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熾烈交刃、焔断つ刃は未だ折れず

#クロムキャバリア #追放エースパイロット #戦争モノ

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 ――刀は武人の魂だと、どこかの国では謡われるそうだが。
 ――この国において、自らの佩く刀剣は正に己が身命と同義であった。

 ざあざあと。薄曇りの天より春雨が降り注ぐ。
 ただ天雫に身を打たれているのは一人の女。年の頃は三十路に届くか否か。
 文字通り濡れ羽色の髪を一房背に垂らし、ただ茫洋と佇みゆく。
 そんな女の前には一本の鉄塊が大地へ突き立っていた。
 それは刃だ。刀身の半ばよりへし折られた、一振りの大太刀。
 荒々しく武骨なれど、ある種の機能美を備えた得物。
 だがいまは、見るも無惨な骸を荒野に晒している。
 一方、女の背後へ視線を向けてみれば、其処には一領の|鉄騎《キャバリア》が膝を着いていた。
 その形容は武者具足を思わせ、鉄地の装甲は僅かに銀の光沢を放ちゆく。
 然かれども、その姿もまた無惨。
 兜が断ち割られ、具足は千々に砕け、躯体に一際大きな斬傷が刻み込まれている。
 直截な言い方をすれば、落ち武者と言う表現が正鵠を射ているだろう。
 眼前に折刀、背に鉄騎を負いながら、女が小さく言の葉を零す。

 ――刃よ、我が刃よ。我は汝の誉れを知れり。
 ――例え汝が恥辱に沈みゆくとも、我は汝の友輩なり。

 淡的でありながらも、切々とした声音。
 其処に籠められた感情は大なれど、推し量れる者は他になく。

「すまない、|金聖《かなひじり》。我が手からもう刃は、|荒船《あらふね》は喪われたのだ」

 女の慟哭は、ただ静かに雨音の中へと掻き消えてゆくのであった。


「やぁ、みんな。集まってくれてありがとう。寒さはすっかり遠のいてきたけれど、代わりに雨がちな天気になって来つつもある。梅雨は風情があって悪くはないけれど、湿気だけはどうにもね?」
 グリモアベースに集った猟兵たちを前に、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)は手にした文庫本を閉じながらそう口火を切る。彼女は背に『刀剣名鑑』と銘打たれたそれを小脇に仕舞いつつ、本題へと入ってゆく。
「さて、そんな季節であっても世界各地に埋まった火種は相変わらず燻っているらしい。事の発端は、クロムキャバリアの或る国で腕利きのキャバリア乗りが追放されたことが始まりだ」
 今回の舞台となるのは、大小複数の島々を領土とする小国家『秋津洲皇国』。その立地上、他国からの侵攻を受けにくいと同時に、物理的な交流も乏しい土地柄である。だがそれ故に独自の文化やキャバリア技術を発展させてきたらしい。
「雰囲気としては和風な近世国家と言った雰囲気かな。近代技術が普及しつつも武人の気骨が残っている風土で、大多数の市民を軍人階級である武家が治める政治体系を取っているのだけど……今回はその『文化』が問題となってしまった様なんだ」
 生産や商業活動に関わる一般市民と、統治と国防を一手に担う武家。後者は其の立場上、市井の民と違い様々な特権を得ているが、同時に複雑怪奇な制約もまた負っているらしい。礼儀作法や武家同士の上下関係に始まり、果ては各家が保有するキャバリアの運用についてまで。その中でも最も重要とされる決まり、それが――。
「キャバリア乗りは己の得物……剣でも槍でも弓でも良い。それら『主兵装を喪失すると今までの身分を剥奪される』という文化があるらしいんだ」
 刀は武士の魂、という慣用句を聞いた者も少なくはないだろう。この国はその言葉を比喩でも何でもなく、実際の社会規範として適用しているのだ。キャバリアを駆る武家にとって己が得物は武具としてだけでなく、名誉や社会的地位の象徴にもなっているのである。

「で、だ。春先に武家同士の交流や腕試しも兼ねた親善試合が行われてね。一般客も花見がてらに見物する一種の余興の様な物だったのだけれど……そこでの試合中、或る女武者が己の得物たる大太刀をへし折られたんだ」
 件の人物は吹け飛ぶような零細武家の出身なれど、キャバリアを駆る技量は一角の腕前だったらしい。だが、出る杭は打たれるものだ。木端な家と侮ったか、女だてらにと嫉んだか。本来であればある程度の損傷で留めるはずの親善試合で、対戦相手が事故を装い彼女の大太刀を破壊したのである。
「……壊れやすくなるよう、対戦者によって予め細工も加えられていたらしい。状況的に言えばやり過ぎた相手に非が有るけれど、衆人環視の前で武家にとって命に等しい得物を喪ったんだ。もう、真実どうこうの話ではなくなってしまった」
 武家の面汚し。互いに手加減している親善試合で得物を壊される体たらく。そうした罵倒と恥辱によって、彼女は己が矜持と誉れを奪われてしまったのである。
「これだけなら腹立たしいけれど、単なる武者同士の政争に過ぎない。異変が起こったのは件の女武者が表舞台より姿を消した後……武家の保有するキャバリア全てがオブリビオンマシンへと変貌したんだ」
 これまで『秋津洲皇国』は消極的な鎖国体制を取っていたのだが、これにより情勢は一変。破壊衝動と狂気に突き動かされるまま、他国への侵攻を画策し始めたのである。もしそれが実行されてしまえば、この世界に新たなる戦乱が生じるのは火を見るよりも明らかだろう。

「と言う訳で、前置きが長くなったね。皆には姿を消した女武者から協力を取り付けつつ、侵攻準備を進める皇国軍に奇襲を掛け、以てこれを殲滅して欲しい」
 女武者の協力を取り付ける理由は二つある。一つ目は女武者のキャバリアが皇国で唯一オブリビオンマシン化していない機体である事。そして二つ目は彼女が武家の軍事情報に通じていると言う点だ。
「秋津洲皇国は島国だからね。必然的に他国への移動手段は船、つまりは港を使う必要がある。故に彼らは大規模な軍港に戦力を集結中なのだけれど、当然ながら馬鹿正直に真正面から挑めば苦戦は必至だ。だからこそ、攻略の足掛かりを彼女から引き出さねばならない」
 女武者はいま、貧民たちの住む長屋街に隠遁しているらしい。まずは彼女へと接触し、協力して貰えるよう説得する必要がある。
「彼女は己が武具を破壊された事で没落の憂き目に遭った……説得するなら、それらを修復するのが手っ取り早いかもしれないね? 或いは、此度の事態を解決すれば汚名を返上出来るかもしれないと話すのも一手だろう」
 何はともあれ、礼を尽くすべきだ。そうして話を締めくくると、ユエインは猟兵たちを送り出すのであった。


月見月
 どうも皆様、月見月でございます。
 今回は久々のクロムキャバリアシナリオとなります。次の戦争もぼちぼちやってくる頃合いですが、GWを使いつつ進行できれば幸いです。
 それでは以下補足です。

●最終勝利条件
 オブリビオンマシンと化した秋津洲皇国軍の殲滅。

●第一章開始状況
 舞台は梅雨の気配が近づきつつある長屋街。貧しい人々が暮らす長屋の一角に女武者は隠遁しており、キャバリアや武装については少し離れた林の中に仮置きしている様です。先ずは彼女と接触し、協力して貰うよう説得して頂きます。
 大太刀をへし折られ、機体も半壊状態ですが、直す為の金子や資材を持ち合わせておらず、不本意ながらそのまま放置している状況です。なのでその修理や汚名返上の機会について話せば、食いついてくれるかもしれません。
 開始時点での詳細な状況は断章にて補足いたします。

●第二章以降
 協力を取り付けた女武者と共に、皇国軍が駐屯する軍港へと奇襲を仕掛けます。もし第一章で上手く説得・修理を行えていれば、女武者も戦力として参戦してくれるでしょう。

●その他
 進行は頂いたプレイングの量にもよりますが、ゆっくりめを想定。繁閑状況によってはプレイングの再送をお願いする可能性がございますので、その点を御了承頂けますと幸いです。

 それではどうぞよろしくお願い致します。
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第1章 日常 『キャバリア改造計画』

POW   :    強化装甲を装備して、パワーアップ!

SPD   :    新しい武装を装備して、パワーアップ!

WIZ   :    未知の部品を装備して、パワーアップ!?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●折れた刃、砕けし甲冑、雨に濡れ
 しとしと、と。勢いこそ強くは無いが、絶える事のない雨粒が薄墨色の景色を濡らしてゆく。立ち並ぶ長屋の間を行き交う市民たちもまた各々傘や合羽を纏い、水気を避ける様に歩を進めていた。
 この近辺の建物はハッキリ言って見窄らしいものだ。時代劇に出て来る貧乏長屋、と言う表現がぴったりと当て嵌まるだろう。チラと遠方に視線を向ければ城や塔に混じって現代的……とまではいかないが、ちらほらとレトロなビルが見えるので余計にだ。
 予知に寄れば、件の女武者はこの近辺にひっそりと隠れ住んでいるのだと言う。おおよその居場所も絞り込めており、さてどう接触しようかと思案する猟兵たちだったが、不意に目星をつけていた長屋の戸が開く。
「…………」
 中から出てきたのは背へと流れる黒髪が目を引く妙齢の女。僅かな所作からもよく鍛えられている事が分かる一方、纏う雰囲気は湿気を含んだ今日の空気よりも陰鬱としている。元々端正な顔立ちをしているのだろうが、昏い陰や眉間に刻まれた皴がそれを台無しにしていた。
 そうと悟られる事無く様子を窺っていた猟兵たちであったが、ふらと女は何処かへ向かって歩き始める。付かず離れず、一定の距離を取ってその後を追うと、次第に周囲から人の気配が消え、建物も疎らになり、代わりに木々と藪が姿を見せてゆく。
 猟兵にとっては苦もない道だが、女もまた笹鳴り一つ立てる事無く藪道を歩いてゆき、暫くして開けた場所へと辿り着いた。
「……こんな雨晒しにしてしまって済まないな、|金聖《かなひじり》。油紙か筵の一つでも引いてやれば幾分かマシなのだろうが、購う金子にも事欠く始末だ」
 果たして、そこに在ったのは駐機された一騎の|鉄騎《キャバリア》。膝と着いて座すその姿は各部の装甲も相まって甲冑を思わせ、鉄地の装甲は武骨なれど雨に濡れてうっすらと銀に艶めいている。
 見た目としては重装甲と言うよりもやや軽装型。重要部位のみ装甲を厚くして頑強性を残しつつ、可動域や運動性能を重視した設計思想が見て取れた。
 しかし、その姿はそこかしこが打ち砕かれており、落ち武者とでも表すべき有り様。基幹フレームこそ無事やもしれぬが半壊状態と言って良い。手加減ありきの親善試合でこうなったという前提を踏まえれば、対戦者の悪意が透けて見えるというものだ。
「況や……|荒船《あらふね》を打ち直すアテなどとても、な」
 だがそれ以上に目を引くのは、鉄騎の傍らに突き立てられた一本の柱。否、それは刀身半ばよりへし折られた大太刀である。キャバリア様に誂えられた武具であったとしても一際大きく、名の通り船を断ち切れると思わされるほど。
 尤も、それはこの大太刀が折れていなければの話だ。痛々しく折れた断面を晒して佇むそれは武具というよりも墓標に思えた。相応に手間暇を掛けた業物なのは間違いない以上、鍛え直すにも同等の代物を手配するにも、相応の資金が必要となるはず。だが、没落した女武者にそれを用意する伝手などありはしないだろう。
「真っ当に打ち合えていれば、下手な小細工など無ければ、或いは衆目の目が無ければ……そう考えてしまうのは私が弱い為か。不利を覆してこそ、武の誉れだ。だってそうだろう? もし私が強ければ、いま噂になっているきな臭い話を問い質せるはずなのだから」
 女武者も他国侵攻について聞き及んでいるらしい。だが、矜持としていた鉄騎と武具を喪った現状、その危惧を行動に移す為の気力が無いのだ。

 大太刀を鍛え直し、より鋭く、より強固な逸品に仕上げるか。
 資材を持ち寄り、鉄騎の修理のみならず更なる強化と発展を施すか。
 或いは皇国軍の暴走を説き、湿気った心に発破を掛けるか。
 いずれにせよ、事態を好転させれば女武者の協力を取り付ける事が出来るはず。

 さぁ、猟兵たちよ。全てこれからの行動次第だ。

※マスターより
 プレイング受付はこの断章投下後より。
 第一章は女武者の協力を取り付ける為の説得となります。基本的な行動方針は上記の通りとなりますが、それ以外の内容でも有効であればプラス判定を行います。
 彼女の駆るキャバリアは軽装、運動性重視、白兵戦特化、兵装は大太刀のみという性能です。長所を伸ばすか、短所を補うか、まったく別種の機能を付与するか。強化に繋がるのであれば受け入れてくれる可能性は高いでしょう。(なお、射撃武器が全くない国家と言う訳ではありません。武者は白兵戦装備を重視しますが、砲やミサイルなども配備されています)
 また、彼女は昨今の皇国軍の動きを憂いており、どうにかしたいと言う気持ち自体はあるようです。機体や武具の修繕を行いつつ、そちらを説けばより強力に前向きになってくれるでしょう。
 それではどうぞよろしくお願い致します。
鞍馬・景正
――虚無に蝕まれておられる。
されど愛騎も愛刀も、廃材として売り払う事はしていない。

ならば彼女はまだ武士。
話せば聞く耳は持って下さるでしょう。


卒爾ながら、と女武者殿に声をかけ。
まず此方から名乗り、例の噂を確かめたい故、知恵をお借りしたいと願いましょう。

無論、謝礼は致す。

持参した千両箱の中から小判を差し出し。
金貨と考えれば費用になるでしょう。

辞退されるやも知れませんが……別に貴殿個人に施す訳には御座らぬ。

武は仁義の具足、という言葉があります。
暴を誅し、乱を治め、民を安んじる。

今この国が暴を犯そうとしている。
それを正せる武の持ち主が為に使おうというだけの話。

すべては国の為、民の為です。
それが武人の務めであり、貴殿はまだ武人の筈。

また、太刀については一案。
修復も結構ですが、打ち直しになれば強度は以前より損なわれるでしょう。
ならいっそ片手打ちの刀として摩り上げては如何。

その機体ならば、素早く間合を奪って一閃を叩き込むという業も可能な筈です。

他の猟兵の案もあれば、最後は彼女の判断次第ですが。



●礼を尽くし、大義を説いて
(あれは――虚無に蝕まれておられる。恥辱と諦念に囚われた眼だ)
 しとしとと降り続ける雨粒を蛇の目傘越しに感じつつ、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は遠目から見た女武者の姿にそんな第一印象を抱いてゆく。一見すれば正に世捨て人と言った風体だ。だが同じ武を修める者として、青年が相手の本質がまた別に在ると見抜いていた。
(……されど愛騎も愛刀も、廃材として売り払う事はしていない。ならば彼女は未だ武士、物の道理を知らぬ方では無いはず。話せば聞く耳は持って下さるでしょう)
 完全に武家社会を見限り縁を切ろうと言うのであれば、鉄騎も武具も全て売り払っているだろう。先立つモノが無いのだ、半壊していると言えども幾ばくかの金にはなる。しかしそれをしていない以上、まだ完全に心が折れた訳では無いと景正は考える。
 故にこそ、言葉を尽くせば開く路もあるというもの。彼は敢えて枝葉を踏み足音を立てる事で、己の存在を相手に示す。そうして振り返った女武者の顔を確認しながら、恭しく腰を折って見せた。
「卒爾ながら、少しばかりお時間を頂けませんでしょうか。私は|猟兵《イェーガー》の末席に名を連ねる鞍馬景正と申す者。近頃、巷を騒がせている危うげな噂について調べており、ついては貴殿のお知恵を拝借したく無礼を承知で参上仕った次第です」
「……丁寧な口上、誠に痛み入る。間諜紛いの追行に思う所が無い訳ではないが、名乗られた以上は名乗り返さねば無作法と言うもの。私は|帯刀累音《たてわきかさね》。既に知っての通りだとは思うが、かつては武家の身だった者だ」
 猟兵の名乗りに対し、女武者……帯刀の反応は信疑半々と言ったところか。政争によって表舞台を負われた身、いきなり出てきた手合いを無条件で信用しろと言うのも無理な話だ。だが、景正とてそれは百も承知である。
「此方の目的は皇国軍による侵攻を挫く事。決して帯刀殿を謀る様な二心はございません。しかし幾ら言葉を並べ立てたとて、今この場でそれを裏付けられる証も無し。であればせめて、分かり易い形で謝礼を致すのが仁義かと愚考しました」
 そう言って青年が取り出したのは古めかしい木製の箱。錠を解いて蓋を開けた途端、中から金色の輝きが溢れ出す。その正体は整然と並べられた小判の束。その数、耳も揃えてきっかり千両。弱小武家では到底見る事も叶わぬ大金だった。
 眩いばかりの煌めきに、女武者は思わず目を剥き――。
「それだけの金子、確かに喉から手が出るほど欲するものだ。だが……貴殿は我を侮っているのか?」
 一転、その相貌に不快感が滲んでゆく。しかし、その反応もまたある意味で景正の予想通りでもあった。良く言うではないか、『武士は食わねど高楊枝』と。昨今では痩せ我慢の揶揄として使われるが、大元を糺せば貧してなお気位を保たんとする矜持を指す言葉である。
 相手の有り様に内心好感を抱きつつ、青年は更に言葉を重ねんとする女武者を制してゆく。
「追放された身の上で他の武家に義理立てをする理由も無いが、さりとて金銭に転ぶ手合いと見縊られること自体が……」
「その気概、誠に天晴と言えましょう。然れども、思い違いを召されるな。別に貴殿個人に施す訳には御座らぬ」
「なに……?」
 猟兵の言葉に再び訝しむ女武者。景正はずいと千両箱を相手の方へ押し出しつつ、真っ直ぐに帯刀の目を見つめながら滔々と語りかけ始めた。
「武は仁義の具足、という言葉があります。暴を誅し、乱を治め、民を安んじる。それには武を以て当たらねばなりません。そも、戈を止めると記すのが武。今この国が暴を犯そうとしているならば、それを正せる武の持ち主が為に使おうというだけの話です」
 青年の語る内容は公私の区別。己が鉄騎、己が武具を直すだけなら|私事《わたくしごと》に過ぎないが、それが|公《おおやけ》の為とするならばまだ心情的にも受け入れやすい。いわば錦の御旗、大義名分である。
「すべては国の為、民の為です。それが武人の務めであり、貴殿はまだ武人の筈。もしそれでもなお与えられるだけが不満とあらば、貸し預けると言う事でも問題は御座いません」
 ――さぁ、返答や如何に?
 猟兵と武者、異なる世界を生きる者同士。だが、武に携わると言う点においては同じ道に立っている。それを悟ったのだろう。帯刀は深々と息を吐きつつ、最終的には苦笑と共に頷きを返してくれた。
「……相分かった。一先ずこちらの金子は鉄騎や武具を修繕する為の費えとして預かっておこう。それで良いな?」
「であれば重畳です。ああ、ならば加えて一つ。太刀についても一案が」
 これで一先ず、交渉の第一段を踏み越える事が出来た。景正はやや雰囲気を緩めつつ、突き立った大太刀の残骸へと視線を向ける。人間用とは規模感が大きく異なるが、それでも業物である事は分かった。あれを元と同じレベルにまで修復するのはかなりの手間暇が掛かるだろう。
「修復も結構ですが、打ち直しになれば強度は以前より損なわれるでしょう。ならいっそ、片手打ちの刀として摩り上げては如何か。切っ先と柄側がどちらも残っている様ですし、大小二振りの拵えとするのも一手かと。その機体なら、素早く間合を奪って一閃を叩き込むという業も可能な筈です」
 一撃の威力は劣るだろうが、元より運動性に長けた機体だ。いっそ、よりそちら方向に特化してしまうのも選択肢としては十分にあり得る。機体との相性や重心変化も修繕時に調整してしまえば手っ取り早い。
「尤も、先ほど言った通りこれは飽くまでも一案です。他の方々の提案、そして何より帯刀殿の希望こそが重要でしょうから」
「ふむ、成る程。そう言う考え方もあるのか……御助言、感謝する。是非とも検討させて貰おう」
 謙遜する青年に礼を述べる女武者。未だ表情には陰が見え隠れするものの、その瞳にはちらりと熾火の様な闘志が確かに灯り始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

川巳・尖
あたいにとっては最高の天気だけど、この人達には厳しいよね
…この前の報酬、少しは貯金しとけば良かったかも

キャバリア、金聖はフレームが無事なら装甲をどうにかすれば戦えるようにはなるのかな
居候先で金属加工の作業は慣れてるし、削って磨いて修理できそうな部分はどんどんやっちゃうよ
バランスは上手く調整しないと戦い難くなるだろうから、元の形と変える必要がある部分は乗り手と相談しながら進めたいね

大太刀、荒船の方は細工されて折られたって話だけど、元通りにするのは難しそうかな
もし出来そうなら、薙刀とか槍とか、折れた刀身を再利用して別の武器にするのを提案してみる
武士の魂を扱うわけだし、乗り手の意見は大事にしたいね


フレスベルク・メリアグレース
策謀で貶められた武人、ですか
ならばわたくしが手を差し伸べましょう

生きていれば次がある、と言います
ならばわたくしは貴女に『次』を与えましょう
そう言ってUCを発動し、絶対物質ブラキオンを用いてキャバリアと武人を雨風から凌ぐ

わたくしはフレスベルク
『秋津洲皇国』の狂気を未然に防ぐべく、貴女に会いに来ました
貴女は武家として軍事情報に通じている
ならばこの国の戦略について思う所がある筈

貴女の誇りを取り戻してあげましょう
対価はわたくし達と共にこの国の暴走を止める事
そうでなくとも、キャバリアは復元しますがね

そう言って絶対物質で『|金聖《かなひじり》』を復元し、大太刀等の武装を絶対物質で強化していきます



●泪雨を遮りて
「あたいにとっては最高の天気だけど、この人達には厳しいよね。身体は濡れれば冷えるし、金物にも錆が浮くし。前回みたいに干乾びるよりかは良いけど……ああ、そう言えば。この前の報酬、少しは貯金しとけば良かったかも」
 この時期の雨は夕立の様な激しさこそないものの、その分長く続きがちだ。住民たちにとっては悩ましいが、この濃密な水気を含んだ大気をこそ水の怪たる川巳・尖(御先・f39673)が好むものであった。
 そんなままならぬ空模様を眺めていると、尖の脳裏にふと以前関わった事件についての記憶が浮かんで来る。とある小国家で勃発した反乱を鎮圧した際、彼女は億を優に超える報酬を受け取っていたのだが、それらはもうすっかり使い切ってしまっていたのだ。
「でもほら、昔の人も『宵越しの銭は持たない』って言ってたしね。まぁ、何とかなるだろうし、何とかしてみせるよ」
「ええ。『金は天下の回り物』とは言いますが、得てして必要な時に限って手元不如意なのが世の常。策謀で貶められ、困窮故に義を果たせぬ武人……道理が儘ならぬならば、わたくしが手を差し伸べましょう」
 楽観的な仲間の言葉に微苦笑を浮かべつつ、それはそれとして事態を好転させんとフレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)はチラと周囲へ視線を向けてゆく。
 周囲は木々が鬱蒼と茂っており、枝葉が屋根代わりとなっている。だが無論、それで雨風を完全に凌げるわけではない。交渉を行うにしろ、機体の修理を進めるにしろ、このまま雨曝しと言うのは余り宜しくはなかった。
「生きていれば次がある、と言います。ならばわたくしは貴女に『次』を与えましょう。その為にも、先ずは場を改めなければいけませんね」
 そういって、フレスベルクは手を頭上へと翳しゆく。彼女の掌に握られしは不可思議な光沢を放つ一塊の金属。その重みを感じながら、望む結果を手繰り寄せる為に意識を集中させる。
「叶えよ、願いを叶えし絶対なる単一物質。流れ出でし未知なるを創造し、形成し、衆生の願いを叶え給え」
 果たして、術者の意に応えたそれらは煌めく粒子へと変ずるや、半透明の天幕となって周囲一帯を覆ってゆく。いくら耐久性に優れているとはいえ、これから機械を扱おうというのだ。やはり水気は絶っておくに越したことはない。
 天幕に雨粒がぶつかるぽつぽつとした音が疎らに響く中、一瞬にして構築された屋根を目の当たりにした女武者は興味深そうに頭上を見上げている。
「これはまた面妖な……布ではなく金属で出来ているとは。先の若武者も尋常ではなかったが、やはり一国の暴挙を止めようというのだ。只者では無いという訳か」
「ええ、その通り。わたくしはフレスベルク。秋津洲皇国の狂気を未然に防ぐべく、貴女に会いに来ました。貴女も武家として軍事情報に通じているならば、この国の戦略について思う所があるはず」
 少女の問いかけに対し、帯刀は複雑そうな表情を浮かべる。彼女は武家とは言え、家格としては泡沫も良いところ。もし仮に此度の侵攻に異を唱えた所で聞き入れられたかどうか。だがそれでも、ただ座して黙する事を是としたくはないのだろう。
「……然り。恨み辛みが無いとは言えぬ。だが好きにしろと見限ったところで、苦境に陥るのは結局のところ民草。出来れば止めるべきだ。しかし、もうこの身より武門の誉れは失われてしまった」
「ならば、貴女の誇りを取り戻してあげましょう。対価はわたくし達と共にこの国の暴走を止める事。まぁ、万が一そうならなくとも機体は復元しますがね? さて、準備はよろしいですか?」
「はいはい、っと。水気が遠のいたのはちょっと残念だけど、やるべき仕事はきっちり果たそうか」
 仲間の呼び掛けに応えつつ、尖は駐機されている鉄騎の状態を確認し始める。パッと見た限りでは痛々しい限りの状態だったが、よくよく内部を改めれば肝心要のフレームは幸いにも無事。多少の歪みや疲労はあるだろうが、人間でいう所の骨格に問題が無いのは大きかった。
(ふむ……良し、これなら大丈夫そうだ。酷い部分はチェックや修繕が必要だけど、装甲をどうにかすれば戦えるようにはなるかな。誰が作ったのかは知らないけれど、こういうのを職人技って言うんだろうね)
 もしこの部分が駄目だったら、それこそ一から作り直すことを意味しているのだ。ある意味、不幸中の幸いだろう。そしてだからこそ、少し触れただけの水怪にも籠められた仕事の丁寧さが感じ取れたのだ。
「居候先で金属加工の作業は慣れてるし、削って磨いて修理できそうな場所はどんどんやっちゃおうか。という訳で、材料の準備は任せられる?」
「ええ、お安い御用です。ついでに加工用の道具も出しておきましょう。絶対物質を変じさせられるのは同等の存在だけですので」
 尖が合図を出すと、フレスベルクは先ほどの金属塊から大小様々なパーツを生み出してゆく。水怪は同じ材質で出来た工具を手に取ると、さっそく虫食い状態の機体へそれらを当て込み始める。
「あたいが外から各部位を調整するから、そっちは操縦席から違和感がないかどうか都度確認してくれないかな。バランスは上手く調整しないと戦い難くなるだろうし、こればっかりは扱う本人の肌感覚だからさ」
「う、うむ。心得た。慎重に操作するが、くれぐれも怪我はしないよう注意して欲しい」
 年端もいかぬ少女が苦も無く作業を進める様子に思わず感心しながらも、女武者はシートに座ってゆっくりと手足を動かす。その過程で覚えた違和感を猟兵へと伝え、適宜最適化を図っていった。この調子であれば機体の戦闘能力を取り戻すのにそう時間は掛からないだろう。
「……ところで、荒船だっけ? 大太刀の方は細工されて折られたって話だけど、元通りにするのは難しそうかな」
 となれば、気になるのは武装の方だ。尖が手を動かしながら聳え立つ折れ刀へ視線を向けると、丁度フレスベルクが刀身を改めているところであった。
「釘や楔か何かで予め亀裂を入れていたようですね。断面も酷く崩れています。絶対物質を使えば修繕する事自体は可能でしょうが……」
「……ふ、む」
 言葉尻を言い淀んだのは職人技の難しさを知る故か。どんなに寸分違わず再現したとて、何かが致命的に異なる。そんな言い表せぬズレが生じることは往々にして珍しくない。況や、超常の異能を以てしても尚だ。どうやら帯刀もその点を危惧しているらしい。
「それならさ、薙刀とか槍とか、折れた刀身をそのまま利用するのはどうかな。この国の人たちにとって、武具は武士の魂なんだよね? なら、乗り手の意見を大事にしたいかな」
「ああ、先ほども似た様な提案を若武者からされたよ。ある意味、武家として一度は死んだ身だ。確かに得物を改めるのも一手だと思うが……何にすべきか、悩ましくもある」
 尖の問い掛けに対し、微苦笑を浮かべる女武者。武士の魂というからにはそう軽々しく変えられるものではない。故にこそ、何をその手に握るべきか直ぐには決めかねるのだろう。
 幸い、多くは無いがまだ時間はある。斯くして猟兵たちと女武者は何が良いかと言葉を交わし合いながら、修理作業を進めてゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ワタツミ・ラジアータ
毎度おなじみの廃品回収でございますわ。
ご所望でしたら修繕もやっておりますけれど。

