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この世を滅ぼす愛で芽生えた想いを終わらせて

#クロムキャバリア #戦後 #ハビタント・フォーミュラ #エクスマトリックス・オーバーロード #禁軍猟書家 #獲得した武具はアイテム化するなりご自由にお扱いください

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「未だ逃走しているハビタント・フォーミュラですが、金沢市の卯辰山公園で彼女が全ての世界への侵攻を企てようと利用していた異世界への穴『|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》』が発見されました」
 シルバーレイン世界の金沢市で勃発した『第二次聖杯戦争』が、『聖杯剣揺籠の君』の討伐をもってして終結してから十数日が経過した。その事後報告を兼ねた事件の進展を伝えるべく、グリモアベースに集った猟兵たちを前にして秋月・信子(|魔弾の射手《フリーシューター》・f00732)は手にしたタブレット端末からホログラム投影された報告書を読み上げていく。

「発見された方のご報告では、自転車が通ったような痕跡を辿った先で精神を強く集中した時にだけ見える『超時空の渦』として巧妙に隠されていたそうです。おそらく、今まで類を見ない私たちの快進撃を前にして逃走経路を完全に消すことも隠すこともままならなかったのでしょう」
 すると、謂わば次元の門である全能計算域限界突破に乗り込めばハビタント・フォーミュラを追跡できるということになるが、そう意気込む猟兵たちに申し訳無さそうに信子は首を横に振った。

「確かに私たちの戦場制圧が迅速に行われたからこそ残った入り口ですが、あのハビタント・フォーミュラはそう簡単に私たちを追撃させないように巧妙な罠を講じさせる時間はあったようです」
 信子が語るには、彼女が視た予知……即ち今この場に居る猟兵が全能計算域限界突破に身を投じた先にはハビタント・フォーミュラの姿は居なかった。その代わり、あったのはクロムキャバリアで繰り広げられている惨劇であったと言う。

「はっきりとまでは予知できませんでしたが、ハビタント・フォーミュラがいざという時のために存在を秘匿させていた猟書家……。本来は書架の王である『ブックドミネーター』を守護する為に編成された精鋭の近衛兵とも言える『禁軍猟書家』が罠を張って待ち受けています」
 つまり、これは罠なのである。意気揚々とハビタント・フォーミュラを追いかけた先には彼女の姿などは何処にもなく、代わりに強大な力を有した|禁軍猟書家《オブリビオンマシン》が猟兵たちを罠に嵌めるべく糸を張り巡らせているという訳だ。

「詳しい状況までは朧げでしたので、どんな姿でどんな攻撃手段を持つオブリビオンマシンが待ち構えているかは不明です。しかし、ひとつだけ判明していることがあります。それは……キャバリアを始めとするあらゆる機械兵器を乗っ取り、自在に操作するという能力です」
 クロムキャバリアではキャバリアと呼ばれている有人型ロボット兵器が一般的であり、多くの猟兵たちもキャバリアに乗ってオブリビオンマシンを撃破するのが常である。だがしかし、仮にキャバリアに搭乗して出撃すれば禁軍猟書家であるオブリビオンマシンの力によって機械文明による武装全般で応戦すればたちまち不利に陥ってしまうのは必定だ。

「この場合は、私が使っている銃器もオブリビオンマシンの制御下に入ってしまうことが予想されます。ですが、対抗できる手段はあります」
 それは、剣と魔法。即ち、機械文明と対する魔法文明による神秘である。だが、注意して欲しいところは、クロムキャバリアの古代魔法帝国時代に生まれた『サイキックキャバリア』及び|脳なき巨人《ユミルの子》に装甲とコックピットを取り付けた『ジャイアントキャバリア』も機械文明であるプラントによって建造されているキャバリアだ。愛機から降りての白兵戦が求められるだろうが、生命の埒外である猟兵であればその心配などはないと信子は締め括る。

「全能計算域限界突破を抜けた先はクロムキャバリアの世界ですが、クロムキャバリアのどの小国家に転送されるかは不明です。確かに禁軍猟書家のオブリビオンマシンは驚異ですが、世界の危機に及ぶ前に破壊すれば今後の憂いを断つことが可能でもあります。万全の準備をもって、|禁軍猟書家《オブリビオンマシン》の破壊をよろしくお願いします」
 かくして猟兵たちは金沢市・卯辰山公園へと転送され、そこから改めて異世界への穴『|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》』へと身を投じる事となる。行き着く戦場はどんな地獄であるかは、まさに神のみぞ知るのである。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 ハビタント・フォーミュラの追撃戦が始まったかと思えば、まさかの猟書家大決戦でありました。まだ猟書家が確認されていなかったり、戦争後でもない世界にも猟書家が確認されたという展開となりますが、面倒なことになる前に事前に倒すに越したことはありませんよね?


●戦場概要
 第二次聖杯戦争を終えた金沢市・卯辰山公園を調査していた猟兵たちは、直径5メートル程の「超空間の渦」を発見しました。
 これはおそらく、異世界に逃走した「ハビタント・フォーミュラ」が使用した次元の門……「全能計算域限界突破」の入口に違いありません。しかし、その先は既にいざという時の為にその存在を秘匿されていた猟書家……「禁軍猟書家」が罠を張り待ち受けていいます。禁軍猟書家とは、本来書架の王である「ブックドミネーター」を守護する為に編成された、精鋭の近衛兵達……故に「禁軍」と呼ばれている……と予知されました。
 超空間の渦に飛び込んだ先は、禁軍猟書家の待ち受ける罠……ハビタント・フォーミュラは、追跡さえも見越して二重に対策を施していたのかもしれません。しかし、ここで精鋭と思しき禁軍猟書家を駆逐できれば、「猟書家壊滅」の可能性が現れるかもしれません!

 第一章は【集団戦】フラグメントとなります。
 超空間の渦に飛び込んだ先には『クロムキャバリア』の戦場が広がっています。そこからはとある小国家のキャバリア部隊が撤退しようとしているようですが、よく見ると争っていた筈の兵士達が双方恐慌状態で逃げ惑っており、さらにそれを追い立てているのが『オブリビオンマシン化していないにも関わらず、何者かに操られているかのように暴走するキャバリア』です。暴走キャバリアを破壊し、兵士達を助けましょう!

