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絶対零度に閉ざした心

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 アルダワ魔法学園。災魔、オブリビオンを地下迷宮に封じ込めた学園。その学生たちはオブリビオンたちを殲滅するために迷宮に潜り、攻略を目指す。今日も、一つのパーティが攻略に向け、迷宮内を探索していた。
「きっとこの奥にこのフロアのボスがいるはずだ!」
 勇んで先頭を歩く少年が曲がり角を曲がったとき、それは現れる。
「何だこれ!?…迷宮が凍っている!?」
 少年たちの前に現れたのは氷の迷宮、床も壁もトラップも、すべてが凍り、停止している。少年たちは予想外の出来事に立ち止まり、一度迷宮から帰還して学園に報告に向かった。少年たちの報告を受け、学園は生徒たちに注意喚起を行うこととなる。

 迷宮の奥、極寒の冷気を噴きだす魔方陣の前にたたずんだ美しい女性が笑みを浮かべる。
「ふふふ…私を疎むのなら、もう二度と私に関われないようにすればいいのよ…」
 笑みを浮かべる女性は青い宝玉の付いた杖を携え、大きなつばの付いた三角帽子を深くかぶる。藍色のドレスが風になびき、雪のように白い肌が対照的に際立つ。微笑む魔女は隔絶された世界を夢見て、魔方陣に魔力を注ぎ冷気を発し続けた。

 キケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)は額に汗を浮かべ、緑の髪を張りつけながら、グリモアベースで猟兵たちに声を掛けかき集めていた。ある程度の人数が集まったところで彼は一息をついて、自作した資料を配り、説明を始める。
「アルダワ魔法学園の地下迷宮に強力なオブリビオンが出現したんだ。そのオブリビオンが原因で地下迷宮の一部が凍り付いてしまってる。床も天井も何もかもが、だよ。アルダワ魔法学園の生徒がそれを発見したから被害は出てないんだけど、凍っている範囲は今も拡大し続ける。それに、僕が予知した内容は更にその先も含まれていた。どうやら、対処しないと地下迷宮の一部が完全に氷に閉ざされてしまうんだ」
 迷宮が氷に閉ざされてしまえば、アルダワ魔法学園の生徒たちをはじめ、猟兵たちも迷宮の内部に足を踏み入れるのが困難になり、迷宮は完全に災魔、つまりオブリビオンたちの手に堕ちてしまうだろう。そうなる前に何としてでも対処しなくてはならない。
「出現したオブリビオンも判明しているんだ、遥か昔から受継がれる魔女の系譜の始祖と言われる、初代『碧き魔女』ナタリー・アナスタシアだ。ナタリー・アナスタシアが魔法をかけて迷宮を氷の閉ざそうと画策している。ナタリー・アナスタシアは迷宮にやって来た人物を何らかの方法で探知している。だから、迷宮に入ったら何らかの妨害をしてくるはずだから、その対策も考えないといけないよ」
 ナタリー・アナスタシアが監視し、妨害を施してくる迷宮を踏破し本人を撃破する必要があるということだ。
「ナタリー・アナスタシアほどのオブリビオンならば眷属が居てもおかしくないんだけど…予知ではそこまではわからなかった。みんな、何が出てくるかわからない。普段の迷宮とはわけが違うことに注意してね」
 正体不明の眷属の襲撃にも警戒しながら迷宮の踏破となる。油断のできない、精神を削る仕事になるだろう。
「氷の迷宮が完全に閉ざされていない今しか、ナタリー・アナスタシアを討つことはできない。分かってると思うけど、油断しないでね、頼んだよ」
 キケが締めくくり一礼したとともに、猟兵たちは各々の準備のために散っていった。


Yggd
 こんにちは。Yggdです。暑いより寒いくらいの方が好きです。ピリッとしてちょっと気持ちよくないですか?
 さて、アルダワ魔法学園の地下迷宮にオブリビオンが現れた様子。こいつ、ナタリー・アナスタシアの目的は迷宮を氷漬けにして完全に外界と隔絶させること。そうなれば迷宮に手を出すことは難しくなってしまいます。猟兵の皆さんはナタリー・アナスタシアの目論見を阻止し、ナタリー・アナスタシアを骸の海に返してください。
 1章は氷漬けの迷宮の探索です。ナタリー・アナスタシアが独自の罠を仕掛けているので今までの迷宮とは雰囲気が違うかもしれません。
 2章は予知されていませんね。もしかしたら1章の内容次第ではある程度予測できるかも?
 3章はナタリー・アナスタシアとの戦闘になりますよ。奮闘を期待しています。
 それでは皆様の絶対零度の氷すら解かすような熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『氷上で舞え』

POW   :    障害物など気にせず、破壊しながら進む。

SPD   :    華麗に滑り、障害物を避けていく。

WIZ   :    魔法で滑りを調整したり、滑る向きを調べて障害物を避けながら進む。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セルヴィ・アウレアム
「うう、寒ぅ!うち、熱いのはええけど寒いのはあかんねんな……動力炉が凍ってまうし……。まま、手っ取り早く抜けてまうとしよ。」

●行動:SPD/華麗に滑り、障害物を避けていく。
事前に購買部から拝借してきたブレードシューズを履き、スケートの要領で迷宮内を滑っていく。
妨害として想定されるであろう氷の壁などの妨害は、左腕部の『内蔵ハンド・ファーニス』をフル稼働させ、熱気で無理矢理溶かしていく。
氷の矢のような物理的な妨害に関しては可能であれば右腕部の『内蔵ガトリングガン』により撃ち落とし、不可能であると判断した場合は回避を優先する。


四王天・焔
■心情
氷の迷宮かぁ、とても楽しそうだね。
と言っても、そこまで楽しむ余裕はなさそうだけど
頑張って魔女さんを倒すよー。

■行動
SPD判定の行動

迷宮だから暗いのかな?一応ハンズフリーの照明を腰に装着しておくね。
氷上を滑って行って、障害物があったら避ける様にするね。
他に罠が用意されていないか、
野生の勘、聞き耳、視力、暗視を駆使して
何か危険がありそうなら、慎重にゆっくりと進むようにするね。

第六感も使用して、何か怖い感じがしたら、特に周囲に注意を配るよ。

「氷上を滑るのは楽しいけど、ちょっとスリリングな感じのする迷宮だね」


シン・コーエン
氷漬けの迷宮そのものがナタリーの外界に対する
攻撃と言える。

対策としてユーベルコード『刹那の閃き』を使用。
迷宮探索をナタリーの意思との戦闘とみなし、
【空中戦】【地形の利用】と組み合わせて、障害物や罠を
回避しつつ迷宮を探索する。