断るだろうと考えつつも折れた太刀を破壊、資源化することを経由してのリサイクルをまず提案
資源に貴賤はない
姉と違い古い物への拘りは無い。
歴史は多少考慮はする

本命としてそれ自体が武器な太刀用の鞘を提案
折れた太刀に被せて運用できる
費用、素材として周囲の鉄屑、粗大ごみ、不要部品、石ころなど

由緒正しきゴミ山産ですけれど、使い勝手はそちらの折れた太刀よりは良い事保障いたしますわ。
どんなモノも稼動してこそ価値はあるのですから。

他にも何かご入用ならローン払いも大丈夫ですのでご安心を。

ネジからキャバリア外装まで扱うジャンク屋として


チェスカー・アーマライト
誰かが言ってたな
銃や砲は弾切れするが
刃と体は不滅
この世で一等イカした武器だ、ってよ

近くにジャンクヤードでもあれば資材漁りに行くんだが
ま、無けりゃ身銭を切るさ
ビッグタイガーの脚部シールド(普通の量産品)を資材にするぜ
訳あって手練れを探してる、急ぎでな
こいつは前払いだ
アンタの腕を買いたい

基幹が無事なら何とでもなる
機動力を削がねーようバランスを見つつ
盾から削り出したパーツで機体を補修する
リクエストがあれば聞くぜ
乗機の事を一番良く分かってんのはパイロットだしな
……なんせ突貫作業だ
継ぎ接ぎの傷痕は完全には消せねーかもな
一応、例の小細工が残ってねーか最終チェックだ
まったく、ナメた真似しやがって



●捨てる神あれば拾う神あり
「ハァン? 成る程、目下の問題は得物をどうするかねぇ。そういや誰かが言ってたな。銃や砲は弾切れするが、刀と体は不滅。この世で一等イカした武器だ、ってよ」
 駆け付けた猟兵たちによって急ピッチで進められる鉄騎と武具の修理作業を一瞥しながら、チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は誰に聞かせるともなく独り言ちる。
 一先ず、機体を戦闘可能な水準まで持っていく目途は立ったが、今後の事を考えればもう一声欲しい所だ。それをベースとして長所の底上げを行うか、短所を補うか。まだまだ改良の余地はあるだろう。
 加えて問題はそれが手にする武具について。この国の武者にとって武具とは文字通りの魂、生半可な代物であってはならない。使い手との相性も考慮すれば、単純そうに見えて中々に複雑な問題である。
「近くにジャンクヤードでもあれば資材を漁りに行くんだが、話を聞いた限りじゃここらはスラムみてぇな場所なんだろ? 使えそうなもんが転がってるとも思えねぇ……こりゃ、身銭を切るしかないかね」
「……おや、その口ぶりですと、どうやら丁度良い時に来たようですね。
 少しでも使えそうな物は無いかと思案する戦車乗りだったが、生憎と立地が悪かった。単純に金属とはそれその物が金になる。今日の糧にも事欠く住人たちがそれをむざむざ放っておくとは考えにくい。さりとて、市街地に買いに行けば目立ちかねぬ。
 さてどうしたものかと唸るチェスカーに声を掛けたのはワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)。このレプリカントの言葉通り、ある意味で彼女こそ今この場において最も必要とされる存在だった。
「毎度おなじみ、廃品回収でございますわ。引き取りは勿論、廃材がご入用でしたらどうぞお申し付けを。ご所望でしたら修繕もやっておりますけれど」
 そう、ワタツミの生業はジャンク屋、瓦落多の取り扱いならば正に専門分野と言えよう。願ったり叶ったりの展開に女傭兵は思わず口笛を吹く。
「ヒュゥ。なるほど、コイツはご機嫌なお仲間だ。最悪、ビックタイガーの脚部シールドを使おうかと思ってたところでな」
「不要なればぜひ買取を、とは冗談ですけれどね。これから戦闘が待っていますのに、むざむざ守りを薄くする道理もないでしょうから。代わりに使える物が有ればそれに越したことも無しとは言え……さてはて」
 そうして互いの自己紹介もそこそこに、ワタツミはくるりと背後へと向き直る。チラと視線を向けた鉄騎『金聖』は現在も修理作業が進められており、到底ジャンクなどとは呼べまい。なればと瞳が吸い寄せられるのは、未だ虚ろ気に突き立つ巨大な鉄塊とその傍らに佇む帯刀。
「さて、得物をどうするのか迷っておいでなのですよね? 加えて、先立つモノもあって有り過ぎるというものではございません。こちらの品、一つ買い取らせて頂ければと思うのですがどうでしょう? これだけの鉄塊です。資源化を経由してリサイクルすれば、相当な量となる筈です」
 仲間が口走った申し出に、チェスカーがまたぶっ込んだものだと再び口笛を吹く。とは言え、口にした当の本人とて巫山戯けている訳では無かった。強いて言うなれば機械存在としての本能か。資源に貴賤無し。歴史は多少考慮するも、『姉』と違い古い物への拘りは無い。
 いっそ挑発的とも言える質問に対し、女武者は暫し渋面を作っていた、が。
「これを売れとはな……それこそ冗談だし、それは貴殿も承知の上だろう?」
「ええ、そうでございますわね。不躾な物言いを謝罪いたします」
 張り詰めた空気は緩み、相貌に微苦笑が浮かぶ。対する機械人もまた示し合わせように頭を下げた。これもある種の交渉術と言った所か。ワタツミの踏み込んだ問いに相手も腹を括ったのだろう。改めて、聳え立つ折刀へと視線を向ける。
「決めたよ。飽くまでも大太刀は活かす方向で行く。刀身は片手用の太刀とし、茎側も菊池槍とすれば無駄にはなるまい。である以上、まずはそれを振るう機体を十全とせねばな」
「よーし、そうと決まれば早速作業に取り掛かるとするか! 他の連中が話した通り、あたしらは訳あって手練れを探してる、それも急ぎでな。こいつは前払いだ。で、代わりにアンタの腕を買いたい、オーケイ?」
 己の問い掛けに女武者が頷くのを確認すると、チェスカーは手早く修復作業へと取り掛かった。また同時にその為の資材を準備すべく、ワタツミも周囲へと視線を巡らせる。幸い、付近一帯は人気のない林だ。幾らか拝借した所で文句を言う者も居ないだろう。
「機海起動。祝詞を伝えよ海の彼方へ。惑星改竄式構築。唄を紡げ囃子を鳴らせ高らかに。侵蝕強制執行開始……これぞ戦の前祝。いざ始めよう愉しき宴を」
 瞬間、彼女の全身から不可視の粒子が吹き上がり、周りの木々や土中に埋まる石塊を金属資源へと変じさせてゆく。資源に貴賤無しとは決して大言壮語ではない。ジャンク屋の本領発揮とばかりに、機械人は瞬く間の内に十分な資材を揃えて見せた。
「この程度で事足りますでしょうか?」
「ああ、こんだけありゃ十分さ。基幹さえ無事なら何とでもなるもんだ。コイツは機動力が売りなんだろ? そいつを殺しちまったら元も子もねぇし、慎重にバランス調整しねぇとな」
 小首を傾げる仲間に問題ないと返しつつ、女傭兵は急ピッチで修理を進めてゆく。幸い、先んじて手を付けていた猟兵によってある程度は形になっている。そのお陰で幾分か余裕が生まれたのか、チェスカーは帯刀へと声を掛けた。
「やっぱ、人手が有ると効率が段違いか。物は次いでだ、リクエストがあれば聞くぜ。乗機の事を一番良く分かってんのはパイロットだしな……とは言え、なんせ突貫作業だ。継ぎ接ぎの傷痕までは完全に消せねーかもな」
「いや、そこまでの気遣いを望むつもりはないさ。向こう傷は武士の誉れだ。まぁ、それで一敗地に塗れた者が言えた事では無いかも知れんがね」
 やはりどれだけ丁寧さを心掛けても、元々あった装甲と修復箇所では微妙に色味や質感に差異が生じてしまう。それを不格好と言われれば否定はできない。気にはしないと断りながらも、女武者の言葉尻に若干の影が滲むのをチェスカーは感じ取る。
(……まったく。何処の誰だか知らねぇが、ナメた真似しやがって。一応、例の小細工が残ってねーか最終チェックだ)
 戦場では卑怯な真似なぞ見飽きたものだが、それを公正なはずの試合でやられると腹立たしいものだ。女傭兵はこれ以上予想外の置き土産に悩まされぬ様、作業と合わせて丹念に機体を調べてゆくのであった。
「ふむ、あちらは問題なさそうですわね。であれば先の無礼に対する詫び、と言う訳ではございませんが。一つ、入用となりそうな物を先に用立てさせて頂きましょう」
 一方、機体の方は仲間に任せて問題ないと見たワタツミは、改めて折れ刀へと向き直る。刀身の長さ、幅、厚さ。そしてそれらから導き出される修復後の姿を演算すると、余った廃材を操り複雑に組み合わせ始めた。
「刀の形状が変わる以上、恐らく元の鞘にはもう収まりません。『剣』なら兎も角、刀は生憎と専門外ですが……それその物でなければ、案外どうにか出来るというものですわ」
 果たして、形を成したのは一本の鞘。だが、単に刃を収める為の覆いではない。鉄屑や不要部品、岩などで構成された其れは、質量と硬度を備えた一種の鈍器でもあった。規格も不揃いな素材を使っているにも拘らず、鞘として違和感のない外観に仕上がっているのもひとえにワタツミの技量故だろう。
「これは、なんとも……!」
「それ自体が武器となる鞘でございます。片手用に磨り上げれば当然、元の重さとも違ってくる筈。ですがこれならば、そのギャップを幾許かなりとも埋められるでしょう。由緒正しきゴミ山産ですけれど、使い勝手は保障いたしますわ。どんなモノも、稼動してこそ価値はあるのですから」
 機械人の憎い心遣いに思わず言葉を失う帯刀。不要とされた物を活かす事こそがこの猟兵の本領だ。それを証明する様に、ワタツミは此度の顧客に対し慇懃に腰を折る。
「他にも何かご入用ならローン払いも大丈夫ですのでご安心を。ネジからキャバリア外装まで扱うジャンク屋として、ご要望に応えて見せましょう」
 斯くして機械人と戦車乗りの手によって、次なる戦いに向けての準備は着々と進行してゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロザリア・プライム
コレがサムライキャバリア! 凄い! まるで芸術だな
……何拗ねてんのさ、アンタは生きてるんだろう
死んだら恥もクソもありゃしないって
生きているからラッキーだ
リセットさえすりゃ最高だ、ってね

で、アンタは何がしたいんだ?
これを打ち直すアテが欲しい?
国のきな臭い話を問い質したい?
答えればその為の力をくれてやるよ

女武者の答えに応じてキャバリアの武装が出てくる筈
何でこんな事が? こういうインチキが生業なのさ|猟兵《私ら》は
それに|国の阿呆な輩《オブリビオン》って奴は世界共通の敵なんだよ

私か? 私は|楽しい戦争の国《ワンダーランド》からやって来た傭兵
|ロザリア・プライム《流しのウサギ》って所かな
アンタの名は?


エメラ・アーヴェスピア
島国で一斉にって…それは相当拙い状況じゃない?
可愛そうだとは思うけれど…私はあくまで仕事的に行きましょうか

どうにかして軍港は突破しないといけないから情報は欲しい
つまり求める物は情報、私が出すものは資材とオマケで修理ね
専門は魔導蒸気技術ではあるけれど、それ抜きでも修理くらいはできるわ
改造案があるなら他の同僚さん達とも相談してから決めて頂戴、調整位はやってあげるわ
とはいえ、残念ながら刀の方はさすがに専門外がすぎるのよね…
他の同僚さん達でも直せないようなら、一応大太刀と同型同サイズ、同重量の物は用意できるけれど…
内部の再現までは難しいから、只の鉄剣になるわよ?

※アドリブ・絡み歓迎



●過去とこれからの事を
 肝心の武装自体はまだ手付かずなものの、急ピッチで進められる修復作業によって帯刀の鉄騎『金聖』はかつての姿を取り戻しつつあった。丹念に磨き上げられ、艶めいた光沢を放つ装甲からはもう落ち武者じみた印象など微塵も感じさせない。そんな峻厳とした威容を目の当たりにし、ロザリア・プライム(ヤッハ隊・f39987)は思わず目を輝かせてゆく。
「コレがサムライキャバリア! 凄い! まるで芸術だな! 他の連中が持ってる機体も、それぞれの家の家宝みたいなもんなんだろ? いやぁ、お目に掛かるのが楽しみってもんだ!」
「で、その武家が島国中で一斉に挙兵って…それは相当拙い状況じゃない? そんな矢先に追放されたのも、もしかしたら何かしらの意図があるのかしら。可愛そうだとは思うけれど……ええ、私はあくまで仕事的に行きましょうか」
 そんなハイテンションな仲間とは対照的に、エメラ・アーヴェスピア(歩く|魔導蒸気兵器庫《ガジェットアーモリー》・f03904)の所作は落ち着いたものだ。キャバリア関連に目が行きがちだが、それは飽くまで女武者の協力を取り付ける手段である。本来の目的である軍港攻略の情報を引き出さねばならぬと、彼女は努めて冷静に在らんとしていた。
「これだけの礼を尽くされたのだ、こちらとて今更出し惜しむ物も無い。武威であろうが情報であろうが、助力を厭わんさ……誉れを喪った私に手を貸す者など、周りには誰も居なかったのだからな」
 一方で件の人物は猟兵たちの行為に対し、深い恩義を感じてくれているらしい。どうやら身分を奪われた際、周囲から相当手酷く詰められた事が影響している様だ。礼を述べつつも、その時の事を思い出してか言葉尻に忸怩たる思いが滲んでいる。
 そんな様子を見かねたのか、肩を竦めながらロザリアが呆れ交じりに言葉を紡ぐ。
「……何拗ねてんのさ、アンタは生きてるんだろう? 死んだら恥もクソもありゃしないって。生きているからには須らくラッキーだ。過去に何があったってリセットさえすりゃ最高だ、ってね」
「今さらあれこれと詮索する気は無いが、やはり島の外では随分と価値観が違うらしいな。女々しいとは分かっているが、そう直ぐに切り替えるのは難しいものだ」
 こればかりは一朝一夕どうにかなるものではない。恥や矜持が命よりも上に座する社会の中で生きて来たのだ。その中で培われた考え方を変えるのはやはり難しいのだろう。であればと、傭兵兎は女武者へと水を向けた。
「価値観が違う、か。なら相互理解のお時間だ。アンタは結局何がしたいんだ? これを打ち直すアテが欲しい? 国のきな臭い話を問い質したい? 答えればその為の力をくれてやるよ」
「……そう改めて問い直されると、些か難しいな」
 極論、これまでの帯刀は受け身の姿勢だったと言って良い。乗騎を修復するから、代わりの得物を準備するから、失った誉れを取り戻す機会を与えるから。そうした猟兵側の提示する対価にただ応じていただけだ。
(無論、それが悪いとは言わないわ。下手に情へ訴えかけるよりも、ある意味でそちらの方がフェアで誠実だもの。でも、向かう先が戦場となれば話は少しばかり違ってくる……確固たる想いが無ければ、それこそ次は意志が折れてしまうでしょうね)
 そんな同僚と女武者の問答をエメラは黙して見守っていた。彼女とて持ち得る技術と引き換えに相手から情報を引き出さんと考えている。普段ならばそれで問題ないだろう。しかし、戦場に挑む以上はそれだけでは済まない。
 知らぬ訳では無い顔を相手取り、罵詈雑言と鉄風雷火の渦巻く最中へと飛び込むのだ。ただでさえ寄る辺としていた鉄騎と得物を失っている以上、それに負けぬだけの『何か』が必要だった。
 果たして、暫しの沈黙の後に帯刀は口を開く。
「……国の為、大義の為、責務の為。其れも決して間違いではない。だが、より強く願うモノがあるとするならば」
 ――次こそは『勝つ』。
 訥々と語られる言葉の中で、その一言は静かな気迫を孕んでいた。それはある意味で至極当然の願いとも言えるだろう。あらゆる美辞麗句で彩ったとしても、武の本質は其処にある。矛を止め、邪知暴虐を正し、民草を守る力。幾らお題目を並べた所で、負ければ全てが無へと帰す。それを女武者は既に身を以て痛感しているのだ。
「良いねぇ、畏まったお利口さんな答えよか遥かにマシだ。だが、まだ満足は出来ねぇな。口先だけならどうとでも言える。そいつが大言壮語じゃないって証明する為に、まずこっちが約束を果たしてやるよ!」
 その言葉を受けて、ニヤリと笑みを浮かべるロザリア。傭兵兎がクルリと身を翻すや、虚空より無数の何かが現れ出でる。姿勢制御用バーニア、大小様々な増加装甲、各種センサー類。それらは全てキャバリア用の追加装備だった。
 機体の修理自体はほぼ完了済み、ならば次は更なる強化と発展を。そんな女武者が無意識に頂いていた望みを、猟兵の異能が具現化した結果である。これまでの補修資材とは異なる、明確なパーツ群に思わず帯刀も目を剥く。
「猟兵とは無からこんなものまで呼び出せるのか……!?」
「何でこんな事が、って顔をしてるな。こういうインチキが生業なのさ、|猟兵《私ら》は。それに|国の阿呆な輩《オブリビオン》って奴は世界共通の敵なんだよ。だったらま、常識外れの一つや二つは持ってるもんだ」
 ――私は|楽しい戦争の国《ワンダーランド》からやって来た傭兵、|ロザリア・プライム《流しのウサギ》。どうかお見知りおきを、ってね?
 不敵な笑みを浮かべながら、気取った風にウィンクを流す。そんな仲間の問答を見届け終えたエメラは、今度は自分の番だと歩み出る。その周囲にはいつのまにか、百を優に超える魔導蒸気兵が整列していた。
「武器や防具は装備しないと意味が無い、と言うのは今更かしら。専門は魔導蒸気技術ではあるけれど、それ抜きでもパーツの装着作業くらいはできるわ。その為の人手も既に手配済みよ?」
 果たして半機人の号令一下、兵士たちはテキパキと淀みない動きで部品をキャバリアへと装着させてゆく。戦闘には向かないが、代わりに工兵としての能力に特化させた者たちである。頭数と連携ならば折り紙付きだ。
「不具合の調整も含めて、これならそう時間は掛からない筈よ。試乗して操作感覚を確かめる余裕すら作ってあげられるけれど……とはいえ、残念ながら刀の方はさすがに専門外がすぎるのよね」
 工兵たちを横目で眺めつつ、エメラは視線を突き立つ折刀へと移す。工兵は工兵であって、職人ではないのだ。こればかりは幾ら数を揃えようと如何ともしがたい。代わりと言っては何だがと、彼女は別の提案を行う。
「一応大太刀と同型同サイズ、同重量の物は用意できるけれど……流石に内部の再現までは難しいから、只の鉄剣になるわよ?」
「それでも用意するだけならば出来るのか……なら大太刀ではなく、槍の柄をお願いできないだろうか? 折れた茎側と組み合わせて菊池槍としたい」
「ええ、それくらいならお安い御用よ。工兵たちに準備させておくわね。代わりにそれを待つ間、そちらが知っている情報を教えて貰えないかしら」
 帯刀の要望に頷きつつ、一通りの指示を出し終えたエメラは改めてそう口火を切る。協力者の戦力化も大事だが、肝心要の情報についても忘れてはならない。是非も無しと、女武者もまた口を開いた。
「皇国軍が軍港に戦力を集結させているのは承知の上だと思う。当然ながらその周囲には監視の目が多く、警戒も厚い。だが一点、恐らく彼らの知らぬ『盲点』がある」
「盲点?」
「使われなくなった大型地下水路だ」
 彼女曰く、軍港には元々内陸部へと繋がる水路が有り、荷揚げした物資の運搬に重宝していたのだと言う。だが周辺地域の発展に伴う土地不足、より効率的な運送手段の発達によって重要性が低下。結果、暗渠として埋め立てられてしまったのだと言う。
「使われなくなってからもう随分と経つ故、覚えている者は少ないはず。キャバリアが移動できるだけの空間も在るしな。ただ出口は軍港のど真ん中なので、出た瞬間に即戦闘開始となってしまうのが注意点だ」
「成る程ね……でも、何故貴女はそんな事を知っているのかしら?」
「なに、簡単な話さ。元々、私の家はその水運利権を経済基盤としていたのだよ。それが潰された結果、零細武家に没落したと言う訳だ。まぁ、今では武家ですらなくなったがね」
 肩を竦めながら、深々と溜息をつく帯刀。エメラはどこか遠くを見つめる相手の瞳に、一抹の物悲しさが揺れているのを見て取るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…武とはただ破壊の力のみではなく、其れを有した己を律す精神こそ根幹たるもの。
故に武具…、力のみに心魂を捧げては本末転倒。

されど、人の数だけ答えに違いを有するもまた正しき武の有り様です。
戦の世たるこの世界においては力を象徴と重きを置くも道理と言えましょうが…。

今はその摂理の暴走がこの国を、民を脅かさんとしています。
この国の軍事に通ずると聞き及ぶ貴女なれば、その情勢も耳に挟んでおられましょう。
我らは其れを止めんが為に、貴女のもとへ足を運ばせて頂きました。


