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堕落を誘う血薔薇園

作者：バロ

●堕落に誘いし蛇と赫き薔薇の竜
　赫く染まりきった薔薇園に一人のオウガブラッドが魂が抜かれたような｜表情《かお》をして棒立ちしていた。そのオウガブラッドの足元から這いずるように登りその子の首元に締めあげぬよう気をつけて巻きついて耳元で囁いた。
「君は賢い子だ……もうすぐ君の中に眠る欲望が思いのままにできるよ。さぁ……お食べ？」
　堕落を囁いた蛇はしっぽの先に巻き付けてあった「果実」を｜オウガブラッド《その子》の口元に運ぶ。
　だが、その子は果実を食べようともせずに棒立ちするままだった。蛇はやれやれっといった顔を見せたあと、頭をやや上にあげた。
「どうやらお腹は空いていないようだ……マダム。」
　マダムと呼ばれた身体に赫い薔薇を咲かせた嘗て女神だった苛烈な竜がその子と蛇を見下ろしていた。
「あともう少しでこの子の中のオウガが目覚めるわ……それまでじっくり待てばいいわ。」
「そうだねマダム。ゆっくり……じっくり。」
　赫き竜と堕落の蛇はお互いの顔を見合って笑みを浮かべた。

●グリモアベース（アリスラビリンス）
　グリモアベースが映し出された光景は予知された見渡す限り血のように染まった薔薇が咲き誇る花園。その場にいた猟兵たちに予知を語りかけた自然神、リフネアス・ヴァッハ（ヴァッハの始祖・f37693）は羽根を羽ばたかせていた。
「困ったことに……囚われちゃってるオウガブラッドの子は堕落させて憑依してるオウガに乗っ取らせようとしてるのよ。この悪い蛇さんと竜さんを倒してきてくれるかしら？」
　リフネアスの右手には「果実」左手には「真紅の薔薇」を咲かせた。
「まだあの子の意識はあるわ。私が転送してあの2人の邪魔をしてくれればオウガ・ゴーストで一緒に戦ってくれると思うの。でもあの子の意識もかなり弱ってるわ……回復のユーベルコードを使ってあげればきっと元気になるわね。」
　リフネアスは猟兵たちの足元に大きな薔薇を咲かせて現地の「堕落の血薔薇園」に送った。
「大丈夫、あなた達ならなんとかできるわよ♪」

第1章 ボス戦 『堕落を囁く蛇』

POW   :    乱痴気パーティー 戦闘中に食べた【者の数と、食べられた果実】の量と質に応じて【蛇の気分が良くなり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。 SPD   :    賢い君へのご褒美 【禁断の果実】を給仕している間、戦場にいる禁断の果実を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。 WIZ   :    心に這い寄る囁き 【堕落へ誘う蛇の甘言】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。 イラスト：水葵林檎 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　猟兵たちはオウガブラッドの子供が囚われている幹部オブリビオンのアジト「堕落の血薔薇園」に転送された。

　転送されてきた猟兵をみて蛇は驚く様子もなく寧ろ新たな堕落の犠牲者が増えたと喜びの笑みを浮かべた。

「ようこそ……『楽園』へ。君たちもここで休んでいくといい。」

　そのとき、オウガブラッドの子供の指がピクリと動いた。意志を弱まらせてから微動だにしなかった『餌』が動いたことにさすがの蛇も驚いたようだった。

　するとオウガブラッドの「オウガ・ゴースト」が蛇に襲いかかろうとする。蛇はすかさず『巣』である『堕落の木』に登って臨戦態勢に入った。

「ここでしくじったらマダムに怒られちゃう……君たちも『喰らい』尽くしてあげなきゃね……。」
　


「おやすみ？　いいけど、君こそ休み給え。海の底で、ね♪」

　ゆるゆると姿を見せずに蛇に忍び寄るのは御堂・伽藍（がらんどう・f33020）。蛇が堕落へ誘う甘言を囁く前に御堂は優しき歌を歌う。

「はな　あめ　にじ　おと　生死の循環こそ世界の賛歌」

　花の竜琴を奏でて金と黒の二頭の雨竜が天空から舞い降りる。一心不乱に竜琴を掻き鳴らし、熱情に身を任せて踊る。

「おちる　おちる　林檎が堕ちる　ばんゆー　いんりょく　堕落も落ちる」

　蛇は段々と弱っていき、巣である木も凍っていく。

「おちたりんごは　たべられない　鎮め沈め骸の海へ」

　蛇はそのまま眠るようにまぶたを閉じる。まるで子守唄を聞かされているようなそんな感覚だった。

「さようなら　さようなら　凍って腐って　御然らばだ」

　蛇は完全に沈黙した。たとえ次に目が覚めたとしても後続の猟兵がまた蛇を黙らすことになるだろう。御堂は無心の子に近づいて励ましの歌を歌った。大丈夫、怖くない、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「なるほど、たしかに一筋縄ではいかないようだ。」

