はそう言って気を吐いたが、ただ虚勢を張っているようにも見える。
「ふーん、ところでさ」
彼らの心中を見透かしたかのようにトーゴが訊ねる。
「お前らどーやって帰るつもりなの?」
その言葉を聞いた子供たちは再び顔を見合わせた。彼らも松明を手にしているが、恐らくそれも長くはもたないだろう。ここまでの道を把握しているとも思えないし、実際は不安でたまらないに違いない。
「オレたちは地図があるから帰れるけど、そっちは平気なのか?」
トーゴは今まで描き込み作り上げた地図を、これ見よがしにひらひらさせる。それを見て元太は不満そうに口を尖らせたが、意地になっても仕方ないことは理解していたようだ。
「……分かったよ」
ぼそりと呟くと、元太は諦めた顔付きになって洞窟の出口に向かい歩き始めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『餓鬼』
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POW : 共喰い
戦闘中に食べた【弱った仲間の身体の一部】の量と質に応じて【自身の傷が癒え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 飢餓の極地
【究極の飢餓状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : 満たされぬ満腹感
予め【腹を空かせておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●餓鬼
洞窟の最深部には、入口のものと同じ注連縄を張ってある場所があった。そこを通り抜けて更に奥へ進むと、暗闇の中から複数の気配が感じ取れる。それは気配というよりも敵意と呼ぶほどに刺々しく、猟兵たちに突き刺さんばかりだった。
『食イタイ……』
『ヒモジイ……』
『食イタイ……』
ぼそぼそとしわがれた声が辺りに響き、小さな人影がじわじわと距離を詰めてくる。その眼差しは闇の中でも分かるほど鋭く、そして激しい憎悪で輝いていた。
御剣・神夜
餓鬼ですか。
子供たちを非難させられて良かったです。こんな奴らに子供たちの未来を奪われるなんてたまったものじゃありません
魑魅魍魎は地獄にお帰り下さい
共食いしようとしたら食われる前に食おうとした餓鬼を斬り捨てる。間に合わないなら食べてる最中であろうと躊躇なく斬る
究極の飢餓に目覚められたら戦闘力と耐久力が向上するが早く動かなければ狙われないので緩急でゆっくり動いて隙を見逃さずその瞬間に素早く斬る
飢餓感で自己強化しようとしていたら長い時間続けられると戦闘力が上がるので見つけ次第潰す
「貴方達が元々なんであったかはわかりません。ですが、命を奪うことはどんな理由があれ認められないんです」
古上・薺
なるほどのぅ、件の妖物の正体は餓鬼じゃったか。飢餓の念のみで蠢く下級の鬼と聞いておるが、はてさて…、ぬしらの餓えがわし様の元まで届くかどうか、ひとつ試してみるとするのじゃ
まずは最奥への入り口を背に餓鬼共と対峙するのじゃ、背中から襲われてはかなわんからの
次に鬼焔翠刃を展開、属性攻撃の技能で火勢と温度を引き上げ、範囲攻撃の技能で一つ一つの炎刃の幅を広げて放つのじゃ!それなりの速さじゃから囮にもなる上、掠めるだけでも、焼け切れ、直撃すれば炎上して松明がわりじゃ!さあさあ、悪鬼共!消し炭となる前にその歯牙わし様に届けてみよっ!