 第二章は【ボス戦】フラグメントとなります。
 猟兵を待ち受けていた|禁軍猟書家《オブリビオンマシン》との決戦です。
 OP内でもご説明しましたが、キャバリアに搭乗して戦うと苦戦を強いられます。機械文明に当て嵌まらない武器或いは魔法で戦いを挑むことになりますが、ある単語を叫ぶと何かが起きるようです。
 ヒントはシナリオOP内にございますので、余裕があればお探しくださいませ。


 第一章と第二章については、章が進展する毎の詳しい情報開示となりますのでご了承下さい。

 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 集団戦 『ドヴェルガー』

POW   :    ウォークライ・アタック
全身を【死の恐怖を打ち払い奮起を促す叫び声】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【損耗】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD   :    キャバリアハンター
【ドヴェルガー】に騎乗して【間隙を突いての対キャバリア兵器】で攻撃する時、自身より【体高】が大きい(高い)敵への射程とダメージが増大する。
WIZ   :    アンチキャバリア・トルーパー
敵より【地の利を活かし、また仕掛けた罠に掛かった】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。

イラスト:Hispol

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──某月某日、幾数十年にも渡り小競り合いが絶えないキノ国とタケノ国の国境に設けられた緩衝地帯で『遺跡』が発見された。長年に渡るキノ国とタケノ国の戦争、俗に『キノタケ戦争』と呼ばれる戦乱は文字通り山を削る砲火を交すものであった。これにより、偶然にも古代魔法帝国時代のものと思われるプラントが発見されたことで、何時しか戦争の目的が『相手に勝つ』ことへとすり替わったいた中で『長年に渡り膠着した戦況を覆す可能性を秘めたプラントの奪取』が新たな戦争の目的と置き換わったのだ。
 しかし、幾数十年にも渡り続けられてきた戦乱により両国の国民に厭戦感情が漂い始めてきており、政府指導部や軍部でも戦乱に終止符を打つべく和平に向けた派閥が民衆の指示を得始めている機運が高まりつつある。そのため、奇しくも両国ともに表立った争奪戦を行えば徹底抗戦を訴える主流派政権がクーデターにより転覆されるのを恐れ、また出来れば無傷で確保したい遺跡への被害も懸念されて表立った大規模なキャバリア戦には至らなかった。
 だが、両国は秘密裏に遺跡を確保すべく行動に移していた。元はキャバリア随伴歩兵として敵性地帯における生きたセンサーとしての役割や拠点の確保、もしくは工兵や輜重兵が用いるパワーローダーを武装化した人間サイズ大の小型キャバリア……通称『ドヴェルガー』を用いる特殊作戦を展開したのだ。水面下に行われた秘匿されたプラントを巡る特殊作戦の全容を知る者は、政府指導部はおろか軍部でもごく限られた者のみである。
 表向きは融和なムードが漂うキノ国とタケノ国に新たな戦乱の予兆が渦巻いていたのであったのだが、小競り合いを繰り広げながら遺跡の深部へと侵入していた両軍に異常が発生した。

「メーデー! メーデー! こちらチームアルファ、敵部隊の攻撃を受けている! 至急援護に……」
「こちらチームチャーリー、我も敵部隊の攻撃を受けている! チームアルファと近い、オーバー!」
「こちらチームブラボー! ドヴェルガーユニットが暴走して、身体の動きとは別の行動を取っている! この状況は同士討ち、同士討ちだ……うわぁ!!」
 ドヴェルガーは、操縦者の動きを反映するマスタースレイブ方式のパワードスーツである。それが身体の動きを受け付けないのであれば故障と分かるが、プロテクターが増設されたパイロットスーツが剥き出しとなっている都合による安全面を考慮して自動運転機能など付いている訳がない。だがしかし、現にドヴェルガーは操縦者の動きを受け付けずに意思を持ったかのように動き、そして敵味方問わずに手にした対キャバリア兵器を向けて遺跡の床と壁を血で濡らしているのだ。

「違う、違う……。俺じゃない、俺じゃない!?」
 戦友を自らの手で殺めた隊員の悲痛な叫びが遺跡内に反響するが、ドヴェルガーはなおも自らの意思に反して味方に銃口を向ける。混迷を極める中、何時しかキノ国とタケノ国の特殊部隊は生きて地上へと逃げるべく敗走しており、それらを追撃する形で主であったパイロットが生きいていようが死んでいようが構わずにドヴェルガーの攻勢が強まっていく。猟兵が超空間の渦よりクロムキャバリアの地へ出たのは、まさにその最中である。
 彼らにとっては、この遺跡の奥で待ち構えているであろうオブリビオンマシンを破壊するのが優先事項だ。だが、この地獄が繰り広げられていれば見過ごす訳にも行かない。幸いながら、ドヴェルガーの体高は通常のキャバリアの半分ほどの二メートル弱で、パイロットを引きずり出すにも剥き出しとなっている構造で容易いだろう。まずはこの混乱を納めるべく、猟兵たちは操り人形となったキャバリアを破壊すべく行動に移すのであった。
キノ・コバルトリュフ
エリンギ!今日は楽しくハイキング!!
シメジ、なんだか周りが騒がしいね。
でも、キノたちは気にしなーい。
キノ?スピちゃんどこに行ったのかな?
シイタケ、おいしいお菓子とか用意したのに。
帰ってきた、どこに行ってたの?
軽く運動でもしてきたのかな?
マイタケ、それじゃあ、いただきます。



。「シメジ、なんだか周りが騒がしいね?」
 超次元の渦からキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)が周囲を見渡すと、キノ国とタケノ国の兵士が暴走した同国のキャバリアから攻撃に晒されているという阿鼻叫喚その物であった。しかし、ピュアリィである彼女からすれば何かのお祭りに見えたのだろう。飛び交う弾丸も何処か花火めいたものなのもあるのだが、キノコの生育に最適とも言える地下プラント遺跡の気温と湿度が居心地の良い空間であったのもあるかもしれない。

「エリンギ! 洞窟ハイキングに丁度いいかも……キノ? スピちゃんどこに行ったのかな?」
 ここでキノはあることに気づく。いつも彼女の|傘《キノコ》の上に居るはずの|お友達《星霊スピカ》が居ないのだ。どんな場所に飛ばされるか分からないからと準備したお弁当が入ったバスケットの中を覗いても、スピちゃんはここに隠れてはいない。

