清く濁れども澱まず、故にその名を――
多くを贈られてきた。
自らの生は誰かの複写。子機。そう願われたから誰かを助ける。
いつだってそうだったけれど、カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)は人のために全力を尽くす。
それは自分の内側から発露したものではなくて、自分を遣わせた神様がそうだったからだ。
だから戦うし、助けるのだ。
その思いまでもが贈り物だった。
「ねえ、カツミ」
これは夢だとカツミは理解している。
いつだって神様からの声が届くのは夢の中だったからだ。問いかける言葉にカツミは夢の中で覚醒するように跳ね起きた。
そのロボは、と告げられる前にカツミはいや、ええと、と誤魔化すように言葉を紡ぐ。
いや、誤魔化しは意味がない。
神様には全部お見通しだ。
第二次聖杯戦争においてカツミは『都怒我阿羅斯等』と戦った際に抗体兵器キャバリアに乗った。
それは『ディアボロスランサー』の中にいた神様たちを助けるためだ。
「神様、これは、『抗体兵器』なんだけど」
とは言え、怒られると思った。
なにせ神様たちは『抗体兵器』を持つゴーストたちと戦ってきた人なのだ。良い感情を持っているとは思えなかった。
けれど、神様は一つ頷く。
「自分の意志で得たのね。これが親離れかしら……」
叱責の声は思いの外優しかった。
いや、叱責ではなかった。
何か一人で神様は納得しているようにも思える。
「えっ、えっ、どうして?」
「己で考えて得たのでしょう? 実際に戦っているのは、あなたなのだし。けれど、気をつけてね」
生命枯らす抗体兵器。
その危険性は言うまでもない。生命を殺す呪いを載せた兵器は、諸刃の剣だ。
猟兵であるカツミだからこそ御すことができるのかもしれない。
「神様!」
「名前をつけてあげるといいよ。名前とは縛るもの。顕すもの。カツミが何を思うのか、何を成そうとするのか。それを示してあげるといい」
見上げる抗体兵器キャバリアの色を見やる。
青に差し色の赤。
それは神様から独り立ちしようとするカツミの心の中を示すようであった。
清流だけでは生きていけぬのが生命ならば。
濁流ばかりでもまた生きていけないのならば。
流れる血潮なくとも、人の形をした生命の埒外であったのだとしても。
「清らかなるも、濁るも、カツミ。君次第だ。決して澱まぬ流れの中にこそ輝く美しさを」
君の胸に宿すといい。
それは命ぜられたことでなく、願われたこと――。
成功
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