Plamotion Fixing Actor
●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
それはプラスチックホビーを作り上げ、自身の動きをトレースさせ、時に内部に再現されたコンソールを操作して競うホビースポーツである。
思い描いた理想の形を作り上げるというのならば、たしかに『プラクト』は心・技・体を兼ね備えたスポーツ。
プラスチックホビーを作り上げ、フィールドに投入し自分自身で動かす。
想像を育む心、想像を形にする技術と、想像を動かす体。
そのいずれもが欠けてはならない。どれか一つでも欠けたのならば、きっと勝利は得られない。
『プラクト』のフィールドは主に模型店や大型量販店に設置され、巨大なスクリーンにおいてフィールド内の戦いを観戦することができる。
縦横無尽に駆け抜ける人型ロボット、美少女プラモデルにカーモデル、クリーチャー、艦船や飛行機。
ありとあらゆるプラスチックホビーが『プラクト』の間口として存在しているのだ。
『プラクト』アスリートたちは、己の造り上げたプラスチックホビーに内蔵された『ユーベルコード発生装置』によって、自在にプラスチックホビーを動かし、時に笑い、時に涙し、時に額に汗を流し、時に友情を育む。
●そして、ある所に
金持ちのセレブ『ゼクス』という者ありけり。
彼は小学生であったけれど、両親は巨大企業『株式会社サスナーEG』の社長と副社長。
そう、巨大企業『株式会社サスナーEG』は『五月雨模型店』の斜向かいに巨大な自社ビルを建築したことで有名である。
商店街にそびえ立つバベルの塔の如きビル。
壮麗であったけれど、正直に言うと商店街に何も立てなくてもいいじゃないかと思う。
そんな『株式会社サスナーEG』は、『インセクト・ボーガー』や『鉄球バスター』といった明らかにプラスチックホビーの範疇を超えた性能を持つホビーを生み出す新興企業。
その収益はとんでもなかった。
だから、というわけじゃあないけれど金持ちセレブ少年である『ゼクス』は、それはもうステレオタイプの御曹司だった。
「おい、さっさとゲート処理終わらせておけよな。それ終わったら、次はミキシングビルド用のパーツの激選だ。ああ、塗料の撹拌もやっとけよ。この間、エアブラシのカップに金属顔料が残ってた。ちゃんとオーバーホールくらいしとけってんだよ」
模型趣味を嗜む者が聞いたら卒倒しそうなあれである。
とても面倒な作業は、全て金で雇ったモデラーたちに任せ、自分は指示を出すだけ。
もしくは楽しい作業しかしない。
それも飽きてしまえば、完成まで金に物を言わせて行わせてしまうのだ。
「あ~そういえば、『プラモーション・アクト』つったか……なんか、最近PV動画見たっけ……美少女プラモのやつだったような……」
『ゼクス』少年は、最近アスリートアースを賑わせている、非公式競技の一つ、通称『プラクト』が流行り始めていることを思い出した。
自分の両親の会社の商品も『プラクト』に使用するために過剰な性能を持たせていると聞く。
PV動画のいくつかは実際の見目麗しい選手とコラボしたものであったり、または試合の様子のダイジェストだったりと様々だ。
確かに面白そうだ。
けれど、これまで『ゼクス』少年は何でもかんでも金で解決してきた。
今回もそうしようと思いついたのだ。
「札束でぶっ叩けば、大抵のやつはどうにか出来るってもんだよな。金で連中を操れば……クククッ、こんなPV動画よりも派手なことができるはずだ! それにパパとママの会社もチームを持っていたよな。よしっ、アイツらにやらせよう――!」
●幸せな夢を見る
ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は困惑していた。
彼女のスマートフォンにメールが届いている。それはいい。メールが来ることは当然だ。送受信が滞りなく行われている証拠だ。
しかし、その件名が。
「『八百長試合に見せかけた真剣勝負のご案内』……なんです、これ?」
ナイアルテは、所謂スパムメール的なあれかと思ったのだが、内容を見てからでも遅くはないとメールの本文を開いてみる。
すると、そこにはなんというか、折り目正しい内容が連なっていた。
「『五月雨模型店』
マネジメント部 ナイアルテ様。
いつもお世話になっております。『株式会社サスナーEG』の『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』 』 と申します。
先日も弊社のダークリーガーとの勝負、真にありがとうございます。
本日は八百長試合の八百長についてご案内させて頂いております。
困惑されるのも承知の上ですが、私どもは弊社の御曹司『ゼクス』様より、『プラクト』試合における八百長を持ちかけられおります。
ですが、我々と致しましては、勝利こそが金銭に勝る報酬であると理解し、またスポーツマンシップを胸に誇りを持って戦っている、という自負があります。
我々はこれを突っぱね、スポーツを愚弄する行いをする『ゼクス』様』を誅することも考えましたが、それは簡単なことです。
そんな腐った性根を持つ『ゼクス』様でも、我が社の御曹司。
ならば、勝敗を超えたスポーツの素晴らしさを知って頂くことこそ、勝利と同じくらいに価値のある事であると思うのです。
故に、共に最高の試合をして『ゼクス』様を共に改心させて頂きたいと思うのです。
お忙しいところお手数をおかけいたしますが、ご一考のほどの何卒よろしくお願いたします。
颯爽菱子」
この文面を受け取ったナイアルテは困惑していた。
自分のメールアドレスをダークリーガーが知っていたこと。そして、メールの内容にも、だ。
本来、ダークリーガーは勝利に最も拘る者達である。
下手を打てば彼等は八百長を持ちかけた者を殺してもおかしくない。
あえて八百長を受けて欺き、逆に真剣勝負のスポーツの素晴らしさを見せつけて改心させたいというのだ。
「……えぇ……」
何がなんだかわからないが、これは良い方向に道が進んでいく、ということなのだろうか……?
八百長をただし、真剣勝負の素晴らしさを見せつける為にダークリーガーと戦う。
それ自体は良いことのはずなのだが、ナイアルテはなんか釈然としない。
けれど、猟兵たちにまずは相談しなければと、早速グリモアベースへと向かうのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアスリートアースにある未だ公式競技化されていないスポーツ『プラクト』のチーム『五月雨模型店』を救うシナリオになります。
※『プラクト』は正式には『プラモーション・アクト』と呼ばれるホビースポーツです。
フィールド内に自作したプラスチックホビーを投入し、アスリートの動きをトレースする『モーション』タイプと、操縦席を作り込んで操作する『マニューバ』タイプが存在しています。
主に『モーション』タイプはロボットや美少女プラモデル。『マニューバ』タイプは、カーモデルやミリタリーモデルとなっております。
●第一章
集団縁です。
金持ち坊っちゃんこと『ゼクス』が八百長を仕掛けてやったと思い込む中、ダークリーガー率いるダーク化『洗脳サッカー選手』の操る『鉄球シューター』(鉄球を繰り出すプラスチックホビーです)と戦います。
『五月雨模型店』のメンバーも一緒に戦ってくれます。
この章では、観客の目を引き、息を飲ませる華麗なプレイを見せた方にはプレイングボーナスが入ります。
またご自身が使うプラスチックホビーを語ることもも、華麗なプレイの内です。
●第二章
ボス戦です。
ヒートアップする試合。
いよいよダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』が登場します。
彼女は『インセクト・ボーガー』(昆虫型のモーター駆動のホビーです)を手繰り、さらにダーク化アスリートたちを率いて熱狂的な試合を繰り広げます。
お互い死力を尽くして、最高の試合を繰り広げましょう。
●第三章
日常です。
感動的な勝利で幕を閉じれば、ダークリーガーもアスリートたちも猟兵もノーサイド!
互いをたたえあう姿に金持ち坊っちゃんもすっかり感激して改心することでしょう。
ここからは金に物を言わせたプラスチックホビーフェスティバルです。
様々なプラスチックホビーが提供され、もちろん食事も振る舞われます。
思いっきりこのフェスティバルを楽しみましょう。
それでは、新たなるスポーツ競技『プラクト』を巡るダークリーガーと戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『洗脳サッカー選手』
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POW : ツンドラベア・シュート
自身の【体温】を代償に【ひとりでに動く全身が氷で出来た巨大熊】を創造する。[ひとりでに動く全身が氷で出来た巨大熊]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
SPD : 破天荒ドリブル
自身に【破壊の嵐】をまとい、高速移動と【破壊エネルギー】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 鳥籠のとりこ
敵より【多くの人数で包囲している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
イラスト:yata
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「んで? やることはいつもと変わんねーんだろ?」
『五月雨模型店』のメンバーである少女『アイン』が首を傾げる。
『プラクト』の試合をして、対戦相手をぶっ飛ばす。いつも通りじゃん! と彼女はあっけらかんとしていた。確かにいつもと違う雰囲気ではあるが、しかし己の力の限り戦うという点においては彼女の言う通りであった。
「しかし、八百長を仕掛けるとは……アスリートの風上にも置けないですね!」
「うむ! 金を駆けるのならばプラスチックホビーにじゃんじゃん使うべきだと俺は思うな!」
『ツヴァイ』と呼ばれる少女と『ドライ』と呼ばれる少年が八百長を仕掛けてきたという『株式会社サスナーEG』の御曹司である『ゼクス』に対して眉根を潜めて声を荒らげていた。
それもそうだろう。
ここはアスリートアース。
スポーツの勝敗こそが全て。
なのに、金で何かを解決しようというのは、最も邪道であったからだ。
「で、ででででも、いいんでしょうか? いつも通り、で」
『フィーア』と呼ばれる少女が自分たちのプラスチックホビーであるロボットの機体を持ち込んで相対する『株式会社サスナーEG』のダーク化アスリートたちを見やる。
これが罠だということも考えられるのだ。
けれど、それを確認している暇はない。そんなことをすれば、仕掛け人である『ゼクス』に八百長がうまくいっていないと言って感染をやめてしまうかもしれない。
そうなっては、全てが水の泡だ。
「いーんだって! いつも通りだ! じゃあ、行くぜ!」
『アイン』たちは己の機体をフィールドに投入し、操縦パーティションで叫ぶ。
対する『洗脳サッカー選手』たちの操るホビーが『鉄球シューター』。鉄球を打ち出すホビーで、油断はならない。
故に、彼女たちの心にはアスリート魂が、『プラクト』魂が燃え上がるのだ。
いつも試合に臨んでは、心に喜びを。
このホビー・スポーツに出会えた喜びと共に彼女たちは叫ぶ。
「『レッツ・アクト』――!」
イリスフィーナ・シェフィールド
お金に糸目をつけないなら真っ当に派手なPV作れば良いのでは?
何が楽しいのか理解いたしかねますわ
でもお金でルールの中で優位な環境を作るのは悪くないと思いますの
で模型店スタッフの方にお願いして自分そっくりなプラスチックホビーを作るのとトレーニングのお手伝いをお願いしたいですの
モーションで動かすなら自分そっくりな方が動かしやすい気がしますし愛着が持てますでしょう
大丈夫、体力とコツコツ耐えるのは
自信がありますの、ね?(にこっ、天使か悪魔どちらの笑みだったかはお相手任せ)
試合では防御に徹してじれた相手がコードで巨大熊を作ったらアルティメットモードを発動して真っ正面から粉砕しそのまま決着といきたいですわね
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』は自身で作り上げたプラスチックホビーを自身で操作して戦うホビースポーツである。
言うまでもなく、制作したホビーの完成度が高ければ高いほどにフィールド内での動きは華麗に、それでいて力強くなることだろう。
そして、そうした技術だけではなく操縦するアスリートのフィジカルもまた重要な部分である。何せ、プラスチックホビーは自身の動きをトレースさせるか、または操縦するのだ。
となれば、当然体力が物を言う。
「最後に心というわけでございますわね」
イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は自身の姿をもした美少女プラモをフィールドに投入し、操縦パーティションで相対するダーク化アスリート『洗脳サッカー選手』たちの操る『鉄球バスター』を見やる。
確かに彼等はダークリーガーによってダーク化されている。
しかし、今回はいつもと趣きが異なっている。
そう、これは仕組まれた八百長試合。金持ち坊っちゃんこと『ゼクス』が仕掛けた偽りの試合。
「お金に糸目をつけないなら真っ当に派手はPVを作れば良いのでは? 何が楽しいのか理解致しかねますわ」
イリスフィーナは自身そっくりな美少女プラモが黄金に輝く意志の光を纏うのを見遣り、やはり己のユーベルコードがフィールド内のホビーに反映することを知る。
すでに『五月雨模型店』で自身のホビー制作の手伝いと特訓を終えているのだ。
わかっていたことだが、こうして実際にフィールド内でユーベルコードがホビーによって放たれている光景を見ると、確かに派手であると思えたことだろう。
「それには我々も同意するが!」
『洗脳サッカー選手』たちが迫りながら鉄球を打ち込んでくる。
放たれる鉄球はプラスチックホビーと云うには、過剰な攻撃力を持っていたが、イリスフィーナは華麗に己のホビーを操って中に舞うようにして鉄球の一撃を躱す。
「どれだけ威力が高く、球速が疾いのだとしても! 直線的な攻撃では!」
空中で一回転し、そのホビーから放たれる光を持って『洗脳サッカー選手』たちが手繰る『鉄球バスター』へと迫る。
「一撃は重たくとも連射ができないでしょう! となれば!」
「なんの! 機体だけあれば! 行け! ツンドラベアー!」
煌めくユーベルコード。
鉄球を打ち出し、装填する隙を埋めるために生み出された巨大熊が戦場を奔る。
確かにとイリスフィーナは思う。
お金でルールに自分に優位な環境を作るというのは悪くないと思う。
それは言ってしまえば、戦う前の努力とも言い換えることができるだろう。どんな手段を取ってでも勝利を収めたい、手に入れたいという思い。
わからなくもない。
けれど、とイリスフィーナは思う。
「試合そのものをコントロールしようなどと!」
そう。
試合の勝敗は互いの努力が激突してこそ。
迫る巨大熊とイリスフィーナそっくりの美少女プラモが組み合う。
奔る衝撃波。
ただ組み合っただけで互いの膂力が鎬を削る。巨大熊などイリスフィーナは恐れない。どれだけ敵が巨大で圧倒的でも。
「大丈夫、体力とコツコツ耐えるのは自身がありますの、ね?」
にこ、と微笑む。
それは味方には天使の。敵には悪魔の笑みであったことだろう。
「あの人、特訓のときからすんごい練習量だったからな……」
「ああ、おばけだ。体力おばけだった」
『五月雨模型店』のメンバーたちがイリスフィーナの様子に冷や汗をかきながら頷く。
そんな彼等を他所にイリスフィーナの瞳がユーベルコードに輝く。
煌めくは黄金。
意志の光はほとばしり、イリスフィーナのホビーが真っ向から巨大熊を押し倒し、その勢いで地面へとめり込ませる。
凄まじい力だった。
そのままイリスフィーナはそっくりのホビーが宙を飛ぶようにして『洗脳サッカー選手』の操る『鉄球バスター』へと迫る。
「馬鹿な、巨大熊がやられるだと……!?」
「これが全力全開っ、アルティメットモードですわっ! 受けなさい、これがわたくしの拳の一撃!」
振り下ろされる一撃が『鉄球バスター』から放たれる鉄球ごと粉砕し、イリスフィーナは爆発起こる中、華麗に着地し、場外から響く歓声に手を振って応えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
ええ…っと。まずは、この世界らしいやつですね?
悪霊としては困りますけど…それはまあ、こっちの都合なので。
以前から使ってる騎兵機体(改造済)でして。
これ、霹靂と動かせるから楽しいのですよね。
ではー、こうしていてのUC発動。どれだけいようが、兵もいるので…簡単には当たりませんよ。
…一回やってみたかったんですよ、兵の召喚とか、騎兵突撃とか。忍ですから、あまりないことなんです。
※
霹靂「クエッ!」
今回も騎馬担当!頑張る!
陰海月「ぷーきゅ!」
ポンポン持って応援!
巨大クラゲの『陰海月』が場外で黄色いたんぽぽを思わせるようなポンポンを触手でもって振りながら応援している。
「ぷーきゅ!」
ファーイト! という具合であろうかと『五月雨模型店』のメンバーたちは思った。
それにしたって、今回の戦いは、いつもと様子が違う。
常ならばダークリーガーにダーク化されたアスリートたちを取り戻すための戦いである。決して敗北するわけにはいかない。いや、今回もそうであるのだが、なんと説明したらいいのか。
「ええ……と。まずは、この世界らしいやつですね?」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は『プラクト』の操縦パーティションの中で困惑していた。
悪霊としての己はオブリビオンを許さない。
それはこのアスリートアースの世界にあっても変わらぬことである。こうしてスポーツで戦うのも、オブリビオンであるダークリーガーを滅するためなのだ。
けれど、今回はダークリーガーから八百長を持ちかけてきた金持ち坊っちゃんを改心させるために、本気の戦いが如何に素晴らしいものであるのかを知らしめるために正々堂々戦うのである。
激しい力のぶつかり合い。
技の応酬。
気迫満ちる心が魅せる競技の華。
いずれも健全なことであるが、しかしダークリーガーを打倒するという一念がどうしても払拭できない『疾き者』は迫る『洗脳サッカー選手』たちの操る『鉄球バスター』が放つ鉄球を『霹靂』が操縦する騎馬と共に『戦国大将軍』を操り駆け抜ける。
「しかし、本当に困ります……いえまあ、こっちの都合ですが」
「真剣勝負だと言った! 情けは!」
「いえ、情けではなくて、ええとなんと言ったらいいのか……」
勝手が違う。
なんとも難しい。普通に戦う方がよほど簡単に思えたことであろう。けれど、『疾き者』は迫る鉄球を受け流し騎馬を操る『霹靂』の嘶きを聞く。
「クエッ!」
がんばる! と言わんばかりである。
ならば、『疾き者』は迷いと困惑を投げ捨てるようにフィールドへと駆け出していく。
「ええい、突撃開始」
四更・兵(シコウ・ヒョウ)。
ユーベルコードに輝く『戦国大将軍』のアイセンサー。
それは人馬一体を顕すユーベルコード。騎馬たる『霹靂』と騎兵たる己。それをトレースするプラスチックホビーがフィールドを所狭しと疾風のように駆け抜ける。
さらにその先駆けに共するように足軽型のホビーが戦場に展開する。
「ならばこちらも!」
『洗脳サッカー選手』たちのユーベルコードが煌めく。
体温を犠牲にするが、しかし現れる巨大熊な生半可な機体では止められない。足軽型のホビーが巨大熊によって薙ぎ払われていく。
「……一回やってみたかったんですが……ええ、これだけの兵に巨大熊が釘付けならば、横合いからー」
『疾き者』は足軽型ホビーを薙ぎ払う巨大熊の側面へと回り込むように騎馬と共に『戦国大将軍』を突っ込ませる。
蹴散らすように巨大熊が吹き飛び、さらに『洗脳サッカー選手』の操る『鉄球バスター』へと、その手にした槍を突き出す。
「忍びですから、あんまりないことなんですよねー」
こうした正面切っての戦いは、本来忍びである『疾き者』には縁のないものである。けれど、『プラクト』ならば叶うのだ。
「爽快感、とでも言いましょうか。疾風のように戦場を駆け抜ける……ええ。これこそが」
「真剣勝負だけに生まれるもの!」
ダーク化したアスリートと『疾き者』は、今は敵同士。
けれど、わかっているのだ。
これがこの世界の流儀。生命の危険があるほどの超人スポーツにあって、しかし、生命の奪い合いではなく勝敗によってのみ全てが決まる。
なんと平和なことだろうか。
そこにあるのは一人のアスリートとしての矜持だけだ――!
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
レッツ・アクトオオオオッ!!イヤッフウウウウッ!!
「…凄いハイテンションですね。」
あったり前よ、相棒ッ!見てみろよ俺達の愛機ッ!
遂に発売した『インセクト・ボーガー』だぜッ!
コイツをマニューバで乗り回すのを楽しみにしてたんだぜッ!
いくぜ、改造に改造を重ねた俺の『デスメタルヘラクレス』ッ!(ブラックメタリックのやたらトゲトゲしたインセクト・ボーガー)
突撃で敵集団をなぎ払っていくぜ。更にッ!
「転身。」
炎神霊装を纏いブーストさせるぜ。戦場内の敵が鉄球を打ち出す前に爆発的速度で粉砕だ。
今の俺達は誰にも止められねえぜッ!!
【アドリブ歓迎】
神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は待った。
とっても長い間待ちに待っていた。
何を、と問われたのならば応えなければならないだろう。
「『レッツ・アクトオオオオオッ!! イヤッフウウウウウッ!!」
ものすごいテンションであった。
戦場である『プラクト』フィールドに凶津の赤い鬼面がカタカタと歯を鳴らす音と共に叫び声が響き渡る。
だが、それは怒りではなく喜び。
そう、凶津はまっていたのだ。
『インセクト・ボーガー』の発売日を!
「……凄いハイテンションですね」
「あったりまえよ、相棒ッ! 見てみろよ俺達の愛機ッ!」
凶津の言葉に相棒である巫女の桜はフィールドを疾走するブラックメタリックカラーの昆虫モチーフのホビーを見やる。
むやみにトゲトゲしいフォルム。
黒光りするような美しい塗装面は『五月雨模型店』の塗装ブースでシルバーから立ち上げて丁寧にクリアーを重ねて研ぎ出しまで行った一品である。
主にヒーローマスクである凶津が憑依する桜が肉体的な疲労がすごかったが、しかし凶津が子供のように。
それこそ少年のようにはしゃいでいるのが桜にとっては好ましかったかもしれない。
「店長には感謝だな! コイツを『マニューバ』で乗り回すのを楽しみにしてたんだぜッ!」
カスタマイズもちゃんとしてあるのだ。
フィールドの地面を蹴り上げるタイヤ。パワーが凄まじいのだろう、土煙を開けて疾駆する速度は並のアスリートでは止められないだろう。
「良いホビーだ! だが、俺達の『鉄球バスター』とて!」
ダーク化アスリートである『洗脳サッカー選手』たちが『鉄球バスター』を手繰り、鉄球を撃ち込んでくる。
しかし、その鉄球のいずれも凶津の操る『インセクト・ボーガー』を捉えられない。
「まだまだ! 俺達を止められないぜッ! ……ああ、そうだよな、『デスメタルヘラクレス』ッ!」
己の愛機の名を叫ぶ。
デスメタル。
ヘラクレス。
桜はそこで、ああ、そういう、と思う。ブラックメタリックカラーと刺々しいカスタマイズがデスメタル。
型であるヘラクレスタイプから持ってきているのだろう。
その突撃は凄まじい。鉄球を弾き飛ばし、更に『鉄球バスター』を打ちのめすのだ。
弾け飛ぶ『鉄球バスター』であったが、そのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「こちらもやられるものか! 行け!」
『洗脳サッカー選手』たちの体温を犠牲にして生み出される巨大熊が唸り声をあげる。
咆哮荒び、荒れ狂うように巨大熊が『デスメタルヘラクレス』へと襲いかかる。
「ならこっちも行くぜ、相棒ッ!」
「転身」
桜の言葉と共に『デスメタルヘラクレス』の身に纏うのは炎。
桜と凶津。そして『デスメタルヘラクレス』の3つが合わさることに寄って、フィールドに吹き荒れるのは炎。
爆発的な加速に寄って『デスメタルヘラクレス』は、その巨大な角でもって巨大熊はおろか、『鉄球バスター』が次弾する隙を一瞬たりとも与えずに一直線に突撃して、粉々に粉砕するのだ。
「今の俺達は誰にも止められねえぜッ!! 取り置きしてくれたおかげだぜ、店長ッ! 見てるかッ!!」
凶津の鬼面がカタカタと鳴る。
桜は凶津の本当に楽しそうな声を聞き、仮面の奥で小さく笑む。
鬼面であっても、宿るものはあるのだ。
『プラクト』はあらゆるプラスチックホビーを受け入れる。
その受け皿となり、また同時に熱い血潮をたぎらせるような戦いを魅せることこそアスリートの本分であるというように凶津たちは念願の『デスメタルヘラクレス』と共にフィールドを圧倒するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
2P「プラクトならもちろん出るのはアルミィ先生!しかも今回はわたし(2P)コントロール!
魔剣“終わりなき蒼穹”を構え、相手の動きを「見切り」相手の攻撃に合わせてくっす!
……むむ、さすがにUC相手はキツイ。これは切り札を使わざるを得ないなー(棒)
(剣を掲げ)『盟約の下、我が呼びかけに応えよ……召喚!!』」
3P「という訳で、プラクト基準で縮小実体化させた重装甲突撃射撃型疑似キャバリア『アイゼンケーファー』を投入、熊にぶつけますよ。早速ですけど決めてください、わたし(1P)」
はい!左腕の5連サブマシンガンを乱射しつつ突撃、右腕のパイルバンカー打ち込みで「空中に浮かせ」、頭部のプラズマホーンと右腕バンカーで追撃、3発目のバンカー打ち込みで地面に叩き落し空中でミサイルポッド開放、ミサイルの雨でとどめです!
