鋼鉄の歌の名は
●メーデー
君は知ることになる。
世界には多くの争いが満ちている。
どうあっても消すことの出来ない戦乱の中で、君はどう生きることを選ぶだろうか。
逃げ惑い、ただ死すことを是とするだろうか。
それとも立ち向かい、戦って死すことを是とするだろうか。
いずれにしたって、避けることはできない。逃げることもできない。
それを醜い、醜い姿だと言うだろうか。
半壊した心臓を掲げた僕を、そう言うだろうか。
目の前に広がる世界は、残酷なまでに美しい。生命の讃歌は響く。生命の散華は君の視界にどのように映るだろうか。
「だから応えるんだ。いつだって助けてという言葉に――」
●ゾルダートグラード
鋼鉄要塞。
それはオブリビオンの『超大国』の一つ、『ゾルダートグラード』の有する難攻たる鋼鉄の城。
ドイツを含めた周辺ヨーロッパに点在する鋼鉄要塞はオブリビオンの侵略に対抗する獣人たちにとって脅威そのものであった。
量産され続ける『キャバリア』に改造獣人『機械兵士』は圧倒的な軍事力を示し続けている。
光るモニターの向こう側から伝えられる司令という名の用件に応える声が響く。
「それで? 今度はキャバリアに乗れというのかい」
赤い髪の女性『ノイン』と名乗ることにしているオブリビオンが首を鳴らすように傾げる。
傾けたのと反対側にまた首を傾げる。
彼女にとって、それは難しいことではなかった。
けれど、面白いとは思えなかった。キャバリアは体高5m級の戦術兵器だ。大地を疾駆し、兵器でありながら人型で戦術を手繰ることに意味を持つ兵器だ。
それを単騎で操れ、というのは彼女にとって意味があるようには思えなかった。
「どうせまた猟兵が来るんだろう? その相手を私がしなければならないというのは……ああ、わかっているのならいいんだよ。金さえもらえるのならね」
彼女は笑う。
とは言え、厄介だと思った。
戦う事自体に嫌気がさしているわけではない。戦うことは、むしろ本望である。
けれど、猟兵たちの力は知っている。
どんな罠を仕掛けようが物量で押しつぶそうとしても跳ね返してくる。
「どの道、連中とはぶつかることになるんだ。もっと数を用意しなければ無理だよ。到底私だけでは押し留めることなんてできはしないよ」
「わかっている。だからこそ精鋭を揃えなければならない。数も質も」
「揃えて初めて連中を消耗させることができると思った方がいい。スタートラインに立つのが、とても大変なのさ。猟兵と戦うということはさ」
『ノイン』の言葉にモニターの向こう側の声の主が頷く。
「なるべく多くを用意することを希望するよ。ああ、それと私の機体もね」
「すでに鋼鉄要塞に送り込んである」
「用意がいいことで。なら、私は私の仕事をすることにしよう。まあ、任せておき給えよ……とは、言えないがね――」
●歌
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は……いえ、事件というより、任務と言った方が通りが良いでしょう」
ナイアルテは敢えて言葉を言い換える。
彼女が予知したのは獣人戦線における『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』が有する前線基地『鋼鉄要塞グラード』の破壊任務である。
獣人達によって、この破壊任務が計画されているのだが、彼等だけでは心もとない。正面から激突すれば、確実に獣人たちに多大な被害が出来ることは予想できる。
「そこで皆さんの出番というわけです。少数精鋭で鋼鉄要塞の一つに乗り込み、内部での作戦行動を取り、破壊に追い込んで頂きたいのです」
しかし、それは言うまでもなく危険を伴う。
『鋼鉄要塞』への突入は、獣人達が囮として引き付けてくれているお陰で空より要塞に降下して行なうことができる。
問題は、その先だ。
「獣人の皆さんが鋼鉄要塞に正面切って陽動を仕掛けてくれているので、空から内部に突入することはできるのですが……」
そう、内部の『ゾルダートグラード』兵たちとの戦闘が問題なのである。
「鋼鉄要塞内部だけあって『ゾルダートグラード』兵たちの数は尋常ではありません。恐らく、連戦連戦になることでしょう」
容易に想像できるだろう。
さらに悪いことには、要塞の奥に進むにつれてより精鋭の部隊が猟兵たちに襲いかかってくることになる。
その数も尋常ではない。
これを返り討ちにしなければ、鋼鉄要塞を指揮しているオブリビオンにたどり着くことは出来ない。
この鋼鉄要塞の指揮を務めているオブリビオンは強力な存在であることは言うまでもない。
「それどころか、『オブリビオンマシン』に搭乗しているのです」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは驚くかもしれない。
いや、相手は『ゾルダートグラード』だ。キャバリアを量産していることを考えれば、オブリビオンマシンが混じっていても、おかしくはないのかもしれない。
その強力なオブリビオンが更にオブリビオンマシンを駆る、という点がこれまでとは異なる。
他世界であるクロムキャバリアにあってオブリビオンマシンは、あくまでマシンだけがオブリビオン化したものである。
パイロットの思想は歪められて居るとはいえ、生身の人間。
しかし、今回は違う。
オブリビオンマシンを駆るオブリビオン。
それが如何なる相乗効果を齎すかは未知数である。
「強敵であることは承知の上です。このオブリビオンマシンを撃破できなければ、鋼鉄要塞を陥落させることなどできないでしょう」
獣人たちは猟兵達を信じて危険極まりない陽動に出ている。
ならば、応えなければならない。
己たちが猟兵であるというのならば、助けを求める者たちの声にこそ手を伸ばさなければならないのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
『獣人戦線』において『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』との戦いを繰り広げるシナリオになります。
今回は『鋼鉄要塞グラード』の一つを破壊する任務です。
獣人たちが正面から陽動に出てくれているので、皆さんは転移直後、空から降下して鋼鉄要塞に取り付くことができます。
●第一章
集団戦です。
要塞内部に突入した皆さんを迎撃するのは無数の改造獣人『宵闇歌唱兵団』です。
圧倒的な物量で皆さんに襲いかかってきます。
●第二章
集団戦です。
第一章の『宵闇歌唱兵団』を撃破して要塞内部に進むと、さらに精鋭のオブリビオン部隊が襲いかかってきます。
『オブリビオン戦車隊』は、さらに数と質を底上げされています。
集団敵ですが、侮ることはできないでしょう。
●第三章
ボス戦です。
鋼鉄要塞を指揮する強力なオブリビオンが搭乗するオブリビオンマシン『空を目指す者』との決戦になります。
このオブリビオンマシンを撃破すれば鋼鉄要塞は制圧することができるでしょう。
言うまでもなく強敵です。
オブリビオンマシンの性能もさることながら、パイロットであるオブリビオンの操縦技術も驚異的です。
それでは、『獣人戦線』において『超大国』の侵略に抗う獣人たちと共に戦い抜く、皆さんの活躍を彩る物語の一片なれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『宵闇歌唱兵団』
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POW : 絶望の海にのまれて
【歌の届く範囲に自由に生み出せる闇の音符】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を闇で塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 心なんていらないでしょう
【喉】から大音量を放ち、聞こえる範囲の敵全員を【障害物】を無視して攻撃し、【戦意喪失】状態にする。敵や反響物が多い程、威力が上昇する。
WIZ : メーデー、助けてください
自身が【陰鬱な雰囲気で歌って】いる間、レベルm半径内の対象全てに【精神を蝕む闇の音符】によるダメージか【全てを飲み込む闇の安寧】による治癒を与え続ける。
イラスト:うぶき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『超大国』が一つ、『ゾルダートグラード』が擁する鋼鉄要塞は、ドイツ及びヨーロッパ周辺の戦線において、楔のように獣人たちの抵抗に打ち込まれた脅威であった。
攻め入ることは難しく。
されど、敵の侵略は苛烈。
次々と繰り出されれる戦車隊は精鋭であり、隙がない。
けれど、戦車の敵は空より飛来するものである。
「敵の注意を正面にひきつけろ!」
「猟兵たちが空から降下して突入するのを助けるんだ!」
獣人たちが自ら陽動となって正面から戦車隊に突撃していく。彼等の目的は猟兵たちの鋼鉄要塞への突入を補助することである。
けれど、それだって命がけだった。
何一つとして容易いことはなかった。
「だから生命の張り甲斐があるってもんだぜ!」
「ああ、俺たちが此処で敵を引き付ければ、あのクソッタレな要塞を落とすことだってできる! 頼んだぜ、猟兵!」
その言葉を猟兵たちは聞いただろうか。
転移して後、空より降り立った鋼鉄要塞。
そこに待ち受けていたのは、オブリビオン。改造獣人たる機械兵士たちであった。
「空より飛来するとは。なるほど。正面の獣人たちは陽動」
『宵闇歌唱兵団』たちは、敵の目論見がなんであるのかを悟る。
しかし、彼等は動揺らしい動揺を感じていないようだった。
「私たちは私たちの役目を遂げるのみ。即ち、歌うこと。私たちの歌は、心を冒す歌。響け、宵闇の歌――」
イリスフィーナ・シェフィールド
助けてと呼ばれたなら即参上っ、後はわたくしにお任せですわっ。
相手の数が多いなら奇襲あるのみですわねっ。
空中でブルー・マリンの効果で軌道修正。
……実の所不安で一杯ですが落下しつつ大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせます。
宵闇歌唱兵団の真上に来たら高速落下して勢いを足したブレイク・スマッシャーを叩き込んで周辺地形を粉砕して足並みを乱します。
後は当たるを幸いにクラッシュ・ファング(演出)やグランド・インパクト(演出)で大暴れしますわね。
多少の被弾は気にせず戦いますわ、落ち着いて統率が戻る前にどれだけ数を減らせれるかが勝利の鍵ですわっ。
鋼鉄の躯体に改造された機械兵士たちが蠢く鋼鉄要塞。
その頭上より飛来するのは猟兵。
転移直後に空より強襲するのは、確かに効果的であったことだろう。鋼鉄要塞のオブリビオンたちは、その殆どが正面に展開した陽動の獣人たちに釘付けになっていた。
だからこそ、対空砲火なくとも猟兵たちは鋼鉄要塞に取り付くことができる。
「助けてと呼ばれたなら即参上っ」
イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は、空より飛来し、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
瞳の輝きは、その心に宿る強靭なる意志を感じさせるものであったし、その握りしめた拳はユーベルコードにさえ昇華しているのだ。
「後はわたくしにおまかせですわっ」
振るう一撃は剛腕爆砕たるユーベルコード。
その名を高らかに叫ぶことによって強化された拳は超常の如き一撃を発露させる。
「ブレイク・スマッシャーッ」
背に負うようにはためく羽衣から受けたエネルギーが空中での彼女の挙動を修正し、まるで流星が鋼鉄要塞に落ちるかのような輝きと衝撃でもってオブリビオンたちを震撼させる。
吹き飛ぶ瓦礫。
土煙が舞う中、オブリビオンたちは見ただろう。
「直上から……なんと野卑たる行いを」
『宵闇歌唱兵団』たちは、イリスフィーナのユーベルコードによる強襲の一撃にたじろいだ。
それもそのはずだろう。
彼女の拳は、ただの拳の一撃だけで鋼鉄要塞の天井を貫き破砕せしめてみせたのだ。
ユーベルコードであると言われても、その衝撃は凄まじいものであった。
「……やはり大丈夫でしたわね! わたくしにやってやれないことはないのですわっ」
イリスフィーナは、鋼鉄要塞にうまく突入出来た自分を鼓舞する。
正直、空中への転移から降下しての突入には不安がいっぱいだった。
けれど、彼女は大丈夫だと自身に言い聞かせた。
頬を切るような風の勢いも、己の拳が叩きつけた鋼鉄要塞の天井が撒き散らす破片も。
そして、その土煙の向こう側から響き渡る『宵闇歌唱兵団』の歌声がユーベルコードと化して闇の音符を放つことも。
何もかもがイリスフィーナにとって戦うことへの恐ろしさを増幅させる。
けれど、彼女は一歩前に踏み出した。
自分はヒーローである。
ならば、ヒーローが不安な顔などしてはいられない。
己たちの背後には危険な陽動を買って出た獣人たちがいる。彼等の勇気に応える為にも、己の勇気を示さねばならないのだ。
「困ってる方をお助けしますわっ」
それが己がヒーローであることを支えるたった1つのこと。
故に彼女の瞳は闇の音符迫る戦場の中を駆け抜ける。
踏み込み、大地を踏み割る。
衝撃が吹きすさび、イリスフィーナは恐れを噛み殺すように歯を食いしばる。闇の音符はただ耳にするだけでイリスフィーナの中の恐怖や不安といったものを増幅させる。
絶望の淵に立たされているような心を冒す音色だ。
「ですがっ」
「絶望の海に飲まれてしまいなさい、猟兵」
「飲まれはいたしませんわっ。例え、あなた方が絶望の歌を歌うのだとしてもっ」
握りしめた拳の一撃が『宵闇歌唱兵団』の胴を捉え、吹き飛ばす。
身一つ。
彼女の武器は五体。
振るう一撃は、絶望を振り払う意志を光に変えて。
「剛腕爆砕、ブレイク・スマッシャーッ」
迫る恐怖も不安も絶望も。
イリスフィーナは、それを知るからこそ、己の拳が打ち砕くのだと知る。
「落ち着かせることなんていたしませんわ。勝利の鍵はすでにわたくしたちの手の内にっ」
掲げた拳が煌めき、迫る『宵闇歌唱兵団』たちをイリスフィーナは打倒し続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
へえ、随分と覚悟の決まったお仲間だ
そこまで期待されているんなら、応えてあげなきゃ名が廃るってね
派手にいかせて貰おうじゃない
上空にて【Code:U.G】起動
飛翔し一旦限界まで上へ
そこから要塞へ目掛けて最大速度まで加速して落下…もとい突撃!
足の裏に『オーラ防御』で多重シールドを展開
速度は即ち火力!
そのまま鋼鉄要塞の天井をキックでぶち破ってダイレクトエントリー!
シールド全開で衝撃を可能な限り抑えつつ、直地の瞬間に逆噴射も掛けよう
足が痛い!
けどこれならバッチリ派手になったでしょ
後は敵全体に自重で潰れる程の重力を照射!
どれだけ敵が来ようとも自らの重さで潰れて貰おう
…決して足が痺れて動けない訳じゃないよ
鋼鉄要塞を砕く拳がある。
衝撃に見舞われる内部は混乱に満ちていた筈だ。
しかし、オブリビオン『宵闇歌唱兵団』たちは違った。彼等にとって混沌こそが絶望への標。己たちが絶望にまみれても、己たちが為すべきことは変わらない。
ただ、己たちの歌を響かせ、周囲を闇の音符で満たしていくことこそが、敵対する者を絶望の海に沈めることになると知っているからだ。
「私たちに動揺を与えようなど」
猟兵の突入を知らせる衝撃音は、それだけではなかった。
彼等は知ることになるだろう。
鋼鉄要塞の遥か上空。
転移によって現れた猟兵は一人だけではない。
月夜・玲(頂の探究者・f01605)の周囲に渦巻くユーベルコードの明滅する光。
それはCode:U.G(コード・アンロック・グラビティ)――即ち、重力制御形態。
彼女の周囲にある重力は、彼女によって手繰られる。
「今更ジェット推進力を使おうなんて時代遅れってもんだよね」
それに、と彼女が見下ろす先にあるのは鋼鉄要塞の正面から猟兵のために囮になるように陽動突撃を行なう獣人たち。
彼等は猟兵たちが鋼鉄要塞に上空から降下して突入する危険性を排除するために命がけの戦いに挑んでいる。
「へえ、随分と覚悟の決まったお仲間だ。そこまで期待されているんなら、応えてあげなきゃ名が廃るってね」
己達は猟兵。
そう、誰かの助けを求める声に応える者。
世界の悲鳴に応え、人を救う。
そのためにこそ、彼女のユーベルコードは煌めき、転移した上空より更に上に飛翔する。重力制御形態の限界高度まで飛翔した玲の足元にオーラが幾重にも展開する。
それは幾層に重ねられた足場。
「速度は即ち火力!」
重力制御に寄って玲の身体はまるで砲弾のように空より鋼鉄要塞の天井を撃ち抜く一撃となって、内部をえぐるようにして落着する。
衝撃波が荒び、震動は『宵闇歌唱兵団』たちにたたらを踏ませる。
「……猟兵! また天井を抜いてきたのか……!」
「だが、私たちの絶望の海に降りたこと、後悔させてくれよう!」
歌声が響き、音符が飛ぶ。
闇色の音符。その音が身を冒す力を持っていることは承知の上。避けても、その音符は絶望の海となって広がり、『宵闇歌唱兵団』たちの力を底上げするのだ。
しかし、玲の瞳はユーベルコードに煌めく。
土煙の中であっても、宵闇が生み出す絶望の海の最中にあったとしても。
それでも彼女のユーベルコードは煌めく。
「地の理は今此処に」
その言葉と共に放たれる重力。
それは『宵闇歌唱兵団』たちの肉体へとのしかかる。息ができないほどの圧力を彼等は感じたことだろう。
「――ッ!?」
声が出せない。
それはまだわかる。だが、この身体にかかる重圧は一体如何なることか。
「……重力を操れるってことは、その身体にかかる重力も自在ってことだよ。君らはさ、自分の重みで圧潰していくしかないんだよ」
玲の周囲にあった『宵闇歌唱兵団』たちは声も発することもできずに己の自重にかかる重力で圧潰していく。
例え、その力が弱い力であったとしても、自身の身体を支えきれないのならば声を発する事もできず、ただただ潰れ果てる運命しかない。
しかし、玲は動かない。
トドメを差すこともしない。そうする必要がないとでもいいたのかと『宵闇歌唱兵団』たちは思った。
だが、現実は違う。
「……決して足が痺れて動けない訳じゃないよ」
幾重にも張り巡らせたオーラ。
しかし、遥か如空からの突入は自身への衝撃を可能な限り抑えてなお、その身体に突撃の衝撃を残していたのだ。
未だしびれる玲は、ただ立ちすくむばかりであった。
だが、それは窮地足り得ない。
なぜなら彼女は重力を操る。彼女に近づくもの全てが己の自重によって潰れ果てる運命にあるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ハート・ライドン
※連携、アドリブ歓迎
感謝します、同胞
此度はあなた方の命を背負って戦場を駆けましょう
いざ、参ります
歌声もとい音波に加え、闇の力を操る敵ですね
接近するとしたら、相応の負傷を覚悟せねばならないでしょうか
任務遂行まで倒れるわけにはいきません
ここは遠距離攻撃を選びます
【ストライク・イェーガー】発動
味方を巻き込まぬよう位置取りに気を配りつつ
間断ない射撃を行います
敵の数は多いゆえ
命中率にも期待できると考えます
ライフルを構え続ける限り
攻撃は自動で行われますので
私自身は『ダッシュ』で
闇の音符の回避に専念します
闇で塗り潰した地形に移動しようとする敵は優先的に撃ちます
辿り着けなければ、戦闘力上昇効果も無意味でしょう
猟兵たちが降下した鋼鉄要塞は、もはや穿たれた巣のようであった。
次々と飛び込んでいく猟兵達。
上空に転移したとて、オブリビオンの抵抗は考えられるものだった。しかし、対空砲火の手が足りていない。
何故ならば、それを行えるオブリビオンたちは鋼鉄要塞に正面切って陽動たる突撃を繰り返す獣人達を抑えるのに割かれていたからだ。
「感謝します、同胞」
ハート・ライドン(ウマの戦闘猟兵・f39996)は鋼鉄要塞内部に飛び込み、蠢くオブリビオンたちを見やる。
彼等の力は歌声。
闇色の音符が満ちる戦場は、確かに厄介であったが、それ以上に脅威であったのは、敵のユーベルコードが外れても、絶望の海に戦場を塗り替えることにあった。
攻撃が失敗したとて、その後に続く状況は数で勝る『宵闇歌唱兵団』たちに有利となる。地の利を得ることにかけては彼等のユーベルコードの力は侮ることはできなかった。
しかし、ハートはためらわない。
なぜなら、今も正面切って突撃を繰り返し、生命を懸けて自分たちのために陽動をしている獣人たちの思いを知っているからだ。
「此度は彼等の生命を背負って戦場を駆けていると同義」
戦場にあって敵の攻撃は恐ろしいものだ。
歌声でもって此方の精神を冒す力は、避けようがないだろう。
けれど、それでもハートはためらわない。
任務遂行のためにも。
彼女の背後で戦う者たちのためにも。
「いざ、参ります」
手にした軍用銃たる小銃を構え、ハートは瞳をユーベルコードに輝かせる。
ストライク・イェーガー。
それは手にした小銃でもって自動的に敵とみなしたものを撃ち貫くユーベルコード。
弾丸が放たれる。
小銃のトリガーに指をかけ、その瞳は敵を捉え続ける。
「小賢しい。銃声で我らの歌が途切れるとでも」
『宵闇歌唱兵団』たちの歌声が響く。
銃声がどれだけ歌声を妨げ、銃弾が『宵闇歌唱兵団』たちを貫くのだとしても、彼等は血反吐を撒き散らしながら謳い続ける。
他者の精神を冒す。
ただそれだけのために彼等は絶望の海を広げるように闇色の音符を撒き散らすのだ。
「勇猛果敢であることは褒められることでしょう。ですが、私は」
ライフルのカートリッジを入れ替えながらハートは闇色の音符の間隙を縫うようにして疾走る。
狙うのは闇色に潰された戦場に立つ『宵闇歌唱兵団』たち。
彼等の力は塗りつぶされた戦場に立つからこそ際立つものである。ならば、後に続く猟兵たちのために己が先駆けとならねばならない。
「すでに多くの生命を背負っている。私の背には、私の生命一つ以上の生命が在る。だから」
ハートは闇色の音符に打ちのめされながら、さらに大地を蹴って飛びながらライフルの銃口を『宵闇歌唱兵団』たちに向け、引き金を引く。
弾丸が走り、『宵闇歌唱兵団』たちが次々と倒れていく。
さらに迫るオブリビオンの群れ。
際限ないかのような絶望の洪水。
されど、ハートの瞳はかげらない。未だユーベルコードの輝きが満ちている。
彼女はくじけない。
己の胸には理想がある。
いつか戦火が消えた時にこそ、己の望みは叶うはずだ。誰にも縛られず、何処までも遠くに駆けていく。
そのためにこそ己は戦線に加わったのだ。
「私は心に従い戦うのです。きっと世界は変わります。変えて見せます」
故に、引き金を今は引く。
己が望んだ戦場にハートの軍靴が打ち据えられる音を銃声と共に聞きながら――。
大成功
🔵🔵🔵
サク・ベルンカステル
「今度はオブリビオンの砦攻めか、、、不幸を、不条理をを撒き散らす存在は全て断ち斬ろう」
転移直後、空から落ちながら呟く。
先陣を切る猟兵が要塞の天井を破壊するのを視認すると
「せっかくの好機、使わせて貰おう」
UC剣鬼の翼刃を発動。
背中より体内の闇の血を固めた黒刃で出来た羽を持つ翼を展開。急降下しながら壊れた天井から見える敵兵達に翼の刃を放ちながら要塞内に飛び込む。
WIZの精神を蝕む闇の音符で攻撃されるも、幼少の頃の悲劇に比べれば耐えられぬ道理はなく宵闇歌唱兵団に突撃し乱戦に持ち込み両手で握った大剣と背の随行大剣4本で斬りかかる。
己が何をなさねばならぬかを知る者は幸福であるだろう。
それは迷わぬことであるから。
しかし、人は迷う。
どんな強烈な感情による指針が己の道行きを照らしているのだとしても、それでも迷う。それが人である。人は迷いながらも暗中を、その二本の腕でかき分けて進むものである。
それを不条理と呼ぶのならば、きっと未来はそういうものであった。
けれど、とサク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし者・f40103)は大空より落ちながらつぶやく。
「今度はオブリビオンの砦攻めか……」
眼下にあるのはオブリビオンの『超大国』の一つ、『ゾルダートグラード』の鋼鉄要塞。
すでに先行した猟兵たちが鋼鉄要塞の天井を盛大にぶち抜いている。
破壊の音が聞こえる。
サクにとって、それは好都合であった。
眼下にあるのは獣人たちに不幸を、不条理を撒き散らす存在である。
ならば、それを断ち切るのが己である。
そう決めたのだ。
己がそう歩むと決めたのならば、迷っている時間は限りなく少なくしなければならない。大空から落ちて、オブリビオンに鉄槌たる一撃を叩き込む。
それこそが己が剣であることの証明。
「せっかくの好機、使わせて貰おう」
瞳がユーベルコードに輝く。
彼の周囲に浮かぶ剣たちが反応する。背に負うのは無数の黒刃の羽で出来た翼。
羽撃くように剣鬼の刃翼(ケンキノジンヨク)は、サクの身体を落下の速度以上のものにして鋼鉄要塞へと飛び込む。
幸いにして既に猟兵たちがうがった穴がある。
「黒刃よ……翼となれ」
そして、敵を切り裂く役目を果たせとサクは小さくつぶやく。
放たれた羽のような刃が鋼鉄要塞内部に乱舞する。その斬撃がオブリビオン『宵闇歌唱兵団』たちの肉体を切り裂く。
「……助けてください。私たちを。そう求める声に猟兵、あなたは応えるのならば」
「陰鬱な歌だ」
サクは己に迫る闇色の音符と、己の精神を蝕む歌声に怯むことはなかった。
確かに助けてと叫ぶ声はサクの耳に張り付いて、己の心にある凄惨たる記憶を掘り起こすだろう。またえぐり出すだろう。
肉体ではなく、心が傷むのを感じる。
痛烈な痛みは、肉体に与えられる以上の痛みだ。どうしようもない。肉体をどれだけ強靭なるものへと鍛え上げるのだとしても。
心までは強靭なものと変えることはできない。
できることは。
「耐えることだ。そして、己の過去を思えば」
耐えられぬことができないわけではない。
そう、思い出すだけでいい。
奪われたことを。
取り返しのつかない過去を。
それを思えば、サクの瞳はどれだけ己の心を冒す歌声が響くのだとしても、みなぎる力を発露させることをやめない。
黒刃の羽が飛ぶ。
飛翔するサクと共に『宵闇歌唱兵団』たちの肉体を切り裂く。
周囲に飛ぶ大剣が乱舞するようにオブリビオンを断ち切り、サクの手にした大剣が振りかぶられる。
「全て断ち斬ろう」
己はそのために在るのだというようにサクの一閃が『宵闇歌唱兵団』の肉体を両断するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
突入のどさくさ紛れにわざと派手に転がって天井や壁を破壊、
反響物を減らしておくか
全壊はしない程度に!
