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極秘暗殺指令~闇夜の凶弾

#獣人戦線 #ヨーロッパ戦線 #ゾルダートグラード #無限軌道都市ベルリン #シリアス #暗殺

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 ――グリモアベース。
 グリモア猟兵の蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)は、招集に応じてくれた猟兵達へグリモアから予知を投影してみせた。
 映し出されたのは、新たに予知ができるようになった世界……獣人戦線だ。
「ここはゾルダートグラードの本拠地『無限軌道都市ベルリン』ですわ」
 ドイツ及び周辺ヨーロッパを支配する、謎めいた機械帝国『ゾルダートグラード』。各地に建造された鋼鉄要塞『グラード』で、改造獣人『|機械兵士《ゾルダート》』や二足歩行型戦闘車輌『キャバリア』を量産し、圧倒的な軍事力で無慈悲な侵略を続けている脅威の国家だ。
 だが敵の本拠地の映像を見せててくる意図とは?
 猟兵達が訝しがっていると、予知の中に1体の巨大な白いゴリラが映し出された。
「今回の任務は、このアルビノゴリラこと『デスペラード・ジョー』の暗殺任務ですわ。予知によれば、本日『デスペラード・ジョー』は『無限軌道都市ベルリン』の兵器工場で武装のメンテナンスを行ってますの。つまり、普段は手の付けられない大火力を誇る敵が弱体化するチャンスですわ! そこを突いて、可及的速やかに周囲に悟られぬように暗殺を遂行してくださいまし?」
 つまり、メイン武装が使えない敵の弱みに付け込むということだ。
 そして暗殺任務という内容から、あまり派手に動くのは好ましくないだろう。
「ええ、まずは皆様にはゾルダートグラードの本拠地『無限軌道都市ベルリン』に潜入していただきますわ。どこに敵の目があるか分からないので、慎重に行動しましょう。ましてや向かう先は軍の機密施設、一般人からは情報は得られないと思ったほうがいいですわね……でもどうにかして、標的のいる兵器工場の場所を特定しなくてはりませんの」
 敵の本拠地には複数の兵器工場が存在する。改造獣人『|機械兵士《ゾルダート》』や二足歩行型戦闘車輌『キャバリア』を量産し続ける本拠地だけに、工業化は著しい都市だと推測できる。
 数ある工場の中から、如何にして標的が向かうお目当ての工場の情報を掴むか……その方法は各猟兵に任せるとライムは付け加えた。
「それでは、準備が出来た方からお声を掛けてくださいまし。皆様のご活躍を期待してますわ」
 ライムの掌の上で、蛍光グリーンに輝くグリモアが浮かび上がる。
 果たして、ゾルダートグラードの将校のひとりを暗殺することはできるのだろうか……?


七転 十五起
 獣人戦線シナリオ、記念すべき第一作目です。
 敵地に乗り込んでの超危険な暗殺任務ですが、得られるリターンは計り知れないほど大きいですね。
 なぎてんはねおきです。

●概要
 第一章冒険では、ゾルダートグラードの本拠地『無限軌道都市ベルリン』に転送されてからの描写です。
 目的地への情報を集めつつ、どこにあるか分からない周囲の監視の目を掻い潜りましょう。

 居場所を無事に特定できれば、第二章ボス戦で標的との直接対決が実現します。
 ただし、暗殺任務ということをお忘れなく。
 ここは敵地の真っ只中。援軍を呼ばれたり周囲に気付かれたりする前に、素早く標的を殺害しましょう。

 第三章は敵本拠地からの脱出劇です。
 詳細は追ってお伝えします。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 冒険 『監視された街』

POW   :    怪しまれないように堂々と行動する

SPD   :    監視の死角になりそうな場所を探す

WIZ   :    暗号や符丁を使って会話する

イラスト:del

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レヴィア・イエローローズ
では、このUCを使いましょうか……

瞬間、アース系世界から調達したタブレットに監視等に関するデータが読み込まれる

それは『過去の契約』……『存在しない『過去の契約』を創り出し、その契約に対して因果律支配レベルで絶対に履行しなければならない』という凶悪極まるUC
今回は『兵器工場における武装メンテナンスの監視体制に関する情報を纏め、貸し出した使い捨ての電脳UCでその情報を送信し、全てを忘れる』という契約をゾルダートグラードの警備兵へと知らぬまに押し付けて履行

そのまま監視体制を把握し、目を縫って潜入していくわ
相変わらず、UCというのは何でもありね



 レヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は今は一介の猟兵であるが、その出自はクロックワーク・ヴィクトリアに国を滅ぼされた変異階梯のシカの元王女である。普段は戦禍階梯でいることが多いキャバリア乗りで、階位は少将。
 保護した民草達の新たな安住の地を獲得するべく、今は猟兵活動の報酬でインド洋沖に浮かぶ『イエローローズ王国臨時政府』と称している武装タンカーの維持費を賄っているのだ。
「それにしても将官の暗殺任務ですか。確かに危険な任務ですが、数をこなせばゾルダートグラードの戦力低下を狙える絶好のチャンスです。この任務、成功させてみせましょう」
 ゾルダートグラードの本拠地『無限軌道都市ベルリン』に転送されてきたレヴィアは、周囲の視線をその身に幾つも感じ取った。
(なるほど、すぐにわたくしが余所者だというのは分かってしまっているようですね……ならば、あまり目立った行動は避けるべきですわね)
 姿は見えなくとも、間違いなく監視下に置かsれ手いるのは明白であった。
 故に、レヴィアは少し寂れたカフェに入店すると、店の最奥のテーブルを陣取って100%アラビカ豆を使った粗挽きブレンドのコーヒーとホットサンドを注文した。
(これで一応の体裁は『カフェで小休憩する旅行者』と言い張れますわ。それでは……)
 レヴィアは肩掛けの鞄の中から、この世界では存在しえないはずの代物を取り出した。
 それはあからさまにタブレットPCであった。
「では、早速このユーベルコードを使用しましょうか……『我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは虚構の契約を過去に刻む黄薔薇の誓約書。例え虚構でも契約を交わしたならば遂行は可能』……契約履行の時間よ、『|黄薔薇開花・虚構にして絶対の過去の契約履行《イエローローズ・ノンイグジスト・パーストプロミス》』……!」
 詠唱文言を口にしたレヴィアの手元のタブレットPCの画面がノイズで乱れる。
 同時に117枚の羊皮紙が出現してカフェの窓から小鳥のように空へ飛び立っていった。
 するとほどなくして、この『無限軌道都市ベルリン』周辺の情報が一斉に単発へ流れ込んでゆく。
(来ましたわね。このユーベルコードなら、ありとあらゆる情報が入手可能……なぜなら、それは『過去の契約』……『存在しない『過去の契約』を創り出し、その契約に対して因果律支配レベルで絶対に履行しなければならない』という凶悪極まる効力を持ちますの)
 今回は『兵器工場における武装メンテナンスの監視体制に関する情報を纏め、貸し出した使い捨ての電脳ユーベルコードでその情報を送信し、全てを忘れる』という契約を、ゾルダートグラードの警備兵へと知らぬまに押し付けて履行させるといった形だ。
 あの放たれた羊皮紙が命中した兵士は、無意識同然にレヴィアへ機密情報を送信した後に送信履歴を抹消したのちに行為そのものを忘却してしまうのだ。
 おかげで何処に監視の目が存在していて、何処に兵器工場が存在して、どの将官が非番で何処へ向かう予定なのかさえもレヴィアの掌の上だ。
「これで契約の履行は完了ですわね。相変わらずユーベルコードは何でもありね……」
 思わず溜息を吐いてしまうレヴィアの元へ、店主が自らコーヒーとホットサンドを運んできた。
「どうしたんだい、お嬢さん? 疲れた顔して?」
 店主の言葉にレヴィアは憂いを湛えた笑顔ではかなく笑う。
「いえ、思い切って知らない土地へ旅行へ来たものの、この先やってゆけるか不安になってしまいまして……」
「そうだったのか。ま、ここは何かと物騒だからな……。疲れたなら、お嬢さんの気の済むまで此処にいたらいい。どうせ軍人すら寄り付かねぇ、いつも閑古鳥が鳴く店だからな……」
「ありがとうございます、ご主人。ではしばらくお邪魔させていただきますわね」
 レヴィアは15歳とは思えないほど上品にふるまうと、熱々のコーヒーとホットサンドをしばし堪能するのであった。
「……さて、他の猟兵の方々はどう動くでしょうか?」
 タブレットPCの液晶画面上で明滅する反応……他の猟兵のマーキングに、レヴィアはワクワクしながらコーヒーの熱と香りに期待感を煽られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
暗殺作戦か…いいですねぇ…僕むきです

