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退魔ノ銃ヲ実戦ニテ運用セヨ

#サクラミラージュ #帝都鍛冶司

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#帝都鍛冶司


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●帝都桜學府
「構えー!」
 小太りの士官の声と共に學徒兵が武器を構える。

 一つは大型の小銃にも見える長物の銃。
 だがその弾倉は円筒状となっており大量の弾丸が装填されているのが見て取れた。

 もう一つは複数の銃身が回転しながら弾丸を吐き出す機関砲。
 影朧エンジンの利用で人の手で運用するに至ったガトリング砲であった。

「ッてー!!」
 けたたましいほどの銃声が響き渡り、木製の的、そして使われなくなった自動車へと次々と命中していく。
「止めぇっ!!」
 士官の号令と共に學徒兵は引鉄から指を離す。
 そこに残るのは瓦礫とスクラツプのみ。
「上手く行きましたか?」
 終わったのを見計らって小太りの男の元に眼鏡をかけた痩身の男が歩み寄り、問いかけた。
「流石は|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》によって製作された兵器。この退魔機関銃と退魔ガトリングがあれば桜學府による超弩級戦力への支援も可能です」
「それは良かった! ところで士官殿?」
「はい?」
 |帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》の技術員は少し困った顔で士官に問いかけた。
「これ退魔刀のように使う想定なんだけど、ちゃんと影朧に聞くかな?」
「分かりませんね……」
 小太りの士官は正直に感想を述べた。
「威力はありますが何分、破魔の効果ばかりは影朧相手でないと実証できませんので」
「曰くある者にぶっ放すわけにもいかないしね、やはり……実戦試験しようか?」

●グリモアベース
「そんなわけで|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》、帝都桜學府の技術部門から運用試験の依頼が来た。君達にお願いしたいのは退魔支援銃、機関銃型の一式と回転機関砲型の二式」
 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)が両手に持つのは軍隊で使われているような大型の軽機関銃と携帯運用できるガトリング砲。
「運用の想定は銃器の特性を活かした制圧射撃による退魔――私達、超弩級戦力への支援や大集団の影朧に対する掃討が目的だね」
 二つの銃の遊底を動かし、薬室を解放するとグリモア猟兵は机に銃を置いた。
「銃弾は清水にて洗礼された|完全被甲弾《フルメタルジャケット》、銃身には真言、もしくは聖句の刻まれたライフリングが仕込まれており、魔を滅する仕組みとなっているが……いかんせん、まだ試験中のものだ。実戦の蛮用に耐えられるか、破魔の力が発揮されているかがまだ分からない」
 銃の説明を終えた探偵屋は用意していた紙を机に投げた。
「そしてこのタイミングで、影朧の出現が確認された。今からこれを使って特性、弱点などを洗い出してほしい」
 つまり準備は万端だと言いたいばかりにグリモア猟兵は笑みを見せた。

「場所は帝都より離れた農村地帯、農閑期なのが幸いだった。既に住民は避難している」
 場所の説明をした上で探偵屋が少しだけ困った顔を見せた。
「厄介なのは影朧だね。最初に出てくるのは特殊な阿片を使って身体能力を活かして突撃する兵隊。武装との相性はいいだろう……問題はその後に出る指揮官格だ」
 もう一枚投じた資料にはコートを着た男の写真が添えられていた。
「こいつは逃げるのが上手い、ユーベルコヲドすら逃走の為に使うほどだ。上手く逃げられないように追い詰めてほしい。そしてこれが終わったら……」
 最後に手渡すのは原稿用紙。
「兵器の使った感想や改善点を300文字で書いて、桜學府に提出してくれ」
 実用試験に付き物のレポート提出だった。


みなさわ
 機関銃をぶっ放そう。
 こんにちは、みなさわです。
 今回は桜學府にて開発された兵器の運用試験をお願いします。

●実験武装
 退魔支援銃。
 機関銃型の一型とガトリング砲型の二型の二種類。
 學徒兵による超弩級戦力への支援射撃や大量の影朧の掃討を目的とした機関銃型の退魔兵器です。
 ガトリング砲も影朧エンジンによる機構の小型化に成功しており、取り回しに問題は有りません。

●章編成
 第一章:影朧との集団戦です。抜刀突撃を主としますので武器との相性は良い傾向です。
 撃ちまくって弱点などを洗い流しましょう。

 第二章:指揮官格の影朧が『逃げます』
 ユーベルコードすら逃走に特化した物なので、上手く追い詰めたり、わざと逃がして誘導させたりしてください。

 第三章:レポート提出です。今回の結果をプレイングにまとめて提出してください。
 弱点、適切な運用、今後の改善点などをピックアップして書くと良いでしょう。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、機関銃を心行くままに振りまわしましょう。
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第1章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・大和組隊員』

POW   :    強化阿片摂取
【特殊強化阿片を摂取して身体能力】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
SPD   :    限界突破
【特殊強化阿片を過剰摂取する】事で【肉体のリミッターを解除した姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    殲滅斬
自身の【赤い瞳】が輝く間、【装備武器による攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●運用試験開始

 人の気配は既にない農村の中、猟兵と影朧が互いに陣を取る。
 影朧が特殊強化阿片を摂取することで能力を引き上げる間、超弩級戦力たる者達は試験用に託された武器を手に取る。
 退魔支援銃の使用が想定されるのは猟兵への支援と大量の影朧に対する掃討が可能な火力。
 退魔の力を持った機関銃であるなら、薬物を摂取することによって痛みを無視した突撃部隊すら確実に撃退が可能だろう。

 ……問題は運用方法である。

 見たところ一型は機関銃と言えど自動小銃のような弾倉を持ち、動きながら使うに足りる軽さを持っている。
 後は銃身がどれくらい持つか。
 大量の弾薬を放つ機関銃は銃身の損耗が激しい上に加熱で悪影響を及ぼす。
 この退魔銃も銃身交換機能が備え付けられているがどこまで撃てるか試さなくてはならない。

 そして二型は携行できるガトリング砲。
 影朧エンジンによる小型化の結果、持ち運びが可能となった。
 だがそれは普段の移動においてのみである。
 実戦では動きに影響が出るであろうことは容易に想像できる大きさであった。
 おそらくは適切に使える場所への移動を想定し、大量の弾薬で圧倒する――そういう使い方を想定されているのだろう。

 想定は同じで運用は全くの別。
 敢えて、二種類用意したのが分かる。
 他の世界における分隊支援火器と汎用機関銃の違いだろう。
 その上で武器にはメモが添えられてあった。

・どのくらい銃身が持つのか?
・影朧に対してどれくらいの攻撃力を持つのか?
・砂塵、泥にまみれた状態でも使えるのか?
・そして最もこの武器に合った使い方は何なのか?

 それを見つけてほしいと。

「抜刀!」
 畦道を隔てた向こう側から一人が叫ぶとそれに倣うように影朧が抜刀の掛け声とともに白刃を抜いた。
 影朧の名は旧帝都軍突撃隊。
 戦いの陰に消えた非人道実験のなれの果て。
 それが新しい兵装によって消えていくのは皮肉であろうか、それとも……。

 どちらにしても、戦わねばならない。
 彼らはもう戻れない。
 故に銃弾を以って鎮魂を行わねばならないのだ。

「突撃ぃ!!」
 蛮声が響き渡り、影朧が突撃を開始した。
 戦いの狼煙に此処に上がったのだ。
ジェイミィ・ブラッディバック
※アドリブ連携歓迎

帝都鍛冶司とは長きに渡る協力関係を築きたいものです
退魔関連の知見はサイキックキャバリア開発の案件にも活かせそうですし

WHITE KNIGHT、私のカメラアイの映像の録画を
「了解だ、躯体各部への負荷など付随データも取得しよう」
では、只今より退魔支援銃一式及び二式の運用評価試験を開始します

右手に一式、左手に二式を装備
スラスターを吹かして空中機動、敵の攻撃を回避しつつトップアタックを仕掛けます
指定UCによって回避と敵の未来位置の予測
攻撃は予測結果をもとに偏差射撃
それぞれの集弾性能も確認します

一式は実戦を想定し三点バースト射撃を主体に
敵集団を二式の集中砲火で散らしつつ一式で各個撃破



●運用試験其ノ一

 最初に兵装を持ったのはジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/Mechanized Michael・f29697)だった。

 ――帝都鍛冶司とは長きに渡る協力関係を築きたいものです。

 自らも民間軍事会社を経営する身としては異世界の技術に対するコネクションを持つ重要性をジェイミィは理解していた。

 ――退魔関連の知見はサイキックキャバリア開発の案件にも活かせそうですし。

 そして、その知識が|遺失科学《ロストテクノロジー》への復活への可能性があると考えるなら、猶更だろう……。
「WHITE KNIGHT、私のカメラアイの映像の録画を」
 右腕に一式、左手に二式を持ち自らの事象予測|人工知能《AI》へと指示する機械傭兵。
『了解だ、躯体各部への負荷など付随データも取得しよう』
 WHITE KNIGHTからのレスポンスを確認し、リソースをそちらに配分すると自らは戦闘に集中できるように体勢を整え。
「では、只今より退魔支援銃一式及び二式の運用評価試験を開始します」
 戦場へと駆けだした!