『クソ、止まれ……言うことを聞け!』
 キョロキョロとお友達が何処に行ったのか探しているキノの元へ、駆動音を唸らせながら近づく者が居た。暴走したキャバリア、ドヴェルガーである。機体には所属を表すどこかキノコにも見えてしまうエンブレムが描かれていることから、恐らくはキノ国の兵士なのだろう。剥き出しとなった骨組みの中に宙吊りされる形となっており、手足をジタバタさせているが本来であれば操縦者の動きに合わせてドヴェルガーは稼働する。だが、暴走したキャバリアはパイロットの体の動きを一切受け付けず、自らが意思を持ったかのように撤退中の同胞へ向けて銃を向けている。
 唯一リンクしているのは、ドヴェルガーのカメラアイが捉えた映像をヘルメットのHUDディスプレイに投影されていることだけだ。だが、これも機体側の視界がこちらに表示されているだけで、見たくもないモノを見せつけるだけでなく自らの意思に反して視界が動いてることからカメラ酔いさせてくる。これもキャバリア随伴歩兵としてドヴェルガー運用の訓練を受けているのでカメラ酔いには慣れているが、こうも身体の自由が聞かないとなれば抵抗する意思を削りに掛かってくるものである。
 だが、ここで急に暴走していたドヴェルガーが停止した。もしや暴走が終わったのかという希望が芽生えたが、身体を動かしても反応がないことからそうではないことをパイロットは確証する。何故ならば、ヘルメットのディスプレイ画面に見覚えのない小動物がちょこんと座っていて、ペロペロと毛づくろいしている様子にドヴェルガーが注意を向けさせたのだろう。

『おい、やめろ!?』
 ドヴェルガーが手にしている対キャバリアランチャーの銃口をどこからか迷い込んだ小動物に向けさせたことに、パイロットは怒鳴りながら身体を藻掻かせる。しかし、既に操縦者の制御権が失われた今は命令を受け付けず、炸裂音とともに地面が爆ぜるとパイロットは反射的に目を閉じた。敵国の兵士ならともかく、何ら罪もない動物を殺めたことに申し訳無い気持ちで一杯になる中、機体が急制動して宙吊りの身体が慣性に従い大きく揺れる。今度は何が起こったのだと恐る恐る目を開くと、そこには先程の小動物……星霊スピカが健在な姿で駆けている映像だった。
 スピカはドヴェルガーの周囲を時計回りする形でちょこまかと動き回り、暴走したキャバリアは攻撃対象を銃口に納めるべくしきりに動き回っている。そうしていると、パイロットに映し出されている映像が背中に伝わる衝撃とともに天井が映し出された。ドヴェルガーが体制を崩して転倒したのだ。

『ッ……しめた、外れた!』
 その衝撃により非常脱出装置も効かなかった骨組み状のコックピットがロック解除されて、手足のリンク装置を外しながらパイロットは遂に脱出した。しかし、それでもドヴェルガーは停止すること無く起き上がろうと身体を持ち上げようとしている。パイロットはヘルメットを脱ぐ捨てると、サバイバル装備として携行していた対キャバリア拳銃を暴走キャバリアの制御装置が集約された胴体部へと向けて撃ち放つ。拳銃とは名ばかりで、銃身を切り詰めた散弾銃めいた銃身から放たれた高速徹甲弾は重厚な装甲を持たないドヴェルガーの装甲を容易く撃ち抜き、雑音混じりの電子音を断末魔代わりに流すとようやく機能停止へと至るのであった。

『ふぅ……ありがとう。君は命の恩人だ……おい、どこに行くんだ!』
 対キャバリア拳銃の耳をつんざくような発砲音に驚いたのか、スピカは一目散と逃げていく。それを脱出したキノ国のパイロットが追いかけると、そこには奇妙な姿をした、まるでキノコの精霊である女性が居たのは言うまでもない。

「キノキノ、スピちゃん帰ってきた。どこに行ってたの? あの人、連れてきたの?」
『あの、実は……』
 理解が頭を追い付かない中、キノ国の兵士は先程までの経緯をキノへと説明する。彼らに与えられた任務は、古代魔法帝国次代のものと思わしき|遺跡《プラント》の制圧。敵対するタケノ国も同様にこの遺跡を制圧することが目的であったため、相手よりも早く中枢の制圧を急いでいたらば急に機体の制御が効かなくなったこと。そして、彼女のお友達であるスピカによって助けられたこと。

「シイタケ、そうだったの。そうだ、あなたもお弁当食べる?」
『いや、私の仲間はまだ暴走したドヴェルガーに乗ってるままだから、そっちを優先しないと……』
 丁寧に断ろうとしたその時、ぐうぅと腹が鳴る音がした。それはキノでもスピカのものではなく、遺跡制圧を急ぐべく飲まず食べずに居たパイロットのものである。ようやく安堵できたことから、気が緩んで腹の虫が鳴った、というところか。

「シメジ! 腹が減っては戦ができないよ。ほら、たくさん食べて」
『あ、ありがとう……』
 半ば押し付けられる形で、焼いた鶏肉とキノコマリネを混ぜた具材をパンで挟んだサンドイッチを押し付けられる。ちょうど身を隠す場所にふたりと一匹は居るため、食事を摂るにはとりわけ問題ない。

「マイタケ。それじゃあ、いただきまーす」
 美味しそうに口いっぱいサンドイッチを頬張るキノにつられて、パイロットも恐る恐るとサンドイッチを口にする。口には甘酸っぱいながらも風味もあるキノコマリネと香ばしい鶏肉の旨味が広がり、改めて彼は自分は今この瞬間を生きているということを実感したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃(サポート)
『今日も元気に食べて楽しく戦おうね!』
 人間で22歳の女性です。
いつも元気で、強敵との戦闘、食べる、スリルを味わうことを好みます。

基本的に自分の楽しみのために行動し、敵味方問わず他人の心情等には配慮しません。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用します。
戦闘では真っ正面からの突撃を好み、負傷は気合いで耐えれば良いと考えています。
戦闘以外のことも大体気合いと力でなんとかしようとします。
脳筋です。

武器は主に『重戦斧【緋月】』を使用しますが、他の武器の方が有効そうならそちらを使用することもあります。

クロムキャバリアでも生身で戦います。

不明な点はおまかせします。よろしくお願いします。


日下・彼方(サポート)
人間のUDCエージェント × 月のエアライダーの女です

戦闘での役割はレガリアスシューズを使っての空中戦、
影の狼を使役して斥候・偵察ができます
武器は通常大型ナイフを使用しますが
強敵には太刀・槍を持ち出す事もあります

普段は(私、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
機嫌が悪いと (私、~様、です、ます、でしょう、ですか?)

