ティタニウム・マキアの所動
●クヌピ
己達のことを人は『クヌピ』と呼ぶ。
遥か昔の言葉で『蚊』を示す意味があると聞いたことを少年は思い出す。
汚染された雨が降る世界。
見上げる空はどんよりとした灰色。その先には青空が広がっているらしい。らしい、というのは彼が一度も青空を見たことがないからだ。
スモッグが重たく自分たちの空に蓋をしている。
「どこまで言ってもクソみたいな世界だな」
「それは同感だけどな。けれど、そのクソみたいな世界でクソみたいに死ぬことがお前の望んだことか?」
亜麻色の髪の男が己を見ている。
黒い瞳にある感情の名前を己は知らなかった。
「虫けらみたいに殺されて、ただそれだけでいいなんて思ってはいないだろう」
「……どんなに願っても、どうしようもないだろう」
「この薬を使えば、そうでもないかもしれない。飲めばまともな人間には戻れない。ただ、力は得ることができる」
亜麻色の髪の男の手にあるアンプル。
「俺たちに対して理解を持っているとでも言いたげな顔をしているな」
体を起こす。
痛みが走る。己の体はもう、とっくにボロボロだ。けれど、こんな己にも護らねばならないものたちがいる。
「理解しているとも。誰かを理解することは尊ばれることだ。誰かの苦しみを理解し、助けてあげなくちゃあならない。そうだろう? それが人間性ってものだ」
「だが、その理解の正しさを誰が証明してくれる」
「別に正しい理解だとか、間違った理解だとかはどうでもいいんだよ。自分が理解し、理解していない奴らを見下すことほど心地よいものはないからな。そうやって人間ってのは他人を食い物にしていくもんだ」
だから、と亜麻色の髪の男は言う。
食い物にされ続けて言い訳がないと。例え、虫けらのように、蚊のように、ただの一叩きで潰されるような生命だったのだとしても。
それでも、生命を死に至らしめる可能性持つ針を手にすべきだと。
「これがアンタたちの最後の武器だ――」
●蚊
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の予知はサイバーザナドゥ。巨大企業群『ティタニウム・マキア』による『超能力者狩り』を阻止して頂きたいのです」
『超能力者狩り』。
それを聞いた猟兵達の中には顔をしかめる者もいたかもしれない。
サイバーザナドゥにおいて、しばしば行われる『超能力者狩り』。
それは巨大企業群によって行われる超能力者……即ち、サイコブレイカーを捕らえる、ストリートの浄化作戦である。
何を持って浄化と呼ぶのか。
「サイコブレイカーはご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、違法薬物の過剰摂取によって後天的にサイキックを得た『人造サイキッカー』です。多くの巨大企業群は彼等を危険分子としていますが、巨大企業群『ティタニウム・マキア』は違います」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは訝しむ。
浄化作戦を謳っておきながら、そうではないということだろうかと。
「『ティタニウム・マキア』はサイコブレイカーたちを捉え、何処かへと連れ去っているのです。殺すでもなく、オブリビオンにするでもなく」
一体何を目論んでいるのかは判然としていない。
だが、確実に言えることがある。この『超能力者狩り』を許しておけば、ただ無為に彼等は捕らわれ『ティタニウム・マキア』に利用されるだけだ。
搾取されるといってもいい。
「確かにサイコブレイカーの方々は違法薬物に寄って力得た方々。しかし、それは弱き人々が得た『最後の武器』でもあるのです」
何より、『超能力者狩り』に投入されるのはオブリビオンである。
オブリビオンによって行われる公然とした狩りを許すわけにはいかない。
「サイコブレイカーの方々も抵抗するでしょう。ですが、彼等の力は弱く、圧倒的な物量で迫るオブリビオンたちの前に敗れるしかないでしょう」
今回、猟兵たちが向かうのは少年少女たちの一団が住まうストリートである。
すでに転移したときには警察機構のオブリビオン『シンセティック・オフィサー』たちが彼等を捉えようと包囲している。
サイコブレイカーとは言え、少年少女たちの力は弱いように思える。
彼等を援護し、包囲網を突破して逃れなければならない。
だが、包囲網を突破したとて、彼等の安息の地はない。
「以前、『ティタニウム・マキア』の纏わる事件において皆さんが関わったサイバーニンジャクランに所属するサイバーニンジャ『イェラキ』さんを覚えていらっしゃるでしょうか」
ナイアルテの言葉に覚えて居る者もいるかもしれない。
オブリビオンに掌握されたヤクザ事務所とことを構えたサイバーニンジャである。
彼の伝手が今回使えるようである。
サイコブレイカーの少年少女たちを、ストリートから連れ出し、『イェラキ』の用意した別天地へと向かわねばならない。
「最後に必要なのは追撃を断ち切るための処理です。サイバースペースからサイコブレイカーの少年少女たちの個人情報を消去する必要があるのです」
それはさらに面倒なことではないかと理解できるだろう。
けれど、それをやらねばまたサイコブレイカーの少年少女たちは巨大企業群から追手を差し向けられる。
「そのために警察機構のサイバースペースに侵入し、彼等の個人情報を消去してほしいのです」
ナイアルテは非合法そのものな行いを猟兵達に頼んでいる。
仕方のないこととは言え、腐敗した警察機構に期待することはできない。
例え、その手段が褒められたことではないにせよ、無辜のサイコブレイカーたちを護るためには必要なことなのだ。
汚れ仕事を頼むことになるとはナイアルテ自身も思っても見なかったのだろう。
だが、清濁併せ呑むことこそ、人の生命を救うことになるというのならば、彼女はきっと進んで汚れるだろう。
また猟兵達もそうであろうと彼女は理解している。
「どうかお願い致します。彼等を救うため、そして、『超能力者狩り』を阻止するため、お力をお貸し下さい」
そう頭を下げ、彼女は猟兵たちを見送るのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
サイバーザナドゥのあるストリートにて行われる警察機構による大規模な『超能力者狩り』。それは違法薬物が蔓延するストリートを浄化するためというクリーンなお題目を持って行われています。
無論、巨大企業群『ティタニウム・マキア』が裏で手を引いていることは言うまでも在りません。
捕らえられたサイコブレイカーの少年少女たちがどのような境遇に至るのかはわかりませんが、どの道ろくなことではないでしょう。
それを止めるシナリオになります。
●第一章
集団戦です。
ストリートはすでに警察機構に包囲されています。
前線に立つ『シンセティック・オフィサー』たちは警察機構に初属していますが、オブリビオンです。
彼等とサイコブレイカーの少年少女たちは戦っていますが、どうも力が弱そうに思えます。
彼等に加勢し、包囲網を突破しましょう。
●第二章
日常です。
以前、『ティタニウム・マキアの雷動』(#巨大企業群『ティタニウム・マキア』)にて猟兵とつながりを持ったサイバーニンジャ『イェラキ』の伝手を頼って、皆さんはサイバースペースに在る彼等のクランの隠れ家へとサイコブレイカーの少年少女たちとともに向かいます。
そこは巨大企業群に対抗するレジスタンスのアジトでもあります。
彼等に少年少女たちを預けるも良し、また別の仕事や新天地へと誘うこともできるでしょう。
●第三章
ボス戦です。
新天地に向かう者。サイバーニンジャクランでレジスタンスとして戦うことを決めた者。または新たな仕事を斡旋してもらった者。
それぞれの新たな道程を祝う間もありません。
すぐさま皆さんは警察機構のサイバースペースへと飛び、彼等の個人情報を消去しなければなりません。
そのセクションに潜入して、情報を消去すれば終わりなのですが、其処に待ち受けるオブリビオン『ケラウノス』との戦いになります。
また『ケラウノス』は通常のユーベルコードと同時にユーベルコード『カゲブンシン・フェノメノン』を発動して皆さんに襲いかかってきます。
それでは、『巨大企業群(メガコーポ)』、『ティタニウム・マキア』と戦いを繰り広げる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『シンセティック・オフィサー』
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POW : スティック・アンド・ブラスト
【スタンロッドの刺突攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【義眼による高出力ビーム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : フォトンバレット・ストーム
【レーザーSMGの一斉射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : シールド・インパルス
自身が装備する【防弾シールド】から【閃光と衝撃波】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【目眩とスタン】の状態異常を与える。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『超能力者狩り』の前線に立つのは、クローンサイボーグでるオブリビオン『シンセティック・オフィサー』たちであった。
彼等の圧倒的な物量と『ティタニウム・マキア』の提供する高性能武装は、非力な『サイコブレイカー』の少年少女たちを圧倒していた。
「目標の沈黙を確認。捕縛に入る」
「彼等の持つ超能力に注意せよ」
ストリートは戦場となっていた。
包囲するオブリビオン『シンセティック・オフィサー』たちの猛攻は凄まじい。油断も慢心もなかった。
ただ只管に己達の職務を遂行するためだけに『シンセティック・オフィサー』たちは前進を続ける。徐々に狭まる包囲網。サイコブレイカーの少年少女たちは追い込まれていた。
「クソっ……なんで俺たちの場所が割れてるんだよ!」
「絶対バレないようにって、工夫したのに……」
「あの情報屋……『メリサ』だって太鼓判押してくれたよね!?」
「なのになんで……!」
彼等は困惑していた。
彼等は殺し屋『クヌピ』として弱い超能力ながら、遅効性の毒をターゲットに流し込み、確実に始末するという業でもって業界に名を知られていた。
だが、『クヌピ』の名は特定の誰かを示すのではなく、群体としての名である。
『メリサ』と名乗る亜麻色の髪の男がアドバイスしてくれたのだ。
そうしたほうが、脚がつきにくい、と。
たしかに己達の超能力は弱い。けれど、それが逆に警戒されないのだと。誰もが強いとわかっている者を前にしては構えるが、弱者と見れば舐めた態度を取る。
そこを一刺しで逆転できるのが己達の超能力だと教えてくれたのだ。
「うぅ……なのに、なんで!」
彼等の命運は風前の灯。
吹けば消えるような虫けらそのもの。
けれど、その灯火を前に転移してくる者たちがいた――。
アルトリウス・セレスタイト
では働くか
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
原理を廻し高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成し敵勢へ斉射
更に射出の瞬間を無限循環
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
猟兵はオブリビオンを討つもの
早々に退場するが良かろう
※アドリブ歓迎
サイコブレイカーの少年少女たちは警察機構の浄化作戦によって根城としていたストリートを完全に包囲されていた。
「イレギュラーを許容しない。いかなる異常も検知し、報告せよ」
『シンセティック・オフィサー』たちはクローンサイボーグである。
システムによって統括された彼女たちの頭脳は、全てが画一的であり、またオブリビオンとなっているがために、通常のクローンサイボーグよりも凶悪な性能を有している。
手にした武装の全てが巨大企業群『ティタニウム・マキア』から提供されている。
そのことからも、警察機構と『ティタニウム・マキア』が繋がっていることがうかがえるだろう。
だが、そんなことを少年少女たちは知らない。
どうして自分たちが此処に潜んでいることをが警察機構に割れてしまったのか、どうしても理解できなかった。
「クソッ! このままじゃ……!」
「奴ら本気だよ。私達の一人も逃さないつもりなんだ」
彼等は『クヌピ』よ呼ばれる業界最高峰の殺し屋である。
だが、単体ではない。
少年少女たちが身を寄せ合って出来上がった群体とでも言えばいいだろうか。彼等の超能力は弱い。
ただ蚊の人刺しのようにしか作用しない。
だが、確実に標的を殺すことができる。
だからこそ、これまで足取り掴ませずに警察機構から逃れられてきたのだ。
「標的を発見。捕縛します」
サーモセンサーでもって『シンセティック・オフィサー』たちが少年少女たちの居場所を突き止め、その手にした防弾シールドから強烈な閃光を放ち、彼等を無力化しようとする。
「うわぁ!」
目を焼くような強烈な光。
だが、同時に彼等を捕らえる『シンセティック・オフィサー』たちは、少年少女たちを捕らえることはなかった。
「では働くか」
その声が小さく聞こえた。
「だれ……?」
だが、その問いかけに応えるものはない。
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は別段、ストリートの少年少女たちに思うところはなかった。
働く。
猟兵としての仕事をするだけである。
既に戦場の状況は理解している。
十一の原理を廻し、己へと害あるものを棄却する。
煌めく淡い青光が戦場に舞う。
破界(ハカイ)たる魔弾。
それが星空よりも無数に煌めき、『シンセティック・オフィサー』たちの防弾シールドを撃ち抜く。
「無駄だ」
どれだけ彼女たちの装備が優れているのだとしても、己のユーベルコードが放つ魔弾の一撃を防げるものではない。
加速と循環を同時に行う。
矛盾するかのような事柄さえも横柄に覆す力。
無限と無は一括りにされるもであり、その理を理解するのならば、それは世界の外から汲み上げられるものであると理解すべきである。
「猟兵はオブリビオンを討つもの。早々に退場するがよかろう」
目の前にはオブリビオン。
背後には視界を塗りつぶされた少年少女たち。
アルトリウスにとって、背後のそれは見る理由にはならない。
滅ぼすべきものを滅ぼす。
ただそれだけのために彼の手繰る魔弾は、この世界に降り注ぐ骸の雨よりも多く降り注ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『巨大企業群』なら弱小な超能力者なんて恐れる必要は無いでしょうに。いや、この子たちは業界トップクラスの|暗殺者《スタッバー》だったかな。
あなたたち、殺し屋を廃業するなら助けてあげるわよ。ま、返事を待つまでもなく交戦開始だけど。
薙刀でリーチを稼ぎスタンロッドを「受け流し」て、主導権をとる。そう簡単にビームに当たってたまりますか。
薙刀で打ち合いながら、隙を見て炎の「属性攻撃」「破魔」の不動明王火界咒を修法。街中だと十絶陣が使えないのが面倒だわ。
市民を虐げ権力に尻尾を振る警察機構の俗物は、こんなところには出てこないわね。いつか来る戦争の後で後悔してもらいましょう。
お子様たち、みんな無事?