 ジェイミィのスラスターが炎を吐き、傭兵を空へと飛ばす。
 問題は無い、帝都桜學府にも空を飛ぶものも居るし、この地では試すことができない高地からの射撃――トップアタックも可能となる。
「チェストォーーーーッ!!」
 猿叫が轟く。
 まずは一人、影朧が跳躍を以ってジェイミィへと接近する。
 だが、その一撃は虚しく空を切った。

 |S.K.U.L.D.System《スクルドシステム》

 |運命の女神《ノルン》の名を持った補助AIによる演算にて跳躍距離を想定したウォーマシンが既に後ろに下がっていたのだから。
 右手の引鉄を引けば、退魔支援銃一式の弾丸が突撃隊員へと叩き込まれた。
「思ったより弾速が遅いですね」
 大量の影朧への掃討を想定するにしては発射速度が遅い。
 大正七百年としても、他の世界の軽機関銃や分隊支援火器よりも明らかに一昔前の世代の発射速度だった。
 だがそれ以上に目につくのは集弾性。
 機関銃にしては命中精度が良いのだ。
「成程、では二式は」
 続いて左手のトリガーを引くと銃身が回転し、弾丸の猛威が大地を襲う。
 ガトリングガンという銃の特性故にこちらは逆に大量の弾丸を発射できるのだ。
 機構が複雑故に弾がばらけるのは仕方がないがそれはそれで使い方がある。

「集弾性能は一式が高く、発射速度は二式が優れている……負荷は?」
『躯体負荷は一式の方が大きく出ています、本体重量の差が反動に影響しているようです」
 WHITE KNIGHTが回答した。
 後は重量問題という事か。

 それは他に回すとしてジェイミィが二式の引鉄を引く。
 抜刀突撃を駆逐する圧倒的な弾丸速度。
 はるか昔に機関銃が戦場に現れた時がこんな感じなのだろう。
 違うのは弾丸を避けて来る影朧が居るという事。
 だが、問題は無い。
 ガトリングは相手の動きをコントロールすることが目的なのだから。
 後は一式のトリガーを|切る(・・)。
 意図的に作り上げた|点射《バースト》射撃が突撃隊員の眉間を貫いた!

 退魔支援銃による狙撃能力。

 ジェイミィ・ブラッディバックの運用結果は予想外の能力を見つけ出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルティア・サーゲイト
「何ぃ! ガトリングガンの試験運用だと? ハハッ、このガトリングガンの専門家に任せておきたまえ!」
 両腕で一挺ずつ持って撃ちまくってやるぜ。銃その物の試験だから下手に攻撃支援UCも使えないしな。
「ふーん、精度はまあまあ。口径が物足りンが影朧相手なら足りてはいるかぁ?」
 ある程度撃ったらバインダーに突っ込んで精密分解。設計データを頂きつつちょっとアレンジ加えていくぜ。
「ん、今度は精度が犠牲になったが障害物ごと抜ける威力は頼もしいぜ。今度は銃身を伸ばしてだなぁ」

「やり過ぎたなこりゃ」
 最終的に高性能化と引き換えに人間が扱えない程勝手に大型化しちまうのは悪い癖だ。



●運用試験其ノ二

「何ぃ! ガトリングガンの試験運用だと? ハハッ、このガトリングガンの専門家に任せておきたまえ!」
 楽しそうに飛びこむのはメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)。
 生身の肉体を模したドールユニットと武骨なパワードスーツの様なゴーレムユニット。
 二種で一組のウォーマシンによる二式のガトリング砲両手持ちは普通の学徒兵なら使えないだろうが動力甲冑にて運用したデータとしてならば有用足りうるだろう。
 早速とばかりに二式のトリガーを解放するとばらまかれるは思った以上に小口径の弾丸。
「ふーん、精度はまあまあ。口径が物足りンが影朧相手なら足りてはいるかぁ?」
 メルティアの躯体では軽すぎる武器だが、その意味も理解はしている。
 おそらくは互換性。
 装備を選ぶ時に弾丸を確認したが一式と同じ弾丸を使っている。おそらくは軍の制式小銃と合わせているだろう。
 思想、設計としては正しい。
 ただ、この人形と鉄巨人の好みでは無かった。
 だから背部のナノクラフトバインダーに入れて精密に分解し、データから好みの銃を作り上げた。

 |MODE CRAFTAR《モードクラフター》

 精度を引き換えに更に高速化し、威力を増したガトリング砲が吐き出した退魔の弾丸が影朧を|切断《・・》する。
 破壊力の高い銃器ならではの現象である。
 本来、そこまでの威力を出せるなら最早対物兵器としての運用が正しいであろう。
 将来、影朧列車などが出現した時に威力を発揮できるかもしれない。
 問題は……それに見合う弾丸もどうやって運ぶかなどの課題が現状見つかっていないという事だが。
 その上でメルティアは性能の限界に挑戦する。
 銃身を伸ばしたものを複製したのだ。

 だが、それは一回転も持たずに分解、使用不可能となる。

 原因は簡単だ。
 実物を模したものである以上、素材の限界がある。
 特にガトリングガンという物は機構の塊だ。
 故にそのまま大型化すれば破綻する。
「やり過ぎたなこりゃ」
 人形と鉄巨人が呟く。
 最終的に高性能化と引き換えに人間が扱えない程勝手に大型化しちまうのは悪い癖だとは思っているが、どうしても抗えない性がある。

 故に二式の大型化は素材の見直しから行わないと難しいという結果がこの時点で叩き出され、次の課題として考えられるのは現行の状態での火力強化案に発展する。
 今あるものをどうやって使うのかも試験の一つなのだから、

 ……少なくともレポートは上手く書かないといけないことだけは確かだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
なるほど、実戦での試験というわけですねっ。
銃の扱いならそれなりに慣れてますから、わたしにお任せくださ(ズシッ)重ぉっ!?
(※普段扱ってるのは精々1kg未満の拳銃型精霊銃)

構えるのも反動を殺すのも難儀しそうなので、【本気の草木の精霊さん】の力を借りて身体強化
木の外骨格に蔦の疑似筋肉はさながら植物のパワードスーツ
花粉や胞子の薬効成分で心肺機能も向上させれば普通以上に動けるはずです

戦場には一型を二丁(故障対策)と予備の銃身を幾つか(戦闘中の交換試験)、それと弾薬をたくさん持ち込み、ひたすら掃射
銃身もそうですけど、これだけ撃つとなると発射機構の劣化変形やガス詰まりなんかも気になるところですね



●運用試験其ノ三

 さて、此処までは大型のウォーマシン。
 動力甲冑や怪奇人間達が使用した想定での結果である。
 小さすぎると考えられるのは当然。
 では逆の視点からではどうなるか。
 非力なユーベルコヲド使いが持つと想定した場合は?