2P「そして熊への止め演出の間にわたしが本体を仕留めちゃうっすよ!」
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』、それは心技体の合わさったほびーすぽーつである。
己の胸の中で想像する心。
想像を形に変える技。
形となったものを突き動かす体。
いずれも欠けては勝利は遠く。
故にアスリートたちは心技体を鍛え上げるのだ。そうすることでしか勝利は得られない。ならば八百長試合というものは意味を成さないものであったことだろう。
ダーク化アスリート『洗脳サッカー選手』たちの手繰る『鉄球バスター』から放たれる他鉄球の一撃がフィールドの地面をえぐる。
土煙が上がり、破片が飛び散る最中、『アルミィ先生』と呼ばれるゲームの女性主人公の改造プラモデルが走る。
携えた魔剣が迫る鉄球を一閃のもとに切り裂きながら、大地を蹴る。
壮麗にして美麗。
そう思わせるほどの迫力と魅力がホビーにはあった。
「『プラクト』なら当然、『アルミィ先生』だよね!」
ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)は操縦パーティションの中で自分の動きをトレースするホビーの勇姿に桶を上げる。
「無駄のない動きをする! 大した技術力だが!」
『洗脳サッカー選手』たちも負けては居ない。
彼等の心に灯る情熱。
勝利への渇望。
それは熱量と成って体の中を駆け巡り、そして、その熱量を犠牲にすることで『鉄球バスター』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
巨大熊を生み出すユーベルコード。
「オオオオオ!!!」
咆哮が響き渡る。凄まじいまでの迫力。敵もまた勝利に飢えている。このアスリートアースにおいては勝利こそが絶対。
どんな権力も。
どれだけの財産も。
勝利の前には霞んで見えるものである。
「……むむ、さすがに巨大熊は相手はキツイ」
美少女プラモである『アルミィ先生』は細身である。確かにとても良いスタイルをしてるが、さりとて強度のことを考えれば巨大熊と取っ組み合うようにはできていないだろう。
「キツイなー流石になーこれは切り札を遣わざるをえないなー」
ユーシアは棒読みであった。
ピンチではある。
けれど、この程度のピンチをかいくぐれないこともない。
「盟約の元、我が呼びかけに応えよ……召喚!!」
その言葉と共に『プラクト』フィールドに召喚されるのは、『アイゼンケーファー』。
ゲームより生じた疑似キャバリアを『プラクト』準拠にして召喚せしめたのだ。
その鋼鉄の躯体と野生の本能を凝縮したような巨大熊にぶつける。
激突する爪と鋼鉄の装甲。
火花を散らし、巨大な熊と鋼鉄の巨人が組合、打ち合う最中『アルミィ先生』は走る。目指すは『鉄球バスター』のみ。
「早速ですけど決めてください、わたし」
バーチャルキャラクターであるユーシアは、1P、2P、3Pと存在している。
わたし、と共に呼び合うから混乱するかもしれないが、ともに彼女である。故に『アイゼンケーファー』を操るのもユーシアなのだ。
「はい! ゲージが溜まりました! 行きます!」
その言葉と共に鋼鉄の巨人のアイセンサーが煌めく。左腕のサブマシンガンの弾丸が巨大熊へと向けられる。
弾丸は巨大熊の脚を止め、その隙に飛び込む巨体。
右腕に装備されたパイルバンカーが、その鋒を叩き込んだ瞬間炸裂する爆発が巨体を空へと打ち上げるのだ。
頭部に備えられたホーンがプラズマの輝きを解き放ち、一閃を刻み込む。
「まだいきますよ!」
追撃のパイルバンカーが再び叩き込まれ、さらに浮かび上がる。巨大熊は無謀にも宙に浮かび上がる。
こうなっては、もはや逃れられぬコンボの始まりでしかない。
そう、ユーシアのプレイ日記~格闘ゲーム~(スーパーユーシアコンボ)は、彼女の体にコマンド入力というものを叩き込んでいる。
空中でコンボを決める『アイゼンケーファー』。
その派手な爆発と共にパイルバンカーの一撃が巨大熊を叩きつけ、『鉄球バスター』はそれに巻き込まれるようにして押しつぶされる。
「こちらの攻撃を利用するだと?!」
「身動きが取れなくなった所でトドメ技!」
肩部のミサイルポッドが開放され、ミサイルの雨が爆風を巻き起こす。
だが、そのさなかに『鉄球バスター』は巨大熊を盾にして逃れているのだ。けれど、それを見逃すことはない。
『アルミィ先生』がしなやかに走り抜け、その手にした魔剣の一閃でもって『鉄球バスター』を切り払うのだ。
「これで終わりっす! 派手に動けば、必ず巨大熊を盾にするってわかってたっすからね!」
振り抜いた一撃が『鉄球バスター』の機体を真っ二つに切り裂き、ど派手な爆発を背にユーシアは『アルミィ先生』を操り、華麗なポーズを決めてみせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
うーん、八百長潰しかぁ。
大丈夫?変な恨まれ方して一生命を狙われたりしない?
まぁそれもスリルがあって良いよね☆
とゆー事で、ここはありがたくにぃなちゃんがモデルのプラモを使ってモーションでやっちゃおう!
元々の出来が良いから、素体の改造よりプリンセス衣装や天球儀作るのに時間かけちゃった☆
さーて、それじゃあ正々堂々とレッツ・アクト!
鉄球シューターとは前にも戦ったね。
とにかく鉄球を躱すのが大事!
でもプリンセスらしく【空中浮遊】や【推力移動】で優雅に行こう☆
後は相手をユーベルコードの分身で撹乱!
上手く死角に瞬間移動して、杖で殴っちゃえ!
【衝撃波】で豪快に【吹き飛ばし】て、サッカーを野球にしちゃうぞ!
「うーん、八百長潰しかぁ」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は操縦パーティションの中で悩ましい顔をしていた。
この八百長試合を仕掛けたと思っている金持ち坊っちゃん事『ゼクス』は巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司である。
それだけの財力を持っているということは、この八百長試合を潰してしまったら、変に恨まれたりしないだろうかと心配しているのだ。
その心配は尤もである。
ニィナはその愛くるしい顔立ちとスタイルで今や『プラクト』プロモーションの花形である。
とても目立つ存在なのだ。
「大丈夫だ、ニィナお姉さん! この試合で八百長の愚かしさに気がつけば、彼だって『プラクト』の、いやスポーツマンシップの素晴らしさに気がついてくれるさ!」
『五月雨模型店』の『ドライ』少年がニィナの心配を払拭するように力強く言う。
その言葉を受けてニィナはそれもそうかも、と思うのだ。
一生狙われ続ける事になっても、それはそれでスリルがあっていいよね☆とか思ってしまうのは、ニィナらしいと言えばらしかった。
「そだね☆これもプロモーションの一貫だと思えば! ここはありがたくにぃなちゃんモデルのプラモを使っちゃうから!」
彼女が投入した美少女プラモは、ニィナとのコラボモデルである。
3Dスキャンでもって完璧に再現されたニィナのプロポーション。細部にこだわったヘッドの造形。
いずれも大ヒットした商品である。
そのプラモデルをニィナは今回改造するのではなく、プリンセス衣装と天球儀を作ることに手間暇を掛けていた。
「やー、フリルの裁縫大変だったね☆ でもでも、これ、似合ってるよね☆」
ね! とカメラ目線も忘れない。
この試合の様子は動画中継もされているし、商店街の巨大モニターにも映し出されている。試合と同時に商品プロモートも兼ねているのだ。
「素晴らしい完成度! オーダメイドの衣装を汚すには惜しいと思うが、此れは勝負! 試合! ならば!」
ダーク化アスリートである『洗脳サッカー選手』たちが『鉄球バスター』より鉄球を打ち放つ。
強烈な勢いで叩き込まれる鉄球はプラスチックの装甲を容易く撃ち抜くことだろう。
だが、その鉄球をニィナの操る『プリンセスモード』のニィナモデルが華麗に躱す。
「『鉄球バスター』とは前にも戦ったね! なら、とにかく鉄球を躱すのが大事!」
ふわりと天球儀がニィナを載せて空に浮かぶ。
鉄球である以上、重力の干渉を受ける。つまり、空中に向かって撃ち込む事は、それ自体が威力を減衰させるものであるのだ。
だからこそ、ニィナは天球儀『プリンセス・セレニティ』を掲げる。
「ほーら、にぃなちゃんがいっぱいだぞ☆」
その杖より放たれるのはニィナ自身の立体映像。
時にオーバーオール、時にスポーティな水着、時にハイカラな和装、時にスーツ、時にキョンシーチャイナ、時に海賊、ときにバニーガール!
それはもう沢山のニィナが入り乱れるようにして『鉄球バスター』を操る『洗脳サッカー選手』たちを翻弄するようにフィールドの中を駆け巡っていく。
「……!? こ、これは……!?」
「本物のにぃなちゃんはどーれだ☆」
ニィナのユーベルコード、ガジェット忍法・姫分身の術(ガジェットアーツ・プリンセスミラージュ)によって生み出された映像は『プラクト』のフィールドをニィナという華でもって彩る。
ただでさえ美少女なのだ。
なのに、そんな彼女が立体映像とは言え、フィールドに満ちれば『洗脳サッカー選手』たちとてたじろぐのである。
「本当に見分けつかねー……」
『アイン』が、はえーと乱舞するニィナの立体映像を見上げ感心している。
「いや、本物はのニィナお姉さんだぞ! プリンセス衣装着ているしな!」
『ドライ』の言葉にニィナは当たり☆と笑う。
確かにこれは試合だ。けれど、とても楽しいホビー・スポーツだ。その魅力を知らしめるようにニィナは笑いながらフィールドの中を駆け抜け、鉄球を打ち返すように杖を振るい、野球のように振る舞うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
こー言う、何でも金ずくで押し通ろうとする輩にゃ虫唾が走るぜ
そもそも初手から親のモンに頼ってる時点で気に入らねー
オーライ、腹の底がヒュンッとなるくれーの臨場感をくれてやろうじゃねーか
今回の改造は最低限
動力モーターをUC発生装置に直結させて、出力を底上げした
操作性はかなりピーキーになっちまったが、そこは操縦テクでカバーだ
このゴキゲンな馬力から叩き出されるスピードはちょっとしたモンだぜ?
いくらテメーらが素早く動こうが
鉄球を蹴り込む瞬間は多少の隙になるだろーよ
そこを狙って全速力のタックルをカマすくらいなら訳の無ぇ話だ
全力のぶつかり合い
結局あたしらにできる事は|一つ《いつも通り》だ
頼んだぜ、ミニタイガー
金。
それはとても魅力的なものである。
言うまでもないことだが、金は汚い。汚いけれど魅力的なものでもあるのだ。それは抗うことの難しいものであり、誰もが心の中で葛藤するものだ。
だが。
チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は違う。確かに報酬と興奮を戦場に彼女は求める。
「こー言う、何でも金ずくで押し通ろうとする輩にゃ虫唾が走るぜ」
彼女の操るプラスチックホビー『ミニタイガー』が『プラクト』フィールドの中を駆け抜ける。
今回改造した箇所は動力モーター。
『プラクト』のホビーは全て『ユーベルコード発生装置』を組み込んだものだ。そこにモーターを組み込んで直結させる。
そうすることで出力を底上げしたことによってパワーが段違いに跳ね上がっている。
その代わり、と言ってはなんだが操縦性が非常に悪くなっていると言って過言ではない。いや、実際取り回しが悪くなっている。
「いや、そもそも初手から親のモンに頼ってる時点で気に入らねー!」
走る『ミニタイガー』が猛烈な勢いを持って敵陣深くまで切り込むようにして飛び込む。そのさまをダーク化アスリートである『洗脳サッカー選手』たちは認める。
「意気や良し! と言えるが!」
「敵陣に突っ込んで囲まれることを考えていなければ!」
撃ち込まれる鉄球。
彼等が操る『鉄球バスター』はプラスチックホビーにしては過剰な性能を持たされている。鉄球の一撃は受ければ装甲は容易く撃ち抜かれてしまうだろう。
だからこそ、チェスカはー出力を上げたのだ。
「このゴキゲンな馬力から叩き出されるスピードはちょっとしたモンだぜ?」
唸りを上げて走る『ミニタイガー』は、鉄球の照準を合わせることを許さない。まるで残像を残すかのように走る巨体。それは見た目からは想像を絶する機敏さ。
鈍重さの欠片もない速度で持って『ミニタイガー』は鉄球を振り切りながら、巨体を振り上げるようにして飛ぶ。
「見たかよ! チェスカーねーちゃんの改造を! どう考えたって制御できねー感じのあれをそれしてんだぜ!」
『アイン』が叫ぶ。
楽しそうだな、と思うがチェスカーも同じだった。
楽しい。
まるで腹の底から湧き上がってくるような高揚感が己の中にある。臨場感と言えばいいのだろうか。
『プラクト』は確かに擬似的な戦場であったことだろう。
けれど、得られる迫力は本物に近い。戦場を渡り歩くチェスカーにとっては遊戯の一つであったかもしれない。なにせ、生命のやり取りがないのだ。
だからと言って、劣るわけではない。
試合に掛ける情熱というものは変わらないのだ。どうしても勝ちたい。勝利を得たい。敗北を是としない。
その意気こそがスポーツマンシップを底上げするものであったkらだ。
「てめーらが素早く動こうが!」
『鉄球バスター』は確かに強烈な一撃を持っている。けれど、それは次弾を装填する僅かな隙を生み出す。
「これくらい訳の無ぇ話だ!」
「たりめーだよな! ねーちゃん!」
『アイン』の機体と『ミニタイガー』が『鉄球バスター』を蹴り飛ばすように吹き飛ばす。宙を舞う機体。
バラバラに砕ける『鉄球バスター』は、『ミニタイガー』の突進を受ければ当然の結果出会ったことだろう。
「ああ、結局あたしらにできることは|一つ《いつも通り》だ」
頼んだぜ、とチェスカーは雄々しく動力モーターを唸らせる『ミニタイガー』と共にフィールドを席巻するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
若いうちから金に不自由しないとこうなっちまうんだなぁ
想像次第でもっと有効的な使い方もあっただろうに勿体ないね
で、用意するのはクロム・スティールに似たロボットのプラクト
ちゃんとブーストも付いてて高速で機動できるんだぜ。手伝ってくれた模型店の人たちに感謝な
そして装備はキャバリア用…じゃなく俺が普段使ってる雷鳴とかの武装だ
これでモーションタイプでいつも通りの戦い方ができるぜ。もちろんマニューバタイプもいけるぞ
…キャバリアに人型サイズの武器持たせるのって前からやってみたかったんだよね
試合は鉄球を紙一重で避けつつ相手に突っ込んで
すれ違い様にUCや杭をぶち込みながら切り抜けるぜ
レッツ・アクト!
アドリブ歓迎
なんでもかんでも金で解決してしまう。
それはきっと簡単なことなのだろう。全ての物事が容易なものに思えてくるのは仕方のないことであったのかもしれない。
水が上から下に流れるのと同じだ。
重力に逆らうことは難しい。
だからこそ、星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は思うのだ。
「若いうちから金に不自由しないとこうなっちまうんだなぁ」
八百長によって試合をコントロールする。
それが巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司である『ゼクス』の導き出した新たな楽しいことなのだろう。
けれど、此処はアスリートアースである。
彼等は皆勝利に飢えているが、それは金銭でもって得られぬ得難きものであるからこそ、追い求めるのだ。
それが未だ非公式の競技である『プラクト』においても変わらぬ事実であった。
「想像次第でもっと有効的な使い方もあっただろうに」
もったいない、と祐一はフィールドに投入された自身のキャバリア『クロム・スティール』に似たロボットホビーを操る。
ブースターがついていて高速で移動できるように改造したのだ。
「手伝ってくれたみんなには感謝だな」
これも金では解決できなことの一つだ。
模型を作る技術一つとっても、自分でやらなければわからないことばかりだ。強度の問題、出力の問題、形状が関節に干渉する問題。
多くを解決してこそ、今フィールドに立っていられるという事実があるのだ。
「ゆくぞ!」
「取り囲め!」
一斉に鈍色の機体を取り囲むのはダーク化アスリート『洗脳サッカー選手』たちの操る『鉄球バスター』たち。
このホビーは明らかにプラスチックホビーの範疇を超えた性能を持たされている。
此方の装甲はプラスチック。
けれど、敵が放つのは鉄球なのだ。言うまでもなくまともに受ければ……。
「一撃でやられてしまいます! 注意を!」
『五月雨模型店』のメンバーである少女『ツヴァイ』が祐一に警告する。
事前に情報を得ていたからこそ、祐一は敵の蹴り込む鉄球の威力にたじろぐことなく動くことが出来る。
「わかったぜ! キャバリアに人型サイズの武器を持たせるのって前からやってみたかったんだよね」
祐一は己が普段使っているブラスターを『クロム・スティール』を模した機体に持たせている。
キャバリアの武装、というには小さすぎる。
けれど、この『プラクト』フィールドを駆け抜ける主役であるプラスチックホビーにとっては巨大な武装となるのだ。
放たれる熱線の一撃が『鉄球バスター』の放つ鉄球を容易く撃ち抜く。
「……!? 熱線!?」
『洗脳サッカー選手』たちが目を剥く。
それもそのはずだ。
祐一のはなったな一撃は、冬雷(トウライ)。ユーベルコード発生装置を受けて放たれる一撃は、溜め込まれたネルギーを衝撃波と共に放ち、広範囲にわたって爆風を荒ばせるのだ。
そのあおりを受けて機体をよろめかせた『鉄球バスター』たちは次々と『五月雨模型店』のメンバーたちの操る機体によって撃破されていくのだ。
「一度やってみたかったんだよね」
「威力高すぎない!?」
『アイン』と呼ばれる少女が熱線の一撃に目を丸くしている。だが、これを過剰とは言わないのが『プラクト』の間口の広さである。
何せ、どんなプラスチックホビーも受け入れるだけの度量がある。
「素晴らしい一撃! だが! 我々とて負けてはいられないのだ!」
その証拠に『洗脳サッカー選手』たちは意気消沈することなくこちらに立ち向かってくる。正々堂々。スポーツという枠組みの中で勝敗を決める。
そこには命のやり取りはない。
けれど、それでいいのだ。
「こうやって楽しむこと。それを知ることができるのが、スポーツのいいところなんだからな! 金でコントロールしたって楽しくないんだぜ」
だから、と祐一は笑って試合に望むのだ。
こんなにも楽しいことが世界にはたくさんあって、それはきっと金ではなく自分でしか得られぬものであると――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
そりゃぁまあ……なんでも金で解決したら面白くはないよね……
やっぱり自分で試してこそだよ…上手く行かないから楽しいんだよね…
…さて…まずは鉄球シューターで勝負と来るか……ならこちらは車型プラモ『セントール』をセット……レッツアクトー…
…早速囲まれたけど……なるべく観客の目を引くプレイの方が良いと……ならば……
……【ソラ跳ね踊る白兎】を発動……四方八方から飛んでくるボールを全て魔法陣でバウンドさせてそれぞれの選手に返してあげよう……
…その過程で良い感じに派手なバウンドをさせてパフォーマンスもしようかな……
…この勝負を見て自分もやってみたい……とかお坊ちゃんが思ってくれれば良いのだけど…
「なんだ、なんだ! これは手筈通りになんでみんな動かないんだよ!」
巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司である『ゼクス』少年は試合の様子を見ながら地団駄を踏む。
彼が思い描いていた八百長試合とは程遠い光景。
アスリートたちは皆、一様に果敢に戦っている。いや、楽しんでいると言ってもいい。まるで自分のことなど見ていない。そして、目の前に相対するアスリートのことしか目に入っていないのだ。
自分だけが蚊帳の外にいるような思いに『ゼクス』少年はとらわれることだろう。
それを、さもありなんとメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は思う。
なんでも金で解決してきた少年。
これまでも、そして、これからもそうであろうとしていたのだろう。
けれど、それは何も楽しくはない。面白くはない。
失敗はするだろう。
「……やっぱり自分で試してこそだよ……うまく行かないから楽しいんだよね……」
メンカルは自分がガジェットを作るときのことを思い出す。
試行錯誤。
様々な失敗があった。成功もあった。いずれも得難きものである。
自分だけしか体験の出来ないことなのだ。
だから、価値がある。
「その通り!」
ダーク化アスリート『洗脳サッカー選手』たちが操る『鉄球バスター』が迫る。放たれる鉄球の一撃は、重たく、また容易にプラスチックの装甲を撃ち抜く威力がある。
ならば、とメンカルは車型ホビーを手繰る。
名を『セントール』。
タイヤがフィールドの地面を斬りつけるようにして煙を巻き上げながら疾駆するが、それを取り囲むようにして『鉄球バスター』が動く。
敵は集団での戦いを熟知している。
取り囲み、鉄球の一撃で確実にこちらを削ろうとしているのだ。
「受けてみろ! この鉄球の一撃を!」
「……早速取り囲まれたけど……ならば……」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に、『セントール』の地面に魔法陣が煌めく。
それは車体の硬さを変化させる魔法陣。
そう、『セントール』の装甲の硬さを変化させるのだ。ならば、観客は皆思っただろう。硬さを変化させるのであれば、やはり鉄球を受け止めるために固くするのだろう、と。
けれど、実際には違った。
「なに……!?」
「何も硬くするだけでは芸がない、でしょ……だから」
車体がまるでバネのように跳ねる。
バウンドし、迫る鉄球を跳ねて躱すのだ。その光景はあまりにも現実離れした光景であったことだろう。
全ての鉄球を躱す『セントール』は、謂わば、ソラ跳ね踊る白兎(バウンシング・ムーンラビット)そのもの。
柔らかく、柔軟性をもたせた車体はあっさりと鉄球の全てを躱し、くねるようにしながら華麗なコーナリングを魅せるのだ。
「……こういう使い方もできる……」
「バウンドして、躱す!? 逃がすか!」
第二射が飛ぶ。
鉄球が嵐のように『セントール』に迫ってくるが、メンカルは『マニューバ』で車体をコントロールし、華麗に躱し続ける。
跳ねろ、弾め、と。
ダンスを踊るように車体のホビーが飛び跳ね続ける。
メンカルは思う。
創意工夫はあらゆるものを凌駕していく。金も、権力も及ばぬ所にそれがあると示す。
『ゼクス』少年がこの光景を見て、自分も、と思ってくれたら良いと思う。
お金は確かに力だ。
多くのことが実現できる。
ならば、それをただ徒に使うだけではなくて。
「それで何が出来るのかを、自分の力だと思うのではなくて……」
金に使われるのではなく。
自分で何かを成し遂げようと思えるように、そうであれば良いとメンカルは跳ねる車体と共に戦場を疾駆するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
プラモデルは『憂国学徒兵』にアクアユニットを装備させた水中戦使用!
サージェさん……。
その前口上とダブルソフトボールは、ワンターンキルも甚だしいですよ!?
見てください、死屍累々じゃないですか!(主にソフトボールのせい)
でもさすがにまだ残ってはいますね。
わたしがとどめを刺しましょう!
さぁサージェさん、『フィーア』さん、これに着替えてきてください!
と、水着を渡します。
ちなみにわたしはすでに着てますので!
なんで、って……こういうことです!
【虚実置換】いっきますよー♪
フィールドを全面的に湖に変換して、鉄球なんか沈めてあげちゃいます。
いえ、お二人の水着姿が見たいわけではないですよ?
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が弾んでて忍べてないとかそんなことないもんっ!
さぁ私のトラメちゃん(虎型プラクト)が頑張っちゃいますよー
皆、トラメちゃんの可愛さにノックアウト
いえ、あの?まだトラメちゃんに乗ってないのですが??
そしてソフトボールなんてどこに……?(首傾げ
なんかよくわかりませんが理緒さんがやる気なのでクノイチ頑張ります
って、ええ……水着……
着るのは構わないですが、私ルールに引っかかったりしないでしょうか?
そして理緒さんの作戦が雑に大胆!!
ええい、トラメちゃんのねこぱんち(鉄球叩き落し)&華麗な泳ぎをお見せしましょう!
ついでに【快刀乱麻】やっちゃいますね!
「お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ! 胸がはずんでて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
前口上をすっきり言い終えることができてサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はご満悦だった。
大体いつも言い終える前に邪魔が入ったりするのである。
どう考えても営業妨害である。
クノイチであるサージェにとって前口上はとんでもなく重要なものなのだ。なのに、いっつも敵は邪魔をする。
そりゃそうである。
前口上の間は無防備。そこに付け入るのは当たり前である。だが、此処はアスリートアース。
アスリートたちが鎬を削るスポーツの世界。
なら、前口上を邪魔する無粋なやつはおらんのである。
「確かにはずんでる」
「ゆれている」
うんうん、と『洗脳サッカー選手』たちは頷く。また『五月雨模型店』のメンバーたちも頷いていた。
「あれで忍んでるは無理がある」
「無理じゃないもんっ!」
虎型のホビー『トラメ』を操りながらサージェは大きな声で突っ込む。本当に無理じゃないもん! 忍べるもん!
「サージェさん……その前口上とダボルソフトボールは、1ターンキルも甚だしいですよ!? 見てください、死屍累々じゃないですか!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はサージェの揺れる二つのボールに指を突きつける。
いや、死屍累々というか。
なんというか。
こう、男子的なあれそれ。言及はしないでおく。しないったらしないのである。それ以上はいけない。わかっているでしょ、クノイチなんだから!
「えぇ……ソフトボールなんてどこにあるんです?」
首を傾げるサージェ。それだけで揺れるのである。卑怯である。そんなの青少年の情操教育に悪い。
「あるでしょ。とは言え、流石にまだ残っているのはスポーツマンシップにあふれていえるでしょう」
理緒の言葉遣いがなんか変である。
なんか解説者というか、説明口調というか。
「わたしがとどめを刺しましょう!」
「あのー、私まだ何もしてないんですが……?」
サージェはまた首を傾げる。また揺れた。
というか、理緒が何をしたいのか、サージェにはさっぱりわからなかった。でも、理緒がやる気満々なのは良いことだ。
ならば、自分も答えなければ、とサージェはふんすと意気込む。
「私に出来ることなら何でもがんばりますよ! クノイチがんばります!」
ん?
今なんでもって言ったよね?
ギラリと輝く理緒の瞳。ユーベルコードより輝いていたのは気の所為ではない。
「さぁ、サージェさん、『フィーア』さん、これに着替えてください!」
そういって手に取り出したのは水着であった。
すでに理緒は水着を来ていた。ワンピースタイプのかわいいやつ。わー、かわいい! ってなったのは『フィーア』だけであった。
サージェは、困惑していた。
なんで水着? いや、斬るのは構わない。しかし、今は試合中なのである。
「いいんでしょうか?」
「パーティションで区切ってるから平気! ほらほら早く!」
理緒に促されてサージェは、はぁ……みたいな感じで着替える。
……これ、やばくないです?
生着替え的な、全時代のテレビショー的な。
あれそれではないです? センシティヴっていうか、なんかこういろんな人権団体がすっ飛んできません?
「だいじょうぶ! そこらへんはわたしがしっかり!」
力説されてしまった。
サージェの水着は大胆びきに。『フィーア』は学校指定水着。
綺羅びやかな美少女二人の姿に理緒はニマニマしている。というか、なんで水着?
