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【戦後】美術館の怪

#シルバーレイン #戦後 #ゴーストタウン

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#ゴーストタウン


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●人を惹き付ける美術館
 その日、デートをしていたカップルは偶然見つけた美術館に惹き付けられていた。
 『騙し絵の館 ※看板に触れてみてください』
 文字が飛び出している看板が立っていて、注釈が付いていた事も興味を引いてくる。
 「うおっ、これ、ただの絵だ!」
 彼氏の方が触れてみるとそれは文字が飛び出している見えているだけなのだが、触らないとそれがわからない程によく描き込まれていた。
 その面白さにすっかり心を奪われたカップルは美術館に足を踏み入れる。
 ぐにゃり、何かが歪んだ感覚に少しくらっとしながら前を見ると、天井にも壁にも床にもありとあらゆる騙し絵が飾られたり施されたりしている。
 目眩の原因はこれだと思い込んだカップルは騙し絵の完成度にはしゃぎながら奥まで進んで行って、声が聞こえなくなり、その美術館から出てくる者は誰もいなかった…。

●子狼はかく語りき
 「あ、えっと、あの…、あ、集まってくれて、ありがと…。」
 竜胆色のしっぽをしゅるんと丸めてロラン・ヒュッテンブレナーは話し始める。
 「ごめんね、初めてのお仕事で緊張してるの。すぅー、はぁー…。」
 深呼吸一つして、さっきと打って変わって穏やかな中にきりっとした表情になる。
 「シルバーレインのある街で、ゴーストタウンが出現したの。」
 街中で?という疑問の顔を見てロランは続ける。
 「えとね、閉店しちゃった商店街の一区画、なの。少し前に近くに大きなショッピングモールができて、お客さんが減っちゃったみたいなの。そのテナントの一つに、リリスが目を付けて住み着いて、ゴーストタウンに改造したみたいだね。」

 一度言葉を切って深呼吸、自身を落ち着けてから本題に入っていく。
 「騙し絵、って知ってる?目の錯覚を利用して色んな効果を生み出す芸術なんだけど、その絵を集めた美術館が、今回のゴーストタウンなの。リリスが召喚した騙し絵の地縛霊オブリビオンで構成された美術館。その不思議な光景に心を囚われると霊魂を引き抜かれるの。」

 周囲の気配が引き締まったのを感じて耳としっぽをぴんと立てるロラン。
 「まずはゴーストタウンを構成してる騙し絵の地縛霊、トロンプ・ルイユの群れを倒してほしいの。姿は色々あって、どう見ても空間の穴とか、人の影とか、目を誤魔化して混乱させる見た目なの。攻撃自体は噛みつきとか、角で刺してくる直接攻撃型なんだけど、収集した魂の生への渇望を利用した攻撃もあるから気をつけて。」
 あと壁とか床も騙し絵や地縛霊かもしれないの、と付け加えて一息。

 「トロンプ・ルイユを抜けたら、ゴーストタウンの主のリリスと出会うと思うの。人を計略に掛ける事が好きなみたいで、トロンプ・ルイユが集めた魂を糧にしてるみたいなの。とても慎重なリリスみたいで、戦い方も、計略家らしい色んな手段で攻撃してくるから、油断しないで。」

 すごく真剣にボスの話をするロラン。
 それ程までに油断ならない相手と言うことだろう。
 程よく緊張感が生まれた所で、いよいよゴーストタウン攻略へと進んで行く。
 「犠牲者は、もう何人も出ちゃってるの。一刻も早い攻略をお願いね?」
 深々とお辞儀をして、ロランはグリモアを起動して猟兵たちを転送していくのだった。


HE・KA・10
 MSとしての初お仕事です。
 どうも、|HE・KA・10《へかてん》です。
 まずはGMとして遊び倒したシルバーレイン世界からご案内致します。
 戦闘+微コミカルテイストでお送りしようと思います。

●第1章:集団戦
 騙し絵に埋め尽くされた美術館で、騙し絵のオブリビオンたちと戦闘です。
 美術館の入り口に転送された所からスタートします。
 騙し絵を堪能しながらトロンプ・ルイユたちを探して討伐してください。
 プレイング内容から姿を考えて、適度に騙されたり混乱したりしつつという描写になります。
 トロンプ・ルイユの見た目や、騙されたプレイングも歓迎しています!

●第2章:ボス戦
 ゴーストタウンを生み出した強力で計略家なボス(笑)との戦いです。
 ロランはわかっていませんが、臆病で虚勢を張る癖があるポンコツです。
 ラッキースケベ的なドジや軽いスキンシップなどの色仕掛けと、リリスたん萌えな忠臣(故)に助けを求めたりして戦います。
 公序良俗の範囲内でお相手してあげてください。

●ご留意ください
 当方、初シナリオと言うことで勝手がわかっていません。
 出来る限りプレイング採用したい気持ちですが、突然締め切ったり返却になってしまったら申し訳ございません。

 みなさまのご参加、お待ちしております。
 よろしくお願いします!
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第1章 集団戦 『トロンプ・ルイユ』