性格は受けた仕事はキッチリこなす仕事人のような感じです
仕事から抜けると一転惚けた風になります

ユーベルコードは必要に応じて、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


リィンティア・アシャンティ(サポート)
「お手伝いしましょうか? がんばります!」

礼儀正しくほわほわと穏やかな雰囲気の妖精騎士
妖精のルノを連れている

植物が好きで自宅で色々育てている。花いっぱい
お菓子をくれる人は良い人だとちょっとだけ思っている所があるかもしれない。本当に少しだけ…多分

戦闘では前衛だったり後衛だったり、周囲の人たちとの連携を大事しつつ、武器を持ちルノと一緒に戦う

自分がやれることを精一杯に



「そっかー。ここは古代遺跡のプラントで、禁軍猟書家はこの奥に居る訳なんだね」
 仲間の猟兵が暴走キャバリアより救出した兵士から得えた情報を受け、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は好戦的な目で通路の奥を睨んだ。兵士の証言では途中までは何も異変は起きていなかったそうだが、古代魔法帝国時代に建造されたであろう地下プラントの中枢へと近づくに連れてキャバリアに異常が次々と起きて暴走した次第である。
 となれば、猟兵が討つべき敵であろう禁軍猟書家たるオブリビオンマシンはプラント中枢部に座していることで一致する。だが、事はそう容易ではない。猟兵の侵入を拒むように、パイロットを人質とした暴走キャバリアであるドヴェルガーが待ち構えているのだ。

「確かに人質を取られていたら迂闊に手出し出来ないだろうけどさ。そんなことで手加減する私なんかじゃないもんね!」
 基本的にに自分の楽しみのために行動する透乃にとって、オブリビオンとの戦闘は何よりも代えがたい娯楽である。それに敵が強ければ強い程喜ぶことから、彼女の興味は今まさに禁軍猟書家へと向けられていてウズウズと武者震いがするというもの。

『来るな! 来るんじゃない!!』
 キャバリア自体はオブリビオンマシン化しておらず、パイロットたちも正気であるためか、重戦斧【緋月】を担ぎながら迫り来る透乃へ警告を発する。彼らには交戦の意思はないにしろ、暴走したドヴェルガーには確固たる交戦の意思が宿っている。自らの意思に反して行動し、自らは宙吊り状態で剥き出しとなったコクピットが仇となって体の良い人質となっている。キャバリア乗りとしてはこれ以上の屈辱などあるものか。辛うじて彼らが取れる行動と言えば、声を発して自らの愛機がこれ以上の凶行を繰り広げるのを阻止する以外に無かったのだ。

「来るな来るなと言ってもねぇ! はいそうですかって、帰るわけにも行かないよ!」
 放たれる対キャバリアランチャーの猛火に怯むこと無く突撃し、ドヴェルガーの脳天めがけて重戦斧を振り落とす。分厚い鉄塊とも言える刃が制御装置を破壊せしめれば、まるで操り人形の糸が切れたかのようにドヴェルガーは力を喪ってかく座するだけである。

「透乃さん、危ないです!」
 先鋒として奥へ奥へと斬り込んでいく透乃に向けて、パイロットの救出にあたっていたリィンティア・アシャンティ(眠る光の歌声・f39564)は後方から叫んだ。リィンティアからの言葉を受けた透乃が視線を移すと、そこにはマニュピレーターを広げて彼女を鷲掴みせんとするドヴェルガーの姿があった。よく見ると、パイロットは先の混乱でか味方から放たれた銃弾を受けて既に事切れており、今までパイロットたちの悲痛な叫びに頼っていたために注意が散漫となっていたためであろう。|アビリティ《ユーベルコード》である『ヘミソフィア・オラクル』によって天啓の光を身体の内から放出している間、如何なる隠密も察知するという警戒を怠らなかった彼女に後でおにぎりのひとつでも分けて感謝せねば。そう心の中で思いながら、自らもユーベルコードを発動して増幅された怪力でドヴェルガーのマニュピレーターを逆に掴むと、そのままひょいっと背負投をして総重量一トンはゆうに越えるフレームを地面に叩きつける。

「ああ、そこにも!」
 再びリィンティアの声を受けて視線を移すと、今度は対キャバリアランチャーを構えているドヴェルガーの姿がある。

(あ……やば)
 叩きつけたドヴェルガーを盾にしようとも、構えている対キャバリアランチャーは並のキャバリアをも破壊するほどの威力を有しているのは、先程の切り込みで避けても身体に伝わる余波で十二分に感じ得ている。とすれば、仮に今手にしているドヴェルガーの残骸など容易く撃ち抜くのは火を見るよりも明らかである。そうなれば、距離を取られていれば避けるのが一番ではあるのだが、既に相手はトリガーに指を掛けている。刹那の中で走馬灯の如く直感的に思考した結果、透乃の身体が真っ先に取った行動は避けることに相違ない。しかしながら、それよりも早く相手の指先が動いて、耳をつんざく炸裂音が遺跡内を反響させた。

「……残念だったな。上からの攻撃にも警戒すべきだ」
 だが、砲撃は透乃に向けられることはなかった。間一髪のところで、スカイ・ステッパーによる空中からの強襲を日下・彼方(舞う灰の追跡者・f14654)がドヴェルガーに向けて繰り出したのである。ドヴェルガーは頭頂部から胴体にかけ、彼方の身に宿している内なる獣の一端を引き出す為に作られた槍である試製蝕槍『Skoll』によって穿たれた。幸い気絶しているパイロットへと刺さらないように穂先はずれており、引き抜けば力なく暴走したキャバリアは崩れるのみである。

「ああ……良かった」
 まさに危機一髪な攻防を前にし、まず透乃が無事であったことにヘミソフィアはホッとした様子で胸を撫で下ろした。

「もう、遅いじゃないの!」
「遅いも何も……君が斬り込んでいく中で取り残した獲物を、こちらで後始末していただけなのだが?」
 淡々と事実を述べる彼方の言葉を受け、思わず透乃はうっと顔を歪めてしまう。丼飯で例えれば、勢いよく食べ終えた丼に米粒がいくつも残っているという有様であったのだろう。トドメを差し損ねたドヴェルガーを彼方が確実に潰していたために背後から撃たれる心配がなかったという事実を目の当たりにして、申し訳無さそうに透乃の目が泳ぐ。