「それはこうするためです!」
いっきまーす! と理緒は意気揚々と虚実置換(キョジツチカン)によって『プラクト』フィールドを湖に置換してしまうのだ。
「えええー!?」
「水!? 海!? え、なんで!?」
「ふふ、このために水着なのです。そして、私の機体にはアクアユニットを装備させた水中戦仕様!」
「雑に大胆!!」
「褒め言葉ですよね! わかってまーす♪」
「あ、あああの、な、ななななんで、私まで水着になるひつようが……」
にこし。
理緒は笑むばかりであった。
細かいことは良いのだ。
水着回は何度あってもいい。そういうもんなのである! そんな強引な理屈に飲み込まれるようにして『洗脳サッカー選手』たちは、見目麗しい美少女たちの水着姿に翻弄されながら、置換された湖フィールドの奥底に沈むしかなかたのである。
深くは言及しないでおいていただこう! なんで? なんて!
そこは青少年にとって大切なことなのである!
問答無用!
今回ばかりは快刀乱麻(ブレイクアサシン)に真実を明らかにしてはならんのである。それが青少年にとって大切なことなのだ――!!!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
『息をのませる華麗なプレイ』なら任せてください。
【ソナーレ】とわたしなら、華麗なる演奏と圧倒的なパワーで、
目を引く、どころではなく、全身を魅了してしまいますよ!
って、ステラさん!?
連打は!連打はやめてくださいですよ!?
いえだって、弾かないと動かせないじゃないですか!
それに今回は、しっかり目立ってプラクトの良さを擦り込むのが正義。
ならば【光の勇者、ここに来臨!】を使いながら、
わたしの光に満ちた演奏を乗せるのは、まさに大正義!
これはもう『洗脳サッカー選手』どころか『ゼクス』さんまで涙するはずです!
さぁステラさん、わたしに合わせて2人で……って、耳栓ー!?
なんでですか! なんでですかー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
あれ?
アニメ『憂国学徒兵』のエイル様を語るシーンとか
五月雨模型店の店長について迫るシーンは?
まさかのカットですか……?!
色々と釈然としませんが、それは今回の事件に対するナイアルテ様も同じ様子
悪い子にはお姉さんがお仕置きしてあげましょう
レッツ・アクト、です(赤い熾裂、改めクリムゾンリッパーを手に
ではルクス様
言い分はさておき、その演奏はいけません(連打連打
いえまぁ確かにその通りなんですけども
もうそのプラクト、スクラップアンドビルドしません?
ダメですかそうですか……
仕方ありません私は生きます(耳栓)
まぁ付き合いも長いので耳栓してても動きを合わせることくらいは大丈夫です
ええ、合わせる程度は
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はまっていた。
何を待っていたのかというと、開幕『憂国学徒兵』シリーズアニメを語るシーンである。
あれが楽しみであった、というより、そこに現れる少年主人公について語ってほしかったのである。
あと『五月雨模型店』の店長の人となりに迫るとか、なんかそういうあれを待っていたのである。
しかし、待てど暮せどそんなシーンは流れてこない。
ていうか、もう試合中です。
「もう試合始まってますよ、ステラさん」
そんなステラにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は操縦パーティションから顔を出してちょいちょいと肩を突く。
「もしかしてカットですか!? 釈然としないのですが!!」
くわ! と目を見開きステラは叫ぶ。
そう、釈然としない。
いや、八百長試合を潰すためにダークリーガーがグリモア猟兵に連絡取ってくる、という時点でなんかもう色々釈然としないのは致し方のないことである。
というか、なんでメールアドレスをダークリーガーが知っているのかという所も疑問である。
だが、彼等の言うこともわからなくもない。
釈然とはしないけど。
「なんでもかんでもお金で解決しようとする悪い子にはお姉さんがお仕置きしてあげましょう」
「おねえ、さん……?」
「お姉さんでしょう?」
ルクスの疑問にステラの圧がすごい。お姉さんである。たまに母性出したり、後方メイド面したりしているからの疑問であったが、有無を言わさぬステラの圧にステラはすごすごとひこんだ。
「とは言え、『息を呑ませる華麗なプレイ』なら、任せてください『ソナーレ』とわたしなら、華麗なる演奏と圧倒的なパワーで目を引く、どころではなく、全身を魅了してしまいますよ!」
そんなルクスの操縦パーティションに身を乗り出してステラがびすびす突く。
「言い分はさておき、その演奏はいけません」
「って、ステラさん!? 連打は! 連打はやめてくださいですよ!?」
「キャンセルボタンを押しているのです。連打は常識。そうでなければ、間隙を縫って演奏されてしまいますから。連打連打です」
「で、でもでも、弾かないと動かせないじゃないですか!」
その通りなのである。
ルクスのホビーはマニューバタイプ。しかもキーボードで演奏することに寄って操作される特殊仕様。
なので、演奏と操縦が密接に結びついているのだ。
「確かにその通りなんですけども。もうその『プラクト』、スクラップアンドビルドしません?」
「な、なんでなんです!? 今回はしっかり目立って『プラクト』の良さを刷り込むのが正義なんですよ! わたしなにも間違って無いですよ!」
「いえ、ですから問題なんですってば」
「いいえ! これはもう『洗脳サッカー選手』どころか『ゼクス』さんまで涙する演奏のはずなんです! だから!」
なにがなんでも演奏するのだという意志がルクスから伝わってくる。
その意志の強さにステラは目を見張る。
そうか、とも思う。
これまで多くの旅路で経験したことが、ルクスの強さに変わっているのだろう。
ならば、自分は何も言うことはない。
「仕方ありません私は生きます」
きゅぽっとステラは耳栓をつける。
「え、なんで耳栓!? わたしと合わせて二人で……って思っていたのに!」
微笑むステラ。
何かルクスが言っているが聞こえない。
聞こえないふりではない。本当にシャットダウンされているのだ。連携には掛け声は必須。けれど、これまでの旅路でわかったことがある。
ステラはルクスの動きを見てからでも合わせることができる。
これまで何度も合わせてきたのだ。視覚が覆われていても。聴覚が塞がれていても。
何の問題もないのである。
「ええ、合わせる程度は」
「聞こえて無いですよね!?」
「さあ、行きますよ。天使核、コネクト。ブレイド、形成。この一撃、軽く見ない事です!」
輝く雷光の剣。
赤い『熾裂』こと『クリムゾン・リッパー』が手にした雷光の剣が光を解き放つ。
もうルクスの抗議なんてどこ吹く風である。
「なんでですか! なんでですかー!」
ルクスはなんとかしてステラの耳栓を引っこ抜こうとわたわたしていたが、その間にステラは雑に雷光迸る一撃でもって迫りくる『洗脳サッカー選手』の操る『鉄球バスター』を打ちのめし、己の耳を塞ぎ、守る対ルクス用耳栓の効能に満足げな顔をするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●POW
ジャンジャジャーン!
オレ様の電脳魔術で3Dプリンタってスクラッチビルドした1/40スケールのベアキャットFuture X、その名もベアキャットFX!
本物のベアにはコックピットはねぇけど、まるでベアになったみてぇにいっちょ暴れてやるぜ!
フィーア、気にしねぇでアインの言う通り試合に集中しろって
そんときゃ、オレ達がフォローするからよ!
バカデカい氷の熊はFX自慢の【怪力】で相撲を取ってやんよ!
関節部に仕込んだ小型モーターが唸るぜ!
元の鉄球に戻ったら、お返しでサッカーらしく蹴り返してやるぜ!
スペシャルデラックスゴールデンデリ…ッ!?
いつつ…舌を噛んじまったから『ベアキャット・アタック』シュート!
ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)はゴキゲンだった。
彼はいつも思っていた。
なんかおもしれぇ事ねぇかなー、と。
いつだって退屈していたのもあったけれど、彼は漆黒のスーパーロボット『ベアキャット』と出会ったのだ。
それから退屈とは無縁であったし、猟兵として戦いに赴くのは多くの経験を与えてくれた。
彼の頭脳に溜まった知識は、経験によって裏付けされ強さへと変わっていくのだ。
「ジャンジャジャーン! 見ろよ! オレ様の電脳魔術で3Dプリンタってスクラッチビルドした1/40スケールの『ベアキャット』……『Future X』、その名も『ベアキャットFX』!」
ウィルは漆黒のプラスチックホビーをフィールドに投入させ、操縦パーティションでコンソールを掴む。
タイプは『モーション』。
自分の動きをトレースする操縦方法であり、ウィルはそのことについてご満悦だった。
何せ本物の『ベアキャット』にコクピットはない。
けれど、この『プラクト」であれば、まるで自分が『ベアキャット』になったように暴れることができるのだ。
『ガォン!!』
しかも、スピーカー内蔵で『ベアキャット』の咆哮をサンプリングした音が響くのだ。
「ええ、なにそれかっけー!?」
『アイン』が目を丸くしている。
これまで多くの猟兵たちのアイデアを見てきた彼女であったが、唸るホビーは初めてであった。
それはウィルがこれまで『ベアキャット』と共に戦ってきたバディであればこその発送であっただろう。
「で、でででも、敵まだあんなにいっぱい……!」
「『フィーア』、気にしねぇで『アイン』の言う通り試合に集中しろって」
「は、はははい!」
「失敗したらオレたちがフォローしてやったからよ!」
漆黒のスーパーロボット『ベアキャット』は誰かのために。
なら、ウィルが作り喘げた『ベアキャットFX』もまた、誰かのために咆哮を上げるのだ。
「良い機体だ! だが、俺達の巨大熊にはなぁ!!」
ダーク化アスリート『洗脳サッカー選手』たちが繰り出す巨大熊はユーベルコードに寄って生み出された存在だ。
『プラクト』フィールドに巨大な熊が現れ、自然の猛威を知らしめるように『五月雨模型店』のメンバーたちを蹴散らしていく。
「任せとけってんだ!」
『ガオォォン!!』
咆哮と共に『ベアキャットFX』が巨大熊とガッツリ組み付く。
「相撲取ってやんよ!」
もうサッカーなんだか『プラクト』なんだか相撲なんだかわからない光景である。けれど、ウィルにとってはどれも同じだ。
これが『プラクト』という競技の間口の広さ。度量の大きさであるとも言える。
数多のプラスチックホビーを内包することのできるルール。
「ガバガバだけどよ!」
それでも皆楽しそうにしている。スポーツに興じている。
そこには八百長という駆け引きなど介在しないのだ。
小型モーターが関節部に仕込まれている『ベアキャットFX』が巨大熊を投げ飛ばす。出力の差で言うのならば互角。
けれど、関節に仕込まれたモーターによって機体の出力が底上げされているのだ。
「投げ、飛ばした!?」
「こんなの分けないぜ、『ベアキャット』にはな! じゃあ行くぜ! 必殺の!」
その声に応えるように『ベアキャットFX』が『洗脳サッカー選手』の操る『鉄球バスター』へと迫る。
「スペシャルデラックスゴールデンデリッ……ッ!?」
がちん、とウィルは舌を噛む。
いったぁ……そんな名前にするから……と『五月雨模型店』の皆は思った。
いや、わかるけど。
必殺技の名前、そういう感じにしたくなるのわかるけども。
「もうちょっと短くしてもいいんじゃねーの!?」
「そこは譲れねーんだよ! というわけで、いつつ……簡略!『ベアキャット・アタク』シュート!」
きらめくユーベルコード。
アイセンサーに迸る光と共に『ベアキャットFX』が唸りを上げて投げ倒した巨大熊を『鉄球バスター』へと蹴り飛ばす。
巨大な質量は鉄球すら意味を成さない。
凄まじい衝撃とともに『ベアキャット』は咆哮し、その黒き巨体を示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
八百長…
金のある所は違うなあ
まあ、ダークリーガーに頼む事じゃないけど
けどなんか…相手も律儀だな…
ええっと…今回は何持っていこうかな…
組みやすいエントリーモデルのロボットプラモの奴を組んで…
設定通りに軽く塗装して…スミ入れして…これでいこう!
モーションで動かしながら戦おう
サーベルを抜いて近接戦闘
鉄球を撃ち出すなんて…!
野蛮なやつらめ!
【雷鳴・解放】を起動
力を機体に纒わせ、高速機動
更に相手の鉄球に『カウンター』
稲妻の斬撃を飛ばし、鉄球を『吹き飛ばし』てそのまま相手の機体にぶつけよう
飛んでくる鉄球を弾き返してラリーといこうじゃないか
そっちは鉄球飛ばさないと攻撃出来ないよねぇ!
根比べといこうじゃない!
お金は大体のことを解決してくれる。
世の中金じゃないとはよく言うけれど、金でどうにかできないことは確かにある。
けれど、それをどうにかするためのものは金で買うことができるのだ。
つまり、金とは力。
どんな世界においても、それは変わらぬことであっただろう。けれど、例外とは常に存在する。
アスリートアースにおいて金を凌駕するものがある。
それが勝利だ。
勝利に貪欲なアスリートたちは、己たちの五体で持ってのみ、それを獲得することに拘る。とりわけ、ダークリーガーであれば殊更である。
「金のあるところは違うなあ。まあ、ダークリーガーに頼む事じゃなけど。けどなんか……相手も律儀だな……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はグリモア猟兵に来たというメールの文面を思い出した。
硬い文面。
真面目な対応。
どれをとってもスポーツマンシップに則ったやり方。いずれにしても、欲望に忠実なオブリビオンとは思えぬほどの文面であったのだ。
「とは言え、やることはいつもと変わらないっていうのなら」
玲は今回もしっかりとプラスチックホビーを制作してきていた。
色々悩んだのだ。
今回はどんなものを持っていこうかな、と。
けど、『プラクト』は実際にフィールドにホビーを投入して動かす。当然、攻撃を受ければ壊れる。
壊れるってことは直さないと行けないし、折角作ったのを壊す、というのは気が引けるのである。
なら、どうするか。
「というわけで今回はこれ! エントリーモデルのロボットプラモ~!」
設定通りに塗装し、成型色を活かしたモデル。
しかし、玩具っぽくない仕上がりになっているのはお手軽とは言え、しっかりつや消しトップコートを吹き付けているおかげである。
お陰でプラスチック特有の艶が消え、またスミ入れと部分塗装によって説明書の完成例に近い仕上がりになっているのだ。
「お手軽フィニッシュだけの機体なぞに!」
その玲が操るロボットに迫るのは『洗脳サッカー選手』たちが操る『鉄球バスター』の放つ鉄球である。
蹴り込む一撃は、明らかに過剰な性能である。
しかし、ルール違反ではないのだ。
「鉄球を撃ち出すなんて……! 野蛮な奴らめ!」
「いや、ちゃんとレギュレーションは突破してるんだが!?」
「……そうだっけ。まあいいや! 雷鳴・解放(ライトニング・リリース)!」
雑に輝くユーベルコード。
機体より発露するのは雷。
迸る雷光は、それだけで迫る『鉄球バスター』を通して『洗脳サッカー選手』たちの視界を塗りつぶす。
「まぶしっ!」
「ほら、そこが隙だっていうのなら!」
踏み込む機体。
抜き払ったサーベルは、通常の出力。強烈な武装、というわけではない。標準的な威力を持つ武器だった。
けれど、玲の操るホビーには疑似UDCの力がまとわれている。
見た目に騙されてはならない。
今の彼女が操るロボットホビーは疑似とは言えUDCの力を有しているのだ。その斬撃の一撃がただの一撃な訳がない。
振るう一撃が鉄球ごと『鉄球バスター』を切り裂く。
「な、なに……!?」
「甘いってば! ほら! 鉄球ラリーといこうじゃないか!」
振るう斬撃波が『鉄球バスター』を吹き飛ばす。
「いや、これラリーじゃなくて!」
「ラリーったらラリーだよ! そっちは鉄球を飛ばさないと攻撃できないよねぇ! でもこっちは、そっちを鉄球にできちゃうんだからねぇ!」
玲は不敵に笑う。
みんなぞっとするほどの笑みだった。悪い顔だった。どっちがどっちかわからなくなるほどの笑顔だった。
「えげつなー……」
『アイン』は思った。正直一番敵に回したくないな、とも。
けれど、玲は笑って『鉄球バスター』そのものを斬撃波でぶっ飛ばす。
「野球しようぜ! お前ボールな!」
もうサッカー関係ない――!
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
あどりぶ・連携・からみかんげい!
ナイアル亭はマネージャーだった?
いいじゃん楽できるとこは楽すれば!
ぜんぶ自分で作るって大変だよー?ボクもちょっと手抜きしちゃったし!
何をって…ほらたまに世界ってバグってるでしょ?デバッガーなんて昔いないからさー
なんて実はちょっと思ってるし言っちゃったけど誤魔化すようにそれっぽく装っておこう!
●一度見た技は
ボクには通用しない!
そうボクの【第六感】がその鉄球技の癖を、動きの特性を覚えているから!
ボクのプラクト!バラバラXくんのバラバラ回避からのバラバラアタックが冴え渡る!
全身分離砲台による全周囲全体攻撃だー!ド派手にゴーゴーッ!!
ドーーーーンッ!!!
『五月雨模型店』にマネジメント部なんていない。
ついでにいうと、なんでグリモア猟兵のメールアドレスにダークリーガーからメールが届いたのかもわからない。
どういう理屈で連絡手段をしったのかもわからない。
わからないことだらけではあるが、しかしはっきりとしていることがある。
それは、この八百長試合を共にぶっ壊すということだけである。
「いいじゃん楽できて!」
とは言え、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は八百長試合を仕掛けた金持ち坊っちゃんこと『ゼクス』少年については肯定的だった。
「全部自分で作るって大変だよー。ボクもちょっと手抜きしちゃったし!」
神性である己でさえ、しんどいことはあるのだ。
人間であればなおさらのことであろう。
というか、手抜きってなんであろうか。
「何の話をしている?!」
ダーク化アスリートである『洗脳サッカー選手』たちが『鉄球バスター』をもって鉄球を打ち出し、ロニの操る『バラバラX』へと襲いかかる。
降り注ぐ鉄球の最中を『バラバラX』は全身を分解しながら宙を舞うようにして躱す。
それは華麗というよりは、異様であった。
全てのばらばらになったパーツが自律して飛び、どのようなコントロールでそんなことになっているのか、見ている者は理解できなかっただろう。
できなかったが、その脅威なる光景に沸かぬわけがない。
「なにって、ほら、たまに世界ってバグるでしょ? デバッカーなんて昔いないからさー」
「……?」
「あ、えっと、ほら、あれあれ。一週間の休みが一日で解消できるわけないでしょってあれ!」
誤魔化すようにロニは笑って迫る鉄球の全てを躱し、ばらばらになッタパーツを再び集結させ、『バラバラX』の元の形へと集約する。
そして、さらにまたバラけて飛ぶのだ。
「全身分離砲台で全周囲全体攻撃だー!」
ばらばらになった全身のパーツそのものが砲台。
一個一個全てがエネルギーを介在し、その先端から由来のわからぬエネルギーの熱線を解き放つのだ。
それは『鉄球バスター』たちが放った鉄球の雨を越える嵐の如き砲撃。
戦場を埋め尽くす火線。
全てが『洗脳サッカー選手』たちの機体に襲いかかり、射抜いていく。
爆発が巻き起こる中、再度『バラバラX』が集結し、人型へと戻る。
「なんで一回集まったのかって? え、だってそのほうが絵面がよくない? 派手でしょ? こういうのはいつだって派手派手過ぎるくらいがいいんだよ!」
えぇ……と困惑する『五月雨模型店』のメンバーたち。
確かに派手なのは良いかもしれないが、派手すぎないだろうかと思うのだ。
だって、ロニのホビーが分離したパーツは正直、細かすぎていくつあるのかわからない。そのいくつあるかわからない砲台と化したパーツから砲撃が注ぐのだ。
正直、凄い、という感情より先に引く気持ちのほうが強くなってしまうのだ。
「そんな顔しないで! ほら、いくよ! ゴーゴーッ!!」
あはは! と笑いながらロニはど派手に砲撃また繰り返していく。
敵の数なんて目じゃないとばかりに笑う彼の声が戦場に響き渡り、更に迫る敵を打ちのめしながら、火線の嵐でもって突き進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』
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POW : 今よりここを|キャンプ地《強化合宿》とする!
レベルm半径内を【使用料を払い使用許可を取り合同強化合宿場】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【合流する追加メンバーと模擬試合、合同練習】が強化され、【団体行動を乱しスポーツ精神に反するもの達】が弱体化される。
SPD : 私が負けたか、悔しくない訳がない!しかし、次は!
自身の【敗北した時に潔く敗北を認め健闘を讃えて】から【再戦と更なる成長を誓い潔く立ち去る雰囲気】を放出し、戦場内全ての【追撃や深追いと言ったみみっちい行いと感情】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ : そんな事で諦めてどうする!私がいる!共に往くぞ!
行動成功率が0%でなければ、最低成功率が60%になる。
イラスト:めんきつね
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「五ヶ谷・グレン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』はフィールドに入り乱れるプラスチックホビーの絢爛たる戦いの光景を見遣り頷く。
「では、頃合いですね」
彼女の手にあったのは、ファイヤパターンの刻まれた『インセクトボーガー』。
名を『フォイアロート・ヒルシュ』。
クワガタ型であり、またファイアパターンの塗装から察せられるに苛烈なる攻撃力を持っているのだろう。
「私も参りましょう。これは確かに八百長試合を潰すための試合。ですが、勝敗を決するという意味では、私の中にある勝利への渇望は陰ることはなく!」
故に、と彼女はオーバースローで己の『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』をフィールドに投げ放つ。
凄まじい勢いで持って飛び込む『フォイアロート・ヒルシュ』は『五月雨模型店』のメンバーの機体を、ただ投入しただけで破壊してしまうのだ。
「こんなことで私を倒せるとでも! 真剣勝負であるからこそ、私は宣言致しましょう! このままでは、あなた方は然る後に開かれる『ワールド・ビルディング・カップ』で勝利を収めることなど夢のまた夢!」
彼女の瞳がユーベルコードに煌めく。
フィールドを書き換えるかのような強烈なユーベルコード。
「この私、優勝請負人こと『颯爽菱子』に続きなさい!」
彼女の周りに集うダーク化アスリートたちは、今までも十分に強烈な力を持っていた。
だが、彼女の言葉に叱咤激励されたダーク化アスリートたちは、漲るスポーツマンシップによって超強化され、彼女の『インセクトボーガー』に続くように、猟兵と『五月雨模型店』のメンバーに襲いかかるのであった――。
神代・凶津
同じ『インセクトボーガー』使いかッ!ならば小細工無用ッ!正面から突貫だッ!
立ち塞がる敵を打ち砕け、『デスメタルヘラクレス』ッ!!
この戦い、一瞬の油断や隙が命取りだぜ。相手の動きを見切り、受け流し、フェイント等を交えながら激突を繰り返すぜ。
この激しい戦いにはダーク化アスリート共はおろか『五月雨模型店』のメンバーすら迂闊には入ってこれないかもなッ!
ここだッ!必殺【エンハンスサクラストーム】ッ!!
(説明しよう。エンハンスサクラストームとは機体を高速スピンさせて桜吹雪を巻き起こし、敵にダメージを、味方に強化を与える必殺技である)
「…これは小細工では?」
必殺技だからノーカンッ!
【アドリブ歓迎】
猟兵たちと『五月雨模型店』のメンバーの攻勢は凄まじかった。
これまで多くのダークリーガーたちと戦ってきた彼等にとって、経験とは何物にも代えがたいものであった。苦難があった。険しい道程があった。
けれど、どれもが彼等の血肉となって心技体のいずれにも満たされていた。
故に彼等は負けない。
諦めるということも。敗北を認めることも。勝利に手を伸ばすこともやめられないのだ。
「ならばこそ! 我々があなた方を打倒してこそであると言えましょう! その先にある勝利こそ私は求める!」
その声はダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』。
彼女が操る炎の色を持つ『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』が、その強靭なるクワバタの角を持って疾走する。
凄まじいパワーとスピードを兼ね備え、強靭な躯体を持つ『インセクトボーガー』は、これまでの戦いで知るところである。
「スポーツとは! 死力を尽くしてこそ! そこに日々の努力と才能以外の物が介在することはないのです! 故に!」
炎の嵐を巻き起こすように『フォイアロート・ヒルシュ』が炎をまとって飛び込んでくるのを受け止めるものがあった。
それは黒光りする刺々しいフォルム。
そう!
「立ちふさがる敵を打ち砕け、『デスメタルヘラクレス』ッ!!」
それは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が操るホビー!
同じ『インセクトボーガー』シリーズのホビーである。激突する角と角。炎と雷が吹き荒れる光景は、モニター越しに見る者たちにとって驚異的な試合であった。
そして、皆固唾を呑んで見守るのだ。
「同じ『インセクトボーガー』使いかッ! ならば小細工は――」
「――無用でしょう! 正面から!」
「……突貫、ですよね?」
凶津、『颯爽菱子』、桜。
三者の言葉が重なり、互いの『インセクトボーガー』が弾け飛んで距離を取るが、即座に互いの機体は大地を斬りつけるようにして疾駆し、己の敵へと迫る。
「この戦い、一瞬の油断や隙が命取りだぜッ!」
「ええ、凄まじい気迫を感じます。如何にしても勝利を得ようとする……そんな気迫を」
「なら、やるっきゃねえよな!」
走る『デスメタルヘラクレス』が揺れる。
それはフェイントを交えた挙動であった。けれど、それをしゃらくさいと言うように『フォイアロート・ヒルシュ』が凄まじい突進で持って組み付く。
角と角が再び激突し、火花を散らす。
だが、『デスメタルヘラクレス』の巨大な角を『フォイアロート・ヒルシュ』の二本の角が挟みあげ、捻るようにしてひっくり返そうとするのだ。
「なんのッ!」
ぎりぎりと『デスメタルヘラクレス』のパワーがひっくり返そうとする『フォイアロート・ヒルシュ』を押さえつける。
「近づけない……!」
「なんというパワーとパワーの激突!」
『五月雨模型店』のメンバーたちも近づけない。迂闊に近づけば、余波だけで機体が壊れてしまうと理解できるからだろう。
「互角ですね!」
「いいや、ここだッ! 必殺! エンハンスサクラストームッ!!」
凶津の瞳がユーベルコードに輝くと同時に桜の霊力が浄化の力を宿してフィールドに吹き荒れる。
「一体何の花びらです、これは!?」
説明しよう!