POW   :    耐性反芻
噛み付きが命中した部位を捕食し、【その対象が放つ攻撃への耐性】を得る。
SPD   :    プシシェの触覚
攻撃が命中した対象に【生贄の模様】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【極彩色の闇から伸びる角のようなもの】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    霊魂放浪
レベルm半径内に【流星のように翔ける霊魂の群れ】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。

イラスト:猫の目からビーム

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グラン・ボーン

(ズシン、ズシンと地響きを立てて現れたのは5メートルを超える巨人である)
おう、ロラン
グリモア猟兵になったんだな、殴って解決する依頼なら任せておきな
ろくでもない美術館は俺が粉砕してやるぜ

だまし絵だか何だか知らないが、怪しいものはぶん殴って粉砕する
床に大きな穴が開いてるな
(ぶん殴って砕く、砕けたから穴のように見えていただけだな)
 人の顔のように見える絵か
(ぶん殴ってみる、噛みつかれたのでオブリビオンだ
 殴ったのに耐性が付いたなら今度は蹴り
 蹴りの次は手刀、肘、膝、指、額、石、踵、肩、耐性が付くならあらゆる部位で攻撃して倒す)

よし、この調子で片っ端からぶっ潰していくぜ
  



「おう、ロラン。グリモア猟兵になったんだな。」
ズシン、ズシンと足音と軽い地響きを立てて表れたのはグラン・ボーン(巨人の巨人拳伝承者・f34134)。
キャバリアを超える体躯を誇る巨人だ。
グリモア猟兵のロランとは旧知の仲の為、緊張を感じ取って声を掛けてくれた様だ。
「グリモア猟兵になったんだな、殴って解決する依頼なら任せておきな。ろくでもない美術館は俺が粉砕してやるぜ。」
にぃっと力強い笑みを見せ、ロランに見送られながら悠々とグリモアでテレポートされていくのだった。

●騙し絵以上に騙し絵
くだんの美術館の入り口に転送されたグランは窮屈そうに首を巡らせて状況を確認した。
床に描かれたリアル過ぎる穴、手前にあると思った壁は実はかなり奥にあったりと頭が混乱する美術の数々。
確かにこれは厄介そうだ。
ただし、グランほどの巨体となれば視点がずれで騙し絵の効果はかなり減少している。
そう、文字通り「見下ろして」いるのだから。
「ほう、床に大きな穴が開いてるな?」
ぐしゃぁっ!
巨人は床に描かれた穴の絵を踏みつけて本物の穴にしてしまった。
騙し絵が何かは知らないがぶん殴ったら解決するだろう、とグランらしい美学が証明された瞬間だった。
(ふむ、砕けたから穴のように見えていただけだな)
グランはただの脳筋ではない。
戦況分析力にとても長けている。
そして、ぶん殴って解決したなら、そこに立ってずっと動いていない人間にしか見えないものも殴ってみるか、と結論して拳を振り下ろす。
がぶっ!
人間の絵が歪み、振り下ろされたグランの拳に噛みついて鮮血が走り噛み千切ろうとして、そのままぶん殴られて吹き飛んで消滅する。
グランの拳は岩の如く、多少噛みつかれてもまるで効いていない様子。
指先から滴る血を振り払いながら周りを見回すと、あちこちでゆらゆらと揺らめいている場所がある。
砕かれた館内、攻撃を物ともしない鋼の肉体、一撃で相手を粉砕する力、そして、目の錯覚を疑ってしまう天井より高くて分厚い体躯。
現実離れした光景にトロンプ・ルイユたちの方が混乱しているようだ。
「そこだっ!」
すかさずグランは逃げようとするトロンプ・ルイユの一体に蹴りを見舞って粉砕っ!
砕ける錯覚では巨人の勢いを止められるはずもなく、数々の体術の前にトロンプ・ルイユは次々になぎ倒されていく。
美術館そのものと共に。
「よし、この調子で片っ端からぶっ潰していくぜ。」
グランには美術館のどこかから情けない悲鳴が聞こえた気がしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
なるほど、騙し絵ですか。
犠牲者が出ている手前、非常に申し訳無いのですが……つい見入ってしまいますね。
平面の壁や床なのに、絵が飛び出していたり、穴があったりするように見える絵は不思議で仕方ありません。
ただ相手はオブリビオン、楽しんではいられませんね。
騙し絵と見せて本物だったりするかも知れないので目だけには頼れません。
ここは【第六感】と【瞬間思考力】、そしてこの剣で斬り抜けます。
騙し絵にも積極的に踏み込み、敵の噛み付き攻撃を誘って【カウンター】のユーベルコードで斬り裂きます。
足元から来るなら蹴りで【咄嗟の一撃】を放ち、一旦逃れてから叩きましょう。
このお仕事、情けない報告書は書かせられませんからね!