貴女が刃を以て守らんとしたは何か。
…その刃が折れてなお、この場所に赴くは何故か。

――私は貴女の心に未だ折れず宿る刃にこそ、助勢を願いたく存じます。



●心に一振り、揺るがぬ刃を
「……突き詰めた願いの根源は『勝つ為』、ですか。なれば次に問うのは、そこより伸びる幹と枝葉についてと参りましょう」
 女武者と仲間たちの会話にじっと耳を傾けていた月白・雪音(|月輪氷華《月影の獣》・f29413)は、ポツリとそんな呟きを漏らしゆく。戦いにおいて、その気概は頼もしいものだ。猟兵とて過去からの脅威に打ち勝つ為、同じ思いを抱いている。
 然れども、それのみに心を満たされては健全とは言い難い。暴力と武は根を同じとするが、それらを隔てるは心の有り様。幸い、鉄騎の修復はほぼ完了済みだ。ならばタイミング的にも丁度良いと、雪音は帯刀へと言葉を掛けてゆく。
「武とはただ破壊の力のみではなく、其れを有した己を律す精神こそ根幹たるもの。故に武具……力のみに心魂を捧げては本末転倒。それは己が身命と得物を同一視する国に置いても変わらぬ筈でしょう?」
 鉄騎と得物を修復した後、女武者だけを鉄砲玉として送り出すならば別にどの様な考えを持っていた所で構わない。だが、背中を預けるとなれば話は別。ただ力を振るう事にのみ固執する者なぞ、敵以上に危険な脅威でしかないのだ。
 現に雪音とて獣としての本能を抱きながらも、師から賜った武の鍛錬によって荒れ狂う衝動を御している。故にこそ、訥々と紡がれる言の葉には言外の重みが籠っていた。
「されど、人の数だけ答えに違いを有するもまた正しき武の有り様です。戦の世たるこの世界においては、至上無二の象徴として力に重きを置くのも道理と言えましょうが……」
「いや……貴殿の言に否も無し。業物を手にさえすればその者は戦人と呼べるのか? 無論、そんな事はあろうはずもない。振るう得物に見合った心身が無ければ無用の長物に過ぎん。況や、眼の曇った同胞らについてはもう語るに及ばぬ」
 武の正道とは何かと問われた時、果たして確信をもって即答できる者がどれだけ居るだろうか。己を高める為、弱者を守る為、暴虐を討つ為。極論、そのどれもが正しいとも言える。しかし翻って見るに、他国へ侵攻を企てる者らがその範疇に入るとは到底思えなかった。
 唾棄する様に語る帯刀の返答に頷きながら、雪音は先を続けてゆく。
「ええ。貴女が耳に挟んだ噂や情勢の数々、それらはすべて真実です。今はその摂理の暴走が他国のみならずこの国を、民を脅かさんとしています。重ねての言葉になりますが、我らは其れを止めんが為に貴女のもとへ足を運ばせて頂きました」
 暫しの間、まっすぐに交わり合う猟兵と女武者の視線。だが不意にその繋がりが途切れる。先に瞳を逸らしたのは雪音だ。彼女は帯刀から折れ突き立つ大太刀へと目線を向けていた。未だ手付かずなそれは極めて無惨で痛々しい。しかしそれでも、刃はまだ此処に在るのだ。
「貴女が刃を以て守らんとしたは何か……その刃が折れてなお、決して手放すことなく、この場所へ赴くは何故か」
 そうしてくるりと身を翻し、白虎は今再び帯刀へと向き直る。彼女にとって武具の有無など然して重要な意味を持たない。より重きを置くのはその精神の在り方だ。既に雪音は相対する者の内に揺ぎ無き確かなモノを見つけていた。
「その意味を私は、私たちは知っている」
 ――私は貴女の心に未だ折れず宿る刃にこそ、助勢を願いたく存じます。
 そうして猟兵は深々と腰を折る。対して女武者もまた、膝を着いてそれに応じた。
「事此処に至りてはもはや是非も無し。請われて参戦するのではない。私は己自身の意思で刃を手に取り、貴殿らと肩を並べたく思う。鉄騎と得物、そのどちらをも携えてな。その為ならば、裏切り者の誹りも喜んで受けよう」
 斯くして此処に協力関係が成立する。己が主の交わせし約定を、突き立つ折刀は言葉も無くただ静かに見守りゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファン・ティンタン
【POW】誉で飯は食えぬ

(彼が、家を空けがちになって、もうひととせも経ったか
永い命だ、こんな事もあろうかとは思えど、堪えないとは言えないものだね……)

……そんな中での、この話だ
傍に在るだけでも幸いなのだと説こうか

本来なら、時間をかけて、鉄騎も得物も正しく直してこその再出発なのだろうけれど、生憎、今は物も時間もない
でも、まだゼロではないよね
賭けられるモノはある……そう、あなたの全てだ
誇りなんぞ犬に食わせろ
助けを請え
その身を粉にして、対価と差し出せ
幸い、憂国の意を持って立つべき戦場があるとのことだよ
……友を、己が半身を、救うんでしょう?
自分の信ずるモノを捨ててしまった時、それこそが、本当の意味で誉が潰える時だよ

【混成合掌】
さて、しばらく戦場に出ていなかった分求煉も肥えてきてはいるけれど、補強出来るのは鉄騎か刃か、どちらか一方だけかな
ヘルプはそれなりに来ているように見受けられるから、心配はないか
鉄騎の補強であれば装甲部より可動部の負担軽減かな
刃の修繕なら、小太刀、双剣、方天戟、ご希望を何なりと



●逢い別れ、されど総ては巡り征きて
(……彼が家を空けがちになって、もうひととせも経ったか。永い命だ、こんな事もあろうかとは思えど、堪えないとは言えないものだね……決して、逢えていない訳では無いんだけれど)
 機体の修復はもう最終調整の段階かつ、帯刀から協力の確約も取る事が出来た。後は肝心要の得物をどうするかのみ。そんな場面において、白き刀の付喪神たるファン・ティンタン(天津華・f07547)が降り立ったのはある種の必然であっただろう。
 しかし、であるからだろうか。折れ砕けて大地に突き立つ刃を目の当たりにし、彼女の脳裏にふと一抹の無謬が吹き抜けてゆく。賑やかだった喧騒も今は遠く、愛しき想い人と顔を合わせる機会も以前と比べれば減ってしまった。
(……そんな中での、この話だ。もしかしたら、我知らず今の心境と重ね合わせていたのかもしれないね。ただ、ある意味で最も重要な点が異なる。まぁ、偉そうにモノを言える立場でもないけれど……傍に在るだけでも幸いなのだと説こうか)
 彼女は一瞬だけ、紅の左瞳を閉じてゆく。感傷を断ち切るのではない。刃を鞘に納めるかの如く、ただ胸の内へと仕舞うのみ。そうして再び瞼を開いた時には、もう既に白刀は常の鋭さを取り戻している。
 ファンは純白の装いをはためかせ、女武者へと歩み寄ってゆく。かつての同胞と相対するにあたり、相手は先ほど何を口にしたか。ならば、こちらもその覚悟に合わせるのがある種の礼儀と言えよう。そうしてまず、白刀は聳え立つ鉄塊を指し示す。
「本来ならしっかりと時間をかけて、鉄騎も得物も正しく直してこその再出発なのだろう。けれど生憎、今は物も時間もない。機体の修理はなんとか間に合ったけど、一方で折れた大太刀自体はまだ手付かずのままだ」
「……そう、だな。しかし、こればかりは如何ともしがたい。キャバリアの修理と比べ、求められる技術の方向性や分野が余りにも異なっている。ああしたい、こうしたいと幾ら喚こうと、それを為せる者が居なければ所詮は画餅に過ぎん」
 改めて現状を再認識し、女武者は渋面を作る。猟兵の言葉通り、茎側を菊池槍とする為の柄や鈍器も兼ねた鞘などは揃っているが、当の大太刀を加工する目途は立っていない。ある程度の統一規格の在る鉄騎に対し、この手の武装はほぼ一点ものだ。鍛え直すにしろ磨り上げるにしろ、技術的なハードルが段違いである。
 勿論、やろうと思えば手は有るだろう。だがそれには何よりも時間と金が必要であり、そして今の帯刀にはどちらも無い。これまで猟兵から受けた援助ですら、望外の結果である。これらをどうにかする当てなど言うまでもなく無かった。
「既に十分すぎる程の施しを受けている。これ以上を望もうにも、もはや私には差し出せる情報も腕も無いのだ。いや、仮に在ったとしてもそれを為す手段が……」
「でも、まだゼロではないよね。賭けられるモノはある……そう、あなたの全てだ。まさか、この期に及んで出し惜しむつもりもないだろう?」
 口惜しさに唇を噛み締める女武者だが、ファンはその言葉に否を突き付ける。峻厳な物言いではあるが、彼女こそ未だ手付かずの要素を補完し得る存在だ。無惨にも折れ砕けた大太刀も、この付喪神ならばどうにか出来るだろう。しかし最も重要であるからこそ、問い掛ける覚悟はこれまでよりもなお厳しい。
「誇りなんぞ犬に食わせろ。手持ちの札が足りなければ助けを請え。その身を粉にして、対価と差し出せ。裏切り者の誹りも甘んじて受けると言うならば、恥も外聞もなく全てを使い潰すしかない」
 ――友を、己が半身を、救うんでしょう?
 それはある意味で、白き刀自身にも通ずる想いなのかもしれなかった。例え元と同じでなかったとしても、どの様な形になったとしても。比翼の鳥、連理の枝。分かち難き何かを欲するのであれば、己が全てを賭すべきだと。そんな忠告と僅かな戒めを籠めた言葉。
「自分の信ずるモノを捨ててしまった時……それこそが、本当の意味で誉が潰える時だよ」
 ある種、挑発的とも言える物言いに対し僅かに鼻白んでいた帯刀。だが、その奥底に流れる真意を感じ取ったのだろう。気圧されかけた意思を束ね合わせ、一歩、前へと歩み出る。その瞳に映る怜悧さは如何なる業物にも劣りはしなかった。
「……武士に三忘在りしとて、されど譲れぬ一分を打ち捨つるべからず。その由、肝に命じさせて頂く」
「貴殿の誓約、しかと受け取った……と言う訳で、出番だよ『求煉』。しばらく戦場に出ていなかった分、肥えてきてはいるだろう? |大戦《おおいくさ》の前に少しばかり動いて貰うよ」
 事此処に至りて、もはやこれ以上の問答は不要である。ファンの呼びかけに応えて姿を見せるは黒白の鉄騎。永き雌伏の間に魔力と金気を蓄えたのか、その姿はかつてよりも一回り大きく見えた。
 その威容を見上げる白き刃へ、鋼の巨躯はそっと右手を差し伸ばす。ひょいと掌の上に乗った猟兵を支えつつ、もう一方の手は折れ突き立つ刃を握りしめる。今でこそ人の形をしているが、この機体の正体は灼熱を秘めし液体金属。彼らは鍛冶師でなく、故に冶金の術も持たないが、刃の何たるかを誰よりも知る者/物だ。ある意味で適任と言えよう。
「出会いは別れの始まり。紡がれる喜びには何れ来たる憂いが潜むけれど、その逆も然り。敢えて、元に戻さぬと決めた貴女の決意に敬意を表そう。さぁどうか、新たな姿を出迎えておくれ」
 果たして、どろりと融解した機体の一部が折れた刀身と茎を剥きだす柄側を包み込む。熱し、叩き、焼き入れ、磨り上げ、研ぎ澄ます。目まぐるしく繰り返される鍛造過程の果て、遂に一振りの大太刀は二振りの刃へと生まれ変わる。
「これは……なんと、見事な」
「要望通り、片手用の太刀と菊池槍の穂先に使う短刀へと鍛え直した。本職の刀鍛冶と比べられたら劣るだろうけど、ゆくゆくは同胞になるかもしれないモノたちだからね。持ち得る限りの技術は振るわせて貰ったよ」
 かつての名残を思わせる反りの深さと、片落互の目の刃文が目を惹く太刀。そして切っ先に横手が無い、鵜の首造りの菊池槍。ファンの口振りは謙遜したものだが、それらは紛う事なき業物だった。
 一瞬、忘我のまま感慨深そうにその二振りを見上げる女武者。その唇は我知らず、友輩の名を紡ぎゆく。
「これが荒船なのか。いや、二振りに分かれたのならば新たに銘をつけねばなるまい。そう……」
 太刀、『|荒凪《あらなぎ》』。菊池槍、『|早船《はやふね》』。
 その銘を気に入ったのだろうか。リンと微かに刃が鳴いた。
 斯くして此処に全ての作業は完了した。武人、鉄騎、得物。その三位一体に疵一つ無い事を認めながら、猟兵たちはいよいよ本格的な行動へと移ってゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『八八式機航甲冑・大風』

POW   :    焔と燃えて、迫る見よ
【友軍に巻き添え覚悟の支援射撃や砲撃】を降らせる事で、戦場全体が【敵味方関係なく餌食となる地獄の混戦下】と同じ環境に変化する。[敵味方関係なく餌食となる地獄の混戦下]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    玉散る剣、抜きつれて
【肩に装備した防盾によるぶちかまし】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太刀による斬撃や刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    轟裂の音、地を喰み
【サイカ社製120mm滑腔砲】を向けた対象に、【対キャバリア用徹甲弾】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:御崎ゆずるは

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●軍港強襲、胎動する狂乱
 猟兵たちの尽力により、女武者『帯刀累音』の|鉄騎《キャバリア》と得物は戦闘可能な状態まで修復する事に成功していた。
 |金聖《かなひじり》は破損個所を直しつつベース性能の全体的な底上げを図り、姿勢制御用バーニアやバイタル部への追加装甲、各種センサー類を増設。派手さは無いが堅実な強化に仕上がっている。時間が無い故に塗装まで手が回らず、所々で外装が斑模様となっているが、それもまた一種の物々しさを感じさせるだろう。
 また、肝心の武装に関しては大太刀を復元するのではなく、破断した刃を活かす方針を選んだ。その結果、生み出されたのは二振りの武具。その銘も太刀『|荒凪《あらなぎ》』と菊池槍『|早船《はやふね》』である。前者は打撃用の鞘を、後者は鋼鉄製の長柄を備える事により、大太刀が備えていた重量と間合いをそれぞれ担っている。
 そして、それらを振るう女武者も度重なる説得によって戦う意志を取り戻しており、求められた協力以上に、自らの意志による参戦を希望してくれている。斯くして彼女に導かれるまま、行動を開始した猟兵たちは薄暗い地下空間を突き進んでいた。
『……これが軍港へと続く地下水路だ。今でこそ暗渠となってしまっているが、元は山間から平野部、内陸と海までを繋ぐ水運の要だった。まぁ、それも随分と昔の話ではあるがな』
 装いも新たになった乗騎の操縦席に身を収めつつ、道すがら帯刀は改めて己の知る情報を共有してくれる。かつての主要な物流手段であり、彼女の生家が経済基盤としていた水運利権。しかし、時代の変化を受けて不要とされた其れは|混凝土《コンクリート》で塗り固められ、今では僅かな日も射さぬ有り様だ。
 だが、そんな忘れ去られた日陰者だからこそ、今こうして狂気に囚われた武家の野望を挫く突破口となる。そんな構図にある種の可笑しみを覚えたのか、帯刀の口元に僅かな笑みが浮かぶ。
『このまま進めば、物資運搬用の昇降機跡へと辿り着く。地上出口も封鎖されているだろうが、貴殿らならば打ち破る事も容易いだろう。尤も、問題はその後だ』
 軍港の周囲は警備の兵が目を光らせており、何か異常があればすぐさま内部に集結した武者たちが動く。そうなれば如何な猟兵とて苦戦は必至。故にこそ、こうして地下水路を利用した奇襲を狙っているのだが、全てがそうトントン拍子に進む訳では無かった。
『出口の位置は軍港のほぼ中央部。つまりは、必然的に敵のど真ん中へと飛び出してしまう。故にこそ、初動をどう立ち回るかによって大きく有利不利が変わってしまう可能性が高い……そして彼らは生粋の武者だ。白兵戦は元より、戦に臨めば確実に武士の三忘を為す』
 武家の多くは『大風』と言う量産型重キャバリアをベースに、各々の戦術に合わせて改造を施しているらしい。武者らしく白兵戦の技量は凄まじいのだが、特筆すべき点は他にある。彼らはみな戦闘に際して『不惜身命』、即ち己の身命を考慮の埒外に置くのだと言う。
『乱戦に持ち込めば相手は同士討ちを嫌う、等とは考えるな。どの者らも大なり小なり、鉄風雷火を踏み越えた猛者ばかり。故に、流れ弾など受けた側の落ち度だと公言して憚らないのだ。被害を度外視して、味方ごと艦砲射撃で吹き飛ばしたとしても驚かんよ』
 それは極まり切った生存バイアスとでも言うべきか。無理無茶無謀を乗り切った者のみが生き残って来たが為に、それが普通となってしまっているのだろう。勿論、普段からそこまで極端ではないらしいが、オブリビオンマシンの精神汚染を鑑みれば最悪を想定しておいた方が安全だ。
『厄介な事に飛び道具も忌避している訳では無い。射撃戦もそつなくこなすだろう。しかし、付け入る隙が無い訳でもない。私の大太刀同様、主たる白兵戦用の得物を失えば一瞬にして戦意を失うはずだ』
 理性の箍が外れ武士としての気質が前面に押し出される一方、それを縛る制約もまた強く顕れてしまっているのか。武器のみを破壊するのは至難の業だが、場合によっては狙っても良いかもしれない。
 そうしてそうこうしている内に、どうやら終着点まで辿り着いたらしい。薄闇の中に正方形型の巨大な昇降機が現れる。この直上を突き抜ければ、そこはもう軍港のど真ん中だ。帯刀は足を止めると、猟兵たちを見渡してゆく。
『一度飛び出せばもう待ったなしだ。準備は良いか? それでは……行くぞッ!』
 斯くして、女武者と猟兵たちは頭上を覆う鉄扉をぶち破ると、鉄騎犇めく軍港内へと一気に飛び出してゆくのであった。

※マスターより
 プレイング受付は断章投下後より開始。
 第二章は武家の駆るキャバリアとの集団戦となります。軍港の敷地自体は広く、キャバリアが動き回るのに支障はありません。貨物運搬用の大型クレーンや倉庫が立ち並び、キャバリア輸送船や護衛の軍用艦などが停泊しています。それらを活用すれば優位に立ち回れるでしょう。
 また、皇国軍は外部の襲撃は警戒していますが、内側からの攻撃は想定していません。戦闘開始序盤であれば、奇襲効果を見込めるでしょう。ただし相手は敵を倒す為ならば味方の被害を軽視する傾向が有り、乱戦に縺れ込めば相応の痛手を被る可能性が有ります。ただ彼らもこの国の武者らしく、得物を失うと戦意を喪失する傾向があるようです。
 帯刀も同行している為、助力を望めば援護してくれます。なお、強化された機体も相まって一般武家に相手に遅れを取る心配は無い為、彼女への援護は不要です。
 引き続き、どうぞよろしくお願い致します。
無名・空欄
やほやほー、乱入しつれ―
いやー、ナナシちゃん的には名誉とかどうでもいいし、策略に気付かなかった方が悪いと思うからさ
お話してもあまり合いそうにないし、他でも役に立たないからスルーしたけど、戦いには参加するね

まぁ、戦いたいのは私じゃなくて相棒の方なんだけど(最初から「鋼刃丸」に搭乗済)
見ての通り、相棒も旧式で武器なんて大太刀が一振り、なんて状態だけどさ、結局の所は斬れればオッケーな訳で
やる事は簡単、『|絶影歩法《よって》』、『|剣刃一閃《斬り捨てる》』だけー
ま、私達はコレしかできないんだけどね
相棒が求めてるの、どうも強者との戦いっぽいんで一太刀でやられる方々はバイバーイ

※協力・アドリブ歓迎



●寄らば斬り、寄りて絶つ
「な、何だ今の音は! 地面が下から爆発したのか? よもや、油や弾薬の管理を誤ったのではあるまいな」
「全く、幸先の悪い事だ。確か、そちらを担当していた家は……」
 勢い良く吹き飛んだ隔壁は轟音と共に濛々と土煙を立ち昇らせる。すわ何事かと一瞬だけ呆気に取られるも、地面に落下した鋼材の甲高い音で我に返ってゆく。とは言え、襲撃だとは露ほども思っていないらしい。周辺警戒は依然として厳に保たれており、かつ侵攻に際して大量の軍需物資が運び込まれているのだ。その反応も無理はないだろう。
 管理は何処の家か、火消し役はまだか、責任の所在は。そんな事をひそひそと囁き合う武者たち、その真っ只中へと――。
『やほやほー、乱入しつれーー? わお、楽しめそうなお相手がたくさん居るね。これなら「|鋼刀丸《あいぼう》」も満足してくれるかな』
「は……?」
 土煙を破り、無名・空欄(自称・一般剣士・f39900)が駆りし紅き鎧武者がいの一番に切り込んだ。始めから鉄騎に乗り込み臨戦態勢な剣士に対し、周囲の武家は思わず間抜けな声を零す事しか出来ない。そんな相手を尻目に、猟兵は手近な場所に駐機された機体へ目星をつけるや一刀のもとに斬り捨てる。
『いやー、ナナシちゃん的には名誉とかどうでもいいし、正直なところ策略に気付かなかった方が悪いと思うからさ。武士の嘘は武略、ってやつ? お話してもあまり合いそうにないし、他でも役に立たないからスルーしたけど、戦いには参加するね。と言う訳で、手合わせ願いまーす』
「て、て、敵襲だぁあああ! 者ども出会え、出会えぇッ! 急ぎ鉄騎に乗り込むのだ!」
「見張り番は何をしていた!? ええい、艦砲や重砲も直ぐに撃てるわけでも無いと言うのに……!」
 鉄屑と化したキャバリアを目の当たりにし、そこでようやく武家の面々は眼前の紅武者が敵であり、自分たちが襲撃を受けている事を悟りゆく。
 そんな中、文字通りのおっ取り刀で駆けつけて来た重キャバリア『大風』たち。太刀や槍、鎚や金棒など、手にそれぞれが誇る得物を握り締めながら命知らずの乱入者を取り囲む。対する空欄はそんな状況下でもマイペースさを崩すことは無かった。
『まぁ、戦いたいのは私じゃなくて相棒の方なんだけどね。見ての通り、相棒も旧式で武器なんて大太刀が一振り、なんて状態だけどさ。結局の所は斬れればオッケーな訳で……そっちも似た様な感じだし、条件的には五分ってとこですなー』
『ほざけッ! この無礼、貴様の命で贖わせてくれるわ!』
 軍港全体を見れば、未だ何が起こったのか把握出来てない者が大多数。混乱状態であると言って良いが、咄嗟に鉄騎へと乗り込めた者らの反応自体は悪くない。正に常在戦場と言った所か。その内の一機が果敢にも踏み込んで来るや、肩部の大袖を前面に出した体当てを狙ってくる。
 手には打ち刀を構えており、直撃を受ければ二の太刀は免れないだろう。しかし敵機の構造上、自らの装甲がどうしても視界を遮ってしまい……。
『やる事は簡単、「|絶影歩法《よって》」、「|剣刃一閃《斬り捨てる》」だけー。ま、私達はコレしかできないんだけどね。でも貴方たちくらいなら、それで十分かな?』
 その影へと空欄は紅武者を滑り込ませる。相手からすれば猟兵の姿が消えた様にも見えたはずだ。回り込まれた、そう悟った瞬間には迎撃の剣閃を放つものの、後の先を取るには少しばかり遅かった。
『相棒が求めてるの、どうも強者との戦いっぽいんで一太刀でやられる方々はバイバーイ』
『ば、馬鹿な! 某は機甲式剣術の免許皆伝を……ッ!?』
 再びの一刀両断。上下に寸断され崩壊するキャバリアから搭乗していた武者が投げ出された。地面を転がる操縦者を一瞥するに留めながら、空欄は残る鉄騎へと向き直る。
『命までは取らないから、怖がらずにチャレンジしてみてね?』
『……成る程。どうやら、よほど死にたいらしいな』
 当然、彼女の愛機はこの程度で満足なぞしていない。斯くして、空欄は殺到する武者たちと臆することなく斬り結んでゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワタツミ・ラジアータ
良質の刀を食べられるとダメ元で期待してたがやはりダメだった
お腹が減った
キャバリアに外装+現地調達の簡易装甲を纏わせ戦場へ
自身を定義する核さえ無事なら機体も人型もどうでも良い
敵のぶちかましを敢えて受ける
ご飯が向こうから飛び込んでくるのだから
装甲及び機体で敵攻撃を拘束し、UCを起動
敵武装・機体を食事とする
邪魔する者は食べた物を素材として生成した砲台にて迎撃

名誉や誇りといった『心』の強さ、恐ろしさは識っているがその脆さも識っている
武士達の華やかで武骨な戦いの脇で製造目的《食欲》全面で敵と戦う
中の人も捕食対象ではあるが状況を見てそれは控える
警告ついでに人型でも敵キャバリアの一部を食べる

怖いなら逃げても良いですよ?私はお腹が減っているのでお残しをするつもりはございませんし?