業界最高峰の殺し屋『クヌピ』。
それは人知れず標的を暗殺する毒殺者。侵入経路も、死に至らしめる毒の成分も判別させぬ手練。
それが『クヌピ』である。
恐らく、この界隈において最も殺しを成功させている殺し屋であるとも言えるだろう。
「とはいえ、巨大企業群『ティタニウム・マキア』なら弱小な超能力者なんて恐れる必要はないでしょうに」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はストリートを包囲する警察機構のオブリビオン『シンセティック・オフィサー』が迫るのを見る。
このストリートに存在する超能力者、サイコブレイカーたちを殺すだけならばなんとでもなるはずだ。
だが、『シンセティック・オフィサー』たちは無力化しようとしている。言う慣れば逮捕しようとしているのだ。
「逮捕した後どうなるかなんて言うまでもないわね」
捕らわれた彼等の末路は言うまでもなく悲惨なものだろう。
それ以前に、とゆかりは考え直す。
「業界最高峰の殺し屋というのも伊達ではないということね。あなたたち」
ゆかりは包囲される少年少女たちを見やる。
「な、なんだよ!」
「殺し屋を廃業するなら助けてあげるわよ」
「なっ……!」
何故それを、と年端も行かぬ少年がたじろぐ。どうやら本当に彼『等』が『クヌピ』であるらしい。
信じがたいことであるが、ゆかりは己の首元に迫る力を見定め、指で挟み込む。
「……返事を聞く待つまでもなくオブリビオンと交戦って思っていたけど、まさかあたしたちの寝首をかこうとするなんてね。間違えないでほしいわ。敵はあたしたちじゃあない」
ゆかりは己の指の間に挟まれた小さな棘……いや、針を投げ捨てる。
恐らくこれが彼等の超能力の正体ということなのだろう。
「気がついた……!?」
「まあ、いいわ。そのへんの事情は後でたっぷり聞かせてもうらうわ」
ゆかりは己に迫る『シンセティック・オフィサー』達の一撃を薙刀で受け流す。薙刀のようなリーチの長い獲物に対して警棒の一撃はあまりにも遅すぎると言わざるを得ない。
放たれる一撃をいなし、ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
己のユーベルコードはいずれも無差別に周囲へと被害を齎すものが多い。
故に彼女の手には白紙のトランプがあった。
「こういう時加減をしないといけないというのは、面倒なことだけれど、ノウマク サラバタタギャテイビャク――不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)!」
放たれた白紙のトランプから噴出した炎が『シンセティック・オフィサー』たちに絡みつく。
「機体温度上昇」
「敵性ユーベルコードを確認」
クローンサイボーグである彼女たちは一斉に防護シールドを構えるが、それが命取りだった。
吹き荒れる炎はシールドで防げるかもしれない。
けれど、それは彼女たちの視界を塗りつぶす行為そのものであった。
「市民を虐げ権力にしっぽをふる警察機構の俗物は、こんなところには出てこないわね。あなたたちの上役を引っ張り出すのは、後にしましょう」
振るう薙刀の一撃が『シンセティック・オフィサー』の体を切り裂く。
一刀の元に両断された躯体が崩れ落ち、ゆかりはストリートを包囲していた警察機構のオブリビオンを炎によって撃退しながら、己に敵意がないことを少年少女たちに示す。
「さっきの一撃は見なかったことにしてあげるわ、お子様たち」
「ば、ばかにすんない!」
「ふっ、そういうところよ。それだけ元気があるのならば無事ね。まだまだ来るわよ」
ゆかりは、彼等の様子に笑む。
ゆかりを襲った一撃。
あれが彼等という弱者に残された最後の武器なのだろう。わかっている。その力の良し悪しを、このサイバーザナドゥで説くことは無意味だ。
今はできることを、とゆかりは少年少女たちを護るために不浄を焼き尽くす炎と共に立つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
さて…いきますかー。『私たち』は、誰かを助く四悪霊なれば。
UCのった漆黒風を投擲して、数を減らしていきましょうかー。
狩られるのは、あなたがたですからねー。
ふふ、そのスタンロッドの刺突は避け、さらに他三人が操る四天霊障で絡めて砕きますよー。
その方が、被害も少なくていいでしょう?
狩った先で何をしているのかはわかりませんけど。浄化作戦なんて許しませんよ。
…彼ら彼女らは、たしかに生きているんですからー。
ストリートを包囲する警察機構のオブリビオン『シンセティック・オフィサー』たちの数は膨大だった。
このストリートに潜むサイコブレイカーたちを一斉に検挙する、というにはあまりにも過剰な数であると言わざるを得ない。
例え、捕縛のために人数が必要だというのだとしても、だ。
「なるほど。何やら思惑があるのか。それともこれだけの数が必要とされるだけの脅威が、あのストリートには存在しているのか、ですねー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は頷く。
『シンセティック・オフィサー』たちの動きは数に任せたものであり、また同時に充実した装備品からも何からのバックアップを受けていることがわかる。
警棒や防護シールド、レーザー放つ銃。
そして、その躯体。
クローンサイボーグである彼女たちに恐れはない。
躯体が壊されても、バックアップが用意されているからだろう。
オブリビオンらしい攻勢であるとも言える。
「……ふむー何やら、まったく抵抗できないというわけではない様子ですねー」
『疾き者』は見ただろう。
『シンセティック・オフィサー』たちの一部が、突如次々と斃れていくのだ。
まるで遅効性の毒をもられたかのように。
「なるほどなるほどー……ただ、狩られるだけの存在ではないと」
『疾き者』は見た。
何か細い針のような形状をしたものが、サイキックに寄って飛び、『シンセティック・オフィサー』たちの躯体に突き刺さったのを。
あれが、このストリートに存在するサイコブレイカーたちの武器なのだろう。
「種が割れたところで、いきますかー」
彼等の力は確かにオブリビオンをも殺すことができる。
けれど、数を前には無意味だ。だからこそ、『疾き者』は疾走る。誰かを助けるためにこそ彼等は動くのだから。
瞳に輝くユーベルコードが『シンセティック・オフィサー』たちを捕らえる。
「イレギュラーを確認」
「排除。排除を」
「遅いですねー」
投げ放たれた棒手裏剣の一撃が『シンセティック・オフィサー』の眉間に突き刺さり、その躯体の動きを止める。
だが、すぐに彼女たちは空いた穴を埋めるように歩みを進めるのだ。
「人間狩りの……いえ、超能力者狩りでしょうか。そのつもりだったのかもしれませんがー、狩られるのはあなたがたですからねー」
放たれるスタンロッドの一撃をかわし、さらに放つ霊障が『シンセティック・オフィサー』たちの腕をねじ切る。
「浄化作戦の妨害を確認。公務執行妨害」
「人を狩って何が浄化でしょうかー。その先に彼等の生命が弄ばれるというのならば、許しませんよ」
『疾き者』は霊障をたぐり、『シンセティック・オフィサー』の躯体を吹き飛ばす。
さらにそこに投げはなった棒手裏剣が、四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)を纏い、彼女たちの駆動を支える頭部の司令システムを穿つのだ。
「ばっくあっぷ、というのがあるのでしょう。それによってクローンサイボーグ、の躯体を動かす。動きを見ていればわかりますよー。自分の体の損害を気にもとめていない」
それは生きているとはいえない。
だからこそ、『疾き者』は、この腐敗した骸の雨ふる終わりに向かう世界にあっても、なお、善悪を説くことなく生きた者たちを護るために戦う。
「……そう。彼等の行いがどれだけ泥にまみれているのだとしても」
放つ棒手裏剣が『シンセティック・オフィサー』たちの躯体を次々と打倒していく。
疾走る。
そうしなければ生きていけない環境がある。
理解できるからこそ、『疾き者』は疾風のように疾走る。
「……彼等彼女らは、たしかに生きているんですからー」
生きているのならば、いつだってやり直すことができる。
死して怨念のとらわれることなく。
だからこそ、『疾き者』は今生きる彼等の生命を奪われぬように戦うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
……あー…くそ…
「気になるのご主人サマ?」
…ちょいとな…
まぁ仕事はこなしますよ
【情報収集・視力・戦闘知識】
クヌピ達の能力と戦術
敵の陣形と攻撃の癖を冷徹に分析
UCと疾駆する神発動
よぉ…中々ガッツあるじゃねーか
ちょいと最強無敵のカシムさんが手を貸してやるよ
「メルシーも|ティタニウムマキア《巨神ティターンとの戦争》とかいう名前は気になるんだぞ☆」
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を竜達に付与
光学迷彩で隠れ水の障壁で音と熱源隠蔽
合体はさせず散開(一体はメルシーが乗ってる
【集団戦術・念動力・弾幕】
念動ブレスと光弾の集中砲火
【二回攻撃・切断・捕食・盗み攻撃・盗み】
複数で襲い掛かり食らいつき切り刻み序に武装強奪
「……あー……くそ……」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は包囲されるストリートを見やる。
警察機構の浄化作戦。
それがオブリビオンと繋がった警察機構の腐敗であることは言うまでもない。強者は弱者を助けるものではない。
強者の血肉として搾取されるのが弱者であったというのならば、強者のおごりであったことだろう。
『気になるのご主人サマ?』
「……ちょいとな……」
どのような思惑があるのかなどカシム自身にしか知ることはできないだろう。
ストリートを包囲する警察機構のオブリビオン『シンセティック・オフィサー』たちはレザーを放ちながらジリジリと包囲網を狭めている。
時折、彼女たちの躯体が突然糸がきれたように崩れ落ちるのはいかなることかをカシムは分析する。
指向性があるわけではない。
ランダムに、というよりは包囲網の前線にたどり着いた躯体から事切れたように斃れていくのだ。
「『クヌピ』と言った連中の仕業か……絡繰りはわからねーが、どうにもジリ貧な戦術なことで」
とはいえ、それだけしか彼等の手にはないのだろう。
サイコブレイカー、サイキックを使った攻撃に寄って『シンセティック・オフィサー」たちをどうにかして打倒しているのだ。
しかし、遅い。
確実に仕留めていることはわかるが、遅すぎる。
「なら、その遅さが致命的になるってことは連中もわかっているんだろうが、それでも抵抗するっていうのは中々にがっつがあるじゃねーか」
カシムは帝竜眼「ダイウルゴス」(ブンメイヲシンリャクシユウゴウスルモノ)を輝かせる。
眼球に1と刻印された小型『ダイウルゴス』を召喚し、戦場へと飛び立たせる。光学迷彩を施された小型の竜たちは熱源と音を隠蔽し、散開させる。
『メルシーも|ティタニウムマキア《巨神ティターンとの戦争》とかいう名前も気になるんだぞ☆』
小型の竜たちが不可視の軍勢となって一気に戦場になだれ込む。
『シンセティック・オフィサー』たちは背後からも何者かが己たちを襲うことを理解したが、姿がみえない。
「感知不能。センサーの不具合をチェック」
「センサーに不具合の該当を見受けられず」
彼女たちは混乱してはいたが、しかし、立ち直る。彼女たちの利点はクローンサイボーグであるということだ。
どれだけ躯体を倒さたとしてもバックアップが残っている限り、死を恐れる必要はない。
だが、それこそが漫然とした超能力者狩りを続行してしまう要因だった。
「その性能にかまけているから足元すくわれる……いや、掬わされているって感じがいなめねーが。ちょいと裁許無敵のカシムさんが手を貸してやるよ」
カシムは己が操る小型の竜たちを合体させずに散開させ続け、念動ブレスと光弾の集中砲火でもって『シンセティック・オフィサー』たちを沈めていく。
「挟み撃ち……!? だ、誰なんだ?」
「みんな、ここにいるよ!?」
「なんで俺たちを助けてくれるんだ?」
ストリートに籠城していたサイコブレイカーの少年少女たちがうろたえている。わからないでもない。
誰も助けてくれない。
誰もが自分だけのことに精一杯なのだ。
だからこそ、猟兵たちが現れたことに驚きを隠せない。カシムは、彼等のその様子に理解を示すだろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
ああ、あのニンジャサンのとこかぁ。あそこの伝手ならたぶんそう悪いようにはされないわねぇ。
ま、まずはこの場を切り抜けてからのことではあるけれど。
…ひとまずは味方だから、おイタしちゃだめよぉ?
まずは|エオロー《結界》で○オーラ防御を展開。スタンロッドの刺突がトリガーなら、間合いの外からまとめて片付けちゃいましょうか。
●黙殺・掃域と●黙殺・砲列を同時起動、描くのは|ラド・帝釈天印・ソーン《伝播する雷の茨》。この二つのUC、「魔術文字から弾幕を展開」って目的が共通してるから同時起動に一切制限ないのよねぇ。
サイボーグだろうと所詮は機械だもの、高圧電流でシステムダウンさせて一気に突っ切っちゃいましょ。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』と繋がる警察機構の腐敗は言うまでもないことだった。
浄化作戦と銘打たれたストリートを根城にするサイコブレイカーの少年少女たちを取り囲むのはオブリビオン『シンセティック・オフィサー』たち。
その数はただの浄化作戦とは思えないほどの物量が投入されていた。
次々と斃れていく『シンセティック・オフィサー』たち。
猟兵のユーベルコードだけではないことをティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)を理解する。
暗殺、という意味では確かに、と彼女は頷く。
己に迫る針のようなもの。
転移してすぐさま彼女はストリートの中にいた。突如として現れたティオレンシアにサイコブレイカーの少年少女たちは、すぐさまにユーベルコードを発露させる。
弱々しい力だ。
取るに足らないとさえ思えてしまう。
だが、と彼女は侮ることをしなかった。
サイキックによって操られた極細の針はティオレンシアがつまむような仕草をした瞬間、彼女の眼前で止まる。
「……ひとまずは味方だから、おイタをしちゃだめよぉ?」
彼女の言葉に少年少女たちは訝しむ。
味方だという言葉と、己たちのサイキックを見破ったという事実の両方に、だ。
ティオレンシアは思考の端で考える。
彼等を保護したとして、どうするべきかと。なるようにしか、とも思えるし、また同時にサイバーニンジャクランの『イェラキ』の伝手を使うことも視野にいれなければならない。
「あ、アンタが味方だって証明できないだろっ!」
「それもそうね。なら、敵の敵は味方ってことでよくなぁい?」
ティオレンシアは思考を続けながら、オーラを展開し、迫る『シンセティック・オフィサー』の一撃を受け止める。
スタンロッドの一撃がオーラに阻まれ火花を散らすように明滅する。
同時に彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「ここはもう『あたしの距離』。それに踏み込むってことは……撃たれる覚悟も、当然あるってことよねぇ?」
彼女の手にしたペンが宙に魔術文字を描く。
「ラド、帝釈天印、ソーン、即ち、これ伝播する雷の茨」
黙殺・掃域(デザイア・スイープ)。
彼女の細められた瞳の奥でユーベルコードの輝きが明滅する度に放たれた弾幕が『シンセティック・オフィサー』たちの躯体を穿ち続ける。
凄まじい弾幕は物量で押し切ろうとする警察機構のオブリビオンたちを、それ以上の物量でもって押し戻していく。
「これで味方ってことでいいわよねぇ?」
「……っ!」
サイコブレイカーの少年少女たちは言葉に詰まる。
あまりにも圧倒的な力だったからだ。
彼等にとって強者というのは恭順を示す相手ではない。ただ己たちを搾取するだけの存在でしかないのだ。
だが、目の前のティオレンシアは薄っすらと笑み続ける。
まるでそういうことに興味がないというように紡がれる言葉に少年少女たちは底しれぬものを感じたのかもしれない。
「……でも、この後どうするっていうんだ」
「それは追々ねぇ。まずはこの状況を切り抜けましょう。話はそれから。敵対するも共に行くのも、生きていなければ、なのよねぇ」
ティオレンシアの言葉に少年少女たちは同意する。
ただ生き延びるという目的のためにこそ合致した利害。そのためにサイコブレイカーの少年少女たちは、ティオレンシアが今は外敵ではないと見なし、けれど、完全に心許したわけではないというように彼女への警戒を解く。
ティオレンシアは己の周囲に浮かんでいた目に捕らえられぬほどのサイキックの針の動きを捉える。
これが業界最高峰の殺し屋『クヌピ』。
「なるほどねぇ……正体不明の殺し屋。その正体は弱者の群体ってわけねぇ――」
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
それじゃあお仕事だね★
早速だけどUC【暗殺機構・隠匿駆動】を起動するよ★
戦場中に警官服を着たかわいい|美少女《シルキーちゃん》のホログラムを投影開始だぞ★
それに紛れて『ロボットビースト軍団』に陽動させ、移動しながら不意打ちを狙っていくよ★
スタンロッドを狙ってくるなら『シノビシューター』で瓦礫などを装填、質量弾として撃ち出して迎撃するよ★ビームもそっちに当てさせちゃうぞ★
ヒト型なんだし関節や首筋を狙って『Ku-9』を放って爆破もしちゃうね★
……そうそう、君たちもこの状況の方が動きやすいんじゃないかな★
逃げるにも、|それ以外《・・・・》を狙うにもね★
戦場となったストリートは警察機構による圧倒的な物量ですり潰されようとしていた。
だが、時折、前線にたつクローンサイボーグである『シンセティック・オフィサー』の躯体が突然機能を停止するように動きを止め、崩れ落ちる。
それは彼女たちが包囲するストリートにいるサイコブレイカーの少年少女たちの仕業であると猟兵たちは知る。
彼等は確かに弱者であるが、ただ狩られるだけの虫けらではなかった。
業界最高峰の殺し屋『クヌピ』。
彼等は人知れずターゲットを暗殺してのける。
その手腕が、今まさに『シンセティック・オフィサー』たちを襲っているのだろう。
だが、それはあまりにも遅いと言わざるを得ない。
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は投映されたホログラムに紛れるようにロボットビースト軍団と共に戦場に紛れ込む。
「イレギュラーの確認」
「認識できぬ物体を補足」
『シンセティック・オフィサー』たちが次々とスタンロッドを抜き払う。
周囲にはシルキーの美少女ホログラムが乱立している。
俯瞰してみれば、それはあまりにも非常識な光景であったことだろう。
「悪いけど、これもお仕事だからね★」
シルキーはロボットビースト軍団に陽動をさせながら、本体である自身に装備された瓦礫を弾丸として打ち出し『シンセティック・オフィサー』たちを吹き飛ばしていく。
暗殺機構・隠匿駆動(サプライズスイッチ)。
彼女のユーベルコードはホログラムと煙幕弾によって戦場を混乱に陥れる。
自身の本体である躯体を『シンセティック・オフィサー』たちは捕らえられないだろう。
さらにロボットビースト軍団が闊歩しているのだ。
どれがどれだけか認識することもできない。
「どれだけ優秀な装備を持っていてもね、それを使うのはバックアップ先の一人ってことでしょ★ なら全然怖いって思わないんだよね~」
木を隠すなら森の中、そして、自身という一刺しを隠すのならば、この煙幕の中である。
「これならあの子達も動きやすいんだろうね~★」
シルキーはストリートの籠城するサイコブレイカーの少年少女たちのことを思う。
彼等はたしかに弱者であるが、ただ食いつぶされるだけの存在ではない。
わかっている。
だからこそ、彼等が逃げるだけではないことも理解しているのだ。
「こっちを味方って認識してくれてるのかな★」
これまで周囲に浮かんでいた極細の針のようなサイキック。
それが少年少女たちのサイコブレイカーとしての力なのだろう。確かに弱い力だ。けれど、その弱い力が強者を殺す一刺しであることをシルキーは知っている。
自分たち猟兵を完全には信用していないからこそ、自分たちの周囲にサイキックの針が浮かんでいるのだ。
「逃げるのにも、|それ以外《・・・・》を狙うにも。この状況はそっちに好ましいよね★」
「だから、アンタたちを信用しろっていうのか」
シルキーの言葉に瓦礫に隠れていたサイコブレイカーの少年が言う。サイキックの針は未だシルキーを捉えている。
「利用して、この状況を好転させる、くらいには思って良いんじゃない★」
自分たちの目的は巨大企業群が為す超能力者狩りを防ぐことだ。
彼等の信用を得ることは前提ではない。けれど、どうせなら、とシルキーは思うのだ。よりよい未来を掴む事ができる可能性があるのならば、それに躊躇いなく手を伸ばして良いのだと。
「なら、俺たちは」
「そ、シルキーちゃんたちを利用するってことでいいんだぞ★」
そういって、シルキーはサイコブレイカーの少年少女たちと共に迫る警察機構を撃退し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の!
