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銀河帝国攻略戦㉗~あめつちの王

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #オブリビオン・フォーミュラ #銀河皇帝

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「銀河帝国は、我一人から始まった」
 その周囲にはだれもいない。瞑目する皇帝一人のみ。
 この世界に蘇った時もそうだった。ずっと自分は一人だった。
 やがて帝国が版図を広げるにつれ配下を自負するものや配下となることを望むものが集まり、組織のようなものが徐々に組み上がっていったが、その本質はずっと変わらなかった。今でもそうだ。
 ものの役に立たぬ配下を己が内におさめ、否、文字通り『吸収』し、銀河皇帝はうすく目をひらく。
 ――我一人さえ存在していれば、それが帝国。
 ――我が存在するかぎり、帝国は滅びない。決して。

●銀河帝国攻略戦㉗~あめつちの王
 ついに銀河皇帝との決戦の時が来たことを告げて、水衛・巽(鬼祓・f01428)はうすく笑みつつグリモアベースに集まった猟兵を見回した。
「銀河皇帝『リスアット・スターゲイザー』……この戦いの最後を飾るにふさわしい力量とカリスマを備えた、皇帝。そう思っていいわ」
 これまで対峙してきた強敵と同じく、銀河皇帝は猟兵達に対し奇襲という形で先制攻撃を行うことがわかっている。いまや帝国旗艦『インペリウム』内の全てを掌握している銀河皇帝は、侵入した猟兵達に対し空間転移による奇襲攻撃をかけてくるだろう。
 この奇襲という先制攻撃に対処したうえで反撃の糸口をつかみ、ダメージを与えなければならない。
「先制攻撃への対処なしに戦いを挑むのは無謀、ということね。こちらのユーベルコードと同じ能力のユーベルコードによる攻撃だから、知恵の絞りどころよ」
 対抗策を用意しない場合、なすすべもなく敗退すると考えるべきだ。
 敵を待ち構える余裕どころか、いつ襲ってくるともわからぬ相手に先手を取られた形での戦闘となる。かつてなく厳しい戦いになるだろう。
「でも、そうね、……それでも、きっとなんとかなる。いえ、なんとか、しましょう」
 いつもよりやや低い声で巽はグリモアを回転させた。
 空間を裂くように転移ゲートが現れる。帝国旗艦インペリウムの内部がそこに広がっていた。


佐伯都
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 このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオです。
 また銀河皇帝は必ず先制攻撃を行い、これは『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃です。
 彼を攻撃する為にはこの先制攻撃を『どう防ぎ、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要になります。対抗策を用意しなかった場合は先制攻撃で撃破され、ダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意したとしてもその内容が不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
=============================
 こんにちは、佐伯都です。銀河帝国攻略戦シナリオをお届けいたします。
 すべてOPに記載されている通りですが、相手が銀河皇帝であるという事でシナリオ難易度は相応に高いことをご留意下さい。ぜひとも渾身の作戦を叩きつけていただければと思います。
 成功条件は『銀河皇帝』の撃破。

 それでは皆様の熱いプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『銀河皇帝』リスアット・スターゲイザー』

POW   :    マインド・クリエイション
【銀河皇帝を不老としている生命維持機能】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【白騎士と同性能の人型兵器『マインド』】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    フォース・インベイジョン
【銀河最強のサイキックエナジー】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【意志とユーベルコードを奪う洗脳念波】で攻撃する。
WIZ   :    ワープドライブ・ペネトレーション
【外宇宙から、知られざる『黒き槍の船』】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑14
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エコリアチ・ヤエ
転送前から戦闘用である術士の人格へと入れ替えておく。
「さて飛び込んだが、すでに我は捕捉されている、か」
いつこちらに攻撃が飛んでくるわからんが、我が攻撃されてはこの召喚した死霊たちが消えてしまう。補足されることは諦めるとし、攻撃が飛んでくる前に召喚、行動をとる。
死霊蛇竜を己の体の周りにとぐろを巻かせ、その中に閉じこもる。
死霊騎士は蛇竜のとぐろの中より第六感、戦闘知識、追跡、聞き耳などで敵の位置を探り、攻撃を仕掛けさせる。
万が一攻撃を喰らい瀕死になるようなら戦場の亡霊を発動。先はおぬしが先手を取ったが、二度目の構えがあるとは限らんだろ。
「敵に不足なし、全力でゆくぞ」