 証明するのは荒谷・ひかる(|精霊寵姫《Elemental Princess》・f07833)。
 精霊の力を除けば156cmの16歳の少女である。

「なるほど、実戦での試験というわけですねっ」
 ひかるが早速、機関銃型の一式を持ち上げる。
「銃の扱いならそれなりに慣れてますから、わたしにお任せくださ」
(ズシッ)
「重ぉっ!?」
 誠に残念な事実だが、16歳一般女性には10kg近い銃火器は重いだろう。
 普段扱ってる1kgに満たない拳銃型精霊銃もイメージとのギャップを生み出すのを手伝っているのかもしれない。
「とは言え、試験ですから使わない事には」
 それでも精霊に慕われし少女は銃を構える。
 多分、見えないところで精霊さんも応援しているだろう。
 銃床を肩に当て、頬を近付け両目は照星と照門を一直線に見据えバレルを左手で支えて……そして膝が崩れた。
「ダメでした……」
 伏射なら使う事は出来るかもしれないが……。
「けれど、此処で終わってしまっては試験になりませんですので――精霊さん!」
 それで妥協しないからこそ精霊も応えてくれる……そう本気で。

 |本気の草木の精霊さん《プラント・エレメンタル・オーバードライブ》

 草木の精霊が産み出す木が外骨格となって少女の身を包み込むと蔦が疑似筋肉の代わりとなり、花粉や胞子が彼女の脳を活性化させる。
「――行きます!」
 さしずめ植物のパワードスーツと言った所か。
 精霊の力を纏ったひかるは一式をもう一丁予備に背負い、予備銃身と弾薬を大量に携えて戦場へと赴いた。
 ……おそらくは機関銃分隊が分担して抱える量を。

 退魔支援銃にとって相性の良い戦場と言えど、戦闘可能な時間というものが存在する。
 撃ちっぱなしでいれば銃身は過熱し変形し、暴発を引き起こす可能性があるのだ。
 勿論それも試験の内容なのだから荒谷・ひかるは構わずに撃ちまくりバレルの色が変わり始めた段階で交換する。
 それまでに撃ち尽くした弾倉の数からいって、連続射撃は最大500発。
 休ませればもう少し可能だ。
 銃身の交換も容易なのがありがたい。
 持ち運び用のキャリングハンドルを掴めば、火傷せずに交換できるのだ。
 集団で動くことを想定するなら充分に戦える性能だ。

 その上で見極めなければいけないのは――故障の確率。
 発射機構の不良や火薬の燃焼で発生するガスが詰まって悪さをする可能性だってある。
 それは待ち受けていたようなタイミングで来た。
 何かが引っかかる音がして、遊底の中で弾丸が暴れる。
 それを機に影朧が突撃を仕掛けて来るが。
「そうはいきません!」
 予備で置いていたもう一つの一式を構えて引鉄を引けば、たちまち突撃隊は大地に伏した。
 充分なデータはほぼ取り終えた。

 ひかるはさらに銃弾を撃ち込んで影朧の動きを止めると速やかに撤退を開始した。

 銃身交換のタイミング。
 戦闘での故障の確率。
 この二つが分かれば、退魔支援銃を使った戦闘時間と必要な数が計算できる。

 荒谷・ひかるは現時点で必要なデータの半分以上を引き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

毒島・雅樂
何処かでも言ったが、普段と違う武装を使うのも一興、ってヤツさね。
ンで、妾は機関銃を使うとスるか。
敵サンと畦道を挟んでなるべく遠目に陣取り、突貫して来るヤツを蜂の巣に、だナ。

さて、メモにある点を全部確認しねェとな。
何々…「銃身の持ち」に関シちゃ限界まで撃つしか手は無ェだろ。仮に近接サれても【赩龍ノ断罪】でブッ斃せば問題無ェし…複数回、銃身を替えつつ限界まで撃つかねェ。「攻撃力」は銃身の限界までに何体斃せたかの平均ってトコか…数え忘れねェようにシねェとな。
後の「砂塵と泥」は敵を粗方掃討シたら田圃に放り込んだ後に撃ってみて…「武器に合った使い方」は、コの流れの中で見つけりゃイイさね。



●運用試験其ノ四

 試験は、戦闘は、まだ続く。
 戦場の真ん中に畦道が通る場所、用水路脇の高台を陣取り毒島・雅樂(屠龍・f28113)が駆ける。
「何処かでも言ったが、普段と違う武装を使うのも一興、ってヤツさね」
 手に持つのは携行性に優れた一式。
 薬莢が転がり、同じタイミングで影朧達も倒れていく。
「悪クはないナ」
 握った感じは悪くない、偶には機関銃も良いものだ。
「さて、メモにある点を全部確認しねェとな」
 感触を確かめたところで、次は本題に入らねばならない。
 |帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》の要求したことを成し遂げるのが今回の目的。
 ガンガンぶっ放すのも良いが、どうしてメモまで用意したかを考えねばならない。

 それが毒島・雅樂の性分だからこそ。

 まずは銃身の寿命。
 これは簡単だった、限界まで撃ち尽くせばいいのだから。
 赤熱化するまで撃ち尽くし、バレルを交換。
 次に休み休み撃ちながら、どれくらい持たせられるかも確かめる。
 弾倉形式なのが幸いした。
 弾数をカウントしているが空の弾倉の分、計算は楽になる。
「とりあえず、500発はイケルといッた所か」
 銃身寿命を計算していたところに猿叫が響き渡る。
「邪魔」
 銃身を取り換えたばかりの退魔支援銃を自らの背中を通して向きを変えると銃床で相手の腹を突き、影朧の動きを止めたところで。
「今、取り込ミ中なンダ」

 |赩龍ノ断罪《ヒイロノケンキュウ》

 貫手が突撃隊員の腹を貫き、その骸を朧に変えていく。
「……悪くナイ」
 濫用は出来ないが胡桃材で作られた銃床は頑丈で殴り合いも出来る。
 最もそれは最後の手段になるだろう。
 現に先ほどまで良かった集弾性が落ちて弾丸をばら撒くだけの武器に変わったしまった。
「ダメさネ……コリャ」
 流石に銃身を交換し直して、また影朧の掃討に入る雅樂。
 攻撃力に関しても優秀だ。
 銃身一本で遭遇戦は充分こなせるし、そのまま大型の火器や超弩級戦力の到着を待てるほどの耐久性と弱い影朧を排除できる破壊力がある。
 強力な影朧に関しては……。
「実際にヤリあってみてダナ」
 煙管を咥えたころには竜神が担当した区画には何も残りはしなかった。

「フム……評価とシテは『単体では厳しいが、部隊としての運用に耐えうる』とイウやつカ」
 毒島・雅樂は退魔支援銃一式をそう判定した。
 機関銃一丁では學徒兵には厳しいが、これを中心とした部隊を組むなら充分に支援が可能だろう。
 あとは……。
「どこマデ乱暴に使えるかッてと頃だナ」
 雅樂がまだ泥の残った田畑へと銃を放り投げ、そして拾う。
 泥を拭い、改めて狙いを定め引鉄を引けば。
 銃声がまた響いた。

「こりゃイイ」
 思わず笑みが出た。
 壊れず、折れず、曲がらず。
 良い武器と言うのはそういう物だ。
 少し粋ではないが、竜神の好みには沿った品物であり、|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》のメモはそういう物であることを証明してくれと言う意味の伝言であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿


ペンギン🐧クルー集合!
3体で1分隊を結成、1型装備で制圧射撃(連射性能)、武器落とし(精度)、貫通攻撃(威力)を見ていこう。

ぼくは紅路夢に2型を搭載、地上掃射をしつつ、搭載兵器として運用を実験してみよう。
(VTOL機やヘリコプターに近い運用)

給弾機構はちょっと改造しておくけど、今後、超大型の影朧や空戦特化型との交戦も見据えた運用も視野に記録をとっておこう。

1型の方が小回りは効きそうだけど、2型は場所と運用者に制限がつきそうだから、運用機材に関しても一考したいなぁ。

(と、考えながら、制圧射撃で敵隊を分断足止め、分隊による各個撃破をベースに戦術を進めて、自武器は不足する能力への充足へ)



●運用試験其ノ五

 今までは個人での運用結果であった。
 その甲斐もあり退魔支援銃単体では充分な結果を得ることができた。
 だがもう一つ課題がある。
 この兵器は桜學府による超弩級戦力への支援や大量の影朧群の掃討を目的とする。
 つまり部隊での運用も視野に入れなくてはいけない。
 |帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》も桜學府もそれは超弩級戦力に求めようとはしていなかった。
 単体での戦闘が主体の彼等にそれを求めるのは難しいと判断していたのだから。
 だが、一人だけ――そこに目をつけた者が居た。
 名を国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)。
 誰が呼んだかジヰニアスとは彼女の事だ。

「ペンギン🐧クルー集合!」
 鈴鹿の号令に従い九体のペンギンが空を駆けるスカイクルーザー・ヨナから落下傘降下を行い、|一分隊三体(スリーマンセル)の機関銃部隊を構成させる。
 一体が退魔支援銃一式、もう一体が予備弾倉、そして残りの一人が銃身を持てば三体は一つのチームとなりて、三つのチームは一つの小隊となりて戦闘級の動きを開始する。

 |超檄! ペンギン乗船員《スペリヲル・ペンギン・クルー》

 誰が言ったかペンギンプラトゥーン。
 それを指揮するのは勿論鈴鹿。
 百弐拾伍式・紅路夢――フロヲトバイを指揮戦術機体として運用し、車体には退魔支援銃二式を搭載し空中より地上斉射を開始する。
 影朧の動きが止まる中、展開を終えたペンギンクルーが続いて地上からの制圧射撃を行い、突撃隊員の刀を撃ち落とし、そして銃の貫通力による浸透攻撃を行う。