香りがするのですが、当方ただいまぐったりしております(くてっ)
くっ、データが!データが多すぎる!
まさかデータベースを遡りきれないとは
途中で愛らしいエイル様の姿で3日間くらい止まってしまうので全然進みませんね
とりあえず蜂の羽音が聞こえてきた以上じっとしているわけにもいきませんし
蜂にしても蚊にしても
普段は気にもしないのに
致死に至る毒を持っていることがある
とてもメリサ様らしいと感じます
巻き込み防止かつ同士討ちを狙うなら
【スクロペトゥム・フォルマ】一択
接近戦で仕掛けましょう
スタンロッドの一撃は銃のグリップでしのぎつつ
殴打と零距離射撃で仕留めていきます
さて此度の蜂はどう飛びますか
開幕一番、サイバーザナドゥのストリートでステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は鼻をひくつかせ、叫ぶ。
もう恒例になったような彼女の叫びが木霊する。
「なにあれ」
サイコブレイカーの少年少女たちは、突如と響いた叫び声に虚をつかれたような思いであった。
このストリートに集まってきたのは警察機構の『シンセティック・オフィサー』たちだけではないと彼等は漸くに理解していた。
自分たちと共闘する者たち。
彼等のことは信用しきれていないが、しかし利用できるとも考えていた矢先に、ステラの叫びを聞いてしまったのだから無理なからぬことである。
「|『エイル』様《主人様》の!」
だが、ステラがぐったりしていた。
なんでぐったりしているのかというと、データを遡っていたからである。過去のデータ。己が追い求める『主人』のデータ。
画像から音声から何から何まで、である。何してるんだろうこのメイドと思わなくもない。
「当方ただいまぐったりしておりまして」
メイドらしからぬ姿勢。
ストリートの内部に転移してからというものの、ステラはぐったりしている。やる気がないわけではない。ただ疲労困憊なだけなのだ。
これもそれも全部途中で『主人』の姿で3日間くらい手が止まってしまったせいである。
しかしながら、データを漁っている途中でグリモア猟兵からの事件解決への招集がかかったのだ。
動かないわけにはいかない。
「蜂の羽音が聞こえましたので……蜂にしても蚊にしても、普段は気にもしないのに、致死に至る毒を持っていることがある」
ステラはサイコブレイカーの少年少女たちが、ただの弱者ではないことを理解している。
彼等は業界最高峰の殺し屋『クヌピ』である。
正体不明の殺し屋。
その殺しの手段もわからず、毒殺しているという不確かな情報は、殺された者から毒らしきものが検出されていないからこそ、である。
そして、それに『メリサ』とよばれる亜麻色の髪の男が絡んでいるのならば。
「ええ、やらねばなりません。というか、これをどけて頂けませんか」
ステラは己を取り囲むサイキックの針を示す。
己は敵ではないと、示すようにステラは手を上げる。
「どうしてそう言える。騙そうっていうのなら」
「理由がありません。此処に迫っている警察機構の方々を私達は相手取っています。あなたたちと敵対するのならば、逃げるか、もしくは警察機構の方々と一緒になってあなたたちを襲うはずでは?」
その言葉に極細のサイキックの針が揺らめく。
「でも……」
「信用できぬ気持ちもわからなくありません」
ですが、とステラはサイコブレイカーの少年少女たちの背後に迫る『シンセティック・オフィサー』の頭部を手にした二丁拳銃でもって撃ち抜く。
「まずは敵の敵、という程度の認識をして頂けたらと思います」
煌めくユーベルコード。
銃口から立ち上る硝煙。ステラは己を取り囲む極細の針を即座に掻い潜り、迫る『シンセティック・オフィサー』たちを打ちのめす。
「撃つだけがが銃の戦い方ではありませんので」
グリップで『シンセティック・オフィサー』の頭部を叩き潰し、さらに弾丸が轟音を立てて放たれる。
それは嵐のように舞うメイドのユーベルコード。
スクロペトゥム・フォルマは、その銃の型でもってオブリビオンを圧倒する。
「は、速い……」
「これで如何でしょう? あなた方が望むのであれば、この窮地から逃れ、新天地をご用意致しましょう」
ステラは優雅に一礼し、視線を上げる。
此度の|蜂《『メリサ』》は|どう飛ぶのか《何を為す》。
その挙動にこそステラは関心を寄せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
東・よるは
これまた、悲劇的なことを。警察が救えぬ駒だとは。
少しのやんちゃくらいは許しましょう、しかし一人とて死なせません。
色は藍。破綻せし|尊厳《モラル》の色。
基本的には静かに対応。自然な形で回し蹴りをしたりして敵の体勢を崩す狙い。
こちらまたは救助対象に攻撃が来た場合は閃夜による武器受けで凌ぎ、それが命中と見做される場合はビームに対して破魔、浄化を込めて切断しこれの打ち消しを図ります。
いい感じに体勢を崩した敵がいたようであれば、UCを発動し致命的な箇所に刃を刺し入れ、全身全霊でその骨ごと斬り裂いてみせましょう。其処からはUC継続使用でまとめて集団を破壊しましょうか。
一刺しとは、このことを云うのですよ。
サイバーザナドゥにおいて警察機構とは当然のように腐敗した組織である。
巨大企業群とのつながりは勿論、非合法な薬品や物品、果ては人身売買すらも彼等が背後につくことによってまかり通っている。
汚染された世界。
骸の海が雨として降り注ぎ、ゆるやかな滅びへと向かっているのが、このサイバーザナドゥという世界なのだ。
東・よるは(風なるよるは・f36266)にとって、それは嘆くべきことであっただろう。
「これはまた、悲劇的なことを」
ストリートを包囲するは警察機構。
だが、その前線にあるのはオブリビオンだと彼女は即座に認識する。
それは彼女が猟兵であるからだ。
オブリビオンと猟兵とは、滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。だからこそ、ひと目みれば、それがオブリビオンであるか否かを判別することができる。
本来、警察とは事件や犯罪から人々を守るための盾だ。
「なのに警察が救えぬ駒だとは」
彼女は嘆く。
だが、ストリートに住まうサイコブレイカーの少年少女たちは死なせない。一人として失ってはならないと彼女は思うのだ。
例え、彼等から己が信用されていないのだとしてもだ。
「イレギュラーを確認。排除を実行します」
よるはへと迫る『シンセティック・オフィサー』たち。
その手には巨大企業群から提供されたであろう高性能の警棒。スタンロッドであることを示すように、電流が迸り、音を立てている。
振りかぶられた一撃を彼女は霊刀の柄でもって抑える。振りかぶったことによってスタンロッドの柄を己の霊刀の柄と合わせることで振り下ろすことを阻止したのだ。
「動きの基点を捉えれば、この通り」
弾くように柄を打ち上げれば『シンセティック・オフィサー』の体勢が崩れ、瞬間、影纏うような霊刀の刀身の一撃が躯体を一刀のもとに両断する。
これぞ、殺人剣~宵桜(サツジンケン・ヨイザクラ)。
彼女の瞳はユーベルコードにきらめいている。
「そして、そこな少年少女。よるはは、お前たちを害しに来たわけではないのです。他者を信じることができないというのはわからぬことではないでしょう。汚濁の如き世界に生まれたのならば、それを否定することもできないこともまたわかることです」
だからこそ、とよるはは己に狙いを定めていた極細のサイキックの針を見据える。
その切っ先。
一度放たれれば、遅効性の毒がよるはを遅い、絶命に至らしめるだろう。
これが弱者たるサイコブレイカーの少年少女たちの最後の武器。
こうしなければ生きられぬ世界に生まれたのが不運であったと憐れむことをしてはならないと彼女は感じた。
「ですが、少なくとも、よるはは違います。理不尽と不条理からお前たちを救うのではなく、連れ出すことを旨としています」
だから、と彼女は霊刀を鞘に収める。
それが敵対しないということを示す所作であることをサイコブレイカーの少年少女たちは知らなかった。
だが、よるはの言葉が真であることは伝わることだろう。
「でも、警察の奴らはどうしようもないだろう。どうするっていうんだ」
「よるはたちがなんとでもしましょう。迫る包囲を打ち砕き、お前たちを必ず、新天地に誘いましょう。それは約束致しましょう」
彼女の周囲にあったサイキックの針が消え失せる。
その気配を感じ取り、よるは漸く息を吐き出すように笑むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
なんともまー世紀末!
まさにサディスファクション!じゃなくてディスファンクション!
●こんにちは!企業のお巡りさん!
【第六感】で感じるままに避けてUC『神撃』でドーーーンッ!!
ちょっと装甲と、こう、ガチョーンガチョーンて歩く重厚感が足りないかなー
●ボクたちは
そうボクたちはキミたちを助けに…?うん助けにきた!
アハハハ!大丈夫大丈夫
ここで死ぬよりはマシだって思うからキミたちもがんばっていたんでしょう?
そうやってキミたちはみんな、今よりはいい、を積み重ねていかないとね
何者にもなれないままではいたくなかったんでしょう?
