クロト・ラトキエ
■主題
『全てお任せ』です。
シリアス、コメディ、バトル、日常、MSさんのPCさんとの交流……
装備の手入れでも料理中でも現代パロでも色恋沙汰でもねこ話でも夢オチでも、
PLの引き出しではこれ以上思いつかない……っ、つまり何でも御戯れです!
期間一杯掛かっても大丈夫で。また、文字数の寡多もお気になさらずご随意に。
物語で動かせそうでしたら……良ければどうぞよろしくお願いいたします!
武器の手入れでもしようかとも、思ったりはしたのだけれど。
少々ひとりの時間を持て余していたクロト・ラトキエ(TTX・f00472)がふと足を向けたのは、グリモアベース。
そして1件の依頼を受け、UDCアースの世界へと赴いたまでは、良かったのだが。
(「……むしろ、もっと時間を持て余すことになるなんて」)
何をすればいいか、さらに悩む事態に陥ってしまっていたのだった。
受けた依頼は、オブリビオンが絡んでいるかもしれない案件。
だがそれは「起こるかもしれない」というもので。
念の為、警戒に当たって欲しいというものであった。
そう……何か起こるまでは、各人自由に過ごしておいて欲しいという類の。
というわけで、UDCアースの街をとりあえず歩いてみているクロトであったが。
何せ現場は、いわゆる若者の街。
(「ひとりでここで、どう過ごせと……」)
何をしてもひとりではどうしても浮いてしまいそうで、ますます悩ましい。
そう密かに思いつつも、とりあえずパトロールを兼ねて、賑やかな街を歩いていたクロトであるが。
その足がふと、ぴたりと一瞬止まる。
雑踏の中――知っている顔を見つけたから。
そして相手も自分のことに気付いたようで、いつもの如く微笑みを湛えながらも。
「このような場所で会うとは奇遇だな、クロト」
そう気さくに声を掛けてくる。
トッピング盛り盛りの、いかにも甘そうなクレープを手にしながら。
そんな人の目などおかまいなしに、この街をエンジョイしている様子の相手に。
「こんにちは、清史郎さん。清史郎さんも、同じ案件で此処へ……?」
クロトがそう訊ねてみれば。
こくりと彼――筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は、頷きつつも訊き返す。
「ああ。クロトもこの街の警戒に?」
「ええ、でもどう過ごそうかと……」
そして、クロトのその声を聞いた清史郎は。
こんな提案を持ちかけるのだった。
「では、此処で会ったのも何かの縁、共に過ごすのはどうだろうか」
そんな思わぬ誘いの声に、思わずぱちりと瞳を瞬かせるも。
「えーっと……ご一緒しても?」
「クロトが良ければ、俺は喜んで」
ではご厚意に甘えても……なんて。
にこにこと笑む彼の誘いに、乗ってみることに。
何をすればいいかと迷っていたこともあるし。
どのような時間になるのかが全く想像がつかなくて、ちょっぴり興味をそそられたから。
いや、頻繁に彼の顔は見ている気がするし、会話は幾度か交わしたことはあるが。
でもこうやって改めて連れ立つなんてことは初めてで。
けれどじっと見遣る相手はといえば、全く普段通りの様子である。
そんなつい相手を観察してしまうようなクロトの視線も気にすることなく。
「クロトは、どこか行きたいところなどあるだろうか?」
「あ、いえ……特には。むしろ、時間を持て余していたところで」
「そうか。ならば、行きたい場所がいくつかあるので、付き合って貰ってもいいだろうか」
行きたい場所。しかも、いくつか。
ますますこれから過ごす時間がどうなるのか、想像はつかないけれど。
「はい、お供させていただけますと有難く」
そう頷いて返せば、では行こうか、と笑みつつも歩み出す清史郎。
というわけで――旅は道連れ?