「でも、こうして早く進めたことですから……」
 リィンティアがフォローに回るが、それも今の透乃にしては申し訳なさを抱かせてしまっている。詰まるところ、闘争本能に火を付けた彼女が禁軍猟書家といち早く戦いために引き起こしたものなのだ。非があるとすれば己にあるとしか言いようがない。

「ごめん。本当にありがとう! あとで彼方にもおにぎり分けてあげる!!」
「別に謝罪を求めている訳でないから、別にいい。それより新手のご登場だ。戦士であるならば、言葉よりも行動で示すものであろう?」
「……そうだね! よぉーし、今度こそはちゃんとトドメを差して行くからね!」
 なおもオブリビオンマシンに操るドヴェルガーが猟兵たちの前に立ち塞がっている。統一された意思で戦線を構築しつつある壁を打ち砕く破城槌として、勇ましき雄たけびを唸らせながら透乃は吶喊するのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

メディア・フィール
SPD選択
他PCとの絡みOK
プレイング改変・アドリブOK

敵にはダメージを、味方には防御力の強化を与える【氷炎魔拳】をうまく操って、敵であるドヴェルガーユニットにはダメージを与えつつ、味方であるパイロットの防御力は上げようと試みます。
また、ドヴェルガーに対して、身軽な体と以前キャバリアに乗った経験を活かして、関節部分を集中的に狙ってパイロットを傷つけないように簡潔に行動不能に追い込もうとします。

「調節が難しいけれど、敵意の無いパイロットと、悪意の満ちたマシンを、うまく感じ分けることができればっ!」
「キノ国とタケノ国……? どこかで聞いたような……、う、頭が……」



 猟兵たちは暴走したドヴェルガーを蹴散らし、同時に人質となっているパイロットを救出に回っている。そして奇妙なことに敵国同士であるはずのキノ国とタケノ国のパイロットたちが、例え敵国の人間であろうとも互いに肩を貸し合って地上を目指そうとしていたのだ。極限状態が産み出した一時的な休戦とは言え、些細な事ではあるがこれが長年に渡り小競り合いを続けている両国における関係改善の切っ掛けとなるのかもしれない。

「お互いに欲に目が眩んでバチが当たったんだよ、きっと。だけど……」
 先程に彼女、メディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)が救出したパイロットたちが地上を目指して行軍する様子を見送ると、周囲にうち転がるドヴェルガーの残骸に一瞥を投げた。至るところが氷に覆われているのは彼女の|闘技《ユーベルコード》『氷炎魔拳』によるもので、悪意に満ちたマシンには氷撃を、敵意などあっても喪失しているに同然の恐慌状態であるパイロットには氷の護りを与えていた。調整こそは難しかったが、パイロットとドヴェルガーとのリンク状態が遮断されていたのが幸いであった。と言うのも、メディアが愛機とするクロムキャバリア『ネオン』も同様な操縦方式を取っている経験が攻略のヒントと鳴り得たからだ。
 機械と人間のシンクロ状態が高い状態だと、例えば機械側の首を180度回転させれば人体側もそれに追従してしまう。暴走しているドヴェルガーの中にそのような状態に落ちいているのが居るかもしれない。そう判断したメディアは、腕や足などの関節部を重点に人機ともに氷漬けとし、例え機械側の動きに追従しようとも氷のギブスによって動かないように処置したというわけである。それも彼女の杞憂に終わったが、それが氷の鎧となってパイロットの身体は無事であったのだから無駄ではなかったはずだ。
 そうして彼らを救出し、姫《おうじ》武闘勇者として当然のことをしたまでだと誇らしげな気持ちに満たされるはずであった彼女の胸中にある疑念が生まれていた。

「啀み合って戦争しているキノ|国《こく》とタケノ|国《こく》……。どこかで聞いたというか、見た覚えがあるような気がするんだよね」
 それは果たして何処であっただろうか。喉の奥まで言葉が出かかっているのに中々それが出ないというのは、まさにこのことであろう。メディアは自らの拳で破壊したドヴェルガーの残骸をよく見ると、キノ国の所属を表すキノコ状のエンブレム。タケノ国の所属を表すタケノコ状のエンブレムがそれぞれにペイントされていた。

「そうだ! 確かUDCアースのお菓子にこんなのが……ッ!? う、頭が……!」
 謎はすべて解けた。メディアが活動の拠点として滞在している、とある猟兵の家で見たテレビという映像を映す機械にキノコとタケノコを象ったお菓子が映されていた記憶が鮮明に蘇ったのだが、突如それにノイズが走ったかのように激しい頭痛が彼女へと襲いかかる。
 まさか禁軍猟書家による精神攻撃か?
 そのような疑念が新たなに生まれる中、頭痛の痛みに慣れてくると幻聴がメディアの頭の中に流れ始めたのだ。

「……これは、歌……か?」
 思い返せば、ここは古代魔法帝国時代の|遺跡《プラント》である。魔法的な現象なり不可解な現象なりが起きてもおかしくない。ただ、古代魔法帝国時代に使われた言語なのだろうか、彼女にはどういう意味の歌詞かは全くもって見当もつかない。しかし、気になる単語があった。

 ──|m'aider《メデ》。

 何度も、何度も、フレーズごとにこの単語が繰り返されている。
 だが、メディアにはそれが何を意味するのか知らない。ただ確かなのは、この言葉を聞くたびに猟兵の力に目覚めた際に覚えた、うまく言葉では言い表せないが身体の内から力が漲ってくる感覚と高揚感が鮮明に思い出されていく。

「……m'aider」
 自然と口が開き、メディアはこの言葉を口にすると、不思議なことに頭痛がピタリと止まった。一体あの幻聴は何だったのか。そして何故、膨大な言葉の中で『m'aider』という単語にのみ反応してしまったのだろうか。

「……これも気がかりだけど、今はオブリビオンマシンを倒すことが先決だ」
 ぽっかりと開いた暗闇の通路が地獄への入り口に思えてしまうが、心の中で先程聞いた歌詞とメロディを思い出すよ不安感が払拭されていく。再び危機に瀕した時『m'aider』と唱えれば何が起きるかもしれないとメディアの直感が訴える中、自分たちの到来を知って罠を張って待ち構えていた禁軍猟書家の元へと彼女は急ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『エヴォルグ初號機『Parasite』』

