ある日、戦場の中、クマさんに出会った。
●戦場の歌姫
第5階梯のナイチンゲール獣人である歌姫、ナキドリ・サヨの名を知るものは多い。
澄まし顔の月も聞き惚れ、さんざめく星々も踊り出すと言われるほどの、玲瓏なる美しい歌声を持って。
そして、いかなる苦難にも挫けるなと歌う、強い意志の込められた旋律によって。
「おい、聞いたか!? あのナキドリ・サヨがこの町に来るんだってよ!」
「マジか!? こんな田舎町になんで……?」
「知らないけどよ、何にしたって絶対聞きに行きたいよなあ」
暗い森に隣り合ったその小さな町では、珍しく住民の獣人たちが興奮した様子で語り合っている。そう、サヨがこの町にやってくるというのだ。ゾルダートグラードの暴虐に日々怯える生活を送っていた獣人たちにとっては、久しぶりに聞く、心浮かれる知らせであった。
……けれど。
サヨを待ち受けているのは、町の獣人たちだけではなかった。
「ベア大佐、出撃準備完了であります。全軍、いつでも町を包囲できます」
片眼鏡をかけた神経質そうな副官が不動の姿勢で報告する声に、ベア大佐と呼ばれた男は山のような威圧感ある巨体から、低く唸り声を発する。
「……いや、待て。ナキドリ・サヨが現れるまではな」
「はっ! こんな小さな町に向かうという急なご指示には驚きましたが、ナキドリ・サヨがまさかここに現れるとは。獣人どもの希望であるナキドリ・サヨを捉えて処刑すれば、抵抗勢力の獣人たちの士気を挫ける。お見事な作戦であります、大佐!」
ゾルダートグラードの軍中においても、非道なる策謀が秘かに練られていたのだ……。
●予知と疑念
「……っていう予知が見えたの」
ユメカ・ドリーミィはぷかぷかと浮かぶシャボン玉の向こうから、心配そうな顔をのぞかせる。
「あっと、急にごめん。新しい世界、『獣人戦線』っていうところが見つかったことはもう知っているかしら? 今度の予知はその世界に関するものなの。今言ったとおり、ナキドリ・サヨさんっていう歌姫さんがある町を訪れる予定なんだけど、彼女を狙ってゾルダートグラード……つまりオブリビオンたちが攻めてくるみたい。みんなには彼女を護り、町を防衛して欲しいの」
猟兵たちはサヨが町に訪れたころに転移される。ゾルダートグラードの軍が攻めてくることはわかっているので、その防衛準備をするのも必要だろう。
また、サヨの歌声は獣人たちの心の支えでもある。彼女が本番でうまく歌えるよう、ステージの調整やリハーサルに付き合うのも重要かもしれない。もしくは、町の人々にサヨがどんな人物なのかについて聞いて回ってもいい。
あるいは……。
そう、あるいは。
「……でも、なんだか不思議なのよね」
ユメカは小首をかしげ、ぱちんとシャボン玉をつついて割った。
「この町は、軍事的には特に意味のないところなんだって。抵抗勢力がいるとはいえ、戦略上は急いで攻略する価値があるような場所ではないはずよ。それなのに、サヨさんはなぜ、この小さな町に急に訪れるのかしら。そして、……敵のボス、ベア大佐とかいう奴は、どうしてそれを知ったのかしら」
……サヨと話をしてみるのもいいかもしれない。この小さな物語を読み解くためには。
天樹
こんにちは、天樹です。
新しい世界、「獣人戦線」の中の、「ヨーロッパ戦線・ゾルダートグラード戦」のシナリオとなります。
各章、短い断章の投稿後にプレイング受付となる予定です。
第一章は日常。提示されている行動指針には特にこだわらず、歌姫ナキドリ・サヨと触れ合い、彼女と話をしたり、町の人々に彼女のことを聞いたり、あるいは町の周囲を偵察・警戒して防衛戦略を練ったり、といった行動を取ってみてください。
第二章は集団戦。ゾルダートグラードのキャバリア軍が街に襲来します。敵キャバリアは飛行タイプですので、空中戦または対空戦の用意があると有利になるでしょう。
最終第三章はボス戦。ベア大佐との戦いになります。ここでベア大佐を討ち取れば、この地方のゾルダートグラードの勢力は衰え、獣人たちに平穏をもたらすことができるでしょう。
では皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 日常
『歌姫来訪』
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POW : 熱くなって盛り上がる
SPD : アーティストにサインをもらう
WIZ : いっそ自分もステージに上がる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
がたんごとんと音を立て、ろくに整地されていない田舎道を車が走る。
こんな荒れ道を走らせるなんて、と、まるで車が抗議の意を表すかのように飛び跳ねる、そのたびごとに、中の人々の体も揺れた。
「サヨちゃん、今更だけどさぁ、なんでこんな田舎町に来たわけぇ?」
ハンドルを握るマネージャーがもう何度目かと思える問いを半泣きの声で投げかけたが、後部座席に座る女性──ナキドリ・サヨは答えない。彼女はただ小さく歌を口ずさみながら、車窓の景色を眺めているのみだった。
がたんごとん、と車が揺れる。
そのたびごとに人も揺れ。
そして、サヨの耳元に飾られた小さな白いイヤリングもまた、まるで踊るように揺らめいていた。
●猟兵の到着
猟兵たちはこの小さな町にやってきた。
既にナキドリ・サヨのコンサートの準備は進められているようだ。町中が彼女の来訪を喜び、活気に満ちている。
とはいえ、敵軍の襲来は近い。
猟兵たちはコンサートの準備の手伝いをしながら、町の獣人たちや、あるいはサヨ本人などと話をしてもよい。
また町の周囲を警戒し、どのような地勢かなどを偵察して防衛態勢を整えてもよい。
アリス・フォーサイス
これが新しい世界か。せっかく戦場の歌姫に会えるなら、サヨちゃんのこと、いろいろ知りたいな。
まずは町の人たちに話を聞いてみよう。
歌姫のサヨちゃんて、どんな人?
本人にも話を聞いてみないとね。
こんにちは。猟兵のアリスだよ。サヨちゃんのこと、いろいろ教えて。
ここまで来た経緯とか聞きたいな。もしかしたら、美味しいお話が聞けるかも。
チル・スケイル
戦争…というのがどういうものなのか、正直に言えばよくわかりません
ましてや、それがこの町の人々をどれだけ苛むものなのか
それでも、歌を聞いて癒やされる心がまだある。そういうものは守りたくなります
リハーサルがあるというので、サヨさんの歌に耳を傾けます
その後、町の人々と話をします
情報収集というより、純粋に「きれいな歌ですね」とか「なんだか切なくなりますね」とかの感想を、心のままに述べます
「ここが新しい世界かー。うわあ、興味がわくね! きっと美味しいお話がいっぱいありそうな気がするよ!」
きらきらと澄んだ瞳を輝かせて、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は周囲を見回す。
そう、この場所こそは、獣人だけで構成された世界、獣人戦線。
無論、アリスも多くの世界を訪れる猟兵である以上、獣人の存在そのものは馴染み深いが、それでも。
「二本足の犬さんと、四本足の犬さんがふつーにお話してる……ええと、『階梯』っていうんだっけ、これ」
様々な種類というだけではなく、様々なスタイルの獣人までも当たり前のように混在し、仲良く共存しているというこの世界の姿は、アリスにとって、それ自体がなかなかに「美味しいお話」でもあった。
一方、チル・スケイル(氷鱗・f27327)は、そういった獣人戦線の世界の在り方に一定の理解を示す。
「なるほど、私たちドラゴニアンで言えば、「龍派ドラゴニアン」と「人派ドラゴニアン」が混在するようなものですね」
そう、チルの種族であるドラゴニアンにも、龍に近い姿を好む「龍派」と、人に近い姿となって過ごす「人派」がある。同じ種族で複数の形状を持つ獣人たちという環境は、チルからすれば、比較的共感しやすい感覚であった。
「……というよりも、ここは確か「始まりの猟兵」がいた世界なのだと聞きます。だとすれば……もしや私たちドラゴニアンと、この世界の人々の「階梯」とは、何らかの形で影響をを与えあった形だという可能性もあるのかもしれませんね……」
チルは思慮深い瞳を煌めかせて、しばし沈思した。が、その独り言に対して、
「おおー! それは凄い美味しいお話だよ! ねねね、もっと聞かせて?」
「えっ? い、いえ、今ちょっとそう思っただけで、別に何の確たる証拠があるわけでもありませんよ? あの、近いです、近い……」
すかさずハイテンションで食いついてきたアリスに、チノは思わずたじたじとなる。しかし、その時。
二人の耳に、とあるメロディが流れてきた。
それは、──歌。
月光のように人の心を包み込む済み切った美しさと、星の輝きのように未来を示す希望の旋律と、そして……何よりも、太陽の光のように熱く燃え上がって人の心に勇気を与える凛然とした歌声であった。
「ふわあ……。すっごい素敵。これ、きっとサヨちゃんの歌なんだね、絶対そうだよ!」
「確かに、これは歌姫と呼ばれるにふさわしい美しい歌……綺麗でありながら、なんだか切なくなってしまいますね……」
おそらくリハーサル会場から聞こえてきているのだろう、その歌声に、二人は思わず感嘆の声を漏らす。
その声に、同じように傍らで遠い歌声に聞きほれていた獣人たちが振り返り、我が意を得たりというように力強く頷いた。
「おお、そこのお嬢さんたち、あんたたちもわかるかい! あれこそナキドリ・サヨの歌、俺たちに勇気と力を与えてくれる歌姫の歌なのさ!」
幾人かの獣人たちは、まだリハーサルの歌声であるにもかかわらず、既に軽く涙目になっているほどの感銘を受けているようだった。
「うん、ほんとに素敵な歌だね。ね、こんな歌を歌うサヨちゃんって、どんな人なの? 教えてもらえると嬉しいな、ぼくたち、遠くから来たから」
強面のオオカミ獣人がその目に感動の涙を浮かべている図に「美味しいお話」感を覚えて、ちょっとウズウズしてしまうアリス。しかし、それをぐっと抑えて投げかけた彼女の問いに、獣人は涙を拭き拭き答えた。
「ああ、なんでも、ナキドリ・サヨ自身が戦災孤児なんだってよ。まだ幼い頃、ソルダートグラードの侵攻にあって家族を失ったんだって聞くぜ」
「うむ、だからなんじゃろうなあ、サヨの歌は、戦争で傷を負った人の心に静かに寄り添いつつ、理不尽な暴力に絶対屈してはいけないという強い意志も伝えてくれるんじゃよ」
杖を付きながらコンサート会場に向かおうとしているらしい老いたウマ獣人の声がそれに和する。
(なるほど。……戦争……というのがどういうものなのか、正直に言えばよくわかりません。
ましてや、それがこの町の人々をどれだけ苛むものなのかも)
チルはその老いたウマ獣人の姿を静かに見つめる。
──彼の片脚は義足であった。おそらく戦火の中で失ったのだろう。
(……それでも、歌を聞いて癒やされる心がまだある。そういうものは……守りたくなります)
想いを巡らせているチルの前で、オオカミの若者とウマの老人は気が合ったように話を弾ませていた。
「爺さん、その年にしちゃあサヨの良さをよくわかってるじゃねえか! 気に入ったぜ!」
「ふぉっほっほ、これでも昔からサヨのことは応援しとったんじゃ。今風に言えば推しじゃ!」
「昔からって、また大袈裟だなあ。サヨがスカウトされて歌い始めたの、ここ数年だろ」
呆れたように肩を竦めたオオカミの若者に、ドヤ顔でウマの老人が首を振る。
「いやいや、実はじゃな、10年ほど前にサヨはこの町におったんじゃよ。まだ幼い頃じゃ、さっきお前さんが言ったように、家族を失ってすぐの頃。サヨは身寄りをなくして、遠い親戚の間をたらいまわしにされておったんじゃが、そのうちの一か所がこの町じゃった。とはいえ、ほんの一か月にもならん短い期間で、すぐに他の街に行ってしもうたから、知る人は少ないんじゃがな……わしは近所に住んでおったんじゃよ」
(ふうん……それはちょっと味わい深いお話かも)
(なるほど。過去において、ある程度の関係はあったのですね、この町とサヨさんは)
アリスとチルは、互いに目を見合わせ、そっと頷いた。
戦場の歌姫サヨ。彼女の物語を謳うメロディが、今、微かにプレリュードを奏で、猟兵たちの前に流れ出し始めようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
(町の子供たちに囲まれながら)
ヒツジさんにこんな毒々しい翼が生えていますか~?
スズメさんにこんな禍々しい角が生えていますか~?
いいですか!?もう一度言いますよ!
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
そう!魔王です!超ワルです!
そこの坊ちゃん!笑うところではありませんよ!
ところで!この町の周りに人が寄り付かない場所はありますか?
たとえば大勢の人が大きな荷物を抱えて集まっていても
町の人達に気づかれない場所です!
なぜそんなことを知りたいか気になりますか?
この世界から私よりワルな連中を駆逐するためです!
エドゥアルト・ルーデル
実は拙者ナキドリ氏の大ファンだったんだよ!知ったのついさっきだけどな
歌はいいねぇ…歌は心を潤してくれる…文化の極みでござる
という訳でナキドリ氏にガンガン絡んでいくでござるよ!準備はばっちりですぞ!ちゃんとペンライトも持ってきたんだから!サインください!