あたた……|戦闘《しごと》前にコッチがお陀仏になるトコだったぜ……で、お相手はアンタらか。
歌を悪用ってのはちょいと……いや、かなり気に喰わねえな!
UC不空羂索発動、グレイプニルより複製した「レージング」により
敵の拘束と無力化を狙う。咽喉や胸部(肺)を念入りに!
確かにンなデケえだけの辛気臭え歌聴かされてりゃ|戦意喪失《気が滅入る》ってモンだ!
止めてやるよ!来な!「レージング」ッ!!
残党はガンディーヴァによる【誘導弾】【制圧射撃】で仕留めよう
散々歌を|認識さ《聴か》せて貰ったからな!
猟兵たちの突入は苛烈だった。
鋼鉄要塞の天井を破壊する一撃が幾度も打ち込まれ、その穿たれた要塞へと次々と猟兵たちが飛び込む。
完全なる強襲。
前面に獣人達による陽動突撃があったおかげでもある。
しかし、ここからが本番だ。
何せ、あくまで獣人たちによる陽動突撃は囮なのだ。彼等の生命を危険に晒すわけにはいかない。
疾く内部から鋼鉄要塞を叩かなければならない。
「っと、どさくさで悪いがよ!」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は空より強襲した鋼鉄要塞内部の天井や壁を手にしたスマートガンで撃ち抜く。
敵のユーベルコードは歌を起点としている。
反響すればするほどに強烈なものとなるだろう。これから己の後に続く猟兵たちが優位に戦いを進めるためにはこうした工作も必要だろうと判断したのだ。
「って、おわー!?」
調子に乗ってスマートガンを乱射していたら天井が崩落してくる。
猟兵たちの突入が激しいのもあるのだろう。しかし、ロウガは冷や汗をかく。|戦闘《しごと》前に己がお陀仏になる所だった。
「この要塞の破壊を優先しますか。ですが、それが命取りでしょう」
『宵闇歌唱兵団』たちが歌う。
その歌声は反響こそしないものの、しかし、脅威となってロウガに襲いかかる。
瓦礫すら無意味にするユーベルコードの歌声。
その歌声にロウガは毒づく。
「確かにデケえだけの辛気臭え歌聴かされてりゃ|戦意喪失《気が滅入る》ってモンだ!」
「これが絶望の歌。獣人たちの嘆きこそが」
「世界を満たすべきもの」
「うるせぇな、止めてやるってんだよ! 来な!」
ロウガは駆け出す。
その瞳はユーベルコードに輝いている。
確かに歌は強烈だった。自身の聴覚に訴え、己の心を冒す。
戦いばかりが続く戦乱の世界など、生命の重さも何もあったものではない。明日も知れぬ戦場に身を置かなければならないのは、それだけで心を削るものであったことだろう。
だからこそ、ロウガは止めるといったのだ。
「こいつが『救いの手』になるか『裁きの縄』となるか、全ては貴様ら次第だ!」
不空羂索(ラウンドアップ・ストラングラーズ)。
それは己の手にしたフックのついたワイヤー。ユーベルコードに寄って複製された『グレイプニル』と呼ばれるワイヤーが飛ぶ。
全てが念力によって操作されたそれらは空を舞うようにして『宵闇歌唱兵団』たちを取り囲む。
ぐるりと歌う彼等を取り囲むワイヤーは、彼等にとって救いの手にはならない。
これまで彼等の歌は何一つ救ってこなかった。
救うことをしなかった。
ただ、己と同じ絶望の海に他者を突き落とすためだけに、その歌を歌ったのだ。
ならば、ロウガは容赦などしない。
「『裁きの縄』となるようだな。ならよ! 散々歌を|認識《聴か》せてもらったからな!」
その駄賃だと言うようにロウガは拘束した『宵闇歌唱兵団』たちを締め上げ、纏めて手にしたスマートガンで撃ち抜く。
歌はいつだって誰かのために響く。
平和を願うように。
だから、誰かの胸を打つのだ。ロウガは、その歌を絶望にまみれさせたことにこそ憤るように鋼鉄の要塞を駆け抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
攻略が進むにつれて敵が弱くなるのではなく逆に強大になっていくのはなぜなんでしょう?
気になりますが今は目の前のことに集中です
獣人の皆さんが拓いてくださった活路を無駄にすることなど絶対にあってはならないのですから
歌…陰鬱なリズムです
気を張らないと引っ張られてしまいそうになる
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
となればこの旋律で闇を払うのが最適ですね
({蜂蜜色の陽炎}による『オーラ防御』で闇の音符を弾くと凝縮したオーラの塊を『斬撃波』と共に敵に向けて蹴り飛ばし、UC【蠱の巣】でオーラの矢に変える)
こんな薄暗い要塞に籠っているより光を浴びることをおすすめします
戦いというものは、いつだって苛烈である。
戦場に刻まれる旋律は、散り散り。
いくつもの生命が鼓動を刻む。跳ねるように、途絶えてしまうように。いずれも名銘において知られることのないことである。
散る生命がある。
それを哀しいと思う心があるのに、争いをやめられないのが人。
オブリビオンは、そんな理すら解することはない。己たちの欲望のためにこそ世界を滅ぼそうとする。
この縦陣戦線の世界においてもそうだ。
『超大国』が世界を虫食いのように侵略を行っている。
「攻略が進むにつれて敵が弱くなるのではなく逆に強大なっていくのは何故なんでしょう?」
猟兵がオブリビオンを打倒するということは、敵の戦力を削るということだ。
なのに、現れる敵は前にも増して強大なものとなっていることを播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は訝しむ。
気になる。
けれど、今は目の前に集中しなければならない。
なぜなら、己たちが空より鋼鉄要塞に突入するために獣人たちが正面切っての陽動突撃で敵を引き付けてくれているのだ。
「皆さんが拓いてくださった活路を無駄にすることなど絶対にあってはならないのです」
降り立ったクロリアが見たのはオブリビオン『宵闇歌唱兵団』たちと猟兵の戦いであった。
数が多い。
それ以上にクロリアが顔をしかめたのは、戦場たる鋼鉄要塞に響く歌だった。
酷く陰鬱な声だった。
助けを求めながら、手を差し伸べるものを絶望の海に引きずり込まんとするかのような音。旋律。リズム。
「歌……陰鬱なリズムです」
「これこそが世の理。世界には悲哀が満ちている。喜びなど、表裏一体で即座に悲しみに裏返るもの。苦痛がなければ喜びを感じることのできないのなら」
『宵闇歌唱兵団』たちが歌う。
「全て絶望の海に、この暗闇の中に沈むがよいのです」
その歌は心を冒す。
けれど、クロリアの瞳はユーベルコードに輝く。
その輝きに幕を下ろすようにして瞼が閉じる。
静かに。
ただ手を伸ばす。水平に伸ばした腕が示すのは己が生き方である。己は旋律を知る。旋律によって己を表現する。
言葉ではなく。
ただ表現する肉体と旋律でもって他者に己を示すのだ。
「なら、この旋律で闇を払うのみです」
クロリアの瞳が見開かれた瞬間、オーラが闇色の音符を弾く。己の中にある旋律が告げている。
己の胸の中にあるのは蒼天に輝く太陽放つ陽光。
輝く大地を表現した栄華の旋律は、絶望と悲嘆に沈む闇を払う。
踊るクロリアの足が凝縮されたオーラが斬撃波と共に『宵闇歌唱兵団』へと叩き込まれる。それは矢のように一団へと叩き込まれ、瞬間弾けるようにして膨れ上がる。
周囲に撒き散らされるのは蜂蜜色のオーラで出来た羽虫の群れを解き放つ。
「蠱の巣(コノス)――蜂の巣をつついたよう、とはこういうことなんですね」
それこそがクロリアのユーベルコード。
解き放たれた羽虫の群れに備えられた針が『宵闇歌唱兵団』たちを襲う。
どれだけ闇色の悲嘆を歌うものがいるのだとしても、クロリアはそれらを晴らす陽光を灯す。
その色を備えた羽虫たちは、次々と『宵闇歌唱兵団』たちを穿つ。
「こんな薄暗い要塞にこもっているより光を浴びることをおすすめします」
クロリアはそう告げ、絢爛たる旋律と共に迫りくる闇を振り払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
「本日の天気は晴れところにより…猟兵とミサイル弾丸が雨あられとオブビリオンに降り注ぐでしょうくまー。」
空挺部隊のみんなここまで運搬感謝~っと、オレのツキミズキは完全陸上型だからな、空は飛べない。着地に要注意だくまー。
【行動】
さて、ツキミヅキ≪パンツァーフォートレス≫発動。
自力移動できなくなるが、空中から地上に落ちる現在は関係ないな。
『自動射撃』モードセット。
『誘導弾』『エネルギー弾』の『一斉射撃』で地上の敵を『範囲攻撃』しつつ降下。
オレはツキミヅキとは逆の位置に別に降下する。
アマロックの『制圧射撃』でオブビリオンを挟み撃ちにする。
ツキミヅキ…オートでちゃんと着地できたくま~?
これはロマンだろうかとオーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は思う。
いや、ロマンんだろうと思う。
空よりの強襲。
憎きオブリビオンの鋼鉄要塞の前面には陽動突撃を繰り返す獣人たちの姿が見える。
風が頬を、毛並みを逆立てる。
己よりも先に降下していくのは、鋼鉄の巨人。キャバリア『ツキミヅキ』であった。
「本日の天気は晴れところにより……猟兵とミサイル弾丸が雨あられとオブリビオンに降り注ぐことでしょうくまー」
軽口を叩けるほどには余裕がある。
空挺部隊の者たちに運んでもらったことへの感謝はつきない。
何せ己とキャバリアは完全に陸戦型である。
飛行する能力を持ち得ない。だからこそ、空よりの強襲にはインパクトがあったことだろう。
猟兵たちが次々と降下し、鋼鉄要塞の天井をぶち抜いていく様を見遣りオーガストは笑う。あれこそロマンである。
「パンツァーフォートレスだくまー!」
オーガストの瞳がユーベルコードに輝く。
彼のキャバリア『ツキミヅキ』が固定砲台モードへと変形しながら鋼鉄要塞に飛び込んでいく。砲弾を撒き散らすようにして周囲に放つ。
それは移動することができなくなる形態であったが、降下している最中なら関係ないだろう。そして、オーガストは『ツキミヅキ』とは反対側へと降り立つ。
単身降り立っている。
キャバリアは自動射撃モードにセットしてある。
まるで炸裂弾のように『ツキミヅキ』は砲弾を放って鋼鉄要塞に取り付く。
「うまく着地できたみたいくまー! オートモード便利くまねー!」
オーガストも遅れて着地する。
けれど、そこに響くのは酷く陰鬱な歌だった。
オブリビオン『宵闇歌唱兵団』たちの歌声。
人の心を冒す歌声。
悲哀さえ感じさせる歌は、しかし、オーガストに闇色の音符を届かせることはなかった。『ツキミヅキ』の砲撃の前に音が押しつぶされるのだ。
しかし、音符は地面に落ちて絶望の海で塗りつぶしていく。
そこに立つ『宵闇歌唱兵団』たちは地の利を得る。しかし、オーガストは、それをさせない。何のために『ツキミヅキ』と反対側に降り立ったと思うのだ。
「そうなるのは想定済みくまー!」
「挟撃……私たちの歌を」
「その歌は響かせないくまー」
手にしたアサルトライフルの弾丸が『宵闇歌唱兵団』たちを撃ち抜いていく。
闇色の音符は落ちて絶望の海で戦場を塗りつぶしていく。けれど、オーガストと『ツキミヅキ』は構わない。
どれだけ地の利と数を頼みにするのだとしても、止められるものではない。
なにせ、彼等にはロマンというものが欠けている。
ただ歌うだけ。
そこに悲痛や悲哀が込められている絶望を体現するのだとしても、オーガストにはロマンに勝る者はないのだ。
「空からの急降下強襲とかロマンしかないくまー『ツキミヅキ』、一斉射で蹴散らすくまー!」
オーガストの言葉に答えるように『ツキミヅキ』の砲撃が、彼の予報通りに雨あられとオブリビオンたちに降り注ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
オブリビオンマシンを駆る強敵のノイン氏。
怪しげな雰囲気プンプンな司令。
大変そうな依頼ですが、この世界の獣人さん達の命と暮らしを守る為、頑張りますよ~。
と気合入れ。
空中浮遊と念動力と空中戦で優雅に舞い降りる。
その過程で風の属性攻撃・結界術・全力魔法・高速詠唱で、詩乃が中心に収まるように周囲に高速の竜巻を作り出し、歌が詩乃に届かないようにして、闇の音符を防ぎます。
念の為、オーラ防御を纏い、更に天耀鏡で盾受けできるように態勢を整える。
そして響月を楽器演奏して《帰幽奉告》。
竜巻も要塞の防御も全てを突破して魂と精神に直接響く楽曲にて、宵闇歌唱兵団を倒していきますよ!
獣人さん達の頑張りを無駄にはしません。
大空からの強襲。
それが獣人たちと猟兵たちの共同戦線が編み出した鋼鉄要塞への攻略法であった。
空からの強襲をオブリビオンたちが警戒していないわけがない。だからこそ、獣人たちは命がけの陽動突撃によって対空戦力を要塞の外に引きずり出すために果敢に立ち向かっている。
多くの猟兵たちがそれに報いようとしている。
無論、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)も同様である。
これが大変な戦いであることはわかっている。
転移直後の空より落下する感覚は、臓腑をせり上がらせるようなものであった。けれど、それを詩乃は振り払う。
「敵はオブリビオンマシンを駆る『ノイン』氏。怪しげな雰囲気プンプンな司令」
オブリビオンの『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』。
機械兵士たちとキャバリアを量産することによって世界を侵略しようとしている。これを打ち倒すためには鋼鉄要塞を破壊することが第一歩である。
「頑張りますよ~」
気合を入れる。
空より落下することに恐れはない。
念動力でもって詩乃は先行した猟兵たちがうがった鋼鉄要塞の天井の穴から降り立つ。
「次から次へと」
「敵の侵入をこれ以上許してはなりません」
『宵闇歌唱兵団』たちの歌声が響き渡る。
酷く陰鬱な歌声だった。哀切を感じさせる。しかし、詩乃の瞳はユーベルコードに輝く。
彼女が立つ地面を中心にして風が渦巻く。
それは彼女の操る風。竜巻へと変化したそれは、闇色の音符を弾き飛ばすようにして荒ぶ。
「この曲は貴方達の葬送の奏で。音に包まれて安らかに眠りなさい」
手にした龍笛が奏でられる。
ユーベルコードによる演奏。魂と精神に作用するのは『宵闇歌唱兵団』たちのユーベルコードも同様であったことだろう。
哀切の歌を『宵闇歌唱兵団』たちが歌うのならば、詩乃が奏でるは魂の安寧を願うものであった。
どんな生命にだって終わりはやってくる。
不可逆な生命だからこそ、人は懸命に今を生きるのだ。
オブリビオンにはそれがない。
過去の化身。過去に歪んで、過去より来訪する者たち。だからこそ、今に懸命になれない。哀切の歌は、彼等の性質を示すようなものであったことだろう。
「 帰幽奉告(キユウホウコク)、過去は過去に。にじみ出ることなく、そのまま眠りなさい」
龍笛の音色が哀切の歌をかき消していく。
膝をつく『宵闇歌唱兵団』たち。崩れ落ちた膝から霧散していく彼等を横目に詩乃は鋼鉄要塞内部へと歩みを進める。
この歩みが全てのために捧げられるものであると詩乃は知る。
今も鋼鉄要塞の前面で突撃を繰り返す獣人達。
彼等の頑張りを詩乃は知っている。だからこそ、それに応えるためには。報いるためには。
「私ができることをやらねばならないのです」
静かに詩乃は龍笛の音色と共に鋼鉄要塞の奥へと進む。
その後にオブリビオンは存在しない――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
命懸けの支援に感謝を
この大恩、必ず報いさせてもらう
空中でUC発動
炎の【オーラ防御】を纏いながら
落下速に更に加速をつけて|驀地《まっしぐら》に急降下する
着地と同時にパイルバンカー起動
炎の衝撃波と飛び散る瓦礫を手近な敵へお見舞いしよう
間を置かずに床を跳び、敵陣へ吶喊する
例え絶望の闇で塗り潰そうとも
|地獄へ誘う鬼火《ウィル・オー・ウィスプ》がそう簡単に掻き消せるものか!
