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詩の終わる時

#スペースシップワールド #ブルーアルカディア #戦後 #プリンセス・エメラルド

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●継承を望む者
「全く、猟兵たちには恐れ入ります。私より早く|外宇宙《スペースオペラワールド》へたどり着いていたなど……」
 窓に広がる星々の大海を見て呟く|緑柱石《エメラルド》の体を持つ女。その姿は宝石としても、人としても美しいが、その心は宇宙の闇すらも霞むほどの漆黒。
「ですが、こちらもただ手をこまねいていたわけではありません。三年の時はソング・オブ・オーンブルの完成、そして|帝国継承軍《サクセション・フォース》の編成に十分すぎる程」
 彼女が搭乗する旗艦の周りには無数の宇宙戦艦と、それすらも玩具に見える程の巨大な怪物の群れ。
「無論分かっています。この軍勢を闇雲にぶつけても、彼らに抗し得ることはないでしょう。選ばれし者の前に有象無象の|兵隊《トルーパー》は何の力にもならない」
 かつては己自身さえ一度敗れ去った相手。それを相手取るのに万の軍勢をもってしても不足であることは、彼女には痛いほど分かっていた。
 それ故、彼女は自らの旗艦である船に乗せた『精鋭』にその任を委ねる。
 女は部屋の隅へ行き、そこにうずくまっていたパイロットスーツ姿の少女の頭を撫でた。だがその少女は目を向いて歯を食いしばり、体を震わせるばかりだ。
「暗黒宙域から汲み上げた貴女を|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》に列したはこの時のため。あなたに万の船と獣を授けましょう。その溢れ出るサイキックエナジーで彼らを支配するのです。さあ、『戦いなさい』」
 その命が下された途端、震えていた少女はすっくと立ちあがり、迷いない足取りでカタパルトへと歩いていった。
 女がモニターを切り替えると、そこには空のカタパルトに突如として犬型のロボットが現れ、それに少女が搭乗していく姿が映し出される。
「銀河皇帝プリンセス・エメラルドが命じます。アマレット・シシリアンキッス、出撃なさい。全軍、アマレット機の援護に回れ」
 威厳すら感じさせる声に押されるように、桃色の機獣は宇宙へ撃ちだされていった。
 そしてそれに追従し進みゆく無数の船と異形の獣を見送った後、一人残った皇帝は静かに笑む。
「さて、あの子が猟兵を追い払えればそれでよし。もしだめだったら……」
 旗艦の後ろにある蒼き|惑星《ほし》……否、それと見紛うほどの大きさの『何か』が、餌を待つように口を開けていた。

●断絶を望む者
「皆様、ついにプリンセス・エメラルドとの決戦の時にござる」
 シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)が真剣な表情で言った。
 プリンセス・エメラルド、スペースシップワールドのオウガ・フォーミュラにして迷宮災厄戦を生き残った四人の猟書家のうちの一人。骸の月を世界に齎した元凶とも言える者の一人と、ついに決着をつける時が来たのだ。
「彼女は配下を集め|帝国継承軍《サクセション・フォース》なる軍勢を組織、それを持ってスペースオペラワールドへ攻め入ろうと目論んでおります。この軍には様々な理由で帝国に従う者の他、なんとクエーサービーストさえも組み込まれております」
 銀河帝国なき後の外宇宙の脅威であったクエーサービースト。それさえも自らの手駒としたその軍は、スペースオペラワールドを制圧するに十分すぎる力を備えていると言えるだろう。
「彼女は自身の進行に合わせ猟兵が来ることも想定しており、そのために|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》なる精鋭を先行させています。騎士の名はアマレット・シシリアンキッス。彼女は一度暗黒宙域で猟書家後継としての出現が確認されており、その縁で掬いあげられ配下にされたようですな」
 偶然とはいえ帝国継承軍としての力を得た者。プリンセス・エメラルドにとっては見つけ出すのも容易かったのだろう。
「彼女は膨大なサイキックエナジーを持ち、それを使い作った犬型のロボットに乗って向かってきます。それに加え彼女を援護すべく、「大量のオブリビオン艦隊」と「クエーサービーストの群れ」も帯同しております。数とサイキックによる敵捕捉という圧倒的な優位から、彼女は先制攻撃を放ち、さらに配下たちの猛攻も被せてきます。これら全てを打ち払い、どうにかアマレットを撃墜してくだされ」
 一体ずつの力量は恐れる程ではないが、配下の数はとにかく多い。それを捌きつつボス級であるアマレットを倒さねばならない、初戦から厳しい戦いをを強いられることとなるだろう。
「アマレットが倒れれば、プリンセス・エメラルドの旗艦『ソング・オブ・オーンブル』へ接近することができます。ですが、その前に立ちふさがるのは『封藍竜サフィアリス』なる竜……ブルーアルカディアの魔獣でござる」
 その言葉に場がどよめく。確かに猟書家は世界の垣根を平気でまたぐ存在だ。だがまるで縁なさそうな世界のものまでいつの間にか飼いならしていたとは。猟書家に時を与えるということの深刻さが改めて浮き彫りとなった形か。
「こやつはクエーサービーストを餌として与えられており、小惑星に匹敵する大きさにまで成長しております。ですが時がなく、惑星ロボの用意が間に合いませなんだ。ですので皆様には、身一つでこの超・超巨大敵に立ち向かっていただきたく。相手は氷のブレスや物理攻撃の他、食らったクエーサービーストの能力を振るってきます。そのサイズ故いずれの必殺級。どうか油断なさらぬよう」
 相手がこのサイズでは、生身だろうとキャバリアやガレオンだろうと誤差の範囲だろう。その圧倒的質量差に、己が持ちうる手段のみで立ち向かわねばならないということだ。
「そしてこの巨大竜を退ければ、ソング・オブ・オーンブルへ突入、いよいよプリンセス・エメラルドとの直接対決になります。彼女の能力は戦艦や乗機の召喚に自信や武器の透明化……迷宮災厄戦と基本は変わりませぬ。もちろん、どの力もこちらに先んじて使ってきます。さらにそれに加え、彼女は無尽蔵に継承軍の兵を召喚、自身の援護につけてきます。おおよそ無視できる数ではござりませぬ故、以前と同じ手は通じぬと思った方が良いでしょう」
 兵たちはプリンセスのためなら躊躇なく命を捨てる帝国の盲信者。そしてもちろんプリンセス・エメラルドの実力も絶対先制を行えるレベルだ。質と量、どちらへの対策も万全にせねば待っているのは宇宙の塵になる末路だろう。
「彼奴が迷宮災厄戦より逃げおおせて足掛け三年……この時を待っていたのは果たしてどちらでござろうか。どうか皆様、この宇宙をお頼みします……!」
 シャイニーは深々と頭を下げ、猟兵を決戦の|宇宙《そら》へ送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。とうとう生き残り組の一人との戦いです。
 今回はボス戦三連戦となります。

 第一章では『アマレット・シシリアンキッス』とのボス戦。彼女は先制でUCを放ってくる他、周囲には大量の戦艦とクエーサービーストがその援護についています。戦艦はミサイルやレーザーなど搭載兵器による攻撃、クエーサービーストは タグ#オペレーション・ランページでの集団戦のような攻撃をしてきます。

 第二章では『封藍竜サフィアリス』とのボス戦。そのサイズは小惑星クラスまで巨大化しているため、並の攻撃では外皮を削るのもままならないでしょう。宇宙ロボなどの貸し出しはありませんので、自前の手段のみでこの超サイズの相手をなんとかしてください。一部UCで使うオブリビオン能力は、前章同様の集団型クエーサービーストがベースとなります。また、三連戦の内ここだけは先制攻撃はありません。

 第三章では『プリンセス・エメラルド』との決戦。やはり彼女も確定で先制攻撃してきます。彼女が使ってくる技は迷宮災厄戦時と同じですが、それに加え無尽蔵に帝国継承軍の兵士が援護に現れます。兵士の能力はブラスターでの射撃や光剣での斬撃など、宇宙帝国一般兵がやりそうなことです。強くはないですが無限に湧き続けますし、肉壁や捨て駒になることも厭いません。WIZ技の対象にもとられます。これらを捌きつつ、先制を躱した上でプリンセス・エメラルドを倒してください。戦場は旗艦『ソング・オブ・オーンブル』内となりますが、極めて広いのでPOW技、SPD技も問題なく使ってきます。

 どの章も厄介なギミックがあり、かつ難易度も『やや難』ですのでかなり厳しい戦いの連続になるでしょう。ですが計20回プリンセス・エメラルドを撃破することで完全決着となります。
 プリンセス・エメラルドさえ倒せればこの場にいる帝国継承軍は瓦解し、制御を失ったクエーサービーストと共倒れになり全滅しますので残党狩りの必要はありません。

 それでは、伝承を終わらせるプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『アマレット・シシリアンキッス』

POW   :    サイキック物質化による機体構築
自身の【心身への強烈な負担と苦痛】を代償に、【四足キャバリアに似たピンクの犬型ロボット】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【自身も搭乗し超能力で操作、サイキック砲等】で戦う。
SPD   :    精神直結遠隔兵器操作
召喚したレベル×1体の【精神力を削りだして作った小型の浮遊円盤】に【さらに超能力をつぎ込み、エネルギーの刃】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
WIZ   :    搭乗者保護機能解除及び戦場制圧フィールド展開
自身の【精神負荷を代償に呼び出し乗った犬型ロボ】から【極限まで増幅されたサイキックエナジー】を放出し、戦場内全ての【生物無生物問わず自身に敵対行動を取る存在】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。