それはそれとして事前に偵察用UAVと【知らない人】を野に放っておくでござるよ
UAVは地形調査、来る理由がド田舎の町になくとも周りにあるかもしれん
知らない人には噂を聞いて回らせますぞ、噂程度でも何かしら推測は出来るしな
新世界だろうが物見遊山的に楽しめばよい
なに、何かがあろうが全て焼き尽くせばいいんだよ!敵はモチロン町も…なんならナキドリ氏も…ネ
「えー、一目会ったその日から恋の花咲くこともあるなんてぇ昔の人はうまいこと言ったもんでございますが、ここで一つ。実は拙者ナキドリ氏の大ファンだったんだよ! 知ったのついさっきだけどな! つーことでサインください!」
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は勢いよくナキドリ・サヨに向かってペンを差し出した。が、サヨは答えない。にこやかな笑顔も、片耳に付けられた白いイヤリングも時の止まったように微動だにしないまま、ただ風にそよいでいるだけであった。なぜならそれはサヨのポスターだったから。
「おっとこいつァいけねえ。拙者としたことが、うっかり二次と三次の区別をしそこなうとは罪な笑顔でござるな」
「ダーティリクエスト! サヨさんもいいですが、まず私! 私に注目してください! 何ならサイン1万枚くらい書きますよ! この凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王、ダーティ・ゲイズコレクターの!」
自分をスルーするというエドゥアルトの捨て置けぬ行動に、憤懣やるかたない表情でダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)が食って掛かる。しかし、エドゥアルトは困ったように髭を捻り上げた。
「えーだって、ゲイズコレクター氏歌ったり踊ったりしないじゃん」
「そ、それはそうですが! 何も歌い踊ることだけが注目すべき事柄ではありません! 私にもいろいろ特技はあるのです!」
「ほほう、たとえば?」
「地形を破壊したり! 穴を掘ったり!」
天使が通ったかのような物悲しい静寂が一瞬場を包み込む。
「……ゲイズコレクター氏さぁ、そらぁやっぱ、穴掘り芸人とアイドルじゃあ、注目度は敵わねえんじゃねえでござるかなあ」
「ダーティショック! 注目を浴びるには芸能活動が重要……そ、それはあまり考えませんでした……」
落ち込んで肩を落とすダーティの背中を慰めるように、ぽんぽんと誰かが叩く。
「ヒツジさん、そんな落ち込まないでよ、僕たち、なかなか面白かったよ。……ヒツジさんとヒゲのおじさんのコント」
「ばっかだなぁ、その人はスズメさんだろ。あ、俺も面白かったです、スズメさんとヒゲのおじさんの漫才」
それはなんやかんや街頭で騒いでいるはた迷惑な二人のもとに集まってきた獣人の子供たちであった。
「うわぁぁん、誰がヒツジでスズメですかぁ! そしてコントでも漫才でもありません! でも慰めてくれてありがとう!」
ジタバタしながらそれでもちゃんとお礼を言えるいい子のダーティ。いや、魔王を目指す彼女が「いい子」であってはいけないのだが。
「そうでござるぞ、つかコントや漫才だと思うなら金出すでござるよ、芸のただ売りなんざすると思うなよオラァ!」
「うわっ子供に対してお金せびってる……この魔王を差し置いて、なんという悪人でしょう!」
またひときわ大きな笑い声が子供たちの間から湧き上がる。なんかすっかり芸人コンビが誕生しつつあるのだった。
そんな芸人猟兵たちをよそに、真面目な情報収集活動に専念する者がいた。
知らないおっさんである。
誰それ。
いや知らないおっさんなので知らないおっさんとしか表現しようがない。詳述すれば、それはエドゥアルトのユーベルコードによる召喚者なのであったが。
ともあれ、知らないおっさんは一人だけ空気を読まずに真面目にシナリオを進行していた。町周辺の探索である。物語がちゃんと進捗してこれはありがたい……。
一方ダーティもまた子供たちにイジられつつも、何とか情報を集めようとしていた。
「坊ちゃんたち、この町の周りに人が寄り付かない場所はありますか? たとえば大勢の人が大きな荷物を抱えて集まっていても、町の人達に気づかれない場所です!」
「なるほど、その静かな場所でネタ合わせをするんだね!」
「ちっげえです! だから芸人じゃないんですよ! 超ワルな魔王なんですよ私!」
「はいはい(一同笑)。うーん、それなら町の隣の森がいいんじゃないかな? あそこは大切な場所って大人たちは言っていて、荒らすなよって注意されてるけど、お笑いの練習くらいならいいんじゃないかな」
まさにその時、エドゥアルトの知らないおっさんもまた、森の中に足を踏み入れつつあった。
……そして。
「ん……ほほう、古い薬莢……? しかも複数の種類が混じってるでござるなぁ」
知らないおっさんの得た情報は即時、離れた場所にいるエドゥアルトにも共有される。そう、おっさんの拾い上げた、土にまみれ錆びた古い薬莢の視覚情報も。
「……荒らしちゃいけない大切な森に古い薬莢でござるか」
エドゥアルトは髭を撫でながら唇を尖らせて考え込む。
「……森っすか。なんかこないだの生放送で、森に関する情報を聞いた気がするでござるが、なんだっけ。つか、何か拙者のシナリオらしからぬシリアス展開っぽくね? こんな時、どんな顔をすればいいかわからないの」
笑われればいいと思うよ。つかメタいこと言いながらシリアスぶるのは無理があると思うの。
「ええい、だからそこは笑うところじゃないんですよそこの坊ちゃん! 私がこの町に来たのはお笑いのためではなく! 私よりワルな連中を駆逐するためなのです!」
「えっ魔王キャラ芸人なのにもっと悪い奴がいる設定なの? お姉さんそれはちょっと設定練ろう?」
「キャラとか設定じゃないんですよー!」
その一方ダーティはきちんと笑いを取っていた。さすがダーティ、これできっと、ナキドリ・サヨのマエセツとして会場を温めることができるだろう。
「だから芸人じゃないんですよナレーター!」
大成功
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荒谷・つかさ
色々気になる点はあるけれど……探りを入れるのは苦手なのよね。
仕方ない、私は私に出来ることをするとしましょうか。
持ち前の「怪力」を活かした力仕事をして回る
頼まれれば会場設営から物資の運搬、或いは防衛拠点の設置や邪魔な物の撤去まで何でもやる
その流れの中で、共に作業をする獣人達と雑談がてら話を聞いて情報収集する
サヨの人物像を始め、その所属や出身といった表向きの情報から、あるならゴシップ的な噂話のようなものまで選り好みせずに聞いてみるわ
ジャドス・ジャンジダ
(絡み、連携歓迎)
おやおや、機械改造されてるとは言え兄弟(同族)が攻めてくるか。
それなら俺が楽にしてやないとな。
とりあえずステージ設営の手伝いでもする。
力仕事でもしながらついでに、頑強そうな重量物を遮蔽になりそうな具合で配置しておくぜ。
頃合いを見てサヨって歌姫の事を村人に聞いてみるか。
この地になにか縁でもあるかどうか……何か気になる話でもあればいいがな。
それと美人かどうかも確認するぞ。
こんな時でもなければ、酒と煙草でもやりながら聴きたいもんだ。
最悪、ユーベルコードを使用して隠れ、聞き耳を立てる。
……見られたら面倒だから、最終手段だがな。
周囲から歓声と拍手が一斉に沸き起こった。
荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)は、イノシシやヘラジカなどの大型獣人たち数人がかりでさえ苦労しそうな重量のある資材を、片手で軽々と運搬していくのだ。あたかも、可憐な野の花でも摘み上げていくように易々と。
およそ猟兵はすべて生命の埒外にある存在だが、その並み居る異能者たちの中でさえ、つかさの絶対的かつ圧倒的なまでの膂力は他者を圧して抜きんでていると言ってよい。彼女一人の存在のおかげで、ナキドリ・サヨのコンサート会場の設営はハイペースで進んでいるようだった。
「ありがとよ、んじゃそれを、こっちにだな」
資材を運んできたつかさに、ジャドス・ジャンジダ(クマのパンツァーキャバリア・f39916)が声を掛ける。ジャドスの野性味あふれる鋭い眼光は会場の周辺を油断なく見据えている。
そう、ステージや客席、運営のテントなどの設置だけではなく──ジャドスの意図は、余剰の資材を使い、さりげなく周辺にバリケードを築いていくことにもあった。それは集団での戦術を得意とするジャドスならではの適切な指示。いずれゾルダートグラードが襲来するのは明らかである以上、観衆たちの安全も期さねばならぬのだから。
「はーい、よいしょっと。ん、いい感じで進んでるわね」
「ああ。あんたのおかげさ。大した力だよ。いい女でしかも頼れると来た。あんたみたいな人がいてくれるってぇだけで、世の中捨てたもんじゃねえと思えるねぇ、がっはっは」
「ふふ、お上手ね。あなたこそ、防衛拠点の設置をありがとう。私、探りを入れたりするのはちょっと苦手だから、力仕事に専念できるのは助かるわ」
二人の猟兵がにこやかに会話を交わしていたところへ、静かに近づいてきたものがある。
「あの、もしよかったらいかがですか。今回はお手伝い、本当にありがとうございます」
飲み物の入ったカップを差し出してきたその少女を振り返り、つかさとジャドスはやや瞳を見開いた。それは、周囲に貼られているポスターの中でにっこりと微笑む「彼女」と同じ姿──ナキドリ・サヨ本人だったのだから。
「村の皆さんだけでなく、旅行のお客様にまでお力を貸していただいて、申し訳ありません。スケジュールが急で、十分なスタッフを用意する余裕がなかったのはこちらの落ち度です」
礼儀正しく頭を下げるサヨの片耳で、白い貝殻のイヤリングが可憐に揺れていた。
「ううん、好きでやってることよ。気にしないで。さっきちらっとリハーサルで聞いたけど、あなたの歌は本当に素敵だもの。そのお手伝いができるのは光栄だわ、ふふ」
「いえ、親切にしてくれた方には必ずお礼をしなさいと、亡父から教えられましたので」
「そうなんだ。いいお父さんだったのね」
「はい。……だからこそ、父を、家族を奪ったゾルダートグラードを私は許しません。……あ、ごめんなさい、なんか急に自分語りになってしまって」
「ううん、あなたの歌に力強さと、そしてどこか寂しさがある理由が分かったわ」
飲み物を受け取りながら、つかさはサヨの容貌に改めて眺め入る。可憐なナイチンゲールの歌姫らしく、小柄で華奢な姿だが、まっすぐな瞳ときゅっと結んだ唇からは、強い意志を感じられるものだった。
(気配りもできるし、こうしてわざわざお礼も言いに来てくれる。強い闘志があって、しかもそれに飲まれていない。いい子のようね)
つかさに続いて、大きな手でジャドスも器用にカップを受け取る。
「男ってのは可愛い女の子が頑張ってる姿を見ればもう何でもできちまう単純で便利な生きもんだ。どんどん利用してくれ」
豪快に笑うジャドスの姿を、サヨは一瞬まじまじと見つめる。その相手の視線に、ジャドスはふと気づいて首をかしげた。そのサヨの視線は刃のように鋭く、そしてその一方で、……どこか不思議な郷愁にも似た感情を備えた、複雑な色合いのものだった。
「ん、どうしたい? 俺の顔になんか珍しいものが付いてるか? たとえば目と鼻と口とかな、がっはっは」
「あ、いえ……その、クマさんの獣人さんだなと思いまして。このあたりにはそれほど多くいらっしゃらないものですから」
ジャドスは、クマの|第二《妖精》階梯、すなわち獣が後ろ足でそのまま立ち上がったような姿の獣人だ。
「ふうん……そうかね。まあ減るもんじゃねえし、こんな顔でよければいくらでも見てくれ。とか言ってたら減ったりしてな、スリム顔のイケメンになったりよ、がっははは」
「い、いえ、……失礼いたしました。それでは」
やや慌てた様子で、サヨは改めて二人に頭を下げ、他の参加者へと差し入れに向かって行く。その後ろ姿を眺めながら、つかさとジャドスはやや目を細めていた。
「……さぁて。どう思うね、今のあの子の態度?」
「そうね、明らかに、『何か』があるわね。『クマの獣人』に対して。そして、クマといえば……どうしたって、今回の予知を思い出さないわけにはいかないわ」
ジャドスとつかさは互いの言葉に深く頷き合う。グリモアベースで聞いた今回の事件の予知……そこで語られた敵の姿を思い出して。
「ああ。……機械改造されてるとは言え、|同族《きょうだい》が攻めてくるってんなら、俺が楽にしてやないとな、って思ってよ、俺ぁ今回の依頼に入ったんだよな。今回の敵のアタマは……クマの獣人だ」
「そのクマの獣人に対して、サヨさんは思うところがある、ということね。……それと、たいしたことじゃないのかもしれないけれど、もう一つ」
つかさは美しい髪に覆われた自らの耳に軽く触れ、つぶやく。
「……あの子のイヤリング、なぜ、片方にしか付いていないのかしら」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オスカー・ローレスト
な、ナイチンゲールの歌姫、か……せ、世界は違うけども……お、同じ小鳥として、放っておけない、な。助けて、あげたいと思う、よ。
でも、俺には飛べない鳥だから……【ハシバミの木の小鳥達】……出ておいで……この周囲を【偵察】してきて欲しいんだ。【地形の利用】ができる場所がないかとか、敵は今どのくらい迫ってきてるのかとか、見てきて欲しい、な……
小鳥達が行ってきてくれてる間に、俺も街の人に色々聞いてみたり、しよう、かな……サヨのこと。彼らにとっては有名でも、俺は何も知らない、からね……
試作機・庚
新しい世界…始まりの世界デスか
…ケモケモしいデスね
気にされないとはいえ普段の服装だと浮きそうデスね…
なんかそれっぽいの後で探すデスか
と、そんなことは置いといて先にお仕事片付けないとデス
歌姫の諸々は他の人に任せて、とりあえず…新しい地に来たら地形の把握デスね
【辛】を自動運転にして私は【C101-R】に搭乗
2機である程度距離を取り【蜜き月夜の密偵】で飛翔しつつアクティブレーダーを使用
他の地球系世界との差異を記録していくデスよ
ついでに敵の密偵などがいればちょっと「おはなし」させてもらいたいところデスね
尋問方法は…まぁ相手に合わせるデスかね(おまかせ)
「な、ナイチンゲールの歌姫、か……」
オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は、完成が間近いコンサート会場を見回しながら小さくつぶやいた。
先ほどから断続的に流れているリハーサルによるサヨの歌は、顔を隠しているオスカーの耳にも、そして心にも静かに沁みとおっていく。そこに歌われているのは、差し伸べるべき手の優しさ、そして立ち向かうべき勇気。そのどちらもが……オスカーにとっては魂の底に触れるように響く旋律。
「せ、世界は違うけども……お、同じ小鳥として、放っておけない、な。助けて、あげたいと思う、よ」
傷ついた羽を微かにはためかせ、オスカーは顔を上げた。その表情を隠す布が風に乗って、人を鼓舞する戦旗のように翻る。
「よ……よし。じゃあ、このあたりを偵察してみよう。た、戦いは、近いわけだからね……」
そのころ、同じように戦場となるべき地の上を旋回し、哨戒している機影があった。
試作機・庚(過去を裏切った者・f30104)の操るオブリビオンマシンである。
「ここが新しい世界……始まりの世界デスか。……ケモケモしいデスね……」
高空から住民たちの姿を眺めつつ、庚は興味深そうに新世界の情報を集めていく。その視線が、ふと自分の纏う艶やかなフィルムスーツの上に落ちた。
「猟兵デスから気にされないとはいえ、普段の服装だと浮きそうデスね……なんかそれっぽいの後で探すデスか。……と、そんなことより先に、お仕事お仕事デス。とりあえず……新しい地に来たら地形の把握デスね」
偵察や情報収集は庚の得意とするところだ。町の周囲の状況を高空から観察・記録し、庚は緻密に戦略を組み立てていく。
彼女の|目《センサー》は、町に隣接する大きな森を有意味な情報として記録した。町を挟んだ森の反対側は瘦せた畑と荒れ地で、遠くまで見通しが良い……敵にとっても味方にとっても。
「えーと。敵の目的は歌姫さんデスよね。荒地側から攻撃を仕掛けて深い森の中に逃げられると捕縛にてこずるデスから、逆に森側から攻めて見通しのいい荒れ地に追い出す方が効率的、ってことになるデス。ならば敵軍のルートはこちら側からの可能性が大デスね」
庚は敵の考えを読み、その動向を見通していく。
「敵の第一陣が航空戦力で来ることはわかってるわけデスから、森の中に対空兵力を潜伏させておくと効果的デスかねー……ちょっと見てみるデスよ」
庚はマシンを降下させると、森の状況を探索に移った。
「植生は結構古いデスねー。昔からある森のようデス。にしては、少なくとも周辺部はきれいに手入れがされていて……」
「う、うん。こ、この町のひとたちは、この森を大事にしてるんだと、思う」
庚の独り言に、その時声を掛けたのは、同じく森を探索に来たオスカーだった。彼の周囲には、可憐な「ハシバミの木の小鳥たち」が、舞うように羽搏いている。
「こ、こんにちは。さ、さっき、グリモアベースで会ったね」
「こんちはデスよ。町の人たちが大切にしてる森ってことは……」
「そ、そうだね。なるべくなら戦火に巻き込みたくはない、けど……で、でも、必要なら仕方ない、のかな」
ヴェールの奥で少し悲しげな表情を浮かべたオスカーを慰めようとするかのように、チチチ、と鳴きながら小鳥たちが踊る。
が、そのとき。小鳥たちの一羽が、オスカーの袖をくちばしでくいくいと引っ張った。振り向いたオスカーに、小鳥は、やや高い木の枝の影に作られた鳥の巣を指し示す。……いや、巣そのものではない。
「ん? あ、あの巣には……な、何かが使われている、ね。ぬ、布……かな?」
取ってきてくれないかい、と指示したオスカーの声に応じ、他の小鳥たちが力を合わせ、木の上から取り出してきたのは、確かに人為的に生産された布だった。
庚もひょいとそれを覗き込む。
「なかなか丈夫な素材デス。普通の服の切れ端なんかではないデスね。たぶん軍服……それに、ここにくっついているのは|小型国旗章《フラッグパッチ》かなんかのように見えるデスが……」
軍服の切れ端、そしてそれに付随しているのは、肩などに付ける小型の国旗を模したワッペンの破片ではないか、と庚は推測した。
「ゾ、ゾルダートグラードの……かな?」
「いえ、ゾルダ……ええい、長くてめんどいデスね、ゾルグラでいいデス。そのゾルグラのフラッグパッチにしては色彩が違うデスよ。古くて相当色褪せてはいるデスが、染料はゾルグラが使うグレーではなく、赤系と分析できるデス。この色合いにマッチするデータは……」
庚はまだ少ないこの獣人戦線世界の情報の中から、それでも関連性を類推できるデータを選び出した。
「……ワルシャワ条約機構」
浮かび上がるはずのない名前を告げた庚の声が、静かな森の中に吸い込まれていく。
ワルシャワ条約機構。それはこの世界に脅威を与え続けている、互いに相争う六つの大国のうちの一つの名に他ならぬ。だが、それは……この場にあるはずのない勢力のはずでもあった。
「え……な、なんで? 今回の敵はゾルダートグラードのはずで……あ、あれ?」
「いや私も、今自分で言って自分にセルフツッコミしたい気分で満々なんデスが……これどういうことなんデス?」
「ぼ、僕に言われても……?」
二人は互いにぽかんとした顔を見合わせる。悩む二人の周囲を、ハシバミの小鳥たちが、何事もなかったかのように軽やかに飛び回っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
歌姫がくる!活気づいた街!
これはもう私のすべき事は一つしかないね!
そんなわけで、祝!芋煮艇の芋煮屋さん獣人戦線支店爆誕!
開けた場所に『サメタンク』で乗り付けて、それを拠点に〈どこでも芋煮会の会場設置〉をしながら芋煮屋さんを開くよ!
すぐ他のサメタンクも出せるけど、既にサメタンクがある事で防衛力は強化されるし目立つし芋煮で集客力もアップ!
そしてお客さんに歌姫さんってどんな人?この辺でよさげな地形ない?って聞きながら情報を集めるよー
本人が運よく来たら特製の美味しい芋煮をサービスしつつ本人が話せる範囲の事情を聴いて見ようー
どんな人も美味しい食べ物の前では口が軽くなるものさー
「祝! 芋煮艇の芋煮屋さん獣人戦線支店爆誕!!」
派手なノボリを立て並べ、クラッカーをぱんぱか打ち鳴らしながら、町にルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)がやってくる! 芋煮の屋台を引き引きやってくる!
