プラネットワルツに星は咲う
青い薔薇。
それはかつて、不可能の象徴であった。
今は、奇跡の象徴。
ここ、ロサーリオ群星連合王国は、とある青薔薇を国の名産品としていた。
プラネットワルツ。
連合王国内、つまり王国を構成する星々でしか咲かず、青藍色の花弁には星空のように煌めく白い斑点が幾つも浮かぶ希少な花だ。なお、斑点が花全体にバランス良く広がっているものほど評価が高いとされる。
生産・生育の主たる薔薇園は連合の中心となる王国である恒星に存在し、訪れる者に感動と安らぎを与えている。
この日、とある少女が薔薇園を訪れた。
彼女もまた、プラネットワルツの輝きと美しさにその心を打たれ、心ゆくまで堪能し、満たされた気持ちで王国を去る。
――筈だった。
●
「本人も、自身の意思が歪められていることなど本意ではないだろう。こうなった以上は猟兵の手で慈悲を与えるしかない」
園守・風月(薔薇花園の守人・f37224)はとある少女の悲劇、そしてこれから起きる悲劇について語る。
その少女――の形をしたものは本来、テラフォーミングのために未開の惑星に降り立つ筈の人工精霊だった。
気質は穏和そのもの。心優しく植物を愛し、能力もまた星の土壌を改善、植物が自生出来る環境を作る。そういった役割を担っていた。
だが、オブリビオン化し、今回の個体は特に、己の在り方を歪めてしまった。
降り立ったのは花の咲き乱れるロサーリオ群星連合王国。かの地で少女に出来ることはない筈だった。
そこで少女は、青薔薇プラネットワルツと出会う。プラネットワルツに魅了された彼女は、これから向かう星々にもその花を咲かせるためにとサンプル採取を開始。結果として、花園を荒らしてしまうのだ。
「本来の彼女であれば、如何に美しい花と出会ったとて、そのような行為に及びはしなかっただろう。寧ろ、そういった現場を目の当たりにすれば心を痛める気性の筈だ。嘗ての彼女の名誉のためにも、皆に討伐を頼みたい」
如何にも実直で殊勝な青年らしく、風月はそう告げる。
「とは言え、彼女……『テラ』の戦闘力はそう高くない。攻撃能力はないこともないが、本来は敵の戦意を下げて交戦を避ける方が得手であるようだ。難しい話ではないと思う」
やり難さは、あるかも知れないけれど。
世界のためと割り切って欲しいと、風月は言う。
「代わりと言っては何だが、任務が終わったら『花祭り』を楽しんでくるといい」
ロサーリオの花祭り。
連合の中心である王国が国を挙げて行うそれは、文字通りの華やかなもの。
王国中が花で飾られ、人々は花を纏って踊り、並ぶ出店で飲食や小物作りを楽しむ。
それは一月の間続き、観光客――猟兵たちも参加出来ると言う。
「……ああ、それと問題の薔薇園は一般開放された王城の庭でもあってな。城内は城内で、祭の間は民にも一部開かれているそうだ。加えてオブリビオンを討伐した功績があれば、貴族向けの宴の中にも入れるだろう」
詳しい話は任務終了後に聞いておく、とのこと。
ともあれ、オブリビオンによる事件の解決は、猟兵にしか出来ないこと。
頼んだぞ、と風月は一言添えて、|四輪の薔薇《グリモア》を掲げるのだった。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあです。
完全にお遊びに比重を割いたシナ自体久々すぎてはわってる。
流れと詳細は以下の通りになります。
第1章:ボス戦『テラフォーミング・エレメンツ『テラ』』
第2章:日常『惑星都市の夜の祭』
第3章:日常『祝宴』
第1章にてオブリビオン討伐。
第2章で戦闘後の夜のお祭りに繰り出し、夜が明けた第3章で庭師の計らいにより王城の宴にも入れるようになります。
各章、詳細は断章にて公開いたします。
グループ参加は【3名様まで】とさせていただきます。
また今回、第3章のみ拙宅グリモア猟兵もお声がけいただければご一緒させていただきます(こちらは人数制限に含みません)
マスターページに各グリモア猟兵を表すアイコンを記載しますので、ご入用であれば参考にどうぞ。
勿論、呼び出しのないところに勝手に乱入することはございませんのでご安心ください。
☆ロサーリオ群星連合王国について☆
ひとつの恒星とそれを取り巻く小さな惑星群で構成された王国。
中心となる王国は恒星に存在しているが、あくまで『連合』王国のため、惑星に存在する各国家もそれぞれ異なる国に独自に統治されている。
薔薇を始め『青い花』の産地ならぬ産星系として有名。
第1章開始前に、断章を執筆予定です。
前述の通り各章での追加情報も断章での描写という形で公開させていただきます。
断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『テラフォーミング・エレメンツ『テラ』』
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POW : アストロジカル・ジオメトリクス
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【星の生まれる星屑の素】で包囲攻撃する。
SPD : トーキング・ハーバリウム
対象に【希望する植物】を生やし、自身とのテレパシー会話を可能にする。対象に【任意的に解ける、友好的な気持ち】の状態異常を与える事も可能。
WIZ : ボタニカル・プラネット
レベルm半径内を【植物の生い茂る豊かな生存圏】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【植物を愛し、活かす技能やUC】が強化され、【それ以外】が弱体化される。
イラスト:笹生
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「マシュマローネ・アラモード」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
トパーズの煌めき宿した少女は、優しげな笑顔。
無垢で無邪気で――そう、悪意なく。
「お、おい、あんた……!!」
庭師が止めるのも気にせず、謎の機材で|青薔薇《プラネットワルツ》を根ごと引き抜いていた。
取り分け、より瑞々しく美しい株を選んで回収しているようであり、その分だけ付近の残された薔薇たちが痛々しい。
庭師たちもただ遠巻きに咎めるばかりでなく、身体を張って阻止しようとも試みたようだが、星屑のようなものが少女の周囲を守るように浮かんでいるので、迂闊に手が出せないようだ。
これが、プラネットワルツの辿る未来――但しこれは、あくまでも猟兵の介入しない物語。
猟兵たちが急ぎ駆けつければ、少女『テラ』が薔薇に手を出す前に戦闘を開始出来るだろう。
そうなれば彼女は、猟兵たちこそをこの薔薇園を荒らす存在と誤認し、抗ってくるだろう。
矛盾していると指摘したところで仕方がない。最早彼女は、その在り方を歪められてしまっている。
これ以上の歪みを、嘗ての彼女も望みはすまい。終わらせるのだ――花のためにも、少女のためにも。
カーバンクル・スカルン
星屑が周囲に漂う前に花壇に踏み入ろうとしている精霊をボディ・サスペンションで捕縛。そしてそのまま力任せに引き寄せる。
「花壇には立入禁止」の立て看板が読めねぇのかあんたは。自分が何をしでかそうとしているのか理解できないなら、理解できる範囲で最悪の未来を見せてやる。
【心慌意乱】を発動、精霊に見せるのは自分の行いによって美しかった花畑が荒れ果て、その世話をする庭師が死に絶え、荒野に一人佇む自分の姿。
これを見せるのは植物を愛し、それが枯れる未来を避けるため。本来の意図通りに機構が動くならば、弱体化対象には入らないはずだ!
●
「?」
――突如。
薔薇園に踏み入ろうとしていたテラの身体が、鎖に絡め取られて花から引き剥がされた。
「そこは立入禁止だ。そんなことも解らねぇのかあんたは」
力任せに鎖を引いて、テラの凶行を阻止したのはカーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)と、彼女の操るボディ・サスペンションであった。よく見るとテラの衣服の一部分にフックが引っ掛かり、そこを起点に彼女を拘束することに成功している。
それでも、テラは微笑みながら首を傾げるばかり。カーバンクルは溜息を吐くしかなかった。
「自分が何をしでかそうとしているのか理解できないみたいだな。なら、理解できる範囲で最悪の未来を見せてやる」
言葉でも、行動でも彼女を止められないと言うのなら。
彼女自身に身を以て、思い知って貰うまでだ!
「これはまだ序の口……と言いたいとこだけど。今回ばかりは最初からクライマックスだ!」
テラに巻きついた鎖から、不可視の幻影が噴出する。
だが、テラにだけは見えている筈だ。美しい花園が広がる光景が。
そうして心のままに花を摘み取っていたら、やがて花園は荒れ果て、花の世話をしていた庭師も次々倒れ、やがて一面の荒野が広がり――そこに己が、独り取り残される姿が。
「……?」
テラはやはり首を傾げるばかりだったが、悲しそうな表情をしていた。
狂ってしまっても、自身の行いが何を招くのか理解出来なくなっても、花を愛する心と、枯れ果てる花に痛める心は残っていると言うのか。ならば。
なおのこと、止めなければ。
「これを見せるのは植物を愛し、それが枯れる未来を避けるため。本来の意図通りに機構が動くならば、弱体化対象には入らないはずだ!」
そして事実、カーバンクルの言う通り、テラからユーベルコードが放たれた様子はない。
彼女の望まない、しかしその行いで起こり得た最悪の未来の幻影によって引き起こされた感情が、彼女のユーベルコードを確かに封じ込めたのだ。
「それを現実にしたくないなら、大人しくしてな」
彼女はもう、戻れない。如何に心を痛めても。
猟兵たちに出来るのは、終わらせることだけだ。
大成功
🔵🔵🔵
ニオ・リュードベリ
あたしもね、花は好き
薔薇は特に!