炎を巻き上げて酸素をも【焼却】しよう
肉迫して|改造銃《フィフティー・フィフティー》の銃口を押し付け【捨て身の一撃】で【零距離射撃】を敢行しよう
然るべき報いを与えてやる
祈れ、お前達に出来るのはそれだけだ
「いけ! 進め!!」
砲火の中を進む者たちがいる。
その胸に去来しているのは勇気か、それとも恐怖か。
いずれにしても、彼等は前に進まねばならない。獣人たちはオブリビオンの侵略に対抗している。いつだって生命を懸けなければならないのは同じだ。
けれど、陽動突撃とは危険が跳ね上がるものである。
ともすれば、そのまま死に果てることもあるだろう。
だからこそ、イーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は、そんな彼等に対して大恩があると思うのだ。
自分たちが安全に空からの強襲でもって鋼鉄要塞に降り立つ事ができているのは、獣人たちが鋼鉄要塞に陽動突撃を果敢に繰り返しているからだ。
それなくば、己たちは多くが対空砲火にさらされていたことだろう。
「必ず報いさせてもらう」
風圧を受けてウサギの耳が揺れる。
担いだ大型の改造銃を構える。落下の速度は凄まじいものであったが、さらに己の身体から各々オーラを噴出させる。
身をまとう炎は、オレステスの業怒(オレステス・アヴェンジ)。
己の激情のままに、空よりイーブンは加速して落ちていく。いや、突撃するのだ。正面から突撃する果敢なる戦友たちのようにイーブンもまた加減などせぬ加速を得て、天よりの鉄槌のように鋼鉄要塞に飛び込む。
手にした改造銃はパイルバンカーが取り付けられている。
その鉄杭の一撃は落下の加速と勢いを合わせ、鋼鉄要塞の天井をたやすく打ち抜き、瓦礫と衝撃波を内部にあるであろうオブリビオンたちに見舞うのだ。
「取り付いた。これで|同点《イーブン》だ、クソッタレ」
瓦礫を吹き飛ばしながら『宵闇歌唱兵団』たちが現れる。
彼等の瞳にあるのは哀切と絶望だけだった。イーブンのように激情はない。ただ流されるままに絶望を垂れ流すだけの存在。
その歌声は、他者を鼓舞するのではなく、己たちの見舞われた絶望の海へと他者を引きずり込むためのもの。
故にイーブンの方は激情に震える。
こうも違うのかと思う。鋼鉄要塞に果敢に突撃を繰り返す命がけの戦いをする獣人たちと、絶望を撒き散らすだけのオブリビオン。
あまりにも違い過ぎる。
激情の滾りは、イーブンの瞳にユーベルコードの輝きを迸らせる。
「|地獄へ誘う鬼火《ウィル・オー・ウィスプ》がそう簡単にかき消せるものか!」
炎が吹き上がり、凄まじい熱波を周囲に撒き散らす。
膨張した空気を背に受けてイーブンが飛び込む。
ウサギの脚力でもって飛ぶイーブンの速度はユーベルコードと重なって凄まじい踏み込み。
一気に距離を詰めた『宵闇歌唱兵団』たちへと銃口を押し付ける。
「その絶望の歌は響かせない」
引き金を引く。
頭部を吹き飛ばした『宵闇歌唱兵団』の身体を蹴り飛ばしながら、イーブンはさらに飛ぶようにして疾走る。
此処は戦場だ。
『宵闇歌唱兵団』たちがこれまで撒き散らしてきた絶望の中に戦友たちがどれほど引きずり込まれただろう。
それを思えばこそ、イーブンの激情は冷めることなくますます燃え上がるのだ。
「然るべき報いを与えてやる」
イーブンは改造銃の銃口を『宵闇歌唱兵団』の口腔へと押し込み、睥睨する。
「祈れ、お前たちに出来るのはそれだけだ」
引き金と共に銃声が響き渡り、イーブンは絶望の海に染まった戦場を吹き飛ばすように手にした改造銃と共に走り抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シプラ・ムトナント
敵は圧倒的物量、こちらは連戦。楽な戦いにはなりませんが……それでも、行かなければなりません。
わたし達を信じて陽動に回って下さった、皆さんの為にも。必ず、勝って帰ります。
さて、全てに|散弾銃《レミー》を使っていては弾が幾らあっても足りません……ここは『C.Q.C.C.』を使って接近戦を挑みます。
衛生兵の救急カバンはやわではありません。中身の心配は無用ですし、弾薬要らずで【継戦能力】は抜群です。
叩きつけ、横薙ぎ、振り上げ。どれか一つでも入れば攻撃は続行です。カバンによる【気絶攻撃】を行い、歌を止めつつ敵の気絶を狙います。
気絶させる度に対象を変更し、こちらの攻撃を途切れさせないようにいたしましょう。
空に転移した後、鋼鉄要塞に降下して取り付く。
言葉にすれば簡単なことだっただろう。容易いもののように思えたかもしれない。
けれど、それは対空砲火がなければ、の話だ。
鋼鉄要塞である以上、それらが備えられていないわけがない。けれど、猟兵たちが空に転移して降下する際に対空砲火は殆どなかった。
何故か、と問われたのならば獣人たちの協力があったからに他ならない。
彼等は命がけの陽動突撃を鋼鉄要塞の正面から果敢に行っている。囮といえば良いだろうが、それはあまりにも生命の危険が高いものであった。
しかし、彼らは、それを問わない。
己たちの生命は確かに惜しむべきものであったけれど、それ以上に鋼鉄要塞を放置していれば、それだけ銃後の生命を脅かすものであると知っているからだ。
それに、とシプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は羊毛を思わせるふわりとした髪を風になびかせながら鋼鉄要塞に降り立つ。
すでに猟兵たちが鋼鉄要塞の天井を穿ちながら突入しているにも関わらず、何処から湧き出すのかというようにオブリビオン『宵闇歌唱兵団』たちが殺到してきている。
「絶望の歌を」
「私たちの哀切を」
響く歌声は闇の音符となってシプラに迫る。
彼女は手にした散弾銃を構えなかった。
代わりに手にしていたのは救急カバンであった。
「あなた達が如何に絶望の歌を歌うのだとしても。それでも、今もこの要塞に突撃を繰り返す皆さんの覚悟は、決意は汚すことはできないのです。鋼が強靭であるのと同じように」
シプラの中には決意がある。
意志がある。
鋼は傷つけられど、曲がることはない。彼女の意志はまさにその通りであった。
己たちを信じて陽動に回ってくれた獣人達がいる。彼等の生命の危険は顧みるものであったが、それでも彼等は果敢に今も戦っているのだ。
ならばこそ。
「私たちは彼等の為にも。必ず、勝って帰ります」
そのためには、と彼女は絶望の歌の最中に飛び込む。闇色の音符は彼女の身体を打ち据えるだろう。
けれど、彼女の手にした救急カバンは闇色の音符を叩き落とし、さらに『宵闇歌唱兵団』へと迫るのだ。
「大丈夫、中身は無事です」
振るう一撃は、C.Q.C.C.(クロース・クォーターズ・カバン・コンバット)。
そう、衛生兵の救急カバンはやわではないのだ。
それに、とシプラは思う。
これは連戦だ。敵は圧倒的な物量と質を誇っている。手にした散弾銃を今から撃ち抜いていては弾丸が心もとない。
ならばこそ、彼女は手にした救急カバンを振るう。
振り回すことによって得られた遠心力が凄まじい重さとなって『宵闇歌唱兵団』たちの横っ面を叩きのめす。
「ぐはっ!? ば、馬鹿なことを!」
「いいえ、馬鹿なことではありません。衛生兵だとて戦えるのです。これがわたしの戦いなのです」
振るう一撃が入れば、シプラは止まらない。
叩きつけ、横薙ぎに振るい、振り上げて落とす。
その連撃は『宵闇歌唱兵団』たちに歌声を響かせる暇すら与えない。
どんなに歌声がシプラの心を冒すのだとしても、彼女は止まらない。いかにやわらかき羊毛を携えているのだとしても。
折れるわけにはいかないのだ。
今も果敢に突撃を繰り返す同胞たちのためにも。
己の真芯は鋼。
故に折れることなく。たわむことなく。ただ只管に戦場を疾走る彼女は、戦場の申し子たる所以を示すように、その救急バックを振るい、己の敵を打ち倒すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【シャナミアさんと】
ここがヨーロッパ戦線……。
オブリビオンとの戦争っていうのが、まだちょっともやってるけど、
ここは獣人さんたちの頑張りに応えないとね。
【D.U.S.S】に【等価具現】を乗せて、相手の歌を打ち消していこう。
『希』ちゃん、リソース7割持っていっていいから、位相分析よろしく!
「知ってる? 『波』って打ち消すことができるんだよ?」
『その計算とんでもなくめんどくさいんだけど、お姉ちゃん、知ってる?』
丸投げしないから!わたしも手伝うから!
さ、これで相手の攻撃は無力化したよ。
シャナミアさん、よろしくお願いしちゃう、ねー♪
陣形が崩れたら、わたしたちも【M.P.M.S】で残敵掃討だー!
シャナミア・サニー
【理緒さんと】
うーん、キャバリア戦かと思ったら対人戦かー
まぁ猟兵としてはやること変わんないんだけどさ
久しぶりすぎて戦い方忘れちゃったよ
えーと、剣と盾はあるしっと
まぁ1対多は得意なんだけどさ!
今日も理緒さんと希ちゃんの姉妹の仲が良き良き
お姉さんほんわかしちゃうよ
のんびりしつつ戦闘準備
たまにゃ竜の力でやるとしようか!
いくよ!【ドラゴニック・ブレイヴハート】!
羽根で飛び上がって上を取ったら
光属性の『ドラゴン・ブレス』!
くらえーっ!って口から出すからその間しゃべれなくなるんだけどね!
宵闇とかいってるし闇属性にはよく効くでしょたぶん
よーし、理緒さん、全体は崩した
残敵はちまちまっと各個撃破でよろしく!
「ここがヨーロッパ戦線……」
獣人戦線。
獣人たちが暮らす世界に侵略するオブリビオンの『超大国』。その一つである『ゾルダートグラード』が迫るドイツ及びヨーロッパ周辺。
その戦場に楔のように穿たれているのが鋼鉄要塞である。
この鋼鉄要塞を破壊しなければ『ゾルダートグラード』の勢いは止まることを知らないだろう。
そのことに対して、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はモヤモヤとしたものを抱えていた。しかし、それは今は頭の片隅に於いておかねばならないことであることも承知していたのだ。
獣人たちが今も鋼鉄要塞に対して陽動突撃を繰り返している。
それによって自分たちは空からの鋼鉄要塞への強襲を容易なものとしてもらっているといっても過言ではないのだ。
先行した猟兵たちの穿った天井より理緒とシャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)は降り立つ。
「キャバリア戦じゃない対人戦っての、久しぶりすぎて忘れちゃったよ」
「ええー!?」
「いや、大丈夫大丈夫。剣と盾はあるしっと!」
「本当に大丈夫? やっぱりダメでしたーとかなしね!」
「わかってるってば! まあ、見ててよ。一対多は特異なんだよ!」
シャナミアが盾を構えて降り立った鋼鉄要塞内部へと疾走る。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
竜の因子を持つ彼女の肉体の内側から力が発露する。確かに彼女はキャバリア戦闘のほうが得意なのだろう。
けれど、白兵戦ができないとは言っていない。
「顕現せよ、勇ましき竜の力!」
ドラゴニック・ブレイヴハート。
その心臓に宿る力は、彼女を黒き龍鱗を纏いし姿へと変貌させる。
背に守る理緒はユーベルコードを発現させる。
「敵のユーベルコードは歌声っていうのなら、その歌を打ち消してしまえば!」
「私たちの歌声をかき消すなど。歌は何ものにも遮られない」
ほとばしる『宵闇歌唱兵団』たちの歌唱。
闇の音符が荒ぶように理緒たちを襲う。
しかし、理緒は笑うのだ。
「知ってる?『波』って打ち消すことができるんだよ?」
『その計算とんでもなくめんどくさいんだけど、お姉ちゃん知ってる?』
位相分析が済んだ『希』が辟易したようにつぶやく。
「丸投げしないってば! わたしも手伝うから!」
『いつも丸投げしている人の言葉は信用できないんだよね』
「ほんとほんと!」
そんなやり取りを背に受けて、シャナミアは戦いに際してどうしてもニヤけるのが抑えられなかった。
AIである『希』と理緒のやり取りがどうしても姉妹のような仲に思えてならないのだ。
「良き良き」
「シャナミアさん、よろしくお願いしちゃう、ねー♪」
理緒と『希』が絶望の歌を打ち消す。
音は波。
全く同じ波をぶつければ、音は響かない。ユーベルコードが歌声を起点としているのならば、その起点たる音をかき消されてしまえば闇の音符は生み出されず、戦場を絶望の海に染め上げることもままならないだろう。
となれば、どうなるかなどわかりきっている。
「――!」
「かき消されているから、何言っているかわからないんだよ!」
シャナミアの瞳がユーベルコードに輝く。
口腔より湛えられた輝き。
それは溜め込まれたドランゴン・ブレスの砲撃の一撃。吹き荒れる炎は、一気に『宵闇歌唱兵団』たちを巻き込み吹き飛ばしていく。
敵の数は多い。
何処からともなく溢れ出してくるのはもはや仕方ない。
けれど、敵の全体を突き崩したのなら。
「理緒さん、崩したよ! 今!」
「うん、任せておいて!」
理緒のミサイルランチャーのハッチが展開する。火線を引くようにして飛ぶミサイルがユーベルコードをかき消された『宵闇歌唱兵団』たちへと襲いかかる。
頼みの綱である歌声を失った彼等にそれを防ぐ手立てなどあろうはずもない。
荒ぶ爆風の最中をシャナミアは理緒と共に疾走る。
この最奥にこそ鋼鉄要塞を破壊するために打倒しなければならない敵がいる。
なら、立ち止まっている時間は多くはないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
あ、あのステラさん?
やっと追いつきましたけど、これはどういう状況です?
笑顔とかあんまり見えないですし、
わたしさっきから蕁麻疹がとまらないんですけど。
どシリアスじゃないですか!
お薬飲まないとわたし呼吸困難で倒れちゃいますよ!?(あわててラムネぼりぼり)
でも相手は『宵闇歌唱兵団』なんですよね。
音楽でわたしに対抗しようなんて、片腹痛いですね。
いえ、アレルギー腹痛ではなくてですね!?
ステラさんも知ってるじゃないですか。音楽は全世界共通言語です。
わたしの演奏があれば『宵闇歌唱兵団』なんて敵じゃないですよ!
相手が『心を冒す歌』なら、わたしは『心を育む曲』です!
いっちゃえ、全力『Canon』!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ルクス様遅いですよ
新しい|戦い《エイル様の追っかけ》はもう始まっているのです
具体的にここはコメディ禁猟区……ルクス様、息できています?
さておき、またノイン様ですか
|『平和』を冠する争いの体現者《彼女の自己紹介》は嘘では無かったようですね
キャバリア……熾煌でも持ち出されると大変ですが
あの時彼女が口ずさんだ『暁の歌』の意味を聞きに行きましょうか
ルクス様準備は……楽器!?ナンデ!?
ええいっ、こういう時だけアクティブが過ぎる!
あれですか、再生の前には破壊が必要とかそういう理論ですか!?
とりあえず音楽家はろくな者がいないという結論で
【シーカ・サギッタ】いきます!
後はルクス様に任せます(ごふ
身を苛むのは蕁麻疹。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は勇者である。しかし、世界を救うのならばシリアスばかりやっていられないし、時には喜劇のように差し込まれるコメディリリーフだって必要なのである。
言うなればルクスは、そういう種類の勇者であった。
だから、新しき世界、獣人戦線の有様を見遣りどうにも落ち着かないのである。
「あ、あのステラさん? やっと追いつきましたけど、これはどういう状況です?」
いきなり転移してから空中に放り出されてオブリビオンの『超大国』、『ゾルダートグラード』の鋼鉄要塞に降り立ったルクスは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)に問い掛ける。
「ルクス様、遅いですよ」
「いえ、いきなり呼ばれて飛び出て来た割には飲み込みが速い方だと思うんですけど!」
「新しい|戦い《『エイル』様のおっかけ》はもう始まっているのです」
「いえ、ですから、この状況をですね!」
ルクスは周囲を取り囲む圧倒的なオブリビオンの数に目を見張る。
いや、それ以上に自分の肌の上に浮かぶ蕁麻疹に驚いていた。どう見たって状況はシリアすである。
どういうあれでこうなっているのかルクスにはさっぱりであった。
獣人戦線の世界はかなりのどシリアス。
おくすり飲まないとルクスはやってられない。呼吸困難になってしまいそうだった。
「具体的にここはコメディ禁猟区……さあ、おくすり飲みましょうね」
「はい……って、いやそんな暇なくないです!?」
ルクスは己たちに迫る歌声を聞く。
心を冒す歌声。
慌ててラムネを口の放り込んでボリボリしながらルクスは、喉を鳴らす。
「ふふん、音楽でわたしに対抗しようなんて、片腹痛いですね」
「ええ……」
ステラは生返事していた。学習して欲しい。そういう生返事している時は、確かにシリアスなことを考えているのだろうけれど。
ステラは取り囲まれ、オブリビオン『宵闇歌唱兵団』たちが放つ歌唱によって心を冒される。心を苛む歌声、身を切り刻むほどの陰鬱さと哀切さに満ちていた。
けれど、ステラの心を占めるのは、それではなかった。
『平和』を冠する争いの体現者。
かつて戦ったオブリビオンが、そう己を評していたことを思い出す。
生身単身で戦っていたが、今回の余地から鑑みるにキャバリアを持ち出してくるのだろう。『熾煌』を持ち出されたのならば、とステラはフル回転でそんなことを考えていたのだ。
だからこそ、ステラは聞き逃していたのだ。
そう、敵は歌声を持ってユーベルコードと為すオブリビオン。
勇者ルクスがそれに対抗しようとするのならば、必然的に演奏をおこなうことでると。
「ルクス様準備は……」
「ええ、ばっちりです!」
バイオリンを構えたルクスがいた。いや、違う。待って欲しい。ステラの言う準備とは、そういうことではない。
戦う準備って意味だったのだ。間違っても演奏ではない。
しかし、ルクスにとって『宵闇歌唱兵団』に対抗するにはこれが一番なのだ。
歌声をかき消すには演奏。
「アレルギーでお腹壊したんですか!? ナンデ演奏? 楽器ナンデ!?」
「いえ、アレルギー腹痛ではなくてですね!?」
「ナンデ!?」
「ステラさんも知っているじゃあないですか。音楽は世界共通言語です。わたしの演奏があれば『宵闇歌唱兵団』なんて敵じゃないですよ!」
ふんす。
ルクスがバイオリンを構える。
あ、やめて、とステラが駆け出す時にはすでに遅かった。
戦場に響き渡るのは、Canon(カノン)という名の不協和音にして破壊音波魔法。
荒ぶる嵐のように響き渡る破壊音波は、『宵闇歌唱兵団』たちの放つ歌声をたやすく吹き飛ばす。
「ああ! こういうときだけアクティブだしアグレッシヴだし! 過ぎてますよ、色々と! あれですか、再生の前には破壊が必要だとかそういう理論ですか!?」
ステラは耳をふさぐ。
塞いでもそれを突き抜けてくる音がある。
凄まじいまでの音の濁流。
濁流って言っちゃった。
「相手が『心を冒す歌』なら、わたしは『心を育む曲』です! いっちゃえ、全力!」
「いえ、どう考えても『心を壊す不協和音』……!」
それはオブリビオンも同意する所であったことだろう。
哀しいことに反論する暇すら与えられずに響き渡る音に彼等は泡を吹いて昏倒してしまっていた。幸いであったのかもしれない。
ステラはルクスの演奏に下手に耐性が出来ているせいで、気絶することすら許されない。
ごふって泡拭いても中途半端に意識が残っているのだ。
「と、トドメを刺しておきますけど……あの、後はルクス様、おまかせします」
投げナイフの一撃が昏倒した『宵闇歌唱兵団』たちを射抜く。
だが、そんなステラをルクスは抱えてにっこり笑むのだ。
「ステラさん、まだ寝るには早いですよ」
にこ。
にこ。じゃないが。
ステラは此処、コメディ禁猟区であると伝えたはずなのに、ルクスのいつものペースに飲み込まれるしかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『オブリビオン戦車隊』
|
POW : タンクキャノン
【戦車砲】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 超大国の改造成果
自身の【車体】を【長距離砲撃形態】に変形する。変形中は攻撃力・射程が3倍、移動力は0になる。
WIZ : タンクデサント
X体の【随伴歩兵】を召喚する。召喚された個体の能力値・戦闘力・技能は自身のX分の1。
イラスト:aQご飯
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「対空砲火を怠るなとあれほど!」
「しかし、敵が正面から突撃してきているのです、これを抑えなければ!」
鋼鉄要塞のオブリビオンたちはたじろいでいた。
確かに『宵闇歌唱兵団』たちは動揺はしていなかったが、しかし、実情だけ見れば敵のニ面作戦によって翻弄されていることは言うまでもない。
彼等にとって誤算だったのは、前面で突撃を果敢に行なう獣人たちの勢いが削がれないことだった。
上空から鋼鉄要塞に飛び込んでくる猟兵達はいざしらず。
ユーベルコードを扱えるとは言え、獣人たちは己たち機械兵士たちに劣る。なのに、彼等は気迫を持って此方を抑え込んでいるのだ。
「ええい、ならば戦車隊を出せ!」
「できません……それが……」
「何故だ!」
「今も、猟兵と戦車隊が要塞内部で交戦しているからです!」
ここに来て鋼鉄要塞を守備する機械兵士たちは理解しただろう。猟兵達を止めねばならぬが、外の獣人たちも抑えねばならない。
両腕を封じられた今、彼等が出来ることは、もはや。
「ええい、まずは猟兵共だ! 奴らを叩けば獣人共の士気も下がる!『オブリビオン戦車隊』! まずは内部の猟兵を一掃せよ!」
その命令を受けて『オブリビオン戦車隊』は要塞の外に打って出るのではなく、内部に突入してきた猟兵たちを抹殺せんと、その重たい戦車と共に殺到するのだった――。
ハート・ライドン
※連携、アドリブ歓迎
要塞の内部で戦車隊を出して来ましたか
推測ですが、猟兵の排除を優先したのでしょうね
一両でも見逃したら、同胞達に被害が及ぶかもしれません
ここで全て潰してしまいましょう
先程の敵とは違って
魔術的な力は持ち合わせていないようですね
物理特化の鉄塊が相手なら
【迅雷疾走】で参りましょうか
この姿なら、物理攻撃は恐るるに足りません
加えて、通電物質内の移動も可能です
戦車に体当たりし、すり抜けて突破がてら
車両の内部に電撃を放って攻撃します
操縦する敵兵を感電させつつ
放電時に発生する熱で
車両へのダメージも狙います
一両、また一両と
車両を通過して進みましょう
道を塞ぐならば、無理やりにでも通していただきます
戦場を見据える。
鋼鉄要塞内において『オブリビオン戦車隊』が自分たちに向かってきている現状を考えるに、鋼鉄要塞の前面で陽動を行っている獣人たちが窮地に立たされている可能性をハート・ライドン(ウマの戦闘猟兵・f39996)は一瞬考えた。
だが、その考えは即座に否定される。