イラスト:塒ひぷの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミルケン・ピーチです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 宙域に広く展開する無数の船。それは一隻ずつがかなりの大きさを持ち、その船体に相応しい砲門を備えたまさに宇宙戦艦といった様相。それが数え切れぬほどの群れを成して星の大海を進む姿は、まさに宇宙戦争という言葉を絵にしたが如しだ。
 そしてそれさえもが霞む異形の群れ。あるいは硝子の半球から無数の触手を生やした海月のようなもの。あるいは内蔵の繭から肉の羽を生やした羽化しそこないの蛾。命を拒む世界のはずの宇宙空間をこそ生命の源とし進化を遂げてきたであろうそれは、宇宙生物、宇宙怪獣という呼称があまりにも似合い過ぎる。
 宇宙の存在を知り、しかし重力の軛からは逃れられぬ世界の者が想像し創造した、古典の宇宙世界に登場するような存在が今まさに現実として宇宙空間を進軍していた。
 そしてその中心にいるのは、桃色をした犬型の機械。その中では、桃色の髪をした少女が頭を抱えていた。
「たたかって……みんな、たたかって……」
 目を見開いて呟く少女。誰にも聞こえぬはずのその声は、しかしその抱えた頭から迸る膨大な念力によって宙域全体に伝わり、全ての戦艦、全ての怪物に彼女の手足となって動くことを命じた。
 怪物は巨躯を並べて異形の部位を輝かせ、戦艦は砲門を一方向に向けその隙間に収まる。おおよそ意思の疎通など取れなかろう者同士が、サイキックエナジーという少女が振りまいた神秘の力によって、統制の取れた無敵の軍隊と編み上げられた。
 ロボットに乗った幼子が溢れる異能で厳めしき軍を統べる。それは宇宙を舞台にしたロボットアニメではある種ありふれた光景だ。
 だがこれは映画でも、小説でも、アニメでもない。人の住む宇宙に侵攻し、犠牲を山と築いた上でそこを支配せんとする現実の侵略戦争。そこにはロマンも、スリルも、エクスタシーもない。あるのはただ、王が指さしたものを殺しに行く軍隊がいるのみだ。
「戦って……壊して……やっつけて……!」
 戦うことしか知らぬ少女は、王が殺せと指さした者にその膨大な|苦痛の根源《サイキックエナジー》を向ける。そしてその為の駒たる艦隊と怪物は、将が殺せと指さした者に砲と異能を向けた。
 猟兵よ、これは戦争だ。殺すべく向けられた大軍とそれを統べる|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》を、それを上回る力を持って撃滅せよ!
死絡・送
pow
アドリブOK共闘絡みOK

宇宙なので、スーパーロボットのジガンソーレに乗って出撃。
仲間達と助け合い突破を目指す。
気配感知とオーラ防御を組み合わせて、機体にバリヤーを展開してまずは
敵の先制を凌ぐ。
「来やがったな、こいつを喰らえ!」
と遠距離では、必殺ビームのルーチェ・デル・ソーレで範囲攻撃や
貫通箍撃を行う。
接近戦ではグラップルで機体の手足を武器に格闘する。
仲間がいてピンチなら「やらせねえよ!」
と庇いに行く。
「光子魚雷を喰らいな!」
とタイミングを見てユーベルコードを使用する。


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
相変わらず苦しまれているのですねぇ。

先制に対し『FIS』を使用し『艦隊』の控える内側に転移しますぅ。
アマレットさんには戦艦の機体を盾に、クエーサービーストも巨大さ故攻撃には味方を巻込むことになる為、指揮系統から或る程度抑えられるでしょう。
艦隊からの砲火は『FLS』の空間歪曲障壁による偏向と『FMS』のバリア、『FES』『FPS』の結界で防ぎますねぇ。

そして【皛翼褧】を発動し『波動』を纏えば、負傷を癒した上で『敵対者の強さ』に応じた強化が可能、この環境なら凄まじい強化量となりますので、高速飛行でアマレットさんに接近し、『F●S』各種で周囲諸共の[範囲攻撃]を仕掛けますぅ。



 広大なる宇宙空間。そこを進軍するのは厳めしい無数の戦艦と、それすらも覆い尽くすほどの偉業の群れ。それに一つの光が立ち向かった。
「ジガンソーレ、出撃!」
 それは死絡・送(ノーブルバット・f00528)の駆るスーパーロボット、ジガンソーレ。その姿が象る太陽は地球であれば生命を育む万能の光だが、広大な宇宙の世界においては数多あるただの恒星の一つ、星屑に過ぎない。無数の軍勢の前では、その光は余りにも頼りなくすら見えた。
 その巨大な軍勢の中心、そこには周囲の存在に比べれば余りに小さな、桃色の一つの光が。
「うぅ……うぅぅぅ……!」
 それは一機の犬の形をしたロボット。その中では、パイロットスーツを着た幼い少女が頭を抱えて唸っていた。涙と汗を垂らし苦しむほどに、その根源である脳からはサイキックエナジーが溢れ出す。それは周囲の宇宙一帯に広がり、無機質な、あるいは異様な外見の軍勢を訓練され切った軍隊のように精密に支配し動かしていた。
「相変わらず苦しまれているのですねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は直接姿の見えぬその少女、アマレット・シシリアンキッスを思い出し、そう呟いた。かつて別の暗黒宙域でも苦痛と引き換えに戦艦を組み上げていた彼女。今、その何百倍もの質量の軍団を支配するまで広げた力は、どれほどの苦痛を彼女に齎していることか。
「みんな……行って……!」
 その苦痛に乗せられた、僅かな命令。それを実行すべく、巨大な軍団は一斉に進行を開始した。
「来るか!」
 その大量の軍勢を、ジガンソーレが全身で受け止める。オーラを張りだし、どこから来るかを察知し、鋼の体で怪物の猛攻を受け止めた。
 無数の砲弾、太い触手、およそ生物の器官とは思えないドリルが次々とその機体に殺到し、その身をすり潰さんとする。歴戦の猟兵の愛機、いかに帝国継承軍軍艦やクエーサービーストとはいえ一撃でその装甲を穿つことは出来ないが、それを絶え間なく押し付けられ続ければその場から動くことはままならない。
「い……けぇぇぇぇっ……!!」
 中央部にいる機体の中で、アマレットが別の超能力を搾りだす。それは犬の口から砲弾のように撃ちだされ、耐えるジガンソーレを襲った。
 一発で迫りくる軍勢全てとも比肩するほどの威力に、流石のジガンソーレも揺らぐ。
 その鋼の攻防に紛れ、るこるは急ぎ水晶柱『FIS』を軍勢の間に差し込み、その猛攻の後ろ側への移動を図った。
 それを使い瞬間移動した先では、より近くなった場所で桃色の機械犬が口を開けている。その口の中から、再度超能力の砲弾が吐き出された。
 それは互いの間にある戦艦を破壊しながらるこるへと迫る。攻撃に味方を巻き込むのを躊躇しないのは、自身もまた必要があればそうされることを知っている故か。だがそのおかげかるこるに着弾する際は威力は多少なりとも減衰されており、無事だった戦艦の砲撃諸共各種防御用兵装によってその一撃をるこるは何とか抑え込んだ。
「こっち……きて……!」
 アマレットの命令を受け、クエーサービーストの一部が方向を変えるこるの方へ迫る。だが、その数と大きさに対しては人間サイズの相手はあまりにも小さすぎ、互いが邪魔になって接近に手間取っている。
「こっちを見ろ!」
 自分にかかる相手が減った、その一瞬の隙を突き、ジガンソーレが必殺ビームの『ルーチェ・デル・ソーレ』を広範囲に放つ。離れた者のみならず自分にかかる者、順番待ち状態になっていたものまで巻き込んだそれは無視できぬ障害としてジガンソーレの存在を敵軍にアピールし、そちらへの対処を促した。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、その標たる羽衣を此処に」
 その隙にるこるが【豊乳女神の加護・皛翼褧】を発動、高速飛行でアマレットへの突進をかけた。
「みんな……あれを、とめて……!」
 アマレットのテレパシーによる指示を受け、戦艦とクエーサービーストはなおもジガンソーレを捨て置きるこるの対処へと回った。それと同時に張られた念動力の壁が突進するるこるを押しとどめ、潰そうとする。
「やらせねえよ!」
 それを見て、彼女の活路を開かんとジガンソーレが目の前の戦艦を殴り飛ばし、クエーサービーストを押しのけ、強引にそこへ割り込もうとした。
 パワー型のスーパーロボットではそこまでのスピードは出ない。その代わりにクエーサービーストの巨体を足場代わりに蹴り、その勢いで邪魔しようとする戦艦を跳ね飛ばし、なんとかるこるとアマレットが視界に捕らえられるところまで機体を推し進めた。
「光子魚雷を喰らいな!」
 そのまま【光子魚雷一万発発射!!】を放ち、周囲を取り巻く戦艦、そしてクエーサービーストを一気になぎ払う。宇宙を照らす眩い光が晴れた後、そこにあるのは桃色の小さな機械獣と、それに向かい突進する戦艦サイズに膨れた巨大な乳房。
「潰れて……!」
 サイキックの奔流がその乳房……るこるを捕らえ、押し潰そうとする。それは肉をかき回し皮膚を裂くが、それを傷つく端から癒しながらるこるはアマレットへと猛進した。
 攻撃用兵装を自分より先に差し向け、僅かなりとでも機体を削る。そしてその制御と修復に力を僅かに裂こうとした瞬間に、るこるの巨体が一拍遅れてアマレット機へと激突した。
「うお……え、ぇぇ……!!」
 激しくひしゃげ、宇宙空間に吹き飛ばされる機体。外から見る手段はないが、その中でアマレットは舌を突き出し嗚咽し、その愛らしい顔面から様々な体液を垂れ流しにしていた。
 同時にジガンソーレがなおも体を張って抑え込もうとしていた船団とクエーサービーストの動きが、目に見えて鈍くなる。
「どうしたんだ?」
「今度こそ、お休みになれればいいのですが……」
 彼らを操作していたアマレットの超能力が一時的に途絶えたのだろう。それを察したるこるは、その苦痛の元がこれ以上湧き上がることがないようにと思うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

