虹色の彼方、その勝敗
●ぐるぐるバット
「説明するね。地面に立てたバットの柄に額を付けて只管にぐるぐるする。以上だよ!」
吐院・ぐるめ(虹色の彼方・f39773)の端的すぎる説明に同じくグリモア猟兵であるナイアルテは困惑していた。
説明が分かりづらかったわけではない。
「え、ええと……グルメさん?」
「グルメじゃないよ! ぐるめだよ!」
あ、イントネーションが違ったんですね、とナイアルテは申し訳ない気持ちになった。でも困惑の気持ちが消えたわけではない。
「伝わったよね。ならぐるぐるバットの時間よ!!!」
あまりに唐突。
バットが二本と選手が二人揃えば、それで競技として成立するのが『ぐるぐるバット』なのである!
問答は不要にして無用!
後は感じるままにぐるぐる回るだけでいい。
言葉も、思惑も、何もかも回転の向こう側に置いてある。
故に!
「ま、まってください、ちょっとまってください! いけません、何一つ行くことができませんが!?」
ナイアルテの困惑なんてあってないようなものである。
ぐるめは額にバットの柄を当ててスタンバっている。マジで問答無用であった。
「レッツ・ゴー・サイクロン!!!」
「れ、れっつ・ごー……さ、さいくろん?!」
ぐるめの回転は他者を巻き込む。
ただ只管にぐるぐる回る。
彼女は確かに『ぐるぐるバット』のチーム『バット・サイクロン』のキャプテンである。しかし、彼女のフィジカルは悲しいかな。そんなに、なのである。
三半規管に関してはザコである。
『ぐるぐるバット』アスリートとしては致命的である。
だが、それでもやるのだ。
あの虹の彼方に神との一体化が存在するのならば!
「これは赤い回転流の神とスーフィーの混沌。そしてムバワの化木人を模して……うぶ!」
うわぁ! 大変なことになっている。
虹色の滝がぐるめのお口からドバっている。それをナイアルテはビニール袋で咄嗟に受け止めていた。
「ぷぺ……な、ナイアルテさん、どうして……」
「い、いえ……あまり、私は回転しても目を回さないようでして……」
ぐるめと同じように回転していたが、ナイアルテはどうってことがないようである。
多分、どちらの勝利かと言われたのならナイアルテの勝ちなのだろう。
しかし、ぐるめの解釈は違う。
「うぷ、神との一体化ができないなんて、なんて……」
かわいそう、とぐるめは呟いてそのまま卒倒するようにして虹色の噴水を上げるのであった――。
成功
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