　その果実の木に巻き付きながら舌を鳴らしながら不気味な笑みを浮かべるそのヘビ。どうやら喜びに打ち震えて気分が良くなっているようだ。

「私はあの子の心を落ち着かせてくる。」

　政木・朱鞠（狐龍の姫忍・f00521）は子狐に似た分霊を召喚する。

「我が魂魄の欠片よ目覚め…力を行使し見聞きせよ…急急如律令」

　ヘビに気づかれないように分霊はオウガブラッドの元へ近づいて落ち着かせるように、そして協力してほしいと要求する。

　オウガブラッドはオウガ・ゴーストでヘビに不意打ちを掛けて攻撃しようとした。だがヘビはいつの間にかオウガブラッドの後ろに忍び寄り耳元で囁く。

「こらこら、おいたをしてはいけないよ。それじゃあ本当の君を呼び起こすことなんてできないじゃないか。」

「残念だけど。あなたは気づいていないようね。」

　政木は分霊に支持してヘビを鷲掴みにして空中に放り投げる。

「おや、乱暴だ。」

「さてと、I・S・T発動。お仕事お仕事。」

　月夜・玲（頂の探究者・f01605）は模造神器を構えて空中にいるヘビに狙いを定める。

「おや、もう1人客人がいたのか……これは盲点だったよ。」

「さあ、一撃デカいのをお見舞いしようか！」

　模造神器から稲妻の斬撃波をヘビに向かって放つ月夜。そしてヘビはその斬撃波を受けて大きく宙を舞うように吹き飛ぶ。

「どうやら複数人の相手は慣れていないのかな。これはまた貴重な研究データができたよ。」

「おや、それは協力できてよかったよ。まったく……これじゃあマダムに怒られるじゃないか。怒りすぎて……君たちを食らうかも知れないよ。」

「それもまたいい研究になりそうだね。その前に邪魔な君たちを片付けたいけどね？」

「猟書家の好きにはさせないわよ。このオウガブラッドの子は守らなきゃ。」

「ありがとう……。」

　オウガブラッドの子は小さくお礼の言葉を述べてヘビは少し焦りを感じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「次から次へと……やれやれ。やっかい極まりにないね、猟兵というものは。これじゃあマダムに怒られてしまうよ。」

　堕落を囁く蛇は自分の巣である木の果実を丸呑みにした。それによって戦闘力が増して猟兵たちに威嚇の声を上げて牙を向ける。

「オレはお前を許さないね。か弱い子供を変に唆してる卑怯な蛇はくらい尽くしてやるぜ。」

　谷保・まどか（バルバロス委員長・f34934）は両腕を毒蛇に変異させて木に巻きついてるその蛇をくらい尽くそうとしたが、戦闘力が増してるその蛇も素早い動作で逃げつつ確実に谷保の喉笛を噛みちぎろうとした。

「無駄なことだ！」

　だが谷保は飛びかかる蛇のタイミングを合わせて力強い足蹴りで上空に打ち上げる。蛮族育ちの改造体ならではの強靭な力を見せつけ蛇は為す術もなく宙に舞う。

「まだ終わらねぇぞ！」

　毒蛇に変異させた腕で蛇に噛みつきそのまま地面へと叩きつける。

「くっ。なかなか強引じゃないか。」

　猟兵たちに追い詰められていよいよ余裕がなくなってきた蛇は苦笑いを浮かべるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

「さぁ、そろそろ僕も限界が近い。悪いがここは捨て身の覚悟で君たちを葬らせてもらう。いいね？」

　追い詰められた蛇はもはやこれまでと、せめて後の「マダム」と呼ばれる竜の為に骸の海に還る覚悟で残りの猟兵をかたつけるつもりだった。

「なんだか蛇さんにも情が移るわね……私もプロデューサーにあれこれ言われて病むこと多いから気持ち的にわからなくもないわね。」

　音駆螺・鬱詐偽（帰ってきたネガティブアイドル・f25431）は「はぁ」っとため息をついて後続で出会った片桐・公明（Mathemの名を継ぐ者・f03969）と共同で戦うことになった。

