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引き裂かれた絆

#シルバーレイン #ノベル

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アルマ・アルカレイト




「こうするんだけど、分かった?」
「まあ、なんとなくは……」

 それは、とある地方都市にある河川敷での出来事。
 慶喜はアルマの指導の下、彼女の特技である「刹那の無限回転」を練習していた。
 
「頑張って慶喜!」
「よし……やってみるか」

 緋智に応援されながら、慶喜はアルマに言われた通り的に鉄球を投げる。
 だが何も起こらない。ただ的に当たっただけで、これでは普通の投擲だ。
 アルマの回転が起こすような超常現象は何度試しても起こらなかった。

「ここまでにしましょう!」
「そうやな……」「二人共帰ろう!」

 しばらくやっても成果が見えないと、アルマは修行を一旦打ち切る。
 彼女は鉄球を回収すると、慶喜と緋智と共に帰宅しようとしたが――。

「あっ……今日はスーパーの特売日だった! ごめん、先に行くね! うおぉぉぉぉぉぉ!」

 タイムセールの期限が迫っているのに気付いたアルマは、大急ぎで走ってスーパーに向かう。
 慶喜と緋智が返事をする間もなかったが、彼女が慌ただしいのはいつもの事である。

「じゃあ俺らは家に帰るか、ヒサ」
「うん!」

 じきに買い物をすませて帰ってくるだろうと、二人が家に向かおうとした時。
 眼の前の空間が突如として歪み、奇妙な2人組が姿を現す。

「……奴隷はご主人様の元に帰るんだよ?」
「ヒャッハー! 今日の星占いは2位! ラッキースポットは河川敷です!」

 その怪人達を見た瞬間、緋智が「あ……!」と小さく体を震わせる。
 脳裏にフラッシュバックする忌まわしい記憶。間違いない、連中はデビルキングワールドで彼女が敗北した敵。いかなる手段を用いてか、異世界まで彼女を追ってきたのだ。

「な……何や?! お前らは!」

 慶喜は詳しい事情を知らないものの、咄嗟に緋智の周りに結界術を展開する。
 悪魔の片割れ――ヴィルキスが「あれ? 仲間を閉じ込めちゃうの?」と首を傾げるが、そのわざとらしい仕草には釣られない。

(前に見たヒサの首あった紋章……命令するタイプやったら後ろから攻撃される可能性がある!)

 彼の予想通り、悪魔達は緋智を逃がそうとした場合は不意打ちをさせる気だった。
 奴隷時代に刻みつけられた紋章は今なお緋智を支配しており、この状況下で戦力に数える事はできない。

「おい、ヴィルキスこいつ馬鹿じゃないみたいだぜ?」
「ふーん、まあいいや試練開始だ……」

 エルデが小声で告げ、ヴィルキスが戦闘体勢を取る。状況的には2対1、いやそれ以上に不利だ。
 結界の中にいる緋智の「駄目、逃げて……」という声は届かず、悲劇的な戦いが幕を開ける。



「技が跳ね返ってきたやと?!」

 戦況は序盤から慶喜が劣勢だった。
 彼の放った【ライトニング・ブリザード・フォーミュラ】はヴィルキスの時空の壁に跳ね返されてしまい、刀でそれを弾いている隙にエルデが後ろから接近してくる。

「オラオラオラ! ……ぐはっ!」
「舐めんなや!」

 慶喜は辛くも攻撃を回避してエルデを蹴り飛ばす。なんとか凌げてはいるが余裕は一切ない。
 それを見たヴィルキスは魔術書を掲げると、より強力な時空魔法を放つ。

「エルデの不意打ちに対応出来るんだ……じゃあこれはどう?」
「ぐお……」

 時空の悪魔の本能を開放した衝撃波が、空間ごと標的を打ちのめす。
 慶喜は咄嗟に防御したものの、かなりのダメージを食らってしまった。

「さて……こいつどうするヴィルキス?」
「……そうだな」

 もう勝ったつもりで会話をする二人を余所に、慶喜は考える。
 ユーベルコードは通用しなかったが、アルマに教わった刹那の回転なら通じるかもしれない。
 まだ成功した事はなかったが、今ここでやらなければ緋智が危ない。

「行くで……オラァ!」
「ん? 無駄だよ? 君には突破出来ない」

 鉄球に刹那の回転をかけて投げると、ヴィルキスが余裕綽々の態度で時空の壁を再び展開する。
 だが青銅色のオーラに包まれた鉄球は、激突と同時に緑の魔神を出現させた。

「何?!」

 魔神が時空の壁に入り込み、その拳が顔を掠めると、初めてヴィルキスの顔色が変わった。
 だが、鉄球はそのまま後ろの方へ飛んで行ってしまう。鍛錬の成果が発揮されたものの、敵を倒すには至らなかった。

「力が……足りへんか」
「……お前は殺す」

 怒れるヴィルキスは時空の力で邪魔者の背後に回り込み、貫手で腹を貫く。
 力尽きた慶喜は「ぐ……お……」と呻いて地面に倒れ込んだ。



「いやぁぁぁぁ! がっ!」
「うるさいな……僕は今苛ついているんだよ」

 絶叫する緋智を蹴り飛ばすヴィルキス。慶喜の張った結界はすでに消滅していた。
 もはやこの場に悪魔達を止められる者はいない。

「緑髪の女はいいのか?」
「あの女は神秘の力も魔力もない雑魚だからいい」
「じゃあ連れてかえるか〜」

 ヴィルキスが時空の穴を開き、エルデも気絶した緋智を抱え、揃って姿を消す。
 後に残されたのは血溜まりに倒れる慶喜だけだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年03月26日


挿絵イラスト