新しい世界が発見されたということはすなわち、芋煮を広め普及させるべき機会が訪れたということに他ならない。そして芋煮の聖なる伝道者たるルエリラがその好機を見逃すわけがなかった!
まあ実際、コンサート会場はおおむね設営が終わり、町の住民たちも手が空き、小腹も空きかけていた頃合いだった。適切な芋煮は適切な空腹を見切ることから始まるといえよう。その意味ではまさにルエリラの到来は時宜を得たものであった。
さらに言えば、屋台を引いているのはルエリラ自慢のサメタンク。さりげなく戦力を配置することで、拠点防衛の世界をも兼ねたッ!
「おお、なんだか美味しそうな匂いが」
「暖かくてほかほかで、ヨダレ出ちまいそうだ」
集まってくる獣人たちに、ルエリラはそうでしょうそうでしょうと頷いて見せる。
「うんうん、芋煮はビタミン・ミネラル・たんぱく質そして塩分が含まれている完全食なんだよ。仙台風も山形風もどっちも用意してあるから好きなほうをどうぞ」
「センダイ? ヤマガタ?」
「えーとね、分かりやすく言うと、牛肉を使っているのと豚肉を使っているのが……」
「ギュウニク?」
不思議そうに覗き込むウシ獣人。
「ブタニク?」
きょとんとして見つめるブタ獣人。
いえす、いっつぁじゅうじんわーるど。
「ゴッホンゴホン! ゲホン!」
ルエリラは慌てて咳ばらいをしつつ言い直す。
「えーと……そう。濃厚な味わいと素材そのものの甘さが味わえる系の|加工糧食《レーション》と、淡白ですっきりしていて脂身のおいしさを楽しむ系の|加工糧食《レーション》の違いかな!」
もちろんルエリラの芋煮は安心安全合法な料理であり違法性は一切なくジッサイ健全。使われている肉も当然、獣人戦線世界で正規に使用されている|加工糧食《レーション》100%である。
(どんな素材を使おうが芋煮が芋煮である以上芋煮であるんだよ。そして芋煮が芋煮であるのならば芋煮の芋煮たる良さが失われることはないからね!)
芋煮イズ何。
そんなルエリラの芋煮屋台の前に優雅な一人の影が立った。
「おっと、ポスターの歌姫だね」
「はい、ナキドリ・サヨです。素敵なお料理で皆さんを元気づけてくださって、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げるサヨに、ルエリラはすかさず芋煮を差し出す。
「まあまあ、まずは駆け付け一杯だよ。今後のコンサートでもぜひ芋煮の良さを広めてほしいね。さらに芋煮公認アイドル活動とか、あまつさえ芋煮の応援ソングとか作ってもいいんだよ? いや芋煮公認アイドルは私だから、2号としてならいいかな、うん」
「あ、あはは。考えておきます……」
苦笑するサヨの姿にルエリラはニヤリと笑う。
(ふっふっふ。まんまと芋煮の虜になったようだね。どんな人も美味しい食べ物の前では口が軽くなるものさー)
どこをどう見ればそういう結論になるのかわからないが、とにかく作戦はうまくいったようだ(ルエリラ視点)。
「ともあれ、美味しいでしょ? 気にいったでしょ?」
「は、はい、それは確かに。ここでこんな美味しいものが食べられるとは思いませんでした」
「でっしょー? 言ってみればこの芋煮との出会いは運命なんだよ。この日この時この町に来て芋煮を食べるという極上の定めだったのさ!」
「──運命、ですか。10年前の約束もその運命なのでしょうか……」
「えっ?」
適当に舌先三寸を躍らせていたルエリラだったが、ふとサヨの漏らした一言を聞きとがめ、一瞬真顔になる。それがどういう意味なのかを押して問い直そうとした時には、サヨは微かに顔を曇らせ、静かにその場を後にしていたのだった。
「えっどゆこと? 10年前……10年前から……芋煮を食べるつもりでいたということかな! くっ、これは恐るべき芋煮ライバルが生まれたようだね! でも私も負けるわけにはいかないよ! 最後に芋煮を食べるのはこの私!」
……たぶんそういうことではないと思う。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『爆撃機型パンツァーキャバリア』
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POW : オートガトリング
レベルm半径内の対象全員を、装備した【両腕部から飛び出すガトリング砲】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD : キャバリアダイブ
【プロペラ飛行】によりレベル×100km/hで飛翔し、【機体重量】×【速度】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ : 爆撃機編隊
レベル体の【量産型パンツァーキャバリア】を召喚する。[量産型パンツァーキャバリア]はレベル×5km/hで飛翔し【地上掃射ガトリング砲】で攻撃する。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
コンサート会場が完成し、獣人たちも集まってきた。
その喧騒の中、猟兵たちも集まり、互いに得た情報を交換し合う。
これを改めてまとめると、次のようなものになる。
・ナキドリ・サヨは彼女自身もゾルダートグラードに家族を奪われた戦災孤児である。
・親戚間を転々としていた中で、10年ほど前に僅かな期間、この町にもいたことがあった。
・サヨはクマの獣人に強い反応を示した。
・サヨは10年前に何らかの約束をしたらしい。
・サヨは片耳にしかイヤリングを付けていない。
・町の隣には古い大きな森があり、町の人たちは大切にしている。
・森の中では、古い複数種類の銃弾や、古い軍服の端切れなどが発見された。
・その軍服の切れ端は、ワルシャワ条約機構のものだと推測される。
どうやら、おぼろげながら、サヨの物語が見えてきたかもしれない。
だが、猟兵たちが事の次第を深く考えている時間はないようだ。
ついに──ゾルダートグラードの無数のキャバリア軍が襲来してきたのだから!
爆撃機型キャバリアに乗るカラス獣人の副官が、片眼鏡を光らせ、ピンとした口ヒゲを捻りながら部下たちに指令を下す。
「ほっほっほ! さあ者ども、ナキドリ・サヨを捉えて処刑するのです! ついでに獣人どもも皆殺しにしてしまいなさい! 森もろとも焼き払っても構いません、この森にアレはないと、昔、既にベア大佐が調査済みなのですからね!」
さあ、猟兵たちの出番だ。敵キャバリア軍団を殲滅せよ!
なお、敵キャバリアは爆撃機タイプだ。空中戦、もしくは対空戦ができれば有利に戦えるかもしれない。
チル・スケイル
コンサートの妨害とは何たる無粋!この件の裏にいかなる陰謀があろうと、凍てつかせてみせましょう
氷の船を召喚・搭乗し、浮上!敵の目を引き付けつつ、大火力で撃滅します
ガトリングの弾丸を受けても、速やかに傷を凍らせて修復。手数の多い武器には強いのです
無論、盾になるだけで終わりません。この手合いは…よく狙うよりも、前方広範囲に氷弾をばらまく方がよさそうですね
プロペラ、翼、コクピット。どこに当たったとしても氷が張り付いてキャバリアの動きを阻害できるでしょう
操縦者までオブリビオンなら、加減は要りませんね。鈍った相手へのトドメをさすため、冷凍光線を発射します
かつて大いなる海の戦において、史上最大を誇った巨大戦艦が、無数の航空戦力によって悲壮なる最期を遂げた。あたかも海の王者たる大鯨といえども獰猛なる鯱の群れの前には死の定めを逃れえぬかのように。
もはや大海の覇者たる栄光は優雅にして勇壮なる戦船の上には輝かぬのであろうか。大空を我が物顔に駆ける鋼の翼の前にはただ沈黙するしかないのであろうか。
否、断じて否。
少なくとも、彼女の──チル・スケイル(氷鱗・f27327)が舵輪を取るこの船の前で、邪心に塗れた翼が我が世を謳歌することはない!
「ふはははは、さあ獣人どもを皆殺しに……な、なんですと!? あれは一体!?」
ゾルダートグラードのカラス副官が驚きに目を見開き、その片眼鏡がずり落ちた。
カラスの目にしたものこそは──虚空に美しくも艶やかにして麗々しい軌跡を描いて奔る蒼き輝き。チル・スケイルの操る氷雪の天空船に他ならぬ!
「絶凍を発つ船に、我が氷雪を巡らそう──|氷術・船《アイスシップ》、|weigh anchor《錨を上げよ》!」
敵も味方も、すべてのものが瞠目して視線を釘づけにされる中、白銀に輝く氷の船は、周囲の大気を凍てつかせ、その端から光の雨のように輝く氷の欠片をはらはらと振り撒きながら、今、天へと昇り、飛翔する……いや、|氷晶《ひしょう》する!
その船長室に優雅に座したチルはおもむろに号令を下した。
「コンサートの妨害とは何たる無粋! この件の裏にいかなる陰謀があろうと、──凍てつかせてみせましょう!」
そう、同じ天を駆けるものであるのならば、船が翼に後れを取ることはない!
「ええい、こけおどしです! 全軍、あの目障りな船に攻撃を集中しなさい!」
カラス副官の指令に応じ、キャバリア軍は一斉に氷船へ向けて攻撃を開始した。見る間に氷船を覆い尽くす爆撃、銃撃の,苛烈にして猛烈なる嵐。
ああ、されど、効かぬ! 永劫の時をも凍り付かせんほどの絶対的な硬度を誇るチルの氷の船体に、生ぬるい攻撃など通用しようものか。かろうじて僅かにその船体を傷つける攻撃があったとしても……氷船は大気中の空気から水分を吸い氷と為して、一瞬にして修復が為されるのだから。
「その程度ですか。では今度はこちらの番です。全砲門開きます、砲撃戦用意! 目標は……ふふ、周り全てですね、狙う迄もありません」
くすっと微笑んだチルがパチンと指を鳴らすとともに、氷船の全周囲から蒼く輝く光が豪雨のように迸った。それこそは大地さえも穿ち山さえも崩さんほどの勢いで撃ち放たれた無数の氷の弾丸! キャバリアたちは慌てふためき、旋回し回避せんと試みるが、あまりにも遅い! 氷の弾丸は見る間にキャバリアの大群を撃ち砕き塵芥へと変えていく。かろうじて致命弾を避けたとしても……。
「う、うわああ!? プロペラが凍って……!?」
「フ、フラップが動かねえ!?」
そう、チルの氷弾は触れた物を凍りつかせその動きを奪う。飛行型キャバリアにとっては、プロペラ、フラップ、どこが凍り付こうともそれだけで命とりだ!
見る間に数を減らしていく部下たちの姿に、カラス副官は後方でクチバシが砕けんほどに激怒する。
「ええい、体当たりしてでもあの船を止めなさい! おまえたちの代わりなどいくらでもいるのです!」
カラス副官の怒号を受けるかのようにいくつかのキャバリアが決死の覚悟でか、弾丸の雨をかいくぐって氷船の間近に迫り来た。しかしチルはやれやれと首を振るのみ。
「船が接近戦に弱いなどと、誰が言いました? むしろ接近戦でこそ……この質量の差が決定的な戦力の差になるものでしょうに」
その言葉と同時に、氷船の船首から瞬間せり出してきたものは、あまりにも巨大にして圧倒的な氷の刃! 全てを斬り裂く凍てつく氷の|衝角《ラム》だ!
「そ、そんな!? ぐわあああ!?」
「がああああっ!?」
氷船の|衝角《ラム》が接近してきたキャバリアどもを容赦なく屠り切り捨てていく。
もはや抗う術はない。キャバリアたちはカラス副官の制止にも構わず、恐慌にかられ機首を返して逃げ出そうとする。しかし、チルの冷ややかな声は断罪の響きを持って響いた。
「相手がオブリビオンなら加減はしませんよ。さあ、とどめです」
氷船の|船首像《フィギュアヘッド》に青く澄んだ光が集まっていく。まばゆい煌めきが目を貫くほどに高まり、震えるように空間が歪んでいく。その圧倒的な力の凝縮によって!
「魔力充填120%……対ショック、対閃光防御……冷凍光線、発射です!!」
次の瞬間、天空を凍りつかせ世界を揺るがすような蒼い光の奔流が滅びの宣告となって迸り、キャバリアの大群を飲みこんでいったのだった。
そのあとにはただ、虚空に氷の欠片がキラキラと降り注いでいくのみ。まるで舞い散る花のようでなその光景を瞳に映し、チルは船長室で、くすっと微笑みを浮かべていた。
「コンサートには花束がつきものですものね、ふふっ」
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
サヨちゃんに固執するゾルダートグラード、そして、たぶん森に何かあったかとを知っている。
ピースがそろってきたみたいだね。お話を聞かせてもらうためにも、キャバリアは排除させてもらうよ。
へーんしん!エンジェルモード!
飛翔して、空中戦をしかけるよ。
大きいことがかならずしもメリットにならないこと、教えてあげる。
大きさの差をいかして、翻弄してあげるよ。
「ピースが揃ってきたみたいだね……」
アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は細い指を白い頬に当て、可憐に考え込む。
自分が聞き込んだ話や、他の猟兵たちが調べた情報などを突き合わせると、一つの物語が浮かび上がってくるようだ。
もちろん、まだそれは全容を表してはいないし、壮大な叙事詩なのか、それともささやかなおとぎ話なのかも定かではない。だが、そのどちらであるにせよ。
「お話は……語られなきゃいけないよね」
アリスはこくんと頷いて気合を入れる。
どんな物語であるにしても、誰一人聞く者がないまま闇の中に葬られるべきではないとアリスは思う。もちろんそれは、人の隠し事を暴きたいなどという意味ではなくて。そこに込められた人の想いを、心のありかを、孤独に凍えたままにしておきたくはないから。
「だから……お話を聞かせてもらうためにも、キャバリアは排除させてもらうよ!」
頭上に群がるキャバリアの大軍勢を見上げながらも、アリスは意気軒昂、その華奢な体に力を漲らせた。今こそ彼女の力を見せる時!
「へーんしん! エンジェルモード!!」
鮮やかに艶やかに、虹色の輝きがアリスを包み込み、万華鏡のようにいくつもの角度で彼女の姿を映し出すシャボン玉のような魔力の泡が、一面のお花畑のように広がった。夢をその形にしたように光はアリスの周りに集まっていき、そしてぱちんとはじけた時──。
七色の翼を広げた天使がそこにいた。星の彼方より舞い降りた夢の御使いであろうか、いや、それこそはアリス──アリスの『エンジェルモード』に他ならない! 彼女のユーベルコードはその身を三つの姿に変えて彩るのだ。
「いっくよー! 大きいことがかならずしもメリットにならないこと、教えてあげる!」
薫風を巻き起こし、アリスは天に舞う。目指すは漆黒の翼、すべての『物語』を奪うべく襲い来る、恐るべきキャバリア軍団だ!
「むっ、なんです、あの羽虫は!? 者ども、目障りです、打ち落しなさい!」
カラスの副官が片眼鏡の奥から目を血走らせて叫ぶのに応じ、キャバリア軍団はその量にものを言わせ、轟然とアリスめがけて猛攻撃を開始した。大気を斬り裂いて機関砲が唸り、あるいはその巨体を直接アリスに叩きつけんと迫る!
だがしかし、それは風の中を舞い踊る繊細な羽毛のひとひらを、大男がただ力任せに殴りつけようとするような徒労でしかない! ひらりひらりと優雅にさえ見えるような挙動で、アリスの翼はキャバリアの蛮勇を翻弄し、からかうように舞いくぐって、その大群の中を華麗に飛翔していく。
「ぬぐぐ生意気な! しかし、避けているだけでは所詮勝てませんよ!」
カラス副官がコクピットの中で地団太を踏む。だが彼の言うとおり、キャバリアもアリスを倒せない代わりに、アリスもキャバリアを落とせないのではないか?
いや、さにあらず!
なぜならば……。
「べろべろばー!」
「うわああ!? なんだあ!?」
突如虚空に出現した、巨大なるアリスの「あかんべー」をした顔面に、キャバリアを操縦するゾルダートグラードは度肝を抜かれ、思わずコントロールを誤って僚機に真正面から衝突したのだ! 一機が事故を起こせばそれに巻き込まれて、次々とキャバリアの多重連鎖事故が発生する。これこそ、アリスの纏う第二形態、敵を驚愕させることに特化した『|悪戯伸《ロキ》モード』だ!
次の一瞬でアリスは再びエンジェルモードに切り替わって空を舞い、さらに一瞬でまたもやロキとなってキャバリアを驚かせる。そのチェンジの素早さに、キャバリアたちはついてこれない!
「な、何をしているのです、お前たち落ち着きなさい! そんなコケ脅しに……!」
カラス副官の焦った声も、もう遅い。アリスはすでに──第三のフォームを身に纏っているからだ!