成り行きで共に過ごすことになったふたりの、暇潰しのひとときが始まるのだった。
そしてまず最初に赴いた場所。
その扉を開ければ、瞳に飛び込んできたのは。
「猫……?」
猫である。しかも、沢山の。
そう――清史郎が行きたい場所、それは甘味ともふもふが同時に楽しめる、猫カフェであった。
もふもふが沢山いる場所にはこれまでも赴いたことはある。
何せ、いつも共に居る相手が、もふもふが大好きなのだから。
けれど改めて、男二人で猫カフェに入店するとなると、何だかちょっぴり気が引ける……ものであると思うのだが。
今日の連れである清史郎は、臆することなく店内へと足を運んで。
「ふふ、良いもふもふだな」
早速、猫をもふもふしている。
しかも何だか、にゃーと会話をしている様子ですらある。
いや、自分がもふもふが好きか嫌いかとか、それ以前に。
「…………」
猫の方が自分に寄ってこないということは、よーく知っている。
それから、おっと甘味を注文しなければだな、なんて。
猫にモテモテの雅な笑顔を見ながらも、ふとクロトは思い返してみつつ気が付く。
いつもこういう時、専ら胡座をかいて見ているのは、可愛いもふもふたちではなくて。
もふもふの楽園を心から楽しむ、お相手の姿だということに。
なのでこの機会に、じいっともふもふを見つめてみるも。
ぱちりと目が合えば……ささっと何故かびくびくと逃げていく猫。うん、知ってた。
なのでとりあえず、何か頼もう、と清史郎に渡されたスイーツメニューを眺めてみれば。
「にゃんにゃんぱふぇに、ねこねこパンケーキ……にくきゅうまりとっ、と……マリトッツォ?」
成人男性が頼んでも果たして許されるのかという、ある意味ギルティなメニューがずらり。
そして猫に埋もれかけている清史郎をちらりと見つつ。
「……清史郎さんは、どれを?」
「そうだな、とりあえず一通りいただこうかと」
「え、一通り!?」
それからハッとクロトは思い返す。
以前、まりとっとことマリトッツォを7個買っていた彼の姿を。
そうこうしているうちに、猫耳を付けた店員が注文を取りにきてしまったから。
とりあえず一番罪深くなさそうな気がする、三毛猫ちゃんまんじゅうを頼んでみたのだけれど。
「え、っと……」
食べることを躊躇してしまいそうなキュートなまんじゅうの猫さんと、思わずお見合いを。
そんな様子を、にゃんにゃんぱふぇを雅に食しつつも。
「ふふ、この店のねこさんスイーツ達は、持ち帰りもできるようだな」
にこにこと清史郎が言えば。
「持ち帰り……」
もう1匹何気に追加して、そっと包んでもらうことに。
それから、甘味を楽しみながらも巧みに猫をもふもふしては埋もれている彼に改めて目を向けて。
「いやはや、それにしても、おモテになりますね。何かコツでも……?」
「目を見つめ、心を通わせて、猫さんに寄り添いつつ声を掛けてみる……とかだろうか」
そう返ってきたアドバイス通り、実践してみようと。
近くにいた目付きの悪い黒猫さんの目を見つめてみるクロト。
そして最初こそやはり、びくっと震えた黒猫さんだったけれど。
おいで、と試しにそっと紡いで手を差し出してみれば。
――じりじりじりっ、じわーり……ぺちんっ。
「……!」
めちゃめちゃ警戒されまくりではあったものの、差し出した手に感じるもふもふ感触。
今まで全く寄り付かれなかったことを思えば、猫パンチはかなりの前進である。
それから、そろりとその子を抱き上げてみれば。
何だか嬉しそうな感じの表情ではないものの、逃げもしなくて。
「これは確かに……良いもふもふ、で」
もふもふが大好きな、いつも隣にいる誰かさんの気持ちが、分かった気がしたのだった。
そして猫カフェを堪能し終えて。
次に清史郎が向かったのは、本屋であった。
本と彼といえば、クロトに芽生えるのはちょっとした茶目っ気。
「櫻居・四狼の新作はいつ読めるのでしょうか、センセ」
なぁんて、紡いでみれば。
お目当ての本をスッと手にした清史郎は、笑んで返す。
「ふふ、櫻居・四狼の新作が『もふもふさんの大冒険』では、ファンが満足しないのでは?」
「もふもふさん大冒険……いえ、ある意味、読んでみたいかも?」
そんな彼の手を見れば『もふもふ大百科』なる分厚い一冊が。
清史郎はその視線に気づいて。
「すまほで見たのだが、もふもふ好きには堪らない一冊だと絶賛されていたのでな。今なら、もふもふカピバラさんくっしょんが付録でついているそうだ」
「もふもふ好きには堪らない一冊」
そう呟きを落としたクロトの脳裏に思い浮かんだ光景は。