だからテラの気持ちも分かるけど……
オブリビオンである以上は止めないとね
花を傷つけること、彼女もきっと望んでないから
放つのは影薔薇のユーベルコード
本物の薔薇じゃなくてバロックだけど……
花を傷つけず、花の姿をしたものを生み出す技だから植物を愛している判定にならないかな
生み出した茨の蔓と薔薇の花弁の【呪詛】でテラに攻撃していくね
なるべく苦しめないようにはしたいな
眠るように終わらせたい
彼女も悪気があるわけではない
誰かを傷つけたいわけではない
……こういうオブリビオンを見ると辛くなっちゃうね
でも迷うほど状況は悪化してく
お伽の国で散々学んだことだから
躊躇なく最後まで戦い抜くよ
●
(「あたしもね、花は好き」)
ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)にも、テラと同じその思いがあった。
(「薔薇は特に! だからテラの気持ちも分かるけど……」)
だからこそ、嘗ての彼女を思えば何とも、やり切れない。
純粋に、花を愛していたオブリビオンではない彼女を。……いや、今でも花は愛しているのか。愛だけは残されたまま、その在り方を歪められてしまったのが今の彼女か。だとすれば。
(「花を傷つけること、彼女もきっと望んでないから」)
同じ花を愛する者として、止めたかった。
その想いは新たな薔薇園をここに生む。
(「本物の薔薇じゃなくてバロックだけど……」)
影薔薇が世界に咲き誇り、この世の春を謳歌する。
それでも、影は青薔薇を呑み込むことはしなかった。その荊棘で、決して傷つけることのないように。少しでも、花を、植物を愛する心が伝わればいいとニオが願う通りに。
「……?」
テラが首を傾げる。その表情は悲しげだ。
ここは今や植物の楽園。けれど影薔薇が萎れることはなく、蔓はその四肢に巻きついて、花弁が身体に触れる。そこから確かに、呪詛が滲み出ていた。
(「なるべく苦しめないようにはしたいな。眠るように終わらせることが出来れば……」)
解っている。
彼女も悪気があるわけではなく、ましてや誰かを傷つけたいわけではない。人にせよ、花にせよ。
(「……こういうオブリビオンを見ると辛くなっちゃうね」)
けれど、もうひとつ、解っていることがある。
迷えば迷うほど、状況は悪化していくのだと。
アリスは学んだ。それがお伽の国の掟であり法則だから、嫌になるほど散々に。
そしてそれは、お伽話の外の世界でも同じこと。
だってお伽話は幻想的なだけじゃない。残酷なだけでもない。
それらは全て、教訓なのだから。
(「だからね、躊躇なく最後まで戦い抜くよ」)
それが、骸の海に排出される前の、花や植物を愛し慈しんだ、嘗ての彼女の心を汲むことになると信じて。
「……っ」
「もう少しだからね」
だからテラ、どうか待っていて。
あなたから生まれた、あなたの望まぬこの歪みは、全て影薔薇が呑み込んで、お伽の国へ連れて行く。
大成功
🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
望まずして花盗人になってしまったのか…
脳裏をよぎる『あのひと』への想いはそっとしまって。今は在り方を歪められたあの精霊を止めないとな。
君は本来は争いを好まない性質なんだろう?わたしも争いは好きじゃないんだ。青薔薇を盗んでしまう前にわたしの歌で送ってあげよう。
『奇跡』『夢叶う』の花言葉を持つ青薔薇の歌に乗せてサウンドノーツ発動。あまり痛くないように声量で威力は調整。
希望する植物を生やしてもらえるなら紫陽花がいいな。テレパシーで話すこともできるだろうか…説得で止められればいいのに。
『別の星にもこの薔薇を咲かせられたら、って思うよな。でも花園が荒らされるのは悲しい…花の美しさは心に残すものなんだ』
●
美しい花を手折って、己のものに。
その在り方に、ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)は覚えがあった。
(「望まずして花盗人になってしまったのか……」)
脳裏にふと、桜朧に消えた『あのひと』の姿が、声が、言葉がよぎる。
けれど今は、その想いはそっと胸にしまって。
(「今は在り方を歪められたあの精霊を止めないとな」)
ジゼルは青薔薇の前に立ちはだかる。テラがこてりと首を傾げた。そこに悪意は感じられない。
だから、悪意なく花を、花を愛でる人々を傷つけてしまわない内に。
「君は本来は争いを好まない性質なんだろう? わたしも同じだ、わたしも争いは好きじゃないんだ」
だから歌おう。争いを止める歌を。
「青薔薇を盗んでしまう前に、わたしの歌で送ってあげよう」
青薔薇の花言葉は、嘗ては『不可能』。
けれど不可能が可能になった今は『奇跡』、そして『夢叶う』。
花言葉を歌に乗せて送ろう。嘗て少女が見た夢を、少しでも思い出して貰えればと祈りながら。
未開の星々を、美しく住みやすい、緑溢れる場所にしたいと、そう願っていた筈の、彼女の夢を。
痛みを与えて倒したいとは思わない。だからこそ声量は抑えて、テラからのユーベルコードも甘んじて受け入れた。
出来れば、言葉を交わしてみたかった。それで少しでも、彼女の心に働きかけることが出来ればと。
(「叶うなら……説得で止められればよかったのに」)
悪意がなければ何をしてもいい、なんてジゼルも思っていない。思っていれば、そもそもここに来ていない。
けれど、寧ろ悪意がないのなら、教え諭し、そして導くという手段が、許されたってよかった筈だった。
淡い色の紫陽花をその身に纏うように咲かせながら、ジゼルは目を伏せた。ああ、過去とはこんなにも、儘ならない。
『……ドウシテ?』
鈴の転がるような声が、ジゼルの脳裏に届いた。
邪魔をするのか、という意味だろうか。或いはもう、自分でも自分が、解らないのか。
どちらでも悲しいと、ジゼルは思いながら。それでも、思うことを伝える。
『別の星にもこの薔薇を咲かせられたら、って思うよな。でも花園が荒らされるのは悲しい……花の美しさは心に残すものなんだ』
それをどうか、思い出して欲しいと願えば。
テラの動きが、少し鈍った気がした。
大成功
🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
…あの花が咲く原理は何だろう
やはり魔術的な?しかし髪の花、周りの花、纏っている花の種類が総じて違うが色だけは全て白い
だが青薔薇を狙う…やはり“綺麗”だからか
単純だが純粋だな
心音、分っているとは思うがただ“好きであること”と“好きだから”手を出すことは違う
だが奴も薔薇も心音が掬いたいと願うのならば
俺は何も惜しまないとも
―綺麗が好きか?ならもっと―…というと薔薇に申し訳ないが、まぁ美しい花を見せてやろうUC
薔薇には心音の守りがある分月下美人の群れは奴の力でより美しく咲き誇れる
これは今一時お前のための花になる
…散らすなよ、“ルール違反”だ
心音、おいで。大丈夫、あいつの世界は美しいままだとも
楊・暁
【朱雨】
ふふ…やっぱ気になってるな、藍夜
いつもの様子につい笑みも毀れちまうけど
綺麗なもんを広めたい、残したいって気持ちは分かるからこそ
なんだかやるせねぇな…
ただ花が好きだっただけなのに…
…分かってる
でも…最期にはあいつの望んでたもん、見せてやりてぇ
念のため薔薇群にはオーラ防御かけてから
藍夜の傘の裡でUC
どの花も散らさねぇように、敵の周囲にだけ
弱体化するかどうかは分かんねぇし、どっちでもいい
せめて好きな景色の中で逝かせてぇんだ
命の終わりを迎えられるまで、何度だって吹雪かせてやる
戦闘後、青薔薇が無事なら安堵
良かった…あいつの残したかったもん、残せて
…あいつ、最期はちょっとでも幸せだったならいいな…
●
御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)はテラの姿を認めると、彼女の纏う花々に深い興味を示した。
「……あの花が咲く原理は何だろう。やはり魔術的な? しかし髪の花、周りの花、纏っている花の種類が総じて違うが色だけは全て白い。だが……」
平素人前で振る舞っている藍夜の姿しか知らぬ者から見れば、目を丸くされそうな考察モードだが。
楊・暁(うたかたの花・f36185)は穏やかな微笑みさえ毀しつつ、その姿を見守っていた。
(「ふふ……やっぱ気になってるな、藍夜」)
暁にとってはこれもまたいつもの様子で、彼にとってよく知る藍夜の一面でしかないのだ。何も変わったことはない。
互いの心を預ける時間を、想い確かめ合ったあの日からずっと、過ごしてきたからこそ、そう思える。
だが今は、目の前の少女だ。
彼女は、悪意なくとも日常を蝕むもの。人々の心癒す花を、望まずして傷つける存在。
「狙うのは青薔薇。そこに色は関係ない……? とすればやはり“綺麗”だからか。単純だが純粋だな」
「ああ。綺麗なもんを広めたい、残したいって気持ちは分かるからこそ……」
暁は藍夜の隣へと歩を進めるが、そこで僅か、目を伏せてしまう。
「なんだかやるせねぇな……ただ花が好きだっただけなのに……」
過去とは、こうも歪められてしまうものなのか。何かを愛した、その在り方さえも。
「心音、分っているとは思うがただ“好きであること”と“好きだから”手を出すことは違う」
藍夜はそんな暁の様子に気づき、己しか知らぬ彼の名を呼び、そっとその背に傘持たぬ手で触れる。諭しながらも彼を見つめるその眼差しは、安らぎ与える夜のように優しい。
「……分かってる。でも……」
「だが」
好きだから、では許されないこともある。そんなことは、二人共分かり切っている。
それでも――いや、だからこそ、願うのは。
「奴も薔薇も心音が掬いたいと願うのならば、俺は何も惜しまないとも」
分かっていてなお、掬いたいと願う暁と。
彼のその心を掬い、その望みを叶えたいと希う藍夜。
二人共、心は決まっていた。
「うん。……最期にはあいつの望んでたもん、見せてやりてぇ」
暁の言葉に、分かった、と。
確かめるように頷き、藍夜は世界へと手を翳す。
「――綺麗が好きか?ならもっと――……」
言いかけて、ふと。
この言い方は薔薇に申し訳ないか、と一瞬思い至った藍夜だが……まあ、その薔薇を守るためだ。ここは容赦して貰おう。そう思い直して。
「美しい花を見せてやろう」
青薔薇に負けず劣らず、美しい花。
月の光を受けて青く透き通る、可惜夜の花――万斛の月下美人が、世界へと広がった。
暁は藍夜の傘の裡。花を荒らすことなくそこに在り続け。
(「薔薇には防御かけておいたし。後は――」)
煌々と輝く望月は隠さずに。咲き誇る花々は散らさずに。
少女の周囲へと、汚れなき白を齎して。
「……」
テラはその身を引こうとするが、足元には月来香。
躊躇いが生まれ、動きが止まる。
「これは今一時お前のための花になる。……散らすなよ、“ルール違反”だ」
今宵限り、花散らすなかれ。
たったひとつ、それを守れば花々は彼女自身の力でより美しく咲き誇る。今は姿見えぬ薔薇は、愛する者が守ってくれている。何に気兼ねすることもない。
そんな藍夜への信頼は、決して揺らがない。だから暁が今、懸念するのは。