「でも機密施設を見つけないといけないんだよね☆もうこれは幼女ま」
してたまるかぼけぇ!?潜入任務だっつったろ!?
ベルリンが崩壊するわ!
これで我慢しろ!(UC発動
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を全員に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源や音匂いも隠蔽

メルシー軍団
【情報収集・視力・戦闘知識】
デスペラード・ジョーの部隊構成を細かく把握
まずはベルリンを散開してのマッピング
【空中戦】
三十人は飛び回りながら構造上人の近づきにくい場所を捕捉
残り+カシム
痕跡を残さず各工場の調査開始
特にジョーの関係者がいる場所は確実に捕捉
兵士達の会話にも聞き耳を立てて必要な情報を収集する



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は今回の任務に密かな歓びを感じていた。
「暗殺作戦か……いいですねぇ……天才魔術盗賊の僕向きな任務です」
 普段の奇行やスケベ言動で彼の基本設定を誰もが忘れがちだが、カシムはれっきとした凄腕シーフである。
 本来ならば得意の光学迷彩魔術を駆使して敵を欺き、音もなく一撃必殺を放って颯爽と立ち去ってゆく……そんなクールさが当初のキャラであった。
 だが気が付けばスケベ任務でハッスルしたり、トンチキ任務で場を引っ搔き回したり、挙句はIQが一桁程度と疑ってしまうほどのアホアホ言動で同行した猟兵達から「うわっ、ヤバい奴がいる……近寄らんとこ……」と遠巻きに避けられる始末だ。
「それもこれも懇意にしてる担当報告官のせいだぞ☆」
「それは否定しねーが大半はてめーのせいだぞこらぁ!」
 突如顔を出した相棒メルシーの鼻の両穴に、左の人差し指と中指を第二関節まで突っ込んで鼻フックの刑に処すカシム。
 もはやこれが2人の日常風景であった。
 鼻を塞がれたメルシーが恍惚の笑みを浮かべながらカシムに進言してくる。
「ふがふがっ♥ ご主人サマ♥ 今は機密施設を見つけないといけないんだぞ☆ もうこれは幼女ま――」
「してたまるかぼけぇ!? つかそーゆーとこだからな!?」
 指をメルシーの鼻の穴から勢いよく引き抜いたカシムは、そのまま大きく前へ踏み込んで相棒の首元へラリアットをぶちかました!
「げふぁ♥ クリティカルヒット……♥」
 ドМのメルシーはカシムに暴力を振るわれるたびに愉悦で顔を紅潮させて悦ぶのであった。
 対してカシムは倒れたメルシーの髪を掴んで起き上がらせて唸る。
「いいか? そのユーベルコードを発動させたら最後……今の僕の実力だと、分裂した幼女メルシー師団が1370個……人数にして2000万人の|大軍勢《おめー達》がこの首都に押し寄せることになるじゃねーか!」
「そのまま敵の本拠地を占拠! 蹂躙! 大勝利! ぺんぺん草も生えない更地に変えて一件落着だぞ☆」
「だから潜入任務だっつったろ!? ベルリンを崩壊させるな! あ、いや、いいのか? いや駄目だ……!」
 数々の悪行を生み出した極悪非道なユーベルコードこと対軍撃滅機構『戦争と死の神』……またの名を『メルシー春の幼女祭り』ならば、本当に首都崩壊が実現できてしまいかねない。
 しかし、あくまで今はいち将官の暗殺に留めておかねばならない。そういう予知であるがゆえ、必要以上の事を行えば暗殺任務自体が失敗しかねないからだ。
 その旨をカシムがメルシーにきつく灸を据えると、溜息を吐きながら彼は代案を提示した。
「ったく……今回はこれで我慢しろ! 万物の根元よ……帝竜眼よ……万象を支配せし竜の王の……っておい!?」
「「ひゃっはーーー☆」」
 途端、あれよあれよと137人の分身体へと分裂してゆくメルシー。
 その誰もがオリエンタルな中東風の踊り子衣装めいたドラグナーガールのコスプレに身を包んでおり、複製小型化したメルシーのキャバリア兵装を携えて空へ舞い上がってゆく。
「光学迷彩魔術を起動だそ☆」
「まずは空からこの敵本拠地を俯瞰して情報収集だね☆」
「見回りの兵隊の巡回路も丸わかりだぞ☆」
 まずは先行して30人の分身体がベルリンの空へ散らばってゆく。
 魔力回路で繋がっているカシムは、魔術で分身体の集めた情報を集積・分析するべくシーフフォン・カシムオリジナル……要は魔改造したスマートフォンを操作する。
「上空からのベルリンのマッピングは順調……僕たちも動くぞ」
 カシムと残りの107人の分身体もまた、光学迷彩魔術を自身に施し、一般市民の頭上5m上(建物の3階くらいの高さ)を低空飛行して情報を集めていく。地上でこの人数と行動するのはリスキーであるし、足音も響く。
 ならば低空飛行でいどうすれば、よもや見回り中の兵隊達も頭上に不審者が横切っていくなんて思いもしないだろう。
「ん? 北東と南西、そして南東の郊外に目立った巨大工場があるようですね。おそらくデスペラード・ジョーはこの3つのどれかに滞在しているはずです。デスペラード・ジョーの部隊の特徴は掴めましたか?」
 魔力回路を通じて他の分身体へ問いかけるカシム。
 これに1体の分身体が答えた。
「見回りの兵士や駐屯所に忍び込んで、兵士達の会話を盗み聞きしてきたぞ☆ どうやら標的は傭兵上がりの将官みたいだね? とにかく戦場で軍令を無視して作戦たる作戦などなく、敵部隊を皆殺しにしてきたから、|『ならず者』《デスペラード》の二つ名がついたっぽい!」
「なんかやべーやつだなおい? ん、待てよ? だとしたら、かなりの重装備出なきゃそんな物騒な二つ名がつくまで暴れられないはずだよな?」
 カシムの機転が標的の所在地を絞り込む。
「おい……この3つの工場で、物資を頻繁に運び込まれた形跡があるのはどれだ?」
 この問いに分身体の数十名が同じ工場を指し示した。
 カシムは確信する。
「きっとそこですね……なぜなら、デスペラード・ジョーが武器のメンテナンスを行うなら、大量の武装を一気に持ち込むはずです……そしてその材料や弾薬を補充するための物資の運搬が普段より多くなるはず。あからさまにトラックの出入りが激しい工場は怪しいですね……もう少し探りを入れてみるか……行け」
「「ラジャったよ☆」」
 カシムは最低限の護衛の為の人数だけを残し、100人近くの分身体を狙いの工場へ向かわせて調査させる。
 すると、ほんの僅かだが……軍用ジープに乗り込んで敷地内を移動するアルビノゴリラの姿を目撃する。
「ご主人サマ! ビンゴだよ!」
「ご主人サマの読み通りだったね☆」
「ふん……この天才カシムさんには簡単すぎる推察でしたね?」
 こうしてドヤ顔で標的の居場所を突き止めたカシム達は、ほかの猟兵達が集結するまで近くで身を潜めることにしたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャン・ジャックロウ
クックックッ、まさかゾルダートグラードを裏切った俺が本拠地『無限軌道都市ベルリン』であの白ゴリラ野郎の暗殺仕事とは流石に大胆不敵かねぇ。猟兵とは本当愉快な仕事だよ。

潜入させた【野良犬部隊・斥候班】に情報収集させるぜ。
後は表通りのカフェで腹ごしらえでもしながら『無線機』に報告が来るのを待つとするかねぇ。
『ゾルダートグラード軍服』を着ている俺はこの街には馴染みやすいってもんだ。
こういうのは堂々としてた方がいいんだよ。まさか裏切り者がこんな敵本拠地で優雅に茶を飲んでるとは思わないだろう。脳が理解を拒み勘違いだと思うってもんよ。