田中・香織
敵の先制攻撃はアームドフォートの迎撃システムに迎撃させて対処するわ。
(自動射撃+制圧射撃で近代兵器の力をみせてあげるわ)
フライトモードで飛行しながら反撃し、スピードを利用して敵を撹乱させて同士討ちさせたりするなど、敵の数を逆に利用するわ。
飛行しながらアームドフォートの大砲で砲撃するなど、持ち前の火力をフルに活かして戦うわ。(砲撃+一斉射撃+範囲攻撃でまとめて面倒見るわね)



 吹き飛ばされた犬型ロボットが体勢を立て直すと同時に、大量の軍団も統制を取り戻し動き始める。再び動き出した大軍勢を、田中・香織(ヒーローに憧れた人形・f14804)がアームドフォートを構えて迎え撃った。
「近代兵器の力をみせてあげるわ」
 そう言って香織がすることは、アームドフォートのスイッチを入れる、ただそれだけ。たったそれだけの動作で、宇宙技術の粋を集めた破壊兵器は状況を読み取って動き出し、迫りくる軍団に対して自動的に反撃を開始した。
 視界を埋め尽くしなお余りあるその超軍勢を、搭載された兵装を広げ最も近い敵から押し返していく。戦艦の砲撃を感知しては迎撃し、クエーサービーストの破壊振動、外殻を纏っての突進もその動きを見せ始めた者から射撃し牽制する。戦いに人の力はいらない。ただ目的さえ命じれば、機械が全てを判断し倒すべき敵を殲滅してくれるのだ。
「うぅぅぅ……あぁぁぁぁっ……!!」
 膠着状態の軍団の後ろで、アマレットがサイキックエナジーを乗機につぎ込んだ。それは自身のサイキックで組み上げた機体の中で増幅され、その口に当たる部分から巨大な砲のように放たれる。
「おっと、じゃあこっちで」
 これは軍勢と一緒に対処するには強力すぎる。そう判断した兵器は自動射撃システム『セントリーガンシステム』を起動し、そちらでの迎撃でサイキック砲を迎え撃った。
 アームドフォートの一機構でありながらそれだけで一つの装備とされるその火器が、サイキックの塊の押し合う。
「うぅぅぅ……い……けぇ……!!」
 一瞬の拮抗の後、アマレットが自身の頭に激痛を走らせながら超能力をそこにつぎ込みその威力を増幅、それはセントリーガンシステムを押し切り、香織の体を弾き飛ばした。
「うわぁっ!?」
 アームドフォートごと吹き飛ばされ、宇宙を舞う香織。その体を叩き潰さんと、自由になった軍勢が一機に迫り来た。
 砲が、触手が、異形の機構が、香織をすり潰す。その瞬間に。
「……ついてこられるかしら?」
 香織は【フライトモード】に変形、迫りくる軍勢の中に一気に飛び込んだ。その軍勢の中を超高速で、しかし精密に飛び回ることで敵の狙いを付けさせない。
 近づいてきた香織に向けて戦艦が砲を放つが、放った瞬間|的《香織》はもうそこには無く、後ろのクエーサービーストに着弾しその体に風穴を開ける。また同じように海月のようなクエーサービーストが巨大な触手を波打たせ締め上げようとするが、その触手に絡まるのは逃げ遅れた戦艦ばかり。
「まとめて面倒見るわね」
 攪乱させ、同士討ちを誘う動きは自動で行っているものではない。相手の数と位置を把握し、香織自身がその場で考え動いているからのもの。同士討ちに巻き込まれないような位置にいるものには自らアームドフォートを動かし砲撃し、香織は高速でアマレットへの活路を開いていく。
「こないで……!」
 再度、苦痛まみれの超能力を搾りだしそれを破壊の力に変えるアマレット。それに怖じることなく香織は一気にそこへ飛んでいく。これもまた何かに任せてやっているのではない。相手を倒すという、明確な自分の意思。
「纏めて持ってきたから、受け取って」
 戦艦やクエーサービーストより強いが小さいアマレット機には、巨大兵器でなくても使い道はある。サイキック砲を重機関銃で押し止め、ショットガンを放って相手の離脱を牽制する。
「……そこね」
 そして構えた拳銃の一射が、犬型ロボットの装甲の隙間に潜り込んだ。その小さな弾丸に弾かれたように硬直し、ロボットが動かなくなる。その機体の中では、アマレットがパイロットスーツの腹部を赤く染めていた。
 最大火力で開いた道の先、小さな一射が|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》を確かに射抜いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニーニアルーフ・メーベルナッハ
なんだか痛々しい様相ですが、凄まじい力ですね…
ですが、この先へと進む為にも。倒させて頂きます。

【蟲使い】で操る黒燐蟲達に引っ張ってもらって宇宙空間を機動、砲撃やクエーサービーストの攻撃を躱していきます。
それでも当たりそうな攻撃は、白燐蟲による【オーラ防御】を展開し防ぎます。
アマレットの先制UCの効果もあるので、最初は攻撃は行わず回避に専念を。

此方のUCが使用可能となったら白燐奏甲を発動。
防御力を底上げの上で、アマレットの周囲を回るような機動を行います。
周囲の敵の攻撃が彼女に誤爆する『不運』を狙う形ですね。

アマレットのUCが解除され次第接近、ブレンネン・ナーゲルを【怪力】で叩き込みます!



 機体を射抜かれ、小さな生身に傷を負ってもアマレットは戦おうとするのをやめない。生命の危機に精神の方が研ぎ澄まされたか、変わらぬ精彩を持って戦艦とクエーサービーストの軍団は動き始める。
「なんだか痛々しい様相ですが、凄まじい力ですね……」
 その膨大なサイキックエナジーに、ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)も息をのんだ。事前に聞いた話では、彼女は溢れる力が強くなるほどに、その身にかかる負担も大きくなるという。それが極限まで高まっているだろう今の彼女が受けている苦痛はいったいどれほどか。
「ですが、この先へと進む為にも。倒させて頂きます」
 それでも、彼女は|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》でありプリンセス・エメラルドへの道を阻む障害。三年越しの悲願、迷宮災厄戦からの因縁を断ち切るために、倒さねばならぬ存在なのだ。
 そしてそれをさせぬため、将の苦痛に乗った命令を受けた軍勢がニーニアルーフ……ニーナを押し潰そうと迫る。
 ニーナは暗黒の宇宙空間に黒き蟲を放ち、それに自分を引っ張らせることで宙域を移動。その軌道を掠めるように、眩いばかりのエネルギー砲が何発も発射され虚空に消えていった。
 そしてさらにその移動先を狩るように、クエーサービーストが物質を分解する波動を放つ。周囲全体にくまなく広がるそれは移動だけで避けられるものではないと察し、ニーナはもう一つ、白き蟲を体から放ち周囲にオーラの幕を張らせた。波動がオーラとぶつかり、相殺し合うように消えていく。
「出てくる……溢れる……私の……全部……!」
 配下を援護するように、アマレットが機体の中でサイキックエナジーを溢れさせた。それは小さな体の中に凝縮された力が、その体を破り全て溢れ出ているかのような勢いで認識できる宇宙空間全てを満たしていく。
 そのエネルギーは凄まじく、ニーナは自身の武器や筋力、意志力までが抑え込まれ無力化させられて行くのを感じていた。
 この状態では反撃もままならない。だが相手がこの技を先制で放ってくるのはニーナも分かっていたことだ。それ故今は回避と防御に徹するとき。
 戦いを放棄しそうになる心を叱咤し、ニーナはとにかく回避を繰り返した。無数にいる艦隊は法を並べて掃射し、巨大なクエーサービーストは宇宙の異能を全開に振りまいて敵対者を捕らえんとしてくる。そしてその後ろでは極限の苦痛にさいなまれながら全てを圧する超能力を振りまく|生体兵器《幼子》が。
 死を齎そうとするその猛攻はいつ果てるともなく続くように見えた。だが、その時は訪れた。
「うあ……あぁぁぁ……」
 突如として、ニーナの体に力が戻る。アマレットのユーベルコードの効果が消えたのだ。彼女は人間扱いされたことなどない存在だが、それでも生物であることは変わらない。命を削るユーベルコードを使い続ければ、いずれ限界は訪れる。
 この瞬間こそがニーナが待ち望んでいた時。ニーナは白き蟲を【白燐奏甲】として纏い、敵軍攻撃をそれで耐えながら強引に突破した。
「こな、いで……!」
 敵の接近を感知したアマレットが再びユーベルコードを振りまく。残り少ない命さえ燃やして放つそれは再びニーナから攻める力を奪い去るが、今度はアマレット機の周囲を旋回する形で回避行動をとり始めた。
 再び始まる追いかけっこ。これでマタ膠着状態か、そう思われた時、彼女を捕らえんとしたクエーサービーストの触手があろうことかアマレットの機体を殴りつけた。
「なん……で……」
 大きく揺さぶられ、アマレットが機体内でえずく。その機体に、さらに艦隊の一斉射撃が誤射され炸裂した。
 立て続けに彼女を襲った不幸な事故。他ならぬ彼女自身の超能力で制御されているはずの軍団が何故。
 その答えは、ニーナがユーベルコードの切れ間に纏った【白燐奏甲】。これは敵対者に不幸な事故を誘発させる力を持つ。運なのだからいつ何が起こるか制御も予測もできないが、だからこそ封印もされない。そして配下たちはアマレットの『敵対者』ではない故、その攻撃行動も一切制限も受けてはいない。敵を封じる超能力を撒き散らした少女は、敵でない存在の力によってその機体を破壊された。
 ロボットの頭部が破壊され、アマレットの小さな体が剥き出しになる。それでも、少女は頭を抑え超能力をふりまくことを止めようとしなかった。
「いたい……いたいいたいいたいいたいいたい……!」
 頭が割れんばかりの激痛。だが、その脳から超能力が振りまかれる一瞬前、ニーナは高速で彼女に接近していた。
「もう、お休みください!」
 紅炎手「ブレンネン・ナーゲル」が、ニーナの細くも豊かな体から溢れた怪力全てを乗せて叩きつけられた。巨大な赤き手甲が、小さく柔らかい肉体を叩き潰す。
「あ……あ……」
 ずっと頭を抑えていた小さな手が離れ、同時に紙と同じ桃色の瞳が閉ざされた。その死に顔は、今まで彼女が浮かべたどの表情よりも安らいでいる。彼女の素顔をほとんど見ていないニーナも、それが確信できたことが悲しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『封藍竜サフィアリス』