「ここまでは、良し」
 ペンギン小隊の動きと武器の運用に満足しながらもジヰニアスは二式のトリガーを引き、影朧の分断と足止めを行う。
「それにしても良く出来ている」
 鈴鹿が退魔支援銃の構造に舌を巻く。
 かなり昔より帝都での兵器は『規格』の概念を亜米利加から取り入れていた。
 その結果、部品の互換性と精度が非常に高く、鈴鹿の望む性能の八割程度にはなるが大量生産が可能なのだ。
 その上で部品の信頼度は高い。
 機構の中の『遊び』が広めに取られているために故障は少なく、ちょっとした給弾機構の改造程度なら問題なく動く。
「これが|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》の仕事」
 新しさはないが、技術に信頼度が高い。
 突飛な改造をしない限りは充分に使いこなせる。

 ならばとジヰニアスは思考を変えた。
 一式の運用はペンギンクルーが仕事をしてくれている。
 では二式をさらに使いこなすにはどうすれば良い?
 運ぶのは可能だが、取りまわすには重い。
 鈴鹿自身もフロヲトバイに搭載させて運用している。
 使いこなせるのは人外の体力を持つ者を除けばいない。
 そうなると動力甲冑や自動車やオヲトバイ。
 後は分解しての三脚架での使用。
 そこまで考えたジヰニアスのハイカラ的思考が背筋を寒くする。

「…………まさかね」

 今後、超大型の影朧や空戦特化型との交戦が想定されるなら退魔支援銃のデータは重要になるかもしれない。
 鈴鹿自身もそう考えて結果を記録しているが……平和な帝都にとって過剰な兵器と成りうる可能性が捨てきれない。
 過去の忌まわしき影朧兵器のような事が起こらないだろうか……?

 答えを内に秘めたまま、鈴鹿は引鉄を引き続けた。
 ペンギンクルーが各個撃破からの殲滅を成し遂げ、部隊規模での運用すら可能という結果を出すのを見つめながら……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴェルデン逃走卿』

POW   :    強烈なる一撃
単純で重い【逃走する隙を生み出す程】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    幻惑の煙
【放り投げた擲弾】から、戦場全体に「敵味方を識別する【毒ガス】」を放ち、ダメージと【追撃不可】の状態異常を与える。
WIZ   :    吹き荒れる薔薇
【嵐の如く舞う薔薇の花弁】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠氏家・禄郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●逃走卿

 影朧の大群は|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》の新装備の運用を兼ねた戦闘によって壊滅に追い込まれた。
 運用した武器との相性もある上に使い手は超弩級戦力。
 全滅は必然であった。
 その上で賢しい猟兵なら気づくであろう。

 ――この影朧達を取りまとめていた者が居ると。

 張本人は硝煙の向こうより歩いてきた。
「機関銃……遠く北欧を思い出しますね、スキーを使った兵士の短機関銃には痛い目を遭ったものです」
 コートに袖を通した洋装の男。
 異様なるはベルトに刺した鋸刃の剣。
 古のソードブレイカーにしては長すぎ、かと言って剣の意匠としては武骨だった。
「抜刀突撃に機関銃とは、どうしても相性が悪い。騎兵もそうですが時代の移り変わりという物を実感します」
 独白のように男は消えた影朧が居たであろう場所に歩むと何度も膝を折り、何かを拾う。
「このまま逃げてしまうのが得策だったのでしょうが、忘れ物をしてしまいましてね」
 その手に握られているのは|認識証《ドッグタグ》。
 兵士の個人情報を記した金属の小板。
「ああ、もう少しお待ちください。これで全員分のタグを回収できます。おかしいでしょう? 影朧に認識証だなんて。でも、彼らは兵士で此処で戦死した。私は指揮官でこれを持ち帰る義務がある。その理由だけで充分でこのお話はそれで終わりです」
 全ての証をコートのポケットに突っ込んだ後、男は剣を抜いた。
「さて、やるべきことは終わりました。後は逃げるだけです……と言っても背中を向けたら撃たれますから、やるべきことはさせていただきます」
 構える剣は明らかに殺意に溢れた噓無き刃。
 全滅や討伐が容易なら、そちらを選ぶことも躊躇することはない。
「私の名前があるかどうかは知りませんが……まあヴェルデンとでも」
 名乗った男がゆっくりと歩む。
「出来れば不名誉な記録だけで終わってほしいものです。何せ勝ち戦の記憶など無く、尻ぬぐいか殿が得意な物だった故」
 自嘲気味に笑うのは軽口かそれとも欺瞞か。
 どちらにしても戦いは始まる。

「では……全力で逃走と参りましょう」
 かつて逃げに逃げまくった男は影朧となっても尚逃げる。
 彼にとっては価値のある物を持って帰るがために。

 勿論、超弩級戦力としても看過は出来ない。
 認識証を拾い上げたという事は裏を返せば、影朧達にそれを渡したという事。
 つまりは影朧群を取りまとめ部隊として動かしていた可能性があるのだから。
 逃がせば、また兵力を集め、動くだろう。

 それに退魔支援銃はまだ武器として使える。
 これを使って逃走経路を塞いでいけば、追い詰め打倒する事も容易であるだろう。
 |故に退魔ノ銃を運用することはアドバンテージとなる《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。

 戦いはもう始まっている。
 後は誰が口火を切るか……そこにかかっていた。
毒島・雅樂
待っている間に良イ具合に一服が出来たさね。

【灰龍ノ思惟】

考えるのは妾の動きに対シて取る敵の逃走経路。その一手目が読めたら後は詰将棋みたいなモンさね。
妾が戦端を開く直前に近くのヤツに二手目の場所ヲ示唆。そこに逃走するよう隙を見せつつ攻撃かねェ。

さて、得物は引き続きの機関銃。有象無象に対する有用性は先ほど分かったンで、今度は名有りに何処まで有用性を示せるか、ってトコか。恐らくはひと当てふた当てシたら逃げやがるだろうシ、最初から当てて行かねェとな。
損耗具合が見て分かり易イ箇所…服装的に手とかかねェ…を中心に必中と行きたいトコさなァ。

逃げらレちまった後は…また一服でもシながら朗報を待つとスるかね。



●戦端

 戦いの口火を最初に切るのは誰であろうか?
 勇猛果敢な戦士?
 冷静に全てを処理する|先鋒《ポイントマン》?
 それとも陰謀を駆使する工作員か……?

 今回は。

「さて」

 探偵、毒島・雅樂が担った。

 雅樂が煙管を咥える中、ヴェルデンと名乗った男はゆっくりと歩を進めて来る。
「世間話をしましょう」
「いいねェ、話題はなンだ?」
 影朧の呼びかけに対して探偵は材料を求める。
「貴女方の武器に関して」
「ほう? どう見テいる?」
 逃走卿の言葉に雅樂が笑う。
 人ならずな歯を見せて。
「私達のような存在を倒すための効率の良い兵器にして……貴女方が振るう事を想定していない」
「根拠は?」
 探偵が問いかけ、影朧は間合いを詰める。
「超弩級戦力が運用するには少々大きすぎます――一部の例外を除きまして。そして貴女方の中に機関銃を中心とした集団で動く方もおられました、つまりは部隊に一つ二つ用意して火力の中心として使う。そうでしょう?」
「……洋装、シャツの裾、剣。階級は尉官、所属は欧米方面、ココと戦争をしていた時期」
 男の言葉を聞いた雅樂が一つ、また一つ、単語を上げていく。
 言葉が重なるごとに何故かヴェルデンの顔が歪んでいった。
「よくわかりましたね」
 苦笑ともいえる表情で影朧が剣を振り下ろす。
「武器の使イ方を理解シすぎなンだよ。となると実際にそうイう機会があッたッテことだろ?」
 金属が噛み合う音がした。
 咄嗟に探偵が抜いたのは長脇差。
 だが鍔迫り合いに応じず、すぐに退魔支援銃一式を構えた。
「ユーは思考ヲかき乱して斬るつもりだッたろうが……待っている間に良イ具合に一服が出来たさね」
「貴女の目は私ではなくて戦場を見ていた。慣れない腹芸などするものじゃないですね」
 互いに腹の内を見せ、そして次に火を吹くのは雅樂の銃。
 まだ実用試験は続いている。
 強い影朧に対してどこまでやり合えるか……その火力を試さないといけない。
 聖別されたフルメタルジャケットがライフリングされた真言を読み取り、破魔の弾丸となりて猛威を振るう。
 鉄量の暴力を技量で弾く影朧。
 だが銃弾は腕を貫き、片腕に孔を穿つ。
「行けるッてところさね」
 退魔支援銃が威力を証明した直後、剣が振るわれ、咄嗟に探偵は跳ぶ。
 この一撃は重い、まともに受けては武器ごと真っ二つなのは確実だ。
 案の定、枯れた田畑に亀裂が走り、大地が鳴動すると塵芥が辺りを覆った。