『デスメタルヘラクレス』から放出される桜吹雪は、炎と雷の激突のさなかに舞い散る。
それは『フォイアロート・ヒルシュ』には浄化のダメージを。
そして、『デスメタルヘラクレス』には霊力に寄って回復を。
攻防一体の|必殺技《ユーベルコード》なのである!
「……これは小細工では?」
「相棒ッ! そういうのは野暮だぜッ!! こういう時、必殺技を叫んだほうが勝つって相場が決まってんだ! 後で店長に『インセクトボーガー』DVD見せてもらって勉強してこいッ! いくぜッ!!」
「……馬鹿な、これが!」
吹き荒れる桜吹雪が『フォイアロート・ヒルシュ』を吹き飛ばす。
その躯体へと飛び込む『デスメタルヘラクレス』の角の一撃が、強靭なる躯体を吹き飛ばす。
「派手にいかせてもらったぜッ!」
「お、お見事、です……ッ!」
凶津の鬼面がカタカタ揺れ、桜は本当にこの後DVDを見せられるのかとたじろぐのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』だが
(悪霊としても忍としても)……やりにくいったら。
まあ、その気持ちはわかるものなんですが。慣れてるのも私なのでー。
試合は試合ですし…そのままいきましょう。
さて、こういう試合の団体行動はマイナスになるのはわかってますからね。乱してよいものではなし。
UC使って、私が漆黒風を投げ放っての足止めの役を、霹靂が突撃する役目をしましょう。
これこそが連携というものですからね。
※
霹靂「クエクエッ!クエーッ!」
まだまだやる!突撃するーっ!
陰海月「ぷきゅ、ぷーきゅ!」
黄色いポンポン持って踊る応援
「これより此処を! キャンプ地とする!」
その宣言と共にダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』は、その瞳をユーベルコードの輝かせる。
フィールドを塗り替えるユーベルコードは、彼女の率いるダーク化アスリートたちの力を強化するものであった。
凄まじい気迫が満ちるダーク化アスリートたち。
裂帛たる気合。
雄叫びのような声を上げる彼等を『颯爽・菱子』は満足げに見やる。
「その意気です。気迫で負けていては勝負以前のこと! 試合に勝つためには即ち己を信じること! 即ち、自信を持つということ! 貴方達が積み上げてきたもの! 努力! 根性! 熱血! それが貴方達を勝利へと邁進させるのです!」
其の言葉にダーク化アスリートたちは拳を突き上げ、さらに恐れなく猟兵たちへと迫るのだ。
「なんともまあ……」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は思わず眉根をハの字にしてしまっていた。
彼等のスポーツマンシップは素晴らしいものだった。
どこからどう見てもスポーツマンだった。確かに『颯爽菱子』はダークリーガー。
倒さねばならない相手なのだが、今も律儀に『五月雨模型店』に強化合宿の届け出をして、ちゃんとフィールドの使用料を払っているのだ。なんともしっかりした大人である。ああいう大人がいるから青少年たちはすくすく育つのだと理解できる。
しかし、それ以上に己の操るロボットホビー『戦国大将軍』を載せた騎馬を操縦するヒポグリフ『霹靂』が嘶く。
それは強大なるダークリーガーの気迫に気圧されたからではない。
「クエクエッ! クエーッ!!」
まるでまだまだ戦う! まだやる! 突撃するー! とダーク化アスリートの意気に呑まれたようにいなないているのだ。
『陰海月』もポンポン持って応援して背中を押しているようだった。
いや、なんともやりづらい。
それもそのはずである。
己は忍び。
こうした合戦の如き盛大なる戦いというのは、本来縁遠いものなのだ。
「その気持はわかるものなんですが」
戦いに呑まれてはならない。『霹靂』をたしなめるのも慣れているというものである。とは言え、試合は試合だ。
このまま続行するし、何をおいてもダークリーガー『颯爽菱子』のホビーを倒さねば、この『プラクト』に勝敗は決しないのだ。
「どうしました! まだ試合は終わっておりませんよ! それとも此方が使用料を払う暇を待っていてくださったのですか、ありがとうございます!!」
「それがやりづらいんですよねー……ですが、参りましょうかー」
「いざ!」
『颯爽菱子』の操る『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』が猟兵に与えられたダメージもなんのそのと突撃を敢行する。
この戦いにおいてスポーツマンシップに反する行いは、返って減点となる。
となれば、己がすべきことは一つ。
「『霹靂』、突撃は任せましたよ」
「クエッ!」
一層張り切る『霹靂』と共に『疾き者』は『戦国大将軍』の掌に棒手裏剣型の装備を握りしめる。
パワー、スピードを置いても『フォイアロート・ヒルシュ』の方が上。
ならば、この交錯の一瞬こそが勝負の時。
互いに連携すること。
チームワークというもの。それを理解しているからこそ、『疾き者』は己の役割をわきまえる。
「これが連携というものですからねー」
一瞬。
放たれるユーベルコードの煌めきと共に棒手裏剣の一者が『フォイアロート・ヒルシュ』のクワガタ型の角の一つを打ち砕く。
「『インセクトボーガー』のプラ装甲を砕くですって!?」
「ええ、これは命中した箇所を破壊するユーベルコードですので……とは言え、お見事……こちらも兜の角飾りを砕かれましたか」
一瞬の交錯で放たれた互いの攻撃は互いの角を砕く結果となった。
交錯し、駆け抜けていく最中、『颯爽菱子』と『疾き者』は互いの健闘を湛えるように、おられた己の角の傷跡を見遣り、また同時に強者と相まみえたことをよろこぶように、互いの戦場を再び駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
うーん、ドライ君には本物のにぃなちゃんを見抜かれちゃったかぁ。
やっぱ前回色々たっぷり教えて貰ったもんね☆
そう、これがプラクトが繋いだ絆ってヤツ!
だよね、ドライ君♡
その絆の為にも、優勝請負人が相手だからって負けらんない!
プラモも裸足だから【空中浮遊】はそのまま、相手の攻撃のを天球儀の【ジャストガード】で受けて、そのエネルギーを利用してふわふわーっと移動しよう。
【オーラ防御】でそのまま壊されないようにしなきゃね。
タイミング良く上空に飛べればそこがチャンス!
踊るように宙を舞って、それを予備動作にしてオーナーをキックで攻撃だ!
やっぱりオーバーヘッドキックみたいなのが映えるかな?
ドライ君、どう思う?
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)とメーカーがコラボした美少女プラモデルの出来栄えは申し分なかった。
そして、ニィナが造り出した天球儀杖の装備の出来栄えもまたユーベルコードを介して見事な立体映像の分身たちを寸分違わず再現していたのだ。
これによってフィールドは混乱し、ダーク化アスリートたちを翻弄しきる。
けれど、かつてSDスタイルのプラスチックホビーの操縦方法を特訓した仲である『五月雨模型店』のメンバーである少年『ドライ』には見抜かれていた。
「うーん、『ドライ』君には本物のにぃなちゃんを見抜かれちゃったかぁ」
「衣装が違ったしな! あの衣装も作るの大変だっただろう!」
ちょっと得意げな『ドライ』にニィナはにっこり笑う。
これも前回色々たっぷり教えてもらったからこそ生み出された絆であろう。
こうした絆が生まれるのもまた真剣勝負の試合を経てこそ。
八百長では絶対に生まれることのない強固なる絆があってこそ、真贋を見極める目が養われるのだ。
「わかったかな☆」
そういってウィンクして見せたのは、カメラの向う側にいるであろう、八百長試合を持ちかけ、自分が試合を操っていると思い込んでいた『ゼクス』に向けてであった。
この動画を見ていた視聴者からすれば、ファンサービスにも思えただろう。
「絆……これが……そう、なのか?」
『ゼクス』少年にも真剣勝負によって育まれるものがどんなものであるのかを理解する素養がある。別にもとから金で全部解決するような少年ではなかったのだ。
金の魅力が、魔力が、そして多忙な両親と共に過ごせない時間が彼を歪めたのかもしれない。
「これが『プラクト』が繋いだ絆ってヤツ! だよね、『ドライ』君♡」
そういって、こっそりウィンクなんてするものだから、少年はなんとも気恥ずかしい。いつも大声な『ドライ』が、声を小さく、おお、だか、おう、だかわからない返事をシてしまうのだ。
「その絆の為にも、優勝請負人が相手だからって負けらんない!」
「こちらこそ、最高の試合をするためには望むべくもありません!」
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』が傷ついて、角が片方折れた『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』を手繰り凄まじい加速で持ってニィナへと迫る。
「突進力が凄いってことはわかってるよ!」
「『インセクトボーガー』……! パワーもスピードもあるし、装甲もすごいぞ!」
「うん☆ なら、こうしちゃおう!」
ニィナの手にした天球儀が煌めき、ニィナのホビーを宙に浮かせる。
だが、それで攻撃を避けられたわけではない。
「この『フォイアロート・セルシュ』の突進を舐めないで頂きましょう! 例え空中でも!!」
迫る折れた角。
しかし、一本でもあれば十分なのだ。其の鋭き鋒がニィナの柔らかなホビーに突き立てられんと迫る中、ニィナだけが笑っていた。
天球儀杖の先を突きつける。
瞬間、ニィナのホビーが突進のエネルギーを受け止め、その突進のままに空へと衝撃を逃がすのだ。
ふわふわと飛ぶニィナのホビー。
「衝撃を殺した……!?」
「そうか! お姫様の服を布製にしたのはホビーを軽くするためだったのか!」
「そういうこと! 今こそチャンスだよね!」
上空に舞うように、踊るようにしてニィナのホビーが衝撃のエネルギーを体の中に取り込む。やたらもったいぶった準備動作。
しかし、パンしてカメラがよれば、ニィナの体を再現した見事なプロポーションがモニターに映し出される。
なんかの変身バンクか何かかと見紛う見事な動作。
その動作は、ユーベルコードの煌めきを持って空に輝く。
「せいやー☆ これがファイナルにぃなちゃんアタック(ファイナルニィナチャンアタック)だよ☆」
その見事な飛び蹴りの一撃は、派手なエフェクトを撒き散らしながら『フォイアロート・セルシュ』へと叩き込まれ、強靭なプラ装甲に罅を走らせる。
くるりと、空中で一回転してニィナはカメラに向かってVサインを突きつけて笑むのだ。モニターの向う側では歓声が湧き上がる。
そんな中、ニィナは『ドライ』の操縦パーティションを覗き込んで尋ねる。
「うわっ、どうした! ニィナお姉さん!?」
「ねーねー、やっぱりオーバーヘッドキックみたいなのが映えるかな?『ドライ』君、どう思う?」
すっかりなかよしになったニィナと『ドライ』は試合が終わってからにしない!? と少年特有の気恥ずかしさでもって、しっかりと紡がれていることを教えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
くっ、流石にマニューバタイプのスピードとパワーは凄まじいですわねっ。
避けるのが精一杯で反撃する余裕がありませんわっ。
……一か八かですけど勝負させていただきましょう。
真正面から受け止めるふりして相手の勢いも利用してジャンプ。
吹き飛ばされるのも想定した動きで高々と飛び上がります。
落下地点を狙って突撃してくると思うのでそこへ落下の勢いを利用してブレイク・スマッシャー。
周辺の地形を粉砕しヒビだらけにしてフォイアロート・ヒルシュの速度が低下した所に全力の一撃を叩き込みますわ。
勢いを殺されてはご自慢のパワーも全力で出せませんでしょうっ!?
『インセクトボーガー』のプラ装甲は強固であった。
それは『インセクトボーガー』同士が激突し合う玩具であったからこそである。圧倒的なパワーとスピードを持つが故に同じ玩具がぶつかれば壊れてしまう。だからこそ、強靭なプラ装甲を持たされているのだ。
過剰な性能であると言えるだろう。
玩具が壊れないように、というのは建前でしかない。
『インセクトボーガー』は確実に『プラクト』において優位になるように設計されている。故に未だ亮平のユーベルコード発露する一撃を受けてなお、装甲に亀裂が走るのみにとどまっている。
「角が砕かれたのは誤算でしたが! しかし、まだ私達の敗北が決定したわけではないのです!」
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』が叫ぶ。
まだ勝負は終わっていない。
彼女が諦めない限り『プラクト』の試合は終わらない。
ホビーが壊れるまで戦い続ける。
それに、と彼女は思う。
「圧倒的な窮地から逆転することこそ!」
「ええ、同意いたしますわ」
イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は自身を模したホビーを操り、『インセクトボーガー』へと迫る。
畳み掛けるのならば今しかないと判断した。
あのパワーとスピードは厄介だった。しかし、その判断を『颯爽菱子』は理解していた。敵ならば必ず、この隙を逃さないと。
「甘い!」
振るわれる一撃を『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』がその場でドリフトするように回転して躱す。
「疾い……! さすがにマニューバタイプ……!」
「回転こそ『インセクトボーガー』の真骨頂! 受けていただきましょう!」
回転の一撃で『インセクトボーガー』の躯体がイリスフィーナのホビーに激突する。衝撃に体が揺れる。
防御が間に合ったのは幸いだった。
けれど、さらに欠けた角の一撃がイリスフィーナに迫る。
「もらった!」
「まだですわ!」
振るわれる一撃をバク転で間一髪躱し、イリスフィーナは距離を取る。だが、其の距離すら取らせてもらえない。すぐさま『フォイアロート・セルシュ』は突っ込んでくるのだ。
その猛攻は苛烈。
そして、イリスフィーナは理解するだろう。
避けることだけならば出来るだろう。けれど、それでは勝利することはできない。反撃できないのならば。
「……一か八か……勝負させて頂きましょう!」
「反撃の隙など与えませんよ!」
突っ込んでくる『フォイアロート・セルシュ』をイリスフィーナのホビーが受け止める……ふりをして角の一撃を蹴るようにして中に飛ぶ。
衝撃を殺す。
先んじた猟兵も取った行動だった。
だからこそ、『颯爽菱子』は勝利を確信する。一度見た対処を己が見誤るわけがないと。
落下するホビーを操り、イリスフィーナの瞳がユーベルコードに輝く。
「落下地点を……!」
「狙ってきますわよね、当然!」
振るう拳。
意志の力で強化された一撃。それは、イリスフィーナの持てる渾身の一撃。ホビーに搭載されたユーベルコード発生装置が一層強く煌めく。
「剛腕爆砕、ブレイク・スマッシャーッ」
振るう一撃が『フォイアロート・ヒルシュ』ではなく、地面を打ち砕く。
亀裂走り、吹きすさぶ衝撃波。
そして、何よりも『インセクトボーガー』が大地を疾駆するホビーであるがゆえに、亀裂は知ったフィールドは思うような加速を得られない。
「まさかここまで計算して……!」
「ええ、勢いを殺されてはご自慢のパワーも全力で出せませんでしょうっ!?」
ならばこそ、こちらは渾身の一撃を叩き込むことができる。
人型である、というとは、如何なる地面に対しても踏ん張りが効く、ということだ。
振るう一撃は彼女の鍛えられた肉体と、意志に寄って生み出されるもの。
あらゆるものを爆砕する一撃が『フォイアロート・セルシュ』の装甲を砕くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
ユ(2P)「さては菱子さんクワガタ派っすね?
周りの連中はわたしがアルミィ先生で相手するっす!
折角の|カブト《アイゼンケーファー》vs|クワガタ《フォイアロート・ヒルシュ》対決…思いっきりやっちゃうっすよ!」
はい!【指定UC】でこのフィールドの「元の世界からの隔離度」を上げつつ、同時に何かの主題歌っぽいBGMが聞こえ始めますよ!
そして文字通りの「必殺技」です!
強化された速度と防御力で真っ向からぶつかって捕まえに行って、
さっき(第一章)と同じ、でも演出も威力も大幅強化されて
地が裂けたり(演出)
大爆発したり(演出)
と派手になった【ユーシアのプレイ日記~格闘ゲーム~】の空中コンボを叩き込みます!!
粉砕された装甲。
猟兵の放ったユーベルコードの一撃がダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』のホビー、『インセクトボーガー』の強靭な装甲を砕く。
これまで猟兵によって亀裂は知らされていた傷跡にそうようにして衝撃が走り抜けたのだ。どれだけ強固なプラ装甲であろうとも亀裂に溶剤が染み込めば簡単にクラックしてしまうように、『フォイアロート・ヒルシュ』の装甲もまた砕ける運命にあったのだ。
「ですが! ここで終わるわけにはいかないのです!」
「そうだとも! オーナー! 俺達の装甲を使ってくれ!」
そう叫んだ瞬間、『フォイアロート・ヒルシュ』にダーク化アスリートたちの機体の装甲が飛び、装着される。
色の異なる装甲が装着された瞬間、ファイアパターンが浮かび上がり赤く染まる。
「これぞチームワークというもの! ここはすでに強化合宿にして試合会場! すでに使用料は支払済! 節度を持って後始末は必ずして帰りましょう! 帰るまでが合宿です!」
其の言葉に唸りを上げる『フォイアロート・ヒルシュ』。
砕かれた装甲と角は、ダーク化アスリートたちの機体から補充され、チームワークの力を示すように咆哮するのだ。
「さては菱子さんクワガタ派っすね?」
ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)は、己のキャバリア型ホビー『アイゼンケーファー』を操り、『インセクトボーガー』へと真っ向から迫る。
「周りの連中はわたしが『アルミィ先生』で相手するっす!」
「折角の|カブト《アイゼンケーファー》VS|クワガタ《フォイアロート・ヒルシュ》 対決……思いっきりやっちゃうっすよ!」
ユーシアの言葉に『颯爽菱子』は不敵に笑む。
確かに奇しくもカブトクワガタ対決の様相を呈している。
「面白い! ならば問答に手出しは無用! ゆきます!!」
「真っ向勝負っすよ!」
「はい! システム:必殺技演出ON(リョウヘイヒッサツムービー)!」
ユーシアが取り出したのはラジカセ。
何を、と思ったが操縦パーティション内においては手出しできない。
いや、というか本当に何をするつもりなのだと『颯爽菱子』は訝しむ。けれど、そんな彼女を他所に奏でられるのはなぜか聞こえだす壮麗ないBGM。
盛り上がるBGM。
これよく聞いたことのあるやつ! とイントロの段階で『五月雨模型店』のメンバーやダーク化アスリートたちは目を輝かせる。
「わたし! 決めちゃってください!」
其の言葉通りであった。
ユーシアのユーベルコードは元の世界からの隔離度を上げる。
それは『颯爽菱子』によって塗り替えられた『プラクト』フィールドを更に上塗りするのではなく。
『アイゼンケーファー』と『フォイアロート・ヒルシュ』との対決を盛り上げるために二体だけをフィールドから隔離するのだ。
「こんな時にやることは一つしかありません! 相対! そして!」
「激突あるのみっす!」
ダーク化アスリートたちを『五月雨模型店』メンバーと『アルミィ先生』が食い止めている間に決めなければならない。
謎のBGM。
とても勇者感がすごい。月面で地球をバックにして戦っているようなBGMである。フィールドも空気呼んだように切り替わる。
「なんだなんだ!? なんだあれ!?」
金持ち坊っちゃんこと『ゼクス』はモニターに映るフィールドが急に月面になったことに驚きを隠せない。
カブトとクワガタ。
二機のホビーが激突する。火花を散らし、月面を割り、さらに爆発が巻き起こる。
それはあまりにもド派手な演出であった。
ユーシアの『アイゼンケーファー』が『フォイアロート・ヒルシュ』の鋏の如き角を受け止め、パイルバンカーの一撃を叩き込み、打ち上げる。
「これが必殺技というものです! 受ければただではすみませんよ!」
煌めくユーベルコードの一撃。
無数の武装を組み合わせたコンボ技が壮麗なBGMに乗って『フォイアロート・ヒルシュ』を吹き飛ばす。
謎の演出であったが、これこそが真剣勝負によってのみ引き起こされるドラマなのだと示すようにユーシアはパンしたカメラワークに己の『アイゼンケーファー』に決めポーズを見せつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
あ、あれはまさか……伝説の不遇メカ、クワ●ッタン!?
あんなものを持ち出してくるなんて、相当なマニアですね。
って、冤罪です。わたしは普通の勇者です。
でもクワ●ッタンなら対処の仕方はありますね。
あのメカ、遠距離攻撃ありませんから!(どやぁ
そんなわけで、ここは【Canon】を最大増幅で痛ぁ!?
……【Tanz des Hagel】で足下を氷漬けにして、機動力を封じます……。
あとはステラさん、お願いしますね。
わたしはステラさんにあわせて、
魅惑の生演奏からのパワーアタック、決めちゃいますよ。
クワ●ッタンの殻とソナーレのパンチ、どちらが固いか勝負です!
え? クワ●ッタンじゃない? そなんですか?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
この世界にもWBCがあるのですね……
とか耽っている場合ではありませんでした
炎のクワガタ?バー〇ングディ〇イド的なアレですか!
ふむ?
不遇でマニアック……というとルクス様の同類ですかね?
えっ、ふつ……う??(困惑メイド)
それではどや顔の勇者様、仕掛けはお願いします
だから演奏はするな、と(すぱぁぁんっ)
いつも魔法で戦えばいいのに……
っと、その隙は逃しませんっ!(耳栓をしつつ)
クリムゾンウイング展開です!
ええ、プラクトの中でならこのような振る舞いも許されるでしょう
クリムゾンリッパー!
貴方の中のセラフィムを解き放つ時です!
とまぁ、勇者っぽいムーブで突撃かましますね
【クリムゾンウイング突撃】!
見事な必殺技演出によって吹き飛ぶ『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』。
装甲は一度砕けたが、ダーク化アスリートたちの機体によって修復されている。
しかし、内部フレームへのダメージまではリカバリーできない。
ならばこそ、ここが攻め時であったのだが、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は新たなる戦いのステージの存在を知り、困惑する。
「この世界にもWBCがあるのですね……」
『ワールド・ビルディング・カップ』ね!
そうやって略すと別のアレになりそうな気配がぷんぷんしてくる! 主にアスリートアース的や殺人野球みたいな、あれ!
「そのとおり! 私達が目指す舞台は世界! そのためには!」
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』が叫ぶ。
彼女の熱血具合は凄まじいものであった。
瞳に滾る炎は、彼女の闘志そのものであったし、また情熱であった。『プラクト』という非公式競技ながら世界大会があるという事実。
今までそんな素振りはまったくなかったというのに、しれっと打ち込んでくるあたり、そういうところである。
「故に、私たちは貴方達を打ち破り、世界すら手に入れてみせるのです!」
「……も、もしかして、あ、あれはまさか……」
そんな『颯爽菱子』の言葉を他所にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、彼女のホビーを見て震えていた。
「伝説の不遇メカ、クワ……」
「いえ、あれはバーニング……」
色々著作権てにあれな感じになるのでそこまでにしておこうか。
二人は思わず顔を見合わせる。
そこまでに好きなのか。不遇なメカ。
「あんなものを持ち出してくるなんて、相当なマニアですね」
「いえ、これ新商品なのです。弊社『株式会社サスナーEG』の『インセクトボーガー』シリーズの第二弾!『フォイアロート・ヒルシュ』です!」
「不遇でマニアック……というとルクス様の同類ですかね?」
「冤罪です! わたしは普通の勇者です」
「ふつ……う?」
困惑するステラ。困惑している場合じゃあない。
「おっと、私としたことが! 今は試合中です! 新商品のプロモートは戦いに勝利してこそ!」
煌めくユーベルコード。
『颯爽菱子』のユーベルコードはフィールドを強制的に強化合宿に塗り替えてしまうこと。
彼女の力はチームワークがあってこそである。
撃ち込まれた鉄球を『フォイアロート・ヒルシュ』の鋏で掴み上げ、凄まじいドリフト回転の遠心力を得て鉄球をステラとルクスの操るホビーへと叩き込んでくるのだ。
「貴方の武器は私の武器! 私の武器はあなたの武器! そう! 武装はそこらに転がっているのです! 武器破壊されても泣かない! 意志の強さを武器にするのです!」
『颯爽菱子』の言葉にステラは思う。
あっちのほうがよほど熱血勇者しているような気がする。
「な、なんです! じとっとみて!」
「いえ……普通の勇者は演奏しませんよ?」
「これは魔法! 奏魔法だって言ってるじゃあないですかー! そんなわけで此処は、私の演奏で……って痛ぁ!?」
「ですから、演奏はするなと言いました」
スリッパで操縦パーティションを乗り越えてルクスの頭を叩くステラ。
ここで演奏されたら味方総崩れである。
考えて欲しい。
本当に、と。魔法だというのならば、もっと臨機応変にしなければならない。
「うぅ……じゃあ、Tanz des Hagel(タンツデスヘイル)で……」
歌うような旋律と奏でルクスは『フォイアロート・セルシュ』の砕けた地面を凍りつかせる。
「これでいいんですよね?」
「ええ、上出来です」
適当にステラは頷く。
耳栓装備済みである。歌うような旋律であっても油断はできない。いつ鼓膜がバーンするかわからんのである。
故にステラは耳栓装備しつつ己の『クリムゾンリッパー』のアイセンサーをユーベルコードに輝かせる。
「『セラフィム』!」
其の言葉と共に『クリムゾンリッパー』の背面から展開した深紅の光の翼が噴出する。
「……面白い! まだギミックを隠していましたか!」
「ええ、『プラクト』の中でならこのような振る舞いも許されるでしょう!」
一度言ってみたかったのだとステラは笑う。
すでにルクスの演奏は終わっている。耳栓解除していいだろう。
吹き荒れる真紅の翼が羽撃く。
放たれるビームの光条が走り、背に追うエネルギーの翼が凄まじい加速を以て『クリムゾンリッパー』を前へ、前へと進ませる。
「直進での激突で『インセクトボーガー』に競り勝とうなど!」
「いいえ、このクリムゾンウイング突撃(クリムゾンウイング)ならば!」
直角に軌道を変える『クリムゾンリッパー』。其の動きは凄まじい軌道変更であった。恐るべきことに、その起動変更は完全に慣性を無視したものであった。
トップスピードに乗りながら、減速なしで方向転換し『フォイアロート・セルシュ』へと迫るのだ。
「今こそ貴方の中の『セラフィム』を解き放つ時です!」
「いいえ! クワ……の殻と『ソナーレ』のパンチ、どちらが固いか勝負です!」
「ですから、『インセクトボーガー』の『フォイアロート・セルシュ』です!」
三者の激突は火花を散らし、光の奔流の中に三機を飲み込み、一瞬の後に吹き荒れる凄まじ爆風がフィールドの中に吹き荒れる。
それは真剣勝負だからこそ生まれる熱量。
光の中、互いの死力を尽くした戦いは、さらなる熱を呼び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
青少年のみんなにプラクトのイイトコロを存分に魅せつけることができたというのに……。
その後にそんな人類の敵を投げ込んでくるとはどういうことなのか。
『フィーア』さん、今回もちょーっと目を瞑っててね。
いいっていうまで、目を開けちゃダメだぞー♪
さ、サージェさんいくよ。
あんなものは視界に入れることすら穢れの原因だからね。
可愛い子の目の前から疾く排除するよ。
汚物は消毒しないといけないから、ちょーっとだけ時間稼いでね☆
『憂国学徒兵』遠距離殲滅モード。
【テスカポリトカの鏡】フルチャージ!
