桜、さくら――|あいぼう《 しんゆう 》と、いっしょ。
それは、ある春の日のこと。
いつもの如くじゃれ合うかのように、互いに遠慮しない仲良しな|相棒《 親友 》と、万年桜咲く世界を歩いていた樹神・桜雪(追憶の不断桜・f01328)であったが。
ふと一瞬首を傾けてから、足を向けてみることにしたのだ。
この場所にあったかどうか、記憶にはなかったのだけれど……春のお祭りが賑やかに催されている、神社を見つけて。
そして――真っ赤な神社の鳥居を潜れば。
「……!」
刹那、ぶわっと風が巻き起こると同時に、目の前がただひたすら桜色に染まって。
桜花弁の嵐がようやくおさまった……かと思った、その時。
「ピ……!?」
|相棒《 親友 》の肩にちょこんと乗っていた可愛いシマエナガのハクは、思わず鳴き声をあげてしまう。
だって――5さいのちびっこになっていたのだから。一緒にいる、桜雪の姿が。
いや、桜雪だけではない。
よくよく見てみれば、ハク自身もちびっこ雛エナガに……!?
そんな、何故かぴよぴよな雛エナガになってしまったハクであるが、ちびっこになったのは見た目だけ。
けれど……どうやら桜雪は、姿だけではないらしい。
いつものように、ポヤポヤなのは変わらないのだけれど。
「あ……」
「ピィ!?」
急に、とてとて、すたたたーっと走り出す5さいの桜雪くん。
そしてまた急に止まって、じいと見つめるのは、綺麗な石が並んだ出店の鉱物やさん。
それから瞳をキラキラさせて、暫くほわほわと石たちを眺めていれば。
出店のお兄さんが、売り物にはならないくらい小さいけれど、綺麗な白とピンクの石をひとつ、サービスでくれて。
のんびりとはしているものの、すっかりうきうき、ご機嫌になる桜雪くん。
そんな姿に、ハクは少しほっこり……していたのだけれど。
「ピピッ、チィ!?」
大事に石をしまった瞬間、今度は急に、ぴょこんぴょこんっ。
えいえいっと、ジャンプ!
はらはらと舞う桜花弁がとてもきれいだったから……ひとひら、つまえたくて。
そしてそんな思わぬ5才児の動きに、ハクは彼の肩から思わず、ぱたぱたと一瞬離れたのだけれど。
でも、なかなか花弁をうまくつかまえられなくて、ちょっぴりしょんぼりしていた……かと思いきや。
5さいの興味は、くるくるとかわるから。
「チィ!?」
目を離した一瞬、いつの間にか忽然と消えている桜雪くん。
そして慌てて、迷子になってしまった桜雪くんをピヨピヨと探すのだけれど。
何せ、今のハクも、ちびっこ雛エナガ。
一生懸命よちよちとことこ、頑張ってちいさな羽をぴよぴよぱたぱた。
悪戦苦闘しつつも……ハクは何とか、5才児の|相棒《 親友 》の姿を発見する。
美味しそうなチョコバナナやリンゴ飴、焼きトウモロコシなどを売っている屋台が並ぶ、神社の境内で。
そして内心ホッとしつつ、ちまっとまた肩にとまって。
「チィ! ピィピピィ!!」
いきなり消えたことに、容赦なく抗議するハクだけれど。
「ボク、ちょこばなながたべたいな……」
チョコバナナと聞けば、様子は一変。
ポヤポヤ言った桜雪くんを急かすように、お財布が入っているポケットを示してから。
「ピピィッ、チチ!!」
わくわくと、自分にもくれと、めっちゃ自己主張。
そして、ちっちゃくなっているお口やくちばしで、ツンツンもぐもぐ。
甘いチョコバナナを仲良く一緒に、はむはむと食べ終われば。
さっきちょっぴり怒られたこともすっかり忘れて、とことこ、てててーっと。
また急に、桜雪は駆け出して。
「ともこうろし……とうころもし、ひとつ、ください」
ほわほわキラキラ、次に買ったのは、香ばしくていい匂いの焼きトウモロコシ。
そしてうきうきそわりと、焼きトウモロコシを受け取れば。
「あっ、ボクの、とらないでよ」
「ピピィ、ピヨッピヨ!」
ちょっぴりそうお互いに言い合ったりしながらも、ちょっぴり疲れちゃったから。
見つけた近くのベンチに、ちょこりと座って。
何だかんだ、やっぱり焼きトウモロコシも、ふたりで仲良く半分こ。
それから、足をぷらぷらさせながらも、ほわぁと。
綺麗な桜舞う高い高い空を、うんと見上げていた桜雪くんだけれど。
つんつん、と、ふいに雛エナガなハクにつつかれて。
こてりと首を傾げつつも視線を向ければ、瞬間、わぁと瞳をキラキラ。
ちっちゃくなった|相棒《 親友 》が、チィとひと鳴き、仕方ないなと言ったように。
くちばしでちょこりとつまんで、差し出してくれたから。
はらり、ひらり、さっきはつかまえそこねた、きれいな桜花弁のひとひらを。
そしてふたりはまた、とてとて、ぴよぴよ、歩いてまわる。
桜、さくら――不思議な春のひとときも、|あいぼう《 しんゆう 》といっしょに。
成功
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