「まさか、あの『鉤爪の男』自体がオブリビオンマシンだったなんて……みんな、予想できた?」
グリモア猟兵クイン・クェンビーはというと、もちろん予想だにしていなかったようで、未だに驚いている表情だ。
「まあ、あいつがなんであれ。アリスラビリンスの平和を取り戻すには、絶対に見逃せないよね!
そういうわけで、みんな! オウガ・フォーミュラ『鉤爪の男』を倒すために、力を貸して!」
配下の大半を失い、なおも『超弩級の闘争』を求めて動く狂気の駆動機械との決戦の刻が、やってきたのだ。
クインによると、鉤爪の男は侵略蔵書の力で「不思議の国をクロムキャバリアの戦場に書き換える」という、なんともシンプルで大胆な手段に打って出たのだという。
「おかげで不思議の国には、オブリビオンマシンが出現してそこらじゅうで暴走・蹂躙・大乱闘だよ!
今は愉快な仲間のみんなが頑張ってくれてるけど、完全に押し返すためにはみんなの手助けが必要みたい」
オウガとの戦闘経験もあるため、愉快な仲間たちが為す術もなくやられてしまうことはない。
しかし、相手はあのオブリビオンマシン……それもクイン曰く、少々厄介な性質を持つ機体なのだとか。
その名を、『『首無し』BG-3ナイトメアプラス改』と言う。
「こいつらは狂った思想に取り憑かれていて、仲間を巻き込むのも厭わないし、生身の人間を襲って殺戮するっていうものすごいヤバい奴らなんだ。チェーンソーで首を落とされないように気をつけてね!」
人差し指を立てて、注意深く警告する。
「それで、こいつらを倒したら『鉤爪の男』を倒しに行ってほしいんだけど……あいつのもとに辿り着くには、これまた困った場所を通らないといけないんだよね」
クインは腕を組んで唸った。
「色の抜けたキャンバスみたいに白黒の花畑なんだけど、ここに足を踏み入れると無性に悲しい気持ちになっちゃうんだって。
しかも今は、侵略蔵書の影響で改竄が進んで、その性質が強まってるみたいで……みんなでさえ影響は避けられないと思う。それこそ、生きてるのがイヤになっちゃうとか……」
虚無感、絶望、厭世観……そういったネガティブなニヒリズムが、生の欲求を奪う場所。
強い心で踏破しなければ、花畑に身を埋めることになるだろう。おそらくは、永遠に。
「鉤爪の男と戦う前に、こんなところで足踏みしてなんてられないよ。みんな、心を強く持って進んでね!」
クインは、持ち前の明るさを存分に押し出して猟兵を鼓舞した。
長きに渡る戦いに決着をつけるため、猟兵たちは戦火のアリスラビリンスへ赴く……!
唐揚げ
腓骨です。オウガ・フォーミュラ『鉤爪の男』との決戦シナリオをお届けします。
アリスラビリンスが舞台ですが、1章の相手はクロムキャバリアのオブリビオンマシンなのでご注意ください。
なお、1章では愉快な仲間たちの援護を受けることが出来ます。
この不思議の国の愉快な仲間は、『小さな子供がクレヨンで描いた落書き』のような見た目をしているようです。猟兵には当然協力的で、頑張ってオブリビオンマシンと戦っています。
特に守ったりする必要はありませんが、援護したり共闘するプレイングであればその様子を描写いたします。
第1章 集団戦
『『首無し』BG-3ナイトメアプラス改』
|
POW : 《集団自爆》今すぐ体を棄てて神の元へ参りましょう
自身が戦闘不能となる事で、【機体を爆破して、隣接する】敵1体に大ダメージを与える。【『仲間』と『猟兵』を巻き込み、難解な教義】を語ると更にダメージ増。
SPD : 《連撃》お客様が来ました。囲んで倒しましょう……
【RX-A大型セラミックブレード】が命中した対象に対し、高威力高命中の【RX-Aアームチェーンソー】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 《布教》我らが宗教の名はアポストロ・ラ・モルテ!
自身が【難解な教義を説いて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【「教祖様万歳ー!」と叫びながらの特攻自爆】によるダメージか【体を機械化する脳チップを埋め込み、注射】による治癒を与え続ける。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
あんなに綺麗で楽しい世界をめちゃめちゃにしちゃうなんて絶対にやめさせないと……!
一緒に戦ってくれる子達が居るなら、力を合わせて頑張らなきゃ!
『栄光は地に満てり』
可愛い子達だけど、マリアの光ですっごく強くなって、すっごく格好良くオブリビオンをやっつけてくれるよね……!
マリアも光るだけじゃなくて、念動力でオブリビオンマシンを転ばせたり、
木を引っこ抜いてオブリビオンマシンの首のところに突っ込んだり、
お腹のところのパイロットを引っこ抜いて、さっき引っこ抜いた木の代わりに地面に植え直したりするよ。
あと難解な教義っていうのは、念動力で口を塞ごっか。
静かにしないと……そこで歌ってるお花を植えちゃうんだから!
●|栄光は地に満てり《on amekhayeh svaha》
がしゃり、がしゃり……乾いた軍靴を思わせる重い駆動音。列をなして不思議の国に現れしは、首なしの異様なオブリビオンマシンの兵団である。
「うわあ、また来たよ!」
「しつこいやつらだ……!」
戯れに描かれた落書きのような姿の愉快な仲間たち。彼らは煤にまみれていたり、傷ついていたり、明らかに疲弊していた。これまでずっと闘争を強いられてきたのだから無理もない。
「負けちゃだめだ。オウガじゃなくても、あんな奴らに不思議な国は渡すもんか!」
「そうだそうだ! みんな、がんばろう!」
仲間たちは互いを鼓舞激励し、闘争心を奮い立たせる。規則的な軍隊の足音は、かそけき抵抗を踏み潰し巨大な重機のキャタピラ音にも思えた。
「我らの教義を、救われぬモノたちに広めねば」
「そうです。救いは闘争の中にこそあり」
「さあ、首を刎ね、救世をいたしましょう……!」
狂った信徒たちがやってくる。呪詛めいた熱狂の恍惚は、勇敢な仲間たちを震え上がらせるには十分だった。
しかし子らよ、恐れるなかれ。この地に真の救いは来たり。
「みんな、待たせてごめんね……!」
颯爽と駆けつけたアヴァロマリア・イーシュヴァリエが、帽子のつばを押さえながら着地すると、愉快な仲間たちはわあっと声を上げた。
「猟兵さんだ!」
「来てくれたんだね、よかったぁ!」
「まるでヒーローみたいっ」
無邪気に喜ぶ仲間たちを見て、アヴァロマリアは柔らかく微笑んだ。だが、迫る幽鬼の群れにはたと我に返り、唇を引き結ぶ。
「マリアだけじゃないよ。ここからはみんなで一緒に、力を合わせて戦おうね」
「「「うん!」」」
アヴァロマリアは愉快な仲間たちを一望し、こくんと頷いた。そしておもむろに、胸の前で両手を合わせ瞼を伏せる。
「……力を。綺麗で楽しい世界を守る力、みんなの居場所を守る力を……」
祈りめいて紡がれる言葉は聖句を思わせる。両手のあたりからにわかに光が生まれ、暁光のようにあたりを照らした。
「闘争のための闘争だなんて、マリアは絶対認めない……だから、みんなに力を……戦いを終わらせるための、戦う力を……!」
光はいやましに強まり、眩しくて直視できないほどだ。
愉快な仲間たちは、鉛めいて全身を包む疲労感がたちまちに薄らぎ、枯れかけた井戸に水が湧くように力が増すのを感じた。
「あったかい……」
「受け取って、マリアの光を……!」
かくて、栄光はかの地に満てり。なによりも眩い笑顔は太陽を思わせた。
「なんたる悍ましい輝き……」
「あのようなものは、我らの救世には不要です……!」
暖かな生命の輝きは、首なしどもにとっては呪うべき宿痾だ。あれこそが刈り取らねばならぬ、希望という病の芽だ。猛然と、恐るべき幽鬼が迫る!
「この力があれば……もう、負けないぞーっ!」
「「「やーっ!」」」
落書きめいた見た目はそのままに、手に手に様々な形の光……剣、槍、弓といった武器……を携え、愉快な仲間たちは戦いを挑んだ。
マリアの光は、彼らの活力を取り戻すばかりか器となって戦う力をもたらす。
「なっ!? 先ほどまでとは、まるで違う!?」
「や、やはりあの偽りの救いが……ぐああ!」
光輝は刃となり鏃となり盾となり、勇壮奮迅を以て敵を駆逐していった!
「マリアも、祈ってるばかりじゃダメだよね。一緒に戦うよ!」
すっくと立ち上がったマリアは急いだ。この力は強大、されどその代償に深い眠りを要する。残された時間はそう多くない。
「かくなる上は、教祖様への献身をもって我らの教義を示すのみ!」
「自爆するつもり? そんなこと、絶対にさせない!」
マリアは宗教的自死を強く否定した。命を散らして正当化される教えになんの意味があろうか。
見えない力でオブリビオンマシンを戒め、狂わされたパイロットを救助していく。
「うわっ!?」
パイロットを損なったにもかかわらず、首なし機体はギギギと軋みながら動き、ギロチンめいた刃を振り上げた!
「おとなしくして! でないと……そこで歌ってるお花を植えちゃうんだから!」
「えーっ!? あんなところに植え直すなんて、やめてよぅ!」
やはりクレヨンの落書きめいた花々が、口々に懇願した。
「あっ、ごめんね? 大丈夫、みんなのことも守るから……ねっ?」
マリアは茶目っ気たっぷりにウィンクして、舌を出して侘びた。
大成功
🔵🔵🔵
ミスト・ペルメオス
・SPD
猟書家め、何でもありか……?
ともかく──やるぞ、ブラックバード!
愛機たる機械鎧(人型機動兵器)を駆って参戦。
装備を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
スラスターを駆使しての飛翔、立体的な戦闘機動を行いつつ敵との戦いに臨む。
現地の住民を巻き込まぬよう、また可能ならばこちらに敵を引き付けるように戦いを進めたい。
間合いを詰められれば脅威だが、詰められる前に仕留めれば済むことだ。
ドレッドノート・デバイス、セット。【クイックショット・ホークアイ】ッ!
飛翔しながら重粒子砲を用い、瞬時に狙いを定めての遠距離狙撃にして速射を仕掛ける。
近付かれる前に、斬りかかられる前に……一撃で、仕留めるッ!
メナオン・グレイダスト
・SPD
ふむ。面妖なものだが……。
狂信のもと殺戮を行うお前達、そしてお前達の目的を阻み殲滅する我輩。
どちらも「悪」、であろうな。
狂気の人型兵器群を相手取り、これの殲滅を図る。
自身の数倍の巨躯を誇る殺戮機械の群れ。
それがどうした。この“灰色の魔王”を阻むこと能わず。
接敵前から灰色砂塵を散布し、銃砲群──それも対物砲や車載砲に相当する大口径砲に絞り生成・展開。
接敵と同時に砲撃開始するがあくまで牽制。こちらがやられる前に、本命を悟られる前に……【グレイダスト・ギフト】。
敵の機体にナノマシン・インプラントによる強化および侵蝕、操作系の奪取を仕掛けて。
さあ、ゆけ。力尽きるまで「敵」を討ち果たすがよい。
●猛攻
聖者の光で力を得た勢いで、愉快な仲間たちは一気に戦線を押し上げた。
しかし、もともと押し込まれていた状況だったせいで、完全に巻き返したとはいいがたい。
彼らに与えられた力も、あくまで一時的なもの。術者が昏睡状態に陥れば、またすぐに疲弊してしまうだろう。
つまりこの押し上げた戦線を維持することが、戦いの趨勢を左右する。
向こうもそれを理解しているがゆえに、瞬間的な大攻勢で前線の瓦解を狙ってきた。がしゃんがしゃんと、死霊の軍勢めいた足音ともに増す狂気の首なし機体の群れ!
「|猟書家《ビブリオマニア》め、なんでもありか……?」
ミスト・ペルメオスは、映像越しの光景に奥歯を噛み締めた。
「まあ、いい。ともかく――やるぞ、ブラックバード!」
応えるように、機械鎧の双眸が光を灯す。サイキック・フィールド展開、黒き怪鳥は流星めいて混迷の空を駆けた!
その一方、地の最前線には少年がひとり。
「ふむ、面妖なものだ。死を以て完成する狂信とは」
どこか浮世離れした雰囲気の少年……メナオン・グレイダストは、雲霞のごとき殺戮機械の群れを前にしても、超然とした面持ちを崩さない。
身の丈ははるか数倍。力で圧すには、寄せ手は数も質も圧倒的に過ぎた。
「退きなさい……! 我らに許しを乞うて頭を垂れれば、苦しみなく救ってさしあげましょう……」
殺戮機械に操られた|信徒《パイロット》が|勧告《・・》した。
「我らの救世を否定し、阻む悪しき愚者よ……さもなくば救われることはありません!」
「悪、か」
メナオンは無感情に呟いた。
「狂信のもと殺戮を行うお前たち、そしてお前たちの目的を阻み殲滅せんとする我輩ら。
悪というならば、どちらも「悪」であろうな。それでもなおお前たちは善を宣うか?」
びゅう、と乾いた風が吹いた。
「面白い。そもお前たちはひとつ思い違いをしておる」
一歩前へ。それだけで、見えない壁がずんとせり出たような威圧感をもたらす。
「阻んでいるのはお前たちのほうだ――この"灰色の魔王"を阻むこと、能わぬと知れ」
乾いた風が吹く……灰色の砂塵を孕んだ風。魔王の威風が、吹きすさぶ!