いい天気だ。…本当、暗殺日和ってもんだな。


【アドリブ歓迎】



 ――その男、凶暴につき。

 戦場で半ば皮肉交じりに謳われた数々の激戦での逸話は、まだ同胞の酒の肴にでもなっているだろうか。
「ま、元同胞って言い方が正しいがな?」
 くっくとオープンカフェのテラス席でふんぞり返るのは、ゾルダートグラード軍服を着込んだジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)である。
 彼はかつてゾルダートグラードに所属していたイヌ(雑種)の獣人で、『野良犬部隊』と呼ばれる行き場のないイヌ獣人達で構成された部隊の隊長であった。その活躍……否、悪名は自国に留まらず周辺の敵国にまで轟き、彼らの部隊が現れたと聞くやいなや慌てて逃げ帰った腰抜け達も存在したほどだ。
 しかし、そんなジャンも今は祖国から離反してフリーの猟兵として覚醒。今回の任務を聞きつけ、半ば面白半分に任務を遂行中である。
「クックックッ、まさかゾルダートグラードを裏切った俺が本拠地『無限軌道都市ベルリン』であの白ゴリラ野郎の暗殺仕事とは流石に大胆不敵かねぇ。猟兵とは本当愉快な仕事だ」
「お客様? ご注文はお決まりですか?」
 質素なエプロン姿の女性従業員(ウマの人馬階梯)が近付いてくる。
 ジャンは片手でメニューブックの頁をパラパラと開き、特にこだわりもなさそうにトントンとメニューのひとつを指差した。むしろメニュー名を見ずに指差している(当然だ、此処にいる目的は初めから食事ではないので注文するポーズだけでいいのだ)。
「こいつを頼む」
「あの、お客様? そちら……かなり量がありますが、おひとりで召し上がる気でしょうか?」
「ん……?」
 ジャンが適当に指差したそれは、なんと総重量1kgのボンゴレビアンコであった。
(勿論、原材料はすべて|糧食《レーション》であるが)
 だがジャンはクールに女性従業員へ告げた。
「すまねぇ。こいつの300gくらいのサイズは出来るか? 写真がつい目に入っちまってな。美味そうだから勝手に指が吸い込まれちまったみてぇだ」
 全部ウソである。
 だがジャンの言葉を素直に受け取った女性従業員が顔を綻ばせた。
「あ、ありがとうござます……! ええ、ウチのお店、パスタメニューが自慢でして! 写真からでも美味しさが伝わってくるって評判なんですよ! 勿論、通常サイズも承っております!」
「へぇ? そうか、じゃあ通常サイズを1つ。期待してるぜ? あと濃いブラックコーヒーも頼む」
「かしこまりました! セットメニューのサラダもお持ちしますね! 少々お待ちください!」
 女性従業員はパカラパカラと軽快に厨房へオーダーを伝えに戻っていった。
「……つか、でかでかと写真載せとくなよなぁ」
 苦笑いのジャン。
 その懐で突如、細かい振動が発生する。
「お、きたきた」
 ジャンは嬉々として軍服の上着のポケットから、板状の通信機……どう見てもこの世界には存在しえないはずのスマートフォンの画面をタップする。
 映し出されたのはこの『無限軌道都市ベルリン』の地図。そしてポップアップするメッセージの数々だ。

『ドーベル1より定期連絡。南西の兵器工場がやけに騒がしい。引き続き観察する』
『ボルゾイ2、北東の工場から南西の工場へ物資を運搬するトラックが大量に出ていくのを確認した』
『ハウンド3、白ゴリラのおかげで周辺の工場から部品をかき集めさせられていると整備兵が漏らしていた』

 彼らはジャンと共に祖国を裏切った『野良犬部隊』の斥候班の兵士達だ。
 ユーベルコードによって何処にでも駆け付けてくれるようになった彼らにジャンは依頼し、標的の居場所を特定してもらっているのだ。
 故に、ジャンはこうしてカフェで堂々と裏切った祖国で飲食を満喫できてしまうのだ。
「戦場において情報は生命線ってな。それにこういうのは堂々としてた方がいいんだよ。まさか裏切り者がこんな敵本拠地で優雅に茶を飲んでるとは思わないだろう。脳が理解を拒み、目の前の現実を勘違いだと思うってもんよ」
 裏切り者とはいえ、自国の軍服を着ているジャンは周囲と非常に馴染んでいる。
 実際、警ら中の兵士2人組が生け垣を挟んでジャンとニアミスしても、彼らは軽く軍帽に指を添えて挨拶をしてくれたくらいだ。
「さてと、集まった情報から推測するに、南西の兵器工場がキナ臭いなぁ……って、なんだぁ?」
 スマートフォンの画面が急にノイズが走る。
 これは第三者……しかも他の猟兵からの通信だ。
 ジャンは自分以外の猟兵も情報収集していると知ると、思わず口角が愉悦で吊り上がってしまう。
「へっ、おもしれーじゃねぇか。この端末はスペースオペラワールドとかいう宇宙世界で手に入れたオーバスペックな代物だっつーのに、こうも軽々とハッキングかましてくるたぁな? しかも情報共有だぁ? ……つくづくおもしれーなぁ、猟兵って仕事は」
 こうして顔も知らない他の猟兵からの情報共有に、ジャンは素直に応じて標的の居場所を更に絞り込んでゆく。
 ちょうどボンゴレビアンコのセットも届いた。
 ひとまずここは腹ごしらえをして、サクッといけ好かない白ゴリラ野郎を殺しに行くとしよう。
 晴れ渡った青い空を見上げて、ジャンは呟いた。
「いい天気だ。……本当、暗殺日和ってもんだな」
 そして粗野に啜ったボンゴレビアンコは、確かに絶品であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルル・マーナガルム
こー言うお仕事こそ|ボク《スナイパー》の出番だよね
ホログラムを纏った子機達を都市全体へ散開させる
(通信越しに遠吠えが聞こえる)
併用可能UC『フィルギア』起動、ボクは静かに隠れとこう

暗殺対象はかなりの重装備みたいだね
武装メンテだけでも、一つの工場で全部賄うと結構大掛かりな施設になっちゃうんじゃない?
もしそれを厭うなら、他の工場で作った部品を集めて最終工程だけを潜伏場所で、とか?
前者なら一際大きな工場を
後者なら他所から部品や弾薬が沢山集まる工場を探せばいいかな
特定のついでに
地形情報を纏めて都市の地図も作っちゃおう
脱出経路にも目星をつけておかなきゃね
もしデータを受け取れる猟兵さんがいたら共有したいな



 ウルル・マーナガルム(死神の後継者ヴァルキュリア・f33219)は得意満面の笑みで、着実に今回の任務のための情報収集にあたっている。
「こー言うお仕事こそ、|ボク《スナイパー》の出番だよね」
 彼女はUDC組織と連携する某国の武装偵察部隊『ノルニル』に属する|前哨狙撃兵《スカウトスナイパー》。
 当然、情報戦もお手の物である。
「ってことで、ムーンドッグス・ア・ゴーゴー! 小機達はやっぱり優秀だね。ハティも光学迷彩の展開ありがとね」
 ウルルのユーベルコードによって柴犬サイズの情報収集用四脚機動型スポッターハウンドの群れ(総勢120体)が街中に放たれ、あらゆる情報をウルルのヘッドマウントディスプレイ『S.K.O.R.』へ転送してきてくれるのだ。
 その間、どうしてもウルルは無防備になってしまうため、彼女は人通りの少ない路地裏に身を屈みながら相棒のハティに備わった試製7号高画質ホログラム投影機『フィルギア』による光学迷彩を纏って待機中だ。
 彼女は考察する。
(暗殺対象はかなりの重装備みたいだね。武装メンテだけでも、一つの工場で全部賄うと結構大掛かりな施設になっちゃうんじゃない? もしそれを厭うなら、他の工場で作った部品を集めて最終工程だけを潜伏場所で、とか?)
 そんな考察を立てていると、集まった情報から気になる内容がちらほら散見してきた。
(南西の兵器工場に物資の移動が一斉に行われている? これって、ボクの推察した後者の仮説ってことかな?)
 この都市には現在、周囲に3つの大きな兵器工場が存在する。
 そのうち2つが忙しなく稼働し、出来上がった物資を南西の兵器工場へトラックで運搬し続けているのだ。
 つまり、仕上げの最終工程を南西の兵器工場で行うと考えるのが自然で、そこに標的がいる確率が非常に高い。
(まぁそれが一番効率いいもんね。特定しやすくて助かる。重武装を一度に総メンテしようとするからだよ)
 ウルルはARキーボード入力で忙しなく指を動かし始めてゆくと、集積した情報から敵本拠地『無限軌道都市ベルリン』の3Dマップをあっという間に作成してしまった。その精巧さは放った子機達の性能の良さの証左でもあった。
(ついでだし、他の猟兵さんがいたら情報共有したいな。子機達、逆探知よろしくね)
 ウルルの命令をすぐさま実行に移した子機達は、あっという間に本拠地『無限軌道都市ベルリン』に滞在する猟兵達の居場所を逆探知してみせた。
 あとはそれぞれの端末のセキュリティの壁を軽々と跨いでハッキングすると、作成した3Dマップと集積した情報を添付して互いに情報交換を求めた。
「あ、きたきた! って結構スマートフォンやタブレット端末を持ち込んでる猟兵さんが多いね……!?」
 まさかのデジタル情報共有を果たせたウルルのおかげで、猟兵達は標的の居場所を高い角度で特定できた。

 ――ウルルの通信越しに遠吠えが聞こえる。
 ――だが声は聞こえど姿は見せぬまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『デスペラード・ジョー』