もふもふ大好きさんが、もふもふの可愛さに悶えながら、もふもふカピバラさんに顔を埋める姿。
「…………」
きっと喜ぶだろうって、そう思ったから。
クロトも一冊、付録付き『もふもふ大百科』を購入しにレジへと向かうのだった。
それからも、清史郎はマイペースで気侭で、何よりも何処へ行っても動じない。
女子高生が沢山いるような、ゆるかわキャラ満載のゆめいろ溢れた雑貨屋さんでも。
流行りの映えスイーツが購入できるようなポップな店でも。
流石に丁重にお断りしたが、コスプレができる最新プリ機専門店でも。
逆に敷居の高そうなVIP感漂う一流のオーダーメイドショップでも。
とにかく気になった、目についた場所へとふらりと足を運んでは楽しそうな様子である。
最初こそ気後れしていたが、そんなある意味堂々とした清史郎と一緒だと、何だかちょっと慣れてきて。
次はどこへ行くのだろうかと、並んで歩けば……次に入店したのは、何の変哲もない落ち着いた印象の会員制カフェであった。
ここでまた甘い物でも食べるのだろうかと、そう思ったクロトであったが。
ふと何かに気付いて、連れの彼を見る。
「……清史郎さん、ここは」
そんなクロトに、ふふ、と清史郎は笑みだけを返して。
彼から渡されたメニューを見れば、あぁ、とクロトは納得してしまう。
開いたメニューに並ぶ、豊富な品揃えの武器のラインナップに。
この店にいる人達の動きが、いわゆる「只者ではない」ものであることに気付いたから。
ここは会員制カフェを装った、裏武器屋であった。
そんな中、まるでスイーツを選ぶかのように特に変わった様子もなく。
「クロトは、気になったものや好みのものなどあるだろうか?」
清史郎にそう聞かれれば。
ふとメニューに目を落としてみるクロト。
「特に使えれば、それでいいので。拘りはそうないのですが……この刀は清史郎さんに似合いそうかな、なぁんて」
「ふむ、確かに。美しくも切れ味が良さそうな刀だな」
「暗器の品揃えも、なかなかのもので」
「クロトにはこちらの、秘毒が仕込まれたこの暗器などどうだろうか」
「そういう類のものは、間に合っていますが……でもいやはや、これはこれでまた」
何だかんだ、武器談議に花を咲かせれば。
ふたりは刹那、同時にその顔を上げる。
外から聞こえる悲鳴やただならぬモノの気配を感じて。
まずはざっと、素早く周囲を見回して状況の把握につとめてみれば。
骸の海から現れた相手は言ってしまえば有象無象、大した敵ではないのだけれど。
数が多く、当然一般人にとっては脅威でしかない存在。
そしてそれを警戒し、見つければ排除する……それが猟兵としての『仕事』である。
だがクロトは、見つめる瞳を一瞬見開く。
桜花弁の嵐が吹き荒れた瞬間、敵の首を飛ばした閃きに。
いや、その刃の軌道ではなくて。
「ふふ、試し斬りには丁度良いかもな」
先程の武器屋で手に入れた刀を早速抜き放った、その男の表情。
宿る微笑みは変わらないが、心躍るように楽しそうな顔をしていて。
クロトはその顔を見ながら、改めて思う。
戦場で敵を殺す、その時に湧く感情は、自分の場合はむしろ何もない。
ただ生きるために、勝つために、報酬を得るために、相手を殺す。
それは楽しいとか楽しくないではなく、そうする必要があるからにすぎない。
今だってそれは同じではあるのだけれど。
楽しそうに敵の首を雅に刎ねる彼が紡ぐのは、誘い。
「どちらが多くの敵を倒すか、競争でもしてみるか?」
そして今日は、彼のお供をすると告げたのだから。
絞り断つその斬撃は――拾式。
張り巡らせた糸をもって、的確に相手の急所を狙って。
彼が刎ねたよりも多くの敵を、クロトは多方向から刻んでみせる。
そして拡げた糸と桜嵐を前にして……敵が全て駆逐されるまで、そう時間がかからなかったことは言うまででもないだろう。
「今日はとても楽しかった、どうも有難う」
「いえ、此方こそ有難うございました、清史郎さん」
競争の結果は結局、どれだけ敵をそれぞれ倒したか分からなくなって、勝負はつかなかったのだけれど。
無事に敵を殲滅し任務を成せば、このひとときも終わりを告げて。
ではまた、と去っていくその姿を見送りつつも。
クロトはふと、彼とは逆方向に歩き出す。
あんなにどう過ごそうかと迷い、持て余していた時間であったけれど。
帰るその前に――やっぱり、買っておこうと思ったから。
猫パンチしてきた子に似た黒猫さんまんじゅうとにくきゅうマリトッツォも、追加のお土産にと。
成功
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