中古キャバリアの販売もしておりますのでお客様になるのであればきちんと対応いたしますわ。
ローンの利率は少し高めになりますけれど。



●士魂商才、相容れず
(……良質の刀を食べられるとダメ元で期待していましたが、やはりダメでしたね。嗚呼、それにしてもお腹が減りました。同等の質を得られるかは未知数ですが、とは言え少なくとも量について心配する必要は無さそうですわね?)
 ぽっかりと地面に空いた陥没から、のぞりと異形のキャバリアが姿を見せる。手足の爪型マニピュレータが目を惹く白地の機体に、廃材の寄せ集めと思しき外装を纏わせたシルエット。その姿は西洋の竜を思わせるものだ。そんな乗機と己と接続させたワタツミは、鋼鉄の内部で徒然とそんな事を思い浮かべゆく。
 彼女の動力炉と連結した破砕機構、万物を噛み砕く歯車仕掛けの剣。それは当てにしていた馳走を逃したことで、どうしようもない飢餓感を訴えていた。しかし、それに悩まされる心配はもう無いだろう。見渡す限り、咀嚼しがいのある|敵《エサ》がそこら中に犇めいているのだから。
『機体ごとに各個人で|武装《あじつけ》を変えている様ですし、飽きが来ないのも嬉しい点ですわね。まぁそもそも、お腹が減っているのでお残しをするつもりはございませんが』
 そう独り言ちながら、機械人は自らの機体を地上へと引き上げた。人型をベースとしながらも追加装甲で膨れ上がった異様に、周囲を取り囲む武者たちの視線も引き寄せられてゆく。
『何だ、このキャバリアは!? 我が国由来の技術とは到底思えん!』
『成る程、読めたぞ……こちらの侵攻計画を事前に察知した他国が先手を打ってきたのだろう』
 予想自体は当たらずとも遠からずと言った所だが、わざわざ訂正してやる義理も無い。ずいとにじり寄って来た敵機へ向き直ると、相手は十文字槍の穂先を突き付けて来る。どうやら一対一の遣り取りを御所望のようだ。
『見てくれを仰々しくすれば秋津洲の武者が恐れ戦くとでも思ったか。化物退治こそ武人の誉れ、我が鋼蔵院流槍術の錆にしてくれるわッ!』
『一番槍、という戦場における文化ですね? 良いでしょう、先手は譲って差し上げますわ。私は逃げも隠れも致しません……だって、ご飯が向こうから飛び込んで来るのですから』
『笑止!』
 対する猟兵側もまた受けの姿勢を取り、真っ向勝負の構えを見せる。刹那、勢いよく敵機が吶喊して来た。背面のブースター出力を引き上げ、地面を砕かんばかりに踏み締めた、渾身のぶちかまし。
 元々重量と堅牢さに長けた機種である事も相まって、その威力は凄まじいもの。真正面から衝撃を受け止めたワタツミの機体から悲鳴じみた金属音が鳴り響き、外装に使われていた廃材が砕けて飛び散ってゆく。しかし、これで終わりではない。体当てで姿勢を崩してから繰り出される刺突こそが本命である。
『取ったぞ!』
 武士としての本能か、狙うは操縦席のある胸部ではなくセンサー類が集中した頭部。真っ先に首級を挙げんとしたのだろう。技量を誇るだけの事はあるのか、磨き抜かれた切っ先が狙い違わず急所を捉え、そして。
『一番の御馳走をまず真っ先にお出し頂けるとは。お気遣い、誠に痛み入ります』
『…………は?』
 バキン、と。甲高い破砕音と共に十文字槍が破断する。タイミングも威力も完璧だったはず。そう呆気に取られる武者が見たものは、己が得物を咀嚼する異形の姿であった。そう、ワタツミは敵の攻撃に合わせて口部を開放し、文字通り鋼鉄を食い千切ったのだ。
 何が起こったのか理解できないのか、欠片も残さず吸収された十文字槍と敵機を交互に見やる武者。だが、それは猟兵にとっては二口目を誘っている様に等しかった。
『名誉や誇りといった「心」の強さ、恐ろしさは識っていおりますが、逆にその脆さも識っています。それらを頼みとしている内は自信を以て振舞えるでしょう。ですが、一度でも喪えばどうなるのか……現にその一例を、先ほど目の当たりにしておりますしね?』
『や、やめッ!?』
 咄嗟に相手も退こうとするが、至近距離にまで踏み込んだのは不味かった。穂先を失った柄を掴まれるや、そのまま首元へと牙を突き立てられる。その光景は鉄騎同士の戦いと言うよりも獣の狩りと言って良い。
 装甲板を毟り取られ、丸見えとなった操縦席から搭乗していた武者がまろび出てゆく。泡を喰って離脱するその姿を認めながらも、ワタツミは特に手を出すことなく逃亡を許す。
(操縦者も捕食対象ではありますけれど、今は生身の相手をしている暇はございません。効率的に言えば、キャバリアの方が良いですし……いえ、そうですわね)
 そこでふと、機械人の脳裏に稚気じみた考えが浮かぶ。すると彼女は何を思ったのか、操縦席のハッチを開き本体である彼女自身を晒して見せた。そうして未だがっちりと拘束している大風の残骸から鉄片を一つ摘まみ上げると、まるで菓子か何かのように齧って見せる。
『私、見ての通り悪食でございましてね。生憎と歯が丈夫なので、もし中に誰かが居ても構わず噛み砕いてしまうでしょう。もし怖いなら、今の内に逃げても良いですよ?』
『武士が死を恐れるものか! 者ども、囲んで確実に仕留めるぞ!』
 しかし、そんな警告は伝わらなかったらしい。相手の両手が塞がっている今が好機と、武者たちは息を揃えて一斉に挑み掛かって来る。さしもの猟兵とは言え、数の差は如何ともしがたいものではある、が。
『おや、それは残念でございますわね? ではこちらも遠慮なく参ると致しましょう』
 刹那、轟音と共に武者たちの乗機が同時に吹き飛んだ。果たしてそれが、いつの間にかワタツミの機体に出現していた無数の砲塔によるものだと気付けた者が何人いるだろうか。彼女は取り込んだ金属を無駄なく利用し、密かに殺し間を作り上げていたのである。
『砲など、いつの間に……!』
『わ、我等の武具が……武士の、魂がぁ!?』
 気絶し、痛みに呻き、名誉が打ち砕かれた事実に慟哭する武者たち。しかし再三の通り、この機械人の場合は歴史に多少は考慮するも、古い物への拘りはない。資源は資源に変わりなく、翻ってキャバリアは飽くまでもキャバリアだ。
『壊した建前で言うのも何ですが、まぁそれはそれ。中古キャバリアの販売もしておりますので、今後もしお客様になるのであればきちんと対応いたしますわ。尤も、回収が難しそうなのでローンの利率は少し高めになりますけれど』
 機械らしく冷徹に、商人らしく慇懃に。ワタツミは粛々と破壊されたキャバリアを回収しながら、冗句とも取れる案内を告げてゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

川巳・尖
命を惜しまず、の方はまだ分かるんだけど、味方ごと吹き飛ばしても、は流石にどうかと思うよ
乱戦が危ないなら、そうなる前に倒していくのが良さそう

水妖夜行で倉庫やコンテナの間を素早く移動しながら、一機ずつ仕留めていきたいね
狙えるなら白兵戦用の得物を、駄目でも他の武器や脚部を撃ち抜いて行動不能にさせる
撃ったら隠れて、を繰り返して捕捉されないようにいきたいけど、難なく見つけてくる猛者もいるんだろうね
幸いにも港だし、複数に囲まれそうになったら一旦水中に逃げて、相手の死角から浮上して撃ってみよう

広い場所ではあるけど集まってきたら厄介になりそうだし、味方と競争するつもりで、どんどん敵の数を減らしていこう



●水滴は鋼を穿つか
「下手人共の鎮圧に何を手間取っているのか! このまま好き勝手されれば我等は笑いものだぞ!」
「大筒隊や軍艦乗りには既に話を伝えておる。準備が整い次第、諸共に吹き飛ばす手筈だ。大事の前の小事、少しばかりの犠牲は許容しなければな」
 戦闘開始から時間が経つにつれ、皇国軍全体にも敵襲の報が広まりつつあった。それと同時に鎮圧に向かった武士たちが苦戦しているのも伝わってしまったらしい。混乱が長引く前に事態を収拾すべく、兵卒たちが砲撃支援に駆けずり回っている。
(命を惜しまず、の方はまだ分かるんだけど……味方ごと吹き飛ばしても、は流石にどうかと思うよ。ただ、周りが吹き飛んでも意に介さず襲って来られたら、それはそれで厄介かも)
 物陰からそんな会話を盗み聞いていた尖は、余りにも極まった武者たちの思考に思わず眉を顰めてしまう。戦術と言うには野蛮に過ぎる一方、この誉れの為に命を捨てる者たちならば剣林弾雨の中でも平気で暴れ回りかねない。それでも猟兵なら遅れは取らぬだろうが、少なくない手傷は避けられぬだろう。
「乱戦が危ないなら、そうなる前に倒していくのが良さそうだね。ただ、生憎とあたいはキャバリアを持っていないから……うん、ここは手堅く一機ずつ仕留めるべきかな」
 取り敢えずどう立ち回るかを定めると、水怪は手近なコンテナを駆け昇り、慣れた足取りで倉庫やクレーンの間を走り抜けてゆく。彼女の言葉通り、彼我のサイズ差は一目瞭然である。馬鹿正直に真正面から相対するのは自殺行為だ。
 果たして、大きく弧を描く様に沿岸を移動しながら敵の姿を探し求めていると、巨大なシルエットが視界へと飛び込んで来る。
(……居た。あれはキャバリア用の火縄銃かな? 良くないね、もう発射体制に入ってる)
 敵機は刀を鞘へと仕舞い、代わりに銃を模した手持ち式の120mm砲を構えていた。恐らく、先ほどの兵卒たちが話していた要請を受けての支援射撃なのだろう。戦車砲や迫撃砲に使用される口径だ、その威力は生身で直撃を受ければ肉片すら残るまい。
(幸い、海の近くだけあって戦いやすい。流石に撃破するだけの火力は厳しいけど、銃本体や脚部関節を狙えれば行動不能には出来るはず)
 どうやら相手は此方に気付いていない様だ。尖は小振りな自動拳銃を構えると、鉄騎が手にする火縄銃へと狙いを定める。潮気すらも取り込んだ妖力を籠めて弾丸と為すや、彼女ははトリガーを押し込んだ。瞬間、飛び出した呪弾は吸い寄せられるように敵へと向かう、が。
『む、発砲音だと? 該当する音紋無し……ッ、新手か!?』
 武士としての本能か。咄嗟に身を翻された事で僅かに狙いがズレてしまった。これでは機能を停止させるまでには至らない。水怪は速やかに位置移動を試みるも、すぅと銃口が己へ向けられるのを視界の端に捉えてしまう。
「今のを受け流すとはね……!」
『女子供であろうとも、戦場に出る以上は容赦せん!』
 刹那、一切の躊躇なく対キャバリア用徹甲弾が放たれた。対人用の散弾や爆発を撒き散らす榴弾よりかはまだマシだが、着弾の衝撃によって地面やコンテナが礫となって襲い掛かって来る為そう大差はない。
 果たして、着弾と同時に猟兵が居た一角が吹き飛び、爆音と共に土煙が戦場を覆ってゆく。念のため次弾を装填しながらも、武者の口振りからは確信を伴った余裕が滲んでいた。
『短筒一挺で挑んだ気概は認めてやろう。しかし、勇猛と蛮勇は異なるものだ。さて、次こそは支援砲撃を……ッ!?』
 気を取り直して第二射を試みる武者。しかし、不意にぐらりと機体が傾ぐ。何事かとモニターを見やれば、脚部関節からの異常報告だった。侵入者は仕留めた筈だと周囲を見渡した相手が見たものは、海面から上半身を浮かせた尖の姿。
「水の中なら衝撃から身を守れるし……こっちの方が本気を出せるからね?」
『小兵と侮ったツケか……!』
 そのまま鉄騎はバランスを崩し海へと落下、水底へと沈んでゆく。脱出装置がきちんと作動すれば溺れはしないだろう。一方、仲間の異常を悟った他の鉄騎たちがこちらへ近づいてくるのも見えた。
「広い場所ではあるけど、集まってきたら厄介な事になりそう。撃ったら隠れてを守りつつ、味方と競争するつもりでどんどん敵の数を減らしていこうか」
 斯くして尖は一旦仕切り直すべく、その身を水中へと潜らせてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月白・雪音
…戦場なれば死狂いの境地にて刃を振るうも時に必要なのでしょう。
されど士の戦とは戦いを終えた後に護るべき国と民あらばこそ。
死への恐れを忘れ己が命を軽んずる感性は、何れ他者の命にも向きましょう。

故に死を恐れざるは士に在らず。
戦場の死は誉れに在らず。
侵されたその精神を、折らせて頂きます。


UC発動、怪力、グラップルでの無手格闘にて戦闘展開
残像の速度で肉薄しつつ部位破壊で相手の武具を優先し破壊
野生の勘、見切りで攻撃を感知し回避或いは受け流し
太刀を振るわれればカウンター、怪力にて白刃取り、折った刃を他騎の武具へ投擲
巨砲、艦砲が向けばカウンターの応用で爆発させる事無く受け流し掴み取り同様に投擲にて武器破壊を



●白虎奮迅、驕りを砕く
『ええい、支援砲撃はまだか! 諸共に吹き飛ばしてしまえば簡単だと言うのに……!』
『支援要請を受けた雑賀の武者がやられたらしい。彼奴らめ、どうやら手が回る様だ』
 攻防戦は猟兵が姿を見せた水路出入り口から、徐々に軍港全体へと広がりつつあった。しかし、皇国軍の武者たちは襲撃者を出現地点に押し留めようと試みている。重砲や艦砲の一斉射による諸共の蹂躙、それを狙っているのだろう。
 敵どころか味方の被害も厭わぬ、狂気ともいえる戦術。勝利と言う目的の為ならばある意味で最適解なのだろうが、武は己を律するものと考える雪音にとっては到底受け入れがたい考え方だ。
「……戦場なれば死狂いの境地にて刃を振るうも時に必要なのでしょう。されど士の戦とは戦いを終えた後に護るべき国と民あらばこそ。死への恐れを忘れ己が命を軽んずる感性は、何れ他者の命にも向きましょう」
 本来、殺し合いなど正気のままでは為せぬもの。だからこそ武士道なぞ何だのと規範を作り、それに則る事で戦に臨む心意気を育んできた。しかし、それは飽くまでも手段であって目的に非ず。その本末が入れ替わった結果が眼前の武者たちなのだろう。こうなってしまえばもう、ただ戦火を撒き散らすだけの存在へと堕する。
「故に、死を恐れざるは士に在らず。死の恐怖を克己する事と、目を逸らし無いものとして扱うのは似て非なること。戦場の死は誉れに在らず……侵されたその精神を、折らせて頂きます」
 ただ静かに、白き虎は鋼鉄を纏いし鉄騎の前へと歩み出る。体格の差は歴然にして、相対する機体はどれも彼女からすれば見上げる程の巨躯ばかり。しかし、雪音は微塵も臆することなく武者たちを見据えてゆく。
『武者たる我らを前にして、賢しら顔で士道の高説を垂れるとはな』
『数の差は元より、キャバリアに乗らず生身で挑むと? 死を恐れていないのは一体どちらなのやら。それとも、手加減でもすると思ったか!』
 対する武者も言って素直に頷く様な手合いではない。金棒に薙刀、大小の刀。手に手に己が頼みとする得物を握り、猟兵へと挑み掛かってゆく。だが、これだけのサイズ差があればもはや武具の有無など関係なし。当たれば勿論、掠めただけでも死に直結する。
「華やかな武具の数々、誠に結構……然れども、弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、我が戦の粋なれば」
『口先だけならば幾らでも大言壮語を吐けるものだ!』
 一方、迎え撃つ側の白虎は全くの徒手空拳。寸鉄は無論の事、生来身に備わっている爪牙、果ては闘気すらも用いぬつもりだ。正真正銘、振るうのは己が五体と培った技術のみ。それを侮りと見て取ったか、重キャバリアの巨体が迫りくる、が。
「我も人、彼も人。幾ら体躯に差が有ろうとも、同じ五体の形を成しているのならば動きにそう差もない……である以上、受け止め、凌げぬ道理はありません」
『ッゥ!?』
 くるり、と。まるで宙を舞う木の葉が如く、雪音は身を翻す事で大質量の衝撃を殺し切って見せた。そうなれば必然、次撃として振るわれた得物も目算を誤る事になる。たった一歩分だけ身を退き、文字通りの紙一重にて躱した薙刀。その側面へと垂直に拳打を叩き込む。
 一発だけではない、残像すら残す程の速度での連打だ。それでいて息一つ上がることなく、流れる様な滑らかさを保っているのは流石と言うべきだろう。果たして、薙刀は楔を打ち込まれたが如く、根元から無惨にも砕け散る。
『某の直光が、たかが手弱女の拳如きに……!』
「武人ならば相手が生身で姿を晒した以上、相応の手管を隠していると警戒すべきでしたね」
 それだけには留まらず、折れた刃を抱え込むや瞬時に投擲。二の太刀を狙っていた鉄騎を立て続けに無力化してゆく。こうなればもう、相手も生身がどうのこうのと言ってはいられぬ。
『おおおおおっ!』
 振り降ろされた三の太刀が頭上から雪音へ迫る。対する白き虎だが、今度は避ける素振りすらない。果たして、両者の距離がゼロとなり――。
『馬鹿な、こんな、ことが……』
「――あなた方は武器云々よりもまず、己が精神を鍛え直すべきです」
 刃はただ、猟兵の両手によって受け止められていた。真剣白刃取り、しかも鉄騎と人間でだ。その事実に呆然とする武者へ忠告を送りながら、雪音は再び鋼鉄を折り砕いてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
――可與之死、可與之生、而不畏危。
非情とて、道定まれば諸人は従うもの。

そして敵はその不条理に呑まれれば死……戦餓鬼の軍勢と申すべきか。

結構、相手に不足なし。


剣林弾雨の戦場とて惑い無し。
鞍馬景正、為すべきを為す為に御免。

生身のまま、名乗りと共に挑みましょう。

射撃や砲撃、直撃の軌道より来るものは【第六感】にて察し、宙にある内に【斬撃波】で切り落とし。
砲弾の破片や衝撃波は甲冑の【結界術】で防ぎながら敵へと接近。

絡繰りも持たぬ矮小な虫と慢心する未熟者などいないでしょうが……本気の方が有り難し。
迎撃の得物とて鉄騎本体とて、間合に入った瞬間、【鞍切】にて一閃。

【怪力】込めた刃にて鋼を割り、そのまま【斬撃波】で切断。
搭乗者の座席こそ外しますが、後は各々の武運次第。

複数の鉄騎が畳み掛けてくれば脇差も抜いて払い切り、一度離脱。
クレーン付近まで駆け、塔の部分を断ち転倒させ、敵が回避行動に入った隙に仕切り直しましょう。

近辺の敵を一掃できれば、帯刀殿の戦い振りも拝んでおきましょう。
私も負けぬようにせねば。



●道を示し、生死を断つ
「寸鉄も帯びず、ただ練り上げた五体と技術のみを以て鉄騎を打倒するとは。いやはや、私も負けてはいられませんね」
 自慢の武器を打ち壊され、戦意を喪失してゆく武者たち。無数の鉄騎と一歩も引かずに渡り合う白虎の姿を横目で見ながら、景正も未だ数多き敵群へと向き直ってゆく。彼もまたキャバリアではなく生身で戦に臨んでいるが、その装いは仲間と極めて対照的だった。
 頭から爪先まで、全身を覆うは藍に染め抜かれた和甲冑。一目見て名工の手による物だと分かる逸品だ。左腰に佩いた大小二振りの刀も相まって、正に威風堂々とした武人の佇まいである。
(――|可與之死《之と死す可く》、|可與之生《之と生くる可く》、|而不畏危《危うきを畏れ不るなり》。非情とて、道定まれば諸人は従うもの。そして敵はその不条理に呑まれれば死……上意下達は軍の鉄則なれど、それも度が過ぎれば正道ならず。正に戦餓鬼の軍勢と申すべきか。結構、相手に不足なし)
 青年の視線の先には殺気立つ無数の鉄騎が、それぞれの得物を構えてジリジリと彼我の間合いを測っていた。彼らは武士道と言う一つの価値観によって統一された暴力装置だ。その是非は兎も角として、裡に秘めたる武威は決して侮れぬ。
(先の一件ゆえ、此方を絡繰りも持たぬ矮小な虫と慢心する未熟者などいないでしょうが……太刀合う以上、本気の方が有り難し)
 しかし、なればこそと発奮するのが|武士《もののふ》と言う存在である。景正は腰の得物を抜き放ちながら、朗々とした大音声を以て名乗りを上げてゆく。
「剣林弾雨の戦場とて惑い無し。当方は鞍馬家が嫡男、鞍馬景正。奇襲の非礼は詫びようと、これもまた戦場の倣い。為すべきを為す為に御免仕る!」
『その意気や良し。其の方も一角の武人とお見受けする。然らば、より相応しき場を整えさせて頂こう!』
 対する武者たちもまた各々の武具を構えて応じるも、その内の一機が不意に天高く何かを射出する。頭上で破裂し濛々と白煙を立ち昇らせる様から察するに、狼煙代わりの発煙弾か。刹那、花火でも打ち上げたが如き甲高い音が方々より鳴り響き始めた。
「……成る程、支援砲撃の準備が既に整っていたか」
『然り! 武者とは戦場でこそ生きて死ぬ者なれば。さぁ、流れ弾程度で斃れてくれるなよ!』
 数瞬もしないうちに周囲一帯へ砲弾が降り注ぐ。それを理解しながらも、敵勢は退く所か更に勢い付きながら挑み掛かって来る。その様は死狂いと評する他ない。だが一方、景正は武者たちの更に上を言って見せた。
「ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や……来ると分かっている物を、どうして斬れぬ道理があろうか」
 先陣を切って踏み込んできた鉄騎が繰り出す大身槍、その攻撃に呼吸を合わせるや穂先を踏み台にして跳躍。重量のある甲冑を纏いながらも驚異的な身体能力を以て飛び上がると、降り注ぐ砲弾を手に握りし刃で両断する。
『あんな大鎧を着て、何という動き……ッゥ!?』
 如何な鋼の護りとて、至近距離で爆炎を受ければ致命は必至。なれども、付与された方術が手傷を最小限に押し留めてゆく。ハッと天を仰ぎ見た武者の視界に映ったのは、誘爆させた砲弾の勢いを利用し、そのまま直下目掛けて大太刀を振り下ろさんとする景正の姿だった。
「迎撃の得物とて、鉄騎本体とて、刃の前では些かの差異も無く。ただ切っ先に一擲を為して乾坤を賭さん!」
『お、おおおおおッ!』
 猶予にして一秒にも満たぬ刹那。だが、武者は咄嗟に大身槍を跳ね上げて反応して見せる。それは武人としての直感と鍛え上げた技量による反射と言って良い。皮肉抜きで賞賛に値するだろう。果たして、鋼と鋼が真っ向より刃を交え、そして――。
「……先ずは一つ。御首級、頂戴致す」
 スンッ、と。呆気ないほど静かに、見惚れるほど鮮やかに。猟兵の押し込んだ斬撃が槍の穂先を割り砕き、そのままの勢いで鉄騎を一刀に両断する。見事なまでの唐竹割だが、にも拘らず操縦席を紙一重で避けているのは流石としか言いようがなかった。
 ズンと左右に分かれた機体から、泡を喰って操縦していた武者が飛び出してゆく。その直後、鉄騎は落下して来た砲弾の直撃を受けて跡形もなく吹き飛んだ。あと一瞬でも判断が遅ければ、諸共に戦場の露と散っていただろう。
「命まで取りはせぬが、後は各々の武運次第。さて、武者は戦場で生き死ぬ者なれど、流れ弾で斃れるは恥ずべき末路、だったか」
『応とも。このままでは大将たる九条院殿に顔向けが出来ぬ。故にこそ、大恥を避けるが為に今は小恥を呑もう。者ども、掛かれッ!』
 青年の僅かな挑発を滲ませた言葉に対し、武者たちは数を以て攻める事で答えとする。犬死が最も恥ずべき事ならば、そうならぬ為に数を頼みとする恥を受け入れると言う訳か。流石にこれでは分が悪いと、景正は脇差も抜き放って斬り結びつつ、砲撃に紛れて一度退く。
『何処へ逃れようと言うのか! 外への道は警護も厚く、それ以外は全て海。貴様は袋の鼠であるぞ!』
「然れども、窮鼠猫を噛むとも言う。況や、武人に切り抜けられぬ道理も無し!」
 追撃の鉄騎を引き連れながら、青年は爆発の中を駆け抜ける。その果てに彼が辿り着いたのは聳え立つ武骨な鉄塔、否、貨物搬入用の大型クレーンであった。景正の目的こそ正にこれだ。
 高さだけであればキャバリア以上だが、鉄骨を組み合わせた構造上、密度と言う点では劣る。である以上、断ち切れぬ訳があろうものか。武者たちが猟兵の狙いを悟った時にはもう遅い。
「さぁ、第二試合と参ろうか」
『は、ははは……良いだろう、そうでなければ槍働きの甲斐が無いと言うものだ!』
 景正が大太刀を閃かせると、一拍の間を置いて鉄塔が傾いてゆく。始めはゆっくりと、次第に速度を増しながら倒壊する大質量を前に、ある者は避け、ある者は身を守り、またある者は押し返さんと前に出る。
 青年は敵の連携が乱れた好機を逃すまいと、土煙と爆煙、怒号と剣戟が鳴り響く戦場へと飛び込んでいった。斯くして暫しの間、鋼と鋼がぶつかり合う音が上がるも、次第にその頻度は落ちてゆき。
「ふぅ……これで付近の武者はほぼ一掃できましたか」
 煙が晴れた時、立っていたのは景正ただ一人であった。周囲には切り刻まれ、或いは焼け焦げた鉄騎が骸を晒している。彼は小さく息を吐きつつ、遠方へと視線を向けてゆく。その先では太刀と槍を携えた白地の鉄騎が、他の猟兵と協力して今まさに奮戦中だ。
「帯刀殿も金聖も問題なく戦えている様で何よりです。さて、私も負けぬようにせねば」
 ある程度は数を減らせたとは言え、まだまだ敵は残っている。景正も気を引き締め直すと、新たな敵を求めて駆け出してゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロザリア・プライム
ヤッハ! さあ戦争だ戦争だ!
おたくらのマシンと比べちゃあ些か旧式かもしれないが
威力は本物、当たれば大抵吹き飛ばせる!

――とは言え私の|T40《キャバリア》は格闘向きじゃない
ヨシ! カサネ! 義によって助太刀いたす!
どこを撃てばいい? 誰を撃てばいい?
カサネが刃なら私は砲となろう
奴らは巻き添え覚悟で馬鹿みたいに撃ちまくってるんだ
それじゃあ位置も分かるし攻撃は当たらない
|変形砲台形態《チェンジフォートレス》! こっちは|射程外《スナイパー》からぶち込んでやるわ
攻撃対象を指示してくれれば任意のタイミングで援護出来る
制圧砲撃で動きを止めてやるから一気に畳みかけるんだ! ウラ!

そうなりゃ混戦になんてならないさ
徹底した砲撃支援で敵の出鼻を挫いてやる!
覚悟はいいかサムライ? 騎兵隊のお出ましだ!