なら…大変だけどもう少しがんばってみようよ
ストリートを包囲する警察機構。
彼等は違法薬物蔓延するストリートを浄化しようとしている。
目的だけを見たのならば、クリーンなイメージを持つかもしれない。けれど、彼等の真の目的は超能力者狩りである。
違法薬物に寄って覚醒した超能力者たちを巨大企業群『ティタニウム・マキア』が求めているからこそ、警察機構は違法にサイコブレイカーたちを捉えようとしている。
何せ、彼等に人権というものはない。
虫けらのようなものだからだ。
だからこそ、包囲する『シンセティック・オフィサー』たちはためらわず発泡し、ストリートを瓦礫へと変えていく。
「なんともまー世紀末! まさにサディスファクション! じゃなくてディスファンクション!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はともあれほうっておくことはできないとばかりに包囲網の中心へと飛び込む。
転移した直後であったが、彼の瞳にはユーベルコードの輝きがあった。
「こんにちは! 企業のお巡りさん!」
感じるままに。
己の直感のままにロニは拳を振るう。
神撃(ゴッドブロー)の一撃は大地に衝撃を走らせ、『シンセティック・オフィサー』たちを吹き飛ばす。
「はい、ド――ンッ!!」
ロニの一撃は『シンセティック・オフィサー』たちの手にした防護シールドすら意に介した様子なく打ち砕く。
「な、なんだぁ!?」
ストリートに潜んでいた少年少女たちが驚愕する。
突如として放たれた一撃。
その光を彼等は知らなかっただろう。信心というものすら存在しない彼等の心にさえ、そのユーベルコードの輝きは神々しさを齎すものであったからだ。
「そうボクたちはキミたちを助けに……? うん助けに来た!」
胡散臭い、と少年少女たちは思っただろう。
さっきから入れ代わり立ち代わりやってくる者たち。
いずれも共通点が見受けられない。てんでバラバラ。けれど、共通しているのは、己たちをこの境遇から連れ出そうとしている、ということだけだ。
「信じられるかよ!」
「アハハハ! 大丈夫大丈夫。ここで死ぬよりはマシだって思うから。キミたちもがんばっていたんでしょう?」
戦っていたのが証拠だとロニは笑う。
自分を狙うサイキックの針。
それをみやりながら、これが彼等の持つ最後の武器であると知る。
だからこそ、ロニは自信たっぷりに言い放つ。
「そうやってキミたちはみんな、今よりはいい、を積み重ねていかないとね」
「そんなことは誰だってそうだろう! 誰だって今より悪いほうにはなりたくない」
「うん。だからだよ。何者にもなれないままではいたくなかったんでしょう? なら……ボクらが導く先は、大変かもだけど、もう少しがんばってみようよ」
そしたら、何か変わるかもしれない。
変わらないかもしれないけれど、今より悪いことにはならないだろうとロニは笑う。
その姿に少年少女たちは顔を見合わせる。
汚染された大気。
衛生的に良いとは言えない環境。
這い上がることすら許されないどん底。
薬物に頼らねば生きる術すら手にできない。もしも、この場に現れた猟兵たちが、自分たちを此処ではない何処か。
異なる場所へと誘うというのなら。
芽生えた己達以外の誰かを信じたいと願う思いを、託しても良いのだろうかと彼等は、希望という光を見るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『レジスタンスの会合』
|
POW : 会話や模擬戦を通じてレジスタンスと打ち解ける
SPD : 斥候を行い、情報提供する
WIZ : 現状の戦力で実行可能な作戦を立案する
イラスト:ハルにん
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちから連絡を受けたサイバーニンジャの『イェラキ』は嘆息していた。
「サイコブレイカーの少年少女とは聞いていたが……」
彼の目の前に在るのは10代にも満たぬ少年少女たち十数人であった。
猟兵たちが、オブリビオンに包囲されていたストリートから連れ出したサイコブレイカーである。
『超能力者狩り』から逃れることはできない。
例え、どん底の環境であるストリートにあっても、彼等の個人情報は警察機構に握られている。
例え、サイバースペースに逃れてきたとしても、それは変わらないのだ。
「この子らの情報がサイバースペースに残っている限り、どうしようもないぞ」
「わかってんよ、そんなことは」
「だから、この人たちがどうにかしてくれるって」
年の頃10にも満たぬ子供らしい言葉遣いである。けれど、どうにかしなければならない。
「俺たちはどうすればいいんだよ。できることと言えば、殺しの仕事だけだ。それも回数制限がある。サイキックの針を作り出すのも、クスリがないとできない。クスリもたくさん使えば、当然死んじまう」
彼等は業界最高峰の殺し屋『クヌピ』と呼ばれる者『たち』であった。
長らく不明だった『クヌピ』の正体がアスリートの少年少女たちが違法薬物を過剰摂取することによってサイキックの針を生み出し、標的を毒殺していたことに『イェラキ』はまた大きく嘆息する。
「自分たちを護るために、自分たちを蔑ろにしてきた、というのか。本末転倒がすぎる……が、理解はできる」
この世界にあって生きることは過酷なことだ。
自らの命を使って他の誰かを活かす。
彼等はそうやって違法薬物を手にし、ストリートに生きる身寄りのない子供らだけで己たちの身を守ってきたのだろう。
遣る瀬無い。
やり方をそれしかしらなかったのだ。
だが、猟兵達は示すことができる。
違法薬物に頼らずとも生きる術を。それが彼等に受入れられるかはわからない。『イェラキ』もサイバーニンジャクランの一員として生きることしか知らない。
少年少女たちにとって、どれが最も幸いであるのか。
それを猟兵たちは、彼等に示さなければならない――。
村崎・ゆかり
久し振りね、イェラキ。また会うとは思わなかった。
とりあえず、このストリートチルドレンの受け入れ先に伝手がないか、相談したいのよ。
やっぱりまずは住むところよね。全員で共同生活が出来る、共同住居みたいなのを専門に扱ってる不動産業者知らない?
やっぱり、まだ独り立ちするには難しいと思うの。
それからネット上のでいいから学校で勉強させて、自分が本当になりたいものになれるよう手助けしたい。
ネット関連でいえば、薬物依存から抜け出すための自助グループにも行かせたいな。
それで言いにくいんだけど、彼らが自前で稼げるまで資金援助をお願い出来るかな? 返済は出世払いで。
用意は調えた。あなたたちは、これからどうしたい?
嘗て、巨大企業群『ティタニウム・マキア』に関連する事件があった。
ヤクザ事務所とサイバーニンジャの抗争。
オブリビオンが存在するヤクザ事務所によってサイバーニンジャのクランが壊滅するという予知のなされた事件だった。
その事件の折に猟兵と面識を持ったサイバーニンジャが『イェラキ』と呼ばれる男だった。
「久しぶりね、『イェラキ』。また会うとは思わなかった」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の言葉に『イェラキ』は頷く。
彼女の言う通り、また出会うことがないことが最良であると知っているからだ。
また出会うということは事件があったということであり、巨大企業群『ティタニウム・マキア』が動いているという証明でも在ったからだ。
「二度と交わらない線と線、というのが好ましいのだが、一度交わった線は再び交わるものだ。面倒事ではあるが、捨て置くことはできまいよ」
『イェラキ』はゆかりたち猟兵たちが連れてきたストリートの少年少女たちを見やる。
彼等はひと目で違法薬物に手を出していることが知れる。
「この子たちの受け入れ先に伝手はない?」
相談に来たのだとゆかりは言う。
その言葉に彼は頷く。
「受け入れる先、というのならば我等がサイバーニンジャのクランがある。そこでならば居住スペースもある。だが」
「問題がある、ということ?」
「ああ、先に言った通り、この子らの個人情報だ。これに関しては警察機構のサイバースペースをどうにかしなければならないが……」
確かにそのとおりだ。
個人情報を握られている限り、ストリートの少年少女たちが再スタートを切ること自体が難しい。
「この子らもまだ独り立ちするのは難しいと思うもの。どれだけ中身が荒み……大人と遜色なく成熟していたとしてもね」
「別に俺等だけでもどうにかなるし」
「強がりね、そういうのは。自分がどうなっていくのか、自分が何になるのか、そういうのを言葉にできないのであれば行動も伴わないものよ」
「なんだよ、そんなこと言って」
少年少女たちはちょっと不貞腐れたようだった。反論できないのだろう。
ゆかりは彼等が違法薬物という最後の武器に頼らざるを得ない状況をこそどうにかしたいと思ったのだが、このサイバーザナドゥという世界において、それは難しいだろう。
ならば、その力に頼らなくてもよい、別の武器を手にすれば良いのだ。
手っ取り早いのが教育である。
肉体的なことは、この骸の海の雨が降る世界にあっては金がかかる。即ち、義体であるからだ。
ならば、知識はどうか。
知識は、ただ得るだけでは無意味なものであるが、その得た知識を如何に振るうかを覚えるのならば、力となり得るだろう。
「言いにくいんだけど」
「資金ということだろう。それに関してはこちらもカツカツでな。彼等が我がクランに入る、というのであれば、どうにかできようものであるが」
「戦えと?」
「生きている以上、どう足掻いても巨大企業群の影を踏むことになる」
どのように生きても戦わなければならないというのであれば、ということだろう。
ゆかりは頭を悩ませる。
資金難。
この世界の大体のことは金で解決するのに、その金がない。
その金に変わるものを得なければ生きていくことも難しいのだ。
「出世払いとか……」
「出世仕切る前に死なれては取り立てもできない」
「そうよね……」
結局、とゆかりは思う。
自分があれこれ悩んでも、できることは選択肢を示すことだけなのだと。ならばこそ、ゆかりは彼等に尋ねる。
「あなたたちは、これからどうしたい?」
示された選択肢は多くはない。
悩む事も多いだろう。解決していないこともあるだろう。だが、時に人は、その限られたものに手を伸ばさなければならないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
まあねえ…外から見たら選択肢は数多なのに、当の本人たちには『理由あって』一つしか道がない、というのはありますしー。
今だったら『資金』と『個人情報』ですねー。
ま、本人たちがどうしたいか、が一番大切なんですがー。
戦うのもいいのです。ただまあ、戦い方、というのを変えてみる必要はあるかとー。
…薬物に頼らぬ投擲技術とかー。関節狙うってのもいいですよー。
関節って、義体でもありますからねー。
ああ、『個人情報』のことは気にせずー。
『どうにかしてきます』からねー。
問題の有所というものは、俯瞰して見なければ見つかることのないものである。
けれど、人の視点は固定されている。
前を見ることができる。
後ろを見ることができる。
上を、下を見ることができる。
けれど、己の背を見ることができないように、己の姿を俯瞰してみるということはできない。だからこそ、間違える。
「とはいえねぇ……外から見たら選択肢は数多なのに、当の本人たちは『理由あって』一つしか道がない、というのはありますしー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は人生というのは選択の連続であると説く。
アスリートの少年少女たちが視野狭窄であるとは言わない。
人の視点は一つだ。
けれど、他者を見ればわかることも出てくる。
あのアスリートでは自らと同じ境遇の者たちしかいなかった。そんな場所で他者を見たところで、己の現状を理解することしかできないだろう。
「だって仕方ないじゃないか。金が要る。義体に換装しなければ生きていけないってことくらい俺たちだってわかっている」
「でも、義体化するのにお金がたくさんいるっていうこともわかっているのよ」
「金を稼ぐやり方だって、これしかしらない」
少年少女たちがサイキックの針を形成して見せる。
即ち、殺し。
殺すことで金を得ているという劣悪な環境。それを劣悪とも認識できていないことが問題なのだ。
彼等の姿をみやり『疾き者』は思う。
当面の問題はなんであろうか。
「まずは『資金』と『個人情報』ですかねー」
「それで、どうするつもりだ」
サイバーニンジャの『イェラキ』が事の成り行きを見守っている。彼が口出すところではないと理解してるのだろう。
「彼等がどうしたいか、が一番大切なんですがー」
「今まで通りでいいよ。別に何かを変えたいと思っているわけじゃあない。変えると、いつだってよくないことが起きる」
「……では、現状のまま戦うと?」
『疾き者』は瞳を細める。
彼等は変えたくない。だが、変わらずに居られることなど世界には多くはない。
だからこそ、『疾き者』は彼等に伝える。
「仮に、そのサイキックの力を扱うのだとしたのなら」
いや、と頭を振る。
「あなたたちは言った。サイキックの力を使うと生命を消耗すると。薬物を投与しなければ維持できないのならば、それに頼らぬ力を得れば良いのです」
「どうやってだよ。相手は戦闘義体だってもっているんだぜ?」
少年たちの言葉も尤もだ。
戦闘義体は尋常ならざる力を持っている。それらに対抗するにはやはりサイキックの力でなければ立ち行かないだろう。
だが、それに『疾き者』は首を横に振って否定する。
「……戦い方、というのを変えるのはどうでしょうか。あなたたちがサイキックの針を飛ばしたように」
こう、と『疾き者』は棒手裏剣を投擲してみせる。
サイバースペースに在ったオブジェクトが弾けて砕ける様を見せる。
「このように投擲。人の肉体は投擲することに適した関節を盛っています。体を動かす。脚を、腰を、肩を、腕を。指先を。連続して駆動させることによって遠心力を利用して物体を前に飛ばす、ということに最適化されています」
ならば、と『疾き者』は告げる。
「戦闘義体であろうとも、動く以上関節が存在します。確かに投擲は人間の持てる武器でありましょう。ですが」
「関節の一つをどこかで止めたら、力が伝達されないってことか」
その通り、と『疾き者』は頷く。
理解が速い。
サイキックの力を使っていたからだろう。
「戦う術を教えて、それでも『個人情報』はどうする」
「ああ、それは気にせずー。『どうにかしてきまし』からねー」
そう言って『疾き者』は『イェラキ』に頷くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
とりあえず、おひさ★なイェラキさんにはいくらかシルキーちゃんからお金を渡して
クスリの出どころを探れないか打診してみるよ★
そもそもクスリが連中の産物で、今回の襲撃が「実験成果の回収」という線を疑ってるからね★
そうでなくても「誰か」は何らかの意図があって彼らにクスリを流してたんだろうしね★
その間子供らはUCのドリンクを飲ませたうえでロボットビースト達を相手に追っかけっこでもしててもらうよ★例の針は禁止だけど可能なら壊しちゃってもいいんだぞ★
相手の無力化、逃走、自分の身体能力の把握、お金になる部品の目利き……「使える」技術は山のようにあるから、今のうちにできる事を増やした方がいいんだぞ★
嘗てヤクザ事務所とサイバーニンジャクランの激突があった。
それはサイバーザナドゥにおいては珍しいものではなかったが、しかしヤクザ事務所にオブリビオンが存在していたために猟兵たちが介入した戦いがあった。
その時知り合ったサイバーニンジャ『イェラキ』を伝って、猟兵たちはアスリートの少年少女たちの保護を求めた。
「おひさ★」
「ああ。あんたたちが来ると、どうにも面倒なことが起きるというのは、なんとも収まりが悪い気がする」
「まあまあ、そういわずに★」
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は嘆息する『イェラキ』の肩を叩く。
同時にサイバースペースを経由して『イェラキ』の口座へと少なくない金額を振り込む。
その額をみやり、『イェラキ』は目を細める。
どういうつもりだ、と視線で訴えているのはストリートの少年少女たちに気取られぬためであろう。
「今回のこともさー、そういう面倒なことってわけ。ストリートに蔓延している違法薬物。それの出処を知りたいなって思って。何か知っているんじゃないかなって★」
サイバーニンジャである彼ならば何か情報を掴んでいるかもしれないとシルキーは思ったのだ。
その情報を買う、とシルキーは金額を振り込んだのだ。
調査が必要な前金代わりであるし、足りないというのならば追加で払うつもりだった。
ストリートに蔓延していた違法薬物。
あれは確かに少年少女たちをサイコブレイカーへと覚醒させた。
だが、あまりにも強大な力、というわけではない。それに生命を徐々にすりつぶしていくものであった。
意図して、そういう状況を引き出すものであったというのならば、今回の蹴撃は。