途中、急停止や急な方向転換が求められる時は【怪力】で
ドラゴンランスを壁に突き刺して実行する。

障害物や壁への衝突や、罠が避けられなさそうな場合は、
【オーラ防御】と【衝撃波】を身に纏ったうえで、
ビームシールドによる【盾受け】によって被害を防ぐ。

戦いになれば愛刀の灼星剣を振るい、ユーベルコード
『万物両断』の【2回攻撃】で撃破。

連携、アレンジOKです。



 予知とアルダワ魔法学園の報告、両方を照らし合わせて判明した氷漬けの迷宮の入り口の前に、猟兵たちは集結して中を覗きこむ。
「うう、寒ぅ!うち、熱いのはええけど寒いのはあかんねんな……動力炉が凍ってまうし……」
 ぶるぶるっと身を震わせるのはセルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)。赤く少年のように短い髪をした彼女は、迷宮から流れ出る冷気に震える。ミレナリィドールのセルヴィの動力源は熱を生み出す動力炉、だが、この迷宮の寒さでは危うく動力炉すら凍り付きかねない。せめてと、体を震わせて熱を生み出し凍り付かないように制御する。そんなセルヴィの隣で二人の猟兵が屈んで靴ひもを結んでいる。
「氷の迷宮かぁ、とても楽しそうだね」
 と、靴紐を結びながらすこし弾んだ声色で話すのは四王天・焔(妖の薔薇・f04438)。腰ほどまで伸びたウェーブした青の髪が自然に垂れてくるの巻き込まないように注意しつつ靴紐を編み上げる。焔の隣では伸び気味の金髪を纏めたシン・コーエン(灼旋・f13886)が同様に屈んでいた。焔とシンが履いているのはセルヴィが予めアルダワ魔法学園の購買部から拝借してきたブレードシューズ。靴の底に小さな刃が付いていて、スケートするように氷上を滑ることができる靴だ。セルヴィもすでにこの靴を履いており、二人が履き終わるのを待っている。
「そうだ、一応ハンズフリーの照明をみんなに渡しておくね。迷宮の中だし、暗いかもしれないからね」
 と、焔が皆に照明を配り準備を終える。
「まま、手っ取り早く抜けてまうとしよ」
 先頭を走り出すセルヴィは動力炉が凍り付く前に突破しようと凍り付いた床を滑り速度を上げる。
「氷漬けの迷宮そのものがナタリーの外界に対する攻撃と言える。皆、注意するんだ!」
 シンが後続し最後に焔が続く。三人は一列になって滑り、空気抵抗を減らすようにして速度を上げ迷宮を突っ切っていく。
「右の壁!突き出る!」
 シンが氷のわずかな振動を読み取り、全体に指示を飛ばしてナタリー・アナスタシアが仕掛けてくる攻撃を回避する。途中、元々迷宮に設置されていた装飾品の石像やトラップが飛び出して氷漬けになったような障害物があったりと、平坦な道ではない迷宮を飛び越えたり、細かな機動で回避したりとして先に進んでいく。
(んー…なんだろう。あの石像…なんだか変な感じがする…)
 氷漬けの石像の横をすれ違ったときに、焔は漫然とした不安を覚えるが、その引っ掛かりも直後に現れた障害によって一時的に忘れ去る。
「正面!何か出て来る!」
 シンの指示の直後、天上の一部が落下してきて氷の壁が形成される。
「ここはウチに任せてや!」
 セルヴィが氷の壁に突進し、左手を突き出し内蔵されたハンド・ファーニスを全力で動かす。本来ならば迷宮内に点在する鉱石を融解するための機関だが、その熱を氷の壁にぶつけて強引に壁を突破する。
「よっしゃ!一気に抜けるで!」
 セルヴィが道を溶かして開けた道を三人は滑り、潜りぬける。高速で滑りぬける三人は障害を乗り越え迷宮を踏破してゆく。
「氷上を滑るのは楽しいけど、ちょっとスリリングな感じのする迷宮だね」
 トラップを回避しつつ、焔はちらりと迷宮の内部へと視線を送る。氷の下、不自然に配置された首のない龍の石像の群れが、駆け抜ける猟兵たちを見送った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ポーラリア・ベル
トリニティ・エンハンスの水とルーンソードで、水を作って、凍り付かせて、
空中に氷のレールを作りながらしゃーっと滑っていくよ!
やばそうなのがきたらセルフフローズンで自ら凍って防いだりくっついたり!

ひんやり~ ひえひえ~ すてき!
1区画くらい氷に閉ざしても、誰か溶かしたり壊したりすると思うから
あたしこのまま発見されるまで、氷の世界の一部になっても…

ふえ?石像?首のない龍で、なんだか怪しいの?
形とか並びとか見たりしてメモしておくね。
違和感あるねー トラップかなー?
ちょっとトリニティ・エンハンスの【属性攻撃】火をつけた
サイコキャノンでおひとつどかーんしてみるよ!

そのあとまたレール敷いて滑ってくね!


死之宮・謡
ふーん…太古の大魔女か…愉しみだねぇ?氷かぁ、まぁ寒さは問題ねえよなぁ…今更だろう?この位は余裕だねぇ…
奥地まで探索か…面倒くさいし片っ端から壊して進むか…障害物なんて一々避けてたらキリがないしねぇ?そもそも私、そういうの嫌いなんだよな、壊して進む、殺して進む、単純明快に暴力的方法で解決するさ…
UCは…身体能力強化で良いか?んじゃあ【三重血統装具】展開っと

全部ぶち壊して強引に突破と行こうかねぇ?


セレスティア・ナイトリー
迷宮は私のルーツがあるかもしれない場所の一つ。
敵に興味はありませんが、探索の妨害をされてしまうのは好ましい状況ではありません。

私自身と装備に搭載された機関を高めの水準で稼働させれば、多少の寒さなど気にするほどのこともないでしょう。
冷気の強力な所では、さらに出力を上げて氷結耐性の一助としましょう。

トラップに関しては、私の思う通りに置き換えてしまえば問題にもなりません。
【侵掠機筒】にて地形を魔導蒸気機械化させ、私にとって有利になる地形を生成しながら進みます。
歩かなくても自動的に進ませてくれる歩道などが出来れば便利ですね。
地形の置換が上手くいかなければ、砲撃や斬撃で罠を破壊しながら進みましょう。



 やや遅れて氷漬けにされた迷宮に足を踏み入れる猟兵が一人。
(ふーん…太古の大魔女か…愉しみだねぇ?)
 豊かな黒い髪を揺らし、赤い目を細めるダンピール、死之宮・謡(狂い果てし王・情緒不安定の狂戦士・f13193)がカツカツと足音を響かせて迷宮をゆったりと歩む。
(まぁ寒さは問題ねえよなぁ…今更だろう?この位は余裕だねぇ…)
 吹き付ける冷気に微笑みすら浮かべながら歩みを止めない謡。謡にとってはナタリーが生み出す冷気程度ならば、対策を用意するほどでもないように歩む速度は一定だ。それならば、今度は壁がせり出して、謡の行く道を閉ざす。振り返れば今まで歩いてきた廊下も同様に閉ざされ、完全に閉じ込められたのだと分かる。
(…面倒くさい)
 はぁ、と吐いたため息は白く漂う。謡は向かう先に現れた壁に近づいて,
ぐっと身を沈める。謡の腕や首筋の白い肌の上に、赤黒い血管が浮き出し、目もさらに濃い赤に染まる。
「我ガ内ナル大イナル緋キ血潮ヲ見ヨ」
 言葉の上手くない謡の片言の詠唱。自ら生まれ持った赤き血、嘗て糧にしたモノの紅蓮の血、双方が入り交じり変化した真紅の血。血を啜り死を振りまき生きてきた闇の住人である謡が、その生の中で手に入れて来た三種の血潮によって自らの身体能力を飛躍させ、目の前の壁に己の武器を叩きつける。壊すのは娯楽と言い切る謡の破壊の一撃によって、壁は敢え無く砕け散り、迷宮の通路が再び謡の目に姿を現す。
(奥地まで探索か……面倒くさいし片っ端から壊して進むか…障害物なんて一々避けてたらキリがないしねぇ?そもそも私、そういうの嫌いなんだよな、壊して進む、殺して進む、単純明快に暴力的方法で解決するさ…)
 心の内で饒舌に不満を吐露し始める謡、いい加減迷宮を歩き回るのも飽きた。いっそこのまま迷宮そのもの破壊してしまえばナタリー・アナスタシアも引き擦り出せのるでは?と、短絡的に結論づけ、手当たり次第に暴れまわる。と、一枚壁の向こうから、微かにだが鈴の音が聞こえてくるようだ。
「・・・!」
 謡、無視して目の前の壁をぶち壊す。
「きゃぁああ!!」
 鈴の音を奏でながら氷の迷宮を飛び回っていた一匹のフェアリーが、謡の破壊に巻き込まれて吹き飛び、目を回す。
「ポーラリアさん!?敵のトラップ?何が起きたの!?」
 不運なフェアリー、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)を吹き飛んだ瓦礫から救出しながら。セレスティア・ナイトリー(流転の機士・f05448)があたりを注意深く見まわす、と。壊した壁から出てきた謡と目が遭った。
「アナタタチ、猟兵?」