POW   :    縛音封機プロトコル・Parasite×JACK
【自身の全身のアンテナ】から【機器に不調引き起こす怪電波】を放ち、【機械系装備を持つ対象の機器の不調】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    侵蝕僚機プロトコル・Parasite×BIRTH
レベル分の1秒で【キャバリアを一時制御奪うするナノマシン】を発射できる。
WIZ   :    暴走侵蝕プロトコル・Parasite×EVOLG
【キャバリア侵蝕ナノマシン内蔵弾】で攻撃する。[キャバリア侵蝕ナノマシン内蔵弾]に施された【暴走侵蝕プロトコル】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 遺跡プラントの中心部と思わしき部屋に出ると、地下空間とは思わせないドーム状の空間が広がっていた。

『ピポポポ……ピポポポポポ……』
 中心部にはプラントが精製しているであろう液化されたエネルギーインゴットのプールが広がっており、上半身部の至るところから触腕を展開させた象牙色の巨大で異質な脳髄が王冠のような物体に鎮座しながら空中を浮遊している。とてもキャバリアとは形容できない名状しがたき物体は、水耕栽培している球根さながらに脳幹部から根を張り巡らせ、尚も成長を続けていた。

 ──これが|禁軍猟書家《オブリビオンマシン》なのか?
 この場に居る猟兵は思わず息を呑んで、太古の眠りより今まさに目覚めようとしている最中の怪物を見上げていた。
 この特異なるキャバリアの名は、エヴォルグ初號機『Parasite』。
 生体キャバリアとして数多くの猟兵と激戦を繰り広げたエヴォルグシリーズの原初なる試作機であり、全身を侵食細胞で構成された浮遊型生体キャバリアである。古代魔法帝国時代に建造された異端なるキャバリアは、侵食対象であるキャバリアはおろか数多の搭乗者をも取り込み続けた結果、建造されたプラントごと地下深くに廃棄された。
 だが、時は下って現代。偶然にも封印された古代プラントが発掘されたことによって、オブリビオンマシンとして、禁軍猟書家として再起動を果たした。Parasiteの周囲には先行して中枢部に辿り着いたのであろうドヴェルガーユニットが散乱しているが、パイロットの姿は何処にも見当たらない。おそらく、彼らは邪悪かつ混沌とした自我を有する猟書家に『捕食』されたのであろう。

『ピポポポ……ピポポポポポ……』
 新たな獲物の訪れを察知したのか、機械な電子音を発しながら薄っすらと半透明の侵食細胞内に張り巡らせた神経細胞を仄かに点滅させ、エヴォルグ初號機が触腕を猟兵たちへと向けさせる。

 ……これを外へと出してはならない。
 ハビタント・フォーミュラが仕掛けた罠が猟兵たちを|禁軍猟書家《オブリビオンマシン》の元へと誘った。だが、不幸中の幸いとして完全に覚醒しておらず、この悪魔のマシンを破壊する機は今しかない。ここに辿り着くまでエヴォルグ初號機により操られたドヴェルガーは人間サイズ大であったため何とか対応できたが、通常のキャバリアよりも一回り巨大なオブリビオンマシンを白兵戦で相手するのは何とも骨の折れる話ではあるが、キャバリアはおろか機械兵器をも乗っ取るユーベルコードを操る相手に挑むしかないのだ。

 ──『m'aider』
 覚悟を決めようとした彼らの脳裏に、またこの言葉が囁かれた。
 ある者は次元の門『|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》』の超空間の渦の中で、またある者はこの遺跡内でこの言葉を聞いている。
 果たして『m'aider』という単語は何を意味しているのか?
 そう疑念を抱きながら、猟兵たちは禁軍猟書家のオブリビオンマシンとの決戦を迎えるのである。
メディア・フィール
POW選択
他PCとの絡みOK
プレイング改変・アドリブOK
謎の言葉、「m'aider」を叫んでみます。

「『m'aider』!」思わず高揚して叫んでしまう。意味も分からずに。
そういえば、よく似た言葉、「メーデー」を叫んでいたドヴェルガーのパイロットは、他のパイロットより被害を受けていなかったような気もする。
いったい、この言葉が、あるいは歌が禁軍猟書家にとってどのような意味を持つのか? 呪い? 祝福? 巡り合わせもあって禁軍猟書家と関わりのあまりないメディアにとって、少ない情報の端々からその深奥を理解することはできなかった。
しかし、今やることはわかる。
目の前の敵を倒して二つの国を救うのだ!


キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?

キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?


リィンティア・アシャンティ
目覚めてしまうと大変ですね
またお眠りになっていただかないと……

巨大なオブリビオンマシンとの戦いです
【世界を繋ぐ歌】を歌えば周りの皆さんも戦いやすくなるでしょうか
もちろん、私も触腕に気を付けながらソードハープで攻撃を
機械を使わない戦いのほうが慣れていますので

たまに聞こえてくる『m'aider』という言葉
途中で助けたパイロットさん達が使っていた言葉と似ているように思うのですが
違う意味なのでしょうか?
助けが必要な時に使う言葉、ですよね
もしかしたら私達を助けてくれる何かが来てくれたりするのでしょうか
嫌な感じはしないので、もしもの時はと思うのですが


バルタン・ノーヴェ
全員リクエストによる、各シナリオへの救援プレイングです。
時期物や戦争。期日が迫っていたり、人手が足りてない時などご自由にご利用ください。
アレンジ、アドリブ、連携歓迎。
ユーベルコードも指定外の、公開中から適当なものを使用してもらって構いません。

HAHAHA!
グリモア猟兵殿の要請に応じて、ワタシ! 参戦デース!
お困りのようデスネー? ドントウォーリー! ワタシが手伝いマスヨー!
アタック、ディフェンス、他の方への支援! おまかせくだサーイ!

白兵戦、射撃戦、集団戦もボス戦もオーライ!
冒険の踏破や日常への奉仕活動も得意であります!
|臨機応変に対処可能《好きに動かしてOK》デース!
よろしくお願いしマース!