「実験成果の回収って思えないかなーって★ だって、変じゃない。排除するためなら殺すだけでいい。明らかにあの人達、捕縛しようとしてたじゃない★」
金を潤沢に得るために弱者をカモにするやり方だってあるだろう。
けれど、それは副産物のような気がしてならない。
相手が巨大企業群『ティタニウム・マキア』であるというのならばなおさらだ。
「『誰か』の思惑を感じると」
「うん★」
シルキーはサイバースペースでアスリートの少年少女たちにシルキーちゃん特製ドリンク★(ニジュウヨジカンハタラケマスカ)を与えていた。
ロボットビースト軍団と戯れるように遊ぶ彼等の姿は年相応に思えたことだろう。
彼等だって、別に殺しをやりたいと思っているわけではないだろう。
そうしなければならない状況が彼等にそうさせているだけなのだ。
ならば、と彼女は思う。
「その思惑をぶっ潰すのが手っ取り早いって思わない?」
「……」
『イェラキ』は息を吐き出す。
「連中に違法薬物を流していた売人の名は『メリサ』だ。業界でも名の知れた殺し屋の一人だ。『クヌピ』はたしかに優れた殺し屋であったが、その実態が掴めなかった。考えればわかることであったが。つながりを考えるのなら」
『イェラキ』はシルキーに伝える。
「『メリサ』は、『ティタニウム・マキア』とのつながりも持っている。パイプ役、というのならば、あまりにも情報を持ちすぎているし、あまりにも情報が隠匿され過ぎている。ヤツ自身の情報がまるでない」
がしゃん、とロボットビースト軍団の一体が壊れる。
ストリートの少年少女たちが壊してしまったのだろう。それをシルキーはいいよいいよと笑う。
壊すぐらい元気が出たのなら良いのだと。
「ご、ごめんなさい……」
「いいんだぞ★ というか、サイキック使わないでも壊せたじゃん。すごいぞ★ じゃあ次は壊したロボットビーストの部品の目利き、お勉強しよっか」
シルキーは微笑む。
彼等が生きていくためにはできることを増やす必要がある。これだって立派な技術だとシルキーは笑って少年少女たちに換金した時に利率の高いパーツの特徴を教えていく。
その思考の片隅で考える。
『メリサ』。
それがこの事件の裏側で動いている者であるというのなら。
まみえることがあるのだろうかと、その遠くない未来をシルキーは思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
イェラキ様、またお会いできて良かった
ええ、あの地獄(某光の勇者の演奏)を生き抜いたという意味で(握手を求める)
さて
とりあえずサイキックの針を向けられることは無くなったようですね
とりあえずお話しましょうか
これから生き抜く術
一番簡単なのは大きな庇護の下に入ること
ええ、イェラキ様のクランとか
労働を対価に安全を得られるはずです
次は…その『力』だけを捨てる
全てが元の木阿弥に戻りますが命は救われるでしょう
不幸な出来事が無い限り
最後は…この超能力者狩りをしている大元を潰す
…きっとメリサ様の狙いはこちらですね
使える駒を増やす
ですがあなた方がそれに乗っかる必要はありません
まだ時間はあります
ゆっくり考えてください
「『イェラキ』様、またお会いできてよかった」
「俺はそう思ってないがな」
ひどい目にあったのだからと、サイバーニンジャの『イェラキ』はステラ・タタリクス(紫苑・f33899)が差し伸べた手を取る。
「ご安心を。本日はあの日のような地獄はありませんので」
何を、とは敢えて言うまいと二人の視線が交錯する。
言ってしまえば、これは挨拶程度のものであった。
会話のフックを作り出すようなものであった。
「彼等の今後についてお話したのですが」
「わかっている。他の連中とも話をしたが、彼等が望むのならば我等がクランに招き入れることもしよう」
だが、と『イェラキ』の言葉にステラは頷く。
それは巨大企業群と戦うということである。生命の保証はなく、また少年少女たちは幼い。技術も足りない。最後の武器であるサイキックも生命をすり減らすというのならば、これまでと何ら変わらないのだと。
「だが、幸いに才能ある者もいるようだとわかった」
猟兵達が教えたことをすぐさま吸収することのできる子らもいる。
「ええ、ですが、それができない子もいらっしゃる」
戦う才能がない、という者だって確実にいる。
そういう子らを養うだけの力がクランにはないということだろう。わかっていることだ。だが、ステラはどうしてもサイコブレイカーの力だけは彼等に捨てて欲しいと思った。
生命をすり減らす行為だからだ。
違法薬物によって得られる力は、たしかにオブリビオンすら殺してみせた。
暗殺、という一点だけを見るのならば、それは尋常ならざる力である。
頼りたくなるのはわかる。
「ですが、生命をすりつぶすことはあってはならない。『力』を捨てることは全てが元の木阿弥に戻ることになりましょうが、生命はすくわれる。不幸な出来事がない限り」
「その不幸な出来事というのは往々にして、いつだって襲ってくる」
「ええ、ですから」
ステラは頷く。
少年少女たちは、どうやらそれぞれの特性に合わせた知識を得る下地はあるようだ。選ぶのは彼等だが、捨てることだけはどうにかして選んでほしいと思ったのだ。
「どちらにせよ。この超能力者狩りをしている大元を潰す。きっと『メリサ』様の狙いはこちらですね。使える駒を増やす」
己たちが誘導されているようにステラは思う。
だが、『イェラキ』の言葉にステラは目を見開く。
「『メリサ』……その名を持つ者こそ、彼等らに違法薬物をもたらした者だ」
「……は?」
その言葉の意味を反芻する。
亜麻色の髪の男。
『メリサ』と名乗る男が、ストリートの少年少女たちに違法薬物をもたらしていた。ばらまいていた。
そして、彼等に殺しの仕事を教えていた。
糧を得るために。
生きるために。
ぐらりと揺れる。『メリサ』が何をしようとしているのか、ステラにはわからなくなってきたかもしれない。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』を潰すために彼が動いているように思えていた。
だが、現実は違う。
今回の事件は確実に『ティタニウム・マキア』に利するところであった。
超能力者狩りに寄って、彼等が何を得るのか。
「思惑が、まだある、と……?」
わからない。けれど、『メリサ』との邂逅が、そう遠くはないことをステラは予感するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
ハァイ、ニンジャサン。お久しぶりねぇ。
ちょっと…結構…だいぶ?お手数かけることになりそうだけれど…まあ、うず高く積みあがった貸しをいくらか清算、ってことでお願いしたいわねぇ。
データなんかの後始末と野暮用はこの後なんとかするとして。多少なりとも時間はできるわけだけれど…やっぱりお勉強しなきゃ、よねぇ。
「数字は嘘を吐かないけれど、嘘吐きは数字を使う」――嘘を嘘と見抜けないと、この世界で生きていくのは難しいもの。この後どう生きていくにしろ、最低限甘言に違和感を覚える程度には知識を身につけないとねぇ。
知識と経験はどれだけあっても困らないもの。…これ、経験談よぉ?
嘗て知り合ったサイバーニンジャ『イェラキ』。
オブリビオンの絡んだヤクザ事務所とサイバーニンジャクランの抗争の折に猟兵たちは介入を果たした。
その時に縁が結ばれたサイバーニンジャを伝い、彼等が持つサイバースペースへとストリートの少年少女たちを連れてきたのだ。
「ハァイ、ニンジャサン。お久しぶりねぇ」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の言葉に『イェラキ』は一つ首肯して答えた。
「ちょっと……結構……だいぶ? お手数かけることになりそうだけれど……」
「それは本当にそうだな」
今もサイバースペースで猟兵達のレクチャーを受けた少年少女たちたちがロボットビーストを解体したりしている。
なんとも騒々しいものであるとティオレンシアは思っただろう。
まるで託児所のような様相であった。
いや、先程までの殺伐としたストリートの様子を考えれば、こちらの方が余程良いだろう。
「まあ、そうね。でも、うず高く積み上がった貸しをいくらか清算、ってことでお願いしたいわねぇ」
ティオレンシアの言葉に『イェラキ』は頭をかくことしかできなかった。
猟兵達の介入によってサイバーニンジャクランは壊滅を免れたのだ。
ならばこそ、彼女の言葉に彼は頷くしかなかったし、存在したであろう不平を飲み込むことしかできなかったのだ。
「それで、この後はどうする。彼等の個人情報は」
「それはどうにかするとして。彼等がどうするか、なんていうのは彼等自身が決めることよねぇ」
時間は幸いにしてある、とティオレンシアは笑む。
それは即ち、ここでしばらくは匿ってくれるのでしょう? という言葉に他ならなかったし、『イェラキ』は承諾するしかない。
「そう長くは無理だぞ」
「わかっているわよぉ。でも、少しでも知識を持ってもらうことだって必要でしょぉ?」
「……それはそうだ」
「はぁい、それじゃあ、体を動かすのはいいけど、そろそろ頭の運動もしましょう」
ティオレンシアが手を打つ。
その音に少年少女たちは動きを止める。
見上げる先にいるティオレンシアの言葉に彼等は頷く。
ストリートで生きてきた彼等にとって、ティオレンシアの纏う空気は自分たちに近しいものがあると思えたのだろう。逆らってはならないと体が理解している。
「まずは数字を覚えましょう」
「数字?」
「ええ、数を数えるということ。数字は嘘をつかないけれど、嘘つきは数字を使う――嘘を嘘と見抜けないと、この世界で生きていくのは難しいもの」
ティオレンシアは彼等に数字というものを教えていく。
取るに足らない知識であったかもしれない。
けれど、彼等の境遇を考えた時、知識というものの有る無しは大きな意味を持つ。
人は幼いが故に食い物にされるのではない。
知識と経験を組み合わせたものを持たぬが故に食い物にされるのだ。
だからこそ、ティオレンシアは甘言を弄する者たちを見抜く力を養ってもらわなければならないと思った。
これからどうやって生きていくにせよ、それらは必要最低限の力であると彼女には思えたからだ。
「違和感を見つけ出しなさい。あなたたちの目の前にいる人間が、どのような人間であるのかを。発する言葉、所作、それら全てを見極めなさい。そのためには、知識が必要なのよぉ」
それに、とティオレンシアは付け加える。
彼等がこれまで相手にしてき者たちが、どんな者出会ったのかを思い返す。
それは得難き経験となっているだろう。
自分たちを使い潰そうとした者。
そして、今その経験に知識が加えられようとしている。
彼等の表情が変わるのをティオレンシアは見ただろう。利用されるだけの者ではない。
これから自らに害をなそうとするものに牙を突き立てることのできる獣へと変わっていく姿を見た。
これならば、とティオレンシアは思う。無為に利用され続けるだけではないだろうと。
「わかるでしょう? それが知識というもの。知識と経験はどれだけあっても困らないもの……これ経験談よぉ――?」
大成功
🔵🔵🔵
東・よるは
別天地を独自に用意していたのがイェラキくん、ということになりましょうか。
ええ、ありがとうございます…方法は実に限られていましょうが。
この世界の先で、少年少女たちにこれ以上麻薬を摂取させるわけには行きませんし。
最も手っ取り早いのは、住む世界そのものを変える方法。
端的に言ってしまえば彼らをサクラミラージュに移す、それだけで彼らを麻薬から引き離すことが出来る。この世界での個人情報はいずれ猟兵が消し、向こうには帝都桜學府もあります。生きる為の手助けなども叶う筈。
……しかし。
それでは別天地の伝手をも無駄にしてしまう。
彼らが立ち向かう術を多く知るわけではないが故。
・わたくしのグリモアの力では物理的に不可能
・この行動によりグリモアで予知されていない予想外の不利な未来が起こる
・彼ら全員に受け入れられない
この3つに触れない限りはそれで納得してもらう。
でもいずれかに抵触したのであれば、その先はイェラキくんや他の猟兵くんたちに任せるしか無い。
何せ、連れ出すのがわたくしの旨ですからね。
選んでくれるか否か。
此処ではない何処か。
それを人が思い描いた時、それはきっと楽園の如き場所であったことだろう。
今居る場所よりも良い場所へ。
人が思い描くのはいつだってそういう別天地であったし、新天地であった。
けれど、いつだってそうだが、人の現実に楽園は存在しないのである。
「此処が彼等の別天地になればよいのですが」
東・よるは(風なるよるは・f36266)は思う。
サイバーニンジャ『イェラキ』は嘗てヤクザ事務所とサイバーニンジャクランとの抗争の折にオブリビオンの存在が確認されたために猟兵たちが介入した事件を通じて縁を結んだ者である。
オブリビオン擁する巨大企業群『ティタニウム・マキア』との戦いを繰り広げて言うるということは信用に値するものであったが、それでも上手くことが運ばぬこともあるのだと知る。
特にこの世界においては金がものをいうのだ。
ストリートの少年少女たちをまるごと受け入れることは金銭的な問題からも不可能だろう。
「方法は実に限られているのですね」
とはいえ、この世界で少年少女たちがこれ以上違法薬物に手を染めていい理由にはなっていない。
解決策を見出すことができなければ、再び彼等は元の場所に戻るしかない。
そこでよるはは考える。
手っ取り早いことはなんであろうかと。
「……住む世界そのものを変える」
簡単に言えば他世界へと誘うということだ。
よるはの住まう世界、サクラミラージュならばどうだろうか。物理的に違法薬物から引き離す事ができたのならば、これ以上はないだろう。
この世界での個人情報は、これから猟兵たちが消す。
それにサクラミラージュには帝都桜學府がある。知識を得る、教育を得る、というのならば、よるはが知る限り最も良い世界であると思えたことだろう。
だが、それはこの世界での伝手を無駄にしてしまうということでもあった。
それによるはの持つグリモアの力では転移を維持し続けなければならない。その力をずっと維持している、というのは無理筋であった。
「とはいえ、この行動が予測不能な未来を引き起こす可能性もありえないわけではない」
これまで多くの悲惨な運命を目の当たりにしてきたことだろう。
サイバーザナドゥだけではない。
荒廃した世界というのは、此処だけではないのだ。別の世界に困難に瀕した者たちを移動させることで全てが解決できるとうのならば、どんなによかっただろう。
「彼等全員はきっと受入れてはくれないでしょうね」
よるははロボットビーストと遊ぶように戯れる少年少女たちの姿を見やる。
共に生きてきてきた彼等はきっと親兄弟以上の繋がりを持っていることだろう。
それをたやすく断ち切ることなどできない。
「彼等全員を救うことはできない。移動させることはできない、というのであれば、やはりあなた方に任せるほかないのでしょうね」
「難しいだろうな」
どちらにせよ、と『イェラキ』は首肯する。
金銭的な問題もある。スペースの問題もある。山積した問題を一つ一つ解決していくのは時間も要る。
よるはの示した案は、実行することができたのならば最良であったことだろう。
けれど、それが難しいことであることは、よるはも理解していた。
「変わりたくない、と願う者もいるということ。けれど、自らで選び取らねばならない。例え、この骸の海が雨として降る世界であっても、それでも自らで選び取ろうとする気概が彼等にはある、ということに希望を見出すしかないのでしょうね」
よるはは息を吐き出す。
過酷そのものだと思う。
この世界のあり方。
戦うことでしか糧は得られない。糧を得ようとしても、食い物にする者がいる。
ままならない、ということだけがわかったのだ。
徒労に思えたかも知れない。
けれど、それでも光明を見出すために泥を拭うことを誰かがしなければならないのだ。
腐敗した世界。
誰も彼もが泥に塗れなければならない世界。それがサイバーザナドゥであるというのならば、その名が示すのは偽りでしかないだろう。
「ザナドゥ――……桃源郷は遥か遠く、ですか」
よるはは己の世界、サクラミラージュに咲き誇る幻朧桜の花弁を思う。
あの美しさを、少年少女たちは知らない。
けれど、と思う。
彼等が生きる世界は、それを知ることができない。その悲しみに触れながら、よるはは彼等がこれ以上虐げられない未来を思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
あ、仲間に死に様を生配信されかけたニンジャくんだ!
あれちがったっけ?
●容易いことではない
ただ施しだけをしても彼らのためにはならない…
なんて考えるのは二流の神さま!ボクはやりたいようにやるの!
●UC『神知』使用
この世には誰のものでもない…というか誰のものでもなくなったまま忘れさられたものがけっこうあるものさ、神さまとか!
それはつまり…もらっても問題無いってことだね!
煩雑怪奇なサイバースペースならなおのこと
【第六感】の赴くまま[叡智の球]くんを介した【ハッキング】で資産や不動産を幾つかもらっちゃおう
売ってよし!住んでよし!
そうボクを崇める教会だってでっちあげられる!
あれ?
