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美魔女食堂

#UDCアース #UDCダイナー

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 人の欲に尽きるところはない。
 権力を握り、財を成し、周囲を思うままに動かせるようになったなら、さらにその先を求めてしまうもの。

「こんなしわがれた喉は捨てて、囀る小鳥のような声がほしい」
「子犬のように躍動する、若々しい体が欲しい」

 もっと美しく、もっと輝かしく。不可能と知ってもなお、永遠の春を人々は望む。
 ならば、すべて叶えてあげましょう。
 ここは美しき魔女の統べる、崇高なる食の殿堂。

 さあ、あなたもかわいくなりたいのでしょう?

●美しき魔女の統べる、崇高なる食の殿堂
「UDCダイナー、という言葉を聞いたことはあるかね?」
 髪の毛に繋がったUDCの巨大な口を操って、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)は猟兵達へとそう問いかける。
 古来より伝わる噂、都市伝説の一つ。「怪物の肉は得も言われぬ美味を誇り、食した者に不老長寿を齎す」――その真偽は定かでないが、少なくともUDC組織が知る限り、UDCを食材とする料理店は、確かに存在しているのだ。
 その効能は、健康増進や滋養強壮などというレベルではない。一口食べれば虫歯が治り、肩こりが解消し、果ては致死の病が完治する。そういった得難い力を求めて、裏社会の権力者達は、こぞってその店に通っているのだという。
「今回、諸君に潜入してもらうのも、そのUDCダイナーの内のひとつなのだよ」
 その名は『美魔女食堂』――いかにもアンチエイジングが得意そうな店名だが、実際そこでは食べた者が『かわいくなれる』という触れ込みで、様々なUDC料理が提供されている。
「いや、本来の店名はもっと長いようなのだが……まあそれはよしとしよう。
 とにかく、短期的にはその手の効果が期待できるのだが、その料理を繰り返し食べていると、やがてその人間はUDCへと変じてしまうのだ」
 UDC組織として、これを放置しておくわけにはいかない。

「ここでの食事は一品百万円を超える価格になるのだが、その辺りの準備はUDC組織の方で整えてある。諸君にはただ客として、この店を訪れてもらいたい」
 まずは怪しまれぬよう、何かしらの料理を頼み、完食するのが第一歩となるだろうか。運ばれてくる料理はどれもUDCで出来ているだけあり、壮絶な見た目をしていると予想される。先程の話の通りなら、食べ過ぎると自分もUDC化してしまう厄モノだが、猟兵ならば問題ないはず。
「むしろ、天上の絶品とも称されるその味と、効能の恩恵だけを享受することができるだろう。エステ気分で楽しんできたまえ」
 まあ、効きには個人差があるようだがね、と付け加えて、彼女は話を進める。
「一皿平らげてしまえば、恐らくは店主兼シェフと顔を合わせることができるはず。そこを速やかに仕留めてほしい」
 今回の首謀者、店主を務める敵の名は『呪炎のエーリカ』。UDCに侵され邪心を宿した『魔女』である。醜いものを嫌い、美しいものを好む彼女は、自らの料理の成果を必ず見に来るはずだとくくりは言う。
「彼女を倒してしまえば、この店を続けることは不可能となるだろう。邪神の苗床をひとつ潰すことができるわけだが……問題は、残った常連客達の方か」
 UDCを日常的に食してきた彼等は、『呪炎のエーリカ』が倒れようともUDC化を避けられず、むしろ猟兵達への恨みを募らせて襲ってくる可能性が高い。
「こちらのオーダーは『一体たりとも逃がしてはならない』という一点だ。生け捕りでも討伐でも構わない、市街にUDCが抜け出すことだけは避けてくれたまえ」
 では、任せたよ。そう告げて、くくりはグリモアを展開し道を開く。

 一行を無事に送り出し、ひとまずの役目を終えたところで、彼女は一つ溜息を吐いた。
「わたしもたべたかったな……」


つじ
 今回の舞台はUDCアース。怪物を食材とする料理店です。
 美味しいごはんが食べれてかわいくなれます。お得ですよね。

●美しき魔女の統べる、崇高なる食の殿堂
 高級レストラン風の内装。略称の方で噂が広まっているためか、年配の客が多いようです。
 客は全て邪神の信奉者で、人には言えない真っ黒な裏稼業で稼いでる人々です。

●第一章『UDCダイナー潜入』
 お客を偽装して何とか切り抜けてください。
 料理は『呪炎で焼いた謎の触手』や『ルビーチョコレートのような呪われたルビー』などが提供されることになるでしょう。見た目はかなりアレですが、味は良く、効果は本物です。

●第二章『呪炎のエーリカ』
 料理を完食して「シェフを呼んでくれ」とか言えば自慢げな顔をして出てきます。
 一声かけてあげるついでに倒してしまいましょう。

●第三章『無垢なる捨て犬とヒヨコ』
 店主を倒しても、UDCと化した常連客達は元には戻りません。全て倒すか、生け捕りにして依頼主のUDC組織に引き渡してください。
 なお、彼等は皆『かわいい小動物』型のUDCと化しています。
 こんなはずじゃなかったのにな、と店主も被害者も思っていますが、些細なことでしょう。

●かわいくなあれ
 第一章にてPOWかWIZで挑んだ方には、シナリオが終了するまで『肌艶がよくなる』、『ムダ毛が突如消滅する』、『瞳がきらきらと輝きだす』、『骨格レベルで痩せる』、『かわいい小動物と化す』などの効能が現れそうな気がします。
 効果には個人差がありますが、プレイングの参考にしてください。

 以上になります。それでは、皆さんのご参加お待ちしています。
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第1章 冒険 『UDCダイナー潜入』

POW   :    気合いで全部の料理を食べる

SPD   :    他の客や店員にバレないよう、食べているふりをしながら料理を始末する

WIZ   :    万一に備え、薬や魔術でUDC食材の危険に対策しておく

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イリスフィーナ・シェフィールド
POW判定で

見た目だけ気にしてもしかたないと思いますのですけれど
中身がどうしようもないと多少見れてもどうしようもないですもの……わたくしみたいに

それはともかくお仕事ですわ
お料理を食べれば良いとのことでしたけどこれは……
(美味しそうな匂いを漂わせたジューシーな触手料理が目の前に)
えええ……これを食べますの……匂いは良いですけど見た目が……
(我慢して先っぽに噛みつくと肉汁溢れてとても美味しい、普通の人が見たら顔を顰めそうな光景だが普通の人いないし)
ふぅ、完食しました、んん、何か体が変ですわ
(ピンと立った犬耳とフサフサ犬尻尾が生えてくる)
な、なんですのーっ!? しぇ、シェフを要求いたしますわーっ



●邪神の眷属の希少部位である第八肢のソテー
 UDCダイナー、一般には公表されていないその場所は、表向きは巧妙に偽装されている。この『美魔女食堂』もまたそれは同様らしく、厳重なチェックを潜り抜け、店内に通されたイリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は、外観とその内装の差に感心するような息を吐いた。
 高級レストラン然としたそこを、秘かに視線で探れば、身なりの良い年嵩の男女がそれぞれのテーブルで謎めいた料理を楽しんでいるのがわかる。彼等は皆常連客、その味と、何よりも効能に魅せられた者達なのだろう。
「見た目だけ気にしてもしかたないと思いますのですけれど……」
 客の入りの良さに複雑な思いを抱きつつ、彼女は案内されたテーブルに着く。
 外見をいくら取り繕おうとも、中身がどうしようもなければ無駄なこと――自らをそんな風に顧みる彼女は、周囲からは物憂げに見えていたことだろう。だがここを最初に訪れる者に、そういった様子は珍しくないのか、周囲も給仕も彼女を疑う様子はない。
 上手くその場に溶け込んだ彼女は、いくつか注文を済ませて、料理の到着を待つ。今回の仕事の滑り出しは上々、次は料理を食べれば良い、という話だが……。
「今朝獲れたばかりの、新鮮な■■■のソテーでございます」
 人形じみた給仕の持ってきたそれは、どう見ても焦げた触手の切れ端だった。
「えええ……これを食べますの……?」
 無闇にでかい上に謎の棘やら襞やらで彩られたそれを、半眼で摘まみ上げる。見た目はあれだが、しかし鼻孔をくすぐる香りは天上の代物、だがやはり見た目が――。
 しばしの葛藤の後、彼女は覚悟を決めて、その触手の先端に齧りついた。
 やぶれた皮から零れ出るぬめついた液体、絵面はかなりひどいことになっているが、しかしその口に広がるのは極上の肉汁の風味である。
「お、美味しい……!」
 周囲の者達もこの味を知っているはず、ならば人目を気にする必要はないだろう。新鮮過ぎて未だに蠢いている気がするそれを、イリスフィーナは引き続き味わっていった。

「――ふぅ、完食しました」
 良いお味でした。満足げな表情で溜息を吐いた彼女だが、食器を置いたところで違和感に気付く。
 頭上と背中にくすぐったいような感覚。そっと手を伸ばせばそこには、ふさふさの犬耳と尻尾が生えてきていた。
 かわいくなれるとは言っていたけれど、これは一体。ピンと立った耳が惑うように揺れて。
「な、なんですのーっ!? しぇ、シェフを要求いたしますわーっ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミーガン・クイン
 えー!? 魔女のレストランだなんて、私のためにあるようなものじゃない?
ただでさえ美しい私が更にかわいくもなれちゃうなんて最高じゃない♡

 高級店でも堂々として行けば大丈夫ね。
同伴とかでも行くしぃ。
料理の見た目がグロテスクでも味が最高ならOKじゃない?
まぁ、魔女の料理ってこういうものよねぇ、知らないけど。
食事も楽しんでかわいくなっちゃうわね♪



●蒼緑に染まる魔女の大鍋のスープ
 このUDCダイナーの名称は、『美しき魔女の統べる、崇高なる食の殿堂』。店主の自己主張が爆発したような店名だが、対するこちらも|規格外《負けていない》。
「魔女のレストランだなんて、私のためにあるようなものじゃない?」
 怯まず臆せず堂々と、ミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)は高級店然としたその場に入っていった。
「ただでさえ美しい私が更にかわいくもなれちゃうなんて最高じゃない♡」
 同伴やら何やらでこの手の雰囲気も慣れたもの。見目を羨む周囲の視線など、今更彼女は気にもしない。
 魔女の操る人形のような、生気のない給仕達が運んできた、どろどろの沼地みたいなスープには一瞬呆気にとられたけれど。
「――まあ、味が最高ならOKじゃない?」
 底の見えない深皿の中で、ぽこぽこと謎の泡を立たせるそれも、匂いを嗅げばむしろ食欲をそそるもの。水面の揺らぎが悲嘆にくれた人間の顔に見えてくるが、スプーンを入れてしまえばもうわからない。
 それにこのおどろおどろしい見た目も、『魔女の料理』らしいと言えば納得できるような気もするし。
「せっかくだし、楽しんでいきましょ♪」
 生臭そうな見た目の割に、口に運べば濃厚な旨味を感じられる。どろりと舌に絡みつくその感覚も、慣れれば癖になるような。
 結局のところすべてを肯定的に捉えてしまえば、この料理に隙は無い。多分スープに溶け込んでいるのだろうUDCの気配さえも楽しむ心持ちで、ミーガンは食事を進めていった。
 一口ごとに感じるものは、絶品の味のみならず。身体に漲る活力は、間違いなくこの料理による効能だろう。
 肌の張りはいつにもまして艶やかに。いつもある種の負荷に晒されている肩も、一際軽くなったよう。
「はぁ……どんどんかわいくなっちゃうわね」
 満足気に息を吐いて、もう一口。
 あ、大きくなるのは自分でやってくださいね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディイ・ディー
🎲🌸

何やってんだよ、エーリカ
……もうあいつじゃなくて邪神か
いいぜ、同じ舞台に乗ってやるよ

フォーマルなスーツにネクタイを締めて
志桜の手を取って席までエスコート
折角の食事だ、存分に楽しもうぜ

スフェーンの彩りを添えたオードブル
宝石のポタージュに猫睛のポワソン
志桜、美味いか?
……普段以上に志桜が綺麗に
なんて目映さだ
普段も可愛すぎるけどな

デザート名は紅玉の輝石か
エーリカらしいな
彼女めいた部分が残っていて心がざわつくが
志桜のお陰で不思議と落ち着く

最後は珈琲
懐かしいな
昔、エーリカの店に遊びに行く度に淹れて貰ったんだ
だが、これはあの日の味とは違う

シェフを呼んでくれ
一言、いいや
積年の思いを全てぶつけてやるぜ


荻原・志桜
🎲🌸

不安がまったくないと言えばウソだけど
でも怖くはない
彼がいつもしてくれているように。わたしも支えてみせるからね

ドレスコードをして彼の手をとり席へ向かい乍ら
作法は叩き込んできたけど内心どきどき
うんっ。めったに食べれるものじゃないもんね
どんなお料理なんだろう

わ、本物の鉱石にしかみえないね
おいしいっ!このポタージュ好きかも
ディイくんも食べてみた?