「これが……キャバリアなのか?」
 遂に正体を現した、キャバリアをオブリビオンマシン化させずに操るオブリビオンマシンを前にして、メディアは唖然としながら異形なる機体を見上げる。

「なんて……おぞましい。目覚めてしまうと大変ですね。またお眠りになっていただかないと……」
 リィンティアもメディアと同様にショックを隠しきれず、目を見開いて悪魔とした言い表せない名状しがたき存在に動揺をせざるを得ない。

「マッシュルーム! まるでキノコみたいキノ」
 そんな空気を破ったのは、キノの先入観なき率直な発言である。

「確かに、キノコと言えばキノコのようにも見えるデース……」
 何時もであればハイテンションであるバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、体調がすぐれない様子でキノの感想に同意を示した。というのも、一見すると可憐なメイド姿である彼女はサイボーグであるかあらだ。オブリビオンマシンが奇怪な電子音めいたシグナルに連動して発信している怪電波によって、駆動系には問題ないにしろ風邪を拗らせたような気だるさが改造された身体に浸透して数々の不調が起きている。
 幸いなことに猟兵という生命の埒外たる存在という加護によりオブリビオンマシンに操られるという最悪な事態を回避できているが、バルタンの武器である六式武装を始めとした|内蔵装備《ユーベルコード》は封じられているも同然だ。今の彼女が持ち得る武器となれば、肉切り包丁さながら無骨な刀であるファルシオン風サムライソードしかない。

『ピポポポ……イェーガー……』
「来ます!」
 そんなことなどお構いなしにと、空間の中心部で佇むように浮遊している|エヴォルグ初號機《オブリビオンマシン》は機械を狂わせる怪電波とキャバリアを侵食させるナノマシン細胞を放出させながら硬質化させた触腕を展開させた。勢いよく振り落とされ、または薙ぎ払おうと迫る巨木の幹のような腕から逃れるべく猟兵たちは四方へと散開する。間一髪と避けれたが、通常のキャバリアよりも巨大なるオブリビオンマシンの一撃によって彼らが侵入してきた入り口は潰されてしまう。
 なおも触腕は蛇のようにのたうちながら獲物である猟兵を執拗に追い詰めつつある。キャバリアに乗っていれば自らの制御下に敷き、事前にこのことを予知されていても機械文明の機器を封じるユーベルコードの怪電波によって火力を封じる。まさに蜘蛛が糸を張り巡らせて獲物を待つが如くの触腕で蹂躙する空間を、猟兵たちは只々反撃の機会を伺うしかなかったのである。

「うう……なんで私を執拗に追いかけて来るのデース!?」
「バルタン! こうなったら……キノ!」
「キノキノ、焼きマッシュルームはいかが?」
 ドーム状の空間をParasiteの怪電波が反響される形で増幅し、サイボーグであるバルタンの身体がより不調が来たしつつある。そのことを察知したのか、オブリビオンマシンはターゲットを彼女へと定めて四方八方から先端を硬質化させて鉤爪状にさせた触腕を振り乱す。そんな仲間の危機を見逃すことなど出来ない|姫武闘勇者《メディア》はキノに助力を求め、ふたりはユーベルコードを顕現させた証である焔の煌めきを放つ。

『ピギャアアアッ!?』
 メディアが突き出した拳からは敵味方を識別させる暗黒の炎『邪竜黒炎拳』が、くるくると回りながら舞を踊るキノは召喚した業火の渦『神火大嵐舞』が、メディアを捕らえんとばかりに迫る触腕を呑み込む。生体キャバリアであるが故、外皮を鎧のように硬質化させた触腕と言えども炎による攻撃は有効と見ての反撃だ。口無き口から耳をつんざく悲鳴を上げているオブリビオンマシンの様子が、彼女たちの考えが正しかったことを雄弁に物語っていた。

「バルタンさん、これをお聞きになって!」
 ようやく相手の攻撃が緩んだ中、手にしているソードハープで触腕を切り払っていたリィンティアはあることに気づいた。最初は違和感程度でしかなかったが、僅かながらの雑音が空間内を反響していたのだ。神に与えられた魔曲使いとしての音感によりこのことに気づいたリィンティアは、癒やしの調べを奏で上げながらエンドブレイカーの始祖たる『七勇者アウィン』を称える歌を紡ぎ出す。

「お、おおお! 身体が言うことを聞くようになったデース!!」
 先程までの気だるさは吹き飛んで元の調子に戻ったバルタンの姿を見るなり、彼女は確信した。自分が聞き取った雑音は、あのオブリビオンマシンが発信している怪電波が発しているノイズであると。もちろん電波はヒトの耳には聞こえないものであるのだが、メディアとキノが一矢報いた攻撃によって周波数帯が崩れて確かに耳へ聞こえる形の雑音が生じたのであろう。ならば相手がユーベルコード起因の電波を発しているのであれば自らの|アビリティ《ユーベルコード》である音の波動をもってして掻き消さんと試みたが、効果はてきめんであった。
 |悪しき未来《エンディング》を予知するエンドブレイカーとして、確かにバルタンへと襲いかかろうとした|確定された未来《エンディング》を打ち砕いて見せたのだ。

『ピポポポポ……ピポポポポ……イェ……ガァ……ッ!』
 しかし、相手は書架の王である『ブックドミネーター』を守護する精鋭たる近衛兵である『禁軍猟書家』だ。この程度の火力ではぐずぐずと炭化した触腕は、侵食細胞によって新たに再生されて元通りに復元されていくだけだ。

「くっ……ボクのネオンさえ使えれば、まるごと炎に包み込めるのに……!」
 悔しそうにギリっと歯を噛み締め、メディアはオブリビオンマシンを睨みつける。もしキャバリアが使えたとしたら、強大なる火力をもってしてこの悪魔のマシンを殲滅することは容易いはずだ。しかし、使ったら最後で為す術もなく自らの愛機は禁軍猟書家の手駒として主に牙を剥くのだ。形勢逆転に至らなかったことで。再び猟兵たちはじりじりと追い詰められていく……と、その時である。

 ──『|m'aider《メデ》』

 再びこの幻聴が猟兵たちの脳裏に囁かれたのだ。

「……この言葉の意味は分からないままだけど、もしかして『メーデー』と叫んでいた兵隊さんはこれで助かったのかな?」
「ナメコ? どういうことキノ?」
「……途中で助けたパイロットさん達が使っていた言葉と似ているように思うのですが、もしかして違う意味なのでしょうか? 同じ呪文でも発音が違えば異なる言霊が宿るように、それが身を護るおまじないになっていたとも考えられます」
「そう言えば、助けを叫んでいる人たちは何故か無事に助け出されてマシタネー」
 |Mayday《メーデー》と|m'aider《メデ》。片や夏の訪れを祝う日である|May Day《メイデー》にも、発音次第では成りうる。言葉を紡いで詠唱する呪文は発音が多少違うだけでも結果は大きく異なるとリィンティアは語ったが、もしかしたら彼らには異なる結果が訪れていたのかもしれない。