黒き怪鳥と灰色の魔王、二色の風は戦乱の炎を薙ぎ払い、あっという間に前線を飲み込んだ。
見よ。メナオンの周囲、侍るように現出したのは物々しい大口径砲の群れ。さながらそれは、横列をなした軍勢のよう――もっとも、担い手はおらず。
魔王が欲するは、己に歯向かう愚か者どもを撃滅する力のみ。真なる王は、ひれふす民など求めない。灰色の魔王はすべてを飲み込み染め上げるのだから。
「受け取るがよい」
BOOOM!! 轟音を上げ、砲撃が始まった。降り注ぐ砲火が、狂った殺戮機械を炎にまみれさせる!
「な、なんという砲撃……!」
「これでは近づけません……!」
自爆をも恐れぬ狂気の殺戮機械とて、接敵する前に撃墜されては元も子もないので足止めされざるをえない。
メナオンの狙いは別にある。この砲撃は牽制に過ぎないが、その牽制をもってした時点で大軍勢を押し留めるには十分な火力をもたらした。
たとえ一瞬とて、その停滞は十分なものだ――ミストと、ブラックバードにとっては。
「遅いッ!」
空舞う黒い軌跡が、稲妻じみたジグザグ模様を描く。空中に飛び上がりアームチェーンソーで切り裂こうとする愚か者もいないでもなかったが、メナオンの大規模砲撃弾幕があるなかでは、ただでさえ迅雷の如きアルクトゥルスのスピードに追いつくことなど不可能!
「は、疾すぎる……!」
断頭の剣はむなしく空を切った。サイキックエナジーで拡張・加速したミストの|脳神経《ニューロン》が火花を散らし、最適な戦術を即座に選び取る。苛烈なスピードは、いっそ流麗ですらあった。
「ドレッドノート・デバイス、セット――」
「ほう」
地を悠然と歩くメナオンは、空舞う黒き怪鳥の軌跡を見上げ目を細めた。
「派手にやるつもりか、面白い」
「……クイックショット・ホークアイッ!」
立体的軌道が敵を翻弄する。狂気の殺戮機械どもは気づかぬ――自分たちが、同一射線上に誘導されていることに。
直後、歪みなき一文字の火線が、無限じみた灰色の砲火を切り裂く一閃めいてまっすぐに走った。
「な――」
神速の立体機動からの、狙いすました超・遠距離狙撃。かつ、回避さえも許さぬ一瞬の|速射《クイックドロウ》。
瞬きでさえ永遠のように思える刹那の一撃は、重粒子の崩壊によって破壊という結果を起こした。
空が切り裂かれる。軌跡を追って万物必滅の灼熱が燃え上がり、業火が殺戮機械を屠り去った!
(「一撃だ。一撃で終わらせる――詰めさせなど、しない」)
ミストは心のなかで決然と言い、同時に地を一瞥した。
灰色の魔王は悠然と進む。 砲火、そしてナノマシンによって掌握された殺戮機械を、やはり同様にひれ伏させ、あるいは滅ぼして。
黒と灰。けして相容れぬ二色を、誰も止められはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
瞳ヶ丘・だたら
アドリブ連携等々歓迎だ。
「まるで趣味の悪い風刺画の様相じゃないか。
どうも美意識というものが欠如していると見える」
ま、あたしも人のことは言えんが。
四足獣型の戦車に騎乗して挑もう。
サイズ差はないも同然、この新作の試験に付き合ってもらう。
見たところ大型の遠隔武装は持っていないようだな。
まずは接敵前に連続で〈砲撃〉を行って確実に数を減らそう。
乱戦に突入したら自爆攻撃を仕掛けられるが、問題ない。
むしろ仲間を巻き込んでくれるなら好都合。
UCに加えて〈防具改造〉を重ねたこの装甲、そう易々と突破はさせん。
爆炎と土煙の中から〈火炎耐性〉によって飛び出し、
まさしく獣のように爪と牙、そして機動力で〈蹂躙〉するぞ。
●爆炎の華
兵器とは命を奪うために最適化された、人類の文化の到達点だ。そこには独特のシステマチックな美しさがある。古来からごく一部の人間を魅了してやまない。
瞳ヶ丘・だたらも、その例に及ばず兵器をこよなく愛する。常人からはけして理解されず、むしろ嫌悪されるが、そんなことでだたらが趣味嗜好を悔いたりはしない。
……が、それが世間から見て悪辣であることぐらいは客観視できる。
そんなだたらから見て、整列し進軍する狂信殺戮機械の軍勢は、あまりにもグロテスクだった。
「まるで悪趣味な風刺画のようだ。美意識の欠如も甚だしい」
言いつつ、口元に浮かぶのは自嘲の笑み。どの口がほざくのやら、と声に出さず己を皮肉る。
飛び乗り進むは、新造した四足獣型戦車だ。
「新作試験といこうじゃないか」
忌むべき戦争芸術が、鎬を削る時が来た。
「我らに歯向かう鋼の獣、なんと醜い」
「あれこそまさに、救われぬものです」
「首を刎ね、真の救済をもたらしてあげねば」
どうやら、敵はだたらの美意識を理解してくれないらしい。食肉屠殺業者めいてチェーンソーが唸る!
「醜い? ずいぶん手厳しいな。ならその評価を一変させてみせよう!」
背中の砲台が火を噴き、直進する殺戮機械のいくつかを撃墜する。
爆炎に呑まれ膝を突いた友軍機を踏み潰し、後続がせり出した。奴らにチームワークという概念はないようだ。
「弾幕を張ろうと、我らの|信仰《侵攻》を妨げることは出来ません……!」
唸るチェーンソーが横薙ぎに振るわれた!
「景気よく吹っ飛ぶのも兵器の美徳ではある。だが――」
四足獣型戦車はチェーンソーを飛び越え、殺戮機械に喰らいついた。
「闇雲な自爆は、ただの浪費でしかないな」
鋼の爪が装甲に食い込み、振りほどくのを阻む。ぐあっ、と大きく開かれた口に生えた強化合金製の牙が赤熱した。
分厚いシェルターの隔壁さえ切断するヒートファングが、殺戮機械を噛みちぎる。またひとつ爆炎の華が咲き誇った。
「は、疾い……!?」
「キミたちが遅すぎるんだよ」
燃える花弁から生まれるように飛び出した鋼の獣が、新たな獲物に飛びかかる。これは戦いではない――真に優れた兵器による、獲物の狩りだ。
大成功
🔵🔵🔵
ギージスレーヴ・メーベルナッハ
ハハハハハ!遂に動いたな鉤爪の男よ!
良かろう、今こそ闘争の時だ!
先ずは侵攻に対する迎撃であるな。
ヤークト・ドラッヘに【騎乗】し出撃。
戦旗を掲げ黄昏大隊・戦獄凱歌を発動、愉快な仲間達を鼓舞しつつ支援砲撃で敵を攻撃していこう。
並行して、余もヤークト・ドラッヘ搭載武装で攻撃。電磁砲の【砲撃】で脚部を破壊し、ミサイル(【誘導弾】)で止めを刺すとする。
愉快な仲間達には、敵機の自爆に注意するよう伝えておくとしよう。
敵はどうやら回復能力も持つ様子ゆえ、集中攻撃を行い確実に仕留めていくべし、とも。
同じタイプのユーベルコード同士の衝突とはなるが。
死ぬ為に戦う者が、生きる為に戦う者に勝てる道理は無かろう?
●なんのために戦うか
「ハハハ――ハハハハハッ!」
狂ったような哄笑をあげ、進軍する重装甲戦闘バイク『ヤークト・ドラッヘ』。
誇り高く掲げられた黄昏の戦旗が、火の粉の混じる風になびいた。
「ついに、ついに動いたな鉤爪の男よ! ハハハハハッ!」
ギージスレーヴ・メーベルナッハは胸をそらし、新しいオモチャを買ってもらった幼子のような表情で大笑いした。
「よかろう、今こそ闘争の時だ! 余に続け、|黄昏大隊《アーベントロート》よ!!」
軍靴の音ふたつ、が木霊する。進軍する殺戮機械の軍勢と、黄昏大隊の足音が。
愉快な仲間たちは、無慈悲なる鉄血女王の高揚を畏れた。だが戦場においては心強い味方でもある。それがわかっていてなお、畏怖は捨てされなかった。
「降り注ぐ砲火は余が受け止めよう。道を塞ぐ愚者は余の軍勢が焼き払おう!」
ギージスレーヴは、炯々と隻眼を輝かせ演説する。
「ゆえに進め、勇敢なる戦士たちよ! 己の居場所を守ろうと|希《ねが》うならば!」
ドウ、ドウドウ! ギージスレーヴが大袈裟に腕を振るうたび、砲声のオーケストラが鳴り響く。
「闘争には闘争を以て応ずるべし! さあ進め、いざ進め! 余に続け!」
ガシャン、ガシャン! 殺戮機械が迫る。ギージスレーヴは脚部を打抜き前線を押し留め、自ら突撃して囮を担った。
狂気的なまでの戦いぶりは、忌むべき闘争の熱を伝搬させる。畏怖を以てすら拭い難い狂熱は、後退のネジを外してしまう。
「こ、怖い……けど戦わなきゃ!」
「そうだ!」
愉快な仲間に、ギージスレーヴはがなり立てた。
「その畏れも怖れも、貴様らが真に勇猛なる戦士の証。あれらを見るがいい」
被弾し崩折れた味方を吹き飛ばし、首無しの軍勢が進軍するさまを指し示した。
「奴らに恐怖はない。それはたしかに強壮な軍勢を形成するであろうさ。
だが! 死ぬために戦う者が、生きるために戦う者に勝てる道理などない!!」
ギージスレーヴは拳を握りしめ、迫真の表情で断言した。
「ゆえに恐れよ、されど臆するなかれ! 恐怖を知り、我がものとして進むのだ!」
「恐怖を、自分のものに……」
「生き延びるために戦う貴様らは、誰よりも強い! その強さを知らしめてやれ!」
ギージスレーヴは闘争を愉しむ。だが命を捨てるつもりはさらさらない。
「自爆に巻き込まれるなよ! 殺す時は確実に仕留めよ! よいな!」
愉快な仲間たちは鬨の声を上げた。今や黄昏の軍勢は一体となった。
狂熱にも種類がある。殺すために殺すモノは、生きるために殺す者にけして勝てない。
「鉤爪の男よ、真の闘争のなんたるかをその身に教えてやる。震えて待つがいい!」
隻眼の少女は誇り高く微笑み、彼方の敵に宣言した。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……あれが何であっても、やる事は変わらない……!
アルカ・スィエラ、プロトミレス(コルヴィルクス装備)……出るッ!!
味方には距離を取るよう伝えて、『コルヴィルクス』の機動力で距離を置きながら『ステララディウス』の牽制射撃と、『ルーナグラディウス』でのビーム砲撃で主に敵機の脚を狙って攻撃、
そして【BS-X2 GBバスターキャノン】を転送、コルヴィルクス搭載の『ツインGランチャー』と連動させ、より多くの敵機を巻き込めるよう密集地点へと重力衝撃砲を発射、敵機を周囲の物質を吸引する超重力場内に捕らえそのまま周囲の機体も引き込み圧壊させる
貴方達が逝くのは神の下じゃない
光も声も何処にも届かない、超重獄の底よ
●彼方にて待つものは
不思議の国のファンシーな風景に似つかわしくない、漆黒の砲身。
EP-MT『コルヴィルクス』――アルカ・スィエラの乗るプロトミレスに搭載された、大出力火力ユニットだ。下手に撃てば友軍さえ巻き込みかねない破壊力を可能とする。
「あなた達が神の救いを謳い、戦火を拡げるというのなら――」
迫る殺戮機械の脚部に狙いを定め、攻撃を重ねる。あの数はまともに相手をしていたらきりがない。バスターキャノンとの併用で一網打尽にするのが最善手だ。
「……あなた達が逝くべき場所へ、この手で|葬《おく》ってあげるわ!」
死によって完成される救済などに、アルカは耳を貸さない。前面液晶にターゲットサイトが出現した。
|生まれ故郷《クロムキャバリア》は地獄だ。分断された世界は滅びに瀕して枯渇し、遺されたわずかな資源と土地を人々が奪い合う。平和という言葉は世界から失われて久しく、戦争は家族の絆も恋人の愛も、尊きものを何もかも奪い、引き裂いてしまう。
(「鉤爪の男がオブリビオンマシンであろうとなかろうと、私がやることは変わらない」)
BS-X2 GBバスターキャノン、転送。重々しい音を立てコネクタがドッキングする。
コルヴィルクスに搭載されたツインGランチャーシステムが起動し、物理接続されたバスターキャノンの下記管制システムとリンクする。あってはならない破壊の力が、アルカの指先に委ねられた。
奴はきっと、狂喜することだろう。猟兵よ、貴様が振るう力もまた戦火を生む。超弩級の闘争は、貴様のようなモノがいてこそ成り立つのだと。
闘争を止めるための闘争も、本質は同じだ。戦いに善も悪もない――忌むべきモノでしかない。
「それでも私は、|この世界《アリスラビリンス》をクロムキャバリアのようにはしない……!」
狂信に駆られた軍勢は、アルカの写し鏡だ。戦う理由を履き違えた瞬間、間近に開いた陥穽が彼女を喜んで受け止めるだろう。狂気という名の暖かい抱擁で。
それだけは認めるわけにはいかない。励起したエネルギーで、漆黒の砲身にバチバチとプラズマが走った。
「エネルギー装填、重力制御……オールグリーン」
操縦桿の親指部分にせり出した赤いスイッチに指を押し当てる。
「あなた達が逝くのは神の身許じゃない」
アルカは、己の手を血で染めることを厭わない。だが命を奪う恐ろしさも、残酷さも忘れはしない。覚悟と信念を以て、スイッチを――押した!