POW   :    ゴリ・バズーカ
単純で重い【無反動砲】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ゴリ・アームドフォート
レベルm半径内の対象全員を、装備した【携行型固定砲台の機関銃とビーム砲】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
WIZ   :    ゴリ・ドラミング
【ドラミングで発生した衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ティーゲル・ホルテンマイヤーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達は情報共有の結果、都市南西の兵器工場に標的である『デスペラード・ジョー』が滞在しているのを突き止めた。
 猟兵達は各々の手段で工場内部へ潜入すると、気付かれないように奥へと進んでゆく。

 そして、工場に併設された射撃訓練場に猟兵達は辿り着く。
 ここは完全防音仕様の部屋で、扉を閉めてしまえば外へ一切の銃撃音が漏れない素晴らしい施設だ。
 標的である『デスペラード・ジョー』は、退屈そうに手持ちの僅かな兵器で遠方の的を狙って暇を潰していた。
「くそ、まだかよ! いつまで俺様を待たせやがるんだ? って、ん、なんだぁ? てめぇら?」
 標的は猟兵達に気が付く。
 だが、まだ敵意を持っていないようだ。
「見かけねぇ顔だな? 悪ぃが今ここは俺様の貸し切りだ。とっとと出ていけ!」
 しっしと手で払う余裕すらある標的が、猟兵達へ背を向けた。

 今がチャンスだ……!
 助けを求められたり異変を感づかれる前に、標的の『デスペラード・ジョー』の暗殺を成功させよ!
レヴィア・イエローローズ
そちらに用は無くても、こちらには用があるのよ
瞬間『触れた存在・事象全てを破壊する真空の波』を全身に纏う事で攻防一体の状態でマッハ9強の速度で死角から強襲
ビーム砲に捉えられない様複雑に機動しながら急所を狙って手刀と蹴りを放っていく

触れた存在・事象全てを破壊する真空の波……それは振れた攻撃を逆に破壊する盾となり、矛としては何者も寄せ付けない切っ先となるのよ!

携行型固定砲台の兵装を破壊し、安全を確保した後で集中的に加速迫撃戦を挑んでいく

いずれは時を無限大に加速するかの如きUCも欲しいわね
まぁ、望んで世界が容認すればどんな強大なUCも手に入る……これも『六番目の猟兵』の強みなのよね


ウルル・マーナガルム
連携アドリブ歓迎
わざわざ防音の密室で待っててくれてありがと、ゴリラさん
それじゃ、パパパッとやっちゃおう

併用可能UC『ムーンドッグス』出撃っ
子機達が映し出す、ボクの姿のホログラムが一斉に飛びかかるのを隠れ蓑にして、少し離れようか
静かにライフルを構えて集中するよ
相手の銃口を塞ぐように狙撃を合わせよう
弾丸が上手く銃身を通れば、花が咲くみたいに銃身が裂けちゃうんだよね
ちょっと難しそうなら、サングラスの下の眼を狙おう
いくらゴリラのタフさがあっても、眼球は中々鍛えられないもんね

子機達の一部には、姿を隠しながら脱出の用意を初めてもらおっかな
安全地帯に戻るまでがお仕事だからね


ジャン・ジャックロウ
ゾルダートグラード時代からあの白ゴリラ野郎は気に食わなかったんだ。
俺とキャラ被り気味…むしろ武装が充実してる分、野郎が上なんて言われた物だぜッ!

軍服着てるしまだ気付かれねえな。ここは更に油断を誘うか。
いや~、デスペラード・ジョーさんじゃありませんか?あ、肩でもお揉みしましょう。
と、背後から近付いて銃剣でブスりだッ!
おっとこんだけ近付いたら裏切り者の俺だとバレるか。

ドラミング態勢ッ!?全力で範囲外に後退だ、間に合うかッ!?
こんだけ離れちまったら奴の兵器の火力分、こっちが不利かッ!?
…ならコイツはどうだ、【ロックオン・デス】。
テメエの為の取って置きの凶弾だ。たっぷり味わいなッ!


【アドリブ歓迎】


カシム・ディーン
さて…どうもこの最強無敵のカシムさんに不名誉な噂が出まくってるようなので…此処はクールにスタイリッシュにキめてやろうじゃねーですか
「ひゃっはー☆メルシーも創造神としての凄さを見せちゃうぞ☆」

ご丁寧に此方を無視してくれるなら好都合

【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
ジョーの動きと体格と立ち方や動きから攻撃の癖や防御の癖
何より現状の肉体における不具合が起きている部分…特に本人さえ気づいていない可能性が高い場所を捕捉
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己達に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で匂いと音も隠蔽
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・空中戦】
超高速で飛び回り鎌剣と短剣の連続斬撃で切り刻み武装も強奪!!