(「弱体化するかどうかは分かんねぇし、どっちでもいい。ただ……」)
吹雪は望む幻を見せ続ける。
彼女が望む世界は、果たしてそこに見えているだろうか。
(「せめて好きな景色の中で逝かせてぇんだ」)
在り方を歪められても、花を愛する気持ちだけは変わらなかった。
それはきっと、その想いが強かったからだ。その想いが、報いだからと満たされないまま終わるのは、余りにも。
「だから、何度だって吹雪かせてやる。何度だって、お前の焦がれたもの――見せてやるよ」
命の終わりを迎えられるまで。
望まぬ己を脱ぎ捨てて、永い安らぎに身を委ねられるまで。
●
可惜夜が明けた時、そこに少女の姿はなく。
穏やかな風にそよぐは月の花ではなく、銀河の花。
「良かった……あいつの残したかったもん、残せて」
安堵の溜息と共に胸を撫で下ろす暁を、藍夜は手招いて。
「心音、おいで」
黒狐は再び黒傘の中。
「……あいつ、最期はちょっとでも幸せだったならいいな……」
愛する者の言葉に、藍夜は迷いなく告げる。
「大丈夫、あいつの世界は美しいままだとも」
観察続けた藍夜は確かに、その目で見たのだから。
消えゆく刹那、少女の|黄玉《つき》の双眸が、柔らかく細められたのを――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『惑星都市の夜の祭』
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POW : 賑やかな屋台で異星の食を楽しむ
SPD : 街灯に照らされた夜市の街を行く
WIZ : ライトアップされた宮殿を歩く
イラスト:ももんにょ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
庭師たちに感謝された猟兵たちは、花祭りの会場へと案内された。と言っても、王国を挙げての祭りであるから、城下街に戻ればすぐなのだが。
夜を迎えた天に月はなく、星だけが闇を青く照らしている。
その光を阻まぬよう、家屋の灯りは最低限。頼りになるのは祭りの間、青く淡く輝く街灯のみ。
青く照らされた城下街で、家屋は屋根や窓辺にプラネットワルツが飾られ、煌めきながら咲き誇っている。
住人も観光客もその別なく花を纏う。ある者は花冠、ある者は花飾り、ある者は胸元にブートニアやコサージュ……と、銀河の花弁で彩られ。
屋台や出店からは、どこかしこからも花の香りがした。甘く上品でありながら、爽やかでもあるそれは、かと言って主張が強くなく、どこまでも快い。
店先を見て回ると、色々なものを見つけられた。
フラワーショップ『フロレアル』。
青薔薇をメインにした花束や鉢植え、プリザーブドフラワーなどは勿論、薔薇モチーフの園芸用品も売られているようだ。デザインもアンティーク調からモダンなもの、ちょっと個性的な近未来系のものまで様々だ。
お気に入りが、きっと見つかるだろう。
クラフトショップ『エトワール・ララ』。
どうやら画材店と手芸店を兼ねているようで、プラネットワルツから色を抽出した絵具や、染料を取り扱っている。
また、店内ではそれぞれ絵付と染物の体験が出来るようで、前者は小皿、後者は香袋を使って楽しむことが出来る。小皿の絵は勿論だが、香袋にも蝋を使って模様を描くことも可能だ。
奇跡の青色で、あなただけの彩りを。
雑貨屋『花色結び』。
特に目を引くのは、こちらもプラネットワルツから色を抽出したらしい、薔薇のインク。そしてインクとセットで販売されている万年筆に、ガラスペン。
プラネットワルツの花弁と芳香を秘めた、ボタニカルアロマキャンドル。こちらはキャンドルにも淡く色が着いており、白や青以外にも黄色や緑、紫などが揃っている。
そして珍しいのは、ガラスの中に水とプラネットワルツの花弁が浮かぶ水守り。球体もあるが、二個を重ね合わせるとハート型になる、恋人用のものも用意されているようだ。
眺めるだけでも、きっと楽しい。
また、大通りに並ぶ各種屋台には、プラネットワルツを使った料理やドリンク、スイーツが並んでいる。
星空散らしたフラワーサラダ。銀河を泳ぐ宇宙サーモンのカルパッチョ。星月夜ジャムのスペアリブ。ガレットは王道ベーコンチーズに瞬く星を添えて。
銀河がミルクに溶けるブルー・ミルキーウェイ・ラテ。砂糖漬けのプラネットワルツを浮かべた銀河ソーダ。そして星空そのまま飲み干すための青鮮やかなプラネット・ティーはホットでもアイスでも。
花弁で彩るフラワーマカロン。花をそのまま閉じ込めたゼリーとブルーベリーのムース。蜂蜜漬けをとろり垂らした薔薇のアイスクリームはカップでもコーンでも。銀河を敷き詰めた星空ケーキはチーズとショコラの二種類を。
広場近くのオープンカフェスペースで、ゆっくり堪能するもよし。
食べ歩きだって祭りの間は許される。落とさないように気をつけて!
そしてその広場だが、明るく華やかな音楽が常に流れていて。
花冠や花飾りを着けた人々が、ダンスに興じているようだ。
いつでも誰でも参加は歓迎。ソロでもペアでも、どんな踊りでも受け入れられる。
気の向くままに踊り明かすのも、また一興。
夜は長く、星も花も咲っている。
さあ、何をして遊ぼうか?
カーバンクル・スカルン
ちょっとばかし腹ごしらえをしてからお店を回るとしますかねー。色々出店があるみたいだしね?
片っ端から美味しそうな物テイクアウトして、飲食スペースでのんびりマイペースに堪能するといたしましょう。
ん? お兄さんナンパのおつもりで? 違うー? ああ、さっきの一件のお礼に常連にしか出さない一杯奢らせてくれって? それじゃあお言葉に甘えていただいちゃおうかな?
アルコールを嗜みつつ、花冠や花飾りを着けた人々がダンスに興じているのを眺めましょう。
●
カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)の足は、広場近くの大通りへと向いていた。
(「ちょっとばかし腹ごしらえをしてからお店を回るとしますかねー。色々出店があるみたいだしね?」)
出店のメニューを柘榴石の双眸で眺めて、美味しそうなものに目星をつけて。
お目当てが決まったら、片っ端からテイクアウト。ガレットにカルパッチョにスペアリブ、ムースにマカロン、チーズケーキ。飲み物は悩んで一旦、プラネット・ティーをアイスで。
他のものも気になったら、後でまた買いに行けばいい。夜はまだまだ長いのだから。
(「さ、飲食スペースでのんびりマイペースに堪能するといたしましょう」)
テーブルにずらり、銀河が並ぶ。
これだけ広がる宇宙、全て食べ切れるのかって? 余裕だ。一品ずつのボリュームが、一部除いてそう多くないということもあるが、元よりカーバンクルは、食べることは大好きなのだから。
さて、早速いただきますをして、まずはお茶を啜っていると。
「あの……」
「ん?」
声を掛けられ、顔を向ければ年若い男性がそこにいた。何となく見覚えがあるような気がするが……思い出せない。
「お兄さんナンパのおつもりで?」
「あ、いえ、そんなつもりでは……!」
わたっと慌て始める青年に、カーバンクルは思わず笑みを漏らすが。
「僕、王宮の庭師です。さっきはその、ありがとうございました」
「ああ、そう言えばさっき見たような」
庭師の言葉に、確かに遠巻きに見守る庭師たちの中で見た顔だなと、手を叩いた。
「お礼と言ってはなんですけど、一杯奢らせてください。知る人にしか出さない裏メニューがあるんです。常連なら誰でも知ってるんですけどね」
そんなものがあるのか、とカーバンクルは一瞬目を丸くしたが、すぐにまた気さくな笑みを浮かべて。
「へえ、それじゃあお言葉に甘えていただいちゃおうかな?」
すると庭師から渡されたのは、銀河を閉じ込めたようなカクテル。
ブルームーンと似ているが、香りは菫ではなく薔薇のそれで、星のような白い粒のような光が揺蕩い、甘さを抑えた蜂蜜漬けのプラネットワルツの花弁が浮かぶ。
口に含めば柔らかな酒精と薔薇の香りがふわり広がる。カーバンクルはそんな酩酊感を楽しみながら、花冠や花飾りを着けた人々が、青の舞台と化した広場でダンスに興じている光景を眺めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ニオ・リュードベリ
先輩(f08050)呼んで一緒に行くよ
お祭りも花も無事に守れて一安心!
先輩もお花好きだし、この星気に入ってくれるといいんだけど……
あ、先輩!アイス!アイス売ってるところある!
まずはアイス食べに行こう!
他にも色々売ってるみたいだし、どれも気になるー
先輩と並んで屋台を巡ろう
あたしは薔薇のアイスにしよっと
えへへ、薔薇とアイス……好きなものと好きなものが一緒で幸せ
他の食べものも気になるなぁ
え、先輩分けてくれるの?
ありがとー!
あたしのアイスも一口どうぞ!
プラネットワルツ、本当に綺麗だね
せっかくだからプリザーブドフラワーも買おうよ
お部屋に飾ったら絶対可愛いもん
えへへ、先輩とおそろいだー
大事にしようっと
茜谷・ひびき
ニオ(f19590)に呼ばれて同行
宇宙に呼び出されるって地味に凄いな
仕事、お疲れ様だ
確かにすごく良い星だな
咲き誇る薔薇を見るだけでも満足出来そう
それじゃあゆっくり観光でも、って
真っ先にアイスに食いつくな……
でも確かに、色々あって美味そうだ
俺は宇宙サーモンのカルパッチョにしようかな
宇宙サーモンだぜ、絶対美味いだろ
銀河ソーダもきらきらで綺麗だ
……ニオ、サーモン食うか?
一切れどうぞ、美味いぞ
アイスもありがとな、良い甘みだ
今でこそ当たり前になったけど、青い薔薇ってやっぱり凄いし綺麗だ
プリザーブドフラワー?確かに良いな
部屋に飾るのも……うん、きっと良い
満足げなニオにつられて俺もちょっと笑ってる、気がする
●
茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は後輩に呼び出され、ロサーリオへ――スペースオペラワールドへ。
(「考えてみれば宇宙に呼び出されるって地味に凄いな」)
|字面の破壊力《パワーワード》である。
一方、彼を呼び出した後輩たるニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は達成感に満ちた表情。
先輩の姿を見つけると、ニコニコ笑顔で手を振って。
「仕事、お疲れ様だ」
「うん! お祭りも花も無事に守れて一安心!」
街を見渡せば、そこかしこでプラネットワルツが夜に輝くように咲き誇っている。
「先輩もお花好きだし、この星気に入ってくれるといいんだけど……」
「確かにすごく良い星だな。咲き誇る薔薇を見るだけでも満足出来そう」
ひびきの言葉に、ニオの頬が安堵で緩む。
折角、彼が好きそうだと思って誘ったのだ。楽しんで貰いたい。
「それじゃあゆっくり観光でも……」
「あ、先輩! アイス! アイス売ってるところある!」
しかしアイスの誘惑に勝てなかったニオである。
「まずはアイス食べに行こう!」
「真っ先にアイスに食いつくな……でも確かに、色々あって美味そうだ」
「ね! 他にも色々売ってるみたいだし、どれも気になるー」
と言うわけで、まずは屋台巡りから!