「…………」
 煙管から流れる煙を肺に流し込み、毒島・雅樂は戦場を視る。
「――見えた」
 白い手が伸び、その手にある煙管が示すのは次の戦場。
「今ナらまだ間に合うさね、先回りだねェ」
 戦いの最中、雅樂が描いていたのは影朧の逃走経路であった。
 やみくもに逃げるほど馬鹿な相手ではない。
 なら確実に逃げる為の道筋は描いているはず。
 探偵たる竜神はずっとその謎を喰らい、そして解を導くために思考していたのだ。

 |灰龍ノ思惟《ヨルヨリホカニキクモノナシ》

 絵図は雅樂が描いた。
 後はそれに基づいて追うのみ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルティア・サーゲイト
「簡単に逃がす筈がねェよな? 銃弾の土産も持ってけよ!」
 脚部ローラーダッシュで走りながら退魔ガトリング二挺で弾幕を張るぜ。ある程度撃ってデータ取りしたらクラフターに突っ込んで細部調整だ。今も性能テストは続けるぜ。
「行けよ、ガンスレイヴッ!」
 バインダーを開いて交差反転式ローターで飛ぶガトリングドローンを展開。もちろん、こっちも試作ガトリングだ。軽量化と給弾効率の改善、適切な発射レートを調整したオススメモデルって所かな?
 ドローンは重すぎると運べないし、人間の運用法に丁度いいんじゃないか? まあ、人間は飛べねぇだろうが。
「弾幕ってのは、攻撃じゃねェンだよ」
 右手のガトリングを格納してリニアレールカノンに持ち替える。
「支援だ。敵の進軍を阻止し、退路を断ち、追い立て、回避先を絞る」
 弾幕で追い込んだ場所に、リニアレールカノンで跳弾を駆使した狙撃を叩き込んで黙らせるぜ。
「仕留めるんなら一発で十分だ」
 コレも真似は出来ないって? そこまでは知らねェよ。



●伏撃

 絵図は描かれた。
 影朧はその通りに導かれるように退路を走り、そして襲撃を受ける。

「簡単に逃がす筈がねェよな? 銃弾の土産も持ってけよ!」
 メルティア・サーゲイトが男を追い越す様に脚部のローラーを回転させ巨大な躯体を使って退路を断つ。
「簡単に逃がしてくれるとありがたいのですが」
 軽口と共に逃走卿は文字通り逃げに徹する。
 退路を塞がれた以上はやりようはある。
 メルティアもそれが分かっているからこそ、退魔支援銃二式を両手で振り回し弾幕を以って行動の制限を強いる。
「先ほどの様子では、その銃のデータを貴方だけは計ってませんでしたが使いこなせますか? その大きな体で小さすぎる銃を?」
 明らかな挑発と共に影朧が間合いを詰めて来る。
「データなら、今、取った!」
 ウォーマシンの背部装甲が展開し、回転翼が空を切る音が響き渡る。
 無人航空機とは一線を画した回転翼――ローターによるドローン。
 ナノクラフトバインダーから生成された9機のドローン兵器。
 その全てがガトリング砲を装備していた。

 |CODE GUN SLAVE《コードガンスレイヴ》

「こっちも試作ガトリングだ。軽量化と給弾効率の改善、適切な発射レートを調整したオススメモデルって所かな?」
 ここに頭の固い試験官が居なかったのを幸いに帝都鍛冶司の兵器をまた改造しつつ運用しながらメルティアが答えた。
「ドローンは重すぎると運べないし、人間の運用法に丁度いいんじゃないか? まあ、人間は飛べねぇだろうが」
 それを考えるのが今回の仕事なのだがメルティア・サーゲイトにとってはあまり関係が無かった。
 何故なら、それよりも重きを置くものがあるのだから。
「弾幕ってのは、攻撃じゃねェンだよ」
 包囲からの制圧射撃によって逃走卿の行動を封じつつ告げるのは自らのガトリング砲における矜持。
 メルティアにとって大事なのはそちらの方なのだ。
「ならば、それを何と定義しますかね? この古い人間に」
 皮肉と共に影朧が擲弾を放り投げ、爆風がドローンを激しく揺らす。
 ユーベルコードが産み出した無人機故、破壊には至らないがタイムラグは生まれる。
 だが、充分だ――人形と鉄巨人にとっては。
「支援だ。敵の進軍を阻止し、退路を断ち、追い立て、回避先を絞る」
 そう、砲火を増やし、相手をコントロールすることが弾幕――ガトリング砲における解。
 それを実証するために、メルティアの右手に握られるのはレールカノン。
 長すぎて取りまわしは最悪だが、それを活かせる状況は作り上げてた。
「仕留めるんなら一発で十分だ」
 直後、空を切り裂く音が戦場に響き、影朧の剣が叩き折られた。
「過剰戦力も良いところですね……だからこそ、私も逃げられる」
 武器を失ったヴェルデン逃走卿の周囲を薔薇の花弁が舞う。
 嵐のように吹き荒れるそれはメルティア・サーゲイトの視界を塞ぎ、同時に全方位レーダーシステムからも姿を消した。
「やられた、転移か!?」
 ドールユニットからふと舌打ちが漏れた。
 まあ、問題は無い。
 運用試験は行ったし、敵の武器を破壊した。
 後は更に追い立てられるだけだろう。
 それよりは……。

「レポート、面倒くせえなあ」
 戻ってからのレポート提出の方が彼女にとっては頭痛の種だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
逃げることに特化した能力……わたし一人ではちょっと厳しいですね。
仕方ありません、ここは大盤振る舞いと行きましょうっ。

【風と大地と草木の精霊兵団】発動
総勢126体の(・∀・)ゴーレムを召喚
3体1組、全42組の分隊を作り、各組に(こんな事もあろうかと用意してた)一式二丁と二式を一丁とたくさんの弾薬を持たせる
そして3組を指揮を取るわたしの護衛に残し、残り39組で以て|索敵と攻撃《サーチ&デストロイ》と参りましょう
逃げる相手にはとにかく手数で圧倒するのが肝要
弾幕で逃げ場を封じ、逃げられても人海戦術で逃走先を潰して回ります
ついでに運用データ取りも引き続き行いましょう


ジェイミィ・ブラッディバック
追跡戦は得意なんですよね、私。
WHITE KNIGHT、敵の逃走経路の予測演算を。
「全パターン演算完了。待ち伏せに最適な空間座標はここだ」
では……退魔支援銃一式ですかね?
「あぁ、『一式を狙撃銃として本格運用する上での課題点』を評価しよう」
オプション装着か、設計そのものを尖らせるか……ですよね。

指定UCを使用して戦域内を高速移動、WHITE KNIGHTの未来予測演算によって逃走経路を先読みし、有効な狙撃ポイントへと急行。一式で狙撃します。同時にWHITE KNIGHTには各種ログの取得も引き続き指示。
「マルチタスクとは人使いの荒い」
我慢してください、より良い新兵器開発のために必要なんですから。



●そして討伐

 逃走卿。

 かつて、そんな異名を持った男は今は影朧。
 仲間の元へと転移するユーベルコヲドを使って、今も戦場に立つ。
 その目の前にあるのは主を失い、転がった刀と|認識証《ドッグタグ》。
 最初から逃げればいいのにわざわざ消えていった影朧に認識証を渡し、それを拾い集める性分と少々のずる賢さがヴェルデンをここに来させたのだ。
「遅れましたが、ご勘弁を。最後の最後、その逃げ道が必要だったので」
 もう右腕は使えない。
 一式で手を貫かれ、レールガンの一撃を剣で受けた際に折れた。
 だから左腕で刀を持ち、認識証の鎖を咥えたところで銃弾がそれを弾き飛ばした。
「ここも――見抜かれましたか」
 男が溜息をついた。
 視界に入るのは植物を纏った土の巨人――ゴーレムの軍団。
 数は171体――中隊規模の軍勢だった。