●剛刃
「貴方達が元々なんであったかはわかりません」
御剣・神夜は己の身の丈ほどもある野太刀を構え、にじり寄る餓鬼たちを見据えた。彼らにも事情はあるのだろう、と神夜は思う。何かしらの災厄に見舞われ、このような地の底で非業の死を遂げたのかもしれない。
「ですが、命を奪うことはどんな理由があれ認められないんです」
凛とした声でそう言うと、神夜は一足飛びに餓鬼との距離を詰め、野太刀を一閃した。凄まじい剣速が地を割る程の衝撃波を生み、餓鬼の群れをまとめて薙ぎ払う。
『グギャッ!』
一人は首を切り落とされて後ろに倒れ込んだが、他の餓鬼たちは傷を負ったまま神夜に襲い掛かった。それを跳び退ってかわし、再び野太刀を振るって餓鬼たちを払い除ける。
『食ワセロ!』
横合いから別の餓鬼が迫ってきた。それを目の端で捉えた神夜は、ひらりと体をかわす。そして、たたらを踏んで前のめりになった餓鬼の背に刃を突き立てた。その手応えで餓鬼の絶命を確信すると、次の相手を求めて周囲に視線を巡らせる。
「あれは……」
暗がりの中で三人の餓鬼が互いの手足を食い合っていた。彼らは食事に夢中らしく、こちらを見ようともしない。
「させません!」
間合いを詰めた神夜は一気に二人の餓鬼を斬り捨てる。しかし仲間の血肉で腹を満たし力を取り込んだ餓鬼が、一人だけ彼女の斬撃から逃れていた。
『腹ガ減ッタ……腹ガ……』
今まさに飛び掛からんとしている餓鬼を狙い、神夜は野太刀を横薙ぎにする。だが餓鬼は咄嗟に飛び退き、神夜の刃は敵の身体を浅く切り裂くに留まった。それを見て神夜は僅かに眉根を寄せる。胴を両断するつもりでいたのだが、敵の身体能力がほんの少し上回っていたらしい。
「それなら……」
神夜は先程よりも大きく速く踏み込み、こちらに掴み掛かろうとした敵の腕を斬り飛ばす。そしてそこから更に一歩踏み込むと、倒れている餓鬼を地面ごと一刀両断に切り裂いた。
●翠刃
「なるほどのぅ、件の妖物の正体は餓鬼じゃったか」
古上・薺は落ち着き払った様子で餓鬼の群れを見渡した。
「飢餓の念のみで蠢く下級の鬼と聞いておるが、はてさて……。ぬしらの餓えがわし様の元まで届くかどうか、ひとつ試してみるとするのじゃ」
悠然と構える薺の眼前に、ぽつぽつと小さな狐火が浮かび上がっていく。複雑に配置された幾つもの灯火が連なって線となり、鮮やかな翠炎の術式陣を空中に描き出した。
「翔けよ翠焔、刃の如く、捉えし愚者を燃やし斬れ!」
薺の声と共に術式陣から緑の炎が溢れるように放たれた。その炎は一つ一つが刃の形を成して前方の餓鬼たちに突き刺さる。
『ガアアアァァ!』
『ググ……ガァ……』
飢餓によって理性を失った餓鬼たちは敵味方問わず速く動くものを襲う。それは炎刃に対しても同じだったらしい。理性を失った餓鬼が数人、飛び交う炎刃に自ら突っ込んでいく。
「ふむ、随分明るくなったのぅ」
餓鬼の身体中に突き刺さった緑の炎が周囲を照らしていた。その様子は、さながら巨大な松明のようだ。しかし理性と引き換えに得た無限の体力に突き動かされて、餓鬼たちは全身に炎を纏ったままこちらに突っ込んでくる。それを見ても薺は余裕たっぷりに笑みを浮かべた。
「さあさあ、悪鬼共! 消し炭となる前に、その歯牙わし様に届けてみよっ!」
朗々とした声を響かせて、薺は再び術式陣から翠の炎を放つ。先程よりも火勢を増した炎の刃が、近付く餓鬼たちを次々に射抜いていった。しかしほとんどの敵が燃え尽き倒れる中、一人だけ人の形を保ったままの餓鬼が薺の傍までやって来る。
「よう此処まで来たのぅ。じゃが……」
薺は突き出された餓鬼の両手を錫杖で受け止めた。
「わし様に触れようなどと、百年経とうがぬしには叶わぬよ」
そのまま身を捻って餓鬼を振り払い、その顔面を石突で打ち据える。
『ギャッ!』
鼻っ柱を痛打された餓鬼は、顔を押さえながらよろよろと後ろに下がった。
「残念じゃったのぅ」
からかうように言い捨てる薺の傍らで、術式陣が一際強く煌く。そして火柱の如く噴き出した翠の炎刃が、餓鬼の身体を真っ二つに切り裂いて燃やし尽くした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
キララ・キララ(f14752)と共闘
同じ地点廻ったのも何かの縁だろ
調査でずいぶん助けて貰ったしあんま怪我させたくねーし
キララへの直接攻撃は出来れば5割程「かばう」
SPD
灯りのLEDは地面に置き使用
「地形の利用」で足元・天井に注意して行動
飢えても死ねずに幽閉されりゃ正気じゃいられねーな
「気」とやらに敏くなくても解る悪意
ここまで純粋に睨まれた事ってねェからな正直ゾッとするんだが…
隙を見せれば喰われるんだ臆してる場合じゃねーよなー
難しい戦術は苦手なんだよ…正面からやり合うか?