 少し前。
 ポーラリアとセレスティアもまた、事件解決に向けて迷宮にやってきていた。ミレナリィドールであるセレスティアは自身の機関の稼働率を高めに設定し、排熱を利用して寒さを克服し探索を進める。
「敵に興味はありませんが、探索の妨害をされてしまうのは好ましい状況ではありません」
 飛び出す壁や振ってくる巨大なつららなど、妨害を躱し、時にはガジェットで無効化したりと、正攻法で迷宮の探索を進めるセレスティア。地形を魔導蒸気機械化し、意のままに作り替えることができるガジェットを持つセレスティアにとって、氷のトラップの類は問題にはならない。順調に歩みを進めるセレスティアの、その横をはしゃいだ声を上げながら飛び回るポーラリア。
「ひんやり~ ひえひえ~ すてき!」
 極寒の地を故郷とする冬を告げる妖精のポーラリアにとって、氷の迷宮は非常に過ごしやすく、否が応でも心が弾む。ちりんちりんと胸にたらした鈴を奏でながらくるくると小躍りを踊るポーラリア。
「ポーラリアさん、もう少しまじめに探索を!」
 一方のセレスティアは感情の出にくいドールの顔を、微かに動かし眉を八の字にかえ、呆れ半分、困り半分と言った感じでポーラリアに注意する。セレスティアにとって迷宮は自身のルーツがあるかもしれない場所の一つ。その場所を探索困難にされては困ると今回の事件解決に乗り出したのだが、せっかくなので道中でも可能な限り探索を進めたい。
「は~い」
 セレスティアの注意を受けて、やや間延びした返事を返すポーラリア。もし、セレスティアが指摘しなかったら、このまま発見されるまで、氷の世界の一部になっても…なんて考え始める危険すら合ったかもしれない。それ程、ポーラリアにとってこの迷宮は居心地のいい場所だった。
「それじゃぁ、一気に滑って進もう。水を出して凍り付かせて、氷のレールを作りながらしゃーっと滑っていくよ!」
 セレスティアに作戦を提案し、ルーンソードを取り出して水を発生させようとする準備を始めた。その矢先に、隣を走っていた壁が謡の攻撃によって吹き飛んだのだ。

「ええ、そうよ。あなたも仲間みたいね?随分荒っぽい方法で探索してるみたいだけど…」
 壁を突き破り現れた謡に対し、セレスティアはやや顔を顰める。自分のルーツに繋がる迷宮を破壊されるのは、仕方がないとは分かっていても気にかかる。そんなセレスティアの内心など知る由もない謡は、
「面倒ハ、嫌イデス」
 と、片言な言葉で端的に告げると、さらにもう一枚壁、奥の壁に向かってゆく。
「ちょ!」
 セレスティアが止める間もなく、謡は壁をぶち破る。現れたのは更に別の細い通路。首の無い龍の石像が氷に封じられ、不気味に佇む狭い道だ。
「ふえ?石像?首のない龍で、なんだか怪しいの?」
 瓦礫から救助されたポーラリアがふらふらと飛び、石像軍に近づいてその様子を観察する。
「違和感あるねー トラップかなー?」
「罠ナラ、壊スマデ!」
 ポーラリアの疑問に間髪入れず謡が、血潮によって強化された一撃で石像に攻撃する。謡の血に覚醒した重い一撃が石像を覆う氷を砕く。
「う~ん、あたしもちょっとどーんってしてみるね!」
 ポーラリアが隣の石像目がけてサイコキャノンを放つ。火属性の魔力を纏ったその攻撃で石像を覆っていた氷が解けだす。と、なんとその石像の龍が動きだすではないか!
「やっぱり罠!」
 身構えていたセレスティアが動き始めたばかりの龍に筒型自己増殖ガジェットを発射し、動きを阻害しようと試みる。ガジェットは龍に突き刺さり、その体を侵食してゆく。ガジェットが突き刺さった龍は眼に見えて衰弱するが、他のトラップのように機械化はしない。
「って、あっちも、あっちも!石像がどんどん龍になってくよ!」
 ポーラリアがあわてた声を出す。見れば、氷の下に埋まっていた石像も次々と龍に変化して動き始めているではないか。
「全部、破壊スル」
「こんなに狭い場所で!?無理だよ!今は逃げよう!」
 浮足立つ謡だが、狭い通路で数十体もの埋まっていた元石像の龍を相手取るのはあまりに無謀だ。確かに狭い通路は少数が大人数を相手にするときは有効とされるが、龍が相手ではそれは別だ。龍が暴れるだけで押しつぶされかねない。
「広いところに出るまで一気に滑っていくよ!」
 ポーラリアが水を噴出させ、凍らせて氷のレールを作り出す。それに飛び乗り、三人は迷宮を一気に滑りぬける。途中、先ほどの龍同じような個体を見かけ、迷宮全体の石像が龍になっている可能性すら出てきた。後方には龍が追いかけてくる。氷のレールを使った三人と龍たちの鬼ごっこは、迷宮を探索していた他の猟兵たちも巻き込んでその規模を大きくしてゆく。そうしてしばらく後、猟兵たちは迷宮内部の広いホールのような場所にたどり着いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『佇む巨竜像』

POW   :    石化解除
【石化状態】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【「雷」と「風」を纏い操る巨竜】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    石化解除
自身に【「炎」と「冷気」】をまとい、高速移動と【翼から「炎」と「冷気」】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    石化解除
対象の攻撃を軽減する【「水」と「岩」を漂わせる巨竜】に変身しつつ、【「水」と「岩石」の放射】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 広いホールのような場所はいくつかの迷宮に続く出入り口が接続されていて、奥に大きな扉とその上に開け放たれた窓が設置されている。窓からは冷気が噴出していて、ホール全体、さらには出入り口を通って迷宮全体を凍てつかせているようだ。この扉と窓の奥に迷宮を凍らせた魔女、ナタリー・アナスタシアがいるのだろう。だが、その扉の前にも、首の無い龍の石像が数十体。その石像の龍たちも、猟兵がホールに入ってきた時から動き始めている。
 様々な属性の事象を纏う巨竜が猟兵たちの前に立ちはだかり、取り囲む。迷宮に設置されていた石像の龍たちの足音も聞こえてくる。無視してナタリー・アナスタシアの下に向かうことはできそうにない。幸いホールは十分に広い。十全に力を発揮することができるだろう。猟兵たちは持てる力を駆使して、首の無い龍に挑む。
死之宮・謡
押し潰す…氷も解けるかも?【押し寄せる銀灰の波濤】発動

後は…好きに暴れさせてもらうよ?【天燐血統装具】展開…【霧消脚撃】…「怪力」に「二回攻撃」で「なぎ払い」…一気に破壊し尽くす

UC大量に使用してぶち抜く…いつも通りの強引な破壊突破だねぇ?…それにしても中々愉しそうじゃないか、大量の龍…前座にしては上出来だ!後は、此奴らが何処まで私を愉しませてくれるか…まぁ、まだ魔女もいるし、さっさと死んじゃっても許すけどねぇ?