●本当は怖い騙し絵空間
壁に飾られた何でもない絵を少女は食い入るように眺めていた。
というのも、その絵、壁は触れるほど近くにあるのにすごく遠くにあるように見えるのだ。
「なるほど、これが騙し絵ですか。」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は犠牲者が出ている事に申し訳なさを感じつつも、その不思議で精巧な作りに魅入られていた。
実際この美術館は宣伝や誘導が大変上手く、美術に造詣や興味がなくともはまり込むのも頷ける。
例えば、ハロが見ているこの『遠くにある絵』は、展示名の下に『触って見てください』と書かれたプレートが貼ってある。
ちょっと前にあった『壁の穴』という展示は『反対側から見てください』と穴の空いた壁を回り込ませておいて、実は通路に見えた方が絵だった、なんて事もしてくる。
ゴーストタウンでなければ楽しい経験だったのは間違いない。
「楽しんでいる場合じゃありませんね。」
長年少年兵として戦場に立ってきたハロの感覚が、この錯覚だらけの空間に満ちる殺気を感じ取りキリッと気を引き締める。

見回しても、当然のように敵の姿はない、むしろ分からない。
ならばと警戒を強めて、『遠くにある絵』の展示室を見渡す。
順路の廊下に繋がる入り口は一つ、メインの『遠くにある絵』は部屋の最奥、左右には別の細かな展示物とそれを見る人が少し……、人?
そこで気がつく、この部屋には自分一人、展示を見る人も絵、部屋の奥行きと思った所も絵…、まさかと思い廊下への入り口に手を伸すとそれも絵。
全てが騙し絵に変わった世界に一人。
ハロはぞっとした。

「なるほど、目だけに頼れませんね。」
これだけ惑わされるならと、目を閉じて神経を集中する。
微かな風を感じる。
その方向に無造作に歩いて、何の変哲もない壁が突如せり出して牙を形作りハロを襲う。
一瞬で膨れ上がった殺気にハロの体は素早く反応し、トロンプ・ルイユの牙は空を切って胴体から両断、床に落ちて消滅する。
一息ついて目を開けるとそこは廊下への入り口で、今度は本物のようだ。
この騙し絵だらけの部屋から出ようと足を踏み出し、その足で壁を蹴る。
ずるりと壁が倒れてトロンプ・ルイユが表れる。
ハロは剣刃一閃、それも斬り伏せると油断なく気配を確認しながら進んで行く。

「このお仕事、情けない報告書は書かせられませんからね!」
さっきの部屋での緊張がまだ残る自分に渇を入れて力強く少女は進んで行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
第二次聖杯戦争は無事に終わったが、別にそれで平和がくるわけじゃねえ
脅威自体はここ数年じゃ屈指だったが、戦いに勝っただけで全て解決するなら
俺もこの10年間戦いを続けていないわけだ

さて、今日もいつも通り事件の解決と行きますか

【戦闘】
「うわ、階段がいくつもありやがる。どう考えてもどれかは偽物じゃねえか」

騙し絵の力で人を引き込んで襲っているのか
自分の能力フルに生かしてやがるな
敵ながら大したもんだぜ

UCを発動して動きを封じたうえで「心眼」で敵の本体を探す
反撃で噛みつかれないよう距離を取って「斬撃波」で攻撃

「流石にもう残っていないよな?」

これがただのアトラクションだったら嫁と来たい所だったんだがな



●進めない道はない
「うわ、階段がいくつもありやがる。どう考えてもどれかは偽物じゃねえか。」
順路の掲示に従って二階に上がる階段ホールまで来たところで、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は頭を掻いた。
魎夜は学生の頃から能力者として戦い続けてきた猛者だ。
こういった戦後処理があることは承知の上だし、異形たちと戦いが終わっても魎夜が10年間戦い続けているのはその後の問題に対処するためなのだ。
今回もそういった活動の、魎夜には日常の、一つだ。

とりあえず階段ホールの様子を見渡す。
床も天井も壁も真っ黒、その中央に螺旋状に上に伸びる階段が3本。
見た目では何も分からないから、慎重に階段の一つに足を踏み出して上っていく。
すると途中で階段は下りになり最後には元の位置に戻ってきてしまった。
首を傾げて階段をよく見ても、どの階段も上に繋がってるようにしか見えない…。
「なるほど、大したもんだ。」
魎夜はもう一度、今度は別の階段を上ってみるが、やっぱり途中から下ってしまい上には行けない。
普通なら混乱する所だが、魎夜は数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験則がある。
(なるほど、引き込まれるわけだ。自分の能力フルに生かしてやがるな。)
心の中でごちてもう一度階段を上り始める。
そして、階段が下りになったところで足を止め螺旋の内側に手を伸すと、こつ、と手が何かに触れる。
「この壁を隠すためにここいら全部黒かったわけだ。」
謎を解いた瞬間、登っていく別の階段の絵が盛り上がって牙を剥く。
魎夜は躊躇なく階段から飛び降りて華麗に着地を決める。
対して、襲いかかってきた絵、トロンプ・ルイユは何か糸のような物に絡め取られていた。

「何も対策せずに歩き回ったりしないよな。」
いつの間にか階段ホールには無数の蜘蛛の糸が張り巡らされ、先ほどのトロンプ・ルイユは絡め取られて動けなくなっていた。
「騙し合いはこっちの勝ちだな。」
魎夜が剣を振るうと鋭い斬撃破が絡まったトロンプ・ルイユを両断して消滅させる。
続けて部屋のあちこちに斬撃破をばら撒くと擬態していたトロンプ・ルイユたちは次々に斬り飛ばされて消えていく。
長く濃い戦いの経験が齎す心眼で敵の位置を把握していたのだ。
「流石にもう残っていないよな?」
気配がなくなった所でもう一度部屋を見回してみる。
よく見ると螺旋階段3本の内側にボタンがある。
警戒しつつ押すと、エレベーターのようだ。
階段の間に壁があると分かれば気になるが、今の今まで気がつかない、そんな不思議な面白さに魎夜は笑いがこみ上げてきた。