綺麗にみえる?食事にかけられた魔法だね
ディイくんもきらきらしてみえるよ
と思えど彼はいつだって格好良いのだ

視線に気付けば柔く双眸を緩め
大丈夫。ディイくんの心のまま伝えればいいんだよ
なにがあってもわたしが隣にいる
必ず守ってみせる
にひひ。ありったけ届けようね



●食べられる魔石フルコース
「本当に、ここに居るのか……?」
 大仰なのか間抜けなのかわからない店名に、ありがちな詐欺のような謳い文句。とはいえこの豪奢な内装に、裕福そうな多数の客、ディイ・ディー(Six Sides・f21861)のよく知る『彼女』の新しい商売は、それなりの成功を収めているようだ。
「何やってんだよ、エーリカ」
 思わず、そんな呟きが零れる。
 いっそのこと間違いであってほしいが、邪神に蝕まれた今の彼女なら、何をやっていても不思議ではない。
「ディイくん、大丈夫?」
「ああ――」
 傍らの荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)の問いに頷いて、ディイは首元のネクタイをしっかりと締めた。
 同じ舞台に乗ってやる、と覚悟を決めた彼は、ドレスコードに相応しく着飾った志桜の手を取り、『美魔女食堂』へと踏み込んでいく。生気のない人形のような給仕達に案内されたテーブルに、向かい合って座る。どこか緊張した様子の志桜に、いつものように笑いかけて。
「折角の食事だ、存分に楽しもうぜ」
「うんっ。めったに食べれるものじゃないもんね」
 普通の稼ぎではとても手の届かない、そして表社会ではお目にかかることもないであろう料理に、向き合う。
 スフェーンの彩りを添えたオードブル、宝石のポタージュに猫睛のポワソン。煌びやかな石をテーマにしたフルコースは、名に違わぬ輝きを放っていた。
「わ、本物の鉱石にしかみえないね」
 物理的な高級感に溢れたそれらに弾んだ声を上げて、志桜は早速手にした食器の先でそれに触れる。
 フォークの先端に感じるのは、極めて硬質な手応え。
「……飾り付け用の、本物の宝石、ってことはないよね?」
「いや、ないと思うが……」
 カチンと音を鳴らすそれを、半眼で見下ろしながらディイが答える。ものによってはスープに沈んでいたりするのだから、これも料理の内のはず。彼女に確かめさせるのもしのびないので、ディイは率先してそれを口に運んでみせた。
「ディイくん……」
 力一杯宝石に噛み付いている彼氏の姿など、今後二度と見ることはないだろう。だがそんな状況にも関わらず、ディイの姿がやけに凛々しく見えてくる。
「少し食べづらいが、味は良いな」
 でも格好良いのはいつものこと、と思い直して、志桜もまた促されるまま料理を口へと運んだ。
「ほんとだ、おいしいっ!」
「ああ……」
 がんばって宝石を噛み砕いている彼女の姿など、今後二度と見ることはないだろう。それはともかく、艶やかなピンクの髪が、長い睫毛で飾られた若葉色の瞳が、やけに輝いて見えて、ディイは思わず目を細めた。
「……どうしたの?」
「いや、目映さが過ぎて、ちょっとな」
「そ、そう?」
 食事にかけられた魔法だね。いや普段も可愛すぎるけどな。そんなやりとりをしている合間に食事は進み、デザートが運ばれてくる。
「……紅玉の輝石、か」
 その一皿に冠された名称、記憶の中の彼女、エーリカの嗜好を思わせるそれが、ディイの心をざわつかせる。
 やりきれない、そんな感情を滲ませる彼の瞳に気付いて、志桜は柔く双眸を緩めて彼を見つめる。
 事前にある程度の話は聞いている。不安がないと言えばウソになるけれど、それを胸の裡から出さないように努めた。今日は私が支える番だと、そう決めたから。
「懐かしいな。昔、エーリカの店に遊びに行く度に淹れて貰ったんだ」
 最後に運ばれてきた珈琲を口にして、彼は言う。
「だが、これはあの日の味とは違う」
 変わってしまった。そしてきっと、戻ることはない。
 あの日の彼女は、もうそこにはいないのだろう。噛みしめるような彼の言葉に、寄り添うようにして、志桜は言った。
「大丈夫。ディイくんの心のまま伝えればいいんだよ」
 柔らかなそれに背を押されるように、ディイが頷く。
「シェフを呼んでくれ」
 心を決めてしまえば、彼は強い。給仕にかけられたその声に、震えも動揺も存在しなかった。

「一言、いいや――積年の思いを全てぶつけてやるぜ」
「にひひ。ありったけ、届けようね」
 そうして、二人はこの会場の主を迎える。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

烏護・ハル
WIZ

式神さんを一人連れて懐に忍ばせておくよ。
味覚と嗅覚を呪詛でこっそり麻痺させといてもらう。
……最悪、普通の料理だと錯覚できるように催眠術もかけて。
……自分に呪詛かける日が来るとか思わなかったよ。

なぁに?式神さん。
『効能目当てでしょ』って?
……何言ってるのよ。別にそんなんじゃないわよ。
あくまで任務よ任務。

……いいじゃん、ひと時くらい現実逃避したって。
故郷にはない〝コンビニスイーツ〟が美味しくて、食べ過ぎちゃって。
体重計がちょっとヤバめの数値を叩き出して。
そんなしょうもない理由だけどさー……。

……いざ、実食。
大丈夫よー。
ふかし芋だとか、そう思い込めばこんなのペロリよ。
……ねぇ、大丈夫、だよね?



●これはふかした芋です
 ぎょろぎょろと蠢くそれが、皿の上から一斉にこちらを見てきた気がして、烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)はそっと眼を閉じた。
「式神さん、やっぱり催眠術もお願い」
 懐に忍ばせたそれに、小さな声で呼びかける。どんな料理が運ばれてきてもいいように、味覚と嗅覚を呪詛で麻痺させてもらっていたが、一番ヤバいのは見た目だった。直視すると精神を持っていかれそうなそれを、どうにか『普通の料理』として認識できるように努める。
 いやまさか、自分自身に呪詛をかける日が来るとは。数奇な人生に溜息を吐くことになるが、その甲斐あって、目を開けたハルはお皿の上が『ふかし芋』に見えることに安堵した。
 まあ、これなら何とか食べられるか。猟兵に預けられた使命も、しっかりと果たすことができるはず――。
「ん、なぁに? 式神さん?」
 懐に隠れていたそれが、ハルの内心を読んだのか「いや、効能目当てでしょ」と指摘してくる。
「……何言ってるのよ。別にそんなんじゃないわよ」
 そう、これはあくまで任務。邪神の苗床となるUDCダイナーを放っておくわけにはいかないだろう。……と、そんな建前は式神さんには通用しないらしい。追及の視線を躱しきれなくなって、彼女はついに白状した。
「……いいじゃん、ひと時くらい現実逃避したって……」
 これもひとえにこの世界のコンビニスイーツのせいである。故郷にはないはっきりとした、カジュアルな甘味に感動し、夢中になってしまった結果、今朝の体重計はちょっとヤバめの数値を叩き出してきた。
 この依頼はまさに渡りに船だったわけだが。
「大丈夫、これはふかし芋、ふかし芋なのよー……」
 先程一瞬見てしまったそれを頭から追いやり、ハルは『ふかし芋』の実食に入った。大丈夫、催眠術の効きが悪いのか違和感がすごいが、口に入れてしまえばもうわからないだろう。
 ぐにゅぐにゅと謎の歯応えを感じるが、彼女はそれをなかったことにして飲み下した。
「ね? ほら、大丈夫じゃないの」
 この程度なら後はペロリである。味だって悪くないのだから、と頬を伝う汗を拭いながら彼女は完食への道筋を立てる。
 背筋を走る冷たさも、きっと気のせいだろう。決して悪寒ではない、汗によるもののはず――?
「なんだか、やけに暑いわね……?」
 どうやら本当に汗だったらしい。自らを手で仰ぐ間にも、身体の火照りは増していく。
「まさかこれが、美魔女食堂の――!?」
 『ふかし芋』の効果だろう。何とは言わないが、激しい『燃焼』が起きたのか、彼女の体調が落ち着いた頃には、やけに身体が軽く感じられたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂照・朱海
かわいくなりたい……

女形役者である あけみにとつてそれは永遠の願い
かわいいだけでは務まりませぬがやはり重要な要素

普通に食べても良いのでせうが……量を食べて目立つのがより良いのでせう

では、UCを使って変化致します
ここは、くくり様に倣って

今宵あけみが化けまするは
『二口女』

人に見られていない事を見計らつて大量に食べてしまいませう
追加注文も可能なら可能な限りいたします

ただ 食べ終えたら
どうなつてしまうのでせう……
(※マスターにお任せします
 できるだけ派手な変化がよいです)



●邪神肉巻きおにぎり
 かわいくなりたい。女形役者の穂照・朱海(極彩色の妖魅・f21686)としても、その願いは共感できるものだった。美や色艶も重要とはいえ、これもまた欠かせぬ一要素。周囲を見れば同様に、女優やら何やらを生業としていそうなお客の姿も、ぽつぽつと見受けられる。
 願い縋る気持ちもわからないではないが、その末に至るのが『化け物』では救われない。
「普通に食べても良いのでせうが……」
 店主を確実に引っ張り出し、この場を収めるのが目的であれば、量を食べて目立つのがより良いのでは。そう判断した朱海は、大喰らいに向いた姿へと変化を試みる。
 『艶姿百鬼変化』、此度化けるのは妖怪『二口女』である。
 一見変わったところはほとんどないのだが、食事に興じる周囲の客が、生気のない人形のような給仕達が、それぞれ目を離した頃合いに、朱海は後ろ髪をかき上げる。
 すると、露になった後頭部には、大きな口が生じていた。
 不気味に蠢くUDC料理も何のその、もう一つの口は躊躇なく、大皿の上の料理をあっという間に平らげてしまった。
「もう一皿お願いしても?」
 髪を下ろし、何事もなかったように口元を拭きながら、朱海は給仕を呼び止める。当然、追加注文一皿程度で終わるつもりはないのだが。
 食事というには少し奇怪な、隙を見て後ろの口に料理を流し込むようにしての対応はしばし続いて、朱海のテーブルには何度目かの空き皿が並ぶことになる。
「この辺りが、頃合いでせうか」
 さすがに周囲の注目も集めてしまった。この特殊な食べ方はそろそろ難しいかと見て取り、彼は追加注文の代わりに「店主に会いたい」と給仕に伝えた。
 楽しい食事への礼を、といったところだが、残念ながらそれは穏便には終わらないだろう。
「おや……?」
 と、店の主を待つ間に、彼は自らの体の変化を悟る。妖怪の口であるとはいえ、これだけの量を食べれば当然『効能』は避けられない。
 艶やかさを増す髪、色艶と張りを増す肌、だがそれを超えて、骨格レベルで体が軋んでいるような――。
 『かわいくする』という謎効果が過剰に作用し、巡るのはほんの一瞬。
 その後、朱海の居た席には一匹の黒猫が鎮座していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
いや俺も今まで結構オブリビオン材料にしてる料理は食ってる
食ってるがな…
かわいくなれる料理とかねぇわ
断固拒否だ

って事で
予め情報収集で調べて
食べたふりするテクニックを学んでおくぜ
袖に入れるとか
ネックのある服着てそこに入れるとか
…行けそうな気がする

出来れば食べたふりしやすそうな料理がいいな
うーん…
どれだ…?
メニュー名から
…さっぱり分かんねぇな
まぁ何か適当に良さそうな奴…
良さそうが分かんねぇけど適当に

おー!
これが…噂の!
美味そ…う?