逆だ。
オブリビオンにとっての脅威とは即ち猟兵。
その猟兵が鋼鉄要塞内部にあるというのであれば、内側から戦力が瓦解することも考えられる。
ならば、内部に入り込んだ猟兵を一掃してから、外の戦力を排除しようとするのが筋であったことだろう。
もしも、ハートが逆の立場であったのならば、直近の脅威を廃して万全を期したであろうから。
「ですが、一両でも逃したら……」
考えうる最悪は、一つ。
あの火砲の脅威が同胞たちに向けられるということだ。
「長距離砲撃形態!」
「ここで全て消してしまいましょう」
疾走る。
ハートの額に浮かぶように毛並みの異なる白い模様が戦場に疾走る。
己が願うのはただ一つ。
風よりも、音よりも速く。
駆け抜けること。
己がなんであるのかをハートは規定する。否、定めない。
彼女は変異階梯。
獣人階梯において得意なる存在。ユーベルコードの煌めきと共に己に向けられた砲身の砲口を見やる。
わかっている。
知覚出来ている。
「撃て――」
その言葉と共に放たれる轟音と砲弾。
それは狙い過たずハートへと向かっている。けれど、彼女の身体が変容する。黒い毛並みの馬。
変異階梯故にハートは己の姿を変える。
黒馬そのものと成った彼女が疾駆した瞬間、周囲に稲妻がほとばしる。
そう、彼女は疾走る。
何処までも走っていける駿馬の如き体躯でもって、己が敵を見据えるのだ。
轟音が響き、砲弾が炸裂する。
しかし、その爆風の中にハートの姿はなかった。あるのは迅雷疾走(ジンライシッソウ)たる稲妻の跡のみ。
そう、すでに彼女の疾駆は終わりを告げている。
『オブリビオン戦車隊』は唯一のことしかできなかった。
即ち、砲撃すること。
そして、それが最期だった。稲妻のように走り抜けたハートの身体は黒馬。されど、物理攻撃など物ともせず、そして、通電物質の内部を移動する能力を得た彼女は『オブリビオン戦車隊』の操る戦車の内部へと飛び込み、その肉体から稲妻を迸らせ、一瞬で丸焼きにしたのだ。
「な、何が起こった!?」
「わからない、これは――」
『オブリビオン戦車隊』たちはただ、一つしか見ることができなかった。
戦場を疾走る稲妻纏う黒馬。
「道を塞ぐならば、無理矢理にでも通していただきます」
ハートは止まらない。
次々と『オブリビオン戦車隊』の戦車の内部にて稲妻を解き放ち、内部から焼滅しながら戦場を走り抜けていく。
何も恐れることはない。
己は走り抜けることのみをすればいいのだ。
ただそれだけで、同胞の助けになるというのならば、ハートは稲妻そのものとなってオブリビオンたちを恐怖に叩き落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
勢い衰させず一気呵成に参りますわっ。
早く要塞を攻略すればするほど正面で囮になってくださっている獣人の皆様を助けられますもの。
戦車が相手なら距離を取って良いことはありませんわね。
クラッシュ・ファングで一気に距離を詰めて攻撃ですわ。
動きを止めるのは良くないのでクラッシュ・ファングを連続使用で縦横無尽に動き回りながら狙いを絞らせないよう目標を切り替えながら全滅させるまで動き続けますわ。
戦車砲以外に中の乗員の攻撃もあるかもしれませんが当たらなければ同じことですわっ。
「撃て、撃て、撃ちまくれ!!」
『オブリビオン戦車隊』たちの操る戦車の砲塔が動き、砲身より放たれる砲弾が轟音を響かせる。
がなり立てるオブリビオンたちにとって脅威であるのは猟兵であることは言うまでもない。
要塞の正面から陽動突撃を繰り返す獣人たちはユーベルコードを使えるとは言え、猟兵には及ぶまい。
だからこそ、オブリビオンたちは正面の獣人たちよりも内部に突入してきた猟兵たちの排除を優先させるのだ。猟兵たちを排することが出来たのならば、正面の獣人たちなど取るに足らない戦力であるからだ。
「なんで当たらないんだよ!」
「ちょこまかと動きやがって!」
爆風荒ぶ砲撃の雨の中を疾走るものがあった。
それは、イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)。
彼女は砲撃の中を縫うようにして一気に飛翔する。
その瞳にはユーベルコードが輝いていた。
「一気呵成に参りますわっ」
ユーベルコードに寄って飛翔する彼女の速度は凄まじい。例え、砲撃の狙いを彼女につけても、瞬く間に彼女は戦車との間合を詰めてくるだろう。
それだけであったのならば脅威ではなかった。
けれど、イリスフィーナは飛翔の勢いと共に乗算するように威力を底上げした一撃を『オブリビオン戦車隊』の車体へと叩き込む。
装甲がえぐれるようにして拉げ、その一撃の凄まじさを知らしめる。
拳、と呼ぶにはあまりにも凄まじい一撃。
打ち下ろした一撃が車体を、ぐしゃりと押しつぶし、さらに迫る二撃目が下から打ち上げられる。
吹き飛ぶ車体のせいで『オブリビオン戦車隊』たちはイリスフィーナの姿を見失う。
「早く要塞を攻略すればするほど正面で囮になってくださっている獣人の皆様を助けられますもの。なら、どんどん行くのが筋ってものですわっ」
振るう拳は意志の力を満たしてユーベルコードを発露させる。
彼女の一撃はまさに顎の如き強烈なる拳の一撃。
さらに縦横無尽に動き回る様は、まさに鋼鉄粉砕そのもの。
「これがクラッシュ・ファングですわっ」
「なんだってこんな……!」
「後退させろ、引き撃ちでやつを……!」
「そうはさせませんわっ」
イリスフィーナは踏み込む。
恐怖はもう飲み込んだ。己の中にある己の評価が言う。後退してはダメだと。砲撃の雨に怯んでいては、得られるものも得られない。
前に進むことだけが己の意志の力。
なら、躊躇いは対からを弱めることにほかならない。
「何度でも、あなた方が全滅するまでっ」
拳を振るう。
意志の力は枯れ果てず。ただ只管にイリスフィーナは加速と衝撃を『オブリビオン戦車隊』に見舞い続ける。
後から後からオブリビオンは湧き出すように現れる。
破壊した戦車を山積みにした頂点からイリスフィーナはそれを見下ろす。
己の心が折れた時こそが、己の敗北。
「どれだけ砲火にさらされようとも、当たらなければ同じことですわっ」
恐れることに値しない。
イリスフィーナは輝く意志の力と共に再び飛翔し、鋼鉄要塞内部という戦場を縦横無尽に駆け抜ける。
振るう拳の意味を知り。
その痛みを知り。
そして、己が何を為すのかを理解した彼女は、その折れぬ意志でもって戦車を拉げさせ、折りたたむように破壊し、爆風の中をさらに飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サク・ベルンカステル
「歌唱団の次は戦車か、、、ふむ、わかりやすくて良いな」
戦車隊を見かけるなり、あたかも切り捨てるのが当然と言わんばかりに走り込む。
と同時に両目と大剣、背の随行大剣にUCの予兆。
自身目掛けて打ち込まれるPOWの戦車砲の砲撃をUC概念斬断で断ち斬る。
それは肉体を斬った程度では倒せない上位存在を斬る為に会得した概念をも断ち斬る技。
砲弾を斬るという常識外れな技を披露しながらも顔色一つ変えずに突き進む。
「飛び道具の対策をしていないとでも?」
命中しそうな砲弾はUCで全て断ち斬り、搭乗員の銃撃は随行大剣で弾き戦車隊に肉薄する。
「外で不幸を撒き散らす前に全て私が断ち斬ろう」
それが当然とばかりに戦車に斬りかかる
戦うということは即ち、敵の有利を不利に変えることでもある。
敵の己の有利を押し付けること。
敵の有利とは何かをサク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし者・f40103)は考える。
「歌唱団の次は戦車か……ふむ、わかり易くて良いな」
彼にとって脅威であったのは強靭なる装甲か。
それともあの砲塔に備えられた砲身から放たれる強烈なる砲撃か。
いずれにせよ、敵の有利とはそういうものである。
彼我との間に隔てられているのは距離。己の手にした大剣は精々近接戦闘ができる、という間合でしかない。
けれど、『オブリビオン戦車隊』にとって射程とはサクの手にした大剣とは比較にならないものであった。
遠くから。
より遠くから敵を穿つことができる。
それは人間が有史以来生存圏を勝ち得てきた所以であると言えるだろう。他者よりも遠くから傷つけることができる。
「撃て!」
『オブリビオン戦車隊』の車両より放たれる砲撃がサクを狙う。
轟音が響くのと同時にサクは踏み出していた。
自殺行為だと俯瞰して見ている者がいたのならば、そう思えたことだろう。そもそも戦車と生身単身で戦うということ自体が無茶なのだ。
けれど、サクはためらわない。
彼の瞳にはユーベルコードが輝いている。
それが己の力を証明すること。そして、己が今まで生きてきたことの処すあ。
背より飛ぶ大剣が十字に煌めく。
「飛び道具の対策をしていないとでも?」
迫る砲弾を十字に切り裂いたサクの言葉だった。彼の頬をかすめるようにして切り裂いた砲弾が落ち、衝撃波が彼の肌を撫でる。
「……どうなってやがる! なんで当たらねぇ! 砲手、しっかり狙えよ!」
「狙っていたさ、なのに」
「意味はないな。その言葉に」
踏み込むサクのフリ被った大剣の一閃が『オブリビオン戦車隊』の車両を一刀の元に両断する。
分厚い装甲も意味をなさない。
これが鋼鉄でなければ理解できることもあっただろう。
しかし、戦車は鋼鉄。
そして、サクは猟兵。ユーベルコードによる概念斬断(ガイネンザンダン)たる一撃は、迫る砲弾さえも切り裂き、『オブリビオン戦車隊』を切り捨てるのだ。
「外で不幸を撒き散らす前に全て私が断ち斬ろう」
顔色が変わることはなかった。
己に向けられた砲塔さえも彼にとっては恐怖を引き起こさせるものではなかった。
これまで彼が戦ってきたのは、肉体を斬っても倒せない上位存在。
概念を切り裂くユーベルコード。
それを会得した彼だからこそできることがある。
「全ての不条理は我が剣閃の前に露と消えるのみ」
そうすることで失ったものを贖うことができるとうのならば、サクはためらわない。復讐は確かに何も生み出さないかもしれない。
けれど、復讐の源となったものが、新たな不幸や不条理を生み出すことを止めることはできる。
連鎖は断ち切らねばならぬ。
ただ、そのひとふりの一撃を叩き込むためにこそサクは戦場を疾走る。
砲弾を斬って捨て、車体を両断せしめる。
爆風が荒ぶ光景を背に受けながら、そうすることが当然であるとばかりにサクは戦場を切り裂く刃と己をなし、不幸と不条理の源たるオブリビオンを両断し続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
ムゲンストライカー外見はシボレーカマロ的スポーツカーで黒
今度は戦車!?立て続けにうるせえのが来やがって!耳鼻科は
さぞ儲かりそうだな!!
|降臨《Calling》!ムゲンストライカー!飛ばすぜ相棒!
ZIカード使用でムゲンストライカー呼び出し
乗り込んだら攻撃を【残像】【運転】【操縦】【早業】で躱しつつ
まずは撹乱
同士撃ちや衝突を誘って体勢を崩そう
OK、コッチも|温《あった》まってきた!モード|RA《ラムアタック》展開!
ブチ抜いてやれ!|相棒《ムゲンストライカー》ッ!!
一応仲間は巻き込まないよう制御
加速に必要な広さが無ければ飛行形態化も視野に入れよう
実は走るより飛ぶ方が得意だったりする
鋼鉄要塞内部で『オブリビオン戦車隊』の戦車の砲塔が回転し、長大な砲身から放たれる砲弾の一撃は砲火となって猟兵たちを襲う。
「今度は戦車!? 立て続けにうるせえのが来やがって! 耳鼻科はさぞ儲かりそうだな!!」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は手を掲げる。
手に有るのは一枚のカード。
そのカードが煌めく。
そして、叫ぶ言葉と共に現れるのはスポーツカーのような車体をしたヒーローカー『ムゲンストライカー』であった。
「そんなお綺麗な姿で!」
『オブリビオン戦車隊』は、その見事なデザインのヒーローカーへと砲撃を叩き込む。
しかし、ロウガは笑う。
「洗練されているからな! ならよ! 飛ばすぜ相棒!」
乗り込んだヒーローカーが疾駆する。
ハンドルを切れば鋼鉄要塞内部の地面をタイヤが切りつけながら蛇行運転で砲撃を躱す。
砲撃の一撃が破片を飛び散らせ、車体に跳ねる。
「あっ、傷をつけるんじゃあねえよ!」
とは言え、細かい傷程度で済んでいること自体がおかしいのである。
最高速度では圧倒的に『ムゲンストライカー』の方が早いだろう。けれど、敵の『オブリビオン戦車隊』の戦車もまた尋常ならざる性能である。
キャタピラーがどんな悪路であろうと走破せしめるし、あれだけの巨体に秘めた馬力は侮ることはできない。
けれど、ロウガは構わなかった。
如何に無限軌道であろうとロウガのテクニックを持てば、敵を翻弄することもできるだろう。
「ちょこまかと!」
「へっ、やるじゃあねえか!」
砲撃が雨のように降り注ぐ。爆風が荒び、車体が揺れる。
ロウガは己の手繰る『ムゲンストライカー』のコンソールに表示されるタイヤの摩耗と熱の入り具合を見遣り笑う。
「OK、コッチも|温《あった》まってきた! モード|RA《ラムアタック》展開!」
ロウガの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『ムゲンストライカー』のライトが煌めく。
「ブチ抜いてやれ! |相棒《ムゲンストライカー》ッ!!」
ヒーローカーたる所以を示すように『ムゲンストライカー』が変形する。
言う慣れば特攻形態と言えばいいのだろうか。
フロントに展開した衝角パーツがフロントグリルを塞ぎ、ユーベルコードの輝きに満ちる。
疾走る『ムゲンストライカー』の正面には『オブリビオン戦車隊』の戦車がある。正面衝突は避けられない。
けれど、敵は戦車だ。
如何にヒーローカーが強靭にできていたとしても。
「こちらの装甲が抜けるわけが!」
「いいや、ぶち抜くね!」
ユーベルコードの輝き放つ『ムゲンストライカー』の衝角は、加速を得て矢のように戦場を一直線に駆け抜ける。
超鋼砕破(デモリションドライバー)。
それこそがロウガのユーベルコードにして『ムゲンストライカー』を砲弾に変える一撃。
迫る砲撃すら弾き飛ばし、加速する『ムゲンストライカー』が戦車を撃ち抜くようにして激突する。
装甲などないに等しいというかのように『ムゲンストライカー』は『オブリビオン戦車隊』を吹き飛ばしながら、そのエンジン音を高らかに鳴らす。
それはまるで勝利の雄叫びを上げるようであった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
先ほどの陰鬱な歌より耳を塞ぎたくなるほど煩い今の方がマシですね
でも一番いいのは澄み渡る蒼空を舞う心地よい風の音色です
なのでこの要塞ごと消えていただけますか?
(微笑みながら翅をゆっくりと震わせ軽い足取りでステップを踏んだ後{桃花の旋律}で『ダンス』を始める)
この旋律は貴方がたには合わないようですね
焦りと怒りと殺意でぐちゃぐちゃです
もっと心に余裕を持たないと
(UC【蠱の宴】を発動して敵の動きを阻害すると敵戦車の内部へ風のようにするりと侵入し中に居た敵兵を『怪力』で外に放り投げる)
私としてはダンスをお勧めしますよ
(追い出した敵と随伴歩兵に向けて、空っぽの戦車を『衝撃波』を纏った蹴りで蹴とばす)
鋼鉄の車体が要塞内部を闊歩する。
その音は耳障りであったけれど、先程のオブリビオンが奏でる陰鬱な歌よりは幾分マシであると播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は思っていた。
あれは耳を塞ぎたくなるほどに酷いものであった。
だから、クロリアは己の翅をゆっくりと震わせる。
それは彼女のリズムであった。
足取りは軽い。いかに鋼鉄の車体が己に迫るのだとしても、彼女の心の中にあるのは、澄み渡る蒼空を舞う心地よい風。
「空を塞がれた要塞の中は窮屈でしょう」
クロリアの言葉はきっと『オブリビオン戦車隊』には届かないだろう。
車体の中ではオブリビオンである機械兵士たちが砲弾を装填し、クロリアに照準をあわせている。
わかっている。
これはきっと意味のない問いかけであると。
けれど、クロリアの中にある音色は膨れ上がっていく。ステップを踏む。ただそれだけでいい。
己にあるのは恐怖でもなければ高揚でもない。 あるのは心地よい風。大地の柔らかさ。心落ちる夢と誘惑のリズムのみ。
阻むように『オブリビオン戦車隊』の砲身が己に向けられている。
「なのでこの要塞ごと消えていただけますか?」
「ぬかせ、撃て!」
放たれる砲弾。
爆風がクロリアの身体を打つ。いや、その衝撃を受けて、クロリアは飛ぶ。
彼女のステップはダンスに変わる。
足が踏む音が、翅の羽ばたきが。
全てが旋律となって『オブリビオン戦車隊』たちに届くだろう。けれど、それらを彼等は知らない。知るよしもない。理解もできない。
彼等にあるのは焦りと怒り、そして殺意だけだ。
だから、己の生み出す旋律を彼等は解さない。
故に、彼等の行動は減ぜられるのだ。
逆に彼等には自分の動きが風のように軽やかであり、捉えることのできないものであると知るだろう。
「速い……!?」
「いいえ、あなたたちが遅いのです。楽しんでますか?」
「何を」
「その余裕のなさ、機械兵士であるが故でしょうか。もっと心に余裕を保たないと。そうでないと……」
クロリアは取り付いた戦車の砲塔のハッチを怪力で引き剥がし、内部に在った機械兵士を引きずり出し、投げ出す。
「私としてはダンスをおすすめしますよ」
舞踏は感情を表現する。
伝えようとする。それは言葉を介さない原始的なコミュニケーション手段。
ゆえにクロリアは笑うのだ。
機械兵士たちには伝わらないのかもしれない。オブリビオンであるが故に猟兵は滅ぼし滅ぼされるだけの間柄でしかないのだ。
だから、クロリアは乗員を放り投げられた戦車の車体を蹴り飛ばす。
それもまた一つの舞踏の旋律。
蠱の宴(コノウタゲ)はまだ終わらない。
クロリアのユーベルコードは、ダンスで生み出した旋律を戦場に響かせる。
「私は楽しいです。踊ること。旋律を伝えること。何もかも」
両手を天に掲げ、背を伸ばす。
伝わらなくても伝える。
ただそれだけのためにクロリアは身体を回転させ、そのしなやかな脚でもって放たれる衝撃波でもって戦車を破壊し、オブリビオンの機械兵士たちを巻き込みながら爆炎に消し飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
「さぁ~って、先制攻撃は無事成功したな。」
この勢いで一気にいくくま―。
【行動】
ツキミズキに改めて乗り込んで、急いで簡易チェックだ。
さすがに無茶な使い方だったしな…(がつん)火器管制がハングアップしてやがった、こーいうときは殴るに限る。
もう少し踏ん張ってくれよ。
それじゃあ『騎乗突撃』
≪野生開放“ビーストライズ”≫野生全開くまー。
全兵装展開、『誘導弾』『エネルギー弾』による『一斉射撃』の『範囲攻撃』くまー。
敵の戦車砲を『野生の勘』を頼りに回避。
強化された隠密性能で敵の照準を外し、側面に素早く回り込んで主砲による『砲撃』だ。
鋼鉄要塞へと突入する戦いは猟兵達によって傾いた。
外の戦況は未だしれないが、しかし、この現状を見やればオブリビオンが追い詰められていることがわかる。
敵の数は未だ膨大。
『オブリビオン戦車隊』は、次々と内部から湧き上がってきている。
「さぁ~って、先制攻撃は無事成功したな」
オーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は固定砲台の役割を果たしてくれていたキャバリア『ツキミヅキ』へと駆けより、コクピットの中に乗り込む。
大空よりの降下強襲。
さらには固定砲台としての乱暴な使い方。
流石に無茶な使い方をしてしまったとオーガストは幾ばくかの反省をしながら、計器をチェックする。
未だ戦いは終わっていない。
敵の戦車が迫っているのだ。ざっと見回してみても、火器管制が正常に働いていない。入力制御に異常が起こっているのだろう。
「あーも、この勢いで一気に行きたいっていうのに。このっ」
がつん、と計器をオーガストは叩く。
こういうときには殴るに限るのである。それは言ってしまえば衝撃によるシステムの強制的なリセットであった。
その衝撃と共に計器が一瞬明滅し、復旧する。
強引な手法であったが、オーガストの経験上こうすれば大抵のものは直るのである。
「もう少し踏ん張ってくれよ」
『オブリビオン戦車隊』の砲撃が雨のように降り注ぐ。
敵は鋼鉄要塞内部であることを考慮していない。
兎に角猟兵たちを排除したいと思っているのだろう。
「なら単純で構わねーくまー!」
オーガストのユーベルコードが輝く。
己の中の荒ぶる山の神としての力がみなぎる。
野生開放“ビーストライズ”(ビーストライズ)。
それは己の名を冠する力。キンカムイ。野生を開放した力を纏う『ツキミヅキ』のジェネレーターが唸り声を上げるように轟く。
「野生全開くまー!」
全兵装が展開する。それは巨大な熊というよりヤマアラシのごとき威容であったが、街上がってはいないだろう。
触れる者全て傷つける破壊の化身の如き姿となった『ツキミヅキ』は戦場を疾走る。砲弾が荒ぶ中にあってなお、オーガストの心にあるのは野生のみ。
荒ぶる山の神は、その強大な力故に恐れられる。
近づけば死以外の何物でもない凶暴な力。
その発露をもってオーガストは『オブリビオン戦車隊』へと飛び込む。
「ひっ」
「おっせーんだ、くまー」
砲塔が己を向いても構わない。即座に『ツキミヅキ』の脚部が地面をけって側面に回り込む。
己の砲塔が『オブリビオン戦車隊』の横っ腹に突きつけられる。
「その脇腹にどかんと一発くまー」
放たれる砲弾が車体にめり込み、内部より火柱が上がる。内部の砲弾に引火したのだろう。凄まじい爆風と爆炎が上がる最中、『ツキミヅキ』は更に疾走る。
野生を開放した機体に歯止めなど効くはずなどない。
ただ己の全搭載武装を解き放ち、敵対するものを破壊する。それが鋼鉄の躯体たる『ツキミヅキ』の野生の開放であることをオーガストは知る。
故にトリガーを引く指は軽い。
「さあ、踏ん張りどころくまー。『ツキミヅキ』!」
オーガストは、己の機体と共に戦場を砲火の嵐に巻き込みながら、さらに最奥へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
ワルそうなデザインの戦車ですね。
これはきっとデビルキングワールド由来の産物ですね!(多分違う)
数には数で対抗しましょう。
《煌月舞照》で創り出した煌月の複製1360本に光の属性攻撃を籠めての貫通攻撃・鎧無視攻撃を敢行。
戦車は先ず砲身を斬り落とすなり、半壊させるなりして、戦闘能力を奪います。
随伴歩兵はザクっと斬ります。
そうして戦闘力を奪った上で確実に破壊します。
詩乃は空中浮遊・自身への念動力・空中戦で空を自在に舞って、戦車による体当たりを躱します。
更に結界術・高速詠唱で防御結界を周囲に作ったり、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで攻撃を弾きます。
獣人さん達に砲弾を向けられないよう、ここで倒します!