優勝請負人だかなんだか知らないけど、あなたの敗因は『外骨格』だ!
キャンプ地ごと溶け崩れてしまえー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
(おお、理緒さんが荒ぶっておられる)
(クワガタもカブトムシも可愛いのになーとか口が裂けても言えない雰囲気)
これはアレですね
フィーアさんを眺めて癒されるターン……え?私もいくんです??
それではトラメちゃん
理緒さんに巻き込まれないように言うこと聞きましょう(がくぶる)
時間稼ぎならこれがよさそうです
トラメちゃん高速移動で分身です!(【かげぶんしんの術】)
そのまま波状攻撃しかけますよっ
反撃されても分身なら消えるだけですし
本体だったとしても痛いだけですみます!
いかな優勝請負人とて育成の時間が無ければ!
ただの優れた人です!
あれ?ダークリーガーってなんでしたっけ??
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は虫が苦手である。
いや、苦手という言葉で括れる以上の感情が彼女の中では渦巻いていた。
「青少年のみんなに『プラクト』のイイトコロを存分に魅せつけることができたというのに……」
わなわなと彼女は操縦パーティションの中で震えていた。
肩を震わせていた。
とんでもなく震えていた。
なんでそんなに、と『五月雨模型店』のメンバー『フィーア』はおどおどしていた。何がなんだかわからないという顔であった。
「その後にそんな人類の敵を投げ込んでくるとはどういうことなのか」
ブチ切れていた。
とってもブチ切れていた。
そこまで? とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思っていたし、クワガタもカブトムシもどっちも可愛いのになーって思っていた。
口が裂けてもそんなこと言えない雰囲気であることはわかっていた。
そんなこと口にしようもんなら理緒に何を言われるかわからない。いや、何されるかわかんない。
「じ、じじじ人類の敵……?」
「『フィーア』さん、今回もちょーっと目をつむっててね。良いって言うまで目を開けちゃダメだぞー♪」
「いや、目を開けなければ戦えないじゃん」
至極まっとうなツッコミを『アイン』がシてくれる。けど、サージェは、しっ! と彼女の口を塞ぐ。
余計なことを言ってはならないのである。
「さ、サージェさんいくよ」
「え、私もですか?『フィーア』さんを眺めて癒されるターンでは?」
「それはそうだけど、やることやるのが先でしょ!」
言葉面だけは本当に真っ当である。ものすごく真っ当である。
「あんなものは視界に入れることすら穢れの原因だからね」
「弊社の新商品そんなにダメですか!?」
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』が驚愕する。それもそうである。
だって、彼女が所属する巨大企業『株式会社サスナーEG』の新商品『インセクトボーガー』は目玉商品なのだ。
これから売り出して、バンバン新商品を展開していくつもりなのだ。
彼女の操る『フォイアロート・セルシュ』もまた第二弾に予定されている商品。それをダメだしどころか人類の敵とまで理緒は言ったのだ。
「そうだよ! 可愛い子の前から疾く排除……ううん、汚物は消毒しないといけないから!」
「そこまで言います!?」
「あのー、いいですか? ちょっと時間稼ぎさせていただきますねー」
サージェは虎型ホビー『トラメ』を駆り、かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)でもって戦場を翻弄する。
分身による波状攻撃。
それはダーク化アスリートたちにという援軍を有しているのだとしても、圧倒的なk図でもってサージェは彼等を翻弄する。
「数で此方を上回る……!? 一体どんな……!」
「これぞクノイチの忍法! いっぱい増えるクノイチです!」
「ですが、本体は一体! それを倒せば!」
吹き荒れるユーベルコードの嵐。激突するホビー。
本当に真っ当にホビースポーツをしている。普通に熱い展開である。溢れる分身を次々と『颯爽菱子』は吹き飛ばし、撃破していく。
分身は激突の瞬間に霧散していく。
「そこですね!」
激突する『トラメ』と『フォイアロート・セルシュ』。
火花散るような激突にサージェは己の『トラメ』が傾ぐのを知る。凄まじい突進力。強靭なパワーとスピードに裏付けされた突進は強烈だった。
だが、サージェは時間を稼いだだけだった。
彼女の背後にあるのは理緒のホビー。『憂国学徒兵』シリーズに搭載された遠距離殲滅モードに移行した彼女のユーベルコードが煌めく。
「優勝請負人だかなんだか知らないけど、あなたの敗因は『外骨格』だ!」
「それってセールスポイントになりません!?」
「ならない!」
テスカトリポカの鏡(テスカトリポカノカガミ)によって膨れ上がった砲撃の出力。
それは戦場のフィールドを溶解させるかの如き凄まじい熱量で持って『フォイアロート・セルシュ』へと奔る。
其の一撃を受けて吹き飛ぶ『フォイアロート・セルシュ』を見遣り、理緒はうん、と満足気に頷くのだ。
「……いかな優勝請負人とて育成の時間がなければ、ただの優れた人なんですよね……あー……それにしても」
「見た見た『フィーア』さん! 私の活躍!」
「え、ええええ、目を開けちゃダメって言われたので、見てませんんん~!」
「……あれ? ダークリーガーってなんでしたっけ?」
サージェは理緒との温度差で風邪ひきそうだなぁって思いながら、『颯爽菱子』が普通にアスリート育成人として良い人なのではないかと首を傾げる。
それはそう――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
連携アドリブ歓迎
大破、全損OK
来たな、請負人
貪欲に勝利を求める、結構な事じゃねーか
ああそうさ、|あたし《傭兵》の体は闘争を求めてやまない
この|衝動《興奮》だけは
いくら金を積まれたって、もう手放せねーのさ
UC発生装置が動き、直結したモーターが唸りを上げる
出力限界を引き上げる奥の手だぜ
機体ごと爆散しかねない馬力を無理やり制御して吶喊
追加の連中を跳ね飛ばしながら、ドンドン加速させていく
ポリマーフレームの重量と装甲厚に物を言わせて、請負人目掛けて驀地に突っ込むぜ
下手な手加減はスポーツマンシップにもとる、ってな
掛け値なしのフルパワーだ、ありがたく受け取りやがれ
戦場たるフィールドを溶解させる熱量の一撃。
その一撃は確かに『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』ごとぶっ飛ばした強烈な一撃だった。
けれど、ダーク化アスリートを率いるダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』は諦めていなかった。
「諦めとは!」
彼女はさけぶ。
ボロボロになった機体を押して、さらにダーク化アスリートたちの敗れた機体の装甲を得ながら、それでも『フォイアロート・セルシュ』の燃え上がるファイアパターンのように一歩を前に踏み出す。
ダーク化アスリートを育てるのに必要なのは情熱である。
まあ、洗脳を既にしてあるので、それもなんていうか、そのって感じであるのだが、しかしながら、彼女は握りこぶしを掲げる。
「勝利から最も縁遠きもの! ならば、諦めさえしなければ、必ず勝利は我が手に宿るものなのです!!」
貪欲だった。渇望があった。
そのさまをみやり、チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は笑った。
「貪欲に勝利を求める、結構なことじゃねーか」
理解できる。
勝利こそが己の存在を示すものである。唯一であると言っても良い。だからこそ、チェスカーは『ミニタイガー』を手繰り、戦場へと飛び出す。
「あなたも同類であるとお見受けしました!」
「ああそうさ、|あたし《傭兵》の体は闘争を求めてやまない。この|衝動《興奮》だけはいくら金を積まれたって、もう手放せねーのさ」
チェスカーの獰猛な笑顔は操縦パーティションで怪しく浮かび上がるものであったことだろう。
戦いの中で生きて来た。
悪ぶった言葉使いはそうなおるものではない。身に染み付いた硝煙と同じだ。
だからこそ、チェスカーは己の衝動に従う。
戦うということと生きるということは同じだ。いつの日にか必ず終わりがやってくる。其時まで懸命に生きることは、勝利を得るために手を伸ばすことと同じだった。
「ならば、言葉は不要ですね!」
その通りだとチェスカーは『颯爽菱子』の言葉に頷く。
戦いの中でしか語れぬものがある。
「いくぜ……ジェネレーター出力限界解除」
ユーベルコード発生装置がチェスカーのユーベルコードを受けて唸りを上げる。直結したモーターが凄まじい音を響かせる。
それは『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』もまた同じであった。
内蔵したモーターの性能は僅かに『インセクトボーガー』のほうが上。
だが、ユーベルコード発生装置と直結したモーター駆動はユーベルコードに寄って出力の限界を解除している。
即ち、それは自壊すら辞さぬという覚悟。
「なんという覚悟……!」
「はいつくばって生きるより、立って死ぬほうがいい。いつだって前のめりに生きてんだよ、こちとらな!」
迫るダーク化アスリートたちの機体を弾き飛ばす『ミニタイガー』。
何者も彼女を止めることはできない。
まるでひとつの砲弾と化したチェスカーの『ミニタイガー』は一気に敵を轢くようにして戦場を一直線に奔る。ただ只管に奔る。
「下手な手加減はスポーツマンシップにもとる、ってな!」
加減などない。
己の機体が自壊しようが関係ない。
砲弾と化した『ミニタイガー』のモーターが咆哮を上げ、そのままに『フォイアロート・セルシュ』と激突する。
いや、激突ではない。
自壊した『ミニタイガー』の装甲が破片を撒き散らしながら、『フォイアロート・セルシュ』へと叩き込まれる。
まるで散弾のように飛び散る破片が周囲にあったダーク化アスリートたちのホビーを打ちのめす。
「掛け値なしのフルパワーだ、ありがたく受け取りやがれ」
「なんというチームプレイ……! 我が身を顧みずに、こちらのフレームを……!」
「そうだろうなぁ! てめえの機体は確かに固い装甲持ってる、換えも効く、だがよぉ!」
フレームはそうは行かない。
チェスカーの『ミニタイガー』による自壊覚悟の突進は、『フォイアロート・セルシュ』のフレームを歪ませ、後に続く者たちのために己を犠牲にするという究極のチームプレイを魅せ、さらに試合を熱狂の渦へと引き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
あんたが巷で噂のオーナーかい?もう見るからに暑苦しいって雰囲気だな
そういう奴は、まあ…嫌いじゃないぜ?それじゃあ、やるか!
だがまずは梅雨払いからな
UCの先制攻撃で敵集団の動きを阻害し、推力移動ダッシュで優勝請負人に肉薄
ツヴァイ!模型店の皆!シューター達の相手を頼むわ!
空中戦を交えた動きで的を絞らせないよう動き
相手の攻撃は見切りや盾受けもしくは銃によるカウンターで体勢を崩させて対処
こちとら一撃でも受ければ機体が消し飛びかねないんだ。そりゃもう限界突破するぐらい必死だよ!
相手が大きな隙を曝したらすかさず懐に飛び込み、損傷覚悟の雷鳴の零距離射撃を叩き込む
これが真剣勝負ってやつさ!響けぇ!
アドリブ歓迎
ひしゃげる装甲。
吹き飛ぶ破片。
いずれもが『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』のものではなかった。猟兵の自壊覚悟の突撃に寄って飛び散った装甲は散弾のように周囲にあったダーク化アスリートたちのホビーを打ちのめす。
「フレームを直接歪ませに来るとは……! なんという自己犠牲! チームを勝たせるために自壊もじさぬとは! まさしくチームプレイ! 素晴らしい!」
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』は猟兵の果敢なる突撃に己の身が滾る思いであった。
例え、ダークリーガーであっても、勝利を貪欲に求める者であっても。
ホビー・スポーツであっても。
それでもやはり勝利を求める者には共感めいたものを感じてしまうのだろう。
「見るからに暑苦しいって雰囲気だな」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は自身のキャバリア『クロムスティール』を模したホビーを操りながら、猟兵と激突し消耗されてなお笑う『颯爽菱子』の姿に苦笑いをする。
けれど、と付け加えるのだ。
「そういう奴は、まあ……嫌いじゃないぜ?」
その暑苦しさは、きっと勝負に真剣であるからだろう。ならば、これ以上語ることはない。結果こそが全てであるが、しかし、そこに至る過程もまた得難きものであることを祐一は知っているのだ。
「それじゃあ、やるか!」
「ええ、やりましょう! 死力を尽くした戦い! その先にある勝利こそが私達の求めるもの!」
互いの激突するはユーベルコード。
祐一が放ったのは『クロムスティール』からの雷球。
それは一瞬で発生した破裂音よりも早く広がる雷撃の一撃。音よりも光が疾いのは道理である。
そして、それを躱すことなどできようはずもない。
「パラライズ……!」
「いいや、これはサンダークラップ。聞こえた時には、手遅れだ!」
祐一のホビーが奔る。
「『ツヴァイ』!!」
「ええ、任されました!」
その言葉だけで祐一と『ツヴァイ』は理解する。祐一のサンダークラップは確かに絶えず敵を帯電するスパークでしびれさせる。
『プラクト』というホビー・スポーツのルール上、敵を殲滅しなければ勝利にならない。
ならば、『颯爽菱子』が率いるダーク化アスリートたちのホビーを破壊していては、逆に『颯爽菱子』の操る『インセクトボーガー』にこちらが食い破られかねない。
「私達が出来ることを致しましょう。征きます、みなさん!」
その言葉と共に『五月雨模型店』のメンバーたちの機体が戦場に走り抜ける。確かに『鉄球バスター』は驚異的な攻撃力を持っている。
けれど、それは彼等が自在に照準を付けられればの話だ。
「照準の付けられない大砲なんて意味ねぇよな!」
『アイン』たちが一斉にスパークによって動きを封じられたホビーたちを撃破していく。
「なんと……! あなたは!」
「ああそういうことだ。こちとら一撃でも受ければ機体が消し飛びかねないんだ。そりゃもう限界突破するぐらい必死だよ!」
祐一の機体から発せられる雷球。
それはユーベルコード発生装置を搭載しているからこそ、ホビーから発せられるものである。
その負荷にホビーの機体が耐えられないのだ。
「だがよ! これはチームプレイってやつだろ! 俺が倒れても、俺に続くやつがあんたを必ず倒してくれる!」
だから、何も心配ないのだと言うように『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』の懐に飛び込む。
「この間合は!」
鋏の如き角が『クロムスティール』をはさみ上げる。
けれど、それでも祐一は構わない。
そもそも損傷など覚悟してきたことだ。
突きつけるライフルの銃口から雷が迸る。
「ああ、零距離だ! これが真剣勝負ってやつさ! 響けぇ!!」
叫ぶ心は、この試合を見ている誰しもの心を揺さぶるものであったことだろう。膨れ上がる光。
その中心から吹き飛ぶようにして『フォイアロート・セルシュ』が転がるようにして大地を跳ねる。逆に『クロムスティール』は砕けた脚部フレームを突き立て、辛うじて立っている体制を保っていた。
それは言うまでもなく。
己の勝利を誇示するように立ちふさがる驚異の光景だった――。
大成功
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メンカル・プルモーサ
……『ワールド・ビルディング・カップ』……名前的に世界大会だよね……
そっかー…そろそろ世界編になる時期かー…アインとか張り切っていそう…
…でもまあ確かに…それならここで負けるわけにはいかないね…
…『セントール』変形…人馬モード(ケンタウロス型に変形)…そして【夜空を別つ月閃の翼】を発動…
…空を飛べば有利かも知れないけど…それは野暮だよね…此処は真っ向勝負…
…『フォイアロート・ヒルシュ』の突進に対して四本の足に加えて翼を地面に突き刺してアンカーにして迎撃態勢…角を掴んで真っ正面から受け止めよるよ…
…そして勢いを殺したらぶん投げてフィニッシュ…良い勝負だったよ……
「ぐぅぅ……このままでは……! こんな体たらくでは、『ワールド・ビルディング・カップ』での優勝など夢のまた夢……!」
凄まじい雷撃の爆発と共に吹き飛ぶ『インセクトボーガー』、『フォイアロート・セルシュ』のフレームが軋み上げる。
圧倒的なパワーとスピードを誇る『インセクトボーガー』であったが、そのフレームこそが肝要であった。
なぜなら、圧倒的なパワーとスピードで激突するホビー故に、衝撃には強くなければならない。そして、強靭なフレームは一度歪めばもとに戻せない。故に外装の装甲をいくらでも変えることができたとしても、蓄積したフレームへのダメージは無視できないものがあったのだ。
「……『ワールド・ビルディング・カップ』……名前的に世界大会だよね……」
「その通り! その初開催される世界大会での優勝こそが、私達の悲願!」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の問いかけに応えるダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』。
彼女の言葉にメンカルは、そっかーと思う。
いや、本当にそっかーと思ったのだ。
「……そろそろ世界編になる時期かー……」
そんな気がしていたのだ。
となれば、とメンカルは『五月雨模型店』のメンバーを見やる。
「世界大会!? そんなのあんのかよ! まじかよ! うおー! 燃えてきたぜぇ!!」
「……やっぱり『アイン』が一番盛り上がってるな……」
でも、とメンカルは『セントール』の車体を走らせながら思う。
「……それなら此処で負けるわけにはいかないね……『セントール』変形……人馬モード」
そのコールと共にメンカルの操る『セントール』のボンネットとドアが開く。
タイヤが引っ込み、外装に覆われたフレームの中から人間の手足のようなパーツが飛び出すのだ。
「変形した……!?」
「……それだけじゃない」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、『セントール』に内蔵された『ユーベルコード発生装置』より放出される翼状の魔力。
それは月の魔力そのもの。
そして、夜空を別つ月閃の翼(アルテミス・ウイング)を纏いし人馬たる『セントール』が戦場を駆け抜ける。
「か、かっけー!!!」
「人馬形態に! 翼!! かっこよすぎるだろう!!」
『アイン』と『ドライ』が目をキラキラさせている。ただでさえ、車が変形しているのだ。テンションが上がりすぎて、試合そっちのけである。
「……あれで空を飛ばれたら……! 此方が不利!」
「だよね……けどさ、それは野暮だよね……」
人馬形態へと至った『セントール』が煌めく月光の魔力満たす光の翼を飛ぶのではなく、疾駆の加速力に転じて大地を駆け抜ける。
「まさか、真っ向勝負を仕掛けると……!?」
「……そうだよ。こういう時、真っ向から戦うのが、スポーツマンシップ、というやつ……」
激突する『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』。
角の一撃を受け止め……いや、両手で掴んでいる。ギチギチと互いのフレームがきしむ音が響き渡る。
「押し込む!」
馬力が上がる。圧倒的なモータのパワーを持ってすれば『インセクトボーガー』シリーズは圧倒的な力を発揮するのだ。
だが、動かない。
『セントール』が動かないのだ。
「……四足だけならば押し負けていたね……けど、こちらにはもう一対翼がある……」
そう、メンカルは『セントール』の背に追う翼を地面に突き立て、アンカーの要領で『フォイアロート・ヒルシュ』の一撃を受け止めてみせたのだ。
「ですが、負けません!」
踏み込むパワー。
空転するタイヤ。
その苛烈なる猛攻を前にメンカルは『セントール』でもって掴み上げた躯体を持ち上げきるのだ。
「その低い車体が仇となったね……パワーとスピードを両立させ、フレームを強靭なものとするためには素材の激選が必要だったんだろう……だから、軽くて丈夫に、行き着いた……けど、重さこそ捨ててはならないものだったんだよ……」
もしも、『インセクトボーガー』の素材が重く、スピードを捨てていたのならば『『セントール』では受け止められなかっただろう。
「持ち上げ、た!?」
「……良い勝負だったよ……」
そのまま『セントール』が『フォイアロート・ヒルシュ』の車体をぶん投げ、地面へと叩きつける。
強烈なまでの戦いぶりにモニターの向こうは熱狂に包まれる。
メンカルは来るべき世界大会に思いを馳せ、そして、その先につながる勝利を見据えるのだった――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
いいね!真っ向勝負だ!
ていうか自分が試合したかっただけじゃないのこれ?
●パワーには
パワー!
ボクの【第六感】先読みでバラバラXくんの流体装甲を攻撃を受ける部分に集中させて受け止める!
一歩間違えれば逆に大ダメージを受けてしまうけどボクたちに迷いはない…ボクとバラバラXくんの信頼関係の為せる業だよ!
散るときは派手にいかないとね!
そしてプロレス的カウンターでドーーーンッ!!
大事なのは楽しむことだよ!
過程や方法や結果なんて…どうでもいいのさ!(いいかな?)
思い切り楽しんで「楽しかったなー」って思えればどんなやりかたしたっていいのさ
逆に!後でよくなかったと思いそうならやめよう!
投げ飛ばされた『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』のファイアパターンの刻まれた装甲が砕けて飛び散る。
内部フレームはこれまでの猟兵との攻防で歪みきっていた。
だが、それでも車輪を廻すシャフトは生きている。
ならば、まだ諦められない。
諦めるわけにはいかないのだ。勝利こそ全てに勝るものである。故に、真っ向勝負から敵を打倒して得なければならない。
ダークリーガーとはそういうものだ。
だからこそ、八百長試合も突っぱねたのだ。
「まだ、負けてはおりません!」
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』の言葉が響き渡る。
彼女の瞳はまだ闘志漲るものであった。
「いいね! 真っ向勝負だ!」
そんな彼女の意志漲る瞳にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は笑う。良い気迫。良い闘志。良い渇望。
いずれも漲るからこそ己に対峙する者に対して畏敬の念すら人は抱くのだ。
「ていうか自分が試合したかっただけじゃないのこれ?」
「試合をしたくないアスリートなど存在いたしません! 全ては勝利のためなのですから!」
ダーク化アスリートたちのホビーの装甲を砕けた装甲の代わりに纏い、『フォイアロート・ヒルシュ』が疾走する。
フレームが歪んでなお、あのスピードである。
そして、最も警戒しなければならないのが、あのパワーだ。
「ぬぬ! ボクの第六感的なあれでいうと! あのパワーはまともに受けたらやばい! 一歩間違えば逆に大ダメージを受けてしまう!」
「よくご存知で! ですが、これまであなた方は私のフルパワーこそ受け止めてきた! ならば、あなた達を越えるためには!」
そう、どれだけ機体の状況がよくなくても。
それでも戦う意志さえあるのならば!
「突撃あるのみ!!」
「そうくるよねー! だけどさ、機体との信頼関係も築かないといけないんだよ! ボクたちみたいにね!」
『バラバラX』の装甲に混ぜられた流体金属。
それによって意志を受け、思念で操作できるのが『バラバラX』の特徴だ。思念に反応するということは、装甲の厚みも変えられるということでもある。
極度に集中した思念によって装甲の金属が一点に集約される。
飛び込んでくる『フォイアロート・ヒルシュ』の角。
その一撃を『バラバラX』の装甲が受け止める。
ともすれば、本当の意味でバラバラにされてしまいかねない暴挙。されど、ロニは笑って受け止めるのだ。
「こういう迷いがあると負けるパターンにハマったのなら、ボクが負けるわけないんだよ! だってボクは神様だからね! 迷わない!」
受け止めた瞬間、『バラバラX』が角をつかみ上げる。
「大事なのは楽しむことだよ! 過程や方法や結果なんてどうでもいいのさ!」
「いえ、結果は大事ですよ!」
「でもでも、思いっきり楽しんで『楽しかったなー』って思えればどんなやり方したっていいのさ!」
「暴論ですが! 嫌いではないです!」
火花散る装甲と角の激突。
それを『バラバラX』は掴み上げ、衝撃をそのままにカウンターの拳を『フォイアロート・ヒルシュ』へと叩き込むのだ。
砕け散る破片。
吹き荒ぶ爆風。
「逆に! 後でよくなかったと思いそうならやめよう!」
ね! とロニはカウンターの一撃を叩き込んだ神撃(ゴッドブロー)でもってフィールドを粉々に砕きながら、笑う。
楽しいってことはあらゆることより優先されることなのだと、またロニは笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
キャラ濃いなあ…
いや、ホントキャラ濃いなあ…
まあでも、ただ勝ちを譲られても楽しくないしこれくらいの方が楽しいか
ボーガー相手なら細かくジャンプして正面からやり合わないようにしよっと
着地狩りされないように、タイミングを合わせて『斬撃波』で牽制
【断章・不死鳥召喚〈超越進化〉】をジャンプ中に起動
上から不死鳥の雨をお見舞いしてやろう
周りのダーク化アスリートも纏めて突撃して翼で『なぎ払い』!
引き撃ちの要領で敵から逃げながら攻撃していこうかな
こっちだって負けてやる訳にはいかないからね!
なんたってこの後はお楽しみ
タダ飯が待っているんだからさあ!
タダより美味い飯は無い!
自分の財布が傷まない事は大事だからね!