POW   :    封藍竜の制裁
自身の【体を構成するサファイア】が輝く間、【全てを凍てつかせるブレス】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    封藍竜の絶望
自身の【体に突き刺さる杭を緩める事】を代償に、【自身に封じられたオブリビオンの力の一端】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【内部のオブリビオンが持つ力】で戦う。
WIZ   :    封藍竜の自傷
【自らを束縛する封印の杭と鎖】で攻撃する。[自らを束縛する封印の杭と鎖]に施された【オブリビオン】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。

イラスト:塚原脱兎

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミコトメモリ・メイクメモリアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 総指揮をとっていたアマレットの超能力が途絶えたことで、戦艦とクエーサービーストの大集団は一斉に動きを止めた。自動操作されていた後遺症だろうか、近くに何があってもまるで反応しなくなったそれらの横を悠々と通り抜け、猟兵たちは進む。
 やがてそれらを抜けた時、目の前にはいくつもの水晶を重ね合わせ無理矢理船の形にしたような超巨大戦艦が現れた。あれこそが『ソング・オブ・オーンブル』。無数の|漿船《クリスタル・シップ》を材料に作り上げられたプリンセス・エメラルドの新たなる旗艦だ。
 そしてその後ろにあるのは母星にも見える青き小惑星のようなもの。
 だがそれは惑星というには余りにも形が歪すぎた。首がある。翼がある。四肢がある。
 それらがすべて伸ばされ、その正体が明らかとなる。
「グア……アアアアアアア!!」
 音の響かぬ宇宙さえも震わせるほどの咆哮をあげるそれは小惑星などではない。小惑星と見紛うほどに巨大な、|蒼玉《サファイア》でできた竜であった。
「ああ、残念です。彼女は宇宙の塵になってしまったのですね。小さな子を殺めた罪は大きなものに罰して貰いましょう。あなたがいつも食べている|餌《クエーサービースト》に比べればまるで食いではないでしょうが、封藍竜サフィアリス、食事の時間ですよ」
 艦内でのプリンセス・エメラルドの命令が伝わったかの如く、青き巨体がソング・オブ・オーンブルを追い越し前に出る。その巨体の前では猟兵やその所持するあらゆる武器、兵器が芥子粒のようにしか見えないことだろう。そして接近して見えたその青に混ざる汚れのような色。それは彼に食われたクエーサービーストが、未消化のまま体内でのたうっている姿であった。
 あまりにも桁が違い過ぎる巨体。だがこの後ろに隠れた船に乗る緑の力と邪悪さは、この青すらも霞むほどのはず。
 猟兵よ。その小さき身に持つ全ての力と知恵を持って、この巨大なる青を押しのけよ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
厄介ですが、やってみましょう。

最速で【炳輦】を発動し防護結界を展開、『FMS』のバリアと『FES』の対冷結界と重複させ守りを固めますねぇ。
『ブレス』という性質上、巨大故に判り易い『口の位置』に着目し『FGS』の重力波で相手の行動を阻害しつつ、『相手の首の後ろ』への『転移』を繰返せば、複数の攻撃も回避可能ですぅ。
巨大とは言え竜種であれば『首』を落とせば仕留められますので、『時空切断の嵐』を頸部に集中、開いた傷に残る『F●S』全ての[追撃]を集中、[部位破壊]しますねぇ。

飛散したサファイアとお肉、討伐後に可能なら死体も『FTS』で回収を。
美味しそうな上、食べでが有りますし。



 プリンセス・エメラルドの命を受け猟兵の前に立ちはだかった『封藍竜サフィアリス』。それは小惑星サイズにまで巨大化したブルーアルカディアの魔獣という、今までにない敵。
「厄介ですが、やってみましょう」
 それ故、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)のこの評も致し方なしというものである。
 だが、そうであっても臆している間はない。この途方もない相手すらも、この先に控える大敵の前座に過ぎないのだ。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
 急ぎそれを超えるべく、るこるは【豊乳女神の加護・炳輦】を最速で発動させた。防護結界の展開に加え周囲にバリアと冷気耐性の布を張り、相手の攻撃への備えを万全にするるこる。
 その前で、サフィアリスの体が青く輝いた。
 それだけでるこるの体よりずっと大きい眼球を、まるで羽虫でも探すかのようにぎょろつかせ、サフィアリスはその巨大な口を開ける。そしてそこから、極寒の宇宙空間ですら凍てつかせるほどの冷たい息が吐き出された。
 その範囲、強さはまさに惑星規模。攻撃を超えて災害とすら呼べるレベルのそれを、るこるは光速移動と瞬間移動を同時に使うこと何とか外した。
 さらにサフィアリスは首を動かしながらなおもブレスを吐き続け、そしてそれに対しても、同じように移動してるこるは回避を試みる。
 サフィアリスにとっては首を少し動かした程度の動きでも、それでカバーされる範囲は数百……下手をすれば千メートル以上。人間にとっては決して短い距離ではない。だがそれでも、るこるはそのブレスに捕らわれることなくサフィアリスの周囲を飛び続けた。
 その理由の一つは、るこるが逃げながらも差し向けた重力制御装置『FGS』。それはサフィアリスにとっては気に掛けるにも値しない小さすぎるものであったが、それが放つ重力は大きいものにほど強くかかる。それを振り切る力もまたサフィアリスは強いが、それでも動きが鈍れば時間を稼ぐことは出来る。
 そしてもう一つは、サフィアリスが『竜』でありその攻撃が『ブレス』であったこと。
 ブレスなのだから、その発射口は当然その巨大な口。嫌がおうにも目立つそれに着目すれば、どこへ撃ちたいのかは容易に予想がつく。ありえないほどに巨大化しているが、サフィアリスはブルーアルカディアの魔獣なのだ。
 そして、その考えは攻撃にも。
 サフィアリスの周囲を九度回ったるこるは、ついにその巨体に接近をかける。そこからさらに時空切断をサフィアリスに叩きつけ、その身に大きな切創を刻んだ。
 だが、その傷が大きいというのは人間視点での事。巨大すぎるサフィアリスにとってはそれは鱗一枚貫かれたかどうかのかすり傷に過ぎない。それでも構わないと、るこるはその傷に撃てる限りの斬撃と、動かせるだけの兵装をありったけ差し向けた。
 砲が炸裂し、光線がその場を焼き、そして鱗の奥の肉が抉れる。かすり傷でもよい。可能な限り穿ちぬけと狙い続けたその場所。それはサフィアリスの『首』であった。
 首故に口から吐くブレスはそこには届かない。それ故サフィアリスはこれまた巨大な爪で虫を払うようにそこを掻くが、見えない部分を雑に薙いだところで的の小ささ故に全てを落とすには至らない。
 そしてサフィアリスはその巨体ゆえ全身を砕き尽くすことは猟兵であっても不可能だろうが、生物相手にそんなことをする必要はない。
 攻撃を続けていた首に爆発が起こり、多数のサファイアの鱗、そして青き肉が飛び散る。それは確かにサフィアリスは全体から見れば微々たる量の血と肉。だが、それが起こったはあらゆる生物にとって致命の場所。ただ一か所、急所を抉れば生物は死ぬのだ。
 ついにその巨体をのたうたせ、るこるから離れるサフィアリス。彼を規格外たらしめる、最大の武器であるその大きさ。それは今その最大の弱点となっていた。
「美味しそうな上、食べでが有りますし」
 プリンセス・エメラルドはサフィアリスにとって猟兵は食いでがなかろうと言った。だがそれは逆に言えば猟兵にとっては僅かに削っただけでも数え切れぬほどの肉と素材が手に入るということ。何しろサフィアリスはブルーアルカディアの竜……極大で極上の『狩猟対象』なのだ。
 飛び散った青い肉とサファイアの鱗を『FTS』で回収するるこる。さらにはその命尽きた後は骸全てを手に入れてくれんと見るその姿は、大きさなど関係なく正に彼女が『狩る』側であることの証左であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーニアルーフ・メーベルナッハ
なんとも悍ましい敵ですね…しかも、これだけの圧倒的な質量差。かつての戦いでもこれ程巨大な敵と戦った経験は、数える程しかありません。
大変な難敵と言えそうです。
ですが、だからといって引き下がりはしませんとも。

敵は強烈な冷気のブレスを吐くようです。
【蟲使い】で展開した蟲達の力で【オーラ防御】し凌ぎながら、ブレスの届きにくいだろうお腹辺りへ潜り込みます。
接近に成功次第、ブレンネン・ナーゲルでの紅蓮撃を叩き込み爆破及び【焼却】を食らわせ攻撃。
可能ならば体内へと潜り込み内部からの破壊も試みてみましょう。