降魔化身法で強化しクナイを手に攻撃
相手のSPD技に対し「念動力」で手持ちの手裏剣、手近な小岩を飛ばし囮に使う
アドリブ・連携可
キララ・キララ
※アドリブ/改変歓迎
▼鹿村・トーゴ(f14519)と共闘
きらちゃんの光源はこころもとないし、トーゴは地図もちゃんと書いてるから、お願いして一緒にきてもらいました!
▼戦闘
きららが前に出るわね。少し離れちゃうから、指輪はずっと光らせておく。
トーゴに近寄らせないようにがんばるわ!
「ダッシュ」で一番危ない距離にいる餓鬼に近づいて【レッドシューズ】。
あなたたちのダンスの作法はわからないの。ごめんなさいね。
なのできららの踊りにつきあってもらいます!
外しても止まれないんだけど、きっと大丈夫。一人じゃないもの!
▼
足場のわるさは【トリックステップ】でカバーできないかしら。先に進むために、いちおう!
●舞踏
餓鬼たちがひしめき合う薄闇の中で、一定のリズムに乗ったキララ・キララが踊るように動き回っていた。掴み掛かろうとする餓鬼の腕を掻い潜り、噛み付こうとした敵の横をするすると抜けていく。その様子は次々と迫る障害物を避け続けているようでもあり、また幾度もパートナーを入れ替えながら踊り続けているようでもあった。そしてその度に敵の足を払って転ばせたり、相手の腕を取って投げ飛ばしたりと攻撃を加えていく。それに合わせてキララが嵌めている指輪の光がくるくると動き、辺りを照らしていた。
しかし多勢を一度に相手していることもあって、なかなか敵を仕留めるまでには至らない。倒れた餓鬼たちの多くが、すぐさま起き上がってキララに襲い掛かろうとする。
「させるかよ」
鹿村・トーゴはその中の一人に駆け寄ると、敵の背中に素早くクナイを突き立てた。降魔化身法で強化された膂力によって、クナイはいとも容易く餓鬼の身体を刺し貫く。だがその刃を引き抜いた瞬間、背後から別の餓鬼が飛び付いてきた。
『食ワセロッ!』
「……っ!」
牙を剥き出し威嚇する敵を間近に見て、トーゴの背筋に一瞬冷たいものが走る。しかしトーゴはすぐに気を取り直し、組み付いた餓鬼を力任せに引き剥がして地面に叩き付けた。倒れている餓鬼に止めを刺して、再びキララに視線を向ける。踊り続けるキララの動きは、まるで風のように速く敵を寄せ付けない。だがその速さが、極度の飢えに理性を失った餓鬼たちを引き付けていた。彼らに包囲され、一斉に襲われるようなことになれば、キララと言えどただでは済まないだろう。
「上手く行きゃいいんだが……」
トーゴは懐から取り出した手裏剣を餓鬼たちに向けて投げ付け、その軌道を念動力で捻じ曲げる。敵の鼻先を通過するよう操作すると、ほんの少しではあるがそれに釣られた餓鬼たちの足が止まった。その隙にキララは階段を駆け上がるかのように空中を蹴って高く飛び上がる。追いすがる餓鬼たちの頭上をぽんぽんと跳ねて敵中から抜け出すと、手薄な場所を狙って再び餓鬼の群れに踊り込んだ。
「あなたたちにはもう少し、きららの踊りにつきあってもらいます!」
キララは地面の上でもトリックステップを織り交ぜて、軽やかに舞い踊りながら縦横無尽に動き回っている。その間も彼女の手には愛用のカラースプレーが握られ、盛んにそれを噴き付けていたのは余裕と遊び心を示すものなのだろう。倒れた餓鬼たちは身体をカラフルに彩られている者や、頭に小さなグラフィティが残されている者まで様々だ。
『ゲギャァッ!』
激しい叫び声を上げながら、餓鬼がキララに飛び掛かった。キララは咄嗟に腕を引っ込めて逃れたが、僅かにバランスを崩して動作が遅れる。そのせいで餓鬼の腕を掴むはずだったキララの手が空を切った。
「あっ!」
ダンスのように流れる攻撃が途切れ、踊りの輪から外れた彼女は餓鬼たちに無防備な背中を晒してしまう。
「……拙いな」
トーゴは再び手裏剣で餓鬼たちの気を逸らし、キララと彼らの間に滑り込んだ。そして身体を蝕む毒に耐えつつ、こちらに寄り集まってきた敵と相対する。餓鬼たちはじわじわと距離を詰めながら、トーゴを睨み付けていた。
「伏せて!」
背後からキララの声が響く。トーゴが反射的に身を伏せると、彼の陰にいたキララが両手に構えたカラースプレーを餓鬼たちの顔に噴き付けた。
『ギャゥ!』