●砲火に謡えや艦撃ち兎
 若武者が視線を向けた先。そこでは幾つもの砲声が響き渡り、爆炎と衝撃が戦場を埋め尽くしていた。艦砲や大筒、キャバリアの曲射による絶え間ない支援砲撃で生み出された地獄。皇国軍にとっても軍港は他国侵攻の足掛かりとなる重要拠点だと言うのに、施設の被害を考えぬこの猛攻は正に狂気の沙汰としか言いようがない。
『ヤッハ! 実に賑やかなお出迎えだね! さあ戦争だ戦争だ! おたくらのマシンと比べちゃあ些か旧式かもしれないが威力は本物、当たれば大抵吹き飛ばせる! さぁさぁ、いざ尋常に勝負、勝負ゥ!』
 しかし、良くも悪くもネジの振り切れ度合いと言う点では猟兵側も負けてはいない。愛機に搭乗したロザリアは装甲を叩く衝撃すらも心地良いとばかりに呵々と大笑してゆく。装甲の厚さでは傭兵兎の機体がこの戦場で随一と言えるだろう。何せその種別は大砲を戴く戦車にマニピュレータと二脚を生やしたタンクキャバリア。撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれないを地で征く陸戦の王者である。
『――まぁ、とは言え。私の|T40《キャバリア》は見ての通り格闘向きじゃない。流石にコイツで兎のように跳ね回るのは土台無理って話さ。と言う訳で……ヨシ!』
 しかし、彼女の言う通り運動性と言う点ではやや難がある性能だ。荒れ地の走破なら兎も角、トップヘビーな躯体で白兵戦の専門家たる武者とぼてくり合うのは分が悪すぎるというもの。なればとロザリアはすぐ近くで奮戦している女武者の方へと砲塔を差し向ける。
 帯刀の戦い振りは獅子奮迅の働きと言って良い。大太刀から片手太刀と菊池槍に持ち替えたばかりだと言うのに、もう十全に使いこなしていた。周りから嫉み嫉みを集めたと言うのも頷ける話だ。
 だが、如何せん数の差はどうしようもない。爆煙に紛れ、金棒を手にした鉄騎が背後から不意を突かんとする。が、しかし。
『カサネ! 義によって助太刀いたす!』
 傭兵兎はそれよりも更に早く、無防備な敵機の背中へと砲弾を叩き込む。正面ならばまだしも、背面の装甲は他と比べてそこまで厚くはない。故に直弾を喰らった武者はそのまま呆気なく木端微塵に砕け散っていった。
『っ、忝い! 油断したつもりは無かったが、こうも絶え間なく砲撃されていてはな……目や耳がどうしても鈍くなってしまう』
 素早い槍の刺突で牽制を繰り出しつつ、一旦猟兵の元まで後退する女武者。彼女もまたこの混沌とした戦場に難儀しているらしい。こちらは砲撃を当たらぬよう立ち回っているのに、相手は真横の仲間が吹き飛ぼうがお構いなしに突っ込んで来るのだ。対応に苦慮するのも無理はないだろう。
『奴らは巻き添え覚悟で馬鹿みたいに撃ちまくってるんだ、私の耳もイカれそうよ。でもこれなら相手だってロクに攻撃は当てられないし、発砲音でおおまかな位置も割り出せる……つまり、二人掛かりなら何とかなるって事! T40、|変形砲台形態《チェンジフォートレス》!』
 無理が通れば道理が引っ込むものだが、更にその無理を跳ね除ける不条理こそが猟兵である。ロザリアが慣れた手つきで操縦桿を動かすや、その場で砲戦機が膝を着く。そのまま腹ばいとなったシルエットは正に戦車そのものだ。
『こっからは役割分担の時間ね。カサネは斬り結びつつ攻撃目標の選定、私は視野を広く持って戦況を俯瞰しつつ、|射程外《スナイパー》から徹甲弾をぶち込んでやるわ!』
 この状況下だ、砲撃に揉まれながらでは眼前の敵に対処するので精一杯。なれば、それをカバーする後衛が居れば問題は解決する。この状態の砲戦機は機動どころか移動さえ覚束ないが、火力と射程は常の比ではない。前衛をフリーにする事など造作も無いだろう。
『さぁ、どこを撃てばいい? 誰を撃てばいい? 遠慮なく指示をおくれよ。カサネが刃なら私は砲となろう』
『今は礼を述べる時ではない、か。ああ、委細承知した。手を借りる以上、一番の大物をお願いしよう……この砲弾の雨を降らせている元凶を、な』
 右手に太刀、左手に刃槍。新たな得物を携えて、ジロリと睨め付けるは鋼の巨影。それは軍港に停泊したまま艦砲射撃を行う軍艦だった。アレを無力化出来れば少しはこの馬鹿騒ぎもマシになるはずだ。
『ヤッハァ! そいつは素敵だ、面白くなってきた! よし、制圧砲撃で動きを止めてやるから一気に畳みかけるんだ! ウラ!』
『応とも、早々に射線を抉じ開けて見せよう!』
 果たして、傭兵兎の支援砲撃を背に女武者が敵中へと飛び込んでゆく。征く手には未だ絶え間なく業火が渦巻くものの、その歩みに迷いはない。一方、猟兵たちの目論見を本能的に感じ取ったのだろうか。進路を塞ぐように何騎もの大風が立ち塞がった。
『その機体、よもや貴様は帯刀か!? 九条院殿との親善試合で得物を失った落伍者が、よくもおめおめと面を見せられたものだ!』
『しかも何処の手合いとも分からぬ者と手を組み、我らに弓引くとは。此度の総指揮を取られる彼の御仁とは大違いだ。武家の誉れのみならず恥まで捨てたか!』
 幾度も砲撃を浴びたのか、どの機体も表層は焼け焦げ、装甲が抉れている。そんな有り様を意にも介さず、武者たちは口々に帯刀を口汚く罵ってゆく。だが、鍛え直された覚悟は今更その程度で揺らぐことはない。
『問答の時間はとうに過ぎ去った! 今はただ、刃を以て示すのみ!』
『覚悟はいいかサムライ? 騎兵隊のお出ましだ! 死にたくなければ道を空けなよ! ガンホー、ガンホー、ガンホー!』
 速度を緩める事無く突っ込んで来る女武者を止めるべく、槍衾を形成する鉄騎たち。だが、それよりも遥かに間合いが長い90ミリ戦車砲の鶴瓶撃ちが、敵軍の迎撃陣形をズタズタに打ち砕く。こうなればもう連携も何もない。たちまちのうちに各個撃破され、後は哀れな骸を晒すのみ。
『徹底した砲撃支援で敵の出鼻を挫けば、そりゃ混戦になんてならないさ!』
『もう軍艦を守る武者は居ない。高さが有るが問題ないか?』
『当然。元は大型高射砲だったんだ、必要な仰俯角は取れるわ。装甲は抜けなくても、砲塔を吹き飛ばすだけなら十二分よ!』
 もはや、二人の遮る物は何も無い。接近に気付いた軍艦が迎撃の為に副砲を動かし始めるも、全ては遅きに失している。ロザリアは砲撃機の四肢を地面に食い込ませ、必中を期して照準を定め、そして。
『ウララララララッ!』
 狙い違わず、軍艦の主砲塔を吹き飛ばす事に成功したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チェスカー・アーマライト
連携アドリブ歓迎
へっ、混戦上等!
浸透強襲は戦車の十八番だぜ
スタンディングモードでUC発動
爆発的な出力をどうにか制御して抜け道から飛び出す
ド派手なパーティーと行こうぜ、ビッグタイガー!

勢いそのままに吶喊
停泊してる輸送艦や軍艦のスレスレをカッ飛んで、あたしを狙う攻撃をなすり付けてやる
ついでに艦砲とかもブッ壊せりゃ儲けモンだ

ガッツのある奴が居りゃ、あたしの進路に立ち塞がって玉砕覚悟で斬りに来るかもな
ま、そいつはいい的だ
機体の加速度を上乗せした徹甲弾の砲撃なり『カンナ』の掃射なり
脚部シールドで蹴り飛ばすなりして迎撃だ
大事な得物ごと粉砕してやんよ!

やれやれ、盾が無かったらと思うとゾッとしねーな



●翼の生えた虎に敵は無く
「咸臨丸が砲塔を喪失しただと!? 軍港施設は兎も角、艦を失う訳にはいかんぞ!」
「慌てるな。幸い沈むほどの損傷ではない。それに砲撃はまだ朝陽丸と電流丸が継続しておる。とは言え、痛手である事に変わりは無いがな……速やかに九条院殿の御下知を仰がねばならぬ」
 女武者と連携した猟兵の活躍により、支援砲撃の一角を担っていた軍艦が無力化されたらしい。まだ他の艦砲は健在とは言え、戦場全体に対する圧力も幾分か軽減するだろう。浮足立つ敵軍の焦燥感を感じ取りながら、チェスカーは獰猛な笑みを浮かべてゆく。
『随分と派手にやったじゃねぇか。こりゃ、同じ戦車乗りとしちゃうかうかしてられないってもんだ。へっ、混戦上等! 浸透強襲は戦車の十八番だぜ!』
 景気付けがてらに人参スティックを一本口の端に咥えて齧りつつ、女傭兵は愛機の動力炉に火を灯す。それまで隠密性を重視していた戦車形態から一転、逆関節型脚部と腕部マニピュレータを展開し二脚形態へと変形する。
 先ほどのタンクキャバリアは機敏な動きを不得手としていたが、彼女の駆る大虎もそうであるとは限らない。見た目は似ていれど、こちらはクロムキャバリアの技術によって生み出された機体。使われている技術レベルだけならば数段上だ。
『ジェネレーター出力限界、解除。さぁて、ド派手なパーティーと行こうぜ、ビッグタイガー!』
 果たして、リミッターと言う鎖より解き放たれた鋼の虎が戦場へと飛び出してゆく。其の出力は凄まじく、重量級の機体が僅かとは言え宙に浮かぶほどだ。そのまま滑る様に疾走しながら、目指すは停泊中の軍艦や輸送艦。そも、外洋に出る手段を失えば皇国軍の侵攻計画は根本から瓦解する。
『ええい、足止め役の連中は何をしている! 次々と突破を許しているではないか!』
『船に近づけさせるな! 我らが身を挺して止める故、構わず撃ち続けよ!』
 無論、相手もそれを座して見過ごす訳も無し。それぞれ大太刀と重藤弓を携えた鉄騎がこれ以上の接近は許すまいと進路上に立ち塞がった。対して、チェスカーもまた操縦桿を握り直しながら感心したように口笛を吹く。
『端から玉砕覚悟ってか、ガッツのある奴だぜ。そういう馬鹿は嫌いじゃないが……残念、こっちにとっちゃいい的だ』
 彼女は速度を緩めるどころか、更にアクセルを踏み込む。前を塞がれてはいそうですかと止まるなぞ戦車の名折れ。両腕のガトリング砲で牽制しつつ、大太刀を構える鉄騎へと機体速度を乗せた主砲の水平射を叩き込む。
『ぐ、何という密度の弾幕か……た、太刀が振り下ろせぬ! おい、こちらも援護を!?』
『威力は兎も角、回転銃身と大弓では手数が余りにもッ!』
 太刀使いが迎撃を試みるも、間断なく降り注ぐ鉛玉の圧力によって得物を握る腕が押し返されてしまう。弓使いが援護に入ろうにも攻撃速度の差は歴然。そのまま徹甲弾の直撃を受けた太刀使いは木端微塵に砕け散っていった。
『ほらほらどうした、サムライってのはこの程度か?』
『おのれぇっ!』
 チェスカーはそのまま弓使いを抜き去り、軍艦へと肉薄する。すかさず機銃や副砲の応射が飛んで来るも、増加装甲や角度を上手く使って致命打を避けてゆく。また頭に血が上った弓使いが立て続けに矢を放つが、盾で防ぎ、或いは避ける事で流れ矢を艦艇へとなすりつけた。
『が、ぐ! 船を傷つけてしまえば本末転倒ではないか! 汚い手を使いおって!』
『アレも駄目コレも駄目ってか? オーケー、なら代わりに大事な得物ごと粉砕してやんよ!』
 同士討ちによって軍艦の砲撃能力は低下。頃合いを見計らった猟兵は機首を巡らせると、弓使いへ針路をとる。相手もまた一歩も退く事無く、弓に矢を番えて徹底抗戦の構えを見せていた。
 果たして、両者の距離は瞬く間にゼロとなり、そして。
『が、ぁ……――ッ』
『やれやれ、盾が無かったらと思うとゾッとしねーな。だが、勝ちは勝ちだぜ』
 重さと硬さと速さ。その三乗を纏った吶喊に耐え切れるはずもなく、弓を持った鉄騎はまるで爆発したかの如く四散していった。だが、相手も最後に意地を見せたらしい。脚部装甲を穿ち貫く大矢を見て、チェスカーは思わず苦笑する。
 そうして盾を引っぺがさなくて良かったと心底思いながら、女傭兵と大虎は戦場を走破してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレスベルク・メリアグレース
ならば、精密に武器を破壊できるUCを使いましょうか

瞬間、広げた領域内に存在するキャバリアの白兵武装……それらが精密に粉々に爆破される
領域内に存在する全ての存在は、精密に指定して爆弾化する事が出来る……それがこのUC
このUCがあれば、その気になって状況次第では、この国の無血占領も可能やもしれませんね

ともあれ、武器を失っても立ち向かう者も出てくるでしょう
その時は機体の四肢を爆散させ、動けなくします

飛翔ユニットを使い、大型クレーンや倉庫等に飛び移り攪乱
そうして機動戦を挑みながら武装と四肢の爆破を行っていきましょう



●天より罰は下されて
『なんだ、砲撃の勢いが弱まっているぞ……? まさか、既に後方まで浸透されたか!?』
『火力はあるのだが、如何せん近づかれると脆いからな。仕方ない、我らの火縄筒で代用する他あるまいて』
 当初と比べ、俄かに勢いを衰えさせた支援砲撃に歯噛みする武者たち。しかし無い物ねだりをしている余裕は無いと、一部の武者たちは得物を手持ち式の滑空砲へと持ち替えてゆく。対キャバリア用徹甲弾は今まで降り注いでいた榴弾と比べれば攻撃範囲には劣るものの、一撃の威力ならばこちらの方が上。どちらにせよ厄介な武器である事に変わりはない。
(得物を銃砲へ持ち替えた、と……ならば、精密に武器を破壊できるユーベルコードを使いましょうか)
 そんな敵の動きを観察していたフレスベルクもまた、相手に合わせて己が取るべき戦術を見定めてゆく。白兵戦用の武具と火薬を使う火縄銃型滑空砲、どちらが耐久性に長けるかなど語るまでも無い。
 彼女は天の御使いを思わせる乗騎に身を預けながら、意識を集中させてゆく。祈りにも似た思念は機体によって増幅され、音もなく周囲一帯へと異能による干渉領域を広げていった。
『崩壊するは肉体と精神と魂魄。それは魂に宿る衝動を以て奈落を具象化する元型、その名を|赤き糸の結合者《ファム・ファタール》と呼ぶ』
『ッ! 我、襲撃者を一機見つけゆ! 者ども、出会え!』
 しかし砲撃が止むと共に爆炎や煙が晴れて見通しが良くなった結果、フレスベルクもまた武者たちに発見されてしまう。すかさず向けられる無数の砲口にも取り乱さない猟兵を余所に、鉄騎たちは引き金を引き絞り――。
『……残念ですが、既に糸は繋がりました』
『撃て、ぇっ!?』
 刹那、ほぼ同時に全ての銃身が破裂した。薬室内部の炸薬が誘爆した、と言うだけではない。もし呪いに通ずる者が居たならば、互いを繋ぐ不可視の赤い糸を認める事が出来ただろう。これこそが聖女の異能、悪敵と断じた対象を爆破する力である。
 だが武者の勘も侮れないものだ。一呼吸早く仕掛けていた者の徹甲弾が機体を掠め、装甲を抉ると共に全身を揺さぶる。しかしフレスベルクはそれに逆らうのではなく、勢いを利用してくるりと飛び上がった。そうして大型クレーンの上へ仁王立つと、並み居る武者を見下ろしてゆく。
『領域内に存在する全ての存在は、精密に指定して爆弾化する事が出来る……それがこのユーベルコード。この力さえあれば、その気になって状況次第ではこの国の無血占領も可能やもしれませんね』
『銃砲を潰した程度で良くもそこまでの大言壮語を吐けたものだなぁッ!』
 武者たちは使い物にならなくなった火縄銃を打ち捨て、代わりに各々の得物を抜き放つ。飛び道具を使いこそするが、やはり彼らにとっての頼みは刀槍の類だ。先の銃砲と比べて、これらを壊すのは相応に骨が折れるだろう。
『ゆくぞ皆の衆、掛かれぇっ!』
『遠隔爆破を目の当たりにしても臆さないとは、その威勢だけは認めましょう。ですが武具を、或いは四肢を爆破すれば自ずと無力化は出来るはずです』
 鈍重な機体でありながら、助走をつけて器用に大型クレーンを駆け昇る長槍使い。その穂先が届く寸前、フレスベルクは相手の得物を爆散させつつ宙へと身を躍らせる。もんどりうって落下する仲間を尻目に、他の武者たちが着地した瞬間を刈り取るべく得物を振るう、が。
『無駄です!』
 寧ろ、狙うべき的が一所に集まるなど猟兵にとって好都合でしかない。聖女の意に従い鋼鉄が火薬へと変換され、立て続けに炸裂。武者たちの得物を一網打尽とするや、ぽっかりと開けた空間へと少女は機体を着地させた。
『このような妖しき真似、よもや天狗の類か……!?』
『天狗ではなく、どちらかと言えば天使なのですけれどね』
 戦意を喪失し崩れ落ちる武者たちを尻目に見つつ、フレスベルクは次なる敵を求めて駆け出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファン・ティンタン
【WIZ】混迷極まれり
戦況は……ふむ、程好く温まっているようだね
果たして、この場に帯刀の仇は居るのだろうか
再起に手を貸した手前、仇討つ姿も見たいところではあるけれど……
ま、それは主の目的ではない
傭兵らしく、鉄火場を制する一手を担おうか

荒れた場でこそ、奇襲以外の目も見えてくる
相手方には、何が起きてもおかしくないという不安の芽が育っていることだろう
その芽を育てる陽射しを、私が与えようか

戦場で目立つべく、敢えて【求煉】の鉄騎形態で参戦
やぁやぁ、我こそは……なんて、相手の名乗りにも応じよう
雉も鳴かずば撃たれまいじゃないが、目立つからには集中砲火の的だろうが
尤も、液体金属の求煉に単純砲火の類は効果が薄い、榴弾ならまだしも、ね
求煉が立つ不落の異様を見せ
そして、私が静かに在る不明の意図を勘繰らせる
十分に場が満ちれば、最後の一言と共に、光を

さて、私がただ立っていただけだと思うか?
各々が手にする得物は、今、十全なるか?
【白光】
【星影の魔剣】は煌めく彗星の輝き
眩き蒼光は幻惑し、固き信念にも揺らぎをもたらそう



●彗星、疑念を照らし暴き立てん
『ば、馬鹿な……この軍港には秋津洲中の武者が、旗本八百鉄騎が集結していたと言うのに』
『残りはこれだけか? こうなれば他国への侵攻は愚か、国内の鎮護すらもままならんぞ!』
 猟兵たちが仕掛けた度重なる攻勢により、皇国軍の戦力は既に軍集団として成り立たぬ程の落ち込みを見せていた。残存戦力は両の手を超えるかどうかと言った有り様。生き残った鉄騎を三々五々に集結させているが、当初の頭数を思えば寂しい限りである。
(戦況は、と。ふむ、程好く温まっている……を通り越して、少しばかり寒々しいくらいだね。果たして、この場に帯刀の仇は居るのだろうか。再起に手を貸した手前、仇討つ姿も見たいところではあるけれど)
 そんな戦場を見渡しながら、ファンはふむと一つだけ見開かれた瞳を細めてゆく。帯刀の活躍は遠目に確認できていたものの、戦闘は終始敵味方が入り乱れての混戦状態だったのだ。彼女自身が討ち果たしたか、それとも猟兵が知らずに撃破したのか、はたまた砲撃に巻き込まれ戦場の露と消えたか。ちらほらと気になる名が敵の言葉に挙がるも、確かめる術は今のところ存在しない。
「……ま、それは主の目的ではない。気には掛かるが、飽くまでも枝葉末節の範囲。今は傭兵らしく、鉄火場を制する一手を担おうか」
 何はともあれ、優先すべきは暴走する皇国軍の殲滅である。帯刀の金聖を除き、所属するキャバリアは全てオブリビオンマシンと化しているのだ。一旦その全てを撃破しない限り、思想汚染を根絶する事は出来ない。
(荒れた場でこそ、奇襲以外の目も見えてくる。ただでさえ規格外な戦力と相対しているんだ。相手方には、何が起きてもおかしくないという不安の芽が育っていることだろう)
 閉ざされた島国でガラパゴス的な発展を遂げた秋津洲皇国の武者や鉄騎ではあるが、特異性と言う点に置いて猟兵の右に出る存在など居る訳もなし。如何に彼らが死をも恐れぬ勇猛果敢を備えていようとも、幾ばくかの疑念が胸の内に巣食い始めている筈だ。
(……その芽を育てる陽射しを、私が与えようか)
 なればこそ、そうした意識に根差す有形無形の隙を突くべく白き刀は動き出す。オブリビオンマシンの影響下から脱した所で、一度染みついた思想を消すのは至難の業だ。故に手にした得物だけでなく、歪められた心さえも徹底的にへし折る。それは彼らの性根を武人として鍛え直す為に必要不可欠な作業でもあった。
 彼女は手近な位置にいた小集団に目星をつけると、待機させていた『求煉』を流体金属から鉄騎形態へと瞬時に鍛造。まるで突然現れた様に装いながら、敵軍の眼前へと姿を現す。
『なんだ、電探に突然反応が……ッ、すぐ傍だと!?』
『狼狽えるな! この程度の虚仮脅しでたじろぐでないッ!』
 右手にそれぞれの得物、左手に火縄銃型滑空砲。鉄騎たちは僅かに後退って距離を測りつつ、それぞれを瞬時に繰り出せるよう構えを取ってゆく。この期に及んで戦意が萎えていない点は敵ながら天晴と言えるかもしれないが、どちらにせよやるべき事に変わりはない。
 ファンがずいと一歩踏み出すと、それに応ずるかのように最も位が高いと思しき武者もまた距離を詰めてきた。
『やぁやぁ我こそは左馬大属を拝命せし浦野兵部衛と申す者! 貴殿らの武勇は誠に凄まじきものなれど、我らもそう容易くは退けぬ身。いざ尋常にお相手を願おうか!』
『……この身は士分じゃないけど、名乗りに応えなければ此方の格が落ちると言うもの。私は猟兵のファン・ティンタン。冠する銘も無き無位無官なれど、技量の証は太刀合って確かめて貰うとしよう』
 敵の口上に対し、白き刀もまた慇懃に名乗りを返してゆく。静かなれど凛と響く声は嫌が応にも周囲の耳目を惹いてしまう。一見すれば自殺行為にも思えるが、一つでも多くの視線を集める事こそが彼女の狙いである。
(雉も鳴かずば撃たれまいじゃないが、目立つからには集中砲火の的だろう。とは言え、そこからがある意味で本番と言えるんだ。寧ろ仕掛けて貰わなきゃ困るよ?)
 果たして、最低限の礼儀は済んだとばかりに武者たちが先手を取らんと動き出す。
『然らば、まずはこちらから挑ませて頂こう。各員、撃ち方用意……てぇっ!』
 軽々に近づいては相手の思う壺だと身に染みたのだろう。彼らは銃砲を構えるや、一斉に引き金を押し込んだ。刹那、一つに重なった無数の砲声と共に徹甲弾が放たれた。口径が120ミリにも及ぶそれは直撃すれば勿論、生半可な防御も障子紙のように貫通する。
 着弾前に撃ち落とすか、痛手を嫌って回避するか。どちらを選んだとしても一手分浪費するのは確実。その隙を突いて斬り掛からんと、彼らは撃ち終わった銃砲を投棄して代わりに各々の得物へと手を伸ばす、が。
『なっ!?』
 次の瞬間、予想外の光景を目の当たりにし、武者たちの動きが思わず止まる。砲撃に対してファンが行ったのは求煉を僅かに身動ぎさせたのみ。にも拘らず、装甲に触れた徹甲弾はまるで水面に沈むかの如く黒白の機体に飲み込まれてしまったのだ。
 その異常とも言える現象に本能が警告を発したのか、武者たちは踏み込みかけた足を戻してジリと距離を取り始めた。一方、白刀は操縦席内で目論見が上手くいったと僅かに安堵していた。
(狙いは良いけれど……液体金属の求煉に単純砲火の類は効果が薄い。榴弾ならまだしも、ね。もしそちらを使われていたら、内部で爆発して少しばかり厄介だったけど)
 近づけばどうなるか予想がつかない。だから不用意に手を出さず、一先ず見に徹する。そんな疑心暗鬼による膠着状態をこそ、彼女は作り出したかったのだ。こちらが無言を貫けば、より訝しんで手を出しづらくなる。そうして相手が時間を浪費している間、密かに別の策を講じてゆくファン。
 しかし、どうやら敵も単なる臆病者や猪武者ではなかったようだ。
『確かに珍妙な現象ではある。だが着弾の直前、彼奴は僅かに機体を動かした。それは何故か? もしや、操縦席を射線上から逃げしたのではあるまいか』
『成る程。流石です、左馬大属殿。機体が如何なる特性を持っていようとも、操縦者が乗って動かす事には変わりなし。その部分だけは攻撃を受け流せぬと言う事か!』
 分からないなら分からないなりに今ある情報から推論を組み立てる。それが正しいかどうかは実際余り関係ない。必要なのは相手が『未知』でないと彼らが信じられれば十分だ。俄かに勢いを盛り返し、今度こそ斬り掛かって来る武者たちだった、が。
『残念だけど、攻撃を決断するのが一歩遅かったね……さて、私がただ立っていただけだと思うか? 各々が手にする得物は、今、十全なるか?』
 もう既にファンの一手は完成していた。すらりと抜き放たれるは友輩の姿を写し取った隕鉄の長剣。その刀身からは群青色の光が溢れ出し、周囲全てを塗り潰す。それは斬撃にして極光。浴びた者を変容させる煌めきである。
 ――星影の魔剣は煌めく彗星の輝き。眩き蒼光は幻惑し、固き信念にも揺らぎを齎そう。
 果たして、強すぎる光は心に巣食った僅かな疑心を暴き出し、更により深い闇へと塗り替えてゆく。斯くして光が消え去った時、残ったのは佇むファンを除けば、後は腑抜けた様に崩れ落ちる武者たちばかりであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
さて、いい感じに同僚さん達が暴れているみたいね
そろそろ私も後詰めとして参加しようかしら
仕事として来ているのだから、きっちり片付けましょう

個人技に優れ、味方を巻き込むことも厭わない、ね
なら私は軍勢として、連携をもって制圧しましょうか
・『CODE:Observer』を仕込んだ『戦火に舞うは我が傀儡』を発動
・【情報収集】をしながら相手に対して効率的に【集団戦術】にて運用、守る機体と攻める機体をしっかりと役割分担させる
一機に対して複数機で当たれば問題はないでしょう
さぁ、確実に事を進めるわよ