ンジャ征クヨ?


四王天・焔
■心情
首のない石像かぁ、ちょっと不気味で怖いなぁ
でも、ここまで来て退くわけには行かないよ

■行動
SPD判定の行動

ガジェットショータイムで武器を生成するね。

敵の高速移動に対しては
こちらもダッシュで対応。

敵の炎と冷気の放射は、
火炎耐性と氷結耐性のビームシールド(マインドフラワー)で防御。
また、盾受けやオーラ防御で守りを固めつつ
隙を見てはカウンターを行うね。

フェイントを織り交ぜながら、2回攻撃で
確実に攻撃を当てていくように心がけるよ。
敵が固まっていたら、範囲攻撃で纏めて攻撃するね。
また、囲まれない様に第六感や野生の勘で周囲を注意しておくね。


セレスティア・ナイトリー
――戦闘前、ですます口調
侵入者を排除するために設置された石の衛兵……といった趣でしょうか
こちらの邪魔をするのであれば、押し通るまでです

――戦闘開始以降、機械口調
「通常戦闘プログラム起動」
敵の攻撃パターン、耐久性、周辺地形、味方猟兵の位置関係などをリアルタイムに戦術編成プログラムへ入力しつつ、最大の損害を与えうる瞬間を予測算出、【鉄機重破斬】にて対象を粉砕する
刎ねる首が無いのならば、乗せていた胴体もろとも打ち砕くのみ
敵からの攻撃は蒸気推進器による加速で回避を試み、避けきれない攻撃は武器受け・盾受けで捌く
万一被弾してしまう場合も火炎耐性・激痛耐性を以て怯むことなく行動継続
痛みを感じぬのは我も同様


シン・コーエン
数十体の巨竜か、面白くなってきた。
シンは凄みの有る笑顔を浮かべて戦いに臨む。

「俺は前方を担当する。側面と後方は頼むよ。」
と他の猟兵達にお願いし、自身は前衛に位置して
【オーラ防御】展開。

愛刀:灼星剣を両手で構え、次の瞬間、UC:万物両断を
発動して凄まじい速度で振り抜く。
【衝撃波】を伴う【範囲攻撃】と化し、前方の巨竜数体を
まとめて両断!
【2回攻撃】による返す刀で、更に数体まとめて両断。

敵の攻撃に際しては【見切り】とビームシールドによる
【盾受け】で凌ぎ、素早く【カウンター】で、上記攻撃を
繰り返して巨竜達を両断する。

敵は多いので他の猟兵と連携を心掛ける。
窮地に陥った猟兵は助ける。

アレンジ・連携、歓迎。


ポーラリア・ベル
わー!でっかいのが、いっぱいきた!
わー!でっかいこうげきもいっぱいきた!
こうなったら反撃するよ!

サイコキャノンを後ろに撃って、推進力にして近づいて
水と岩の巨竜さんの攻撃を【セルフフローズン】で受け止めて
頑張って巨竜さんを包むドーム状に凍らせるよ!

防ぎきったら、【氷幻鏡】に今受けたのを映して
あたしもおっきな巨竜さんになっちゃう!
それでね、高く飛んで、同じ属性のを纏いながら
【セルフフローズン】して、巨大な氷塊になって―
下の巨竜さんを押し潰しちゃうよ!

速いのや飛んだのは、
窓の所の冷気を【エレメンタル・ファンタジア】で操って
氷のダウンバーストで足止めしてから
同じ様にずどーんって押し潰しちゃう!



 迷宮からホールに滑り出た猟兵たちの背後から、重い足音と振動が伝わってくる。
「わー!でっかいのが、いっぱいきた!」
 ポーラリアは器用に後ろ向きに飛んで迫る巨竜たちを目視し、目を丸くする。パタパタと両の手と足をばたつかせながら前を行く仲間に危険を知らせようとするが、前方にも数十の巨竜の群れが。
「侵入者を排除するために設置された石の衛兵……といった趣でしょうか」
 セレスティアは、静かに自身の武装、蒸気機関を展開する。
「首のない石像かぁ、ちょっと不気味で怖いなぁ」
 焔がその隣に並び立ち、苦笑いをこぼす。頭部が無いため吼えたりはしないが、無言で蠢く竜たちは、実際の竜とは別の迫力がある。二人の間から顔を覗かしたポーラリアはあわわ、と言葉にならない声と共にちりんと頼りなく胸の鈴を鳴らす。ポーラリアの慌てっぷりを横目に、凄みのある笑顔を見せるのはシン。
「数十体の巨竜か、面白くなってきた」
 危険な状況ほど燃えるタイプなのだろう、凍えるホールという制限された空間で龍に囲まれるという状況。そんな不利な状況すら楽しんで見せるシンという青年の戦人っぷりが垣間見える。
「どうあれ、こちらの邪魔をするのであれば、押し通るまでです」
 セレスティアが蒸気機関の武装を展開し、頭の無い巨竜の群れに対峙する。様々な属性を持つ竜が立ち上がり、翼を広げたり凍った床を踏んだリし猟兵たちとの戦闘に身構えているようだ。セレスティアはそれら巨竜の特徴、ホールの氷結具合など、様々な情報を収集し、自身の戦闘プログラムに入力して勝算を立て始めるが…。
「ンジャ征クヨ?」
 一人、一言も話さなかった謡が突如、それだけ呟く。直後、ホールは液体金属の津波に飲み込まれた。