戦いにおいて月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって楽しみなことが一つある。
それがなんであるのかを問われたのならば、彼女は笑って応えるだろう。
「こっちだって負けてやる訳にはいかないからね!」
「無論! 加減など不要! 私達に必要なのは真剣勝負のその先にあるもの! 私も! あなたも!勝利を渇望しているのでしょう!」
激突する『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』の角と玲のホビーであるロボットのサーベルの一撃がエネルギーの奔流を走らせる。
互いのパワー、スピード、いずれもが『フォイアロート・ヒルシュ』に傾いている。あれだけの猟兵たちのユーベルコードを受けてなお、これだけの力を出すことのできるプラスチックホビー『インセクトボーガー』の性能の高さには驚くばかりであった。
だが、それ以上に玲の技量は凄まじかった。
「正面からやり合おうなんて思ってないんだからさ!」
「パワーとスピードをテクニックで補って競ってくる……! この方は、正しくワールドクラス!」
「キャラ濃いなぁ……いや、ホントキャラ濃いなぁ……」
玲は細かく機体をジャンプさせながら『インセクトボーガー』の突進力を受けがなしていた。
けれど、それ以上にダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』の暑苦しさというか、熱血具合というか、なんていうか、キャラ付けそのものが濃いと思った。
味付けで言うのならば特能って感じ。
それほどまでに彼女の試合に駆ける意気込みは凄まじかった。
「戦いとはやはり死力を尽くしてこそ! そうは思いませんか! 勝利にしか価値がないのだとしても! 敗北が無意味だと言うのだとしても! それでも!!」
「……だよね。ただ勝ちを譲られても楽しくないのと同じだ。これくらいのほうが楽しいか」
着地した玲のホビーにすかさずチャージを繰り返す『フォイアロート・ヒルシュ』。
それは謂わば、着地狩りとでもいうものであった。
確かに空中に逃げられれば地面を疾駆する『インセクトボーガー』にとっては不利な状況が続く。けれど、ずっと飛んでいられるわけではないロボットホビーにとって着地の瞬間こそが致命的なのだ。
「なら、上から攻撃するまでだよ! 偽書・焔神起動。断章・不死鳥召喚の章、深層領域閲覧。システム起動」
断章・不死鳥召喚〈超越進化〉(フラグメント・フェニックスドライブ・エクステンド)。
そのユーベルコードに寄って召喚されるのは蒼炎で構成された不死鳥の群れ。
全てを斬り裂く蒼炎の翼を羽撃かせ、一斉に不死鳥たちが雨のように地面を這う『インセクトボーガー』とダーク化アスリートたちの機体を切り裂いていく。
「空を飛びながら引き撃ちとは……!」
「卑怯とは言うまいね!」
「当然! 立派な戦術ですもの! ですが!『インセクトボーガー』が空中戦の出来ぬホビーだと想ってもらっては困ります!」
『颯爽菱子』の言葉と共にダーク化アスリートたちの機体が発射台のように折り重なり、『フォイアロート・ヒルシュ』の足場となるのだ。
それは空へと至る架け橋の如き姿。
「……えっ、飛ぶのそれ!?」
「出来ぬ道理はないでしょう!」
疾駆する『フォイアロート・ヒルシュ』。しかし、発射台は不死鳥の蒼炎によって切り裂かれ、瓦解していく。
圧倒的なパワーを持つが故に、崩れた発射台は『フォイアロート・ヒルシュ』を飛び立たせることができなかった。
けれど、それでも、車体を跳ねさせて懸命に玲の機体へと迫る双角があった。
「負けるわけにはいかないんだよ! なんたってこの後はお楽しみ……――」
そう、と玲のロボットホビーが一撃を振り下ろす。
双角を切り裂き、一閃が叩き込まれる。
角がへし折れ、装甲には亀裂が奔る。
「それは……!?」
「タダ飯が待っているんだからさあ! タダより美味い飯は無い! 自分の財布が傷まないことは大事だからね!」
だからそのために戦うのだと、私欲もりもりで玲は熱血たるダークリーガーを切り捨てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●POW
へへ、丁度モーターが暖まって来た頃だ
ダークリーガーは何より勝利を渇望するって言うが、生憎オレらもおめおめ負けるって訳にいかねぇからな
インセクトボーガーだが何だがしらねぇが、ムシケラ相手にオレ様とFXの相手が務まる訳…なんだありゃ!?
おばさんが『今よりここを|キャンプ地《強化合宿》とする!』って一喝したら、虫プラモがどんどんスクラムを組んでいって…最後におばさんのクワガタが登って組体操したかと思ったらミキシングビルドの超巨大プラモ合体群体って…そんなのアリかよ!!
チッ、考えやがったな
FXの怪力でも持ち堪えるのがやっとで、関節のモーターも灼けちまいそうだ
殴ったら即座に分離しやがってミスさせられるし、急に腕を作りやがって死角からFXの装甲が薄い関節部を正確に狙ってきやがる
これが虫ならではの団体行動力を活かしたUC戦法って訳か
両脚と左腕をぶっ壊されちまったが…まだ手は残っているぜ!
アローライン・スクリーム!
矢印の渦で虫野郎共を引っ剥がして、司令塔のおばさんクワガタ
目掛けて渾身の一撃だぁ!
戦いの苛烈さは試合が終盤に差し掛かるにつれて加熱していく。
どうしようもないほどに『プラクト』フィールドは熱気に包まれていた。誰も彼もがモニターに釘付けであったし、何よりも真剣勝負に挑む選手たちこそが最も熱気の坩堝において、それを楽しむことができただろう。
巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』は、試合の様子を見遣り、思わず拳を握っていた。
自分のチームが負けるかもしれない。
そう思えば、思わず叫んでいたのだ。
「負けるな! 絶対に勝つんだ! 勝って、勝ってくれよ!!」
その声にダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』は笑む。
「ええ、その言葉を待っておりました!」
とは言え、機体である『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』は度重なる猟兵との激闘でフレームごと歪んでいる。
どうあがいてもまともに戦える状態ではない。
だというのに、『颯爽菱子』は『ゼクス』の言葉に応えるのだ。
すでに八百長試合などどうでもよくなっていた。『ゼクス』にとって自分のチームが負けるかもしれないという危機感こそが彼の中にあるスポーツマンシップを刺激したのだ。
「へへ、丁度モーターが暖まって来た頃だ」
ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は、『颯爽菱子』がなにか最後の死力を尽くした仕掛けを行おうとしていることを察して、敢えて止まる。
自身の機体である『ベアキャットFX』は関節部にモーターを仕込んである。
何が来ても負けるつもりなどなかった。
「ダークリーガーは何より勝利を渇望するっていうが、生憎オレらもおめおめ負けるって訳にはいかねぇからな」
それにと、ウィルは笑う。
「どうせ勝つなら全力のやつと戦ってこそだろ!『インセクトボーガー』だかなんだかしらねぇが、ムシケラ相手にオレ様とFXの相手が務まる訳……」
その視線の先にあったのは、巨大なる異様。
どこからともなく飛来した『インセクトボーガー』が次々とスクラムを組んでいっているのだ。まるで山のような威容。
「これこそが『インセクトボーガー』の力! これがあらゆるホビー・スポーツを受け入れる間口と器を持つ『プラクト』ならではの集大成! 見なさい、これが!」
立ち上がる巨大な昆虫合体巨人。
それこそが『颯爽菱子』の最終手段。
だが、弱点でもある。『プラクト』は相手チームを殲滅しなければ勝敗が決しない。故に一体でも残っている限り、敗北は決定しないのだ。
けれど、全ての味方チームのホビーを集結させ、合体した今、『颯爽菱子』が敗北すれば、其の時点で勝負は付く。
「此れが最後です、猟兵! 坊っちゃんがスポーツマンシップに目覚めさせるため! この試合、勝たせて頂きます! いえ、勝ちます!!」
振るわれるフルパワーの一撃。
「そんなのアリかよ!!」
「アリです!!」
「チッ、考えやがったな……!」
黒い巨体、『ベアキャット』がフルパワーの一撃を受け止め、フレームをきしませる。モーターを仕込んだ関節部から白煙が上がる。
それほどまでのパワーを動員してもなお押し負けているのだ。
「なんてやつ……!」
「それはこちらの台詞です! まさかこの一撃を受け止めるとは……!」
「こなくそ!」
受け止めた腕を振り払い、『ベアキャットFX』の拳が昆虫巨人へと叩き込まれる。しかし、その一撃は一瞬分離され、さらに再集結することで躱されてしまう。
「無駄ですよ! あなたの攻撃は分離して躱す。あなたへの攻撃は合体して潰す!」
「団体行動ってわけかよ! くっそ、関節部が焼き付いた……!」
アラートが響く。
自分の操縦パーティションが赤く染まる。
だが、ウィルの闘志は潰えていなかった。
彼の瞳はユーベルコードに輝く。
「そっちがフィールドを書き換えたってんなら、こっちだってなぁ!」
煌めくユーベルコードは電脳空間へと書き換わる。
「これは……レースゲーム!?」
「だが、一味違うぜ、これは!」
瞬間、覆われた電脳空間の物質全てに矢印マークが刻まれる。それはウィルによって減速と加速を自在に操る力。
そして、合体昆虫巨人には無数の矢印が浮かぶ。
「これが渾身の一撃だ!」
『ベアキャットFX』の巨体が飛ぶ。それは頭部に備わった『颯爽菱子』の『インセクトボーガー』目掛けての突進だった。
しかし、分離して回避されてしまうだろう。
「回避……いや、これは!」
「そうさ! 分離すれば加速して再集結できないようにしてやる! 分離しないでも、この渾身の一撃だ、おばさんの機体はオレ様がぶっ飛ばす!」
二択だった。
回避か、攻撃か。
いや、実質一択だった。勝利を得るためには進まねばならない。退いた後には勝利はない。
「ならば、進むのみ!」
振るう合体昆虫巨人の拳が『ベアキャットFX』と激突する。だが、ウィルは不敵に笑う。
そう、電脳空間で覆ったフィールドの中のあらゆる物質には矢印マークが刻まれる。
ならば、其の作用を受けるのは敵である合体昆虫巨人だけではない。
「そう、オレ様のFXも加速すんだよ!」
飛び込む一撃はユーベルコードによって加速し、合体した『インセクトボーガー』の腕を粉砕しながら『颯爽菱子』の操る『フォイアロート・ヒルシュ』へと激突する。
ひしゃげる音。
砕けるフレーム。
そして、漆黒のロボット『ベアキャットFX』が吠える。
『ガオォォォォン!!!』
それは勝利の雄叫び。
激闘の末に勝ち得た、得難きもの――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『豪華アスリートフェスティバル』
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POW : 豪華で身体にいいご馳走の食べ放題を楽しむ
SPD : アスリートとしてパフォーマンスを見せ、盛り上げる
WIZ : チームメイトや対戦相手と和やかに歓談する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』のし掛けた八百長試合は、あえなく潰えた。
だがしかし、得られたものがある。
ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』は微笑みながら、満足げだった。
試合に負けたのだ。
ならば、後は霧散して消えゆくのみ。
後悔はない。
なぜなら、真剣勝負の尊さと正しさを金に溺れ八百長をしかけようとしていた『ゼクス』に伝えることが出来たのだから。
そして、ダーク化アスリートたちも洗脳から解かれ、全てがノーサイドに終わる。
「ありがとうございました。私は満足です。謂わば、これは試合に負けて勝負に勝ったと言いましょうか……ええ」
「ううう……!」
べそをかく『ゼクス』。
喪って初めて分かる大切さというものもあるのだ。確かに彼のチームは敗北した。けれど、得難きものを得たのだ。
敗北と言う名の掛け替えのない経験を。
故に彼は涙を拭う。
泣いてばかりいることは『颯爽菱子』にとって好ましくないことだとわかっているからだ。
「僕が間違っていた……うぐっ、ぐすっ、だから……!」
これからは自分も仲間に入れてくれ、と願う心に寄り添う者がある。それは『五月雨模型店』のメンバーたち。
「あったりまえじゃん! 試合が終わればノーサイドだ。お前も私達の仲間だぜ!」
そう言って『アイン』を始めとするメンバーたちが笑う。
健やかな青少年たちの成長をみやり、猟兵たちは笑むだろう。
そして、始まるのはプラスチックホビーフェスティバル。
改心した『ゼクス』が健闘を称え合うために催されたお祭り。商店街を彩る様々な催し。食事ももちろん用意されている。
「これは僕からの心ばかりのお礼だ! みんな、存分に楽しんでくれ!」
そこにはもう傲慢さも泣き顔もない。
ただ只管に笑顔だけがあった――。
馬県・義透
別の意味で困った『疾き者』にて
陰海月が、『砕けた角飾り』を記念としてそのままにしておく、と。
ただ、このままだと薄く鋭利な場所があって危ないから、ちょっとだけ加工する…って集中してたのがさっき。
そして今は…その『ちょっとだけ加工』で集中して疲れてお腹へった、と…。あの…山盛りに食べてましてね?
霹靂も動いたから食べてましてね?
私はいつもの量ですが。
…陰海月、豪快ですね…?
※
霹靂:皿から直接。いつもの倍食べる。
陰海月:ナイフとフォーク使う。いつもの倍食べる。なお、いつもの量は『義透+いつもの霹靂』である。つまりは四人前
巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』の改心は相成った。
皮肉にもダークリーガーが求めたのは勝利以上のものであった。勝利も確かに大切なことである。それを求める事は誰にも咎められることではない。
特にアスリートアースであればなおさらのことであろう。
しかし、ダークリーガー『巷で噂のオーナーこと優勝請負人・颯爽菱子』は『ゼクス』の改心をこそ願った。
真剣勝負。
死力を尽くした戦い。
それによって得られる感動こそが、彼の中にあった澱のような感情を溶かし、正道へと引き戻したのだ。
「……それはよかったのですが……ええ、しかし、これは……」
だが、そんな中、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は困っていた。
『疾き者』は今回『霹靂』と共に『戦国大将軍』を駆り、大いに活躍した。
其の活躍に寄って『戦国大将軍』は名誉の負傷とでも言えば良いのだろうか、兜の角が折れた状態になっているのだ。
本来なら、それを補修しようとするのが常であろう。
プラスチックホビーを使った『プラクト』競技は、破損と修繕の繰り返しだ。
もしかしたら、新造することもあるかもしれないが、圧倒的に修繕して強化していくことのほうが多い。
例にもれず『戦国大将軍』の作者である『陰海月』もそうであった。
けれど、彼の心には激闘が色濃く残されている。
あの圧倒的な熱気。
しのぎを削るような苛烈な戦い。
どれもが心を沸き立たせるものであった。だから、今回は直すのではなく、今回の戦いの記念としてそのままにしておきたいと願ったのだ。
「ぷっきゅい!」
「いえ、それはいいのですが……」
とは言え、そのままにしておくと鋭利な部分もあるから危ない。
それなら、と少し丸めておこうと作業に『陰海月』が没頭し始めたのは運の尽きだった。
彼の集中力は半端なかった。
ちょっとだけの加工というには、あまりにも力の入った修繕。
多大な集中力の消費は、即ちカロリーの消費にもつながるのである。
「ぷきゅー……」
「ああ、お腹が空いたんですね。確か……」
「今日は良い試合をありがとう!」
そう言って近寄ってきたのは御曹司『ゼクス』であった。彼は猟兵たちと『五月雨模型店』のメンバーを湛えるために盛大なプラスチックホビーフェスティバルを商店街で開いてくれたのだ。
その豪華絢爛たる様は凄まじい。
「食べ物なら、ささやかだけれど、あちらに用意してあるよ」
「そうですか。ならお言葉に甘えて……」
と言いかけた瞬間、食い気味で『陰海月』と『霹靂』が軽食の用意されているテーブルへと飛んでいってしまう。
忙しないことであったが、よほどだったのだろう。
だが、その食事の仕方が半端ではなかった。
何時も以上に山盛りである。
さらにそこに『霹靂』まで加わったものだから凄いことになっている。
「あははは、すごいな。すごい食欲だ! やっぱりアスリート友なるとあれだけの食事が必要なんだな」
「なんだかすいません……」
「いいんだ、僕に出来るお礼が出来たのだから! 遠慮なんてしないでくれ!」
その言葉に『疾き者』はなんとも言い難い顔をしてしまう。
いや、本当に沢山食べてしまうのだ。
今もものすごい勢いで食べている。正直、どれほど食べるのか検討もつかない。今ざっと見た感じでもいつもの倍は食べている……。
「だ、大丈夫でしょうかね……? なんだかいつもより豪快ですね……?」
「ぷっきゅ!」
「クエー!」
其の言葉に『ゼクス』は笑う。
食欲旺盛なのは良いことだとあっけらかんと笑っているのは、憑き物が落ちたような雰囲気さえ感じる。
其の姿をみやり、『疾き者』は改めて勝利によって得られたものを理解し、また同時に明日から膨れたお腹のままに食べる『陰海月』と『霹靂』のことを案ずるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
WIZの歓談するで判定。
お食事も良いですけれどほどほどにしておいて五月雨模型店の皆様とホビーについて語り合いたいですわ。
今回はぶっつけ本番気味でしたので動かしやすいよう自分をイメージしたフィギュア作りましたけれど。
わたくしお人形さん遊びとかしたことないので
可愛らしいお人形さんに可愛らしい衣装着せたいですわねっ。
(でもそれでもやっぱり殴る人である、可愛らしい人形だからって戦い方は可愛くならない模様)
後は今回のフィギュアは衣装まで手が回らなかったので同じ戦闘コスチューム作って着せたいですわね。
……皆様反応が微妙ですわ、動きやすいですのに。
(露出高すぎなのである、本人は慣れすぎて麻痺してるが)
試合が終わればノーサイドとはよく言ったものである。
アスリートアースの超人アスリートたちは皆、勝利に拘るが、勝敗が絡まないのならば気の良い者たちばかりである。
今回の八百長試合を仕掛けた巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』もそうであったように改心してしまえば気持ちの良い少年であった。
猟兵とダークリーガーたちの熱い戦いは、確実に彼の心に一つの掛け替えのないものをもたらした。その御礼とも言うべきプラスチックホビーフェスティバルが商店街で開かれている。
彼のお小遣い……とは言え、普通の少年のそれではない額が動いていることは言うまでもないだろう。
そんなフェスティバルの一角でイリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は軽めの食事を終えて『五月雨模型店』のメンバーたちと歓談する。
というのも彼女は『プラクト』ホビーを作るのも初めてであり、また競技に参加するのもぶっつけ本番だったのだ。
「えぇー!? ぶっつけ本番であれかよ! すごいな!」
『アイン』と呼ばれる少女が目を丸くしている。
それだけ身体能力が高い、ということなのだが、イリスフィーナは自己肯定感が極端に低いため、どうにも自身の能力を過小評価しがちであった。
「自分をイメージしたホビーでしたので、動かしやすかっただけですわ。わたくし、お人形さん遊びとかしたことなので……」
思えば、子役として長らく活動してきたせいか、幼い子供がするような遊びをしたことがなかった。
そんな暇がなかったと言えば、それまでであるが、しかし、それは健全であったとは言い難い成長であったことだろう。
だから、というわけではないが、そこに彼女の自己肯定感の低さが起因しているのかもしれない。
「可愛らしいお人形さんに可愛らしい衣装着せたいですわねっ」
「なるほど。それならば布服などどうでしょうか。プラスチック素材やパテ素材では重たくなりがちですが、布服ならば柔軟性もありますし、稼働にもかさばることがありません」
『ツヴァイ』と呼ばれる少女がドール用の布服を示して見せる。
『五月雨模型店』は本当に何でもある。ホビー関連のものなら、本当になんでもあるのである。
「まあ! それは良いことを聞きましたっ」
「ええ。『プラクト』ならではの活用法であるともいえます。次回があるのならば、どのようなものを作られるかご予定は?」
「そうですわね……」
イリスフィーナは考える。
どんなものを、と問われるとイメージが沸かない。
いや、違う。
今回のホビーもそうであったけれど、自分で動かす、という特性上自分をイメージしてしまうのだ。
ならば、とイリスフィーナは頷く。
「私と同じ戦闘コスチュームを作って着せてあげたいですわね」
これ、とイリスフィーナがくるりと回って見せる。
その場で回ってみせると大胆なスリットの入った布がふわりと広がって見事な御御足があらわになる。
それだけではない。
胸元が大胆に開いているし、肩も露出している。
背中は辛うじて彼女の銀髪で隠れているが、動けばそれだけで項から背中にかけて肌の色が見えてしまう。
「あー……なるほどなー」
『アイン』と『ツヴァイ』の反応が微妙だ。
「……ダメ、でしょうか?」
「いや、そんなことないと思うんだけどさ。そのほら、なんていうか」
イリスフィーナの周りには女子ばかりなのは理由がある。そう、他のメンバーたち、男子たちはどうにもイリスフィーナの目のやり場に困る衣装故に近づいてこれないのだ。
良い香りもするし。
小学生の年頃の男子たちにとっては、イリスフィーナは高嶺の花のお姉さんなのである。うっかり近づけないし、照れてしまう。
照れてしまえば茶化されてしまう。
だから、彼等はイリスフィーナに興味があれど近づけないのである。
「そのーほらーえーと、露出がな?」
「そうでしょうか? 動きやすいですのに」
「だからー! 裾つまむなって! 無防備過ぎるだろ!」
わーわーと女子たちがイリスフィーナの無防備さに慌てる。そんな風にして穏やかな時間が流れていく。
少し騒がしかったけれど、イリスフィーナは心に暖かさを灯し、楽しい時間を過ごすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
…雨降って地固まる、だっけ
何だか悪い事しちまったような気もすんけど、あのおばさんが望んでいた通りなら結果オーライってとこかな
な、ベア?
『ガォン』
そだ、紹介するぜ
ベアキャットFXのモデル、|1/1スケール《本物》のベアキャットだ
ベアもおばさんの鬼気迫る戦いっぷりにハラハラさせられちまったって言ってるぜ
さてと、ご馳走も食い飽きた頃だし余興と洒落こむか
何をするかって?
ベアに乗っての商店街一周のパレードだ、面白そうだろ?
んじゃ、ゼクスは特別にオレ様専用席の肩を譲るってやるぜ
どうしてって…友達になったばっかだから当然じゃん?
アインもツヴァイもベアの手に乗った乗った!
じゃ、声を合わせて…ベアキャットGo!
巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』を改心させるための八百長に乗ったと見せかけた真剣勝負は猟兵達と『五月雨模型店』の勝利に終わった。
その熱き戦いは澱のように溜まった『ゼクス』の心を氷解させるには十分なものだっただろう。
最後の一撃。
それを決めたウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は敵ながらダークリーガーの思惑に乗ったような、それこそ邪魔してしまったような気持ちになっていた。
けれど、『ゼクス』少年と『アイン』たちのやり取りをみて頷く。
確かに此方の勝利は相手の敗北である。
けれど、『ゼクス』の金で全てを解決するという性根を戻すことを目的としていたダークリーガーにとっては、これが最良の結果だったのかもしれない。
「……雨降って地固まる、だっけ」
この光景をダークリーガーの彼女が見たかったのならば、それは結果オーライだろうな、と思うのだ。
同意を求めるように隣にたつ『ベアキャット』の巨体を見上げる。
「な、ベア?」
『ガォン』
それに応えるように唸る巨体。
スーパーロボットである『ベアキャット』は体高5mの兵器である。けれど、ウィルの相棒でもあるのだ。
『ゼクス』が試合の結果を受けてプラスチックホビーフェスティバルを開いてくれている商店街のアーケードの外に待機していたのだ。その前にウィルは立ち、見上げる。
振り返れば、そこには『五月雨模型店』のメンバーたちと『ゼクス』がいた。
彼等の瞳がキラキラと輝いている。
「で、でけー!? おいおいおい! どういうこっったよ、ウィル! おいおい!」
『アイン』と呼ばれる少女が喜びを抑えられないというようにウィルの肩を揺する。
「そだ、紹介するぜ。『ベアキャットFX』のモデル、|1/1スケール《本物》の『ベアキャット』だ」
『ガォォン』
「はは、ベアもおばさんの鬼気迫る戦いっぷりにハラハラさせられちまったって言ってるぜ」
「そ、そうだろう! 僕のチームはすごかったんだ! うん!」
どこか誇らしげに『ゼクス』が頷く。
確かに猟兵たちの勝利であった。しかし、その戦いは一方的なものではなく、白熱した名試合であったと言えるだろう。
「さてと、ごちそうも食い飽きた頃だし、余興と洒落込むか」
ウィルは試合直後ということもあって空腹を満たし、腹ごなしというように商店街の外に待機させていた『ベアキャット』の元へと少年少女たちを連れ立って向かう。
「なにすんだ?」
「せっかく勝ったんだ。凱旋パレードってどうだ? 商店街をベアにのってぐるっと一周だ。面白そうだろ?」
「まじかよ!」
『アイン』はノリノリである。むしろ、乗せてくれよ! となるのはロボットアニメが好きで扱うホビーも同様のものであることからもうかがえる。
そして、そこに本物がいるのならば、当然乗りたいと思うのは当然の帰結である。
「まあ、慌てんなって。ほら、『ゼクス』。特別にオレ様専用席の肩を譲ってやるぜ」
「え、僕?」
「そうだよ。特別だぜ?」
「で、でも……なんで」
「あ? なんでって友達になったばっかだから当然じゃん?」
友達、と『ゼクス』の瞳が輝く。
確かに彼には友達はいたかもしれない。けれど、それは金銭を介した上辺だけのものだった。御曹司という立場を取り払った自分では友達は出来ないと思っていたのだ。
けれど、それを取り払った所でウィルが手を差し伸べている。
その手を取って『ゼクス』は『ベアキャット』の肩に乗る。高い。風を感じる。どこか懐かしいと思うのだ。
いつだったか、自分はこんな大きな鋼鉄の巨人の肩に乗ったことがあるような気がした。気のせいかもしれないけれど。それでも、なんとなく、そう思ったのだ。
「……おい! 私も載せろってば! 次! 次!」
『アイン』が騒いでいるのを見てウィルは笑う。
「手に乗せてやるから! 他の皆も来いよ!」
そう言ってウィルは『五月雨模型店』のメンバーを招く。黒い巨体の周りには少年少女たちが群がり、しかし、それを物ともせずに『ベアキャット』が立ち上がる。
「じゃ、声を合わせて……」
「『ベアキャット』……」
「――Go!」
響く声は重なり。
少年少女たちの日々に1ページの思い出が刻まれる――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
うんうん、良かった良かった☆
雨降って地固まるってやつだね、素晴らしい友情だぞ少年少女たち♡
大人のにぃなちゃんは後方で腕組みしてお姉さん面で頷くのであった……ってだけじゃつまんない!