「光も声も何処にも届かない、超重獄の底よ。……墜ちなさいッ!」
破滅の熱量が黒い光条となって溢れた。敵密集地点に狙い撃たれた重力衝撃砲が戦場のど真ん中で炸裂! 地形もろとも、球状に展開した極度重力場がすべてを捕え圧潰していく……!
大成功
🔵🔵🔵
ルヴトー・シフトマン
【猟機甲】
こいつら…他所の世界にまで迷惑かけやがって
クロムキャバリア出身者としては、ケジメつけなきゃいられないな
行こう、クラリスさん ここで叩いて終わりにするんだ
クラリスさんが上手く撹乱をしてくれる
俺はそれを邪魔しないように、死角からの危険を減らすようにカバーファイアを徹底しよう
当然、アリスラビリンス現地の愉快な仲間も助ける
射撃を中心に牽制射撃を行って、近づけさせない
──よし、頃合いだな
この間合いは荒事屋にとっては一番良い……『殺法』
武装の射程と威力が大きく伸びる
奴らの攻撃も、射程で一方的に圧倒すれば怖れることは無い
飛天揺光で撃ち抜いて、崩砦一擲で薙ぎ払ってやる
出てこい鉤爪
潰してやる
クラリス・クレスト
【猟機甲】
この世界をクロムキャバリアの戦場に書き換える?
そんなのを許すわけにはいかないよ
ここには、平和に暮らしている人たちがいる
脅かさせたりはしない
行こう、ルヴトーさん
連撃が脅威的な相手か
でも、ボクには関係ない
全部当たらなければいいだけだもの
高速機動モードへ移行――CODE:Overed Boost
敵機の間を縫うようにして飛翔、こちらに目を引きつけるよ
攻撃を空振りさせて隙を狙ったり
同士討ちを誘ったりもできるかもしれない
勿論、ただ攪乱するだけじゃない
取れる標的は確実に仕留めて、彼の負担を少しでも減らす
そんな鈍くさい刃でボクを捉えられると思わないで
お前たちに構ってる暇はない――道を開けてもらうよ!
●進むべきは戦火の先に
そこら中で爆炎の華が咲き、不思議の国を引き裂く。平和を取り戻したはずの大地を灼き、平穏が訪れたはずの空を焦がし、勝利を掴んだはずの愉快な仲間たちを傷つける。
「こいつら……他所の世界にまで迷惑かけやがって」
ルヴトー・シフトマンは歯噛みした。クロムキャバリアで争うのは、まだいい。それは人類同士の争いだ。戦争に正義も悪もなく、ただ生き延びるための純粋な競争なのだから、奪うのも奪われるのも平等だ――だがこの世界の闘争はまったく違う。
|侠客《かれら》なりの表現をするなら、カタギに手を出しているといったところか。闘争は戦場にのみ限られるべきだ。世界そのものを侵略し書き換えるなど、言語道断。
「ここには、平和に暮らしている|仲間《ひと》たちがいる。これ以上、脅かさせたりはしない……!」
クラリス・クレストのブルーバードが空を|翔《と》ぶ。故郷では不可能な飛翔は、クラリスの心に解放感と高揚をもたらす――それ以上の裂けるような痛みも。眼下には、戦場になるべきではなかった不思議の国の灼けた|光景《ありさま》。クラリスは無惨な様から目を逸らさず受け止めた。戦いのもたらす高揚だけに呑まれては、かつての己に逆戻りしてしまうのだから。
「猟兵よ、あくまで我々の教えを、救いを否定するのですね」
「救われぬ愚か者たちよ。その首を刎ね、救済してあげましょう」
ギ、ガガ……ガガガガガ!! アームチェーンソーを唸らせ、殺戮機械に出した狂信者どもが殺到する。クラリスのブルーバードは、その隙間を縫うように飛翔した。
「その救済とやらは、ボクには届かないよ。悔しいなら当ててごらん」
飛翔という当然にして最大のアドバンテージを得たブルーバードの高速機動モードに、一山いくらのオブリビオンマシンが追いつけるはずはない。セラミックブレードはむなしく空を切るばかり。中には同士討ちしてしまう機体もいたが、嘆くパイロットはいなかった。むしろ、同胞を|救済《ころ》せたことに悦ぶ始末。戦争の狂気があった。
「ルヴトーさん、追撃を」
「ああ、任せろクラリスさん!」
BLAM! 飛天揺光が火を噴いた。ブルーバードがその機動力で敵陣をかき乱し、注意を惹きつけ、生まれた死角から天狼が奇襲する。二機のコンビネーションは、幾多の共闘を経て見違えるように洗練されていた。くぐり抜けた死線の数を、銃声ごとに生まれる鋼の屍が示唆していた。
「す、すごいや!」
「あの猟兵さんたち、とっても強い!」
うずくまり、心折れかけていた愉快な仲間たちも、次々に再起してあとに続く。
押し留めるのが精一杯だった前線は、ふたりを先頭に押し戻され、逆に駆逐が始まっていた。
戦闘の趨勢が逆転した。攻守もまた同様、つまりはこれは掃討戦である。
「なぜ、なぜ我々の救済が届かないのです……!?」
「そんな鈍臭い刃、ボクには遅すぎるよ」
ビュンッ、と振るわれたセラミックブレードを、ブルーバードは直角機動で躱す。
「けど、それだけじゃない。ボクには今、一番頼れる|相棒《バディ》がいてくれる!」
いくらクラリスでも、高速機動で生まれる隙は殺しきれない。数の利は戦闘で圧倒的なアドバンテージを生む。
だが、恐怖はなかった。誰よりも信頼する狼の目が、背中を護ってくれているのだ。
「ボクらの目当てはお前たちじゃない――道を、開けてもらうよ!」
青い鳥は味方に希望をもたらし、敵に絶望を運ぶ。真に救われぬ者どもに終焉をもたらす、星のように疾き風が戦火を吹き払った。
「な、ならば……あの隠れてちょこまか逃げ回るキャバリアを落とせば!」
「隠れて、逃げ回る?」
迂闊に間合いに踏み込んだオブリビオンマシンの土手っ腹に、風穴が開いた。
「ソイツは一体、誰のことを言ってるんだ?」
がしゃり、とスパイクホイールが地面を揺らした。機体から、ルヴトーの放つ殺気が陽炎をどよもすようにして溢れ出す。
「もしもオレのことを言ってるなら……|天狼《おおかみ》の牙の鋭さを教えてやるよッ!」
ルヴトーが身を隠しているのは、敵が恐ろしいからではない。
クラリスの自由な高速機動を妨げず、獲物を確実に屠るため。これは狩りなのだ。狡猾で獰猛な、狼の狩りである。
「てめぇらに用はねぇ! 待ってろ鉤爪――」
グォン! と、スパイクホイールが戦場を蹂躙した。立ちはだかる愚か者どもを吹き飛ばし、スクラップに変えて吹っ飛ばす!
「てめぇもじきに、こいつらみたいに潰してやる」
破砕されたオブリビオンマシンから飛び散ったオイルが、天狼を返り血めいて汚した。
ふたりの後に敵はなく、前を塞げるモノはない。その翼、その牙、まさしく無縫にして無双の二機である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『モノクロームの思い出』
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POW : 悲しくなんてないから元気を出してと声を掛ける
SPD : 絵の具やペンキを使って彩ってみよう
WIZ : そのまま佇んでみてもいいのかもしれない
イラスト:久佐葉
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
白と黒。
モノクロームで構成された寂しげな光景には、花々の歌も、星のささやきも、風の笑い声も感じられない。
そこに足を踏み入れた者は、生への渇望を失う。
単に力萎えてしまうのか、
死を求めたくなるほどの何かが視えるのか、
それは人により様々だ。白と黒の合間には、魂によって異なる風景が映るのだから。
まったき死、究極の滅びというエントロピーの地平線に向かい、弩級の闘争を求める鉤爪の男。
奴という|破滅の根源《カタストロフ》を止めるには、この程度は踏破出来なければ話にならない。
ギージスレーヴ・メーベルナッハ
色の無き世界か。あたかも全てが灰になったかの如き世界であるな。
あらゆる闘争は、いずれこのような結末に至るのやも知れぬ。
だが、それは結果でしかない。
余が望むのはそこに至る過程だ。
何もかもいずれ死に果てるというなら、その生を全て燃やしきらずして何とする。
何より、其を求める者がこの先に在る。そして余もまた其を求めている。
――命燃やし尽くす極限の闘争を!
その意志のもと、ヤークト・ドラッヘに【騎乗】し機甲武装・強襲撃滅発動、この領域を突っ切ってゆくものとする。
妨害要素あらば、搭載火器を以て粉砕してゆこう。
待っているが良い鉤爪の男よ、闘争の時は間もなくであるぞ!
●結果と過程
白と黒。ニ色のモノクロームにきっぱりと別れた世界に、「灰」という色はない。
つまりそれは、完全な停滞だ。何も交わらなければ生まれることも変化することもなく、木々や花々はただそこにあるだけのモノと化していた。
ギージスレーヴ・メーベルナッハは、そこに闘争の帰結を見た。この光景そのものが、灰燼という名の何もかも|真っ平ら《・・・・》になった有様なのだと。
「余の覇道の歩む先もまた、かくあるのかもしれぬ」
ギージスレーヴはぎしりと獰猛な笑みを浮かべた。
「だが、それは結果でしかない。余の望みは|灰燼《これ》ではない。ないのだ」
爛々と隻眼に煌めくのは、無邪気な子供の瞳に似た輝き。あまりにも残酷で危険な。
「余が望むのは、|終焉《そこ》に至る過程だ。|闘争《たたかい》という道筋なのだ」
まるで万雷の拍手を浴びる堂々たる指揮者めいて、ギージスレーヴは両手を広げた。
「なにもかもいずれ死に絶える。ああ、この光景はまさしくその答えであろうよ。
だが、しかしだ。|ならばこそ《・・・・・》、|生を燃やしきらねばなるまい《・・・・・・・・・・・・・》」
すべてはいずれ死に絶える。人も、虫も、鳥も魚も木々も雲も水も、死ねば終わり停滞する。その停滞こそオブリビオンの渇望。いずれ必ず来たる、死という終着点。
だから生に意味はないと奴らは言う。そして白黒のモノクロームもまた|嘆き《語り》かける。
意味はない。抗うことにも、生きることにも、すべて。すべて同じなのだと。
「否!」
ギージスレーヴは拳を握りしめた。
「余は無為なる生にこそ意味を求める。その厳然たる世界の在り方にこそ我を張ろう!
なにより――其を求める者が、この先に在るではないか。余が目指すべき|終着《てき》が!」
命を燃やし尽くす、極限の闘争を。
生に意味はなく、存在の行きつく先に違いはなく、すべて灰燼に帰するとしても。
だからこそ、あかあかと力強く生命を燃やす。青二才のように、遮二無二に狂い果てる。
燃えるような渇望があった。ギージスレーヴの瞳の輝きは、些かも損なわれない。
戦争交響曲が鳴り響く。停滞した白と黒のモノクロームを、愚かなる劫火が焼き払った。
「待っているがいい、鉤爪の男よ。闘争の時はまもなくであるぞ!」
フィナーレを告げる声は、寒々とした景色に朗々と響いた。力強く。
大成功
🔵🔵🔵
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブ大歓迎
なんだか、とっても悲しくて寂しい場所……なら、一人じゃなかったら大丈夫かな?
「もしもし、ヘルパーさんお願いします、できるだけいっぱい!」
ヘルパーさん達とお話して気分を紛らわせながら先に進むよ。
ヘルパーさん達はロボだからお花畑の影響は受けないし、歩くのが嫌になってきたら乗せて運んでもらえるね。
しりとりとか、ゲームとかしながら進めばあっという間に超えられるはず……!