 宇宙空間に浮かぶ、小惑星サイズの巨大竜。たちの悪い冗談としか思えないそれは、しかし今現実に明確な脅威として猟兵の前に立ちはだかっていた。
「なんとも悍ましい敵ですね……しかも、これだけの圧倒的な質量差。かつての戦いでもこれ程巨大な敵と戦った経験は、数える程しかありません。大変な難敵と言えそうです」
 ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)もこのような敵との対峙は滅多にあることではなく、その攻略が困難を極めることは容易に想像がついていた。
「ですが、だからといって引き下がりはしませんとも」
 そう、滅多にない。つまり決して前代未聞ではない。宇宙を戦いの場とすることも、あり得ないほどの大きさの相手と戦うことも、歴戦の『能力者』たる彼女にとっては未経験の事ではなかった。
 それ故、向かって行くことに躊躇はない。ニーニアルーフ……ニーナは自らの体より白き蟲を顕現させ、白く輝くそれをオーラの如く自らの体に纏わりつかせた。
「敵は強烈な冷気のブレスを吐くようです。なら……」
 敵の行動は予知によって分かっている。なら取るべき手はあるとニーナが接近を試みるが、それを待ち受けるようにサフィアリスの巨大な体が青く輝き、その口から氷のブレスが吐き出された。
 巨大な口を大きく開けて放たれるそれは、宇宙に吹き荒れるブリザードと言っても過言ではない規模。その範囲も尋常でないほどに広く、まともに狙って放っていないにもかかわらずその冷気がニーナの体へと届く。
「大丈夫、このまま……!」
 宇宙さえも凍てつかせるその冷たさは、ニーナの纏う蟲たちの動きを鈍らせその輝きをくすませていく。さらにその防御を通してニーナ自身の体さえ凍えさせていくが、ニーナはそれに耐えながらサフィアリス目がけて真っ直ぐに進んでいった。
 そして何度となく吹きかけられるブレスを乗り越え、ついにニーナはその巨体に取り付く。そしてその途端、その身を凍えさせていた吹き荒れる冷風が嘘のように届かなくなった。
「ここならそのブレスも届きにくいでしょう」
 ニーナが取り付いたのはサフィアリスの腹部。相手のその巨大さ故、ニーナにとっては青き岩盤に取り付いたにも等しい。そしてサフィアリスのブレスはその発射口が自身の口故に、自分の体側に届かせることは困難を極めた。
 それでもサフィアリスは長い首を巡らせ、自身に取り付いた邪魔者を何とかして払おうとする。しかしやはり自分自身の巨体が仇となって小さな点のような存在は見つけ難く、闇雲にブレスを吐いてもやはり大きな体に遮られ相手に届くことはなかった。
 相手が攻めあぐねているこの瞬間が好機。ニーナはラバースーツに接続された紅炎手「ブレンネン・ナーゲル」を思い切り振り被り、そこにあらん限りの力を込める。
「この一撃で、決めます……!」
 外しようもない目の前の的、サフィアリスの腹部に、全身全霊を込めた【紅蓮撃】が叩き込まれた。着弾分が大爆発を起こし、サフィアリスの青い鱗がはじけ飛ぶ。
 腹部に入る熱と衝撃に、サフィアリスは大きく体をよじり暴れ出した。それは張り付いているニーナにとっては大地震が起きたにも等しい揺れだが、傷口から流し込んだ炎がその身を縛り、僅かなりと動きを鎮静化させていく。
 そして少しの落ち着きを見せたその瞬間、目の前に開いた大きな……サフィアリスにとっては小さな傷穴に、ニーナはその身を強引に捻じ込ませた。傷口に針を刺しこまれたような状況に、サフィアリスは再度のたうって暴れ出す。だが今度は相手の中に自分が挟み込まれているのだ、最早相手を操作する必要もない。
「もう一度、今度こそ、決めます……!」
 その零距離から、ニーナは再度紅蓮の爆発を巻き起こした。内側から発生したそのエネルギーは一切逃げることなく、サフィアリスのその肉、そしてその臓腑を爆裂させた。
 かんしゃく玉が手の上で爆発しても火傷するだけだが、拳の中で爆発すれば手が弾け飛ぶ。地球に迫る小惑星級の巨大隕石を破壊する映画での一節だ。ましてや今それが為されたのは、固い外皮に守られた柔らかい肉と内臓の詰まった腹の中。生物の耐久力は均一ではない。そこには明確に急所、弱点があるのだ。
 またも生命体として致命の部位を破壊され、苦しみのたうつサフィアリス。命とは宇宙に生まれたバグのようなもの……かつての怨敵が放った言葉が今世界を超えて現れた生命に刺さっている。その中でニーナは、ただ今はこの生命を滅すべしとその腹を抉り抜くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニノン・トラゲット(サポート)
『容赦なんてしませんから!』
『アレ、試してみちゃいますね!』
未知とロマンとお祭りごとを愛してやまない、アルダワ魔法学園のいち学生です。
学生かつ魔法使いではありますが、どちらかと言えば猪突猛進でちょっと脳筋っぽいタイプ、「まとめてぶっ飛ばせばなんとかなります!」の心で広範囲への攻撃魔法を好んでぶっ放します。
一人称はひらがな表記の「わたし」、口調は誰に対しても「です、ます、ですよね?」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的にはいつも前向きで、ネガティブなことやセンチメンタルっぽいことはあまり口にしません。
その他の部分はマスターさんにお任せします!


天城・千歳(サポート)
本体で行動出来る場所なら本体で、本体の入れない場所の場合は戦闘用リモート義体で行動し本体は義体からの情報を元に【情報収取】【戦闘知識】【世界知識】【瞬間思考力】を使い状況分析及び支援行動を行う。
戦闘状態になったら【誘導弾】の【一斉発射】による【範囲攻撃】で【先制攻撃】を行い、その後は【スナイパー】【砲撃】【レーザー射撃】で攻撃する。
敵の攻撃は状況に応じて【盾受け】で防御するか【見切り】【ダッシュ】【推力移動】を使った回避で対応。
味方とのコミュニケーションはリモート義体が【コミュ力】【礼儀作法】場合により【言いくるめ】を使って対応する。
協力体制を構築した味方に対しては、通信による情報支援を行う。


田中・香織
アーティラリーモードでアームドフォートの攻撃力5倍、装甲半分にして攻撃力を上げて相手の大きさに対抗するわ。
(砲撃+鎧無視攻撃でさらに威力を高めるようにするわ)
相手が大きければ狙わなくても当たるから、助かるわね。
先に倒れたほうが負け、シンプルで良いじゃない。
とはいえ、まともに食らったらアウトだから、顔を狙ってブレスを撃つのを妨害してこちらに撃たせないようにするわ。(マヒ攻撃)