皆に混ざって称え合ったりはしゃいだり抱き着いたりしよーっと!
プリンセスの格好でお祭りって言うのも楽しそうだし、ご飯食べたり皆とお話したりしようっと!
皆でプラモ作るって言うのも良いよね、同じ金額でどんなのを作れるか比べてみるのも楽しい!
そうそう、美少女プラモに布で作った服着せるのってお人形遊びっぽいよね。
プラクトなら自分の分身みたいに動かせるし、なりきって遊ぶのも楽しいかも?
小さい女の子とかも好きな遊び方な気がするぞ☆
かつては八百長試合でもって『プラクト』競技を牛耳ろうとしていた『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』は熱き戦いを見たことに寄って己が間違っていたことを理解した。
涙ながらに許しを乞う彼を誰も責め立てることはなかった。
同じ競技を、と思うのならば、すでにそこには友情が生まれているものである。
友達というのは、きっと言葉や理屈ではない所で成立するものであったのかもしれない。
だから、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は後方でお姉さん面で頷いていた。
大人なので。
「にぃなちゃんは大人なので……!」
とっても良いことである。
少年少女たちの年頃に衝突は当たり前に存在する。けれど、時に傷つくこともあるのだ。大人になると正しく衝突することもできなくなってしまうものだ。
だから、彼等には今こそぶつかって欲しい。
雨降って地固まる、という言葉があるように、そうした衝突から掛け替えのない一生物の友情が生まれることもあるのだ。
「うんうん……ほんと素晴らしい友情だぞ少年少女たち♡」
ご満悦である。
だがしかし。
すでに『ゼクス』のお小遣いの出資によって商店街はプラスチックホビーフェスティバルが開催されている。
ちょっとしたお祭り騒ぎである。
そんな最中であるからして、ニィナはむずむずしていた。
確かにニィナは大人である。けれど、それだけではどうしてもつまんないのである。
「かまって!」
「ええ!? ニィナお姉さんどうした!?」
『ドライ』がプラスチックホビーフェスティバルで蔵出しされていたプラモデルの箱を手にしていたところをニィナは駆け寄っていって抱きついたのだ。
柔らかい。いい香りがする。すべすべしている。
いろいろな感情が『ドライ』の中に駆け巡っていって、ぼひゅ! と真っ赤になってしまう。小悪魔である。ニィナは小悪魔である。少年の心は散々にドキドキしてしまうのである。
プリンセス衣装のままで抱きついたものであるから、なおさらである。
「ちょ、ちょ、ちょいちょい! お姉さんちょっとまってくれ!」
「えーなーにこれ、にぃなちゃん知らないやつだー!」
「あ、これは『憂国学徒兵BA』のシリーズのやつで……って、引っ張らないでくれないか!?」
「いいじゃーん☆ ほら、いくよー!」
そのままニィナは『ドライ』を連れ回してプラスチックホビーフェスティバルを堪能する。
ご飯を食べたり、合流してきた『アイン』や『ツヴァイ』たちと模型について盛り上がっていく。『ドライ』は年上のお姉さんに翻弄されっぱなしである。
こういう時異性の少年はつらいもんである。
「せっかくだからさーコンペティションやろーぜ! おんなじ金額内でどんなの作れるか競うの!」
「あーなるほどね☆ そうやって比べるの楽しそう! あ、そうそう、美少女プラモに布で作った服着せるのってお人形遊びっぽいよね☆」
「今回のニィナさんの試合を見て、布服を作りたいって方が増えそうですよね。先程も猟兵の方が自分の戦闘服を布服で再現したいとおっしゃってました」
『ツヴァイ』が頷く。
こうして『プラクト』の試合によって多くの発想が実っていく。
自分の発想を形にして、それを自分が動かす。
正しく心技体につながるものである。そんな少年少女たちの言葉にニィナはニコニコして聞き入る。
楽しい、ということはとても大切なことだ。
どんなことだってそうだけれど、楽しいという感情は何ものにも代えがたい推進剤になるのだ。
それをニィナは知っている。
「今度動画撮るテーマはそれにしてもいいかもしんないね☆ 小さい女の子とかも好きな遊び方な気がするぞ☆」
「大人の人も結構好きだぜ、そういうの! 動画で見たことある!」
「割りと多いな! 別にこういうことは大人だとか子供だとかに拘る必要もない! 好きな者が好きなように楽しめばいいのだ!」
うんうん、と『ドライ』が頷く。
そんな『ドライ』のあたまを撫でてニィナは笑む。
そうだ。きっとそうなのだ。こんな少年少女たちの素直さがまっすぐに育つためにこそ、スポーツは必要なのだ。
『プラクト』もそうだ。ならばこそ、ニィナは彼等の友情や真摯な想いを守れたことを誇るように、いつまでもニコニコして彼等をなで続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
【POW】
ふぅ、アイゼンケーファーの縮小化も新UCもぶっつけ本番でしたがうまくいきました!
ユーシア(3P・小)「……やっぱりわたしの計算どおりでしたね!(メガネ光る)」
で、どうしましょうか?
3P「わたしとしては早速さっきの戦闘データをアイゼンケーファーに反映したいです」
2P「えー?色んなプラモとか見て回ろうっすよー。せっかくキマフューのプラモファイター以外のプラモ技術をじっくり見るチャンスなんだし」
んー、まずはあそこの屋台で何か食べませんか?ほら!
2P「タウリン配合焼きそば…え?物理攻撃力でも上がるの?」
(ちいさい2P・3Pを連れなんだかんだ言い合いながらもエンジョイしてます)
多くのことがぶっつけ本番だった。
アスリートアースにおける非公式競技は多くがダークリーガーたちとの試合の前に事前準備を設けられることがある。
当然ルール習熟のための時間でもあるし、即席のチームの連携を高める練習の意味もある。けれど、今回はそれがなかった。
すぐさま猟兵たちはダークリーガーによってダーク化されたアスリートたちと戦わなければならなかった。それはユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)にとっては苦しい戦いだったのだ。
けれど、それでも守れたものがあることを彼女は誇るべきだろう。
巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』は、猟兵とダークリーガーの熱い試合によって金で全てを解決する性根を入れ替えた。
あの光景が見れただけでも、真剣勝負を繰り広げた甲斐があったというものである。
「ふぅ、『アイゼンケーファー』の縮小化も新しいユーベルコードもうまくいきましたね!」
「ええ、やっぱりわたしの計算通りでしたね!」
小さな3Pが眼鏡をくいっとして自信たっぷりに笑む。
確かに彼女の助けが泣けったのならば、多くのことが難しいままで失敗に終わっただろう。ありがとう、とユーシアは小さな3Pの頭を撫でる。
戦いは終わったとはいえ、これからどうするべきだろうかと考える。
商店街は『五月雨模型店』の勝利とダークリーガーたちの戦いを称えるプラスチックホビーフェスティバルが催されている。
プラモデル商品だけではなく、出店なども出店されている。
いろいろな名物料理なども多くあるようだった。
「で、どうしましょうか?」
「わたしとしては早速さっきの戦闘データを『アイゼンケーファー』に反映したいです」
3Pがまた眼鏡をくいっとしている。
真面目、というより、そういう性分なのだろう。データにより生まれたゲームのバーチャルキャラクターであるがゆえにそうした数値的なデータに興味を持つものなのかもしれない。
けれど、逆に2Pの小さな体が跳ねる。
「えー? いろんなプラモとか見て回ろうよー!」
彼女はアスリートアース世界のプラモデル商品というものに興味津々だ。何より、多世界を渡ることのできる猟兵なのだ。
多くの世界で共通の文化が根ざしているのならば、異なる世界ではどんな差異が枝葉のように広がっているかもしれない。
「せっかくキマフューのプラモファイター以外のプラモ技術をじっくり見るチャンスなんだし!」
「それもそうかもですね。でも、お腹空いてません?」
ぐぅ、と音が重なる。
あれだけの激しい試合を繰り広げたのだから当たり前かもしれない。とってもカロリーを消費したのだ。
「確かに……糖分の摂取が望ましいです。ハンガーノックになって動けなくなってはデータの反映どころではありませんから」
「ねーねー! あっちなんかすっごいのあるよ!」
三者三様の反応を見せる。
三人が三人とも別方向に向かおうとしている所を見ると、ユーシアたちは個性というものが確立されてきているのかもしれない。
「んー、まずはあそこの屋台で何か食べませんか?」
「タウリン配合焼きそば……え? 物理攻撃力でも上がるの?」
「いくらなんでも数値化されていませんよ。ですが、筋肉はつきそうです」
「じゃあ、決まりね! まずは焼きそば! 其の次は美味しそうなの見つけたらで!」
なんて三人でワイワイ姦しく賑やかに笑いながらユーシアたちはプラスチックホビーフェスティバルの催されている商店街を楽しみながら歩くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
五月雨模型店でミニタイガーの補修作業だ
色々飛び散った車体もヤバいが
モーターからは焦げたような臭いがしてる
流石にこいつは交換か
次に積むヤツはちょいと奮発すっかな
とか何とかやってる所に子供らが覗きに来た
キリの良い所までやったら、あたしもメシ食いに行くさ
毎度の事だが、なりふり構わず只管に|勝利《闘争》を求める|結果《代償》がコレさ
勝者の姿にゃ見えねーかもだが
勝利も敗北も、自分の受け取り方次第よ
だが大事なのは、勝った時より負けた時だ
そー言うバッドコンディションとの付き合い方は、覚えといて損は無ぇぜ
常にベストな状態で居れる訳じゃねーからよ
(特に戦場では、と言いかけて止める)
(誤魔化す為に飴を配る)
『プラクト』において自機の破損は常なるものである。
だが、同時にそれは新たな力を得るチャンスでもあると言えるだろう。自分の丹精込めた機体が破壊されるのは見るに堪えないものである。
「だがまあ、よくやってくれたよ『ミニタイガー』」
チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は『五月雨模型店』の制作スペースで散々に砕けた己の機体『ミニタイガー』を見やる。
もはや残骸と言ってもいいかもしれないほどの惨憺たる状況だ。
組み込んだモーターは焼け落ちるようにして歪んでいる。
シャフトも使い物にならない。
歪んだフレームは補強してどうなるかもわからない。けれど、これが己の愛機であることに変わりはない。
確かに代わりはある。
「流石にこいつは交換か」
モーターを取り出す。
中のコイルが焼ききれている。やはりユーベルコード発生装置と直結させるのは無理があったのかもしれない。
ユーベルコードの発露する力にモーター側が耐えきれなかったのだろう。
「次に積むヤツはちょいと奮発すっかな」
「そのまえにさーフレームの強度計算しといたほうが良いぜ!」
そんなチェスカーの背後から声が掛けられる。
この声は、と振り返るとそこに居たのは『アイン』だった。今日は試合の勝利を祝い、また新たな仲間が加わったことへのお祭りだ。
『株式会社サスナーEG』の御曹司『ゼクス』が改心し、自分のお小遣いをはたいて商店街でプラスチックホビーフェスティバルを開いてくれているのだ。
しっかり遊んでしっかり食べて、しっかり休む。
それが試合を終えたアスリートの責務だろう。
「なんだ、もうごちそうは食べ終わったんかよ」
「美味かった! じゃなくってさ、それ、どうすんの?」
「毎度のことだが、なりふり構わず只管に|勝利《闘争》を求める|結果《代償》がコレさ」
勝者の姿には見えないかもしれない。
崩れた装甲。歪んだフレーム。内部からの熱でどうしようもない状況まで追い込まれている。
けれど、それを手放せない自分自身がよほど、とチェスカーは笑うのだ。
ライトに照らされて影落ちる顔は恐ろしいものであったことだろう。
これが『プラクト』という競技であったからこそ五体が無事なのである。もしも、これが『本物』であったのならば、と言いかけて辞める。
言わなくて良いことだ。
ここはアスリートアースであって己が生きてきた世界ではない。
ならば、言わなくてもいいことだ。
特に『アイン』のような影響を受けやすい少女にとってはなおさら。だから、チェスカーは誤魔化すように言うのだ。
「キリの良いところまでやったら、あたしもメシ食いに行くさ」
その言葉に『アイン』の瞳がまっすぐに見つめる。
「それでも得たものがあるんだろ? がむしゃらにやって、得られないものだってある。欲しいものが得られなくて、ほしくないものを得てしまうことだってある」
「それもこれも自分の受け取り方次第よ」
「ならどうする」
「大事なのは勝った時より負けた時だ。どうしようもねぇことなんて、日常にはゴロゴロしてんだろ? 体だって万全じゃあないかもしれない。機体だってな。そー言うバッドコンディションとの付き合い方は、覚えておいて損は無ぇぜ」
「常にベストな状態でいられるわけではないからな」
ぴくりと、チェスカーは眉根を寄せる。
言葉の使い方が。雰囲気が。僅かに違う。けれど、『アイン』は言葉とは裏腹にあっけらかんと子供のように、年相応に笑って言うのだ。
「なら、ねーちゃんが教えてくれよな! そういうの! 私、どうしたって雑な所あっからさ!」
「……そうかよ」
なら、とチェスカーは懐をまさぐる。シガレットケースに飴玉がぶつかる音がして、感じた違和感を誤魔化すように取り出して『アイン』に差し出すのだ。
「なら、行こうか」
「? どこへ?」
「メシだよ、メシ。うまいもん多いんだろ、今日は。お祭りなんだからよ」
そうだよ! と『アイン』はチェスカーの手を引いて、ぐいぐいと商店街へと引っ張っていく。
制作スペースのライトに照らされた歴戦の勇士たる『ミニタイガー』がそれを静かに見送るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
持ち前の【コミュ力】を活かして
商店街の皆さんと協力してお祭りを盛り上げちゃうゾ♪
いやァ、隠れ造形師…もとい旅行会社職員としては
今回の試合はガチで永久保存&布教必須級だったよ~♪
ニコニコ朗らかにタコ焼きを振舞いながら
両チームの選手を始め、居合わせた方々に労いの言葉を贈りたいなって☆
今回の試合は広く語り継ぐべきだって想うんだよ。
例えばまとめ動画にしたり
ちっちゃい子向け雑誌の付録のおまけ冊子に付けたりしてさ。
いつかこの商店街に
多くのプラクトマニアや選手が押し掛ける日が来るかもしれない。
所謂聖地巡礼ってヤツだね。
それに備えて…これからもプラクト、全力で盛り上げてこー!
熱狂的な試合を繰り広げた猟兵を含む『五月雨模型店』のメンバーとダークリーガー率いるダーク化アスリートたちとの熱闘は、瞬く間に世界中にシェアされることになった。
基本的に『プラクト』の試合は商店街のモニターのみならず、インターネットサイトの動画配信サイトでも中継されている。
それを見て心をたぎらせた者たちも多いだろう。
パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)もその中の一人であった。
たまたま見ていたアスリートアースの動画中継。
『プラモーション・アクト』。
未だ非公式競技であるものの、プラスチックホビーを自身で造り、自身で動かして競うスポーツは徐々に人気を得てきている。
今後行われるであろう世界大会も大盛り上がりすることは想像できた。
「どもー! エイリアンツアーズでっす☆」
パウルは眼帯をしながらもにこやかな笑顔で商店街に突撃していた。
すでに巨大企業『株式会社サスナーEG』の御曹司である『ゼクス』は改心し、彼のポケットマネーという名のお小遣いをはたいてプラスチックホビーフェスティバルが開催されているのである。
こうしたお祭りが嫌いなわけがない。
というか、お祭りを盛り上げたい。
そんな一念でパウルは有り余る行動力で持ってアスリートアースの商店街までやってきていたのだ。
「いやァ、隠れ造形師……もとい旅行会社職員としては、今回の試合はガチで永久保存&不況必須級だったよ~♪」
「かっけぇ! そのアクセどこで売ってんの!?」
『アイン』と呼ばれる少女がパウルの身につけた様々な形のピアスやアクセサリーに興味津々である。
「お、これはこれは『五月雨模型店』の可愛らしい『エース』さん。試合見てたよ~あ、これはたこ焼きね」
ニコニコ朗らかに笑いながら『アイン』にたこ焼きを手渡す。
熱々だから気をつけて、とやっぱり笑顔である。
「『エース』だなんて、でへへ!」
「『アイン』さん、調子に乗らない。ありがとうございますとお礼が先でしょう」
『ツヴァイ』と呼ばれた少女が『アイン』の頭を下げさせる。
「お母さんかよ、お前は!」
「あはは、いやァ、本当に素晴らしい試合だったよ。今回の試合は広く語り継ぐえきだって思うんだよ。どうだった、今回の試合は」
パウルはそうした少女たちのやり取りを微笑ましく思いながら尋ねる。
試合には参加しなかったけれど、こうして試合に参加した者たちから話を聞くのは好ましいことであった。
「相手もすっげぇ手強かったぜ!」
「ええ、ホビーの性能もすごかったです。それより何より、今回も助けに来てくださった方々には感謝してもしきれません。まずは、その方々に感謝を……」
「硬い! こういうのは、あんがとなー! 位でいんだよ!」
そんなやり取りを見ていると彼女たちが健やかに育っていっていることがよく分かる。ならば、とパウルは提案するのだ。
「例えばなんだけど、この試合の動画をまとめたり、ちっちゃい子向けの雑誌の付録冊子にしたりなんていうのはどうかな?
「そういうのは『五月雨模型店』の店長に聞いてみないとわかんないなー……え、本になんの!?」
『アイン』の食いつきは凄い。
ぐいぐい来るな、この子、とパウルは思いながら頷く。
確かにまだ『プラクト』は非公式競技だ。
けれど、間口が増え、競技人口が増えれば、とも思うのだ。
そうしたのなら。
「いつかこの商店街に多くの『プラクト』マニアや選手が押しかける日が来るかもしれない」
「所謂、聖地巡礼、ということですか?」
「そゆこと。それに備えてさ、色々やってこうっていうのは、楽しいことじゃないかな?」
パウルはかがんで少女たちと目線を合わせる。
確かに大人と子供とでは多くのことが違うだろう。
ましてや彼女たちはこれから成長していく者たちだ。だからこそ、パウルは思う。彼等が健やかに生きていける世界であってほしいと。
故に、こうして盛り上げ彼等を悪意から守らねばならないと。
「よーし! ならさ、早速店長に相談に行こうぜ!
「うん、全力で盛り上げてこー!」
パウルたちは、そう笑い合いながら如何にして『プラクト』を盛り上げるのか、その談義に花を咲かせ、お祭りの時間を楽しむのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
(商店街に用意された巨大スクリーンに流される『インセクトボーガー』DVD映像をポップコーン片手に観ている鬼面と巫女)
ゼクスの坊っちゃんが用意した超高画質スクリーンで見るインセクトボーガーアニメは最高だな、相棒ッ!
「…まさか本当に試合後に見せられるとは。」
しかし巨大企業『株式会社サスナーEG』の目玉商品を売る為に莫大な予算で創られたホビーアニメ、週一で放送されてるとは思えない高品質作画よッ!金のかけ方が違うぜ。
ストーリーも重厚ながら王道、正に覇権アニメってヤツよ。
(その後、店長や商店街の人達と熱く語り合いながら観賞する凶津)
「…もしかして全話観るまで終わらないヤツですか、コレ?」
【アドリブ歓迎】
『五月雨模型店』の勝利に沸く商店街はお祭り騒ぎであった。
熱闘を繰り広げた『株式会社サスナーEG』においてダークリーガーに洗脳されたダーク化アスリートたちも皆、正気を取り戻し、今は普通のアスリートの戻っている。
けれど、彼等の中にも熱いものが滾っている。
それほどまでに猟兵たちの参加した試合は『プラクト』史上、凄まじい熱狂を生み出したのだ。
御曹司である『ゼクス』のポケットマネーという名のお小遣いから捻出された費用は、主にプラスチックホビーフェスティバルを楽しむ人々のためにこそ使われている。
今まで自分のためにしかお金を使ってこなかった『ゼクス』であったが、本当に活きたお金の使い方というのを今まさに学んでいる真っ最中でもあったのだ。
其の一つである商店街の巨大モニターを使っての『インセクトボーガー』のDVD映像は大迫力であった。
「……まさか本当に試合後に見せられるとは」
「いやー坊っちゃんの用意してくれた超高画質DVDは最高だな、相棒ッ!」
神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は鬼面をカタカタ揺らしながらポップコーンをぽりぽりやり、ビールをクイッと傾ける。
巫女姿の桜は試合の疲れでぐったりしていたが、そんな暇など少しもないのだというようにこうして商店街のモニターの前に並べられたイスに座って『インセクトボーガー』のアニメシリーズのイッキ見上映につきあわされているのだ。
確かに言った。
試合が終わった後は鑑賞会だと。
だがしかし、あまりにも盛大過ぎる。これもそれも『ゼクス』のポケットマネーの為せる業であろう。あまりにも規格外な金持ち坊っちゃんが、他人のために鐘を使い出すとこういうことになるのである。
「いやーしかし巨大企業『株式会社サスナーEG』の目玉商品を売るために膨大な予算で創られたホビーアニメ! 週一で訪欧されているとは思えない高品質作画よっ! 金の賭け方が違うぜッ」
凶津はご満悦であった。
そして、共に鑑賞している商店街の人々や『五月雨模型店』の店長に同意を求める。
「本当に。商品が並ぶ前から予約の電話がひっきりなしだった」
店長は少し困っていたようだが、凶津も其の一人であったのだ。
それほどまでに『インセクトボーガー』には並々ならぬ魅力があるという証明でも在ったことだろう。
あれやこれやと凶津が同好の士たちと語らって、酒が回っていく。
もう『インセクトボーガー』の上映会は応援上映会のように凄まじい盛り上がりを見せていく。
「見たか、相棒! あのシーン! 熱いよなぁ! たまらんよなぁッ!」
「……わかりました。わかりましたから……」
つきあわされる桜はとてもつらかった。一体いつまで上映会をやるのだろうか。いやまさか本当に終わるまで帰らせてもらえないのだろうか?
だがしかし、ワンシーズンの区切りの話が終わった後ようやく映像が止まる。
桜は心底ほっとした。
もう時刻は深夜帯。
子供は帰っているし、自分たちもお開きであろう。
そう思って立ち上がると、凶津がカタカタと歯を鳴らし、アルコールの入った呂律の回らないままに言うのだ。
「あいぼう~なぁ~に終わった顔してんだッ! おたのしみぃはぁ! これからだろッ!」
え、と桜は愕然とする。
凶津の隣に立つ『五月雨模型店』の店長も頷く。
「店長の家でセカンドシーズンの続きだッ!」
「……え?」
「流石に深夜帯だからな。此処で騒ぐのは迷惑だ。と言ったら彼が……」
「おうッ! 店長の家で見ればいいじゃんってはなしでなぁッ! いくぜ、相棒ッ!!」
桜はめまいがした。
本当に本当に全部見終わるまで終わらないヤツであった。
桜は仕方ないと凶津と共に店長の家で、『インセクトボーガー』セカンドシーズンのアニメが見終わるまで寝かせてもらえず。
長い、長い夜を過ごすことになる。
朝日が目に厳しい。
「……おひさまって、こんな色でした、っけ……」
凶津のいびきと共に桜はガクリとやり遂げた顔で眠るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒さんと】
んー、インセクトボーガー、新機軸プラクトとしては面白いと思うのですが
理緒さんが猟兵してる限り、日の目を見ることは無さそうです
颯爽菱子さん、惜しい人を亡くしました
あのツッコミ力、味方サイドでも活きたでしょうに
まぁゼクスさんも五月雨模型店に仲間入り……って
そういえばフュンフさんはどこいったんでしょうね?
理緒さんと目のハイライトもどってきてー
早く戻ってこないとフィーアさんの嚙みかみが消失しちゃうかもですよー?
さてさて、私は忍びながら
ツヴァイさんに悪戯して満足しましょう
いえ、なんか弄らないといけない衝動に駆られました何故か!
というわけでまずは忍び&クノイチムーブで
忍べてますから!?
菫宮・理緒
【サージェさんと】
『フィーア』さんの噛み噛みが消失する……!?
カタストロフレベルの大事件じゃないですか!
そんなのダメだよー!猟兵として許されない!
さぁ『フィーア』さん、噛んで、すぐ噛んで!
五月雨模型店のために、世界のために、そしてわたしのために!
(ハイライト戻って覚醒モード)
あ、ごめんね。
サージェさんがいきなりショッキングなトークするから、取り乱しちゃった。
ハイライトが戻ったのは良かったけど、
さすが忍べてないクノイチ、青少年だけでなくわたしの心臓にも悪いね!
って、あれ?
そういえばなんで2人とも着替えちゃってるの!?
まだ2人の水着姿、あんまり撮ってないのに!
プラクトのためにも、も一回着てみない?
商店街の巨大モニターでは今まさに『インセクトボーガー』のアニメシリーズの上映会が行われていた。
巨大なモニターで見るアニメというのは迫力が違う。
商店街の面々も、猟兵たちも皆見上げ、歓声を上げている。それほどまでに完成度の高いアニメなのだ。
きっと巨大企業『株式会社サスナーEG』の出資が大きいのだろう。
それほどまでに『インセクトボーガー』を主力商品として『株式会社サスナーEG』は売り出したいのだろう。その意欲が読み取れる。
「んー、『インセクトボーガー』、新機軸『プラクト』としては面白いと思うのですが」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、それが難しいことであろうなーって思っていた。
何故ならば!
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)がブームを絶対に絶対に潰そうとするからだ!
