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|競技者《アスリート》のグルメ~下町ラーメンと野菜餃子

#アスリートアース #ノベル #|競技者《アスリート》のグルメ

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天山・睦実
【|競技者《アスリート》のグルメ】

バトロワシューターの天山・睦実ことむっちゃんが、全国のバトロワ大会や草バトロワで日本をモデルとしたアスリートアース内の地方遠征中に飲食店に立ち寄って食事を摂る様を描いた|グルメ《飯テロ》ノベルをお願いします。

感じとしましては、行く先々は有名プロアスリート御用達の高級飲食店やチェーン店ではなく大衆的な食堂や庶民的な店です。
某孤独のグルメさながら、折角地方遠征したのだから地の物で何を食べようかと偶然目に止まって興味が湧いた店の暖簾をくぐったり、バトロワシューターに限らず現地で知り合った他競技のアスリートから一押しのご当地アスリート飯を紹介されてな流れでやって頂ければと。
食事の場面では心理描写を綴って劇的な展開などは少なく、あたかもドキュメンタリーのごとく淡々と物語を進行して頂き、むっちゃん自身は育ち盛りな痩せの大食いですのでコレでもかと沢山食べさせてやってください。
できれば、完食したら最後に「ごちそうさん」と締めさせて頂ければ尚よろしいです。

またオムニバス形式で定期的に続けるノベル企画とする予定ですので、お手数ですがノベル納品後にタグで #|競技者《アスリート》のグルメ とお付けてください。

それでは、よろしくお願い致します。



 ――大都会っちゅうけど、この辺りは東の方でもまだ下町風情があんなぁ。
 彼女の名は天山睦実。関西地区を中心に活躍し、『むっちゃん』の愛称で親しまれているバトロワシューターだ。そんな睦実の密かな楽しみは、試合終了後の食べ歩きだった。
 今日は地方遠征で関東の中心地まで足を延ばしている。巨大ビルがひしめく都心から微妙に離れた所謂下町エリアは、都会になり切れないどこか雑然とした街並みで親しみが感じられた。
 ――しっかし……お腹空いてもうたわ。ペコペコのペコちゃんや。
 駅前に並ぶ有名チェーン店やお洒落なレストランには目もくれず、睦実はグッと来る店を探して歩き続ける。何かないものか。思わず店の前で立ち止まってしまうような、気になるメニュー……。
 ――何やこの看板。
 睦実ははたと足を止めた。力士とバトロワシューターが浮世絵タッチで描かれた看板の中央に、でかでかと「ラーメン」の文字。なのに入口の立て看板には「冷凍餃子 お持ち帰りあり〼」……何屋やねん。しかし関西かと目を疑う店の中には、15時台という微妙な時間帯にも関わらず常連らしき客の姿が見える。中にいた一人の男性客が「お、むっちゃーん」と手を振ってきた。先程試合をした地元のアスリートだ。
 ――よう分からんけど、なんかええな。
 ここは良い店に違いない。確信と共に、睦実は年季を感じさせる店内へ足を踏み入れた。

「いらっしゃいませー」
 カウンター席に案内された睦実は驚く。挨拶代わりとばかりに、店員がいきなり焼きたて餃子を出してきたのだ。
 ――まだ注文してへんやんか!
 しかし周りを見れば、皆普通に餃子を食べているし、ご自宅用冷凍餃子の値段がダース単位で壁のお品書きに貼られていた。餃子に凝りすぎてそっちの方が有名になってもうた系のラーメン屋や――だが、それなら旨さは保証付。
「すいませ~ん、ラーメンと豚飯セットに味玉トッピング、大盛りで。あとサービスライスも」
「背脂と麺の固さはどうされます?」
 それを聞くという事は背脂チャッチャ系……だが、初めての店ではまずスタンダードで行くべきだろう。両方普通で注文を終え、ラーメンを待つ間に餃子を食す。
 ――うん、旨い。ラーメンがこってり系だからやろか、野菜餃子やねんな。
 キャベツたっぷりの軽やかな歯ごたえだが、野菜の甘みが肉と絡み合ってジューシー。薄くパリッと焼かれた皮の主張が控えめなのも好感触で、これは大変だ。水を飲むように餃子が飲める。素朴な味が癖になり、つい何皿も注文してしまう。
 だが睦実の胃袋はこの程度では満たされない。食べている間に本丸のラーメンがやってきた。
「ラーメンと豚飯セット大盛り、味玉トッピングとライスになりまーす」
 目の前に置かれた丼の中身は、予想通りの背脂チャッチャ系。豚骨醤油の濃厚な香りが空きっ腹にスマッシュヒットだ。その上に海苔と味玉二つ、チャーシューとメンマ、もやしとネギ……王道と言えるトッピング。これでええんやこれで、と内心大いに頷き、睦実はレンゲを手に取った。
 ラーメンを食べる時の一口目は、まず麺をすすり、チャーシューを頬張り、それからスープを口に入れる。こうして咀嚼する事で三者が口の中で一体となり、その店独自の『味』を奏でるのだ――おおっ、旨い!
 驚いた。概ね期待通りの味でありつつも、予想を裏切る意外とあっさりしたスープ。中太の麺ととろけるチャーシューがよく絡み、のど越しは最高だ。エースの餃子も旨かったが、こんな名選手が餃子の影に隠れているとは……そう唸りながら、箸で味玉を割る。
 中からとろりと溢れる半熟の黄身。これを麺とスープに絡めればよりまろやかさが増し、これまた旨い! しかも味玉は二つある。一つはスープに沈めてから食べ、もう一つは素のまま味わう、これがいい。
 チャーシューが旨いなら同時に頼んだ豚飯にも俄然期待がかかる。こちらには角煮がトッピングされているようだ。角煮も脂っぽさがなく、一口齧ればほんのり甘いタレが、豚の旨味と共に舌の上でほどけていく……これで白飯が進まない筈はない。
 しかし麺が伸びないように気を配るのも大切だ。夢中でラーメンをすすっていた睦実は、ふとカウンターの上に置いてある物に気づく。
 ――味変用の自家製にんにくダレと激辛味噌。まだ隠し玉があるんか!
 他にも定番のごまやラー油、生姜も無料。無限のポテンシャル……睦実は悩みつつ、にんにくダレを手にし、一周回しかけた。すると醤油とにんにくの風味が濃くなり、まったく違うパンチの利いた味わいのラーメンに。
 ――くぅ~、たまらん!
 〆にライスを投入し、ぶっこみ飯にしてかっ食らう。人目など気にしない。これが一番旨い! 無罪! そして睦実はゆっくりと丼を置く。
「ふぅ。ごちそうさん」
「またどうぞ~」

 次来たら別の味変試したろ……そう考えつつ、睦実は土産に冷凍餃子を買って帰った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年03月17日


挿絵イラスト