 改造アルビノゴリラのデスペラード・ジョーが猟兵達に背を向けて歩み遠ざかる。
 全く猟兵達の事など歯牙にかけていない様子。むしろ無警戒過ぎて却って此方が訝しがるほどだ。
 暗殺の事が露見していることはあり得ないはずだが、万が一、ジョーの危険察知能力が働いていたとしたら、背を向いている奴は猟兵達の出方を窺っているかもしれない……そう思わせる素振りであった。
 故に、まずはゾルダートグラード軍服を着用しているジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)が動いた。この場で自然に行動できるのはジャンが最適だからだ。
「いや~、武勇伝に事欠かないあのデスペラード・ジョーさんじゃありませんか? あ、肩でもお揉みしましょうか? 俺、以前からアンタの事を色々と注目してたんですよ!」
 おべっかで油断させながらジャンがそそくさとジョーの背後へ忍び寄る。
 ジョーは軽く振り返ると、同じ軍の制服を着た犬獣人を一瞥した。
「はん……っ! つまり俺様のファンってとこか? こんなとこまで押しかけやがって。鬱陶しいぜ!」
 だがその声色は僅かに上ずっている。口では拒絶しているが内心は嬉しいのがバレバレだ。
 ジャンはその口ぶりに犬歯を剥き出しにして低く唸った。
「ケッ! そうやってすぐ調子に乗りやがる……! ゾルダートグラード時代から|白ゴリラ野郎《テメエ》は気に食わなかったんだ! 大体、俺とキャラ被り気味……つか、むしろ武装が充実してる分、テメエが格上なんて言われたもんだぜッ! その恨みを思い知りやがれッ!!」
 ジャンは怒りに任せて、背中に隠し持っていた銃剣【ダカーハ】のブレードをジョーの背部へ一突きした!
 腎臓付近へ深々と突き刺さった刃を横凪に払えば、斬り裂かれた筋肉と脂肪から大量の鮮血が噴き出し始めた。動脈を切断したらしく出血はみるみるうちにジョーのアルビノの毛皮を赤く染めていった。
「うぐぁッ!? て、てめぇ! 何しやがる!? って、おい、そのツラ……思い出したぜ! この裏切り者の野良犬部隊がぁ!」
「おっと! 流石にこんだけ近付いたら裏切り者の俺だとバレるか! ああそうさ! ついこの間までは軍の狗。でも今は正義の猟兵様だぜ? ケヒヒヒヒ、テメエみてぇな悪党を殺しに来たのさ!」
 銃剣を構え、今度は何度も引き金を引いてジョーの巨体へ銃撃を浴びせる。
 肩や腹部から真紅の華めいた血飛沫が飛び散るたびに、ジョーの身体が後ろへよろめいてゆく。
「クソが! てめぇら許さねぇ!」
「許すも許さないも関係ないわ。というかそちらに用は無くても、こちらには用があるのよ」
 そう告げたのはシカの戦禍階梯獣人にして亡国の女王ことレヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)である。
 次の瞬間、彼女の身体に凄まじい勢いの空気の渦が生まれはじめ、それはやがて真空波となって薔薇の花弁が如く纏ってみせる。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは遍く接触した存在と事象を破壊する真空の波を纏う御業。肉体に付与された後に疾走せよ――『|黄薔薇開花・鹿神終焉崩壊真空波《イエローローズ・ホロウウェイブエンドブレイク》』! このユーベルコードが発動した瞬間、貴方の死は確定したわ!」
 レヴィアが悠然と佇む少し後ろで、ウルル・マーナガルム(死神の後継者ヴァルキュリア・f33219)とカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)も戦闘準備を整える。
「わざわざ防音の密室で待っててくれてありがと、ゴリラさん。それじゃ、パパパッとやっちゃおう。そっちも準備いいかな?」
「ええ、僕達もすぐに行けます。というか……どうもこの最強無敵のカシムさんに不名誉な噂が出まくってるようなので……此処はクールにスタイリッシュにキめてやろうじゃねーですか」
「え、あ、ふーん……? ……頑張って?」
 カシムが任務の主目的以外の事でメラメラと燃えている様子に、ウルルは一歩距離を取ってみせた。
 カシム君、マジそういうところだからな?
「ひゃっはー☆ メルシーも創造神としての凄さを見せちゃうぞ☆」
 カシムの相棒メルシーも場違いなほど明るく振舞うので、ウルルはひとまず戦闘に集中することにした。
「前の任務でもニアミスしてたっけ。相変わらずなんだかキャラが濃いコンビだなぁ……とりあえずボクは|狙撃手《スナイパー》なのでちょっと離れるね? ハティ、準備はいい?」
『ムーンドッグス出撃準備完了。いつでも号令を、ウルル』
 四脚機動型スポッターハウンド『ハティ』の返答にすかさずウルルはユーベルコードを発動させた。
「オーケー! 『ムーンドッグス』出撃っ!」
 途端、121体の機械犬の子機達が召喚されてホログラム迷彩を戦場である射撃訓練場にまき散らす。
「な、なんだ? あの女がたくさん出てきやがった? それに部屋の作りまで変わっちまったぞ!?」
 このユーベルコードによって、在りもしない遮蔽物がホログラムで再現されたり、デコイのウルルの姿が多数出現させてジョーを惑わせるのだ。
(この間にボクは後方へ下がらせてもらうね?)
 そしてベストな狙撃ポイントを探るべく、ウルルは光学迷彩を纏って射撃訓練場内を素早く移動し始めた。
「ご主人サマ! 光学迷彩を纏う猟兵さんがメルシー達のほかにもいるよ!」
「しかもホログラム幻影を駆使して敵を惑わせるとは大したものですね。僕たちも負けてられねーぞ!」
「こっちも光学迷彩魔術を発動しちゃうぞ☆」
 カシムとメルシーは互いに光学迷彩魔術を発動させて姿を周囲の景色と溶け込ませてゆく。更に水魔法を応用して熱源も遮断し、ユーベルコードによって空中に浮かび上がることで足音も消してしまう。
 これでジョーはカシムとメルシーの気配を辿るのが困難な状況に陥った。
 一方的な戦況にジョーは焦りの色を隠せない。脇腹からは未だ出血が酷く、長引けば失血死は免れないだろう。
「ふざけんじゃねぇ! こんなところで死んでたまるかぁ!?」
 ジョーは整備したての武装を素早く装着すると、射撃訓練場内をデタラメな火力で一斉射撃しはじめたではないか。
「これが俺様のユーベルコードだ! こいつで戦場に屍の山をいくつも築いてやったぜ! とっとと死ね!」
 迫撃砲や機関銃、更にはビーム砲まで持ち出してのオールレンジファイア!
「おい馬鹿野郎! 閉所空間で絨毯爆撃とか馬鹿かテメエは!?」
 慌てて逃げ惑うジャンが悲鳴を上げる!
 対してウルルはすかさず射程外ギリギリまで逃れ、カシムとメルシーはそもそも念動障壁を展開しているので攻撃を弾き返している。
 レヴィアに至っては、澄ました顔で荒れ狂う砲撃の嵐の中を闊歩してジョーへ歩み寄ってゆくのだ。
「そんな砲撃ではこの黄薔薇の花弁は散らすことすら叶わないわ。何故なら、わたくしが纏った『触れた存在・事象全てを破壊する真空の波』……それに触れた敵の攻撃を逆に破壊する盾となり、それをぶつける事で何者も寄せ付けない鋭き矛となるのよ!」
 上段から手刀を振り下ろすレヴィア。
「これが、超常を超える埒外の異能……ユーベルコードよ!」
 その動作と連動して真空波が空気の刃を象って、ジョーが背負う携行型固定砲台の兵装を真っ二つに斬り裂いてみせた。これによりジョーのビーム砲が強制停止!
「なんだと!? てめぇ、いつの間に俺様の背後を!?」
 さっきまで目の前にいたレヴィアが一瞬でジョーの背後へ移動している!
 気を良くしたレヴィアはジョーの周囲を挑発するように駆け回り始めた。
「わたくしの動きが捉えられるかしら? これがマッハ9強の超音速機動よ!」
 獲物をいたぶる猫のように、じわじわとアルビノゴリラの身体を斬り刻んでゆくレヴィア。
 だが、左右から聞こえた仲間の声に彼女はたんっと後方へ距離を取った。
「そこ、射線が塞がるから退いて!」
「巻き込まれたくなかったら……そこを退け……!」
 ウルルとカシムの鬼気迫る声。
 レヴィアはいくら絶対無敵の矛と盾を纏っていても、他の猟兵の妨げになるのは本意ではない。
 故に彼らの意思を尊重してマッハ9で後退した。ついでにジャンの首根っこを掴んで一緒に退避させてゆく。
 その刹那、左右から必殺のユーベルコードが同時にジョーへ激突した。
(じぃじ直伝の|跳弾狙撃《リコシェアーツ》だよ。狩人の弾丸は獲物を逃がさないんだから!)
 ウルルのユーベルコード『|ノルニル達の心得【焔の眼を持つ者の如く】《ノルンズノーレッジ・バーレイジ》』から発射された跳弾が壁や天井を駆け巡って狙い澄ました一点へ向かって飛び込んできた。
「やべぇ! 急所を守らねぇと!」
 ジョーが必死に頭をガードしてみせる。
 しかし、ウルルの狙いはそこではない。
「急所を狙うと思った? 残念! ボクの狙いは、その機関銃の銃口だよ!」
 なんと、大口径とはいえ僅かな大きさの穴の中へ跳弾が魔法のように吸い込まれてゆく……!
 そうとは気付かずにジョーはウルルの声がする方へ機関銃の銃口を向けてしまう。
「馬鹿が! 声を出したら居場所がばれるだろうが!!」
「そうだね。当然、ボクを狙おうと銃口を向けるよね?」
 ウルルがニヤリと口角を釣り上げたその時、機関銃の銃口を塞ぐように跳弾が敵銃身の中へ突っ込んだ。
 KABOOOOOM!
 次の瞬間、機関銃の銃身は花弁が広がるかの如く四方八方にめくれあがって大爆発!
「うぎゃあああぁぁっ!? 暴発だとぉ!?」
 機関銃を握っていたジョーの右手の半分が暴発の衝撃で吹き飛んだ!
「いででででえぇぇーッ!! お、俺様の指がなくなっちまったあぁぁ!」
 激痛で泣き喚くジョーへ、今度はカシムとメルシーのマッハ40の超音速連携W斬撃が襲い掛かる!
「指ごときでガタガタ抜かすんじゃねー!」
「そうだぞ☆ じきに全身がバラバラになちゃうからね☆」
 カシムのダガーが、メルシーのビーム大鎌剣ハルペーが、縦横無尽にジョーの身体を武装ごと解体してみせる。
 あまりの高速斬撃ぶりに、傍から見ているとジョーの全身から血液が搾り取られてるかのように見えてくるほどであった。
「おいおい、俺の出番も残しておいてくれよ? そいつのために新しいユーベルコードを用意してきたんだからなぁ?」
 無差別爆撃を何とか凌いだジャンも銃剣を身構える。
 しかし死にぞこないのジョーがドラミングの構えを見せて最後の抵抗を開始!
「武器が使えねぇならこれでどうだぁ!? ウホホホオォォ!」
 掌で自身の胸を叩くことで、衝撃波で周囲の猟兵達を無差別攻撃し始めた!
「ここにきてドラミング態勢ッ!? 全力で射程外に後退だ、間に合うかッ!?」
「おいワン公! メルシーの手を取れ!」
「ワンちゃんおいで~☆」
 一瞬でジャンのところへ駆け付けたカシムとメルシー。ジャンをピックアップして一気にドラミングの射程外へ逃れてみせた。
「ああ、助かったぜ! つかこんだけ離れちまったら奴の兵器の火力分、こっちが不利かッ!? ……ってなんてな? こうなることも想定済みだぜ! ならコイツはどうだ? 狙いは外さねぇぜッ!」
 構えた銃剣から一撃必殺必中の魔弾が発射された!
「|死を誘う魔弾の射手《ロックオン・デス》! こいつが俺の切り札だ! テメエの為の取って置きの凶弾だ。たっぷり味わいなッ!」
 真っ直ぐ飛んでゆく凶弾がジョーの心臓を狙う。
 しかし、ドラミングの衝撃波の勢いが僅かに弾速を超えたのか、凶弾が失速し始めたではないか。
 ジャンの狙いは失敗してしまうのか?
 だがそこにはレヴィアがまだ立っていた。
「この真空の波を纏って移動すれば攻撃力は4倍よ。つまり、飛んできた弾丸をわたくしが走りながらこの『黄薔薇の黒檀杖』で野球の要領で撃ち放てば、マッハ9強に加速した弾丸の攻撃力もまた4倍になるわ!」
 ユーベルコードならではのトンデモ理論を披露したレヴィアは、強打者めいて飛んできた弾丸が消滅する前にダッシュして杖で強打!
 カキーンと弾き返された死を運ぶ凶弾は、見事にジョーの心臓に直撃した!
 更に振り抜かれた杖が真空波を纏って真一文字にジョーの腹部を掻っ捌く!
「が、ハッ――!?」
 大量の血反吐を床にまき散らし、膝を付いたジョーの手が止まる。
「うまくいったわね。いずれは時を無限大に加速するかの如きユーベルコードも欲しいわね……まぁ、望んで世界が容認すればどんな強大なユーベルコードも手に入る……これも『六番目の猟兵』の強みなのよね」
 レヴィアの機転によって完全にジョーの攻撃が止んだのを確認したウルルは、立て続けに2発の跳弾を発射!
 カシムとメルシーも跳弾のルートを瞬時に捕捉し、もう一度突撃を開始!
 跳弾は不測の軌道を描きながら、ジョーのサングラスの左目を貫いてみせた。
「いくらゴリラのタフさがあっても、眼球は中々鍛えられないもんね。あともう一か所……」
 ウルルが2発の弾丸を放ったその理由、カシムは理解していた。
「おい白ゴリラ……さっきからやけに左肩を庇ってるじゃねーか? そこはメンテナンス、まだなんだろ?」
「つまり左肩付近が脆いってことだぞ☆ あと魔力反応も濃いから、そこが急所だよね☆」
 ゾルダートグラード軍の獣人は改造手術を施された『|機械兵士《ゾルダート》』である。
 つまりデスペラード・ジョーも身体の何処かが機械化しているのは明白である。
 故に心臓を破壊されても即死に至らずに済んでいるのだ。
 だが、カシムはメンテナンスと聞いてジョー自身のメンテナンスも行うはずだと推察した。
 メンテナンス直後はすぐに身体が馴染むとも考えにくい。
 ならばそこを狙えば勝機があるはずだ、と。
「メルシー! 左肩を斬り裂け!」
「おけまる水産☆ ついでに請われた武装も腕ごと強奪だぞ☆」
 ビーム大鎌剣ハルペーがジョーの左肩をスパッと削ぎ落した。
 すると、露わになったのは真の|心臓《コア》と呼べる真っ赤な動力核だ。
 そこへ一直線のウルルの放った2発目の跳弾が深々と突き刺さる!
 ガラス玉が砕けるような甲高い音が戦場に響いた刹那――。