 ――時は少しさかのぼり。

「逃げることに特化した能力……わたし一人ではちょっと厳しいですね」
 荒谷・ひかるは猟兵が予測したポイントへの移動経路を確認する。
 その足元には試験用に用意されている退魔支援銃の全てが置いてあった。
 理由は簡単だ。
「仕方ありません、ここは大盤振る舞いと行きましょうっ」
 逃走する相手を野外で追うには、数が必要だからだ。

 |風と大地と草木の精霊兵団《エレメンタル・ソルジャーズ》

 次々と生まれるゴーレム、百と二十六体。
 大地の精霊が産み出した巨人が草木の精霊によって植物を纏って擬装を完成させ、風の精霊による飛翔能力を応用し、地面を空気浮揚によって移動することによる速度を得る。
「では、追撃開始です!」
 ひかるの号令一下、三体一組の分隊単位で構成されたゴーレムは二丁の退魔機関銃一式を一丁の退魔機関銃二式による機関銃中隊となり、横列体勢で分隊ごとに散開する。
「……では、私は別の地点へ」
 ジェイミィ・ブラッディバックは頭の中でこの中隊規模を動かせるコストパフォーマンスの良さを片隅に追いやって、打ち合わせ通りに別行動を開始する。
 中隊規模の運用を精霊の申し子たるひかるが行うのなら、自分は別の役割を果たす方がいい。
 それに――。
「追跡戦は得意なんですよね、私」
「はい、なので必ず追い込みます!」
 ジェイミィの言葉に護衛として三個分隊を直卒したひかるが強く応えた。

「堅実に来ましたね」
 ヴェルデン逃走卿の顔が歪む。
 逃走、撤退を得意とするからこそ、正攻法の恐ろしさは嫌と言うほど知っている。
 個で部隊を凌駕する戦狂い、追撃を目的とするために速度を優先する軍。
 それならまだ、やりようがあった。
 だが数で揉み潰す掃討戦だけは難しい。
 よほどの有利が無ければ、選べる手段は限られているから。
 だからこそ田畑の奥、森の中へ隠れた影朧はまず茂みから飛び出して分隊一つを潰し、引き換えに銃撃を受けた。

「見つけました、三個分隊を空へ!」
 凛とした声で精霊の申し子はゴーレムを指揮する。
 黒曜石の角がある少女は戦場では、ただの少女ではない。
 今までの経験が自然と何をするかを教えてくれる上に、気の利く精霊さん達は彼女の意を組んで上手く動いてくれる。
 民間軍事会社を運営しているジェイミィ・ブラッディバックから見れば、腕のいい下士官が仕事をしてくれるような物で喉から手が出るほどに欲しい戦力足りうるものだった。

 どんなに強大な影朧でも強力な武器を持った三体を一度に倒すのは難しい。
 その上、三体を倒している間に他の部隊が殺到する上に、その様子は上空から観察されている。
 一度、退魔支援銃を奪って対空射撃も試みたが、今度は銃火で見つかり追い詰められてい行くばかり。
「もうあきらめてください……と言っても無駄ですよね」
 精霊さんからの報告を記録につけながら、ひかるは呟く。
 そんな死にたがりの影朧は居ないし、今回の相手は転生を望む気すらなく、むしろまた影朧達を集めるだろう。
 だから精霊の申し子は部隊を動かし、銃火を見舞う――逃走卿の外套のポケットに。
「ああ……」
 何かを惜しむ様に男は呟き、そして薔薇が舞う。
 この状況で拾う事はもう能わぬ。
 それを選んで死ぬなら、誰かを率いる資格などないのだから。
 だから逃げるのだヴェルゼンは。
 認識証と花弁が舞い散る中、逃走卿は何一つ得られず、逃げた。
「あとは――よろしくお願いします!」

 それが荒谷・ひかるの作戦だと知らず。

 音の壁、熱の壁を越えジェイミィが空を駆ける。
「WHITE KNIGHT、敵の逃走経路の予測演算を」
『全パターン演算完了。待ち伏せに最適な空間座標はここだ』
 事象予測AIから返って来た座標の位置を確認し、傭兵の目は赤く瞬く。
「結局はここになるんですね」
『これは演算結果に過ぎない。何故なら生命体の殆どは情によって動き、情によって生き、そして情によって死す』
 溜息交じりの言葉に対してWHITE KNIGHTが珍しく饒舌な答えを返した。
「だからこそ“ここ”に行きつくんですね……では……退魔支援銃一式ですかね?」
 情の時間は終わり、仕事の時間が始まる。
『あぁ、“一式を狙撃銃として本格運用する上での課題点”を評価しよう』
「オプション装着か、設計そのものを尖らせるか……ですよね」
 機関銃による狙撃は別に珍しくはない。
 小銃よりも長射程な上、バレルも肉厚で重い。
 種類にもよるが命中精度が高い物なら、充分狙撃は可能だ。
 そして退魔支援銃一式は高い集弾性能を持っている。
 今、それを――確かめる時が来た。

 |N-Ext. BOOSTER《ニュークリアフュージョンエクストラブースター》

 超音速によって戦域を移動し、そして狙撃ポイントを確保。
 同時にWHITE KNIGHTには各種ログの取得も引き続き指示を行う。
『マルチタスクとは人使いの荒い』
「我慢してください、より良い新兵器開発のために必要なんですから」
 事象予測AIの皮肉を嗜め、ジェイミィの光学センサーが目標へのピントを合わせる。
 そして逃走卿は現れた。
 最初に刀を取り、銃撃によって認識証を取り落とした場所に。

 性分とはそんなものだ。
 結局、ヴェルゼンという影朧は部下を見捨てることは出来なかったのだろう。
 だから刀を捨て、たった一つの認識証を今度こそ落とさまいと懐に入れる。
 空気が割れる音が響いた、超弩級戦力だ!?
 咄嗟に擲弾のピンを歯で引き抜き、検討を着けて振り上げたところで――その腕が吹き飛んだ。
 次に胸に二発。
 |点射《バースト》による狙撃。
 狙撃銃というカテゴリーとしては不足はある。
 だが命中精度を活かした制圧射や|選抜射手《マークスマン》的な扱いなら可能であろう。

 試験結果はヴェルデン逃走卿の死によって証明された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『交換日記をあなたと』

POW   :    今日あったことを短く書く

SPD   :    今日あったことを事細かに書く

WIZ   :    今日あったことを絵で書く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●桜學府にて

 戦いが終わり、超弩級戦力たる猟兵が連れてこられたのは帝都桜學府。
 その一室にて眼鏡をかけた痩身の男が両手を広げて君達を迎えようとしていた。
「実戦試験ご苦労だった超弩級戦力の諸君。私は|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》の蝦夷山、今回の退魔支援銃の設計と開発を主導したものだ」
 喜色満面に椅子を勧めると、早速とばかりに蝦夷山と名乗った技術員は原稿用紙を手渡す。
「早速だが、運用の結果を文章にしたためてくれないか? 一応は上に提出する公文書なので、583円の収入印紙も貼り付けていただけるとありがたい」
 妙に中途半端な金額なのは何故か分からないがそれがお役所という物なのだろう。
「で、実際にどうだったろう? 泥や砂塵にまみれても動いただろうか? 銃身はどれくらい持っただろうか? 武人の蛮用に耐えうるものだろうか。そして……」
 汚れた眼鏡の向こう側で男の目が光る。
「私の想定とは別の運用法などがあれば教えて欲しい……勿論、使える使えないは関係ない。データを元に更に使いやすい武器を作ることができるからね」
 そう言って蝦夷山は肩を竦めた。
「とにかく情報は欲しい、私は技術屋だが同胞が傷つくのは好まない。怪我せず、死なずに相手を倒せる武器を作り仲間を守る……矛盾しているようだが、それが私の信条だ」
 自分の言いたいことを言い終わると男は少し離れた席に座る。
「もし出来上がったら、私の方に持ってきてほしい。その際に、いくつか質問すると思う。そうした方が説明しやすいと思うからね。じゃあ……よろしく」