 宇宙に浮かぶブルーアルカディアの竜『封藍竜サフィアリス』。狩り、食らうという生命のやり取りが常であるその世界の生まれでありながら、宇宙空間という生命を拒む世界に身一つで立っていられるまでになった理由。それはその宇宙を根源とする|生命体《クエーサービースト》を、餌として貪り喰らってきたからか。
 その結果作り上げられた巨体は、裸一貫で挑むには余りにも圧倒的過ぎると言えるだろう。
「アレ、試してみちゃいますね!」
 ニノン・トラゲット(ケットシーの精霊術士・f02473)は、自身の体に炎、風、水の三つの魔力を纏ってそれに立ち向かった。空気のない宇宙空間では風も炎も起こることはなく、水は凍り付く。それを自らの魔力で宇宙の中に消えることなく作り出し自らに纏い、科学の極まった世界の宇宙へニノンは勇敢に飛びたった。
「天城千歳です。よろしくお願いします」
 それに続くのは天城・千歳(自立型コアユニット・f06941)。女性的なその声を発するのは、いかにもロボット然とした深い青の機構。だがそれは中に人が乗っているのではない。その全高2m42.8cm の機械それこそが千歳の体であり、そしてそれはさらなる巨大な宇宙戦艦のコアユニットでもあった。
 この宇宙の世界で技術の果てに人に列せられるまでに至った機械、ウォーマシン。敵が食らった恐ろしき宇宙生物とはまた別の、この宇宙を源流とする『生命』として、千歳は自らのホームグラウンドとも言える宇宙へ飛び出していた。
「あたしに任せて」
 そしてその二人を押しのけんばかりに堂々と行くは田中・香織(ヒーローに憧れた人形・f14804)。その身は命持たぬはずの人形が命を持ったヤドリガミであり、担ぐのは自身の体より巨大なアームドフォート。その圧倒的な装甲と火力を恃みに巨大な敵に立ち向かうその姿は、まさに彼女が憧れた宇宙のスーパーヒーローの如しだ。
 それぞれの手段で宇宙に乗り出した三人だが、サフィアリスの圧倒的巨体の前にはどれもが些末な小細工に見えてしまう。サフィアリス自身がそうとでも思っているのか、目の前に漂う塵を吹き飛ばしてやるとでも言わんばかりに首を伸ばし、その大きな口を三人の前に出した。
「させません!」
 その口から冷たい息が吐きだされる前に、千歳の装備する宇宙戦用装備から大量の兵器が発射された。それは誘導性を持ってサフィアリスの顔に殺到し、そのブレスの発射を遅らせていく。
「まとめてぶっ飛ばせばなんとかなります!」
 そこに重ねるように、ニノンが自身に纏った魔力を攻撃に転用、三つの属性の嵐としてサフィアリスの顔面に叩きつけた。ブルーアルカディアなら珍しくない、だがこの宇宙では本来発生しえないその自然の力がサフィアリスに殺到し、忘れていた故郷のダメージを彼に思い起こさせていく。
 しかし、それをもってしてサフィアリスの装甲を貫き切るには至らない。その巨大さはそれだけで外皮を堅牢な鎧とし、血肉を無尽蔵の生命力の源としているのだ。次々に撃ちだされるダメージを耐え、サフィアリスは強引にブレスを放とうとする。
「お互い逃げ場無し、どちらが先に倒れるか勝負ね」
 だがそこにはすでに、香織のアームドフォートが狙いを付けていた。【砲撃体勢】を整えたそれは元々巨大なその装甲が組み変わり、操作者を保護するための装甲がずれて砲身に重なる。長く重厚になった砲は、より強力な火力を放てる安定性と極めて長いバレルでサフィアリスに強力な一撃を放った。
 防御機構まで火力補助に回したその一撃がサフィアリスの顔面に炸裂し、ついにその首を大きく仰け反らせる。その衝撃で脳震盪でも起こしたか、麻痺でもしたかのようにサフィアリスの動きが明確に鈍った。
「護衛艦隊出撃、本艦を中心に陣形を組め!」
 今が好機。千歳は【護衛艦隊出撃】を命じ、宇宙戦艦としての本領を露にしてレーザー砲を撃ちかける。
「容赦なんてしませんから!」
 ニノンも最早自身の防御は不要とばかりに纏った魔力全てを攻撃のためのそれとし、自らは魔力の嵐の中心となってその小さな身を台風の目の如く宇宙に浮かべていた。
「相手が大きければ狙わなくても当たるから、助かるわね」
 その後ろからは香織が砲をとにかく威力に全振りして撃ち続ける。相手は巨大。攻撃に全てを裂かねば貫くことも難しい。だがその巨大さ故小細工は良くも悪くも無意味。「先に倒れたほうが負け、シンプルで良いじゃない」
 ただ大火力を前に向かって撃ち続けるのがこの場での最適解とばかりに、香織は強化されたアームドフォートをただひたすらにサフィアリスに撃ち続けた。
 猛攻に押し込まれるサフィアリス。だが、その巨体から来る力で強引に首を起こし口を開け、ついにその口から冷気のブレスを吐き出した。連続で放たれる宇宙さえ凍り付かせんばかりのブレスが周囲を飲み込み、冷気に包み込む。
「護衛艦、盾になって!」
 そのブリザードの直撃だけは防ごうと、千歳は呼び出した護衛艦たちを盾の様に使い自分と仲間たちを守る。今この場では自分が一番体も装備も大きい。ならば自らが全ての盾になるのが最良と、その鋼鉄の体と配下を敵の攻撃にさらすのを千歳はためらわなかった。
「押し返します!」
 前に立った仲間を襲う連続の暴風。その頼もしき背に隠れながらもただそれだけではいかぬと、ニノンあ後ろから自らの魔力を解放、ブレスにぶつけることでの相殺を図った。相手のユーベルコードに自信の纏ったユーベルコードをぶつけることで抑え込む力技。攻め切ることこそ好む彼女の攻撃的な防御法に、千歳にかかるブレスは弱まりその身で完全に防ぎ能うものとなった。
「まともに食らったらアウトだから……その前に終わらせる!」
 その二人の守りの奥、防御を捨てた香織が最後の狙いを付けていた。全てを攻撃に振っている故に相手が攻めてきてしまえば終わりなのは分かっている。だから、その部分は全て仲間に任せた。その代わりこれは任せろと、全ての力を攻撃に捧げた巨大なアームドフォートが千歳の肩越しにサフィアリスに向けられる。
 その狙う先は仲間たちが抑え込む暴風の出る場所。
「ここを潰せば、もうまともに撃てないでしょ!」
 全ての力を込め放たれる一射。それはブレスさえもを切り裂き、サフィアリスの巨大な口に吸い込まれ消えていった。
 そして一瞬後、その頭部が大爆発を起こした。宇宙を焦がさんばかりの爆炎が巻き上がり、辺りを明るく照らす。そしてそれが収まった後、頭部を失った巨大竜が流されるように宇宙を漂い、そのまま|蒼玉《サファイア》の欠片となるかのようにばらばらに崩れ宇宙の彼方へ散っていった。体の中から崩れかけのクエーサービーストも零れだして来るが、それもまたすでに食われた存在故かボロボロに崩れ、宇宙の塵となって消えていく。
 巨大な青き竜が退いたその場所。そこにあるのは色とりどりの水晶を組み合わせ築かれた、美しくも邪悪な皇帝の牙城であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『猟書家『プリンセス・エメラルド』』

POW   :    プリンセス・エメラルド号
自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。
SPD   :    侵略蔵書「帝国継承規約」
自身の身長の2倍の【皇帝乗騎(インペリアル・ヴィークル)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    クリスタライズ・オリジナル
自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100m以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:鶸

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ついに守るものをなくし露となった巨大漿船『ソング・オブ・オーンブル』。まるで来訪者を招くかのように開けられたそのカタパルト部分を通り、猟兵はその中へと進入した。
 無数の軍勢を率いる桃色、世界を超えし巨大な青を越え辿り着いたその船の中、一切妨害もなく辿り着いた操縦室で待ち受けていたのは、かつて猟兵の前に立ちはだかり長き乱を起こした美しき緑であった。
「さて、どう言ってあげましょう。『このプリンセス・エメラルドは三年待ったのだ』……『時が来た。オーダー66を実行せよ』……ふふ」
 入口に背を向け、何かの練習のように独白していたそれが振り返る。|緑柱石《エメラルド》の体に重厚さと高い露出を兼ね備えたドレスを纏った美しい女。
「残念、まだ纏まっていないのに来てしまったのですね。三年の時をもってしてもあなたたちを迎えるに相応しい言葉は浮かびませんでした。出来たのは精々|外宇宙《スペースオペラワールド》を攻め落とせるだけの|帝国継承軍《サクセション・フォース》を編成することくらい……」
 口に手を当て浮かべるその笑いは、紛れもない嘲笑。相手がここに来るまでに己が野望を成すには十分すぎる時間があったと、その笑いを持って彼女は大敵に伝えていた。
「銀河皇帝プリンセス・エメラルドが命じます。|出《いで》あえ! 帝国継承軍たちよ!」
 その女、プリンセス・エメラルドが笑いを消し、声を張り手を上げる。その途端周囲の空間がぐにゃりと曲がり、そこを門とするかのように手に光線銃や光剣を持った一団がなだれ込んできた。
 同じ銀のスーツを纏い個性を消したかの如きその集団は、猟兵が活動を始めたその時から数え切れぬほどに相対した銀河帝国兵士そのもの。
「|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》アマレット、封藍竜サフィアリス、共にこの銀河皇帝の為に戦い死にました。彼らの名誉に続きなさい。あなた達の戦いは銀河帝国の繁栄と共に外宇宙にまで永遠に刻まれましょう」
 皇帝はその兵たちに己の為に死ねと命を下し、兵たちはそれに従うかのようにそれぞれの武器を猟兵に向けた。
「先陣は|最強の兵《この私自身》が切りましょう。さあ唱えなさい。『皇帝陛下のご出陣』と!」
 プリンセス・エメラルドの宣言と共に、一瞬にして溢れ出したサイキックエナジーがその場を支配する。この領域下に置いて、間違いなく彼女は誰よりも早く動くことだろう。
 なれどこれ以上の時を彼女に、そして銀河帝国に許すことは決してできない。猟兵よ、三年にわたり紡がれた銀河の詩を、今こそ終わらせる時がきたのだ!
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
その戦いを飾る必要はありません。
銀河帝国の歴史は、今度こそ此処で終わるのですから!

先ずはプリンセスを目掛けて走り接近を。
全方位からの攻撃は【蟲使い】で白燐蟲を操り展開する【オーラ防御】にて防ぎますが、全ては防ぎきれないでしょう。
傷は【激痛耐性】で何とか耐えます。
頭上に召喚される戦艦には接近するまで警戒を欠かさないように。砲撃が来たならばこれの回避を最優先にします。

接近を果たし次第、黒燐蟲達をプリンセスの背後を狙うような形で嗾け敵の後退を阻害。その上で肉薄し生命侵蝕を撃ち込み生命力を奪いにかかります。
脚が刺さっている状態なら、彼女を盾にして周囲の敵の攻撃を阻害する事も可能でしょう。