気になったものをそれぞれ買って、カフェスペースへ向かおうと。
「あたしは薔薇のアイスにしよっと。えへへ、薔薇とアイス……好きなものと好きなものが一緒で幸せ」
本当に、言葉通りに幸せそうに笑うニオの姿を微笑ましく思いつつ。
「俺は宇宙サーモンのカルパッチョにしようかな。宇宙サーモンだぜ、絶対美味いだろ」
ひびきも注文確定。
サーモンは美味しい。しかも冠に宇宙と来た。美味しくないわけがない。
「銀河ソーダもきらきらで綺麗だ」
「わ、本当! 他の食べものも気になるなぁ」
でも、一先ずはこれで席に着いて。
いただきますとふたり、食べ始めればそれぞれに、自分のチョイスは当たりだったと、確信を得る。
アイスはそれ自体の甘さは控えめで、その分口の中にふわりと甘い薔薇の香りが程よく広がる。その分、蜂蜜漬けの花弁が濃厚だが、思いの外くどくなく後味は爽やかだ。
カルパッチョもまた、サーモンの味と旨味がしっかりと口の中で存在を主張し、それでいてしつこくない。野菜やドレッシングも、それぞれの持ち味を出しつつもサーモンの味を絶妙に引き立てている。
「……ニオ、サーモン食うか?」
「え、先輩分けてくれるの?」
ニオは色々と試してみたそうにしていたし、何だか自分一人で味わうのも、勿体ない気がして。
ひびきは予備のフォークと、未使用のスプーンで小皿にカルパッチョを取り分けて。
「一切れどうぞ、美味いぞ」
ニオへと差し出せば、彼女は嬉しそうに、ぱっと笑って。
「ありがとー! あたしのアイスも一口どうぞ!」
これも予備のデザートスプーンを渡してくれる。
一口掬って食べれば、ひびきの口にも甘さと香りが広がった。
「ありがとな、良い甘みだ」
「よかった! それにしてもプラネットワルツ、本当に綺麗だね」
改めて家々や花壇、花纏う人々を見渡して、ニオは心からそう思う。
「ああ、今でこそ当たり前になったけど、青い薔薇ってやっぱり凄いし綺麗だ」
かつては、不可能とまで言われたその彩の美しさ。
だとしても、人々が焦がれ追い求めた、その気持ちが、こうして見るとよく解る。
「そうだ先輩、せっかくだからプリザーブドフラワーも買おうよ」
「プリザーブドフラワー?」
うん、とニオは頷いて。
屋台巡りの直前に、よさそうな花屋を見つけたのだと。確か名前は『フロレアル』と言ったか。
「確かに良いな」
「だよね、お部屋に飾ったら絶対可愛いもん」
「そうだな。部屋に飾るのも……うん、きっと良い」
じゃあ、これ食べ終わったら買いに行こうか、と。
そう、ふたりで決めれば、ニオはより笑みを満足げに深めて。
「えへへ、先輩とおそろいだー。大事にしようっと」
ニオのそんな、まさに花綻ぶというような、幸せそうな様子に釣られて。
ひびきも、自身の表情が微かにやわらぎ、ほんのちょっと――けれど確かに、笑っているような、そんな気がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
【星花海】
プラネットワルツの花を頭に飾って。
星が好きな八坂先生、薔薇が好きなミルナとお祭り楽しみたいと思ったんだ。
どこの世界でも、か。うん、他の世界でも色んな薔薇を見てみたいな。
さすが八坂先生、詳しいな。
…なんかミルナはいつもそんなこと言ってるな。
(あのひとを送った夜も、星が綺麗だったな…あのひともこの青い薔薇は好きだろうか。…って何を考えてるんだわたしは)
わ、わたしお腹が空いたな!何か食べよう!
ミルナはマカロン好きだもんな。
わたしは星空ケーキのショコラがいいな。きらきらして綺麗だ…
お酒って美味しいんだろうか、今は飲めないが…
でもノンアルのカクテルでも少しだけ大人になった気分になれる。
ミルナ・シャイン
【星花海】
プラネットワルツの花冠を頭に飾り。
ジゼルお誘いありがとうございますわ!この青い薔薇とっても綺麗ですわねぇ…星空みたいで。
どこの世界でも、美しい薔薇を愛でる気持ちは変わらないんですのね。
たしかに今夜は星がよく見えますわね、こんな素敵な夜に薔薇の花束を抱えた素敵な殿方とデートできたら…(うっとり)
あらジゼルったらいつも腹ペコさんですわね。
可愛い食べ物がいっぱい…!写真にとっておきたいくらいですわ。
わたくしはやっぱりマカロン!可愛いですわよね。
ラテと一緒に、オープンカフェスペースで夜の女子会!
ジゼルの星空ケーキも美味しそうですわ。
カクテルも綺麗な色…!大人になったら試してはみたいですわね。
八坂・詩織
【星花海】
プラネットワルツのコサージュを胸に。
ジゼルさん誘ってくれてありがとうございますね。この薔薇プラネットワルツっていうんでしたっけ、惑星達のワルツとは素敵な名前です。
ここまで青くて花弁に斑点まである品種は見たことがありません…この星のバイオテクノロジーはすごいです。
薔薇も綺麗ですけど星空も綺麗ですね…
光害を抑えているとはさすがです。
この星には月のような衛星がないのか、新月等で見えないだけなのか…何にせよ月明かりがないのは星明かりを楽しむ上で好条件です。
そうですね、せっかくですし何かいただきましょうか。
裏メニューのカクテルに挑戦してみたいです。未成年のお二人はもちろんノンアルコールですよ?
●
星花海の乙女たちは青薔薇を纏って。
「お誘いありがとうございますわ、ジゼル!」
「誘ってくれてありがとうございますね、ジゼルさん」
ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)と八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)の二人にお礼を言われて、ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)ははにかんだ。
「この星の花祭りの話を聞いて、星が好きな八坂先生、薔薇が好きなミルナとお祭りを楽しみたいと思ったんだ」
そんなジゼルの頭には、プラネットワルツの花飾り。
ミルナは花冠を同じく頭に、詩織はコサージュを胸に飾って、それぞれに銀河の花を煌めかせる。
「この青い薔薇とっても綺麗ですわねぇ……星空みたいで」
くるりとミルナがその場で軽やかに回れば、星瞬く花弁が揺れる。
「プラネットワルツっていうんでしたっけ、惑星達のワルツとは素敵な名前です」
その名前の通りに、確かに星空を宿しているようだ。
「ここまで青くて花弁に斑点まである品種は見たことがありません……この星のバイオテクノロジーはすごいです」
「薔薇への愛情がなせる業だと思いますわ。どこの世界でも、美しい薔薇を愛でる気持ちは変わらないんですのね」
薔薇の美しさ、そして世界の、きっと美しいのであろうまだ見ぬ薔薇へと想いを馳せるミルナ。
「どこの世界でも、か。うん、他の世界でも色んな薔薇を見てみたいな」
親友の思い描く世界は、きっと美しい。頷くジゼルも、それを信じてやまない。
●
「それにしても……」
ふと、詩織が星天を仰ぐ。
「薔薇も綺麗ですけど、星空も綺麗ですね……」
星がよく見えるのは、灯りを極力絞っているお陰だろう。
「光害を抑えているとはさすがです。過剰な光は天体観測の妨げになるだけでなく、生態系の混乱にも繋がりかねませんからね」
「そうなのか」
「そうなんですの?」
少女たちの声がハモる。そんな仲良し二人の様子に詩織はふふと微笑みながらも頷いて。
「この星には月のような衛星がないのか、新月等で見えないだけなのか……何にせよ月明かりがないのは星明かりを楽しむ上で好条件です」
天文部の顧問を務める教師として、また一人の天体観測を嗜む者として、この星の環境はほぼ最高に近いと思える。
そんな詩織の解説を、真面目にふむふむと聞いていたジゼル。
「さすが八坂先生、詳しいな」
「たしかに今夜は星がよく見えますわね」
一方、ミルナもちゃんと話は聞いていたのだが、彼女が抱いた感想はまた別のもので。
「こんな素敵な夜に薔薇の花束を抱えた素敵な殿方とデートできたら……」
理想の男性と、理想のシチュエーションを夢想して、うっとりと頬に手を当てた。
「……なんかミルナはいつもそんなこと言ってるな」
と、思いつつも。
ジゼルの心には、とある人物の風姿が思い起こされて。
(「あのひとを送った夜も、星が綺麗だったな……」)
――やっぱり僕は、星よりも花が好きだけれど。
そう告げて、旅立っていったあのひとのこと。
(「あのひとも、この青い薔薇は好きだろうか」)
連れてこられたなら、喜んでくれただろうか。
また――微笑みかけてくれただろうか。
(「……って、何を考えてるんだわたしは」)
そもそもあのひとは独りではなく、ふたりで幸せになって欲しいとジゼルだって思っている、その気持ちに偽りなどあろう筈もない。
けれど、どうしたって焦がれてしまう、相反する感情が自身の中に、どうやってか共存しているのも事実で――いやいや。
その全てを振り払うように、ジゼルは頭を振ると。
「わ、わたしお腹が空いたな! 何か食べよう!」
「あら、ジゼルったらいつも腹ペコさんですわね」
親友のそんな想いと葛藤を、今はまだ知らぬミルナは無邪気にころころと笑い。
「そうですね、せっかくですし何かいただきましょうか」
一緒に微笑む詩織は、もしかしたら何か察するところがあったかも知れないけれど――いずれにしても、触れることはなく見守るばかり。
この話は一旦、ここまでとして。乙女たちは甘い香りの漂う方へ。
ケーキのショーケースから、屋台の店先に至るまで、プラネットワルツの瞬きが並ぶ。
「可愛い食べ物がいっぱい……! 写真にとっておきたいくらいですわ……!」
可愛らしいもの、綺麗なもの……夢見る乙女が心惹かれるものに、ミルナもまた目を奪われていくのだ。
けれど幾つも種類があると、やはり選ばなければならなくて。果たしてどれ、と問われれば。
「わたくしはやっぱりマカロン! 可愛いですわよね」
「ミルナはマカロン好きだもんな」
親友の好みなら解ると、ジゼルは納得の頷きを。
「わたしは星空ケーキのショコラがいいな。きらきらして綺麗だ……」
「あら、本当! ジゼルの星空ケーキも美味しそうですわ」
きゃっきゃと楽しげにスイーツを選ぶ二人の姿に詩織は更に笑みを深めつつ。
「折角なので、裏メニューのカクテルに挑戦してみたいですね」
勿論、未成年の二人はノンアルコールだけれど。
ブルー・ミルキーウェイ・ラテの隣に並ぶ、星月夜に似たカクテル。
「ブルームーンに似ていますが、香りが違いますね」
詩織が楽しむ花の芳香は、菫ではなく薔薇のもの。揺蕩う白い光の粒は星のよう、プラネットワルツの花弁は蜂蜜の仄かな甘さを纏って泳ぐ。
「まあ、カクテルも綺麗な色……!」
「お酒って美味しいんだろうか、今は飲めないが……」
少女たちに酒精が悪戯をすることはないけれど。
「大人になったら試してはみたいですわね」
心地よい酩酊感、というものにミルナも少し興味はある。今はまだ早いとも思うが、その時が来たら、試してみるのも悪くなさそうだ。
「でも、ノンアルのカクテルでも少しだけ大人になった気分になれる」
今は酒精ではなく、この雰囲気に酔いしれるとしよう。
さあ、オープンカフェスペースでグラスを合わせれば、動き出すのはちょっとした大人の時間。
夜の女子会は、まだ始まったばかりだ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
楊・暁
【朱雨】
雑貨屋で思わず見入り
藍夜、これもペンか?