「へーんしん……|戦乙女《ヴァルキリー》モード!!」
輝く光が身を包み、壮麗なる甲冑と煌めく刀剣に身を包んだ戦乙女が今こそ降臨した。眩い陽光が兜に跳ねて、その神々しき姿を飾る後光のように輝く。まっしぐらに天を駆け、戦乙女と化したアリスは、統率を失い狼狽して隊列を乱したキャバリアの軍中に突入した。
「お話を台無しにしようとする悪い子は……お仕置きだよ!」
まさに当たるところ敵はなし。アリスの振るう剣閃が次々とキャバリアの翼を叩き切り、プロペラを撃ち砕き、その鋼の機体を両断していく。
さらにエンジェルモードに戻って高空へ飛翔、ロキモードに変化して敵の虚を突き、ヴァルキリーモードで駆逐していく。アリスの繰り出す千変万化のチェンジアタックに、もはやキャバリアたちに打つ手は残されていないまま、ただ殲滅を待つのみだった。
黒炎を吹きながら墜落していくキャバリアを見ながら、アリスはやれやれと小さな肩を竦める。
「美味しいお話を味わう気持ちが少しでもあれば……キミたちもオブリビオンなんかにならなかったかもしれないのにね]
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
色々と情報が集まったようですね!
ふむふむ・・・なるほど!
謎は全て解けました!
ゾルダートグラードは滅亡します!
理由ですか?
それは私が凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王、ダーティ・ゲイズコレクターだからです!
「何言ってんだコイツ?」って視線ありがとうございます!
(集めた視線を『魔力溜め』して{ゲイズ・パワー}に変換し身に纏うとUC【醜悪!邪王穢澱烙印槍】を発動する)
お礼にこの世界に私のワルさを刻むための最初の贄にしてあげます!
(『オーラ防御』した状態でバレルロールしながら敵に突撃する)
「色々と情報が集まったようですね! ふむふむ……なるほど!」
ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は腕を組み……いや、そのあまりにも豊満にしてどたぷんたる爆巨乳のために、厳密に言えば胸の上に腕をのっけただけなのだが、とにかくも考え深そうにうんうんと頷いていた。
胸の大きな女性は頭が悪そうに見えるなどというとんでもない風評被害が世の中の一部にあるが、全く根拠のないことである。少なくとも、ダーティは紛れもなく知恵と行動力を兼ね備えた傑材であることをここではっきりさせておかねばならぬ。そうでなければ、666人もの悪魔を水たまりに嵌めるなどと言う、身の毛もよだち背筋も凍るほどの大悪事を達成できるはずがないのだ!
「謎は全て解けました! つまりこうです、ゾルダートグラードは滅亡します!」
自信満々に宣言したダーティの言葉は紛れもない勝利宣言だ。さすがダーティ、この十分とは言えない情報量から事態の背景をすべて看破し、それをもって己の勝利を絶対的なものと為したというのだ! なんたる天地をも巡らせるほどの抜け目ない巧智であろうか!
だが拡声器を使って天の果てまで届けとばかりに断じたそのダーティの声を、当然ゾルダートグラードも聞き逃すはずはない。
「な、なんですとぉ!? わが軍が滅ぶなどととんでもないことを! 猟兵、一体その根拠は何だというのです!」
カラス獣人の副官が、キャバリアの中から怒鳴りつけた。そう、一体その根拠は!
ダーティは、ふっ、と笑みを浮かべ、凛とした口調で言い放った。
「理由ですか? それは──私が凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王、ダーティ・ゲイズコレクターだからです!」
──1㎞向こうでアリとアリが頭をぶつけた。
……そんな音さえ聞こえてきそうな静寂が場を支配する。
「……なんて?」
「聞こえませんでしたか! それは私が凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王、ダーティ・ゲイズコレクターだからです!」
「いや聞こえてるわ! それが何の理由になるかと言っているのです!」
「理由は、私がきょうあ」
「天丼はもういいんですよ猟兵! 繰り返しギャグは三度までとおかーさんに教わらなかったのですか!」
「そんなおかーさんはいやです。芸人さんじゃないんですから」
「いやあなたどう見てもスベリ芸的な芸人じゃないですか猟兵」
「えっ?」
「えっ?」
ダーティとカラス副官の熱く激しいバトルは炎を噴き出さんばかりにエスカレートしていく。おお、何たる壮絶な戦いであることか。
だがしかし。ここまでの熾烈な戦いさえも、すべてがダーティの掌中であったとしたならば? お忘れではないだろうか、彼女がダーティ・ゲイズコレクターであることを!
「ふっふっふ。キャバリアの中に身を潜めていてもわかりますよ、あなた方の、「何言ってんだコイツ?」って視線を!」
ニヤリと口元をほころばせたダーティの身に、その瞬間。天空を揺るがせ空間を軋ませるような凄まじいエネルギーの奔流が集まってくる。
そう、ダーティの魔力の源は──視線! 邪眼や邪視の伝承を引き合いに出すまでもなく、古来より視線には魔力が宿るという。観衆が注目し全神経を自分に向けた時、その力をすべて我がものにする魔王──それこそがダーティの真なる姿なのだ!
「な、何っ!? このエネルギー量は一体!? ええい、者ども、あのスベリ芸人を始末するのです!」
カラス副官の慌てた指示に、キャバリア軍は一斉に攻撃を開始しようとする。しかし、何たる矛盾か、敵軍がダーティを攻撃しようと注目することが、かえってダーティの魔力を増加させてしまうのだ!
「視線ありがとうございます! ありがとうございます! ハイそちらの方もこちらの方も、皆さん視線まことに、まーこーとーにありがとうございます!」
漆黒の夜空を真っ赤に染めて噴火する火山のマグマのように、ダーティの総身から爆発的な魔力が噴出した!
「ではお礼に、この世界に私のワルさを刻むための最初の贄にしてあげましょう!」
大気を斬り裂き、ダーティは天空高く飛びあがる。その身を包んだ赤紫の輝きは、あたかも魔人の弓から放たれた、触れるものすべてを突き刺し穿ち抜かずにはおかない巨大なる鏃の如しだ!
「『邪なる王に潜む悍ましき穢れの澱よ! 烙印刻む矛と成れ! 醜悪! |邪王穢澱烙印槍《ジャオウアイデンラクインソウ》』!!!!」
一直線にキャバリア軍のど真ん中を突っ走るダーティの閃光。そしてそれに一瞬遅れ、キャバリアたちが一斉に爆裂し爆散し四散した! 絶大なるダーティの魔力はその軌道上にあるものすべてを破壊する!
「言ったでしょう、この私がダーティ・ゲイズコレクターであることこそが、あなた方が滅ぶ理由なのです、とね」
ビシッと決めるダーティ。やったーかっこいい!
だが彼女はまだ知らない……視線を集めすぎてあまりにも膨れ上がった魔力の甚大さゆえに、どこまで飛んで行っても当分止められないことを。
「あらっ……あらぁ!?」
大成功
🔵🔵🔵
試作機・庚
ふむ…何やらワケアリみたいデスね…
とりあえず敵を殲滅してから考えるとするデスかね
それにしてもキャバリアなのに戦闘機…?(自分のキャバリア両方を棚に上げながら)
そういえばここも空飛ぶのに制限がなかったデスね…
なら話は早いデスよ(C-101Rを高速飛行モードに変形させ)
久しぶりの空中戦デスね
楽しませてもらうデスよ!
使用UCは【再帰波動砲】
キャバリアのレールキャノンやらビットの突撃で攻撃と防御をしつつ隙を見てチャージ
要所要所でエネルギーを放出して敵を消滅させていくデスよ
「ふむ……何やらワケアリみたいデスね……」
試作機・庚(過去を裏切った者・f30104)は、集まって来た情報を分析しながら思いを馳せる。今回の事件の影にひっそりとたたずんでいるであろう一つの物語について。
もちろん猟兵の仕事はオブリビオンを倒すことであって、それ以外の問題を抱え込む必要はない。しかしそれでは、ただの任務を遂行するだけの機械ではないか。庚は確かに|人造生命体《レプリカント》であるが、それは彼女の心が冷たく硬いネジ止めであることを意味しない。その魂は紛れもなく熱く燃えているのだから。
……その証拠に。
「うふふふふふふ。ヒャッハァァァ空デスよぉぉぉぉ!!!」
天を抱え込むように両手を広げ、のけぞるように空を見つめる、テンションぶち上げた庚の叫びが木霊する。
ほら、熱いでしょう? っていうかむしろジェット燃料が駄々洩れくらいの感じ。
そう、敵は爆撃機型キャバリア。ならば、こちらも思い切って飛び回ることができるというものだ。
なにせ、クロムキャバリアの世界では、暴走した衛星兵器『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』によって高高度の飛行が不可能だ。であるからこそ、思う存分飛び回ることができる他の世界にあって、庚は己の震えるマシンハートを抑えきれず、また抑えるつもりもない!
「さあ久しぶりの空中戦デス! 楽しませてもらうデスよぉぉぉ!! 回せデスーッ!」
庚は己の駆使するマシン、C101-Rのエンジンに火を入れ、無数の敵機で埋め尽くされた上空遥かに向けて離陸した。既に上を取られてカブられている、だが庚に一片の怯懦の色なし、というよりも、テンアゲした庚の両目は若干ぐるぐるのケンイシカワ状態!
迎撃に出たキャバリア数機と音をも置き去りにする高速ですれ違った時、既に敵機は火を噴いてあえなくガラクタと化す! 次いで捻りながら虹の橋を架けるがごとく機体をループ、逆に上を取った形になった庚は砲弾をばらまき、キャバリアたちを次々に叩き落していく。
「フハハハハ、そら見たことかデス! 空だけに!」
恐慌に陥ったキャバリアたちは散会し庚の攻撃を回避しようとしたが、あたかも「攻撃を先に置いておいた」かのように敵の行動パターンを読み切った庚の銃弾は容赦なく敵機軍を貫いた。
「オラオラァ、空戦エアプデスか! 空だけに! まともに飛べないオブリビオンごときが生意気に空にいるんじゃねぇデスよ!」
「き、貴様! それはヘイトスピーチですぞ!」
ゾルダートグラードのカラス副官が歯ぎしり、というかクチバシぎしりをしてわめく声にも、庚は一刀両断した。
「お前らが人殺しに来てるから闘ってるんデスよ! 侵略が趣味のクソ野郎が自分の都合だけくっちゃべってんじゃねーデス!」
有無をいわせぬ正論。
「これで空はすべて私たちのものデスよー、フハハハハハ!!!」
いやそれはそれでどうかな!
しかし、ただ一機の庚に対し、さすがにゾルダートグラードもやられっぱなしではいない。
「ええい、あの猟兵の機動力と運動性はあなどれません! うかつに乱戦に持ち込むと、逆に数の多いこちらの方が同士討ちになりかねませんね……ならば!」
カラス副官は片眼鏡をクイっと持ち上げ、指示を下す。
「各機、編隊を組みなおしなさい! 真正面から物量で磨り潰すのです!」
カラスの声に応じ、キャバリア軍は一時反転して庚から距離を置き、次いでその量に物を言わせて、黒雲のように襲い掛かった!
庚、危うしか! いや、さにあらず。
「うんうん、いい距離にまとまってくれたデスねー、実はさっきの乱戦のままだった方が、時間がかかってめんどかったデス。しかし、これなら!」
庚の機体に超高密度のエネルギーが収縮していく。光がほのかに灯ったかのような輝きは、純粋破壊の力の塊が蓄積されていく絶対断罪の冷徹なる予告に他ならぬ。
「武装ロック……回避モードに移行。敵味方判定確定。発射シーケンススタンバイ……」
つぶやく庚の声は終末崩壊へのカウントダウン。それとも知らず、キャバリアの大群は真正面から庚に襲い掛かろうとして──まさに、その瞬間。
「|再帰波動砲《リカーシブウェーブカノン》、発射ァァァ!!!!!」
世界を白い闇に包んだような輝きが、全天に広がった。
それこそは庚の前に立つものすべてを爆発的に飲みこみ屠る、極大エネルギーの奔流にして時空をも断絶せしめる圧倒的パワーの嵐。『再帰波動砲』の発現だ! キャバリアたちが庚の機動性に翻弄され、乱戦を避けたことが仇となったのだ。
灰燼と化して落ちていく無数のキャバリアの残骸を眺めながら、庚はニヒルにつぶやいた。
「やっぱり空中戦はいいものデス……スカッとするデス、スカイだけに」
んー、ちょっと無理あるかな!
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
ヘイヘイそこのおねーさん芋煮どうかなー?
っと、ついにきたようだね
ここは私の出番!ゆくぞサメタンク
ふっふっふ、偉い人は言いました。戦いは数だよと
芋煮屋さんをいったん閉じてサメタンクいざ出撃!
自動で戦わせてる間に、新しいサメタンクをポーチからいっぱい出して戦わせるよ
キャタピラがあってもサメはサメなので当然飛べる機能付き。陸でも空中戦でもヒレマシンガンで交戦だー!
そして私は『ルエリラ専用のサメタンク』に乗ってミサイルや砲撃でぶいぶいだよ
【芋煮ハンター】の私が乗ってるサメタンクは通常より3倍すごいぞー!元の性能からして大したことはないけど!
量産型対量産型!どちらが上か勝負だー!
相次ぐ猟兵たちの波状邀撃に、さしものゾルダートグラードのキャバリア軍も半数以上その数を減らしていた。
この惨状に、カラス獣人の副官はコンソールを羽でバンバン叩きながら逆上の姿を隠せない。
「ムッキィーッ! まさかこの場所に6番目の猟兵が現れるとは想定外です! これなら10年前の……あのワルシャワどもとの戦いの方がまだマシでしたよっ!」
一方、そんなことは我関せずとばかりに、ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は、戦闘に不安げな顔をする住民たちに対し、コンサート会場で相変わらず芋煮を振舞っていた。
「さあさあ、そんな顔を曇らせないで、芋煮を食べてればそこはパラダイスだよ。この世のすべての平和と希望はここにあるんだよ。さあ芋煮最高と唱えなさい……おや、そこにいるのは歌姫さん。また逢ったね」
ルエリラはナキドリ・サヨの姿を見かけ、声を掛ける。サヨもまた、戦場の方を不安げに見つめていた。
「私が……私がこの町に来たばかりに、皆さんを危険な目に遭わせてしまったのでしょうか。私が小さな約束などにこだわったから……」
ルエリラはきょとんとしつつもう一杯芋煮を差し出す。
「さあ、知らないけど気にし過ぎじゃない? いい言葉を教えてあげるよ。『たいていの悩み事は芋煮一杯食べているうちに解決するものだ』ってね」
「……どなたの言葉なのでしょうか」
「もちろん私だよ!」
ルエリラは小さな胸をぐいと突き出し自慢げに宣言する。が、そのとき、戦場から逸れた弾丸がコンサート会場近くに着弾し、僅かに地面を揺らした。そのはずみで、ルエリラは危うく芋煮をこぼしそうになり、慌てて踏みとどまる。
「むう、人がせっかく芋煮の美味しさを洗脳しようとしているところに邪魔するなんて!」
「……洗脳?」
「洗脳」
物騒な言葉を平然と使うルエリラに、サヨはドン引きしつつあたふたとツッコむ。
「……いや待ってください!? 正義の猟兵さんとしては、そこは一応、口が滑ったとかなんとか言い繕うところではないのですか!?」
「んーじゃあ再教育? 芋煮思想統制?」
「どんどんイケない方向に進んでいます!?」
「そう? まあ猟兵だからって別に正義と決まってるわけじゃないからねー。正義は芋煮の中にだけあるものなのさ。──今私良いこと言った! 拡散してもいいよ! じゃあ神聖なる芋煮布教の邪魔をしたゾルダートグラードにお仕置きしてくるね!」
ルエリラは芋煮屋台を引いていたサメタンクをグガギギゴゴとトランスフォーム!
サメは大海原の王者、そしてタンクは陸上の覇者。海と陸の要素が出会ったとき、そこに新たに生まれるものは!
そう、風を切って空を駆ける翼、天の勇者である!
「サメスカイ、ゴー!」
いやそうはならんやろ! とお思いの読者諸兄には、なっとるやろがい! とお答えせざるを得ない!
「うわああ、さ、サメ型マシン!?」
「なぜサメが空を!?」
視界に映る、わけがわからない光景を見て動転するゾルダートグラードたち。まあそりゃそうだろうというか。
しかしそんなゾルダートグラードたちをルエリラは厳しく叱咤する。
「愚かだよ! 獣人の世界のくせに、サメの万能性さえ知らないのかい! サメはどこにだっているんだよ!」
いや獣人世界だからこそ余計にわけわからないんじゃね? という気もするが、ともかく実際サメという絶対的生態系王者の前には多少の属性など枝葉末節のことにすぎないのだ。今こそルエリラはサメタンク高空高速機動戦用飛翔形態ことサメスカイをもって天に舞う!
「ふっふっふ、偉い人は言いました、戦いは数だよと! さあサメスカイインザトルネード! 略してサメネード、ごー!」
そしてなんと恐るべきことか、ルエリラは一機だけでさえ万能にもほどがあるサメタンクを無数に召喚し出した! これは手が付けられない、サメタンクはそれ自体があたかも歯車的小宇宙のごとき圧倒的破壊空間をもたらす大渦巻を作り出し、ゾルダートグラードのキャバリア軍を次々と飲みこんでいく!