※アドリブ・絡み歓迎



●天網恢恢疎にして漏らさず
「さて、いい感じに同僚さん達が暴れているみたいね。そろそろ私も後詰めとして参加しようかしら。仕事として来ているのだから、懸念事項はきっちりと片付けましょう」
 軍港全体を俯瞰しながら、戦況の把握に努めていたエメラ。彼女は軍港を巡る戦いが終局に入りつつあると判断し、自らもまた戦線に立つべく動き出してゆく。
 猟兵の戦働きによって皇国軍の戦力はほぼ全てが撃破、ないし得物を失い戦意喪失。支援砲撃に関してもそれを担っていた部隊の損耗により弾幕密度が半減し、既に脅威と呼べるレベルではなくなっていた。
「彼らの戦術や気質については観察に徹したお陰で十分に収集できたわ。個人技に優れ、味方を巻き込むことも厭わない、ね。なら私は軍勢として、連携をもって制圧しましょうか」
 質では猟兵が、数では皇国側に優位があったが、今ではもうその差もほぼ無くなっている。それをゼロにするどころか逆転させてしまうべく、エメラは魔導蒸気技術によって組み上げられた兵士たちを呼び出してゆく。
 だが、その大きさは彼女が普段付き従えている兵士や騎乗鎧の比ではない。体高はキャバリアと同じ5メートル程度の巨躯。重砲狙撃型の巨人兵と比べれば小さいが、武者たちの駆る鉄騎と相対しても決して遜色はなかった。そして、そんな鋼鉄で形作られた騎兵が部隊単位で展開しているのだ。勝敗を決するには十分過ぎる。
「さぁ、各機出撃! 作戦を開始なさい!」
 斯くしてエメラの号令一下、無人の騎兵が一斉に動き出す。砲撃を掻い潜り、猟兵側の攻勢を何とか凌いでいた残党たちは黄金色に輝く軍勢を目の当たりにし思わず瞠目する。
『な、なんだこの連中は!? いったい今まで何処に潜んでいたのだ! 九条院殿は、総大将は何をしておられる!?』
『馬鹿者、今更問うている場合か! ここで踏み止まらなければ皇国軍が消滅するのだぞッ!』
 しかし、流石ここまで生き残って来た者たちと言うべきだろう。戦意を衰えさせることも無く、徹底抗戦の構えを見せていた。どれも無数の傷が刻まれ、大なり小なり損壊している機体だが、落ち武者風情と侮る事など出来はすまい。
『砲撃がなんぞ、無勢がなんぞ。得物一振り裸一貫で勲を立ててこそ秋津洲武者! この程度の劣勢、覆して見せるわ!』
 大薙刀を振り被り、大音声を上げながら迎撃の構えを見せる武者。他の者らもそれに倣い、太刀や槍、鉄鎚など己が頼みとする武具を繰り出してきた。寄せ集めとは言え、頭数で言えばそれなりに生き残っている。だが個々の技量は兎も角、連携と言う点では怪しいものだ。
(単騎での戦闘力は決して侮れない、それは間違いないわ。でも、集団と言う点でははっきり言って脆弱と言わざるを得ないわね。流れ弾に当たる味方を弱卒として見捨てるのだもの、そもそも協力体制を取れる土台が無いのね)
 各々の腕前は無論、武器も機体性能もバラバラで不均一。それでもまだ戦い方はあるだろうが、武者たちは何よりも己が強さをこそ誇り協調性など皆無。対してエメラが呼び出せし無人機たちは全く同じ性能かつ、指揮官の元で完璧な連携を発揮できるのだ。集団同士でぶつかり合えば、どうなるかなど火を見るよりも明らかだった。
「第一部隊は斬り込み、第二部隊は側面のカバー。それぞれが自分の役割に集中できるよう立ち回るのが肝要よ。一機に対して複数機で当たれば問題はないでしょう?」
『こ、こちらを分断しての各個撃破狙いか! だが、こんな包囲などすぐに突破して、やる、そ……ぐ、むぅ!』
 なんとか無人機を跳ね返そうとする武者だが、あれよあれよという間に押し包まれてしまう。搭乗する武者や得物ごとの癖までインプットされた騎兵たちは最適解を以て、次々と鉄騎を無力化してゆく。
 それはさながら詰将棋だ。この調子でいけば相手は投了する暇もなく、全ての手駒を失う事になるだろう。
「軍港の完全制圧まであと少し……さぁ、確実に事を進めるわよ!」
 斯くしてエメラは驚くべき正確さを以て、皇国軍を追い詰めてゆき……そう時間を置かず、騎兵たちから軍港全域を掌握したとの報告が入るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『セラフィム・エイル』

POW   :    空の雲海を絆ぐは熾火
自身の【プラズマブレイド】に【熾火】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
SPD   :    星の海を絆ぐは熾火
状態異常や行動制限を受けると自動的に【胸部砲口より戦場を塗りつぶす熾火】が発動し、その効果を反射する。
WIZ   :    闇を恐れることなかれ、それは熾火
自身の【光の翼】から、自身の技能どれかひとつを「100レベル」で使用できる、9体の【セラフィム】を召喚する。

イラスト:落葉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイアルテ・ブーゾヴァです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●折れぬ焔刃と折れた刀槍
「ば、馬鹿な。秋津洲が誇る旗本八百騎が、全滅だと!?」
「軍艦も輸送船も沈没こそしていないが、作戦能力を喪失……これでは侵攻は不可能だ」
 兵どもが夢の跡、という言葉は正に今の様な惨状を表す為に在るのだろう。絶句する武者たちの目の前には破壊尽くされた軍港と、そこに死屍累々と転がる鉄騎の残骸が広がっている。立っているキャバリアはもう、帯刀と猟兵の機体だけだ。
 外洋への進出手段と肝心の戦力、その双方を失った秋津洲皇国にもはや他国侵攻を実行する能力は存在しない。これで当座の目的は果たした。そう猟兵たちは気を緩め掛けたが、女武者だけは何かを気にする様に周囲へと視線を巡らせてゆく。
『済まない、誰か赤を基調とした機体を見なかったか? あの乱戦下だ、わざわざこの手で討つ事に拘るつもりはなかったが、親善試合で刃を交えた対戦相手も此度の遠征に参加している筈なのだ。その武者の名は……』
 少なくとも、これまで倒した鉄騎の中に該当する特徴の機体は存在しなかった。もしや、何らかの理由でこの場に居なかったのか。詳細を確認しようと、帯刀が件の人物の名を口にする、直前。
 ――ごぉ、と。一柱の熾焔が天へと立ち昇った。
 ハッとその場にいる者らが視線を向ければ、発生源は停泊中の輸送船。上部甲板を吹き飛ばし、周囲の海水が煮え立つほどの大熱量。巨大な柱と化した業火の内部より、キャバリアと思しきシルエットが立ち上がる。
 果たして、その姿は通常の機影とは大きく趣を異にしていた。人型ではあるが頭部のアイカメラは三対六個、腕部マニピュレータに関してもまた同じく。三面六臂の異形さを備えながらも、合掌する第一主腕から神仏の如き荘厳さもまた感じられる姿。それは正に『阿修羅』という表現そのものだ。
「おお、あれこそは本侵攻における総大将騎、『熾火』! 一機で三機分の働きを為せるが、それだけ御するのに技量を求められる大業物!」
「親善試合の結果、己が実力を示し総大将の座を勝ち取った剛の者だ。手痛い損害を被ったが、この戦まだ分からんぞ!」
 武家の棟梁と言った存在なのだろうか、その威容を見た武者たちが口々に意気を取り戻してゆく。だが猟兵もまた一目見て直感する。あの機体だ。あの鉄騎こそ、秋津洲皇国中のキャバリアをオブリビオンマシンへと変え、武者たちの思想を歪めた元凶に他ならない。
 しかし、帯刀は機体よりもそれを駆る武者をこそ真に脅威だと見ていた。様々な感情を胸中に抑え込みながら、彼女は相手の名を紡ぐ。
『貴殿はまさか、|四条院《しじょういん》か。||四条院|秀継《ひでつぐ》なのかッ!』
『……久しいですね、帯刀殿。二度と顔を合わせる事はないと思っておりましたが、まさかこんな形でまた相まみえるとは。全く、忌々しい限りです』
 誰何の声に対し問われた武者、四条院は煩わしさを隠すことなく慇懃無礼に応じて見せる。この男こそ此度の遠征を指揮する総大将にして、親善試合の際に小細工を弄して帯刀の名誉を奪った武者だった。
『何故……何故、このような事をしたのだ?』
『それはどれについてでしょうか。外界への不干渉を破り、侵攻遠征を決めた事? それとも親善試合で|わざと《・・・》貴女の荒船を折った事ですか? 答えはどちらも同じです……我ら武者は戦う為に在る、それだけの話ですよ』
 深々と嘆息しながら四条院は道理を説き始める。それは出来の悪い生徒を諭す寺子屋の師とも、死に逝く者に対する冥途の土産にも思えた。
『消極的な鎖国体制を以てこの国は統治を行ってきた。国を護ると言う点でそれに理があった事は認めましょう。ですが、我ら武者の気質は勇猛果敢にして野卑蛮烈。土地も人も限られた現状、狭い国の中でそれを抑え込むにも限界がある。だからこそ、外へと目を向ける必要があったのです』
 かつて徳川は天下を統一した際、力を背景とした武断政治から文筆による統治へと転換する事で、歴史上稀に見る長期政権を成立させたと言う。差し詰め、この国にはそうした戦国の気風を消し去る事が出来なかったのだろう。
『その切っ掛けとして、貴女は丁度良かった。腕は立つが家は弱小……つまり手柄としては大なれど、没落した際の影響は限りなく小さい。加えて、他の武家に対する良い反面教師にもなりました。従わなければああなるぞ、とね』
 お陰で武家の扇動と指揮権の掌握が迅速に進みました。そう語る四条院の言葉はどこまでも悪びれる様子が無い。それは果たして元々の思想なのか、それともオブリビオンマシンの影響なのか。真実は定からぬが、もう重要ではない。相容れる事が不可能だと悟った帯刀は、太刀と刃槍を敵へと突き付ける。
『……武家の為と言えば聞こえは良いが、その視点には民草が含まれていない。そこまで眼を曇らせたか、四条院。最早、是非も無し』
『大勢の同胞を手に掛けた謀反人に言われたくはないですね。生憎ですが、我が刃に折るべき刀身はありませんので』
 対して、三面六臂の紅鉄騎は手に手に熾烈の刃を灯す。高温のプラズマで出来た刃だ、言葉通り得物をへし折って戦意を失わせる事は不可能。なれば取れる道はただ一つ、この武者と鉄騎を真っ向から打ち破る事のみ。
 さぁ、猟兵たちよ。今こそ、この騒乱に終止符を打つ刻だ。

※マスターより
 プレイングは6日(土)朝8:30から受付開始。
 第三章はボス戦、『セラフィム・エイル【熾火】』との決戦となります。軍港は先の集団戦の結果、主要施設があらかた破壊されており、開けた荒れ地となっています。海中を除けば、鉄騎や建物の残骸程度しか身を隠す場所は有りません。
 敵機は極めて強力なキャバリアです。また手にした武装自体が物理刀身を持たないプラズマ刃の為、これまでのように得物を破壊して戦意を失わせる事は出来ません。此処からは小細工なしの真っ向勝負となります。
 それでは引き続き、どうぞよろしくお願い致します。
※訂正
申し訳ありません、敵の名前で表記揺れが発生しております。大変恐縮ですが、以後は『四条院』で統一させて頂きます。
お手数お掛けしますが、どうぞ宜しくお願い致します。
フレスベルク・メリアグレース
ならばいいでしょう
そのまま熾火ごと現実を知りなさい

コックピット内で指を鳴らし、飛空艇を飛翔させない形で召喚
状態異常等に反射性能を有するというなら是非も無し
順砂火力勝負で、押し通します

『超弩級魔導砲を搭載した飛空艇部隊』から『敵のあらゆる防護を無視する』砲撃を開始
そのまま押し通しますよ

召喚士を狙えば、勝てると思いましたか?
召喚器を用いて未来属性ホワイトディアブロと過去属性ブラックアンヘルを操作
『本体を攻撃される時間軸』を未来属性と過去属性で破却し、そのまま遠距離に下がり『サイキ・アンリミテッドレールガン』で砲撃を開始
償いは、受けてもらいますよ



●一瞬刹那に刻を超え
『……さて、それでは速やかに片付けてしまいましょうか。此度の一件で武家の力が削がれたのもある意味で幸いと言えます。再編を利用して指揮系統の更なる掌握を進め、基盤を盤石にすることが出来るのですから』
 紅の三面六臂に座しながら、四条院は悠然とそう言ってのける。確かに武家のほぼ全てが乗騎と得物を失い、矜持を粉々に打ち砕かれているのだ。そんな中、単騎で襲撃者を撃退すれば国内でこの男に意見できる者は居なくなるだろう。
 己ならば武者の軍勢を殲滅した反逆者と猟兵も恐るるに足らず。そんな傲慢が言葉尻より透けて見えている。であればその過信をへし折らんと応じたのはフレスベルクであった。
『これでは阿修羅と言うよりも天狗ですね……ならばいいでしょう。そのまま熾火ごと現実を知りなさい』
『ほう、何をするつもりですか?』
 彼女は相手の問いには応じず、ただ操縦席内で静かに指を鳴らす。刹那、軍港周辺の空間が歪み始めた。それはあらゆる距離を超え、己が戦友を招き寄せる超常の御業。果たして、開かれた門を通って翠緑の翼がこの世界へと招かれる。
 水飛沫を上げながら海面へと着地せしは無数の飛行艇。それらは出現と同時に搭載された超弩級魔導砲を旋回させるや、照準をぴたりと紅の阿修羅へ定めてゆく。
『拝跪せよ、我が御旗の元に集いし蒼穹を舞う勇士達よ。汝らの胸に宿る翡翠色の煌めきを、我が帰天は証明しよう!』
『艦砲による殺し間、と。成る程、先ほど行った艦砲射撃の意趣返しと言った所ですか』
 フレスベルクの号令一下、収束された膨大な魔力が解き放たれた。翠き奔流が秘めし威力は凄まじく、如何な装甲や力場であっても防ぐ事は困難だろう。それが四方八方、敵を取り囲む様に陣取りながら狙い撃っているのだ。正に必殺必中を期した一撃である。
『このまま押し通らせて貰います!』
『ふ、む。これは確かに厄介ですね……が、しかし』
 着弾までコンマ数秒あるかどうか。そんな瞬き一つ分にも満たない刹那の内に、四条院は打開策を組み立て終えていた。避けるでもなく、防ぐでもなく、相手は機体をまるで俯かせるように傾ける。瞬間、胸部の装甲が展開し、内部から飛行艇の砲撃にも劣らぬ大熱量が溢れ出す。
 それは足元の海水に触れるや否や、一瞬にして気化。大気を押しのけながら轟音と共に水蒸気爆発が巻き起こる。周囲一帯が白煙に覆い包まれ、一時的に見通しが悪化してゆく。思わずどうなったのかと、フレスベルクが目を細めた――。
『無傷で切り抜けるのは流石に厳しかったですね。第二射を浴びても面倒ですし、大将首を落とすとしましょうか』
 その矢先、白き幕を破り紅の阿修羅が飛び出して来た。言葉通り装甲の一部が溶解しているものの、損傷の度合いとしては軽微。そのまま間合いを詰めると、赤熱刃を展開して猟兵を直接狙ってくる。ご丁寧にも各砲の射線上に己と聖女を置く事で、巻き添えを警戒させると言ういやらしさだ。
『召喚士を狙えば、勝てると思いましたか? であれば、少しばかり見通しが甘いと言わざるを得ませんね』
 だが、相手も手練れである事は百も承知。フレスベルクは予め構えていた黒白二挺の拳銃型召喚器を起動させる。呼び出される力は未来と過去への干渉能力。大元となった存在と比べれば範囲は限定的だが、それでもこの斬り合いにおける数瞬の猶予は極めて大きかった。
 繰り出された得物の切っ先が装甲へと触れ、蒸気と共に装甲が溶断する寸前。致命打を受けると言う未来を破却し損傷を最小限に抑え込みつつ、距離を取って得物を電磁投射砲へと持ち変える。
『償いは、受けてもらいますよ』
『ほう、縮地……否、より直接的な力ですか』
 咄嗟に四条院も赤熱刃を掲げて防御を試みるが、だからと言って躊躇はしない。フレスベルクはそのままトリガーを引くや、磁力によって加速させた弾体を叩き込むのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワタツミ・ラジアータ
理由や内容はどうであれ外の国と交流されるのは歓迎しますわ。
新品、中古品、故障品、再生品、鉄屑なんでも歓迎しますわ。
ただ、未処置の残骸《オブリビオンマシン》は面倒なので御遠慮しますわ。
ということで、その機体は処置しますわ。

UCにてキャバリアを変形
自身の周囲に入る、接触するなどで資源化する攻撃
周囲を銀色の金属で敵と周囲を汚染しながら敵の装甲や手足を狙い近接戦を行う
汚染地域は熾火にて上書きされる

残念、私の土地にしましたのに。
この姿はあまり長くはいられませんので、この土地が大事なら頑張ってくださいね。

汚染された土地を上書きする熾火を発動するために敵に敢えて状態異常や行動制限を受けさせる


エメラ・アーヴェスピア
オーケー、残りはあの機体だけかしら?
別の機体を投下する、と言う手もあるけれど…
あの機体もどうやら基本的には近接仕様のようだし、このまま行きましょう

・『戦火に舞うは我が傀儡』を継続
・【集団戦術】を用いて相手を囲んで常に一定の距離を取りつつ、移動しながら射撃し続ける
・【情報収集】により相手の機体情報を収集し続け、何か予兆があれば対応できるようにする

悪いけどそっちの流儀に付き合うつもりは無いわよ?
あまり損害を出したくないの
囲んで叩く、最後まで手堅く行きましょう

※アドリブ・絡み歓迎



●数多の鋼鉄、焔に溶けて
『ふむ、磁力を加速媒体とした火砲とは。この国にはない技術ですね。我が国の気風には些か合いませんが、居合か何かに応用できれば面白いかもしれません』
 電磁投射砲の直撃を受け、大きく凹んだ装甲。被害状況を確かめる様にマニピュレータを這わせながらも、四条院は臆するどころか見慣れぬ技術を興味深そうに分析していた。遅れを取りこそすれ戦いはまだ始まったばかり。焦る必要などないと考えているのか。
 一方、そんな敵に相対するエメラもまた、どの様な手を打つべきかと思案を巡らせている。
「オーケー、残りはあの機体だけかしら? 別の機体を投下する、と言う手もあるけれど……あの機体もどうやら基本的には近接仕様のようね。であれば先ほど収集したデータも参考可能でしょうし、このまま行きましょうか」
 幸い、先ほど呼び寄せた鋼鉄騎兵たちはまだ健在だ。敵も機体性能こそ大きく異なるものの、それでもこの国の鉄騎らしく刀剣を用いての白兵戦に重きを置いている。搭乗者も武者である以上、対『大風』戦用の戦術ルーチンに調整を加えれば十分通用するはずだ。斯くして半機人の指示を受け、無人機たちは布陣を進めてゆく。
 一方、ワタツミも仲間の動きに合わせて乗機を戦線へと向かわせてゆくのだが、彼女の視線は眼前の敵ではなく、足元に散らばる無数のスクラップへと吸い寄せられていた。
『……理由や内容はどうであれ外の国と交流されるのは歓迎しますわ。人が動けば、それと共に技術や物資が流動し、新たなモノも生じてゆくのですから。新品、中古品、故障品、再生品、鉄屑。それが資源となるならば、なんでも歓迎しますわ』
 そう言う意味では、彼女にとってこの場は宝の山と言えるだろう。キャバリアの廃材からは使用可能な部品が回収でき、そうでなくとも良い金属資源になる。とは言え、何事にも例外はあるもの。産業廃棄物などがその最たる例だ。こればかりはもう、適切に処理して廃棄する他ない。
『ただし、その|未処置の残骸《オブリビオンマシン》は面倒なので御遠慮しますわ。下手に資源化をして、他の部品を狂わされても面倒ですもの。ということで、その機体は処置しますわ……歯車機構出力制限解除。"ScrapSea"起動セヨ』
 機械人がそう告げるや否や、彼女の機体が不快な金属音を立てながら姿を変え始める。廃材で作られた竜を思わせる外装は剥がれ落ち、白を基調した装甲が紅に染まりゆく。果たして其処に顕現せしは、紅きドレスに身を包んだ女性的なシルエット。
 一見すれば優美さを感じさせるものの、ソレが鉄騎の残骸へ触れた瞬間、鈍い銀光を放つ金属塊へと変換された。これこそがワタツミに本来課せられていた役割と機能、その一端である。
『とまぁ御覧の通り、触れ掠めたモノは全て資源へと還元されます。手間賃についてはご心配なく。この土地そのものを資源に変え、お代として頂きますので』
『生憎、この規模の軍港は我が国でも貴重でして。借款ならまだしも、割譲など御免被りますよ!』
 その問答を契機として両者が一斉に動き出す。六臂にそれぞれ赤熱刃を展開し、斬り掛かって来る四条院。対する機械人は踏み締めた地面を金属に変えつつ、徒手空拳による接触浸食を狙ってゆく。
『成る程、確かにこれは厄介ですね。ですが質量を持たぬ熱量、プラズマによって形成された刃であれば関係ありませんよ』
 だが、相手もそう易々と事を運ばせてくれはしない。距離を詰めさせぬように立ち回りながら、文字通りの手数差を以て敵対者を切り刻まんと絶え間なくマニピュレータを繰り出してくる。
『目も腕も一機で三機分、と。八面六臂ならぬ三面六臂の活躍ぶりだけれど、操縦しているのが一人である事に変わりはないでしょう? さぁ、どこまで対応できるかしらね』
 これでは防戦一方だが、数と言う点では猟兵側も負けてはいなかった。エメラの命令に対し、すかさずワタツミとは別方向から無人機たちが援護に入る。彼らは友軍機の動きを阻害せぬ様、ある程度の距離を取りつつ射撃兵装による牽制を行ってゆく。
 それらは初めこそ切り落とされ、或いは装甲に弾かれてしまう。しかし、彼女からすればそれでも問題は無い。各センサーのカバー領域はそれぞれどこまでか、マニピュレータの反応速度の限界はどの程度か。そうした情報を測り、各機に共有し、戦術へと反映する事で徐々に射撃精度が上昇してゆくのだ。
(致命打を与えられなくてもいい。常にこちらを意識させて、リソースを割かざるを得ない状況を維持し続ける。それだけでも援護としては上出来よ)
『さて、こうしている間にも所有権の上書きを続けているのですが、悠長にしていて宜しいのでしょうか? 来なければいっそ、こちらから行かせて頂きますわ』
 果たして、僅かにだが四条院の対応に遅れが見え始めた。それを好機と見たのか、有効打を叩き込むべくワタツミも無人機の攻撃に合わせて距離を詰めんと試みる。だが相手の様子を観察していたエメラは、敵機内部のエネルギー量が急速な高まりを見せている事に気付く。
「ッ、不味いわね。あれは間違いなくさっき見せた砲撃よ。ここが一旦距離を……!」
『いえ、もう遅い!』
 警告を発すると同時に、視界を白く染め上げる程の大熱量が解き放たれる。溢れ出す熾火は戦場全体を塗り潰し、無人機群や汚染された土地を猟兵諸共に焼き払う。その威力、範囲共に先の砲撃支援とは比べ物にならない。周囲に展開する鋼鉄騎兵たちは元より、至近距離からそれを浴びたワタツミも無事では済まないかと思われた、が。
「……間一髪、かしら。本当はあまり損害を出したくなかったのだけれど、こういった無茶は無人機の特権よね?」
 仲間を庇う様に、或いは敵へ覆い被さるが如く。咄嗟に展開していた鋼鉄騎兵が身を挺する事で、被害を最小限に抑え込んだのだ。溶解し機能を停止させた無人機が崩れ落ちると、その奥から紅の装いが姿を見せる。
『ありがとうございますわ。今のは流石にヒヤッとしましたもの……それにしても残念、せっかく私の土地にしましたのに』
 流石に無傷とはいかず、装甲が広範囲に渡って焼け焦げているものの、機体自体は健在。機械人は損傷を憂うよりも、侵食した土地が熾火によって上書きされたことを嘆いていた。余りの高熱によって浸食粒子も溶け、すっかり揮発してしまったのだ。まぁ尤も、彼女からすればここまで含めての行動ではあったのだが。
『この姿はあまり長くはいられませんので、この土地が大事なら精々頑張ってくださいね』
『地の利は我に在り、ですがね。持久戦ならば私の方に分が……ぅ!?』
 仕切り直しだと言わんばかりに、四条院は再び猟兵と斬り掛かる。だが、振るう各腕が不意に衝撃を受けて勢いを削がれた。何事かと視線を走らせた先に居たのは、銃火器を構えた無人機たち。エメラは手勢を磨り潰しながらも、抜け目なく必要な戦力を残しておいたのだ。
「悪いけどそっちの流儀に付き合うつもりは無いわよ? 囲んで叩く、最後まで手堅く行きましょう」
『つまらぬ小細工を……ッ』
 思わず歯噛みするも、この妨害によって動き出しが一手遅れてしまう。その隙をワタツミが見逃すはずもなく、機械仕掛けの女神が指先を伸ばし、そして。
『これも行きがけの駄賃、修理費代わりに頂戴しますわね?』
 銀色に浸食した装甲を、無惨にも毟り取ってゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

無名・空欄
おー、なんか強そうなのが来たねー
あれなら相棒も満足するかな?
それじゃ、戦ってみよーかー

ま、さっきも言ったけど私達がやれる事って一つなんだけどねー
『|絶影歩法《寄って》』、『|剣刃一閃《斬る》』
とはいえさっきみたいにはいかないかな
絶影歩法で間合いを調整しつつ剣刃一閃を相手の攻撃の直前に差し込んだり
相手の攻撃を受け流しつつカウンターで斬り込んだり、かな?
まぁ速さを生かして斬り合おうかー

うんうん、私には難しい話はいいからさー
敵は斬り捨てる、それでいいでしょー?
あ、今回の協力者の人も戦うんだっけ?私達が先に倒しちゃったらごめんねー?
…相棒が満足するまではもってよ?