 もはや皇帝しか残っていないという艦内は、どこまでも静まりかえっている。エコリアチ・ヤエ(悪魔の呼び声・f00287)は死霊蛇竜のとぐろの中、ただ聞き耳を立てていた。先に誰かが闘っていた形跡もない。
 既に自分は相手に捕捉されているこの状況、己が呼吸する音も限界まで殺し、エコリアチは気配を探る。自分ならどう攻めるだろうか。
 突如、圧倒的な質量で空気がたわむ。声が喉元でねじれる。聴覚が飽和する。
 今目の前で何が起こり自分に何が起こったのか、それを理解するよりも早くエコリアチの肺腑に熱い塊がせり上がった。その熱さの正体を考えることは放棄し、動物的な勘でその場から飛び退く。
 死霊蛇竜が消滅している意味は、見上げる舳先で明らかだ。くろがね色の威容を誇る、エコリアチの持つ『船』の概念のどれにも該当しない、けれどなぜか『船』であることを理解できる姿。その甲板上に銀河皇帝の姿はあった。
「先触れどころか挨拶もなしに座り込みか。よくよく猟兵とやらは礼儀をわきまえぬ」
「……天の意志に反する皇帝らしい物言いよ」
 『銀河皇帝』、リスアット・スターゲイザーの第一声に、エコリアチは片頬で笑いつつ血の塊を吐き捨てた。これだけの質量の船から突撃を受けてなお命があるほうがよほど幸運なので、その事自体はあまり気にならない。
「『天の意志』だと」
「名乗る割に、皇帝の真理を知らんとは」
 ただ気になるとすれば、意識を失うまであと何分、いや何秒残っているか。エコリアチにとっての懸念はそれだけだ。
「……銀河帝国は我一人から始まった。即ち我こそが帝国における『全』、他は付属物にすぎぬ。何が言いたい」
 エコリアチの生命の限界を示す戦場の亡霊が周囲に現れるも、睨みあげる視線に揺らぎはない。ひどい喘鳴が聞こえる。誰のものか。自分自身のものだ。
「誰が何をもって貴様を『皇帝』としたか」
 なぜかほんの一瞬、皇帝は口元を歪めた。考えもしなかった指摘だったのか。それとも思い当たる指摘だったのか。
 皇帝と王の違い。複数の王を統べるのが前者で国を統べるのが後者とするのが基本だろう。しかしこの銀河皇帝が、そんな安い定義で皇帝を称するはずがない。
 エコリアチは不思議に凪いだ気分で亡霊へ号令する。この勝負、すでに勝っているという絶対の確信のままに。
「敵に不足なし。全力でゆくぞ」
 なぜ自分が誰より早くこの戦場にたどり着けたのか、エコリアチはその答えを得た気がしていた。おそらく自分はその真理を皇帝へ語るため最初にたどり着いたのだ。
 皇帝と王の違い。恐らく最も古い定義は、天の、即ち『世界』の任命を受けたかどうかの違いだ。世界を統べるに値し、その許しを世界から与えられた存在こそが皇帝。しかし今、銀河を統べると称する皇帝は――。
「我ら世界に選ばれた猟兵が、貴様を否定してくれよう」
 自身はここで敗退するだろう。しかし皇帝の真理もわきまえぬ『皇帝』が、世界の真理を知り世界に選ばれた猟兵達に勝利できるはずがない。そう信じられた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

塩崎・曲人
オレは念波を避けきれない
念波を食らったら終わる

そこまでは確定だ
そう【覚悟】する

その上で、食らうまでに、食らってから倒れるまでにオレの全部を掛ける

空間転移からの念波は視認してることが条件だ
壁を背にしていれば壁越しの攻撃は来ない
艦内に突入以後は必ず壁沿いに進みそれ以外の方向を警戒
一瞬でも早く皇帝の転移を察知できるようにするぜ

その上で、転移してきたら即念波が飛んでくると想定
転移を察知した瞬間【逃げ足】も活用しそれまでの進路方向とは全然別の方向に横っ飛び

でも当ててくるだろう、奴は
だがな

同時に【捨て身の一撃】で手持ちの武器を投げつける
「く、ら、え、オラァ!」
【喧嘩殺法】は殴るだけの技じゃねぇんだよ!