周囲の様子を見切り
出来るだけ素早く食べたふりをするぜ
まずは一口…
旨っ
袖口に落とし
見た目はあれだが結構イケるな
あくまで食べたふり

後は
UCで一瞬で袖とか首元に流し一皿片付けるぜ



●防御姿勢を取った眷属の幼生の直火焼き
 UDCを食材として扱い、不老長寿をはじめとする様々な効能をもたらす――それがUDCダイナーだが、陽向・理玖(夏疾風・f22773)にとってはそう珍しいものではないらしい。様々なオブリビオンを食してきたと言う彼だが。
「かわいくなれる料理とかねぇわ……」
 さすがにその方向は相容れなかったようだ。店のコンセプトを全否定するところから入った彼は、とにかく食べなくても済む方向に練習を積んできていた。
 最終的に完食に見せかければ良いのだから、とにかく皿が空になっていればうるさいことは言われないだろう。
 ゆったりとした袖にネックのある服、着ていくものに工夫を凝らしたら、後はメニューの選択である。
「出来れば食べたふりしやすそうな料理がいいな」
 ここで選択を誤り、大量の汁物とかが出てくると全ての努力が無に帰す。少量の固形物が理想だが……。
 メニューを睨んで、うーんと頭を悩ませる。食材が特殊過ぎて、料理名から何が出てくるかさっぱり読めない。
「まぁ何か適当に良さそうな奴……いや何が良さそうかわかんねぇけど適当に……」
 ある程度調理法で絞ったら、最後は勘である。
「さすが、お客様はお目が高い」
 人形じみた様子の給仕から謎の誉め言葉を受けながら、待つことしばし。
「おー! これが……噂の!」
 何が噂なのかわからないが、とのかく場に溶け込むために感嘆の声を上げる。運ばれてきたのは、エスカルゴのような、巻貝に似た何かだった。
「美味そ……う?」
 これは……どうなんだ?? いまいち判断に困るが、綺麗に焼き色が付いている割に貝の下から謎生物がうにゅうにゅと動いており、気味が悪いのはよくわかる。
「どうぞ、殻ごとお召し上がりください」
「殻ごと……?」
 まあ、それなら逆に好都合か。殻を摘まみ上げた理玖は、素早く周囲に気を配り、他の客や給仕の注意が逸れたのを見計らって、素早くそれを袖口へ落した。
「旨っ」
 その次は首元。UCまで使って高速行動を可能にし、目にも止まらぬ早業で料理を処理していく。
「見た目はあれだが、結構イケるな」
 事前準備が功を奏したか、皿の上は瞬く間に綺麗になった。
 この場を突破する条件をそつなくこなし、理玖は店主が姿を見せるのを待つことにした。

 袖口と首元で、まだ何かが蠢いているような気がするが、まあ些細なことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
食べるだけでみるみる健康でキレイに!とか
胡散臭いことこの上ないよなァ……

えぇーと、かわいく……かわいく?
自分の姿で、っていうと中々イメージが湧かないなァ
けどまあ、いいか
兎に角かわいくなりたい!ってお客もいるだろう
いっそ別人って位に可愛くなれる一皿、お願いします!

……届いたのは、えぇーと
いくつもの目玉が着いた球体に見えるな
うぞうぞしてるし、脈打ってるし
皿を左右上下に動かしてもずっと目玉と視線が合うってどういうこと??
覚悟を決めてひと口
……まったりコクがあって、くどくない甘さ……
味はめっちゃ美味しいなコレ
逆に怖い

みるみるうちに世界が大きくなって…
いや、アタシが小さくなってんのか!?
身の丈ほどのカラトリーを覗き込むと
……ハムスターじゃん!!
確かにかわいいけど!もふもふだけど!
別人てか人間じゃないし!?

しかも顔の辺りに斑模様
そばかすは消えてないのか…
いやちょっと期待した訳じゃないけど、うん

……よし、こーなったらヤケ食いだ
一皿食べ尽くすぞ!!



●多眼型眷属の活け造り
 知る人ぞ知る、怪物を食べさせる特殊な食堂、それがUDCダイナーである。人魚の肉が不老不死をもたらすという逸話にもあるように、UDCを用いた料理は相応の力を持っているのだ。
「とはいえ、食べるだけで健康でキレイに! とか胡散臭いことこの上ないよなァ……」
 透にしてみれば、こんなものは普通は最初に詐欺を疑う、そんな謳い文句としか思えない――だというのに、この客の入りはどうだ。
 若さに美しさ、愛くるしさ、「かわいい」という言葉を構成する要素は、それだけ人々に求められているのだろう。
 それでもなお、自分の姿で考えると中々イメージが湧かないらしい。うんうんと何を頼むか悩んだ末に、彼女は思い切った注文をすることにした。どこを改善したいかなど、具体的なところを思い浮かばない客だって、今までにもきっと居たはずなので。
「いっそ別人ってくらいに可愛くなれる一皿、お願いします!」
 生気のない、人形じみた様子の給仕は大した反応を見せなかったが、シェフはきっと、気合を入れて料理に取り掛かったことだろう。しばしの後に届けられたものは、たいそう豪華な一品だった。
「……なんだこれ……?」
 多分邪神の眷属とかそんな感じだろう。深皿の底に浅く注がれたスープ、薄赤に染まったそれの中心に、拳くらいの大きさの球体が浮かんでいた。表面には紫色の触手らしきものが無数に蠢き、それらの間から無数の目玉がこちらを見ている。
「そんなに……見るなよ……」
 眼球があちこちにあるおかげで、皿の位置や角度を変えようが、球体を転がそうが、どこかしらと目が合う仕様だ。最悪である。というか、この蠢き方からしてまだ割と元気なのでは?
 さすがにナイフやフォークの刃を入れるのも憚られ、透はそれをスプーンで掬って持ち上げた。
 スープから上げられたそれは、若干照れたような素振りを見せるが、多分気のせいだろう、そんなはずがない。自分にそう言い聞かせ、見ない振りをして覚悟を決め、透はそれを一口かじった。
「め、めっちゃ美味しいなコレ……!?」
 まったりとしてコクがあり、滲み出る甘さはいっそ上品なほど。一見おぞましい見た目のそれは、正に珠玉のスイーツと呼ぶにふさわしいものだった。
 ――でもそれ逆に怖くない?
 素直に感動して良いのか反応に困っていた透だが、この料理のもたらすものはその味ばかりではなかった。
 一口ごとに天井が高くなり、テーブルは広くなっていくように感じられる。それが妙な錯覚ではなく、『自分の身体が小さくなっている』せいだと気付いた頃には、もはや変化は止められなくなっていた。
「ええ……?」
 恐る恐る、身の丈ほどになってしまったナイフを覗き込むと、よく磨かれた刃の表面に、自分の姿が映っていた。
「……ハムスターじゃん!!」
 確かにかわいいけど。もふもふしてるしもはや別人だけど。そういうことではなくない?
 生えそろった毛並もやけに艶やかだが、顔の辺りには毛色で斑模様が出来ている。ここまでやったならいっそそばかすのことは忘れさせてほしかったが、ままならないもの――。
 いや、別に期待はしてなかったけど、と頭を振って、ハムスター化した透は残りの料理を完食するべく皿の上に飛び乗った。
 こうなったら取り繕う理由もあるまい。ヤケ食いである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
メアリは不老長寿になんて興味ないけれど
より|美味しそうに《かわいく》見せられるのなら食べてみてもいいかしら
そんな事を考えながらお店へとやってくる
高級だけれど下手に【目立たない】服を組織に選んでもらって
だって今回は食べられる側ではないものね?

そうして席に着いたはいいけれど
|文字《メニュー》なんて読めはしないから
お勧めのお肉料理を下さる? とおまかせを
けれど運ばれてきた料理は……とても美味しそうになんて見えなくて!?
表向きは落ち着いた【演技】で受け取るけれど!

すん、と獣の鼻を利かせてみても
まるで食欲なんて湧きゃしない!
それでも意を決して口に運ぼうと……
した時、もぞりと服の内側で蠢く気配
潜り込んでいた|合成肉生物《チプト》が顔を覗かせる
…………食べたい?(小声)

店員の目を盗みこっそりと
チプトに料理を食べさせる
UDC化は……もう|猟兵《メアリ》の|装備《一部》なんだし大丈夫じゃないかしら!

そんな風に考えていたメアリは気付きもしなかったの
まさかチプトが……『かわいい小動物』と化していただなんて!



●邪神のブラッドソーセージ
 化け物、UDCを食材とする料理には、美食のみならず不老長寿や病の治癒、そういった埒外の効能が期待されている。それゆえに、限られた力ある者達はこぞってそれを求めるのだ。
 不老長寿になど興味はない、そんなメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)にとっても、この『美魔女食堂』の謳い文句には少し心惹かれる部分もあるようで。
「より|美味しそうに《かわいく》見せられるのなら、食べてみてもいいかしら」
 それならば実益にも繋がるだろう。依頼主のUDC組織に頼んで場に合わせた衣装を選んでもらい、彼女はやけに高級感溢れる料理店へと踏み込んでいった。
 メアリーにしては珍しく、今回は食べられる側ではなく、食べる側。|魅力《後ろ姿》を隠した窮屈な格好で席に着いた彼女は、早速「お勧めのお肉料理を下さる?」と注文を投げた。
 待つことしばし、人形じみた様相の給仕が彼女の前に運んできたのは、皿の上に綺麗に盛られた腸詰の類の料理だった。
 血と肉、そして正体不明の部位やら香草やらが混じっているのか、ほとんど黒に近いものの、複雑な色合いを有している。
「とても……美味しそうにはみえないのだけど……?」
 平然とした様子で受け入れはしたけれど、給仕が下がったところで、すんと鼻を利かせてみる。『味は絶品』という前評判に相応しいのか、匂いはそう悪くない。しかしながら、断面の様子からしても食欲は全く湧いてこない。。
 どうしたものかと頭を悩ませてはみるが、何にせよ食べてみないと話も仕事も始まらない。意を決してフォークで突き刺し、奇妙な弾力に顔を顰めたそこで。
「……ん?」
 もぞ、と服の中で蠢く気配に手を止める。胸元の隙間へ視線を落とすと、そこに潜りこんでいた|合成肉生物《チプト》が、欠けた前歯を覗かせていた。
 きょろきょろと周囲を探って、人目がないのを確認してから。
「…………食べたい?」
 小声でそう尋ねてみる。まあ、確認するまでも無いだろう、この子は大体何でも食べたがるのだから。
 差し出されたフォークの先ごとそれを齧り取ったチプトは、どうやら気に入ったらしく皿の上へと這い出していった。
 旺盛な食欲で血の腸詰を平らげる様子をしばし眺める。この料理を食した者はUDC化してしまう……という話もあったが、この子は既に|猟兵《メアリ》の|装備《一部》である以上致命的なことにはならないだろう。
 たぶん。きっと。
 周囲に気付かれないように皿を隠し、他の客の様子を窺う。幸いそれぞれ自分の料理に夢中なのか、見つかることはなかったが……。
「……チプト?」
 ふと視線を戻すと、テーブルの上で合成肉生物がぐったりと突っ伏している。
 どうかしたのかと、指先で突いてみると、それはみるみる内に小さなウサギのような姿に変じてしまった。
「随分……かわいくなったのね……?」
 大丈夫? これちゃんと元に戻る? 混乱している内に、他の猟兵達に呼ばれたのか、店主が奥から姿を現した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『呪炎のエーリカ』