「ははっ、これがただのアトラクションだったら嫁と来たい所だったな。」
ゴーストタウンじゃない美術館に今度夫婦で行ってみてもいいなと思いながらエレベーターに乗り込み奥地へと進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩永・勘十郎
『何あれ? 馬?』
「いや、魚だろう」

腕の端末[陸火]と会話してる隙に攻撃が来る。間一髪で[幸運]もあってか[見切り]回避する。

『勘十郎! 大丈夫!?』
「カッ! ワシらしくない、本気で避けてしまった。お前さんには悪いが知り合いの初仕事なんだ。白星を飾らしてやりたい故、斬らせてもらうぞ」

と言いUCを発動し[居合]の構え。目を瞑り敵の本質を探る。敵の攻撃を[第六感]と今までの場数を踏んだ[勝負勘]で見切り[残像]すら残らない[早業]で切り裂く。敵の魂や存在その物を切り裂く故に大ダメージが望めるはずだ。

「目を欺くだけでは“本質”を見抜くのも造作ない。それがお前の敗因だ」

そう言ってゆっくりと納刀して。



●本質を斬るということ
『何あれ? 馬?』
「いや、魚だろう。」
美術館の一室に男女の声が広がる。
軍服にマントを羽織る男性は岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)。
腕に付けている端末から浮かび上がるホログラムの女の子・陸火(りっか)と共に、角度を変えるとまるで別の動物に変わってしまう不思議な絵を見て首を傾げていた。
この絵、なぜか部屋の中央に置いてあって周りを柵で囲んで一定近づけないようにしている。
そう、実は額縁まで含めて立方体、しかも奥に凹んだ所に描かれた立体物なのだ。
ギリギリそれが分からない距離までしか近づけない仕様にしてあるらしい。
無論、猟兵である勘十郎は冷静に観察して絵ではなく彫刻の類いであることは理解している。
しかし、騙し絵の精巧な作りに感心している。
陸火も楽しんでいるようで、ふと微笑ましくなった瞬間、目前の馬だか魚だかが近づいてきているように見える。
(こんな効果もあるのか……?)とぼやっと考えていて、ハッと気がついて左足を半歩下げ体の位置をずらすと先ほどまで自分の頭があったところを大口を開いた何かが通過していき、それを確認しながら大きくバックステップで距離を取る。

『勘十郎! 大丈夫!?』
一瞬遅れて反応した陸火が勘十郎を心配する。
「カッ! ワシらしくない、本気で避けてしまった。」
軌道を見切って最小限の動きで回避出来たものの、正直際どかった。
本来なら最小で躱してカウンターで斬り伏せていたものを、と、鍛錬に余念なく自身の剣技に絶大な信頼を寄せているだけに、勘十郎は敢えて口に出して渇を入れた。
ここから先は、油断は存在しない。

大きく距離を取ったメリットは二つ、体勢を立て直すことと相手を観察すること。
このトロンプ・ルイユはカメレオンの如く周囲に溶け込んで居るようだ。
腰を落として左手は鞘を掴み親指を鍔に掛け、右手は柄に軽く添える居合いの構えを取る。
姿を隠す相手を迎え撃つ格好だ。
それもただ待つのではない。
鞘に収められた刀身に仙力を充填しつつ、周囲の気配に集中して感覚を研ぎ澄ます。
姿が見えずとも、今までの場数で培った経験が自分に向けられる殺気を捉えている。
静寂に包まれる空間、そして、勘十郎が振り向くと同時に現われたトロンプ・ルイユが飛び込んできて、そのまま勘十郎を抜けて、数歩進んだところで倒れ伏す。

「目を欺くだけでは“本質”を見抜くのも造作ない。それがお前の敗因だ。」
いつの間にか抜き放たれていた刀剣を振るってからゆっくりと納刀して一瞥する。
誰かが今の一瞬を見ていたとして、何が起きたのかは理解できないだろう。
簡単に言うと、勘十郎が、相手の殺意を察知して、背後からの攻撃に、肉眼で確認できないほどの抜刀を見舞った。
騙し絵は所詮、目を騙して混乱させる物。
物音や殺気を隠しきれていないようでは、勘十郎ほどの剣士に通じるはずもない。
倒れたトロンプ・ルイユに刀傷はない。
地縛霊としてこの地に縛られている鎖を断ち切られ、存在を失っていく。
これが、勘十郎の剣技なのだ。

「お前さんには悪いが知り合いの初仕事なんだ。白星を飾らしてやりたい故、斬らせてもらったぞ。」
消えゆくトロンプ・ルイユを背に、迷宮化した美術館を先に進む。
『ねぇねぇ、もう喋っていい?』
そんな勘十郎に、生意気ながらも集中を妨げないために黙っていた陸火が抗議の声を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『計略のリリス『マリアッテ』』