 ひどく血の匂いがする。最初に塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)が抱いた印象はそれで、空間転移の後の激しい場面転換に備え軽く身体を丸めた。
 一瞬で視線を走らせて高い壁を選び、そこに着地する。ひやりと冷たい皇帝の在所である戦艦内は、エンジン稼働音の残響すら伝えてこない。
 ……本当に、静かだった。自分の前に何人この戦場に到着していたかなど知ることはできないが、一人目でないことだけは遠くに見えるおびただしい血痕が知らせてくれる。
 当然、銀河皇帝の姿はどこにも見えなかった。空間転移はもちろんのこと、何の気配もない場所から船での突撃を仕掛けてくる相手であることもわかっている。
 常に壁を背にしてゆっくりと進む曲人の左手方向、そこから何とも形容しがたい気配が漂った。反射的に全力で壁から離れるように曲人は床を蹴る。壁を背にした体勢で左手方向からということは、そのまま右手方向へ攻撃が流れるのが道理だからだ。
 躱せたか、というわずかな希望も、背中を追ってきた皇帝の哄笑と派手にぐらつく視界で打ち砕かれる。
 宇宙最強のサイキックエナジーを誇る銀河皇帝の洗脳念波とやらに、曲人は為す術もなく敗北した。圧倒的、という表現すら陳腐に思えるほどの実力差を見せつけられる思いだ。
 肺から漏れた吐気が声帯を震わせただけの、か細い、もはや声とも呼べぬ声が漏れる。曲人の声に勝利を確信したのだろう、哄笑が一段高くなった。
 ……そう、念波を避けることはできない。それを喰らえばすべて終わることなど、もともと曲人にとっては最初から織り込み済みだったのだから。
 むしろそこまで確定しているという揺るぎない覚悟が、曲人の視線を銀河皇帝へと向けさせる。
 曲人の捨て身の勝負は、ここからだ。
 念波を浴び自分を明け渡すまでの、刹那とすら呼べぬ時間。そこになにもかもを賭けて手持ちの武器を投擲する。
「――く……ら、えッ、オラァ!!!!」
 曲人が最後に見たのは、見開かれた銀河皇帝の双眸。それが現実であったか己の願望であったかも、すぐにわからなくなる。
 人の感覚というものは、聴覚が最後まで残るという。
 他人のものになった手では手応えがあったとしてもわからない。しかし曲人の世界がすべて塗り替えられてしまう直前に聞いた、『曲人』として最後に聴いた音は、銀河皇帝が漏らした苦痛の呻きだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヨシュカ・グナイゼナウ
Wiz【エイリアンツアーズ】
パウル様のバイクに同乗させて頂き突入。その時が来るまでは避けに徹します。臨様の御尽力も有り大した傷は有りません。その時が来たならば【惑雨】使用。発見し難いのなら、88式集音器によって黒き槍の船を探知、捕捉。見切りの技能を使用します。
それでも避けきることはおそらく出来ない。浅くない損傷を負うでしょう。

でも、今日はそれで良い。

わたしの体内は常に【惑雨】で満ちている。損傷箇所から漏れ出た液体は拡散し貴方は悪い夢を見るでしょう。

少しで良い。少しでもその行動が止まったのならば、その隙を彼らが見逃すはずがないのです。(アドリブ歓迎です)


須辿・臨
【エイリアンツアーズ】POW
流石大ボス。威圧感すげーっすね。
オレは一人じゃ戦えねぇっすから、仲間と一緒に。

パウルさんのバイクに搭乗。
第六感と勇気で弾ける攻撃は剣で弾いて、前進のお手伝い。
バイクのスピードに興奮しすぎないように、冷静に見極めるっす。
パウルさんが操縦を維持できるよう、ヨシュカさんを必要以上傷つけないよう、庇う。
オレの傷はいくらでも。捨て身の一撃は得意なんで。むしろ死んだと思わせてから、不意討ち狙いっす。
タイミング合わせ――逆境の一太刀でお返しするっす。

オレらだけじゃ追い込めないかもしれねっすけど。これは次に繋げる一手。
――なあ王様。一人で追い込まれていく気分はどうだ?
アドリブ歓迎。


パウル・ブラフマン
【WIZ】
【エイリアンツアーズ】の皆と参戦!
【操縦】スキルを駆使して
臨くん、ヨシュカくんとGlanzに相乗りして駆け抜けるよ!