あ、もしお花畑の中で進めなくなってる人が居たら、その人も一緒に運んであげなきゃ。
一人じゃ寂しいけど、皆で楽しく進んじゃえば平気だよね!
あ、ところでヘルパーさん。これお友達紹介ってことでクーポン貰えないかな……?
●困った時はスペースシップワールドヘルパー派遣センターにお電話を!
「もしもし……」
「はい、こちらSSWH派遣センターです!」
「ヘルパーさん、お願いします」
「かしこまりました! 人数は何名ほどにいたしますか?」
「えっと……できるだけいっぱい!」
アヴァロマリア・イーシュヴァリエはあまり後先考えずに発注した。グリモア猟兵と派遣センターの事務員さんの悲鳴は聞こえないものである。
ていうかそもそもスペースシップワールドヘルパー派遣センターって何!?
と言いたいところだが、まあユーベルコードである以上理屈はねじ伏せられる。ユーベルコードはそういうものだ。ぞろぞろと転移してくるヘルパー(ロボ)の皆さん。
「オ待タセイタシマシタ」
「お待ちしてました! えっとね、お話相手になってほしいんだ」
アヴァロマリアはにこりと微笑み、ヘルパーたちと並んでとことこ花畑を歩く。
「でも、どんなお話しよっかなぁ……しりとりとか?」
「電子百科事典検索ヲ使ッタ歯応エアルシリトリ体験ヲゴ提供シマス」
「それマリアが絶対勝てない気がする……」
「難易度調整モ可能デス」
「機能、あるんだ!?」
意外と需要があるのかもしれない。ヘルパーを派遣させてまでしりとりさせる需要って何? 陰キャの新しい苦行?
「でもどうせならもっと楽しいゲームしたいよね、トランプとかどうかな!」
「全1024種ノ種目ヲインプットサレテイマス」
「トランプの遊びってそんなに種類あったっけ……?」
「大富豪ノローカルルールハ65536種類マデ網羅済デス」
「宇宙、広いね……」
そういう問題ではない気がする。
こんな|和気藹々とし《トンチキで狂っ》た雰囲気では、花畑がもたらす寂寥感や虚無感など気になるわけもない。
アヴァロマリアはヘルパーさんの肩に乗せてもらい、悠々と花畑を横断した。
「あ、ところでヘルパーさん」
「何用デショウ。バカライタシマスカ」
「いやマリア賭け事とかよくわかんないから……これお友達紹介ってことでクーポンもらえないかな……?」
アヴァロマリアはちゃっかりしていた。グリモア猟兵の苦労も浮かばれる……の、かなあ!?
大成功
🔵🔵🔵
瞳ヶ丘・だたら
WIZ。アドリブ連携等々歓迎だ。
やれやれ、だな。
鋼鉄でできた愛機が羨ましい。
操縦桿を手放してしまいそうな心の弱さが厭になる。
このような場で思い返すことなど相場が決まっている。
どこにでもある迫害と差別と忌避の記憶。
取り立てて珍しくもない。よくあること、だ。
だから戦車を自動操縦モードに切り替える。
本来は戦闘用に備えたものだが仕方ない。用途を取捨選択するのも面倒だ。
背凭れに体重を預け、深く息を吐く。
「……くだらん。女々しい。愚かしい。来し方のことをいつまでも」
モニタ越しに広がる薄墨の花畑を見ながら呟く。
気怠い希死念慮の底に蟠る怒りを胸に鉤爪の男のもとへ向かおう。
八つ当たりになるが、どうか許せよ。
●鋼ならざる
今日ばかりは、己が鋼鉄でないことが呪わしく、愛機を妬んだ。
心。脆弱なる形なきもの。今日ほど厭に思えたことはないかもしれない。
「やれやれ、だな」
操縦桿を手放すだなんて、己とは思えない馬鹿げた考えが脳裏に去来したことに、瞳ヶ丘・だたらは苛立ち混じりの苦笑を浮かべた。
どれだけ身を鎧おうと、理想の相棒を生み出そうと、この心までは繕えない。
だが|妖怪《おのれら》は、この心に惹かれもしたのだ。ままならないものだ、とだたらは思った。
次いで脳裏によぎった光景は、だたらにとって驚きも困惑もない|当たり前《・・・・》のものだった。
人の世にあるものは、妖怪の世にもある。なにせカクリヨファンタズムは、人の世で忘れ去られたものが流れ着くマヨイガ。
ならばその悪性もまた同じ――容姿を根拠とした差別、性分をうとんでの忌避、ただ理由もなく行われる迫害。
どこにでもあり、誰もが――害を加えるのであれ被るのであれ――当事者になり得る、珍しくもない記憶。よくあること。己を悲劇の登場人物ぶるつもりはなかった。
ただ、だからといって、それが瑕疵でないかと言えば……否だ。
迫害し、差別し、忌み嫌うことが当然なら、それが癒やしようのない孤独と悲しみを産むのもまた当然。味わった苦しみが消えぬことも、また必然。
「……くだらん」
戦車を自動操縦モードに切り替え、だたらはシートにもたれかかった。
「女々しい。愚かしい。まったく、本当に」
嘆く。吐き捨てる。それで解決するなら、こんな苦しみは最初から味わうこともなく、こうして己を苛み続けることはあるまい。
過去の|他愛もない《・・・・・》出来事に、未だに思い悩むことがなお苛立たしさを産む。……心は脆弱だ。鋼ではないのだから。どこまでも、ままならない。
「来し方のことを、いつまでも」
薄墨めいた光景をモニター越しにみやり、だたらは他人事めいてつぶやいた。
気怠い希死念慮はまどろみに似る。眠りとは死の暗喩だ。それもまた、鋼ならざるものの宿痾とも言えるか。
「八つ当たりになるが――どうか許せよ」
投げかけた言葉は、今だ届かぬ敵へのもの。
こめられた感情は、白でも黒でも、鋼のそれでもないまだら模様――。
大成功
🔵🔵🔵
ウーヌス・ファイアシード
ここは…
形あれど、生気が感じられぬ…
ただ色を失っただけではない、|終末《ふはい》の果ての世界、だというのか…
生きる者も、新たな生誕もなく、ただ、全てが滅びゆく…
…我も、いずれ、また、そうなるのか…
かつて、|英雄たち《ひと》に破れた時のように…
(ふと、英雄たちの言葉を思い出して…)
…いや、我を破った者たちは、皆希望を抱いていた!
それに、ここは、まだ「形がある」…
即ち、灰化させ、新たな始まりを齎せられる、という事だ…!
ならば灼き、灰化させ、
新たな始まりを迎えさせよう…!
この先にいる、|終末《ふはい》を齎す者への道を切り開く為にも…!
(先に来ていた者がいたら、彼らを巻き込まないようにしながら)
●灰より生まれるもの
形あれど生気なく、草木あれど芽吹くものもない。死という停滞に包まれたモノクロの花畑――空気さえも死に絶えたかのような静寂のなか、寂々とした野を、ウーヌス・ファイアシードはそぞろ歩く。
「これが、|終末《ふはい》の果ての世界だというのか」
嘆きに応えるものはなく。
「生きるものも、新たな生誕もなく、ただすべてが滅び」
問いかけに答えるものもなく。
「……我もいずれ、また、そうなるというのか」
現実を肯定するものも、否定するものも、在りはしなかった。
白と黒しか存在しないはずの景色は、さながら無地のキャンパスめいて在りし日の光景を描き出す。
ウーヌスが見たのは、かつての敗北の景色。|英雄《ヒト》に敗れ、地に伏せた己と、その己が見た景色とを同時に思い描いた。彼女にとっての終わりのヴィジョンを。
「……そうか」
目を閉じる。神にも魔にも、どちらに非ざるモノにさえ、|滅亡《し》という停滞はいずれ訪れる。必ずだ。例外など存在しない。であるならば受け容れるのも、潔い終わり方というものなのだろう……。
嘆きと悲しみのなか、諦観という甘やかな闇に抱擁され、堕ちる。それはいかにも穏やかそうで、事実、己を掻き抱く静寂は愛しいほどに心地よかった――けれども。
(「だが……我を破った|英雄《もの》らは、同じように終わったか?」)
記憶が否を告げる。モノクロームが描くのは真実の一片に過ぎぬ。白と黒から抜け落ちた、かつての幻視の先――いや、本当に見るべき輝きは、ウーヌスの脳裏と心の片隅に宿っていた。それは夜空に煌めく星めいて鮮烈に輝いた。
輝きの名を、希望と言った。
「我を破った者たちは、みな希望を抱いていた」
ぎゅっと、胸元で手を握りしめる。
「ならば我もまた、彼らに倣い歩み続けよう。たとえこの地が|終末《ふはい》に塗れど……」
少女を中心に、火が生まれた。火とは原初の|ちから《・・・》、ヒトが手にした最初の希望である。それは世界を終わらせもするが、しかし。
「形あるならば、我が灰化の火もて新たな始まりを齎せるのだ……!」
燎原の火はたちまちに白と黒を赤で染め上げる。それは恵みの雨にも似た。
滅びは終わりだ。けれども、終わりのあとには必ず――新たな、始まりがやってくる。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
【(あえて言うなら)POW】?
……他の情報は何もないのに見た目は花園なのが余計に寒々し……
え、嘘、この光景、見覚えが(何十年も前に戦火に焼かれ、時を越えて帰ってきたら一切の痕跡も見つける事が出来なかった故国が平和だったころの光景)
……もし
……もしも、あの時あのまま死んでいたら、私だけが何十年も後の世界に、
取り残される事もなかったのかな……
……
(咆哮)
…………隣で大音量で吼えなくても解ってるわドラグレクス
どれだけ焦がれたって過去には帰れないし、
例え世界が忘れてしまっても、国が炎に包まれたあの光景を、
オブリビオンが齎したあの光景を、私は忘れない
先を急ぎましょう
オブリビオンが齎す悲劇を止めるために
●|もしも《イフ》
戦火があった。
人も、土地も、家も尾根も草も木も花々も、すべてを灼き尽くす無慈悲な戦火が。
炎に慈悲はなく、終わってしまった屍に慚愧などあるはずもなく。
すべてが絶え果て真っ平らになった場所は、もはや故郷でさえなかった――そう、すべて失われた。アルカ・スィエラの|故国《ふるさと》は。
「うそ」
その、失われたはずの光景が、目の前にあった。
幻覚だ、と理性が告げる。けれどもここに存在すると本能が嘆いた。
当たり前のように鳥たちが謳い、人々が微笑み、馴染みある土地を風が撫ぜる景色。耳を慰める喧騒と笑い声。涙が出そうなほどに懐かしい匂い。
これは、悪辣な幻影だ。わかっている――ただ、蘇った香りは唯一脳裏に残ったそれと寸分違いがなく、だからアルカは簡単には跳ね除けられなかった。
……いいや、違う。アルカは、「だから仕方ない」と己を納得させようとする、もうひとりの自分の欺瞞に首を振った。
「もしも、あの時――あのまま死んでいたら」
否定したい理由は、心にいまだ残るわだかまりがため。拭えぬ後悔のせい。
「私だけが、こうして取り残されることもなかった、のかな……」
時は無情だ。時間という質量を消費して進む世界は、誰彼をいちいち選別してはくれない。故郷は骸の海へと墜ちていき、己は生者としてここにある。それがすべてだ。
だったとして、この白と黒のように、ふたつにきっぱりと分けられるほど、人のこころはシンプルではないのだが。
「私は……」
このまま目を閉じて、静かに穏やかに終われば、せめて海底でひとつになれるというのなら――。
抗いがたい絶望の誘惑を、咆哮が振り払った。
「……わかってるわ、ドラグレクス」
鋼の|咆哮《こえ》に宿るのは、怒りでも苦しみでもない。嘆きであり弔いであり――だが一番強く響くその音色は、希望という。
「どれだけ焦がれたって、過去には帰れない。故郷も、戻りはしない」
艶やかな鋼を撫で、アルカは目を伏せた。
終わってしまったものは取り戻せない。世界が選ばず、忘れ去ったとしても、どれだけ希ったとしても。
己は取り残された。それは事実だ。
己はまだここに在る。それもまた、事実だ。――ならば。
「先を急ぎましょう」
遺された者として、生き延びれた者として、なすべきを為す。
「私たちの手で、悲劇を止めるのよ」
それは義務である。だがアルカが、心からなしたいと思うねがいでもあった。
大成功
🔵🔵🔵
ルヴトー・シフトマン
【猟機甲】
生きるってなんだろうかと、ずっと考えてた
親父とお袋は死んで、受け継いだものだけがあった
義務感に駆られるような感覚…急激に自分の命が重くなったような気がした
どこかで終わっても良いと、思ったことさえある
──違う
それは明確に、護りたいものだった
窖の住まう人々も、機狼衆もみんな護りたい。
そして、最愛の人も
この繋いだ手はその証、誓いそのものなんだ
絶対に護る ともに歩いていく為に
たとえ何度忘れられたって、この気持ちは変わらない
俺の…いや、俺達の歩みは止まらないんだ
生きる理由がこの魂にある限り、決して
さぁ行こう…もうここは、つまらないモノクロームだ
この先の色彩で、奴を滅ぼしてやるんだ
クラリス・クレスト
【猟機甲】
昔の自分の世界はこんな感じだったな、と
白黒の景色を見て思う
そこに苦しさがないのは
それすら押し流されてただの記録になっているから
「キャバリアの脳」になったボクは、情動のすべてを押し流される
だから昔は思ってた
いつ死んだって別にいい
道具が壊れるのと同じことで、悲しいことでもなんでもないって
でも、今は――
繋いだ手の先にいる人を見て、小さく頷く
今は、そう思っていない
いつかまた喪うとしても
何も感じられなくなっても
何度でも心に芽吹くものがあるって知ったから
この白と黒の静寂がすべてを奪っていっても
また新しい気持ちが芽吹くんだ
何度でも、彼と一緒に歩いていきたいって思える
だから、足を止めたりしないよ
●ハンド・トゥ・ハンド
記憶と記録は異なる。定義の話ではない、それを刻んだ者の主観的な認識の問題だ。
どれだけ詳細に記されていたとしても、本を読んで得た知識はそれ以上にはなり得ない。見、聴き、味わい嗅いだ記憶に勝ることは、決してない。
生きるとは記憶の連続だ。連綿と受け継いで残してきた記憶こそが、己の生きた証――じゃあ、そのすべてを押し流され、ただの情報としてしまったら?