目潰しを受けた餓鬼たちが怯んだ瞬間、トーゴは手近な敵にクナイを突き立てる。それを見届けるとキララは軽快なステップを踏みながら、再度餓鬼たちの中に飛び込んでいった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宮落・ライア
(捜索苦手だから任せていた体で。戦闘係)
子供の勇気は可愛らしいけれど……怖い物知らずは怖いね。
さて……存分に来るがいい。餓鬼共。
お前らのそれは可愛くない。
トンと【ダッシュ】【ジャンプ】で餓鬼の集団の中に降り立ち
刀と大剣の二刀を構える。
あからさまな【カウンター】狙い。
相手の行動は【見切り】または【野生の感】まかせ。
複数が来たら大剣で【薙ぎ払い】
大剣振った直後、または一体だった場合、刀で切り伏せる。
●暴風
宮落・ライアは猟犬のような勢いで駆け出すと、餓鬼の密集している地点を狙って大きく跳躍する。餓鬼の群れに飛び込んだライアは、着地と同時に刀と大剣を構えて彼らを睨め付けた。
「さて……存分に来るがいい。餓鬼共」
その勢いに気圧されたのか、餓鬼たちはライアの出方を窺うかのように、じりじりと後退る。
「来ないのかな?」
問い掛けるかのように呟くと、遠巻きにしていた餓鬼の一人が飛び掛かってきた。
「甘いよ!」
ライアは後の先を取って餓鬼の組み付きをかわすと、隙だらけになった相手を一刀のもとに斬り捨てる。それを見て火が付いたのか、餓鬼たちは次々と襲い掛かってきた。前後左右から押し寄せる集団を、今度は大剣で薙ぎ払う。横薙ぎに振るわれた武骨な刃は、餓鬼たちの手足を砕き、膨れた腹を破くように切り裂いた。負傷した餓鬼たちは、ふらつきながら仲間の陰に引っ込んでいく。
「まだまだ、これからだよ!」
ライアは矢継ぎ早に襲い来る餓鬼を薙ぎ払い、切り裂き、叩き付け、刺し貫く。両手の二刀を振るい暴風の如く敵を薙ぎ倒し続けていると、やけに素早い餓鬼が身を低くして突っ込んできた。
「おっと」
ライアは咄嗟に大剣を地面に突き刺して盾にする。そして避け切れずにぶち当たった餓鬼を刀で一突きにした。どうやら手負いになった餓鬼たちが共食いをして強化されたようだ。
『オマエの肉モ、寄越セッ!』
同様に共食いをした者が一人、傷を癒し強化された状態で再びライアに襲い掛かった。大剣の一閃を屈んで避けた餓鬼は、そのままライアの腿に齧り付こうと大口を開ける。
「このっ!」
餓鬼が食い付く寸前、ライアは刀の柄で彼の脳天を打ち据えた。更に崩れ落ちた餓鬼を蹴り飛ばし、よろけたところを刀で斬り伏せる。しかし、休む間も無く別の餓鬼がやってきた。
「これって……」
恐らく共食いを続けてきたのだろう。明らかに一回り大きい体躯の餓鬼だった。
『オマエモ食ッテヤルゾ!』
殴り掛かってきた餓鬼の拳に合わせ、ライアは彼の脇腹に斬撃を叩き込んだ。手応えはあったものの、敵は怯まずに再度拳を振るう。
「これで終わりだよ!」
バックステップでそれをかわしたライアは、刀で敵の腕を斬り飛ばす。そしてもう一方の大剣をありったけの力で振り下ろし、餓鬼の身体を真っ二つに叩き切った。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『砂塵のあやかし』
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POW : 砂塵
【激しい砂嵐】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 目潰し
【自身の足元】から【対象の目に向かって蹴りあげるようにして砂】を放ち、【目潰し】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 砂の侵食
【着物の袖から放った砂】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を砂で覆い】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「世良柄野・奈琴」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●砂の妖
「騒々しいのう、何をやっておるか」
猟兵たちの背後から、幼い女性の声が響いた。声だけは少女のものだが、その口調はやや時代がかった古風なものだ。振り返ると、そこには一風変わった着物姿の少女が立っていた。