 運用試験とは面倒なものである。
 実際に使った上で評価し、想定足りうるものかを見極め、その上で更なる疑問点や使い方を提示することも必要なのだから。
 ちなみに印紙の枠は一つしか無く、レポートが厚くなった場合は印紙代がさらにかかる仕様となっていた。
メルティア・サーゲイト
 ドールユニットでプレゼンするぜ。
「まずはこれが私が完成品から逆算した図面だ。実際に使った図面との違いを確認してくれ」
 私のバインダーは前提として精密分解する。図面を出力する位は楽勝だ。
「その上での実際の運用データだ」
 連続射撃可能時間、可能弾数。命中した相手の損傷データから算出した威力、ストッピングパワー。荒っぽい運用に耐えうる耐久性。まずは要求されたデータの数値化だな。
「以上を踏まえた上での私から提案する改善案の図面がコレだ」
 命中精度、耐久力、継戦能力、発射レート、発射可能弾数、口径。人間で運用できる重量の中ではあるが、必要になるであろう性能を網羅した図面を軽く10枚程提出するぜ。
「元の銃より加工の難易度は上がるが、元からこれだけの加工精度があるならイケるだろ?」
 私の中には色んな世界の大量の銃器のデータがある。見た事無い銃を見つけたらまずバインダーに突っ込むからな。そのデータを基にした改善案だ。役に立たないとは言わせないぜ。
「他に何か必要なデータはあるか?」
 私は専門家だからな。



●報告書、その一

 報告書とは難しい。
 解釈の違いがすれ違いを起こすことがあるのだから。
 なので最初に求められる運用試験を行い、その成果を経て結果を出さなくてはならないのだ。

「まずはこれが私が完成品から逆算した図面だ。実際に使った図面との違いを確認してくれ」
 メルティア・サーゲイトのドールユニットが最初に出したのは退魔支援銃二型の改善案だった。
 ちなみに本体は大きいのと、プレゼンの影響を考慮してかここには居ない。

「その上での実際の運用データだ」
 連続射撃可能時間、可能弾数。
 命中した相手の損傷データから算出した威力、ストッピングパワー。
 荒っぽい運用に耐えうる耐久性。
 まずは要求されていた物を数値としてあげていた。
「以上を踏まえた上での私から提案する改善案の図面がコレだ」
 その上で新しい図面を十枚ほど提案する。
 命中精度、耐久力、継戦能力、発射レート、発射可能弾数、口径。人間で運用できる重量の中ではあるが、必要になるであろう性能を網羅したものだ。
「元の銃より加工の難易度は上がるが、元からこれだけの加工精度があるならイケるだろ?」
「可能だが、質問が二つある」
 蝦夷山が眼鏡の位置を直し、先程とは違った声色で問いかけた。
「一つ、今回試した銃が何故、改善を必要としたかの根拠。実用段階まで組み上げた物が君の要求基準に足りなかったのか、それとも超弩級戦力以外には使えなかったのか」
 メルティア・サーゲイトにとっては不足な兵器だったのかもしれない。
 ならばそれに至る根拠を提出すべきであるし、その為のデータが必要だった。
「そして、もう一つ……今回の運用目的の中でどれが一番使える? 君の意見を聞きたい」
「…………」
 メルティアは答えることができなかった。
 そこにあるのは新規の改善案を大量に用意しただけであって、どれが一番必要で、どれが學徒兵にとって有用で、どれが彼女が一番推す案であるのかが分からないのだ。
 そして、それは|帝都鍛冶司《ていとかぬちつかさ》の作った武器の改善案と微妙にかみ合わなかったのだ。
 質問からの沈黙、表情を和らげたのは技官の方であった。
「だが君の提案は魅力的なものが多い。今後の参考になることは確かだ。というわけでもう少し話しを聞かせてほしい、君は一を問うたら百を答えられる知識がある。お願いできるかな」
「ああ……私は専門家だからな」
 少しだけメルティアの気が緩んだが地獄は此処から始まる。

「まずはこの銃の改善に思い至ったところだが……」
 蝦夷山は言った「メルティア・サーゲイトは一を問うたら百を答えられる知識がある」と。
 つまりこの技官は聞きだすつもりなのだ。
 一から百を。
 十から千を。
 百から万の知識を。

 細部に至った突っ込んだ質問の地獄。
 そして答えられるのがメルティアというウォーマシン。
 彼女が出した新しい図面以上に二人が書き上げたメモや提案の紙がうず高く重なっていき。
 それはメルティアのリソースの半分以上を消費するほどであった。

 報告書とは難しい。
 不足があれば、そこを求められるのだから。
 故に試験に使用する武器を徹底的に使い込み、あらゆる事に答えられなければならないのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

毒島・雅樂
あ゛~…報告書か、報告書なァ…。
こう言う七面倒なのは、親愛なる医者先生とか作家先生とかがらっ八が書くモンじゃねェのかよ…。彼奴を連れてくりゃ良かったさね…。
と、まァ、愚痴ってても仕様が無ェよな…一服しつつ取り掛かるか…。

そう言や…筆で候文でイイのか、この世界?
ま、読めンだろ…妾、所謂ところの達筆らシいシ、多分、無問題さね。

さて…報告書は簡潔に的確に、ってナ。
取り敢えずは…折角メモを取ったンだ。依頼を請ける時に訊かれた諸事に関する報告を纏めンのと、後は付随する所感を書いておくとするかねェ。
まァ、取り敢えず簡潔に纏めておくと「イイ」ってヤツで、詳細は文面にて。

印紙はまァ…役所だ、自腹で仕方ねェな。



●報告書、その二

 報告書は苦手だ。
 腕っぷしと頭の回転だけは一級品の毒島・雅樂でも、報告書を書くという文化を知ったのはここ最近の事だったし、何よりも自分は書く方ではなくて読む方が専門だった。
「こう言う七面倒なのは、親愛なる医者先生とか作家先生とかがらっ八が書くモンじゃねェのかよ……彼奴を連れてくりゃ良かったさね……」
 なので、大体は誰かに押しつけていたものなのだが今回に限っては自分一人だったので覚悟を決めるしかない。
「と、まァ、愚痴ってても仕様が無ェよな……一服しつつ取り掛かるか……」
 ただ努力を惜しむ事は無かった。
 なので煙管から紫煙を燻らしつつ、ユーベルコヲドで脳を回転させることは忘れていない。
「そう言や…筆で候文でイイのか?」
「口語で構わないよ、大正も七百年。その辺りはやりやすくはなっている」
 雅樂の問いに蝦夷山が答えた。
「筆は?」
「私が読めれば」
 技官が煙草を咥えるのを見ると竜神は笑い筆を執った。
「ま、読めンだろ……妾、所謂ところの達筆らシいシ、多分、無問題さね」
「読めるよね? 超弩級戦力さん?」
 蝦夷山の言葉を雅樂は聞かなかったことにした。

 幸いにも文字は読める物だった。
 長年の読書は無駄にならず、自称伏見出身のがらっ八が書いていたのもよく見ていたからだ。
「まァ、取り敢えず簡潔に纏めておくと“イイ”ってヤツかねェ」
「いや、予想以上の結果だよ。機関銃で白兵戦のデータなんて普通取れないからね。頑丈さを考えて木製にしたが間違いは無い様だ」
 雅樂の所管以上に技官は楽しそうに報告書を読み進める。
「本当に泥の中に突っ込んだのか……乾いたとは言え水田の泥濘でも動くなら、満点だ。公差は大きく取って正解だった」
「その割によく当たッタナ」
 公差は基本、誤差を考えた部品同士の『遊び』だ、本来、出来るだけ小さくすべきだが、この銃は遊びを多くとっていても精度が高いと竜神は答えているのだ。
「威力も充分、これなら運用目的に担った使用は可能という事だね?」
「ああ、デモ一人で使うモンじゃないさな」
 蝦夷山の言葉に雅樂が返す。
「勿論。これはそういう武器だからね」
 何かに気づき、毒島・雅樂が紫煙を燻らせた。
「これ使うヤツ……只人ダロ?」
「勿論」
 技官は眼鏡の位置を直した。
「ユーベルコヲド使い以外が戦える武器……上からの要求がそれだったからね」
「その上で対影朧という題目に使え、いざとなれば違ウ相手にも使えるモノを治安維持に程度に留めた……上手くヤッタナ」
 雅樂の言葉に蝦夷山は報告書の一か所に指を差し、口を開く。
「印紙を貼ってくれ」
 つまりは正解だと言っているようのものだった。