※協力・アドリブ歓迎



●ただ斬る事にのみ専心す
『削られた装甲は痛手ですが、まだ致命的と言うものでもない。我が刃の冴えもお見せし切れていないと言うのに、この程度で追い詰めたなどと思われたら心外ですね』
 毟り取られた装甲へ赤熱刃を押し当て、まるで傷口を焼き潰すが如く塞いでゆく真紅の阿修羅。多少の損傷は負っているものの、言葉通りその戦闘力は未だ健在である。陽炎を生み出す六つの刃を構えたその姿は畏怖を感じさせるものだが、相対する空欄からすれば待ちかねたといった気持ちしかなかった。
『おー、顔とか手がいっぱいで、なんか強そうなのが来たねー。あれなら相棒も満足するかな? それじゃ、さっそく戦ってみよーかー』
 戦闘に向けて愛機の出力が高まってゆくのを感じつつ、鞘より大太刀を引き抜いてゆく剣士。これまで相対して来た猟兵が砲や徒手で挑む者ばかりだったせいか、四条院も心なしか上機嫌に応じてゆく。
『ほう、得物は大太刀ですか。先の親善試合では少しばかり小細工を弄しましたが、あれは飽くまでも二度とない好機に万全を期す為。例えそれがなくとも、私の技量ならば破壊は十分可能でしたので』
『良く回る舌だね。うんうん、私には小難しい話はいいからさー。敵は斬り捨てる、それだけでいいでしょー? さっきも言ったけど、私達がやれる事って一つなんだしさー』
 ――『|絶影歩法《寄って》』、『|剣刃一閃《斬る》』。ただ、それだけ。
 相手の前口上を言葉通り切って捨てつつ、ゆらりと彼女の愛機『鋼刃丸』が動いた。それは先の『大風』戦で見せたのと同じ戦術だ。一呼吸で踏み込み、相手を間合いへと捉え、一刀の元に斬り捨てる。言ってしまえば非常にシンプルだが、それ故にこそ誤魔化しが効かず、剣士としての力量が如実に表れるもの。
 果たして、無拍子から放たれる横薙ぎの一閃が三面六臂の鉄騎へと迫る、が。
『ふーむ、やっぱりさっきみたいにはいかないか』
『当然です。|政《まつりごと》だけで総大将の座に就ける程、この国は甘くありませんのでね!』
 巨大な刀身は六つの赤熱刃によって真っ向から受け止められていた。一瞬の鍔迫り合いの後、空欄は特に取り乱す事も無く飛び退り、今度は敵機の周囲を飛び回り始める。一撃の威力に頼れぬならば、速さを活かして攻める方向へと切り替えたのだ。
 しかし、相手は腕が多いだけではない。頭部センサーも通常の三倍であり、前後左右全周囲に対して目を光らせている。純粋な機動性では勝ろうとも、気を抜けばすぐさま後の先を狙ってくるだろう。
(間合いを調整しつつ相手の攻撃の直前に一手差し込んだり、受け流しつつカウンターで斬り込んだり、かな?)
 それらを踏まえた上で空欄は手妻を変えながら相手を攻略せんと試み、四条院も斬撃を防ぎながら返す刀を狙いゆく。そうして一合二合と打ち合い、その回数が十を超えてもなお拮抗状態が続く中、先に痺れを切らしたのは相手側であった。
『ふむ、これでは埒が明きませんね。然らば、こちらから動くとしましょうか』
 紅の阿修羅は再び猟兵の斬撃を受け止めるや、胸部装甲を開放。動力炉と直結したエネルギーを熱量へと変えて放出してゆく。周囲一帯を熾火で覆い、足回りを鈍らせようと言う魂胆なのだろう。
『ふーむ、刀以外を使って戦うのはちょっと興ざめかなー』
『足止めにすらなりませんか。ですが、そう来ることは読んでいましたよ!』
 しかし高熱を物ともせず、陽炎の向こう側から大太刀を手にした絡繰武者が踏み込んで来る。とは言え、相手もこれまでの交戦から猟兵がこの程度で止まらぬ事を予測していた。砲撃は陽動、不用意に飛び込んできた相手へ叩き込む二の太刀こそが本命だ。
 その判断自体は決して悪くは無かっただろう。だが、相手に間違いがあるとすれば。
『……あ、そう言えば今回の協力者の人も戦うんだっけ? 私達が先に倒しちゃったらごめんねー?』
 ――せめて、相棒が満足するまではもってよ?
 猟兵と言う常識の埒外に立つ存在を見誤った事か。肉を切らせて骨を断つ。赤熱刃を大きく機体にめり込ませながらも、空欄は構う事無く得物を振り抜く。果たして、機体へ深々と斬傷を刻み込むのと引き換えに、彼女は相手の腕を一本、斬り飛ばすことに成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

チェスカー・アーマライト
連携アドリブ歓迎
損傷OK

生存圏を拡げるっつー大義名分を掲げちゃいるが
要はテメーらの戦い続ける歓びの為って話だろ?
御託は要らねー
さあ、あたしらの大好きな戦いでケリをつけよーぜ!
『Let's dance』(画面に文章表示)

戦艦の連装砲で
比較的、原型留めてる奴を選んで引っこ抜く
右腕にワイヤーで無理やり括り付けて最低限の補強を
後はブースターの推力に任せて突撃するだけだ
一曲付き合ってもらうぜ
テメーにその度胸があるんならな!
連装砲を盾代わりにブッ放される熾火へ突っ込む
途中で砲身が溶けて無くなろーが構うもんか
装填されて残ってた砲弾を
間に合わなければ左腕の『カンナ』を
ガラ空きの胸部砲口へ突き立てるぜ



●大虎の咆哮/砲口
『…………は?』
 大太刀によって斬り飛ばされ、宙を舞う腕部マニピュレータ。展開していた赤熱刃を消失させたそれが地面へ転がると、そこで漸く四条院は自らの機体に何が起こったのかを理解する。機体性能と己が技量に絶対の自信があったのだろう。鮮やかな切断面を目の当たりにし、思わず我を忘れ取り乱す。
『ば、馬鹿な! 熾火の腕が断ち落とされたなど!? あり得ない、この機体は武家の棟梁たる機体ですよ! 他の武者を束ね、いずれ他国へ打って出る際に旗頭となるべき至宝が……!』
『なに寝ぼけたコト言ってんだよ。ソイツは美術品じゃなくて兵器なんだぜ? 戦場に出せば傷つくし、運が悪ければ壊れるに決まってんだろ。そんなに大事なら、蔵の中にでも後生大事に仕舞っとくべきだったな』
 そんな新兵じみた反応を見せる相手を、チェスカーは嘲り交じりに切り捨てる。戦車乗りの言葉を裏付ける様に、鋼の大虎はあちこちに斬傷や凹みを作っていた。彼女は脚部防循に突き立った大矢をへし折りながら、器用にマニピュレータの中指を突き立ててゆく。
『生存圏を拡げるっつー大義名分を掲げちゃいるが、要はテメーらの戦い続ける歓びの為って話だろ? 争いが無きゃ、兵士なんざ単なる金食い虫でしかねぇもんな。お為ごかしの御託は要らねー。さあ、あたしらの大好きな戦いでケリをつけよーぜ!』
 ――Let's dance.
 相棒の言葉へ応ずるように、モニター上にご機嫌な文字が浮かび踊る。そうして行動を開始する猟兵に対し、一先ず倒すべき敵を定める事で動揺をねじ伏せたのだろう。五肢となった腕に赤熱刃を展開させながら、紅の阿修羅が踏み込んできた。
『……この鉄騎の価値と私の大義。そのどちらも理解する気のない愚か者にもはや語る言葉もありません。無礼の対価はそちらの首級で贖うとしましょうか』
『他人にはやったのに、自分がされるのは嫌だって? 随分とご都合主義だな!』
 チェスカーは手持ち式の副砲で牽制射を放ちつつ、踵を返してある場所を目指す。それは先の『大風』戦で破壊した軍艦の一隻。彼女は甲板上へと取り付くや、比較的原型を留めている砲塔に目星をつけ、徐にそれを引っこ抜く。
『流石にデカいが……これで良し、と。さぁて、一曲付き合ってもらうぜ。小細工だの根回しだのに勤しむ、陰気なテメーにその度胸があるんならな!』
 巨大な鉄塊をワイヤーで無理やり右腕に固定し、調子を確かめる様にガツンと拳を叩き合わせる。機体のバランスが崩れてしまうが、戦場ではそんなの日常茶飯事だ。この程度で日和っていては傭兵稼業などやっていられない。チェスカーはブースターの出力を最大まで引き上げると、大推力に任せて迫りくる敵へと吶喊してゆく。
『安い挑発をしますね。ですが、それに応じず逃げたと思われては私の権威に疵が付く……良いでしょう。身の程を教えてあげますよ。砲径収束、全火力を集中照射!』
 膨れ上がったシルエットは良い的だと、四条院は胸部装甲を開放し砲門を晒す。だが、その発射口は先程までと比べて小さい。攻撃範囲を絞る代わりに威力と命中精度を上げようとしているのだろう。果たして、チカと瞬きが煌めいたかと思うや、超高熱の熱線が大虎を呑み込んでゆく。
(なんつう熱量だ、一瞬で操縦席がサウナみてーになってやがる。砲塔を盾代わりにしても長くは持たねぇな。だが、途中で砲身が溶けて無くなろーが構うもんか。ビビッて退いたらあたしの負け、こっから先はチキンレースだ!)
 計器類が異常を叫びたて、余りの熱気に汗を流すどころかジリジリと肌が炙られる。如何に装甲の厚い機体とて耐え切れるかどうか。しかし、チェスカーはモニターに表示された文字を目にして腹を括る。
 ――Called shot.
『オーケイ、デカイのをブチかましてやるよ!』
 獰猛な笑みと共に戦車乗りは全リミッターを解除。耐久限界を迎えた部品が溶け落ち吹き飛ぶのも構わず、限界を超えて推進器を唸らせる。果たして鋼の虎と紅の阿修羅、両者の距離は遂にゼロとなり――。
『ただの鉄騎が耐え切った、だと……!?』
『ハッ、そのツラが見たかった。さぁ、コイツでホームランだ!』
 猟兵は胸部砲口へ溶解しかけた砲塔を強引にねじ込むや、敵機の内部へと徹甲弾の一撃を叩き込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

川巳・尖
近寄るだけでも炙り焼きにされそう、厄介だね
長引いたら暑さで死んじゃいそうだし、さっさとやっちゃおうか

刀身は折れなくても、腕や脚は折れそう
水妖夜行で相手の攻撃を避けながら、あの危ない武器を振るう手や腕を狙うよ
分身も使ってくるみたいだし、いざとなったら海中に逃げられるように位置取りには気を付ける
三面六臂の機体、普通に撃っても腕のどれかで防御、すぐに他の腕で反撃してくるんだろうね
その殺気から次の動きを読んで、直火で焼かれずに済む寸前を回避しながら射撃、命中させられる腕に当てて一本でも減らしていきたい
どれか欠ければ少しはバランスも崩れるだろうし、チャンスを逃さず撃てるだけ撃ち込んじゃおう
少なくとも腕の数は2本まで減らして、累音の金聖と対等にしたいね

阿修羅程度じゃ、あたいは仕留められないよ


ファン・ティンタン
【POW】強さのカタチ

実体の無い刃、ねぇ……
私に言わせれば、鎬を削り合うことも出来ぬそれは芯無き空ろな強さだよ
ま、噂に聞くその鉄騎の中身には、お似合いなんじゃないかな?

(とは言え、厄介な兵装ではある
求煉への有効打には違いない
熾火とは、よく言ったものだ)

……さて、誇りなんぞ犬に食わせろと言ったのは私だ
手段は選ばず、勝ちにいこうか

先の戦闘を見られているかは知らないけれど、求煉には吶喊してもらう
適当に拾う鉄騎残骸の薙ぎ払いや、先に取り込んだ徹甲弾の吐き出しで牽制
警戒こそされるだろうが、相手に危機感を覚えさせない程度の振る舞いが肝要
もっとも、あれだけ煽ったんだ、御自慢の得物は振るいたかろう
機が熟せば、炎刃が求煉を断つだろう
(申し訳無いね求煉、埋め合わせは後で)
形を崩す求煉を目眩ましに、自身は敵機足元へ

さぁ、一寸法師の鬼退治といこうか

【怪力乱神】
地に足刺し、求煉の残渣で補助固定しつつ遠慮なく振り回し地へ叩きつけ
鉄騎は砕けずとも、中身はそうはいくまい
道具が強かろうと、使い手が軟では戦いは務まらないよ



●弱能制強、柔能制剛
『が、はっ!? 確かに我が国の武者は、戦において死を恐れません……だが、あれは違う。あんなのはただの自殺行為に過ぎない。だと言うのになぜ躊躇なくそれを行い、あまつえさえ成功させるのですかッ!』
 浴びせられた業火を物ともせぬ、一か八かの吶喊砲撃。その直撃はさしもの阿修羅といえども痛手と認めざるを得ないものだった。直前に第二射を放って相殺を狙ったものの、胸部に備え付けられた砲口は無惨にも歪んでいる。
 機体は勿論、搭乗者にもかなりの衝撃が及んだはずだ。もし今の状態で熾火を放てば自壊するのは火を見るよりも明らか。自己修復機能を総動員させたとしても、発射可能になるまで暫しの時間が必要になるだろう。
「どこもかしこも見渡す限り火の海、と。海は海でも、こういうの求めてないんだけどな。近寄るだけでも炙り焼きにされそうで厄介だね。長引いたら暑さで死んじゃいそうだし、さっさとやっちゃおうか」
 猟兵にとっては正に攻め時といった状況だが、一方でパタパタとシャツの胸元を扇ぎながら尖は顔を顰めていた。水気を好む彼女にとって、この戦場は天敵と言っても過言ではない。以前同じような状況に陥った時の事を思い出してか、長期戦を避けるべく手にした拳銃へと妖力を籠めてゆく。
 また、その横で敵機の様子を観察していたファンもどこか詰まらなさそうな表情を浮かべている。紅瞳の視線が射貫くのは、五本となった腕に握られた赤熱刃。その威容は認めるものの、さりとて好悪については別だ。
『実体の無い刃、ねぇ……このある意味で極まった文化を持つ武家社会において、得物の喪失というリスクを避ける為の進化と考えればまぁ理解はできる。けれど私に言わせれば、鎬を削り合うことも出来ぬそれは芯無き空ろな強さだよ』
 幾年月を経し白刀こそが彼女その者/物。である以上、当然ながら刀剣と言う存在に対し一家言を持っている。眼前の機体は得物と共に名誉が失われるのであれば、得物自体を無形にしてしまえば良いという一種のトンチ。その考えを否定するつもりはなかったが、やはり武具を誇るのであれば|骨身《はがね》を備えてこそ。
『……ま、噂に聞くその鉄騎の中身には、お似合いなんじゃないかな?』
 それは明確な挑発の言葉。相対する三面六眼のセンサーがジッと白刀を睨みつけてくる一方で、冷静に相手をどう攻略すべきかと思考を巡らせていた。瞳が見据えるは鋼の奥に座す中身について。
(とは言え、厄介な兵装ではある。単純な熱エネルギーによる攻撃なら、流体金属で出来た『求煉』でも有効打には違いない。熾火とは、よく言ったものだ。その上、艦砲のゼロ距離射撃を受けて健在な程に堅牢……機体は頑強だが、さりとて使い手はどうかな)
 『将を射んとする者はまず馬を射よ』とはよく言うが、逆もまた然り。得物を狙わずとも攻略の糸口は幾らでもあるものだ。恐らく似たような考えに至ったのか、傍らに立つ水怪の口からも呟きが漏れ零れる。
「刀身は折れなくても、腕や脚は折れそう。大太刀でずんばらりとはいかないだろうけど、さっきの大風でも出来たしね。最悪、いざとなったら海中へ逃げれば何とかなるかな」
『どんなに無様でも、最終的に立っている者こそが勝者さ……さて、誇りなんぞ犬に食わせろと言ったのは他ならぬ私だ。と言う訳で、手段は選ばず勝ちにいこうか』
 尖の言葉に頷きつつ、ファンはずいと黒白のキャバリアを前線へと押し出す。そんな猟兵側の動きを感じ取ったのか、紅の阿修羅もまた臨戦態勢を取ってゆく。だが、その挙動はこれまでとやや趣を異にしていた。
『武具一つで好き勝手な言い草ですね。ですが、些か手傷を負ったことは事実。ここは一つ、手妻を披露させて貰いましょうか。将たる者、供周りが居なければ格好がつきませんから』
 ぞわりと、胸部砲口からでなく背面から熾火が噴き出し始める。まるで翼のように展開された焔は周囲に斃れ伏す鉄騎の残骸へと宿るや、伽藍洞になった内部を満たしてゆく。
 果たして、崩壊した四肢は繋ぎ合わせられ、炎に包まれた鉄人形が大地に立つ。その数、合計九機。それぞれが阿修羅と同じく背に羽と三対六本の腕を持ち、灼熱で形成された太刀を手にしている。
『先ほどは無人機に一杯食わされましたが、同時に有用である事も身を以て体験しました。業腹ですが、胸部主砲の修復が終わるまで時間を稼がせて頂きます。ああ、ご安心を。剣の腕はしっかり、私と同等ですので』
 斯くして下知を受けた|炎天狗《セラフィム》たちは、本体に近づけさせまいと猟兵目掛けて挑み掛かって来た。尖が一瞥して敵の配置を確認するも、すり抜けや迂回は難しそうだ。
「出来れば本体を直接狙いたかったけど、これは取り巻きからどうにかしないと不味そうだね。まんま炎だから、ある意味であたいと相性はいいかもしれないけどさ」
『本命はあの策謀家気取りの阿修羅だ。雑兵にかかずらってもいられないし、露払い役として求煉を先行させよう』
「うん、分かった。それじゃあ、パパッと片付けちゃおう」
 避けて通れぬ相手なら、最短最速で撃破し本丸を狙うのみ。猟兵たちは言葉を交わし合うと、まずはファンのキャバリアと共に尖が飛び出してゆく。大小の敵が現れたとなれば、自然と前者に注意が向くもの。黒白の鋼は先の戦いで取り込んでいた徹甲弾を吐き出して機先を制しながら、周囲に散らばる残骸を引っ掴み、手当たり次第に叩きつけてゆく。
(三面六臂の機体、普通に撃っても腕のどれかで防御、すぐに他の腕で反撃してくるんだろうね。ただ、構造と太刀筋が同じって言うのはある意味で幸運だったかも。こいつらで動きの癖を掴めば、そのまま本体にも応用できるはず)
 そうして仲間の機体が敵の注意を引いている隙を突き、密かに距離を詰めた水怪は全身から妖力を滲ませる。ただでさえ炎上中の大質量がすぐ傍で動き回っているのだ。生身のままで飛び込めば、例え彼女でなくとも干乾びるのは必定。 ちらと周囲へ視線を向け、いつでも水中に飛び込めるよう地形を頭に叩き込む。
(的の大きさや今後の事を考えれば、さっきと同じように脚部を狙うべきだろうけど……うん、やっぱり腕を減らしたいかな)
 腕と脚、どちらが狙い易いかと問われれば断然後者だろう。脚部を破壊すれば機動力が削がれる上、残り五本もある腕と比べて足は二本しかない。戦闘に与える影響を考えればそちらの方が大である。
 しかし、尖は敢えて腕の破壊を狙う事に決めた。装甲や胸部砲門が破壊されても泰然自若としていた四条院が、マニピュレータを一本失っただけであれほど取り乱したのだ。非常に困難だろうが試してみる価値は在る。
(無人機と言っても本体の動きを模倣している以上は技の起こり、つまり殺気を完全に消すことはできない。それから次の動きを読み取る事が出来れば……!)
 黒白と烈火が激突を繰り広げる中、彼女は精神を研ぎ澄ましてゆく。果たして、ゆっくりと動きを鈍らせる視界の中、尖はトリガーを押し込む。刹那、放たれた呪弾は炎天狗の腕部関節へと吸い込まれた。量から言えば文字通りの焼け石に水だが、一点だけ留意すべき点がある。
「……よし、狙い通りだね」
 それは体積。弾丸一発分程度の水分であろうとも、蒸発すれば何倍にも大きく膨らむもの。況や、妖力を込めた呪弾であればなおのこと。刹那、小規模な水蒸気爆発が連続したかと思うや、内部より腕を吹き飛ばした。
 更には白い蒸気が相手の全身へ纏わりつくと急速に炎の勢いを減じさせ、最終的には動力源となっていた熾火を消し去ってしまう。がしゃりと崩れ落ちる焼け焦げた鉄騎の残骸。それを見た残りの個体は脅威度を修正したのだろう。俄かに攻撃目標を水怪へと変えてゆく。
『おや、何処に行こうというんだい……求煉、頼んだよ?』
 だが、そうはさせじとすかさずファンがカバーに入った。強引に両者の間へ身体を捩じ込ませるや、諸手を広げて敵軍を押し留めんとする。しかし柔軟に立ち回っていた先程と異なり、仲間を庇う為には足を止めざるを得ない。必然、炎天狗たちの攻撃を一身に受ける事となってしまう。
(警戒こそされるだろうが、相手に危機感を覚えさせない程度の振る舞いこそが肝要。今でこそ後ろで高みの見物を決め込んでいるけれど、あれだけ煽ったんだ。御自慢の得物を振るいたかろうさ)
 無論、ファンも尖であれば独力で離脱できる事など百も承知。彼女が乗機を矢面に晒すのも意図があっての事。後方で機体の修復に専念する四条院にとって、現状は自分たちが猟兵を押しているように見えるだろう。
 元々、傲岸不遜さが見え隠れする手合いだ。そうなれば警戒が緩むはず。尤も、その為にはより深く相手の油断を誘う必要があった。
(機が熟せば、炎刃が求煉を断つだろう……だが、その瞬間こそが唯一無二の好機)
 歴戦の猟兵とは言え一対八、腕の数で言えば更にその三倍を相手取ればそう長くは持たない。謝罪の念を告げると同時に、無数の赤熱刃が鉄騎を切り刻む。如何に流体金属と言えども、これだけの熱量を突き立てられれば無事では済まない。
 人型形態を維持できず、どろりと融解する求煉。しかし、機体は胸中に抱いていた友輩を敵陣目掛けて押し出しながら、己自身を使って炎天狗を絡め取る。こうなれば暫くの間は身動きできないはずだ。
「申し訳無いね、求煉。埋め合わせはまた後で……さぁ、一寸法師の鬼退治といこうか」
 斯くして白き刃は鎮座する紅の阿修羅目掛け、熱波渦巻く戦場を駆け抜ける。一方、機体を乗り捨て肉薄して来る猟兵を見た四条院は、のそりと暖気状態だった機体を覚醒させた。展開される五本の腕、そこに握られし物など今さら語るまでも無い。
『ふむ、まだ胸部砲門の修復は成らずと。まぁ良いでしょう。キャバリアに座しているのならば兎も角、生身で挑んで来るとは。先の「大風」と同じ感覚で挑むとは愚か極まりませんね』
 四条院とて、生身の猟兵が鉄騎を蹂躙する様を目の当たりにしているはず。その上でこの言い草はよほど技量と機体性能に自信があるのか。だが、それを増上慢で片付けるのは早計だ。それを為せるだけの腕と力を相手は確かに持ち合わせている。
「健全な精神は健全な肉体にこそ宿るものだけれど、何事も例外はあると言う事か」
 左右上下と真正面。都合五方向から赤熱刃が迫りくる。どちらへ飛び退いても被弾は必至。さりとて退けば待ち受けるのは拘束を脱した八機の炎天狗。正に進むも地獄、退くも地獄と言った有り様だ。しかし、ファンの歩みが鈍る様子は微塵も無い。何故ならば……。
「――仕損じれば次は無いだろうからね。どれかが欠ければ更にバランスも崩れるだろうし、ここはチャンスを逃さず撃てるだけ撃ち込んじゃおう」
 すぐ背後を追従する仲間の存在を知っていたからである。思い切り横へと飛び出しながら、スゥと流れる様な動作で拳銃を構える尖。狙うべき箇所は先の攻防で特定済みだ。彼女は照準を定めると、立て続けにトリガーを引き絞り呪弾を叩き込む。
(出来れば腕の数は二本まで減らして累音の金聖と対等にしたかったけど、ちょっと難しそうかな。まぁ、残りは他のお仲間に任せようか。それに、例え何本腕が有ろうとも関係ない)
 ――阿修羅程度じゃ、あたいは仕留められないよ
 思えば、彼女の性質は眼前の敵とは正対称だ。火に対する水、剣に対する銃。そして死を以て事を為さんとする武者と、生ある限り最善を尽くさんとする意志。それらの総算はいま此処に、腕部の破壊と言う形で結実した。関節内部をズタズタに破壊され、フッと手にした刃が消失する。
『な、ァ……また、してもぉッ!?』
 再びの喪失。四本となったマニピュレータを目の当たりにした四条院から冷静さが失われ、更には機体の重心が乱れた事で必殺の斬撃に間隙が生じてしまう。その僅かな隙間を潜り抜け、敵機の元まで辿り着いたファンは徐に相手の脚部を抱え込む様に手を回す。
「今より見せるは怪異なる勇力、鬼神の悖乱。そちらが阿修羅を嘯くならば、人ならざる膂力、とくとご覧あれ」
 果たして、五メートルにも及ぶ鉄塊が|浮いた《・・・》。軸足を地面へ穿ち、それでも足りぬ分は求煉の残渣で補強しながらも、白き刃は益荒男も斯くやという剛力を示す。常人では実行不可能な大理不尽を前に、取り乱した四条院も迎撃は愚か、受け身姿勢すら取る事が出来ず……。
「鉄騎は砕けずとも、中身はそうはいくまい。幾ら道具が強かろうと、使い手が軟では戦いは務まらないよ?」
 巨大なクレーターを生み出しながら、凄まじい勢いで大地へと叩きつけられるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
元より容喙する気は無し。
あの真紅の機体に帯刀殿を陥れた者が乗り、兵乱を巻き起こそうという。

然らば、やるべき事はひとつ。


一度、帯刀殿に通信を。

自らが討つ事に拘りは無いと申されたが、それでもせめて一太刀、会稽の恥を濯がんという思いも有るかと愚考します。

まず私が参ります故、同じ方向から仕掛けて頂きたい。
告げた後は納刀し、四条院殿の元に向かいましょう。

当方、鞍馬景正。
その灼剣、馳走願いたい。

そのまま歩み寄り、敵の動く兆しあれば抜刀。
八双に担いで打ち下ろし、触刃――良し。

後は打ち負け、身ごと溶解させられぬよう結界術を励起させつつ、剣圧に吹き飛ばされましょう。

そのまま帯刀殿が斬り込んで下されば、策は成ります。
如何な得物も、"腕が斬られていれば"満足に扱えますまい。

……いつ斬ったか?
ある名刀にて斬られた者は、自分が死したる事に気付かず、暫くして斃れたという話がありますな。

それと同じで、抜き払った瞬間にもう腕に刃が届いていたと言えば?
以前、四条院殿がした事と同じようなものです。

――仍って勝負、件の如し


ロザリア・プライム
ハァ? そりゃ欲に爛れた熾火かい?
結構結構……だが一つ気に入らねぇ
その大した代物で胡坐をかいて、アンタ今まで何してた
この鉄火場を起こした本人が火の管理もしないで御高説たぁ……
|BBQ《戦場》で肉だけ喰ってる輩はガキか能無しって相場が決まってるんだよ

違うのか? だったら掛かって来いよ|四条院《クソガキ》
だっせえ|着火装置《ライター》振り回してな!