「ふははははーキャバリアがゴミのようだよー!」
専用機に騎乗したルエリラは後方で悪魔的に哄笑する。うん、確かにここには正義はないかもしれない。
「さあそろそろとどめだよ。私のこの専用機の性能は芋煮好きの特性により他のサメタンクの三倍! そしてそこに大地と海と天の力が加わった時に……!」
サメタンクが超高速できりもみ回転を開始する。そう、大地を奔るタンクの力、海を駆けるサメの高速、そして空を飛翔する翼の闘気! その三つを兼ね備えた時に生まれる極超必殺技こそが!
「ルエリラ・ストラーッシュ!!!」
音を超え一筋の流星となってサメタンクが突っ走る! これこそ虚空を引き裂き世界をもひれ伏せさせる絶対の破壊の象徴、究極にして至高のサメ奥義だ! サメ奥義って何。
それはともかく、ルエリラの奥義に巻き込まれたキャバリアたちは次々と爆散していったのだった。
「歌姫さんもなんか悩んでるみたいだったけど、たまにはサメに身を委ねてみればいいのにね」
「いえ謹んでご遠慮いたしたく」
どっか遠くでサヨの声が聞こえたとかなんとか。
大成功
🔵🔵🔵
ジャドス・ジャンジダ
ナキドリ・サヨと今回の騒動、関係は予想できる所までは来たが……
あくまで予想の域を出ないしこれ以上は『まだ語るべきじゃない』か。
元より推理だのに向いてるクチじゃないしな。
それよりお客さんを『おもてなし』する時間だな。
たっぷり歓迎するぜ、盛大にな!
UC『破滅の世界』を使用だ。
全ての武装を空の敵を向けるぜ。
町から離れた場所で敵のキャバリアを撃ち落としてくれる。
地上の攻撃は届かず空からは打ち放題の逃げ放題。
そう思ってる奴等に長距離面制圧の面白さを体験させてやる。
本日のフライトは荒れ模様、所により弾丸ミサイルの嵐、爆散か墜落で地獄行となります、ってな!
「カラスの愚か者め。我が軍のほとんどを六番目の猟兵に討ち取られているではないか。来るべきワルシャワの者どもとの戦いへの備えもあろうというのに……」
闇の中から、巌のような、いや、聳え立つ山岳のような巨体がゆらりと蠢いた。暗渠のような底知れぬ渾沌の奥から輝く鮮血のような赤い瞳。その悍ましき巨躯の持ち主こそは、ベア大佐と呼ばれるゾルダートグラードの恐るべき指揮官に他ならない。
「俺自らが出ねばならぬか。小娘一人のためにな。……ふん、つまらぬめぐりあわせだ」
ベア大佐は地の底から響くような声で、しかしどこか自嘲気味につぶやく。
歩き出した彼の軍服のポケットに、涼やかな小さな音が響いていたことを誰一人知るものはない。
そう。それが、恐るべきゾルダートグラードの指揮官にはあまりにも似合わぬ、──小さな白いイヤリングであることなどは。
時を同じくして、やはり巨大なる影が歩き出していた。鍛え上げられた鋼の肉体を備え、そのまなざしには高貴なる血筋と荒々しい猛りという矛盾した二面を併せ持つ男。──ジャドス・ジャンジダ(クマのパンツァーキャバリア・f39916)である。
「ナキドリ・サヨと今回の騒動、関係は予想できる所までは来たが……」
ジャドスはこれまでに判明した事実を脳内で反芻していた。が、あえて、その先を想起はしないことにしておく。
「あくまで予想の域を出ないし、これ以上は『まだ語るべきじゃない』か。元より推理だのに向いてるクチじゃないしな、ふふふ」
無論それはジャドスの己に向けた皮肉めいた言葉でしかない。彼の由緒ある出自を別にしても、精密機器であるキャバリアを巧みに操るパンツァーであるという一事だけからでさえ、その頭脳の明晰さは十分以上にうかがい知ることができるはずなのだから。
現に──ジャドスは今、町から離れた場所を位置取ろうとしている。それは町を守ると同時に、敵の心理的盲点を突く高度な戦術的選択の結果だ。
けれど、今のジャドスにとっては、思惟を巡らせるより大切なことがある。より強い意識を向け、より熱い視線を送り、そして、より血を滾らせるべき事柄があるのだ。
「お客さんを『おもてなし』する時間だな。たっぷり歓迎するぜ、盛大にな!」
顔を上げたジャドスの瞳には、迫りくるキャバリアの一群がはっきりと映し出されていた。
猛る野獣の獰猛な雄叫びにも似た叫びが虚空に響き渡る。そう、ジャドスにとってはこの鋼の匂いこそが生きるべき場所の道しるべ、血と硝煙の香りこそが己の身を飾るべき至高のフレグランスに他ならないのだから!
「地上の攻撃は届かず空からは打ち放題の逃げ放題……とでも思ってやがるか? なら、長距離面制圧の面白さを体験させてやる。さあ遊ぼうぜ、相棒──『|野蛮《ディーコスチ》』!!」
ジャドスの声に応じたかのように、超重量級の二脚型キャバリアが重く深く大地を抉るかのようなエンジン音を上げる。シリンダーの軋みもオイルの沸騰も、ジャドスの脈動と血流がそのまま反映されているも同じ。まさに人機一体、ジャドスにしてディーコスチでもあり、ディーコスチにしてジャドスでもある鋼のマシンは、今、戦場の狂奔に自ら身を委ねた。
「全種ロック解除、咆えろ、全てを壊すまで! 」
「全種」とジャドスは吠えた。その意味は──|世界の終わりをもたらす《エンド・オブ・ワールド》ということだ! 少なくともゾルダートグラードにとっての!
虚空を引き裂くガトリングガンの銃弾が豪雨のようにキャバリア軍を襲った。豪雨? そう、豪雨だ! 大地から天へと叩きつける、世界の理が逆転したかのような嵐となって!
高空を取り、完全に油断していたキャバリアたちにそれを回避する術はない。見る間に何機ものキャバリアが炎に包まれる。
動揺し隊列を乱したところへ、ディーコスチのロケットランチャーが無情に炎を吹き、ミサイルポッドが獲物を見つけた獣のように唸りを上げた。混乱したキャバリア軍に対処の術はない! 装甲が引き裂かれ、翼が撃ち抜かれ、ただ暴風の中の木の葉のごとく舞い落ちていくのみだ。
終わらせる、すべてを。
終わらせる、世界を。
終わらせる、すべての存在者を!
その宣告に偽りなく、無尽蔵の砲火がキャバリア軍を食らい尽くし、葬らんと荒れ狂う。業火と爆煙が天地を包み込み、怒号と悲鳴が虚空に木霊して散っていく。
「本日のフライトは荒れ模様、所により弾丸ミサイルの嵐、爆散か墜落で地獄行となります、ってな!」
笑う。|戦闘機械《ディーコスチ》が笑う。それはセンサーが不規則に状況を認識記録する機械的反応にすぎないのだろうか。
だが、確かにディーコスチは笑っていた。己のコクピット内でのジャドスの獰猛な笑みと呼応するかのように、愉悦に満ちて。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
あいつら…頭高くない?
処すかァ~~~~!!
空戦しようぜ…久々に…キレちまったでござるよ…
拙者も飛びます!この召喚した【軍用機】でな!機種はこれ、拙者のだーい好きなJu87G!
爆撃機でドックファイトいいよね!拙者は大好きだ!ガトリングを避けつつ37mmをイヨーポンポン!徹甲榴弾が相手の装甲にスゥーっと効いてこれは…爆発四散…
拙者よりも上を飛ぶ奴は処すと決めた!空を飛ぶもんは誰彼構わず全て叩き落すんでござるよ!
いや…地上に不時着した奴も原型とどめずに爆散させるべきでござるね!間違いなくまた飛んでやろうと考えている!そういう目をしたっ!
いや…爆撃機なんだし地を這う奴全部撃った方がいいんじゃないか…?
空戦するというプレイングが来た。
|Ju87G《スツーカ》で。
うんスツーカ良いよね。スツーカで空戦……空戦!?
これで空戦しようなんて酔狂なのはルーデルぐらいじゃん!?
「えっなら拙者で問題ないじゃん?」
……そういえば確かにこのキャラはエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)であった。ならいっかぁよろしくなぁ!
どっか違う気もしなくもないが、まあいいのである。なぜなら今召喚されたJu87Gはエドゥアルトのユーベルコードによるもの。ゆえに、実機よりは機動性が格段に向上されており、できると思えばできるようになるのだ。あとまあ、エドゥアルトが、「超」が三個か四個くらい付くほどの一流パイロットであるというのも、事実っちゃあ事実なのである。
ということで地獄から響き渡るサイレンめいた甲高い唸り声をあげつつ、|大砲を抱えた荒鷲《カノーネンフォーゲル》は飛び立った。
「むっ、何ですあの雑に適当に大砲をくっつけたような不格好な機体は!? 者ども、打ち落すのです!」
カラス獣人の副官が、ゾルダートグラードの残り僅かな残存兵力をまとめつつ、それでも攻撃指令を下す。しかしその声に、エドゥアルト、キレた!
「ああ? 雑ってかこのダイナミックな改修のスバらしさがわからんとは許せんですぞ! 処す! 絶対に処す!」
言うが早いか、翼下の巨大な37㎜砲が怒りの咆哮を上げた! 轟然たる紅蓮の火柱は重戦車の頑健たる装甲さえ、にゃんこの前の障子紙めいた運命のように軽々と撃ち抜くのだ。ましてや航空機の脆弱な外装など何の役に立とうか!
見る間にキャバリアたちはオーバーキルもいいとこの過剰なる銃撃の犠牲となり、炎の塊となって叩き落されていく。逃走などできぬ、ユーベルコードで推力も強化されている超高速スツーカであるがゆえに!
慌てたキャバリアたちも回避行動を取りつつ反撃を仕掛けるが、エドゥアルトの千変万化の操縦テクニックはあたかも後ろに目が付いているかのように、それともミサイルよけの魔法でも使っているかのように、ひらりひらりとこれをかわしていく。ユーベルコードで強化されている超高機動型スツーカであるがゆえに!
ってそれはもうスツーカのようでスツーカではないのでは?
「スツーカは形にあらずスペックにあらず、魂ですぞ。ハンスもそう言っている。みんな知ってるね」
言ってない気がするが、しかしそう断言されては仕方がない。
「とにかく、拙者よりも上を飛ぶ奴は処すと決めた! いや、空を飛ぶもんは誰彼構わず全て叩き落すんでござるよ!」
えっ怖っ。エドゥアルトの出撃順が二章では一番最後でよかった……さもなくば、かなり危ないことになっていたかもしれない。
そんなエドゥアルトの縦横無尽傍若無人な暴れっぷりに、キャバリアのほとんどが今や落とされた。その惨状に、カラス副官は片眼鏡をかなぐり捨て、自ら最前線へと踊りこんでいく覚悟を固めた。
「こ、このまま全滅してしまったのではベア大佐に合わせる顔がありません! こうなったらせめてあのふざけた猟兵だけでも墜とします!」
「ほほういい度胸ですな。爆撃機でドックファイトいいよね! 拙者は大好きだ!」
ニヤリと髭の中で笑みを浮かべたエドゥアルトは、カラス副官の駆る最後のキャバリアに向けて全速力で突っ込んでいく。
二つの流星が空中で今──激突!
……しなかった!
「オラッシャワーでも浴びてろ!」
エドゥアルトはあろうことか、激突寸前に捻りを加えてループ、敵機が交錯するタイミングを完璧に見計らい……燃料コックを開いて燃料を大量にぶちまけたのである。
彼のユーベルコードの力。それは、機体性能を大幅に上げるというだけでなく。
消耗品を……弾丸や爆弾、そして燃料を無限に供給できるというものでもあったのだ。
キャバリアのセンサーにぶちまけられた燃料は、その測定精度をほんの僅かに狂わせた。ほんの僅かに。
けれどそれは、超高速で飛行するキャバリアの制御にとって致命的な誤差となるに充分であった。
「ぐ、ぐわああああ!? 馬鹿な! せ、せめて、銃弾による名誉の戦死をぉぉぉ!?」
カラス副官の悲鳴が尾を引いて宙に残り、その機体がきりもみを起こして大地に激突していく。……やがて、彼の墓標となるべき煙だけが小さく立ちのぼり、そして風に吹かれて消えていった。
「フッ……貴様に名誉の死などもったいねえでござるよ」
エドゥアルトは静かにつぶやく。そう、無辜の住民を弑逆しようとしたゾルダートグラードになど、情け無用である。
「拙者のスツーカを馬鹿にするような奴にはな! べろべろばー!」
えっそっち!?
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ベアゾルダート』
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POW : ベアゾルダートキャノン
自身の【肩の砲台】から極大威力の【ベアゾルダートキャノン】を放つ。使用後は【虚脱】状態となり、一定時間行動できない。
SPD : 獣性解放モード
【獣の本能】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ゾルダートガトリング
【両腕】を向けた対象に、【前腕装着型機関砲とフィンガーミサイル】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
少女は一人、歌っていた。
家族を亡くした少女はただ一人、誰もいない森の中で歌っていた。
彼女にはそれしかなかったから。
森は古くから町に恵みを与えてきた場所だった。
ゆえに人々は森を大切に扱ってきた。ただそれだけの理由だった。
けれど、それは疑惑を招く。
──「始まりの猟兵」。
その拠点と言われる森ではないのかと。
始まりの猟兵を狙う六大国の一つ、『ワルシャワ条約機構』によって。
だが、近辺を勢力下におく六大国の一つ、『ゾルダートグラード』もまた、敵国の動静を黙って見ていはしない。彼らはワルシャワの偵察部隊に対し、特殊部隊を繰り出し、迎撃と制圧を試みた。
田舎の小さな静かな森の中で、二つの大国の特殊部隊同士の、知られざる戦いが起きたのだ。
少女は何も知らずに歌っていた。
一人、森の中で。
やがて二つの部隊の隊長同士が生き残る。
ワルシャワのシベリアオオカミ。そして、ゾルダートのクマ。
双方の睨み合いは静寂の中で少しずつ場所を移し、やがて。やがて……少女が一人歌う、その場所へとたどりついた。
想定外の第三者……その存在をどう扱うかで、オオカミとクマの命運は分かれた。
無論、どちらも少女の命など眼中にない。
だが、それは障害物には違いない。
オオカミは、障害物を回避し、回り込んだ。ほんの小さな障害だが、それによる攻撃精度の低下を嫌って。
そしてクマは、障害物など歯牙にもかけず、真正面から踊り込んだ。
少女が気付いたときには、眼前にそびえる巨大な何かが、同じく巨大な何かをねじ伏せているところだった。
あたかも自分を守るかのように巨大な腕を突き出し、そこに相手の牙を食い込ませながらも……その巨大なものは。──クマは。敵を叩き潰していた。
ただの偶然だ。
クマが少女を護る理由も意味もないのだから。
そうだと、少女もわかっている。
けれど。
「血が出てるじゃない。ほら!」
少女が付きだしたハンカチに、クマは怪訝な顔を向けた。何だこの虫けらは。何を言っているのだ。
「あたしをかばってくれたわけじゃないのは分かってるわ。そこまでお人好しじゃない。それに、あんたはゾルダートでしょう。あたしからパパとママを奪ったゾルダート。……許さないわ、絶対に許さない。だけど」
少女がハンカチを差し出す手が震えていることにクマは気づいた。
それは恐怖からか、怒りからか。その両方なのか。
だが、差し出されたその手には固い決意があった。
クマは迷う。鬱陶しいと思うなら、この瞬間、この小さな生き物を潰してもよいのだが。
けれど、少女の言葉は、クマをして、呆気にとられるものだった、
「だけど。……ありがとう。良くしてくれた人にはお礼を言いなさいって、パパから教わったから」
クマは自分が何をしているのかもよくわからないまま、そのハンカチを取った。小さな布切れ。敵の牙に噛み裂かれた傷の十分の一にも足るまいが。
「だけどあたし、あんたたちのことは大嫌いだから。絶対許さないから!」
言い捨てて走り去ろうとする少女に、クマはふと呼び掛けた。
「ガキ。……落とし物だ」
その足元には少女のものと思われる白い輝きがあった。白いイヤリングの輝きが。
少女は遠くから仏頂面で叫び返す。
「……貸してあげるわ。それはママからもらった幸運のお守りだから。あげないわよ、貸すだけよ!」
「俺に幸運を祈るのか」
「そんなわけないでしょ! あんたと、さっきの狼たちがお互いに殺し合うなら勝手にしなさいってだけ! もしあんたが、普通の獣人のみんなを傷つけようとしたら、絶対バチが当たるんだから!」
そんな都合のいいお守りがあるものか、とクマは苦笑した。
そう、それは苦笑。クマが、獲物を狙う冷酷な笑み以外で久々に浮かべた笑みだった。
「何年か……そうね、10年したら返しなさいよ!」
少女は叫び、また走り去っていく。
クマはその後ろ姿に声を掛けた。
「ガキ。……てめえの歌、まあ悪くはなかったぜ」
──それだけの、話。
どこにでもある程度の小さな話。
それを、ナキドリ・サヨは猟兵たちにぽつりぽつりと語って聞かせた。
だからどうしたということもない。
クマ──今はベア大佐と呼ばれるその男が改心したなどと言う都合のいいおとぎ話もあるわけがなく。
大佐はやはり悪逆非道のゾルダートグラードであり、世界の敵のオブリビオンでしかない。
ただ……。
極悪な男が、のちに歌姫と呼ばれる少女の、最初のファンであったと。
ただそれだけの、話だ……。
猟兵が思いを馳せる間もなく、ベア大佐はその巨体を表した。
ベア大佐は、猟兵たちにかばわれるように立つサヨにちらりと視線を送る。
が、すぐに向き直った。
彼は来た。戦うために。
猟兵たちと戦うために……。
アリス・フォーサイス
美味しいお話をありがとう。これを後味の悪いお話には絶対にしないよ。
妄想しろ。このお話を美味しく仕上げるルートを。
だめだ。ピースが足りない。ベア大佐はなぜ、わざわざ、前線でもないここへ、サヨちゃんを捕らえに来た?