POW   :    うう迂闊に近づきましたわね!(精一杯強がって)
近接範囲内の全員を【判断力が低下した状態】にする【間近で見ると理性が焼かれる魅了の炎】を放ち、命中した敵にダメージと麻痺、味方に隠密効果を与える。
SPD   :    わたくしの為に…って、それは言わなくていいの!
【助けを求めるマリアッテの心に応えた忠臣】の霊を召喚する。これは【マリアッテの萌え所エピソードのウザ語り】や【その霊が得意とする戦い方】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    わたくしのオネガイ、聞いてくださいます?
【強い魅了と共に、視線あるいは身体の部位】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。

イラスト:麻月叶

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御影・雪乃です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章:支配人室にて
「どういうことですの!わたくしが考え抜いた騙し絵トラップが踏破されていますわ!」
(霊的な)監視カメラでその様子を逐一見ていたゴーストタウンの主、計略のリリス『マリアッテ』は落ち着きなくその場をうろうろする。
額に玉粒の汗を浮かべて顔色を青くしてうろうろする姿は、先ほどの言葉の勢いとは逆にとても悲壮感が漂う。
「も、もうすぐ猟兵が来てしまいますわ!誰か、誰か控えていまして?」
その呼びかけには誰も答えない。
…いや、執務机の向こうに隠れてる半透明な何かがほんわかした雰囲気でこっそりマリアッテを見ている様な気がするっ!
それにも気が付かないマリアッテは頭を抱えて絶叫する。
「こ、こうなったらわたくしがなんとかするしかありませんのー!!」
樂文・スイ
あー俺もトリックアート(物理)と戦りあいたかったなー
まあ本丸への道がもう開いてんなら好都合って考えるべきかねぇ
可愛いお嬢ちゃんだけど魅了されるほどコッチも初心じゃねえわな

目線だ炎だごときで理性やられるわけにゃいかねぇ
むしろ【誘惑】し返すくらいの気概だ
【幸運】【勝負勘】【闇に紛れる】で攻撃は避けていく
ある程度距離を保って指定UCでUC封じを
【ナイフ投げ】【急所突き】【部位破壊】【目潰し】で正確に相手が動けなくなる箇所を狙うね
UC使えなくなりゃゆっくりバラしてあげような

計略家ってんならもっと巧くやんねえと
突破されて涙目になるくらいならやめときな?
|猟兵《おれら》に気づかれた時点で負け確なんだよ



「あー俺もトリックアート(物理)と戦りあいたかったなー。」
全然残念そうには聞こえない独り言を喋りながら、騙し絵の展示を無視して美術館を突っ切っていく男が一人。
樂文・スイ(欺瞞と忘却・f39286)である。
少し遅れて転送されてきたのだが、すでにトロンプ・ルイユはあらかた掃討されたようで殺気はおろか気配さえ感じない。
おそらく、このゴーストタウン維持のためにこれ以上はやられる訳にはいかないのだろう。
そんな事情はお構いなしに『Staff only』となっている通路へ入っていく。
この先がおそらく本丸だろうと思われ、これ幸いと進んで行く。

●お嬢様の忠臣
スイが支配人室の扉を開けて中に入ると、執務机に座って足を組んだ女性が待っていた。
「ようこそ、わたくしの美術館へ。しかし、ここは関係者以外立ち入り禁止でしてよ?」
慇懃無礼な感じに扇で口元を隠した女性、マリアッテは声を上ずらせながら妙に良い姿勢でスイに声を掛ける。
その様子に内心呆れるスイだが、マリアッテの裾からちらりと顔を出してさっと隠れた蛇に気が付いてターゲットに間違いないと確信した。

「可愛いお嬢ちゃん、計略家ってんならもっと巧くやんねえと。」
相手が虚勢を張ってるのは丸わかりなので、まずは挑発してみる。
ほほほ、とマリアッテは笑い声を上げるものの、目の端がぴくぴくしているのをスイは見逃さない。
「よくぞわたくしのトラップを抜けてきましたわね。素敵な殿方、歓迎致しますわ?」
嗜虐の笑みを湛えるマリアッテは、見た目以上に妖艶に感じた。
腐ってもリリスなのだ。
だが、スイはその程度のハニートラップで掻き乱されるほど初心ではない。
わざとらしく足を組み替えているマリアッテを鼻で笑ってからもう一言。
「突破されて涙目になるくらいならやめときな?」
にぃーっと笑みを返すスイにびくっと震えて動きを止めるマリアッテ。
意趣返しにマリアッテが慌てて声を張り上げる。
「だ、だ、だまらっしゃいっ!わたくしの執事!」

スイは背筋に流れた悪寒と直感に従って床を蹴って飛び退いた所へ半透明な太い拳が突き刺さる。
筋骨隆々でタキシードを着込んだ半透明な幽霊の男が浮かんでいた。
「もう少し虐められるお嬢様を影から見守りたかったが、呼ばれれば致し方なし。」
「あなた、なにをいってますのー!!」
マリアッテの絶叫と共に執事幽霊が飛び出して拳を振るう。
間抜けなやりとりからは想像も出来ない鋭く思い攻撃だが、スイは距離を取って投げナイフで電飾を破壊、監視モニターの光を利用して闇に溶ける様に回り込みまずは肩口にナイフを突き立てる。
振り返り太い上で振り払う執事の腕をしゃがんで避け暗器でもう片方の肩を突き刺す。
そのまま離れ際に指の間に挟んだ矢を投げつけ、執事はその場にふわっと倒れてしまう。
「恨みはないけど、大人しくしててな。」
凄絶な笑みで執事を見下ろして言い放った。