「猟兵たちの突入をこれだけ許したとあっては」
「いいから撃て! 猟兵さえ殲滅できれば、外の獣人連中なんぞ」
『オブリビオン戦車隊』たちの焦りは尤もなことであっただろう。
空よりの突入を許したのは、鋼鉄要塞前面に展開した獣人たちの突撃に気を取られていたからだ。彼等が陽動とは思えぬ気迫で突撃を繰り返したからこそ、対空砲火への戦力が足りなくなっていたのだ。
それを取り返そうと内部より戦車を繰り出そうとして、猟兵たちと鉢合わせする形になっていたのだ。
その鋼鉄の車体から放たれる砲弾。
それはまるで砲火の嵐。凄まじい物量が用意されているところから考えるに猟兵の戦力を消耗させることが目的なのだろう。
「ワルそうなデザインの戦車ですね」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、『オブリビオン戦車隊』の繰り出した戦車のデザインを見て頷く。
あれはきっとデビルキングワールド由来の産物なんだろうと詩乃は解釈していた。多分違うのかもしれないが、それほどに『オブリビオン戦車隊』の戦車はトゲトゲしいデザインだったのだ。
「猟兵……随伴歩兵を出せ!」
戦車から飛び出す歩兵達。いずれも機械化獣人。機械兵士たちである。
彼等がライフルを構え、詩乃へと向ける。
敵は一人。ならば、ここで殲滅するのが良いと考えたのだろう。それは正しい。ただし、誤ってもいた。
詩乃がただの一般人であったのならば、と注釈をつける他ない。
彼女は神性である。
その瞳から放たれるユーベルコードの輝きが、それを証明する。
「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
彼女の手にあった薙刀が複製されていく。
神力宿す薙刀の刀身が煌めく。
複雑な幾何学模様を描きながら、戦場を飛翔する薙刀は一閃を持って『オブリビオン戦車隊』を蹂躙する。
砲身を切り裂き、装甲を傷つけ、随伴歩兵すらなぎ倒す。
空中で飛ぶ薙刀の軌道は彼等には理解しがたいものであったことだろう。
ふわりと詩乃は空に浮かぶ。
「敵は一人だぞ! 取り押さえれば!」
随伴歩兵たちが薙刀の群れを掻い潜って詩乃へと飛びかかる。だが、それを詩乃の手にした薙刀が煌めいた瞬間、結界が張り巡らされ空中で受け止められる。
「ここを抜ければ、あなたたちは獣人さんたちに砲弾を向けるでしょう。なら、ここで倒します」
彼女は空中を自在に飛ぶ。
結界に阻まれ落ちた随伴歩兵たちを貫く薙刀の斬撃が、さらに詩乃によって操られ『オブリビオン戦車隊』へと迫る。
強靭な装甲を有しているのだとしても、オリハルコンによって造られ、また詩乃の神力によって複製された刃は強靭そのもの。
包囲攻撃を前には戦車であろうと意味をなさない。
引き裂く戦車が宙に舞う。
そこに詩乃は飛び込み、まるで球技を行なうように巨体を吹き飛ばすのだ。
「オブリビオン。この世界の侵略は叶わぬと知りなさい」
詩乃はユーベルコード、煌月舞照(コウゲツブショウ)たる刃の渦中に在りて、その瞳に発露する神力と共に『オブリビオン戦車隊』を見下ろし、静かに告げる――。
大成功
🔵🔵🔵
シプラ・ムトナント
ここで戦車を落とせば、外の戦況を維持出来ます。
こちらにも、負けられない理由があるのです。
わたしの交戦距離はどうしても近くなりますが、戦車砲の直撃や対人機銃の類を受けるわけには参りません。立ち止まらずに動き続け、こちらに狙いを定めさせないようにします。
小回りは歩兵が戦車相手に勝る、数少ない点ですね。
軍隊仕込みの【|継戦能力《たいりょく》】で、隙ができるまで粘り強く動き続けます。
攻撃が止んだら一気に距離を詰め、吸着手榴弾を履帯に【投擲】しつつ後ろに回り込みます。
そして、止めの『最終放火』を。
対物散弾の二連射ならば、戦車の装甲を貫けるはず。
行動不能のリスクはありますが……この二射で、仕留める。
砲火荒ぶ戦場にありて、戦車が進む。
今はまだ鋼鉄要塞内部であるが、これが外に出れば獣人たちが支えている戦線は一気にオブリビオンに傾くだろう。
そうなっては彼等の生命を掛けた陽動が意味をなさなく成ってしまう。
ならばこそ、シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)はためらわなかった。
歩むこと。進むこと。疾走ること。
そのいずれも止めては、己の身に弾丸を、砲弾を受けることになる。
きっとそれは、鋼鉄要塞の外にて戦う獣人たちも同じだっただろう。
脚がもつれ、攣り、走れなくなったとしても這ってでも前に進み続け慣れば、生命を失うことと同義であったから。
「こちらにも、負けられない理由があるのです」
自分たちが内部で『オブリビオン戦車隊』を撃破スルことが出来たのならば、外の同胞たちの危険は減るだろう。
そうすれば、共に勝利の凱歌を歌うこともできる。
これで戦いが終わるわけではないけれど、僅かな時を得ることができる。だから、進む。
「撃て! 猟兵を吹きとばせ!」
その言葉と共に戦車の砲塔がシプラを捉え、その砲弾を打ち込んでくる。
爆風が吹き荒れ、シプラの身体を打つ。
だが、直撃ではない。
シプラは戦場を走る。軍隊仕込みの体力は、自分よりも強大で堅牢なる戦車の隙を羽化がうように粘り強く走り続ける。
砲撃の衝撃がどれだけシプラを襲うのだとしても、構わなかった。
まだ自分の脚が動くのならば、戦車より歩兵が優れたる点……即ち、小回りに優れるという点を活かし続けるのだ。
確かにあの戦車の砲塔が自在に動き回るのは恐ろしい。
「ですが、内部で砲弾を装填する幾ばくか……その隙が!」
シプラは手にした手榴弾を投げ放つ。吸着性能を持つ手榴弾は『オブリビオン戦車隊』の履帯に張り付き、爆発と共にそれらを吹き飛ばす。
「手榴弾……!? 履帯が……!」
「その旋回性能は、履帯ありき。なら」
シプラは戦車の背後に飛び込む。滑り込むようにして姿勢を低くし、手にした散弾銃の銃口を突きつける。
敵の装甲は分厚い。
けれど、シプラの瞳はユーベルコードに輝いている。
「今ここで、あなたたちを討つ」
引き金を引く。
装填されていた対物散弾は一気に二連射される。その衝撃はシプラの身体に凄まじい負荷を掛ける。
肩の骨が砕けそうになるほどの衝撃。
いや、外れかけた、というのが正しいだろう。痛みが走る。けれど、シプラは構わなかった。
この最終砲火(エンドバラージ)は己の持てる最大の火力。
歩兵一人で戦車を一つ潰せるのならば、これに勝る戦果もないだろう。
放たれた散弾が戦車内部で跳ね回り、砲弾の火薬に引火し爆発する。
その爆風の中をシプラは肩を抑えながら走る。
まだ戦いは終わっていない。どれだけの疲労が身体を襲うのだとしても。
外れかけた肩を元に戻しながら、シプラは前を向く。
爆風を背に。
ただ、只管に要塞の最奥を目指す。そこにこそ、この要塞の首魁たるオブリビオンがいるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【シャナミアさんと】
要塞の内部に機甲師団を配置?
いくら防衛戦とはいえ、なんだかちぐはぐな感じだね。
とはいえ、これが外に出てたら獣人さんたちがピンチだったし、
ここは相手のちぐはぐさをらっきーと思っておくことにしよう。
【E.C.O.M.S】を発動して、ユニットをとばしたら、
一部は【Density Radar】と連携させて上空からの陣形確認に当たらせるね。
『希』ちゃん、陣形の分析お願い。
シャナミアさん、楔は打つから、傷口広げてー!
『希』ちゃんの分析結果から、
陣形の弱いところに、ユニットと【M.P.M.S】で集中砲火。
相手の陣形を引き裂いたところで、
シャナミアさんと連携して、各個撃破していこう!
シャナミア・サニー
【理緒さんと】
やー、久しぶりの生身飛翔は楽しいねえ
まぁユーベルコード使わないと飛べないんだけど
っと次のお相手がお出まし?
ここは理緒さんに乗っかって楽しよう
というかまぁ相変わらず可愛い笑顔でやることがえぐい
こわいこわい
さて、私はっと
砲撃がめんどくさそうだから
ここは【ドラゴニック・ルール】!
剣の間合いの外からならダメージ激減させた上で
砲弾をフレイム・アックス・ソードで受け流しつつ
一太刀の間合いまで踏み込んで!
【ドラゴニック・クラッシャー】! くらえーっ!
外しても地面破壊で態勢崩れるでしょ
そこにすかさず追撃
少なくとも砲塔を潰していけば攻撃力なくなるでしょ
理緒さんそっちよろしくー
思う存分暴れますかー!
E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)によって展開したユニットたちから送られてくる要塞内部の情報を菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は冷静に分析していた。
「要塞内部に機甲師団を配置しているのは、ちぐはぐだって思っていたけど、なるほどねー」
理緒にとって、それは理解できない配置であった。
けれど、同時にそれはオブリビオンたちがひっぱくした状況であることを知らしめる。本来であれば『オブリビオン戦車隊』は要塞の外にて突撃を繰り返す獣人たちに向けての戦力であったのだろう。
けれど、猟兵たちの突入によってオブリビオンの戦力が撃滅され、要塞から猟兵を排除するためになりふり構わなくなった、という事態に陥ってしまったのだ。
だからこそ、理緒は自分たちに注意を向けてくれたことを感謝する。
「これが外に出てたら獣人さんたちがピンチだったわけだから、らっきーと思っておくことにしよー」
「で、これが次のお相手ってこと?」
理緒から伝えられる情報を受けて、シャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)は首を傾げる。
生身で戦場に出ること自体がシャナミアにとっては珍しいことだった。
彼女はキャバリアに乗り込むことが多い。だから、というわけではないが生身での飛翔は楽しい、という感情のほうが先に立ってしまう。
「そうそう。ユニットを飛ばしているから敵の陣形はばっちり。『希』ちゃんからシャナミアさんに情報を送ってもらうから」
「なるほどね。私はっと……顕現せよ、気高き竜の力!」
シャナミアのユーベルコードが瞳に輝く。
それは戦場にあって、己のドラゴニック・ルール(ドラゴニックルール)を敵に強い力。
そう、シャナミアは黒き龍鱗を纏った竜戦士。
己の手にある赤い斧のように幅広い刀身を持つ剣を掲げる。その剣の間合いの外より放たれる攻撃の全ては、100分の1にまで減衰されるのだ。
つまり。
「こっからは私の時間だ!」
砲撃は意味をなさない。いかに砲撃の一撃が強烈なものであるのだとしても、シャナミアの肌を穿つことはないのだ。
「シャナミアさん、楔は打つから、傷口広げてー!」
「任された!」
その言葉と共にユニットが戦場に飛び込み、それに続くようにしてシャナミアも走る。
砲撃が迫るのだとしても恐れることはない。
振るう斧剣の一閃で砲弾を切り払いながら、一太刀の距離にまで者なミアは踏み込む。
「くらえーっ!」
放つ一閃が『オブリビオン戦車隊』の車体を切り裂き、吹き飛ばす。そこにユニットが飛び、さらに理緒のミサイルランチャーから火線が飛ぶ。
陣形を引き裂くようにして二人の攻勢が『オブリビオン戦車隊』の戦列を突き崩していくのだ。
「後退……! 引き撃ちで……!」
「それは、させない、よー!」
ユニットが飛び、後退しようとする『オブリビオン戦車隊』の背後に回り込む。
ただ回り込むだけでは意味がない。
そこに飛び込むのはシャナミアの一閃。振るう一撃は正面の警戒を薄くした戦車にとって痛烈なる一撃であったことだろう。
「戦車は確かに装甲やら何やら怖いものばっかりだけどさ!」
振るう一撃が砲塔を潰し、蹴って飛ぶ。
「思う存分暴れますかー!」
「退路を断ったわけじゃないから、シャナミアさん撃破よろしくなんだよー」
「はいよーってね!」
理緒の言葉と俯瞰した情報。
陣形を知る事ができたのあらば、その隙を突くこともまた可能なのである。戦い於いて火力は確かに重要なものであるが、一側面でしかない。
必要なのは情報。
敵がどのように布陣し、どのように動くのか。
それが予想できるのならば、如何にして敵の弱点を突くのかもまたわかるというものだ。だからこそ、理緒はユニットを展開し、情報という名の力でもってシャナミアの火力を支える。
シャナミアは己のユーベルコードで砲撃の力を減退させ、己の間合いに引きずり込む。
戦場を支配する二人の力は、合わさることによって敵の混乱を引き起こし、冷静さを欠かせることでもって敵戦力を食い破るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
コメディ禁漁区ってことですから、
勇者として思いっきりシリアスな演奏させていただきましたのに、
なんだかひどいこと言われた気がするんですが!
ステラさんなんて、戦闘中なのにお休みしちゃうほど、
安らかに癒やされてくれたんですよ?
まぁ、それはあとで正式に抗議をするとして、今回は戦車ですか……。
さすがにこの攻撃はわたしの演奏で打ち消せないですね。
でもそれなら、こっちにこないようにすればいいですよね。
ここは『魔弾の射手』で浮遊機雷攻撃でいきますよ!
にへ♪
ステラさん、どうですどうです?
わたし、すっごくシリアス勇者してないですか? してますよね!
え?魔法? クラリネット吹かないと機雷でないですよ?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
(魂が漂白されているメイド)
うっ……私はまだ、死ぬわけには……
|エイル様《主人様》の|ピー《自主規制》を|ピー《自主規制》するまでは!
|メイド《犬》は死にませんっ!!
くっ、危うく|寿命を全う《おいとま》するところでした
というか自分で言っておいてなんですが、音の濁流って何
さて
珍しくルクス様の指摘がクリティカル
相性は悪すぎですね
どうする……ってほう、ルクス様にそんな手が
ええ、とてもシリアスですね
というかルクス様はいつも魔法で戦ってお願い
では外から誘爆させるとしましょう
【テールム・アルカ】起動!
RSパルスマシンガンを人型サイズにリサイズ&
浮遊機雷を戦車の側で撃ち抜いていくとしましょうか!
「コメディ禁猟区ってことですから、勇者として思いっきりシリアスな演奏、どうでしたか!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はバイオリンを収めて自信たっぷりに振り返った。
シリアスな雰囲気にアレルギーを持つルクスにとって、これはかなりの手応えを感じるものであった。ラムネをぼりぼりした甲斐があったというものである。
しかし、彼女が振り返った先にあるメイド……即ち、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はそんな彼女の自身に満ちた表情とは裏腹に真っ白であった。
他m恣意が漂白されていると言っても良いくらいの感じであったが、呻くようにステラが何事かを呟いている。
その言葉にルクスは耳を傾ける。
「うっ……私まだ、死ぬわけには……」
「やだぁ、ステラさんってば。演奏で人が死ぬわけないじゃないですか!」
もー、とバシバシとステラの背中を叩くルクス。
感動しすぎてたのかな? とポジティヴなのは良いことである。それに、とルクスは笑う。ステラに至っては、戦闘中だっていうのに、こんなにおやすみになるほど安らかに癒やされてくれたのだ。
敵もさぞや……。
いや、彼女の背後に霧散していったオブリビオンのことを思えば、何処からその自信が湧き上がってくるのか不思議でならない。
その間、ステラはメイドとして、いや、人としてとても自主規制なことを呟いていたのだが、幾ばくの後に目を見開く。
「|メイド《犬》は死にませんっ!!」
くわっ! と見開かれる瞳。
刮目するその姿は、なんていうか、ひどく知り脚ではなかった。
「くっ、危うく|寿命を全う《おいとま》するところでした」
「なんですかー! ひどくないですか?」
「あの音の濁流を前にしてよくいえますね!」
「だくりゅうって! 濁ってなんかいなかったですよ!」
「いーえ、あれは音の濁流でした。すごかったです。私自身何言っているのかわかりませんが、あれはそう表現するしかないあれでした!」
そんな言い合いをしている二人の間に飛び込んでくるのは『オブリビオン戦車隊』の放った砲撃であった。
爆風が二人を吹き飛ばす。
しかし、二人はくるりと華麗に着地して爆風を躱し、涼しい顔で告げるのだ。
「それはあとで公式に正式に抗議しますけど、砲弾はわたしの演奏で打ち消せないですね」
「ええ、砲弾は着弾しても衝撃波を生み出します。あの遠距離から放つ一撃に対処しなければ……」
「それならこっちにこないようにすればいいですよね」
にへ、と笑うルクス。
彼女の手にあるのはクラリネット。
え、とステラは思った。いや、なんで演奏しようとするんだろうか。いや、魔法で良くないですかと思うのだ。
「魔法にしてください」
「え、だってクラリネット吹かないと音符の機雷でないですよ?」
どう考えても絶望しかない。
どうあっても世界がルクスに演奏させようとしているとしか考えられない。そうじゃなければステラはどうして自分がこんな目に合うのか理解できない。
「……方舟、起動。武装、転送」
ステラは諦めた。
もう諦めた。耳栓も通用しないし、理屈も通じない。ならもう受け入れるのが一番良いのではないかと思ったのだ。
「やる気ですねーステラさん!」
ステラがユーベルコードでキャバリア兵器をリサイズしたパルスマシンガンを構え、早くと銃口を示す。
なら、とルクスは笑ってクラリネットを演奏するのだ。
演目は言うまでもなく、『魔弾の射手』序曲(マダンノシャシュ・ジョキョク)。
クラリネットから生み出される音符型の機雷。
それが浮かび、戦場に満ちていく。本来ならば触れなければ機雷は爆発しない。けれど、ステラの手にしたパルスマシンガンを解き放てば、機雷は誘爆を起こして、爆発の中に『オブリビオン戦車隊』を巻き込むだろう。
けれど、それに至るまでが問題であった。
悶絶であった。
すごい演奏。ひどい、とは言うまい。これも戦いのため。そして何よりもステラは己が追いかける『主人様』のためなのである。
「これしき! のこと! で!」
鼓膜が限界を超える。
限界を超えたら破れるんじゃないかと思うのであるが、そこはステラである。ルクスの演奏を幾度となく至近距離で受けてきた彼女の鼓膜は!
常人を超えた強度を有するように成ったのである。
「いや、なんか酷いこと言われてる気がするんですが!」
天の声的なあれである。
「気の所為です!」
ステラの一喝と共に放たれるパルスマシンガンの射撃の最中にルクスの訴えはかき消されていく。
「いやだって本当に!? だって、わたし、すっごくシリアス勇者してるじゃないですか! してますよね!」
そうはならんやろ。
誰もがそう思いながら、ステラはルクスの叫びを鼓膜が破れたふりをして機雷を穿ち続け、爆発を引き起こし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
こんな所で戦車を使うとか…
逆に戦い辛くない?
ま、それだけ敵さんも必死って事なんだろうけど
どっちにしろ、向かってきてくれるならやり易くて助かるよ!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
そして【Code:F.F】起動
高速移動で一気に戦車隊との距離を詰める!
近付く前に…って魂胆だろうけど、一気に近付いてしまえば問題無し!