POW   :    全てを焼き尽くす炎の魔女の力、思い知るといいわ!
【紅玉の輝石から巻き起こした呪いの炎】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【性質や戦法】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    スフェーンの魔石よ、呪いの楔を齎しなさい!
【呪われたスフェーンの宝石飾り】から【目映い光を放つ炎】を放ち、【楔の魔力】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    キャッツアイの石に秘められた力、見せてあげる!
【呪いの猫睛石に宿る未来視の力を使って】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ディイ・ディーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●美の在り様
 料理を見事平らげた客に呼ばれ、この店の主とシェフを兼ねた、『魔女』が猟兵達の前に現れる。
「お楽しみいただけましたか、お客様?」
 賞賛を受けることを疑っていない自慢気な表情。気取った笑みを浮かべながら、彼女は言う。
「願う気持ちは、あたしにもわかるのよ。だから、きっと満足いくものを提供できたと思っているわ」
 若く瑞々しい肌、囀る小鳥のような軽やかな歌声、身体の内より生ずる溌溂とした活力。望んだものを手に入れた常連客達は、口々に魔女を褒めそやす。渇望と歓喜、感謝と崇拝、それはある種の儀式に似ていた。
 それはついにここで実を結び、人は邪神へ、UDCへと変わり行く。その変調に、常連客の内何名かも戸惑いの声を上げていたが。
「恐れることはないの。受け入れなさい。あなたたちにも、永遠のかわいさを、不滅の美を分けてあげる」
 真紅の瞳を輝かせた魔女は、犬耳が生えたりハムスター化したりしている猟兵達、そして愛くるしい犬やヒヨコへと変わり果てていく人々を一瞥し――。

「あら? おかしいわね……?」
 予想外だったらしいその光景に、首を傾げた。
イリスフィーナ・シェフィールド
おかしいのは貴方の頭の方ですわっ。

お耳はともかく急に尻尾なんか生やされて困りますのっ。
(本人の意思とは関係なくぶわさぶわさと動きまくっている)
怒りのクレーム(鉄拳)をお受けあそばせっ。

連続攻撃で自分を強化して攻撃するというなら一気にけりを付けるだけですわ。
接近してスパイラル・インパクトで左右左右と高速ラッシュをお見舞いたします。
泣いても許しませんわ、ボッコボコにして差し上げます。



●ノークレームノーリターンでお願いします
 いかにも裏稼業の幹部みたいな男が子犬に変わり、老齢の淑女が小鳥に化ける。UDC料理によって阿鼻叫喚の光景を繰り広げる料理店の真ん中で、魔女は「おかしいわね」と呟いていた。本当に美しく、かわいくなるか、おどろおどろしい邪神となるか、彼女がどちらの想定で居たのかは定かでないが。
「おかしいのは貴方の頭の方ですわっ」
「えっ」
 イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)の声に、エーリカは驚いたように顔を上げた。
「突然失礼じゃないの……犬耳の癖に……」
「誰のせいだと思ってるんですか」
 先程の料理で生えた犬耳をぴこぴこさせながら彼女は応じる。本人の意思とは関係ないのか、ついでに生えた尻尾の方も、愉快気に揺れまくっているようだが。
「お耳はともかく、急に尻尾なんか生やされて困りますのっ」
 確かに、そんなことは望んでいなかった。やたらと毛並みが良いふさふさのそれを抑えるようにしながら、彼女は拳を握って敵の間合いへと踏み込んだ。固めた拳に光が宿る、一気に決めようとするイリスフィーナに応じて、エーリカもまた宝珠を輝かせ、赤い魔炎を解き放つ。
「それはそれで! かわいいんじゃない!?」
「開き直らないでくださいませっ」
 迫りくる熱を、螺旋を描く光の軌跡で切り裂いて、赤の帳を突破する。突き抜けたそこは敵の眼前、相手が構える暇も与えず、イリスフィーナは必殺の拳を放った。
「螺旋貫通っ、スパイラル・インパクトですわっ」
「あっぶない! クレームは受け付けてな――」
「問答無用! 怒りの|クレーム《鉄拳》をお受けあそばせっ」
 咄嗟に躱したエーリカを追い、さらなる一撃、加えてもう一つ、素早いラッシュを敵に撃ち込む。衝撃に負け、悲鳴を上げながら後退した魔女を、イリスフィーナはまだ殴り足りないといった様子で追いかける。
「泣いても許しませんわ、ボッコボコにして差し上げます」
 その尻尾は、なおも楽しそうにぶわさぶわさと揺れていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミーガン・クイン
 あなたがこのお店の魔女ね?
こんなにかわいくなっちゃって、私感激しちゃった♡
お礼に、私もあなたをかわいくしてあげるわねぇ♪

 魔女料理に感極まる振りをしてエーリカに近づいて、
手を取るかあわよくばハグをしちゃうの。
素肌にさえ触れてしまえばこっちのものね、サイズドレインで小さくしてあげる。
ちいさくかわいくなりなさい♪



●かわいくなあれ返し
「あなたがこのお店の魔女ね?」
 現れたエーリカへと、ミーガンはそう声を掛ける。形は違えど同じ『魔女』として、言っておくべきことがあるだろう。
「こんなにかわいくなっちゃって、私感激しちゃった♡」
 艶やかになった頬を撫で、笑顔でそう告げる。エーリカの狙いはそれだけではなかったのだろうが、それでも構わないとばかりに。
 そんな態度に気を良くしたのか、エーリカは自慢気に胸を張ってみせた。
「あたしがわざわざ腕を振るっているのだもの、当然よ」
 多数の常連客を抱えたエーリカにとって、こういったやりとりは日常茶飯事なのだろう、だからこそ自然な流れで、ミーガンはその手を取ることに成功した。
「お礼に、私もあなたをかわいくしてあげるわねぇ♪」
「は?」
 素肌に触れればこちらのもの、『サイズドレイン』の力を発揮したミーガンによって、エーリカの体がみるみる内に縮んでいく。
「さあ、ちいさくかわいくなりなさい♪」
 子供サイズを通り越し、小動物くらいの体高になった相手に対し、規格外の魔女はそう微笑む。
「チッ、油断したわ……!」
 それに対して舌打ちで返し、彼女の手を振り払ったエーリカは、宝石を手にしてその力を解き放つ。呪われし魔石のもたらす『未来視』、次なる動きを予知したエーリカは、ミーガンの掌を躱し、逃れて見せた。
「この程度で捕まると思わないでね」
 素早く距離を取った彼女は、術を破って元の大きさを取り戻す。続けて「残念でした」と笑って見せるが、ミーガンは余裕の表情を崩さない。
「恐れることはないの。受け入れなさい……だったかしら?」
「言ってくれるわね……!」
 先程のエーリカの言葉をなぞってやると、彼女はすぐに歯噛みした様子を見せた。

成功 🔵​🔵​🔴​

烏護・ハル
すっごいわね。里にいた頃より軽いんじゃないかな……。

今後は節制に努めなきゃ。
……ん?
何よ、式神さん。
〝ホントにできるの?〟って?
できますー。
……と思います。

しかし、魔女を名乗るだけあって厄介な立ち回り方……。

……殴ろう。
そうだ、お師さんも言ってた。
『面倒なら殴れ』って。

呪詛を利き手に収束。
充填が済むまではフェイントを交えて見切り、結界で受け流す。
式神さん、防御の方はお願いね。

これだけ溜まればブチ込めるでしょ。
陰陽師だけど。魔法も齧ったけど。
面倒くさくなる時もあるのよ。
そう……どうにでもなれって!

反撃には更にカウンターで2回目の拳。
呪いが何よ。こっちは陰陽師よ。
耐えて呪い返せば勝ちよ!

ご馳走様!



●ごちそうさまの拳
 魔女の様子からすると、想定外の『変化』が多数起こっているようだが、順当に美容効果だけを享受できた者も居る。もちろん、ハルもその一人だ。
「すっごいわね。里にいた頃より軽いんじゃないかな……」
 どことは言わないが身軽になった自分の身体を確認しつつ、感心したようにそう呟く。とはいえこれが一時的なものになるかどうかは本人次第、油断すればすぐに元通りである。
 今後は節制に努めなくては……などとしみじみ思っていると、連れていた式神が疑わし気な視線を向けてくる。
「何よ、式神さん?」
 その意味するところは明白である。つまり、「節制なんてホントにできるの?」という問いかけだ。
「できますー」
 そういうことはちゃんと目を見て言ってほしい。そんな式神さんの訴えを退けながら、ハルは敵の方へと向き直った。話題を逸らすのみならず、実際問題この魔女の戦法はそれなりに厄介だ。
 紅玉の輝石から呪いの炎、赤く燃えるそれは相手を蝕むと同時に、徐々に激しさを増していく。いつもの手である呪殺弾での遠距離戦では、時間がかかりすぎて不利になり得る。
 さて、ならばどうするか。この現状を打開する一手を探し、思考を巡らせた彼女は、一つの結論に行き着いた。
「……殴ろう」
 もう少し考えた方が良いのでは? そんな視線を式神さんの方から感じるが……かつて師も言っていた、『面倒なら殴れ』と。
 決意と呪詛を固めた拳に収束させながら、ハルは炎を操る敵の元へと飛び込んだ。
「あなたは満足してくれたと思ってたんだけど?」
「ええ、おかげさまで体が軽いわ!」
 向かい来る呪炎を結界術で受け流し、輝くそれが敵の視界を埋める間に影へとステップ、フットワークで敵の狙いを撹乱する。隙を見て放った一撃、右のフックが、咄嗟に逸らされた魔女の鼻先を掠めた。
「えっちょっと待ってあなた術者じゃ……」
 戸惑った声が聞こえるが、ハルはなおも炎を掻い潜るようにして敵に迫る。
 陰陽師だけど、魔法も齧ったけど、まあこういう日もある。そう、「どうにでもなれ」みたいな気分になる日が。
「何で今日の客はすぐに殴り掛かってくるのよ、おかしいでしょ!」
「陰陽師だって人だもの! 面倒くさくなる時もあるのよ!」
「せめて顔は止めてもらえるかしら!?」
 命中率と火勢を上げた呪炎が、ハルを捉えて全身を蝕む。しかしその時には、既にカウンターの拳が魔女の顔面を捉えていた。
「ご馳走様!」

成功 🔵​🔵​🔴​

穂照・朱海
ねこに変化するとは…凄い
(『女形』の演技を止めている)
…あらたな役割を得た以上演じよう
それが役者としての矜持だ
(以後、台詞はすべて『にゃーん』になる)

まずは銅銭の妖達を放ってみる

「にゃーん(当たらない!UCか…ならば!)