▼先制攻撃対策
UCを発動して防御!
更にFaustのシールドを展開し、横転しないよう被弾時に備える。
着弾箇所を最小限にする為
【野生の勘】を廻らせ、【地形の利用】を念頭に動きたいな。

▼反撃
ヨシュカくんのUCによって生まれた隙を狙って
臨くんと【カウンター】開始!
Krakeに火力を宿したら、銀河皇帝(可能なら【目潰し】)を狙って【一斉発射】ァ!!

力と共に借り受けた『絶望』の中に寂しさを感じて、目頭が熱くなる。
アンタへの恨みは消えない。忘れねェよ、ずっとな。

※絡み&アドリブ歓迎!



「流石大ボス! ユーベルコードも色々大盤振る舞いっすね!!」
「しばらく黙ってる! 舌噛んでも知らないよ!!」
 風圧に負けぬよう怒号に似たパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)の大音声に、須辿・臨(風見鶏・f12047)はヨシュカ・グナイゼナウ(鍵の壊れた鳥籠の・f10678)を抱え込む腕に力を篭める。パウルの【Glanz】は宇宙バイクなのでシートベルトなどない。
 エンジンから吹く青い炎は戦闘機エンジンのそれだ。もはや二人乗りなど可愛いとすら思える三人乗り状態だが、最も体躯が小さなヨシュカが振り落とされるのを防ぐために操縦者――バイクなので『運転者』と表現すべきだろうが、戦闘機エンジンを積んだあげくカスタムを重ねた【Glanz】はもはや『操縦』だろう――であるパウルと、その視界を妨げぬよう最後尾しか選択肢のない臨で前後をガードする形になっている。……人数はもちろん色々と過積載も過積載、だが。
 そのかわり重量があるぶん、パウルの技術さえついて来るなら高速走行での取り回しは楽だろう。技術がついて来るなら、だが。
「戦闘機の真似事がしたいなら外に出るのだな」
 かつてはおびただしい数の戦闘機や火器が並んでいたのだろう、恐ろしくだだっ広いハンガーの中央から、そんな声がした。ヨシュカが視線を走らせるよりも速く、凄まじい衝突音と衝撃、金属が灼ける匂いがした。
 側面から襲い来た衝撃にあばれまわる宇宙バイクをなんとか制御しようと、パウルがハンドルをきる。その瞬間になぜか――視界に、だらりとヨシュカの腕が飛び込んできて息を呑んだ。
「――ッ、パウル、さん!!」
 叱咤するような臨の怒号で、反射的にアクセルを回す。意識を失っているのだろうか、ヨシュカの体が振り落とされかけているのを臨が、己共々ぎりぎり右腕一本で支えていた。アクセルを全開にすることで横ではなく前後への慣性に無理矢理引き戻し、一瞬だけ背後を振り向く。
 臨の向こうで『黒き槍の船』が矛先を変えるのを、パウルは見た。そしてその直撃をまともに受けたヨシュカを。
「くそッ」
「他愛のない」
 左方向からほぼ直角に襲い来た『黒き槍の船』。ヨシュカが座っていたあたりの車体がなかば斬りつけられたようになっている。さすがにエンジン駆動の宇宙バイクの高速移動中に、集音器での探知は無謀だったのかもしれない。
 やや遅れて宇宙バイクが黒煙を吐く。コンソールへ矢継ぎ早に警告アイコンが灯り始め、エンジン出力が下がりだした。
「さあ、どうする猟兵よ。手負いの脚でそのまま逃げまどうか? それとも相討ちを望むか? いや、こうなっては相討ちではなく我の格好の的――……?」
 ぎゃり、と耳障りな音をたてて宇宙バイクが急停止する。ちょうど銀河皇帝を中心にハンガーを半周と少し、という位置だった。すばやく右手を挙げて異形の船を停止させると、銀河皇帝はやや訝しげに目を細める。
 ヨシュカを庇い、臨も少なからず傷を負っていた。左腕は使い物にならないだろう。目を覆わんばかりの損傷を受けたヨシュカに至っては、なおさら。
 しかし最後に残っていたのだろう力を振り絞って、ヨシュカは切れ切れの息を吐き、その最後になぜか非常に満足そうに口角を上げる。
「……『予定通り』、避けられませんでした、ね」
 かすれた声を漏らした口から、こほり、と――吐気ではない、血でもない、なにか未知の気体がヨシュカの顎の輪郭を歪めた。
 ――でも、気をつけて下さい、銀河皇帝。
 もはや声とも表現できぬ、吐息に似た囁きでヨシュカは確信に満ち宣告する。