砲撃を躱し、|こちらの間合い《近接戦闘》に持ち込む
接近したら先ずは砲塔を『オーラ防御』でシールドを張り強化した剣でぶっ叩いて歪ませ、使い物にならなくしよう
後は零距離からのエネルギー球をぶち込んで、本体を一気に『吹き飛ばし』てやろう
さあ、何体こようとも相手してあげるよ
鋼鉄要塞内部での戦いは、さらなる砲火の嵐を呼び込む。
『オブリビオン戦車隊』は本来、要塞の外で運用されるべき戦力であった。けれど、要塞内部に突入してきた猟兵達によって戦力が撃滅されたことにより、彼等を投入せざるを得なかったのかもしれない。
要塞の中という閉鎖空間で戦車の運用は難しいものがあったはずだが、しかし物量で押し切る、という点においては正しいものであったのかもしれない。
「ま、それだけ敵さんも必死ってことなんだろうけど」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は鋼鉄要塞内部にひしめくようにして迫る『オブリビオン戦車隊』と対峙し、その二振りの模造神器の力を解き放つ。
その瞳に輝くユーベルコード。
最終公式。
Code:F.F(コード・ダブルエフ)。模造神器に蓄えられた力の全てを身にまとった彼女は蒼い一房の髪をなびかせながら『オブリビオン戦車隊』に一気に距離を詰める。
高速移動とエネルギーの放射を可能とする彼女の攻勢を如何に戦車とは言え止められるものではない。
砲塔が回転することさえままならない状況に蒼い模造神器の刀身が煌めく。
「いつの間に……!? 速いっ!」
「近づく前に砲撃でどうにかしようって魂胆なんだけどさ!」
一気に距離を詰めてしまえば、砲撃を行なう時間さえ無い。ならば、如何な火力を有しいてるのだとしても玲にとっては意味のないことであったし、何の障害にもなり得ない。
そう、|こちらの間合い《近接戦闘》にさえ持ち込んでしまえば、今の玲を止められる者など存在しないのだ。
「まずは砲塔を潰す」
オーラを貼り重ねたシールドを纏う斬撃の一撃が砲塔を歪ませ、拉げさせる。
砲塔を潰せば、敵の有効的な武装は何一つ己に向けられることはなくなる。さらにそこに叩き込む零距離の高エネルギー体は分厚い装甲すら貫いて爆発と共に車体を吹き飛ばすのだ。
「やつを近づけさせるな! 撃て!」
『オブリビオン戦車隊』は玲の異常性にようやく気がついたのだろう。
爆炎上げる戦車の残骸の上に立つ玲に向けられる砲口。
しかし、それらが照準をつけるより早く、玲の瞳が向けられる。殺到する戦車。いずれも彼女にとっては脅威ではなく、むしろ戦車を内部に引き付けられていることをこそ歓迎するようでもあった。
「やる気になってくれたかな。向かってきてくれるならやり易くて助かるよ!」
砲撃の一撃が玲を捉えることはない。
放たれた砲弾は虚空をかすめるばかりだった。既にそこに玲の姿はなく。蒼い残光だけが戦場に刻まれる。
振るう刀身の一撃が迫る戦車を吹き飛ばし、要塞の壁面へと埋め込むような一撃で持って破壊する。
「さあ、何体こようとも相手してあげるよ」
爆炎を背に受けながら、玲は悠然と進む。
いや、そう見えているだけだ。彼女の身にまとう模造神器の力は擬似的な邪神の力。
超常の力を有する存在を前にしてオブリビオンの機械兵士たちは旋律するだろう。
戦車とは己たちの身を守る盾であると同時に矛でもあるのだ。
しかし、それをこともなげに破壊し、さらには単身で瞬く間に迫る玲は理解の範疇の外に在る者であったことだろう。
「全てを零に」
蒼い残光が走る。
それが『ゾルダートグラード』の機械兵士たちが見た最期の言葉と光景。
戦場を圧倒する蒼い輝きは、戦場に存在する全てのオブリビオンたちを恐怖に叩き落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
戦車が束になって来ようが問題無い
お前達の狩り方は良く知っている
戦車の装甲は前面が一番分厚く、後方や上面は比較的薄い場合が多い
装填された徹甲弾に炎を纏わせて
即席のHEAT弾頭として発射しよう
これなら前面装甲だろうが【貫通】を狙える
エンジンや燃料タンクに当てられれば誘爆させ吹っ飛ばすことだって出来るだろう
炎の【オーラ防御】を纏い、【ダッシュ】で距離を詰めながら|改造銃《フィフティー・フィフティー》を掃射
接近戦に持ち込んで、徹甲弾の【零距離射撃】とパイルバンカーの【捨て身の一撃】を同時に叩き込もう
自分達が獲物になる経験は中々無いだろう
存分に刻みつけろ
追われる者の痛みを
戦車とは恐ろしいものである。
分厚い装甲に、どんな悪路であろうと走破せしめる機動力。何より、その圧倒的な火力で持って城壁すら穿つことができる。
鋼鉄の塊。
さらにそれを推し進めた戦術を手繰る汎用性をもたせたパンツァーキャバリア。
その前進とも言うべき戦車を手繰る『オブリビオン戦車隊』の姿をイーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は認める。
膨大な数。
どれだけの数がこの鋼鉄要塞に存在していたのかなど知る由もない。
けれど、イーブンにとって、それはさしたる問題ではなかった。
「戦車が束になって来ようが問題ない。お前たちの狩り方は良く知っている」
己の身体の内側からほとばしるものがある。
吹き上がる炎が全身を包み込んでいく。激情の滾りが、身を満たしていく。肩が震える。頭が熱を持つ。
敵の戦車の恐ろしさを知っている。
けれど、それは歩みを止める理由には成っていない。正しく恐れてこそ、活路を見出すことができることをイーブンは知っている。
なら、これで|同点《イーブン》である。
恐れを打ち消すのが勇気であるというのならば、己にそれはない。
あるのは、オレステスの業怒(オレステス・アヴェンジ)のみ。
「戦車の装甲というものは前面が一番分厚い。当然だな。敵の攻撃を受けとめるためにあるのだから……だがっ!」
そう、正面から立ち向かうのは下策。
けれど、戦車はその性質から天面または底面の装甲が薄い。故に地雷が発展し、また同時に航空爆撃という手段が育っていったのだ。
一見無敵に見える怪物も、人の恐れが知恵を生み出し、殺すことができる。
有史以来、そうやって技術が発展してきたのだ。
「即席であるが」
イーブンは装填された徹甲弾に炎をまとわせ、解き放つ。
分厚い装甲を撃ち抜くために徹甲弾は生み出された。装甲を抜くためだけに生み出された砲弾は、火薬の炸裂によって破壊するのではなく、砲弾の質量と加速運動でもって装甲を穿つもの。
故に、弾頭の硬度こそ重視されるもの。
打ち込まれた徹甲弾は前面装甲であろうと撃ち抜くことができる。
そして、己の激情の滾りを満たす炎が装甲を撃ち抜いて飛び込んだ戦車内部に満載された砲弾の火薬に誘爆させることができる。
爆発が車体を包み込む。
火柱が上がる黒煙の戦場をイーブンは駆け抜ける。炎のオーラを纏いながら、ただ只管に『オブリビオン戦車隊』たちを翻弄し、徹甲弾を打ち込んでいく。
弾数がなくなろうが関係ない。
彼の改造銃にはこういうときのためにこそ、パイルバンカーが取り付けられている。
「こいつ、捨て身なのか!?」
「いいや、これで|同点《イーブン》というやつだが……いや、逆転だな、これでは!」
放つ鉄杭の一撃が戦車の装甲を打ち抜き、操縦手の機械兵士を破壊する。
「自分たちが獲物であるという経験も中々無いだろう」
イーブンは走る。
爆炎の中、自身の毛並みが焦げるのも構わなかった。毛皮一枚で済むのならば安いものだ。
そして、己という存在がオブリビオンに対して刻まれるのならば。
「追われる者の痛みを」
それを知れ。
己の中の激情が言っているのだ。
いつだってオブリビオンたちの侵略は人の嘆きを生み出すものである。奪われる悲哀。死せる痛み。
いずれもが耐え難いものだ。
イーブンは己がそうであったように。こんな怨嗟が続く戦場に存在することこそが、意義であるのならば。
「存分に刻みつけろ」
吹き荒れる炎の中、その立ち上がった耳が新たなる敵を見つけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『空を目指す者』
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POW : System one
【アンダーカバー射撃や近接戦闘用の爪・手甲】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【防御や回避といった行動】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : System two
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【装甲各所】から【内部圧密流体エネルギーの噴射攻撃】を放つ。
WIZ : System three
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【生体部品の体力や精神】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
イラスト:aQご飯
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ライアン・フルスタンド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『ノイン』と名乗るオブリビオンはため息をついていた。
猟兵たちの力は知っている。身を以て知っている。
だからこそ、物量と質でもって押しつぶし、消耗させることを選んだのだ。この鋼鉄要塞にしたって、そのうちの一つだ。
「本当によくやるものだよ。諸君」
己の駆る体高5m級の戦術兵器。
オブリビオンマシン『空を目指す者』と呼ばれた機体のコクピットハッチから乗り出し、彼女は首を傾げる。
「敬意を表するよ。これだけの戦力を物ともせず、鋼鉄要塞を攻め落としかけている。諸君らの強さは何処から来ているのだろうか」
彼女がかしげていた首を反対側に倒した瞬間、瞳がユーベルコードに輝いた。
力の奔流がほとばしり、頭上にあった鋼鉄要塞の天井が吹き飛ぶ。
そこには大空が広がっていた。何処までも続く空。
コクピットハッチが閉じ、『ノイン』は笑う。
「このオブリビオンマシンの生まれた故郷では、空に蓋をされているが。ここでは違う」
ドームのように広がる鋼鉄要塞の空。
何も邪魔されることなく広がる青空の下、オブリビオンマシン『空を目指す者』は、翼を広げ、ジェネレーターを咆哮させるように唸らせる。
展開する翼が喜びに震えるように力を発露させる。
「さあ、見せてもらおうか。諸君ら猟兵たちよ!息を絶つ誰かが、遙か空に手を伸ばす先にあるであろう昏い星の如きユーベルコードの輝きを――!」
イリスフィーナ・シェフィールド
さぁさぁ、ここが正念場っ
あのオブリビオンマシンにはここでご退場していただいて獣人の皆様に勝利をお届けしますわっ
わたくしの強さはこの最後まで諦めず光り輝く意志、勇気ですわっ
皆様が天井抜いて更に中からも吹き飛ばされて眺めが良くなりましたわね
……あら最初に抜いたのはわたくしでしたわ
ともあれ邪魔な天井なくなって助かりますの
おいでませっ、【ブレイブフォートレス】っ
融合合体(ファイナル・メガ・フュージョン)ですわっ!!
(専用マシンと1つになって両手剣を装備したロボットに、見た目は真の姿イラスト参照)
空中戦ご希望のご様子なのでダンスと洒落込みましょう
距離を詰めてブレイズ・スラッシャーで斬りかかります
距離をとって射撃しようとするなら斬撃波で牽制
付かず離れず攻守が目まぐるしく入れ替わる様は本当に踊ってるようで
しぶといですわ……隙を作るしかないですわね
斬り掛かって組み合った所でシャイニング・ウィルの意志の光を剣に全力で注いで強化しつつ発光
カメラ越しに目を眩ませた所で斬り込んで捻って斬り上げます(Vの字斬り)
正念場である。
それは誰しもが感じていたことだろう。しかし、それ以上に迫るオブリビオンマシンを駆るオブリビオンの重圧は凄まじいものであった。
鋼鉄の巨人。
体高5mの戦術兵器。
オブリビオンマシンとはこの世界とは異なる世界のオブリビオンである。しかし、そのオブリビオンマシンは人を載せ、その思想を歪めることによって世界の破滅を目論む存在である。
オブリビオンが乗り込む、という事態はこれまでなかったことである。
「あなたにはここでご退場頂きますわっ」
イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は鋼鉄要塞の天井を破壊して投入してきた猟兵の一人である。
だから、というわけではないがオブリビオンマシンが鋼鉄要塞の天井を吹き飛ばしたことに動揺することはなかった。
どれだけ強大な力を手繰るのだとしても。
オブリビオンマシンが飛翔し、自在に飛ぶのだとしても。
それでもイリスフィーナの中にある意志はくじけることはない。
イリスフィーナは自身の強さがなんであるのかを知っている。
最後まで諦めないこと。
光り輝く意志は、勇気に変わる。
故に、イリスフィーナは青空を見上げる。空に蓋されたかのような鋼鉄要塞の息苦しはない。
「おいでませっ『ブレイブフォートレス』っ!」
「させると思うかい?」
迫るオブリビオンマシン『空を目指す者』が翼を羽撃かせ、急降下と共にイリスフィーナに襲いかかる。
けれど、それを防ぐ巨大なマシンがあった。
それはイリスフィーナと合体するための専用マシン。盾となってイリスフィーナを守ったマシンがバラバラに分裂する。
「これがわたくしの全力全開っ、融合合体(ファイナル・メガ・フュージョン)ですわっ!!」
吹き荒れるユーベルコードの輝き。
満ちる光は戦場に在りし者たちの視界を塗りつぶす。
「この光……!」
「これがっ! これこそがっ!」
燦然と輝くユーベルコードが晴れ渡った時、そこに在ったのは専用マシンと合体を果たした白銀の如き装甲と蒼き輝きを放つ鋼鉄の巨人たる姿。
吹き荒れる力が発露するように頭部より髪をなびかせ、手にした巨大剣を構えるイリスフィーナ。
「巨人に変身するか、猟兵。けれど」
『空を目指す者』が翼を羽撃かせ、飛ぶ。飛翔する速度は凄まじい。だが、イリスフィーナは躊躇うことなく飛ぶ。
「空中戦をご希望のご様子。ならば、ダンスと洒落込みましょう」
腰部の装甲から推力を得てイリスフィーナが飛ぶ。
構えた剣と高速で繰り出される『空を目指す者』から放たれる爪の斬撃が激突し、火花を散らす。
大剣の一撃は痛烈。
故に『空を目指す者』の機体が空中で弾き飛ばされる。
「否、これは距離を!」
「そういうことだよ」
放たれる弾丸がイリスフィーナを襲う。それを体験の斬撃波で牽制しながら、さらに距離を詰める。
ここで距離を離してしまえば、敵の思うツボだ。
空は戦場。
ならばこそ、イリスフィーナは躊躇わず後を負う。空に刻まれる軌道の残光は火花を幾度となく散らせながら激突質づける。
まるで踊っているような、と形容されるのは当然であったかもしれない。
「しぼといですわ……ならっ」
放つ斬撃の一撃と爪が交錯し、鍔迫り合いのままに強引にイリスフィーナは敵を押し込む。パワー負けしていない。
だが、決定打が与えられないのだ。
ならばこそ、彼女の意志は輝く。
自分の最後の武器は己の意志。
諦めないという心。
勇気。
それを発露する意志の光が放たれ、『空を目指す者』の視界を塗りつぶす。
「――っ!」
「そこっ!」
鍔迫り合っていた爪を跳ね上げ、一瞬の隙を生み出す。こじ開けるようにして放たれた斬撃は奇しくも袈裟懸けに振るわれ、返す刃で『空を目指す者』へとさらに斬撃を加える。
その機体の装甲に刻まれたのは、Vの字。
勝利たる言葉に冠せられる一文字は、イリスフィーナの斬撃に寄って刻まれ、猟兵たちの勝利への道筋を超克たる先へと示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ハート・ライドン
※連携、アドリブ歓迎
もしも意志を持っているとしたら
あのオブリビオンマシンは喜んでいるでしょうか
生まれ故郷では叶わなかった、空へ至れて
星に手を伸ばすのは此の世界の者も、私も同じ
そして、息を絶つには早過ぎます
自由に地の果てまでも駆けてゆける、そんな世界の為
――おいでなさい、ポルックス
キャバリアを召喚・『操縦』し戦闘
キャバリアライフルでの『制圧射撃』と
『ダッシュ』での回避行動を並行しつつ
敵の『情報収集』をします
有効なダメージを与えられずとも構いません
敵の飛び回る軌道を読み
本命の攻撃を当てられればいいのですから
【スペランツァ・トルナード】発動
竜巻を上空目掛けて放ち
飛翔する敵機を巻き込み、地に墜とします
望みを持つ者がいるのだとして、それを愚かだと笑うものは賢き者であったことだろう。けれど、ときにして賢き者が頂きに至るばかりではないことを人は知っている。
いつだって頂きに登り詰める者は才持つ者でもなければ、賢者でもない。
懸命である者だけが、頂きに至ることができるのだ。
故に、オブリビオンマシン『空を目指す者』と呼ばれたオブリビオンマシンが天井の吹き飛ばされた鋼鉄要塞の空を飛ぶ姿を、ハート・ライドン(ウマの戦闘猟兵・f39996)は見上げていた。
「もしも意志を持っているとしたら、あのオブリビオンマシンは喜んでいるでしょうか」
生まれ故郷であるクロムキャバリアで叶うことのなかった空へと至ることができて。
それはきっと星に手を伸ばすのと同じことであった。
どの世界にあっても人は手を伸ばす。
己の欲するところに。
ハートにとって、それは自由に地の果てまでも掛けてゆく事のできる、そんな世界であった。
それを彼女は求めている。
けれど、それを阻む者がある。
そう、オブリビオン。
過去の化身たる彼等が居る限り、ハートの願いは叶わない。
「だからと言って手を伸ばすことをやめるわけにはいかない」
煌めくようにして虚空より現れるは黒きキャバリア。
「そして、息を絶つには早過ぎます」
『ポルックス』、と星の名を呼ぶ。
それに応えるようにして一騎のキャバリアのコクピットハッチが開く。そこにハートは収まり、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
未だ星は潰えず。
そして、手を伸ばす己もまた絶えず。
ならば、掛けねばならない。
「風はいつも、私と共に」
「『空を目指す者』よ、君は猛っているのだろう。わかるとも。自由に世界を行き来する者たち。空に蓋をされた者の苦しみ。私は理解るとも」
凄まじい勢いで迫る『空を目指す者』。
その鋼鉄の翼が羽撃くたびに放たれる高密度のエネルギーが噴射し、『ポルックス』を駆るハートに襲いかかる。
放たれるキャバリアライフルの弾丸を空中で自在に急制動を掛けて躱す『空を目指す者』。
挙動の凄まじさ、回避性能の高さ。
いずれをとっても強敵であると認識できる。それはきっとオブリビオンマシンの性能だけではなく、それを駆るオブリビオンの技量の高さもあいまったものであるとハートは理解するだろう。
「当たらないな、猟兵。牽制程度の射撃ではな!」
「躱される……ですが!」
ライフルの射撃では有効な打撃を与えられない。それどころか躱され、放たれる高密度エネルギーの噴射によって此方が窮地に立たされる。
だが、それでもハートは構わなかった。
「『空を目指す者』……あなたの夢はここで終わりなのです。夢は叶えれば終わりを告げる。新たな夢を、目的を、それを見出すことこそ、願いを叶える旅の意義なら」
ハートの瞳がユーベルコードに輝く。
機体を覆う竜巻。
それは『空を目指す者』に『ポルックス』の存在の感知を不可能にするユーベルコード。
「スペランツァ・トルナード……風は私と共にある。なら、私はあなたの夢を失墜させる!」
放つ竜巻が空を舞う『空を目指す者』へと殺到し、その機体を大地に落とす。
ハートは『ポルックス』と共に駆け抜ける。
地に落ち、また飛び立とうとする『空を目指す者』。そこに叩き込まれる竜巻の如きライフルの弾丸の一射が鋼鉄の翼を射抜くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シプラ・ムトナント
団結こそが、戦場における強さです。
例え同じ場所にいなくとも、互いの奮闘を信じ役割に邁進する。|貴女方《オブリビオン》とて、その力はご存知のはず。
わたし達は託されたのです……ならば、勝たなければならないのが道理でしょう?
『催眠の羊眼』を使います。
この眼はあらゆるものを催眠し、わたしに友好的にする魔眼……ですが。動きを止めてくれるなら、当然撃ちます。
抵抗は幾らでもどうぞ。貴女程の実力者であれば、撥ね付けることは可能でしょう。
しかし、それだけの|代償《せいしんりょく》を払っていただきますが。
眼の効力は持って2分強。
わたしの意志と貴女の意志、どちらが折れるのが先か……根比べと参りましょうか。
竜巻と共に放たれた弾丸がオブリビオンマシン『空を目指す者』の鋼鉄の翼を射抜いていた。きしむ機体。
失墜した時に受けたダメージの復旧に時間がかかるのだろう。
それを仕方のないことだとオブリビオン『ノイン』は息を吐き出す。これが戦い。猟兵との戦いというものだ。
息をつかせぬユーベルコードの煌めき。
それによって己は追い込まれていた。だが、同時に彼女は笑う。やはり戦いは良いものだと。
「ああ、たまらないな。『空を目指す者』よ。君も感じていることだろう。彼等猟兵の力を。兵器として生み出されたのならば、やはり己の力こそがすべてをねじ伏せなければならないものであると。そうすることで己を証明できるのだと。それこそが強さなのだと」
彼女の言葉に応える者があった。
「団結こそが、戦場における強さです」
シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は痛む身体を推して鋼鉄要塞の最奥へと至っていた。
外れかけた肩はなんとか元の位置に戻したが完全ではない。
この状態の己に何ができるかと問われたのならば、多くのことができないと応えるしかないだろう。
けれど、彼女は。彼女の意志は違う。
それを是としない。
「何を。諸君らの強さは個に裏打ちされたものだ」
オブリビオンマシン『空を目指す者』のコクピットから『ノイン』が告げる。
彼女日って猟兵とは個である。
如何に数珠つなぎのようにオブリビオンと戦うのだとしても、結局のところ個としての力が勝るのだ。
「いいえ。たとえ同じ場所にいなくとも、お互いの奮闘を信じ役割に邁進する。|貴女方《オブリビオン》とて、その力はご存知のはず」
その言葉に『ノイン』は違和感を覚えたことだろう。
如何に機体が復旧しきっていないのだとしても、動けるはずだ。飛ぶことができなくても、地に佇む猟兵の一人を殺すことなどできるはずだった。
だというのに、オブリビオンマシンは、己は何をしているのだ。
なぜ、シプラの他愛のない言葉に付き合っているのだ。
「だからなんだというんだい。君は、諸君らは……――まさかっ!」
『ノイン』はようやく気がつく。
そう、シプラのユーベルコードは既に発露していた。
たとえ、己の身が万全でなくても、己が為すべきを為すという鋼鉄の意志によって支えられたシプラの瞳は、催眠の羊眼(ヒュプノスシープス・アイ)。
魔眼の如き彼女の赤い瞳がユーベルコードに輝いている。
彼女の瞳はあらゆるものを催眠し、彼女の有効的にする力。
きしむようにオブリビオンマシンが動き、また同時に『ノイン』もまた彼女の言葉に聞き入っていたのだ。
彼女は確かに万全ではない。
けれど。
「私達に、催眠を……!」
「わたし達は託されたのです……ならば、勝たなければならないのが道理でしょう?」
シプラは駆け出す。
己の羊眼はまだ発露している。
ユーベルコードの力は持って二分。僅かな時であるかもしれない。
けれど、それでもいい。
自分が敵を穿つことが出来なくても、この二分が後に続く猟兵たちの礎になる。いや、これは鎹だ。
自分が繋いだからこそ、届く未来があると彼女は知っている。
「……君は」
「抵抗するならいくらでも。貴女程の実力者ならば、はねのけることもできるでしょう。しかし……」
「わかるとも。これがどれだけ私の精神力を削っているのかなど……だが、一つ聞かせてもらおうかな。君は、どうしてそこまでするんだい? この争いばかりが満ちる世界にあって、君は何を望んでいるんだ」
これは結局のところ、綱引きだ。
あらゆる行動に成功するために精神力という代償を払うオブリビオンマシンと、あらゆるものを有効的にさせる催眠を放つ己の羊眼との、根比べ。
どちら先に折れるか。
否、その勝負ならばすでに己が勝っている。
シプラにとって、その勝負に持ち込んだ時点で彼女の勝利は確定しているのだ。
折れぬ心を持っているからこそ、彼女は戦場に立っている。
痛む身体など、後でどうとでもなる。けれど、共に戦場に立つ者たちは違う。いつだって、シプラは……。
故に、彼女は問いかけに応える。
「誰かのためになるようにと、私はいつだって願っているのです。望んでいるのです」
だから、己は折れないのだと言うようにシプラは輝く羊眼でもってオブリビオンマシンを抑え続けたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サク・ベルンカステル
「戦車の次は鋼の巨人か、、、ならばあの技しかあるまい、、、」
気だるげな表情で呟くとUCを発動させる。
それは己の体内の忌むべき闇の血を暴走させ体表にて纏い、自身を悪鬼羅刹の如き黒き剣鬼の姿(4本腕)に変貌させるUC(POW)。
常人であれば絶えず絶叫する苦痛を堪えながら背の随行大剣をおもむろに掴むと空を舞う『空を目指す者』に凄まじい速度で投擲。
避けられようとも投擲したのはもとより宙を舞い敵を切り裂く随行大剣。それが4本とも空を目指す者の頭上より襲いかかる。たまらず低空飛行に切り替えたところを悪鬼羅刹の如き剣鬼に変貌した自身とその黒剣が迎え撃つ。
猟兵のユーベルコードがオブリビオンマシンとオブリビオンの両方を消耗させていく。
その力の発露は共に戦う者たちがいるからこそ。
後に続く者たちがいると確信している。
数珠つなぎのように紡がれた戦いは、いつだって己たちよりも強大な存在を打ち倒す。それをサク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし者・f40103)は良く知るだろう。
常に彼の心の中には上位存在への復讐があった。
故に力を求めたし、そのことに憂うことはない。
そして、躊躇うこともないのだ。
「戦車の次は鋼の巨人か……ならば、あの技しかあるまい……」
息を吐き出す。
消耗は常なるものであった。
自分よりも強大な存在と戦うのならば当然のことだった。けだるげな表情のまま瞳がユーベルコードに輝く。
「告げる」
サクは己の手にした大剣の鋒を『空を目指す者』へと突きつける。
己に誓うように。敵に宣うように。
「貴様はここで叩き斬る」
彼の身体の中より荒れ狂うのは闇の血。
暴走。
それこそが彼の切り札である。
噴出する血液がサクの身体にまとわれ、超硬度に達する装甲へと変貌を遂げる。
奇しくも、その巨躯は相対する鋼鉄の巨人と同じ体高。
「面白いな、猟兵。結局の所、そこに行き着くのかい。まるで悪鬼羅刹だな」
オブリビオンマシンを駆るオブリビオン『ノイン』が笑う。
認めているのだ。
嘲っているわけでもない。ただ、その在り方は己が憎む者と同じ姿であっただろうから。皮肉のように感じたのならば、サクの中に荒れ狂う闇の種族の血液がさせたのだろう。
震えるほどにきしむ骨身。
手にした大剣を飛ぶ『空を目指す者』へと投げ放つ。
その投擲の一射を躱される。しかし、サクは構わなかった。さらに投げ放つ。大剣は4つ。それが、頭上にありて自在に『空を目指す者』へと襲いかかるのだ。
「随行兵器とでもいうのかな。だが!」
「わかっている。貴様が卓越した技量を持っていることは。だからこそ」
低空飛行に切り替えることも。
大剣を躱すことにかまけているがゆえに、飛行コースが限定されていることに気が付かないのだと。
しかし、それを読み切ったように『空を目指す者』は、その装備された爪で迫る大剣を弾く。
「甘いと言おうか。猟兵。この程度の駆け引きで」
「駆け引きではない。事実だ」
サクの巨体が飛ぶ。
超硬度の血液が凝固した装甲と共に踏み込む。己の身体を苛む痛みは己の意識をつなぎとめる楔。
そして、同時に鎖でもあったことだろう。
剣鬼顕現(ケンキケンゲン)はすでに。
ならば、己が振るう剣は唯一つ。
きしむ。
骨身も、魂もきしむ。
己が告げたことは必ず成し遂げる。そのために研鑽されてきた肉体である。
断ち斬るという一念。
ただそれだけを込めて振るい上げた大剣の斬撃の一撃が交錯した『空を目指す者』の装甲を切り裂く。
万全の『空を目指す者』とオブリビオン『ノイン』であったのならば、その一撃を躱すことも可能であっただろう。
けれど、これは繋ぐ戦いである。
「言ったはずだ。貴様はここで叩き斬る、と――」
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
飛行型か…
元の世界では飛べないからってこっちで張り切りやがって…!