会いたい......その気持ちがあったのは間違いない。でも、軍をひきつれていることから、処刑することになるのは目に見えている。
処刑するなら、自分がってこと?確かめなきゃ。
はじめまして。ベア大佐。なんでキミがわざわざこんなところまで歌姫を処刑しに来たのかな。サヨちゃんから、キミと彼女のの因縁は聞いたよ。
キミのお話を聞きたいな。
「美味しいお話をありがとう。これを後味の悪いお話には絶対にしないよ」
心配そうに見守るナキドリ・サヨに声を掛け、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は眼前の巨体に向き合った。威圧的な影を落とすその姿は。ベア大佐とよばれる最後の敵だ。
影。そう、まさに大きな影を落としている……この小さな「物語」そのものに、ベア大佐の隠された意図が。
単に敵を倒せばそれでよいなら詮索する必要はない、しかし、「美味しい物語」そのものもまた、アリスの求めてやまぬ大切な価値あるものであるのだから。
(ベア大佐はなぜ、わざわざ、前線でもないここへ、サヨちゃんを捕らえに来た?)
一見のんびりとして見えるアリスの頭脳が超高速で回転する。
(会いたい……その気持ちがあったのは間違いない。でも、軍をひきつれていることから、処刑することになるのは目に見えている。──処刑するなら、自分がってこと?)
ピースが足りないのならば自ら拾い集めるのみ。
アリスはベア大佐に向かって一歩を踏み出した。
「はじめまして。ベア大佐。なんでキミがわざわざこんなところまで歌姫を処刑しに来たのかな」
ぎろりと、ベア大佐の赤く不気味に光るまなざしがアリスを見据える。射すくめるように。
けれどアリスは臆することなく言葉を続けた。そう、言葉だ。たとえ敵であっても、そこに語られるべき物語があるのなら、アリスはそれを愛おしむ。言葉を愛おしむ。
「サヨちゃんから、キミと彼女の因縁は聞いたよ。次は、キミのお話を聞きたいな」
「……戦場で無駄口を!」
だがベア大佐はアリスの「言葉」を受け入れることなく、その大木のような両腕を向けた。同時、轟音と閃光、そして爆炎と共に、撃ち放たれるは機関砲とミサイルの嵐! 天をも引き裂き大地をも穿たんばかりのそれは凄絶な攻撃だ!
「あわわっ!」
アリスは慌ててアンブレラを展開し、爆発の勢いにうまく乗って天に舞う。踊るように風のように、アリスはオーラをも同時に展開し、ベア大佐の猛攻をかろうじて回避していく。
空中で閃光のまにまに攻撃を避け続けるアリスの姿に、ベア大佐は苛立ったように低い唸り声を出した。
「わかってはいたが、六番目の猟兵め。相手にすると面倒な……!」
その瞬間、アリスのシナプスが一本につながり、電光のように閃いたデータのつながりが一つの解をはじき出す。
「……そっか。それは多分、こんなお話、かな。──『|妄想世界《ワンダーランド》』っ!!」
刹那──。
虹色の輝きが周囲を満たし、万華鏡のように、そしてシャボン玉に映る世界のように、無数の光景が幻像となって一つの「物語」を語りだした……。
この世界は「始まりの猟兵」が現れた世界。
『|助けを求める声《m'aider》』に応じて救いの手が現れた世界なのだ。
ならば……助けを求める声が多ければ、猟兵たちは現れるのではないか。
特殊部隊による少数で隠密裏にナキドリ・サヨを簡単に攫ってしまうのではなく。
大佐である自分と麾下の軍勢を動かすという規模の大きい行動を起こすことで、より多くの『|助けを求める声《m'aider》』が生まれるのではないか。そして、それに応じて猟兵が現れる可能性がある……。
「サヨちゃんを攫うと同時に|猟兵《ぼく》たちをおびき出すためにわざと軍を動かした? ……うん、きっとそれもあるね、それが表向きの理由なんだろうね。でもまだ、たぶん……もう一枚、裏がある」
アリスはさらに能力を深化させる。輝きに満ちた幻影の中で、遠い夢の中のように、小さな低い言葉が響いた。
「……お前が生き延びる可能性があるのならば、それだけだ、ガキ」
ベア大佐の紅い炎のような眼が微かに瞬いた、ように見えた。
アリスは風に乗りながら、そっとベア大佐に視線を送る。
「これが、君のお話なんだね、大佐。忠実なゾルダートとして、キミはサヨちゃんを攫い、猟兵をおびき出す作戦を立てた。それも事実。でもそれはもう一つの顔、もうひとつの可能性を持っていたんだ。つまり、……もし本当に猟兵が現れて、この方面を脅かす|自分たちが壊滅《・・・・・・・》すれば、これ以上サヨちゃんに危険を及ぼさないようにできる、ということ。それは一人の、歌姫のファンとして」
アリスの紡いだ言葉に、ベア大佐は地獄の深淵から漏れ出るような赤瞳を大きく見開く。
「下らぬことをほざくな。猟兵。我が名はベア大佐、ゾルダートグラードのベアゾルダートだ!」
「わかってる、きっとそのどちらも嘘じゃない。キミは冷酷で残虐なゾルダートであることも事実で、そして同時に、歌姫を守りたい一人のクマさんでもあったんだ。二つの心がキミの中で同時にあった……」
「聞いた風な口を叩くな、猟兵! 貴様自身が言ったばかりであろうが、貴様のこの力は妄想に過ぎぬと!」
ベア大佐は咆哮のような雄叫びを上げ、機関砲を空中のアリスにぴたりと向けた。
が、アリスはよけぬ。よけぬまま、彼女は静かに頷いた。
「うん、ぼくの妄想だよ。……でも、だったらなぜキミは……このぼくの妄想の中で自由に動けているのかな?」
「何……!?」
一瞬怯むベア大佐に、アリスはつぶやいた。
「ぼくのこの力は、この妄想世界に同調できる人にだけ自由を与える。その中で動けているキミは、……つまり」
それ以上はアリスは言わなかった。けれど。つまり。
それが正しいと、大佐は自らの行動で認めたことに……なる。
「……くっ!」
しばし空中のアリスを睨みつけたのち、ベア大佐は苦しげな表情を一瞬浮かべ、じりじりと撤退していった。
アリスは追わず、その背中をじっと見つめる。大きく、分厚く、そしてどこか、寂しげな背中を。
「キミのお話。……少し切ないけど、でもとてもきれいな……お話だったよ」
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
なるほど!サヨさんの過去にそんなことがあったとは!
多少心苦しくはなりますが、それはそれ!これはこれ!
私は猟兵!オブリビオンの皆さんの悪事を滅するのがお仕事であり契約!
契約はキッチリと遂行する!それが悪魔!
(きりっとした表情で構えると敵の視線を{ゲイズ・パワー}に変換するとUC【至悪!罪業集塊理裂刃】で両腕にオーラの刃を形成する)
さぁいきますよ!御首級頂戴仕ります!
(敵の攻撃を『衝撃波』を使った『ダッシュ』で回避しながら両腕の刃と、こっそり尻尾に形成したオーラの刃で攻撃を仕掛ける)
「なるほど! サヨさんの過去にそんなことがあったとは!」
ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は豊満な胸を揺らし、今耳にした物語についてしばし考えこむ。
基本的にはダーティは新たな世界に悪事を広めるために現れた。次の世代に輝かしく戴冠する魔王を目指すために。したがって、原則としては当事者間にどんな事情があろうとも、さして拘泥する理由はない。ダーティの戦いはダーティのためにある。
だが、そんなダーティにおいても、サヨの物語は少しだけ、胸の奥に残った。
「……ですが、それはそれ! これはこれ! です!」
とはいえ、ダーティが立ち止まることはない。彼女の目標は、はるけき遠くにあって、しかし必ずその手に掴まずにおかぬものなのだから。そのためにも、倒すべきものは倒す! それだけでしかないのだ。
「多少心苦しくはなりますが、私は猟兵! オブリビオンの皆さんの悪事を滅するのがお仕事であり契約! 契約はキッチリと遂行する! それが悪魔なのです!」
凛と言い放ったダーティに向かい、ベア大佐は獰猛な笑みを浮かべて牙を剝く。
「面白い。つべこべ言いあわず真正面からやり合おうというのか。趣味が合うようだな、そういう相手こそ……倒し甲斐がある!」
「お褒めのお言葉感謝します! では参ります!」
ダーティは素直に礼を述べると駆けだした。待ち構えるはベア大佐の両肩にそびえる巨大な砲門! その砲口にエネルギーが次第に充填され、ほのかに灯った光がその輝きを増していく。輝き満ちた時が、死の宣告たるその巨砲が轟音を上げる時だ。
普通の猟兵ならばその射線上にうかうかと入り込むような真似はしないだろう。回避か防御を試みるに違いない。
ああ、だが……ダーティの力の源は「視線」である!
仮に回避するにしても、防御するにしても、それは相手からの「視線」を、自ら遮ってしまうことにつながってしまうではないか。だが、馬鹿正直に突っ込めば、巨大砲の餌食だ。
如何に為すか、ダーティ!
「こうです! とりゃあ!」」
ダーティの選択した手段は──回避! 高速の衝撃波を撃ち放ち、その勢いに乗って天に舞ったのだ。だがそれでは視線を外れてしまうのではないか?
否! ダーティは高く天空に舞った後、再び急制動をかけてベア大佐の射界に舞い戻ったのだ!
「何っ!?」
予想外の行動パターンに、大佐はいったん上空へ向けた照準を再び地上に戻さざるを得ない。が、そこでダーティは今度は衝撃波を側方へ放射! 再び車線を一瞬外れると、一拍置いて再び回帰する!
「ちょこまかと! その程度のことで逃げられると思うか!」
「逃げはしません! これは誘導です、あなたの視線の!」
おお、ダーティの総身に集まる魔力の密度が急速に高まっていく。そう、僅かにでも一瞬照準を外せば、相手は──自分を探す。|より強い視線《・・・・・・》を送って探そうとする!
それはただ漫然と視線を受けるだけよりもはるかに強い、「目的を持った視線」だ。ゆえに……ダーティの魔力は深き海の底から雲に乗って天へ駆けあがる竜のように急速に高まるのだ!
「常闇に蠢き今世を穢す背徳の力よ! 邪なる王の皮を切り裂きその鋒を示せ!」
爛と輝くダーティの瞳は今や宇宙の深淵を圧して燃え上がる白き渾沌の中心核のごとし。そう……名状しがたき魔王の如し! その絶対を告げる詠唱が流れるにつれ、ダーティの両腕に力が凝縮されていく。あらゆるものを斬り裂く刃と化して!
「至悪! |罪業集塊理裂刃《ザイゴウシュウカイリレツジン》!!!」
赤紫の輝きがまっしぐらに流星のようにベア大佐へ向かって迸った。
「ちっ、おのれ!」
だがベア大佐もむざむざとそのただ無為に攻撃を受けはしない、既に大佐の巨大砲もエネルギーが充足しているのだ。ダーティにとってももはや回避の暇もない。真正面からの激突があるのみだ!
ダーティの閃光の刃が唸り、同時に、あらゆるものを薙ぎ払い消滅させるべく、大佐の巨大砲が炎を放つ。
天空が引き裂かれたかと思うような凄絶な衝撃が走り、周囲のものを吹きとばし、地上に太陽が出現したかと思えるような輝きが満ちる──。
「趣味が合うとは言ったが、力までこの俺と互角か、猟兵め!」
ベア大佐の忌々し気な唸り声が眩く火花散るエネルギーの奔流の名から漏れ聞こえた。巨大砲のエネルギーをダーティの光の剣はまともに受け止め、それを斬り裂きながら一歩も譲らない! 二人の中間地点で二つの力がぶつかり合い、軋み、虚空を圧しあう。
「互角ですね。そして、互角なら私の勝ちです!」
エネルギーの中で、ダーティの言葉が響く。
ベア大佐がその意味を知った時は、もう遅い。
ベア大佐の足元から、大地を穿って突き出たもう一本の閃光が、天を衝くようにベア大佐に襲い掛かったのだから!
「何っ!?」
「ええ、あなたと私は似ています。あなたも獣人ゆえに|それ《・・》はあるはずですからね。でも、クマさんは私のように長くなく、自在に動かせない故に、意識をしませんでしたね……この私の尻尾に!」
然り。それは尾。ダーティの尾に蓄積されたもう一つの魔力の刃だ! それが二人のパワーが拮抗した瞬間、大地を穿って大佐の死角を狙っていたのだ。
「ぐおおおっ!」
大きく斬り裂かれ、虚空に血飛沫をぶちまけたベア大佐はがくりとよろけると、巨体を揺らして撤退していく。
ダーティはその姿に静かにつぶやいた。
「私とあなたは似ていると言いましたね。ええ、先ほども言ったとおり、『契約』を守るのが悪魔。そして……サヨさんとの10年前の『約束』を守るために来たのがあなたです。確かに……似ていますね」
大成功
🔵🔵🔵
試作機・庚
どういう事情があろうともオブリビオンなら潰さないとデスね
あいにく私には転生術とかは覚えてないデスからどうしようもないデスし
…やりずらいデスね
まぁそこなクマさんもなにか思うところはあると思うデスから
ゆっくり話す時間位は作れるといいんデスけどこの状況だと厳しいデスかね?
使用UCは【驚異排除】ダメージを与えることより拘束を優先
とりあえず冷静になって話す時間作りたい所デスよ
情報もらえるかもしれないデスし
そもそも始まりの猟兵ってなんデスかね…?
ついでにオブリビオン同士が敵対してるのも珍しいきがするデスからそこらへん聞けたら嬉しいデスね
トドメは他の人に任せるデスよ
「あいにく私には転生術とかは覚えてないデスからどうしようもないデスし……やりづらいデスね」
いっそのこと、何も知らなければよかったのだろうか。試作機・庚(過去を裏切った者・f30104)の脳裏に一瞬、そんな感慨さえよぎる。ナキドリ・サヨとベア大佐との関係、その二人の間に流れた小さな物語。戦場ではありふれているかもしれない、けれど、どこか愛おしい物語を。
しかし、もう知ってしまった。今更なかったことにはできないのだ──そう、サヨとベア大佐たち本人が、起きてしまった出来事をなかったことにはできないように。
他の世界ならば生まれ変わってやりなおすことができる場所もある。だがここは夢幻の花咲くサクラミラージュにあらず、硝煙漂う始まりの地、獣人戦線。
ならば戦うしかない。ベア大佐はオブリビオン、世界の敵であり、同時にゾルダートグラード、獣人たちを苦しめる存在であるのだ。そこに情状酌量の余地は一切ない。ないはずだ。
「迷っているな、猟兵。何を思うかは知らぬが、貴様の挙措に決断が足りていないことはわかる」
闇の奥から唸るような声が響く。地獄の底から吹き上がり心胆を寒からしめる悍ましい風のようなその声こそ、最後の敵──ベア大佐のものだ。
「ならば貴様はなぜ戦場に立つ。迷いの在るものが銃火に身を晒すな。それは戦場への冒涜だ」
庚は小さく吐息をつくと、眼前に迫る巨敵に視線を向けた。
「仕方ないデス。どういう事情があろうとも……オブリビオンなら潰さないとデスね」
「事情があるとするならば……俺と貴様は敵同士というその一点のみだ!」
庚の構えに応じ、ベア大佐は猛然とその山岳のような巨体を揺るがせて猛進してくる。
庚はこれに対し──エネルギー弾を推力に変換した高機動戦で応じた!
目を焼くような閃光の軌跡と共に、庚のボディは風を置き去りにし、音の速さすら軽く突破して天空を駆ける。
だがベア大佐も、その圧倒的な巨体が信じられないほどの超高速でこれに追随した。全身の鋼のごとき筋力をバネのように使ってこそ成し得る猛追劇! いや、それだけではない。いまや、ベア大佐は己の野生の本能に支配されている。剥き出しになった獣性そのものの化身、それが今の彼の姿に他ならないのだ。
二度、三度、超高速の二人の軌道が空中で綾なし交錯し激突を重ねる。大気を引き裂く衝撃を周囲に巻き散らしながら。影さえ追ってはこられぬ究極の速度の中で二人はぶつかり合う!