 無数の|帝国継承軍《サクセション・フォース》を招聘し、帝国が宇宙全てに覇を唱える歴史の礎として死せよと命じたプリンセス・エメラルド。それに従う兵たちは、帝国が宇宙に永遠の支配を齎した暁には聖戦を彩った英霊としてその歴史に刻まれることとなろう。
「その戦いを飾る必要はありません。銀河帝国の歴史は、今度こそ此処で終わるのですから!」
 だが、ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)、ニーナはそれは決して許さない。この侵略が美辞として語られることも、帝国がこれ以上宇宙を脅かすことも、決して認めぬという決意を込めてニーナはプリンセス・エメラルドへ向けて一直線に駆けだした。
 それに対し皇帝に触れる無礼を許さぬとばかりに、周囲を取り囲む帝国兵たちが一斉に手に持った光線銃を撃ちかけた。ニーナは己の身に宿る白燐蟲を周囲に巻き、オーラの様に纏うことでその光線を防ぐ。
 まるで|兵士《トルーパー》の射撃はそうなるのが定めというように、ほとんどの光線はその上を滑り逸れていくが、一部羽虫の隙間を塗ってオーラに穴をあけ、ニーナの体まで届いた。白い肌に穴が穿たれそこから鮮血が噴きあがるが、それに対しても一切怯むことなくニーナの猛進は続く。
「愚かな。下賤なる者が皇帝に歩み寄れると思わないことです。プリンセス・エメラルド号、発進せよ」
 プリンセス・エメラルドが手を上げ命じると、その頭上に巨大な戦艦が現れた。緑に輝くそれは先の宙域で|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》旗下として出撃したそれをはるかに上回る威容を持つが、超巨大戦艦であるソング・オブ・オーンブル内で動くには全く支障はなくその砲をニーナに向けた。
「撃て」
 皇帝からの短い命令。それを承諾したかのように、戦艦はいくつも備え付けられた砲をニーナの方に向け、その砲身に緑色の光を蓄え始めた。
(……これだけは……!)
 帝国兵の|光線銃《ブラスター》などとは比較にならぬ破壊光線。フルチャージされたそれが放たれ、操縦席内を緑一色に染め上げた。
 しばし、荒れ狂う緑色に飲み込まれる一体。その中で一際濃い緑色がその手を降ろすと、破壊光線の照射は止まった。
「……さて……」
 眩すぎる光はプリンセス・エメラルド本人の視界さえ遮る。骸を確認するまで勝利を確信してはならぬと目を凝らした、その瞬間。
「そこ……!」
 予想以上に近い場所にあった、白い髪と肌。それは赤い血にまみれてはいたが、その動きは一切鈍ることなくプリンセス・エメラルドへ向かっていた。
 最も脅威とすべきはプリンセス・エメラルド本人のユーベルコード。それを躱すことを最優先とし、ニーナは破壊光線の照射を帝国継承軍の中に突っ込んでいくことで避けた。もちろんそうすれば外しようもない距離からの射撃、光剣に持ち替えての斬撃に見舞われることになるが、元よりそれをある程度受けることは覚悟の上なのだ。
 プリンセス・エメラルドは継承軍に犠牲が出ることは厭わないが、無意味に死なせるつもりもまたない。それ故光線の範囲からは外していた。ニーナはその虎穴にあえて入り、無数の傷を刻まれる代わりに致命の一射を確実に外したのだ。
 そして、眩き光が途切れた瞬間に残った力で有象無象を一気に振り切り、プリンセス・エメラルドに肉薄した。
「私に触れるなど……!」
 プリンセス・エメラルドが一歩引こうとするが、それはこの広大な部屋の中で、あるはずのない壁に背がぶつかって止まる。否、それは壁ではない。守りを命がけで務めた白き蟲と対を成す、敵を決死で止めるため壁となった黒き蟲。
「捕まえました……その身その力、私の糧とさせて頂きます……!」
 その手がプリンセス・エメラルドに触れ、そしてその背から8本の節足が服を破って突き出しプリンセス・エメラルドを掻き抱く。そのまま足の先端はエメラルドの肌に深く突き刺さり、それを侵し命を吸い上げ始めた。
「おのれ……離れなさい!」
 プリンセス・エメラルドがニーナを引き剥がそうとするが、超能力頼みの細腕では獲物を捕らえた蜘蛛を引き剥がすには非力すぎる。さらにニーナはプリンセス・エメラルドを抱いたまま姿勢を変え、彼女を盾にするよう継承軍の前に突き出した。
「撃てるものなら撃ってみてください!」
 ニーナの一喝に、継承軍たちは躊躇する。彼らはプリンセスの為に死ぬ覚悟こそ決めているが、その力量は所詮有象無象の兵。針の穴を通す射撃などできるはずもない。
「く……あああ……!」
 捉えられた蝶のように、抱きすくめられたままでもがくプリンセス・エメラルド。彼女に取り付くまでに受けた傷から流れ出た生命を、まさに蜘蛛が獲物の体液を吸うようにニーナは啜っていく。
「あなたの命は、ここで貰います……帝国の未来も……!」
 その命が尽きる時銀河帝国の歴史も終わる。一歩でもそれに近づけよと、ニーナは二本の腕と八本の足で捕らわれた蝶を戒めつづけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

田中・香織
鳴声海矢マスターにおまかせします。かっこいい田中・香織をお願いします!

『あたしに任せて』
 ヤドリガミの戦場傭兵×鎧装騎兵、20歳の女です。
 普段の口調は「明るく元気な少女(あたし、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、真剣な時は「勇敢なヒーロー(あたし、あなた、呼び捨て、なの、よ、なのね、なのよね?)」です。

いわゆる熱血ヒーロータイプで一直線に行動する性格です。
戦闘では重火器一斉射撃など火力でごり押し型のシンプルな戦い方をし、ユーベルコードもそういった使い方をします。

描写上のタブーは一切無し、フリー素材やNPC感覚でご自由にお使い下さい。


シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦

称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。

複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!


藍沢・瑠璃(サポート)
【性格】
自分に自信がなくて基本的にネガティブな思考ですが臆病というわけではなく意外と思い切りはいい性格をしています。
強い相手には相応にビビりますが弱そうな相手(集団敵)には基本的に強気です。
普段は敬語で一人称は「ボク」です。
【戦闘】
ボス的にはビビりつつもなるべく油断させて隙に怪力を生かした接近戦で圧倒しようとします。基本は接近戦しか能がありません。
集団的では一転して強気になって敵陣に突っ込んで格闘で蹂躙したり怪力で(文字通り)ちぎっては投げして戦います。
基本的に接近戦しか能がありません。



 プリンセス・エメラルドの旗艦ソング・オブ・オーンブル。その大きさは帝国が要する他の宇宙戦艦とは比較にならぬほどの巨大さである。次々現れる帝国継承軍をいくら収容しても、それが溢れるということなどない。
「す、すごい数……」
 藍沢・瑠璃(ヤドリガミのゴッドハンド・f37583)がその圧倒的な軍勢に気圧されたように言う。だが、真に恐るべきはその奥にいるたった一人の女。
「三年の時を持って集結した我が帝国継承軍の威容、お分かりいただけましたか? そしてこの者全てが跪く力。それがここに」
 プリンセス・エメラルドが軽く手を上げると、その背後には巨大戦艦プリンセス・エメラルド号が現れる。それは砲門を瑠璃の方へ向けると、一気に破壊光線を放った。
 緑の光が瑠璃のいた場所をなぎ払う。その光が彼女を消し飛ばした、そう思われた瞬間。
「大丈夫か?」
 その体を、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)が抱えてその場を飛び退っていた。光線のない場所に瑠璃を降ろすと、シェーラはプリンセス・エメラルドの方を見る。
「美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。性格ブスは醜い。見るに堪えん……お前みたいなな」
 エメラルドでできた美女という芸術品の如き体に、外宇宙を侵略せんとする邪悪な心を宿したプリンセス・エメラルド。外見と内面の美しさが見事なまでに反比例した彼女に、シェーラは汚物でも見るかのような目を向けることを躊躇しなかった。
「威と覇、支配者が示すべきはそれです。下賤の者に受け入れられぬは仕方ない事でしょう。しかし私をただ飾られるだけの彫像と思わないでください。この力こそ私が銀河皇帝たる証。来たれ、|皇帝乗騎《インペリアル・ヴィークル》」
 プリンセス・エメラルドの体を取り巻き、その身を乗せた超巨大バイク。それは銀河帝国皇帝のみが乗ることを許される|皇帝乗騎《インペリアル・ヴィークル》。かつてアリスラビリンスでも彼女が乗機とし、かつては最早先代と呼ばれることになったリスアット・スターゲイザーも乗ったそれをうならせ、プリンセス・エメラルドはシェーラを轢き潰しにかかった。
「あたしに任せて!」
 それが動き出した瞬間、その前面に多数の砲弾が炸裂した。一発一発が小型船程度なら沈められそうなその力に、さしもの皇帝乗騎もその初速を止められる。
「皇帝だか何だか知らないけど、ここまで追い込まれて偉そうにしないでよね!」
 それを放ったのは田中・香織(ヒーローに憧れた人形・f14804)のアームドフォート。この火力を持って大軍を統べる|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》や小惑星級の超・超巨大敵を押しのけてきた彼女にとって、この力が帝国さえ叩き潰すに足るということは最早疑いようもない事実であった。
「無謀な……それでは、あなたがた見せてあげましょう。銀河帝国の力、その全容を」
 プリンセス・エメラルドに皇帝乗騎、そして無数の帝国継承軍。まさに銀河帝国の総力と言えるものたちが、猟兵たちに向けられた。
「なるほど、数は力。その通り。ならこちらも傭兵的にいかせてもらうよ」
 シェーラは迫りくる帝国継承軍たちに目を向け、目立つように跳躍。その場でいくつもの精霊銃をお手玉のように投げ、手にするごとに一発ずつ撃って兵たちを射抜いていく。
「──この呪いは、明日への対価だ」
 その姿は様々な美辞麗句を持ってた耐えられるべき美しきもの。しかしてその手に宿るは、敵が撒き散らした負の感情を吸っての【彩色銃技・破鏡重円】。それをお前らに返してやろう。その意を持った如くに弾丸が撒かれ、帝国継承軍は次々に打ち倒されていく。
「あれを消し飛ばしなさい」
 プリンセス・エメラルドの命を受け、その砲がシェーラに向けられ放たれた。だが発射の瞬間その軌道はずれ、彼を掠めあらぬ方向へ飛んでいく。
「力しか、とり得がないから……!」
 そのプリンセス・エメラルド号に、いつの間にか瑠璃がしがみついていた。一対一の肉弾戦だけが能と自称する彼女だが、その一点においては巨大戦艦すらその剛力で傾けうるもの。
「こんなもの、こうです……!」
 そのまま叩きつけられる【一撃必殺】の拳が、巨大戦艦を粉砕していく。
「仕方なし。私が行きましょう」
 それを跳ね飛ばそうと動き出す皇帝乗騎。だが、その前面にはすでに香織の放った弾幕が。
「二人ともやるじゃない! けど、弾幕も真っ向勝負もあたしだって負けないんだからね!」
 無数の艦隊をなぎ倒し、龍の首さえ吹き飛ばしたこの弾丸。配下の受けたものをお前にもくれてやると、香織は恃みとするアームドフォートを全力で撃ちかけ続ける。
「用いる武器を恃む姿勢はよしとしましょう。しかし、あなたのそれと私の乗騎では『格』が違い過ぎます」
 自らもサイキックエナジーを放ち、弾幕を押しとめるプリンセス・エメラルド。その超能力はすさまじく香織の放つ砲弾すら弱め、そしてそれを皇帝乗騎が踏み潰しながら香織に迫っていく。
「それでは、潰れなさい」
 その巨大な車輪が香織の小柄な体を踏み潰す。その瞬間。
「……待ってたよ、あんたの馬鹿面がよく見えるようになるまで!」
 香織は最大の武器のはずのアームドフォートから離れた。その手には、一丁の拳銃が。
「こいつで勝負よ」
 一瞬の【早撃ち】で放たれた拳銃が、プリンセス・エメラルドを撃ち抜いた。武器は敵を倒すためのもの。巨大の乗騎の上に跨る彼女を射程に捕らえられたなら、何を使うかにこだわる必要はない。
「やっと届いた、って感じ?」
 膨大、巨大な敵をなぎ払ったは全てこの一射がため。そして、仲間たちの援護もまた。
 真っ直ぐ突き進んだヒーローの一撃は、ついに悪しき皇帝を捕らえたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『十分な準備時間が得られた』のはお互い様ですので?

