冥道神機の追憶
「♪～。この世界に来て良かったわ」
デビルキングワールドのとある巨大都市にて、鼻歌混じりに観光を楽しむ１人の少女がいる。
彼女の名は緋智。これまでに様々な世界を旅してきたが、善良な悪魔達の住まう魔界はとても平和で居心地がいい。ちょっとワルぶっている子が多いところもご愛嬌。
だが、この地にはただの愛嬌では済まされない本物の「悪」がいた。
「皆さん、ご機嫌よう……試練開始だ」
「ヒャッハー！ 今日の星占いは4位！ ラッキーカラーは赤です！ という訳で滅殺だぁぁぁぁぁ！」
ドカーン！ と派手な爆発音と共に、２人組の悪魔『ヴィルキス・エーデル』が都市に襲来する。
丁寧に挨拶をするほうがヴィルキス、アッパー口調なほうがエルデ。後者が手のひらから次元の玉を放てば、積み木の城を崩すように都市が破壊されていく。
「な……何？ ……オブリビオン！」
突然の出来事に困惑していた緋智だが、それが何者の仕業かを悟れば表情が変わる。
ここはワルい奴が尊敬される世界だが、それでも許すまじき悪党どもだ。
『これ以上この街は壊させない！』
人間の少女からキャバリアに――冥道神機『緋智』に変身した彼女は、十字の冥道を敵に放つ。
楽しい旅を邪魔された怒りと、悪魔達を守らんとする使命感。だが、それは１人で立ち向かうにはあまりに強大な相手だった。
「ん？ 何……？ 時空魔術っと」
『？！』
ヴィルキスが指をパチンと鳴らすと時空と次元の壁が展開され、緋智が放った技が自分に返って来る。
緋智は慌ててスラスターを吹かし、何とか冥道を緊急回避するが――その先にはエルデが待ち構えていた。
「オラオラオラオラオラオラオラ！」
『きゃあぁぁぁ！』
誘導されたと分かってももう遅い。次元の力を拳に纏ったエルデが回避直後の無防備な緋智を殴り飛ばす。
機体に強い衝撃を受けた彼女は地面に叩きつけられ、そのまま気絶してしまった。
●
『あ……あぁぁぁぁぁ！』
この敗北から２年。緋智は時空魔法により隷属の紋章を刻まれ、囚われの身となっていた。
ヴィルキス達から課される強制労働などで、その心は壊れる寸前。闇の中で『…誰か』と囁いても、助けが来る気配は一向に無い。
『？！』
だが。それは偶然か運命か、唐突に緋智の前には不思議な穴が現れる。
驚く間もなく彼女はその穴に吸い込まれ――魔界の牢獄から銀の雨が降る世界へ。そして新たな仲間との出会いに導かれるのだった。
成功
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