にゃん、にゃんにゃん、にゃん
(梨花一枝。雨を帯びたるよそほひの。雨を帯びたるよそほひの。太液乃。芙蓉の紅末央の柳乃緑もこれにはいかで勝るべき。げにや六宮の粉黛の顔色の無きも。ことわりや顔色のなきもことわりや)」

猫の艶かしい動きで舞を踊る

込められた思いは
『足に根が生えたる如くそこから動くな』

「にゃーん(これで回避できまい!)」

銅銭と輪入道を放ち攻撃だ!



●猫の舞
 UDC料理を食した効果は、確かに魔女の言うように劇的なもの。完全に猫と化してしまった朱海は、当初こそ戸惑った様子を見せていたものの、状況を把握すると同時に新たな『役』を受け入れた。
「にゃーん」
「ふふふ、どうやら完全に猫になってしまったようね」
 形は変われど中身は同じ人間……のはずなのだが、エーリカがそう思ってしまうほど、朱海は完璧に猫を演じていた。魔女にとってもそれは予想外の変化だったが、これはこれで、と頷いている。
「予定とは違ったけれど、かわいくなれたのは事実でしょう。あなたもきっと満足よね?」
 まあ、聞いたところで何言ってるかわからないんだけど。ふっと鼻で笑う彼女だが。
「にゃーん(それはどうかな?)」
「え!? なんか知らないけどわかる!?」
 卓越した演技の成せる業か、鳴き声の意味するところが伝わってくる。ある意味不意を突かれて慌てる魔女へ、朱海は素早く銅銭の妖達を解き放ち、差し向けた。
「――あっぶないわね!?」
 しかしながら、虚を突いたはずのその攻撃を、魔女は紙一重で躱して見せた。
 見切ったなどというレベルではない、まるでそこに攻撃が来るとわかっていたかのような動き。魔女の瞳に宿るその力を、朱海は見逃さなかった。
「にゃーん(当たらない! UCか……!)」
 呪いの猫睛石を駆使した未来視。これでは何を放とうが避けられてしまうだろう。
 だが、やりようはある。
「にゃん、にゃんにゃん、にゃん」
「え、何? 急にどうしたの?」
 梨花一枝。雨を帯びたるよそほひの。雨を帯びたるよそほひの。太液乃。芙蓉の紅末央の柳乃緑もこれにはいかで勝るべき。げにや六宮の粉黛の顔色の無きも。ことわりや顔色のなきもことわりや。
 艶めかしく踊る猫の舞。それは朱海の放つユーベルコードである。
 たとえ彼女が未来を見ていたとしても、『見る』ことで効果を発揮する攻撃ならば避けようがない。そして、その舞に込められた思いは。
「足が動かない……!?」
「にゃーん(これで回避できまい!)」
 未来が見えていても、足が動かなければ避けようもない。回避を封じられた魔女を、放たれた銅銭妖怪と輪入道が轢き倒していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
流石にハムスター化を受け入れる訳にはいかないよ
アイツらの元に帰れないし
……って、アンタも意外そうじゃん!ハムスター!
アンタの魔法も絶対じゃない証左だろ


『鵲』を喚ぼう
これならアタシがどうなってようと関係ないしね
炎を出す宝石を砕き
魔女を打ち抜いてくれ
こっちに襲いくる炎は見切り、野生の勘も活かしながら避ける
まあ、折角小さなハムスターになっているんだし
周りのテーブルだの椅子だのも活かして目立たない様に隠れておくよ
ハムスターも悪い事だけじゃないな
あ、燃えやすい所には行かないようにしておこう
イザとなったら鵲に咥えてもらって避難する
……でも、なんかこれ
捕食されたネズミっぽいな……



●ハム
「受け入れなさいって言われてもな……」
 現われた魔女の言動に、透はそう難色を示す。さすがにハムスター化するとかいうトンチキな状況を受け入れるわけにはいかないだろう。帰る場所だってあるのだし。
「でもその姿を見たら、皆も喜んでくれるんじゃないかしら?」
「いや、それは――」
 ないと思う。ないかなあ。若干怪しいと思いながらもそう返して、透は魔女の動きに即応できるよう身構えた。
「せっかく? 狙い通りかわいくしてあげたのに? 残念ね?」
「さっきから全部疑問形じゃん……」
 どうせ予想外だったんでしょ? アンタの魔法も絶対じゃないってコトだよね? 続く言葉を感じ取ったか、魔女は速やかに宝石を取り出す。
 輝く赤い魔石から、呪いの炎が燃え上がる。敵の攻撃の起点がそこにあると見て取り、透は素早く『鵲』を召喚した。
 不可視の鳥が風を切って飛び、魔女の手にした輝石に一撃を加える。取り落とされた石から生じる炎は制御を失い、食堂の空間を赤く照らし出した。
「この……ッ!」
 続く鳥の一撃を捌きながら、魔女は忌々し気にそう吐き捨てて、宝石を拾い上げる。しかしその頃には、生意気なハムスターこと透はテーブルの上から姿を消していた。
「あの子、どこいったの……!?」
 出鱈目に放たれる炎では、もちろん透を焼くことはできない。当の透はその小さくなった体を活かし、テーブルや椅子を上手く遮蔽物として、陰を動き回っていた。
「ハムスターも悪い事だけじゃないな」
 隠れるのは容易で、動きも素早い。あと頬袋にヒマワリの種を詰め込んだりもできるだろう、試す気はないけれど。
「隠れても無駄よ、そこでしょ!?」
 なりふり構わずテーブルの下を覗き込んだ魔女だが、透は既にそこにはいない。呼び寄せた鵲に捕まって、逆に相手の死角となる上空へと舞い上がったのだ。
 こちらを捉え損ねた魔女を見下ろし、透は鵲に命じて急降下からの一撃を入れさせる。
「やったわね!」
 全方位に撒き散らされる赤、呪炎の熱から、透は鵲と共に逃れる。
「危なかったな……」
 咄嗟に自分を咥えさせたのだが、その姿はまるで、『鳥に食べられそうなネズミ』だったという。

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム
まさか、お客さんをウサギにしちゃうお店だったなんて!
これじゃまるで|不思議の国《アリスラビリンス》ね
この後はパイにでもされてしまうのかしら?
……え、違うの? なぁんだ残念

まあいいわ
ほら、チプト。メインディッシュが来たみたい
【ごはんの時間】にしましょうか

応えるように歯を鳴らし
自分の身体よりも大きく口を開けるチプト
(ウサギの姿のまま!)
……これってある意味、いつもより恐ろしい姿じゃないかしら?
なんて、思わず吹き出し笑ってしまう

さあ慣れない服を脱ぎ捨ていつもの姿
(ああ、窮屈だった!)
メアリが敵の目を惹く【誘惑】ように立ち回る
【野生の勘】と【軽業】で敵の炎から身を躱し
肉切り包丁で斬りつける

そのまま殺せてしまったらちょっと拍子抜け?
だけれど、殺せていようといまいとも
敵の隙を突いて陰からチプトが跳び付いて
牙を突き立て【捕食】する!
……あなたを食べたら、チプトはもっとかわいくなるのかしら?



●牙剥くウサギ
「まさか、お客さんをウサギにしちゃうお店だったなんて!」
 皿の上に乗った小さなウサギ、変わり果てたチプトの姿を見て、メアリーはそう歓声を上げた。
 それ自体は劇的な変化と言えるだろうが、しかし|不思議の国《アリスラビリンス》の住人からすれば、この程度はまあまあ起こり得る事態である。
「それで、この後はパイにでもされてしまうのかしら?」
「しないわよ……?」
「え……?」
 なんで? 残念そうに言うメアリーに、魔女は引き気味にそう返す。どうやら今回の敵にその手の趣味はないらしいが。
 まあいいわと気を取り直して、彼女は皿の上のウサギをつついて敵の方を向けさせた。
「ほら、チプト。メインディッシュが来たみたい」
 まだまだ食べ足りないでしょう、と言う彼女の声に、ウサギと化したチプトは歯を鳴らして応じる。みしみしと体が蠢き、ウサギの体の中ほどまでが裂けるように、巨大な口が開かれた。
「ええ……」
「せっかくかわいくなったけれど、逆効果だったかしら?」
 ホラー演出じみた風体になってしまったが、「ま、仕方ないわよね」と笑いながら、メアリーは着飾っていた服を脱ぎ捨てる。
 窮屈なそれから解放されて、いつもの身軽な格好になった彼女は、そのまま軽やかに地を蹴った。行儀悪くテーブルの上で踏み切り、魔女の放った赤い炎を跳び越える。煌びやかなシャンデリアの灯が、白い肌を照らす。魔女が見上げるなか、空中で一回転した頃には、その手に肉切り包丁が握られていた。
「あらあら、物騒ねえ」
 降ってきたそれを杖で受け止め、魔女が笑う。膂力においてはメアリーの方に分があるようだが、魔女の杖に飾られた無数の宝石は、その一つ一つがユーベルコードの起点となら魔石である。メアリーの眼前でそれらが輝きを放ち始め、反撃の炎が彼女を包み込もうとしたそこで。
「GROOOOOOOOWL!!」
「ちょっ、こわっ」
 大口を開け、牙を剥き出しにしたウサギが、側面から魔女へと襲い掛かった。
 メアリーの大振りは最初から目を惹くための囮。本当は自ら『捕食者』として刃を突きたてたかったところだが。
「まあ、今回はいいわ」
 『ごはんの時間』を迎えたチプトは、鋭い牙で魔女を切り裂き、その宝石飾りのいくらかを食い千切っていく。
「あたしの宝石を……!」
 ばりばりと音を立ててそれを平らげたウサギは、何やら宝石のように輝き始める。スフェーンとキャッツアイでできた瞳のようなものが体表に浮かび上がる様は、そこそこ不気味なものだったが。
「まあ、おしゃれになったわね!」
 感心したようにそう言ってから、メアリーは小首を傾げて見せる。
 元々この合成肉生物は、食べたものを取り込むような性質を持っている。だがそれはそれとして、調理したUDC……邪神を食べて、かわいくなれると言うのなら。
「……あなたを食べたら、チプトはもっとかわいくなるのかしら?」
「は!? 人を食べ物扱いするとか、どうかしてるんじゃないの!?」
 食事によって大きさを増したチプトが「おかわり」とばかりに飛び掛かり、怒声を上げた魔女が炎で応戦する。
「よく見たら|この店の食材《UDC》みたいなものじゃないの、だったらこいつもあたしが料理してあげるわ!」
「本当? それは楽しみね」
 炎と牙が行き交う調理場に、メアリーもまた愉快気な声を上げて飛び込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
あー…
何か聞き覚えあんなーって思ったんだよな
やっぱあんただったのか
てか何か色々失敗してね?
やっぱそろそろ年貢の納め時って奴じゃねぇのか

まぁ俺は単なる露払いだけどな

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らしつつ残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴ると見せかけてフェイント
しゃがみ足払いでなぎ払いそのまま吹き飛ばし
後追い
追い打ちで攻撃

あんたは覚えちゃいないだろうが
もうこれで三戦目
やり口は覚えてんだよ
宝石飾りから光が見えるや見切りUC
さらに限界突破し加速し懐に飛び込み拳の乱れ撃ち
当たらなきゃ動きも止めらんねぇだろ
力の素の宝石狙って攻撃し部位破壊
少しでも力を削いで繋いでやる!