見上げて尋ね
初めて見た…すげぇ綺麗だな…
デザインもだけど
藍夜のペン先から生まれる色もまた
…俺、これ買う…!
それで、藍夜の誕生日とか…普段のちょっとした時とかでも
このペンとインクで、お前に手紙書きてぇ
藍夜宛てにしか使わねぇ、特別なもんにするんだ
一番大切な人に渡す言葉だからこそ
一番素敵で気に入ったのを使いてぇ
ふふ…はははっ、藍夜大袈裟すぎ
って、お前だけに渡すんだ…!
ほ…他の奴に見せんなよ恥ずかしい…!
でも…喜んで貰えて良かった
はにかみつつ次ぐ言葉に小さく驚き
ありがとう。でも1セットでいいぞ?
…あ、でもインクはもうちょっとあった方がいいか?
紫がかったインクねぇかな…?
藍夜の説明に瞠目
なんかすげぇな…!
うん、これがいい
ペンの持ち手は赤っぽいので…
いいぞ。じゃあ、藍夜のはお揃いで青のにしよう?
んー…どっちにするかな…ん、こっち!
そんなの…嫌なんて言うわけねぇだろ?(くすくす
折角だしキャンドルと水守りも
藍夜のは青か…俺と揃いの紫
ふふ、お揃い増えて嬉しい
御簾森・藍夜
【朱雨】
心音と二人で歩いていたら止まった心音を後ろから覗き込み
ガラスペンか
万年筆と違ってインクを付けて使うんだ
あまり使ったことは無いが…サンプルがある、こう――で、こうだ
さっと試し書きをして
ペン先は職人によって異なる
全部試すわけにはいかないから色とデザインで選び―…
…なん、いや、え、そんな…なぁ心音
あー…うん、うれしい。ちょっと頭追いつかないくらい
どうしよう額と壁面が必要…
いっそ店に飾ってジジイババア共に見せ散らかす…?
…うん、嬉しい俺が全部買うから好きなの好きなだけ選んでいいぞ心音
顔のゆるみが収まらん
紫?紫…あった、心音これ。この色達は花から抽出した物らしい
青薔薇と赤薔薇の混合で紫の青赤の比率異なる―…色の範囲が凄いな
ペンは心音が最後まで悩み買わなかった一本も買って
それと俺のガラスペンも折角なら心音に選んでもらおうかな
インクは揃いにしよう
俺だって心音に文字で伝えたいことが山ほどあるんだ、いいか?
キャンドルと揃いの水守りも、心音に合う色の赤か紫を
恥ずかしいが、お揃いって…嬉しいんだよな
●
からん、ころん。
『花色結び』のドアベルが、清く軽やかに来客を告げる。
惹かれるように店内へと足を踏み入れ、正面のディスプレイボックスの前で足を止めた、楊・暁(うたかたの花・f36185)。
そこにあったものに、彼の目は奪われた。銀河に瞬く星にも負けず、きらきらと輝く。
どうした、と言いたげに己の顔を後から覗き込む御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)にも、その光を向けて。
「藍夜、これもペンか?」
見上げ尋ねるその表情が眩しくて、藍夜は僅か目を細める。
「どれ……ああ、ガラスペンか。万年筆と違ってインクを付けて使うんだ」
隣のディスプレイボックスに並ぶ万年筆と、見比べるように視線を向けて藍夜は語る。
暁はそれに頷きながらも、再びガラスペンへとその視線を向けて。
「初めて見た……すげぇ綺麗だな……」
嘆息のように零れ落ちる思い。
透き通る芯には邪魔にならない位置に薔薇の飾りがあしらわれ、透かし模様は花枝のよう。それでも棘はなく、純粋にすらり美しい。
何より透き通った表面が、きらきらと光を受けて煌めく。色は透明や青が多いが、それ以外の色もあるようだ。
「俺もあまり使ったことは無いが……サンプルがある、こう――で、こうだ」
ケースの外に置かれたペンを藍夜は執り、その先端をインクに浸す。既に線や絵の描かれた紙の余白に、力を込めず流れるようにペン先を走らせれば、緩く波打つ漣が走った。
(「デザインもだけど、藍夜のペン先から生まれる色もまた……」)
その全てに心惹かれていく。
高鳴る心の音は、彼のみが知る響き――だからこそ。
「……俺、これ買う……!」
弾んだ声に、お気に召したかと微笑む藍夜。
「そうか。となると……ペン先は職人によって異なる。全部試すわけにはいかないから、色とデザインで選び――……」
「それで、」
続く言葉に、藍夜は目を丸くする。
「藍夜の誕生日とか…普段のちょっとした時とかでも、このペンとインクで、お前に手紙書きてぇ」
そんな。
不意打ちでなんて、愛らしいことを言うのだ、この伴侶は。
「……なん、」
「藍夜宛てにしか使わねぇ、特別なもんにするんだ」
「いや、え、そんな……なぁ心音」
名案だ、と言わんばかりに喜色滲む声音で、藍夜の静止も今は耳に入らぬように、その言葉は紡がれ続ける。
「一番大切な人に渡す言葉だからこそ、一番素敵で気に入ったのを使いてぇ」
「し、しおん」
どうにか、名前だけをもう一度呼ぶ。
すると今度は耳に届いたか、乗り出すように下から顔を覗き込まれて。
彼の本気が、伝わってきたから。
「あー……うん、うれしい。ちょっと頭追いつかないくらい」
「ふふ……はははっ、藍夜大袈裟すぎ」
柔らかくなりかけた口元を抑えて、辿々しくも伝えれば、暁は屈託なく笑った。
狐雨の――雨天の太陽。今まさに、藍夜の目の前に。ああもう全部。その全てが愛おしい。
「……どうしよう額と壁面が必要……いやいっそ店に飾ってジジイババア共に見せ散らかす……?」
「えっ」
愛が|限界突破《オーバーロード》した藍夜は、赤面通り越して真顔に。
そうして表向き淡々と、しかし内心今にも震え出しそうな声でとんでもないことを言い出した。そりゃあ暁も固まる。
「って、お前だけに渡すんだ……! ほ……他の奴に見せんなよ恥ずかしい……!」
綴るのは、あなたのため。
読ませたいのは、あなただけ。
その頬に紅葉を散らしながらも、すぐにふわりと暁は破顔して。
「でも……喜んで貰えて良かった」
はにかみながらもその心を伝えれば、藍夜も口元から手を離して、その微笑みを曝け出した。……我ながら少々緩みきってはいないかなんて、少し不安になったのは秘密で。
「……うん、嬉しい俺が全部買うから好きなの好きなだけ選んでいいぞ心音」
我知らず早口。
当然ながら、暁は驚き目を丸く。
「ありがとう。でも1セットでいいぞ?」
あ、でもインクはもうちょっとあった方がいいか――なんて呟きながら再び、ケースに視線を落とす暁を見守りつつ。
(「いかん顔のゆるみが収まらん」)
せめて店を出る頃には……いや会計の時までには何とか引き締め直さないと、なんて考えていると。
「んー……紫がかったインクねぇかな……?」
「紫?」
暁が求めるのは、二人の混ざりあった彩。
藍夜もまた、並ぶインクに目を通せば。
「紫……あった、心音これ」
「お、どれどれ……」
サンプルのインク瓶のひとつを丁寧に開ければ、こちらは青みが強めかつ、淡めの色合いのものだった。
「この色達は花から抽出した物らしい。青薔薇と赤薔薇の混合で紫の青赤の比率が異なる――……色の範囲が凄いな」
「へぇ、なんかすげぇな……!」
瞠目する暁は、実際の商品の箱の側面に書かれた注釈にも目を通す。
赤薔薇は、ロサーリオとは別の星から仕入れているらしい。
そのため、赤を基調とした品のバリエーションは少ないが、インクであれば比較的種類があるようだ。
成程……と頷きつつ、青と赤の比率が丁度同じものを手にとって。
「うん、これがいい」
二人の彩を、同じだけ。
「ペンの持ち手は赤っぽいのがいいけど……赤系があんまりないとなると……」
「ちょっと待て、心音」
折角、|自分《藍夜》のために|自分《暁》が気に入ったものを、と申し出てくれたのだ。妥協はして欲しくない。
自分のために何かしてくれるのは嬉しいけれど、それなら暁自身にも、心から楽しんで欲しいから。
店員の女性に事情を話せば、店の奥から在庫を出してくれた。
「そ、そこまでしなくても」
「いいんだ、俺がしたかったから」
暁が自分のためにしてくれるなら、藍夜も暁のために。
彼の纏う朱に似た赤を、藍夜から手渡して。
「それと俺のガラスペンも折角なら心音に選んでもらおうかな」
だから、これでおあいこだと目配せすれば。
そういうことならと、暁は納得したように頷いた。
「いいぞ。じゃあ、藍夜のはお揃いで青のにしよう?」
彼の提案にいいな、と微笑めば、真剣に選んでくれる眼差し。
二種類までは絞れたものの、そこから更に少し悩む暁。
「んー……どっちにするかな」
その時間が、藍夜は退屈だとは思わなかった。思うわけがない。だって、暁が真剣に、それも自分のために取ってくれている時間なのだから。
「……ん、こっち!」
選び取ったのは、鮮やかな青より少し濃い、青藍の夜空のような色。
藍夜はそれを受け取りつつも――選ばれなかったもう一本も、密かに店の小さな買い物籠へ。これも暁が、自分に似合うと思ってくれたものに変わりはないから。
「インクは揃いにしよう。……俺だって心音に文字で伝えたいことが山ほどあるんだ、いいか?」
「そんなの……嫌なんて言うわけねぇだろ?」
少し照れながらもくすくすと笑って、真っ直ぐに伝えてくれる暁の声が、言葉が、藍夜の心を満たしていく。
言葉では、照れくさくて告げられないことも、想いが溢れて語り尽くせないことも、手紙に綴れば伝えられる。
今だって互いに沢山伝えているし、伝えて貰っているけれど。もっと、もっとと願うのは、欲張りだろうか。
けれど、気持ちが同じなら、互いがそれを許すなら、何に遠慮することがあるだろう?