もうそれは、生きているとは言えないのではないか。
ただ鼓動して、ただ存在して、ただ駆動する。機械と何も変わらない。
そう思っていた――いや、かつての|自分《おのれ》は、実際そうして|稼働し《いき》ていたのだろう。
「だから、ね」
クラリス・クレストは、握りしめた手から、隣に立つ少年へと視線をなぞった。
「いつ死んだって別にいい、って。あの頃は思ってたんだ。
道具が追われるのと同じことで、それは悲しくもなんともないんだ、って」
「じゃあ、今は?」
ルヴトー・シフトマンの問いかけに、クラリスは少しだけ苦しそうに微笑んだ。
わかりきっていることをあえて問うのは、意地が悪いというべきか。……そうではないと彼女は知っている。問いかけるルヴトーは、ともすれば己以上に苦しいことを。
"そう"だった彼女を変えたのは、他ならないルヴトーだ。ともに戦場を駆け、他愛なく食卓をともにし、笑い、悲しみ、傷ついて慰めあった。
道具ではなく、ひとりの――ひとつの|いのち《・・・》として、己を扱ってくれた。
「今は、違うよ」
「俺もだよ」
ぽつりとルヴトーは溢した。
「俺も、どこかで終わっていいと思ったことがある。自分の命の重さに、逃げ出したくなったことがね」
「……じゃあ、今は?」
くすりと、いたずらめいて微笑み、投げかけ返されることば。ルヴトーは、さっきの彼女を真似るように苦笑した。
「……それも、同じだ。俺も今は、そう思ってない」
なぜなら、受け継いだものはただの義務感ではなかった。
守るべき人々と、率いる群れ。そして――そう、誰よりも愛する|少女《ひと》。
かれらに生きてほしい、在ってほしいと望むこの気持ちは、父や母から受け継いだわけでもなければ、誰かから命ぜられ強制されたわけでもない。
そして、受け継いだものも同じ。それは重荷などではなく、ルヴトーを形作る礎だった。この重みは枷ではなく、誇りという牙なのだ。今なら、それがわかる。
「行こう」
「うん」
クラリスはくすぐったそうに頷いた。
絶対に守る。何があろうとも、何がたちはだかろうとも。少年はそう誓った。
何度だって芽吹かせる。また喪うとしても、何も感じられなくなっても。少女はそう識った。
互いの掌の暖かさは、寒々とした景色を振り払うには十分だった。
終わりは甘やかだ。諦めは反吐が出るほどに心地よく、おぞましいほどに麗しい。
目を閉じて足を止めるのは、たしかに楽なのだろう。惹かれないといえば嘘になる――互いに。結局は強がりでしかなくて、でも、伸ばした背筋を支えてくれるもうひとりがそばにある。この鼓動に、同じ|鼓動《ひびき》を返してくれるいのちが。
「奪われたって、また新しい気持ちを芽吹かせればいい。ボクは何度だって、一緒に歩んでいきたいって願うよ」
「なら俺が、その手を引くよ。誰にも、俺たちの歩みは止められやしない」
いつかそうしたように、そしていつまでもそうするために。
少年と少女は微笑みあい、誇り高く前を見てつまらないモノクロームを踏みにじった。
終わりは必ずやってくる。世界は、この白と黒が描く均一な地平線のように平等で、無慈悲で、だからこそ一緒に在れる。だとしても、その「いつか」まではふたりでともに。
胸を張り前に進む足取りは、些かも臆さずためらうこともない。
この胸が高鳴るたびに、ひとりではないともうひとつの鼓動が教えてくれたから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミスト・ペルメオス
・SPD
ここは……。
……長居は無用、だな。
愛機たる機械鎧を駆り、踏み入れるは無彩色に塗り潰された領域。
機体を介して接する風景はひどく寒々しい。なるほど、見ているだけでネガティブな感情が湧き上がってくるような。
とは、いえ……ここで立ち止まる訳にはいかない。
何より、「こんな場所」に惑わされる訳にはいかない。
「こんな場所」よりもなお、過酷でつめたくてまっくらで……けれど光瞬く世界を。宇宙を、知っているのだから。
出力上昇。スラスター最大稼働ッ!
愛機を飛翔させて虚無に覆われた領域に突入、あとはひたすら飛んでいくことで突破する。
【ストーム・レイド】。さながら嵐のように、朽ちた白と黒の世界を置き去りにして。
●光あれど昏き場所
宇宙は孤独だ。生命の生存さえ許さぬ過酷な領域を征かねばならぬスペースノイドにとっては、故郷であり無限に広がる恐るべき地獄でもある。
ミスト・ペルメオスは、それをよく心得ている。さながら、海の恐ろしさを知りながら浪漫に魅入られた船乗りのように。
宇宙は孤独だ。その孤独が逆に心を満たし癒やしてくれることもある――だが、光あれど昏き場所に心許せば、たちまちに死ぬのだと。
培った経験は身を助く。たとえば今のように。
(「なるほど、これが警告されていた影響とやらか」)
機械鎧の電子防壁を隔ててなお、ミストの精神に影響を及ぼす無彩色の領域。
生身でこれを浴びていたら、もっと致命的な影響があったかもしれない。
だとしてもミストは、完全に心を囚われることはなかっただろう。
生まれた頃から文字通り身を置いてきた過酷な宇宙の暗黒が、その心に根付いている。
経験が身を助くとは、こういうことなのだ。言葉で説明するだけではけして伝えきれない、スペースノイドにして|宇宙《そら》を征く者としての矜持が、ミストを支えてくれた。
(「こんな場所に惑わされ、立ち止まるのは――ぼくが歩んできた道のりに対しての侮辱だ」)
ミストは甘やかな絶望の誘惑を強く跳ね除け、冷静に機械鎧を制御する。
こういう時、愛機の無機質な感触は逆に心強い。もうひとつの身体とも言える鎧がそこにあるというだけで、揺らぎかかる自己が再定義される気がした。
「……出力上昇、スラスター最大稼働ッ!」
ギュン、と機械鎧は白と黒を劈いた。見えざる虚無の手が、行かせまいとミストを包み込むような気配がした。
しかして、嵐を留めることは出来ない。海原をコップの中に閉じ込めることが出来ないのと同じように。
静かに荒ぶる強き風は、誰にも縛られない。道標の光がなくとも、進むべき道を己の裡に宿しているから、その翼はどこまでも自由だった。
大成功
🔵🔵🔵
メナオン・グレイダスト
・SPD
どこまでも続くような白と黒の景色を前に、奇妙に心がざわつくような感覚を押さえつけて。
いつも通り平然とした態度を保ち、躊躇する素振りも見せずに進む。
“灰色の魔王”を阻むこと能わず、なのだから。
外套を翼状の推進器へと変化させ、滑るように飛ぶ。
しかし次第に肥大していく虚無感。
「失われた、もしくは最初から何も無い」……他人に決して見せない「本来の自分自身」を、無理矢理暴き立てられるような錯覚を覚えれば。
──ああ、不快だ。
このような場所は、我輩が無に還してやる!
【グレイダスト・バタフライ】。
巨大な灰色砂塵の翼を広げ、白と黒を侵蝕しながら突破していく。
我は“灰色の魔王”なり。そう自他に示すように。
●最期に遺るは
灰とは孤独の色だ。
はじまりの白でも、終わりの黒でもない。朝にも夜にも居場所はなく、伴う仲間はおらず、ただ独り枯野をそぞろ歩く。
白と黒のモノクロの地平に、ぽっかりと空いた人型の穴。何者にも阻まれず歩むメナオン・グレイダストの姿は、そんなふうに見えた。
その表情は常の如く超然とし、眼差しはいささかも揺るがない。
黒き土を踏みしめ、寂しげに揺れる草花を蹴立て、白く寒々と広がる太陽に逆らうを躊躇せぬ。
素振りすらない――いや、あってはならないのだ。
甘く芳醇な絶望の暗黒に心囚われ足を止めるなど、"灰色の魔王"にはありえない。
ゆえに、魔王を阻むことは能わず――然り、不可能なり。
おそらくは、とうの"灰色の魔王"にさえ。
「……ああ」
メナオンは吐息を溢すように嘆いた。
見えざる無粋な指先が、火の消えた炉の奥、凝り固まった灰の山を崩すように、己のこころに忍び込むのが感じられる。
魔王はそれを好まぬ。超然たる外套の下にある|素顔《もの》を暴かれるのを快く思わぬ。
なぜなら、王とはかくあるべきもの。人々の思う偶像として君臨し、求められる役目を座にて担い、孤独なる頂点として在り続けるべきなのだ。
魔と渾名される王にとって、人々とはすなわち世界そのもの。己以外の、色ある全てを他者と定義し、寄り添うことなく機構として歩み続けねばならぬ。
外套の下、宝石に彩られた眦の奥にあるのは、虚無だ。はじめは何かあったのかもしれぬ、"灰色の魔王"ではない、|どこかのだれか《・・・・・・・》としての|個性《ペルソナ》が。
だがもう、そんなものは失われた。何故、どうして失ったのかさえわからぬほど昔に――理由さえ摩耗してしまうほどに。
元からそうだったのか、そう成ってしまったのかさえ、メナオンにはわからない。
「不快だ」
わからないということを想起させられることが、たまらなく厭だった。
王はそのような瑣末事に心を囚われはしない。ましてや己は"灰色の魔王"。
何者にも寄り添わず/寄り添われることなく、
何物も必要とせず/必要とされることもなく、
何かに囚われもしない/留めておくことが出来ない。
「……なにもかもが、不快だ!」
灰色の砂塵が、竜巻のように渦巻いた。
白と黒の風景は寒々しい。だが唯一の二色は、けして交わらぬもう一方を必要としていて、もう一方があるからこそ色として存在を確立していた。
つまり白は黒を、黒は白を認め、必要とし、そして互いに補完しあっていた。このモノクロームは、完全に閉じた世界であり寄り添い合うふたつの孤独でもあった。
「このような場所は、我輩が無に還してやる……!」
我は"灰色の魔王"なり。我を定義するは我自身。何物もこれを冒すこと能わず。
白も黒も、たった一色がすべて塗りつぶしていく。最期に遺るのは色ならざる虚無のみ。
それは、子供の癇癪にも似ていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『猟書家『鉤爪の男』』
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POW : プラズマ・クロウ
命中した【左腕】の【鉤爪】が【超電撃放出モード】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : インサニティ・ブレイド
自身に【体を失っても極限の闘争を求める狂気】をまとい、高速移動と【鉤爪からの真空波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 量産型侵略蔵書
【侵略蔵書で書き換えた『不思議の国』の太陽】から、【奴隷を捕縛する鎖】の術を操る悪魔「【アリス狩りオウガ】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かき乱され侵された白と黒の風景は、やがて二色が混じり合いモザイク模様に変じ、曖昧模糊たる異空と化した。
なおも鉤爪の男を目指して進む猟兵たちは、いつしか己が天高く空の上にあることに気付く。
空舞う翼なくとも、地なきはずの空間を踏みしめ佇むことの出来る奇妙な異空。
まるで、この不思議の国そのものが、決戦の場を作り出し猟兵を導いたかのように思える。
実際のところ、最後の戦場は高度400kmという人類生存不可能の領域に至っている。
「ほう」
滅殺兵器・|九竜神火罩《きゅうりゅうしんかとう》を背負うようにして、鉤爪の男が浮かんでいる。
人間大でありながら、尋常の機体の性能を凌駕する自立型オブリビオンマシン……それが奴の正体だ。
「|国土《おのれ》を灼かれまいと、この国そのものが貴様らを私のもとへ招いたか」
鉤爪の男は嗤笑した。戦士の覚悟とは違う、焦がれて止まぬ狂熱を孕んだ笑みだった。
「ならば、よかろう。我がカーテンコール・ラビリンスを止めたくば、この|動力炉《しんぞう》を射抜いてみせるがいい!」
背後、九竜神火罩が破滅の光をたたえる。残された時間は少ない。
極天を舞台に、破滅へ向かい駆動する機械を破壊せよ!