●露払い
 店の奥から現れた『魔女』、この美魔女食堂の店主兼シェフの顔を見て、理玖は合点がいったように頷いた。
「あー……やっぱあんただったのか」
 声の時点で聞き覚えがあると思っていたのだと彼は言う。
「てか何か色々失敗してね?」
 やっぱそろそろ年貢の納め時って奴じゃねぇのか。そんな風に呟きながら、理玖は指先で弾いた龍珠を掴み取り、ドライバーにセットした。
「変身ッ!」
 眩い光と共に戦闘態勢を取った彼は、躊躇なく地を蹴り、敵へと迫る。残像を纏う程の速度で接敵し、仕掛けるのは至近距離での格闘戦。
 鋭い拳を目くらましに、一気に体勢を下げ、足払いで敵の体勢を崩してやる。
「鬱陶しい――!」
 ここまで何回も殴られているエーリカは、若干苛立たし気な様子でそう返し、魔力を操り反撃に出た。
 彼女の全身を飾るいくつものアクセサリー、その中の一つ――スフェーンの首飾りが輝くその瞬間を見逃さず、理玖はリミッターを解除。楔の魔力による炎よりも速く、閃光となって敵へと迫る。
「あんたのやり口はもうわかってんだよ」
 オブリビオンと化した彼女とは幾度も矛を交えている。ゆえにこちらも当然対策済みだ。
 捉えられなければ、こちらの動きを止めることもできないだろう。超高速で懐に飛び込み、連打で敵を圧倒する。
 このまま完封できれば話は早いのだが、この至近距離ではすぐに捕まってしまうだろう。しかしそんなことは、彼自身にもわかっていた。ゆえに狙うのは魔女の攻撃の起点となる宝石飾り。帽子や腕輪、散りばめられたそれらを砕き――。
「めんどくさいことしてくれるじゃないの……!」
 眼にも止まらぬ高速連打、それがあるところで縫い付けられたように止まった。
「結構貴重だし、高いのよこれ!」
 魔女の怒声と共に、溢れ出る炎が眼前で爆ぜて、理玖は無理矢理後退させられてしまう。結果として仕留め損ねはしたが……。
「力は削げた……か?」
 露払いとしての成果は上げられただろうか。
 追撃は『繋いだ先』へと委ねて、理玖は拳に付いた宝石の欠片を払った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディイ・ディー
🎲🌸

お前が彼女の体を乗っ取って
俺が斬り伏せてから何年経ったか

警告されていた呪に飲まれる未来も乗り越えたぜ
今のお前に言っても詮無いか
しかし、俺にとっては意味がある

――賽の壱

妖刀に焔を巡らせて斬り込む
未来は変えられる
エーリカが教えてくれたのはそういうことだ
この意志と炎で以て、呪の力すら超えてみせる

赤と蒼、どちらの呪炎が強いか比べるまでもねえ
今の俺には志桜がいる
護りたいと強く願う人が隣にいてくれる
人の心がないとエーリカに叱られた過去とは違う

知ってるぜ
邪神、お前は人間の形に近付きたかった
彼女は宝石のような永遠の美しさを求めた
けれど何方も歪んでしまったな

俺は確かに呪いの化身だ
けれどもこの痛みの代償の代わりに幸運を振り撒ける
ただし、邪神……いや、敢えてトイフェルと呼ぼうか
お前には呼び名と一緒にとびきりの不運を贈ってやる

俺を人の道に導いてくれた彼女の為に
この炎で終わらせてやる

……エーリカ・トイフェル
姉のようであり、師匠であり、生き方を示してくれた大切な――
嘗て俺が憧れた人

今度こそ、本当にさよならだ


荻原・志桜
🎲🌸

わたしも魔女になれたから
希われる想いに応えたい、力になりたいって思うよ
でもこれは間違ってる
アナタが齎す負の連鎖をこれ以上続けさせるわけにはいかない

春燈の刻を告げよ
彼のひとの導きの灯とならん
紡げば生み出される術式を周囲に展開
魔力で創造された燃ゆる桜花弁で邪神の動きを牽制しつつ彼のサポートに回る

ディイくん…
支えると決めた
彼が望む未来をあげたくて
苦難があっても一緒に乗り越えていくとわたしが願った
ここで立ち止まってほしくない
これからもずっと続く未来を歩んでいきたい

本当はね
本来のアナタとも話がしてみたかったんだ
エーリカさんはわたしが夢見た魔女のひとりで
ディイくんの大切なひとだから
魔法のことや彼のこといろいろ聞いてみたかったの

でももう叶わない願いだと解ってる
だからわたしは忘れない
これまでディイくんから聞いてきたエーリカさんのこと
邪神となって前に現れたわたしが知るアナタのことを
この心に刻ませて

餞の桜をおくろう
わたしの愛おしい花
ディイくんが好んでくれた花
感謝と別れを込めて大切な薄紅をアナタに



●DiceRoll
 どうして、こんなことになってしまったのか。
 他のお客の相手をして、ぜえはあと肩で息をしている魔女の様子に、ディイは小さく嘆息する。彼としても、彼女のこんな姿は見たくなかっただろう――それも、恐らくは二重の意味で。
 赤の魔石に宿る邪神が、彼女の体を乗っ取って。それと相対し、斬り伏せて。あれから何年経っただろうか。
 命を懸けた戦いに、大切な人達との出会い、彼女の居ない歴史を、彼はずっと歩んできたのだ。
「警告されていた、呪に飲まれる未来も乗り越えたぜ」
「……なに?」
 まあ、言っても詮無いことだ。少なくとも今の『魔女』には伝わるまい。そう断じたディイの様子が気に食わなかったのか、エーリカは訝し気に眉を顰めた。
「あたしのお店に花でも飾りに来てくれたのかと思ったけど、違うみたいね?」
 皮肉気なその言葉に、彼に代わって志桜が応じる。
 魔女として、希われる想いに応えたい、力になりたいという気持ちはわかる、けれど「こんなことは間違ってる」と。
「アナタが齎す負の連鎖を、これ以上続けさせるわけにはいかない」
「ついさっきまで石に齧りついてたのに、言うじゃないの」
「あれはアナタをこの場に引っ張り出すためで……!」
 見てたからね、と混ぜっ返してくる相手に、志桜が言い返す。どうやらこの敵は口が減らないタイプらしい。ふん、と小さく鼻を鳴らしたエーリカは、そのまま揶揄するようにディイを見る。
「あなたも彼女がかわいくなって嬉しいでしょう? お礼を言ってくれても良いのよ?」
 当てつけじみたその台詞は、拗ねているような、嫉妬しているような、そんな色合いを含んで見えたが。
「人間の振りはやめろ」
 それの本質が邪神であることは、誰よりもディイが理解していた。
「どうせ、何もわかっちゃいないんだろう?」
「……なによ、自分はわかってるって言いぐさじゃないの」
 彼女の瞳が赤く燃える。怒りではなく笑みを湛えた表情で、邪神は呪いの炎をその手に宿した。
「滑稽よね。あなたも所詮は呪いの塊でしょう?」
 紅色の呪炎。激しく燃え上がったそれが、両者の間を引き裂くのに対して、ディイは引き抜いた妖刀の刃を向ける。
「――賽の壱」
 白刃が蒼の焔に染まり、襲い来る紅を迎え撃った。呪炎と呪炎、対照的な二つの色が、戦場と化した料理店を照らし出す。
 力任せに放たれた紅色の帳に対し、迸る蒼は刃で以てそれを斬り裂く。だがそれが邪神を呑み込む手前で、翳された手のひらがそれを阻んだ。
 輝石の光と共に火勢を増した紅は、刃ごと包み込むように大きく広がる。襲い来る炎の両腕、抱擁を迫るようなそれから、ディイは一歩引いてやり過ごす。炎はさらにこちらを追ってくるが、舞い踊る桜の花弁がその道を塞ぐ。
「春燈の刻を告げよ、彼のひとの導きの灯とならん――」
 志桜の周囲に展開された術式が光を放ち、燃ゆる桜を織り成していく。自在に舞い、四方から迫るそれらに対して、邪神は携えたキャッツアイの魔力を解放し、その動きを見切ってみせた。容易い、とでも言った調子で花の嵐を躱しながら、魔女は炎の指先を伸ばす。
「健気ねえ。でも、パートナーはよく選んだ方がいいわよ」
 どうせそれは、破滅しか齎さないのだから。しかし、その程度の言葉で彼女の決意が揺らぐことはない。
 支えると決めた。彼の望む未来のために、苦難があっても一緒に乗り越えていくと願ったのだから。
「ディイくん……!」
「ああ、頼んだ」
 背を押すようなそれに応え、ディイが再度深く踏み込む。舞い踊る花弁は一息に密度を増し、桜色の帳が魔女の未来視を覆い隠す。志桜の作ってくれた道を、立ち止まることなく突き進み、一閃。邪神に一太刀手傷を負わせた。
「この……!」
 歯噛みするような気配と共に、邪神は呪炎を叩きつけるように振るう。燃え盛る紅に、ディイは咄嗟に自らの蒼炎で応じた。
 炎と炎が拮抗する。火力の程は互角だろうか、しかしそうであるならば負けるはずがないと、彼は確信していた。
 護りたいと強く思う人が、隣に立ち、共に戦ってくれている。ああ、そう。「人の心がない」と叱られたあの頃とは違うのだから。
「なに!? そういうのを見せつけに来たってわけ!?」
 いや違うけど、と苦笑交じりに応じる。炎をぶつけ合うこの状況でも、ディイにはどこか余裕があった。
「知ってるぜ。邪神、お前は人間の形に近付きたかったんだろ?」
 敵の態度もそれが起因しているのだと、看破する。
「そして、彼女は宝石のような永遠の美しさを求めた――けれど、何方も歪んでしまったな」
 その在り方を言い当てるような言葉と共に、両者の間で炎が爆ぜる。膨張する空気の波が吹き荒れ、火の粉と焔の残滓が踊り狂う。その中にあって尚、敵はディイを強く睨みつけていた。
「呪いの産物風情が、人間気取りで――!」
 怒りによるものか、噴き出した炎はすぐさまに大きく膨れ上がる。爛々と、赤く輝く瞳を見返し、『邪神』に対してディイは応じた。
「俺は確かに呪いの化身だ」
 けれどこの痛みの代償の代わりに幸運を振り撒くことができる……と、そう否定することもできるが、今は。
「トイフェル」
 ただその名を呼ぶ。
「お前にはこの呼び名と一緒に、とびきりの不運を贈ってやる」
 奴の言う呪いとしての力をぶつける。それが呪いを人の道へと導いてくれた、彼女に報いることになると信じて。
 仇討ちと、弔いと。そして今の自分を証明するために。
 妖刀を振り切る。邪神の放つ紅の呪炎が両断されて、その向こうの彼女の姿が露になる。
 邪神に呑まれ、オブリビオンへと堕し、それでも彼女の姿は、昔と変わっていなかった。

 エーリカ・トイフェル。姉のようであり、師匠であり、生き方を示してくれた大切な――嘗て憧れた人。

「今度こそ、本当にさよならだ」
 瞬間、空白を鐐の炎が埋め尽くし、見開かれた彼女の瞳が、蒼の焔の色に染まる。僅かに開かれた唇から、「あーあ」と冗談めかした声が聞こえた気がした。
「かわいくないわね、ほんとに」
 蒼炎がそれを薙ぎ払い、砕けた紅玉が地に落ちる。

●一瞬の静寂
 鍔鳴りの音が小さく響くと、ひと時だけの静寂が訪れる。
「本当はね、本来のアナタとも話がしてみたかったんだ」
 わずかに残った彼女の名残、宝石の欠片、焼け焦げた焔の痕、それからディイの背中。
 それらを視線でなぞるようにしながら、志桜はそっと呟いた。エーリカという名の彼女は、いつか少女の夢見た魔女の一人で、彼の大切なひとで――色々なことを聞いてみたかった、けれど。
 それはもう叶わない。いや、最初から叶わなかったのだろう。
 だからせめて、彼女の名残を。ディイの話、そして邪神となったあの姿、今日見たそれらから少しでも掬い上げて、覚えていられるように願う。
 そして餞に、感謝と別れを込めて、大切な薄紅を。桜の花を彼女に手向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『無垢なる捨て犬とヒヨコ』

POW   :    かまってかまって
【じゃれつき】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD   :    ひろってひろって
【期待に満ちたつぶらな瞳】を向けた対象に、【庇護欲と拾いたくなる衝動を抱かせること】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    あそんであそんで
小さな【拾ってくださいと書かれた張り紙付段ボール】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【子犬とヒヨコ達が大量にいる空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●後始末
 紆余曲折の末、この場の主、呪炎のエーリカは猟兵達の手によって倒された。今後この店が、新たな邪神を生み出すことはないだろう。
 ――とはいえ、UDC料理で変貌してしまった者達がまだ残っている。

「ワンワンワンワンワン!」
「ピィ! ピピピピピ!!」
「ホーホケキョ!!!」

 元は裏稼業の大物だったり、その道では有名なセレブだったりした動物達が、かまってほしいのかやけくそのような声を上げて大騒ぎしている。この様子では、彼等に元の人格や理性が残っているかはかなり怪しい。表に出て何かをやらかす前に、倒すかUDC組織に引き渡す必要があるだろう。
烏護・ハル
殴ったら解決した。
……しょうもない。陰陽師って何だっけ。

切り替えなきゃ。
最後は決めないとね、バシッと。
バシッ、……っと。

式神さん。
ほら、『拾ってください』って。
可愛い、あれ。

え?何?
『何しに来たのか忘れてない?』って?
覚えてるわよー。
一体も逃すな、でしょ?