「とりあえずこいつを片付けてオウガブラッドくんの救出。それと元の原因の「マダム」ってやつを倒しちゃいましょう。」

　片桐は二挺拳銃『Mathem842』『臥龍炎』を蛇に向けて乱射。蛇は「禁断の果実」を支給しようとしたが相手が先制攻撃を仕掛けたため片桐の行動速度が下がった。

「〜♪」

　だがそこで音駆螺のサウンド・オブ・パワーによる効果で片桐は共感し戦闘力が上がった。これにより速度が下がっても元の速度と変わらないくらいになった。

「僕も……手伝う。」

　オウガブラッドの「オウガ・ゴースト」による攻撃で蛇はまともにダメージを与えられる。

「ちっ……猟兵たちに気を取られていたせいですっかりこの子の心が元に戻りつつある。これは帰っても「マダム」に消されてしまうね。」

　片桐は『Mathem842』『臥龍炎』でクイックドロウで正確射撃を行い完全に蛇を無力化することに成功した。

「やれやれ。結末は僕のバッドエンドで君たちはつかの間のハッピーエンドに浸れたわけだ……だがこの先にいる「マダム」に勝てるかな？それじゃあ僕は先に骸の海に帰るとしよう。また談話できる機会があればよろしくね？」

　そういうと蛇の巣だった禁断の果実の木は枯れてそれごと消えてしまう蛇。オウガブラッドの心は徐々に取り戻しつつあったがけたたましい雄叫びが近づいてくるのがわかる……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

第2章 ボス戦 『紅き竜『レディ・ローズ』』

POW   :    『二度と忘れないで』 自身の【纏うバラの花】を代償に、【攻撃対象が失っていた記憶】を籠めた一撃を放つ。自分にとって纏うバラの花を失う代償が大きい程、威力は上昇する。 SPD   :    『これがあなたとわたしの運命よ』 自身の【瞳から溢れる涙】が輝く間、【鋭い爪と茨】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。 WIZ   :    『この花の色は決して褪せない』 【バラの花びら】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に茨を茂らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。 イラスト：キイル 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

オウガブラッドの子供の心は蛇に囚われずに済んだ。

だが痺れを切らした「マダム」が薔薇の花弁を散らせながら飛来してきて咆哮する。

はやくよこせ！

っと言わんばかりに。


「さいた　はな　なれば、散るは定め…！」

　紅き竜『レディ・ローズ』は女性の発狂にも似た咆哮を上げて纏っているバラを次々と大きくしていった。

　御堂・伽藍（がらんどう・f33020）は水、氷、風、空属性を攻撃、防御、状態異常力に付与する。トリニティ・エンハンスの上位互換。トリニティ・エンハンス十二刻を発動させた。

　相手にいつの間にか接近されたかわからないほどゆるゆると近づき4属性の強烈な衝撃はをレディローズの腹部に叩き込む。

「……！！」

　その衝撃には凍らせる力も含まれておりレディ・ローズの花弁の一部が凍る。だがレディ・ローズもユーベルコードの準備が整った。

　纏うバラの花を代償に、御堂が失っていた記憶を籠めた一撃を放つ。だがその一撃は御堂の残像と不可視の力によって無効化されてしまう。

　御堂は片手で竜の体に触れて再度衝撃波を流し込む。竜はバラを散らせてふらつく。

「さけば　ちる　薔薇も菫も蒲公英も
だから　おわりは　精々華麗に滅びれば良い　みなそこへ　みなそこへ　鎮め沈め骸の海へ
さようなら　さようなら
御然らば　御然らば……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