……等と徹底的に挑発、搦め手無しの真っ向勝負を演出する
プライドだけは天井知らずっぽいからね
こっちも|テンション上げてぶつかってやるよ《プラトニック・バニー》

恐らく講釈垂れながら最大出力の熾火を撃ってくる
そこが狙いだ。奴自身に地形を壊させ炎と煙で視界を潰す
で、近接戦闘向けのキャバリアなら馬鹿みたいに音を立てて探し回るだろ
それで居場所は分かる。後はT40の跳躍力を三倍にして操縦
トップアタックで制圧砲撃し|動きを止める《マヒ攻撃》
T40を旧式と侮ったな! ウサギは耳と脚が良いのさ! ヤハッ!

これでお膳立ては完了
さあカサネ、後は好きに|料理《介錯》しな!!


月白・雪音
…自らを戦の道具と定めるなれば其れも良し。戦の世ゆえに戦が止まれば生きられぬ命もまた在りましょう。

されど自らを武者と、武を抱く者と定めるならば否。
戦とは戦を終えた先、国と民が生きる世を作り護る手段の一つに過ぎません。
己を律すを忘れ戦を目的と違え、徒に戦禍を振り撒くは武に非ず。

其れが狂える機甲に蝕まれたが故なれば是非も無し。
我らが武を以て、その焔を払いましょう。


UC発動、残像にて接敵し見切り、野生の勘で攻撃を感知しグラップル、怪力の無手格闘にて相対


…帯刀様、僅かな間で構いません。刃を突き立てかの者の行動を制限する事は可能ですか?


相手の拘束が成功すれば突き立った刃を足場に敵機を真正面に捉え砲撃を誘い
落ち着き技能の限界突破、無想の至りを以て極限まで業を練り上げ
怪力、グラップル、及び残像の速度を生み出す脚力を上乗せした最大速度、最大威力の一撃を以て爆炎が迸るより疾く胸部砲口を『蹴り貫く』


…折れぬ刃を宿すはこちらも同じ。
帯刀様、此度の戦の因縁は貴女のもの。
故に戦の幕を引くは貴女の刃に任せましょう。



●再び立つ者に軍配は上がりて
『ご、ふッ!? 何故だ、何故こうなった? 一度ならず二度までも熾火の腕を断たれたばかりか、あまつえさえ泥に塗れさせるなど……!? これまで、全てが順調だったというのに!』
 当初は仏像めいた峻厳さを誇っていた紅の阿修羅。しかし度重なる戦闘によって六腕のうち二本は寸断。装甲は歪み剥ぎ取られ、その威容に大きな翳りを見せていた。更に鉄騎の奥深くに座す四条院もまた無事ではない。強烈な衝撃によって全身を打ち据えられ、口からは苦痛の呻きと共に呪詛が流れ落ちている。
 何故、何故、何故。どこから間違えたのか、何を誤ったのか。機体を起こしつつ視線を巡らせた先に見えたものは、太刀と刃槍を携えし鉄騎だった。一度は己の手で打ち砕いたはずの得物を後生大事に抱え込み、あまつえさえ此度の躓きを起こした元凶。
『四条院……』
『帯刀、貴女さえ居なければ……あの時、得物だけでなくそのまま切り捨てておけばッ!』
 怨嗟の言葉を吐きながら、阿修羅は残った四腕に赤熱刃を展開する。そうして眼前の身の程知らずを屠るべく挑み掛かろうとする男に対し、三つの人影が立ちはだかった。
『ハァ? 随分とまぁボロボロになっちまって、そりゃ欲に爛れた熾火かい? 結構結構……だが一つ気に入らねぇ。何故こうなったかって? そもそも、その大した代物の上で胡坐をかいて、アンタ今まで何してたんだ』
 一人は戦場を跳ね回る|傭兵兎《ロザリア》。引き続き武骨な砲戦機のシートに身を預けながら、草食獣らしからぬ獰猛な笑みを浮かべている。元々軍隊に所属していた彼女にとって、相手のやり口は余りにも|素人《noob》に過ぎた。
『この鉄火場を起こした本人が火の管理もしないで御高説たぁ、随分と良いご身分だな……|BBQ《戦場》で肉だけ喰ってる輩はガキか能無しって相場が決まってるんだよ』
「……例え如何なる手合いであろうと、元より容喙する気は無し。その真紅の機体に帯刀殿を陥れた者が乗り、兵乱を巻き起こそうとしている。然らば武家に連なる者として、やるべき事はただひとつ」
 仲間の言葉に相槌を打ちながら、藍染の甲冑に身を包んだ|若武者《かげまさ》もまた殺意に応じ己が得物を抜き構える。勝てば官軍、負ければ賊軍。極端だが、ある意味でこの世の真理だろう。しかし、士分にはそれでも超えてはならぬ一分がある。それを土足で踏み躙った手合いを許容する気など、青年には毛頭ない。
「そうした謀略の先に臨む果てが、更なる戦乱とは……自らを戦の道具と定めるなれば其れも良し。戦の世ゆえに戦が止まれば生きられぬ命もまた在りましょう。されど自らを武者と、武を抱く者と定めるならば否」
 そして、武と言う領域においては|白き虎《ゆきね》もまた一家言を持つ身だ。ただ餓えたる獣であれば、闘争に耽溺するのも是としよう。だが、それを律する側に立つのならば話は別である。
「戦とは戦を終えた先、国と民が生きる世を作り護る手段の一つに過ぎません。己を律すを忘れ戦を目的と違え、徒に戦禍を振り撒くは武に非ず。其れが狂える機甲に蝕まれたが故なればもはや是非も無し」
 ――我らが武を以て、その焔を払いましょう。
 雪音の言葉に景正とロザリア、そして帯刀が応じてそれぞれ臨戦態勢を取ってゆく。そんな敵対者たちの凛然とした立ち振る舞いが癪に障ったのだろう。爛と三対六つの瞳を揺らめかせ、全身から怒気を立ち昇らせながら仁王立つ。
『無能だの何だのと、先ほどから随分と好き放題に言ってくれますね……!』
『おや、違うのか? あんまりにも稚拙に見えたんでな。だったら掛かって来いよ|四条院《クソガキ》。だっせえ|着火装置《ライター》振り回してな!』
 徹頭徹尾、相手の神経を逆撫でする挑発の数々。無論、ロザリアとてただ罵詈雑言を並べ立てている訳では無い。相手の気位が天井知らずに高いと見抜き、冷静さを失わせる為に敢えて過剰に煽り立てているのだ。
 俄かに鉄火の香りを漂わせる戦場に胸が高鳴る高揚感を感じつつ、この後に起こる展開を予想して砲戦機を前へと押し出す傭兵兎。そうして仲間が注意を引いている横では、若武者がそっと気取られぬ様に帯刀へと通信を入れていた。
「……帯刀殿。先ほど自らが討つ事に拘りは無いと申されたが、それでもせめて一太刀、会稽の恥を濯がんという思いも有るかと愚考します。僭越ながら、露払いの役目を務めさせて頂きたく」
「そういう考えであれば、私も助力いたします。帯刀様、本を糺せば此度の戦の因縁は貴女のもの。故に戦の幕を引くは貴女の刃に任せましょう」
 景正の申し出へ重ねる様に雪音もまた同意を示す。彼らは共に武の理、士の道を知る者である。彼女が立った理由は飽くまでも皇国軍の暴挙を止める為であり、自らの汚名を返上する事ではない。だが刃を戴く者である以上、勝利を希求するのは当然の感情。
 しかし、帯刀は恥の何たるかを知る武人である。そんな想いを押し殺し、己が役割を全うせんが為に、敢えて先の言葉を口にしたのだろう。であれば、その慎みに報いる事こそ武士の情けと言うものだ。続けて二人から何事かを告げられた彼女は、深々と頭を垂れてゆく。
『……重ね重ね誠に忝い。過分な配慮、痛み入る。今の私に返せるものは無きに等しく、貴殿らに助太刀なぞ必要ないとは承知の上。とは言え、何から何までお膳立て頂くのも不甲斐なさの極み。せめて、我が身命を以て恩に報いるのみ』
 そんな猟兵たちの気遣いに対し、帯刀もまた万感の想いを込めて礼を返す。そのやり取りは真に尊き交わりだが、此処は戦場であり今は果たし合いの最中。温かな空気を払い蹂躙する如く、強烈な熱波が軍港へと充満してゆく。
 その元凶は無論、紅の阿修羅である。

『機体の損傷は確かに浅くはありません。ですが、忘れたのですか? 修復に専念した事で、既に胸部砲門の機能は回復しています! 既に一敗地に塗れた者へ得物を振るうなど、寧ろこちらの格が落ちるもの。烈火に呑まれ灰燼と帰すが良いッ』
 ロザリアに煽り倒された事で遂に堪忍袋が限界を迎えたらしい。まどろっこしい事なぞしていられぬと、胴体部の装甲を開放。動力炉の熱量を全て集中させ、広範囲殲滅を狙ってきた。その威力、砲戦機に乗っている傭兵兎なら兎も角、生身の仲間たちを焼却して余りあるものだ。
『おっと、ちっとばかり煽り過ぎたか? 全く、これだから堪え性のないお偉方ってのは嫌いなんだよ! さぁて、絡めて無しの真っ向勝負と行こうじゃないか! こっちもテンション上げてぶつかってやるよ!』
 となれば、己の為すべき事など決まっている。砲撃を叩き込みつつ他の者らを庇う様に乗機を前に押し出した瞬間、視界が暴力的なまでの紅に塗り潰された。一瞬の間を置いて襲い掛かるは灼熱を孕んだ熱波と酸素の燃焼による大気のうねり。それらに蹂躙された戦場は埃と煙の深いヴェールの中へと沈んでゆく。
 果たして、幾分か明瞭になった視界の中に浮かび上がったのは――。
『ち、ぃ…………――――』
『ふ、ふふっ。まずはひとつ』
 前のめりに斃れ伏したタンクキャバリアの姿だった。自身を盾代わりとして、熱量を一身に引き受けたのだろう。原型こそ留めているものの全身から煙を立ち昇らせている。確実に仕留めた、そう確信した四条院はくつくつと愉快気に喉を鳴らす。

 だがそんな男の前に、新たな人影が姿を見せる。その身に纏うは、瓦礫を舐める炎の緋色と相反する深い藍色。常人ならば熱気に悶え苦しむであろう地獄の中を涼やかに歩みながら、若武者は凛とした眼差しで敵手を見据えてゆく。
「当方、鞍馬景正。義によって帯刀殿へ助太刀すべく、戦場へと馳せ参じた次第なれば。同じ武士としてその灼剣、一手馳走願いたい」
『良いでしょう。仲間の末路を目の当たりにした上で、生身のまま我が熾火の前へと立った心意気に敬意を表します。ええ、例えそれが伊達や酔狂であったとしても、ね。ご安心を、今度は小細工など弄しませんので』
 猟兵を一人打ち取った事で機嫌を良くしたのか。景正の問いに四条院は鷹揚に応じて見せた。無論、それは油断を意味するものではない。現に先ほど、手弱女と侮った相手に機体ごと投げ飛ばされたのだ。残る四腕に赤熱刃を展開し、一切の躊躇なく猟兵の蛮勇を斬り捨てんとしている。
(乗って来ましたか。唯一の懸念は誘いを蹴られて砲撃を浴びせられる事……ロザリア殿のお陰でそれを回避出来た以上、事の如何は己が技量のみ)
 相手の一挙手一投足に目を光らせながら、青年もまた己の得物を鞘走らせてゆく。それは刃長三尺五寸、豪壮として沸豊かな大太刀。一太刀にて鎧武者を騎馬の鞍まで断つ事から、鞍切正宗と銘ぜられし業物だ。
 彼はゆっくりと彼我の距離を詰めながら、刃を八双に担ぐ。身の丈は三倍、得物は四倍、貫目についてはどれ程か。余りにも大き過ぎる差を前にしても尚、景正の相貌に怯懦の色は微塵も無い。果たして、両者の間に殺気がピンと張りつめ、そして。
「いざ、尋常に……」
『勝負ッ!』
 藍色の若武者と紅の阿修羅、双方とも同時に動いた。景正の打ち下ろしに対し、四条院は袈裟と逆袈裟、突き、一文字を織り交ぜた多重斬撃を繰り出してくる。文字通り手数の差を活かした同時攻撃。相手としては当たりさえすれば必殺なのだ。である以上、必中を期すのは必然。
 しかし、対する青年の考え方は違う。彼は端から攻撃を避けようなどと考えていなかった。
(不惜身命、と言う訳ではありませんが。切っ先三寸触れさえすれば、こちらの目的は達せられる。である以上、今は武士の三忘に倣うだけのこと)
 触刃――良し。
 鋼から掌へ伝わる感覚によって景正は確かな手応えを掴む。だが、防御を捨てた一刀の代償は大きかった。一閃、二閃は凌げども、続く斬撃に得物をかち上げられ、トドメの横一文字で胴を薙ぎ払われる。
「ぐ、む……!?」
『これで、二つッ!』
 甲冑に彫り込まれた方術による結界を展開するも、質量の差だけはどうしようもない。青年の足が宙に浮いたかと思うや、そのまま剣圧によって吹き飛ばされ、為す術もなく瓦礫の中へと埋もれゆく。辛うじて両断は免れたとはいえ、肉体への甚大な損傷は免れなかった。

 仲間が立て続けに打ち倒される光景を目の当たりにし、流石に単騎で当たるのはリスクが高いと判断したのだろう。雪音は敵と相対しながら、女武者へと声を掛ける。
「剣道三倍段とはよく言いますが、この場合は更にその三倍あっても足りるかどうか。申し訳ありません、帯刀様。僅かな間で構いません。刃を突き立てかの者の行動を制限する事は可能ですか?」
『是非もない! 例え齧りついてでも止めて見せる!』
 地を蹴って駆け出した白虎を横から追い抜き、帯刀の駆る金聖が熾火へと挑み掛かってゆく。これまで双方ともにお互いの様子を窺っていた為、こうして直接刃を交わすのはこれが初めてだ。四条院は鉄騎の両手に握られた刀槍を見て、嘲りの言葉を零す。
『よもや、へし折った刃をその様な形で再利用するとは。新たな武具を用意する金も、大太刀に鍛え直す伝手も無かったと言う訳ですか。没落した者のいじましい努力に、愚かしさを通り越していっそ憐みすら覚えますね』
『その認識のままで結構。下手に正す余裕など端から無い。慢心であろうと油断であろうと、付け入る隙は全て利用させて貰う!』
 先ほど若武者を一蹴して見せた連閃が今一度振るわれる。対する女武者は菊池槍『早船』を薙刀代わりに振るってその内の二刀を弾きつつ、距離を詰めて片手太刀『荒凪』で三刀目を握る腕を打ち払う。
 そして最後の四刀目、大上段からの斬り降ろしに対しては装甲を頼みとして受け止めた。これまでであれば容易く溶断されていただろうが、猟兵たちの手によって材料段階から大きく変更されているのだ。手塩に掛けて修繕されたその結果に、彼女は身を委ねたのである。
『ッ、この刃を以てしても断ち切れない……!?』
『捕らえたぞ! だが、そう長くは持たん! 月白殿、今の内に!』
 果たして、距離をゼロとした帯刀ががっちりと阿修羅へ組み付いた。相手も藻掻きながら更に斬閃を重ねるも、金聖がたじろぐ様子はない。女武者の叫びへ瞬時に反応した雪音は、獲物を狩る獣の如く鉄騎を足場として高々と駆け上がってゆく。
「感謝します、帯刀様……折れぬ刃を宿すはこちらも同じ。練り上げた業の冴え、ひとつ御覧に入れて差し上げましょう」
 トンと装甲板を蹴って飛び上がると、六つの瞳越しに操縦者の殺気が肌身を刺す。しかし只人ならば震えあがる様な眼光さえ、彼女の心をさざめかせる事は出来ない。澄み切った氷、水面の月、無想の境地。ただどこまで揺るがぬ精神を以て、雪音は爪先へと全ての威を乗せる。それを目の当たりにし、四条院は思わず声を上擦らせる、が。
『不味い、このままでは……とでも、言うと思いましたか?』
 一転、その言葉尻には余裕の色が浮かぶ。阿修羅は四腕で逆に金聖を拘束し返すや、胸部装甲を開放させた。その砲口奥深くへ視線を走らせれば、火山の頂が如く煮え滾る焔が渦巻いている。
『残念ですが、既に砲撃用の熱量は最充填が済んでいましてね。さぁ、諸共に吹き飛ばして差し上げましょう!』
 これぞギリギリまで隠し持っていた奥の手。もし放たれればその時点で『詰み』だ。だが、そんな事など白き虎には関係ない。一意専心、ただ己が為すべき事を果たすだけであり。
「我も人、彼も人。であればこの蹴撃、穿ち貫けぬ道理もなく」
 ――これこそが人間業の究極なれば。
 果たして、大小二つの影が交錯した。雪音の最大最速の一撃は砲撃直前の砲門を修理不可能なレベルにまで蹴り砕く。余りの威力にぐらりと身体を傾がせる紅の阿修羅。だが、行き場を失った熱量は内圧によって胸部装甲を吹き飛ばし、行き場を求めて躯体の外へと溢れ出す。そうなれば当然、至近距離に居た猟兵も無事では済まない。
「……ッ!」
 結果、白虎は炎と衝撃に呑まれ、弾かれた様に吹き飛ばされてしまう。直撃を喰らった場合に比べればまだマシではあるが、受けた手傷は決して浅くはなかった。何とか着地に成功するも、思わず膝から崩れ落ちる。
『最後の最後に一矢報いた、と。ええ、確かに手痛い一撃です。躯体内部もあちこちが焼け焦げています……ですが、それだけ』
 一方、四条院と阿修羅は損傷を負ってこそいるが未だに健在だった。二本の腕を失い、胸部砲門は使用不能。あちこちにも機能低下が見受けられるが、それでもまだ戦闘可能である。そして、残る敵は一度破った事のある帯刀ただ一人。
『惜しい所まではいけた、それは認めましょう。しかし、此処まで。これが誉れを喪った貴女と総大将にまで登り詰めた私の差です』
 もう、己の優位は揺らがない。後は忌々しい鉄騎を女武者ごと切り刻んでお終いだ。せめて最後に身の程知らずの顔を拝んでやろうと、四条院は帯刀へと通信を入れる。そうしてモニター越しに映っていた表情、それは。
『ああ、そうだ。これが……一人きりのお前と、肩を並べる戦友を得られた私の差だ』
 ――勝利を確信したものだった。

『負け惜しみを、いや、これは……?』
『イィ、ヤァァアハァァアアアアアアッッッ!』
 相手の反応を訝しんだ瞬間、奇声を上げながら何かが勢いよく|跳ねた《・・・》。ハッと頭上を見上げた見上げた男が見たモノは、四角い箱に手足が生えたシルエット。その正体は他でもない、今まで半壊し機能を停止していたロザリアの|タンクキャバリア《T40》だ。
『T40を旧式と侮ったな! ウサギは耳と脚が良いのさ! アンタがベラベラと講釈を垂れ流したせいですっかり目が覚めちまったよ! ヤハッ!』
 呆気に取られる阿修羅に対し、傭兵兎はこれまでの鬱憤を晴らすかの如く立て続けに砲弾を叩き込んでゆく。その機動力は正に兎だ。戦車の重量を感じさせぬ軽快さを以て、四方八方上下を問わずに攻め立てる。トップアタックからの制圧砲撃を受け、機体が激しく揺さぶられるに至ってようやく四条院は我に返った。
『ウララララララッ!』
『ッ、死に損ないが今さら起きた所で……!』
 始めこそ面食らったが、幾ら運動性が挙がった所で元は戦車。冷静に対処すれば追い切れぬ速さではない。阿修羅は左右の水平一文字を繰り出す事で敢えて砲戦機を跳躍させ、残る二刀を以て身動きの取れぬ空中で仕留めんと試みる。果たして目論見通り、赤熱した刃が敵機へと伸ばされ――。
『なに言ってんだ、その死に損ないに一杯食わされてた間抜けがよ!』
 ズルリ、と。まるで騙し絵のように、伸びきったマニピュレータが左右にズレた。見間違いか、さもなければアイカメラの故障か。否、それらは確かに断ち切られているのだ。侮蔑混じりに叩き込まれた榴弾に吹き飛ばされた二本の腕を目の当たりにしても、四条院はまだ現実を受け入れる事が出来ない。
『な、なんだ、これは。いったい、いつ斬られた? いやそれよりも、誰に?』
「……いつ斬ったか? 答えるならば先程と言う他もなし。ある名刀にて斬られた者は、自分が死したる事に気付かぬまま歩き回り、暫くして斃れたという話がありますな」
 零れ落ちた問いに応じる声がある。ゆっくりとそちらを見やれば、瓦礫に背を預ける景正の姿があった。口の端から血を伝わせながらも、その相貌には不敵な笑みが浮かびゆく。
「それと同じで先に太刀合った際、抜き払った瞬間にもう腕に刃が届いていたと言えば? 以前、四条院殿がした事と同じようなものです」
 ――如何な得物も、"腕が斬られていれば"満足に扱えますまい。
 その言葉に秘められた真意を理解した瞬間、四条院の全身から冷や汗が噴き出る。あの勝負から既に腕は断ち切られていた。その恐るべき技量だけでも戦慄に値するが、それ以上に相手は何故その事実を今の今まで黙っていたのか。倒した筈の機体がどうして動いているのか。いや、そもそもとして。
(どこからだ……どこから、奴らの策は始まっていた!?)
『ハッ、何が何やら理解できないって面だな……なぁ、陰険野郎。なんでわざわざ私がこれ見よがしに煽り倒したんだと思う? さぁ、ネタ晴らしの時間だぜ!』
 引き続き砲撃を続けながら、ロザリアは通信を繋いでゆく。そう、始めから全て計算の内だったのだ。傭兵兎が相手を挑発する事で砲撃を誘発させたのも、若武者が己の身と引き換えに腕部を断ったのも、白虎が胸部砲門を破壊したのも。全て猟兵たちが狙い澄まして布石を打った結果である。
『お仲間がどっちも白兵戦寄りだったからな。まずは一番頑丈な私が砲撃を打たせなきゃ始まらなかったって訳さ!』
「そう考えると、先ほどは少しばかり危なかったと言えます。本来であればもう一手早く動き、第二射を打たれる前に下準備を終える手筈でしたから」
 仲間の言葉に頷く雪音。全身のあちこちが焼け焦げながらも、意識を保っているのは鍛え上げた肉体故か。ロザリアが稼いだ時間を以て阿修羅の腕を減らし、砲門を潰す。時間との勝負だったが、彼らは成し遂げたのだ。斯くして、四条院は自身の身に何が起こっていたのかを把握した。だが、その表情には未だ疑念が渦巻いたまま。
『私は掌の上で踊らされていた、それは理解しました。しかし、まだ解せません。何故、このような回りくどい真似を……?』
『ハァン? おいおい、ここまで話してまだ分かんねぇのかい? 全く嫌だね、野暮なヤツは。こんな国の生まれなのに粋や人情ってもんを理解してねぇ。んなもん決まってんだろ』
 ――|親善試合の仕切り直し《リベンジマッチ》さ。
 猟兵の目的は最初から口にされていたのだ。会稽の恥を濯ぐ、幕引きは任せる、と。斯くして此処に場は整った。銃砲を潰され、通常の鉄騎と同じく二腕となった『熾火』の前に、帯刀の駆る『金聖』が仁王立つ。
『これでお膳立ては完了。さあカサネ、後は好きに|料理《介錯》しな!!』
『……応とも』
 戦友に送り出され、四条院と相対する帯刀。奇しくも、両者の姿はあの日の真逆だ。策によって頼みの腕を失った者と、多くの支えを受けて立つ者。ただ一つ異なるとすれば、此処から先は小細工なしの手出し無用、真の真剣勝負だと言う点である。
『ふ、ふふっ。これでは、私はただの道化ですね。さぞ良い気分でしょう、帯刀殿』
『四条院……正直に言えば、私はもうお前をそこまで恨んではいない。一度心をへし折られ、諦念に沈みはした。しかしだからこそ、私はより武人として強くなれたのだと思う。皮肉抜きに礼を言わせて貰いたい』
 自嘲する男へ、女武者は静かに両の得物を構えゆく。その姿勢には些かの油断も慢心も無い。裏を返せばそれは、相手を全力で挑むに足る相手だと認めているが故。そんなどこまでも武骨な姿勢に毒気を抜かれたのだろうか。四条院の口元に苦笑が浮かぶ。
『やはり、貴女とは相容れぬ様です。さぁ、もはや言葉を交わす必要も無し。いざ尋常に……』
『ああ、勝負と参ろう!』
 分かたれた太刀と菊池槍、赤熱の双刃。お互いにそれぞれの得物を振り抜いてゆく。実力が伯仲した者同士であればある程、決着には時間が掛からぬものだ。暫しの後、その勝敗を認めた景正は賞賛と共に太刀合いを締めくくる。
「お見事です、帯刀殿。此度の騒動が結末、確かに見届けさせて頂きました」
 ――ただ一言、『仍ってこの勝負、件の如し』、と。
 
 斯くして、秋津洲皇国で発生した騒乱は此処に終息を見た。
 他国への侵攻は阻止され、思考を歪められた武者たちもいずれは正気に返るだろう。
 皇国軍の喪った戦力は極めて甚大だが、元より外界から攻め込まれ難い土地である。
 時間を掛けて、きっと正しき士道に立ち返った集団として再編されるはずだ。
 そうして猟兵たちは汚名を雪いだ武人へ別れを告げると、それぞれの帰路につくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月14日


挿絵イラスト