「ぎゃあああぁぁ!?」

 デスペラード・ジョーは断末魔を上げると、全身から紫電をスパークさせた後に轟音を共に爆発四散したのだった。

 ――それから数分後。

 かくして、デスペラード・ジョーは猟兵達の手で暗殺された。
 あとはこの敵の本拠地であるベルリンから脱出しなくてはならない。
「そうそう、一応、余った子機を工場の外へ繰り出しておいたよ。途中までならホログラム迷彩で気付かれずに移動できるから役立ててね?」
 ウルルの粋な計らいに、レヴィアもジャンもカシム達も厚意に甘えるのだった。
 最後に、ジャンは動かなくなったジョーへ、喉に絡まった痰を吐き掛けた。
「カカカ……ペッ! ったく、マジで機械の身体なんてろくでもねぇな。死ぬまでそれに気付けなかったテメエはとんだ間抜けだったぜ、ケヒヒヒヒ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『死を運ぶ闇夜の狙撃手』

POW   :    とにかく逃げて逃げて逃げまくれ!

SPD   :    飛んできた弾丸を素早く回避する!

WIZ   :    魔術や賢さを活かして凶弾から身を守る!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 無限軌道都市ベルリンに夜の帳が落ちる。
 兵器工場から脱出した猟兵達は、帰路を急ぐ一般市民に紛れて街の外へ脱出するべく北を目指していた。
 ベルリン郊外北部まで逃げ切れば、待機しているグリモア猟兵の支援によって転移による離脱が可能だからだ。
 あれだけの戦闘が嘘みたいに町はいつもの日常を謳歌している。
 このまま無事に脱出できる、と思っていた矢先であった。

 UHHHHHHHHHHHHH!

 突如として街中から鳴り響く奇妙なサイレン音!
 一般市民は慌てて近くの建物へ駆けこんでゆく。
「おい、空襲警報ってマジかよ!?」
「ほら急いで! 避難所の防空壕まで走るわよ!」
 大混乱の一般市民の中で、猟兵達だけが荷が起きたのか把握できずに立ち尽くしていた。
 そしてあっという間に大通りから人通りが消えてしまった。
 どうしたものかと無人の街を進んでいく猟兵達。
 次の瞬間、身を差すような殺気が此方へ飛び込んでくるのを察知!

 KABOOOOOM!

 咄嗟に前へ身を投げた猟兵達は、自分達がいた後方部で発生した大爆発に目を見張った。
 これはまさか、ロケット砲で狙撃されたのか!?
 そして立て続けに今度はライフルによる狙撃弾が、間一髪で己の顔の間近を横切った。
 これはよもや、暗殺が軍部に露見したということであろう。
 そして市民へ事実を隠蔽しながらも猟兵達を殺害するために、嘘の警報を流してみせたのだ。

 これはとてもまずいことになった……!
 全方位から狙われているのが第六感ですぐに把握できてしまうほどの殺気が街中に満ちている!
 しかも空襲警報という名目があるため、平気で敵軍部は街ごと猟兵達を潰せるのだ。
 なんとかしてこの包囲網を突破し、北部郊外の離脱ポイントまで到達しなくては命が足りない……!
ジャン・ジャックロウ
一仕事の終わりは気分爽快だな。
昼間のカフェはまだ開いてるかな?パスタが旨かったし帰る前に晩飯でも食って…警報?
ヒャッハッハッ、流石にバレたかッ!?どうやら晩飯はお預けらしい。さっさと尻尾巻いて逃げるとするか。

あの空襲警報を利用させてもらうかね。
『無線機』で【野良犬部隊・戦闘機班】を出撃させるぜ。
空から索敵させてスナイパーを機関銃で強襲させたり、空き地にダイナマイト落とさせて挑発したり、本当の空襲で奴らも大混乱するだろ。
隙をついて大通りに一機、低空飛行させてジャンプで戦闘機にしがみつき、そのまま空からとんずらするぜッ!

それでは諸君、ごきげんよう。


【技能・集団戦術、索敵、ジャンプ】
【アドリブ歓迎】


レヴィア・イエローローズ
ならばこそ、このUCを!
『オルクス・ドミヌス』!
『認識の概念を支配』し、わたくしを世界含めて『対象になることがない』事でゾルダートグラードは愚か世界すら認識不能状態になる!
『世界そのもの含めて万象全てからも認識できないが、わたくしと猟兵、グリモア猟兵だけは認識できる』状態で、無になる事なく悠々と包囲網をぬけて行くわ