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブその他歓迎
見つけた、鉤爪のおじさん。もう悪いことなんてさせないよ……!
UCで限界までサイキックエナジーと集中力を高めて戦うよ。
近付かないと使えない攻撃なら、念動力で吹き飛ばしちゃえば鉤爪が突き刺さることはないし、もしそれでも攻撃が当てられちゃっても、放出される電撃自体を念動力で掴んで跳ね返すことだってできるはず。それが真空波や鎖の術だったとしても同じだよ。
だってそれが超能力――どんなものも超えていく力だもん!
だから、防御はきっと大丈夫。
あとはおじさんの言った通りに、その九竜神火罩の動力炉を射抜くだけ……全力全開の念動力で、おじさんを弾丸代わりにしてあげるから!
●どんなものも超えていく力
「見つけた、鉤爪のおじさん……!」
アヴァロマリア・イーシュヴァリエを|極天《そら》へと押し上げ、役目を終えたヘルパーたちが空間の外へ弾き出されていく。独り残ったアヴァロマリアは、持ちうるサイキックエナジーのすべてを解放し、目の前の敵に意識を集中した。
「ほう、サイキッカーか。面白い」
鉤爪の男はニヤリと不敵に笑い、左腕を構えた。威圧的に向けられた爪先に、バチバチとプラズマの電光が迸る。
「もう悪いことなんて、させないよ。あなたはマリアたちが止めてみせるんだから!」
「いいぞ、その調子だ猟兵。この私に、超弩級の闘争を愉しませろッ!」
鉤爪の男が仕掛けた。推力によって常人には不可能な超スピードを実現し、アヴァロマリアの腹部に爪を繰り出す!
「……えいっ!」
アヴァロマリアは、最初から回避を捨てた。戦闘に特化したオブリビオンマシン相手に、スピードやパワーで勝負するのは彼女には荷が重い。だから|敵の方を動かす《・・・・・・・》ことで、防御に換えようとしたのだ。
「むうっ!」
見えない壁に弾かれ、鉤爪の男は斜め上に吹き飛ぶ。アヴァロマリアは桃色の瞳を見開き、限界を超えた力を引き出した。
「負けない……絶対に負けない、あなたなんかにっ!」
念動力の力場が、鉤爪の男を縛り付けた。空中に投げ出された身体をぎちりと固定され、鉤爪の男は――哄笑した。
「ハハハハハッ!」
「何がおかしいの……!?」
「この戦いがだ!」
鉤爪の男は舞台演者のように大袈裟に叫ぶ。
「世界の存亡を賭けた極限の闘争、これこそ私が願ってやまなかったものに他ならん!
さあ、もっと力を見せてみろ、猟兵! その魂の力で、私を屠ってみせるがいい!」
「……マリアは、戦うことが楽しいなんて思ったこと、一度もないよ」
アヴァロマリアは悲しげに呟いた。憐憫――それは鉤爪の男がもっとも忌み嫌う感情だ。
「おじさんは、かわいそうな人だね」
「何を言う……!」
「マリアは絶対負けない。鉤爪のおじさんにも、おじさんの言う闘争の愉悦にも!」
念動力が逆ベクトルの推力を生んだ。鉤爪の男は猛烈に抗い、再び爪を繰り出す。死物狂いの力が一瞬だけアヴァロマリアの念動力を凌駕し、爪先がざくりと身体を裂いた。
アヴァロマリアは、けして目を逸らさなかった。
「マリアのこの|超能力《ちから》は、どんなものだって超えられるんだから!」
恐怖や痛みさえも超越したアヴァロマリアは、電撃が傷口を焼灼してもうめき声ひとつ漏らさない。貫通に失敗し、浅く切り裂くに留まった鉤爪の男は、今度こそ念動力で吹き飛ばされる!
「ぐおおおっ!?」
猛烈なスピードで撃ち出された鉤爪の男は、背後に浮かぶ九竜神火罩に背中を叩きつけられ血を吐いた。
奴は強い。戦闘力のみに的を絞れば、アヴァロマリアをはるかに勝る。
……だが真の「強さ」とは、戦闘力だけに限ったものではない。決然と鉤爪の男を睨む勇敢な少女の眼差しが、それを証明していた。
成功
🔵🔵🔴
ウーヌス・ファイアシード
闘争を求む、か…
人は求む者同士が集い「競技」へと昇華させた…
…そう、望まぬものにその力を振るえば、暴虐へ成り下るのだ…!
敵の狙いを絞らせず、動きを読まれないように【空中機動】で素早く、変則的な動きも交えて攻撃を回避していこう
それでもかわしきれない場合は「火を掴む手」での【武器受け】で防御する
遠距離では【エネルギー弾】で、接近戦では尽き得ぬ薪の剣と火を掴む手を使って攻撃しよう
そして、それと共に「薪の剣が、彼方より降り注ぐ」を使い、鉤爪の男も、その配下も、そして、九竜神火罩をも灼き貫こう!
また、剣が降り注ぐ間はその剣で敵の攻撃を迎撃しつつ(防御、回避が疎かにならないよう気をつけながら)攻勢にでよう
●暴虐と理性
「生物は暴力から逃げることは出来ない」
鉤爪の男は瞑想的に言った。
「しかしヒトは、その絶対的な|さだめ《・・・》から逃れようと、愚かに藻掻く。
それが新たな闘争の呼び水となることもあろう……私としては好都合だがな」
「……汝にとって、暴力と闘争は逃れる必要すらないか」
ウーヌス・ファイアシードは、眼の前の狂った戦争機械に怒りと憐れみを同時に抱いた。
あれは、己の似姿だ。討たれることによって、初めてヒトの希望が持つ力を知った己の――そして永遠に救われることのない、哀れなカリカチュアだ、と。
「……たしかに汝の言うことには一理ある」
ウーヌスは渋い顔で頷き、だが、と言葉を続けた。
「ヒトはその闘争を、「競技」という文化へ昇華させることも出来るのだ。
望まぬ者に力を振るう、暴虐と成り下がった愚かな行いとは違う。
求む者同士が集い、互いに切磋琢磨し成長する……それは、逃避などではない」
「だが、競い合い比較することは羨望と嫉妬を生むぞ? 闘争の苗床となる感情を。
その文化とやらも、所詮は暴力と闘争の本質をテクスチャで覆ったに過ぎんさ」
「……我は、そうではないと信じている」
ヒトを学ぶモノは、きっぱりと告げた。決別の言葉を。
鉤爪の男は嘆くように溜息をついて頭を振った。
「――ならば死ね、愚物よ!!」
そして突如として、ウーヌスに襲いかかった!
ウーヌスは空間ごとえぐり取るような鉤爪を躱し、素早く浮上した。
鉤爪の男は全身の動きで右腕の軌道を反転させ、掬い取るように下から狙う。
(「単純な回避は動きを読まれてしまう、か。ならば……!」)
『火を掴む手』が鉤爪と鏡合わせのように振り下ろされ、火花を散らした。
ウーヌスは激突による反発力で、自らを弾丸じみて撃ち出し、さらに後方へ。
「逃げてばかりでは私は倒せんぞ、猟兵!!」
鉤爪が後を追う。パワーはあちらが上だ。ウーヌスはさらに薪の剣も加えて一手一刀にて受け流そうとするが、徐々に傷が増えていく。
「我は、逃避などせぬ」
プラズマの飛沫で頬を灼かれながら、かつて敗北したモノは言った。
「ヒトの持つ力を恐れ、狂気に逃れた汝とは違ってな……!」
「――貴様!」
鉤爪はとどめの一撃を繰り出そうとした。が、ウーヌスは僅かな隙に瞬間的な力を爆発させ、鉤爪の男を逆に吹き飛ばした!
「ぐっ!?」
「薪よ、降り注げ。終末を齎すものを灼き貫け!」
ウーヌスの背後に、500を超える薪の剣が生じた。それは統率された軍勢のように一糸乱れぬ動きで鋒を敵に向け、騎兵隊じみてまっすぐ突撃した。
一部の剣は、術者であるウーヌスをすら切り裂く。しかし彼女は、決して痛みを恐れない。真に恐れるべきものを、彼女は知っているのだ。
「ぐ、うおおおっ!!」
鉤爪の男は一転して防御を余儀なくされる。両手で顔を覆い退くさまは、まるで光を恐れる哀れな小鬼のようだった。
成功
🔵🔵🔴
アルカ・スィエラ
……その闘争も、此処で終わらせる
この『アルカレクス・ドラグソリス』で!!
装甲各部から『ドラグカプト』を展開、制御をドラグレクス側に任せドラゴンブレスを放って牽制、易々と当たってはくれないだろうけど、回避を試みた時点で動きの邪魔ぐらいにはなり、攻撃が来る場所を限定できればしばらくはフィールドで耐えられるわ
後は相手が都合の良い場所へと動いたところでフィールドの性質を変更、力場によって拘束し動きを止め、
そこにずっと準備していた全力全壊、最大出力での【虹剣ドラグキャリバー】で背後の九竜神火罩諸共、あいつを薙ぎ払うわ……!!
多少の損傷なんて覚悟の上よ
ただ一閃、それで全て断ち切ってやるわ……!!
●一閃にすべてを賭け
全身に無数の傷を帯びた鉤爪の男は、全身を戦慄かせ哄笑した。
「ふ……ハハハハッ!! いい。やはりいいぞ、猟兵! 貴様らのもたらす闘争は!
この私の身体も、終わりなき超弩級の闘争に武者震いしているではないか!」
「……武者震い? 私には――恐怖の身震いに見えるけど?」
哄笑は、アルカ・スィエラの言葉にぴたりと止んだ。
「……なんだと?」
「自分でもわかっていないようね」
アルカはコクピットのウィンドウ越しに、敵を睨みつけた。
「お前は恐怖しているのよ。私たちという、闘争を終わらせに来た『天敵』をね」
「……ふざけたことを抜かす女だ」
鉤爪の男の身体が、バチバチと電光をまとった。
それは、裡なる狂気が、溢れ出すオーラとなって顕現したものだ。
「見るがいい、この果てしなく溢れ出す我が渇望を。抑えきれぬわが狂気を!」
「……」
「貴様にも味わわせてやろう……超弩級の闘争が齎す、生物本来の歓びをなァ!!」
鉤爪の男は、瞬間移動と見紛うようなスピードで飛翔した!
「……私は、私たちは! 絶対に認めないッ!」
アルカは愛機と呼吸を合わせ、敵を迎え撃つ!
真空波を生じさせるほどのスピードに対して、機動戦を挑むのは愚の骨頂だ。
アルカは迎撃を前提に、装甲各部から展開した『ドラグカプト』で死角をカバー。制御そのものはドラグレクスに任せることで処理リソースの低下を最低限に抑え、さらにブレス攻撃によって敵の動きを阻害する。
こうすることで、真空波の攻撃を防御フィールドで凌ぎ、反撃のチャンスを伺うのだ。
「ふん、やせ我慢だな。いつまで耐えられるか試してやろう!」
鉤爪の男は、アルカの覚悟をせせら笑い、さらにスピードを増した。
必然、攻撃の勢いも累乗倍に激しくなっていく。防御フィールドは割れて砕け、装甲を切り裂かれあちこちで小爆発を起こした!
だが、それはアルカにとって、当然のことだった。
「私の狙いは――こうすることよ!」
「!?」
砕けたフィールドが、逆再生映像のように再び集まる――ただしそれは、防御ではなく拘束するため。
鉤爪の男は瞬間的に四肢を抑えられた。アルカは一気に加速し、虹剣ドラグキャリバーを伸長する!
「貴様、最初からダメージ覚悟で……!?」
「私は傷つくことを恐れない。ただこの一閃に――すべてを、賭ける!」
決意と覚悟の一撃が、空に新たな地平線を生んだ――!