 ――きっと悪い夢を見てしまう、から。

「……何?」
 ゆうらり、皇帝の両手から揺らめき立っている青い炎のような何かが激しくざわついた。
 そこまでがヨシュカの、彼等三人の誘い。
「なあ王様」
 己が血で左半面を赤く染めた臨がすべての感情をしまいこむ。
「いつオレらが三人だけで戦っていると、追い込もうとしていると、言った?」
 今や満身創痍のヨシュカの全身からたちのぼっている、揮発性の『何か』。もともと最初から、ヨシュカは皇帝の一撃をその身に受け傷つくことを狙っていたのだ。
 宇宙バイクで乗り込んできたのも、ただ回避し逃げるためだけではない。銀河皇帝に素早く、ヨシュカの『惑雨』を嗅がせなければならない――移動しその範囲に巻きこまなければならない、ということだ。
「まさか」
「そう、そのまさか。残念だね皇帝」
 皇帝の先手をユーベルコードでもって反撃するのではなく、むしろそこから先の反撃のトリガーにするという発想。だからこそ彼等は後に続く猟兵達へのバトンを渡せる、三人という数で皇帝に戦いを挑んだのだ。そして同時に、この三人でもってしか成しえない作戦だった。
「猟兵ごときが小癪な真似をする……」
「悪くないな、そういう物言い。あんたが『人間』みたいに思える」
 皇帝の両掌がわななき、炎の揺らめきが激しくなる。その裡の動揺を表しているのかとパウルは考えたが、違った。すでに皇帝の目の前には幻覚が現れているのだろう。
「慮外者などこの手で誅してくれよう……!」
 怨嗟すら感じる銀河皇帝の声に、臨はかつりとハンガーの床を小さく鳴らした。心得たタイミングで、パウルがフルスロットルの加速を始める。
 黒煙を盛大に噴きながら宇宙バイクが疾走した。視覚どころか聴覚も侵されつつあるのか、皇帝は迫る宇宙バイクの方向を見定められないでいる。
「残念だが今はこれが精一杯の加速。幻覚が利かなかったらとっくに狙い撃たれてたぜ」
「十分。当てられればいい」
「あーあ、修理費高くつくぜぇコレ」
「夏のボーナス当てこむんだな」
 それでも銀河皇帝は、生命維持機能を代償に白騎士とよく似た人型兵器を己が目の前に据えた。白騎士よりもいくらか古式ゆかしい装備が、しかし外見にあたわず性能は驚くほど高いという事がわかる。
 臨の放った一太刀は、それまでに受けたダメージを上乗せする斬撃。
 彼もまた、己が受けるであろう皇帝からの傷さえ反撃の一手に変換するため、ここに来ていたのだ。パウルの【Krake】が一斉掃射を始め、マインドの装甲に無数の弾痕を穿つ。
「赦さぬ――赦さぬ、猟兵! この代償はうぬらの命で払わせる……!」 
 すりぬけざまに放った斬撃が皇帝へ確実に傷を負わせたのを、臨はその手応えで確信した。背中を呪わしげな叫びが追ってくる。しかし、それ以上の追撃はなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

天御鏡・百々
如何に貴殿が強かろうとも
この世界の人々のため
我は負けられぬのだ!