『FAS』により飛行、『FMS』のバリアと『FES』『FGS』の結界に加え『FLS』の空間歪曲障壁を展開しますねぇ。
『FIS』の転移による回避で『エメラルド号』の砲門傍らに移動すればその砲は使えず、『光線』等の単体射撃は『空間歪曲』で偏向可能、偏向先を『光剣部隊』に向ければ接敵を凌げますぅ。
残る砲門や余波等は『空間歪曲』で直撃を避け、多重防壁と緊急時の『FIS』の転移を併せれば防げるでしょう。
この時点での『祭器』破損や、戦闘不能にならない程度の負傷も問題有りません。

使用可能になり次第【錺剿】を発動、戦場全体へ『領域』を形成し『波動』を放射、『超重力&存在吸収&拘束&自壊誘発』の多重攻撃を仕掛けますねぇ。
更に『祭器即時修復』により、破損した全『祭器』と『祭礼の女神紋』により『祭器』化した肉体も修復可能、『艦』を含む誰かに微傷でも与えられれば全て連撃可能ですので、『祭器』による攻撃はプリンセスに集中、一気に叩きますぅ。



 プリンセス・エメラルドが迷宮災厄戦で現れ、そこで生き延びてから三年。長く続く猟書家との戦いは、彼女に外宇宙を制圧するに十分すぎる時間を与えてしまった。
 しかし、その時間に何かを得たのは彼女だけではない。
「『十分な準備時間が得られた』のはお互い様ですので?」
 そう言って浮き上がる夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の身には猟兵さえ超越した『何か』が満ち溢れていた。
 オーバーロード、埒外たる猟兵が迎えたさらなる超克。それはるこるだけでなく、彼女が前面に展開したバリアや結界にまで伝わっていた。迷宮災厄戦の時には無かったその力をもって、彼女はプリンセス・エメラルドと相対した。
「ならばあなたにこれ以上の時間は与えないことにしましょう。放て」
 それがどうした、と言わんばかりに、プリンセス・エメラルドもまた自らの後ろに浮かぶプリンセス・エメラルド号に攻撃命令を下す。それを受け、緑色の光線が辺りをなぎ払った。
 緑の光の中、バリアや結界がそれを作り上げていた兵装ごと消し飛ばされて行くのがかすかに見える。そしてその光はるこる自身さえも飲み込み、全てを緑一色に染めた。
 やがて、照射が止まり辺りに色が戻る。そこには、僅かに消え残った兵装の欠片が残されているだけであった。
 しかし、プリンセス・エメラルドは表情を緩めない。
「……どうせ、どこかにいるのでしょう」
 並の猟兵さえ凌駕する力。この一射で倒しきれたとは思わない。強すぎる光と攻撃範囲で周囲の視認を妨げてしまうのがこの光線の欠点と、彼女は既に分かっていた。それ故、戦場を支配するサイキックエナジーを感知手段として逃げた敵を探す。
「……なるほど、そこですか」
「どうやらそちらも油断はないようでぇ」
 その予想通りるこるが逃げ込んでいた場所、それはプリンセス・エメラルド号の巨大な砲の下であった。巨大な相手は懐に潜られれば何もできない、直前のサフィアリスとの戦いでそれを分かっていたるこるは、兵装の一つ『FIS』の瞬間移動能力を用いてプリンセス・エメラルド号に詰め寄ったのだ。
 敵の姿をプリンセスが捕らえた瞬間、一斉に継承軍の兵たちがブラスターを撃ちかけた。一言の命令もなくそれを行うは、最初に戦ったクエーサービーストや艦隊と同様、彼らがプリンセス・エメラルドの超能力によって一つの軍団として纏められているからか。
 それに対しては空間を捻じ曲げる効果を持つ兵器を使い、光線を反射し防ぐ。行き先を捻じ曲げられたそれは兵士自身の方へ向かい、切りかかろうとした剣を持つ兵たちを牽制した。
「原理は違うようですが、ならば」
 自ら攻めるのではなく、プリンセス・エメラルドはそちらに手を向けて何かを握り潰すような仕草を見せた。そうすると捻じ曲げたはずの空間が戻り、光線のいくつかがるこるの体に届く。さらには隠れている砲とは違う近接用の銃がるこるの方を向き、緑色のレーザーを連続で撃ちかけた。
 ついに届き始めた攻撃がるこるの体を刻み、血を噴き出させる。防御用兵装はほぼすべてが破壊され、残ったものもプリンセス・エメラルドの高い力によって抑えられている。さらに帝国継承軍からの猛攻に加え手法以外からの攻撃など、プリンセス・エメラルドの持つ攻撃全てがその身に叩きつけられていた。
 まさに全力。だがそれ故に、放つ側も消耗はある。集中が切れたかプリンセス・エメラルドの放つサイキックエナジーが僅かに歪み、防御が再び成って敵の攻勢を遮断した。その瞬間。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『宝冠の加護』をお与え下さいませ」
 るこるは【豊乳女神の加護・錺剿】を発動、周囲に自らの『領域』を展開した。それはプリンセス・エメラルドが撒いたサイキックエナジーの領域を喰らい、そこを自らのものへ書き換えていく。
 その領域に捕らわれた帝国継承軍たちが、次々とその場に崩れ落ち始めた。生命力吸収、自壊、超重力。それらは有象無象の兵たちには余りにも過酷であり、耐えうる術などない。
「仕方なし……なれば、こうです」
 倒れた兵たちの方向に超能力を働かせ、その武器だけをプリンセス・エメラルドが動かす。それは一斉にるこるに向けて放たれるが、それは割り込んできた何かによって遮られた。
 それは先刻破壊されたはずのバリアや結界。ユーベルコード効果で修復されたそれを、今度はカモフラージュではなく本当に防御の為に前に置いたのだ。
 そしてそこから攻撃用兵器をプリンセス・エメラルドに差し向け、砲弾や爆撃で彼女を攻める。ダメージの度に連続で攻撃を繰り返しそれは止まることなど決してない。さらには自らの身を兵装と同一とし修復効果の対象にするこれまで継承軍やプリンセス・エメラルド号が刻んだ傷さえ塞がり始めていた。
 ユーベルコードの力を100%以上に振り絞って適用し、己の力を限界を超えて発揮する。これはオーバーロード、これが三年の時と、るこるはその力を持ってプリンセス・エメラルドに伝えていた。
「……どのような力かは知りませんし知る気もありません。私は銀河皇帝プリンセス・エメラルド。銀河の詩べ手に君臨し支配する者!」
 その宣言とともに力を振り絞り、プリンセス・エメラルドはサイキックエナジーを放出した。それが取り巻いたのは、彼女の名を冠する戦艦プリンセス・エメラルド号。
 激しく動き出したそれはるこるを振り落とし上昇する。そこからまた破壊光線を放つ気か。否。
「これが誰しもに伝わる、力の大きさです!」
 プリンセス・エメラルドが手を振り下ろすと、戦艦はそのままるこるに向けて墜落しはじめた。その巨大な質量による押し潰し、それこそがプリンセス・エメラルド号最後の攻撃であった。
 防御兵装を差し向けそれを受け止めるが、甦り続ける兵装を破壊しながら戦艦はるこるへ迫る。
 一方でその間もプリンセス・エメラルドを攻撃し続けている。既に美しいエメラルドの体は罅だらけとなり、その体は煤に塗れている。
 かたや芸術品のように美しくも華奢な、かたや柔らかい肉に満ちた豊満な、いずれも力強さとは無縁そうな体が繰り広げる『力』の押し付け合い。
 その拮抗、せめぎ合い。その果てに、何かが砕ける高い音がした。
「わた……しが……」
 プリンセス・エメラルドの細い首。そこに入った罅に戦輪『FBS』が食い込み、そのひびを首全周に広げていた。これは新たな力ではない。三年前、それ以上昔から共にあった力。
 滅びし王の末路を示すように、そのひびが割れプリンセス・エメラルドの首が落ちていく。
「我が帝国は……永遠に……!」
 その先を言いきることを許さず、その首、その体は無数の緑の欠片となって砕け散った。
 プリンセス・エメラルドの死、それと共にプリンセス・エメラルド号も消滅し、継承軍が通るためのゲートも閉じる。
 窓の外へと目をやれば、遠い場所で砲火が煌めくの見えた。完全にサイキックによる制御が切れたクエーサービーストが、生き残りの継承軍を襲い始めたのだろう。どちらかに手を貸しに行く必要はない。共倒れになると既に聞かされているのだ。
「あと三人、ですかぁ」
 長きにわたる銀河帝国の詩はここに閉幕となった。そしてそれを一篇とした|交響曲《猟書家の侵攻》も、いつかは。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年03月14日


挿絵イラスト