けど随分と訳知り顔じゃないかえっとノインだっけ?
9とは随分と意味深な名前じゃないか
いったい何の9番目なんだろうね?
ちょいっと教えてくれないかな?
ま、素直に教えて貰えるとは思ってないけれども!
超克…オーバロード!
外装展開、模造神器全抜刀
そっちが空を得意とするんなら…こっちはそれに付き合う気は無いよ
飛ぶ鳥は撃ち落とすに限る!ってね
【剣技・暴嵐剣】起動
空を目指す者を追い抜かして空中に飛び上がる
追い抜かしたら『斬撃波』を4剣で狙って何度も飛ばし、軌道を制限して狙いを定める
後は急降下し、マウントを取って近接戦闘!
『オーラ防御』で全身を保護し、エネルギーの噴出攻撃に対抗
後は『なぎ払い』と『串刺し』による剣戟を繰り出し、地に落として行く!
どっちが根負けするか、勝負といこうか
空は目指させない、此処でこの機体は終わらせる
そして中の奴!
その思わせぶりな態度、気に食わないから出て来て一発斬らせろ!
大丈夫大丈夫!
痛いだけだからさ!
「見事だと言っておこうか、猟兵」
オブリビオン『ノイン』はオブリビオンマシン『空を目指す者』を駆り、猟兵の斬撃に装甲を引き裂かれながらも飛翔する。
すでに鋼鉄要塞の天井は取り払われている。
ここには空を飛ぶ者を無条件に落とす暴走衛星はない。
ならば、『空を目指す者』は、その力を十全に発揮している。だが、猟兵たちの攻勢が重ねられ、損傷を得て、駆る『ノイン』は消耗している。
「だが、止められるか」
「元の世界では飛べないからってこっちで張り切りやがって……!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、空高く飛翔するオブリビオンマシンを見上げる。
クロムキャバリア。
同じく戦乱続く世界にあって、空とは蓋をされたものである。
あれだけの速度、高度で飛べばどうなるかなどわかりきっている。オブリビオンマシンであろうと例外ではないのだ。
「けど随分と訳知り顔じゃないか、えっと『ノイン』だっけ?」
玲は数字の名前に心当たりがあった。
クロムキャバリア世界にあっても数字で呼ばれた者たちがいた。彼等の名は確かに14まで数えている。
けれど、『9』に相当する者がいなかった。
「いったい何の『9』番目なんだろうね? ちょいっと教えてくれないかな?」
「『超越者』の数字だよ。だが、本来存在しない数字、『0』に座を奪われたというだけの話さ。脳無き巨人にはふさわしいとは思わないかな、猟兵」
急降下しながら『空を目指す者』を駆り『ノイン』が迫る。
「えらく素直に言うけど、結局、また意味深になっただけじゃない!」
激突する爪と模造神器。
火花が散る。
体高5mの巨人と生身単身の猟兵が打ち合う光景はあまりにも非常識であったし、非現実的であっただろう。
けれど、これが現実である。
確かに玲は模造神器でオブリビオンマシンの突撃を受け止めてみせた。
だが、それは『空を目指す者』たちにとっては、彼女の行動を覚え、次撃をさらなる確実なものとするユーベルコードであった。
消耗すれど、敵の行動を覚え次に備える。
速度にまさり、空を飛ぶというのならば、さらに相乗効果を生み出したことだろう。
「ハハハ、悪いね。私自身も過去に歪んで、馴染んでいないんだよ」
「しゃらくさい。そっちが空を得意とするんなら……こっちはそれに付き合う気はないよ!」
「ならどうする! このまま八つ裂きになってくれるか!」
「そのつもりはないってば! それに飛ぶ鳥は撃ち落とすに限る! ってね」
煌めくユーベルコード。
模造神器に流れ込むユーベルコードの力。吹き荒れるは荒れ狂う蒼嵐。玲の身体を跳ね上げるように上空へと舞い上げる。
それは『空を目指す者』よりも高く、高く。
見下ろす先にある鋼鉄の巨人を玲は、超克に輝く瞳で見据える。
「外装展開、模造神器――全抜刀」
外装副腕が展開し、模造神器の四振りが励起する。
蒼光が煌めく。その剣呑たる輝きは、擬似的に再現されたUDCの力の発露。
即ち、剣技・暴嵐剣(プログラム・ランページソード)。
此処に在りしは頂きの王。
「『9』番目の巨人だとかなんだとか、その思わせぶりな態度、気に食わない」
「ならどうする」
決まってるでしょ、と玲は笑う。
すでに頭上は取った。故に振るう斬撃が波となって『空を目指す者』へと襲いかかる。吹き荒れるようにして激突する爪とエネルギーの放射。
蒼嵐の中に明滅するユーベルコードの激突。
振るう斬撃が打ち据えるたびに嵐が荒ぶ。
「一発斬らせてもらう!」
振るう一撃が『空を目指す者』の腕部を切り裂く。浅い。
だが、構わない。己の振るう剣戟は嵐そのもの。ならば、止まることはない。荒れ狂う蒼嵐が尽きぬのならば、彼女の剣閃はさらに明滅する雷のようにほとばしり続けるのだ。
「大丈夫大丈夫! 痛いだけだからさ!」
「御免被るとだけ言わせてもらおうか、頂きを目指す者よ」
「なら! どっちが根負けするか、勝負といこうか。空は目指させない、此処でその機体は終わらせてあげるよ!」
激突する斬撃。
火花が散る。
無限にも思える斬撃の応酬は嵐が消えるまで続く。
「これでっ!」
「まだだ!『空を目指す者』よ、君はここで終わるつもりなどないだろう! こらえろっ!」
「往生際が……悪い! 高く飛びすぎた鳥はさ……!」
最上段に振り上げた模造神器の刀身が煌めく。
『空を目指す者』にとって嵐とは避けなければならないもの。されど、それを避けず相対した時点で。
「地に落ちるのは必定というものでしょ!」
振り下ろした一撃が雷鳴のように『空を目指す者』の装甲を一文字に切り裂く――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
一つ教えてやる
空を征するのは……「目指す」より先に飛び立つ者だ!
|降臨《Calling》!ゼロウォリアー!
口上と共にZIカード召喚したゼロウォリアーに飛行ユニットに
変形したムゲンストライカーを融合合体させる
合体と共に操縦席も移動
|ZI《ジー》ユナイト!モードウィンガー!!見せてやる!
これがゼロウィンガーだッ!
飛行可能になったことにより懐に飛び込めるな
クラウ・ソラスによる剣戟に加え【残像】【操縦】【カウンター】で
応戦し兎に角敵の攻撃は回避
当たらなければなんとやら、ってヤツさ!
折を見てグレイプニルXEEDによるUC発動
敵の翼を切断破壊し仕留める
天も、空も、お前さんには掴ませねえよ
蒼い斬撃の光が一文字に空と鋼鉄要塞の地面を繋ぐように放たれ、オブリビオンマシン『空を目指す者』が失墜する。
しかし、大地に叩きつけられる前にこらえたのか、スレスレで再飛翔する姿は猟兵たちの攻勢によって損耗していることを知らしめる。
「やってくれるな、猟兵。だが……『空を目指す者』はまだ飛べるようだぞ?」
オブリビオンマシンを駆るオブリビオン『ノイン』が笑う。
『空を目指す者』の意地というものを感じたのかもしれない。
噴射するエネルギーと共に鋼鉄の翼が広がる。ユーベルコードの輝きを解き放ちながら、迫る猟兵へとジェネレーターの咆哮を轟かせるのだ。
「一つ教えてやる」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は『空を目指す者』を前にして、その瞳をまっすぐに向ける。
「空を征するのは……『目指す』より先に飛び立つ者だ! |降臨《Calling》!『ゼロウォリアー』!」
ロウガの背後の召喚されたキャバリアと彼が乗っていた『ムゲンストライカー』が変形し合体する。
コクピットへとロウガは収まり、叫ぶ。
「|ZI《ジー》ユナイト! モードウィンガー!! 見せてやる! これが『ゼロウィンガー』だッ!」
手にしたキャバリアソードが輝く。
吹きすさぶ衝撃の最中、『空を目指す者』が迫る。
消耗していたとしても強力なオブリビオンマシンであることに変わりはない。
「講釈はありがたいがね。しかし、諸君らは知っているだろう。飛べば撃ち落とされることが理解っていながら、それでも飛ぶかい?」
「目指すことはスタートラインでしかねぇんだよ!」
懐に飛び込む『空を目指す者』の爪の一撃が迫る。剣戟の一撃が受け止められる。さらに速度を上げる『空を目指す者』の攻撃。
これまで猟兵たちとの攻勢によって蓄積された行動が、攻撃の速度を上げているのだ。
「カウンター……」
「それを狙っていることはわかっているのさ」
蹴り上げられる『ゼロウィンガー』の腕部。かろうじてキャバリアソードを取りこぼさなかったことは幸いであった。
放たれる斬撃を一瞬で翻って躱す『空を目指す者』の速度は圧倒的であった。しかし、同時に自身もまた躱している。
「当たらなければなんとやら、ってヤツさ!」
「言ってくれるな。だが、堂々巡りであるということは!」
「それはないって言うんだよ!」
ロウガの瞳がユーベルコードに輝く。此方の攻撃は届かない。しかし、此方は敵の攻撃を躱すのに精一杯である。
均衡はすぐに崩れる。
ならばこそ、ロウガは賭けに出る。
二進も三進もいかない状況を変えることができるのは、いつだって捨て身の行動だけだ。それを愚かだと笑う者には笑わせておけばいいのだ。
「天も、空も、お前さんには掴ませねぇよ」
放つユーベルコード。
絶冥拘縄(ストラングラーフィニッシュ)は、『ゼロウィンガー』の腕部より解き放たれた『グレイプニル』の一射。
それは弧を描くようにして『空を目指す者』の鋼鉄の翼へと絡まり、拘束する。
否、それだけではない。
飛翔を許さぬとばかりに高速で引き戻されたグレイプニルが、その『空を目指す者』にとって欠けてはならぬ一翼を寸断するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
要塞の解体にかかる手間が少し省けましたね
あとは上空の余所者を骸の海へ還せば作戦は完了です
(肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
不思議です。無意識にこの旋律を選んでいました
大空の解放感が私の気持ちを昂らせているのでしょう
(UC【蠱の娘】が発動し{蜂蜜色の陽炎}から{舞狂人形}が召喚される)
舞狂人形、貴女も踊りたくなったんですね
では一緒に踊りましょう
({舞狂人形}のコクピットに乗り込み飛翔すると{紅焔の旋律}から生み出した炎の『斬撃波』による『属性攻撃』を『ダンス』しながら放つ)
鋼鉄の一翼が引き裂かれる。
これでもうオブリビオンマシン『空を目指す者』は飛べないはずだった。
しかし、『空を目指す者』の内部にあるのはオブリビオンである。通常のオブリビオンマシンと異なる点はその一点だけであった。
即ち、生体部品としてオブリビオンの消耗はあれど、常人とは異なるものであった。
故に。
「『空を目指す者』よ。わかるよ。君が飛びたいということ。なら、存分に使うがいい。私の力を。そうすることで君が君をそう定めるのなら!」
吹き荒れるようにエネルギーの噴出が起こり、『空を目指す者』は飛翔する。
その姿を播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は見上げる。
「鋼鉄要塞の解体にかかる手間が少し省けましたね。後は……空のよそ者を骸の海へ還せば終わりです」
そこに感傷はない。
ゆっくりと彼女は肩幅に足を開く。
いつものルーティーンだった。両手が太ももをなで上げながら状態を起こす。
身より湧き上がるは、情熱と欲望。
そのリズムが、天を衝かんと燃え上がり、鎮まることなく燃え広がる炎として発露する。
ああ、と息を吐き出す。
「不思議です。無意識にこの旋律を選んでいました」
理屈ではない。
損得でもない。
あるのは、頭上に広がる青空。
空があんなにも青いのに、地には争いが満ちている。終わらない戦乱だけが渦巻いている。肌に感じる開放感が己を昂ぶらせるのだとしても、何一つ変わらない。
故に、彼女の身より発露する蜂蜜色の陽炎より、鋼鉄の巨人が現れる。
その名は『舞狂人形』。
「ハッ、面白い。脳無き巨人。懐かしいと言わせてもらおうか。だが……! 私は同胞と認めていないのだよ!」
オブリビオン『ノイン』が『空を目指す者』と共に『舞狂人形』へと迫る。
クロリアは大地を蹴って開かれたコクピットへと収まる。
己の身より発露する炎を受けて、蠱の娘(コノコ)たる『舞狂人形』のアイセンサーが煌めく。
踏みしめる。
大地をけるように。
クロリアは理解する。わかっているのだ。
「『舞狂人形』、貴女も踊りたくなったんですね」
「争いばかりの世界で、踊ることを望むかい!」
「ええ、そのようです。だから、私は応えるとしましょう。『舞狂人形』、一緒に踊りましょう」
迫る一撃を『舞狂人形』が回転するように、輪舞曲を舞うように躱し、回転を活かした蹴撃の一撃が『空を目指す者』の胴へと叩き込まれる。
炎が吹き荒れる。
回転するたびに機体を取り巻く炎が大きくなっていく。
それはクロリアの中にある熱情が燃え盛るようでもあったことだろう。振るう蹴撃の一撃は、さらに速度を増して……クロリア自身がそうであるとは認識せぬままに踊るように『空を目指す者』へと放たれる。
上空へと飛び退ろうとする『空を目指す者』へと追いすがる炎の斬撃波。
それが装甲を溶解させ巨体を吹き飛ばす。
「空はこんなにも広いのに。何を怖がっているのです。何処までも広がる空はこんなにも自由だというのに――」
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
「無理に無理を重ねてここまで来たが、もう少し頑張ってくれよ相棒。」
この戦いが終わったら、オレ…ツキミズキのオーバーホールするんだ…。
フラグじゃないよ。未来への展望だよ。
【行動】
さて、最後の正念場だ。
残りのエネルギーと残弾使い果たすつもりで行くぜ。
スターダストテェイサーの『誘導弾』と『エネルギー弾』の『一斉射撃』による『威嚇射撃』で接近を防ぎつつ、『野生の勘』で敵の攻撃を見切って回避だ。
空中に飛ばれていたらオレの爪も届かねぇ。
悪いがもう一度踏ん張ってくれツキミズキ!!
≪野生開放“ビーストライズ”≫
残弾すべての『砲撃』による『乱れ撃ち』で撃ち落とす!!
これは本格的にオーバーホールをしなければならないとオーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)はこれまで苛烈な戦いを共に走り抜けてきたキャバリア『ツキミヅキ』のコクピットの中で呻く。
「無理に無理を重ねてここまで来たが、もう少し頑張ってくれよ相棒」
鋼鉄の躯体が答えるように唸りを上げる。
この意気ならば、とオーガストは思った。
しかし、この戦いが終わったらオーバーホールをするんだ……というのは良く聞くフラグというやつであろうか。
そうして立てられたフラグというのは得てして回収されるものであるし、また不吉な前兆のようでもあったことだろう。
いや、とオーガストは頭を振る。
「これは展望。未来への展望くまー!」
とは言え、此処が正念場である。
鋼鉄要塞を陥落させるには獣人たちの協力は不可欠であったし、また同時に猟兵たちの力も必要であった。
どちらかが欠けても立ち行かぬものであったことだろう。
それほどまでにオブリビオンの『超大国』の力は強大なのだ。
その一端が今まさにオーガストに迫る。
炎の蹴撃の一撃を受け、鋼鉄の一翼を失ってもなおオブリビオンマシン『空を目指す者』はエネルギーを噴出させながら空を飛翔する。
「意地であるよな、『空を目指す者』よ。これは!」
オブリビオンマシンに乗るオブリビオン。
『ノイン』と名乗ったオブリビオンが駆る機体は、猟兵たちの重ねられた猛攻を前にしても些かも陰ることはなく、その力を発揮する。
「まだそんな速度を出す余裕があるかよ」
「それはお互い様だろう、猟兵」
「だよな、行くぜ『ツキミヅキ』! 残りのエネルギーと残弾使い果たすつもりで行くぜ」
オーバーフレームに装着された多目的八連装有線式誘導ミサイルから火線を引くようにしてミサイルが飛翔する。
その間隙を縫う用にして『空を目指す者』は疾駆する。
さらにエネルギー弾の一斉射で接近を阻もうとするが、しかし『ノイン』は笑う。
「弾幕程度で私を阻もうなどとは!」
「うるせー! こちとら空は飛べねぇんだよ!」
地面をけってエネルギーを噴射させながら『空を目指す者』は跳ねるようにして爆発の中を飛ぶのだ。
飛翔できるというアドバンテージがこれほどまでとは思いもしなかっただろう。速度に優れ、さらに優れた乗り手がいるという事実。
しかし、オーガストは笑う。
乗り手が、というのならば己も同じだ。負ける気なんてサラサラ無いのである。
「悪いがもう一度踏ん張ってくれ『ツキミヅキ』!!」
オーガストの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に発露するは、『ツキミヅキ』の力。荒ぶる山の神へと変貌するパンツァーキャバリアの姿を前に『空を目指す者』は咆哮するようにジェネレーターをうならせる。
迫る爪の一撃と『ツキミヅキ』の腕部が激突する。
ひしゃげる腕部。
砕ける装甲。
きしむフレーム。
いずれもオーガストの機体が『空を目指す者』によって破壊される音であった。
しかし、オーガストは唸るようにして叫ぶのだ。
その名を。
『キムンカムイ』の名を。
野生開放“ビーストライズ”(ビーストライズ)によって咆哮する『ツキミヅキ』の拉げた腕部が『空を目指す者』の頭部を打ち据える。
「――まだ動くか」
「しゃらくせんだよ! すべてくれてやるんだ、もってけ!」
一瞬の明滅。
己の『ツキミヅキ』に搭載された火器のすべてが『空を目指す者』へと叩き込まれ、その躯体を吹き飛ばしながらオーガストは己の機体がかく座するように膝をつくのをコクピットで感じる。
限界を超えた駆動。
己の言葉に応えた相棒に答えるようにコクピットのコンソールにオーガストは拳を合わせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
ここは焔天武后の出番ですね。
ナイアルテさんが送り込んでくれたスーパーロボットに搭乗。
速度では向こうが上ですから空中戦は避けて要塞で仁王立ち。
結界術・高速詠唱で防御壁を展開したり、オーラ防御を纏った天耀鏡で盾受けの体勢を整えて待ち構える。
このプレッシャーに数にちなんだ名前…知っている人達と所縁がある筈ですが、何でオブリビオンになって、豚鼻マシンに乗っているのかな?