「大規模な攻撃を行うなら、事前に言ってください」
 液体金属の津波が引いたホールで、無表情なままセレスティアが小言を言うが、当の本人の謡はどこ吹く風だ。液体金属の津波は謡が召喚したものだった。灼熱の液体金属が謡によって呼び出され、ホールを埋め尽くして去ったのは数秒の出来事であったが、それだけでホールの様子は大きく変化する。恒温の液体金属によってホールの氷は融解し、気温も上がった。大扉の上の窓からは相変わらず冷気が噴出しているがホール全体が再び凍り付くのはしばらく先になるだろう。謡の行動は結果的に状況は猟兵たちにとって好転させているが、如何せん突発すぎる。仲間の猟兵たちは困惑するばかりだ。
(氷も解け、戦いやすくしてやったし。好きに暴れさせてもらうよ)
 急展開に惚ける仲間の猟兵を横目に、謡はそんなことを思う。強引な彼女らしい思考だ。天穹血戦体という、彼女の戦闘態勢の一つに変形しながら謡は最も近くにいた、迷宮側の竜の一体に向け駆け出し、
「塵一ツ残サズ消シ飛ベ…」
 瞬きの間に右足を振り抜き、竜の一体の胴に風穴を開けた。
「おっと、先を越されたか。それじゃ、俺は前方を担当する。側面と後方は頼むよ」
 やや高揚したように弾ませた声でシンが謡とは逆、扉側の竜たちへ仕掛ける。
「灼光の刃よ全てを両断せよ!」
 前衛として敵の注意を引くために、愛刀の灼星剣を構え叫ぶシン。竜たちに頭部がないためそれが効果的かは定かではないが、突進してくるシンに対し、数匹の龍が引き付けられる。雷と風を纏った巨竜が進行するシンに対し、長い尾を鞭のようにしならせ殴りかかる。刹那に、真紅の光が走る。高速に過った灼星剣の軌跡が、衝撃波を伴って龍の尾を両断したのだ。
「残るのは側面の方向ですか。任されました。通常戦闘プログラム起動」
 セレスティアがホールを見渡し、改めて情報集積と演算を行う。ホールで動く竜は十数体、それぞれが異なる属性を身にまとっている。
「うわぁ!こっちに来たぁ!」
 悲鳴を上げるのは焔。彼女に向けて一体の竜が飛び掛かるようにして脚を繰り出してくる。爪の周辺には火の粉が飛んでおり、時折小さな炎を噴出している。焔は腕に力を込め、手からエネルギーを具現化し盾を形成して受ける。主が攻撃を受けたのを感じ取ったのか、焔のドラゴンランス、フローレが竜の脚にかじりつく。予想外の攻撃に竜が翼を広げて浮き上がる。次に動くのは焔と竜の戦闘を観察したセレスティア。
「身に着けた属性が厄介…ですが、攻撃は単調っ!」
 戦闘を観察し、竜にはそれぞれ身にまとった属性を活用した攻撃が割り当てられていると結論を出すセレスティア。そして竜たちの攻撃は纏った属性の攻撃一辺倒であり、複雑な駆け引きを行うような思考力は無いと見た。セレスティアは蒸気機関を駆動させ、武装を変化させる。セレスティアが右腕に構えるのは強大な刀身の大剣。その凶悪なほどの巨大さに、一匹の竜が危機を感じたのか、炎を纏った爪を振りかざし、セレスティアはその一撃を大剣ではなく、あろうことか左腕で受け流す。
「痛みを感じぬのは我も同様」
 竜の爪によって左腕の外装が傷つくがセレスティアは痛覚を持ち合わせていない。今はただ、目の前の敵を殲滅する心無き戦斗人形として、最も確実な手段をとる。攻撃は左で受けた、右には大剣。竜は攻撃の勢いを殺しきれずに隙だらけ。
「刎ねる首が無いのならば、乗せていた胴体もろとも打ち砕くのみ」
 セレスティアの大剣が、その胴を質量に任せてたたき割った。
 猟兵たちによって竜が倒されてゆく中、ホールのど真ん中でバックパックをあさるのは焔。
「ここまで来て退くわけには行かないよ」
 猟兵によって仲間が倒されたのを感じ取ったのか、龍たちが若干警戒するような動きを見せる隙に、焔が形状の変化するお手製のガジェットを取り出す。
「今回はどんなガジェットが・・・って、なんだこれぇ?」
 ガジェットは相対している敵に最も有効な形状で現れる。今回は電話の受話器のような取っ手に、その両端には中心に太い針が付いた大きな吸盤が片方向に向けて付いている。吸盤の反対側には風船のような伸縮性のある袋、袋と吸盤の間には排気口のような穴。最後に取っ手のの真ん中には紐が飛び出している。
「なにこれぇ!どうやって使えばいいのよ」
「わー!でっかいこうげきもいっぱいきた!焔さん、にげてぇ!」
 ガジェットとにらめっこを始める焔に、竜の攻撃から逃げるポーラリア。ポーラリアを狙う竜は二体。一匹の竜が身にまとった水流を放出し、瓦礫を巻き込んだ濁流を嗾ければ、こう一匹は風と雷を身にまとい、水流をくみ上げ稲妻の走る竜巻を発生させて突撃する。
「水を使うなら…凍り付けぇ!」
 ポーラリアが全身に強力な冷気を纏い、自身をすっぽりと覆うように氷の隔壁を生み出す。それらは触れたものを凍てつかせるポーラリアの小さな城塞、眠りを妨げるものも共に氷結の眠りにいざなう彼女のゆりかご。ポーラリアはその氷の隔壁に守られて濁流に立ち向かう。ポーラリアが振れた濁流急速に冷やされて、凍てついて進行を止める。しかし、もう一匹の竜がポーラリアを障害と判断したのか。小さな妖精に対し竜巻を起こし、接触しないよう掠めるように尾を払う。雷を伴った竜巻がポーラリアを包みこむ。雷撃はポーラリアの隔壁に対し、局所的に大きな電気を流して高温を生み、針の穴ほどの風穴を開ける。だが、穴は穴。ほんの少し破れた守りをすり抜け、次の雷撃がその穴を通り抜け、ポーラリアを貫く。
「ひゃぅ!」
 しびれで舌足らずな悲鳴を上げるポーラリア。と、その上から降ってくる黒い影。
「大量の龍…前座にしては上出来だ!」
 ポーラリアが凍らせた濁流をたたき割って二匹の竜とポーラリアの間に割り込む謡。戦闘で高揚しているのか、普段の片言ではなく流暢に言葉を話す。
「叩き割る・・・そうか!」
 謡が竜と相対した様子を見て何か閃いた様子の焔。彼女は地面にガジェットの吸盤を押し付けて、取っ手の紐を思い切り引く。紐が抜かれ、ガジェット内部の駆動が開始され吸盤から針が地面へと射出される。それと同時に風船と吸盤の間の穴から空気がガジェット内部に吸引され、風船が急速に膨らんでゆく。風船が巨大に膨れ上がると穴はふさがれて、風船がしぼみ始める。とガクンとホールが揺れる。
「何だ!?」
 突然の振動に足を止めるシン。他の猟兵や竜までも警戒する中で、風船がさらにしぼみ続け、限界が来た。ガジェットが床に差し込んだ針から空気圧をかけ続け、砕いたのだ。ホールの床がひび割れ、迷宮のさらに下の階層へと崩落する。
「ですから、こういう大規模な攻撃を行うなら、事前に・・・」
「なかなか良い趣味じゃない」
「そんなこと言ってる状況!?」
 足場を無くした猟兵と竜は落下してゆく。その間に、無表情のままの注意するセレスティアや、相変わらずな謡に空を飛びながらポーラリアが突っ込む。
「でも、床を破壊したのはナンセンスよ。壊スナラ上ネ」
 空中で竜の一体を殴りつけて下敷きにして衝撃を殺した謡が、まるで指導するかのような口調で指を立てる。
「・・・うえ…?」
 ガジェットに搭載されていたのだろう、簡易パラシュートにつかまった焔が首を傾げてオウム返しする。その横、上手く前転で衝撃を殺し着地したシンが焔を見上げ。
「おい、焔、今のもう一回できるか!?床じゃ竜は翼で飛んじまう。次は天井を落とせ!瓦礫でつぶす!」
 シンの言葉にはっとする焔。確かに数匹の竜は翼で浮き上がり、事なきを得ているし、落下した竜の傷も浅い。単純にガジェットを使うだけでは竜は倒せない、その使い道を真に理解してこそ真価を発揮するのが、この形状が変化するガジェットの最大の特徴なのだ。
「わ、わかった!でも、どうやって天井に」
 焔が天井を見上げる。床を落としてしまったために、天井まではかなりの距離ができてしまっている。と、そこに一匹の首のない竜が、焔は身構える。
「て、敵じゃないよ!あたし!ポーラだよ!」
 首のない竜は一体どこから声を出しているのか、だが、その竜は確実にポーラリアの声で名乗った。水幻鏡、という彼女のユーベルコードによってポーラリアは竜の姿を鏡のように象っているのだ。焔はポーラリアの化けた竜に飛び乗り、天井を目指す。
「道は我が!」
 セレスティアが飛び立とうとするポーラリアの付近にいた竜を大剣で叩き時間を作る。ポーラリアは翼を広げて飛翔し天井へたどり着く。
「いっけぇえ!」
 焔が天井にとりつきガジェットの紐を引き稼働させる。そして僅かな間の後、天井にヒビが走り、崩れ落ちる。落下する瓦礫は竜を打つがさらにポーラリアが追い打ちをかける。
「押し潰しちゃうよ!」
 大扉の上の窓から噴き出す冷気を操作することは冬の妖精のポーラリアには、簡単なことだった。冷気を操り、竜たちを凍てつかせて動きを鈍くしてゆく。同時に瓦礫同士も氷でつなぎ合わせ巨大な氷塊へと変化させ、振らせ。逃げ場のない、破壊の雨に竜たちは必死の抵抗を見せるが、それも敢え無く次々と氷塊に打ち据えられて地に堕ちてゆく。
「中々愉しませてくれたじゃないか。これは、魔女にも期待が高まるな」
 圧倒的な破壊を雨の中、謡はうっとりと饒舌に笑うのだった。