 この技官にも色々と事情があるのだろう。
 気にはなるがその謎は後に追えばいい。
 今は指示通りに女は印紙を貼り、男は割印を押してこの話は終わった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
レポート結構分厚くなりましたね…印紙代もかかりましたけど必要経費ということで。
映像データも用意しましょう。私の情報端末で再生すれば良いですかね。
では…プレゼンに向かいましょうか。

結論から申し上げれば、二式は想定通りの性能を発揮しました。
敵の陣形を崩すという点では申し分ないかと。
一式に関しては集弾性能の高さと命中精度の高さ、射程の伸び等から、狙撃能力も有すると判明しました。
そこで、一式のさらなる発展改良計画として狙撃銃を提案します。
サプレッサーやレーザーサイト等を追加すれば、影朧を遠距離より密かに、確実に無力化することが可能です。
もちろん腕の良いスナイパーが扱うことが前提になりますが。



●報告書、その三

「レポート結構分厚くなりましたね……印紙代もかかりましたけど必要経費ということで」
「その辺りは私の管轄外なので答えられないな」
 分厚い報告書を抱えたジェイミィ・ブラッディバックの言葉に蝦夷山は苦笑する。
 実際問題、経費は通るだろうが、各世界の通貨レートの調整に難儀しそうだとジェイミィ自身も思っていた。
 なので少し頭が痛い……。
「映像データも用意しましょう。私の情報端末で再生すれば良いですかね?」
「構わないが、提出する報告書に所感を追記するくらいしかできないぞ。公文書だからな」
 傭兵の言葉に技官は少しだけ眉をひそめた。
 この辺りはまだ大正なのだろう。
 そして報告が始まった。

「結論から申し上げれば、二式は想定通りの性能を発揮しました」
 報告書が分厚くなったのは一式、二式、両方の試験を規定通りに行った結果であった。
「敵の陣形を崩すという点では申し分ないかと」
「では二式は現状のままで実用に値すると?」
 蝦夷山の言葉にジェイミィは端末の映像データを起動させる。
「技官殿……多用途を目的とした機関銃として携帯運用を可能にしたガトリング砲を採用した時点で、この武器の弱点はほぼ取り除かれているのではありませんか? しかも影朧相手という事は野外での整備は考慮に入れられていない、そうでしょう?」
「そこまで分かっていたか」
 傭兵の言葉に技官は白旗を上げた。
「次に一式に関してですが」
 ジェイミィは言葉を続ける。
「集弾性能の高さと命中精度の高さ、射程の伸び等から、狙撃能力も有すると判明しました」
 実戦での発見、運用の結果を書類と共に説明すると蝦夷山は食い入るように耳を傾けた。
「そこで、一式のさらなる発展改良計画として狙撃銃を提案します」
 もう一つ用意したのは狙撃銃の提案書。
「サプレッサーやレーザーサイト等を追加すれば、影朧を遠距離より密かに、確実に無力化することが可能です」
「ふむ……」
 技官が考え込む。
「もちろん腕の良いスナイパーが扱うことが前提になりますが」
「銃身は固定だね、これは」
 蝦夷山が提案書を読んで呟く。
「その方が銃身の寿命が延びます。個人的な考えですが銃身の作成は手間ではありませんか?」
「想定が學徒兵が全員使える物としてだったからね、今回は機関銃にしたんだ……だが、この案は面白い買おう」
 ジェイミィの疑問に答えつつ、技官は提案書を好意的に受け取った。

「ところで思ったのですが……どうして、このような銃を? 機関銃としては命中精度が高い――その思想は新しすぎると思いますが」
 傭兵はもう一つの疑問を口にした。
「桜學府は影朧に対する治安維持組織だ。かと言って個々の能力に頼るのも危険がある。組織として許され、且つ個人が持てる最大の火力が機関銃だったのさ」
 そう答える蝦夷山の瞳は汚れた眼鏡が邪魔して見えなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
●報告書の内容
今回の戦闘の顛末に加えて
・バレルの耐久限界
・実戦中の銃身交換
・故障の頻度とその時の状況
これらについて数値データと体感併せて纏める
その他、運用した感想として
・雑多な影朧であれば一式でも火力的には十分、二式はやや過剰かも
・大物相手なら二式の火力は有効、ただし機動力に大きく難有り
・どちらも彼我の距離が近すぎると取り回しに難があるので、何かしら改良なり運用法なりで穴を埋めると良さそう
・人型でそれなりに知能のある敵には奪われ運用される恐れがあるので注意
といった感じに所見を書いて提出します
個人的な意見としては……もうちょっと軽くて取り回しやすいタイプがあれば嬉しい、ですかね(短機関銃的な)



●報告書、その四

 最後の報告書を提出したのは荒谷・ひかる。
 彼女の報告書もやはり分厚い。
「強化スーツ的なユーベルコヲドと……え、中隊規模で運用したの?」
 蝦夷山が目を丸くした。
 超弩級戦力は個々の戦力が強いという先入観があったために、技官自身は部隊規模での運用を期待していなかったのだ。
 思った以上の収穫を得たと男は目を輝かせて報告書を読み始めた。

「成程、連続射撃は500発が限界。故障は弾詰まりによる作動不良が一回……銃身交換は耐熱グローブ無しで可能……そして強力な影朧に対する中隊運用。ここまで取ってくれたのか、二回の戦闘データとしては充分なくらいだ」
 予想外の情報が手に入り蝦夷山は喜ぶしかなかった。
 実戦運用のデータのみならず、他の猟兵の報告と合わせれば新しい兵器や戦術の考案すら可能であるのだから。
「……と、いけない。君自身の意見も聞かねばならないね。実際に使ってみてどう思った?」
 その上で、自分の仕事を思い出し改めて技官はひかるに問いかける。
「はい、あくまで個人の感想ですが」
 精霊の申し子が口を開く。
「雑多な影朧であれば一式でも火力的には十分、二式はやや過剰かもしれません」
「過剰か……君はあくまで帝都桜學府が治安維持を目的とした組織という視点からかな?」
 蝦夷山の言葉にひかるは頷いた。
「ですが大物相手なら二式の火力は有効、ただし機動力に大きく難が有ります」
「難がある……影朧エンジンで小型化してもやはり重すぎるか」
 精霊の申し子が両手を見せる。
「わたしのような女性も桜學府には居ると思います。銃架でしたっけ……ああいう物を使う事も考慮に入れるなら小回りは犠牲になるかと」
 そうだったという顔で技官はこめかみを指で何度か叩いた。
「そしてもう一つ、どちらも彼我の距離が近すぎると取り回しに難があるので、何かしら改良なり運用法なりで穴を埋めると良さそうだと思います」
「そうなると退魔刀か何か拳銃を持たせるか……」
 蝦夷山の呟きを補填するように精霊の申し子が言葉を続けた。
「もしくは退魔支援銃一丁を中心に隊を組むとかでしょうか?」
「詳しいね?」
 技官の言葉をひかるは笑顔を返すのみ。
 自身は経験がないがその手に詳しい友人知人には事欠かないし、余計なことを言う必要も今は感じなかったから。
「そして、これは報告書にも書きましたが……」
 続ける少女の言葉に男は眉を動かした。
「人型でそれなりに知能のある敵には奪われて運用される恐れがあるので注意ですね」
「そこは……仕方がないところだ。元々はユーベルコヲド使い以外でも使える武器としての作っているからね」
 蝦夷山は溜息と共に答えを返した。
 奪われて使われるのは兵器の弱点の一つ。
 そこだけはどうしても補えない。
「最後にこれは本当に個人的な意見なんですが……」
「どうぞ、何でも言ってくれ」
 ひかるの言葉を技官が断る理由は無かった。
「もうちょっと軽くて取り回しやすいタイプがあれば嬉しい、ですかね」
「軽くて取り回しやすい形……」
 蝦夷山技官が腕を動かしそして呟く。
「|短機関銃《タイプライター》?」
 精霊の申し子が頷き、口を開く。
「出来れば、拳銃を大型にしたような形が使いやすいかと」
「威力不足は気になるが……弾数で補うか、目的を変えれば可能だな。よし!」
 全ての報告書を抱えて、蝦夷山は立ちあがった。
「諸君、報告ありがとう。退魔支援銃が実用化した暁には君達にも送るように手配する」
 その上で技官は申し訳なさそうに言葉を続けた。

「583円ほど手数料を頂くかもしれないが」

 どうやら蝦夷山技官の立場はそんなに強くないようだ。

 かくして退魔支援銃の運用試験は終わった。
 この後どうなるかは……いつかのお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年03月09日


挿絵イラスト