これがゾルダートグラードの全霊の包囲網…良い予行演習だったわ
続きは、どうなるかしらね?
そう言って北部郊外に迂回しながら向かい、脱出するわ



 ――時は少し遡る。
「一仕事の終わりは気分爽快だな。そう思わねぇか?」
 ジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)は喧騒の中、隣に歩くレヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)へ声を掛けた。
 レヴィアは戦闘中の明快かつ年相応の口調から一変、社交的な淑女たる『王女モード』に切り替えて言葉を返す。
「ええ。胸のつかえがとれて、わたくしも清々しい気分ですわ」
 胸元に手を置き、たおやかに微笑むレヴィアにジャンも思わず口端から犬歯を覗かせて笑い声を漏らした。
「ケヒヒヒヒ、そいつは善いや。なぁ、まだ急いで脱出することないだろ。ちょっくら飯でも食おうぜ?」
「あら、いいですわね! どこかおすすめのお店があるのかしら?」
「ああ、昼間のカフェはまだ開いてるかな? パスタが旨かったし、帰る前に晩飯でも食って……?
 と、ここで唐突な空襲警報が街中に鳴り響く。
 一般人は慌てて避難してゆき、猟兵達だけが大通りに取り残された。
「警報?」
 訝しがるジャン。対してレヴィアは注意深く周囲を見回す。
「これって、まさか……ハッ!? 前へ飛びますわよッ!」
「ッ! やべぇ!!」
 レヴィアとジャンは前方へ咄嗟に転がるように飛び出した。
 そして背後に轟く轟音と爆風に全身が吹っ飛ばされた!
「ケヒヒヒヒ、ヒャッハッハッ! ハッ、流石にバレたかッ!? どうやら晩飯はお預けらしい!」
 ジャンは先程まで自分たちが立っていた場所がロケット砲で狙撃されて爆散したのを確認すると、笑いが込み上げてきた。戦場の匂いを感じて精神が昂ってゆく。
「さっさと尻尾巻いて逃げるとするか。走るぜ?」
「お待ちくださいまし? ならばこそ、このユーベルコードを!」
 その場から立ち去ろうとするジャンを引き留めたレヴィアは、唐突にユーベルコードを『開花』させた。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは複合した災魔十属性に応じて組み上げられる魔導蒸気機関。その完成を以て蒸気の果てを見る――『|黄薔薇開花・大魔王式魔導蒸気機関《イエローローズ・オーバーロードドライブ》』! 出でよ、『オルクス・ドミヌス』!」
 次の瞬間、災魔十属性を組み合わせた魔導蒸気機関がレヴィアの目の前に忽然と姿を現した。
「これは『認識の概念を支配』し、わたくしと貴方、そして世界含めて『対象になることがない』事でゾルダートグラードは愚か世界すら認識不能状態になりますの!」
「あ? つまり……どういうことだ?」
 首を傾げるジャンへ、レヴィアま魔導蒸気機関を抱えながら悠々と街を闊歩し始めた。
「おい! 危ねぇぞ! って、何で狙ってこないんだ、奴ら?」
 急に此方への狙撃が止まったことにジャンはますます混乱する。
 レヴィアは余裕の態度でこの現状を解説し始めた。
「つまり……『世界そのもの含めて万象全てからも認識できないが、わたくしと猟兵、グリモア猟兵だけは認識できる』状態を作り出すのが、この魔導蒸気機関であり、それを生み出すことが出来るのがわたくしのユーベルコードですのよ」
「おいおい、マジかよ? ユーベルコードってすげえな……!」
「感心している場合ではありませんわ、犬の軍人さん? 脱出に時間をかけられない状況は依然変わっておりません」
「なんでだよ? このまま堂々と街の北を目指せばいいだろうが?」
「ええ、出来ればそうしたいのですが……目標を失った狙撃手が、次にとる選択肢といったら……」
 含みを持つレヴィアの言葉。
 その意味の答え合わせが、今まさに突っ込んできた。
 KABOOOOOM!
 猟兵達の頭上を通り越して、脇道のブティック店へロケット弾が着弾して爆発炎上!
「チッ! そういうことかよ! 目標をあぶり出す為に手当たり次第に撃ちまくってきやがった!」
 空襲警報もこの伏線だ、敵軍部は初めから街をぶっ壊すつもりで猟兵達をこの街から逃がさないつもりだったのだ。
「お判りいただけたようですわね? それじゃ、駆け抜けましょう!」
「いや、今度は俺が『待った』をかけさせてもらうぜ?」
 ジャンがレヴィアの手を取ってその場に留めさせた。
「こういう時にうってつけのやつらがいるんだぜ? ……発進しろ、戦闘機班ッ! 上空から引っ掻き回してゆけ!」
『I copy!』
 無線機で連絡を受けたジャンの協力者である野良犬部隊の航空戦力がベルリン上空に出現。
 そのままなんと、本当に爆弾を投下して空襲を実現したではないか!
「空から索敵させてスナイパーを機関銃で強襲させたり、空き地にダイナマイト落とさせて挑発したり、本当の空襲で奴らも大混乱するだろ」
 事実、敵軍部は上空の空爆に大混乱だ。
「この空襲警報を利用したのですね! さすがですわ!」
「おいおい、照れるねえ? んじゃ、お迎えが来たぜ?」
 頭上には低空飛行で向かってくる戦闘機。
 ジャンとレヴィアは戦闘機の垂らした縄梯子に掴まり、そのまま上空へ逃避行していった。
「それでは諸君、ごきげんよう」
「これがゾルダートグラードの全霊の包囲網……良い予行演習だったわ。続きは、どうなるかしらね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
おいおい…平穏無事に帰れると思ったらこれですか
一人逃げるなら…まぁ楽ちんだろーが…
(他の連中を援護しつつ、か。考えてみれば昔はそんなよゆーなかったな)
「ご主人サマ☆皆を助けつつ脱出なら幼女ま」
やらねーよ!目的を違えんな!?(敵にこっちの手札を見せすぎるのもあれだしなっ)
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵からの狙撃…射線(OP含む)から攻撃を行う敵の捕捉と分析
(一応オブビリオンかどうかも。オブビリオンなら抹殺

あくまで隠密だ!これで我慢しろ!
UC発動
「「ひゃっはー☆」」
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を全員に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で音や匂いも隠蔽
そのまま散開っ!捕捉した狙撃手を狙う!

【念動力・空中戦・弾幕】
こっそりと念動光弾で蹂躙

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣や短剣で切り刻み武装強奪
可能ならどうして此方を狙ったのかと向こうの状況の引き出しを狙う

尋問や状況把握も盗賊の嗜みって奴です

必要な情報とお宝を手に入れれば後は光学迷彩を維持したまま脱出
必要時は他の参加者の援護を行います!


ウルル・マーナガルム
連携アドリブ歓迎
速攻で遮蔽物に飛び込む!
すごいや
夜間でこんな正確に撃ってくるなんて
『こちらの世界にも腕利きの同業者が居るようです。早急に対処を、ウルル』
オッケー、負けらんないもんね!

事前に作った地図を思い出す
ボクらの退路がある程度バレてると仮定
敵の射線が通るなら、こっちから撃っても届く位置に居る可能性は高い
さっきの狙撃の着弾地点と照合して狙撃手の居る方向と距離を概算
スコープの反射とかが見えれば位置を特定できるんだけど…
併用可能UC『ムーンドッグス』出撃
半数はボクや味方のホログラムを纏って囮役、もう半数は狙撃手を索敵
ボクとハティはホログラムで隠れながら、少しずつ離脱ポイントへ退がるように位置を変えつつカウンタースナイプだ
向こうが撃ってきた時のマズルフラッシュも見逃さないよ
隠れられて射線を切られたら、跳弾で無理やり届かせちゃう
本当に爆撃機でも呼ばれちゃう前に、迅速に脱出を完了させなきゃね