(上手く乗ってくれたデスかね……)
庚は高速戦闘の合間で思惟を巡らせていた。確かにベア大佐の凄まじい攻撃は紙一重で回避するのがやっとというほどのスピードと威力。だが、それでなければならなかった。庚がわざわざ戦闘を高速機動戦に持ち込んだのは、まさにベア大佐のその恐るべき力を──野生の本能を引き出さんとするためだったのだ。
(──ちょっと矛盾してるデスけどね、お話しするために野生化してもらうなんて!)
ベア大佐の一撃を自らの毛髪数本を斬り飛ばされながらもかいくぐった庚は、次の瞬間、時空を斬り裂く極超高速からなる超衝撃を撃ち放った。これこそ庚の秘儀・|一軌刀閃《イッキトウセン》──いや、それだけではない!
二の矢、三の矢がさらに重加速してベア大佐に襲い掛かる。一軌刀閃を三連に組み立てた、奥義『|脅威排除《ピース・メーカー》』だ!
「ぐおおおおっ!?」
ベア大佐の身に加えられた三重の拘束はその身を固く縛め、身動きを封じる。大地をも砕く巨獣の無双なる剛力でさえも!
「悩んで戦場に立つのは戦場への冒涜? 戦場への敬意とか、どうでもいいにもほどがあるデスよ。そんなことを言いながら、実際クマさんだって思うところはいろいろあるはずデス」
獰猛に暴れながら枷を抜けようともがくベア大佐に、庚は静かに声を掛ける。
「話をするために野生化してもらうってのもおかしなものデスが、でも。……理性があるときにこそ、本当のお話はできないものなのかもしれないと思ったデスからね。今のクマさんは本能のみ、だからこそ……飾らない本心が聞けそうに思うデス」
その咆哮が言葉の態を為していなくとも、庚の分析が過つことはない。もとより人語なども所詮は分解すれば音の羅列でしかないのだから。
「助けを求める言葉によって現れた、『始まりの猟兵』の存在。敵対しあうオブリビオン六大国。そのうちの一つの国は世界さえ超えてサクラミラージュを思わせる要素を持つ。……やれやれ、パンクしそうデスね、この世界は謎が一杯すぎるデス……でも、今聞きたいのは」
庚はふっと虚空に視線を泳がせると、自らのマルチイヤーデバイスの出力を外部に変更し、スピーカーとして再生した。
静かに、魂の密やかな慟哭のように、流れ始める。──庚が録音しておいたナキドリ・サヨの歌が。
「……クマさんは今でも、歌姫さんの歌が好きデスか?」
ベア大佐の獰猛な唸り声が一瞬途切れた。
ほんの一瞬だけ。
……そして、それで十分だった。
それはきっと、永遠に近いから。
「……十分デス。永遠なんて……実際は一秒くらいしか無いのかもしれないデスね」
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
なるほど話は分かった!つまりよぉ…ロリ時代のナキドリ氏にフラグっぽいのをおっ立ててたロリコン熊野郎をぶちのめせばいいんだな!!
拙者のターンでシリアスができると思うたら大間違いでござる
相手は熊だからな…まず素人丸出しのテレフォンパンチをダッキングで回避…出来る訳ないだろ!普通に銃火器持ってるやろがい!
拙者も敵の高速攻撃に対抗できるだけのパワーとスピードが必要でござる…なので|加速装置《クロックアップ》!ついて来れるか、拙者のスピードに!
超高速同士の避け合い撃ち合い殴り合いでござる!あ、拙者のはあくまで効果発動なので避けられても攻撃を中止できますぞ
つまり避けたら一方的に攻撃できるって事だァ!
「なるほど話は分かった! つまりよぉ……ロリ時代のナキドリ氏にフラグっぽいのをおっ立ててたロリコン熊野郎をぶちのめせばいいんだな!!」
冒頭から奇声を上げて戦場に殴り込んできたエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)の脳天にごいんと音を立てて瓦礫が直撃した。
「おぅふ! ナイスツッコミ……」
「唐突に何を叫び出すのだ、貴様は……!」
そこには、揺らめくような怒りのオーラを発するベア大佐の巨体がエドゥアルトを睨みつけていた。
「ん-何っていうとYesロリコンNoタッチの精神? ロリは愛でるものにして触れるものではないですぞという世界ロリ魂連盟、略して世界ロリ魂連合の聖なる誓いを忘れたとは言わせねえでござるよ?」
「何の何の何だそれは。というか貴様はそもそもなんなのだ!」
「えー女の子に名前聞かれるなら嬉しいけどぉ毛むくじゃらのクマ公に名前聞かれても拙者全然きゅんとしないの。まああえて言うならシリアス展開を許さねえ男、エドゥアルト!」
「名乗っているではないか。……しかし、そうか、そういうことか」
ベア大佐は長い牙を剝きだしてニヤリと笑みを浮かべる。
「つまり貴様は……シリアス展開が|できない《・・・・》のだな?」
ベア大佐の言葉に、エドゥアルトは憤然となって髭を逆立てた。
「はぁぁ!? できねえとかねえし! やらないだけだし!」
「いやいや無理するな。ギャグもシリアスも両立できるのは男としても器量も度量も大きいものに限られる。この俺のようにな」
「ザッケンナコラー! 拙者がシリアスしないのは単にキャラに合ってねえからってだけですぞ! 拙者はあくまでもギャグキャラ! そのポリシーを貫く美しい信念というやつでござるよ!」
「ふっ、そうか。もちろんギャグキャラもいいだろう。だが……貴様はギャグキャラのくせに、一番のギャグから目を逸らしているな?」
「なん……だと……?」
エドゥアルトは思わず眉間にしわを寄せる。そこへすかさず、ベア大佐が畳みかけた!
「一番のギャグ! それは! キャラに似合わぬ行動……すなわちシリアスをするということなのだ!」
「おおお!」
そのときエドゥアルトに電流走る。シリアスをやるのが一番のギャグ! その発想はなかった!
「何か言われてみるとそんな気がしなくもねえでござるな……よし、んじゃTAKE2! よーい……アクション!」
どこからともなくカチンコが鳴り、何か知らないけどもう一回冒頭から始まった。
「切ねえ物語だぜ……今夜の酒は苦くなりそうだ」
紫煙をくゆらせながら、エドゥアルトの長い影が地上に孤独を映し出す。その視線の向こうには、好敵手、ベア大佐の逞しい体がやはり哀愁を漂わせてそびえていた。
二人の男の間にもはや戦いは避けられぬ、だがそれはある意味、二人の宿命とも言うべき孤独を癒すただ一つの絆であるのかもしれなかった。
「昔語りなど男の戦いには不要。俺たちの言葉はただ、この拳に託すだけよ」
「フッ、その通り、無粋だったな。なら……いくぜ!」
男たちは意地と誇りと名誉を賭けてその命と魂を削り合う。……いや、そうではない。そんなものさえ男の戦いには不純物に過ぎぬのだ。ただの勝負、それだけだ。そこに言葉も理由も必要とはしないのだ。
「はああっ! 『|SAN Device《サン・デヴァイス》』!!」
「うおおおっ! 獣性解放っ!」
二人は同時に超高速能力を全力で解き放った。男たちの拳は空気を突き抜け風を超え、その神速はもはや残像さえ残さぬ。そう、男の戦いには後に残すものは何もいらぬと主張するかのように。ただ周囲の空間が捻じれ軋み悲鳴を上げて、そこに一撃必殺にして一触必滅の攻防が繰り広げられていることを傍証するのみだ。
「って、ちょっとタンマ。これ、シリアスでござるかなあ?」
「何を言う。ハードボイルドは男の求めるシリアスそのものであろうが」
「いやハードボイルドってハードボイルドであろうとした時点でもうそれ無理なんじゃね?」
むむ、とエドゥアルトとベア大佐は腕を組んで考え込む。
「ん-、じゃあTAKE3行ってみるでござるよ。アクション!」
再びカチンコが鳴り、もう一度シリアスが始まるのだった。
風の吹きすさぶ中で二人の男が対峙する。
「フッ。まさかお前とこうやって決着を付けなければならんとはな」
「仕方あるまい。あとに残れるものは二人に一人なのだ」
「ならば行くぜ! ナキドリ氏の心は誰にも渡さねえ!」
夕日の沈みゆく河原で、男たちの熱い青春の叫びが木霊する。ただ一つの愛を求めて……。
「いやカットカット。拙者別にナキドリ氏のことなんとも思ってねえでござるし。クマ氏はともかく」
「なっ、ふざけるな! 俺とても別にどうとも思ってはおらぬわ!」
「んもーめんどくせえ奴ですなあ、じゃあ次のシリアスは……よし、これでござるな! TAKE4!」
ふうっ、とエドゥアルトのパイプから煙が上り、部屋を包み込んだ。
針の落ちる音も聞こえるような緊張が全員の間に走る。
「諸君、謎は全て解けた。……今回の事件を引き起こした黒幕、それは……あなたですな、ベア大佐!」
「何っ!? ……いやまあその通りだが」
「このクマ公! あっさりゲロったらシリアスなミステリにならんでござろうが!」
「シリアスなミステリになるわけなかろうがこの流れで!」
かくしてシリアスを求めて無限回ともいえるやり直しを行っていった両者は、最終的にダウンしてしまったベア大佐に対し、ギリ最後まで立っていられたエドゥアルトの粘り勝ちになったのだった。
「はぁ、はぁ……シリアス……手ごわい相手でしたぞ」
誰が何のために何と戦っていたのか、そんなことはもう誰も覚えていないのだったが。
大成功
🔵🔵🔵
風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可
約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。
戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。
「獣人の世界、か……まこと、世界は広く、そして……」
風雷堂・顕吉(|吸血鬼《ヴァンパイア》|狩人《ハンター》・f03119)は瞳を隠す深い色のサングラスの底から、一瞬珍しそうに周囲を睥睨した。
「……そして、いずこにあっても戦火の種は尽きぬ、か。無常を感じるな。……戦を生業にする俺が言う言葉でもないが」
一剣にて吸血鬼を狩り続けてきた顕吉の赴くところ、|故郷《ダークセイヴァー》にあらずともそこは常に戦場。新たな世界は新たな戦いの場の拡張でしかなく、顕吉の剣が血のしたたりを乾かすときもまた、ない。それが人を救うための人に求められた戦いであったとしても。
「またも猟兵か。招かれざる侵入者めが」
山が動き出したとさえ思える巨大な影が呪詛に満ちた低い唸り声を放つ。ベア大佐──ゾルダートグラード、この戦場におけるオブリビオン軍の指揮官だ。
敵の言葉に、顕吉は微かに笑みを浮かべる。皮肉な笑みを。
「ああ、招かれざるものさ、お前たちと同じにな」
ゆえに──あるべき場所へ還れと。
その言葉を一閃の太刀風に変えて、顕吉は抜き打ちに宝剣|竜の息子《ドラクリア》を鞘走らせる。渦巻いた旋風は顕吉のマントを翻らせ、同時にベア大佐の鮮血を巻き上げていた。
だが──まだ浅い。
ベア大佐の鋼の筋肉と鎧のごとき獣毛は、顕吉の剣といえども易々とは斬り裂き得ぬ。
「おのれ、猟兵!」
だがその傷はベア大佐の怒りを買うには十分すぎた。その両肩の巨大なる砲門が狙いを定めると、顕吉を食らい尽くさんと虚空を引き裂いて狂猛に咆哮する。
大地を抉る爆裂、天をも焦がす爆炎が次々と打ち放たれた。命中はおろか、かすっただけでも顕吉の体は微塵に吹き飛ぶだろうと思われるほどの、それは世界の終わりを告げるような猛撃!
しかし、当たらぬ! 顕吉には当たらぬ。
顕吉の姿は光と影に移ろいながらその闇の中に半ば溶け込み、ベア大佐の視界を霞ませながら幽玄のごとく閃いて優雅に舞うのだ、爆風の中を。
「お前にもお前の|詩《ものがたり》があるようだ。だが、それが歌い継がれることはない。お前は自ら手放したのだ、その権利を……オブリビオンとなった時点でな」
右からか、左からか、それとも上か。そのいずこからでもあるようであり、またどこからでもないようにも聞こえる顕吉の声に、ベア大佐は狼狽しながらただ無暗に砲撃を連射し、轟然と範囲一帯を紅蓮に包んでいく。
だが、顕吉の深い瞳は見抜いていた。いずこの世界にあっても、強大なる力には相応の代償が求められることを。そう……ベア大佐のあまりにも強烈な砲撃は、それ故に、発射の直後に一瞬の隙ができることを。
「そこだ。──剣刃一閃」
撃ち終わりの刹那。そこが死命を制する転瞬の間。
そこへ──顕吉の|竜の息子《ドラクリア》が、深々と牙を立てていた。頑健な鎧めいた獣毛も鋼の肉体も、虚無のようにすべてを斬り裂いて。
「ぐああああっ!!」
咆哮を上げ、血飛沫を舞わせてベア大佐は身を翻し、撤退していく。
その後ろ姿を見つめながら、顕吉はつぶやいた。
「確かに、俺もお前も招かれざる客。……だが、ならばダークセイヴァーのヴァンパイアどもはどうなのだ。「他者の居所には招かれなければ立ち入れぬ」と伝承に歌われるヴァンパイアどもが、誰かに招かれてあの世界に入ったとでもいうのか……」
遠き故郷の、未だ解かれぬ謎に、顕吉は静かに思いを馳せ続けていた。
成功
🔵🔵🔴
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
ホロリときちゃういい話…
ほら、これは私からの奢り。今回のコンサート限定、歌姫芋煮だよ。しっかりお食べ。
さて、クマさん。私にはわかっているよ…クマさんは実は歌姫のファンだって事をね!!
歌姫が芋煮を食べる姿を撮った(隠し撮り)ブロマイドあげるから改心するんだよー!
というわけで
「ほしいんでしょー?ほんとはほしいんでしょー?」って言いながら私の勘(【ルエリラの勘】)で相手の攻撃を避けまくりだよ
避けながら、『芋煮ハンドグレネード』のフラッシュをポーイ。攻撃止まらないだろうから避けられないよね
目くらましした後は距離を取って弓矢で一撃必殺!ファンクラブナンバー1は永久欠番としておくよ
「ホロリときちゃういい話だね……」
ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)はハンカチで目元を抑えながら、うんうんと頷いて見せる。
「こんないい話をおつまみにすると芋煮が進むってもんだよねえ、まったく」
……コトコトと煮える芋煮を上機嫌でつつきながら。
「……戦う気がないなら去れ、猟兵。というか戦場で飯を喰うな飯を」
むっつりと唸り声を上げる巨大な影、ベア大佐の迫力ある声が響き渡った。が、ルエリラは平然とそれを受け流す。
「まあまあ、クマさん。私にはわかってるんだよ、クマさんが誰かさんの熱烈なファンだってことをね。だから……」
ルエリラはウエストポーチをごそごそとまさぐると、ごとりと何ものかを取り出した。
おお、それはなんと……差し渡し数mほどもあるような超巨大なネズミ捕りだ! バネ仕掛けでばちーんと閉まるタイプのアレである! そんなものがどうやってポーチに入っていたのかとかいう話はあまり考えてはならぬ!
「美少女天才エルフに不可能はないんだよ、そんなことより、さあ、これを見るんだよ!」
そしてそのネズミ捕りには、ひらひらと風に舞う一枚の写真が張り付けられているではないか!
それこそは、ナキドリ・サヨが芋煮を食べている瞬間をばっちり捉えた隠し撮り写真だ! 暖かく湯気を立てる芋煮の、ほっぺたが落ちそうなほくほく具合に、思わず天使のような笑顔を浮かべるサヨの生き生きとした一瞬を余すところなく捉えた、まさに報道機関賞もののお宝の名に相応しい一枚と言えよう。
「うーん、これは歌姫さんのファンにとってはたまらないよねえ。ファンクラブナンバー1のクマさんだけに、今特別サービス中だよ!」
「何のつもりだ!?」
「ふっふっふ。この写真が欲しいならこっちにおいでー?」
「舐めるな! 罠が丸見えではないか! そんな見え見えの罠に誰が釣られいってえええ!」
ばちーん! バネの弾けるいい音とともに、次の瞬間、ベア大佐はまんまと巨大ネズミ捕りに引っかかってジタバタしていた。
いいのかそれでラスボスという気もするが、しかし考えてみれば、ネット黎明期の時代から、クマは見え見えの罠に釣られるものだと相場が決まっているのだった(AA省略)。
「ふふふふ。まんまと罠にかかったようだね! これこそ天才美少女エルフたる私の頭脳明晰さがいかんなく証明されいったーい!」
ばちーん! おお、何たる悲劇か。再びバネが弾けるいい音と共に、今度はなんと、ルエリラが罠にかかってバタバタとしているではないか!
だが何故だ、ルエリラもサヨとは知り合っているが、そこまでのファンになっているというわけではないはず!
