かにかまくんのなつやすみ
臥待・夏報
https://tw6.jp/gallery/?id=67235
こちらのイラストのキャラクター、「かにかまくん」に公式ストーリーをつけてください。
絵本っぽい可愛らしい感じだと嬉しいです。
「かにかまくん」は臥待・夏報の父親が経営する食品加工会社「かまぼこのジュークや」の企業公式キャラクターです。その名の通り、魚肉の加工製品が主力製品です。地域密着型ながら、カニカマにおいては高い全国シェアを誇っているという設定です。
「かにかまくん」が作られたのは臥待・夏報が生まれた年、つまり二十何年か前です。臥待父は「かまぼこのジュークや」をゼロから立ち上げ一代で大きくした仕事人間で、ほとんど家に帰ることはありませんでした。この可愛らしいキャラクターが生まれた背景には、昔気質の男なりに娘の誕生を祝う気持ちが込められていたのかもしれません。
その娘は完全な不良に育ってるけどな。
かにかまくんが具体的に何なのかはプレイヤーもよくわかっていません。たぶんタラバガニの妖精だと思います。
折角なので、そのあたりはMSさまのお好きに脚色してください。
カニだけに脚。
かにかまくんは赤くてまるい、タラバガニの妖精です。
とある山の小さな町で、小学生のスリミちゃんと暮らしています。
スリミちゃんは、かにかまくんのことが大好きで、二人はとても仲良しです。
「ねえ、かにかまくん」
「なんだい、スリミちゃん」
「明日から夏休みなんだ。かにかまくんはどこにおでかけしたい?」
そうだなあ、と少し考えてから、かにかまくんは答えました。
「ぼくは海に行ってみたいな」
「うん、わかった! 明日おとうさんに話してみるね!」
そう言うと、スリミちゃんはかにかまくんをぎゅっと抱き締めて布団に入りました。赤くてまるくてやわらかい、スリミちゃんはその感触が大好きで、かにかまくんもそうしてもらうのがお気に入りです。
スリミちゃんは寝付きが良いので、そのまますぐに眠ってしまいました。
「海かあ……」
スリミちゃんを起こさないようにしながら、かにかまくんは呟きます。
かにかまくんは海からきました。でもそれはずっと昔のことで、かにかまくんはその頃のことを覚えていません。スリミちゃんと一緒に遊ぶのはとても楽しいのですが、時々無性に、懐かしくなるのです。
●かにかまくんとうみのなか
翌朝、皆で一緒に準備をして、かにかまくんとスリミちゃん、そしてスリミちゃんのお父さんお母さんと、揃って海に出かけました。
駅から赤い電車に乗って、すごい速さで山を下っていきます。向かい合わせの席に家族で座って、流れる緑を眺めながら、皆でカニカマを食べました。ジュークやのカニカマは、高たんぱくで低脂肪、低カロリーでしかもおいしい。スリミちゃんのおやつにも、お父さんとお母さんのおつまみにもぴったりです。
電車に揺られて緑が途切れると、そこは賑わう街の中。そこからさらに進んでいくとやがて砂浜が見えてきます。
「海だ!」
電車を降りて、走り出したスリミちゃんを追いかけて、かにかまくんも海水浴場に向かいました。
皆でスイカ割りをしました。
スリミちゃんとボール遊びをしました。
そして波打ち際で水を掛け合って、追いかけっこをしました。
遊んでいる間は夢中でしたが、波の音を聞いていると、胸の奥がくすぐられるような心地がします。
ついに我慢できなくなって、かにかまくんは波間へと飛び込んでいきました。
「待って、かにかまくん!」
スリミちゃんが呼ぶのも聞かず、かにかまくんは一人でずんずん海の中へと入っていきます。初めて歩く海の底は、熱い日差しもやわらぎ、涼しく気持ちの良い場所でした。
小さな魚がいました。ふよふよと泳ぐクラゲがいました。そしてどんどん奥へと進んで、ごつごつとした岩が増えてきたところで、ついにカニの子供達を見つけました。どうやら、かくれんぼのオニを決めるために、じゃんけんをしているようです。
「あいこでしょ!」「なかなか決まらないなあ」
「そういう時はね、グーを出せばいいんだよ」
かにかまくんが声をかけると、カニの子供達はびっくりした様子でこちらを見ました。
「えっ、だれ……?」
「はじめまして、ぼくはかにかまくん。タラバガニのようせいだよ」
「ていせいじゃなくて?」「でも足の数も同じだね」「そういえば、僕らと同じ匂いがするよ」
少しの間互いに顔を見合わせていた子供達でしたが、そう言って、すぐにかにかまくんを迎え入れてくれました。
それじゃあ一緒に遊ぼうか。かくれんぼがいいかな。貝食べる? 初めて出来た同じ種族の友達は、賑やかで、すぐに仲良くなれそうでした。
「待ちなさい、お前達」
そこに、大きな声が降ってきました。かにかまくんと子供達が見上げると、そこには大きな大人のカニが居ました。子供達のお母さんです。
かにかまくん達を見下ろして、タラバガニのお母さんは言いました。
「この子には甲羅がないわ」
「えっ」
かにかまくんは、カニの子供達と自分の身体を見比べました。
たしかに、皆の身体は赤くもなく、まるくもなく、むしろトゲトゲとしています。
「それに、よく嗅いだら匂いも全然違うでしょう?」
「ほんとだ……」「仲間じゃないんだ」「うそをついたの?」
自分に集まる視線の色に、びっくりして、戸惑って、かにかまくんは動けなくなってしまいました。いつもなら、スッと横にずれるところですが、今は不思議と、そんな気持ちにもなれません。
「さあ、もう行きましょう」
知らない子と遊んじゃいけません。お母さんはそう促して、子供たちと一緒に岩の向こうへ歩いて行ってしまいました。
誰もいなくなった、薄暗く、冷たい海の底で、かにかまくんはじっとうずくまっていました。
「よお坊主、そろそろ岸に帰る頃だぜ」
やわらかな背中をつつかれて、かにかまくんは顔を上げます。
「おじさん、だれ?」
岩陰から現れた大きな魚は、問い掛けにこたえないまま、かにかまくんを乗せて砂浜へと泳ぎ始めました。
かにかまくんが陸から来たと知っているということは、ずっとこちらを見ていたのでしょう。
「どうして……?」
「坊主の匂いを嗅いでるとな、なんかほっとけねえんだよ」
へんなの、とかにかまくんは呟きました。
「じゃあな、坊主」
「ありがとう、スケトウダラのおじさん」
おじさんにお礼を言って、岸に上がったかにかまくんは、波打ち際で泣いているスリミちゃんを見つけました。
胸の痛みを感じながら、かにかまくんはその背中をつつきます。
「ごめんね、スリミちゃん」
ぼくは、タラバガニの妖精じゃないんだって。
それが聞こえていたかはわかりません。一度涙を拭ったスリミちゃんは、かにかまくんに飛びついて、ぎゅっと抱き締めてくれました。
海の底で暮らしていたら、きっとスリミちゃんとは出会えませんでした。
固い甲羅に覆われていたら、きっとスリミちゃんはこんな風に抱き締められませんでした。
かにかまくんは、カニカマの妖精でした。でも、それでよかったのかもしれない、かにかまくんはそう思いました。
●かにかまくんとスリミちゃん
かにかまくんは赤くてまるくて、タラバガニの妖精ではありませんでした。
でもスリミちゃんは、そんなかにかまくんのことが大好きで、今でもずっと、仲良しです。
成功
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