……でもさ、時には寄り道も大事だと思うのよ、私。
少し!少しモフるだけだから!
大丈夫、すぐ帰ってくるから!

防御結界を纏ってしまえば恐るるに足らず。
モフり倒そう。

うわぁ、モフモフだぁー。
何言ってるかわかんないけどモフモフだぁー。

式神さんの視線が気になるから、いいトコでUCで無力化して生け捕りにしよう……。

……私、何しに来たんだっけ。
まぁ、いいか!



●懊悩の投げ捨て方
 激戦の末、消え行く魔女の気配。その一端を担い、あたたまった拳を見下ろして、ハルは小さく呟いた。
「陰陽師って何だっけ……?」
 式神さんは何も答えてくれない。でも拳で殴って解決するのはなんか違うような。
 師の言葉に一歩近づけたという気持ちと、あれに近づいて良いのかという葛藤が胸中に巻き起こるが、彼女はとりあえずそれを横に置いておいた。
「……最後は決めないとね、バシッと」
 終わりよければ全て良し。そう気を取り直した彼女は、最後に残った敵の方へと視線を移した。
「……」
 ピヨピヨと明るい声で鳴く小鳥、潤んだ瞳でこちらを見上げ、鼻を鳴らす子犬達。
「式神さん……」
 あれ可愛い。誰が用意したのか知らないが、『拾ってください』って書いたダンボールに収まった個体まで居て、どうしてもそちらに気を引かれてしまう。
 そんな気配を察したのか、式神さんは小さく問うて来た。早速何しに来たのか忘れてない?
「覚えてるわよー。一体も逃すな、でしょ?」
 そこは大丈夫だったようだが、しかし。
「……でもさ、時には寄り道も大事だと思うのよ、私」
 彼女は既に、あのつぶらな瞳とか諸々にやられてしまっていたらしい。
「少し! 少しモフるだけだから! 大丈夫、すぐ帰ってくるから!」
 良い感じにダメそうな言い訳を並べながら、ハルはUDCの展開するモフモフの世界に飛び込んでいった。
 段ボールで区切られた先、UDCである子犬と小鳥がひしめく場所へ。四方を敵に囲まれる形になるが、防御結界を纏っていけば恐れる必要はないだろう。どこからでもかかってこいとばかりに敵陣の真ん中を訪れた彼女に、UDCの群れは各々鳴き声を上げながら飛び掛かる。
「うわぁ、モフモフだぁー」
 何を言っているかわからないが、多分あそんでほしがっているのだろう。尻尾振って迫り来るそれらを受け止めた。自然と相好が崩れることになるが、大丈夫、これはUDCを生け捕りにしてるだけだから。
 白い眼で見てくる式神さんの視線を、そんな言い訳で躱しながら、ハルは両手で抱き締めたその感触に溺れていった。
 陰陽師とはなにか、先程の思い悩んでいたものも、モフモフの中へと溶けていく。思考の片隅に、「何しに来たんだっけ?」という冷静なコメントが浮かんではいるが、とりあえず。
「まぁ、いいか!」
 まだしばらくはいいだろう。もうちょっと楽しんだらちゃんとするから、ね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イリスフィーナ・シェフィールド
う……元が欲深い方たちといえどこの外見は殴れません。
中身があれでも外見が極まると恐ろしいということですわね。
外見だけ取り繕ってもと言いましたがまだまだ未熟でしたわ。

……とりあえずUDC組織の皆様に回収に来ていただいてそこまではわたくしが誘導いたしましょう。
指定コードで自分に向かってくるようにして回収場所まで移動しますわ。

そ、そんな目で見ても飼ったりしませんわっ、しないのですっ。
(衝動を振り切るようにダッシュ)

……そういえばこの耳と尻尾いつ治りますの?(相変わらず関係なく動いてる)



●帰った頃には治ってるかも
 猟兵達の活躍により、事の首謀者は倒された。残ったのは邪神の眷属と化した者達だけ、なのだが。
「う……」
 こちらに向けられたきらきらした瞳を前に、イリスフィーナは思わず目を逸らした。
 周囲に居たUDCダイナーの常連客――欲深で、倫理を解さず、表立っては言えないような仕事で私腹を肥やす連中であるとわかってはいるのだが、見た目がこれだとさすがに殴りにくい。ある意味この食堂のコンセプト、『かわいくなること』の極地だろうか。
「外見だけ取り繕ってもと言いましたが、まだまだ未熟でしたわ……」
 相手の見た目で判断を変えるべきではない……ような気もするが、やりにくいものはやりにくいのだから仕方あるまい。幸い今回は殴らなくても済む方法があるのだし。
 とりあえずUDC組織の方に事態解決の報告を入れると、彼等は残ったUDCの回収役を向かわせる旨を伝えてきた。後は、回収班が到着した所に連れて行けば良いだけだ。
「では、わたくしが誘導いたしましょう」
 倒すのでは引き渡す。そのために、イリスフィーナは体に光を纏わせる。
「さあ、かかってきなさいなっ」
 『タウント・フラッシュ』、眩い光が食堂を照らし出し、各々遊びまわっていた周囲の動物達が、一斉にイリスフィーナの方を向いた。
 わーわーあそんでー、ひろってー。
 目を輝かせ、駆け寄ってくるその姿に、イリスフィーナはもう一度小さく呻いた。かわいらしい小動物の無垢な瞳。ふわふわとしたやわらかそうな毛並み。あの群れに捕まったら、さぞ気持ちが良いだろう。まあそれはさすがにダメだとしても、一匹くらい――。
「そ、そんな目で見ても飼ったりしませんわっ、しないのですっ」
 誘惑をどうにか振り切って、彼女はじゃれついてくる動物達に背を向け、全力で走りだした。
 おいかけっこかな? といった様子で楽しそうについてくる彼等を振り返らないようにしながら、目的地に向けて疾走。内心の葛藤を表してか、彼女に生えた尻尾と耳は、忙しなく揺れていた。
「……そういえばこの耳と尻尾いつ治りますの?」
 その辺は個人差がありますので、なんとも。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂照・朱海
どうしようこれ

とりあえず無害なUDCなのかどうなのかを判断しないと
接触してみよう……
(※なお、自身は猫のまま)
(※傍目には猫が子犬やヒヨコと戯れているようにしか見えない)

もし人に仇なすオブリビオンならばここで倒さなければならない……
(※猫パンチとかで)
(※やはり傍目には猫が子犬やヒヨコと以下略)

無力化したら、これでも一般人なんだ、殺害するわけにはいかないだろう
組織の人達に相談してみよう

どうすればいいと思いますか、UDC組織の皆さん
(※自身含めて)



●アニマルビデオ
 魔女を倒し切ったところで、多数のUDCは消えることなくそこに残っている。小さいとは言え世界を侵す邪神の欠片、放っておくわけにはいかないだろう。前脚で顔を洗って、朱海はやたらともこもこした小動物達へと向き直った。
「どうしようこれ……」
 思考能力が残っているのかいないのか、じゃれあって転がる子犬に、燭台に止まって歌う小鳥と、その場はある意味阿鼻叫喚の様相を呈している。自分の尻尾を追いかけてくるくる回っている子犬を前に、半ば茫然としながら朱海はそちらに歩み寄った。
 見た目はこんなではあるが、とにかく無害なUDCなのかどうか判断する必要があるだろう。慎重に前脚を差し出すと、子犬の一体がそれに鼻先を寄せて、向こうも探るように匂いを嗅ぎ出す。互いを測るような間の後、子犬はおもむろに朱海へと飛び掛かっていった。
「くっ、人に仇なすオブリビオンならば、ここで倒さなければならない……!」
 鼻面を押し付けるやらぺろぺろ舐めるやら楽し気に襲い掛かってきたそれに、朱海はぎりぎりの対処を迫られる。
 追いかけてくる彼等から逃げ、時に受け止め、猫パンチ、ふみつけで応戦。しばし激しい戦いを繰り広げることになったが、やがて遊び疲れて満足した――もとい力尽き無力化された小動物達を見下ろして、朱海はひとつ溜息を吐く。
 どうにかその場を平定できた。恐ろしい相手ではあったが、これでも彼等は一般人、殺害するわけにはいかないだろう。そうしてその後の一手に悩んでいたところに、丁度UDC組織のメンバーが彼の元に駆け付けた。
 丁度良いとばかりにそちらを見上げ、朱海は首を傾げて問う。
「どうすればいいと思いますか、UDC組織の皆さん」
「えっ」
 そんなこと聞かれましても、と面食らっていた職員達だったが、すぐに状況を察したらしい。もっともらしい顔で、朱海へと対処法を伝えた。
「とりあえずそのままでお願いします」
「先輩、この絵面!! 撮るなら今しかありませんよ!!!」
 なんかこの職員達ダメそう。
 報告書のためですから、とか言いながらスマホでシャッターを切り続ける彼らの姿に、朱海は肩を落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
まぁその…
確かに可愛くなってるし?
不老だったり長寿だったりするのかもしんないし?
成功といえば成功…なのかも…
人間じゃなくなってるあたり
さすがってとこだけど

倒すのは簡単だし
騙される方が悪いとか
そんな美味い話がある訳ないとか
言ってしまえばそれまでなんだが

あんた達
こう…愛玩動物…UDC?として
第二の人生…UDC生?送るのはどうだ?
ひとまず俺が試してやる
構って欲しそうな大型犬の見た目の奴もふもふ
おお…すげぇなさすがの毛並み
美髪とか言われたんかなぁ…
じゃれつかれてわしゃわしゃもふもふ

店内だからあんまり大騒ぎは出来ねぇけど
タオル丸く縛り軽く転がしたり引っ張りっこしたり

どうだ?やってけそうか?
組織に引き渡し



●ペット適正A+
 もこもこと丸いシルエットに、保護欲を掻きたてるような鳴き声。変わり果てた食堂の常連たちの姿に、理玖は「うーむ」と頭を悩ませる。食事の際に見た『元の姿』からするに、彼等はこんなこと望んでいなかったと思うのだが。
「確かに可愛くはなったよな……?」
 どう見ても人間ではなくなっているし、もしかしたら不老だとか長寿だとかその辺りも叶っている可能性だってある。
 ものは言い様、といった風情もあるが、これはこれで、成功と言えば成功……なのかもしれない。
「とはいえ、どうするかな……」
 遊んでほしそうに足元に擦り寄ってきた大型犬種のそれを見下ろして、眉根を寄せる。
 倒すとなれば容易いだろう。被害者に関しても、「騙される方が悪い」とか「そんな美味い話がある訳ない」とか言ってしまっても良い。なんだったら罪も無い人々を食い物にして、自分でそんな台詞を吐いていた可能性も大いにある。自業自得と断じればそれまでなのだが。
「あんた達、こう……愛玩動物……UDC? として第二の人生……UDC生? 送るのはどうだ?」
 返事はない。子犬はただ首を傾げて、きらきらした瞳でこちらを見つめるばかりである。
「ひとまず、俺が試してやる」
 彼等の意見はわからないが、とりあえずそういうことにした。さっきから構ってオーラのすごい大型犬を呼び寄せて、そちらに手を伸ばしてやる。
「おお……すげぇな、さすがの毛並み」
 掌を伝う感触に感嘆の声を上げながら、わしゃわしゃと撫でると、大型犬は気持ちよさそうに横になった。
 そのままもふもふとやっていると、「この毛並みもUDC料理の効果だろうか」とそんな思考が頭を過る。もしかすると、元の彼だか彼女だかは、美髪を求めてここに来たのかも知れない。
「……」
 やめよう。何か複雑な気分になってきたのでその思考を投げ捨て、理玖は取り出したタオルを丸く縛った。
 わん、と元気よく吠えるそれに即席のボールを転がしてやる。尻尾を振ってそれを追いかける姿に目を細めて。
「結構うまくやってけそうだな?」
 ボールを拾ってきた大型犬UDCは、もう一度元気に吠えた。
 とりあえずは、それを「良い返事だ」と受け取ることにして、理玖はUDC組織の回収班が来るまでそのUDCと戯れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディイ・ディー
🎲🌸
さて、後は普段通りのエージェント仕事だ
志桜に俺の仕事ぶりを見せるチャンス!