「んもーただ施すだけでは彼等のためにはならない」
魚を獲ってあげても、その日の糧として終わるだけである。
真に彼等のことを思うのならば、糧を得る方法を教えるべきである。
「なーんて! そんなの考えるのは二流の神様! ボクはやりたいようにやるの!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の瞳がユーベルコードに煌めく。
「え、なに」
少年少女たちはその光に目が眩むようであった。
ここはサイバースペース。
サイバーニンジャクランの擁するスペースであり、秘匿された空間でも有る。
このような空間がサイバースペースには数多く存在しているのだ。ならば、とロニは笑む。
「この世には誰のものでもない……というか誰のものでもなくなったまま忘れ去られたものが結構あるのさ!」
「なに、どういうこと?」
「わかんない」
「本当にさっぱりわからない」
少年少女たちは猟兵から知識や技術を僅かな時間であれ、伝達されていた。
けれど、それでもロニの言うことが理解できていなかった。口々にロニの言う言葉に否定的な言葉が返ってくる。
「そう、神様とかね!」
「神様ってなに?」
「こういうことだよ!」
ロニのユーベルコードが煌めく。
神知(ゴッドノウズ)があればなんでもできる。さあ、いくぞ! と言わんばかりにロニは球体を呼び出し、サイバースペースからネットワークにアクセスする。
それは煩雑怪奇なサイバースペースにおいて、あまりも傍若無人なる振る舞いであったことだろう。
世の中にはいろんな事情で面に出せない資産というものがる。
不当な手段で得たクレジットであったり、違法なものであったり、違法ではなかったが、違法になってしまったものであったり。
犯罪の末に凍結された口座であったり。
まあ、一口で言えば、後ろ暗いお金ということである。
「これを強引にまねーろんだりんぐ! 洗浄せんじょー!」
ロニはユーベルコードによって得た技能によって次々とネットワークから、そうした資産を洗い出していく。
吸い上げると同時にクリーンなものへと改竄していくのだ。
通常、そうした資金というのは横から横に流して数字は変えずに、その本質を変えていくものである。
だが、ロニのユーベルコードはそうしたものを強引に改ざんしていくのだ。
「売って良し! 住んで良し! 不動産いいのがあるよー!」
ロニは次々とサイバーザナドゥ内部の名義負傷の住宅やマンションを抑えていく。不動産として売って金に代えても良い。
どうしたって、それはサイバーニンジャクランの資金源になるだろう。
「めちゃくちゃだ……」
『イェラキ』は頭痛を覚えたが、たしかに資金の問題はこれでカバーできるだろう。
「そして、僕を崇める教会だってでっちあげられる!」
「しんこうしゅーきょー?」
「あれ? だめ?」
ロニは笑う。
正直、このサイバーザナドゥにはそうした新興宗教がごまんとあるのだ。大抵の場合は巨大企業群の隠れ蓑であるが。
「まあ、いいじゃない! どっちにしたってお金の問題はこれでクリアー! それじゃあ、よろしくニンジャくん!」
ロニは強引な力技でもって解決した資金難を『イェラキ』に押し付け、ストリートの少年少女たちの行く末をよろしく、と託すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ケラウノス』
|
POW : 雷霆万鈞
自身の【装備する槍】に【迸る電撃】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
SPD : 付和雷同
【迸る電撃】によって、自身の装備する【槍】を高速飛翔させ、槍独自の判断で【軌道】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ : 雷轟電撃
自身が装備する【槍】から【自由自在に迸る電撃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【サイバースペースへのハッキング】と【感電】の状態異常を与える。
イラスト:雲間陽子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ラスク・パークス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
多くの問題を抱えたストリートの少年少女たちの行く末。
猟兵達の働きによって、新たな道筋を見出すことができただろう。彼等がこれから何を選び、何者へとなっていくのかはまだわからない。
けれど、それでも最悪の末路だけは回避できたと言えるだろう。
だが、それで事件が終わった訳では無い。
彼等の個人情報。
それが残っている限り、彼等はどこまでも警察機構に追い立てられることだろう。故に、その遺恨を断つために猟兵たちはサイバースペースへと飛び立つ。
警察機構のサイバースペースのセクションに存在する少年少女たちの個人情報を抹消するためである。
「そうだろうな。そう来ると思っていたよ」
声が聞こえる。
実体化されたサイバースペースのセクション。
そこに個人情報が納められているのだが、その場に門番のように一体のオブリビオンが立ちふさがっている。
義体のオブリビオン。
「はじめましての猟兵もいるだろうから、名乗っておくよ。この義体の名は『ケラノウス』……まあ、サイバースペースで俺が操っているものだと思ってくれて良い。わざわざ名乗る辺りに律儀さを感じ取ってくれてもいいんだが」
『ケラノウス』と呼ばれるサイバースペース内の義体が構える。
敵対する意志を感じさせていた。
漲る重圧。
ある者は感じただろう。それが圧倒的な技量に裏付けされた構えであり、重圧であると。
ある者は理解しただろう。それが天賦の才能であると。勝利するためだけの才能であると。
「俺の名は『メリサ』。ご存知かもしれないが、ストリートのガキ共に薬物を流していたのも俺だ。おっと、なんで、とは言わないでくれよ。意味がないからな。あんたたちは、連中の個人情報を抹消したい。けど、この警察機構の情報スペースから、それを抹消するってことは、他のデータも傷つけられるってこと。それはまあ、なんつーか、困るわけだよ」
俺的にも、と『メリサ』と名乗る者が操る『ケラノウス』の眼光がユーベルコードに煌めく。
「だから、排除させてもらおう。アンタら猟兵の力ってのは、よくわかっている。いけ好かない連中だ。最初から全開で行かせてもらう――」
ほとばしる雷撃。
サイバースペースに、戦いの熱波が吹き荒れた――。
村崎・ゆかり
『メリサ』――『ティタニウム・マキア』の事件で絡んでくる情報屋よね。
「なんで」とは訊かないわ。邪魔をするなら、排除するのみ。
せっかくだから乗せられてあげるわよ。目には目を、雷には雷を。
「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」「破魔」で、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経。あなたの纏う雷と、どちらが上か、勝負!
彼の攻撃は「オーラ防御」と「電撃耐性」で軽減する。今の時点なら威力増強もほとんど無い。もちろん、それで油断して当たる気は無いけどね。
落雷と薙刀での「なぎ払い」で死合っていきましょう。リーチの差はあまりなし。それなら、経験がものをいう!
この『紫揚羽』でどれだけ戦ってきたか、思い知らせてあげるわ。
「『メリサ』――『ティタニウム・マキア』の事件で絡んでくる情報屋よね」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、サイバースペースで相対するオブリビオン『ケラノウス』を操る存在が、その名を語るのを聞く。
同時に彼女の問いかけに答えが得られるとも思っていなかった。
「『なんで』とは訊かないわ。邪魔をするなら、排除するのみ」
「そうかい。それなら話は早くて済むよ。俺だって、面倒なのは御免だ」
『メリサ』と名乗る『ケラノウス』が義体の力を発揮するように手にした槍より雷撃を発露させる。
その力の強大さをゆかりは知るだろう。
仮想現実でるサイバースペースであったとしても、その雷撃はゆかりの体を焼く。
凄まじいまでの熱量が熱波となって、ゆかりの頬をジリジリとした痛みでもって襲う。ただ大気を震わせる雷撃の熱量だけで、これほどの力を発揮するのだ。
『ケラノウス』の戦闘義体としての力は警察機構の情報スペースを護るのにふさわしい性能であると言い換えることができるだろう。
「せっかくだから乗せられてあげるわよ」
「そういう認識、良くないな。アンタらが俺の策に乗るわけがない。乗ったところで得られるものはないし、乗った、と思っていること自体が傲慢だよ」
振るわれる槍の一撃が凄まじい速度で持ってゆかりへと放たれる。
同時にゆかりの瞳が明滅するような雷撃の輝きを解き放つ。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
刹那の交錯。
雷撃が互いの体を穿つ。
視界を埋め尽くすほどの強烈な落雷。そして、ほとばしる槍の雷撃。
激突して力の奔流が周囲に吹き荒れ、その凄まじさを知らしめるようにスペースのオブジェクトが破壊され、霧散していく。
「とんでもないな。これを連発してくるっていうんだから」
「そういうあなたこそ余裕をもっていられるのは今のうちよ。こちらに油断はない。追い込まれないと力を発揮できないような力であるのなら!」
今のうちに、とゆかりは薙刀を構えて『ケラノウス』へと迫る。
槍と薙刀。
リーチは互角。
だが、その使い方は似て非なるものである。
槍は刺突に優れ、また同時に投擲を為すものである。だが、薙刀は違う。
名が示す通り、薙ぎ払うことに特化している。刺突も可能であるが、やはり、その穂先の刃の形状が最大に力を発揮するのは広範囲に渡る斬撃であろう。
その一撃を『ケラノウス』の義体が穂先で受け止める。
「経験がものをいう!」
「だろうな。だが、どうしてアンタのほうが俺よりも戦闘経験があると言える?」
振るわれる槍。
叩きつけられる刃の火花が散る明滅。
その僅かな火花が落とす影の中に『ケラノウス』の義体が消える。ゆかりは目を見張る。
ただの一瞬。
刹那にも満たぬ火花の影に『ケラノウス』の義体が消えたのだ。
「……!?」
「アンタたちが長い時間を駆けてきたっていうのはわかるよ。だが、俺にあるのは、銀河の海征く時間だぜ? 戦闘経験がというのなら、俺の方に一日の長があるっていうものだろう!」
振るわれる雷撃齎す一撃がゆかりを捉えんとした瞬間、ゆかりは視界を塗りつぶすようにユーベルコードの雷撃を叩き落とす。
衝撃波が互いの身を打ち据える。
「わかっていないわね、『メリサ』。こういう時に誇るのは、量ではなく質ではなくて?」
「チッ……! やってくれる……!」
「この『紫揚羽』でどれだけ戦ってきたか、思い知らせてあげるわ」
振るう薙刀の刀身の煌めく紫。
その色を示すようにゆかりは紫電の一閃でもって『ケラウノス』の義体装甲を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
『疾き者』にて
まあ、仕事ならそうなるのではないかとー。他のデータに意味があるのかもしれませんけど。
以前味方だとて、そのままってわけは…約束されてませんからね。特にこの世界は。
私?忍びですから、わりきりますが?
さてー、まあジャミングつきのUC使いつつ。漆黒風を投擲しますねー。
ええ、先ほど私が言ったように…関節狙いで。
弾かれたとて、UCによって掴み直し、背後からまた関節ねらいで。
その槍の雷撃軌道は、見切り、三重結界により弾いてそらしますねー。
この結界、内部の三人が張ってるので、私の動きには関係ないんですよねー。
雷撃と雷撃とがぶつかり、サイバースペース内部であるというのに視界が塗る潰されていく。
そのユーベルコード同士の激突の光の中からオブリビオンであり戦闘義体である『ケラノウス』が飛び出してくる。
手にした槍に蓄えられた雷が発露する音が響き渡る。
「サイバースペース内部であれば、やれるな」
『ケラノウス』を操る『メリサ』と呼ばれる存在が義体の奥で笑っているようだった。
できないわけではないと。
その技量は猟兵に届く。
いや、それ以上であるかも知れないと馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱は嘗て感じたであろう感触を思い出す。
武の天才をして天賦と言わしめた才能。
振るう槍の捌き方は、正しく、それと同じであった。
「どうした猟兵。俺はまだ此処にいる。アンタたちが求めているのは、この先にある情報の消去だろう。俺が居る限り、それは敵わないと知った方がいい」
「まあ、仕事ならそうなるのではないかとー」
『疾き者』は当然の帰結だと頷く。
あの槍の扱い方は見たことがある。
だからこそ、わかるのだ。描く槍の軌跡。それを本能以上のレベルでもって感知し、その突き出される一撃を躱す。
頬をかすめる雷撃が体を吹き飛ばす。
「こんなものじゃあないだろう、アンタは」
「……そうですねーですが……以前味方でしたよね?」
「そうかもな。だが、今は違う。そういうものだろう」
「ええ、特にこの世界では。別段約束を取付けたわけでもありませんから……割り切りますよ」
「忍びだから、か?」
「その通りでしてー」
ユーベルコードに『疾き者』の瞳が輝く。
みえぬ呪詛が解き放たれ、四悪霊の内部より染み出すオブリビオンへの恨みつらみが発露する。
四悪霊・『怪』(シアクリョウ・アヤ)。
「鬱陶しいな。これは。みえないから余計にたちが悪い」
「ええ、ポルターガイスト、ともいいますのでー」
呪詛は『ケラノウス』の内部に蓄えられたエネルギーを吸い上げる。同時に投げ放つ棒手裏剣が『ケラノウス』の義体の関節を狙う。
けれど、それは読まれていたように槍で跳ね除けられてしまう。
「ハッ、小手先を!」
踏み込まれる。
その踏み込みの速度。圧倒的な速度は、槍のリーチによって更に速く己達に迫るだろう。
しかも雷撃を伴っている。
凄まじい突き。
「なんともまあ……少々搦手を覚えているようですが」
『疾き者』は言った。
己は忍びだと。ならばこそ、この戦いに正々堂々の正面から、という概念はない。投げはなった棒手裏剣はたしかに跳ね除けられた。
しかし、伸びる呪詛が、それを捉え『ケラノウス』の死角から関節を狙う。
「わかっているよ。アンタ……いや、『アンタたち』ならば!」
だが、その死角すらも読み切るように槍の柄が棒手裏剣を弾く。
放たれた雷撃を霊障の障壁で弾きながら『疾き者』は疾走る。確実に目の前の『ケラノウス』を操る『メリサ』は知っている。
己たちが四柱で一つの存在であると知っている。知っている動きをしている。
「だが、終わりだ」
放たれる槍。
しかし、その一撃を内部の三柱の放つ呪詛が受け止める。
「知って尚、それでも私を一人として認識している時点で、あなたの負けですよー」
放つ一撃は呪詛と共に『ケラノウス』の体を吹き飛ばし、その躯体をきしませる。
「ええ、まだまだ『若い』者には負けるわけには参りませんのでしてー」
そう笑み、『疾き者』は己の内部で滾る武を宥めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
主義主張を問う気も無い
オブリビオンは討つ
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
光尽にて討つ
宿すは破壊の原理
目標はケラウノス
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
時の原理を廻し「世界の始まりから途切れることなく」詠唱したそれを、自身への無限加速にて即時斉射
更に射出の瞬間を無限循環
回避も防御も余地を与えず必滅を期す
万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない
如何な場であろうとそれは変わりない
早々に退場するが良い
※アドリブ歓迎
戦闘義体が軋む。
猟兵のユーベルコードは強烈であったがオブリビオン『ケラノウス』の躯体はまだ動く。
「まったくもって嫌になるな。これは」
『ケラノウス』を操る『メリサ』は毒づく。
嫌になるからといって戦いを放棄することができないのが厄介なところである。
だが、敵対する猟兵のユーベルコードを彼は理解しはじめていた。
「ならば退くがいい」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は瞳を細める。
己が見た戦況はサイバースペースであろうが関係ないものでった。そこにオブリビオンがいて、戦わなければならず、打倒しなければならない相手がいるのならば、戦うのが猟兵であるからだ。
ほとばしる雷撃。
それは自在に形を変えてアルトリウスへと迫る。
しかし、その全てが眼前で霧消していく。