「藍夜、折角だしキャンドルと水守りも買って行こう」
「そうだな、俺は心音に合う色の赤か紫を……」
「あ、これ紫だけど、結構赤に近いんじゃないか?」
「本当だな……心音の瞳の色だ」
「じゃあ藍夜のは青か……俺と揃いの紫か……どれがいいかな」
悩みつつ、こちらも藍夜が暁に選んだ紫と同じような、青に近い紫をチョイス。
対になるような、けれどだからこそ揃いだと解るふたつに、どちらともなく笑い合う。
「ふふ、お揃い増えて嬉しい」
「恥ずかしいが……そうだな、お揃いって……嬉しいんだよな」
嬉しい、が増えていく。
ふたり共に在る限り――そう、これから先も、ずっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『祝宴』
|
POW : 祝宴を派手に楽しむ。
SPD : 祝宴を工夫して楽しむ。
WIZ : 祝宴を賢く楽しむ。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ロサーリオの夜も更けて、朝が始まる。
太陽――に酷似した星が天と地を照らし、爽やかな青空が広がる。
出店や屋台は変わらず開いているし、広場のダンスも曲を変えつつ続いているから、夜には回り切れなかった場所に足を運ぶのもいいだろう。
また、明るい時間帯となったことで、行ける場所も増えたようだ。それは王宮に連なる場所。
猟兵たちが護った薔薇園は一般解放されていて、プラネットワルツの咲き誇る庭園を散策することが出来る。
アーチの連なる区画や、迷路のように入り組んだ区画もあり、見て回るだけでも楽しめそうだが。
アーチと迷路を抜けた先、プラネットワルツに囲まれた東屋がある。この東屋のみ飲食可能となっているようで、弁当などを持ち込んで食べながら休憩してもよさそうだ。
プラネットワルツに囲まれながら、食事ないしティータイムを楽しむのもいいだろう。勿論、後片付けはしっかりと。
またグリモア猟兵曰く、薔薇園を護ってくれた猟兵たちには、王宮の広間への出入りが許されたようだ。
そこで行われているのは舞踏会。広場での舞踏会と違い、こちらは優雅に上品に、社交ダンスを踊る場になっている。
猟兵たちも参加出来るが、条件がある。
まず、会場に入るためには正装を。なおかつ、男性は胸に、女性は髪にプラネットワルツを一輪。衣装と更衣室は城で用意して貰えるようだ。
なお、これは必ずしも男女ペアを強要するものではないようだ。同性同士で踊っても構わないし、何なら同性同士異性同士を問わず異性装をしてもよい。
但し、これも条件のひとつだが。猟兵たちの相手は、猟兵たち同士で見繕ってくる必要がある。
なお、城下では案内役の風月はじめ、その知り合いであるグリモア猟兵らが各々祭りを楽しんでいるようだ。
一緒に祭りを楽しむ相手がや人数が欲しいという場合や、城でのダンスの相手がいない場合は声をかけてみるのもいいだろう。
勿論、彼らは呼ばれずとも祭りを満喫しているようなので、声もかけていないのに無理矢理合流してくるということはないので安心して欲しい。
日の高い時間の明るい花祭り。
さあ、今日は何処へ行こうか。
樹・さらさ
🦊さんにお付き合い願おうかと
胸に奇跡の青を飾って、月色の姫を誘わせて頂こう
探しに出て見つけたなら驚かせないようにそっと声をかける
お嬢さん、宜しければ今宵の御相手願えますか?
最近弟が世話になっているみたいだね
話には聞いていて、一度直にお会いしたかったんだ
ああ、聞いていた通り――とても可愛らしいね、カイ嬢は
これからもあいつをよろしく頼むよ、好きに使ってやってくれ
ああ見えて気の置けない友人がそこまで多い奴では無い、きっと本人も楽しんでいる筈だから
社交ダンスに心得はあるかな?
リードは任せて欲しい、一応得意分野ではあるからね
ふふ…この事は秘密にしておいた方が良いだろうか
羨ましがられるかもしれないな
●
「お嬢さん、宜しければ今宵の御相手願えますか?」
スマートな会釈と共に、奇跡の青が胸元で微かに揺れる。
樹・さらさ(Dea della guerra verde・f23156)がそっと声を掛けたのは。
「……樹様? ……あ、いえ……」
青と金のドレスを纏った、月色の姫――もとい、虹目・カイ。
「失礼いたしました、知人と間違え……」
「いや、間違ってはいないよ。最近弟が世話になっているみたいだね」
「……ああ! これはこれは。お話はかねがね伺っております」
さらさの言葉に合点のいったらしいカイが、ぽんと手を叩き。
「こちらこそ。話には聞いていて、一度直にお会いしたかったんだ」
カイは一瞬、とある人物と、さらさを間違えていたようであり。
その人物こそが、さらさの弟であり、カイの友人であった。
「ああ、それにしても聞いていた通り――とても可愛らしいね、カイ嬢は」
「え? ……ま、まあそんな、私などとてもとても……」
手放しで褒めれば、平静を装っているがぱっぱと顔を赤くして顔を逸らすカイである。弟にも似たような反応をされたと聞いていたが、やはり褒められ慣れていないのだろうか。
ふふ、と微笑み、さらさは続ける。
「これからもあいつをよろしく頼むよ、好きに使ってやってくれ。ああ見えて気の置けない友人がそこまで多い奴では無い、きっと本人も楽しんでいる筈だから」
「そ、そうなのでしょうか。そういうことでしたら勿論、私でよろしければ、喜んで」
少し安堵したような表情を見せたカイは、ふと何か思い出したようにぽんと手を叩くと。
「お誘いへのお返事がまだでした。喜んで、お受けいたします」
小首を傾げるようにして、頷いた。
曲と曲の合間にふたり、連れ立ってフロアへ。
「社交ダンスに心得はあるかな?」
ホールドを組みつつ、さらさが問えば。
「……実は、知識があるばかりで。足は踏まないよう、細心の注意は払いますが」
「心配しなくても、リードは任せて欲しい、一応得意分野ではあるからね」
苦笑するカイを、安心させるように告げて。
いざ踊り出せば、カイは再び目を丸くして驚く。
「……凄い、とても踊りやすいです……流石でございますね」
さらさに、導かれるようにしてカイも踊れている。
驚いてはいるが、その瞳は輝いていて。よかった、とさらさは微笑みを深めながら。
「ふふ……この事は秘密にしておいた方が良いだろうか」
「え?」
「羨ましがられるかもしれないな」
「まあ……」
悪戯っぽく目配せすれば、カイも楽しげにくすりと笑い。
秘密の時間が、花と、音楽と共に、緩やかに流れていく。
大成功
🔵🔵🔵
ニオ・リュードベリ
先輩(f08050)と
すっかり朝だね
どうする?
んー、王宮?
……うん、いいよ
衣装は借りよう
綺麗なドレスを着るのは好き
でもこの手のダンスとか上品なお付き合いとか、そういうの苦手で
うち、無駄にお金持ちだからそういうスキルを求められてたの
パパとママもそういうのが得意な子に育って欲しかったみたいだけど
あたしそういうのダメダメなんだ
それでも……いい?
先輩の手は素直に取ろう
二人して踊る姿はきっと不恰好だね
でも……楽しいな
下手でも楽しんでいいのが嬉しい
先輩が誘ってくれたのも嬉しい
っていうか今更だけど先輩かっこいいね!
えへへ、今日のことは帰ったらお姉ちゃんに報告しよっと
素敵な先輩と楽しく踊れるようになったって!
茜谷・ひびき
ニオ(f19590)と
せっかくだから王宮行ってみないか?
ほら、こういう機会は滅多にないし
……大丈夫か?
衣装は借りる
ニオの表情がいつもより暗いのが気になる
もしかして嫌だったか?
事情は素直に聞こう
辛いだろうに話してくれてありがとうな
ついてきてくれたのも嬉しい
だから一緒に踊ってくれ
大丈夫、俺もこういう場所は初めてだ
踊り出せば案外どうにでもなるか?
