檪・朱希
【茨蝶】
●シチュエーション
UDCアースでの依頼帰りの話。
●流れ
たまたま出会った人と依頼を終えたのだけど……
えっと、初めましてから、かな。
自己紹介をして、握手も出来る、かな?
手袋なくてもいいけれど……?
そっか、うん、手袋越しでも大丈夫。それじゃあ、握手。
傍らの薔薇が綺麗だなぁって見惚れて、ついついじっと見てしまうかも。
あっ……ごめん、見つめられたら嫌だよね。
そういえば、近くに川辺があって、桜が咲いて綺麗だったのを思い出した。
良かったら、美味しいものでも買って、お花見でもしない?
……って、なんだかつい誘ってしまった。穏やかな気候と、あなたの花の咲く『音』は心地好くて。
あ、なんて言えばいいかな……私は、耳がいいんだ。自然の『音』も、人々の『音』も、よく聞こえてくる。それで、かな。
定番のお団子をはじめ、和菓子、それと洋菓子……飲み物は、私はジンジャーエール。普段好きな飲み物なんだ。
絋は、何にする? 苦くないもの、だね。
ここ、桜が綺麗に見えるよ。ここにしようか。
絋、食べ物に夢中になってる……ふふっ。
なんだか微笑ましい、というのかな。決して面白がったわけじゃない。
私もお団子食べようかな。お腹すいちゃった。
ふふっ、白い薔薇、綺麗だね。
宇津木・絋
【茨蝶】
【シチュエーション】
UDCアースでの仕事の後
【流れ】
ふぅ、と茨に変化していた部位を人のそれに戻していたら、挨拶された。はじめ……まして。
えっと……ちょっと、待ってて(しっかり手袋して)……上手く、人の形保つの、苦手なんだ。怪我したら、悪いから、手袋越しで……いい?
……あまり、いいものじゃないよ、この薔薇は(首輪のようなそれに手を触れて)
なんだろう、他の猟兵の人と関わったことないから、色々お誘いとかされても戸惑っちゃうな……
それに、ちょっと不思議な感じのお兄さんみたい。僕の音で気分が……ってどういうことだろ……
そう思ってたら聞こえてきた甘味の名前。
……ちょ、ちょっと甘いもの食べに行くだけだったら、いいよ……
飲み物は……苦くなければ、なんでも。
そうして甘味(桜の飾りが乗ったチィズケェキ)に割と夢中になる。甘いのが嬉しくて、あと、暖かい気候が気持ちよくて、体に白い野薔薇がポンポン咲いちゃう。
微笑ましい……そう?
出会いは、ある依頼を終えた帰り道。
本当にたまたま、偶然同じ依頼を請け負った……猟兵であれば、特に珍しいことではないのだけれど。
無事に事件も解決し、ふぅ、と息をつくと同時に。
しゅるりと、茨に変化していた腕を人のものに戻していた宇津木・絋(微睡む野薔薇の揺籃・f31067)は思わず瞳を瞬かせてしまう。
「えっと、初めましてから、かな」
ふいに、檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)から掛けられた声に。
いや、正確に言えば、つい先程まで同じ事件の解決に取り組んでいたから……初めましてでは、一応ないのだけれど。
でもやっぱり、一番しっくりくる挨拶は。
「はじめ……まして」
そしてそう声が返ってくれば、朱希は思う。
はじめましての挨拶の後は、そう……自己紹介。
ということで。
「檪・朱希、です。 よろしく」
「……あ、えっと……宇津木・絋、です……」
お互いにぺこりと、改めて名乗り合えば。
朱希は彼に、そっと手を差し出す。
……握手も出来る、かな? って。
そんな彼女の掌を見つめて、絋はまたちょっぴり驚いてしまうけれど。
「えっと……ちょっと、待ってて」
ハッと気を取り直し、ぎゅぎゅっと手袋を装着し始めて。
慌てて急ぐように、でもしっかりと手袋をつける絋に、朱希はこう告げる。
「手袋なくてもいいけれど……?」
けれど、きっちり手袋をはめながらも、絋はふるりと小さく首を振る。
「……上手く、人の形保つの、苦手なんだ」
気を抜けば、とろんとすぐにおやすみしてしまう上に、茨の塊と化してしまう絋の腕や足。
そして棘を持つ茨は、人を傷つけてしまうかもしれないから。
「怪我したら、悪いから、手袋越しで……いい?」
「そっか、うん、手袋越しでも大丈夫」
朱希も彼の事情を知って、こくりと頷いて返して、改めて手を差し出す。
――それじゃあ、握手、って。
そして、そろりと遠慮気味に手を重ねてくれた絋と、握手を交わしながらも。
朱希はついつい、じっと見てしまう。
……傍らの薔薇が綺麗だなぁって、そう見惚れて。
絋はそんな彼女の視線の行方に気づいてから。
その手でそっと触れる。
「……あまり、いいものじゃないよ、この薔薇は」
まるで首輪のような、それに。
そうぽつりと落ちた『音』を聞けば、朱希は薔薇から咲く視線を外して。
「あっ……ごめん、見つめられたら嫌だよね」
それからふと、思い出す。
(「そういえば、近くに川辺があって、桜が咲いて綺麗だったな」)
丁度、今年の桜も今が見頃で、今日はぽかぽかな春の陽気。
きっと満開に咲いているだろうし、それに――。
「良かったら、美味しいものでも買って、お花見でもしない?」
つい誘ってしまったのは、出会った時から今まで、こう感じていたから。
「穏やかな気候と、あなたの花の咲く『音』が心地好くて」
「……『音』……?」
絋はそうこてりと首を傾けつつも、どうすればいいかわからずに、そわり。
(「なんだろう、他の猟兵の人と関わったことないから、色々お誘いとかされても戸惑っちゃうな……」)
それに朱希が言った『音』。
試しに耳を澄ましてみても、特に絋には変わった音は聞こえないし。
そもそも――彼女が言っていた、あなたの花の咲く『音』。そしてそれは心地好いのだと言うけれど。
(「僕の音で気分が……ってどういうことだろ……」)
ちょっと不思議な感じの人みたい……?