「ひっ!?」
マリアッテの悲鳴の方向へ顔を向けるスイは、
「|猟兵《おれら》に気づかれた時点で負け確なんだよ。」
とても魅力的に、笑みを向ける。
一瞬見惚れてお株を奪われるマリアッテ、ハッと気がついて後ずさり、壁に追い込まれた。



と思ったら空間がぐにゃりと歪む。
「つ、つぎはこうはいかなくてよっ!?」
涙目になりながら空間の揺らぎに消えていく。

「あー、ゆっくりバラしてあげようとおもったのになー。ま、お嬢ちゃんに次はないだろうけどな。」
虚空に消えたマリアッテに独白して、踵を返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩永・勘十郎
「なんだ女か」
『気を付けて! アイツが諸悪の根源。何してくるか分からないよ?』
「ならとっとと終わらせるだけだ」

そのままゆっくりと刀を抜く。勘十郎は大の女嫌い。色仕掛をしよう物なら[恐怖を与える]程の[殺気]が出る。そしてそのまま叩き斬ろうと近づくが、違和感を[第六感]で感じ取り、再度間合いを取る。

「面妖な…」

流石にイラっとしたのか、勘十郎の左目から心鎧の炎が溢れ出る。色気なども煩悩の一つ。敵のその炎や能力ごと焼き払うが如く、火力を上げたUCを発動。敵目掛けて爆竹を投げつけ光と音で[目潰し]をすると[不意打ち]気味に斬撃を放った。

「悪いな。ワシは女相手になると手加減が効かんのだ」

と[挑発]して。



美術館のどこかの廊下で、マリアッテはぺたりとへたり込む。
「もう、もうっ、なんですのっ!わたくしはただ、お仕事して食事をしているだけですのに~!」
先ほどの事を思い出してマジ泣きを始める。
が、裾からちらりと顔を出す蛇は近づいてくる物を見据えていた。

●我を断つ武の心
「なんだ女か」
進む先にへたり込んで泣いている人影を見て岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)はなんの感慨も持たずに呟く。
『気を付けて! アイツが諸悪の根源。何してくるか分からないよ?』
すぐに生意気な調子で腕のデバイスから投影されるホログラムのAI陸火から突っ込みが入る。
見ている分には、本当にただへたり込んで泣いているだけにしか見えないのだがそう言われたからには、
「ならとっとと終わらせるだけだ」
勘十郎はすらりと刀を引き抜きながら油断なく距離を詰めていく。

少し距離を開けたところから声を掛けてみる勘十郎。
「どうした?なぜ泣いている?」
抜き身の刀を下げたまま、世間話でもするような気安さで話し掛ける。
びくっと肩を振るわせるも女は顔を上げず、
「わたくしがなんでこんな目に。ひどい、ひどいですわ…。」
同情を誘うような弱々しい口調で呟く。
その言葉はどこか甘い響きに聞こえ、神経がざわつく。
「面妖な…。」
儚い雰囲気を纏って弱々しく泣きながら、その実、すでにこちらに何らかの仕掛けを打っている様子。

勘十郎は激怒した。
泣いている女、マリアッテが突然顔を上げてから尻餅をついて後ろに逃げようとするほどに、殺気をまき散らして。
その殺気のままに無防備に踏み込み刀を大上段に構える。
そんあ勘十郎の左目から炎が噴き上げている。
一瞬感じ搔き立てられた憐憫・庇護欲という煩悩を燃料に燃え上がる心鎧、それが勘十郎に爆発的な力を齎している。

「ううう、迂闊に近づきましたわね!こ、来ないでっ!」
後ずさりしながらも精一杯声を張り上げる。
切羽詰まったその声はやはり憐憫の情を搔き立てて、掲げるように見せつけた炎は刀を振り上げる勘十郎をわずかばかり鈍らせ身を焼こうと燃え移る。
が、その炎が勘十郎を焼く前に今度はマリアッテの目前で爆竹が爆ぜて派手な音と光を放って動きを止めると炎も弱まる。
「再来世の分まで叩き斬ってくれる!」
心鎧の炎を纏って燃え上がる刀を一文字に斬り落としマリアッテの炎ごとマリアッテを叩き斬る。

「あぎゃぁぁぁっ!!」
斬られて燃え上がる体を抱きしめて転がるように逃げるマリアッテ。
床ぎりぎりまで斬り落とした刀を引き上げてまた上段に構えながら勘十郎は冷たく言い放つ。
「悪いな。ワシは女相手になると手加減が効かんのだ。」
『悪く思わないで?女の子が嫌いだから厳しいの。』
その挑発に顔色を真っ青にして声も上げられないマリアッテは必死で後ずさりすると空間が歪んでその中に消えていく。