「キノキノ! もうすぐ腕が再生しちゃう!」
「一縷の望みを賭けてこの言葉に縋るしか道はないデース!」
「うん、そうだね。じゃあ、皆でタイミングを合わせて……」
「……あの言葉を叫ぶのですね?」
 猟兵たちの意見は一致した。すべての触腕が再生されようとする中、彼らは一同に思いを託して高らかに叫んだのである。


 ──『|m'aider《力を貸して》!』

 猟兵たちは言葉そのものに助けを求めるのでなく、助けを借りることを言葉に託して叫んだのだ。すると、不思議なことが起きた。猟兵と禁軍猟書家、両者を間にユーベルコードを発現させた時に生じる光によく似た閃光が迸ったのである。、

『オ、オオオ……ソレ、ハ……』
 猟兵たちには何が起きているかこの光の中で視界を遮られていて分からないが、確かにオブリビオンマシンは動揺の色を隠せていない言葉を発していた。そして程なく光が収まると、虚空から何かが姿を現して猟兵たちの元へと飛来する。

「これは……武器?」
 視力が戻ったメディアの目の間に、棒状の物体が浮かんでいる。それを手にすると確かなる重量が腕全体に伝わってくる。幻などではなく現実の証拠だ。そして不思議なことにそれを手にしていると、体の奥底から力が湧いていくる感触がまざまざと蘇ってくる。
 そう、自らが猟兵と覚醒を果たしたあの時の感覚が蘇りつつあったのだ。メディアは懐かしさを覚える中、ユーベルコードを発現しようと力を身体の内に込めると棒の先端から激しく黒炎が噴き出して刀身を形成させたのである。

「ツエタケ! 見て見て、キノのは先っぽの宝石がベニテングみたいに赤いの杖!」
「おお、これは! サムライソードとはまた別の趣があるファルシオンデース!」
「私のは……バイオリンを模したバックラーに弦を引く弓を模したレイピア……でしょうか?」
 助けを求めた猟兵たちに与えられた武具はどれも個性的であるが、それぞれが得意とする武器があてがわれたのだろうか?
 何はともあれ、ユーベルコードの高まりと共に力が漲ってくるのは確かだ。この力をもってすれば、たとえキャバリアに乗らずとも同様の力を発揮できるとの自信も心の奥底から湧いてくる。これが何であるかは不明であるが、確かに猟兵たちの力として助けに来た存在には違いない。

『イェ……ガァッ!!』
 無感情であったエヴォルグ初號機に焦燥の色が宿り、身体から礫状の物体を発射して猟兵たちへと向ける。キャバリア侵蝕ナノマシンで構成された内蔵弾だ。先程までに獲物を弄んで嬲るような動きであった触腕も動きが変わったことから、どうやら相手は本気となってこちらを殲滅しようとしているのか。

「キノ! バルくんどんどん焼いていくよ!!」
 だが、それらは新たな杖を手にしたキノによって増幅されたユーベルコード『神火大嵐舞』が炎の壁を形成させ、容赦なく灰燼に帰させていく。だが、より硬質化させた触腕が突破して猟兵を突き刺し、切り裂かんと襲いかかってくる!

「これなら……たァ!」
 メディアは脚に力を込めると高く跳躍し、迫る触腕に向けて炎の刃が迸るグレイブを疾走らせた。灼熱の刃によって硬質の外殻は為す術もなく溶断され、死角から不意を突く触腕が襲いかかろうとした。しかし、棒の反対側からもうひとつの炎の刃を展開させると、切り落とした触腕を足場として軌道を変え、二双の刃が展開する薙刀を振り回して容赦なく切り落としていく。

「竪琴の方が得意なのですが……しのごも言ってられませんよね」
 キノとメディアの防衛網を突破した触腕がリィンティアへと襲いかかるが、剣と竪琴が一体化したソードハープとは異なって剣と盾が分離したストリングス・レイピアとも言うべき武具をによって、突剣状の弓で切り払いつつ調べを奏でていく。そして、それと同時に仲間を蝕む電波を自らの|唄《ユーベルコード》で掻き消すべく、鼓舞すべく、『世界を繋ぐ歌』を歌い上げる。

「新たな力、ニューファルシオンソード! サムライソードとの二刀流乱れ撃ちで今までのお礼を倍返しデース!!」
 最後にリィンティアの助けを得て、身体の自由を取り戻したバルタンが二振りの曲刀を振りかざしての『|光芒一閃《剣からビーム》』を連続して放つ。これを受けたエヴォルグ初號機『Parasite』は為す術もなく切り裂かれ、体液を噴出させて苦痛に満ちた断末魔を上げたのだ。

『オオオ、イェーガー……。オマエタチ、ハ……ココカラ、逃……サナイ!』
 骸の海へと還りつつあった禁軍猟書家は最後の悪足掻きに出た。残った触腕を四周へと振り乱し、侵食細胞弾も乱射して遺跡の崩壊を招き始めたのだ!

「キノキノ! 大変、逃げなきゃ!」
「でも、出口はさっき壊されたし、どうすれば……」
 グリモアの転送ゲートを展開する緊急脱出を行うにも、この崩壊では間に合いそうもない。一同がどうするか悩んだ末、再びあの言葉を口にした。

『『『『|m'aider《助けて》!』』』』
 すると、突如として猟兵たちの視界が、空間が歪む。
 超時空の渦に飛び込んだ感覚が蘇る中で遺跡は崩壊し、遂にその存在はこの世界クロムキャバリアから消失したのであった。

「……ん、ここは……外、デスカ?」
 猟兵たちが気づけば、地下深い遺跡の古代プラントに居たはずであったが、眼前には澄み切った青い空が広がっている。

「キノ……夢だったキノ?」
「……ううん、夢や幻じゃない」
「ええ。だって……この武具はあるのですもの」
 禁軍猟書家との決戦は夢でなかったことは、『m'aider』の言葉と共に現れた不思議な武具が確かに物語っている。その正体は果たして何なのか。それはまだ誰にも分からないことだ。
 しかし、新たな力として猟兵の力となったのは確かな事実である。猟兵たちはこれらを手にしながらグリモアベースへの帰還の途につき、クロムキャバリアを脅かそうとした禁軍猟書家との決戦から生還を果たしたのであったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月10日


挿絵イラスト