 氷塊の雨によって首の無い竜は全滅した。猟兵たちは竜に変化したままのポーラリアの背に乗り、魔女の待っている部屋への大扉を開けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『初代『碧き魔女』ナタリー・アナスタシア』

POW   :    トライスペル
【詠唱短縮の為、初、中、上級の連続した魔法】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    世界終焉の日
【大規模殲滅魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    碧き魔女の加護
【碧色の火炎弾】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎のような魔力領域で覆い】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが扉を抜けたその先に、その魔女はいた。床に敷かれた魔方陣の前にたち、魔力を注ぎ続けているようだ。魔方陣が迷宮を氷つかせていた原因のようだ。魔女は、猟兵たちがその部屋に入ってくれば魔女はゆっくりと振り返る。
「何故、私の領域を侵すのだ?何故、私を疎んでおきながら近づいてくるのだ?」
 やってきた猟兵に対して、その魔女は意味不明の問いを投げかける。だが、魔女は猟兵たちが答えないのに対し苛立ちを募らせる。感情の高ぶりに合わせるように、碧いドレスの裾がゆっくりと持ち上がり始める。
「そうか、妬ましいのか?私の知識が妬ましいんだな!だから、私を追い立てるのだ!どいつもこいつも…」
 ぶつぶつと、恨み事を呟き続けるが魔女。あまり友好的な雰囲気ではない。
「こんな世界、無用だ、私を責める世界など不要なのだ!だから、私と世界を隔絶するために、氷に閉ざしたというのに、お前たちはそれすら許さないのだな?話など聞きたくもない。速やかに私の前から、消えろ!」
 碧き魔女、ナタリー・アナスタシアの魔力が、部屋に渦巻き始めた。
 
死之宮・謡
来たよぉ…やっとだ…何か面倒くさかったねぇ…でも、君と遊べるなら良いか…強そうだ…愉しめそうだ…其れだけが私の望みなのだから…

全く…邪推は止して欲しいよねぇ?別に知識とかどうでも良いんだよねぇ…私が此処に来たのは君が強そうだから、殺し合いに来たのさぁ!…だから、掛かって来いよ?全力でなぁ…お前もまだ滅びたくないだろう?

「呪詛・怪力・生命吸収・なぎ払い・二回攻撃・傷口を抉る・見切り・鎧砕き・吸血」使用

【二律背反の絶対王者】展開…

征クゾ…


セレスティア・ナイトリー
「強敵認識……全戦闘プログラム一斉起動」
機体(自分)への負荷上昇を確認するも、止むを得ない状況と判断。
戦斗人形ゆえ手加減、妥協、打算は一切無し。
我が全能力を以て災禍の根源を制圧する。
全身の魔導蒸気回路より各武装へエネルギー供給用チューブを展開接続、最大出力を維持。
敵からの攻撃パターンを戦術編成プログラムへフィードバックしつつ、攻撃回数を重視した【機士の進撃】で随時相対する。
敵がいかに我を上回ろうと、我はそれを上回ってみせよう。


シン・コーエン
ナタリーは世界を厭うようになったのは、それだけの理由が
あるのだろう。同情はするが、今を未来を生きる者の為にも
手は抜かない。

【オーラ防御】しつつ、UC:刹那の閃きでナタリーの攻撃
を回避し、【地形の利用】【空中戦】【迷彩】を駆使して、
ナタリーの意表を突いた頭上から、灼星剣を振り下ろす!

高速で振り抜く灼星剣に【衝撃波】を纏わせて威力強化し、
更に【2回攻撃】で素早く斬り返す。

その次は頭上からと見せかけて、真正面から突っ込み、
同様の特技を駆使して攻撃。

またナタリーに警戒された時は床の魔法陣を攻撃して、
ナタリーを誘い出して【カウンター】攻撃。

【戦闘知識】を活かし、変幻な攻撃を続けてナタリーを倒す。


ポーラリア・ベル
(竜化は解除しておくよ)
あ、これあたしだめなやつ。
冬も夏も何もかも仲良しさんで、あたし達より強い力持ってる。
氷はあたしも司ってるよ!仲良くしよー?
…聞いてくれない。やるしかないの

【属性攻撃】の【エレメンタル・ファンタジア】で、
お部屋の冷気を操って戦うよ!
蒼い炎は【トリニティ・エンハンス】の風で
天井とか関係ない所に飛ばして妨害するよ!

大規模殲滅魔法が怖い!じっくり見てギリギリで
一度目は【フェアリーランド】に入って【セルフフローズン】の防御もしちゃう!
でも2度目以降は…覚悟を決めて【絶対冷凍】で、
魔女さんの空間ごと、魔法を氷漬けにするよ!

誰にも遭わない氷の世界、あたしが連れてってあげる。だから―!