「んん? お主らは……」
少女は訝しげに猟兵たちを見詰め、そして驚いたように目を見張る。彼女を一目見た猟兵たちも、少女がオブリビオンであると気が付いた。
「……大勢おるのう。彼奴らを残らず片付けたのか」
少女は何かを思案するかのように押し黙り、ややあって口を開く。
「よし、ここはひとまず退却じゃ!」
そう言うとオブリビオンの少女は身を翻し、こちらに背を向けて暗闇の中に姿を消した。
真っ直ぐに後を追うか、洞窟の迷路を逆に利用して行き止まりに追い込むか、あるいは上手く挟撃するか、それとも彼女の行き先を予想して回り込むか。
どのように彼女を追い詰め、倒すのか。それは猟兵たちの手に委ねられたのであった。
御剣・神夜
逃げるとは、なかなか知恵の回るオブリビオンですね
この地形を利用したいですが、逆に利用される恐れもあります
慎重に行かねばなりませんね
砂塵を使われたら洞窟内なので石礫も飛んでくる可能性があるのでそれに気を付けつつ野太刀を前面に出して防御しながら突っ込む
目潰しされたら目が見えるようになるまで目を瞑って第六感で相手の気配を察して戦う
砂の浸食は砂をすべて野太刀で払うことは不可能なので避けて突っ込む
「なかなか知恵の回る様子、長引かせては此方が不利になります。勝負を極めれるところで一気に決めさせていただきます!」
●追跡
子供たちの捜索で使用した炎の符は、未だ燃え尽きることなく辺りを照らしていた。点々と続くそれを辿るようにオブリビオンの少女が駆けていく。そのまま進めばいずれ洞窟の出口に達するはずだが、彼女は不意に暗い横道へと入っていった。
(「闇に紛れるつもりでしょうか、それとも……」)
他に目的地があるのだろうか。そう思いながら、御剣・神夜は少女を追い掛けて横道に飛び込んだ。途端に真っ暗闇の一歩手前まで視界が悪化する。それでも暗闇に目を慣らしつつ、響き渡る下駄の音を頼りに追い掛けていくと、ちらちらと神夜を振り返りながら走っていた少女が足を止めた。
「ええい、しつこいのう」
くるりとこちらを振り向いた彼女の身体が、ふわりと浮き上がる。その瞬間、強烈な風と大量の砂が吹き付けてきた。神夜は思わず左腕で目元を覆う。
(「長引かせては此方が不利になりそうです。ならば、此処は……!」)
愛用の野太刀をかざして盾にしつつ、神夜は砂嵐を無理矢理に突っ切った。大量の砂と同時に巻き上げられた辺りの砂利が石礫となって頬を打つが、それを気にしている余裕は無い。力任せに突進して砂の風を抜けた先には、驚愕の表情を浮かべた少女の姿があった。
「なんじゃと!?」
「一気に決めさせていただきます!」
太刀の切っ先が弧を描き、少女の身体を斜めに切り裂く。しかし見た目は少女でも、中身は強力なオブリビオンだ。一太刀で終わる相手ではない。
「これでも食らえい!」
少女の放った蹴り足から砂が溢れ出し、勢いよく神夜の顔に叩き付けられる。
「くっ!」
目潰しを受けた神夜は勘を頼りに牙龍を突き出したが、その刃は惜しくも少女が着ている服の袖を裂くに留まった。
「しばし其処で大人しゅうしておるがよい!」
「……なかなか知恵が回るようですね」
神夜は顔に付いた砂を素早く払い落とすと、再び遠ざかっていく足音を追い掛け始める。
成功
🔵🔵🔴
鹿村・トーゴ
退散、て事はここはあの娘の根城なのか?
それとも目的があって篭ってんの?
餓鬼の巣食った洞に秘密なんぞ有んのかね
ともかく
やっぱ地の利はヤツにあるよなー
行先も判んねえし
下駄の音や声とか頼りにまず追いつかねーと
迷子探しの地図の記憶からおおよその見当を付けつつ追跡
で、砂を操るってのは厄介だろ
せめて目に入る砂を腕で庇うか念動力で避けたい
敵を目視できれば前進しつつ手裏剣を放って攻撃
クナイは何時でも刺せるよう咥えとく
砂の抵抗があるはずだがまず接近
羅刹旋風の構えで隙を作るフリ…から
反撃覚悟で一気に跳びかかりサイキックブラストで攻撃/だまし討ち
クナイで思い切り刺すか斬り付ける
奴が逃げても血痕があれば追えるしな
古上・薺
ふむ、いきなり踵を返すということは事の顛末に詳しいようじゃの?捕えて委細を問いただしたくもあるが…まずは捕らえるところからか、むぅ隠れ鬼の次は鬼追いとはの…子供の遊びをしに来たわけではないのじゃが…ええい、ともかく追いかけるとするのじゃ!!