「いかん、逃げられたか。」
刀を振って炎を払い、すらりと納刀しながらいつもの雰囲気に戻る勘十郎。
『脅かし過ぎちゃったかな?』
陸火はあちゃーというジェスチャーをして見せる。
勘十郎はマリアッテが消えた場所をもう一度確認したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
毒気が抜かれたというかなんと言うか
リリス系の場合、この振舞いですら油断させるためってケースが多いんだが
はてさて、こいつの場合はどうなのやら

「ちょっと時間潰してから出直した方が良かったりするか?」

【戦闘】
自身を目隠しして「心眼」で戦闘を行う
敵のUCを恐れた「演技」をする
「なんてヤバイ能力だ。この炎をまともに見たら勝ち目がねえ」

隙を突いて「斬撃波」による「切断」攻撃

10年前なら色仕掛けもらってたかもな

「最後通告だ。今後悪事を行わないって誓えるなら、俺はここで止めておくぜ?」

UCを発動して「天候操作」「全力魔法」による攻撃
ちょっと吹き飛んでもらう
「ちょっと高い所の空気吸って反省してもらうぜ」



「う、うぅ…。」
ぷすぷすと煙を上げながらへたりこむマリアッテ。
結構な深手を負ってはいるがまだ健在である。
しかしあまりの痛さに涙が零れる。

●本質を見極めること
さめざめと泣いているマリアッテを暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は拍子抜けした気分で見る。
リリスというゴーストは、こうした振る舞いを餌にする手合いが多いが…、策略家と聞いていたマリアッテからはガチ泣きの気配を感じる。
これが演技なら大した物だが…、
「ちょっと時間潰してから出直した方が良かったりするか?」
魎夜が声を掛けるとびくりと肩を振るわせて、ギギギと擬音が聞える様な動きで首を巡らせるマリアッテ。
その瞳も表情も、紛れもない恐怖に引きつってると魎夜は感じ取った。

「怖がるなって。お前、こういうことに向いてなさそうだ。改心する気があるなら助けてやれるぜ?マヨイガ、聞いたことないか?」
警戒はしつつも敵意はないと両手を挙げて見せながら声を掛けてみる。
こういうシチュエーションも何度も経験している。
しかし、一歩近づくとマリアッテは「ひっ!」っと顔を引きつらせて後ずさってしまう。
相手の警戒をさらに下げようと魎夜はしゃがんで視線の高さを合わせるようにしてみて…、
「ううう、迂闊ですわっ!迂闊に近づきましたわねっ!?」
なぜか強気な発言をしつつも涙目で取り乱すマリアッテに哀れみを感じた瞬間、魎夜の体に炎が着いた。

「うおっ!」
さっと飛び退いて振り払いながらバンダナで目隠しをする。
湧き上がった哀れみが萎んでいき、合わせて炎も消えていく。
聞いていたとおりの攻撃であった、が、相手はおそらく狙ってやっていないだろう事は分かった。
天然の行動に、リリスの本能が後から着いてくるタイプだ。
「なんてヤバイ能力だ。この炎をまともに見たら勝ち目がねえ!」
だが、こういう厄介なタイプの相手も経験豊富だ。
魎夜は必要以上に警戒した演技をする。
こういう手合いのリリスは、調子に乗せておけばまともに能力を発動出来なくなる事が多い。
「ふ、ふふんっ♪そうよ、わたくしは恐ろしいのよ!」
なんの疑いもなく信じるマリアッテ、立ち上がっておほほとお嬢様特有の高笑いをしてる。
それだけ笑ってくれればどこにいるのかははっきり分かるし、笑い続けてて相手がまるでアクションをしてこない。
思った通りの展開に、もう一押し。
「く、不気味な笑いを。どこだ?そこか!?」
わざと大ぶりで緩慢に斬りかかって空振りする。
「目を塞いでわたくしと戦えると思って?」
調子に乗るマリアッテは無防備に魎夜に近寄り、ざしゅっ、と魎夜が最小の動きから放つ斬撃破に裂かれながら後ろに吹き飛ぶ。

「へ?えっ??」
呆然と傷口から溢れる液体を手に付けて見ては魎夜と視線をあっちこっちさせるマリアッテ。
「そんだけ笑ってたら居場所が筒抜けだ。それに、見えない状況でも戦った事が何度もある。」
もう脅威はないと目隠しのバンダナを定位置に戻して締め直す。
経験則からもう一つ分かってることがある。
「最後通告だ。今後悪事を行わないって誓えるなら、俺はここで止めておくぜ?」
少しの期待を込めて言葉を投げるが、マリアッテはまた怯えて後ずさりする。
だめか、と内心ため息を吐いて掌に魔力を集中する。
「わわわ、わたくしは悪いことなんてしてませんわっ!!」
魎夜の中にまた哀れみが浮かんできて炎が上がり始めようとするがお構いなく近づく。
「ちょっと高い所の空気吸って反省してもらうぜ。」
「え、何を言って?ここは室内ですわ…。」
疑問を無視して足下の床に掌を叩き付けると、マリアッテの周囲に陣が浮かび、強力な水流が発生。
マリアッテの体をぐんっと押し上げて天井をぶち抜く。