「くうっ、あまりにもナイスショットの芋煮写真過ぎたよ……」
千慮の一失! 先述の通り、罠に使ったサヨの写真はサヨが心から美味しそうに芋煮を食べているショットだった。すなわち……サヨと同時に、匂いや風味さえ漂ってきそうなほどに、芋煮それ自体の魅力も十二分に発揮した、二重の意味でのお宝写真となっていたのである! これは芋煮の天使たるルエリラが思わず釣られても致し方なし! ほんとか!
「ええい猟兵、とっとと罠を解除しろ! 痛いではないか!」
「せっかく捕まえたのにー。でも痛いのは確かだしね……しょうがない、サメタンク、この罠を解除するんだよ」
リモートで動くサメタンクがルエリラの指示を受け、器用にアームを動かし、罠に近づいていく。これでやっと罠から解放される、と、ルエリラとベア大佐がほっと一息ついた時。
「イタイサメー!」
ばっちーん! おお、なんたることか、今度はサメタンクまでもが罠に引っかかってジタバタしていたではないか! しかしサヨのファンでもなく芋煮好きというわけでもないサメタンクがなぜ!?
それはやはりあまりにも素晴らしすぎる写真のためであった。ぐつぐつ煮える芋煮写真には、煮汁が鮮やかに光り輝きながら跳ねる瞬間も映し出されていたのだ。そして……サメはその習性として、「水しぶき」に反応してしまうのである!
「……いや強引すぎるわ! というかどうするのだ猟兵、この状況! いてててて!」
「ふっふっふ。さすがラスボスだけのことはあるね、天才美少女エルフたるこの私をここまで追いつめるなんて。いたたたた!」
「イタイサメー」
でっけえネズミ捕りに引っかかったまま動けないエルフとクマとタンクという、わけのわからない状況。
「しかたない、こうなったら罠を破壊して……うう、取りづらい……」
罠にかかったままの不自由な姿勢で、ルエリラはまたもウエストポーチをまさぐる。グレネードを取り出し強引に事態を打開しようという一発逆転起死回生の秘策だ。だが、問題が一つ。ネズミ捕り罠のあまりの強力さに、ルエリラはまともに動くことができないという点であり、ゆえに……。
「よし、これだね。……あっ」
結果、全員の足元に、ぽとりとグレネードは落ちたのだった。
KABOOOOOM!!!
「ぐええええええ!!!」
高く上がった爆煙の中で、ナキドリ・サヨの写真だけが、微笑んだままひらひらと風に乗って舞っていったという……。
「……けほけほ。これもすべて私の作戦通りだよ。ぶい」
それでもギリのところでダメージのほとんどをベア大佐に押し付けたルエリラは、アフロになり口からぽっかりと黒い煙を吐きつつ、胸を張ってVサインを送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
チル・スケイル
あれが最後の…敵…
倒して生き残る…
両腕の兵器に対抗し、私も突撃杖2本を両手に持ちます
翼で飛行して真上を取り、氷の弾丸を連射します
私の氷の連射がゾルダートガトリングに打ち負けるとしても、それでもいいんです
上空からの攻撃はダメージを与えるだけでなく、味方のサポートにもなるでしょう
相手が空中の私を狙ったら、その他の方向の猟兵に対して無防備になりますから
もちろん、相手が私を狙わないなら、遠慮なく撃たせてもらいましょうか
死ぬつもりも、サヨさんを死なせるつもりもありません
だからオブリビオンには死んで頂きます…それだけです
「あれが最後の……敵……」
チル・スケイル(氷鱗・f27327)の水晶のように澄んだ瞳に漆黒の巨大な影が映りこむ。揺るぎない大地そのものであるかのように聳え立つ魁夷なる容貌の存在が。
それこそがゾルダートグラードのベア大佐、チルの凍てつかせるべき最後の標的。
例え彼が、ただそこに佇むだけで周囲の空気を圧し押しつぶすほどの威圧を放っていても。その鋼にも似た肉体と、それを覆うように纏う武装が非情の輝きを見せていても。
「ならば、倒して生き残る……!」
チルの決断に満ちた声が凛然と響いた。
蒼い風に乗って、天空高くに!
そう、チルは飛翔している。その大いなる竜種の翼をはためかせ、陽の輝きを受けながら。
「先ほど、あなたはこの町に航空制圧を試みましたね。いい戦略です。ゆえに……私もまたそれに倣うとしましょう!」
チルは大きく旋回しベア大佐の上空を取ると、優艶にその両腕を振りかぶった。彼女の手に備えるは魔法の杖──|突撃魔砲杖《アサルトマジカルスタッフ》、ストゥーマ・フシロ。中長距離戦において魔弾の嵐を巻き起こす魔法杖が、今、一斉に照準を合わせ……眼下の巨敵目掛けて乱射を開始した! これぞ、「|氷術・矢《アイスレイン》」!
その魔弾は風をも凍らせる氷結の飛礫。光を跳ね散らせながら、無数の氷弾がベア大佐めがけて降り注ぐ! チル自身が言ったとおり、これはまさにベア大佐自身が町に対して行おうとしていた戦法そのものだ。何たる因果応報であることか!
ああ、しかし。
「ちっ、小癪な猟兵め! しかしこの程度、俺に通じると思うな!」
咄嗟に、ベア大佐はその大木のような両腕を掲げて自らの盾とする。まさにそれは鉄壁の防御そのものだ。チルの氷弾は次々と弾き返され、虚しく周囲に散っていくではないか。
突撃魔杖は軽量にして扱いやすく制圧射撃に向くが、しかしそれは対人での話だ。あたかも戦車のような……いや、動く要塞そのものであるかのようなベア大佐の頑健な体躯に対しては、惜しむらくも決定的な威力を欠いていると言わざるを得ない!
「その程度の力で俺に挑むとは、死ぬつもりでもあったのか? では今度はこちらの番だな、猟兵!」
ベア大佐は白い牙を剝きだしてニヤリと獰猛に笑むと、その総身に満載した火砲を一斉に展開し、上空のチルめがけて無慈悲に猛攻を開始した。天を引き裂くほどの火勢が次々と襲い来る、チルの美しい鱗を砕き散らせんと!
「くっ!」
チルは鋭い羽音を立てて虚空を飛翔し、辛うじてその攻撃を避けようとしながら、なおも氷弾を連射する。だが通じぬ、ゾルダートガトリングの凄絶なる威力の前に、チルの氷弾は次々と打ち砕かれていく!
そして、ついに──!
「とどめだ、猟兵!」
その時が来てしまった。狙いすましたベア大佐の一撃が……チルの華奢な身体を捉えるときが。
空間を歪ませるほどの威力を持つ大火力砲をまともに受けては、いかに栄光ある竜族といえど耐えきることはできない。チルは粉々になって四散した……。
かに、見えた。
「……どこを狙っているのですか」
仕留めた、と思い込んだベア大佐の耳に、冷たい声が降り注ぐ。
「何っ!?」
おお、振り仰ぐベア大佐の視界に映る、天に舞うチルの、先刻と変わらぬ美しい姿が!
「馬鹿な!? 貴様はたった今……」
「粉々に砕いた、はずですか? ……|あたかも氷の像を砕いたかのように《・・・・・・・・・・・・・・・・》?」
「っ!!」
ベア大佐はその瞬間に悟った。先ほど爆裂四散したとみえたのは……チルが巻き散らした無数の氷の欠片に映り込んだ虚像にすぎなかったことを!
「おのれ!」
憤怒に目を血走らせたベア大佐はさらなる猛攻を仕掛ける。次々とチルの姿が砕け、散り、割れていく……だがそれは全てが虚像だ! 無数に浮かぶ氷の結晶の中に、無数のチルが冷たい微笑みを浮かべて舞っているだけだ!
チルが、ほとんど効果がないと知りながらも突撃杖の氷弾を撃ち続けたのはこのためだったのだ。すなわち、無数の氷の欠片を漂わせることで敵の視覚を狂わせる、あたかも氷でできた鏡の迷宮に封じ込めたかのように!
「小細工を……! それで身を護れたとしても、貴様の攻撃も同様に俺には効かぬことに変わりはないぞ!」
「さあ、それも……どうでしょうね?」
チルの冷静な声は、既にチェックメイトであることを告げるものに他ならない。身じろごうとしたベア大佐は、その時、突如平衡感覚を失って大きく揺らぎ、態勢を崩したのだ。
「これは……!」
見回すベア大佐は知る。大地一面が氷で覆い尽くされていることを!
先ほどから彼が弾き返し続けた氷の銃弾は……そのまま大地に突き刺さり、大地を凍らせて氷原と化さしめたのだ、地上兵力の一切の挙動を許さぬほどの凍てついたトラップとして!
「あなたの防御は確かに鉄壁|でした《・・・》。しかしそれは、攻撃の瞬間にその鋼の筋肉を収縮させ、硬度を高めていたからです。しかし今大地は凍り付き、あなたは足元を踏みしめることはできず、その筋肉に力を込めるための足場は存在しません」
淡々と告げるチルは、静かに最後の魔法杖をベア大佐に向けた。
「……ゆえに、これで|終焉《おわり》です。私には、ここで死ぬつもりも、サヨさんを死なせるつもりもありませんでした。だからオブリビオンには死んで頂きます……それだけです」
静寂に満ちた氷の世界に、ただ細く長く尾を引いて、銃声が響いた──。
チルは一瞬瞑目し、透明な息を吐きながら、ぽつりとつぶやく。
「……私が凍らせるまでもなく、オブリビオンよ。あなたの心は最初から……凍り付いていたのでしょうね」
大成功
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ジャドス・ジャンジダ
(アドリブ、絡み歓迎)
真実は想像より奇妙だったな。
この物語の結末を決めるのは、ナキドリ・サヨの決めること…か。
それじゃぁこっちはこっちで始めようぜ兄弟(同族)。
俺とあんたの結末ってやつをな。
UC発動。クマならお馴染みだろう。
あまりガラじゃないが、俺たちの誇りってやつで楽にしてやるよ。
敵はどんな障害物をものともしない性格って話だ。
森の木々の隠れてかく乱戦法は、ワルシャワの二の舞だな。
なら正面から速度と力でぶち当たるぜ。
敵の攻撃が来るって分かるなら、あとは気合で耐えるだけだ。
駄目だったら他の奴に任せるし、行けたなら相手の懐に入る最高の瞬間だろ。
その喉笛、この爪で掻き切ってやろう!
「真実は想像より奇妙……だったな」
ジャドス・ジャンジダ(クマのパンツァーキャバリア・f39916)は、明らかになった事態の真相に低く重く唸る。眼前に佇む、炎のような殺気を纏い、マグマのような憤怒を漂わせている巨大な敵を──ベア大佐の姿を見つめながら。
彼はジャドス自身の映し鏡であり、もう一つのジャドスの可能性でもあった。種族としても、職業としても……そして、男としての生き様としても。
戦場に生き戦場に死ぬ、その乾いた風の吹く荒野の中で微かに見出した潤いは、ある意味では逆に残酷であったのかもしれぬ。小さな歌の響きを知ることなどなかった方が、純粋無垢な殺人者として、破壊者としてのありようを全うできたのかもしれぬ……。
では、自分はどうなのか、とジャドスは一瞬考え、そしてすぐに、そんな考えに苦笑して首を振る。
「今更だな。この歌がどんな結末を告げるのかは、俺が考えることじゃなく……ナキドリ・サヨが決めること……か」
ジャドスはちらりと後方を顧みる。戦場の遠くに立つ、小さな人影を。
それはサヨだ。サヨは、蒼白な表情で、しかし……決して目を逸らすことなく、最後のこの戦いを、しっかりと目に、そして心に、焼き付けている。
「……それじゃぁこっちはこっちで始めようぜ、|兄弟《同族》。俺とあんたの結末ってやつをな!」
「俺の物語は俺だけが語る。他の誰も口出しすることではない!」
二頭の巨熊は、大地を割れんほどに踏みしめ、大気を引き裂かんばかりに咆哮を上げながら、まっしぐらに進み、──世界を揺るがせて激突した!
空間を軋ませるほどの怪力が真っ向からぶつかり合い、その反動で二人の足元の大地が大きくひび割れ、削れる。が、ジャドスもベア大佐も一歩たりとも、いや半歩たりとも譲りはせぬ!
「駆け引きも技もなしか! ふはは、面白い奴よ!」
がっしりと組み合いながら獰猛な牙を剝きだして笑うベア大佐に、ジャドスもニヤリと唇をめくって見せる。
「柄じゃねえが、これこそが俺たちの──誇りって奴だろうよ!」
「フン……違いない!」
山のような剛腕を振りかぶり、ベア大佐は相手を地獄の底まで叩き込むような猛烈な一撃を放つ! ジャドスはこれを両腕を交差させて受け止め、びりびりと全身に雷霆のような衝撃が走るのにも構わず、まともに頭蓋を突き上げてベア大佐の顎を撃ち抜く!
重く低くそして破滅的な衝撃音が世界に響き渡り、どちらのものとも知れぬ鮮血が宙に舞う。よろよろと両者は一瞬よろけつつ、しかし口元に流れ込んできた血をぺろりと舐めてなおも吠えた。互いの途切れぬ戦意とさらなる高揚を確認するかのように。
二人の戦いはなおも続いた。
ジャドスの、隕石が惑星に突っ込むような猛烈なタックルを受けてベア大佐は吹っ飛び、しかし踏みとどまって嵐のように戻ってくるとその勢いのままジャドスを蹴り飛ばす。拳が唸って山を崩すような衝撃が走り、天地をひっくり返すような激烈な投げ飛ばしが決まる。
無限に、永遠に続くかとも思われたその戦いの中で、ジャドスは胸の奥に軋むような感情を抱えていた。それは、とうの昔にどこか遠い場所に置いてきたはずの、悲しさと呼ばれるささやかな感傷であったかもしれない。
(真正面から殴り合う誇り。一歩も引かねえ意地。……ただの|兵士《ゾルダート》であろうとするなら、そんなものは最初から持ち合わせる必要はねえ。だが、|同胞《きょうだい》、──オブリビオンである前に、ゾルダートグラードである前に、お前は一匹の漢だった。漢でありすぎたんだ……)
ベア大佐のその哀愁を帯びた漢としての在り方は、どこかで微かに、ナキドリ・サヨの歌に共鳴するような儚さを示すものであったのかもしれぬと。
ジャドスは痛みさえ麻痺しかけている体を引きずりながら、ひどく静かに、考えていた……。
「どうした。撃たねえのかい」
互いに襤褸切れのようになった相手を睨みつけながら、ジャドスは相手の方に装備された砲塔を顎で示す。だがベア大佐はニヤリと笑み、太い右腕を持ち上げた。
「砲撃のエネルギーをこの一撃に替えて行かせてもらおう。言っておくが、これを打ち終われば俺には隙ができる。そこを狙ってもいいのだぞ」
「そんな勝ち方は俺たちには似合わねえさ」
ジャドスも笑みを返し、ユーベルコードの力を全身に満たした。夜の森の神と呼ばれる恐怖の顕現としての力が、その身を包み、高まっていく。
同時にベア大佐の、殲滅砲撃と同レベルの右腕の一撃が──まっしぐらに繰り出された!
……凄まじい重量の鋼と鋼を超高速でぶつけ合ったような轟音が響いた。
ベア大佐の一撃を、ジャドスの爪は真正面から受け止め。
そして──。
そのまままっすぐに押し切り、ベア大佐の腕ごと斬り裂いて、その首元深くまで抉り抜いていた。
「……見事だ、|同族《きょうだい》……!」
一拍置いて、凄まじい量の鮮血が宙天高くに吹き上がると、ベア大佐はゆっくりと山脈が崩壊するようにその巨体を揺らし、やがて地響きを上げて、深く深く倒れ伏したのだった。
「……俺の最期の敵がお前であったことを誇りに思う」
息も絶え絶えに言葉を絞り出すベア大佐に、ジャドスはゆっくりと声を掛ける。
「ありがとうよ。……だが、お前の最期の言葉を言う相手は違うだろうぜ」
静かに踵を返すジャドスと入れ替わるように、そこには──ナキドリ・サヨが立っていた。
彼女の姿を霞みゆく目で認めると、ベア大佐は力ない手でジャケットの中を探る。
「……ガキ。約束通り、こいつを返すぜ。昔お前が言った通り……バチが当たっちまったようだな」
震える手で差し出した、巨大な手の中の小さな白い輝きを……イヤリングを、サヨはそっと受け取る。そして、自らの片耳に付けているイヤリングを外すと、代わりにそれをベア大佐に握らせた。
「……?」
「あげるわ。どうせあなたなんか地獄行きでしょうから、お守りくらいあった方がいいでしょ」
ベア大佐の魔獣の顔に、小さく浮かんだのは、苦笑だっただろうか……。
二人を遠くから見つめている猟兵たちの耳に、やがて、静かな歌が聴こえてくる。
それは、戦場の歌姫、ナキドリ・サヨの口ずさむ歌。
それは、死にゆく戦士に捧げる祈りを込めた歌──。
大成功
🔵🔵🔵