しかし砂か、焼き消すにはなかなか骨の折れるものを用いよってからに、面倒じゃの…なれば単純に自信を強化して追いつくとするかの、進む先々に虚焔を撃ち込み強化用の術式陣を展開、陣内におれば自身を強化できることを利用して刹那の間でも走力を上げるのじゃ ただ追っただけでは追いつけぬかもしれぬが強化ありきなら距離を詰めることもできよう、灯り代わりにもなるしの
●妖の行先
「むぅ、隠れ鬼の次は鬼追いとはの……。子供の遊びをしに来たわけではないのじゃが……」
古上・薺は小声でぼやきながら渋面を作る。視線の先では砂塵の妖である少女が、こちらに背中を向けて逃げ続けていた。それを追い掛けながら、薺は蒼白く燃える火弾を撃つ。火弾は前を走る少女からやや離れた地点に着弾し、地面に火弾と同じに蒼白く輝く強化陣を描き出した。続けて二つ三つと火弾を放つが、その全てがオブリビオンの少女ではなく地面に着弾する。
「どうしたどうした、当たっとらんぞ!?」
こちらを振り向いた少女は嘲笑い、挑発するかのように声を張り上げた。
「……別に外してはおらんがの」
そう呟いた薺が強化陣に足を踏み入れた瞬間、彼女の脚力が強化されて追跡の速度が一気に上昇した。その勢いが消えぬうちに次の強化陣、再び加速して次の強化陣へと渡り歩く。陣の上を駆け抜ける数歩のことだけではあるが、それを繰り返しているうちに薺とオブリビオンとの距離が次第に縮まっていった。
「なかなか面白いことを考えるのう」
そう言いながらもこれ以上接近されるのは不味いと思ったのか、少女は振り向きざまに袖口から砂を放った。薺は再び火弾を放つと、その砂礫に叩き付けて砂を散らす。
「やはり、そう簡単には焼き消せんか。……面倒じゃの」
そうして炎と砂の応酬が何度か続いたところに、薺の後方から鹿村・トーゴが追い付いてきた。
「やっと追い付いたか」
トーゴはオブリビオンとの距離を詰めつつ、彼女目掛けて手裏剣を投げる。それは狙い違わず少女の足に突き刺さり、彼女の動きが一瞬止まった。その隙を逃さず薺の放った火弾が少女に直撃する。
「忌々しい奴らじゃ」
砂塵の妖は舌打ちして薺たちを睨み付け、蒼白い炎を振り払った。その間にトーゴは少女との距離を詰めている。
「調子に乗るでない!」
叫ぶ少女の袖口から大量の砂が撒き散らされた。トーゴは真正面から砂の侵食を食らうが、それを振り切って少女に飛び掛かると彼女の両肩をがっちりと掴む。
「くっ、放せっ!」
トーゴは逃げ出そうとするオブリビオンを押さえ付け、掌から高圧電流を放った。そして口に咥えていたクナイを素早く握み、感電の痛みと痺れで動けずにいる彼女を袈裟懸けに斬り付ける。
「痛ッ! この……癪に障る連中じゃ!」
傷付き激昂した少女は、怒りのままに激しい砂嵐を巻き起こした。砂石が渦を巻いてトーゴの身体を浮き上がらせ、そのまま後ろに吹き飛ばす。そして烈風が治まり砂煙が落ち着いた時、既にオブリビオンは姿を消していた。
「砂嵐を目眩ましに使いおったか」
そう言って薺は眉根を寄せた。立ち上がったトーゴは、身体に付いた砂を払い落としながら口を開く。
「……ここはあの娘の根城なのかね」
「恐らく、そうじゃろうな」
薺はトーゴの疑問に頷いてみせた。暗闇であるにもかかわらず複雑な洞窟内を迷わず走っていく様子からして、昨日今日来たばかりということはないだろう。
「何処に行くつもりか知らんが面倒なことじゃ」
「いや、それは大丈夫」
トーゴはランタンで地面に落ちた血痕を照らした。トーゴが斬り付ける前にも裂傷を負っていたせいか、思っていたよりも多く血が垂れているようだ。
「これなら十分、何とかなるだろ」
点々と残された血痕は、途切れることなく洞窟の奥に続いていた。トーゴは子供たちの捜索時に作った地図を広げると、血痕が続く先と照らし合わせてオブリビオンの行き先を推測する。
「これは……地底湖かなー」
そう言いながらトーゴは地底湖の前に広がっていた砂浜を思い出していた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィロメーラ・アステール
「ぺっぺっ……! なんだこりゃ、スゴい砂だぜ!」
あまり目には頼らない方がいいかもしれないなー!