第六感により敵の奇襲の方向だけでも察知して
武器受けとオーラ防御31にて
敵の初撃を可能な限り軽減する
ダメージは覚悟、一撃で倒されなければそれで良い

どうにか耐えきることができれば
我が本体たる神鏡より「生まれながらの光」を放ち
自身の傷を治療する
傷を受けた仲間がいれば同時に治療するぞ
(医術7、救助活動10)

真朱神楽で敵の防禦の薄い場所を狙って攻撃だな
(なぎ払い12、鎧無視攻撃)

共闘している場合は援護に回るのもよいだろう
神通力による障壁で援護し、全力で回復や鼓舞をする’(オーラ防御31、鼓舞5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎


鷲生・嵯泉
個で在って全、か
成る程、其の意味する所が示す通りの
此の力量差は如何ともし難くはあるが
引く事等到底出来ん

出来るだけ他との連携を以って当たる
初撃を躱す事は叶わないのならば耐えるしかあるまい
見切りと第六感、戦闘知識を駆使して致命傷だけは避ける様に努め
受ける攻撃は激痛耐性とオーラ防御、覚悟で耐える
無駄は承知でカウンターと衝撃波での威力軽減も図る
腕1本と両の脚さえ動けば構わん
妖威現界に怪力・鎧砕き、己が膂力の全てを加え
負の要因悉く、覚悟で捻じ伏せ
一瞬、いや半瞬、刹那の隙とて見逃さず
斬撃を叩き込んでみせよう

諦めはせん
嘗ての時間の中、滅びた身である事を忘れた訳ではあるまい
今一度、其の時が来たのだと知るがいい


ロード・ブラッドリー
ああ……ゾクゾクするぜ
その視線
圧倒的な存在感
痛ましい迄の心の叫び
武者震いが止まらない

(瞳孔を開いた龍の目を向けて)
オレの総てを懸けて、今此処で殺るべきだってなぁ……!

堪えられる、とは限らない
相手の目を見りゃ多少なりとも実力は判る
だから……
(槍へと変化した相棒の柄を慈しむように撫でて)
ハク、オレが倒れたらオマエに任せるよ
【白龍護】