　猟兵たちによって多少ダメージを与えてもオウガブラッドに対しての執着が凄まじく女性の声が混じった方向を上げてまた体に咲くバラが大きくなり花弁も増加した。

「させません！「今」はすべて――収束する。」

　御梅乃・藍斗（虚ノ扉・f39274）はユーベルコードの詠唱をすると全身に藍色の闘気を纏いレディ・ローズの体を「三翼刀」で一閃して行動を妨げダメージを与えた。

「…………！！」

　ヘイトが御梅乃に向けられ怒りの咆哮を上げながら赤く硬い鱗で覆われたしっぽでなぎ払おうとした。

「くっ！！」

　刀でしっぽを受け流し、脇構えの体勢でレディ・ローズに駆け寄り跳躍と共に下から上へと居合でダメージを与えレディ・ローズはよろけてしまった。

「僕から離れないでください！」

　そしてレディ・ローズの横を駆け走りオウガブラッドの子供を背にして構えを解かなかった。

「こいつはみんなと協力して倒さなければいけない……他の猟兵の攻撃に合わせて僕も！」

　レディ・ローズは猟兵たちにまた咆哮を上げて威嚇。徐々に余裕がなくなってきたようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　レディ・ローズは花弁を散らせて暴れ回っていた。猟兵達のせいでオウガブラッドの子供を思うように行かないせいで怒り心頭になっていたからだ。

「はっはっは、思うようにいかないせいでさぞ不機嫌であるな！」

　御形・菘（邪神様のお通りだ・f12350）はそんやレディ・ローズを嘲笑っていた。その笑い声に気づき御形に咆哮を上げバラの花弁を撒き散らし攻撃を仕掛ける。

「当たらぬな！」

　地面に伏せた姿勢のまま高速移動をしてバラの花弁を避けた。だが避けた先に茨を茂らせレディ・ローズはその場に移動して戦闘能力を上げようとしたが。

「させぬわ！」

　移動しながら猛毒の攻撃をレディ・ローズの体に当てる。レディ・ローズの動きは鈍くなりその場に着いた時は戦闘能力は上がったものの体力が奪われふらついていた。

「はっはっは！さぁ、ここからが地獄だぞ？」

　レディ・ローズは追い詰められ咆哮を上げる頻度が下がっていた。討伐まで時間の問題だろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

「こないな花畑で暴れ回るものやないで……薔薇の竜さん。」

　猟兵たちに翻弄され続け、冷静さと理性が欠けた美しい薔薇を身にまとったレディ・ローズに挑発的な態度と言動をしたのは鋼糸のヤドリガミ、杼糸・絡新婦（繰るモノ・f01494）。

　連れ添ったキツネの子とケラケラと嘲笑っているように見えたレディ・ローズはもちろん屠らんと咆哮を上げながら涙を流す。

「泣いてるんか？悔し涙を流すなんて可哀想になぁ。」

　だが薔薇の竜は涙を光らせることによって鋭い爪と茨が強化されていた。

「嘘泣き……見抜いてたけどな？」

　変化の術で白い着物から黒い着物に変わる。その舞いながら早着替えする様は封神武侠界の変面を見せられてるように華麗だった。

　レディ・ローズが動き出す瞬間に身体中が切り傷ができた。何が起きたかわからないレディ・ローズに袖を口元に隠して笑みをこぼす杼糸。

「罠や……「鋼糸」があんたの周りにぎょうさん張り詰めてあるんや。」

　嵌められた。いつのまに。その言葉がレディ・ローズの頭から出てきたのは言うまでもなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　己の野望を果たせぬのか。そう、思ったレディ・ローズはいよいよ本来の目的を捨てて猟兵たちを殲滅することだけを考え始めた。オウガブラッドを堕落させて憑依してるオウガに乗っ取らせようというのはもはやどうでもいい。

「ーーー！！」

　美しい音色の咆哮からけたたましい甲高い咆哮に代わり涙を流したレディ・ローズは鋭い爪と茨を禍々しく変化して標的を定めた。

　視界に映ったのは鳶沢・成美（三角定規の除霊建築士・f03142）。レディ・ローズは誰でもよかった。屠れるならと。

「僕に狙いを定めたのが運の尽きだね。そろそろ終わらせてやろうか。精霊さん、精霊さん、ちょっと助ていただきませんか」

　鳶沢は精霊の力を借りて加護を得た。鋭い爪が鳶沢を襲おうとしたが、その爪が届く前にレディ・ローズを囲む結界がそれを阻む。結界の中で暴れ回るレディ・ローズにさらに畳み掛ける鳶沢。

「それじゃあお疲れ！もう悪いことするなよ！」

　結界の中から全力を込めた陰陽術を解き放ちレディ・ローズの体力を完全に滅し骸の海に返した。

　オウガブラッドがオウガに取り込まれずに済み、その後のオウガブラッドは心を取り戻して帰路に向かった。猟兵たちにお礼を言って。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2023年05月06日