成功
🔵🔵🔴
瞳ヶ丘・だたら
アドリブ連携等々歓迎だ。
時間があればその身体について訊きたいものだが、残念だよ。
そしてその衛星兵器との相対は二度目だ。
ガジェッティアとしてはそろそろ我慢の限界でね。
真空波の投射と九竜神火罩の火力支援には回避を徹底する。
あたしの戦車は〈空中戦〉の仕様も万全だ。
避け切れないダメージは蓄積するが、何より接近を優先。
攻撃衛星に届いたなら、そこでUCを発動するぞ。
その場の物品、すなわち九竜神火罩に手を加え、新兵器に〈武器改造〉。
威力と攻撃回数を増加させつつ、更に有用無用の諸機能を追加。
地表を焼き尽くすその力、熨斗を付けて返すとしよう。
「おおよそ気分は晴れたかな。
悪くない闘争だった。感謝するぞ、色男」
●天の火は仇なす
剣閃によって真一文字に刻まれた空の新たな地平線に、ノイズが生じる。
ぐるぐると竜巻のように渦をなすそれは、狂気だ。狂気という名の|旋風《かぜ》――台風の目には鉤爪の男。奴の纏う闘争を求むる狂気が渦をなしているのだ。
「まだだ!」
鉤爪の男は己を歓喜で塗り潰し叫んだ。
「まだ終われん。私が求め続けた超弩級の闘争は、まだ浴び足りん!!」
「それほどのダメージで、まだそこまで動くか。つくづく規格外だなキミは」
瞳ヶ丘・だたらは狂気の渦を前に淡々と言った。
「時間があれば、その身体について訊きたいものだ。残念だよ」
「諦めることはないぞ、|工兵《ガジェッティア》」
鉤爪の男の隻眼に、爛々とした狂気が輝く。
「今すぐに教えてやろう――貴様のその命を切り刻んでなァ!」
右手が強張り、プラズマを纏った。空気を裂いて奔る鉤爪が、不穏極まる残光を空中に刻む!
「そうもいかない。あたしは職務に忠実なタイプでね」
だたらは戦車を巧みに操り、真空波の檻に囚われぬよう機動戦を徹底した。
そこへ九竜神火罩の火線が加わると、まったく無傷というわけにはいかない。
鉤爪の男本体のスピードは、もはやだたらが組み上げたシステムでさえ捉えきれないほど。狂気纏うその姿が、陽炎のように朧な姿をディスプレイに焼き付かせるたびに、戦車は鉤爪で抉られダメージを蓄積した。
「それに……|こちら《・・・》も、あたしとしては我慢の限界なんだ!」
だたらの狙いは九竜神火罩にある。それを改造して逆用しようというのだ。
「考えたな、工兵! 戦場にあるものを利用し尽くすその浅ましさ、まさしく闘争の|しもべ《・・・》と言えよう!」
鉤爪の男は謳うように叫び、取り付いただたらのマシンをずたずたに引き裂いた。
九竜神火罩を完全に改造することは叶わない。わずか一瞬、指先が触れるほんの刹那のタイミングしか得られなかった以上、もはや望みは――。
「うん。|おおよそ気分は晴れたかな《・・・・・・・・・・・・》」
だたらにとっては、その一瞬で十分だった。
「何?」
「悪くない闘争だ。感謝するぞ、色男」
訝しむ鉤爪の男の身体を、後ろから放たれたレーザーがぶち抜いた。
「あの、一瞬で……九竜神火罩のシステムを改竄したというのか……!?」
「改|造《・》だ」
だたらはスパークするマシンの中、血の筋を頭から垂らしながら嗤った。
「より善く、より強く、よりスマートにするのが改造だ。間違えては困るな」
直後、無数の火線が空を劈いた。
逆光めいて影絵に染まった鉤爪の男のシルエットは、己が頼みとしていた破滅の火に灼かれ、あちこちが虫食いめいて欠けていた!
成功
🔵🔵🔴
ルヴトー・シフトマン
【猟機甲】
ここまで追い詰めたぞ、鉤爪
他所の世界に手ェ出すのはいただけねえ
テメェは一線を越えた 罰を受けてもらうぞ
俺には二秒の先読みによる【見切り】がある
クラリスさんが奴を引き受けてる間、俺は動きに注視する
致命的タイミングになり得そうなものは共有して、彼女を捉えさせない
──そう、ここだ
この瞬間に奴の鉤爪が真空波を放つ そのタイミングで、スイッチ
それを『掴む』
そして100倍以上にして返すんだ──これが俺の『怒涛』
テメェが死ぬのは、テメェが蒔いた種でだ お似合いの末路だろうよ
テメェは弱い 所詮は闘争の中でしか生きられないからだ
護るものも無い 帰る場所も無い 後ろに何も無いから
弱いんだよ、どこまでも
クラリス・クレスト
【猟機甲】
お前にどんな目的があるかなんて知らないけど
ボクたちの闘争は、ボクたちの世界で終わらせるべき
平和だった場所にまで戦火を広げることを許すわけにはいかない!
あいつの高速移動に対応するのはボクの仕事
CODE:Overed Boost――最初から最高速だ
ひたすら追従して、攻撃を妨害し続ける
一方的な戦場にはさせない、ボクがお前を逃がさない
――そして、ボクは一人じゃない
引きはがせないとわかったら、ボクから潰しに来るだろう
完全にこちらに意識が向いたと判断したタイミングで
敢えて一度距離を離す
直接攻撃でなく、真空波を誘発するために
あとは――
知らず狼の牙の前に姿を晒したことを
後悔する暇があればいいね?
●獣と鳥は|極天《そら》を舞う
狂わされた殺戮機械の火線が、極天を焦がす。
本来なら不思議の国に降り注ぎ、超弩級の闘争のための贄とするはずだった九竜神火罩。
しかし、その機能は損なわれた――少なくとも今、この時点は。
他ならぬ猟兵の介入によって、あらゆるものを……つまり鉤爪の男をも焼き払う暴威と化した火の災厄は、ルヴトー・シフトマンとクラリス・クレストのふたりにとってあまりに見慣れた暴君だった。
「殲禍炎剣……」
呪われるべきその名を、クラリスが呟く。
「似てるけど、違うよクラリスさん」
ルヴトーはコクピットで狼の如く瞳を鋭くした。
「|あれ《・・》は、俺たちにとってもともと敵だが、今は味方でもある。
うまく利用すれば、あの男を堕とすために役立つはずだ。少なくとも今は」
「……うん、そうだね。チャンスだと思おう」
「それに」
ルヴトーが微笑んだのが、クラリスには声だけでわかった。
「クラリスさんの翼は、あんなものに灼かれたりしないだろう?」
「……もちろん!」
クラリスもまた笑っていることが、ルヴトーにはわかる。
ただし、敵に向ける|表情《かお》は、どちらも揃って戦士の貌だった。
己が用意した災禍に灼かれた鉤爪の男は、身体のあちこちを虫食いめいて抉られ灼かれながらも、亡霊の如き狂気を纏い渦をなした。
空を焼く火線よりも、なお茫洋とし恐るべき狂気のオーラ。それが生み出す速度は、クラリスの演算能力をもってしても追いがたいほどに――|迅《はや》い!
「死ね、猟兵! 闘争の贄となれッ!!」
「スピード勝負だっていうんだね。なら相手になるよ、このボクが!」
クラリスは即座に|最高速度《トップスピード》に到達し、鉤爪の男を翻弄した。
ブルーバードが持つ速度、クラリスの技量と演算能力、そして降り注ぐこの火。
それらを逆用し活用した合せ技でもって、一方的であるはずの鉤爪の男の攻撃を妨害し、逆にペースを掴む。
「ええい、邪魔をするな! それとも貴様から堕とされたいかッ!?」
「やってみろ」
クラリスは愛する|少年《ひと》を真似て、凄んだ。
「ボクらを落とせるなら、やってみろ!」
「嘗めた口を……!」
「こっちの台詞だ、鉤爪の男」
クラリスは強烈な加速Gに耐えながら、言葉を続けた。
「ボクたちの闘争は、ボクたちの世界で終わらせるべきだ……!
平和だった場所まで戦火を拡げることを、許すわけにはいかないんだ!」
「ならばその戦火に灼かれ、消えろ!」
鉤爪の男は激昂し、己をひとつの刃と化してクラリスを襲った!
その瞬間、奴は巨大な狼の顎で砕かれる己を幻視した。
「なん」
背後を振り仰ぐ――幻視が消え、ルヴトーの機体が現れる。
反射的に放たれた真空波を――天狼は、たしかに『掴んで』いた。
「テメェは弱い」
ルヴトーが言った。
「所詮闘争の中でしか生きられず、護るものも帰る場所も、後ろに何もない」
掴み取ったそれを牙となし、ルヴトーは――返礼する!
「だから弱いんだよ、テメェは。どこまでも!!」
踏み越えざる一線を超えた外道に、怒りの爪牙が襲いかかった。
己の害意を返された鉤爪は、愕然のまま身体を切り裂かれる……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミスト・ペルメオス
・SPD
なるほど。──言葉は不要か。
辿り着いた戦場。待ち構える鉤爪の男。
あとはやる事をやる、それだけだ。
引き続き愛機を駆って、敵に挑む。
装備を介して念動力を活用。機体をフルコントロール。
出力最大。念動力も最大限に解放……。出し惜しみは無しだ、全力を叩き込んで仕留める。
スラスター出力最大! エネルギーアサルトライフル、ヘルファイア・デバイス、セット!
──行くぞ、ブラックバードッ!
【“黒い鳥”】が飛ぶ。狂熱の人機を撃ち落とすべく!
負荷限界ギリギリのところを耐えながらの超高速戦闘。
灼熱の光弾を雨霰と撃ちかけ、一方で反撃を回避機動で躱し、バリアで逸らし、凌いで。
徐々に動きを見切り、捉えて……撃ち砕く!
●黒き鳥、極天を貫く
炎が降り注ぐ。敵も味方もお構いなく、闘争の終わりという破滅を鉤爪の男にもたらすために。
「フハハ! ハハハハハッ!」
狂笑が木霊した。風を切り裂いて舞う鉤爪の男に対し、ミスト・ペルメオスはなんら声を漏らすことなく、笑うことも嘆くこともない。
言葉は不要。たどり着いた戦場において、決するべきは雌雄ただひとつ。
そのための|鎧《ツバサ》が己にはある。|"黒い鳥"《ブラックバード》の翼は、破滅の火降り注ぐ極天にありてなお自由!
事実、そのスピードは鉤爪の男を歓喜と驚愕で瞠目させた。
「よくぞそこまで練り上げたものだ、猟兵!!」
ミストは奥歯を噛み締め、限界ギリギリの負荷Gを耐える。ここまでの超高速戦闘に食い下がってくるあたり、奴が通常のオブリビオンマシンを遥かに超えているというのは事実らしい。
「……出力、最大……念動力、最大解放……!!」
ミストは血を吐くような声で言った。
ぐん! とさらに見えない重力の戒めが彼の身体を押しつぶそうとする。臓器が軋む骨と筋肉に圧迫され、口の端から血反吐が一筋溢れた。
「まだ私を愉しませてくれるのか! そうこなくてはなァ!」
「……違う……!!」
ミストは、降り注ぐ灼熱の光弾の中に飛び込んだ。狂気纏う鉤爪の男ですらたじろぐほどの、必滅の嵐の中を。
「何ッ!?」
言葉は不要。矢の如く迫るその姿こそが、万の言葉よりも雄弁にミストの意思を示した。
戦うのは、けして愉悦のためでも狂喜のためでもない。
あるべからざる破滅を防ぎ、望まれざる悲劇を叩き潰し、払うべき火の粉を払う。
黒き鳥は死を運ぶ。停滞した過去にあるべき死を、鉤爪の男は――恐怖に戦慄いた!
この、世界の――私たちの、邪魔を……するな。
苦し紛れの爪戟を躱し、逸らして叩き込まれた一撃が、鉤爪の男を吹き飛ばした。
オイル混じりの血が、灼熱の光弾に灼かれて蒸発する。駆け抜ける黒き鳥は色ある風となり、打ち据えられた鉤爪の男は、天地逆転したままそれを見送るしかなかった。
成功
🔵🔵🔴
メナオン・グレイダスト
・SPD
なるほど。ならばお前の望み通り、その|動力炉《しんぞう》を砕くとしよう。
辿り着いた戦場。相対する標的。
先の場所でざわついていた心も鎮め、意識を戦いに集中。
“|灰色砂塵《グレイダスト》”を最大限に活性化。【グレイダスト・オーバーロード】……
形成した荒れ狂う灰色砂塵の嵐を従え、鉤爪の男に挑む。
相手は埒外の強大さを秘めた存在。ただ一発の攻撃でも驚異だが……
身体を砕かれようと消し飛ばされようと、“灰色砂塵”の再構築により自己を修復。
何度でも。銃砲群や剣戟群を構築し、嵐の如き攻撃で絡め取って、|動力炉《しんぞう》を打ち砕かんとする。
倒しきられる前に、倒せばいい。我輩は”灰色の魔王”である……!