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とウルル・マーナガルム(|死神の後継者《ヴァルキュリア》・f33219)は、敵軍部からの狙撃から身を隠すため、すかさず銀行入り口の太い柱の影に飛び込んだ。
「おいおい……平穏無事に帰れると思ったらこれですか」
「迫撃砲とか、殺意高すぎて草生えるんだけど☆」
 カシムの相棒メルシーもこの状況には思わず苦笑いを浮かべてしまう。
 一方、ウルルは冷静に相棒兼お目付役の猟犬ロボット・ハティに情報収集をさせていた。
「すごいや。夜間でこんな正確に撃ってくるなんて」
『解析完了。こちらの世界にも腕利きの同業者が居るようです。早急に対処を、ウルル』
「オッケー、負けらんないもんね! ってそういえばこの街の地図を作ったっけ。それを確認して……」
「おい、ウルルとか言ったか……? この地図、おめーが作ったのか?」
 潜入時にウルルが作成して猟兵達へ配布したベルリンの3Dマップを、カシムはスマートフォン片手に眺めていた。
「相手はここがホームだ……僕達の逃走経路くらい、簡単に絞り込まれてないか?」
「あ……そっか。これだけの人数に包囲されてるもんね。既に要所要所で封鎖されてるよね……なんで気付かなかったんだろ?」
 ウルルは自分の慢心を猛省すると同時に、敵側の心理に立って戦況を俯瞰する。
「あれ? ってことは、敵の射線が通るなら、こっちから撃っても届く位置に居る可能性は高いよね? つまり、狙撃手の居場所の割り出しは意外と容易なのかも? う~ん、でもこう暗いと厳しいかな? さっきの狙撃の着弾地点と照合して……せめてスコープの反射やマズルフラッシュが見えたらいいんだけど」
 ぶつぶつと計算式を組み立てて勝機をもぎ取ろうとするウルルへ、カシムが声を掛けた。
「なぁ……マズルフラッシュが見えればいいのか?」
「えっ? あ、うん! そうすればボクのこのヘッドマウントディスプレイで瞬時に居場所とここからの距離を弾き出せるよ?」
「そうか……よし、メルシー。出番だ……魔力を回す、行ってこい!」
 相棒に命令を下すカシム。だがメルシーはカシムの顔を見詰めてニマニマと笑みを浮かべるばかり。
「おいてめー、早く行けって」
「ご主人サマ~? 変わったね~?」
「何がだ……?」
「だって~、今までだったらメルシーと一緒にさっさとトンズラかましてたでしょ? でも今はウルルちゃんをどうにか逃がそうと必死に考えてる。や~さ~し~い~☆」
「……うっせ。レディーを窮地から救うことに何の問題があるんだ? つか確かに、一人、いやおめーと逃げるなら……まぁ楽ちんだろーがな……」
 メルシーに指摘されて顔を赤らめるカシム。
 猟兵に覚醒仕立ての荒んだ頃と比べたら、カシムは随分と『人間』らしくなったのだ。
 そんなツンデレぶりを発揮する|契約者《あいぼう》に、メルシーは上機嫌で供給された魔力を発揮する。
「ってことで、ご主人サマ☆ 皆を助けつつ脱出なら幼女ま――」
「やらねーよ! 目的を違えんなッ!?」
 ちなみに、メルシーが推奨したユーベルコードは『2千万人のメルシー分身(幼女の姿)がこのベルリンに押し寄せる』という悪夢のような内容である。許容できるわけがない。
「えーっと、仲睦まじい様子で申し訳ないんだけど、そろそろ動かないとやばくないかな?」
 ウルルが言うやいなや、ウルルとカシムの間を機関銃の弾幕が横切ってゆく。
 BATATATATATATA!
 銀行入り口の窓ガラスが粉砕!
「時間もないし、打開策があるならボクもそれに乗るからさ。敵の位置を把握できるヒントをあぶり出してよ」
「そうだな……時間がないか。でもこちらも手札を見せすぎたくはねぇ……よし、行くか」
 カシムはメルシーへ追加の魔力を送り込むと、メルシーの背中を蹴っ飛ばして柱の外へ押し出した!
「まずは|メルシーを盾にする《バカガード》!」
「あん♪ ドメスティックバイオレンス、アーッ!?」
 途端、メルシーへ向かって一斉掃射が開始される!
 たちまちメルシーの全身が蜂の巣めいてズタズタのボロボロになってゆく!
 そして、ありとあらゆる箇所からマズルフラッシュが確認できる!
「ちょっ、相棒さんが死んじゃう!?」
 焦るウルルが銃を身構えた。だがカシムがこれを制止した。
「待て、ウルル……あいつは大丈夫だ。なぜならメルシーは……ドMだからな!」
 ドヤ顔に染まるカシムにウルルが唖然と口を開く。
「そ、そういう問題!?」
『ウルル、此処は彼の言葉に従いましょう』
「ハティまで! って、これは……?」
 ウルルは装着したヘッドマウントディスプレイへ送らて来たハティの情報に目を疑った。
『はい、メルシーさんの何か様子がおかしいです。メルシーさんの内包エネルギー量が急激に膨張しています』
「おい馬鹿かメルシー!? それは指示してねーだろ!? 手の内を明かすんじゃねー!」
 何やら焦るカシム。
 その目の前でメルシーの全身が神々しく光を放つと、その質量が一気に膨れ上がってゆくではないか!
『フゥ~……♥ メルシー、興奮しておっきくなっちゃったぞ♥ そういうのもっと頂戴☆』
「え、これって……キャバリア!?」
 メルシーが突然、体高5mを誇る白銀のキャバリアへ変身を遂げた一部始終を目の当たりにしたウルルが絶句する。
 更に、メルシーの身体からニョキニョキとアラビアンライト風の踊り子姿の人型メルシー達が『生えて』来ている!
 この光景にカシムが頭を抱えた。
「……ウルル、信じらねーだろうが……メルシーの正体はな、クロムキャバリアで封印されてた『神機』シリーズっつーキャバリアの一機だ……奴の身体は賢者の石で作られていて、破壊はおろか自己増殖までしやがる……んで、あいつの身体から飛び出したのが、ユーベルコードで生み出した分身体だ。今から分身体を囮にして、敵の居場所をあぶり出してやる。だから、そっちは頼みましたよ?」
 カシムの説明はにわかに信じがたいが、メルシーが人間サイズに変身できる特殊なキャバリアだということは事実であった。
「はは……これは鉤爪の男も真っ青だね。でも、助かったよ。今のでだいぶ狙撃手の場所が絞れた!」
 すぐさまウルルはハティとデータ共有を行い、量子コンピューター顔負けの計算速度で戦場を分析してゆく。
「――鞍なき馬に跨りて我らは疾く駆け出さん、しかして剣を掲げ戦うべし」
 その一節は、ウルルが『|集中力の領域《ゾーン》』に入るルーティンの言葉だ。
 情報解析結果に基づく弾道計算とハティとの視覚共有によって、マズルフラッシュがあった場所からの移動想定を含めた敵の居場所を特定。すかさず半身を乗り出し、マークスマンライフル『アンサング』の銃口を闇夜へ突き付けた。
「まずは……3体!」
 立て続けに3発連射。ほぼ同時に悲鳴の三重奏がベルリンの夜空に木霊した。
 そしてウルルは同時発動可能なユーベルコード『|四脚機動型強行偵察機群《スポッターハウンドシリーズ》『ムーンドッグス』』……昼間に放ったハティの子機達に働きかけ、隠れている狙撃手たちを発見してゆく。
「カシム! 北へ移動しよう! 突破口が見えた!」
「本当ですか? おいメルシー! おめーはそのまま何もせずにゆっくり後からついてこい! 敵を引き付けておけ!」
『ラジャったよ☆ ってあんっ♥ そこ敏感だから迫撃砲なんてらめぇぇぇぇえ♪」
 ベルリンの街中に佇む謎のキャバリア(変態)のおかげで、カシム達への警戒心はかなり薄らいだ。
 更に生み出された分身体の半数が空中でちょこまかと踊り狂って敵兵を挑発してくれている。
 怒り狂った兵士の元へ、光学迷彩魔術を施した残りの分身体部隊が背後からビーム大鎌剣ハルペーでザックリと暗殺して回るのだ。
 コワイ!
「実は僕も囮役を買って出ようと思ってたんだ……だから此処から先はボクが先導するね! ハティ!」
『了解。映像投影型応用光学迷彩『フィルギア』を起動します』
 ウルルの身体が幻影に包まれ、巨大なウルルの姿を象る。
「メルシーさんみたいにボクも目立つよ! スナイパーとしてはどうかと思うけど……これで敵兵は巨大化したボクの幻影を撃ち続けてくれる! マズルフラッシュも丸見えだね! っと!?」
 物陰から顔を出した途端、飛び込んでくる一発のライフル弾。
 幻影に惑わされない熟練の腕前の狙撃手もいるようだ。
「その腕は惜しいけど、ボクを狙ったことを後悔するんだね! ――そこ!」
 コンマ1秒にも満たない神速のカウンタースナイプ!
 ウルルの銃弾が突っ込んだ建物の窓から、老いた男の断末魔が聞こえてきた。
 この一撃で周囲の狙撃手が警戒し始めたのか、物陰に隠れてウルルの様子を伺い始めた。
「逃げようったって無駄だよ? ――入射角度、反射角度、算出……誤射修正……それじゃ、さようなら!」
 タンッタンッと躊躇なく放たれた弾丸は、窓枠や柱や天井へ激突すると魔法のように敵狙撃手へ跳弾して撃ち抜いてみせた。
 一方、メルシー達は上空から狙撃手たちを捕捉するやいなや、挑発を行って狙いを惹きつけ、他の分身体部隊が身ぐるみを引っぺがして心身ともズタボロになるまでなぶり殺してゆく。
『分身体のみんな、やりますねぇ!』
「馬鹿野郎! ふざけてねーで即刻ずらかるぞ!」
 カシムの叱咤にウルルも同意を示す。
「そうだね、本当に爆撃機を出撃されないうちに、迅速に脱出を完了させなきゃね。街の北部郊外で待ってるグリモア猟兵と合流しよっか」
「つーわけだ、メルシー! はやく人間サイズに戻って、急いで街郊外の北へ向かうぞ! あ、彼奴等の装備品はぶん盗ったか!? 敵の装備を奪うのは盗賊のたしなみだからな!?」
『モチのロン☆ 大漁だよ、ご主人サマ☆ これを他世界で売り捌いて、今回も大儲けだね☆』
 分身体の腕には、敵狙撃手の銃や弾薬やその他装備、はたまた下着まで奪っていた。
 それらをメルシーの身体の中に分身体が自身ごと突っ込むと、キャバリアの身体が一気に人間サイズへ縮んでゆくのだ。
「えっと、質量保存の法則ってなんだったけ……?」
「ああ……ウルル、考えるだけ無駄だぞ? なにせメルシーは『理不尽が服を脱いで全力疾走する変態』だからな?」
「なにそれ、理不尽そのものじゃん……!」
 苦笑いするウルルとカシムをよそに、メルシーはお肌つやつやで大満足の様子であった。

 こうして、猟兵達は無事にベルリンを脱出し、グリモア猟兵の手引きでグリモアベースへ転移できた。
 これからも地道に敵将を暗殺できれば、来るであろう大戦争の日にゾルダートグラードの戦力低下は免れないだろう。
 猟兵達の獣人戦線での戦いは、まだ始まったばかりだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月09日


挿絵イラスト