見た目だけは様になってるだろうな
……急に褒めるなよ
ニオもよく似合ってる
なんだかんだでいつも通りに笑うニオには安心してる
俺は……報告するならUDCの仲間にだなぁ
宇宙でサーモン食って社交ダンスしてきたとか、荒唐無稽すぎるからな
でも俺もすげー楽しかった
ありがとうな
●
「すっかり朝だね。どうする?」
ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)が茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)の顔を覗き込む。
彼は少し考えてから、口を開いた。
「せっかくだから王宮行ってみないか? ほら、こういう機会は滅多にないし」
「んー、王宮? ……うん、いいよ」
ほんの一瞬、ニオの表情が翳った。
すぐにまた笑顔を見せるが、その変化を見逃すひびきではなかった。
「……大丈夫か?」
問われて、大丈夫大丈夫、と返すニオだったが。
その笑顔にはやはり少し、影が落ちていた。
●
ふたり、正装に着替えて。
ひびきの胸元に、ニオの髪に揺れる星の花も、衣装だってばっちり決まっているのに。
ニオの表情は、やはり暗いまま。
「もしかして嫌だったか?」
だとしたら、悪いことをしてしまったかも知れないと。
改めてひびきが問えば、ニオは少しの間、返答に窮してしまって。
けれどこうして誘ってくれて、心配してくれる先輩に、嫌な思いはさせたくない。だから、話そう。そう決めて。
「綺麗なドレスを着るのは好き。でもこの手のダンスとか上品なお付き合いとか、そういうの苦手で……その」
ぽつぽつ、ゆっくりと話す。
それでも、ひびきは途中で口を出さず、黙って素直に耳を傾けてくれていた。
「うち、無駄にお金持ちだからそういうスキルを求められてたの。パパとママもそういうのが得意な子に育って欲しかったみたいだけど」
それが出来た、姉のように。
でも、とニオは頭を振って。
「あたしそういうのダメダメなんだ」
そうして失望されて、いない子のように扱われた過去は、どうしたって、消えない。
また、拒絶されたら、と思うと。
「それでも……いい?」
ひびきのことは、信じたい。
けれど、聞かずにはいられない。不安にならずには、いられない。
心臓がどくどく、破裂しそうだった。
「辛いだろうに、話してくれてありがとうな」
「えっ」
返ってきたのは、予想外の答えで。
「ついてきてくれたのも嬉しい」
けれど無意識に、求めていたものだったのかも知れない。
安心させるような声と言葉で、安堵に心が解れていく。
「だから一緒に踊ってくれ」
手が、差し出される。
「大丈夫、俺もこういう場所は初めてだ」
スマートになんて、ひびきにだってきっと出来ないけれど。
初めてでも、ダメダメでもいい。ただ、一緒に踊る特別な時間を共有したい。それだけなのだ。
それなら、いいのかも知れない。
差し出されたその手を、ニオは今度こそ素直に取って。
ふたり、フロアへと進み出る。
そうして音楽に乗せて、踊り出した姿は不格好かも知れないけれど。
けれど案外、どうにかなるもので。
「見た目だけは様になってるだろうな」
「そうだね。でも……楽しいな」
両親には『上手に踊ること』を求められてきたけれど。
(「下手でも楽しんでいいのが嬉しい」)
上手じゃなくたって、咎めるような人はここにはいないから。
(「先輩が誘ってくれたのも嬉しい」)
嬉しくて――はたと気づく。
「っていうか今更だけど先輩かっこいいね!」
「……急に褒めるなよ。ニオもよく似合ってる」
その不意打ちは少しずるいような。
思いながらも、ひびきも素直に思うことを伝えて。
なんだかんだでいつも通りに笑うニオの姿に、安心する。
彼女は、笑っている方がいい。
色々と考え込んでしまって、後ろ向きになりがちなこともひびきは知っているけれど、それでも。
「えへへ、今日のことは帰ったらお姉ちゃんに報告しよっと」
「ん?」
「素敵な先輩と楽しく踊れるようになったって!」
少し、ほんの少しだけ。
ひびきはその言葉に、こそばゆさを覚えながらも。
「俺は……報告するならUDCの仲間にだなぁ」
「そうなの?」
首を傾げるニオに頷いて。
「宇宙でサーモン食って社交ダンスしてきたとか、荒唐無稽すぎるからな」
「あー……」
常識の外側にいる者にしか、きっと理解の及ばない話だろうから。
だとしても。
「でも俺もすげー楽しかった」
「!」
「ありがとうな」
ニオが誘ってくれたから、ひびきも楽しかった。
その感謝を伝えれば、ニオはまた満面の笑顔を向けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
心音の手を取って薔薇園散策
ん?これは秘密ほら、前見ないと俺が勝手に曲がって迷子になるぞ
戦う前も後もちゃんと見られなかったからな
薔薇にしては爽やかな香りだが、どことなく甘い気がする
不思議な花だな
ふむ
好きな匂いか?なら香水かポプリのこと後で聞いてみよう
インクを使うのが今から楽しみだ
写真?良いが―…なぁ心音、俺しゃがんだ方がいいか?なんて嘘嘘、分かってる
この星の美味い飯を静かに食いたい―…っていう口実で用意してもらった弁当2つ
薔薇水と紅茶と…へぇ、薔薇色ローストビーフサンドと薔薇色サーモンサンドだと
中々食いでがありそうだし野菜もふんだんで、デザートは薔薇の林檎パイだそうだ
心音、お疲れ様―乾杯
楊・暁
【朱雨】
藍夜と手繋ぎ
本当、迷路みてぇだ…!
そういやその荷物なんだ?俺も半分持とうか?
あははっ、自分で言うなよ
でも折角こんな間近で薔薇見られるんだ
のんびり迷っても良いかもな
これがインクの原料になってるのか…
んー…良い香り(尻尾ぱたぱた
本当か?じゃあ、追加のお土産も買ってく…!
あ、そうだ!写真撮ろう、藍夜!
藍夜との想い出、沢山残してぇ
UCで奉仕100Lvの黒子狐達喚びデジカメ預け
写真何枚か撮って貰えるか?
っ、藍夜!
からかわれれば拗ねてみせて
もー…!
それなら上から!
俯瞰構図で薔薇も含めた画角で
満面の笑顔で
東屋着いたら並んで座って休憩
すげぇ…!いつの間に…!?(目輝き
ありがとう
藍夜もお疲れ様――乾杯!
●
薔薇迷宮に寄り添う影ふたつ。
「これは……凄いな」
「本当、迷路みてぇだ……!」
はぐれないよう、手を繋いで。
御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)と楊・暁(うたかたの花・f36185)が、銀河の花路を往く。
ところで、暁は藍夜の手、自分のそれと絡めていない方に、何やら提げているのに気付いていた。バスケット……だろうか。
「そういや藍夜、その荷物なんだ?」
「ん?」
暁に問われて、藍夜もその存在を思い出したかのように視線を向ける。
俺も半分持とうか、との暁の申し出にはやんわりと頭を振りつつ。
「これは秘密。ほら、前見ないと俺が勝手に曲がって迷子になるぞ」
「あははっ、自分で言うなよ」
とんでもない自己申告もあったものである。だが、暁にとってはそれもいつものこと。楽しげに笑ってまた進む。
実際、迷路状とは言ってもそこまで複雑に入り組んでいるわけでもなく、余程のことがなければ本格的に迷うことはないだろうが……割と妙なところで好奇心と探究心旺盛な藍夜のこと、不意にふらっといなくなってしまう可能性は大いにある。
まあ、暁がいる限り、そんなことにはさせないのだが。
「でも折角こんな間近で薔薇見られるんだ。のんびり迷っても良いかもな」
寄り道程度にちょっとルートを外れるくらいなら、寧ろ楽しめそうだ。
「戦う前も後もちゃんと見られなかったからな」
藍夜も頷く。
戦闘後はすぐに街に向かうことになったし、街の中でも見かけはしたが、じっくり見ることはなかったから。
「これがインクの原料になってるのか……」
そう考えて見てみると、何だか不思議な感覚だ。
共にシルバーレイン出身の二人にとって、染料なら兎も角、少なくとも抽出された花の色素のみで作られるインク、と言われると覚えがない。この星系、或いは世界独自の技術なのだろうか。
「薔薇にしては爽やかな香りだが、どことなく甘い気がする。不思議な花だな」
藍夜がそう呟きを落としたので、暁は胸一杯にその香りを満たして。
「んー……良い香り」
ふわふわもふもふつやつやの、尻尾がぱたぱた揺れる。
思わず一瞬、藍夜の視線がそちらに惹き込まれるが、すぐにぱっと花へと戻し。
「ふむ、好きな匂いか? なら香水かポプリのこと後で聞いてみよう」
「本当か? じゃあ、追加のお土産も買ってく……!」
雑貨屋に戻れば、あるかも知れない。
そう思えば、夜の内に二人で買ったお土産のことも思い出す。
インクを使うのが今から楽しみだ、と藍夜は口元を微かに綻ばせた。互いの想いを綴る手紙を。
するとその時、暁がぽんと軽く手を叩く。
「あ、そうだ! 写真撮ろう、藍夜!」
「写真?」
暁の申し出に藍夜が首を傾げれば、彼はこくこくと頷いて。
「藍夜との想い出、沢山残してぇ」
だから、この場所のことも。
見返して、より鮮明に思い出せるように。
勿論、藍夜としてもそれは願ったり叶ったりではある。が。
「それは良いが――なぁ心音」
「うん?」
ユーベルコードで喚び出した黒子狐たちにデジカメを預ける暁に、藍夜はそっと耳打ち。
「俺しゃがんだ方がいいか?」
「っ、藍夜!」
からかわれればむすっと拗ねてしまった暁に、藍夜はくすりとひとつ微笑み。
「なんて。嘘嘘、分かってる」
「もー……!」
ぷん、となる暁も藍夜には愛おしいものだが。
「それなら上から! ほら藍夜も!」
腕を取られて横に並び、空を仰ぐ。
俯瞰構図で薔薇も含めた画角に収め、黒子狐たちの準備も完了。
合図に合わせて、暁は満面の笑顔を向けて!
釣られて、藍夜も深く微笑んだ。
●
「お、東屋が見えてきた」
それからまた少し歩いて、暁が声を上げる。
藍夜も前に目を向ければ、目の前には確かに開けたスペースが飛び込んできて、そこに東屋も姿を見せた。
ここでなら、プラネットワルツを眺めながら、ふたりきりで穏やかな時間を過ごせそうだ。
並んで座って――目の前のテーブルに、藍夜のバスケットが置かれた。
「?」
「実はな、この星の美味い飯を静かに食いたい――……っていう口実で用意してもらったんだ」
開けば、二人分の弁当に飲み物。
「薔薇水と紅茶と……へぇ、薔薇色ローストビーフサンドと薔薇色サーモンサンドだと」
「すげぇ……! いつの間に……!?」
思わず声を上げた暁はその瞳もきらきら輝かせて。
そんな彼の様子に、藍夜は満足げに微笑んで。
「中々食いでがありそうだし野菜もふんだんで、デザートは薔薇の林檎パイだそうだ」
彩りも豊かで目にも楽しく、また食欲をそそる香りで味の方も期待出来そうだ。
三十六の世界で一番大切な人と、花を愛で、美食に舌鼓を打つ、そんな時間を共に楽しむ。
ああ、何て贅沢、何て幸福。
「心音、お疲れ様」
「ありがとう。藍夜もお疲れ様」
「「――乾杯!」」
そよ風が吹く。花が揺れる。
優しく二人を、見守るように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
【SPD】
お一人様なんでダンスパーティーへの参加は見送ろうかね。風月さんお誘いするのもありだが、既婚者様ですし?