降り注ぐ水滴で消化されながら、声もなく天井に消えていったマリアッテを見上げる。
開いた穴からは空は見えないし、マリアッテもいない。
「逃げ足だけは速いようだな。」
頭を冷やしてくれればいいが、と思いつつしばらくの間自身が開けた穴を見上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
ロランさんのお話によれば、慎重な計略家のオブリビオンだと言う事でしたが……なるほど、良い臣下をお持ちのようで。
彼らを上手く使って攻撃を仕掛けて来るのでしょう。
こうなれば私も正面から相手をしましょう。
すなわち、やたら何か語りたがる霊の方々の話を聞いて差し上げる事になりますね。
その間に攻撃も凌がなければならないので気は抜けませんが……適度に話に相槌を打ちつつマリアッテを褒めて油断を誘います。
この手の相手との戦いには、こちらが同好の士とどれだけ思わせるかが重要です。
後は霊の隙を見て【騙し討ち】のユーベルコードでマリアッテを攻撃します。
霊の語りにどこまで耐えられるか……私の【気合】が試されますね!



「うぅ、もう、わたくし、くじけそう…。」
びしょ濡れで手を付いて弱っているマリアッテ。
そしてその周囲にはいつの間にか半透明な執事たちが出現していて…。
「お嬢様はまだ大丈夫です。さぁ、お顔をお拭きください。」
とタオルを差し出している。微妙に遠いところから。
むむっと顔をしかめながら這って進みながら手を伸す姿を執事たちはにこにこと見ていた。

●推しを愛でる熱量
「ロランさんのお話によれば、慎重な計略家のオブリビオンだと言う事でしたが……、」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は早足でボスであるリリスを探していた。
グリモア猟兵であるロランの説明を思い出しながら角を曲がると…、居た。
びしょ濡れで手負いのマリアッテと、その髪を拭いている半透明な執事が複数。
「なるほど、良い臣下をお持ちのようで。」
真剣な態度でされた説明を思い出し、一つ作戦を立てることにする。

「む、何者?」
執事の一体がハロの接近に気が付いて立ち塞がる。
いや、ハロにマリアッテが見える様に体をずらした。
すっかり猟兵に恐怖しているマリアッテは「ひっ!」と情けない悲鳴を上げて硬直する。
一斉にほっこり顔をする執事たち。
聞いてた話と違うような?とハロは内心で首を傾げる。
でも、これなら通じそうな気がする。
前から考えていた作戦、とにかく語りたいことを語らせて油断させる、と言う物だ。
覚悟を決めて、気合いを入れて話し掛ける。

「どうしたのです?そちらの方はひどい感じですが、何かお手伝いしましょうか?」
武器を納刀して近づくと、一番手前に居た執事が手を翳してハロを制止する。
「ご心配無用、今、お嬢様の麗しいお姿を拝見しているところなのだ。」
頭に?が浮かぶ。執事が何を言ってるのかよく分からない。
「えっと…、どの辺りが麗しいんでしょうか?」
とりあえず語ってくれそうだから促してみたら、執事は満面の笑みを浮かべる。
「ご覧ください、あの、猟兵たちからの仕打ちに打ちひしがれながらも励まされ前に進もうとしながらも新たな猟兵を見て恐怖に引きつるあのご尊顔はとてもとても素晴らしいでしょう?」
「ちょっとーっ!!聞えてますわよっ!そんなこと言わなくてよくてよ~!」
たしたし涙目で床を叩くマリアッテと一斉にほっこり顔をする執事たち。
頭が痛くなってくる光景である。
「そ、そうですね。恐怖に耐えてツッコミを入れれるのはすごいです…。」
ハロの適当な相槌にに執事たち、サムズアップで応える。

精神的に一気に疲弊した気がする。
いや、気のせいじゃないのかも知れない。
この空気は長く居るとダメだと直感したハロは、「さすがのキレ、さすがマリアッテお嬢様っ!」とおべっかしてる執事たちに目眩を覚えつつマリアッテにそっと近づいていく。
うん、執事たち、萌えポイント語りと囃し立てるのに夢中で誰も咎めようとしない。
と言うより、ハロが近づくとマリアッテの顔は引きつるので、それを萌えとして盛り上がってる。

ため息を吐きたいのを我慢してにこやかにマリアッテに手を差し出す。
「立てますか?」
その様子に毒気を抜かれたのか、今日初めて丁寧に接されたからか、青筋を立てたままだがマリアッテがほんの少しほっとした顔をして差し出された手を取ろうと顔をあげた。
繋がろうとしたハロの手に光が奔り、出現した魔術陣から雷が迸ると刃を形成、ハロは躊躇なく無防備なマリアッテの胸元に雷剣を突き立てた。
「騙してすみません。でも、これで眠ってください。」
驚愕のマリアッテ、突然のことにフリーズし、そのまま消えゆく執事たち。
マリアッテの瞳から光が消え、その場に倒れて消滅していく。

「ほっ、なんとかなりましたね。それにしても、恐ろしい攻撃、いや、口撃でした…。疲れた…。」
執事たちの熱量に当てられた疲弊を感じながらも、このゴーストタウンの主の討伐は完了した。
空間が揺らいで綻び、崩れていく。
このゴーストタウンもそのうち消え去ることだろう。
ハロは踵を返して崩壊に巻き込まれないように急いで撤退を開始する。
程なく、他の猟兵たちを迎えに来ていたロランと合流し、この場を後にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月21日


挿絵イラスト