絋はぱちりと何度も瞳を瞬かせながら、小さく首を傾げつつ、朱希のことを見遣る。
いや、悪い人や怖い人ではないとは、何となく分かるのだけれど。
何せついさっきまでは名前も知らない、初めましての人だから。
そんな首を傾げている絋に、朱希は自分のちょっと特殊な性質を話す。
「あ、なんて言えばいいかな……私は、耳がいいんだ。自然の『音』も、人々の『音』も、よく聞こえてくる」
……それで、かな、って。
周囲の『音』を拾いやすいということを。
そんな彼女にしか聞こえない『音』のことは、何となく分かったような、でも分からないような絋だけれど。
朱希はちょうど傍にあったコンビニエンスストアへと視線を向けて。。
「お花見定番のお団子に、和菓子、それと洋菓子……飲み物は、私はジンジャーエール。普段好きな飲み物なんだ」
彼女の口から聞こえた言葉は、絋にとって心躍る甘味の名前という音。
そんな魅力的な響きに、つい誘われちゃって。
「……ちょ、ちょっと甘いもの食べに行くだけだったら、いいよ……」
ついつい、そうこくりと頷いてしまう。
朱希はそんな花見に了承してくれた彼に、向けた彩の違う瞳を細めてから。
「絋は、何にする?」
「飲み物は……苦くなければ、なんでも」
「苦くないもの、だね」
返事をしたものの、やはりまだ少し戸惑いつつも。
一緒にコンビニに入店し、ちらりと甘味を見てはそわそわする彼の分も飲み物を選んでみる。
自分が好きなジンジャーエールは炭酸が入っているから、飲む人によっては苦いって思うかもしれないし。
珈琲や紅茶も、砂糖やミルクの有無や、無糖や加糖など好みも人それぞれだから。
甘い物にそわりとしている彼の姿をもう一度見てから、朱希はその手を伸ばす。
ふわり優しい桜色をした、いちごオーレを。
そして甘い物もばっちり購入すれば、ふたり並んで桜咲く川沿いまでお散歩を。
それから朱希は、一等華やかに桜たちの『音』がする場所を見つけて。
「ここ、桜が綺麗に見えるよ。ここにしようか」
先程買ったものを広げてから、咲き誇る桜を見上げるのだけれど。
耳に聞こえてくるのは、わくわくそわそわ、嬉しそうな『音』。
桜は桜でも、絋がつい夢中になってしまっているのは、甘やかな桜咲くチィズケェキ。
そんな姿に、朱希もふわりとつられて微笑みを咲かせて。
「絋、食べ物に夢中になってる……ふふっ」
そう思わず笑ってしまうけれど。
それは勿論、決して面白がっているわけではなくて……そう。
「なんだか微笑ましい、というのかな」
「微笑ましい……そう?」
絋はやっぱり、朱希の言葉にこてりと首を傾けるのだけれど。
そうっとまずはひとくち、ちょびっとチーズケーキを口にしてみれば。
刹那ポンポン体に咲いちゃうのは、白い野薔薇。
そして朱希が選んだいちごオーレをそうっと飲んでみてば、さらにポンポンポンと咲き誇る白薔薇。
だって、甘いのが嬉しくて、暖かい気候が気持ちよくて……心の花が、ほわりと開いたから。
表情はちょっとぼんやりして無表情にみえる絋だけれど、彼が咲かせるそんな白薔薇はとても素直で。
やっぱり朱希は思う……微笑ましい、って。
そしてほわほわ幸せそうに、はむはむと甘い物を少しずつ食べたり飲んだりする彼と一緒に。
「私もお団子食べようかな。お腹すいちゃった」
朱希も楽しむことにする。花も団子も、どっちとも。
そして……ふふっ、白い薔薇、綺麗だね、って。
穏やかで優しく咲く彼の『音』に微笑みをふわりと綻ばせる。
春の木漏れ日の様な心地好さを、ぽかぽかと感じながら。
成功
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