オレが気を保ってたら、ありったけの力を込めて捨て身の串刺し攻撃をするぜ
他の仲間が攻撃する隙を作る為に
時間を稼げりゃいいな

永遠にも感じる昏い銀河の中で
オマエは独りだった
それでも闘ってきた
その在り方には敬意を表する
格好良いと思うぜ
アンタがオブビリオンじゃなきゃ良かったのにな



「新手か……我が葬ってくれる……!」
 ぎらりと輝く、尋常ならざる眼光にロード・ブラッドリー(累々血路・f06133)の身が震える。先行した猟兵が手痛い一撃をくれてやったのだろう、袈裟懸けにされた白い衣装には赤い染みが広がり、足元には血溜まりができている。
「銀河皇帝に牙を剥くものすべて! 我には、不要!!」
 ひとりきりで戦ってきたという銀河皇帝のその在り方に、ロードはむしろ敬意すら抱いている。
 永遠にも似た暗い銀河のなかでひとりきり。それを孤独と思わず、己が全と受け入れるのはそう簡単なことではない。天をかえりみぬ傲慢とも、欺瞞とも考えることはできるだろう。しかし銀河皇帝は恐らく、ひとりではじめて、最後まで【ひとり】であったことを、自身の不幸であるいう捉えかたはしなかったのだ、きっと。
 自分ひとりで始めたのだから、帝国もまた自分ひとりきりのものだ、と。
 その姿勢は潔いと思うし、格好良い、とさえ思う。しかしただ、ひとつケチがついたとするならば。
「……アンタがオブリビオンじゃなきゃ良かったのにな」
 鷲生・嵯泉(烈志・f05845)と天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)が見守っているのがわかる。
「……個で在って全、か。なるほど」
「……」
 嵯泉は何か思う所があったのかもしれない。短く言いきったまま、じっと瞑目しているだけ。しかし秋水の柄から鍔にかけ、降りて行く指先は彼の意志をゆるぎなく示していた。
「よほど猟兵は命がいらぬようだ……」
 猟兵からの言葉を侮蔑と受け取ったか、それとも皇帝を号する者としてのプライドが甘受することを許さなかったのか。それは皇帝自身にしかわからない。
 ロードが槍を手に一声吼える。
「これだけは譲れねえ。オレの総てを懸けても、今ここで殺るべきだってなぁ!」
「いかにも。銀河皇帝、決着をつけようぞ」
 ほぼ同時にハンガーの冷たい床を蹴り、ロードと嵯泉はそれぞれの得物を抜いた。せめてもの援護と、百々が神通力による障壁をめぐらせる。先の戦いの余波を引きずってでもいるのか、どこか焦点の定まらない目で銀河皇帝は二人の猟兵を睨み大きく右手を横へ払う。
 すでに損傷を受けているのだろう、身を起こした人型兵器『マインド』は甲高い金属音をたてながら猟兵達へ向かって一歩踏み出してきた。見てくれは古めかしいが白騎士と同性能という、その兵器。
「2時!! 来るぞ!」
 百々の叫びに嵯泉が反応し、衝撃波での軽減を期待し秋水での斬撃を放つ。が、ロードは違った。
「ああああああ!!!!」
 ロードの獣じみた勘がそうさせたのかはわからない。
 斬り払われる事をまるでかえりみないような、それでいて紙一重で取り返しのつかぬ重傷はだけは避けるような、ぎりぎりの位置取りでロードは槍を突き出す。しかし銀河皇帝相手では、元々ユーベルコードの勝負においては分が悪すぎた。
「……ふ、は、はははは!! 吼えておいてその程度、語るに落ちたな!」
 半ば為す術もなく一太刀で沈められたロードに、百々が駆け寄る。すぐさま治療のため手を伸ばしたその目は、血みどろの手が愛槍に指をのばすのを見た。
「後は頼むぜ、相棒」
「……ロード殿」
 その声に応じるように、どこからともなく瀕死のロードを守るように現れた白龍。銀河皇帝は手ずから葬ろうとでもしていたのか、歩みだしかけていた脚を止めた。ぎゃりぎゃりと金属音の悲鳴をあげて、討ち漏らした嵯泉に向かってマインドが向き直ろうとする。
 絶対の意志をもって嵯泉は己が刀に命ずる。代償となるべき血はすでに流されており、精神力もまた削られきってはいない。
「させん! ――代償はくれてやる。相応の益を示せ!」
「我らは負けられぬのだ、いかに貴殿が強かろうともな!」
 回復しての次の手は来ない、百々は咄嗟にそう判断し真朱神楽を振るう。白龍が鋭く咆哮しマインドへ向かって突進した。
 損傷が重なりつつある機体へ白龍の当て身は相当に効いたのだろう、無数の弾痕が残る装甲が派手にひしゃげ、中の機構が隙間からむき出しになる。マインドの足元を掬うような百々の薙ぎ払いが鮮やかに引導を渡し、守るものもなくなった銀河皇帝の目の前へと嵯泉は一足で到達した。
 愛刀を携え、上段に振りかぶったその姿は正しく修羅であったかもしれない。
 ただ一度、嵯泉は鋭く銀河皇帝の脳天から足元まで、その中心を斬りおろした。
 ゆっくりと、本当にゆっくりと傾いたマインドの機体が、広大なハンガーの床へ横倒しになる。ふつり、と銀河皇帝の眉間に血の粒が浮いた。
「……」
 刀を振り下ろした姿勢のまま嵯泉は動かない。銀河皇帝もまた無言だった。
 百々が見守る中、銀河皇帝の鼻梁、顎、喉元、……上から順を追って赤い血の粒が次々実り、そして細い一本の線になる。
「名は」
 直立不動のまま銀河皇帝は短く、足元に跪くように静止している嵯泉へ尋ねた。
 流れるように身を起こし、軽く刀身を振ってから嵯泉は鞘へおさめる。
「鷲生。――鷲生、嵯泉と申す」
「見事であった。その名、覚えおこう」
 ずるり、と中央を走る赤い線に従って銀河皇帝の身体が上下にずれた。そのまま轟々と燃え上がる青い炎に一瞬で包まれ、何も残らない。
 かつて滅びた身であることを忘れたわけではないだろう。嵯泉はそう思う。
 そう、今一度その時が来ただけだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月23日


挿絵イラスト