すでに己に敵対する意志を見せた以上、雷撃はアルトリウスには届かない。
「バリアーっていうわけか」
「要らぬ余波ということだ。消去されたものに意味など無い」
「魔力というものを汲み上げているように覆えるな。原理というやつか。害有るもの全てを消去しているのではなく放り投げているだけだな」
『ケラノウス』が槍を振るう。
意味がないと知りながらも雷撃を放つのが、それを行うのに魔力を組み上げる必要があるからだ。
汲み上げているというのならば、途絶えないということ。
瀑布を目の前にしているのと同じである。
「ただ世界のためだけに戦うんだな。世界の悲鳴に応える戦士。それが猟兵。オブリビオンと見れば、滅ぼさずにはいられない」
「主義主張を問う気もない。オブリビオンは討つ」
「そうでなくっちゃあな!」
ユーベルコードが輝く。
宿すは破壊の原理。
目標は言うまでもなく『ケラノウス』である。
「至れ」
光尽(コウジン)の如く煌めく破壊齎す不可視の攻撃。
「直線上に放たれるっていうのなら」
『ケラノウス』が放たれたユーベルコードを躱す。
無限加速に寄って斉射されたユーベルコードの輝き。
回避も防御も余地を与えず必滅を期す攻撃は、例外を持たない。
「線と変わらないな」
「この世界事態を書き換えたか」
「そういうことだ。ハッキング。世界の理を変えることはできないが、仮想空間ならどうだ。変えることができる。あんたのユーベルコードは原理を手繰る。例外はないが、しかし、例外の外側がある」
「ベラベラとよく喋る」
ならば、例外の外か攻撃を放つまでである。
寸断するように放たれた不可視の攻撃。
「仮想現実。ならば現実から攻撃すれば良い」
サイバースペース内部で攻撃するからかわされるのならば、サイバースペース外から攻撃すればいい。
此処に因果があるのならば、此処ではない場所の因果を結べばいいだけの話だ。
故に放たれた攻撃が『ケラノウス』の頭部の角を寸断した――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
強襲輸送型ロボットビースト「Gライアー」(でかいカエル型、火を噴く)で乗り込み、口からロボットビースト軍団を繰り出し散開、Gライアーの火炎放射、シルキーちゃんもローラーで駆け回りながらシルキーショットで連携、相手のUCにこっちもUC、槍と本体のシルキーちゃん以外への視線や注意を奪って、
意識から外れちゃった槍との同士討ちや、
隙を見てのビースト数機による突破、
残るビースト達による総攻撃にシルキーショットでの連携を狙うんだぞ★
あと基本的に内容のない会話しかしないよ★
向こうの発言も咄嗟に口から出たもの以外は「へ~★」「すごーい★」って聞き流しちゃうぞ★
……情報を選んで意図的に流してる可能性があるからね
寸断されたオブリビオン『ケラノウス』の角が宙に舞う。
サイバースペースでの戦いは未だ続く。
猟兵達の戦いはあくまで、ストリートの少年少女たちの個人情報の抹消が終わるまでである。だが、それを阻む『ケラノウス』の力の、性能は圧倒的だった。
「よくやってくれているよ、あんたたちは」
「へ~★ そうやって褒めてくれるんだ★」
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は戦場となった警察機構のサイバースペースに強襲輸送方ロボットビーストと共に飛び込む。
カエルを模したロボットビーストの航空から小型のロボットビーストたちが一気に溢れ出し、『ケラノウス】へと迫る。
「少々邪魔くさいって感じるがね」
放たれる雷撃とともに槍が放たれる。
その槍は宙を旋回し、一気に迫るロボットビーストたちを寸断していく。数で圧倒することなどできないと示すようなユーベルコードであった。
「この程度で俺を仕留められるとでも?」
「そういう自信たっぷりなの何処から来るのかな~★」
シルキー自身も飛び出し、セントリーガンの斉射でもって『ケラノウス』を牽制する。
敵の言葉に乗らない。
こちらに意図的に情報を流し、混乱させようとしているようにもシルキーは思えたことだろう。
情報屋という性質上、そういう風に立ち回ることも考えられる。
だからこそ、シルキーは聞き流す。
そこに重要かそうでないかという選択肢を加えることで『ケラノウス』は、その中身である『メリサ』はこちらに選択を強いてくる。
「はーいちゅうもーく★」
シルキーの頭脳洗車たる躯体が跳ねて飛ぶようにして戦場を疾駆する。
煌めくユーベルコード、それは視線誘導のユーベルコード。
己に注目を引き付け、己以外のロボットビーストたちの動きを悟られないようにする力である。
「シルキーちゃんに釘付け★(レッドヘリングシステム)!」
「強制的な視線誘導か。確かにアンタしかみえない、が!」
振るわれる槍の雷撃が迫るロボットビーストたちを薙ぎ払っていく。自らに迫る脅威を自動的に振り払い続けるというのならば、シルキーのユーベルコードでk視線を釘付けにされることは織り込み済みだったのだろう。
だが、『メリサ』に誤算があったのだとすれば、そのユーベルコードが己以外に対する注意力に比例した幸運をシルキーが得る、という付随した能力にこそあったのだ。
幸運とはイレギュラーである。
戦いにおいて、運とは生命の天秤を容易にひっくり返すものである。
例え、シルキーの放つセントリーガンの弾丸が『ケラノウス』のっ躯体を捉えられなかったのだとしても、ロボットビーストたちが尽く切り裂かれて破壊されるのだとしても。
それでも幸運はシルキーの味方している。
弾丸が跳ね、予期せぬ方角から『ケラノウス』の躯体、その腕部を接続している関節部分へと飛び込む。
「……っ!」
「ほらほら、シルキーちゃんから目をそらしちゃダメダメなんだぞ★」
「攻撃の意図すら感じさせない偶然の産物ということか」
「そゆこと★」
関節部分に飛び込んだ弾丸は跳弾に寄って威力が落ちて、破壊には至らなかった。
だが、人体に弾丸が残っている方が致死率が高いのと同じである。
関節部に食い込んだ弾丸は、『ケラノウス』の躯体の動きを阻害する。俊敏な動きを奪った一撃は、シルキーにとって最大の戦果だったことだろう。
「さあ、ショーアップなんだぞ★」
シルキーの合図と共にロボットビーストたちの火器が展開する。
戦場を埋め尽くすほどの炎と弾丸が、一斉に『ケラノウス』へと放たれ、その躯体を砲火の中へと沈ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
機神搭乗
あー…僕は初めて見るが…あの企業関連で色々絡んでる奴っぽいな
つーわけで初めましてだ
最強無敵の天才魔術盗賊のカシムさんだ
「メルシーだよ☆今度はユピテル様の武器とか…面白いね☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
ケラウノス…メリサの戦い方や動きを分析
特に…今まで戦ってきたエースとの類似点も解析
…おめー…エースとかフュンフとか呼ばれてねーだろーな?
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し純水の障壁で熱源隠蔽しつつ電撃耐性強化
【念動力・弾幕・空中戦】
UC発動
超絶神速で飛び回り念動光弾で蹂躙
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で切り刻み更に武装と彼自身の情報解析も行う
サイバースペースに荒ぶ銃撃。
銃弾の嵐の中を関節部分に支障をきたした躯体『ケラノウス』でもって『メリサ』は駆け抜ける。尋常ならざる動きであるとカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は思ったことだろう。
機神、界導神機『メルクリウス』の中から見る『ケラノウス』の動きは確かに凄まじい。「あー……僕は初めて見るが……あの企業関連で色々絡んでるヤツっぽいな」
カシムは『メリサ』という名に聞き覚えはない。
だが、他の猟兵達の反応を見れば、この邂逅が偶然でもなければ、初見ではないことを知る。
「つーわけではじめましてだ。最強無敵の天才魔術盗賊のカシムさんだ」
『メルシーだよ☆ 今度はユピテル様の武器とか……面白いね☆』
その言葉に『メリサ』とよばれた『ケラノウス』を突き動かす存在は笑う。
「いいのかい。情報屋を前にして名乗るっていうのは」
「ハッ、どの道此処でぶっ潰すってことは、名乗っても意味ないってことだろう」
「それもそうだ」
雷撃がほとばしる。
手にした槍。
その槍の投擲に寄ってユーベルコードの輝きが発露する。雷撃纏う槍は一瞬で戦場を駆けぬけ『メルクリウス』へと迫る。
凄まじい一撃。
それを弾くが、空中で回転を止めず旋回して更に迫る。
「面倒なユーベルコードだな!」
機体の明細は完璧のはずだ。だというのに『ケラノウス』は、『メリサ』はまるでそこに居ることがわかっているかのようにこちらへと攻撃を確実に叩き込んで着ている。
理由がつかない。
どのような理屈でこちらの位置を把握しているのか。
「不思議そうな顔をするなよ、天才魔術盗賊。ここは現実世界じゃあない。仮想現実だぜ? なら、どれだけ隠匿しようとしても確実に存在の残滓は残る。そして、それだけデカイ戦術へ生き……いや、神機を使っているのなら!」
踏み込む速度は神速。
その速さを前にカシムの瞳がユーベルコードに輝く。
「神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)……『メルクリウス』!」
槍の一撃を神速の神機が躱す。
三倍にまで引き上げられた超高速機動攻撃。
その斬撃を『ケラノウス』は槍で弾き、また切り込んでくる。手にした鎌剣が弾かれ、宙を舞う。
他の猟兵が駆動系の一部に弾丸を叩き込んでくれているお陰で、まだ敵を捉えることができている。
「この動き……おめー……『エース』か」
「さあな。切り札っていう言う意味で言うのならば、『ジョーカー』ってところだろうが!」
振り抜かれる槍を白刃取りの要領で『メルクリウス』が受け止める。
雷撃が装甲を灼く。
だが、それでもカシムには勝機があった。
振るう鎌剣は何処に言ったのか。槍との激突で弾かれ、空中で弧を描いている。その切っ先が『ケラノウス』へと真っ逆さまに落ちようとしている。
槍を敵は捨てられない。
それが全てユーベルコードの基点であるからだ。
「おめー、『フュンフ』とかよばれてねーだろーな?」
「……懐かしい名だな。だが、別に名前に意味はないだろう?」
強引に槍を引き抜きながら後退した『ケラノウス』の眼前に鎌剣が突き刺さる。だが、それはブラフである。
一瞬の間隙に放たれた念動光弾が『ケラノウス』の躯体を襲う。
「なら、その情報を盗るっ!」
振るわれる斬撃。
手にした鎌剣は、しかしサイバースペースの情報障壁に寄って阻まれる。
「なんだっ」
「ご主人サマ☆ これ、別のヤツが邪魔してる☆」
後退する『ケラノウス』。
ここがサイバースペースであったことが災いしたとも言えるだろう。現実世界であったのならば、仕留められた。
カシムは歯噛みしながらも消耗した敵を追うように念動光弾を乱れ撃つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ふむ
意外と優しいですね?
違法薬物をばら撒いたのがメリサ様なら
クヌピの皆様をティタニウム・マキアに無理やり突っ込ませて捨て駒にし、
それをネタに|取引《楔》を打ち込むくらい考えていたのですが
情でも湧きましたか?
えっ、貴方様ならそれくらいするでしょう?
勝利への道筋を組み立てるためなら何でも
ふふ、何だかとても興味が湧いてきました
私の主人様はエイル様以外に有り得ないのですが、
何でしょう
女としてゾクゾクするというか
そのスリル、私にも分けて頂きましょう
蜂の割には臆病ですね?
蜂が相手を殺すとなれば命懸けのはずですよ?
熱にせよ針にせよ……
蜂の様に見える|ケラウノス《ガワ》
とてもそうは見えません
つまり……
ふふ、それでは『遠慮なく』
壊させてもらいましょう!
メリサ、貴方の負けです!
ええ、この場は、ね?
念動光弾が乱舞する戦場にありて『ケラノウス』の躯体は十全ではないにせよ、それらの尽くを躱していた。
躯体の消耗の度合いは確実に蓄積しているはずである。
関節部に食い込んだ弾丸を槍の穂先でえぐり出しながら『ケラノウス』を操る『メリサ』は迫る猟兵達のしつこさに呆れ半分であったような声色でもって応える。
「アンタたち猟兵っていうのは、いつもこうだな。誰かのためでもなく。世界のためにこそ戦う連中というのは。世界を護るためならば、いかなることも辞さぬってな」
その言葉にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は首肯する。
「ふむ。意外と優しいですね?」
「あ?」
『メリサ』は訝しむ。
何を言っているのだと、その躯体から雰囲気が伝わってくるようだった。
「いえ、違法薬物をばらまいたのが『メリサ』様なら、『クヌピ』の皆さまを『ティタニウム・マキア』に無理やり突っ込ませて捨て駒にし、それをネタに|取り引き《楔》を打ち込むくらい考えていたのですが」
ステラは、これまでの『メリサ』の暗躍を考える上での前提を語る。
『メリサ』とよばれる情報屋にして殺し屋。
彼の言動やこれまでの行動の結果は確実に巨大企業群『ティタニウム・マキア』を追い込むものであった。
猟兵たちが世界の外からやってきたことを考えれば当然であろう。
そうとしか考えられない暗躍の仕方をしていた。
ならば、とステラは告げる。
「情でも湧きましたか?」
「するかよ。そんなこと。この世界で、それは無意味なことだ。情なんてもので腹が膨れるか? 失われそうになっている生命を救うことができるか? 指の間からこぼれ落ちていくものを留めておけるとでも?」
「語るではないですか。貴方様なら、情のようなものなどいくらでも切り捨ててしまえると思ったのですが、その口数の多さ」
まるで勝利への道筋を組み立てるためなら何でもしそうな者のやることでもなければ、語る言葉でもないとステラは笑む。
「ふふ、なんだかとても興味が湧いてきました」
「逆に俺はアンタにさっさと退場して欲しいと思っているよ」
己にとって主人とは『エイル』以外にはない。
だが、どうしてだろうかとステラは笑むのをやめられなかった。目の前の『ケラノウス』の内にある『メリサ』という存在。
それに対してステラは湧き上がるものがあった。
「女としてゾクゾクするというか」
「どうしようもねーな、アンタは!」
踏み込む『ケラノウス』。
その手にした槍の一閃が雷撃を伴ってステラへと放たれる。
「スリル、というのでしょう。これは。貴方様も感じているもの」
ステラは槍の一撃を手にした銃のグリップで受け止めていた。ほとばしる雷撃の最中、ステラの瞳がユーベルコードに煌めく。
体が吹き飛ばされ、宙を舞う最中にあって尚『ケラノウス』が踏み込んでくる。
勝利する才能。
こと、戦いにおいてそれは絶対である。
勝利者として定められた運命というものがあるのならば、きっとそれは覆せるものではないのだろう。
「蜂の割りに臆病ですね?」
「世界をまたいでくる奴らが相手なんだ、それはそうなるだろうよ」
「蜂が相手を殺すとなれば命懸けの筈ですよ? 熱にせよ針にせよ……蜂のように見える|『ケラノウス』《ガワ》、とてもそうには見えません」
つまり、とステラの瞳がユーベルコードの輝きを最大に引き上げる。
両手に構えた二丁拳銃。
その引き金を引く。
「ふふ」
「なんで笑う」
「いえ、おかしいですから。本当に私達を貴方様が殺す気があるのならば、こんな小細工を容易する必要なんてなかったですよね」
サイバースペースにわざわざ陣取っていることも。
『クヌピ』の少年少女たちを利用して猟兵たちをサイキックの毒で殺そうと思えばできたことも。
その全てが猟兵に勝利する、という意味では何一つ利用されていない。
まるで。
「そう、まるで私達と争うこと自体が目的であったような立ち振舞。ならば、『遠慮なく』壊させてもらいましょう!」
放たれる弾丸。
踏み込む槍。
弾かれ火花散る互いの斬撃と銃撃。
乱舞のように輪舞のように。
互いの攻撃がユーベルコードの輝きと雷撃の迸りでもって彩られていく。確かに『ケラノウス』の動きは凄まじい。
だが、その程度だ。
「『メリサ』、貴方の負けです!」
振りかぶった拳銃のグリップが『ケラノウス』の頭部を打ち据える。体勢の崩れた一瞬、槍の穂先が動く。
それだけだった。
ほとばしる雷撃。突き入れれば、確実にステラの胴を貫くはずの一撃。だが、雷撃だけがほとばしる。
「ええ、この場は、ね?」
捻るように動いたステラの体が宙に舞い、その銃口から放たれた一撃が『ケラノウス』の躯体を貫く――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
リフォーム発注ヨシ!HPヨシ!SNSヨシ!今日の神父のお言葉ヨシ!