 迷宮の最奥の部屋。ナタリーの魔力が渦巻き、室内を埋め尽くしてゆく。ポーラリアは猟兵たちを部屋の内部へと運んだ後、ぞくり、と鳥肌が立つのを感じる。
(あ、これあたしだめなやつ)
 氷の妖精であるポーラリアは空中に巻き起こる魔力を体感的に感じとり、不利を悟る。固定化された魔力では無い、常に変質して渦巻くナタリーの魔力の波を感じ取り、ポーラリアはナタリーが自分よりも上位の存在だと判断が付いてしまう。
(冬も夏も何もかも仲良しさんで、あたし達より強い力持ってる)
 緊張からか、拳を握りこんだポーラリアだが、その小さな体の勇気を振り絞る。
「氷はあたしも司ってるよ!仲良くしよー?」
 ポーラリアは努めて明るく、孤独を抱えている様子のナタリーと対話を試みるが、だがそれはかえってナタリーの機嫌を損ねたようだ。
「お前たちの話など、聞く気もないと言っているでしょう!仲良くするなんて、戯言…私を怒らせたいのか!?」
 ナタリーはポーラリアの言葉を聞き入れることもなく、それどころか、逆恨みのようにいら立ちを増し、ドレスの裾が一層はためく。
「…聞いてくれない。やるしかないの」
 しょんぼりと肩を落とすポーラリア。その彼女の肩を叩き、励ますのはシン。
「ナタリーは世界を厭うようになったのは、それだけの理由があるのだろう」
 落ち込んだ様子のポーラリアを励ましつつ、シンはナタリーに視線を向ける。猟兵たちを睨み、憎悪の感情を向けるナタリーはその経緯はどうであれ、今はただの悪意の権化だ。
「同情はするが、今を未来を生きる者の為にも手は抜かない」
 愛刀の灼星剣を構え、相対する。隣に並び立つセレスティアと謡も各々の構えを取る。
「強敵認識……全戦闘プログラム一斉起動」
 セレスティアは全身の魔導蒸気回路からチューブを展開、武装へと接続しエネルギーを行き渡らせる。セレスティアの身体は出力を上昇させて行く。
「征クゾ…」
 太古の魔女との戦闘、強者との戦い、楽しむこと。それこそが謡の望み。口元を歪めて謡がナタリーに向け、手にした剣を振い、飛び掛かった。
「まだ、お前たちが私を責め立てる・・・」
 迫る猟兵たちの姿を見て、手で顔を覆って嘆くように言葉を落とるナタリー。
「うざったいのよ!私の知識は誰にも渡す気もない!私に、干渉してくるな!」
 ヒステリックに叫び、髪を振り乱すナタリー。
「全く…邪推は止して欲しいよねぇ?」
 対照的に謡は笑みを崩さない。記憶と寿命の一部を代償にし、生み出した絶対の剣で斬りかかる謡は、待ちわびた強者との戦闘を前に饒舌に話す。
「邪推!?ならば、お前は一体何のために、私の前に現れた?」
「別に知識とかどうでも良いんだよねぇ…私が此処に来たのは君が強そうだから、殺し合いに来たのさぁ!…だから、掛かって来いよ?全力でなぁ…お前もまだ滅びたくないだろう?」
「なんて野蛮な・・・!」
 殺意を放ちながら接近する謡にナタリーは高速で魔力を練り上げ、わずかな時間でその手から魔法を打ち出す。各種属性を持つ魔力の弾がナタリーの手から放たれて、謡に飛来する。
「ぬるいっ!」
 剣と同様にして生み出した無敵の鎧の守りに任せ謡はその魔法の中に強引に斬りかかってゆく。
「くっ・・・だが、その直情的な攻撃、浅はか!」
 ナタリーが連続した魔力弾を放っていた腕を引き、天に向けて両手を掲げる。直後にナタリーの頭上に巨大な氷塊が現れ、謡に向け叩きつける。
「いい…いいゾ…!」
 至近距離で魔法の発動を見た謡は更に笑みを浮かべ、剣で氷塊に斬りかかる。氷塊の勢いに剣ごと押し込まれそうになるのを、両の脚で踏ん張る。氷塊が剣の鎬を削り火花を散らす。
「猟兵は一人じゃない!」
 謡を足止めさせた氷塊の陰からシンが跳躍し、ナタリーの頭上に飛び出す。灼星剣が真紅の軌跡を曳きながらナタリーに飛び込む。
「次から次へと・・・うざったい…!」
 魔力を練り上げ、滑るようにして剣の軌道から逃れるナタリー。追撃の返す刀も躱されたことにシンは舌打ちを鳴らし、空中で一回転し難なく着地する。
(攻撃パターン解析…)
 シンと謡の戦闘を少し引いた後方で観察し、ナタリーの戦力を分析するセレスティア。魔力を練り上げ、攻撃と回避に応用するナタリーに対し、まず接近することが困難だろう。その上、攻撃を加えるとなると計り知れない。さらに細かな分析結果を導き出すプログラムの演算結果に、セレスティアは表情に表さず顔を曇らせる。
(機体への負荷上昇も、止むを得ない状況…)
 セレスティアは自分の身体への過剰な負荷すら気にも留めず、蒸気機関を動かす。戦斗人形ゆえ手加減、妥協、打算は一切無し。真正面からナタリーの戦力を超えようと稼働し、出力を最大まで上昇させる。
「面倒な奴らだ…」
 高出力で接近してきたセレスティア、灼星剣で振るうう卓越した剣技で襲い掛かるシン、そして、ダメージを受けることを厭わず狂った笑みを受けべる謡。猟兵たちの様子にナタリーは苛立ちを浮かべて魔力を練り上げ、地面を蹴る。
「纏めて地に伏していろ!」
 ナタリーが地面を蹴ると同時に周囲の地面が割れ、部屋全体がめくれ上がり猟兵たちを飲み込んでゆく。
「ぐぁっ!なんて威力の魔法…!」
 沈みこむ地面にしがみつき、踏ん張って耐える猟兵たちを見下したようにしてナタリーは鼻を鳴らす。
「この程度で…わたしを殺そうなどっ!」
 広範囲に広がる殲滅魔法を受け、足を止める猟兵たちを横目にナタリーはため息を吐き背を向ける。迷宮全体に冷気を放っている魔方陣に歩み寄り再び魔力を注ぎ始める。
「私は何者とも関わりたくない、私を疎むこの世界と決別したいのだ。そこで這い蹲って見ていろ」
 冷酷な目で魔方陣に魔力を注ぎながら語るナタリー。魔方陣はナタリーの注ぐ魔力に反応して迷宮へ噴き出す冷気を増加させてゆく。その背後を漂う妖精が一人、殲滅魔法を逃れたポーラリアだ。
「誰にも遭わない氷の世界、あたしが連れてってあげる。だから―!」
「お前っ!いつの間に!」
 ポーラリアがナタリーの眼前を飛び魔方陣から噴き出る冷気を操作し、ナタリー本人に向ける。魔法使いとして格上、ならば、相手の魔力を利用し自分の得意の分野を押し付ける!冷気がナタリーの周囲にまとわりついて氷の壁に閉じ込めてゆく。
「この、妖精…!っ!」
 ナタリーはポーラリアに杖を振りかざして殴りかかるが、その刹那に黒い影が割り込み身体でその杖を受け止める。
「お前の攻撃・・・効いたぞ!」
 殲滅魔法のダメージか、頭部から血を流しながらも強者との闘争に笑みを浮かべる謡だ。剣でナタリーの杖を受け止め、目を細めてナタリーに迫り剣を一振り。ナタリーの杖を両断する。ナタリーは折れた杖を投げ捨て、額に青筋を浮かべ距離を取ろうと魔力でわずかに浮き上がる。
「同じ手だ。もう通じんぞ」
 魔導蒸気回路をを限界を超えたセレスティアが先回りし追撃の一撃を加え、ナタリーが浮遊するのを許さない。予測し、回り込んでようやく一撃を与えることに成功したセレスティアは無表情なまま、高熱を吐き出す機関の音に混ぜナタリーに啖呵を切る。
「お前が我を上回ろうと、我はそれを上回ってみせよう」
「人形が・・・偉そうに!」
 攻撃を受け、よろめきながら怒りに顔を歪めるナタリーの苛立ちを表すように、彼女の手の中で碧い炎が揺れ、猟兵たちへ投じられ火の弾幕が飛び掛かる。
「あぶないっ!」
 ポーラリアが碧い炎に飛び込み、ナタリーの魔方陣から噴き出し続ける冷気を操作し吹雪で炎をあらぬ方向に動かす。
「この魔方陣を壊せば迷宮が凍り付くのは止まるんだな!」
 炎が吹き飛び、道が開けたシンが魔方陣へ灼星剣を突き立て、陣を破壊する。けれど、その動きにナタリーはうすら笑いを浮かべた。
「魔方陣などどうでもよかった。壊れたなら敷けばいいさ。それより邪魔な魔力の流れがなくなって助かるよ」
 両手を掲げ魔力の渦を部屋に発生させるナタリー、時折高エネルギーをもった魔力が煌めくほどだ。
「碧き魔女の一撃のもとに、葬り去ってくれる・・・もう、誰も、私の前に立せることはしない!」
 ナタリーが再び地面を蹴り高威力の殲滅魔法を発動させる。渦巻いていた魔力が一挙に地面に降り注ぎ、地面に先ほどよりも巨大なヒビが走る。ナタリーの魔法が完全に作動する前に、ポーラリアが飛び出す。
「…覚悟を決めたよ!なにもかも、冬の静寂の如く凍てつき止まる。あたしの奥の手、見せてあげる!」
 一撃目の殲滅魔法を自身の安全地帯、フェアリーランドという異空間に逃げこみ、回避したポーラリアだった。だが、二撃目はその威力も見るからに上昇している。けれどポーラリアも覚悟を決めた。自分が操作できるあらん限りの空気を冷却し、凍てつかせる。地割れが猟兵たちを飲み込む前にポーラリアによって冷やされた空気が凍り付き、氷が地面を覆って変動を防ぎ、ナタリーの殲滅魔法を相殺する。
「・・・なるほど、面倒ね」
 魔法をかき消されたナタリーが眉間に皺を深く刻む。
「面倒なのよ…!苛立たしい、苛立たしいのよ!私の前から、消えろ!」
 ナタリーの悪意を孕んだ魔力が、室内の再び渦を巻き始める。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