普段は【失せ物探し】に使ってる感知魔法を応用して、地形や敵を探知するレーダー代わりにするぞ!
残りは【第六感】と【気合い】でカバーだ!
ついでに【残像】の出るほどのスピードと【空中戦】のテクニックがあれば、逃す心配はなさそうだぞ!
ちょっとやそっとの妨害なら【オーラ防御】で跳ね除ける!
敵に遭遇したら【錬成されし対の双星】を発動するぜ!
敵の能力を模した分身を、敵に貼り付けて、能力同士をこっそり相殺させるぞー!
【迷彩】で【物を隠す】技で、分身をバレにくくして足止めに専念!
仲間がチャンスを掴んでくれるのを待つ!
●幸運の星
地底湖に到達したフィロメーラ・アステールを出迎えたのは、荒れ狂う風と砂の嵐だった。吹き飛ばされそうになるのを堪えつつ両手で顔を覆ったが、砂嵐の勢いは激しく口の中にまで砂が入り込む。
「ぺっぺっ……! なんだこりゃ、スゴい砂だぜ!」
フィロメーラは舌の上でざらつく砂の感触に眉根を寄せ、慌てて吐き出し口元を拭う。嵐が止んで視界が晴れると、そこには砂塵の妖が待ち構えていた。
「どうじゃ、砂嵐の味は」
少女の姿をしたオフリビオンは、自信満々の笑みを浮かべてフィロメーラを見詰めている。余裕の源は彼女の足元に広がっている砂浜のようだ。辺りを埋め尽くす大量の砂は、それを操る彼女にとって大きな武器となるのだろう。
「さあ、もっと喰らわせてやるわ!」
そう言って少女は踊るように袖を振り乱し、続けざまに袖口から砂を放った。しかしフィロメーラは風のように飛び回り、飛来する砂礫を綺麗にかわしていく。
「ぬう、ちょこまかと逃げ回りおって!」
「その程度じゃ、あたしには当たらないぜ!」
フィロメーラは矢のように襲い来る砂を避けながら少女に迫り、勢いのままに彼女の頭を踏み付けた。
「んなっ!」
少女は思わず頭上に手を伸ばしたが、フィロメーラは素早くその手をすり抜ける。
「遅いぞ!」
そして今度は少女の背後に回り込み、その背中を思い切り蹴りつけた。バランスを崩した少女は、転びそうになってたたらを踏む。
「……やってくれたのう」
振り向いたオブリビンの身体がふわりと浮き上がり、その周囲に風を生んだ。しかし吹き荒れかけた風は一瞬で力を失い、巻き上がった砂がぱらぱらと地面に落ちた。
「……? なんじゃ?」
怪訝な顔をした少女は再び風を起こそうとするも、砂を巻き込んだ気流は先程と同じように失速して立ち消える。
「貴様、何かしたな?」
妖の少女は悔しそうに歯噛みしてフィロメーラを睨み付けた。少女の鋭い視線を、フィロメーラは余裕たっぷりに受け流す。
「さーて、何のことかなー?」
オブリビオンの背中には、少女の操る砂を模して作った分身がぴったりと貼り付いている。フィロメーラの魔力で生み出されたその分身は、砂塵の妖が能力を行使する度に同質の力を発現させ、彼女の力を相殺していた。
(「……あっちが仕掛けに気付くまで、もう少し掛かりそうだな」)
砂塵の妖は警戒した様子でフィロメーラと距離を取っているが、未だに何をされたのか分かっていないらしい。どうやら今しばらくの間は、敵の力を封じ込めておくことが出来そうだった。
大成功
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アレクシア・アークライト
・力場を薄く広く展開し、洞窟の形状や敵の動きを把握。[情報収集]
予知にも、子供達の話にも、貴方のことは出てきていない。
ひょっとすると、貴方と私達が出会ったのはただの偶然なのかもしれないわね。
貴方にとって私達は、自分の家に突然上がり込んできた招かれざる客かもしれない。
だけど、私達にとっても貴方は、私達の世界に入り込んできた過去の残滓。
何をするかしないかに関係なく、その存在を認めることはできないわ。