じゃあ後は頼んだよ!イェラキ“神父”!
と無茶振りしてから事に当たろう
●なるほど(UC『神知』使用)
つまりあれだね!
どっちに着くのがお得か試してやろうってやつだね!
漫画やアニメで見たよ!
じゃあいいとこ見せないとね!
フフン、本体と槍で同時行動って訳だね!でも、タイミングが分かっていれば!
【第六感】の機を読み[球体]くんによる【武器受け】!
そしてそうやって耐えるその間に行うのは…[叡智の球]くんを介した【ハッキング】で全部まとめて一帯のサイバースペースごとクラーッシュ!!
そう力だけでボクたちの全てじゃない!
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は指差し確認していた。
「リフォーム発注ヨシ! ホームページヨシ! ソーシャルネットワークサービスヨシ! 今日の神父のお言葉ヨシ!」
何が、とサイバーニンジャ『イェラキ』は訝しんだ。
ロニが何を言っているのかさっぱりわからなかったのだ。いや、ロニ以外の誰も理解できなかったかもしれない。
それはつまり、ストリートの少年少女たちの処遇を決定する際にロニがサイバーザナドゥに存在する物件を勝手に改ざんして己がものとして勝手に作り上げた教会のことを示すおのであった。
「じゃあ、後は頼んだよ!『イェラキ』“神父”!」
簡単に言えば無茶振りと云うやつであった。
当然『イェラキ』は承諾もしなかったし、否定もしたし、拒否もしたが、ロニの耳には届かなかった。
そのままの勢いでロニは爆走するようにサイバースペースへと突入し、オブリビオン『ケラノウス』と猟兵の戦いを見やる。
「なるほど神知(ゴッドノウズ)! 理解したよ! つまりあれだね! どっちに着くのがお得か試してやろうってやつだね!」
「否定はしないけどさ。別に損得勘定で動く以上に俺はアンタたちのことをいけ好かないって思っているんだよ」
そこだけは譲れない場所であると言うように『ケラノウス』の中に在りて操る『メリサ』は言う。
「まーまー、そう言わないでよ。こういうのって漫画やアニメでみたよ! いいとこ見せないとね!」
「やる気の方角が明後日な気がするが!」
放たれる槍の投擲。
雷撃纏う一撃がロニへと迫る。
それは、しかし旋回するようにロニを取り囲む。ほとばしる雷撃は、それだけでロニの体へと迫るし、槍の刃さえもロニを逃さぬ世に迫る。
「槍と本体で同時行動ってわけだね! でもタイミングがわかっていれば!」」
恐れるに足りないのだとロニは言うように飛び込む。
第六感。
五感で感じ取れぬ何かを感じ取るのが第六感であったというのならば、その斬撃は見切れぬものであった。
「それはこっちにセリフだ。同じような力、同じような原理、同じような思惑が有るなら」
球体が槍の一撃を受け止める。
だが、ロニの狙いは己の手で『ケラノウス』を叩き潰すことではなかった。
球体が周囲のサイバースペースをハッキングしているのだ。
「わかっていることだ。アンタたちがそうすることも。そうやって全部巻き込んでいくこともな!『ケートス』!」
瞬間、ハッキングが食い破られる。
ロニはしかし笑う。
「神知というのは、神性だから宿るものではないのさ。人知を越えたものであるからこそ、神知というんだよ!」
ほとばしるユーベルコードの煌めき。
ロニのユーベルコードはハッキングの技能を己の技量以上に置き換える。
故に、本来であれば彼にできないこともできてしまう。
これもまた力技に他ならぬものであったことだろう。
ルールそのものを書き換えてしまうこと。
そのユーベルコードは本来であればありえないことを引き起こす。
「そう力だけがボクたちの全てじゃない!」
そう言いながら、力押しでロニはハッキングを切り返し、サイバースペースの周囲のオブジェクトごと破壊に巻き込みながら、その崩落に『ケラノウス』を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
まあ、今までのムーブから何かしらの目的があるんだろうとは察していたけれど…直接出張ってきたのは正直意外ねぇ。
一応の礼儀として訊くけれど、あなたの目的ってあたしたちが力貸せないのかしらぁ?
まずは|ソーン《阻害》と|エオロー《結界》で○オーラ防御を展開。ソーンの原義は|トール《雷神》、○電撃耐性にはうってつけよねぇ。さらにゴールドシーンでソーンを描き●黙殺・砲列を展開、隙を○見切って●重殺叩き込むわぁ。
|刻むのはベオーク・シゲルの二条・ウル・ハガル・ユル《「成長」する「エネルギー」は「臨界」し「制御を離れ」「破滅」の「終焉」を齎す》――状況によって強化されるってのも、良し悪しよねぇ?
サイバースペースのオブジェクトが崩壊していく。
そのさなかを『ケラノウス』は俊敏な動きで持って駆け上がる。
「相変わらずむちゃくちゃしてくれるな。アンタたちは」
猟兵に対してそう告げるのは『ケラノウス』の中から操る『メリサ』であった。
サイバースペースにおける戦闘義体。
『メリサ』はその性能を十全以上に引き出していた。
凄まじい技量であると言わざるを得ない。けれど、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)にとって、『メリサ』が直接的に出張っていることが意外に思えた。
「まあ、今までのムーブからして何かしらの目的があるのかしらぁって察してはいたけれどぉ……」
「目的なしに動くなんてことはありえないだろう。人間ていうのは特に」
「それもそうねぇ。でも、一応の礼儀として訊くけれど、あなたの目的ってあたしたちが力貸せないのかしらぁ?」
その言葉に『ケラノウス』は手にした槍を弄ぶように回転させ、柄を掴む。
「アンタたちは世界を救うだろう。結果として人を救うことにもなっている。だが、人を救うためにアンタたちはやってはこない。あくまで世界在りきだからだ。もしもアンタたちに『世界の危機に繋がるものではないが、人の生命が失われそうだから助けてくれ』と言って、アンタたち個人は動くかも知れないが、猟兵としては動かないだろう」
世界の悲鳴に応える戦士。
それが猟兵であるというのならば、たしかにそうだろう。
その一点において『メリサ』という存在は猟兵を信用しない。
「それがどうにも俺は気に食わない」
「詭弁よねぇ。それ。だからオブリビオンを、巨大企業群を引き合いに出して、あたしたちを引っ張り出そうっていう魂胆なのぉ?」
「どうだろう――なッ!」
放たれる雷撃まとう槍の一撃。
その強烈な一撃をオーラの防御で持ってティオレンシアは防ぐ。
苛烈な一撃は電撃耐性を持って防げるはずだった。しかし、『ケラノウス』の一撃は、それを遥かに上回るものであった。
「流石にコレくらいはやってくるわよねぇ」
砕かれるオーラ。
飛び散る雷撃。
頬をかすめる一撃をティオレンシアは細めた瞳で見つめる。
描く軌跡。
魔術文字。ルーンが刻まれていく。
「ベオークは守り育て」
手にしたシングルアクションのリボルバーが回転する度に弾丸が放たれる。刻まれたルーンの文字が意味をなし、『ケラノウス』の躯体へと飛ぶ。
弾かれ、されどティオレンシアは引き金を引く。
「シゲルは太陽の光を。ウル・ハガル・ユル……成長するエネルギーは臨界し、制御を離れ破滅の終焉を齎す――」
五発の弾丸は目眩ましそのものだった。
布石と言ってもいい。
だからこそ、『ケラノウス』の槍は弾く。
弾くのではなく、躱すべきだったと理解したのはティオレンシアの瞳がユーベルコッドに輝いていたからだ。
「透かし晦まし掻き乱し、最中に本命を忍ばせる――あたし、そういうのは得意なのよぉ?」
わかっていたはずだ。
だが、それでもティオレンシアの虚を織り交ぜ、真をなし、そして、それら全てをひっくり返す一撃を持つ者を前にして退くわけにはいかなかった。
退けばそれだけ付け込まれると知っていたからだ。
「その機転の効きすぎるところが、敗因とは、良し悪しよねぇ?」
重殺(エクステンド)。
刻まれたルーンの効果を極大化する六発目の弾丸が宙を駆ける。
躱しようのない弾丸。
その一撃が『ケラノウス』の躯体を打ち抜くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
東・よるは
…であれば、終わりましょうか。
麻薬を振り撒き人々を穢し、意味が無いと断じるのであればわたくしも『選ぶ』だけ。
色は藍。破綻せし|尊厳《モラル》の色。
居る時代・世界によって刃の光が36色に色を変える閃夜、サイバーザナドゥでは藍を灯しましょう。
そして真の姿にも台詞無しで変身。
頭の桜の樹が失せ、桜色に転じる髪――桜の神。
こちらが空を無闇に飛ぶことは今回は悪手と考えます。
戦闘知識に基づいて基本は最小限の動きで対応。防御は武器受けと継戦能力を用いて致命的な攻撃を受け流す、或いは擦り傷などをこの身で受けるというふうにダメージコントロールをしましょう。
ある程度敵にダメージを与えた後、敵が大きく仕掛けてきたら大きく後ろにジャンプ、敵の一撃を避けながらくるりと宙返りして……
UCでとどめを刺しにいきます。
一瞬で間合いに行って、4度、超高速で斬り結ぶのです。
その身体には確実に死んでもらう。
中のメリサと名乗る者がどうなるかは知りますまいが……
儚く散るのが君の運命。
終了後は少年少女たちの個人情報を削除しましょうか。
穿たれた弾丸の痕。
ぐらりと揺れる躯体。
『ケラノウス』に穿たれた一撃は、たしかに躯体の限界を超えるものであった。
「だが、まあ……そうだな。まだ終わりにはできないというやつだ。この躯体の限界を越えてまでやらなければならないというのは、業腹だが」
「……であれば、終わりましょうか」
東・よるは(風なるよるは・f36266)の瞳に輝くは超克の輝き。
選ぶ。
己が選ぶ色を示す。
世界に示すは藍色。
彼女の手にした霊刀の刀身に宿る輝きが色を変えていく。
それは破綻せし|尊厳《モラル》の色。
「違法薬物を振り撒き人々を穢し、意味がないと断じるのであれば、わたくし『選ぶ』だけ」
よるはの冠する桜の樹は消え失せ、桜色に転じる髪色。
それを言葉で表現するのならば『桜の神』とでも呼ぶべき存在であったことだろう。
ほとばしる雷撃が槍と共に放たれる。
「『選んで』でどうするつもりだ、猟兵。アンタたちは!」
一瞬で間合いを詰める。
それは互いに選んだことだった。
最低限の動き。最小の動き。無駄を削ぎ落とした動きで持って『ケラノウス』とよるはは互いの手にした獲物を閃光のように解き放つ。
雷撃を身に受けながらも振り抜かれた霊刀の斬撃は万物を切断する超高速の斬撃。
触れてはならない。
それは四連撃目において、絶対なる死を齎す殺人剣〜徒桜(サツジンケン・アダザクラ)。
「わたくしは『選び』ました。あの子らの未来を『選び』取りました。他ではなく、他ならぬあの子たちの手で未来を選び取れるように」
よるはの斬撃が迫る槍を切断する。
万物を切断する斬撃を止めることはできない。槍の穂先が宙に舞う。
さらに振るう斬撃が『ケラノウス』の躯体、その腕を切断する。
「その先が過ちに繋がっていないと何故証明できる。わかるか。人生っていうのは、常にお先真っ暗っていうものだ。未来を見通すことなどできはしない。未来は確定していないからだ」
振るわれる拳と共に雷撃がよるはの体を打ち据える。
一瞬。
踏み込まれただけで、よるはは押し込まれたことを理解する。敵が、『ケラノウス』が、『メリサ』が一歩踏み出すだけで容易に此方の一歩を後退させる。
それだけの力を目の前の敵は持っているのだ。
恐るべきことである。
だが、それでもよるは後ろに大きく飛ぶ。
「後退したな。後ずさったな!」
それが致命であると言わんばかりに『ケラノウス』が大きく踏み込んで来る。
だが、敵には武器がない。
いや、ある。
「それでもよりよい未来を人は夢見るもの。それを否定することなどできようはずもないでしょう。人は夢を見る。明日を」
「だからなんだというのだ。今日と言う日を見ることのできない者だっているだろう!」
宙を舞っていた槍の穂先を『ケラノウス』が掴み取る。
振りかぶる一撃。
槍というものの体裁すら取り繕わぬ一撃。
それは天よりの神雷の如き一撃となってよるはへと迫る。
「故に儚く散るのです。せめて、と私は言うでしょう」
それが君の運命であると言うように、超高速の斬撃が飛ぶ。
手にした槍の穂先ごと切り裂く一撃。
これにて三連撃。
そして、最後の一閃がほとばしる。
選んだのだ。
その色を。
尊厳を護るために、その色を選んだのだ。藍色。
最後の剣閃は、その色に染まり『ケラノウス』の体を袈裟懸けに切り裂く。
絶対たる死齎す斬撃。
「人の夢、されど散る様すら美しいと思える。ならば、君は見ることも叶わぬでしょう」
最後の四連撃が叩き込まれた瞬間、『ケラノウス』の躯体が崩れ去っていく。
警察機構の個人情報が納められたサイバースペースのオブジェクトを前によるはは瞳を伏せる。
これでいい。
『選んだ』のだ。
彼等の道行を一度白紙にする。
全てをリセットし、まっさらなものとして、再び脚を踏み出すことを彼等は選んだ。
その道行がどんなものになるのか。
どんな色になるのかわからないけれど。
「それでも、この行いが彼等の幸いになりますように」
そう願い、よるはの剣閃は少年少女たちの過去を切り裂き、完全に抹消させる。
「さらば、昨日までの君たち――」
大成功
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