というわけで、昨日後始末やらなんやらで見きれなかった薔薇園の残りの区画を見て回ろうとしましょう。それ目当てでここに来たんだ、全部楽しめなかったら損ってもんでしょ?
あとはこの薔薇園でしか食べられない品があったら、それをテイクアウトして東屋でいただくとしますかね?
●
(「ダンスパーティーねえ」)
カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)も、興味がないわけではなかったが。
(「今回はお一人様なんで参加は見送ろうかね」)
そもそも。
彼女の目当てはプラネットワルツの鑑賞である。
連合王国内でしか咲かない、星空の花弁を持つ希少な薔薇――やはり最高の状態で見てみたいと思っていた。
昨日は後始末のため、また日も暮れていたため入れなかった薔薇園へ。
(「全部楽しめなかったら損ってもんでしょ」)
緑と銀河のアーチを潜り抜け、星の花の煌めきに導かれて、入り組んだ薔薇の迷宮へと迷い込む。とは言ってもそう複雑な作りではないけれど、だからと言ってさっさと通り抜けてしまっては味気ない。
迷うこともまた楽しみながら。のんびりと進んでいく。手にはバスケットを提げて。
薔薇園の東屋は飲食可能であるが、王宮内ということもありここで飲食物は売っていないらしかった。その代わりに昨夜も堪能した出店で、ランチメニューを弁当代わりに包んで貰って。
「……東屋は……あそこか」
迷宮の出口の先、開けた場所に出れば、目的の場所はすぐに見つかった。
お誂え向きにテーブルとベンチが綺麗に並んでいる。バスケットを置きつつ腰掛けてみれば、眼前に星空宿した花の世界が広がった。
「いいね、お花見しながら昼食! それじゃあ、いただくとしますかね」
美しい光景に、特別な食事。
今しか味わえないこの時を、存分に楽しんで。
大成功
🔵🔵🔵
八坂・詩織
🦊さんと雑貨屋『花色結び』でお買い物したいです。
薔薇のインクって気になってて。万年筆のインクが欲しいんです。
プラネットワルツの花色のインクを手に取り試し書きを。
プラネットワルツの花の色ってとても綺麗ですよね。地球にも青い薔薇はあるとはいえ、紫っぽい色になってしまいがちですし。色水を吸わせたわけでもなくこの色が出せるのは本当にすごい…
ところで虹目さんは何色が好きですか?
万年筆は手持ちのものがあるのでインクだけで。
あと…先ほど伺ったお好きな色のインクとガラスペンのセットを虹目さんに。
お誕生日が近いとお聞きしましたので、少し早いですが誕生日プレゼントです。
今後とも旅団でよろしくお願いしますね。
●
今日も雑貨屋『花色結び』のドアベルが鳴る。
店内に足を踏み入れたのは、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)と虹目・カイの二人。
「薔薇のインクって気になってて。万年筆のインクが欲しいんです」
そう言って店内に目を遣れば、丁度正面に目的のインクが、万年筆の入ったディスプレイボックスと一緒に並んでいる。
詩織は、そこに置かれていた試し書き用の万年筆を手に取り、さらさらと幾つかの一等星の名前を書き記した。
プラネットワルツの花の青が、星の煌めきと共に文字を浮かび上がらせる。
「プラネットワルツの花の色ってとても綺麗ですよね。地球にも青い薔薇はあるとはいえ、紫っぽい色になってしまいがちですし」
「完全に真っ青な青薔薇と言うのが、地球上には未だ存在しないゆえでございますね」
カイの言う通り、シルバーレインなどのアース系世界で青い薔薇と言えば、薄い青や紫混じりのもの。不可能とまで言われていたことを考えればそれでも奇跡の進歩だろうが、原色の青い薔薇を作るには、未だに染色が必要となる。
「ええ、色水を吸わせたわけでもなくこの色が出せるのは本当にすごい……」
これがシルバーレインでも再現出来たなら、それこそ奇跡と言えるだろう。
「ところで虹目さんは何色が好きですか?」
「私ですか? 一番は黄色ですが、緑や水色なども好ましいですね」
「成程……それでしたら」
「?」
詩織は自分用のインク――万年筆自体は既に手持ちのものがある――を確保すると、ガラスペンのコーナーに視線を向けて。
その中から一本のガラスペンと、インクを選び取って会計へ。そして、青いリボンを結んでガラスケースを包んだ、黄色のギフトバッグをカイへと渡す。
「……開けても?」
「勿論です。少し早いですが、お誕生日が近いとお聞きしましたので」
誕生日プレゼントです、と告げれば。
現れたガラスケースの中には、エメラルドに近いブルーのガラスペンと、水色のインクのセット。
「まあ……ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」
「気に入っていただけたなら、何よりです。今後とも旅団でよろしくお願いしますね」
詩織の言葉に、カイはギフトバッグに戻したそれを、落とさないように抱えて。
にこりと笑って、頷いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
ジゼル(f34967)と
プラネットワルツを一輪髪に飾り、エメラルドグリーンのドレスを纏って。
王宮で舞踏会、なんてロマンチック…!
まあジゼル、おどおどしてはいけませんわ。薔薇園を守ったお礼として正式に招待されてるんですもの。
それにとっても可愛いですわ!
わたくし男性パートも踊れますから…
踊っていただけますか、可愛いサンドリヨン♪
ジゼルをリードして踊りつつ、今度はお互い素敵な殿方を連れてきたいですわね。
お姫さま同士もいいけれど、やっぱりお姫さまの隣には王子様がいなくっちゃ!サンドリヨンは舞踏会で王子様に見初められるのですもの。
ふふ、たしかにわたくし元は(ジョブが)王子様…ん?何か言いまして、ジゼル?
ジゼル・サンドル
ミルナ(f34969)と
プラネットワルツを一輪髪に差し、青いドレスにガラスの靴を履いたサンドリヨン風の出で立ち。
一応は貴族の出とはいえ、冷遇されていた身では舞踏会なんて縁遠いもので…
大丈夫かなわたし、浮いてないだろうか…
そ、そうだな…
(…薔薇園を守った、か…あの子、悪意があったわけじゃないのにな)
いやいやミルナこそ、美しい人魚姫じゃないか。
その、わたしでよければ喜んで。
王子様、か…わたしにとっては灰色の日々から救い出してくれたミルナが王子様だけどな。
それに…どこかの『王子様』に見初められるより、わたしは誰かを愛してみたい。
あのひとみたいに…
…いや、何でもない。
(…本当、わたしどうかしてるな…)
●
乙女たちは舞踏会にて姫君へ。
その髪はそれぞれ一輪、星の薔薇で彩られ。
南海の色を思わせるエメラルドグリーンを纏うミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)。
淡く清らかな青に身を包み、足元はガラスの靴で煌めくジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)。
「王宮で舞踏会、なんてロマンチック……!」
無邪気にはしゃぐように手を引くミルナとは対象的に、手を引かれるジゼルの表情は不安げだ。ついきょろきょろと周囲を見渡し、自らの出で立ちを見下ろし……を繰り返してしまう。
(「い、一応は貴族の出とはいえ、冷遇されていた身では舞踏会なんて縁遠いものだったから……」)
縋るような視線に気がつき、目を瞬かせたミルナへと問うてしまう。
「大丈夫かなわたし、浮いてないだろうか……」
「まあジゼル、おどおどしてはいけませんわ。薔薇園を守ったお礼として正式に招待されてるんですもの」
「そ、そうだな……」
当然ながら、ミルナはジゼルに自信が持てるよう、全力で励ましている一心なのだが。
(「……薔薇園を守った、か……あの子、悪意があったわけじゃないのにな」)
テラのやり方は、間違っていたとは思う。
けれど、彼女は行き過ぎてしまっただけだ。悪者だとは思いたくなかった。
勿論、ミルナがそういった意図で言ったわけではないと解ってはいるし、周囲の認識がそうなってしまうのも、仕方がないことだと理解はしている。
それでも、遣る瀬なかった。
より俯いてしまったジゼルに、ミルナはその理由を別のものと捉えたのか、ぐっとジゼルに顔を近づけてきて。
「それにジゼルは、とっても可愛いですわ!」
ミルナのその勢いに、今度はジゼルが目を瞬かせる番だった。
けれどミルナは心から思う。今のジゼルは何処からどう見たって、可憐で素敵なお姫様だ。
「いやいやミルナこそ、美しい人魚姫じゃないか」
「うふふ、ありがとうございます。けれど今日は、わたくしにエスコートさせてくださいな」
一度手を離して、改めてジゼルへと、ミルナはその手を差し出して。
「わたくし男性パートも踊れますから……どうか踊っていただけますか、可愛いサンドリヨン♪」
その手を拒む理由など、ジゼルにはない。
「その、わたしでよければ喜んで」
おずおずと、躊躇いがちながらもその手を取れば、ミルナが満面の笑顔を向けてくれたので。
釣られて漸く、ジゼルも少し笑うことが出来た。
●
優雅な楽の音に合わせ、姫君たちは踊る。
「今度はお互い素敵な殿方を連れてきたいですわね」
ジゼルをリードして踊るミルナが、ふとそんな言葉を。
「お姫さま同士もいいけれど、やっぱりお姫さまの隣には王子様がいなくっちゃ! サンドリヨンは舞踏会で王子様に見初められるのですもの」
ほう、と夢見心地に溜息ひとつ。
夢見る乙女モードへ突入したミルナに、ジゼルは思わず苦笑して。
「王子様、か……わたしにとっては灰色の日々から救い出してくれたミルナが王子様だけどな。それに……」
ジゼルの胸の内に灯る炎。
今は小さくとも、確かに燃え続けて。
「どこかの『王子様』に見初められるより、わたしは誰かを愛してみたい」
あのひとみたいに、と。
ぽつり零した呟きは、音楽に紛れ、ミルナには上手く聞き取れなかったよう。
「ふふ、たしかにわたくし元は王子様ですが、あくまで猟兵としてのジョブの話……ん? 何か言いまして、ジゼル?」
「……あ……」
はたと、ミルナに呼ばれて我に返る。
ここのところ、ジゼルはずっとこうだ。
愛や恋について想えば、過るのはあのひとのことばかり。
「……いや、何でもない」
この炎を、冷まさなければ。
けれど、冷めて欲しくないと願う自分もいて。
(「……本当、わたしどうかしてるな……」)
今はまだ、熱の冷めやらぬジゼル。
そして、乙女の夢を見るミルナ。
二人の胸に、消えない炎を灯す王子様は誰なのか。
その答えはまだ、三十六の世界の誰も知らない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