四王天・焔
🔴で真の姿になる。
真の姿は目が赤く染まる

■心情
遂に現れたね、碧き魔女。
この人は迷宮の氷の原因だね、
早く倒してしまおうね。

■行動
SPD判定の行動を取る

ガジェットショータイムを使用して、武器を生成。

暗くても大丈夫なように、暗視を利用して
暗がりでも目を慣らすようにするね。

攻撃は、ダッシュで一気に距離を詰めて、
フェイントを駆使して確実に攻撃を当てる様にし、
2回攻撃で攻撃していくよ。

世界終焉の日が来たら、
逃げ足で即座に距離を離して、
敵の攻撃範囲より遠ざかるように気を付けるね。
回避が間に合わない場合は、オーラ防御、盾受け、武器受けで防御。


アレクシア・アークライト
 貴方がどんな知識を持っているのかなんて関係ない。
 貴方が世界から隔絶したところに閉じ籠ろうが関係ない。
 貴方がオブリビオンである以上、私達猟兵は必ず貴方を滅ぼしにくる。
 今なお続く“碧き魔女”の系譜。その始祖なら、そのくらい当然分かってるわよね?

・最初は、相手の攻撃を力場で逸らし、又は受け止めつつ、念動力で攻撃。[念動力]
・倒せないようならば、室内を埋め尽くしている魔女の魔力やユーベルコードの残滓を吸収。【能力吸収】
・空を駆けて一気に近付き、収束した力場に吸収した力を込めて攻撃。[空中戦、グラップル、捨て身の一撃]

 ――自分という存在を世界全てに否定されるって、どんな感じなのかしらね。



 室内に渦巻く魔力の暴風に妖狐の尾とメイド服の裾をなびかせる焔は、吹き飛ばされないように姿勢を低くしてナタリーの出方を窺う。
(迷宮の氷の原因はこの人・・・早く倒してしまおうね)
 焔は懐の変幻自在のガジェットを握りなおす。ガジェットはナタリーを打ち倒すためにその形を変化させてゆく。
「貴方がどんな知識を持っているのかなんて関係ない」
 焔の隣に立ち上がり、紅いコートをなびかせたアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)が魔力を練り上げるナタリーに相対し拳を握る。
「貴方が世界から隔絶したところに閉じ籠ろうが関係ない。貴方がオブリビオンである以上、私達猟兵は必ず貴方を滅ぼしにくる」
 アレクシアが気合を籠めると、アレクシアが羽織ったコートは消失して彼女の周囲を纏う力場となる。
「今なお続く“碧き魔女”の系譜。その始祖なら、そのくらい当然分かってるわよね?」
「だから嫌いなのだ…世界も、何もかもが」
 ナタリーは苦虫を嚙み潰したような渋面で猟兵たちを睨みつける。
「ああ、理解しているさ。目障りな羽虫が私に群がって来ることくらい…隔絶は慈悲だったというのに、お前らは私の前に現れた…ならばもう、選択の余地などない・・・!」
 ナタリーは両腕を掲げ、魔力の渦を圧縮する。
「この世界ごと、害虫は駆除するのみ!」
 『碧き魔女』ナタリー・アナスタシアは収束させた魔力を一挙に解き放つ。それは碧く揺らぐ炎。彼女の激情を表すかの如く大きく揺らぐその炎は、しかし性質は全くの逆、室内のあらゆる力を吸い上げ碧く輝く、凍えるの炎。
「あれは…時間をかけるのは良くはなさそうだね。一気に行くね!」
 焔は変形を完了したガジェットのトリガーを引く。腕に装着するように変形したガジェットには取っ手となるトリガー部分と、その先に、手甲鉤のように突き出た銃剣が装着されている。焔にトリガーを引かれたガジェットは銃口から紅く燃え上がる高熱の炎を噴出し、ナタリーの碧い炎を相殺し僅かな時間だが、道を切り開く。
「力を奪う炎、厄介すぎるから、焔さん。あなたの炎を借りるわ!」
 焔が生み出した紅い、炎の道をアレクシアが駆け抜け、その炎を身に吸収しナタリーに向け飛び掛かる。
「その程度の炎で、私の前に立つなど・・・身の程を知れ!」
 目を見開き、ナタリーの碧き炎が一層燃え上がり、周囲の力を奪い去ってゆく。突貫したアレクシアの纏う炎も、その勢いを失ってしまう。しかし、
「あなたは一人だけれど…猟兵は一人じゃない!私がいるんだよ!」
 焔がガジェットのトリガーを再び握りこみ、紅の炎を噴き出す。あまりの高温に銃剣の刃が赤く変色するほどの力をアレクシアは吸収し、再び燃え上がる。
「――っ!」
 言葉にならない叫びと共に、赤い炎を纏ったアレクシアがナタリーの凍える炎を突き破り、ナタリーの頬に一発の拳を叩きつけ、ナタリーは後方によろける。
「・・・っ!…はぁ…っ…!よくも、私を・・・ここまで…。いらないんだよ。私を否む全て、何もかも!!」
 ナタリーは絶叫と共に凍える、碧い炎を爆発させる。
「!危ないっ!」
 焔が手を突きだし、花柄の手袋『マインドフラワー』からエネルギーの盾を展開し、その守りのエネルギーにアレクシアが力場を加えて、強固な壁とし猟兵たちを守る。碧き冷たい爆破が収まったとき、そのエネルギー壁の後方以外、その部屋は全てが凍り付き、動くものは何一つなかった。それは、ナタリー・アナスタシア本人を含めて。
「・・・自滅、なんて…」
 焔は最後の攻撃を逃れた安堵からへたり込み、氷像と化したナタリー・アナスタシアを見上げる。その顔は憎悪に満ちた、背筋を凍えさせる恐ろしい表情だ。
「――自分という存在を世界全てに否定されるって、どんな感じなのかしらね」
 アレクシアの疑問に答える者は居ない。氷に静かにヒビが走り、やがてそれはナタリー・アナスタシア全身へと行き渡り、そうして魔女の氷像は砕け散った。

 骸の海から全てに対する憎悪と共に蘇った『碧き魔女』ナタリー・アナスタシアは、絶対零度にその身も心も閉ざし、骸の海へ再び沈んでいったのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月12日


挿絵イラスト