・仲間が敵の力を抑えているうちに一足飛びに接近。[空中戦]
・逃げられないように[念動力]で身体の動きを抑制。
・力場を収束し、攻撃。[グラップル、捨て身の一撃]【本気の一撃】
●砂嵐が止む時
アレクシア・アークライトの身体を覆っていた力場が瞬間的に膨れ上がり、薄く広がって辺りを満たす。それは攻撃のためではなく、念動力を応用したレーダーのようなものだ。
「……む?」
それを感じ取ったのか、砂塵の妖が顔をしかめた。警戒した様子でこちらを睨み、じりじりと後ろに下がる。
(「湖の奥は……行き止まりみたいね。出入り口は一つだけ、と」)
アレクシアは広げた力場を通して周囲の岩壁や足元の砂浜、眼前のオブリビオンなど様々な物体の位置情報を感覚的に掴み取る。
「さて、始めるわよ」
アレクシアは僅かに身を沈めると、勢い良く砂を蹴って跳躍した。踏ん張りが効かない砂地であるにも拘らず、念動力の補助を受けた彼女の身体は高く飛び上がってオブリビオンとの距離を一気に詰める。
「ちいっ!」
一時的とはいえ能力を封じられた少女は、アレクシアから離れようと身を翻した。しかし、その身体をアレクシアの放った力場が包み込む。
「な、なんじゃこれは!?」
途端に少女の動きが鈍った。水中を歩くかのように緩慢な動きで逃げようとするが、当然すぐさまアレクシアに追い付かれる。
「逃がさないわ」
アレクシアは念動力を拳に集中させて、オブリビオンの脳天に打ち下ろした。彼女を砂浜に叩き付けた衝撃で大量の砂が飛び散り、雨のように降り注いで砂埃が視界を塞ぐ。
(「逃げられるとは思わないけど、念のためね」)
一旦距離を取ったアレクシアは、出入り口を背にして敵の退路を断った。そのまま視界が晴れるのを待っていると、次第に砂煙が揺らぎ、ゆっくりと風が巻き起こる。
「……随分とやってくれたのう」
徐々に強まっていく風が砂煙を払い除け、中から砂塵の妖が姿を見せた。彼女の力を相殺していた砂の分身は、込められていた魔力を使い果たして消滅したのだろう。
「消え失せるがよい!」
満身創痍の少女は最後の力を振り絞るように叫んだ。その声と共に風が激しさを増し、砂嵐となってアレクシアを襲う。
「最後の悪足掻きかしら?」
アレクシアは念動力の力場を両手に集め、迫る暴風を押さえ込みに掛かった。そして渦巻く砂礫と風の壁を無理矢理に抉じ開けると、僅かな隙間に身体を滑り込ませる。
「しつこい奴め!」
少女は嵐の中心に入り込んできたアレクシアの目を狙って足元の砂を蹴り上げた。だがアレクシアは寸前で目を瞑り、薄く伸ばした力場を展開する。
「そう来ると思ったわ」
念動力のレーダーで敵を捉えたアレクシアは、収束させた力場を足に纏わせ渾身の蹴りを放った。妖の少女は声を上げる間もなく吹き飛び、砂嵐を突き破って岩の壁に叩き付けられる。そして力尽きたその身体は、ずるりと滑り落ちて砂の上に倒れ込んだ。
「……貴方にとって私達は、自分の家に突然上がり込んできた招かれざる客かもしれない」
アレクシアは物言わぬオブリビオンの身体に目をやった。
「だけど、私達にとっても貴方は、私達の世界に入り込んできた過去の残滓。何をするかしないかに関係なく、その存在を認めることはできないわ」
そう語り掛けるアレクシアの足元で、砂塵の妖はゆっくりと砂そのものに変化していく。そしてすっかり砂の塊になった彼女は、さらさらと崩れ落ちていった。
●その後の洞窟
事件は解決した。
迷子になっていた子供たちは全員が無事に親元へと送り届けられ、彼らを害するはずだった妖魔たちも一人残らず片が付いた。この洞窟も今後は厳重に封印し、村人たちで管理することにしたらしい。
猟兵たちは子供たちの冒険心が再び刺激されないことを、そして洞窟にオブリビオンが再び現れないことを祈って、村を後にした。
大成功
🔵🔵🔵