●しんぞう
灰色の魔王とは現象であり、概念であり、つまりは終焉そのものである。
あるいは、終わりさえ終わった後、何もかもが真っ平らになったあとの無尽の荒野。
鉤爪の男の求める闘争のあとに来るもの――あるいは横たわるもの。
メナオン・グレイダストとは、|それ《・・》そのものであり、また|それ《・・》をもたらすモノでもある。
ゆえに。
「バカな」
鉤爪の男の驚愕は、当然でありまた同時に不可思議でもあった。
超弩級の闘争を求めているならば、灰色砂塵の嵐を砕けるわけがないことは自明の理。
闘争はすべからく終わるべきものであり、停滞さえ死に絶える滅びの魔王を真に滅ぼすことは、残骸には叶わぬというのに。
「何故だ、何故! 身体を砕かれ、消し飛ばされ――何故、滅びぬ!?」
いや、だからこそというべきか。
生者ならざる鉤爪の男では、灰色の魔王の本質を真には理解できない。
奴は、愚かな夢想者でしかなかった。
何度打ち据えられようと再び|再構築し《立ち上がり》挑む魔王の姿が、それを雄弁に示していた。
「我輩は、"灰色の魔王"である」
メナオンは息ひとつ乱さず、顔色ひとつ変えずに言った。
ざわついていた心は凪いでいた。己のあとにもたらされる、生も死もなき灰色の凪いだ荒野のように。
そうあれかしと望まれ、そうあれかしと己を規定する魔王にとって、闘争とはある種の忘却であり救いとも言えた。
滅ぼす敵にすべての力を注ぐ。今はただそれだけでいい――些事に心乱す必要など、ない。そうすれば死ぬだけだ。
「お前はたしかに強大であろう」
腕を吹き飛ばされ、しかし魔王は止まらぬ。
「埒外の如きその力、ただ一撃とて脅威である」
顔を消し飛ばされ、しかし魔王は退かぬ。
「されど、我輩は"灰色の魔王"である」
切り刻まれた砲の群れを創造し、剣の軍を構築し、嵐の如き攻撃で応報する。
「此処が戦場であり、お前が相対する|標的《てき》ならば」
鉤爪がざくりと身体を抉った。止まらぬ――少なくとも表向きは。存在格を削られようとも。
「お前の望み通り、その|動力炉《しんぞう》を砕くまで……我輩は! 止まらぬ!!」
「うおおおッ!!」
烈風がメスのように灰色の魔王を切り裂く。人型のシルエットはばらばらになり、解け、そしてまた再構成された。
灰色の嵐が吹き荒れた。鉤爪の男が望んだはずの、闘争の嵐が。
貫かれ、灼かれ、引き裂かれる男のあげた声は――しかし笑声ではなく、断末魔めいた絶叫だった。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「昔から、何とかと煙は高い所が好きと言いますけど、オブリビオンに関しては自分に自信が無いとできないことですね。特に今回はですが。」「しかし、『獣人戦線』に向かうですか。余程『クロムキャバリア』に帰りたくない理由がありそうですね。」「相手が数を増やして攻めて来るのなら、こちらは戦場全体を範囲にして纏めて攻撃することにします。」
魔法の箒に跨って【空中戦】と【空中機動】の技能を使用します。
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【ホーリーランス】を【範囲攻撃】にして、『猟書家『鉤爪の男』』と戦場全体を纏めて巻き込めるようにして【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【第六感】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の猟兵の方との絡み等は、お任せします。
●青天の霹靂
混迷の空に刻まれる幾筋もの稲妻模様――その正体は、実のところ稲妻ではなかった。
ジグザグの幾何学模様は、火土金水・明が放つ無数の聖なる槍が描く軌跡だ。
「ただの|魔術師《ウィザード》が単独でこれほどの飽和攻撃を可能とするとは、さすがは超弩級の戦力……だがッ!」
鉤爪の男は全身に隠されたスラスターから未知の噴射剤を迸らせ、生身の人間には到底不可能な殺人的加速で聖槍の乱射を躱す。
振るわれた鉤爪の初速は音を超えていた。摩擦で灼けた大気が焦げたオゾンの匂いを放つ。喰らえば上半身がまるごと消し飛ぶであろう爪の一撃を、明は辛うじて回避。
「昔から、なんとかと煙は高いところが好きといいますが……!」
鉤爪の男は諦めない。さらに加速で明を追い、雨のように降り注ぐ聖槍を鉤爪で"かき分け"てまっすぐに近づいてくる。
「オブリビオンに関しては、自信がないと出来ないことですね!」
「もらったッ!」
今度こそ爪が届いた。愕然とした表情のまま、明は墜ちていく――いや、違う。これは残像か!
「後ろですよ」
「!」
新たな稲妻が生じた。明は片手を掲げたまま、箒の上で息を整える。
(「私の役目は、少しでもダメージを与えて次に繋げること……とはいえ」)
まだ敵は健在だ、手応えでわかる。明は魔法の衝突が生み出した爆炎を睨んだ。
(「本命のユーベルコードはこれから来るはず。気は抜けませんね」)
オウガ・フォーミュラの称号は伊達ではなかった。有効打を加えるだけでも骨が折れる状況……しかし、あちらのほうが追い詰められているのは一目瞭然だ。明は気力を振り絞った。
出し抜けに、爆炎が晴れた。煙の向こうには病んだ色合いの太陽――煙を貫いて飛来する奴隷縛りの鎖。侵略蔵書の力で召喚したアリス狩りのオウガによる奇襲だ!
「っ!」
明は即座に箒を加速、無慈悲なる鉄鎖を躱して鉤爪の男の居場所を探す。
「たとえオウガを何体増やそうと、こちらはこの戦場をまるごと攻撃するだけです。姿を現さないなら――!」
明が虚空を指でなぞると、無数の聖槍が出現した。それらは統率された軍隊のように一糸乱れぬ動きで矛を構える。
「悪しきものを貫きし槍よ……行きなさい!」
そして発射! 空に広がる青天の霹靂を思わせる大範囲攻撃!
「……ぐおッ!」
さしもの鉤爪の男も、これは避けきれない。アリス狩りのオウガに拘束させそこを攻撃するつもりだったのが裏目に出たようだ。
聖なる槍に身を貫かれ、傷口からオイルの血とスパークが漏れ出す。鞭めいて振るわれる鎖を躱しながら、太陽を背にして明は微笑んだ。
「あなたは獣人戦線に向かうことも、故郷であるクロムキャバリアに帰ることもありません。ここで、滅びるのですから」
鉤爪の男のこめかみを、人間臭い冷や汗が垂れ落ちた。
成功
🔵🔵🔴
ギージスレーヴ・メーベルナッハ
遂に見えること叶ったな、鉤爪の男よ!
さあ、今こそ闘争の時だ!
我ら黄昏大隊の総力を以て、貴様の生を燃やし尽くしてやろう!
黄昏大隊・蹂躙巨艦発動、艦よりの【砲撃】で敵を牽制、その間に兵を降下。
125名ずつを五隊に分けて展開、其々にライフルでの【制圧射撃】を行わせる。
加えて、敵が足を止めたと見たらロケットランチャーで攻撃するようにも指示。
オウガ出現時はこれへの対処を優先させる。
更に艦からも砲撃を継続させつつ、余自身もヤークト・ドラッヘに【騎乗】し、鉤爪の男と直接戦闘を行う。
オウガへの対処は兵に任せ、奴の鉤爪の間合いへ極力入らぬよう、加減速も交えた機動で間合いを外し、機銃の牽制射撃で接近阻害。
攻撃は、兵の射撃に加え搭載したミサイル(【誘導弾】)で追い込み、隙を見て電磁砲を撃ち込むとする。
義眼を介し戦場の状況は随時【情報収集】、適宜各部隊や艦へ指示を出し【集団戦術】を維持。
案ずるな、いずれ余も其方へ逝く。
ロスヴァイセの奴も待っていようからな、今度は奴も交えて新たな闘争を為そうではないか。
●天と地のはざまには
爆炎が花咲く。星よりも眩く、そして星よりも儚き死の徒花が満開する。
命を奪うために作られた兵器が生み出す、残酷な美しさ――それは、生存過程としてではなく目的として闘争を尊ぶ愚者どもの、魂の火花だ。
「ハッハッハ――ハハハ! ハハハハハッ!!」
哄笑はどちらのものだろうか。
ギージスレーヴ・メーベルナッハも、鉤爪の男も、揃って笑い嗤っていた。悪童のように、痴れ狂った道化のように。あるいは、子を奪われた母のように。
|たが《・・》の外れた気狂いどもの思考は、常人には理解出来ない。だから、その笑いに込められた感情は、ヒトの持ちうる語彙では正確に表現しようがなかった。
「|撃て《Feuer》! |目に映るものすべてを撃て《Töten Sie alle》!!」
砲撃、砲撃、砲撃。
無慈悲なる|神の審判者《GottRichter》が、天と地のはざまに君臨す。雪崩を打つ|降下猟兵連隊《FallschirmjägerRegiment》の第1~第5中隊が空中て展開・ライフル制圧射撃でヤークト・ドラッヘの進軍を援護する。弾丸の波濤が荒れ狂い、火線と稲妻の飛沫で死に損ないの亡者どもを洗い流す。悲鳴はなかった。断末魔もなかった。彼らは皆雄叫びを上げ、痴れ狂いながら再び死んでいった。
「遂に!!」
爛々とした隻眼ふたつがぶつかり合う。鉤爪と12.7x108mm弾が熱烈なキスを繰り返すたびに、女の金切り声めいて弾丸の断末魔が響き渡り鼓膜を苛んだ。
「遂に! 見えること叶ったな、鉤爪の男よ!」
「ハハハ――ハハハハハ」
鉤爪の男……すでに全身くまなく傷つき、スパークとオイルの血を流す瀕死のオブリビオンマシンは、銃声と爆音と怒声の坩堝で屈託なく嗤った。
「|ついに《・・・》? 私と貴様は常に、いつでも顔を合わせていたではないか」
「ハ! 余を貴様の写身とでもほざくか? 闘争に狂った殺戮機械よ!」
鏡合わせのようだった。生きるために闘うのではない、|闘うために生きる《・・・・・・・・》大馬鹿者。生物としての本能と理性が逆転した不良品。呼吸するだけで世界に死と硝煙を撒き散らす害悪。蹂躙に恋し、殲滅を愛し、殺戮に酩酊し苦痛に耽溺し嗜虐に焦がれる|きちがい《・・・・》ども。最早言葉さえ要らないように思えた。
だが。
「|否だ《Nein》、鉤爪の」
ギージスレーヴは言った。
「余と貴様は似て非なるモノ。余は勝利を以てこの血塗られた道を進み! 貴様は敗者という屍になるのだからなァ!!」
ロケットランチャーが飛来した。鉤爪の男はそちらを見もせず爪で一蹴し、ヤークト・ドラッヘに肉薄する。機関砲の洗礼がいのち通わぬ身体をスイスチーズめいて劈いた。
「やってみせろ。やってみせるがいい、猟兵ァ!!」
背後からアリス縛りの鎖が来る!
「ああ、やるとも! 貴様への手向けだ! 葬送の|戦争交響曲《Kampfsinfonie》に酔いしれるがいい!!」
砲撃、砲撃、砲撃――ミサイル着弾。電磁砲掃射。爆音、砲声、歓喜の叫び。断末魔はない。亡者は誰も彼もが歓び、あるいは怒り、あるいは単に叫んだ。指揮者も演者も皆狂っていた。敵も味方も、右も左も上も下も勝者も敗者も笑い嗤いながら死んでいく。だからこれは|悲劇《セリア》ではなく|喜劇《シュピールオーパー》だった。
「噫」
弾丸に穿たれ、砲火に灼かれ、爆音に苛まれながら、鉤爪の男は世界を見た。
天に神火、地に燎原。そして天地のはざまには、闘争という狂気。
右腕は太陽めがけて舞い上がり、徹甲弾でバラバラに粉砕される。
左足は地へと落ちゆき、ロケット弾で跡形もなく消し飛んだ。
「此れだ」
大脳皮質が眼部センサー諸共に焼滅した。
「此れが。此処こそが、私の――」
下顎が抉れる。電磁砲の熱が神経系を焼き切る。闘争が殺戮機械を無に帰する。鉤爪の男は闘争という渦に呑まれ|そのもの《・・・・》へと融けていく。超弩級の|それ《・・》に。
「案ずるな」
優しい声がした。
「いずれ余も其方へ逝く」
いつか、|機械乙女《ワルキューレ》にかけたような声音だった。
ロスヴァイセよ、待たせたな。私はもうすぐ|逝《つ》くぞ。そしてこの女も、すぐに。
「次があるならば、奴も交えて新たな闘争を為そうではないか」
睦み合う恋人にかけるように甘やかで、積年の怨敵に告げるように煮え立つ末期の言葉。
「|御然らば《Lebewohl》だ、我が鏡像にして同類よ」
悲しみがある。こんなところで闘争が終わってしまうという悲嘆。だが寂しくはない。
どうしようもない己の同類が、まだ生き足掻く。死に損なって這いずり回る。いい気味であり心地よい。ゆえに別れの言葉は、笑って|然《さ》らばと。
鉤爪の男と呼ばれるモノを構成した全ては、吹き飛び砕け燃えて消えた。
あとには硝煙と、屍と、鉄屑だけ。ありふれた、終わることなき闘争の跡形。
立ち込める静寂の名は惜別か、哀悼か。あるいは先に|一抜け《くたばっ》た、羨ましい勝ち逃げ野郎への嫉妬か。佇む愚者の相貌は、最後まで定かならなかった。
大成功
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