虫が苦手っていうか、嫌いっていうか、憎悪しているっていうか。
それほどまでに過剰に理緒が反応するのだ。
今回の戦いだってそうである。過剰な火力でしょってなるくらいのあれでじゅってやっても気がすまなかったのだ。
「理緒さんが猟兵してる限り、日の目を見ることはなさそうです」
『颯爽菱子』さん、惜しい方を亡くしたなぁってサージェは思った。貴重なツッコミ力であったのだ。
全部拾って打ち返してくれそうな気配すらあったのだ。
もしも、彼女がダークリーガーでなかったのならば、頼もしい味方としてもり立ててくれただろうにと思う。
「とっても残念です……まぁ、でも『ゼクス』さんも『五月雨模型店』に仲間入り……」
ってことで、とサージェは思ったがあれ? と思う。
前回戦った『フュンフ』が仲間入りしていない。というか、彼は洗脳されたダーク化アスリートではなくダークリーガーだったのだ。
となれば、仲間になる、ということはないのかもしれない。
「あ、でも……あー……」
「だめだめぜったいだーめ!『インセクトボーガー』使うのダメー!!」
理緒がいやいやと首を振っている。
その先にいるのは『フィーア』と呼ばれる少女だった。彼女は『インセクトボーガー』に興味を持っているようであったし、『ゼクス』と商品についてどんなものがあるのかを語ろうとしていたのだ。
けれど、理緒はそれがどうしてもダメであった。
「理緒さん、それは流石に。目のハイライトも戻ってきていませんし」
「いやいやいや! だめだって! あんなかわいい子があんなおぞましいのを使うなんて!」
そんなの絶対ダメ! と理緒の目はつり上がっているがハイライトがない。
「もー、そんなにハイライト家出したままだと『フィーア』さんの噛み噛みが消失しちゃうかもですよー?」
「ええええ、こ、こここれは、そういうんじゃないんです、けどっ!」
『フィーア』が急に話を振られて驚いている。
ていうか、自分の評価ってそこなんだ、と思っている顔であった。
どう考えてもいっぱい頑張ったのになぁって思っていたが、理緒たちにとって、彼女の言葉を噛むクセはどうしても捨て置け無い問題であったようだ。
「そんなのダメだよー! 猟兵として許されない!『フィーア』さんの噛み噛みが消失するなんて、カストロフレベルの大事件じゃないですか!」
いや、それは言い過ぎな気がする。
けど、理緒にとっては、それほどまでに重要なことなのだ。絶対に『フィーア』の噛み噛みクセは治してはならない。
これはみんなとわたしとの約束! と理緒の目は迫真に満ちていた。ハイライトも戻ってきた。
「えええ、なん、なんでです!?」
「いいから! そのまま! ずっと噛んで、すぐ噛んで、いつでも噛んで!『五月雨模型店』のために、世界のために、そしてわたしのために!」
主に最後のそれが重要である。ていうか、そのためだけに『フィーア』は噛み続けなければならないまであるのだ。
「ひえええ……!」
怯える『フィーア』。それはそうである。むしろ、今までよく理緒から距離を取ってなかったなとなるまである。
「あ、ごめんね。サージェさんがいきなりショッキングはトークするから、取り乱しちゃった」
てへぺろ。
じゃないのだが。『フィーア』はそうなの? と素直である。ああ、かわいいと理緒は撫でくりまわしてしまいたくなる。
「……ってあれ!? なんでふたりとも水着から着替えちゃってるの!?」
「え、ええ……だって、は、はは恥ずかしいですし……」
なんで!? と理緒は絶叫する。
試合にかまけて、まだ写真も撮っていなかったのだ。
「って、サージェさん!? サージェさんは!?」
姿が見えない。
さすがクノイチムーブでサージェは『ツヴァイ』にいたずらを仕掛けに行っているのだ。
「いや、忍べてないですけど」
冷静なツッコミが返ってくる。『ツヴァイ』はサージェが絡む前から彼女の接近を察知していたようである。
とても冷静である。なんか前にもやられたことがあるみたいな雰囲気出しているところが只者じゃない感じがする。
「だっていじりたいって思ったのなら! この衝動に従うべきでは!?」
「いえ、忍べてないので無理です」
「忍べてますから!?」
いや、それ無理、と周りのメンバーも頷いている。それもそのはずである。自己主張激しいサージェのないすばでぃー。
揺れたり弾んだりしていたら、忍べるものも忍べないのである。
「無理です」
じとっとした視線。弄るつもりできたのに逆にやり返されてしまうクノイチ!
そんなクノイチを他所に理緒はサージェを探し回っていた。そう、全ては写真を撮るため!
水着クノイチと水着カミカミ娘のツーショット。
「それを撮るまではわたしの『プラクト』は終わらない、よー!」
理緒の叫びと『ツヴァイ』のジト目に挟まれて、サージェはにっちもさっちもいかない状態に追い込まれながら、思わず叫ぶしかないのだ。
「忍べてますから――!?」
いや、無理だって――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ステルク】
こうして戦いは終わりを告げ
颯爽菱子の想いはある意味で勝利を得て
世界はまた新たな平和を生み出したのです
(ナレーション風メイドトーク)
はい
というわけでエイル様鑑賞会
じゃなかった、憂国学徒兵シリーズ一気見の会をします
ルクス様にはここでエイル様の良さを徹底的に叩き込みます
休憩はアイキャッチの間だけと知りなさい
ええ、冗談のような本気です
お覚悟を
しかし…やはり共通の話題は大切ですね
憂国学徒兵シリーズはそういう意味でも秀逸です
ルクス様の演奏は
五月雨模型店の皆様の力も借りて絶対阻止しますので
そういえば五月雨模型店の店長様はどのような方なのでしょう?
具体的にはメイド好きとか聞いたことありませんか?
ルクス・アルブス
【ステルク】
ス、ステラさん、いったいどうしたんですか?
いきなりのナレーション風なんて、
なにか誤魔化さないといけないこととかありました?
って、強引なねじ込みでしたー!?
いえ、あの。
そのシリーズ、GとかGXとかまでならまだしも、
AXZとかXVまであったりしないですよね……?
アイキャッチの間だけ!?
せめてOP・EDと次回予告は休ませてくださいですよ!
それがダメなら、OPとEDはわたしの生演奏とかさせてください!
と、最初のうちは抵抗とかしていましたが、
後半戦になると、いろんなものが底をついてしまい、
ハイライトの家出した瞳で、『ハイ』『ソウデスネ』『スゴイデス』と、
こくこく頷く機械になっちゃいますね。
「こうして戦いは終わりを告げ」
重厚なBGMが響く中、無駄に良い声が響く。
「『颯爽菱子』の想いはある意味で勝利を得て、世界は新たな平和を生み出したのです」
なんだかよくわからないノリでナレーション風メイドトークを炸裂させていたのは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
「ス、ステラさん、いったいどうしたんですか?」
いきなりのナレーション。
何かをごまかさないといけなくなったときみたいだと思っていたのだが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は困惑している。
別にごまかさないといけないことって、今回起こしてない。しでかしていないとも言える。
多くの世界でやらかしてきた勇者だからこその直感。間違ってない。
なのにステラが急にナレーションを垂れ流すメイドになってしまったのだから、ある意味で怖くなってしまったのだ。
知らぬ間にやらかし案件だったのかと思ってしまったのも無理なからぬことである。
そういう意識、とっても大切。ヨシ。
「はい、というわけで」
ステラはアスリートアースのアニメショップに直行していつのまにか購入してきた『憂国学徒兵』シリーズのDVDBOXセットをルクスの前に置く。
「今ズシンって音がしましたけど」
「今日はこの後から『エイル』様鑑賞会――じゃなかった、『憂国学徒兵』シリーズ一気見の会をします」
「それは無茶だよ!」
思わず止めに入ってしまった御曹司『ゼクス』。
それもそのはずである。『憂国学徒兵』のシリーズは30を越えているのである!
とんでもない長寿シリーズなのだ。そりゃあ止める。
「いえ、ルクス様にはここで『エイル』様の良さを徹底的に叩き込みますから」
「え、あの、いえ、え?」
「休憩はアイキャッチの間だけと知りなさい」
「いや、それ本当一瞬だよ!?」
「せめてOP・EDと次回予告は休ませてくださいですよ!」
「いえ、飛ばしませんし。休ませません。EDのときは感想をその都度聞きますから」
『ゼクス』が懸命に止めてくれている。しかしステラは止まらない。こういうときの彼女は暴走超特急なのである。
スピードは出ているが、簡単には止まらない。障害物があってもぶち抜いていく。そういうものなのである。
それがどんなに悲惨な状況を生み出しのだとしても、全く止まる気配というものが存在しないのだ。
「その知りず、GとかGXとかまでならまだしもAXZとかXVとかあったりしないですよね……?」
ルクスは恐る恐る『ゼクス』に聞く。
「……A&Wとか、BAとか、SSWの番外編のSSOとか……そのいっぱいあるから……」
なんとも言い難い顔をしている『ゼクス』。
つまりそれはルクスの想像通りってことである。
「では先ずは無印から参りましょうか」
「う、嘘ですよね!? 流石に初回のOP、EDは見るのは礼儀ってわかりますけど、お願いです休ませてください! 冗談ですよね!?」
「ええ、冗談のような本気です」
「な、なら、OPとEDはわたしの生演奏とかにさせてください!」
ダメに決まってるだろ、という顔でステラは微笑む。
「お覚悟を」
それがルクスにとって最後であった。
『ゼクス』も共に見てくれていたが、共通の話題とは言え、流石に食傷気味である。げっそりし始めているし、そんな『ゼクス』がそうなのであるのならば、ルクスはさらにげっそりしている。
最初のうちはなんとか抵抗も出来ていた。
耳コピしたOPとEDをなんとか演奏しようとして、都度ステラに止められていた。羽交い締め、三角絞め、四方固め。
まあ、なんとバリエーション豊かな寝技でしょう。
素敵。
とはならんのである。ルクスはもう後半を過ぎたあたりで抵抗などしなかった。諸々のあれやそれやらが底をついてしまった。
ハイライトは別の意味で家出しているし、『ゼクス』もそこらで突っ伏している。
「ああ、そういえば『五月雨模型店』の店長様はどのような方なのでしょうね」
「ハイ」
「何度か拝見しているのですが、人となりとなるとまだ」
「ソウデスネ」
「今度はしっかりご挨拶に向かべきでしょうか」
「スゴイデスネ」
コクコクとステラの言葉に相槌をうつルクス。
びりっ! と電流が入ってルクスが覚醒する。相槌をうつにしても、しっかりと打たねばならない。
身が入ってない返事をするとビリっとやられてしまうゾ!
「うはぁい!?」
「『ゼクス』さんもご存知ではないですか?」
「え、えぇと、その、何でも凄腕だっていう話は、ちらと」
「メイド好きとか聞いたことありませんか?」
「め、メイド!? え、ど、どうだったかなぁ……」
バチン! と電流が鳴る。
ルクスがびくんびくんと跳ねて機械じみた反応を見せる。
「ハイソウデスネスゴイデスネ」
バグっとる!
そんな様子に『ゼクス』は目一杯『五月雨模型店』の店長のことを思い出す。どうだったっけ、下手なこと言うと自分もバチンってやられそうって思ってしまったのだ。
「あ!」
「なんです?」
「えーと、そのぉ……確か、『皐月』さんって名前、だったような?」
違ったっけ? と『ゼクス』が首を傾げる。
それを聞いてステラは頷く。また一つ得ることができた。ならば、とステラはルクスを揺さぶるのだ。
「ルクス様、まだ終わっておりませんよ。さあ、続きを」
「ハイソウデスネ」
バグったままのルクスとステラは、そのまましっかりと30を越えたシリーズを完走するまでの長丁場をアスリートアースの殺人競技よりも殺人的スケジュールをこなしてみせるのでった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
やったータダ飯だー!
という訳で、あちこちで摘みながらフェスティバルを楽しませて貰おう
あれもタダ、これもタダ
まあとりあえず、一通り堪能して腹ごしらえしたらプラスチックホビーフェスティバルらしい事をしようかな
今回使った機体を更にダメージ加工して…ウェザリング塗装もして…
後はバトルフィールド、なんかそれっぽくしよう…
あ、消えてった颯爽菱子のインセクトボーガー使えないかな
まあ使えなかったらそれっぽいやつを見立てで使って…
後は何かそれっぽく飾り付けて…
出来た!
今日のバトルっぽいジオラマ!
なんたって今日はタダプラモ
財布が痛まないプラモ作りも乙な物だなあ
…彼持ちでちょっと良いコンプレッサーとか注文出来ない?
「やったータダ飯だー!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)の目の前には軽食、と呼ぶにはあまりにも見事で豪華な食事が居並ぶ。
いずれも5つ星ホテルのシェフの気まぐれではないメニューばかりである。
どれを食べても美味しい。
さすが金持ち坊っちゃん! と玲は思っただろう。
というか、あれである。此処はアスリートアース。となれば、諸々の健康やらなんやらに配慮した調理が成されているはずだ。
そういうものってたいてい味が薄すぎたり、淡白は味わいだったりで物足らないものだ。けれど、アスリートアースは違う。
この世界でシェフを、それも5つ星を頂くというのならば健康面、味、バランス、栄養素、それらを全て網羅してしかるべきなのである。
だからこそ、玲は明日の体重計のことなど考えなくて良い。
いや、そもそも気にしたこともないのかもしれない。
彼女のすらりとしたプロポーションを見ればわかる。至高の領域に近い。練り上げられている。どこかのグリモア猟兵が聞いたら卒倒しそうな感じであるが、まあ、ともかくそういうものとは玲は無縁である。
「あれもタダ、これもタダ!」
美味い! 美味い!
本当に美味しそうに玲が食べるものだからシェフもにっこりである。
「ふぅー……一通り堪能したかな。じゃ、プラスチックホビーフェスティバルらしい事しようかな」
えーと、と玲は手近にあったマテリアルのピグメントを手に取る。
粉末上の顔料。
それと定着液。
あとはー、と諸々見繕って玲はそさくさと制作スペースに今回自分が使ったホビーと共に向かう。
「お、なにしてんの!」
めざとく『アイン』が寄ってくる。
「ふふん、今回使ったやつを……こうして、こう!」
玲の手元で戦いのダメージを負ったロボットホビーが汚されていく。いや、違う。ウェザリングを施されているのだ。
実際にフィールドで戦ったからこそのリアル。
さらに其処に外連味を足す、というのであれば、少々大げさなくらいの汚しが入った方がいいのである。
「ジオラマかー! いいな! って、もしかしてまた……」
「そうだよ。『五月雨模型店』に飾ってもらおうと思ってね」
そう言って玲は懐をまさぐる。そこにあったのは消えたダークリーガー『颯爽菱子』の操っていた『インセクトボーガー』、『フォイアロート・ヒルシュ』の残骸だった。
「あ、それ!」
「うん。折角だから使えないかなってね。戦った相手だけどさ。なんかいい感じに遺しておいて上げたいじゃん」
其の言葉に『アイン』も同意を示す。
確かに敵同士だった。
ダークリーガーであった。
けれど、そこにあった意志は真剣勝負を尊び、何よりも勝利を渇望したスポーツマンだったのだ。
ならばこそ、そこに敬意を払うことはなくてはならないことであったし、それこそがスポーツ競技の根幹を成すものであったはずだから。
「よし……バトルフィールドも出来た、と……後は破片とかエフェクトとか……」
玲はヒートガンでプラ板やら棒を炙って捻じ曲げ、戦いのエフェクトを作り上げていく。
それを見栄えするように配置していけば、見事な『プラクト』の試合情景がそこにはミニチュアサイズで表現される。
いや、違う。
これが原寸大なのだ。
確かにあのフィールドの中では、作り物じゃない二つのホビーが激突していたのだ。
「出来た!」
玲は笑う。
良い出来栄えだ、ということもある。けれど、それ以上に玲を喜ばせたのは、全部タダってこと!
マテリアルも塗料も何もかもタダ!
「ひゅー! 助かるぅ! 財布が痛まないプラモ作りも乙なものだなあ……」
そこまで言って玲は思いつく。
全部タダ。
ってことは、こういう時にこそ高額商品を買うべきなのではないかと。
「……ねえ、|彼《『ゼクス』》持ちでちょっと良いコンプレッサーとか注文出来ない?」
例えば、L7とかL10とか!
そんな風に囁く玲に『アイン』は流石にジト目になってしまう。
「姉ちゃん……」
「うそうそ! じょうだんじょうだん! ……いや、でもほんとに無理かな?」
「姉ちゃん……!」
そんなやり取りがあったとかなかったとか。
幸いにして、それを『ゼクス』が聞くことはなかった。なぜなら、他の猟兵に連れられて『憂国学徒兵』シリーズ一気見会でぐったりしているからだ。
玲は残念、と笑いながら今日という日のバトルを再現したジオラマを『五月雨模型店』のショーケースに飾り、膨れたお腹と共に明日をまた楽しみに思うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
颯爽菱子ちゃん、強敵だったよ…ありがとー!
あそれはそれとしていっしょにパーティしてくー?
とUCなりなんなり使っておこう
今回は撮れ高もよかったしけっこういい反応がくると思うんだよねー!
わーい!パーティーパーティー!
まあ思い直してくれたならよかったよ
楽をするのもいいけれど、でも自分で全部作るっていうのも大変な分楽しいからね!
その分愛情も沸くってものさ!そういう相棒って云わば自分の分身みたいなもので…
ボクもそういう子たちは可愛くって何でも許しちゃうもの
そんな相棒をキミもいっしょに作ろう!
そしてやろう!プラクト!
目指せ銀河リーグ!そして宇宙リーグ制覇だよ~!
ダークリーガー『颯爽菱子』は掛け値なしの強敵であった。
これまで相対してきたダークリーガーの殆どは、その身体能力とホビーの力によって自らを誇示してきた。
けれど、彼女だけは違ったのだ。
血の通った者だった。
その熱血具合には、確かに人の血の暖かさがあたtのだ。
「『颯爽菱子』ちゃん、強敵だったよ……ありがとー!」
戦いを終えたロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、そう叫んだ。
霧散して消えていく彼女を見送り、ロニは満足げだった。良い戦いができたこと。楽しく遊べたこと。
そのどれもが掛け替えのないものとしてロニの中に宿ることだろう。
一緒にパーティしていくことができなかったことが心残り出会ったけれど、しかしまあ、それも仕方のないことである。
神心(ゴッドウィル)でも実現できないことはあるのだ。
けれど、それでも今日という日は昨日に変わる。
昨日という日があったからこそ、明日に向かっていけるのだ。
「ま、いいよね。それで。でもでも今回は撮れ高もよかったし、結構良い反応がくると思うんだよねー!」
ロニは『プラクト』の試合を振り返る。
今回もど派手に戦えた。
其の様子を中継している動画配信サイトではおそらくトレンドに上がることだろう。
それに今はパーティである。
商店街まるごとプラスチックホビーフェスティバルにしてしまえるポケットマネーを繰り出す『株式会社サスナーEG』の御曹司こと『ゼクス』のお金の使い方は、お小遣いの範囲を越えているように思えたが、しかしこれが御曹司というものである。セレブというものである。
「ま、いっか! わーい! パーティーパーティー!」
「楽しんでいってくれたら嬉しい。僕もみんなの仲間に入れてもらえたし、これからは!」
自分で思い描き、自分で作って、自分で戦うのだと『ゼクス』は笑っている。
良い笑顔だと思った。
「ん、思い直してくれたならよかったよ。楽をするのもいいけれど、でも自分で全部作るっていうのも大変な分楽しいからね!」
『ゼクス』の言葉にロニはそう返す。
背丈は変わらないからか、『ゼクス』も気安いようである。
「その分愛情も湧くってものさ! そういう相棒って謂わば自分の分身みたいなもので……」
「自分の子みたいなってこと?」
「そうだね。そういうものかな。ボクもそういう子たちは可愛くって何でも許しちゃうもの!」
だから、とロニは笑う。
「そんな相棒をキミも一緒に作ろう!」
でも、と『ゼクス』はまごつく。だってそうなのだ。これまで金で全部解決してきた。自分が出来ないことは他人にやらせてきたのだ。
それを今更自分ができるだろうかと不安に思うことは当然かもしれない。
けれど、とロニは『ゼクス』の胸を指で突く。
そこに灯された熱いものがあるだろうと。それは『颯爽菱子』がもたらしたものだ。そして、無くしてはならないもの。喪ってはならないものだと示すのだ。
「一緒にやろう!『プラクト』!」
「う、うん!」
その意気、とロニは笑って『五月雨模型店』に『ゼクス』を誘う。彼がその後『憂国学徒兵』シリーズ一気見会に引っ張り込まれるその時まで、ロニは彼がどんなものを作るのかを見守り、そして大きな目標を打ち立てるのだ。
「目標?」
「そう、目標。目指すものってことさ」
「じゃ、じゃあ、自分の相棒プラモを作る、こと、かな?」
「のんのん! せっかくなら目指そうよ! 銀河リーグ! そして宇宙リーグ制覇だよ~!」
そんなリーグないけど!? というツッコミを無視してロニはケタケタ笑い、プラスチックホビーフェスティバルを楽しむのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
思えば奇妙なダークリーガーだったね…いや、アスリートとしてはあるべき姿だったのかもしれない……
彼女が言っていた『ワールド・ビルディング・カップ』っていうのは気になる所だ…
アイン達は参加したがるだろうから参加要綱やルールを確認してみよう……
(食事を片手にパソコンで調べる。興味を持った五月雨模型店の面々がいれば一緒に)
ふーむ、こういうルールか……まだ時間はあるしこれに向けた準備も必要だね……
ついでだから優勝候補のチームや有力チームも調べようか……まだ見ぬ強敵っと言う奴だね……どんな人がいるのか楽しみだ
思い返してみればダークリーガー『颯爽菱子』は奇妙な存在だった。
「……いや、アスリートとしてはあるべき姿だったのかもしれない……」
けれど、あんなオブリビオン、ダークリーガーは早々現れないだろうとも思える。いや、此処がアスリートアースだからこそ現れた存在であったのかもしれない。
八百長を許さず。
勝利を渇望し。
そして、それを示して見せる。
優勝請負人とはよく言ったものである。今回彼女は試合に負けて勝負に勝った、とも言える。
彼女の目的は勝利であったはず。
真剣勝負の末の勝利。しかし、その先にあるものを彼女は『ゼクス』にもたらして魅せたのだ。
それは見事と言う他無いと、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は思うのだ。
『五月雨模型店』の外、商店街では改心した『ゼクス』によってプラスチックホビーフェスティバルが開かれている。
全て彼のポケットマネー、即ちお小遣いで賄われているという。
彼の両親が社長と副社長を務める巨大企業『株式会社サスナーEG』がどれだけ莫大な利益を上げているかが伺い知れる一面であったことだろう。
みんな誰も彼もが勝利と楽しさに浮かれている。
『ゼクス』自身もそうなのだろう。
これまで金というものでしか人とつながってこなかった。
けれど、真剣勝負を見ることによって、人と人との繋がりが時には衝突でもって生み出されることを知ったのだ。
其の尊さは言うまでもないだろう。
メンカルは息を吐き出し、手元のパソコンを振る舞われた軽食をつまみながら見やる。
そこに映し出されていたのは、『ワールド・ビルディング・カップ』の概要ページ。
「……彼女が言っていた『ワールド・ビルディング・カップ』っていうのが気になっていたけれど……」
調べてみればいくらでもネットワーク上に話題として取り上げられている。
『プラクト』は未だ非公式競技である。
けれど、其の間口の広さ、ホビーを介する、という点においては世界中で行われる可能性も秘めているのだ。
ならばワールドワイドな催しがあってもおかしくはない。
それに『アイン』たちならば参加したがるだろうと想って、参加要項やルール確認をしていたのだ。
「……ふむ……『プラクト』ルールに準拠ってことは、人数制限なしの殲滅戦……ここまでは変わらないな……」
『ワールド・ビルディング・カップ』は、各国から2組の代表チームを選出する決まりになっている。
つまり『五月雨模型店』がこれに出場するためには、この国の代表にならなければならないということである。
これは難しいことになりそうである。
だが、メンカルは知っている。
「何をしていらっしゃるのですか? 調べ物ですか?」
『ツヴァイ』と呼ばれる少女がメンカルがなにやらパソコンの前で作業をしているのを見て近寄ってくる。
彼女は小学生くらいの年齢であるが、大人びたところがあった。
メンカルのパソコン作業を興味深そうに思っているのだろう。
「……ん。『ワールド・ビルディング・カップ』って言ってたでしょ、向こうのチームの」
「はい、今年発表されたばかりの新設のトーナメントですね。話題になっていました」
「……そう。だから、『アイン』とかなら出たがるかなって思って。『ツヴァイ』はどう……?」
それは、もちろん、と彼女は頷く。
けれど、難しいこともわかっているのだろう。今回だって猟兵たちの助けがあったからこそ、勝利できたようなものだからだ。
自分たちの力だけでやっていけるかどうか、と不安に思うのも無理なからぬことだ。
「それに世界です。すごい選手たちがたくさんいます」
例えば、『無敵艦隊オーデュボン』、『オーバード』、『プロメテウスの火』、『梟門鴉鷺連合』、『絶対雷人』といった錚々たる世界有数の『プラクト』チームが立ちふさがる。
けれど、それでも挑戦したいのだと『ツヴァイ』の瞳が言っているのをメンカルは見つめることだろう。
「……まだ見ぬ強敵に恐れるどころか、立ち向かいたいと思う、か……」
その顔にメンカルは頷く。
ならば情報は集めなければならない。到底無理な目標であったのだとしても、それを笑うことなどない。
挑戦とはいつだって生きているということだ。
その気持ちがあるのならば、如何なるものを乗り越えることができる。それが技術にも体力にも勝るもう一つの力であることをメンカルは知っている。
多くの失敗を得て、一つの成功を得る。
何度も繰り返し、なおも諦めないこと。ガジェット制作でも一緒だ。だから、メンカルは『ツヴァイ』と共に『ワールド・ビルディング・カップ』に向けて一層邁進するようにプラスチックホビーフェスティバルの喧騒を横目に、また明日のために走り出すように懸命に手を伸ばすのだった――。
大成功
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