しかし、こいつらも可哀想にな
でも大丈夫だ。ちゃんと組織で面倒見てやるからさ

先ずはじゃれつきを受け止めて、その間に賽の陸で鎖を顕現
命中率を重視しつつ弱らせ、迸る鎖で捕縛!
少しばかり痛いかもしれないが、死ぬよりマシだろ?
志桜、そっちにも行ったぜ。頼む!

疲労して動けなくなったやつからペット用ケージに放り込む
ついでに頭でも撫でてやろう、よしよし
お前らもエーリカの思想に惹かれた奴らなんだよな
上手くいくことばかりじゃねえな、人生ってのは

研究が進んだり解呪方法が見つかれば戻れるかもしれない
未来に希望を持てるのは、生きてこそだぜ


荻原・志桜
🎲🌸
ディイくんがいつもしてるお仕事のお手伝いできるなんて嬉しいなぁ
先輩っよろしくお願いしまーす

具現せよ、動物たちのおもちゃ!
ボールやロープの玩具
止まり木など思い付くものを魔法で創造

さすがディイくん手慣れてるね
わたしだって頑張らなくちゃ
楽しいおもちゃたくさんだよー…って
いっぺんに来られたらちょっと、わあああっ
少々ボロボロになりつつケージにいれて

あとは…あ、また元気のいい子が
おっけー、任せて!そのままこっちに…よし、きゃっち!

落ち着かせるようにゆっくり撫でながら
うんうん、大丈夫だよ
少しだけ苦しくない道を選んじゃったんだよね
解呪の方法はみんなが探してくれる
だから諦めないで
未来を捨てたりしないでね



●現世に見る夢
 静寂は所詮一時のもの。彼女の置き土産というか、やらかしの痕が、余韻を吹き飛ばしていく。
「……さて、後は普段通りの仕事だな」
「先輩っよろしくお願いしまーす」
 気を取り直して、と言った様子のディイに志桜が応じる。ここから先はUDC組織のエージェントとしてはよくある仕事、後始末である。ディイとしては普段の仕事ぶりを見せられるし、志桜としてはそれの手伝いができる、これはこれで良い機会だろう。
「よし、かかってこい」
 率先して小動物の群れに向かったディイは襲い来る……というか、かまってほしくて飛び掛かってくる彼等を、両手を広げて受け止める。やわらかい毛並みの感触と、はしゃいで跳び回る子犬の暖かな体温、遊んでもらえるとわかったからだろう、全力でじゃれついてくるそれをあやしながら、彼は小さく溜息を吐いた。
 元の姿を思えば変貌ぶりが凄まじい。本能のまま、無邪気に駆け回る様は、微笑ましいと同時に何か複雑な思いを呼び起こす。自業自得な悪人共、という見方もできるが……。
「まあ、安心しろ。ちゃんと組織で面倒見てやるからさ」
 喜び遊ぶ彼等の動きを緩く抑えて、ディイは封呪の力を解き放つ。顕現した鎖が、小動物達をまとめて絡め捕った。
「少しばかり痛いかもしれないが、死ぬよりマシだろ?」
「さすがディイくん、手慣れてるね」
 やたらと手際の良い彼の様子に拍手を贈って、志桜もまたお手伝いに乗り出す。あの動物達の期待に満ちた無垢な瞳からして、何を求めているかは簡単に予想が付いた。
「具現せよ!」
 『幻想の匣』、願いを叶える魔法によって生み出されたのは、ボールやロープ止まり木など、子犬や小鳥に向いた玩具の数々。
「ほーら、楽しいおもちゃたくさんだよー」
 一つ手にして振って見せれば、彼等はその眼を一層輝かせた。
「……うん?」
 その状況に、志桜が思わず眉根を寄せる。狙い通り効果覿面、だがちょっと、こちらを向いている瞳の数が、予測の域を超えている。
「そんな、いっぺんに来られたらちょっと――わあああっ」
 わんわんわんわんわん! みたいな音を立てながら襲ってきた子犬の波に、志桜はあえなく吞み込まれていった。
「志桜、大丈夫か?」
「う、うん」
 少々もみくちゃにされたが、ある程度遊べば満足したのか、小動物達の勢いは一段落してくれた。上に乗っかった子をディイが下ろしてくれたのに合わせて、志桜はどうにか身体を起こした。
「すごい勢いだった……」
「ああ。でもおかげで満足したやつも多いみたいだぞ」
 疲れて大人しくなった者を中心に、ディイは彼等を捕まえてケージへと放り込んでいく。志桜もそれに倣っていくが、まだまだ元気の有り余っている子も居るようで。
「おい待て、別に追いかけっこってわけじゃ――」
 捕まえに来たディイの手からするりと逃げて、元気の良い子犬が一体、その場から走り去ろうとしている。
「志桜、そっちにも行ったぜ。頼む!」
「おっけー、任せて!」
 追手のディイばかり気にしているその子の行く先に先回りして、志桜はしっかりとそれをキャッチした。
 その背を追いかけていたディイもそこで立ち止まって、彼女に抱き上げられた子犬の頭を撫でてやる。
「一応、こいつらもエーリカの思想に惹かれた奴らなんだよな」
「うん、きっとそうだよね」
 こうして元気に走り回ることも、彼等の望みの内ではあったのかもしれない。まあ、さすがに人間をやめるところまでは考えていなかっただろうが。
「上手くいくことばかりじゃねえな、人生ってのは」
 この子犬を通して、彼が誰を見ているのかは概ね察しが付く。子犬の頭を撫でてやりながら、志桜もそれに頷いた。
「……少しだけ、苦しくない道を選んじゃったんだよね」
 願う気持ちは、彼女にだって分かるから。
「解呪の方法は、きっとみんなが探してくれる。だから諦めないで……未来を捨てたりしないでね」
「……ああ、未来に希望を持てるのは、生きてこそだぜ」
 自分の話をされていることなんて、このUDCと化した『誰か』にはわかっていないのかもしれないけれど。
 頭を撫でられて気持ちよさそうにしながら、子犬は元気よく一声吠えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
まあ、みんなすっかりかわいくなっちゃって
けど……メアリが求める|美味しそう《かわいい》とは違うみたい
やっぱり、食べなくて正解だったかも
なんて思いながら適当な子を抱き上げる
それにしてもどうしたものかしら……

こんな子たちを殺してもちっとも楽しくない
かと言って生け捕りなんてつまらない事……あっ

チプトががぶり! もぐもぐ【捕食】!

…………まあ、仕方ないかしら
結局|魔女《メインディッシュ》は食べ損ね
食べれたのは、チプトからすればほんの僅かな料理ばかり
あれだけじゃ【ごはんの時間】は終わらない!

そう考えてる間もチプトはおかわりを続けてく
そうしてチプトあるいはチプト|たち《・・》はどんどんかわいくなっていくわけだけれど……
結局いつものあの子が一番かわいい気がするわ



●酷い絵面になった
 魔女を失ったこの食堂は、どこ色褪せてしまったように見える。慣れない服まで着込んで来たのに、メインディッシュを食べ損ねたまま終わってしまえば、それもまあ仕方のない事か。その場に残った有象無象――UDCと化した常連客達を見下ろして、メアリーは物足りなさそうな溜息を吐いた。
「みんな、すっかりかわいくなっちゃって」
 かまってほしいと言いたげな様子できらきらした視線を送ってくる、子犬のようなUDC。変わり果て、もはや状況把握もままならないその一体を抱き上げて、確かめるようにする。かわいいと言えば、まあそう言うこともできるだろうが。
「けど、メアリの求める|美味しそう《かわいい》とは違うのよね……」
 そうなると、やはりあの料理は食べなくて正解だったかもしれない。そんなことを思っていると、手の中の子犬が、気を引くように一声吠えた。
「なに? あそんでほしいの?」
 悩まし気に、メアリーが小首を傾げる。彼女の場合、『遊び』という単語に少々剣呑な響きが混ざるわけだが。
「どうしたものかしら……」
 弱い者を追い回すのはむしろオウガの領分。こんな子たちを殺しても、メアリーはちっとも楽しめないだろう。
 かと言って、彼等の『中身』は欲深で腹黒い人間、普通に生け捕りなんてしてもつまらない。いっそのこと欲深き人間のまま、襲い掛かってきてくれた方が――などと考えている内に、メアリーの肩に飛び乗ったウサギが、子犬をまじまじと見つめていた。
「……あっ」
 途端、みしりと音を立てて身体を割かせて、大口を上げた|ウサギ《チプト》が、メアリーの捕まえていた子犬を口に収めてしまった。
 もぐもぐと咀嚼音が肩の上から聞こえて、それはおもむろに床へと戻る。
「…………」
 空っぽになってしまった両手をそのままに、メアリーはしばしその姿を目で追う。
 もこもこの毛皮を手に入れ、ちょっと大きくなったチプトは、やっぱりまだ足りないのだろう、おかわりを求めて動き出していた。
「……まあ、仕方ないかしら」
 せっかくの『食堂』なのに、まともなご飯が手に入らなかったものね。
 別段止める理由もない、とその背を見送る。『ごはんの時間』は、当然まだ終わってはいないのだから。
 駆け寄った数体があっという間に呑み込まれて、「さすがにこれじゃれつくとかじゃなくない?」とようやく状況を悟ったのか、逃げ出し始めた子犬たちを、何やら分裂まで始めた合成肉生物たちが逃がさぬように追いかける。どんどんかわいくなっていく彼等は、それでも変わらぬ巨大な口を開け、獲物目掛けて飛び掛かっていった。
「……でも、いつものあの子が一番かわいい気がするわ」
 その内あれも、元の姿に戻るかしら。
 地獄めいた光景が広がってはいるが、とりあえず、メアリーの悩みはそれくらいである。

●閉店のお知らせ
 猟兵達の手により首謀者は倒れ、そこで生まれたUDCも、市街地に漏れ出す前に押し留められた。
 事態は終息を迎えたと言っていいだろう。
 怪物を食わせるという噂の『UDCダイナー』、その中のひとつは、こうして終わりを迎えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月29日
宿敵 『呪炎のエーリカ』 を撃破!


挿絵イラスト