そういう機体が好きなのでしょうね。
ガンプラならゾックとかアッガイフェチ?
相手が攻撃の為に迫ってきたら《自然回帰》発動。
システム停止と電源オフで止まったところに、雷月に雷の属性攻撃・神罰を籠めた衝撃波込みの鎧無視攻撃でズバッと斬ります!
虚空より現れるは白と赤のスーパーロボット。
名を『焔天武后』――真紅の装甲より発露するユーベルコードの輝きは、その美しい女皇帝型である姿を一掃輝かしいものとしていた。
「このプレッシャー……」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は『焔天武后』のコクピットにありながら、己の身を貫くかのような重圧にざわつくような感触を覚えた。
敵――即ちオブリビオンマシンを駆るオブリビオン。
『ノイン』と名乗るオブリビオンは、彼女にとって、所縁を感じさせるものであった。
数字を名に持つ者たち。
オブリビオンマシンがクロムキャバリアにおいて、オブリビオンとしての役割を果たしているのならば、その数字の名は浅からぬ縁を感じさせるものであったのだ。
「なぜその機体に乗っているのです?」
自然と問い掛ける言葉になったことは致し方ない。
「なぜ、と問われたのならば、乞われたからと応えるしかないな、猟兵。諸君らが世界の悲鳴に応えるように。私もまた応えるだけなのだよ」
噴射するエネルギーが機体を空に舞い上がらせる。
オブリビオンマシン『空を目指す者』は一翼を失い、その機体に数々の消耗を受けながらも、しかして止まらない。
戦いは終わっていない。
ならば、オブリビオンマシンであることを全うするためには、戦うしかないのだ。
「そういう機体が好きなのかと思っていましたが」
「嫌いではないさ」
迫る『空を目指す者』。
機体より噴射する高密度のエネルギーは飛翔することに回されているが、それ以上に攻撃にも転ずる事ができる。
詩乃は下手に動くことをしなかった。
消耗しているとは言え、速度では敵の方が圧倒的に上である。敵の領域で戦うことは避けたかったがゆえに、詩乃は『焔天武后』と共に鋼鉄要塞の中に仁王立ちしてオーラを纏う盾を浮かべ、エネルギーの投射を防ぐのだ。
「その程度で防げると思われていることが!」
砕けるオーラ。
破片舞うよにしてエネルギーの奔流が北尾を襲う。
「なぜ貴方がオブリビオンになっているのです。どうして戦いの中を」
「それが私だからだ。どんな存在も過去になる。過去にならぬ者はないし、過去の体積によって歪むのも必定というものさ。だから!」
放たれるエネルギーの投射が『焔天武后』の身を守る盾を弾き飛ばし、肉薄する『空を目指す者』のアイセンサーと交錯する。
「ならば、貴方は自然の営みによらずして生み出されし全ての悪しき存在。告げます。アシカビヒメの名において動きを止め、本来あるがままの状態に帰りなさい」
詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。
自然回帰(シゼンカイキ)、それは彼女のユーベルコードであり、またあらゆる装甲と障壁を突破する若草色の神気によって『空を目指す者』を穿ち、その機体のシステムを停止させる。
エネルギーの放射が止まり、組み合う二機。
「自然とは君が願うものであり、思うものなら、それは意のままにするということだ!」
オブリビオン『ノイン』の力が発露し、機能停止に追い込まれた『空を目指す者』のアイセンサーが灯る。
だが、それで十分だった。
「歪み果てた者が世界に仇為す。ならば、私はこれを討つ者!」
雷を込めた斬撃が『空を目指す者』へと放たれ、袈裟懸けに切り裂く。
飛び散る破片の中、『空を目指す者』は飛び退る。
致命傷に至らずとも消耗させた一撃は、必ずオブリビオンマシンを滅びへと導く――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
うわぁ、ついにゴーレムがでてきちゃいました……。
これだからわたし、こういう世界と相性悪いんですよね。
と、言っていたのは昔のことです!
いまのわたしには【ソナーレ】があるので、巨人戦も安心です!
ゴーレムで戦うのは初めてですけど、
わたしの演奏を100%力に変えて戦うこの子となら、相性もバッチリですよね!
さぁ行きますよ!
華麗なる演奏に導かれる、ゴーレムの華麗な動きをみてください!
あははははは! どうですかステラさん!
周囲を飲み込む演奏! ゴーレムのスピード! パワー!
それをすべて乗せた【カンパネラ】の超威力ー!
なにがきても地形ごと破壊しちゃいますよ!
狂気の演奏とか酷くないですか!?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ノイン様、またお会いしましたね
すぐに会えると思っていましたけども
ハイランダーナインであった貴女が戦いを求める理由
なかなかに興味がありますが?
フォル、いらっしゃい!(鳥型キャバリアを呼び寄せ)
目には目を
ええ、空を縦横無尽に駆けるオブリビオンマシンも
この世界の空も
貴女だけのものではない
覚悟していただきましょうか!
え?何か言いましたルクス様?
今、私は別機体であることについて全世界の神に感謝している最中です
ああ、とてもすごいですね
流石、|狂気の演奏者《光の勇者》です(笑顔)
雑じゃないです
さて
【アン・ナンジュ・パス】で仕掛けます
飛翔速度なら負けません!
その上での高速マニューバ、かわせますか!
「うわぁ、ついにゴーレムでてきちゃいました……」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わず呻く。だってそうなのである。
彼女は勇者と名乗っているのだとしても、結局のところ生身単身なのである。
鋼鉄の巨人たるキャバリア、オブリビオンマシンと戦う時、その絶対的な体格差、質量差は如何ともし難いものがある。
本当にこういう世界と自分は相性が悪いとルクスはこれまでならば嘆いていた。
しかし、それももう昔のことである。
要塞で仁王立ちしたルクスの背後より洗われるは、『ソナーレ』と名付けられたスーパーロボット。
「ふふふふ! 今のわたしには『ソナーレ』があるので、巨人戦を安心です!」
いえいいえい! とルクスは意気揚々と己がアイアンゴーレムと呼ぶスーパーロボットに乗り込む。
そのコクピットには何故かグランドピアノが備えられている。
「ゴーレムで戦うのは初めてですけど、なんとかなるんですよ!」
鍵盤に指を下ろす。
奏でる旋律に寄って『ソナーレ』は操縦されるのだ。これまで他世界で得てきた経験がルクスの中で育まれてきた結果であろう。
そんなルクスとは他所にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はどシリアスな顔でオブリビオンマシン『空を目指す者』とオブリビオン『ノイン』に対峙する。
ルクスのアレルギーが出てしまう。
「『ノイン』様、またお会いしましたね。すぐに会えると思っていましたけども」
「それはよかった。だが、オブリビオンである私にとって、いつか出会った私は私であって私ではない。なら、わかるだろう?」
「ええ、オブリビオンは滅ぼすべき存在。『ハイランダーナイン』……貴方が戦いを求める理由。中々に興味がありますが?」
その言葉にオブリビオン『ノイン』は笑う。
「勘違いをしているようだが、私は『超越者』……『ハイランダー』ではないよ。私は脳無き巨人。私の数字を冠する名は、其処に席はないのだよ」
自嘲するでもなく、ただ事実を述べるように『ノイン』は告げる。
「彼等は『0』が数えるんだよ。存在しないことを示す数字から9人数えたのが……」
「さぁ行きますよ! 華麗なる演奏に導かれる、ゴーレムの華麗な動きをみてください!」
奏でられる旋律は、破滅的な律動であったことだろう。
ステラと『ノイン』の間に割り込むように『ソナーレ』がルクスの演奏によって『空を目指す者』へと襲いかかる。
「……」
「あははははは! どうですかステラさん! 周囲を飲み込む演奏! ゴーレムのスピード! パワー! そしてそして~!」
ルクスの笑い声がシリアスをぶち壊す。
いや、別にいいのだが。
けれど、ステラは頭痛がする思いだった。
「愉快なお嬢さんだな。だが!」
迫る『ソナーレ』の拳を受け止めるのは、拉げた『空を目指す者』の腕部。
引きちぎれるようにして残骸が飛ぶ戦場の最中を『ソナーレ』が追うようにして踏み込んだ瞬間、『空を目指す者』は瞬時に背後に回り込み、その爪の一撃を見舞う。
「あれー!?」
「もう、何を演っているんです!『フォル』、いらっしゃい!」
ステラの言葉に反応するように空より舞降りるは鳥型の『フォルティス・フォルトゥーナ』。
「目には目を。ええ、空を縦横無尽に掛けるオブリビオンマシンも、この世界の空も、貴女だけのものではない。覚悟して頂きましょうか!」
「ねーねー、ステラさーん! それよりも見てくださいよ、わたしのゴーレムの動き! すっごいでしょー!」
「え? 何か言いましたルクス様?」
「ひどい!わたしの演奏で動いているんですよ、この子!」
「……そうですか。今、私は別機体に乗り込んでいることについて全世界の神に感謝している最中です。ああ、とてもすごいですね」
「雑ぅ!」
「雑じゃないです。さすが、|狂気の演奏者《光の勇者》です」
にっこり。
ステラは本気でそう思っていた。本当に本当にそう思っていた。
「ルビが逆!」
「コントみたいだが、油断はできないな、キミたちは」
「真面目にやっているつもりですが、少なくとも私は!『フォル』!」
空を飛翔する二機のキャバリア。
ルクスはそれを見上げ、空を飛ぶとかずるい! と思っていたが、それ以上になんかものすごい例えをされたことに憤慨していた。
「狂気の演奏とか酷くないですか!?」
ひどいひどい。
もっとこう、狂気っていうか、破滅っていうか。なんかそんな感じである。
しかし、それ以上に空で繰り広げる空中戦でステラは『ノイン』の駆る機体を高速マニューバで追い込み、地上へと走らせる。
「ルクス様! 追い込みましたよ!」
「えっ! なんでしたっけ」
「その有り余ってるパワーの見せ所です!」
「あっ、そうでした! 重さは威力です、なら!」
「その一撃はもう見たよ」
交錯する『空を目指す者』と『ソナーレ』。
拳の一撃は確かに躱された。しかし、ルクスの瞳がユーベルコードに輝くのと同じように、『ソナーレ』のアイセンサーもまた輝いている。
その一撃は単純に重たい拳。故に、纏う衝撃波もまた凄まじい。吹き荒れる一撃は『空を目指す者』の機体をかすめただけで吹き飛ばすのだ。
「むふふーん、見ました? 見ました?」
「あーはいはいみましたみました」
ステラは本当に別機体でよかった、と感謝しっぱなしであった。
確かに演奏はすごいけど、これで自分の鼓膜も守られると、涙なしにはいられないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【シャナミアさんと】
空を飛ぶことは、クロム出身だと憧れなのはわかるけど、なにか勘違いしてないかな。
クロム以外の世界ではふつうに飛べるから、そこまでアドバンテージにはならないよ?
それに、空を飛んで戦おうっていうのに、
地上からの攻撃の対策がなさすぎるね。
地上からは攻撃は、空まで届かないとでも思った?
『希』ちゃん、SHORADスタンバイ。
【E.C.M】全力発動の後、敵をロックして【M.P.M.S】をSAMモードで斉射!
シャナミアさん!
電子機器は封じたから、あとは純粋に『目』の勝負だよ!
ガトリングの弾幕で相手の飛行区域を制限するから、よろしく!
あ、ガトリングも当たるとけっこう痛いから気をつけて、ねー!
シャナミア・サニー
【理緒さんと】
おー、なんか綺麗に風穴あいたねえ
まぁ分析的なことは理緒さんにお任せ&異論なしってことで
そっちがキャバリアならこっちもキャバリア出させてもらおうか!
というか召喚機能とかないから運んでもらってるんだけどさ!!
レッド・ドラグナーいくよ!
空が自由だからって大地が不自由ってことはないんだよ
【バックウェポン・アタッチメント】で重武装化
チョイスはレゾナンスクレイモア・ツインスクエアポッド
接近してくるなら面で攻めるのは基本だって!
くらえっ!
初撃は外してもおっけーおっけー
次弾装填の間は理緒さんにバトンタッチ
戦況整えてもらって、次は仕留める!
理緒さんありがとう!
そこっ!今度は外さない!
「おー、なんか綺麗に風穴空いたねえ」
シャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)は鋼鉄要塞の天井を吹き飛ばしたオブリビオンマシン『空を目指す者』の力の発露と、猟兵たちとの苛烈な戦いを見遣り感心しきりであった。
敵の力は強大そのもの。
しかし、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとって、それは脅威であるものでなかったのかもしれない。
「空を飛ぶことは、クロムキャバリアでは憧れなのはわかるけど、何か勘違いしていないかな」
「勘違いとは?」
『空を目指す者』を駆るオブリビオン『ノイン』がエネルギーの放出でもって一翼を失い、損耗した機体を維持している姿を理緒は見やる。
彼女の技量は言うまでもない。
クロムキャバリア風に言うのならば『エース』であると言えるだろう。
しかし、空を飛ぶことは、クロムキャバリアでは異常性を見せるものであったとしても、それ以外の世界ではそう珍しいものではない。
「そんなに珍しいものじゃないってこと。シャナミアさん!」
「任された!」
穿たれた天井より飛来するは、赤き騎兵。
『レッド・ドラグナー』と呼ばれるシャナミアのキャバリア。乗り込んだシャナミアはコクピットでコンソールにタッチして起動した機体のモニターに映る『空を目指す者』を見やる。
エネルギーの放出でもって空を飛ぶ機体。
その機動力というのは侮ってはならないものであったが、しかして必要以上に恐れるものでもないと理緒は言う。
「それに、空を飛んで戦おうっていうのに地上からの攻撃の対策がなさすぎるね」
理緒はAI『希』に告げる。
地上からの攻撃が空にあれば届かぬと思っているのならば、其処こそが狙い目であると。
「『希』ちゃん、短距離防空システムスタンバイ。E.C.M(イー・シー・エム)、全力で!」
理緒の言葉と共にユーベルコードが煌めく。
放たれるノイズジャミングとディセプション。
妨害電波は、それだけで『空を目指す者』のセンサーを狂わせる。其処に叩き込まれるのはミサイルランチャーから放たれる斉射とお『レッド・ドラグナー』のバックウェポン・アタッチメント【BW-A】(バックウェポンアタッチメント)によって重装化された武装による面での制圧射撃。
「点で捉えないことはたしかに重要なことだが……」
しかし、それらの一撃を『空を目指す者』は機体から放出するエネルギーで吹き飛ばす。
これまで消耗を強いられてきた機体であるというのに、『空を目指す者』は『ノイン』というパイロットを得て、その力を十全以上に発露させているのだ。
「私を前にして、その理屈が通用するとは思わないことだ」
迫る『空を目指す者』。
その爪の一撃が隻腕と成り果てても、生身たる理緒を圧殺するには十分だった。そこに飛び込むはシャナミアと『レッド・ドラグナー』だった。
機体の腕部がひしゃげる。
爪の一閃が機体を引き裂き破片が飛ぶ。
「足枷をされて! 空を飛ばぬものが!」
「空が自由だからって、大地が不自由ってことはないんだよ」
「いいや。自由とは不自由によって囲われたものだ。わかるか、際限なき自由など、自由ですらない。人の謳歌する自由とは常に囲われたものでなければならないんだよ」
『ノイン』の言葉にシャナミアは取り合わなかった。
「シャナミアさん!」
理緒の言葉と共にミサイルランチャーがガトリングへと姿を変える。放たれる弾丸が『空を目指す者』へと追いすがる。
しかし、捉えきれない。
いや、捉えきれなくてもいいのだ。
敵の動きを、その飛行の範囲を制限する。そうすれば後は。
「おっけーおっけー! 次弾装填はもう終わってるよ! 理緒さんありがとう!」
「コースを限定したとて!」
迫る機体の凄まじさを知る。
エネルギー放出は攻防一体。されど、鋼鉄の一翼を失っていることが『空を目指す者』にとっての最大の失敗。
そう、飛ぶことに翼を使えず、エネルギーの放出に頼らざるをえない状況では。
「その翼で軌道を即座に変えられない。だから、さっきもエネルギー放出で攻撃を弾き飛ばしたんだよ、ねー? なら!」
ガトリングによる斉射。
それによるコースの限定。
そして、迫るは『レッド・ドラグナー』。故にシャナミアはバックウェポンのレゾナンスクレイモア・ツインスクエアポッドを展開する。
「そこっ! 今度は外さない!」
放たれる弾丸は無数。
数えることもできないほどの面での弾丸の放出は、『空を目指す者』の装甲を砕くようにして放たれ、失墜させるのであった――。
大成功
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イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
俺は、お前では及びもつかない〝強さ〟を知っている
誰が為に己を差し出せる献身
躊躇いなく命運を預けられる信頼
決して諦めず希望を抱く〝強さ〟
この要塞の前面で、彼らが教えてくれた
彼らに報いなければならない
俺の心がそう叫ぶんだ
【オーラ防御】で防げる攻撃は回避しない
ひたすらに前進し、炎を纏わせた弾丸を装填してひたすらに引き金を引く
俺に出来る事など結局はそんなものだ
防御を貫通する攻撃が来ても意に介さない
【限界突破】しても尚前進を止めず【捨て身】で機体に取り付き【零距離射撃】を敢行する
同時にパイルバンカーも起動
杭が【貫通】した内部に炎を噴き込んで【焼却】しよう
その身に刻め、彼らの強さを
くだけた装甲。
拉げた腕部。
失われた一翼。そして、頭部のアイセンサーを保護していたバイザーはくだけて散ってなお、凄まじいエネルギーの放出でもってオブリビオンマシン『空を目指す者』は未だ存在していた。
砕けてなお、そこに在るということ。
その強烈なまでに空に焦がれるオブリビオンマシンとしての在り方を見上げながら、しかしてイーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は睨めつける。
どれだけ自分が地を走ることしかできぬ者であったとしても。
それでも、己が視界に映る敵を許してはおけない。
ただその一念だけがイーブンの身体から燃え盛る炎を以て示すのだ。
「ここまで追い込まれるとは思いもしなかっただろう。わかっているとも。君の力が足りなかったわけじゃあない。けれど」
オブリビオンマシンを駆るオブリビオン『ノイン』はコクピットの中で首を傾げる。
ならば何が足りないのだと問いかけられているように、反対側に首を倒して笑む。
「相性の問題だと思うんだ。そこに“強さ”は関係ないんだよ」
「いいや、違うなオブリビオン」
イーブンは睨めつけるままに走る。
鋼鉄の巨人が相手であってもかまわなかった。
只管に前進する。愚直にも似た突進じみていたことだろう。けれど、イーブンは知っている。
知っているのだ。
「単身突撃とは恐れ入るな、猟兵。それは愚かな選択だよ!」
『空を目指す者』が空より飛来するように一直線にイーブンへと襲いかかる。質量差など言うまでもない。
真正面から激突して勝てる相手ではない。
けれど、イーブンは躊躇わない。
己に出来ることなどたかが知れている。引き金を引く。弾丸を打ち込む。結局、己に出来ることは、そんなものだと彼は理解している。
だからこそ、イーブンは疾走るのだ。
遮二無二。
己の背中を推しているのは、いつだって今を生きている者たちだ。懸命に生命のままに生きる者たちだ。
「俺は、お前では及びもつかない“強さ”を知っている。お前が聞きかじったような、知ったような口を聞く“強さ”を!」
「言うじゃないか。それでなんだというんだい!」
放たれる爪の一撃がイーブンの身体を吹き飛ばす。
血反吐が舞う。
だが、己の体に燃え盛る炎がある限り、己の身体は不滅である。悪霊であるがゆえに、己の身体は滅びない。
身に宿る炎は、熾火へと変わる。
ほとばしるは、イオカステの慟哭(イオカステ・エングレーブ)。
血塗れになりながらもイーブンはまだ戦場に立つ。
そして、血塗れの指を示すのだ。
「誰が為に己を差し出せる献身。躊躇いなく命運を預けられる信頼。決して諦めず希望を抱く“強さ”」
「くだらないな、猟兵。それら全ては一個の巨大な力の前に消えるしかないんだよ!」
再び飛来する『空を目指す者』。
その次なる一撃でイーブンの命運は尽きるだろう。
けれど、イーブンは恐れていない。
その瞳にユーベルコードの輝きを灯す。
そう、彼は知っている。
見てきた。
数多の戦場を駆け抜け、手を取った記憶が曖昧な彼方にあるのだとしても、それでも幾度となく彼は目にしてきたのだ。
「この要塞の前面で、彼等が教えてくれた」
「獣人たちのことを言っているのかい。あの哀れなる力なき者たちのことを」
「ああ、そのとおりだ。彼等だ。彼等こそが俺の戦う理由だ。そう俺が!」
報いなければならない。
己の心が叫んでいる。
刻み込めと。その眼の前の敵に。弱さを否定する強さを騙る傲慢に刻みつけろと叫ぶ声がある。
故に彼の炎は熾火へと至る。
静かに。されど、熱を持つ身体。
きしむ身体と骨身を推して、イーブンは踏み込む。交錯した鋼鉄の躯体を前に突き出すは鉄杭の一撃。
すでに改造銃のフレームは拉げている。
けれど、構わない。この鉄杭が花てるのならば、それでいい。
「その身に刻め」
振るう一撃が『空を目指す者』の頭部へと突き刺さる。
薬莢が弾け飛び、炸裂した衝撃が鉄杭をさらに奥へと押し込むように叩きつけられ、オブリビオンマシンの駆体を霧消させるように、内側から炎が噴出する。
鋼鉄要塞の吹き飛んだ天井。
そのさきにある大空に立ち上る熾火の火柱。
それは、きっと今も外で戦う者たちに見えることだろう。
イーブンが見て、知って、そして己もまたそうでありたいと叫ぶ心が命ずるままに。
「これが彼等の強さだ」
イーブンは崩れ行く駆体を押しのけ、鋼鉄要塞を陥落させたことを知らしめる火柱を見上げるのだった――。
大成功
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